JP2003530899A - 造血を増強する方法 - Google Patents

造血を増強する方法

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Abstract

(57)【要約】 造血を増強する方法を提供する。この方法には、単離された血管組織の少なくとも治療的に有効な部分を対象に移植する段階であって、その血管組織が造血を増強する段階が含まれる。造血に影響を及ぼす薬剤を検出する方法も提供する。この方法には、単離された血管組織の一部を対象に移植する段階であって、単離された血管組織の一部が造血を十分に増強する段階が含まれる。この血管組織を薬剤で処理することで、対象における造血を検出する。対象の造血をコントロールの造血と比較する。コントロールと比較したときに対象の造血に変化が認められれば、対象薬剤が造血に影響を及ぼすことがわかる。本発明の方法を用いて造血成長因子を単離する方法を提供する。また、本発明の方法を用いて造血幹細胞を単離する方法を提供する。造血を増強するための薬学的組成物およびキットについても開示する。また、造血に影響を及ぼす薬剤を検討するための非ヒト動物モデルも開示する。このモデルシステムは、血管組織の単離され、造血を十分増強する部分を移植する、造血を欠いた非ヒト動物である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】 優先権の主張 本出願は、参照として本明細書に組み入れられる1999年6月23日に出願された
米国仮特許出願第60/140,628号の優先権を主張する。
【0002】 発明の分野 本発明は造血幹細胞の分野に関し、特に、対象の造血を再生させる血管組織の
用途に関する。
【0003】 発明の背景 末梢血中を循環するすべての血球は、造血幹細胞と呼ばれる原始間葉細胞に由
来する。成体では、このような細胞の大部分は骨髄中に存在する。健常人の骨髄
中では、大部分の幹細胞は分裂も分化もしていない。これらの細胞は長期の有糸
分裂中間期にあるとみなされ、準備段階にある幹細胞プールからなり、造血性ス
トレスを受けて分裂が誘導される。
【0004】 造血幹細胞には自己再生性があるほか、リンパ系列、ミエロイド系列、および
赤芽球系列などの複数の系列に分化するという多能性もある。リンパ系列はB細
胞およびT細胞からなり、抗体の産生、細胞性免疫系の調節、血液に含まれる異
物の検出、宿主にとって異物となる細胞の検出ほかの作用をもつ。ミエロイド系
列は、単球、顆粒球、巨核球ならびに他の細胞を含み、血流中の異物の存在をモ
ニタリングし、悪性細胞に対する防御となり、血流中の異物を除去し、血小板を
産生するなどの役割を果たす。赤芽球系列は、酸素の運搬者としてはたらく赤血
球となる。幹細胞は成長因子に曝されることで、特定の系列に限定的に分化する
ように誘導されると考えられている。
【0005】 幹細胞集団は、骨髄に含まれる全白血球に対してほんのわずかな比率を占める
ことが知られている。マウスの幹細胞は、精製された状態とは言えないまでも、
少なくとも高濃度の状態で最近得られており、骨髄から採取された約30個足らず
の細胞で、致死線量の放射線を照射したマウスの造血系の全系列を再生すること
が可能である。実際には、1個の細胞を注入することで造血系列すべてを再生可
能であると思われる。
【0006】 発明の概要 造血幹細胞の供給源の同定には大きな関心が寄せられている。というのは、こ
のような供給源が得られれば、造血幹細胞の自己再生にかかわる成長因子群を同
定することが可能になるからである。また、(1)幹細胞が特定の系列へ限定さ
れる初期段階、(2)そのような限定の阻止、および(3)幹細胞増殖の負の制御
、にかかわる未発見の成長因子が存在すると思われる。幹細胞の新しい供給源が
利用できれば、骨髄移植ならびに、骨髄の移植に関連して現在行われている他の
臓器移植に代わるものとして極めて有用である。また幹細胞は遺伝子治療の重要
な標的である。遺伝子治療では、遺伝子を挿入することで、幹細胞移植を受けた
者の健康を増進させる。したがって幹細胞の新しい供給源が同定されれば、遺伝
子治療に有用な細胞を単離するための付加的な手段が提供される。新しい造血幹
細胞、または造血の新しい中間体が単離されても、リンパ腫および白血病、なら
びに乳癌などの他の悪性疾患の治療に新たな道が開かれる。幹細胞および造血を
単離して検討するモデルシステムは、幹細胞に影響を及ぼす薬剤を検討する方法
もまた提供する。
【0007】 造血を増強する方法を提供する。この方法には、単離された血管組織の少なく
とも治療的に有効な一部を対象に移植する段階であって、その血管組織が造血を
増強する段階が含まれる。
【0008】 一つの態様においては、造血に影響を及ぼす薬剤を検出するための方法を提供
する。この方法には、単離された血管組織の一部を対象に移植する段階であって
、その単離された血管組織が造血を十分に増強する段階が含まれる。この血管組
織を候補となる薬剤で処理し、対象の造血をモニタリングする。対象の造血をコ
ントロールの対象の造血と比較したり、または一般的な細胞もしくは特定の細胞
(例えばリンパ球に対する白血球など)の造血に関連して、予測標準値と比較し
たりすることができる。コントロールと比較したときに対象における造血が変化
した場合は、その薬剤が造血に影響を及ぼすことがわかる。
【0009】 別の態様においては、造血成長因子を単離する方法を提供する。この方法には
、対象に血管組織の一部であって、その血管組織が対象の造血を増強する段階、
および対象から造血成長因子を単離する段階が含まれる。別の態様は造血成長因
子そのものであり、これは、上記のアプローチにより、または血管そのものから
直接単離する。
【0010】 さらに別の態様においては、造血幹細胞を単離する方法を提供する。この方法
には、血管組織の一部を対象に移植する段階、および造血幹細胞を対象から単離
する段階が含まれる。
【0011】 薬学的組成物を造血を増強するために提供する。これには、薬学的に許容され
る担体に含まれる治療的有効量の単離血管組織が含まれる。医薬品の製造方法に
ついても開示する。この方法には、造血を増強するために使用する血管組織の一
部を回収する段階が含まれる。
【0012】 造血を増強するキットを開示する。このキットには、単離された血管組織の一
部を、血管組織の造血活性に干渉しない保存用溶媒などの溶媒中に含む容器から
なる担体となる手段が含まれる。造血用の単離された血管の用途についても開示
する。用途は例えば、キットに同梱される指示書に記載される場合がある。
【0013】 造血に影響を及ぼす薬剤を検討するための非ヒト動物モデルも開示する。この
モデルシステムは、血管組織の単離された一部を移植する、造血を欠く非ヒト動
物である。このような血管組織の一部は、造血を十分増強する。非ヒト動物モデ
ルを作製する方法も開示する。
【0014】 特定の態様の詳細な説明 以下に挙げる定義および方法は、本発明を明瞭に定義するものであり、本発明
を実施する当業者のガイドとなる。文中で特に断らない限り、本明細書および添
付した特許請求の範囲で用いる単数形、「一つの(a)」、「一つの(an)」、
および「その(the)」には複数形が含まれる。したがって例えば、「1個の細胞
(a cell)」という記述には、同様の複数の細胞が含まれ、また「その成長因子
(the growth factor)」という記述には、一つまたは複数の成長因子が含まれ
る。その他の記述についても同様である。
【0015】 特に明記した部分を除いて、本明細書で使用されるすべての科学技術用語は、
本発明に関する当業者が一般に理解する用語と同じ意味をもつ。
【0016】 定義 造血に影響を及ぼす薬剤:造血に影響を及ぼす化合物、抗体、核酸分子、また
はタンパク質。一つの態様において、このような薬剤は、造血細胞の成長、増殖
、成熟、または分化に影響を及ぼす。薬剤は天然の分子または合成された分子の
どちらでもよい。薬剤の一つの特定の非制限的な例は薬学的化合物である。薬剤
の別の特定の非制限的な例は、成長因子などのタンパク質である。薬剤のさらに
別の特定の非制限的な例は、アンチセンス分子またはリボザイム分子などの核酸
分子である。
【0017】 動物:生きた多細胞脊椎生物であり、このカテゴリーには例えば哺乳類や鳥類
などが含まれる。
【0018】 B細胞:B細胞はリンパ球の一種であり、白血球の亜型であり、抗体を産生する
形質細胞に分化する。
【0019】 血管:内部を血液が循環する管。一般に血管は、内皮が並んだ伸縮性のある管
状の経路である。血管には、動脈、静脈、および毛細血管が含まれる。血管の特
定の非制限的な例には、大静脈、胸部大動脈、伏在静脈、内胸動脈、上腕動脈、
および毛細血管などがある。別の態様においては、血管には小動脈および小静脈
がある。さらに別の態様においては、血管は微小血管循環の毛細血管である。
【0020】 分化:細胞が、より特殊化して生物学的機能を果たすようになる過程。分化は
、悪性転換した細胞では全体的または部分的に失われることが多い特性である。
【0021】 増強(増強する):細胞または生物の特定のパラメータが上昇すること。一つ
の態様においては、増強は任意のパラメータの25%、50%、100%、または100%を超
える上昇を意味する。造血の増強の一つの特定の非制限的な例は、造血系列細胞
集団(例えば、B細胞、T細胞、マクロファージ、単球、または造血中間細胞など
)の、細胞集団または細胞集団の反応の25%、50%、または100%の上昇を意味する
【0022】 成長因子:「成長因子」とは、細胞または生物の成長に影響を及ぼす物質であ
る。一般に成長因子は、その受容体(「成長因子受容体」)に結合することで細
胞の増殖または成熟を誘導する。一つの態様において、成長因子は、造血細胞の
成長、分裂、および成熟を制御するポリペプチドホルモンまたは生物学的因子の
複合ファミリーである。別の態様において、成長因子は、細胞の分裂および増殖
を調節し、腫瘍組織(例えば癌など)の成長速度に影響を及ぼす。成長因子は、
天然の因子または分子生物学的技術を用いて合成された因子のどちらでもよい。
成長因子の一つの特定の非制限的な例では、リンパ球の産生または分化を誘導す
るのに用いることができることから、以下に挙げる化学療法または骨髄移植に使
用することができる。
【0023】 例として、種々の成長因子、上皮成長因子、血小板由来増殖因子、繊維芽細胞
増殖因子などが含まれる。インスリンおよびソマトメジンも成長因子であり、神
経成長因子の状態は不確定である。成長因子の産生の変化、または成長因子に対
する反応の変化は、腫瘍性形質転換の過程で重要な役割を果たす。
【0024】 造血細胞の発生(成熟)、分化、分裂、または増殖に影響を及ぼす成長因子が
「造血成長因子」である。
【0025】 「幹細胞成長因子」とは、造血幹細胞に影響を及ぼす成長因子である。幹細胞
成長因子の特定の非制限的な例が、c-kitリガンド(例えばスチール因子(steel
factor)、幹細胞因子)であり、さらにはFLT-3リガンドやLIFも含まれる。
【0026】 造血:血球の形成および発生。造血には、幹細胞を出発点とする増殖と分化が
含まれる。成体哺乳類の造血は骨髄で起こることが知られている。造血では、B
細胞、T細胞、単球マクロファージ系列の細胞、および赤血球を含む造血細胞が
産生される。
【0027】 免疫学的に正常である:「免疫学的に正常である」とは、個体が属する種に典
型的な免疫系の特性を示す個体を意味する。このような特性は典型的には、機能
性のB細胞やT細胞、ならびに特定生物の免疫学的な指標としてはたらく細胞表面
抗原と呼ばれる構造上の細胞成分などである。
【0028】 免疫学的に正常なレシピエントを使用する理由は、免疫学的に正常なレシピエ
ントの免疫系であれば、そのB細胞(体液性応答)およびT細胞(細胞性応答)を
介して、外来細胞の細胞表面抗原または移植された組織を異物として特定できる
からである。このため最終的に、細胞または組織に対する免疫応答に至り、細胞
の破壊または移植片の拒絶が起こる。同種の組織に対する免疫応答は宿主対移植
片拒絶として知られる。
【0029】 免疫不全状態にある:「免疫不全状態にあるレシピエント」とは、遺伝子型ま
たは表現型上の免疫不全を示す対象である。遺伝子型的な免疫不全を示す対象に
は、最終的に液性応答または細胞介在性応答を生じることができなくなる遺伝子
欠損がある。遺伝子型的な免疫不全状態にある対象の特定の非制限的な例が、SC
IDマウスやbg/nu/xidマウスなどの遺伝子型的に免疫不全状態にあるマウスであ
る(Andrioleら、J. Immunol. 135:2911、1985;McCuneら、Science 241:1632
、1988)。一つの態様においては、遺伝子型的な免疫不全状態にある対象は、外
来細胞または移植された同種組織に対して反応できない。「表現型的に免疫不全
状態にある対象」とは、遺伝学的には免疫応答を生じることができるが、表現型
的には応答がみられないように変化した対象である。一つの特定の非制限的な例
において、表現型的に免疫不全状態にあるレシピエントは、放射線照射を受けて
いる。別の特定の非制限的な例において、表現型的に免疫不全状態にある対象は
、過去に化学療法を受けている。
【0030】 阻害(阻害する):細胞または生物の特定のパラメータが小さくなること。一
つの態様においては、阻害はパラメータの25%、50%、100%、または100%を超える
低下を意味する。造血の阻害の一つの特定の非制限的な例は、造血系列の細胞集
団(例えば、B細胞、T細胞、マクロファージ、単球、または造血中間細胞)の、
細胞集団または細胞集団の反応の25%、50%、または100%の減少を意味する。
【0031】 単離された:「単離された」生物学的構成成分(核酸分子、タンパク質、また
は血管組織の一部など)は、その構成成分を天然に含む生物の細胞について、他
の生物学的構成成分から実質的に分離または精製されている。単離された血管組
織には、外科的および/または酵素学的な方法による分離が含まれる。「単離さ
れた」核酸およびタンパク質には、標準的な精製方法で精製される核酸およびタ
ンパク質が含まれる。この用語はまた、宿主細胞内で遺伝子組換えによる発現で
調製された核酸およびタンパク質、ならびに化学的に合成された核酸も意味する
【0032】 リンパ球:身体の免疫防御にかかわる白血球の亜型。リンパ球には2つの主な
型であるB細胞とT細胞がある。
【0033】 リンパ球増殖:リンパ球の産生が上昇すること。
【0034】 哺乳類:この用語には、ヒトおよび非ヒト動物の両方が含まれる。同様に「対
象」という用語は、ヒトおよび獣医学的な対象の両方を含む。
【0035】 単球:血液に含まれる大きな白血球で、微生物または他の細胞および外来粒子
を取り込む。血流を出て組織に入った単球はマクロファージに分化する。
【0036】 薬学的に許容される担体:本発明で有用な薬学的に許容される担体は従来型の
担体である。「レミントン薬理学(Remington’s Pharmaceutical Sciences)」
(E.W. Martin、Mack Publishing Co.、Easton、PA、第15版(1975))には、本
明細書で開示される融合タンパク質の薬学的な送達に適した組成および剤形につ
いて記述されている。
【0037】 一般に担体の性質は、用いられる特定の投与様式によって変化すると考えられ
る。例えば、非経口用の剤型は通常、水、生理食塩水、平衡塩類溶液、デキスト
ロース水溶液、グリセロールなどの薬学的および生理学的に許容される液体を溶
媒として含む注入溶液からなる。固形成分(例えば、粉末、ピル、錠、またはカ
プセル)については、従来型の非毒性固形担体としては例えば、製薬グレードの
マンニトール、ラクトース、デンプン、またはステアリン酸マグネシウムなどが
含まれる。生物学的に中性の担体のほかに、投与される薬学的組成物には、湿潤
剤または乳化剤、保存剤、およびpH緩衝剤などの微量の非毒性補助物質を含める
ことができる。例えば酢酸ナトリウムやソルビタンモノラウレートなどがこれに
含まれる。
【0038】 前駆細胞:「前駆細胞」とは限定された細胞系列の子孫を生じる細胞である。
「造血前駆細胞」とは造血系列の細胞の元となる細胞である。造血前駆細胞の特
定の非制限的な例の一つは、未成熟なリンパ細胞および成熟したリンパ細胞の元
となる前駆細胞である「共通リンパ系前駆細胞(common lymphoid progenitor c
ell)」である。造血前駆細胞の別の特定の非制限的な例は、未成熟のT細胞およ
び成熟したT細胞の元となる「T細胞前駆細胞」である。前駆細胞のさらに別の特
定の非制限的な例は、ストローマ成分の元となる前駆細胞の一種である「ストロ
ーマ前駆細胞」である。
【0039】 幹細胞:「幹細胞」とは、すべての血液リンパ系列で子孫細胞の元となる全能
性をもつ細胞である。また、限られた数の細胞には、重度免疫不全者のすべての
血液細胞およびその前駆細胞を十分再生する能力がある。これには、細胞再生に
よる全能性のある造血幹細胞が含まれる。
【0040】 対象:血管系を有し、造血細胞を有する野生型の生物。一つの態様において、
対象は、サル、マウス、ラット、ウサギ、ブタ、ヤギ、ヒツジ、またはウシなど
の非ヒト哺乳類の対象である。別の態様では対象はヒト対象である。
【0041】 上清:細胞が成長する培養液。培養液には、分泌型成長因子などの細胞に由来
する物質が含まれる。
【0042】 T細胞:免疫応答に重要な役割を果たす白血球。T細胞にはCD4+ T細胞およびCD
8+ T細胞などが含まれるが、これらに限定されない。CD4+ T細胞は、その表面に
「CD分類の4番目」(CD4)として知られるマーカーをもつ免疫細胞である。この
細胞はヘルパーT細胞の名称でも知られ、免疫応答の協調にかかわる。これには
、抗体反応ならびにキラーT細胞による反応が含まれる。CD8+ T細胞は、「CD分
類の8番目」(CD8)のマーカーをもつ。CD8+ T細胞の一つの態様は細胞傷害性T
リンパ球である。CD8+ T細胞の別の態様はサプレッサーT細胞である。
【0043】 血管組織の治療的に有効な部分、または十分な部分:使用するモデリングの能
力および有効性を予測する経験的な容量反応曲線を作成する段階を含む種々の方
法、および生物科学分野で使用される他の方法によって決定可能な血管組織の量
。治療的に有効な血管量は一般に、免疫不全状態にある対象の造血を十分再生す
る量である。一つの態様において、血管組織の治療的有効量は、内膜、中膜、外
膜の少なくとも一つを含む血管である。
【0044】 一つの特定の非制限的な例では、移植片は、長さが1 mm〜約10 cmの血管、ま
たは長さが1 cm未満の血管、または長さが約2 mm〜約4 mmの血管である。別の特
定の非制限的な例では、血管の外周は、約0.5 mm未満であるか、または約0.5 mm
〜約2.5 mmである。一つの態様において、移植片の外周は約1.0 mm〜約2.0 mmで
ある。
【0045】 さらに別の特定の非制限的な例において、使用される血管組織の面積は約1 mm2 〜約1 cm2、または約1 mm2〜約100 mm2、または1 mm2〜10 mm2、または約6 mm2 〜約8 mm2、または約7 mm2である。別の特定の非制限的な例において、血管組織
の重量は、約1〜約50 mg、または約5〜約20 mg、または約10 mgである。別の特
定の非制限的な例において、血管組織は、約1×105個〜約1×109個の細胞、また
は約1×106個〜約1×108個の細胞、または約1×107個の細胞を含む。一つの態様
において、血管組織の治療的有効量は、大静脈または胸部大動脈の長さ4 mmの部
分である。
【0046】 血管組織の治療的有効量は、使用される血管組織のタイプ(例えば動脈、静脈
、または毛細血管)、処理した対象(例えば、対象の種類または大きさ)、対象
の免疫不全の程度、および移植部位(例えば腹腔内、腎被膜など)によって変わ
る。
【0047】 血管組織の治療的有効量を決定する特異的アッセイ法を本明細書で提供する。
一つの特定の非制限的な例では、さまざまな長さ、容積、または重量の血管組織
が、免疫不全状態にある対象の腎被膜下に移植され、造血細胞(造血細胞のサブ
タイプも含まれる)の有無および/もしくは量の検出ならびに/または分析が行わ
れる。本発明で開示された方法は、医学的および獣医学的な状況で同様に適用さ
れる。したがって、一般的な用語である「処理した対象」は、あらゆる動物(例
えば、ヒト、サル、イヌ、ネコ、マウス、ラット、ウサギ、ヒツジ、ブタ、およ
びウシ)を含むように理解され、造血の再生は、本明細書で開示されるアッセイ
法を用いてモニタリングされる。例えば、移植後のB細胞、T細胞、またはマクロ
ファージの有無が決定される。
【0048】 移植:組織もしくは臓器、またはそれらの一部を、一方の身体または身体の一
部から他方の身体または身体の一部へ移すこと。「同種移植」または「異種移植
」は、ある個体から別の個体への移植であり、対象となる個体は、二個体間で配
列が同一でない一つまたは複数の座位に遺伝子群を有する。同種移植は、遺伝的
に異なる同種の二個体間、または異なる二種の個体間で行われる。「自己移植」
とは、組織またはその一部を、同じ個体上の任意の位置から別の位置への移植す
ること、または組織またはその一部を、遺伝学的に同一の個体間において移植す
ることである。
【0049】 血管組織:構造の不可欠な部分として血管からなる、または血管を含む組織。
血管組織は、血管によって機能し、血管の配列によって構成される。血管組織に
は、動脈、静脈、毛細血管、乳び管などが含まれる。一つの態様において、血管
組織には高度に血管新生を伴う臓器(例えば肺)が含まれる。別の態様において
、血管組織は血管またはその一部である。血管の「一部」とは、血管の本来の位
置にあるが完全長より短い任意の長さの血管を意味し、閉鎖性内腔を形成しない
血管の一部を含む。血管組織から単離された細胞は、同組織の残りの構成成分か
ら単離された細胞の集団である。血管組織に由来する細胞の特定の非制限的な例
の一つは、血管などの血管組織から単離された内皮細胞である。
【0050】 造血を増強する方法 本明細書では、造血を増強する単離血管組織の少なくとも治療的に有効な部分
を対象に移植する段階を含む、造血を増強する方法を提供する。血管組織の治療
的に有効な最小量は、本明細書に記載されたモデルシステムを用いて決定するこ
とができる。血管組織の治療的に有効な最小量は、造血を増強するために使用で
きる。あるいは、血管組織のより長い部分を使用することもできる。
【0051】 一つの態様において、対象は免疫学的に正常な対象である。別の態様において
、対象は免疫不全状態にある(例えば、表現型的または遺伝子型的に免疫不全状
態にある対象)。このような対象は一般に免疫不全状態の場合があるので、あら
ゆる免疫細胞の反応が損なわれている。または対象は、特定の細胞型の反応性な
ど、免疫応答の一つの特定の局面において免疫不全状態にある場合がある。一つ
の特定の非制限的な例では、T細胞による応答が損なわれている。別の特定の非
制限的な例では、B細胞による応答が損なわれている。さらに別の特定の非制限
的な例では、単球またはマクロファージによる応答が損なわれている。免疫系の
特定の細胞の応答性を検討する多くのアッセイ法があること、および対象の免疫
系細胞の応答性を評価する試験法を当業者であれば容易に決定できることを認識
する必要がある。免疫系を評価する試験法の特定の非制限的な例には、クロム遊
離アッセイ法などの細胞傷害性Tリンパ球活性の試験(CTLアッセイ法)、混合リ
ンパ球応答アッセイ法(MLRアッセイ法)、ヘルパー細胞のアッセイ法、サイト
カイン分泌のアッセイ法、免疫グロブリン産生のアッセイ法、または抗原提示細
胞(APC)を検出するアッセイ法などがある。免疫不全状態の対象の特定の非制
限的な例の一つは、放射線照射、または化学療法薬剤の使用によって造血を欠く
対象である。
【0052】 血管組織は対象に移植されるほか、対象の任意の位置から同じ対象の別の(正
常ではない)位置に移植される。一つの態様において、血管組織は単離された血
管であり、または、その造血上有効な部分である。血管の特定の非制限的な例は
、大静脈、胸部大動脈、内胸動脈、伏在静脈、または毛細血管である。別の態様
において、血管組織は高度の血管新生を伴う臓器の一部である。本明細書に記載
されたモデルシステムを用いることで、当業者であれば血管組織の治療的有効量
を容易に決定できる。
【0053】 移植部位は、移植血管組織によって造血が増強されるように選択される。一つ
の態様において、血管組織は腎被膜下に移植される。別の態様において、血管組
織は腹腔内に移植される。さらに別の態様において、血管組織は皮下に移植され
る。
【0054】 造血の増強は、当業者に周知の任意のアッセイ法で測定することができる。ア
ッセイ法の特定の非制限的な例では、脾臓の巨視的コロニー(CFU-S)を調べる
。あるいは、蛍光活性化細胞選別を行ってリンパ球集団の有無を評価することが
できる。B細胞およびT細胞の活性を調べるアッセイ法を使用することもできる。
上述した通り、造血細胞アッセイ法の特定の非制限的な例には、細胞傷害性Tリ
ンパ球のアッセイ法(クロム遊離アッセイ法などのCTLアッセイ法)、混合リン
パ球応答アッセイ法(MLRアッセイ法)、ヘルパー細胞のアッセイ法、サイトカ
イン分泌のアッセイ法、免疫グロブリン産生のアッセイ法、または抗原提示細胞
(APC)を検出するアッセイ法などがある。
【0055】 動物モデル 一つの態様においては、本明細書に記載された方法を用いて、造血に影響を及
ぼす薬剤を検討するための非ヒト動物モデルが作製される。このようなモデルを
作製するためには、造血を欠く非ヒト動物に、造血を十分増強する血管組織の単
離された一部を移植する。
【0056】 一つの態様において、非ヒト動物は哺乳動物である。哺乳動物の特定の非制限
的な例は、マウス、ラット、ウサギ、ネコ、イヌ、ブタ、ヤギ、ヒツジ、または
サルである。このような非ヒト動物は造血を欠き、また遺伝学的または表現型的
に免疫不全状態にある場合がある。複数の動物種が遺伝子型的な免疫不全を示す
ことが知られている。遺伝子型的な免疫不全状態にある動物の一つの特定の非制
限的な例がSCIDマウスである。また同様に、表現形的な免疫不全を作製する複数
の方法は、当技術分野で周知である。表現型的な免疫不全を作製する処理の特定
の非制限的な例は、非ヒト哺乳類に対する放射線照射、または非ヒト動物の化学
療法剤による処理である。
【0057】 本明細書に記載された方法およびモデルシステムは、薬剤が造血に及ぼす影響
を評価するために使用することができる。薬剤が造血に及ぼす影響を評価するた
めに、遺伝学的または表現型的に免疫不全状態にある対象に治療的有効量の単離
血管組織を移植する。一つの態様において、単離血管組織の一部は造血を十分増
強する量であることが知られている。このような血管組織を薬剤で処理する。こ
の処理は、血管組織の移植前または移植後に行うことができる。血管組織を移植
後に処理する場合は、薬剤による処理は局所的または全身的とすることができる
。全身的処理は、静脈内、皮下、筋肉内、または腹腔内への注射などの、当業者
に既知の任意の経路で行うことができる。
【0058】 薬剤による処理に続いて、動物における造血の有無を見極める。造血は、当業
者に周知の任意の方法で検出することができる。使用されるアッセイ法の一つの
特定の非制限的な例が、蛍光活性化細胞選別(FACS)である。FACS分析を行うこ
とで、任意の造血細胞集団(例えば、T細胞、B細胞、顆粒球、マクロファージ、
未成熟なT細胞またはB細胞の集団)を検出することができる。使用されるアッセ
イ法の別の特定の非制限的な例はCFU-Sアッセイ法である(後述する実施例を参
照)。使用されるアッセイ法のさらに別の特定の非制限的な例が赤血球またはそ
のパラメータの測定であり、これには例えば、ヘモグロビン濃度、赤血球数、お
よび赤血球の半減期を測定する試験(末梢赤血球数の従来型の検出法)などがあ
る。
【0059】 次に、処理した対象の造血を、造血のコントロール値と比較する。一つの態様
において、コントロール値は、移植を受けておらず薬剤による処理も受けていな
い正常な対象から得られる。別の態様においては、コントロール値は、治療的有
効量の単離血管組織が移植されて薬剤処理を受けていない免疫不全状態にある対
象から得られる。さらに別の態様においては、コントロール値は、薬剤投与を受
け移植を受けていない対象から得られる。さらに別の態様では、コントロール値
は、比較目的で使用される価(すなわち基準値)であるデータポイントの集合体
である。処理した対象の造血関連パラメータがコントロールに対して変化した場
合は、その薬剤が造血に影響を及ぼすことを意味する。
【0060】 キット 本発明の方法は、キットを製造するのに極めて適している。このようなキット
は、バイアルやチューブなどの一つまたは複数の容器を含む箱、バッグ、または
プラスチック製カートンなどの運搬手段からなる。個々の容器には、方法で使用
される個別の要素を含めることができる。例えば、容器の一つには血管組織の一
部を含めることができる。キットにはまた、血管組織導入用の緩衝剤や溶媒を充
填した容器を含めることができる。また、キットの構成成分の用途を詳細に説明
した指示書を提供することができる。これは、書面による指示書、ビデオプレゼ
ンテーション、またはコンピューター上で展開可能な形式の指示書(例えば、デ
ィスケットやCD-ROMディスク)とすることができる。
【0061】 さらに詳細に記述することはしないが、当業者であれば上記の記述をふまえて
本発明を十分使用できるものと思われる。以下に挙げる実施例は、説明を目的と
するだけであって、開示の残りの部分を何ら制限するものではない。
【0062】 特定の実施例 実施例1 動物モデルの作製 発生中の哺乳類胚で造血が認識可能な最初の部位は卵黄嚢である。マウスでは
、中胚葉の細胞が凝集し、妊娠7日目までに胚体外血島が形成する。中胚葉成分
が分化して内皮およびグロビンを伴う原始赤血球となる。卵黄嚢の血管網が成長
するにつれて、発生中の胚の背側大動脈と直接連絡するようになり、胚体外およ
び胚体内の血管系が連結される。卵黄嚢は、胚発生中における赤血球形成の主要
部位であり、次に造血前駆細胞が移動し、早ければ9日目に肝臓にコロニー形成
を開始すると考えられている。次に肝臓が、妊娠後期まで胎児発生期の造血の主
要部位になる。妊娠後期になると骨髄腔が形成され、胎児の肝臓から造血前駆細
胞が出現する。妊娠末期までに、骨髄が造血の主要部位になり、高等脊椎動物の
生涯を通じて血球の産生を続ける。このモデルは、胚および胎児の発生中におけ
る赤血球形成の形態学的な研究によって主に決定された造血前駆細胞の整然とし
た移動を元にしている。しかし、現在の移植研究では、造血幹細胞の発生はより
複雑であることがわかっている。
【0063】 骨髄は、成体哺乳類における造血の主要部位であると考えられているものの、
かなりの部分の血球産生が骨髄腔外で生じることが複数の疾患から示唆されてい
る。髄外造血(EMH)は、繊維状組織が骨髄腔を満たすことを特徴とする腫瘍性
疾患である骨髄線維症で極めて頻繁にみられる。さらに、重度のβサラセミアで
みられる異常なヘモグロビン合成は、無効な赤血球生産の著しい上昇と、それに
続く髄外部位への造血の拡大とを引き起こす(Cardiaら、Pediatr. Neurosurg.
20:186〜189、1994)。静止状態にある造血幹細胞は成体の肝臓に存在すること
、または骨髄由来のHSCが造血ストレスを受けて肝臓に移動する可能性があるこ
とが想定されている。
【0064】 胚形成中に、発生中の血管と造血の初期部位とが近接していることが、共通の
前駆細胞または血管芽細胞が胚に存在するという仮説を導いている。造血前駆細
胞/幹細胞の集団が、成体の血管系と関連して保持するか否かを決定するために
、機能性造血細胞が正常成体マウスの血管中に存在するか否かを判定するアッセ
イを行った。
【0065】 マウスに高線量の放射線を照射するなどして表現型的に免疫不全状態にすると
、骨髄中の造血前駆細胞および幹細胞が著しく減少することが知られている。こ
のような細胞の枯渇には、放射線を照射した造血微小環境への移植ドナーの造血
細胞(骨髄から単離した幹細胞など)の移植を促す多くのサイトカインおよび成
長因子の産生が伴う。現在までに、放射線を照射したレシピエントマウスは、十
分な数の原始ドナー造血細胞が移植されないかぎり、骨髄不全を起こして3週間
以内に死亡することが明らかにされている。これとは逆に、ドナー細胞を骨髄の
活性部位に植え付けて、且つ定常状態の造血に寄与するまでには、正常な非照射
マウスに約3ログ多いドナー細胞を移植しなければならない(Ramshawら、Blood
86:924〜929、1995)。
【0066】 そこで、放射線を照射したマウスを用いたモデルシステムを開発し、機能性造
血細胞が血管組織中に存在することを初めて示した。放射線を照射したマウスの
造血微小環境が、血管組織に由来する造血前駆細胞を刺激して動員することを証
明する目的で、近位の下大静脈(VC)または胸部大動脈(TA)の4 mmのセグメン
トを正常な成体ドナーマウスから回収した。単離された血管組織は、致死量の放
射線を照射した成体レシピエントマウスの腎被膜下にそのまま移植した。
【0067】 移植を行ったマウスを移植後14日目に殺し、移植片および周囲組織の組織切片
を調製した。血管移植を調べた結果、血管壁の正常な構造が大きく破壊されてい
ることが判明した。多様な細胞集団の大量の蓄積が移植片の壁内で認められた。
形態学的に不明瞭な細胞の広範囲の浸潤に加えて、血管腫に似た、壁が薄い血管
路の明瞭な発生が認められた。これとは対照的に、VCまたはTAの組織を非放射線
照射マウスの腎被膜下に移植した場合には、正常な構造が基本的に維持されてお
り、移植した血管組織の壁内に蓄積した細胞が、レシピエントに放射線を照射す
ることで特異的に誘導されることが判明した。血管組織の壁内における細胞の蓄
積および血管路の発生は、血管移植片内における細胞集団の増殖および分化と一
致していた。しかしながら、放射線を照射したレシピエントにおける宿主細胞集
団が、移植された血管組織に移動して、そこで増殖した可能性がある。
【0068】 実施例2 細胞は移植された血管移植片から移動する 血管移植片に由来する細胞が移動して分化するか否かを判定するために、βガ
ラクトシダーゼ導入遺伝子をCMVプロモーターと組み合わせて構成的に発現する
ようにしたROSA26マウスから大静脈または胸部大動脈の一部を外科的に単離した
(Zambrowiczら、Proc. Natl. Acad. Sci. 94:3789〜3794、1997)。単離した
血管組織をC57BL/6マウスの腎臓に移植した。血管移植片を含むレシピエントの
腎臓を移植から14日後に除去し、固定して切片を作製し、酵素基質であるX-gal
とインキュベートして、β-ガラクトシダーゼが存在する部分に青い沈澱を生じ
させた。
【0069】 ROSA-26のTA移植片の細胞の大部分が青色を呈したことから、これらがドナー
由来に由来することが明らかとなった。また、ドナーの細胞集団のかなりの部分
が、初期移植部位から離れた腎被膜下に移動していることが判明し、これは放射
線を照射した宿主の微小環境に由来するシグナルに対する反応と一致していた。
宿主細胞の多くがドナーの血管組織に浸潤していないことを証明するために、正
常な成体ドナーに由来する大静脈の一部を、放射線を照射したROSA26レシピエン
トの腎被膜下に移植した。これらの血管移植片はX-galと有意に反応しなかった
ことから、蓄積した細胞の起源が主にドナーにあることが確認された。ROSA26の
移植片を組織学的に評価したところ、この血管移植片内には主にドナー由来の細
胞が存在することが確認された。これらを総合すると、上記の結果は、放射線を
照射したレシピエントへの移植後に、ドナーの大静脈および胸部大動脈の両方で
ドナーに由来する細胞が増殖したことを示している。
【0070】 実施例3 血管組織移植片は、脾臓内でコロニー形成細胞を生じる 骨髄(BM)、胎児の肝臓、および末梢血(PB)を含む造血幹細胞の多様な供給
源は、放射線を照射したマウスに注入してから12〜14日後に巨視的な脾コロニー
(CFU-S)を産生する。個々のコロニーはクローン性で、1×105個のBM細胞の注
入により、一つの脾臓あたり平均5個のコロニーが生じる(TillおよびMcCulloch
、Radiat. Res. 14:213、1961;Siminovitchら、J. Cell. Comp. Physiol. 62
:327、1963を参照)。大静脈(VC)の移植片および胸部大動脈(TA)の移植片
の両方がCFU-Sを生じる可能性を確かめ、1×105個のBM細胞または100 μlの非分
画の正常PBを直接比較した。放射線を照射したレシピエントマウスのコホートに
、腎被膜下への4 mmの血管(TAまたはVC)の移植、1×105個のBM細胞の静脈内注
入、または、100 μLのPBの静脈内投与のいずれかを行った。14日目における脾
コロニーを計数したところ、由来するコロニーの平均数は、VC、TA、およびBMの
移植で同等であり、一つの脾臓につき6.1〜7.8個のコロニーが認められた(図1
)。このモデルシステムでは、VCまたはTAの移植を行ったレシピエントで14日目
にCFU-Sを発生させるために(例えば免疫不全状態にある対象に、)放射線を照
射する必要があった。
【0071】 内因性の脾コロニーが、上記の照射線量(1100 cGy)で処理した動物では生じ
ないことを確認するために、移植を行わなかった放射線照射コントロール動物の
脾臓を調べたところコロニーは検出されなかった。VC、TA、およびBMの移植とは
対照的に、100 μlのPB注入後には一つの脾臓あたり平均1.2個のコロニーしか検
出されなかった。
【0072】 正常な成人の末梢血は、少数の循環性造血幹細胞を含む(GoodmanおよびHodgs
on、Blood 19、702〜714、1962)。血管組織移植片を十分に洗浄して残存するド
ナー血液を除いたが、混入したドナーPBが本実験の14日目における脾コロニーの
重要な供給源ではないことを、本発明者らは今回直接証明した。VC移植片または
TA移植片(4 mm×0.7 mm)の内腔の血液の最大容量は1.5 μlである。この血管
移植片に存在する血液の最大量のほぼ66倍過剰量(100 μl)を注入したところ
、一つの脾臓につき1.2個のコロニーしか生じなかった。この実験から、14日目
にCFU-Sを生じる細胞の出現頻度は、移植された血管移植片の方が、正常な末梢
血の300倍を超えることがわかった。
【0073】 実施例4 血管移植片は、致死的な放射線照射に対する防御に寄与する:血管組織の一部が
十分な作用をもつ 十分な数の造血幹細胞を、致死量の放射線を照射したレシピエントマウスへ注
入すると、骨髄不全に続発する死亡が予防される。移植した血管組織が、放射線
照射に起因するマウスの死を防ぐ可能性を評価するために、VCまたはTAいずれか
の長さ4 mmの切片(面積1.88 mm2)を、致死量の放射線(3時間の間隔をおいて2
つのフラククションで1100 cGy)を照射したレシピエントの腎被膜下に移植した
。コントロールのマウスには100 μlの未分画PBを注入した。移植レシピエント
を、無菌条件下で抗生物質を含む水中に維持し、その生存率を45日間にわたって
毎日モニタリングした(図2)。100 μlのPBを移植したマウスはいずれも15〜26
日目の間に死亡した。これは、放射線誘導型の骨髄不全のタイムコースと一致す
る。放射線を照射したが移植は行わなかったマウスでも同様の結果が認められた
。これとは対照的に、血管移植レシピエントの85%が生存していた。以上の結果
は、正常な大血管(VCおよびTA)の比較的小さな外植片を移植することで生存率
が劇的に上昇し、それによって放射線誘導型の骨髄不全からマウスが保護される
ことを示している。
【0074】 実施例5 血管移植片は、放射線誘導型の骨髄不全を減弱させる 致死量の放射線を照射したマウスは主に、重度の貧血、および血小板が少ない
ことに起因する出血によって死に至る。血管組織の移植が、末梢循環中の白血球
、赤血球、および血小板に及ぼす作用を評価するために、マウスコホートに放射
線を照射後にVCまたはTAの移植片を移植した。コントロールマウスの一群には、
放射線を照射したが移植は行わなかった。指定した時点においてマウスコホート
を出血させて分析を行った。各群のマウスは、反復性の瀉血がヘモグロビン(Hb
)濃度に及ぼす影響を避けるために、一時点でのみ分析を行った。放射線を照射
したコントロールマウスの評価を18日目まで行った。これは、この時点を超えて
生存したマウスは十分な数ではなかったためである。この結果を図3に示す。Hb
濃度のアッセイを7日目に行ったところ、移植レシピエントとコントロールマウ
スの両方で同様の減少が認められた。しかし14日目までに、Hbは血管移植レシピ
エントでは6.2 g/dLであったが、コントロール群ではわずか3.4 g/dLであった。
さらに軽度の低下が、18日目まで生存した放射線照射・非移植レシピエントで認
められただけであった(Hbは約3.0 g/dLであり、このマウス系列の生存率と矛盾
しない極めて重度の貧血を意味する)。血管移植片レシピエントのHb濃度は、閾
値の3.0 g/dLの約2倍高値に維持されていた。これは、ドナー由来の赤血球の産
生と一致する。循環性の血小板を計数したところ、血小板数の同様の減少が、最
長14日目まで移植群および非移植群の双方で認められた。しかし21日目までに、
血管移植レシピエントの血小板数は14日目の値より7倍以上に上昇した。白血球
数の評価から、多数の循環細胞が、調査したすべての時点で血管移植レシピエン
トに認められることが判明した。図2に示すように、放射線を照射した非移植マ
ウスは通常、汎血球減少症の合併症のために放射線処理から21日以内に死亡した
。これとは対照的に、VCおよびTAのレシピエントの大半は生存し、移植から2か
月後の時点でもHb、血小板および白血球数は正常であった。
【0075】 実施例6 血管移植後における多系統の造血再生 放射線を照射したマウスの造血系の再生にドナー由来細胞が果たす役割を、Ly
5遺伝子座(CD45)が類遺伝子であるドナーマウスおよびレシピエントマウスを
用いてさらに調べた。Ly5.2ドナーのVCまたはTAの移植片を、放射線を照射したL
y5.1レシピエントの腎被膜下に移植した。末梢血および脾臓組織を間隔をおいて
回収し、ドナー由来細胞の出現頻度の評価を行った。フローサイトメトリーを用
いて、T細胞(CD3)、B細胞(B220)、およびミエロイド(Mac-1/Gr-1)のマー
カーを発現しているLy5.1宿主細胞およびLy5.2ドナー細胞の出現頻度を決定した
(図4参照)。
【0076】 VC移植片を移植してから早ければ21日目の時点で、レシピエントマウスの循環
中の最大67%の細胞がドナー由来のものであった(図4A)。血管移植片レシピエ
ントの脾臓について移植から4か月後に評価を行ったところ、多系統のドナー由
来の造血がルーチンに認められた(図4B〜D)。以上の結果は、血管由来のドナ
ー細胞が初期造血再生に有意に寄与し、また長期間―少なくとも4か月間―にわ
たってレシピエント動物で維持されることを示している。
【0077】 しかしながら、血管由来のドナー細胞が初期造血再生に有意に寄与する可能性
がある一方で、レシピエントの細胞も造血に役割を果たす可能性がある。そこで
、Ly5遺伝子座(CD45)が類遺伝子であるドナーおよびレシピエントのマウスを
用いて付加的な移植を行った。Ly5.2ドナーのVCまたはTAの移植片を、放射線を
照射したLy5.1レシピエントの腎被膜下に移植した。次に末梢血中に存在するLy5
.2細胞の割合(%)を評価した(図5参照)。その結果、レシピエント細胞も造血
にかかわることが明らかとなった。この結果からはまた、ドナー細胞のレベルが
時間の経過とともに低下することも判明した。これは宿主の回復度が極めて高い
ことを意味し、且つ血管移植片の構成成分が宿主幹細胞に対して高い保護効果を
もつことを意味する。このような保護効果にはサイトカインがかかわる可能性が
ある。高線量の放射線の照射は宿主幹細胞をさらに損なう可能性があるため、時
間の経過とともにドナー細胞が支配的になることが確実となる可能性があること
に注意する必要がある。
【0078】 実施例7 他の組織における血管由来の造血 上述の実験は、マウスの循環系にある最も大きな血管を用いて行った。造血能
をもつ細胞が、成体マウスの分化した組織中でみられるか否かを決定するために
、正常なROSA26成体の心臓および肺の外植片を放射線照射マウスに移植した。分
化した組織をサンプリングするには、外科的な除去またはパンチ生検を含む、血
管を新生した組織をサンプリングする任意の方法を用いることができる。簡単な
例では、組織をドナー動物から切除し、心臓または肺の一部(およそ10 mg)を
用いた。移植から14日後にレシピエントマウスを殺し、心臓組織移植片または肺
組織移植片の横断面の切片を調製した。
【0079】 心臓組織または肺組織を腹膜腔または腎被膜下へ移植することで、造血の発生
が促された。このことから、血管組織の導入には複数の移植部位を用いることが
できる。
【0080】 移植した外植片から調製した組織検査用の切片には、癒着して大きな血管路を
形成するとみられる壁の薄い血管が、心臓組織の外植片中にルーチンに観察され
た。胸部大動脈の移植(実施例2参照)と同様に、ROSA26の肺組織を腎被膜へ移
植した後に、有意な量の移動性ドナー細胞集団が観察された。移植された肺組織
の組織検査による評価から、ROSA26のドナー細胞の染色が、宿主細胞と明瞭に区
別できることが示された。注目すべきことに、わずか10 mgのドナー肺組織、ま
たは1匹のドナーマウスの全心臓組織の50%に相当する組織には、致死量の放射線
照射に対する保護効果が認められた。この結果は、高度の血管新生を伴う臓器を
、放射線を照射した微小環境に移植して造血幹細胞の分化を刺激および補助する
と、多くのこれらの臓器から造血細胞が生じることを示している。
【0081】 実施例8 ドナー血管組織外植片内における初期増殖細胞の局在化 血管組織の前駆細胞集団を同定して精製するために、移植後の血管移植片内の
細胞増殖を調べた。近位の下大静脈(VC)または胸部大動脈(TA)を、放射線照
射(1100 cGy)マウスまたは非照射マウスの腎被膜下に移植した。レシピエント
をブロモデオキシウリジン(BrdU)で処理し、血管移植片を含む腎臓を除去して
固定し、BrdUの取り込みを免疫化学的方法で評価した。移植から早くて48時間後
に、TAおよびVAの移植片を移植した両方の放射線照射レシピエントの内皮層にBr
dU陽性の増殖性細胞が同定された。これとは対照的に、放射線を照射していない
マウスへの移植後にBrdU標識細胞は同定されなかった。BrdU抗体の非特異的な結
合が、放射線照射動物への移植によって誘導されたものではないことを確認する
ために、組織切片をDAB基質またはVIP基質とインキュベートした。BrdUに対する
一次抗体の非存在下では、陽性細胞は認められなかった。
【0082】 上記の結果は、放射線照射動物へのドナーの血管組織の移植が、移植血管壁内
膜に存在する細胞集団の増殖を48時間までに誘導することを示している。さらに
、放射線非照射マウスの血管移植片の内膜にBrdU陽性細胞が存在しないことは、
これらの細胞集団の増殖が、免疫不全状態にあるレシピエントに特異的なシグナ
ルに依存することを意味している。
【0083】 したがってBrdUは、移植された血管移植片中で解剖学的に明瞭な増殖細胞集団
を容易に検出するために使用することができる。また骨髄、脾臓、肝臓、および
胸腺を対象に、血管組織の移植から早くて24時間後に増殖を開始するドナー由来
の細胞を調べることができる。BrdUで同定された細胞が前駆細胞であることを確
認するためには、細胞を(HO33342を用いて)精製する。HO33342はDNAを染色す
る非破壊性色素である(Flemingら、J Cell. Biol. 122:897、1993)。この色
素は、(細胞周期のG0/G1期にある細胞と比較して)活発に循環している細胞を
ソートするためにFACSで使用される。ソートされた細胞を次にレシピエント動物
に移植し、その発達能を調べることができる。
【0084】 これらをすべて考え合わせると、上述した検討から、造血前駆細胞/幹細胞が
、正常な成体動物の血管組織に存在することがわかる。
【0085】 実施例9 移植された血管組織に含まれるドナー細胞上における造血細胞および血管マーカ
ーの発現の評価 過去数年間に、複数の細胞表面マーカーがHSCの濃縮に有用であることが判明
している。このようなマーカーと、静止状態にある非増殖性細胞(ローダミン低
、ヘキスト(Hoeschst)低)を示す細胞内マーカーとを組み合わせて用いることで
、わずか5個の細胞を注入することで末梢血に含まれる成熟細胞の50%以上を連続
的に生成することが報告されている(例えば、MorrisonおよびWeissman、Immuni
ty 1:661〜673、1994を参照)。血管移植片に由来する候補幹細胞集団を同定す
るためには、移植された血管壁内で生じる細胞の表現型を分析する。ドナー細胞
の細胞周期の状態は、放射線を照射した宿主の微小環境に対する最初期増殖反応
を示す細胞集団の局在を決定するためのガイドとして用いられる。免疫組織化学
的手法を用いて、Sca-1、c-kit、およびAA.41を含む詳細に明らかにされた複数
のHSCマーカーを発現する移植血管組織内における細胞の局在を判定する。Flk-1
, TIE、TEK、およびTALを含む内皮前駆細胞表面マーカーは、移植血管組織を対
象に同様にアッセイすることができる。特定のマーカーが、免疫化学的手法で少
なくとも数個の細胞で検出されない場合は、インサイチューハイブリダイゼーシ
ョン試験を行ってこの結果を確認する。またROSA26ドナーマウスを用いて、これ
らの表現型を元に定義された細胞集団が血管移植片ドナーに由来するものであっ
て、移植血管組織中に後から移動してきた宿主細胞集団ではないことを示す。
【0086】 免疫化学的手法により、移植された血管移植片内における、表現型から定義さ
れた細胞の組織特異的な局在が提供される。この手法を制限する主な点は、個々
の細胞上にある二種以上のマーカーの共発現を調べることが難しい点である。こ
の制限を克服するために、フローサイトメトリーを用いて、個々のドナー細胞上
に存在する最大4種の細胞表面マーカーの同時発現を調べる。血管移植片から細
胞懸濁液を調製し、上述の抗体とインキュベートして、フローサイトメトリーに
よる分析を行うことで、造血細胞および血管細胞の表面マーカー発現の組み合わ
せの頻度を正確に定量することができる(下記参照、実施例11)。表現型を元に
定義された細胞がドナー由来であることを確認するために、対象細胞集団をFACS
バンテージ(Vantage)細胞選別装置でソートする。ソートされた産物の精度は
、ソート後の細胞を再分析して評価する。サイトスピン(Cytospin)による調製
物を作製し、表現型を元に定義された細胞をX-galとインキュベートして、ROSA2
6ドナーの細胞マーカーの有無を示す。このような混合型のアプローチにより、
血管組織移植片におけるHSCマーカー、血管前駆体マーカー、または両者の組み
合わせを発現する細胞集団が同定される。正常な非移植VCおよびTAも、表現型を
元に定義された上述の前駆細胞の有無について評価する。
【0087】 実施例10 血管に由来する候補造血前駆細胞/幹細胞の機能分析 既に概要を述べた(実施例9)表現型分析により、血管前駆細胞および造血前
駆細胞の両方と結合する細胞表面マーカーを発現する細胞集団が同定される。次
にこれらの細胞マーカーの発現を利用して、移植血管組織中で生じる造血前駆細
胞の候補を同定・単離する。細胞表面マーカーの特定の組み合わせが、造血前駆
細胞を同定する際に有用であるか否かを決定する際は、機能性ドナーサブ細胞集
団がこのアプローチで除外されないことを確認することが重要である。したがっ
て、ドナー由来の細胞を血管組織移植片の壁から単離し、個々の細胞表面マーカ
ーの機能について独立に評価を行う。
【0088】 レシピエントマウスへの致死量の放射線照射を防ぐために必要な全ドナー由来
血管細胞の最小数は、限界希釈分析で決定する。特定の造血幹細胞マーカー(例
えばSca-1)の細胞選別を行って、Sca-1+細胞集団およびSca-1-細胞集団を精製
する。次に各細胞集団の比率を決めて、放射線を照射したレシピエントマウスに
注入する。例えば、1×106個の全血管細胞が、放射線防護に必要であると判断さ
れる場合、または試験対象の血管細胞集団に含まれるSca-1+細胞の出現頻度が10
%の場合、細胞選別後に、マウスの一方の群に1×105個のSca-1+細胞を移植し、
もう一方のマウスコホートに9×105個のSca-1-細胞を移植する。造血前駆細胞活
性を有する大半の細胞にSca-1が認められると仮定すると、1×105個のSca-1+
胞を移植したすべてのマウスが生存する可能性がある。
【0089】 しかしながら、Sca-1の発現が上記前駆細胞で認められない場合は、放射線防
護能は、Sca-1-細胞集団に制限されると思われる。1×105個のSca-1+細胞および
1×105個のSca-1-細胞の両方のレシピエントが生存することは、Sca-1がこの系
におけるHSC活性を示す有用なマーカーではないことを意味する。このアプロー
チを用い、HSC活性に関して、c-kit、AA.41、TIE1、TEK、Flk-1、およびTALの有
用性を検証することができる。これらのマーカーを組み合わせることで、これら
の細胞集団を定義づけ、さらに評価することができる。
【0090】 このアプローチでは、HSC活性のアッセイ法として放射線防護を利用する。放
射線防護に関する能力はもたないが、多系列造血アッセイ法で読み出される多分
化能細胞が分析から除外されないことを確認するために、放射線を照射したレシ
ピエントマウスに限界量の標識付きの(宿主の)骨髄を移植して、放射線防護(
1匹のマウスあたり1×105個の細胞)および血管ドナー細胞の適性を確認する。
このようなレシピエントマウスの血液、骨髄、および脾臓を対象に、移植後1か
月と6か月の時点にドナー細胞の有無の評価を行う。このような競合的再増殖ア
ッセイ法により、放射線防護の提供に関する要求事項とは無関係に、放射線照射
宿主の再増殖能をもつ血管由来細胞の同定が可能となる。
【0091】 実施例11 移植血管組織に由来する幹細胞のさらなる特定解析および単離、ならびにこの幹
細胞の用途 血管組織を上述の手順で対象に移植する。一つの態様においては、ヒトの血管
組織(例えば、伏在静脈の一部、内胸動脈の一部、または生検で採取された肺組
織の一部)を、免疫不全状態のマウス(例えばSCIDマウス)に移植する。
【0092】 次に、様々な手法を用いて、限定された系列の細胞を最初に除去することで細
胞を分ける(米国特許第5,914,108号を参照)。モノクローナル抗体は特に、特
定の細胞系列に関連するマーカー(表面の膜タンパク質)を同定する際に有用で
あり(「lin」抗体と呼ばれ、同マーカーを発現しない細胞は「lin-」細胞と呼
ばれる)および/または分化のステージに関連するマーカーを同定する際に有用
である。この抗体を固相支持体に結合させて粗分離を行うことができる。このよ
うな分離方法を用いることで、採取する分画の生存能を最大に維持することがで
きると思われる。「比較的粗である」分離とはすなわち、マーカーを有する全細
胞の最大10%、通常は5%以下、好ましくは約1%以下の分離を意味し、保持される
細胞集団とともに留まる場合があり、有効性が異なる様々な方法を使用すること
ができる。用いられる個々の方法は、分離の効率、方法に固有の細胞毒性、実施
の簡便性およびスピード、ならびに高性能装置および/または技術スキルの必要
性によって変わる。
【0093】 分離手順としては、抗体を被覆した磁気ビーズを用いる磁気を利用した分離方
法、アフィニティークロマトグラフィー、モノクローナル抗体に結合させるかま
たはモノクローナル抗体とともに使用する細胞毒性薬(例えば補体および細胞毒
)、および固体マトリックス(例えばプレートまたは他の簡便な手法)に結合さ
せた抗体を用いる「パンニング法(panning)」などがある。正確な分離を行う
方法には、性能の程度が様々な(例えば複数のカラーチャンネル、ローアングル
および鈍角の光散乱検出チャンネル、インピーダンスチャンネルを備えた)蛍光
活性化細胞選別装置が含まれる。
【0094】 免疫不全状態の宿主に移植されたヒト血管組織で使用される一つの手順は、脾
臓または骨髄から低温(通常約4℃)で、特定の細胞タイプ(例えばT細胞の決定
因子であるCD3およびCD8)に特異的な飽和レベルの抗体を用いて回収した細胞を
インキュベートすることである。これらの細胞は次にウシ胎児血清(FCS)クッ
ションで洗浄する。この細胞を緩衝液に懸濁し、抗体または抗体-抗原複合体に
特異的な種々のタンパク質を利用し、特定の決定因子に対する抗体を用いて分離
する。
【0095】 好都合なことに上記抗体は、直接分離を可能とする磁気ビーズ、支持体に結合
させたアビジンまたはストレプトアビジンから除去することができるビオチン、
特定の細胞タイプを容易に分離可能とする蛍光活性化細胞選別装置で使用可能な
蛍光色素などのマーカーと結合することができる。残りの細胞の生存に対して過
度に有害ではない任意の方法を用いることができる。
【0096】 通常少なくとも約50%、または少なくとも約70%にまで成熟細胞マーカーを欠く
細胞を実質的に濃縮した後に、蛍光活性化細胞選別装置(FACS)、または特異性
の高い他の方法で細胞を分離する。FACSにはマルチカラー分析を用いることがで
きる。細胞は、特定抗原の染色レベルに基づいて分離される。
【0097】 一つの態様において、最初の分離は、少なくとも約1×1010〜3×1010個の細胞
から始め、種々の限定された系統(B細胞、T細胞、マクロファージなど)に対す
る抗体を使用する。このような抗体は、それぞれ種々の蛍光色素に結合する。マ
ルチカラー分析に使用できる蛍光色素には、例えばフィコエリトリンおよびアロ
フィコシアニンなどのフィコビリンタンパク質(phycobiliprotein)、フルオレ
セイン、テキサスレッドを含む。各系統を個別のステップで分離することができ
る一方で、区別した系統を同時に分離することもできる。得られる細胞数は通常
、元の細胞の約1%より少なく、通常は約0.5%より少なく、またさらに低くて0.2%
またはそれ以下の場合もありうる。
【0098】 細胞はまた、Thyの発現をポジティブ選択(Thy+)することで、さらに分離す
ることができる。この場合、細胞は通常、元の細胞の0.5%より少なくなり、通常
0.01〜0.5%の範囲内にある。細胞は、死んだ細胞に結合する色素(ヨウ化プロピ
ジウム、LDS)を用いることで、死んだ細胞と分けて選択することができる。一
つの態様においては、細胞は2%のウシ胎児血清を含む溶媒中に回収される。アフ
ィニティーカラムなどを用いた、正確な分離を可能とするポジティブ選択法を用
いることもできる。この方法では、残存量を非幹細胞集団の約20%未満、好まし
くは約5%未満に除去することが可能である。
【0099】 一つの態様においては、既知の幹細胞抗原を発現する細胞も選択される。特定
の非制限的な例として、ヒト血管組織に由来する細胞ではCD34を発現するものが
選択される。
【0100】 別の態様においては、光散乱特性ならびに多様な細胞表面抗原の発現を元に細
胞が選択される。特定の非制限的な例では、CD34+ Lin-およびCD34+ Lin- Thy-1- は、FACS分析で低い側方散乱プロフィルおよび低い前方散乱プロフィルを示す
。サイトスピンによる調製物は、幹細胞が成熟したリンパ細胞と成熟した顆粒球
の中間のサイズを有することを示す。したがって対象となる細胞は、側方および
前方の散乱プロフィルを元に単離される。
【0101】 一般に、特定の分離順序は重要ではない。しかしながら一つの態様では、最初
に細胞を粗分離で分離した後に精細に分離し、系列が決定した細胞に関連するマ
ーカーについてネガティブ選択を行う。幹細胞に関連したマーカーのポジティブ
選択を利用する場合は、ネガティブ選択と同時に行うか、またはネガティブ選択
の後に行う。この分離に続いて、細胞構成成分が多系列能をもつか否か、および
強化された自己再生能をもつか否かを判定するアッセイ法を行う。
【0102】 次に、単離された細胞を対象に、適切な培養条件下でミエロイド細胞およびリ
ンパ細胞を産生するか否かを判定する。一つの態様においては、ミエロイド細胞
産生用のヒドロコルチゾンを含む培養液(デキスタータイプの培養液)が使用さ
れる。別の態様においては、ヒドロコルチゾンを含まないBリンパ球用の培養液
(Whitlock-Witteタイプの培養液)が使用される。個々の培養液では、ストロー
マ細胞(例えば、マウスまたはヒトのストローマ細胞)が供給される。一つの態
様において、ストローマ細胞はマウスまたはヒトの細胞であり、種々の株(例え
ばAC3またはAC6)に由来する。またはストローマ細胞は、ヒトの幹細胞などを維
持する能力を選択することで、マウスまたはヒトの胎児骨髄に由来する。細胞培
養に使用される培地は、IMDM(イスコフ改変ダルベッコ培地)、IMDMとRPMIの50
:50混合液などであり、一般に塩類、アミノ酸、ビタミン類、5×10-5 Mの2-ME
(βメルカプトエタノール)、ストレプトマイシン/ペニシリン、および10%ウシ
胎児血清で構成された、規定の濃縮培地(enriched medium)が適している。培
地は時間が経過したら交換するが、その頻度は通常1週間に少なくとも1〜2回で
ある。一つの手法では、細胞を、ヒドロコルチゾンを含む培養液からヒドロコル
チゾンを含まない別の培養液に移して、多様な培養液における種々の系統の細胞
の産生を示すことで、幹細胞の存在とそれが維持されていることが支持される。
このようにして、ミエロイド細胞およびB細胞の両方の産生が証明される。
【0103】 ミエロイドおよびB細胞になる可能性を同定する際には、対象集団を、ヒドロ
コルチゾン含有培養液へまず導入して、この培地で6週間成長させる。一つの態
様において使用する培地には、10% FCS、10% ウマ血清、ストレプトマイシン/ペ
ニシリン、グルタミン、および5×10:1 Mヒドロコルチゾンを含むRPMI 1640とI
MDMの50:50混合液が含まれる。6週間の期間中に前駆細胞がない場合は、成熟細
胞はすべて死滅する。しかしながら、6週間後の時点でもミエロイド細胞が観察
される場合は、ミエロイド細胞への連続的な分化をもたらす前駆細胞が存在する
。この時点で、ヒドロコルチゾンを含まない培地を交換すると、B細胞の成長が
選択される。3〜4週間後にB細胞の存在をFACS分析で証明する。B細胞が存在する
ことが証明されたら、ミエロイド細胞産生能力をもつ前駆細胞はB細胞産生能力
ももつ。
【0104】 T細胞への分化を証明するために、胎児胸腺(例えばマウス胎児胸腺、中絶組
織から回収したヒト胎児胸腺、ブタ、サル、ヒツジ、ウシ、ラット、またはウサ
ギの胎児胸腺)を単離し、胎児胸腺のリンパ球集団を枯渇させる目的で、胸腺を
4〜7日間25℃で培養する。次に試験対象の細胞を胸腺組織に微量注入する。この
際、注入対象集団のHLAは胸腺細胞のHLAと適合しない。次に胸腺組織を、欧州特
許出願公開第0 322 240号の記載通りに、scid/scidマウスの特に腎被膜内に移植
してもよい。
【0105】 細胞が赤血球に分化可能か否かを判定するためには、従来の方法を用いて、BF
U-Eユニット(例えばメチルセルロース培養)を同定する(Metcalf(1977):Re
cent Results in Cancer Research 61. Springer-Verlag、Berlin、pp 1〜227)
。この手法で、細胞が赤芽球系列に分化する能力をもつことを示すことができる
【0106】 幹細胞を単離したら、骨髄、胎児胸腺、または胎児肝臓から採取可能な間質細
胞などのストローマ細胞由来の馴化培地(conditioned medium)で生育させること
で増殖させ、このストローマ細胞とともに培養するか、または幹細胞の増殖にか
かわる維持因子群を含む培地中で培養することで、幹細胞の維持に関連した成長
因子の分泌を示すことができる。ストローマ細胞は同種または異種のいずれであ
ってもよい。共培養で用いる前に、望ましくない細胞を除去するための適切なモ
ノクローナル抗体(例えば抗体-毒素複合体(antibody-toxin conjugate)、抗
体、および補体など)を用いて、混合したストローマ細胞の調製物が造血細胞を
含まないようにすることができる。あるいは、クローン化したストローマ細胞系
列を使用することができる。この場合、ストローマ系列は同種または異種のどち
らでもよい。
【0107】 これらの方法を用いて得られた幹細胞を、種々の治療上の処置に使用すること
ができる。一つの態様において、細胞は放射線照射を受けた宿主、および/また
は化学療法を受けた宿主を十分回復させるために使用される。幹細胞は、エリス
ロポイエチン、GM-CSF、G-CSF、またはM-CSFなどのコロニー刺激因子、例えばIL
-1、-2、-3、-4、-5、-6、-7、-8などのインターロイキン、白血病抑制因子(Le
ukemia Inhibitory Factory: LIF)、スチール(Steel)因子(SLF)ほか多様な
因子を用いて、一種または複数の選択された系列に成熟させ、増殖させ、分化さ
せることで、特定系列の細胞の供給源として使用することもできる。あるいは、
特定系列に方向づけられる幹細胞と関連したストローマ細胞、またはその増殖、
成熟、および分化と関連したストローマ細胞を使用することができる。幹細胞は
また、造血細胞の分化および成熟に関連する因子群の単離および評価に使用する
こともできる。したがって幹細胞は、馴化培地などの培地の活性を決定するアッ
セイ法、細胞の成長を活性化する液体を評価するアッセイ法のほか、特定系列へ
の限定との関連性を調べるために使用することができる。
【0108】 幹細胞は、遺伝性疾患の治療に使用することができる。造血細胞が関連する遺
伝性疾患は、自己または同種の幹細胞の遺伝子を修復して遺伝子の欠損を正すこ
とで治療することができる。例えば、βサラセミア、鎌状赤血球貧血、アデノシ
ンデアミナーゼ欠損、リコンビナーゼ欠損、リコンビナーゼ調節遺伝子欠損など
の疾患は、相同組換えまたはランダムな組換えにより野生型遺伝子を幹細胞に導
入して修正することができる。同種の幹細胞の場合、遺伝子欠損のない正常な細
胞を治療に使用することができる。遺伝子治療の他の適用には、例えば薬剤耐性
遺伝子を導入することで、正常な幹細胞に利点を付与して選択圧を加えるという
ものがある。このような遺伝子の例として多剤耐性遺伝子がある。造血細胞に関
連する以外の疾患も治療することができる。この場合の疾患は、ホルモン、酵素
、インターフェロン、因子などの特定の分泌型産物の欠損に関連する。適切な調
節開始領域を用いることで、欠損型タンパク質を誘導して、タンパク質の産生を
天然の産生と同等に産生させることができる。この場合、対象タンパク質を通常
産生する細胞とは異なる細胞で産生させることも可能である。また、リボザイム
、アンチセンス、または他のメッセージを挿入して、特定の遺伝子産物または、
特に血管リンパ指向性疾患などに対する感受性を阻害することも可能である。
【0109】 あるいは、T細胞レパートリーからT細胞受容体の特定の可変領域を除去するた
めに、相同組換え、または発現防止用のアンチセンスもしくはリボザイム配列を
使用して特定のT細胞受容体の発現を抑制することができる。HIV、HTLV-Iおよび
IIなどの血液向性(hematotropic)の病原体の治療には、幹細胞を遺伝的に修正
して、幹細胞または幹細胞から分化した細胞中での病原体の増殖を妨げるアンチ
センス配列やリボザイムを導入する。
【0110】 哺乳類細胞における組換えの方法は、「分子クローニング:実験マニュアル(
Molecular Cloning、A Laboratory Manual)」(1989)Sambrook、Fritschおよ
びManiatis、Cold Spring Harbor、N.Y.に記載されている。
【0111】 モデルシステム、または本発明の方法を用いて得られた幹細胞は、液体窒素の
温度で凍結して長期の保存後に解凍して再利用することができる。このような細
胞は通常、10% DMSO、70%自己血漿(2500 radの放射線を照射したもの)、20% T
c199(組織培養用培地)中に保存する。細胞は、液体窒素中で-180℃までプログ
ラム可能な細胞フリーザー内で凍結させる。解凍後は、幹細胞の増殖および分化
にかかわる成長因子またはストローマ細胞を用いて細胞を膨張させる。
【0112】 造血幹細胞―自己のものでも同種のものでもよい―を、毒性の強い療法も含む
種々の疾患の治療に使用することができる。例えば新形成(neoplasia)の治療
では、骨髄を患者自身(自己)から採取するか、または「適合した」ドナー(「
同種」)および単離後に最適な状態で凍結幹細胞から採取することができる。患
者の骨髄は、放射線照射および/または化学療法を行って部分的または全体的に
除去することができる。治療が完了したら幹細胞を解凍し、適切であれば、任意
の便宜な方法―例えば生理学的に許容される溶媒の血管内投与―により患者に投
与する。その後患者に移植の形跡が現れないかモニタリングを続ける。
【0113】 幹細胞は、幹細胞が膨張可能な培地中で成長させることができる。このように
して、毒性の強い療法中に幹細胞を繰り返し投与することができる。また、膨張
した幹細胞は、培地に含まれる成長因子を検討するために使用することができる
ほか、外因性の核酸を幹細胞に導入する方法を検討するために使用することがで
きる。
【0114】 実施例12 成長因子を単離するために血管組織の移植を使用する 免疫不全状態にある対象への血管組織の移植は、造血細胞の成長、分化および
成熟に関連する因子の単離および評価に使用することもできる。したがって移植
片は、レシピエントから回収した後に培地中に保持し、馴化培地などの培地の活
性を判定して溶液の成長因子の活性を評価するアッセイ法、系列の限定との関与
の調査などに使用する。対象の移植片は、造血細胞の自己再生に関連する因子群
を単離して評価するために用いる支持細胞の同定に使用することもできる。した
がって本発明のモデルシステムは、オートクリンまたはパラクリンの調節シグナ
ルを判定し、外因性または内因性のタンパク質供給源のいずれかに由来する成長
因子に対する反応を評価するアッセイ法に使用することができるほか、馴化培地
などの培地の活性を決定するアッセイ法や、液体の細胞成長活性を評価するアッ
セイ法に使用したり、特定系列への限定化の関与の調査などに使用することがで
きる。
【0115】 移植された血管組織は、造血幹細胞の移動および複製を可能にする因子を産生
したり、および/または、そのような因子に反応したりする。このような因子は
、生物学的溶液(例えば血液)を分離または(例えばクロマトグラフィーによっ
て)分画することで、または生検試料をサンプリングおよび抽出することでレシ
ピエントから単離した生物試料から単離することができる。あるいは、組織試料
(例えば移植から14日後の移植片)をレシピエントから回収してインビトロで培
養し、馴化培地を回収する。一つの態様においては、馴化培地または生物試料を
分画する。所望の因子を含む活性分画を、このような分画の存在下または非存在
下における幹細胞の成長および分化を測定して、またあるいは、液体の比較分析
を行って同定する。
【0116】 したがって、さらに別の態様において本発明は、幹細胞集団の成長を容易にす
ること、および/または促進することと、および/または、致死量の放射線照射に
よる影響から幹細胞を保護することを特徴とする幹細胞成長因子を提供する。こ
の因子にはさらに、血管移植片またはその抽出物(血管移植片に由来するインビ
トロ培養液の上清など)から単離されるという特徴がある。したがってこのよう
に単離された因子は、好ましくは純粋な状態であるか、または実質的に純粋な状
態―例えば少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、最も好ましくは少なくと
も99%の純度―である。
【0117】 正常な幹細胞を致死量の放射線照射から防護する因子には、臨床上の種々の適
用がある(例えば正常な幹細胞を保護しながら異常な細胞を除去する方法による
、致死量の放射線を浴びたヒトの骨髄レスキュー、または血液悪性疾患患者の処
置)。
【0118】 血管組織を使用して対象の造血を増強する原理を説明および記述したが、本発
明の技術は、このような原理から逸脱することなく、その配置および細部を改変
することができる。多くの態様が本発明の原理に適用されうることから、説明さ
れた態様が本発明の単なる例であって、本発明の範囲を制限するものではないと
解釈される。むしろ本発明の範囲は特許請求の範囲に準じる。したがって発明者
は、これらの特許請求の範囲および精神に含まれるすべての事項を本発明として
請求する。
【図面の簡単な説明】
【図1】 移植された血管組織の脾コロニー形成活性を示す棒グラフである
。放射線を照射したレシピエントに、100 μLの未処理PB、1×105個のBM細胞、4
mmの胸部大動脈(TA)もしくは大静脈(VC)の移植片、または放射線照射処理
をしていない4 mmのVCセグメントを移植した。移植後14日目に脾臓を回収し、脾
臓におけるCFU-S数を決定した。各処理群の平均と標準誤差を示す。放射線照射
を行わなかった移植レシピエントにコロニーは認められなかった。PB=末梢血。
BM=骨髄。TA=胸部大動脈。VC=大静脈。No XRT=非照射レシピエントにおける
TAまたはVCの移植。
【図2】 放射線防護アッセイ法で検討した移植マウスの生存率(%)を表
すグラフである。放射線を照射したレシピエントに、大動脈または大静脈(白丸
)の4 mmのセグメントを移植した。コントロールのマウスには100 μLの未処理P
Bを注入した(黒四角)。経時的な生存率(%)を示す。
【図3】 末梢血分析の結果を示すグラフである。放射線を照射したレシピ
エントに、胸部大動脈または大静脈の4 mmのセグメントを移植した。コントロー
ルのマウスには放射線照射のみを行った。レシピエントの末梢血を、7、14、21
、56日目に調べた。連続瀉血が及ぼす影響を除くために、各群のマウスは上記の
一時点でのみ調べた。パネルAは赤血球(ヘモグロビン)の検出を示す。パネルB
は白血球(WBC)の検出を示す。パネルCは血小板の検出を示す。(各群の平均±
標準誤差を示す)
【図4】 蛍光活性化細胞選別装置(FACS)で得られたデータをプロットし
たものである。プロットは、ドナーに由来する細胞が移植レシピエントで検出さ
れたことを示す。パネルAは、移植後3週間目における大静脈レシピエントのPB中
に検出されたドナー細胞(Ly5.2)の割合(%)を示す。パネルB〜Dは、移植後4
か月目における大動脈移植レシピエントの脾臓に含まれる多系列の再生を示す。
B220(パネルB)、CD3(T細胞のマーカー、パネルC)、またはMac-1/Gr-1(マク
ロファージ/顆粒球のマーカー、パネルD)を発現するドナー細胞の割合(%)を
示す。
【図5】 末梢血に含まれるドナー由来の細胞の割合(%)を示すグラフで
ある。放射線を照射した類遺伝子性のレシピエントに、4 mmの胸部大動脈(TA)
、大静脈(VC)、または腹部大動脈(AA)の移植片を腎被膜下に移植し、ドナー
細胞の有無を指定時点で分析した。Ly5.2(ドナー)細胞の割合(%)を示す。デ
ータは平均±標準誤差で示す。各群あたり5〜11匹の血管レシピエントの分析を
行った。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) A61K 45/00 A61P 7/06 4H045 A61P 7/06 C07K 14/475 C07K 14/475 G01N 33/15 Z C12N 5/06 33/50 Z G01N 33/15 C12N 5/00 E 33/50 A61K 37/24 (81)指定国 EP(AT,BE,CH,CY, DE,DK,ES,FI,FR,GB,GR,IE,I T,LU,MC,NL,PT,SE),OA(BF,BJ ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GW,ML, MR,NE,SN,TD,TG),AP(GH,GM,K E,LS,MW,MZ,SD,SL,SZ,TZ,UG ,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,MD, RU,TJ,TM),AE,AG,AL,AM,AT, AU,AZ,BA,BB,BG,BR,BY,BZ,C A,CH,CN,CR,CU,CZ,DE,DK,DM ,DZ,EE,ES,FI,GB,GD,GE,GH, GM,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,K E,KG,KP,KR,KZ,LC,LK,LR,LS ,LT,LU,LV,MA,MD,MG,MK,MN, MW,MX,MZ,NO,NZ,PL,PT,RO,R U,SD,SE,SG,SI,SK,SL,TJ,TM ,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VN, YU,ZA,ZW Fターム(参考) 2G045 AA04 AA29 CA02 CA11 CA24 CB01 CB17 CB26 DA51 FA37 4B065 AA90X BA22 BD39 CA44 4C084 AA02 AA06 AA17 BA44 DB52 MA01 NA14 ZA512 ZA552 ZB212 4C087 AA01 AA02 BB33 BB34 CA04 CA50 MA01 NA14 ZA51 ZA55 ZB21 4C097 AA15 BB01 DD15 4H045 AA20 AA30 BA10 CA40 DA01 EA20 FA71

Claims (46)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 血管組織の少なくとも治療的に有効な部分を対象に移植する
    段階を含み、該血管組織が造血を増強する、造血を増強する方法。
  2. 【請求項2】 単離された血管組織が自己血管組織である、請求項1記載の
    方法。
  3. 【請求項3】 単離された血管組織が異種血管組織である、請求項1記載の
    方法。
  4. 【請求項4】 対象の造血が欠損している、請求項1記載の方法。
  5. 【請求項5】 対象の造血が、遺伝的な免疫不全、放射線照射、化学療法、
    または好中球減少のために欠損している、請求項1記載の方法。
  6. 【請求項6】 単離された血管組織の一部が動脈または静脈の一部である、
    請求項1記載の方法。
  7. 【請求項7】 単離された血管組織の一部が大静脈、胸部大動脈、小動脈、
    小静脈、または微小血管循環の毛細血管の一部である、請求項1記載の方法。
  8. 【請求項8】 造血が、移植された血管組織により提供される細胞または因
    子によって増強される、請求項1記載の方法。
  9. 【請求項9】 対象が哺乳類の対象である、請求項1記載の方法。
  10. 【請求項10】 対象がマウス、ヒト、サル、ウシ、ブタ、ヒツジ、ラット
    、またはウサギである、請求項9記載の方法。
  11. 【請求項11】 以下の段階を含む、造血に影響を及ぼす薬剤を検出する方
    法: 単離された血管組織の一部を対象に移植する段階であって、単離された血管組
    織の一部が造血を十分増強する段階; 血管組織を薬剤で処理する段階; 該対象の造血を検出する段階;および 該対象の造血をコントロール対象の造血と比較する段階であって、対象の造血
    をコントロールと比較したときに認められる変化が、該薬剤が造血に影響を及ぼ
    すものであることを示す段階。
  12. 【請求項12】 造血に認められる変化が造血の低下であって、且つ薬剤が
    造血に干渉する、請求項11記載の方法。
  13. 【請求項13】 造血に認められる変化が造血の上昇であって、且つ薬剤が
    造血を増大する、請求項11記載の方法。
  14. 【請求項14】 血管組織の処理が対象への血管組織移植前に行われる、請
    求項11記載の方法。
  15. 【請求項15】 血管組織の処理が対象への血管移植後に行われる、請求項
    11記載の方法。
  16. 【請求項16】 以下の段階を含む、造血成長因子を単離する方法: 血管組織の一部を対象に移植する段階であって、該血管組織の一部が該対象の
    造血を増強する段階;および 成長因子を該対象から単離する段階であって、該成長因子が造血成長因子であ
    る段階。
  17. 【請求項17】 対象が哺乳類である、請求項16記載の方法。
  18. 【請求項18】 血管組織が動脈または静脈の一部である、請求項16記載の
    方法。
  19. 【請求項19】 血管組織が大静脈、胸部大動脈、小動脈、小静脈、毛細血
    管、または微小血管循環の毛細血管の一部である、請求項16記載の方法。
  20. 【請求項20】 以下の段階を含む、造血幹細胞を単離する方法: 血管組織の一部を対象に移植する段階、 造血幹細胞を対象から単離する段階。
  21. 【請求項21】 造血を増強する薬学的組成物であって、薬学的に許容され
    る担体中に治療的有効量の単離血管組織を含む薬学的組成物。
  22. 【請求項22】 血管組織が、大静脈、胸部大動脈、胸部大静脈、小動脈、
    小静脈、または微小血管循環の毛細血管の一部である、請求項21記載の組成物。
  23. 【請求項23】 単離された血管組織の一部を溶媒中に含む容器を含む担体
    を含む、造血を増強するキット。
  24. 【請求項24】 単離された血管組織の一部を溶媒中に含む容器を含む、造
    血を増強するキット。
  25. 【請求項25】 指示書をさらに含む請求項24記載のキット。
  26. 【請求項26】 造血を増強するために用いられる、単離された血管。
  27. 【請求項27】 以下の段階を含む、医薬品を製造する方法: 造血を増強するために使用する血管組織の一部を回収する段階。
  28. 【請求項28】 血管組織の単離された一部を移植される造血を欠く非ヒト
    動物を含み、該血管組織の一部が造血を十分増強する、造血に影響を及ぼす薬剤
    を検討するための非ヒト動物モデル。
  29. 【請求項29】 非ヒト動物が放射線照射の結果として造血を欠く、請求項
    28記載の非ヒト動物モデル。
  30. 【請求項30】 非ヒト動物が遺伝的疾患の結果として造血を欠く、請求項
    28記載の非ヒト動物モデル。
  31. 【請求項31】 以下の段階を含む、造血に影響を及ぼす薬剤を検討するた
    めの非ヒト動物モデルを作製する方法: 請求項28記載の非ヒト動物を該薬剤で処理する段階; 処理した非ヒト動物のリンパ球集団を検出する段階;および 処理した非ヒト動物のリンパ球集団を、コントロール非ヒト動物のリンパ球集
    団と比較する段階であって、リンパ球集団に及ぼす影響が造血に及ぼす影響を示
    す段階。
  32. 【請求項32】 変化がリンパ球集団の増加であり、且つその影響で造血が
    増強される、請求項31記載の方法。
  33. 【請求項33】 変化がリンパ球集団の減少であり、またその影響で造血が
    阻害される、請求項31記載の方法。
  34. 【請求項34】 請求項31記載の動物モデルを用いて単離される造血幹細胞
  35. 【請求項35】 請求項31記載の動物モデルを用いて単離される成長因子で
    あって、造血に影響を及ぼす成長因子。
  36. 【請求項36】 造血幹細胞に影響を及ぼす、請求項31記載の成長因子。
  37. 【請求項37】 血管組織が腎被膜下に移植される、請求項1記載の方法。
  38. 【請求項38】 血管組織が腹腔内または皮下に移植される、請求項1記載
    の方法。
  39. 【請求項39】 血管組織が閉鎖性内腔を形成しない、請求項1記載の方法
  40. 【請求項40】 対象に由来する試料中の造血をアッセイする段階をさらに
    含む、請求項1記載の方法。
  41. 【請求項41】 血管組織が腎被膜下に移植される、請求項11記載の方法。
  42. 【請求項42】 血管組織が腹腔内または皮下に移植される、請求項11記載
    の方法。
  43. 【請求項43】 血管組織が閉鎖性内腔を形成しない、請求項11記載の方法
  44. 【請求項44】 血管組織が動脈または静脈の少なくとも一部である、請求
    項20記載の方法。
  45. 【請求項45】 対象が非ヒト動物対象である、請求項20記載の方法。
  46. 【請求項46】 血管組織が腎被膜下、腹腔内、または皮下に移植される、
    請求項31記載の方法。
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