JP2003530818A - セリン/トレオニンプロテインキナーゼAktによる血管内皮成長因子(VEGF)の導入 - Google Patents

セリン/トレオニンプロテインキナーゼAktによる血管内皮成長因子(VEGF)の導入

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Abstract

(57)【要約】 本発明は、治療的血管形成のための方法および組成物に関する。より詳細には、本発明は、セリン/トレオニン蛋白質キナーゼAKTによる、血管内皮成長因子(VEGF)発現の誘発を対象とする。本発明による組成物および方法は、AKTをエンコードする核酸と、その投与を含むことが好ましい。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の分野】
本発明は、治療的血管形成のための方法および組成物に関する。より詳細には
本発明は、セリン/トレオニンプロテインキナーゼAktによる血管由来蛋白血
管内皮成長因子(VEGF)の発現の誘導を対象とする。本発明による組成物お
よび方法は、Aktをエンコードする核酸とその投与を含むことが好ましい。
【0002】
【発明の背景】
血管形成 血管形成は、新しい血管の発生をもたらす生物学的なプロセスである。このプ
ロセスは、細胞−細胞、細胞−基質、および細胞−サイトカイン間の様々な相互
作用を含む(Melillo他 1997、Cardiovascular Research 35 : 480〜489 ; Lew
is他 1997、Cardiovascular Research 35 : 490〜497)。新しい血管網の形成
は、通常、成体ではめったに行われない。しかし新しい血管系は、虚血、炎症、
創傷治癒、腫瘍成長、糖尿病性網膜症、リウマチ様関節炎、乾癬、および慢性の
創傷を含めた様々な病的な条件下で生じる可能性がある。
【0003】 治療的血管形成では、適切な血管由来成長因子を使用して新しい血管発生にゆ
っくりと刺激を与える。したがって治療的血管形成は、様々な虚血状態を治療す
るために、または創傷治癒に刺激を与えるために使用することができる。虚血状
態は、心臓、下肢、皮膚弁、抹消神経、骨、または移植片に影響を及ぼす可能性
がある。虚血状態には、脳血管虚血、腎虚血、肺虚血、四肢虚血、抹消動脈疾患
、間欠性跛行、虚心形心筋症、および心筋虚血症が含まれる(WO97/14307)。
【0004】 様々な因子が血管由来活性を有することが実証されてきた。これらの因子の中
には、塩基性および酸性の線維芽細胞成長因子(bFGFおよびaFGF)、F
GF−5(米国特許第5,661,133号)、内皮細胞成長因子(Pu他 1993、Circula
tion 88 : 208〜2156)、アンギオポイエチン、VEGF(総説についてはMelil
lo他 1997およびLewis他 1997参照)がある。
【0005】 血管形成は、充実性腫瘍の成長および残存とその転移に非常に重要であること
も示唆されてきた(米国特許第5,854,205号)。血管形成に刺激を与えるために
、腫瘍は、VEGFを含む様々な血管由来因子の産生を上方調節する。
【0006】 VEGF 血管内皮細胞成長因子は、蛋白質の血小板由来成長因子ファミリーのメンバー
である血管由来ポリペプチドの群である。これらの蛋白質は、分子量が約46〜
48kDaであるグリコシル化したカチオン性ダイマーである。他の血管由来因子
とは異なり、VEGFの前には、無傷の細胞からのその分泌を可能にするシグナ
ル配列がある。VEGFの代替の名称としては、血管透過因子(VPF)および
c−fos誘導成長因子(FIGF)がある。
【0007】 VEGF121(米国特許第5,219,739号)、VEGF165(米国特許第5,332,672
号)、VEGF189(米国特許第5,240,848号)、VEGF206、VEGF−2(W
O95/24473 ; WO96/39515)、VEGF−B(米国特許第5,607,918号および第5
,840,693号)、およびVFGF−D(WO97/12972)を含む、いくつかの形のV
EGFが確認されている。様々な形のVEGFは、血管内皮細胞に対して分裂促
進性を有し、虚血組織での側副血管形成および血流を高めることが示されてきた
。 CoCl2などの遷移金属イオンはVEGF遺伝子の発現を高め、血管新生を
刺激することが示されている(米国特許第5,480,975号)。
【0008】 Akt AKT蛋白質は、アポプトシス(プログラム細胞死)に影響を与えるセリン/
トレオニンプロテインキナーゼである。最近、細胞生存/死の調節に関与する2
つの細胞内シグナル経路について研究が行われた。アポプトシス刺激キナーゼ1
(ASK1)の活性化により様々な細胞タイプでアポプトシスが生じ(Ichijo他 1997)、一方、ホスホイノシチド3−キナーゼ(PI3K)およびAktに関
与する経路は細胞保護につながる。ASK1の活性は、腫瘍壊死因子−α(TN
Fa)処理またはFas連結反応によって誘発されることが実証された(Ichijo
他 1997、Chang他 1998)。ASK1優性ネガティブ変異体の過発現により、
TNFaまたはFas連結反応によって誘発されたアポプトシスが阻害されるが
、これは、ASK1が、TNFaまたはFas連結反応により誘導されたアポプ
トシス細胞死の期間中に重要な役割を果たすことを示している。ASK1がアポ
プトシスを誘発する分子メカニズムは明らかではない。ASK1の異所性発現に
より、MKK4/JNKやMKK6/p38経路などの様々なストレス活性化シ
グナル経路の活性化が生じ、これがASK−1誘導アポプトシスを仲介する可能
性があることが示された(Ichijo他 1997)。
【0009】 PI3K/Akt経路も細胞生存/死の調節に重要と考えられる(Kulik他 F
ranke他 1997、Kauffmann−Zeh他 Hemmings、1997、Dedek他 1997)。血小板
由来成長因子(PDGF)や神経成長因子(NGF)、インスリン様成長因子−
1(IGF−1)などの生存因子は、PI3Kの活性を誘発することによって様
々な条件下で細胞生存を促進させる(Kulik他 1997、Hemmings 1997)。活性化
したPI3Kによって、ホスファチジルイノシトール(3,4,5)−三リン酸(P
tdlns(3,4,5)−P3)の産生が生じ、これがAH/PH−ドメイン含有
セリン/トレオニンキナーゼ、Aktに結合してその活性を誘発する(Franke他 1995、Hemmings 1997b、Downward 1998、Allesi他 1996)。PI3Kまたは
優性ネガティブAkt変異体の特異的阻害剤は、これらの成長因子またはサイト
カインの生存促進活性をなくす。さらに、構成上活性なPI3KまたはAkt変
異体の導入により、通常なら細胞がアポプトシス細胞死に至る条件下で細胞生存
を促進させる(Kulik他 1997、Dudek他 1997)。これらの観察によれば、PI
3K/Akt経路が細胞生存またはアポプトシスに重要な役割を果たすことが実
証される。
【0010】 ヒトAktプロテインキナーゼの2つのアイソフォーム、Akt1およびAk
t2が文献で明らかにされている(Staal 1987)。米国仮出願第60/125,108号
には、Akt3で示されるヒトAktの第3の形が記載されている。さらに別の
AktのアイソフォームがNakatani他、1999(Biochem. Biophys. Res. Comm. 2
57、906〜910)に記載されている。ラットAkt配列も明らかにされている(Ko
nishi他 1995)。
【0011】 ヒトAkt1のC末端にあるセリン−473は、その調節に非常に重要である
ことが示された(Stokeo他 1997;Stephens他 1998)。成長因子の刺激により
、PI3Kが活性化する。PI3Kの産物、Ptdlns(3.4.5)−PはA
kt1に結合し、Akt1は細胞質から内細胞質膜近位に転座し、残基Thr3
08およびSer473でリン酸化する(Downward、1998)。これらの残基のリ
ン酸化はAkt1の活性化に非常に重要である。最近確認されたプロテインキナ
ーゼ、PDK1は、Thr308のリン酸化の原因になることが示されたが、S
er473をリン酸化するキナーゼはまだ確認されていない(Stokeo他 1997、
Stephens他 1998)。
【0012】 遺伝子療法 遺伝子療法では、患者の冒された細胞や器官など、患者に遺伝子情報を導入す
ることによって、欠陥または異常(突然変異や異所発現など)の矯正が行われる
。この遺伝子情報は、細胞にin vitro導入した後にこの変性した細胞を
体内に再び導入することができ、または、適切な部位に直接in vivo導入
することができる。この点について、細胞トランスフェクションと遺伝子移入の
種々の技法が文献(Roemer and Friedman 、Eur. J. Biochem. 208(1992)211
参照)に記載されており、これには、「裸のDNA」のトランスフェクションと
、DNAおよびDEAE−デキストランの複合体(Pagano他、J. Virol.1(1967
)891)、DNAおよび核蛋白質の複合体(Kaneda他、Science243(1989)375)
、DNAおよび脂質の複合体(Felgner他、PNAS84(1987)7413)、リポソーム
の用法(Fraley他、J. Biol. Chem. 255(1980)10431)などに関する様々な技
法が含まれる。より最近になって、物理的トランスフェクション技法の有望な代
替例として、遺伝子移入の際にウイルスをベクターとして使用することが浮かび
上がってきた。この点について、レトロウイルス、ヘルペスウイルス、アデノ随
伴ウイルス、およびアデノウイルスを含む種々のウイルスに関し、ある特定の細
胞集団に対する感染能力が試験された。
【0013】 血管形成に対する遺伝子療法、特にVEGFをエンコードする配列を使用する
療法が提案されている(Melillo他、1997;Lewis他、1997)。VEGF163に関
するcDNAを含むプラスミドの動脈内および筋内投与によって、虚血性ウサギ
後脚モデルでの側副血流が増大する(Tsurumi他、1996、Circulation 94 : 3281
〜3290 ; Takeshita他、1996、Biochem. Biophys. Res. Commun. 227 : 628〜63
5)。ヒトVEGF121、VEGF165、およびVEGF189のcDNAを含むプラ
スミドは、このモデルで血管由来活性を有することも示された(Takeshita他、1
996、Lab Invest. 75 :487〜501 ; WO97/14307)。同様に、VEGF165コード
配列を含む複製欠陥アデノウイルスは、マウスの血管新生を誘発する(Muhlhaus
er他、1995、Circ. Res. 77 : 1077〜1086)。ヒトの患者では、VEGF165
関する配列を含むプラスミドが、虚血四肢に血管形成を誘発し(Isner他、1996
、lancet 348 : 370〜374)、心臓に血管形成を誘発することが示された(Time
magazine、1999年1月11日、p. 68〜73参照)。
【0014】 本発明は、VEGFコード配列の直接投与によらずに血管形成を刺激する代替
方法に関する。より詳細には、本出願人は、VEGF産生が蛋白質Aktによっ
て誘発されることを予期せずに発見した。したがって本発明は、細胞にAkt蛋
白質を導入することにより細胞内でのVEGFの発現を刺激することを対象とす
る。細胞は、虚血状態に罹っている患者に存在することが好ましく、その結果、
患者に有益な側副血管が形成される。 本明細書のどの参考文献の引用も、そのような参考文献が本出願に対する「従
来技術」として利用可能であると認めるものと解釈するべきではない。
【0015】
【発明の概要】 本発明は、細胞内でのVEGFの発現を刺激する方法および組成物に関する。
より詳細には、本出願人は、Akt蛋白質がVEGF発現を刺激することができ
ることを予期せずに発見した。最も好ましい態様では、細胞は虚血状態に罹って
いる患者に存在し、その結果、患者に有益な側副血管が形成される。
【0016】 したがって本発明の第1の主題は、Akt蛋白質を細胞に投与することによっ
て細胞内でのVEGFの発現を誘発する方法に関する。この蛋白質はどのAkt
蛋白質でもよい。Akt蛋白質は、ヒトAkt蛋白質であることが好ましい。A
kt蛋白質は、ヒトAkt1、Akt2、またはAKt3であることがより好ま
しい。
【0017】 Akt蛋白質の投与によって産生したVEGFは、血管形成を刺激することが
できる任意の形のVEGFでよい。VEGFは、VEGF121、VEGF165、V
EGF189、VEGF206、VEGF−2、VEGF−B、またはVEGF−Dで
あることが好ましい。
【0018】 一態様では、細胞にAkt蛋白質を投与する。好ましい実施形態では、Akt
蛋白質をエンコードし発現制御配列に動作可能に関連付けられた核酸を、細胞に
投与する。核酸は、プラスミドまたはウイルスベクターの一部にすることができ
る。好ましいウイルスベクターは、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随
伴ウイルス、ヘルペスウイルス、およびワクシニアウイルスである。
【0019】 Akt蛋白質、またはAkt蛋白質をエンコードする核酸は、単独で、あるい
は遷移金属イオンおよび/または血管拡張剤と組み合わせて投与することができ
る。Akt蛋白質、またはAkt蛋白質をエンコードする核酸は、発現制御配列
に動作可能に関連付けられた第2の血管由来因子をエンコードする核酸と共に投
与することもできる。好ましい血管由来因子には、VEGF、酸性線維芽細胞成
長因子、塩基性線維芽細胞成長因子、内皮細胞成長因子、またはアンギオポイエ
チンが含まれる。別の態様では、2つ以上の形のAkt蛋白質を細胞に投与する
ことができる。
【0020】 本発明は、Akt蛋白質を患者に投与することによって虚血状態に罹っている
患者の細胞内でのVEGFの発現を誘発する方法にも関する。虚血状態は、脳血
管虚血、腎虚血、肺虚血、四肢虚血、心筋虚血、あるいは虚血性、特発性、また
は肥大性心筋症でよい。蛋白質は、任意のAkt蛋白質でよい。Akt蛋白質は
、Akt1、Akt2、またはAkt3であることが好ましい。
【0021】 Akt蛋白質の投与によって産生したVEGFは、血管形成を刺激することが
できる任意の形のVEGFでよい。VEGFは、VEGF121、VEGF165、V
EGF189、VEGF206、VEGF−2、VEGF−B、またはVEGF−Dで
あることが好ましい。
【0022】 一態様では、患者にAkt蛋白質を投与する。好ましい実施形態では、Akt
蛋白質をエンコードし発現制御配列に動作可能に関連付けられた核酸を、患者に
投与する。核酸は、プラスミドまたはウイルスベクターの一部にすることができ
る。好ましいウイルスベクターは、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随
伴ウイルス、ヘルペスウイルス、およびワクシニアウイルスである。最も好まし
い実施形態では、Akt蛋白質をエンコードする核酸を、経心外膜外科的投与に
よってまたはカテーテルを使用した経皮送達によって、直接心臓組織に投与する
【0023】 Akt蛋白質、またはAkt蛋白質をエンコードする核酸は、単独で、あるい
は遷移金属イオンおよび/または血管拡張剤と組み合わせて投与することができ
る。Akt蛋白質、またはAkt蛋白質をエンコードする核酸は、発現制御配列
に動作可能に関連付けられた第2の血管由来因子をエンコードする核酸と共に、
患者に投与することもできる。好ましい血管由来因子には、VEGF、酸性線維
芽細胞成長因子、塩基性線維芽細胞成長因子、内皮細胞成長因子、またはアンギ
オポイエチンが含まれる。別の態様では、2つ以上の形のAkt蛋白質を患者に
投与することができる。
【0024】 本発明は、Akt蛋白質をエンコードする核酸、遷移金属および/または血管
拡張剤、医薬品として許容される賦形剤を含む医薬品組成物にも関する。核酸は
、プラスミドまたはウイルスベクターの一部にすることができる。好ましいウイ
ルスベクターは、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘル
ペスウイルス、およびワクシニアウイルスである。
【0025】 別の態様では、本発明は、患者のAkt活性レベルを抑制することによって腫
瘍に罹っている患者の血管形成を阻害し、それによってVEGFの産生を阻害す
る方法に関する。Aktのレベルは、患者の細胞にAktアンチセンス核酸を導
入することによって低下させることができるが、これは、アンチセンス核酸が細
胞内条件下でハイブリダイズしてAktmRNAになる条件下で行われる。Ak
tのレベルは、一本鎖Fv抗体(scFv)などの細胞内結合蛋白質を導入する
ことによって低下させることもでき、この蛋白質が、Aktに結合しかつAkt
を活性化するのに十分なレベルでAktを患者の細胞に特異的に結合させる。別
の実施形態では、優性ネガティブ形のAktをエンコードする核酸を投与するこ
とによって、Akt活性を低下させることができる。アンチセンス核酸、細胞内
結合蛋白質またはそれをエンコードする核酸、あるいは優性ネガティブを腫瘍細
胞に直接投与することが好ましい。
【0026】 添付図面において; 図1:活性化Akt3変異体の構成。 図1A:活性化Akt3の概略図:ヒトAkt3の完全長コード配列を、N末
端でヒトSrc遺伝子からのミリスチル化シグナル(Myr)とフレーム内で融
合させ、C末端でHAタッグ(HA)とフレーム内で融合させた(実施例参照)
【0027】 図1B:HEK293細胞における活性化Akt3の異所発現。HEK293
細胞に、CMV6−MyrAkt3HAまたは発現プラスミド(CMV6)のみ
をトランスフェクションした。トランスフェクションの24時間後、細胞溶解産
物を調製してHA抗体による免疫ブロット法にかけた。
【0028】 図1C:活性化Akt3はAkt活性を有する。HEK293細胞に、活性A
kt3に関する発現プラスミド(MyrAkt3HA)または発現ベクター(C
MV6)のみをトランスフェクションした。トランスフェクションの24時間後
、細胞溶解産物を調製して抗HA抗体による免疫ブロット法にかけた。GSK3
から誘導した基質ペプチドを使って免疫ペレットのAkt3キナーゼ活性を測定
した。Bkgd:トランスフェクションされていない細胞のバックグラウンドレ
ベル;CMV6:CMV6をトランスフェクションした細胞;Akt3cak:
構成上活性なAkt3に関する発現プラスミドをトランスフェクションした細胞
(CMV6−MyrAkt3HA)(実施例参照)。
【0029】 図2:AktはHeLa細胞からのVEGF−165の分泌を増大させる。 HeLa細胞に、活性化マウスAkt1(Akt1)、活性化ヒトAkt3(
Akt3)、またはCMV6ベクターのみに関する発現プラスミドをトランスフ
ェクションした。トランスフェクションの1日後、細胞は低マイトジェン培地に
替わった(DMEM−0.5%FBS)。16時間後、VEGF ELISAア
ッセイ用に培養培地を収集した。レーンA:0.4μgのCMV6ベクターDNA
をトランスフェクションした細胞(6ウェル組織培養皿);レーンAkt1:0
.4μgのCMV6−mAkt1cak発現プラスミドをトランスフェクションし
た細胞(6ウェル組織培養皿);レーンAkt3:活性ヒトAkt3(Akt3
)に関する発現プラスミドをトランスフェクションした細胞(6ウェル組織培養
皿)。
【0030】 図3:Aktはヒト冠状平滑筋細胞およびヒト骨格筋細胞でのVEGF−16
5の発現を増大させる。 図3A:ヒト骨格筋細胞(HSKMC)に、緑色蛍光蛋白質に関する組換えア
デノウイルス(AV−GFP)、構成上活性なマウスAkt1に関する組換えア
デノウイルス(AV−mAkt1cak)、または構成上活性なヒトAkt3に
関する組換えアデノウイルス(AV−hAkt3cak)を、3×108VP/m
lの濃度で一晩感染させた(VP:ウイルス粒子)。感染させた1日後、培地を
収集し、培地のVEGFレベルをELISAアッセイにより測定した。 図3B:ヒト冠動脈平滑筋細胞(HCASMC)に、AV−GFP、AV−m
Akt1cak、AV−hAkt3cakを、3×108VP/mlの濃度で一晩感
染させた。感染させた1日後、培地を収集し、ヒトVEGFに関し、培地のVE
GFレベルをELISAアッセイにより測定した。 図3C:HCASMCに示されるウイルスを、3×108VP/mlの濃度で一晩
感染させた。対照として、感染していない細胞を低酸素状態に切り替えた。1日
後、全RNAをこれらの細胞から分離し、ノーザンブロット分析によってVEG
F発現を検出した。
【0031】 図4:Aktはラット心筋細胞でのVEGF発現を誘発する。 新生子心筋細胞に、緑色蛍光蛋白質に関する組換えアデノウイルス(AV−G
FP)、構成上活性なマウスAkt1に関する組換えアデノウイルス(AV−m
Akt1cak)、または構成上活性なヒトAkt3に関する組換えアデノウイ
ルス(AV−hAkt3cak)を、3×107VP/mlの濃度で一晩感染させた
。対照として、感染していない細胞を低酸素状態に24時間曝した。1日後、全
RNAを分離し、Northernブロット分析によってVEGF発現を検出した。
【0032】
【発明の詳述】
本発明は、細胞内のVEGFの発現を刺激する方法および組成物を提供するこ
とが有利である。したがって本発明は、虚血組織での側副血管形成を刺激する手
段および方法を提供することによって、患者の虚血性疾患の治療を可能にする。
より詳細には、Akt蛋白質は本明細書において、血管由来蛋白質VEGFの発
現を刺激することが示される。したがって本発明の第1の主題は、細胞にAkt
蛋白質を導入することによって、細胞内でのVEGF発現を刺激することに関す
る。好ましい態様では、Aktをエンコードする核酸が細胞に投与される。
【0033】 本発明は、Akt蛋白質を患者に投与することによって、虚血状態に罹った患
者を治療することにも関する。Akt蛋白質をエンコードする核酸を患者に投与
することが好ましく、その結果、患者の虚血組織に有益な側副血管形成が生じる
【0034】 本発明の様々な態様について、以下のセクションでさらに詳細に述べる。様々
なセクションに編成されたこの構成は、本発明の理解を容易にしようとするもの
であり、決して本発明を限定しようとするものではない。
【0035】 定義 以下の定義された用語は、本明細書全体を通して使用され、本発明の範囲およ
び実施について理解する助けとなるべきである。 特定の実施形態において、「約」または「およそ」という用語は、所与の値ま
たは範囲の20%以内、好ましくは10%以内、より好ましくは5%以内を意味
する。
【0036】 「核酸」は、ヌクレオチドと呼ばれるサブユニットが共有結合したものからな
るポリマー化合物である。核酸にはポリリボ核酸(RNA)およびポリデオキシ
リボ核酸(DNA)が含まれ、そのいずれも一本鎖または二本鎖である。DNA
にはcDNA、ゲノムDNA、合成DNA、および半合成DNAが含まれる。 「遺伝子」は、ポリペプチドをエンコードするヌクレオチドのアセンブリを指
し、cDNAおよびゲノムDNA核酸を含む。 「組換えDNA分子」は、分子生物学的操作が行われたDNA分子である。
【0037】 「ベクター」は、核酸を宿主細胞に移入する任意の手段である。ベクターは、
別のDNAセグメントを結合することができるレプリコンでよく、結合したセグ
メントの複製を引き起こすようなものである。「レプリコン」は、in viv
o状態でのDNA複製の自律単位として機能する、すなわちそれ自体の制御下で
複製が可能な任意の遺伝要素(例えばプラスミド、ファージ、コスミド、染色体
、ウイルス)である。「ベクター」という用語は、核酸を細胞にin vitr
oで、ex vivoで、またはin vivoで導入するためのウイルス性ま
たは非ウイルス性の手段を含む。ウイルスベクターは、以下にさらに詳細に示す
ように、レトロウイルス、アデノ随伴ウイルス、ポックス、バキュロウイルス、
ワクシニア、単純ヘルペス、Epstein−Barr(エプスタイン−バー)
およびアデノウイルスベクターが含まれる。非ウイルスベクターには、プラスミ
ド、リポソーム、帯電した脂質(サイトフェクチン)、DNA蛋白質複合体、お
よびバイオポリマーが含まれる。核酸の他、ベクターは、1つまたは複数の調節
領域を含み、かつ/または選択、測定、および核酸移入結果(その組織への移入
、発現期間など)のモニタリングに有用な選択可能なマーカーも含むことができ
る)。
【0038】 「クローニングベクター」は、別のDNAセグメントを結合することができて
その結合したセグメントの複製が生じるような、プラスミドやファージ、コスミ
ドなどのレプリコンである。クローニングベクターは、1つの細胞タイプで複製
することができ、別の細胞タイプで発現することができる(「シャトルベクター
」)。
【0039】 「カセット」は、特定の制限部位でベクターに挿入することができるDNAの
セグメントを指す。DNAのセグメントは問題のポリペプチドをエンコードし、
カセットおよび制限部位は、転写および翻訳のためにカセットが適正なリーディ
ングフレームに確実に挿入されるように設計される。
【0040】 細胞は、外因性または異種のDNAを細胞内に導入するとき、そのようなDN
Aによって「トランスフェクション」された。細胞は、トランスフェクションさ
れたDNAが表現変化を引き起こすとき、外因性または異種のDNAによって「
形質転換」された。形質転換DNAは、細胞のゲノムを構成する染色体DNAに
(共有結合で)組み込むことができる。
【0041】 「核酸分子」は、リボヌクレオシド(アデノシン、グアノシン、ウリジン、ま
たはシチジン;「RNA分子」)またはデオキシリボヌクレオシド(デオキシア
デノシン、デオキシグアノシン、デオキシチミジン、またはデオキシシジジン;
「DNA分子」)のリン酸エステルポリマー形、あるいはホスホロチオエートや
チオエステルなど、これらの任意のホスホエステル類似体であって、一本鎖形ま
たは二重らせん状のものを指す。二本鎖DNA−DNA、DNA−RNA、およ
びRNA−RNAらせんが可能である。核酸分子、特にDNAまたはRNA分子
という用語は、分子の一次構造および二次構造のみを指し、任意の特定の三次形
態に限定されるものではない。したがってこの用語は、特に線形または環状DN
A分子であることが見出された二本鎖DNA(制限断片)、プラスミド、および
染色体を含む。特定の二本鎖DNA分子の構造について論じる際、本明細書では
、配列を、DNAの転写されていない鎖(すなわちmRNAと相同の配列を有す
る鎖)に沿って5′から3′の方向にのみ配列を与えるという通常の決まりに従
って記述することができる。「組換えDNA分子」は、分子生物学的操作がなさ
れたDNA分子である。
【0042】 核酸分子は、温度および溶液のイオン強度の適切な条件下で一本鎖形の核酸分
子がアニールされて他の核酸分子になることができるとき、cDNAやゲノムD
NA、RNAなどの別の核酸分子と「ハイブリダイズ可能」である(前掲のSamb
rook他参照)。温度およびイオン強度の条件により、ハイブリダイゼーションの
「ストリンジェンシー」が決まる。相同核酸の予備スクリーニングのため、Tm
55°に対応する低ストリンジェンシーのハイブリダイゼーション条件を使用す
ることができ、例えば5×SSC、0.1%SDS、0.25%乳、ホルムアミド
なし;または30%ホルムアミド、5×SSC、0.5%SDSである)。中程
度のストリンジェンシーであるハイブリダイゼーション条件は、より高いTmに
対応し、例えば40%ホルムアミドで5×または6×SCCである。高ストリン
ジェンシーのハイブリダイゼーション条件は、最も高いTmに対応し、例えば5
0%ホルムアミド、5×または6×SCCである。ハイブリダイゼーションは2
つの核酸が相補的配列を含むことを必要とし、ハイブリダイゼーションのストリ
ンジェンシーに左右されるが、塩基同士のミス対合が起こり得る。核酸をハイブ
リダイズするための適切なストリンジェンシーは核酸の長さおよび相補の程度に
依存し、これらの変数は当技術分野で周知である。2つのヌクレオチド配列同士
の類似性または相同性の程度が高くなるほど、これらの配列を有する核酸のハイ
ブリッドのためのTmの値は大きくなる。核酸ハイブリダイゼーションの相対的
な安定性(より高いTmに対応する)は、以下の順で低下する。RNA:RNA
、DNA:RNA、DNA:DNA。長さがヌクレオチド100個よりも長いハ
イブリッドでは、Tmを算出するための方程式が導かれた(前掲のSambrook他、
9.50〜0.51参照)。より短い核酸、すなわちオリゴヌクレオチドとのハイ
ブリダイゼーションでは、ミス対合の位置がより重要になり、オリゴヌクレオチ
ドの長さがその特異性を決定する(前掲のSambrook他、11.7〜11.8参照)
。ハイブリダイズ可能な核酸の最短の長さは少なくともヌクレオチドが約10個
の長さであることが好ましく、少なくともヌクレオチドが約15個の長さである
ことが好ましく、その長さは少なくともヌクレオチドが約20個の長さであるこ
とが好ましい。
【0043】 特定の実施形態で、「標準ハイブリダイゼーション条件」という用語はTmが
55℃であることを指し、上述の条件を利用する。好ましい実施形態ではTmが
60℃であり、より好ましい実施形態ではTmが65℃である。
【0044】 本明細書で使用する「オリゴヌクレオチド」という用語は、一般にヌクレオチ
ドが少なくとも18個の核酸を指し、これは、AktをエンコードするゲノムD
NA分子、cDNA分子、またはmRNA分子とハイブリダイズ可能なものであ
る。オリゴヌクレオチドは、例えば32P−ヌクレオチドやビオチンなどの標識を
共有結合させることができるヌクレオチドで標識することができる。一実施形態
では、Aktをエンコードする核酸の存在を検出するために、標識されたオリゴ
ヌクレオチドをプローブとして使用することができる。さらに別の実施形態で、
オリゴヌクレオチド(その一方または両方を標識することができる)は、Akt
の完全長または断片をクローニングするためのPCRプライマーとして使用する
ことができ、あるいはAktをエンコードする核酸の存在を検出するために使用
することができる。別の実施形態では、本発明のオリゴヌクレオチドはAkt
DNA分子と共に三重らせんを形成することができる。一般に、オリゴヌクレオ
チドは合成によって調製され、好ましくは核酸合成装置で調製する。したがって
オリゴヌクレオチドは、チオエステル結合など、天然ではないホスホエステル類
似体結合により調製することができる。
【0045】 DNA「コード配列」は、適切な調節配列の制御下に置かれたとき、in v
itroまたはin vivo状態で細胞内のポリペプチドに転写され翻訳され
る二本鎖DNA配列である。コード配列の境界は、5′(アミノ)末端の開始コ
ドンと3′(カルボキシル)末端の翻訳停止コドンによって決定される。コード
配列には、原核配列、真核mRNAからのcDNA、真核(例えば哺乳動物)D
NAからのゲノムDNA配列、および合成DNA配列も含めることができるが、
それだけには限定されない。コード配列が真核細胞内での発現を意図するもので
ある場合、ポリアデニル化シグナルおよび転写終結配列は、通常、コード配列に
対し3′に位置付けられている。
【0046】 転写および翻訳制御配列は、プロモーター、エンハンサー、ターミネーターな
どのDNA調節配列であり、宿主細胞でのコード配列の発現をもたらすものであ
る。真核細胞では、ポリアデニル化信号は制御配列である。
【0047】 「プロモーター配列」は、細胞内でRNAポリメラーゼを結合することができ
、下流(3′方向)コード配列の転写を開始することができるDNA調節領域で
ある。本発明を明確にするため、プロモーター配列を転写開始部位によってその
3′末端に結合し、上流(5′方向)に伸ばして、バックグラウンドよりも高い
検出可能なレベルで転写を開始するのに必要な最小数の塩基または要素が含まれ
るようにする。プロモーター配列内には、転写開始部位(例えばヌクレアーゼS
1を用いてマッピングすることにより都合よく画定される)、ならびにRNAポ
リメラーゼの結合の原因となる蛋白質結合ドメイン(コンセンサス配列)が見出
される。
【0048】 コード配列は、RNAポリメラーゼがコード配列をmRNAに転写するときに
細胞内で転写および翻訳制御配列の「制御下」にあり、次いでトランス−RNA
でスプライスされ(コード配列がイントロンを含む場合)、コード配列によりエ
ンコードされた蛋白質に翻訳される。
【0049】 本明細書で使用する「相同的」という用語は、その用語の文法的な形および綴
りの全ての変形例において、「共通の進化の起源を」有する蛋白質同士の関係を
指し、上科(例えば免疫グロブリン上科)からの蛋白質と、異なる種(例えばミ
オシンL鎖)からの相同蛋白質が含まれる(Reeck他、1987、Cell 50:667)。
このような蛋白質(およびそのエンコード遺伝子)は、その高度な配列類似性に
反映されるように、配列相同性を有する。
【0050】 したがって「配列類似性」という用語は、その文法上の全ての形において、共
通の進化の起源を共有する可能性がありまたはその可能性がない蛋白質の核酸配
列またはアミノ酸配列同士の同一性または一致の程度を指す(上記Reeck他参照
)。しかし一般的な用法で、また本出願で、「相同的」という用語は、「非常に
」などの副詞で修飾された場合に配列類似性を指し、共通の進化の起源を指さな
いと考えられる。
【0051】 特定の実施形態で、2つのDNA配列は、ヌクレオチドの少なくとも約50%
(好ましくは少なくとも約75%、最も好ましくは少なくとも約90%または9
5%)がDNA配列の明確にされた長さ全体を通して一致するとき、「実質上相
同的」でありまたは「実質上類似」している。実質上相同的な配列は、配列デー
タバンクまたはSouthern(サザン)ハイブリダイゼーション実験で利用可能な標
準のソフトウェアを使用して、例えばその特定のシステムに向けて明確に定めら
れたストリンジェントな条件下で、配列を比較することによって同定することが
できる。適切なハイブリダイゼーション条件を明確に定めることは当業者の範囲
内である。例えば、上記Maniatis他;上記 DNA Cloning、Vols. I & II;上記 N
ucleic Acid Hybridization を参照されたい。
【0052】 「アンチセンス核酸」は、センス配列に相補的なヌクレオチドの配列である。
アンチセンス核酸は、センス鎖によりエンコードされたポリペプチドの発現を、
下方調節またはブロックするのに使用することができる。
【0053】 転写および翻訳制御配列は、プロモーター、エンハンサー、ターミネーターな
どのDNA調節配列であり、これが宿主細胞内でコード配列の発現をもたらす。
真核細胞では、ポリアデニル化シグナルは追加のタイプの制御配列である。
【0054】 「シグナル配列」は、細胞の表面に発現するように、蛋白質のコード配列の最
初に含まれる。この配列は、シグナルペプチド、すなわち成熟ポリペプチドのN
末端をエンコードし、宿主細胞によってポリペプチドに転座が生じる。「転座シ
グナル配列」という用語は、本明細書ではこの種のシグナル配列を指すために使
用する。転座シグナル配列は、真核生物および原核生物由来の様々な蛋白質に関
連付けられた状態で見出すことができ、しばしば両方のタイプの生物体で機能的
である。
【0055】 「調節領域」は、第2の核酸配列の発現を調節する核酸配列を意味する。調節
領域は、特定の核酸発現の当然の原因となる配列を含むことができ(相同領域)
、あるいは異なる蛋白質または合成蛋白質をも発現させる原因である異なる起源
の配列を含むことができる(異種領域)。特に、この配列は、真核遺伝子または
ウイルス遺伝子の配列でよく、あるいは、特異的または非特異的な手法、誘導的
または非誘導的な手法で誘導された、遺伝子の転写を刺激しまたは抑制する配列
でよい。調節領域には、複製の起点、RNAスプライス部位、プロモーター、エ
ンハンサー、転写終結配列、ポリペプチドを標的細胞の分泌経路に向けるシグナ
ル配列、およびプロモーターが含まれる。
【0056】 「異種源」からの調節領域は、発現した核酸に自然には関連付けられていない
調節領域である。異種調節領域の中には、異なる種からの調節領域、異なる遺伝
子からの調節領域、ハイブリッド調節配列、および天然に存在せず当業者によっ
て設計された調節配列が含まれる。
【0057】 「異種」DNAは、細胞内または細胞の染色体部位にもともと位置付けられて
いないDNAを指す。異種DNAは、細胞に無関係な遺伝子を含むことが好まし
い。
【0058】 「相同組換え」は、外来DNA配列を別のDNA分子に挿入すること、例えば
染色体へのベクターの挿入を指す。ベクターは、相同組換えのため、特異的染色
体部位を標的とすることが好ましい。特異的相同組換えでは、ベクターが、染色
体の配列に対して十分に長い相同領域を含むことになり、それによってベクター
の相補的結合と染色体への取込みが可能になる。より長い相同領域とより高度な
配列類似性により、相同組換えの効率を高めることができる。
【0059】 「ポリペプチド」は、共有結合したアミノ酸残基からなるポリマー化合物であ
る。アミノ酸は以下の一般構造を有する。
【化1】 アミノ酸は、側鎖Rに基づいて7つのグループに分類される:(1)脂肪族側鎖、
(2)水酸(OH)基を含む側鎖、(3)イオウ原子を含む側鎖、(4)酸性基ま
たはアミド基を含む側鎖、(5)塩基性基を含む側鎖、(6)芳香環を含む側鎖
、および(7)プロリン、すなわち側鎖がアミノ基に融合しているイミノ酸であ
る。本発明のポリペプチドは、少なくとも約14個のアミノ酸を含むことが好ま
しい。
【0060】 「蛋白質」は、生きている細胞で構造的または機能的な役割を果すポリペプチ
ドである。 ポリペプチドまたは蛋白質の「変形例」は、ポリペプチドまたは蛋白質から誘
導され、ポリペプチドまたは蛋白質の少なくとも1つの生物学的性質を保つ、任
意の類似体、断片、誘導体、または変異体である。ポリペプチドまたは蛋白質の
種々の変形例が天然に存在する。これらの変形例は、蛋白質をコードする構造遺
伝子のヌクレオチド配列の相違を特徴とする対立遺伝子変形例でよく、または種
々のスプライシングまたは翻訳後修飾を含んでよい。当業者なら、1つまたは複
数のアミノ酸の置換、欠失、付加、または交換を有する変形例を産生することが
できる。これらの変形例には、特に、(a)1つまたは複数のアミノ酸残基が保
存的または非保存的なアミノ酸で置換された変形例、(b)1つまたは複数のア
ミノ酸がポリペプチドまたは蛋白質に付加された変形例、(c)アミノ酸の1つ
または複数が置換基を含む変形例、および(d)ポリペプチドまたは蛋白質が血
清アルブミンなどの別のポリペプチドに融合した変形例を含めることができる。
これらの変形例を得るための技法は、遺伝子による技法(抑制、欠失、変異など
)、化学的技法、および酵素による技法も含めて当業者に知られている。
【0061】 そのような、代替のmRNAスプライシングの形および代替翻訳後修飾の形を
含む対立遺伝子変形例、類似体、断片、誘導体、変異体、および修飾によって、
ポリペプチドの生物学的性質を保つポリペプチドの誘導体が得られる場合、それ
らは本発明の範囲内に含まれるものとする。
【0062】 「異種蛋白質」は、細胞内では自然には産生されない蛋白質を指す。 2つのアミノ酸配列は、アミノ酸の約40%よりも高い割合で同一であるとき
、または60%よりも高い割合で類似しているとき(機能的に同一である)、「
実質上相同」でありまたは「実質上類似」である。類似または相同配列は、例え
ばGCG(Genetics Computer Group、Program Manual for the GCG Package、V
ersion7、Madison、Wisconsin)パイルアッププログラムを使用してアライメン
トを行うことにより、確認することが好ましい。
【0063】 本明細書で「〜に対応する」という用語は、正確な位置が、類似性または相同
性が測定される分子と一致していようとまたは異なっていようと、類似配列また
は相同配列を指すために使用する。核酸配列またはアミノ酸配列のアライメント
はスペースを含むことができる。したがって、「〜に対応する」という用語は配
列の類似性を指し、アミノ酸残基またはヌクレオチド塩基のナンバリングを指す
ものではない。
【0064】 Akt蛋白質をエンコードする遺伝子 本発明は、細胞内でのVEGFの発現を刺激するために、Akt蛋白質または
ポリペプチド、あるいはAkt蛋白質またはポリペプチドをエンコードする核酸
を使用することを企図するものである。Aktは、VEGFの発現を刺激するこ
とが可能な、Aktの完全長または天然に存在する形あるいはその任意の断片を
含めたヒトAkt3蛋白質またはポリペプチドであることが好ましい。本明細書
で使用する「Akt」はAktポリペプチドを指し、「akt」はAktポリペ
プチドをエンコードする遺伝子を指す。
【0065】 様々なマウスおよびヒトAkt配列が、当技術分野で知られている(Coffer他
、1991、Eur. J. Biochem. 201:475〜481;Jones他、1991、Proc. Natl. Acad. Sci. 88:4171〜4175;Bellacosa他、1993、Oncogene、8:745〜754;GenBank
Accession No. M63167、X61037、およびX65687;および米国仮出願第60/125,10
8参照)。Aktは、ヒトAkt1(配列番号11)、Akt2(配列番号12
)、またはAkt3(配列番号2)であることが好ましい。本発明による好まし
いAktは、配列番号2に示されるアミノ酸配列を含む。本発明による好ましい
核酸は、配列番号2、配列番号11、または配列番号12に示されるアミノ酸配
列をエンコードする。核酸は、配列番号1で示す配列を含むことがより好ましい
。Aktは、ヒト以外の供給源から誘導することもできる。
【0066】 本発明によれば、当業者の範囲内である従来の分子生物学、微生物学、および
組換えDNA技法を使用することができる。そのような技法は、文献で十分に記
載されている。例えば、Sambrook、Fritsch & Maniatis 、Molecular Cloning:
A Laboratory Manual、第2版(1989)Cold Spring Harbor Laboratory Press、
Cold Spring Harbor、New York(以下「Sambrook他、1989」とする);DNA Clon
ing:A Practical Approach、第IおよびII巻(D.N.G. Glover編 1985);Oligo
nucleotide Synthesis(M. J. Gait編 1984);Nucleic Acid Hybidization[B
. D. Hames & S. J. Higgins編(1985)];Transcripsion And Translation[B
. D. Hames & S. J. Higgin編(1984)];Animal Cell Culture[R. I. Freshn
ey編(1986)];Immobilized Cells And Enzymes[IRL Press、(1986)];B.
Perbal、A Practical Guide To Molecular Cloning(1984);F. M. Ausubel他
(編)、Current Protocols in Molecular Biology、John Wiley & Sons,Inc.(
1994)を参照されたい。
【0067】 Aktをエンコードする遺伝子は、ゲノムDNAであろうとcDNAであろう
と、任意の供給源、特にヒトcDNAまたはゲノムライブラリーから分離するこ
とができる。上述のように、akt遺伝子を得るための一般的な方法は当技術分
野で周知である(例えば前掲のSambrook他、1989参照)。
【0068】 したがって、どの動物の細胞も、akt遺伝子の分子クローニングのための核
酸源としての働きをすることができる可能性がある。DNAは、当技術分野で知
られている標準的な手順によってクローンDNA(例えばDNA「ライブラリー
」)から得ることができ、好ましくは、化学合成によって、cDNAクローニン
グによって、またはゲノムDNAのクローニングによって、またはその断片によ
って、所望の細胞から精製された蛋白質の発現レベルが高い組織(例えば心臓、
膵臓、骨格筋cDNA)から得られる(例えば、前掲のSambrook他、1989;Glov
er, D. M.(編)、1985、DNA Cloning:A Practcal Approach、MRL Press, Ltd.
、Oxford、U. K. Vol. I、II参照)。ゲノムDNAから誘導されたクローンは、
コード領域の他に調節領域およびイントロンDNA領域を含むことができ、cD
NAから得られたクローンは、イントロン配列を含まない。供給源が何であろう
と、遺伝子は、遺伝子の増殖のため、適切なベクターに分子上クローニングされ
るべきである。
【0069】 DNA断片が発生すると、所望のakt遺伝子を含む特定のDNA断片の同定
をいくつかの方法で行うことができる。例えばDNA断片は、核酸のハイブリダ
イゼーションによりスクリーニングを行って、標識プローブにすることができる
(Benton および Davis、1977、Science 196:180;Grunstein および Hogness
、1975、Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 72:3961)。プローブに対して十分に
相同性のあるこれらのDNA断片はハイブリダイズされる。上述のように、相同
性の程度が高いほど、よりストリンジェントなハイブリダイゼーション条件を使
用することができる。特定の実施形態では、Northernハイブリダイゼーション条
件を使用して、akt遺伝子のmRNAスプライシング変形例について同定する
【0070】 例えば遺伝子が、等電点電気泳動アミノ酸組成物を有しまたは本明細書に開示
したAkt蛋白質の部分アミノ酸配列を有する蛋白質産物をエンコードする場合
、遺伝子の性質に基づいてほかの選択をすることができる。したがって遺伝子の
存在は、その発現産物の物理的、化学的、または免疫学的な性質をベースとした
アッセイにより検出することができる。例えば、cDNAクローン、または適正
なmPNAをハイブリッド選択するDNAクローンは、例えば類似または同一の
電気泳動移動度や、等電点電気泳動または非平衡pHゲル電気泳動挙動、蛋白質
消化マップ、Aktに関して知られている抗原としての性質を有するタンパク質
を産生するものを選択することができる。特定の実施形態で、発現した蛋白質は
、ヒトAktに特異的なエピトープに対して発生したポリクローナル抗体によっ
て確認することができる。
【0071】 本発明は、VEGFの発現を刺激する能力を有するAktの対立遺伝子変形例
、スプライシング変形例、類似体、および誘導体をエンコードする遺伝子(例え
ばcDNA)の使用にも関する。Akt誘導体および類似体の産生および使用は
、本発明の範囲内である。このような変形例、類似体、誘導体、および相同体は
、VEGFの発現を刺激する能力を保持するべきである。
【0072】 Akt誘導体は、機能的に等価な分子が提供されるように、置換、付加、また
は欠失によってエンコード核酸配列を変更することにより、作製することができ
る。天然のAktよりも機能的な活性が高くまたは増大した誘導体を作製するこ
とが好ましい。
【0073】 ヌクレオチドコード配列の縮重により、akt遺伝子と実質上同じアミノ酸配
列をエンコードする他のDNA配列を、単一のアミノ酸変形例を含むアミノ酸配
列も含め、本発明の実施の際に使用することができる。これらには、対立遺伝子
、他の種からの相同遺伝子、配列内の同じアミノ酸残基をエンコードし、したが
って目に見えない変化を生じる、異なるコドンでの置換によって変更されたak
t遺伝子の全てまたは一部を含むヌクレオチド配列が含まれるが、それだけには
限定されない。同様に本発明のAkt誘導体には、一次アミノ酸配列として、配
列内の残基に代えて機能的に等価なアミノ酸残基が使用され、それによって保存
的アミノ酸置換が生じる、変更された配列を含めて、Akt蛋白質のアミノ酸配
列の全てまたは一部を含むものが含まれるが、一次アミノ酸配列はそれだけには
限定されない。例えば、配列内の1つまたは複数のアミノ酸残基を、機能的に等
価なものとして働き、目に見えない変化を生じる、同様の極性の別のアミノ酸で
置換することができる。配列内のアミノ酸に対する置換基は、アミノ酸が属する
クラスの他のメンバーから選択することができる。例えば非極性(疎水性)アミ
ノ酸には、アラニン、ロイシン、イソロイシン、バリン、プロリン、フェニルア
ラニン、トリプトファン、およびメチオニンが含まれる。芳香環構造を含むアミ
ノ酸は、フェニルアラニン、トリプトファン、およびチロシンである。極性が中
性のアミノ酸には、グリシン、セリン、トレオニン、システイン、チロシン、ア
スパラギン、およびグルタミンが含まれる。正に帯電した(塩基性)アミノ酸に
は、アルギニン、リシン、およびヒスチジンが含まれる。負に帯電した(酸性)
アミノ酸には、アスパラギン酸、およびグルタミン酸が含まれる。このような変
形例は、ポリアクリルアミドゲル電気泳動または等電点によって決定されたよう
に、見掛けの分子量に影響を及ぼさないことが予想される。
【0074】 特に好ましい置換基は、 正の電荷を維持することができるように、Argに対してはLysでありまた
その逆であり、 負の電荷を維持することができるように、Aspに対してはGluでありまた
その逆であり、 遊離−OHを維持することができるように、Thrに対してはSerであり、 遊離CONH2を維持することができるように、Asnに対してはGlnであ
る。
【0075】 アミノ酸置換基は、アミノ酸を特に好ましい性質に代えるために導入すること
もできる。例えばCysは、別のCysとのジスルフィド架橋が可能な部位を付
加するために導入することができる。Hisは、特定の「触媒」部位として導入
することができる(すなわちHisは、酸または塩基として働くことができ、生
化学触媒の中で最も一般的なアミノ酸である)。Proは、その特に平面的な構
造により導入することができ、蛋白質の構造にβターンを引き起こす。
【0076】 本発明のAkt誘導体および類似体をエンコードする遺伝子は、当技術分野で
知られている様々な方法によって産生することができる。その産生をもたらす操
作は、遺伝子または蛋白質レベルで行うことができる。例えば、クローンAkt
遺伝子配列は、当技術分野で知られている数多くの戦略のいずれかによって変更
することができる(上記Sambrook他、1989)。配列は、適切な部位で制限エンド
ヌクレアーゼにより切断することができ、その後、望むならさらに酵素修飾され
、分離され、in vitroで連結される。Aktの誘導体または類似体をエ
ンコードする遺伝子の産生では、所望の活性がエンコードされる遺伝子領域内で
、翻訳停止シグナルによって中断されることのない状態で、変性遺伝子が同じ翻
訳リーディングフレーム内にAkt遺伝子として確実に残るようにするために注
意を払うべきである。
【0077】 さらに、Aktエンコード核酸配列は、in vitroまたはin viv
oで変異して翻訳、開始、および/または終止配列を生成しかつ/または破壊す
ることができ、あるいはコード領域に変形例を生成しかつ/または新しい制限エ
ンドヌクレアーゼ部位を形成しまたは先に存在しているものを破壊することがで
き、その結果、さらにin vitro変性を促進させることができる。このよ
うな変異では、変異したAkt遺伝子産物の機能的活性が向上することが好まし
い。当技術分野で知られている変異誘発のための任意の技法、すなわちin v
itro部位特異的突然変異誘発(Hutchinson, C. 他、1978、J.Biol. Chem. 2
53:6551;Zoller および Smith、1984、DNA 3:479〜488;Oliphant他、1986、
Gene 44:177;Hutchinson他、1986、Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 83:710
)、TAB(登録商標)リンカー(Pharmacia)の使用などを含むがそれだけに
限定されない任意の技法を使用することができる。PCR技法は、部位特異的突
然変異誘発に好ましい(PCR TechnologyのHiguchi、1989、「Using PCR to Engi
neer DNA」:Principles and Applications for DNA Amplification、H. Erlich
編、Stockton Press、Chapter 6、p.61〜70参照)。
【0078】 次いで同定され分離された遺伝子を適切なクローニングベクターに挿入するこ
とができる。当技術分野で知られている多数のベクター−宿主系を使用すること
ができる。可能なベクターにはプラスミドまたは変性ウイルスが含まれるがこれ
らに限定されるものではなく、しかしベクター系は、使用される宿主細胞に適合
するものでなければならない。ベクターの例には、E. coli、λ誘導体などのバ
クテリオファージ、またはpBR322誘導体やpUCプラスミド誘導体などの
プラスミドが含まれ、例えばpGEXベクターやpmal−c、pFLAGなど
があるが、これらに限定されない。クローニングベクターへの挿入は、例えば相
補的粘着末端を有するクローニングベクターにDNA断片を連結することによっ
て、行うことができる。しかし、DNA断片に使用される相補的制限部位がクロ
ーニングベクターに存在しない場合、DNA分子の末端を酵素修飾することがで
きる。あるいは、所望の任意の部位は、ヌクレオチド配列(リンカー)をDNA
末端に連結することによって生成することができ、これらの連結されたリンカー
は、制限エンドヌクレアーゼ認識配列をエンコードする特定の化学的に合成され
たオリゴヌクレオチドを含むことができる。組換え分子は、形質転換、トランス
フェクション、感染、エレクトロポレーションなどによって宿主細胞に導入する
ことができ、したがって、多くの遺伝子配列のコピーが発生する。クローン遺伝
子はシャトルベクタープラスミド上に含まれることが好ましく、そうすると、ク
ローニング細胞、例えばE. coliでの膨張ならびに、望むなら後で行われる適切
な発現細胞系への挿入のための容易な精製がもたらされる。例えば、2種以上の
タイプの生物体で複製可能なベクターであるシャトルベクターは、E. coliプラ
スミドからの配列と酵母2μプラスミドからの配列を結合することによって、E.
coli と Saccharomyces cerevisiae の両方で複製を行うために調製することが
できる。
【0079】 Aktポリペプチドの発現 Akt、あるいはその抗原断片、誘導体、または類似体、あるいは機能的に活
性な誘導体であってそのキメラ蛋白質を含めた誘導体をコードするヌクレオチド
配列は、適切な発現ベクター、すなわち挿入された蛋白質コード配列の転写およ
び翻訳に必要な要素を含むベクターに挿入することができる。そのような要素を
本明細書では「プロモーター」と呼ぶ。したがって本発明の核酸は、本発明の発
現ベクターのプロモーターに動作可能に関連付けられている。cDNAおよびゲ
ノム配列は、共に、そのような調節配列の制御下でクローニングし発現すること
ができる。発現ベクターは、複製起点を含むことも好ましい。
【0080】 必要な転写および翻訳シグナルは、組換え発現ベクター上に提供することがで
き、またはこのシグナルは、Aktをエンコードする天然の遺伝子および/また
はその両側にある領域から供給することができる。1つの好ましい実施形態では
、Aktの発現は、心臓に特異的なプロモーターおよび/または心臓細胞に特異
的な親和性を有するベクターを使用し、心筋細胞に制限される。
【0081】 可能性ある宿主−ベクター系には、ウイルス(例えばワクシニアウイルスやア
デノウイルスなど)に感染した哺乳類の細胞系;ウイルス(例えばバキュロウイ
ルス)に感染した昆虫の細胞系;酵母ベクターを含む酵母などの微生物;または
バクテリオファージ、DNA、プラスミドDNA、またはコスミドDNAで形質
転換された細菌が含まれるがこれらに限定されない。ベクターの発現要素は、そ
の強度および特異性が様々である。利用される宿主−ベクター系に応じて、いく
つかの適切な転写および翻訳要素のいずれか1つを使用することができる。
【0082】 組換えAkt蛋白質、あるいはその機能的断片、誘導体、キメラ構成、または
類似体は、組換えによるコード配列の取込み後、染色体によって発現することが
できる。この点で、いくつかの増幅系のいずれかを使用して、高レベルの安定な
遺伝子発現を実現することができる(前掲のSambrook他、1989参照)。
【0083】 Aktをエンコードする核酸を含む組換えベクターを含んだ細胞は、細胞によ
るAkt発現をもたらす条件下、適切な細胞培養培地で培養することができる。
クローニングベクターにDNA断片を挿入するための前述の方法のいずれかを使
用して、適切な転写/翻訳制御シグナルと蛋白質コード配列からなる遺伝子を含
む発現ベクターを構成することができる。これらの方法は、in vitro組
換えDNAおよび合成技法とin vivo組換え(遺伝子組換え)を含むこと
ができる。
【0084】 Aktポリペプチドをエンコードする核酸は、調節領域、すなわち当技術分野
で知られているプロモーター/エンハンサー要素によって動作可能に結合し制御
することができるが、これらの調節要素は、発現のために選択された宿主標的腫
瘍で機能的でなければならない。調節領域は、宿主細胞内での機能的転写のため
のプロモーター領域、ならびに問題の遺伝子の3′に位置する領域を含むことが
でき、これが転写の終結のシグナルとポリアデニル化部位を指定する。これらの
要素全てが発現カセットを構成する。
【0085】 本発明で使用することができるプロモーターには、構成プロモーターおよび調
節(誘導)プロモーターが含まれる。プロモーターは、当然ながら核酸の発現の
原因となる可能性がある。プロモーターは異種の供給源からのものでよい。特に
、真核遺伝子またはウイルス遺伝子のプロモーター配列でよい。例えば、感染す
ることが望まれる細胞のゲノムから得られたプロモーター配列でよい。同様に、
アデノウイルス(E1AおよびMLP)やシトメガロウイルス、Rous Sarcoma V
irus(ラウス肉腫ウイルス)などのウイルスのゲノムから得られたプロモーター
配列でよい。さらに、プロモーターは、活性化または調節配列あるいは組織特異
的または優先的な発現が可能な配列を付加することによって、変性することがで
きる(エノラーゼおよびGFAPプロモーターなど)。さらに、核酸がプロモー
ター配列を含まないとき、挿入することができる。
【0086】 本発明の実施に有用ないくつかのプロモーターは、偏在プロモーター(ubiqui
tous promoters)(例えば、HPRTやビメンチン、アクチン、チューブリン)
、中間径フィラメントプロモーター(例えばデスミンや神経フィラメント、ケラ
チン、GFAP)、治療用遺伝子プロモーター(例えばMDRタイプやCFTR
、第VIII因子)、組織特異的プロモーター(例えば平滑筋細胞内のアクチンプロ
モーター)、細胞の分割の際に優先的に活性化するプロモーター、刺激に応答す
るプロモーター(例えばステロイドホルモン受容体やレチノイン酸受容体)、テ
トラサイクリン調節型転写モジュレーター、極初期シトメガロウイルス(CMV
)、レトロウイルスLTR、メタロチオネイン、SV−40、アデノウイルスE
1a、およびアデノウイルス主要後期(MLP)プロモーターである。テトラサ
イクリン調節型転写モジュレーターおよびCMVプロモーターはWO96/01313、U
S5,168,062、および5,385,839に記載されており、その内容を参照により本明細
書に組み込む。
【0087】 より詳細には、Akt蛋白質の発現は、当技術分野で知られている任意のプロ
モーター/エンハンサー要素によって制御することができるが、これらの調節要
素は、発現のために選択された宿主内で機能しなければならない。遺伝子発現の
制御に使用することができるプロモーターには、SV40初期プロモーター領域
(Benoist および Chambon、1981、nature 290:304〜310)、Rous肉腫ウイ
ルスの3′LTP(ロングターミナルリピート)に含まれるプロモーター(Yama
moto他、1980、Cell 22:787〜797)、ヘルペスチミジンキナーゼプロモーター
(Wagner他、1981、Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 78:1441〜1445)、メタロ
チオネイン遺伝子の調節配列(Brinster他、1982、Nature 296:39〜42);β−
ラクタマーゼプロモーターなどの原核発現ベクター(Villa−Kamaroff他、1978
、Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 75:3727〜3731)、またはtacプロモータ
ー(DeBoer他、1983、Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 80:21〜25);Scientif
ic American、1980、242:74〜94の「Useful proteins from recombinant bacte
ria」も参照;Gal4プロモーターなど、酵母または他の菌類からのプロモー
ター要素、ADC(アルコールデヒドロゲナーゼ)プロモーター、PGK(ホス
フォグリセロールキナーゼ)プロモーター、アルカリ性ホスファターゼプロモー
ター;および組織特異性を示し形質転換された動物に利用される動物転写制御領
域:膵臓腺房細胞で活性なエラスターゼI遺伝子制御領域(Swift他、1984、Cel
l 38:639〜646;Ornitz他、1986、Cold Spring Harbor Symp. Quant. Biol. 50
:399〜409;MacDonald、1987、Hepatology 7:425〜515);膵臓β細胞で活性
なインスリン遺伝子制御領域(Hanahan、1985、Nature 315:115〜122)、リン
パ系細胞で活性な免疫グロブリン遺伝子制御領域(Grosschedl他、1984、Cell 3
8:647〜658;Adames他、1985、Nature 318:533〜538;Alexander他、1987、Mo
l. Cell. Biol. 7:1436〜1444)、精巣、胸部、リンパ系、およびマスト細胞で
活性なマウス乳房腫瘍ウイルス制御領域(Leder他、1986、Cell 45:485〜495)
、肝臓で活性なアルブミン遺伝子制御領域(Pinkert他、1987、Genes and Devel
. 1:268〜276)、肝臓で活性なαフェトプロテイン遺伝子制御領域(Krumlauf
他、1985、Mol. Cell. Biol. 5:1639〜1648;Hammer他、1987、Science 235:5
3〜58)、肝臓で活性なα1アンチトリプシン遺伝子制御領域(Kelsey他、1987
、Genes and Devel. 1:161〜171)、骨髄細胞で活性なβグロブリン遺伝子制御
領域(Mogram他、1985、Nature 315:338〜340;Kollias他、1986、Cell 46:89
〜94)、脳のオリゴデンドログリア細胞で活性なミエリン塩基性蛋白質遺伝子制
御領域(Readhead他、1987、Cell 48:703〜712)、骨格筋で活性なミオシン軽
鎖2遺伝子制御領域(Sani、1985、Natuer 314:283〜286)、および視床下部で
活性な性腺刺激ホルモン放出ホルモン遺伝子制御領域(Mason他、1986、Science
234:1372〜1378)が含まれるが、それだけには限定されない。
【0088】 Aktの発現は、心臓に特異的なプロモーター、または心臓に特異的な親和性
を有するベクターを使用して、心筋細胞に限定することが好ましい。
【0089】 Akt蛋白質をエンコードする核酸含む発現ベクターは、5種類の一般的な手
法、すなわち(a)所望のプラスミドDNAまたは特定のmRNAのPCR増幅
、(b)核酸ハイブリダイゼーション、(c)選択マーカー遺伝子機能が存在す
ることまたは存在しないこと、(d)適切な制限エンドヌクレアーゼによる分析
、および(e)挿入した配列の発現によって同定することができる。第1の手法
では、核酸をPCRによって増幅することができ、その結果、増幅された産物の
検出が可能になる。第2の手法では、発現ベクターに挿入された外来遺伝子の存
在が、挿入されたマーカー遺伝子と相同な配列を含んだプローブを使用する核酸
ハイブリダイゼーションによって検出することができる。第3の手法では、ベク
ターへの外来遺伝子の挿入によって引き起こされた、ある特定の「選択マーカー
」遺伝子機能(例えばβ−ガラクトシダーゼ活性やチミジンキナーゼ活性、抗生
物質に対する耐性、形質転換表現型、バキュロウイルスの密着体(occlusion bo
dy)形成など)が存在しているか存在していないかに基づいて、組換えベクター
/宿主系を同定し選択することができる。別の例では、Aktをエンコードする
核酸がベクターの「選択マーカー」遺伝子配列内に挿入された場合、Aktイン
サートを含む組換え体は、遺伝子機能が存在しないことによって同定することが
できる。第4の手法では、適切な制限酵素による消化によって、組換え発現ベク
ターを同定することができる。第5の手法では、組換え発現ベクターは、組換え
によって発現した遺伝子産物の活性、生化学的、または免疫学的な特性に関して
アッセイを行うことによって同定することができるが、この場合、発現した蛋白
質は機能的に活性なコンフォメーションであると想定する。
【0090】 AktDNA配列の発現には、広く様々な宿主/発現ベクターの組合せを使用
することができる。有用な発現ベクターは、例えば、染色体、非染色体、合成D
NAの配列のセグメントからなるものでよい。適切なベクターには、SV40の
誘導体と既知の細菌プラスミドが含まれ、例えば、E. coliプラスミドcol E1、
pCR1、pBR322、pMa1−C2、pET、pGEX(Smith他、1988
、Gene 67:31〜40)、pMB9およびその誘導体、RP4などのプラスミド;
ファージDNAS、例えばファージ1の多数の誘導体、例えばNM989、およ
び他のファージDNA、例えばM13および線状一本鎖ファージDNA;2mプ
ラスミドやその誘導体などの酵母プラスミド;昆虫または哺乳類の細胞に有用な
ベクターなど、真核細胞に有用なベクター;ファージDNAまたは他の発現制御
配列をを使用するために変性されたプラスミドなど、プラスミドとファージDN
Aの組合せから得られるベクターなどがある。
【0091】 例えばバキュロウイルス発現系では、pVL941(BamH1クローニング
部位;Summers)やpVL1393(BamH1、SmaI、XbaI、Eco
R1、NotI、XmaIII、BglII、およびPstIクローニング部位;Inv
itrogen)、pVL1392(BglII、PstI、NotI、XmaIII、E
coRI、XbaI、SmaI、およびBamH1クローニング部位;Summers
および Invitrogen)、pBlueBacIII(BamH1、BglII、PstI
、NcoI、およびHindIIIクローニング部位、青/白組換えスクリーニン
グが可能;Invitrogen)などであるがこれらに限定されない非融合トランスファ
ーベクターと、pAc700(BamH1およびKpnIクローニング部位、B
amH1認識部位が開始コドンで始まる;Summers)やpAc701およびpA
c702(pAc700と同じでありリーディングフレームが異なる)、pAc
360(BamH1クローニング部位36塩基対 ポリヘドリン開始コドンの下
流;Invitrogen (195))、pBlueBacHisA、B、C(3つの異なるリ
ーディングフレーム、BamH1、BglII、PstI、NcoI、およびHi
ndIIIクローニング部位、ProBond精製用N末端ペプチド、およびプラ
ークの青/白組換えスクリーニング;invitrogen (220))などであるがこれらに
限定されない融合トランスファーベクターの、両方を使用することができる。
【0092】 本発明での使用が企図される哺乳類発現ベクターには、ジヒドロ葉酸レダクタ
ーゼ(DHFR)プロモーターなどの誘導的プロモーターを有するベクターが含
まれ、例えば、DHFR発現ベクターを有する任意の発現ベクターや、DHFR
/メトトレキセート同時増幅ベクターなどであって、例えばpED(PstI、
SalI、SbaI、SmaI、およびEcoRIクローニング部位、クローン
遺伝子とDHFRの両方を発現するベクターを有する;Kaufman、Current Proto
cols in Molecular Biology、16.12 (1991))などがある。あるいは、pEE1
4などのグルタミン合成酵素/メチオニンスルホキシミン同時増幅ベクターであ
る(HindIII、XbaI、SmaI、SbaI、EcoRI、およびBcl
Iクローニング部位、ベクターがグルタミン合成酵素およびクローン遺伝子を発
現させる;Celltech)。別の実施形態では、Epstein Barr Virus(EBV)の制
御下でエピソーム発現を行うベクターを使用することができ、pREP4(Ba
mH1、SfiI、XhoI、NotI、NheI、HindIII、NheI、
PvuII、およびKpnIクローニング部位、構成ラウス肉腫ウイルスロングタ
ーミナルリピート(RSV−LTR)プロモーター、ヒグロマイシン選択性マー
カー;Invitrogen)や、pCEP4(BamHI、SfiI、Xho
I、NotI、NheI、HindIII、NheI、PvuII、およびKpnI
クローニング部位、構成ヒトシトメガロウイルス(hCMV)極初期遺伝子、ヒ
グロマイシン選択性マーカー;Invitrogen)、pMEP4(KpnI、PvuI
、NheI、HindIII、NotI、XhoI、SfiI、BamH1クロー
ニング部位、誘導的メタロチオネインIIa遺伝子プロモーター、ヒグロマイシン
選択性マーカー;Invirtogen)、pREP8(BamHi、XhoI、NotI
、HindIII、NheI、およびKpnIクローニング部位、RSV−LTR
プロモーター、ヒスチジノール選択性マーカー;Invitrogen)、pREP9(K
pnI、NheI、HindIII、NotI、XhoI、SfiI、およびBa
mHIクローニング部位、RSV−LTRプロモーター、G418選択性マーカ
ー;Invitrogen)、pEBVHis(RSV−LTRプロモーター、ヒグロマイ
シン選択性マーカー、ProBond樹脂を介して精製可能でありエンテロキナ
ーゼによって切断されたN末端ペプチド;Invitrogen)などがある。本発明での
使用に際して選択可能な哺乳類発現ベクターには、pRc/CMV(HindII
I、BstXI、NotI、SbaI、およびApaIクローニング部位、G4
18選択;Invitrogen)、pRc/RSV(HindIII、SpeI、BstX
I、NotI、XbaIクローニング部位、G418選択;Invitrogen)、およ
びその他のものが含まれる。本発明により使用されるワクシニアウイルス哺乳類
発現ベクター(上記Kaufman、1991参照)には、pSC11(SmaIクローニ
ング部位、TK−およびβ−gal選択)、pMJ601(SalI、SmaI
、AflI、NarI、BspMII、BamHI、ApaI、NheI、Sa
cII、KpnI、およびHindIIIクローニング部位;TK−およびβ−g
al選択)、およびpTKgptF1S(EcoRI、PstI、SalI、A
ccI、HindII、SbaI、BamHI、およびHpaクローニング部位、
TKまたはXPRT選択)が含まれるがこれらに限定されない。
【0093】 本発明によれば、Akt蛋白質を発現させるために酵母発現系を使用すること
もできる。例えば本発明によれば、2種類だけ挙げると、非融合pYES2ベク
ター(XbaI、SphI、ShoI、NotI、GstXI、EcoRI、B
stXI、BamH1、SacI、Kpn1、およびHindIIIクローニング
部位;Invitrogen)、または融合pYESHisA、B、C(XbaI、Sph
I、ShoI、NotI、BstXI、EcoRI、BamH1、SacI、K
pn1、およびHindIIIクローニング部位、ProBand樹脂で精製され
エンテロキナーゼで切断されたN末端ペプチド;Invitrogen)を使用することが
できる。
【0094】 特定の組換えDNA分子を同定し分離した後、当技術分野で知られているいく
つかの方法を使用してその分子を増殖することができる。適切な宿主系および成
長条件を確立すると、組換え発現ベクターを多量に増殖し調製することができる
。先に述べたように、使用することができる発現ベクターには、2〜3種類挙げ
ると、以下のベクターまたはその誘導体が含まれ、すなわちワクシニアウイルス
やアデノウイルスなどのヒトウイルスまたは動物ウイルス;バキュロウイルスな
どの昆虫ウイルス;酵母ベクター;バクテリオファージベクター(例えばλ)、
およびプラスミドおよびコスミウドDNAベクターが含まれるが、これらに限定
されない。
【0095】 さらに、挿入された配列を発現をモジュレートし、または所望の特定の手法で
遺伝子産物を変性し処理することができる宿主細胞株を選択することができる。
種々の宿主細胞は、蛋白質の翻訳および翻訳後の処理および修飾のための特徴お
よび特定のメカニズムを有する。適切な細胞系または宿主系を選択して、発現し
た外来蛋白質の所望の修飾および処理が確実に行われるようにすることができる
。酵母内での発現は、生物学的に活性な産物を産生することができる。真核細胞
での発現は、「自然」フォールディングの可能性を高めることができる。さらに
、哺乳類細胞での発現は、Akt活性を再構成しまたは構成するための道具をも
たらすことができる。さらに、種々のベクター/宿主発現系は、蛋白質切断など
の処理反応に種々の程度で影響を及ぼす可能性がある。
【0096】 ベクターは、当技術分野で知られている方法によって所望の宿主細胞に導入す
ることができ、例えばトランスフェクションやエレクトロポレーション、マイク
ロインジェクション、形質導入、細胞融合、DEAEデキストラン、リン酸カル
シウム沈降法、リポフェクション(リソソーム融合)、遺伝子ガンの使用、また
はDNAベクタートランスポーターがある(例えばWu他、1992、J. Biol. Chem.
267:963〜967;WuおよびWu、1988、J. Biol. Chem. 263:14621〜14624;Hart
mut他、1990年3月15日出願のカナダ特許出願第2,012,311号参照)。
【0097】 可溶性の形の蛋白質は、培養流体を収集することによって、または封入体を可
溶化することによって、例えば界面活性剤の処理によって、また望むなら音波処
理または上述のその他の機械的プロセスによって、得ることができる。可溶化し
た、または可溶性の蛋白質は、ポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)や
等電点電気泳動、二次元ゲル電気泳動、クロマトグラフィ(例えばイオン交換や
親和性、免疫親和性、サイズカラムクロマトグラフィ)、遠心分離、示差溶解度
、免疫沈降法、あるいは蛋白質を精製するための任意のその他の標準的な技法な
ど、様々な技法を使用して分離することができる。
【0098】 遺伝子療法およびトランスジェニックベクター 上記論じたように、本発明は、VEGF、すなわち血管形成を誘発する蛋白質
の発現を刺激するAkt蛋白質の能力に関する。したがって本発明は、Akt蛋
白質をエンコードする核酸を虚血状態に罹っている患者に投与するという遺伝子
療法を含む。虚血状態には、脳血管虚血、腎虚血、肺虚血、四肢虚血、抹消動脈
疾患、間欠性跛行、心筋虚血症、あるいは虚血性、特発性、または肥大性の心筋
症を含めることができる。
【0099】 核酸エンコードAkt、すなわち適切にベクターに取り込まれたものと、それ
らを含有する医薬品組成物は、虚血組織の治療に使用することができる。これら
は遺伝子を任意のタイプの虚血組織、特に心臓の組織にin vivoで移入し
発現させるのに使用することができる。さらにこの治療は、治療すべき病状に従
って目標を定めることができる(特定の組織への移入は、特にベクターの選択に
よって決定することができ、発現は特定のプロモーターの選択による)。本発明
の核酸またはベクターは、VEGF蛋白質の発現を刺激することが可能なAkt
蛋白質を、ヒトまたは動物でin vivo状態でかつ細胞内で産生するのに使
用することが有利である。したがって本発明によれば、虚血を特異的に局所的に
かつ効果的に治療することが可能になる。
【0100】 Aktをエンコードする核酸は、単独で、または血管由来因子をエンコードす
る核酸と組み合せて投与することができる。既知の血管由来因子には、塩基性お
よび酸性の線維芽細胞成長因子(bFGFおよびaFGF)、FGF−5(米国
特許第5,661,133号)、内皮細胞成長因子(Pu他、1993、Circulation 88:208〜
2156)、アンギオポイエチンおよびVEGF(総説についてはMelillo他、1997
およびLewis他、1997参照)が含まれる。VEGFは、VEGF121(米国特許第
5,219,739号)、VEGF165(米国特許第5,332,672号)、VEGF189(米国特
許第5,240,848号)、VEGF206、VEGF−2(WO95/24473;WO96/39515)
、VEGF−B(米国特許第5,607,918号および第5,840,693号)、およびVFG
F−D(WO97/12972)を含む、いくつかの形のものが確認されている。Akt
蛋白質をエンコードする核酸は、CoCl2などの遷移金属イオンと組み合せて
投与することもでき、それによってVEGFの発現が高められ、血管新生を刺激
することが示された(米国特許第5,480,975号)。
【0101】 上記論じたように、「ベクター」は、本発明による核酸を宿主細胞に移入する
ための任意の手段である。好ましいベクターは、レトロウイルスやヘルペスウイ
ルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルスなどのウイルスベクターである。し
たがって、Akt蛋白質またはポリペプチドをエンコードする遺伝子は、in
vivo、ex vivo、またはin vitroで、ウイルスベクターを使
用して導入され、あるいはDNAの直接導入によって導入される。標的組織での
発現は、ウイルスベクターや受容体配位子などを用いてトランスジェニックベク
ターを特定の細胞に向けることによって行うことができ、または組織特異性プロ
モーターを使用することによって行うことができ、あるいはその両方によって行
うことができる。
【0102】 in vivoターゲッティングおよび治療手順に一般に使用されるウイルス
ベクターは、DNAベースのベクターおよびレトロウイルスベクターである。ウ
イルスベクターを構成し使用するための方法は、当技術分野で知られている[例
えばMillerおよびRosman、BioTechniques 7:980〜990(1992)参照]。ウイル
スベクターは、複製欠陥があることが好ましく、すなわちウイルスベクターは、
標的細胞内で自律的に複製することができないことが好ましい。一般に、本発明
の範囲内で使用される複製欠陥ウイルスベクターのゲノムは、感染した細胞内で
ウイルスの複製に必要な少なくとも1つの領域が欠けている。これらの領域は、
なくすことができ(全体的にまたは部分的に)、あるいは当業者に知られている
任意の技法によって非機能的にすることができる。これらの技法には、全体的な
除去、置換(他の配列で、特に挿入された核酸で)、部分欠失、または本質的な
(複製に)領域への1つまたは複数の塩基の付加が含まれる。このような技法は
、in vitro(分離されたDNA上)でまたはin situで、遺伝子
操作の技法を使用して、または突然変異誘発剤を用いた治療によって行うことが
できる。複製欠陥ウイルスは、そのゲノムの配列、すなわちウイルス粒子を封入
するのに必要な配列を保持することが好ましい。
【0103】 DNAウイルスベクターには、単純ヘルペスウイルス(HSV)や乳頭腫ウイ
ルス、Epstein Barrウイルス(EBV)、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス
(AAV)、ワクシニアウイルスなどであるがこれらに限定されない弱毒または
欠陥DNAウイルスが含まれる。全体またはほぼ全体にウイルス遺伝子のない欠
陥ウイルスが好ましい。欠陥ウイルスは、細胞内への導入後に複製を行う能力が
なく、したがってウイルス感染に至らない。欠陥ウイルスベクターでは、このベ
クターによって他の細胞が感染するという心配がなく、特定の局所的な領域の細
胞への投与が可能になる。したがって、特定の組織を特に標的とすることができ
る。特定のベクターの例には、欠陥ヘルペスウイルス1(HSV1)ベクター[
Kaplitt他、Molec. Cell. Neurosci. 2:320〜330(1991)]、糖蛋白質L遺伝
子がない欠陥ヘルペスウイルスベクター[特許公報RD371005A]、または他の欠
陥ヘルペスウイルスベクター[国際特許公開No. WO94/21807、1994年9月29日公
開;国際特許公開No. WO92/05263、1994年4月2日公開];Stradford−Perricau
det他により記述されているベクターなどの弱毒アデノウイルスベクター[J. Cl
in. Invest. 90:626〜630(1992);La Salle他、Science 259:988〜990(199
3)も参照];および欠陥アデノ随伴ウイルスベクター[Samulski他、J. Virol.
61:3096〜3101(1987);Samulski他、J. Virol. 63:3822〜3828(1989);L
ebkowski他、Mol. Cell. Biol. 8:3988〜3996(1988)]が含まれるがこれらに
限定されない。
【0104】 in vivo投与では、ウイルスベクターおよびトランスフェクションされ
た細胞の免疫失活を避けるため、適切な免疫抑制治療を、ウイルスベクター、例
えばアデノウイルスベクターと共に使用することが好ましい。例えば、インター
ロイキン−12(IL−12)やインターフェロン−γ(IFN−γ)、抗CD
4抗体などの免疫抑制サイトカインを投与して、ウイルスベクターに対する体液
性または細胞性の免疫応答をブロックすることができる[例えばWilson、Nature
Medicine(1995)参照]。さらに、最小限の数の抗原を発現するように設計さ
れたウイルスベクターを使用することが有利である。
【0105】 当然ながら本発明は、遺伝子治療の適用分野に関して治療上有効な量のAkt
を発現するベクターの送達を企図するものである。「治療上有効な量」という言
いまわしは、本明細書では、臨床上非常に重い宿主の虚血状態を改善するのに十
分な量、という意味を表すために使用する。
【0106】 アデノウイルスベクター 好ましい実施形態では、ベクターはアデノウイルスベクターである。アデノウ
イルスは、本発明の核酸が様々な細胞タイプに効果的に送達されるように変性す
ることができる、真核DNAウイルスである。様々な血清型のアデノウイルスが
存在する。これらの血清型の中で、本発明の範囲に含まれるものとして好ましい
ものは、タイプ2またはタイプ5のヒトアデノウイルス(Ad2またはAd5)
、あるいは動物由来のアデノウイルスの使用である(WO94/26914参照)。本発
明の範囲内で使用することができる動物由来のこれらのアデノウイルスには、イ
ヌ、ウシ、マウス(例:Mav1、Beard他、Virology 75(1990)81)、ヒツジ、ブ
タ、トリ、およびサル(例:SAV)由来のアデノウイスが含まれる。動物由来
のアデノウイルスはイヌアデノウイルスが好ましく、CAV2アデノウイルス(
例えばManhattanまたはA26/61株(ATCC VR−800)など)がよ
り好ましい。
【0107】 本発明の複製欠陥アデノウイルスベクターは、ITR、エンキャプシド配列、
および、問題の核酸を含むことが好ましい。アデノウイルスベクターノ少なくと
もE1領域は非機能的であることがさらに好ましい。E1領域の欠失は、Ad5
アデノウイルスの配列のヌクレオチド455から3329まで(PvuII−Bg
1II断片)、または382から3446まで(HinfII−Sau3A断片)延
びていることが好ましい。他の領域、特にE3領域(WO95/02697)、E2領域
(WO94/28928)、E4領域(WO94/28152、WO94/12649、およびWO95/02697)
、または後期遺伝子L1〜L5のいずれかを変性させることもできる。
【0108】 好ましい実施形態で、アデノウイルスベクターはE1領域に欠失部分を有する
(Ad1.0)。E1欠失アデノウイルスの例はEP185,573に開示されており、そ
の内容を参照により本明細書に取り込む。別の好ましい実施形態では、アデノウ
イルスベクターはE1領域およびE4領域に欠失部分を有する(Ad3.0)。
E1/E4欠失アデノウイルスの例がWO95/02697およびWO96/22378に開示され
ており、その内容を参照により本明細書に組み込む。さらに別の実施形態では、
アデノウイルスベクターはE1領域に欠失部分を有し、その領域内にはE4領域
および核酸配列が挿入されている(FR94 13355参照、その内容を参照により本明
細書に取り込む)。
【0109】 本発明による複製欠陥組換えアデノウイルスは、当業者に知られている任意の
技法によって調製することができる(Levrero他、Gene 101(1991)195、EP1855
73;Graham、EMBO J. 3(1984)2917)。特にこのウイルスは、アデノウイスル
と、特に問題のDNA配列を保持するプラスミドとの相同的組換えによって調製
することができる。相同的組換えは、アデノウイルスおよびプラスミドを適切な
細胞株にコトランスフェクションした後に行われる。使用される細胞株は、好ま
しくは(i)前記要素によって形質転換が可能であるべきであり、(ii)複製欠
陥アデノウイルスのゲノムの一部を相補することが可能な配列を含むべきであっ
て、好ましくは組換えのリスクを回避するために一体化した形で含むべきである
。使用することができる細胞株の例は、そのゲノムと一体化したAd5アデノウ
イルス(12%)のゲノムの左側部分を含むヒト胚腎臓細胞株293(Grahamm
他、J. Gen. Virol. 36(1977)59)と、E1およびE4機能を相補することが
可能な細胞株であって、出願WO94/26914およびWO95/02697に記載されているも
のである。組換えアデノウイルスは、当業者に周知の標準的な分子生物学的技法
を使用して回収され精製される。
【0110】 アデノ随伴ウイルスベクター アデノ随伴ウイルス(AAV)は、安定で部位特異的な手法により、感染させ
る細胞のゲノムと一体化させることが可能な比較的小さいサイズのDNAウイル
スである。細胞の成長、形態、または分化にいかなる影響ももたらすことなく、
広い範囲の細胞をこのウイルスに感染させることができ、したがってこのウイル
スはヒトの病状に関与しないと考えられる。AAVゲノムはクローニングされ、
配列決定され、特徴付けられる。このゲノムは約4700個の塩基を包含し、各
端部で約145個の塩基の逆方向末端反復(ITR)領域を含み、これがウイル
スに関する複製の起点としての役割を果たす。ゲノムの残りは、封入機能を保持
する2つの非常に重要な領域、すなわちウイルス複製およびウイルス遺伝子の発
現に関わるrep遺伝子を含んだゲノムの左側部分と、ウイルスのキャプシド蛋
白質をエンコードするcap遺伝子を含んだゲノムの右側部分に分割される。
【0111】 遺伝子をin vitro、in vivoで移入するためにAAVから得ら
れたベクターを使用することが記述されている(WO91/18088;WO93/09239;US
4,797,368、US5,139,941、EP488528参照)。これらの公報は、repおよび/ま
たはcap遺伝子が欠失して問題の遺伝子で置換されている様々なAAV由来構
成と、問題の前記遺伝子をin vitroで(培養細胞に)またはin vi
voで(生物体に直接)移入するためにこれらの構成を使用することについて記
述している。本発明による複製欠陥組換えAAVは、2つのAAV逆方向末端反
復(ITR)領域が両側にある問題の核酸配列を含んだプラスミドと、AAV封
入遺伝子(rep遺伝子およびcap遺伝子)を保持するプラスミドとを、ヒト
ヘルパーウイルス(例えばアデノウイルス)に感染した細胞株にコトランスフェ
クションすることによって調製することができる。次いで生じたAAV組換え体
を標準的な技法によって精製する。
【0112】 したがって本発明は、AAV由来組換えウイルスであって、そのゲノムが、A
AVITRが両側にあるAkt3をエンコードする核酸をエンコードする配列を
包含するウイルスにも関する。本発明は、AAVからの2つのITRが両側にあ
るAkt3をエンコードする核酸をエンコードする配列を包含するプラスミドに
も関する。このようなプラスミドは、核酸配列の移入の際にそのまま使用するこ
とができ、適切な場合にはこのプラスミドはリポソームベクター(偽性ウイルス
)に取り込まれる。
【0113】 レトロウイルスベクター 別の実施形態では、例えばAnderson他、米国特許第5,399,346号;Mann他、198
3、Cell 33:153;Temin他、米国特許第4,650,764号;Temin他、米国特許第4,98
0,289号;Markowitz他、1988、J. Virol. 62:1120;Temin他、米国特許第5,124
,263号;EP453242、EP178220;Bermsteom他 Genet. Eng. 7(1985)235;McCor
mick、BioTechnology 3(1985)689;Dougherty他による1995年3月16日公開の国
際特許公開No. WO95/07358;およびKuo他、1993、Blood 82:845に記載されて
いるように、遺伝子をレトロウイルスベクターに導入することができる。レトロ
ウイルスベクターは、分割細胞に感染する組込み型ウイルスである。レトロウイ
ルスゲノムは、2つのLTR、封入配列、および3つのコード領域(gag、p
ol、およびenv)を含む。組換えレトロウイルスベクターでは、一般に、g
ag遺伝子、pol遺伝子、およびenv遺伝子が全体的にまたは部分的に欠失
しており、問題の相同核酸配列で置換されている。これらのベクターは、HIV
やMoMuLV(「マウスMoloney(モロニー)白血病ウイルス」)、MSV(
「マウスモロニー肉腫ウイルス」)、HaSV(「Harvey(ハーベイ)肉腫ウイ
ルス」)、SNV(「脾臓壊死ウイルス」)、RSV(「Rous(ラウス)肉腫ウ
イルス」)、Friend(フレンド)ウイルスなど、種々のタイプのレトロウイルス
から構成することができる。欠陥レトロウイルスベクターはWO95/02697に開示
されている。
【0114】 一般に、核酸配列を含む組換えレトロウイルスを構成するために、LTR、封
入配列、およびコード配列を含むプラスミドを構成する。この構成はパッケージ
ング細胞株のトランスフェクションに使用され、この細胞株は、プラスミドに欠
けているレトロウイルス機能をトランス形で供給することができるものである。
このようにパッケージング細胞株は、一般にgag遺伝子、pol遺伝子、およ
びenv遺伝子を発現することができる。このようなパッケージング細胞株は従
来技術に記載されており、特に、細胞株PA317(US1,861,719)、PsiC
RIP細胞株(WO90/02806)、およびGP+envAm-12細胞株(WO89/071
50)がある。さらに、組換えレトロウイルスベクターは、転写活性を抑制するた
めにLTR内に変異部分を含むことができ、同様に、gag遺伝子の一部を含む
ことが可能な広範囲に及ぶ封入配列を含むこともできる(Bender他、J. Virol.
61(1987)1639)。組換えレトロウイルスベクターは、当業者に知られている標
準的な技法によって精製される。
【0115】 レトロウイルスベクターは、感染粒子として機能するように、またはトランス
フェクションが1回行われるように構成することができる。前者の場合、ウイル
スは、腫瘍形質転換の性質の原因となる遺伝子を除いてその遺伝子の全てを保つ
ように、かつ相同遺伝子を発現するように、変性する。非感染性ウイルスベクタ
ーは、ウイルスパッケージングシグナルを破壊するために、しかし相同遺伝子と
パッケージングシグナルを含むように設計された同時導入型ウイルスをパッケー
ジングするのに必要とされる構造遺伝子を保持するために調製される。したがっ
て、生成されるウイルス粒子は追加のウイルスを産生することができない。 標的遺伝子送達は、1995年10月に公開された国際特許公開WO95/28494に記載
されている。
【0116】 非ウイルスベクター 別法として、ベクターは、リポフェクションによりin vivo状態で導入
することができる。核酸をin vivoで封入しトランスフェクションするた
めに、過去10年間でリポソームの使用が増加してきた。リポソーム媒介トラン
スフェクションが直面する困難および危険が抑えられるように設計された合成カ
チオン脂質を使用して、マーカーをエンコードする遺伝子のin vivoトラ
ンスフェクション用リポソームを調製することができる[Felgner他、Proc. Nat
l. Acad. Sci. U.S.A. 84:7413〜7414(1987);Mackey他、Proc. Natl. Acad.
Sci. U.S.A. 85:8027〜8031(1988)参照;Ulmer他、Science 259:1745〜174
8(1993)]。カチオン脂質を使用することにより、負に帯電した核酸の封入を
促進させることができ、負に帯電した細胞膜との融合も促進させることができる
[FelgnerおよびRingold、Science 337:387〜388(1989)]。核酸の移入に特
に有用な脂質化合物および組成物は、国際特許公開WO95/18863およびWO96/178
23と、米国特許第5,459,127号に記載されている。特定の器官に外因性遺伝子を
in vivo導入する際のリポフェクションの使用には、ある実用的な利点が
ある。特定の細胞に対するリポソームの分子標的は、ある領域の利益を表してい
る。トランスフェクションを特定の細胞タイプに向けることは、膵臓や肝臓、腎
臓、脳などの細胞異種性を有する組織において、特に有利になることが明らかで
ある。脂質は、標的のために他の分子に化学的に結合することができる[上記Ma
ckey他参照]。標的ペプチド、例えばホルモンや神経伝達物質と、抗体などの蛋
白質、または非ペプチド分子は、リポソームに化学的に結合することができる。
【0117】 核酸のin vivoトランスフェクションを容易にするには、カチオンオリ
ゴペプチド(例えば国際特許公開WO95/21931)、DNA結合蛋白質から得られ
たペプチド(例えば国際特許公開WO96/25508)、カチオンポリマー(例えば国
際特許公開WO95/21931)などの、他の分子も有用である。
【0118】 ベクターを、裸のDNAプラスミドとしてin vivoで導入することも可
能である(米国特許第5,693,622号、第5,589,466号、および第5,580,859号参照
)。遺伝子療法のための裸のDNAベクターは、当技術分野で知られている方法
、例えばトランスフェクションやエレクトロポレーション、マイクロインジェク
ション、形質導入、細胞融合、DEAEデキストラン、リン酸カルシウム沈降法
、遺伝子ガンの使用、またはDNAベクタートランスポーターなどによって、所
望の宿主細胞に導入することができる[例えばWu他、J. Biol. Chem. 267:963
〜967(1992);WuおよびWu、J. Biol. Chem. 263:14621〜14624(1988);Har
tmut他、1990年3月15日出願のカナダ特許出願第2,012,311号;Williams他、Proc
. Natl. Acad. Sci. USA 88:2726〜2730(1991)参照]。受容体媒介型DNA
送達手法も使用することができる[Curiel他、Hum. Gene Ther. 3:147〜154(1
992);WuおよびWu、J. Biol. Chem. 262:4429〜4432(1987)]。好ましい裸
のDNAベクターには、条件付き複製起点を有するpCORプラスミド(WO97/
10343参照)と、複製起点およびマーカー遺伝子がないミニサークルプラスミド
(WO96/26270参照)が含まれる。
【0119】 医薬品組成物および送達 本発明は、医薬品組成物にも関する。このような組成物は、上述のAkt蛋白
質またはポリペプチドあるいはAkt蛋白質またはポリペプチドをエンコードす
る核酸と、医薬品として許容される担体または賦形剤を含むことができる。本発
明の組成物は、遺伝子療法のための生物学的材料の形成に特に適している。した
がって好ましい実施形態では、組成物が、ヒトAkt蛋白質またはペプチドをエ
ンコードする核酸を含んでいる。
【0120】 組成物は、Akt蛋白質、またはAkt蛋白質をエンコードする核酸を含むこ
とができる。組成物は、さらに、血管由来因子をエンコードする核酸を含むこと
ができる。既知の血管由来因子には、塩基性および酸性の線維芽細胞成長因子(
bFGFおよびaFGF)、FGF−5(米国特許第5,661,133号)、内皮細胞
成長因子(Pu他 1993、Circulation 88:208〜2156)、アンギオポイエチン、お
よびVEGF(総説についてはMelillo他 1997およびLewis他 1997参照)が含ま
れる。VEGF121(米国特許第5,219,739号)、VEGF165(米国特許第5,332
,672号)、VEGF189(米国特許第5,240,848号)、VEGF206、VEGF−
2(WO95/24473;WO96/39515)、VEGF−B(米国特許第5,607,918号およ
び第5,840,693号)、およびVFGF−D(WO97/12972)を含む、いくつかの形
のVEGFをエンコードする核酸が確認されている。組成物は、VEGF遺伝子
の発現を高めて血管新生を刺激することが示されるCoCl2などの遷移金属イ
オンも含むことができる(米国特許第5,480,975号)。Akt蛋白質、またはA
kt蛋白質をエンコードする核酸も、血管拡張剤と共に投与することができる。
血管拡張剤の例には、ニトロ血管拡張剤(例えばニトロプルシドやニトログリセ
リン)、非特異的血管拡張剤(例えばヒルドラリジンやパパベリン)、アデノシ
ン受容体作動薬、カルシウム拮抗薬、α−遮断剤(例えばプラゾシン)、内因性
血管拡張剤ペプチドまたは関連するペプチド類似体(例えばサブスタンスP、C
GRP)、Kチャネル賦活物質、ACE阻害剤またはアンギオテンシン受容体遮
断剤、エンドセリン受容体遮断剤またはECE阻害剤、および血管拡張剤プロス
タグランジンが含まれる。
【0121】 ウイルス性または非ウイルス性である本発明のどのベクターも、医薬品として
許容される賦形剤または担体にin vivo導入されることが好ましい。「医
薬品として許容される」という言いまわしは、生理学的に耐えることができると
ともに、ヒトに投与したときに一般にアレルギーや異常亢進、眩暈などの同様の
有害反応を引き起こさない、分子そのものおよび組成物を指す。本明細書で使用
する「医薬品として許容される」という用語は、動物に使用するため、より具体
的にはヒトに使用するために、連邦政府または州政府の監督官庁によって承認さ
れ、あるいは米国薬局方または他の一般的に認可されている薬局方のリストに記
載されたことを意味することが好ましい。「担体」という用語は、希釈液、アジ
ュバント、医薬品添加物、または賦形剤であって、これらと共に組成物が投与さ
れるものを指す。このような医薬品担体は水や油などの無菌の液体にすることが
でき、石油、動物や植物由来の油、合成した油などであって、落花生油や大豆油
、鉱油、ゴマ油などが含まれる。担体として、特に注射可能な溶液とするために
、水または水溶液、食塩水とデキストロースおよびグリセロールの水溶液を使用
することが好ましい。適切な医薬品担体は、E. W. Martinにより「Remingon's P
harmaceutical Sciences」に記載されている。
【0122】 本発明の医薬品組成物は、局所投与、経口投与、非経口投与、鼻腔内投与、静
脈投与、筋肉投与、皮下投与、眼内投与などを目的に処方することができる。
【0123】 医薬品組成物は、注射可能な処方のため、医薬品として許容される賦形剤を含
むことが好ましい。これらは特に、無菌の等張食塩水液(一ナトリウムリン酸塩
または二ナトリウムリン酸塩、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム
、または塩化マグネシウムなど、あるいはこのような塩の混合物)、あるいは乾
燥組成物、特に凍結乾燥した組成物であって、無菌水または生理食塩水を適宜添
加することによって注射可能な溶液を形成することができるものでよい。
【0124】 組成物は、特に、等張性で無菌の食塩水(一ナトリウムリン酸塩または二ナト
リウムリン酸塩、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、または塩化
マグネシウムなど、あるいはこのような塩の混合物)、あるいは乾燥組成物、特
に凍結乾燥した組成物であって、無菌水または生理食塩水を場合に応じて添加す
ることによって注射可能な溶液を構成することができるものでよい。
【0125】 好ましい無菌の注射可能な製剤は、非毒性の非経口的に許容される溶媒または
希釈液に溶かした溶液または懸濁液にすることができる。医薬品として許容され
る担体または賦形剤の例は、食塩水、緩衝食塩水、等張食塩水(例えば一ナトリ
ウムリン酸塩または二ナトリウムリン酸塩、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩
化カルシウム、または塩化マグネシウムなど、あるいはこのような塩の混合物)
、Ringer(リンガー)溶液、デキストロース、水、無菌水、グリセロール、エタ
ノール、およびこれらの組合せである。1,3−ブタンジオールおよび無菌固定
油が、溶媒または懸濁媒質として都合良く使用される。合成モノグリセリドまた
は合成ジグリセリドを含めた任意の無刺激性の固定油を使用することができる。
オレイン酸などの脂肪酸も、注射可能な調剤として使用できることがわかってい
る。
【0126】 投与の際に単独でまたはベクターに組み入れた状態でに使用される本発明の核
酸の用量は、種々のパラメータに従って調整することができ、特に、使用される
投与形態、問題の病状、発現する遺伝子、または所望の治療期間に従って調整す
ることができる。概して本発明による組換えウイルスの場合、このウイルスは、
用量が104pfuから1014pfuの間の形に処方され投与され、好ましくは
106〜1010pfuである。pfu(プラーク形成単位)という用語はウイル
スの溶液の感染力に該当し、適切な細胞培養の感染と、一般に48時間後に行わ
れる感染した細胞のプラーク数の測定によって決定される。ウイルス溶液のpf
u力価の決定技法は、文献で十分に示されている。
【0127】 本発明の組成物は、非経口的にまたは経粘膜的に、例えば経口的に、鼻腔を通
して、直腸を通して、あるいは経皮的に導入することができる。投与は、非経口
的に、例えば静脈注射によって行われることが好ましく、小動脈内投与、筋肉内
投与、皮内投与、皮下投与、腹腔内投与、心室内投与、および頭蓋内投与も含む
が、これらに限定されない。組成物の投与は、治療するべき部位、特に心臓に、
直接注射することによって導入することができる。
【0128】 心臓への好ましい投与経路は、心臓内への直接的な注射によるものである(米
国特許第5,693,622号または第5,661,133号)。心臓は、磁気共鳴画像法やコンピ
ュータ支援断層撮影法など、当技術分野で利用可能な技法のいずれかを使用して
画像化することができ、治療用組成物は、例えば心筋層の虚血領域に定位固定注
射をすることによって投与することができる。
【0129】 Aktの発現は、心臓特異性プロモーター、または心臓細胞に特異的な親和性
を有するベクターを使用して、心筋細胞に制限されることが好ましい。 心臓への投与は、カテーテルを使用して行うこともできる。様々な多孔性バル
ーン、二連バルーン、およびヒドロゲルカテーテルが、米国特許第5,851,521号
、第5,652,225号、第5,328,470号、第5,698,531号、第5,707,969号、第5,830,87
9号、および第5,564,192号に記載されている。
【0130】 さらに別の実施形態では、Aktポリペプチド、またはこのポリペプチドをエ
ンコードする核酸を含む組成物を、制御放出システムで送達することができる。
例えば、核酸やポリペプチドは、静脈内注入、埋め込み型浸透圧ポンプ、経皮パ
ッチ、リポソーム、またはその他の形態の投与を使用して投与することができる
。一実施形態ではポンプを使用することができる[上記Langer;Sefton、CRC Cr
it. Ref. Biomed. Eng. 14:201(1987);Buchwald他、Surgery 88:507(1980
);Saudek他、N. Engl J. Med. 321:574(1989)参照]。別の実施形態では、
ポリマー材料を使用することができる[Medical Applications of Controlled R
elease、LangerおよびWise(編)、CRC Press:Boca Raton、Florida(1974);
Controlled Drug Biovailability、Drug Product Design and Performance、Smo
lenおよびBall(編)、Willey:New York(1984);RangerおよびPeppas、J. Ma
cromol. Sci. Rev. Macromol. Chem. 23:61(1983)参照;Levy他、Science 22
8:190(1985);During他、Ann. Neurol. 25:351(1989);Howard他、J.Neur
osurg. 71:105(1989)も参照]。さらに別の実施形態では、制御放出システム
を、治療標的、すなわち心臓の近くに配置することができ、したがって全身用量
の一部しか必要としない[例えばGoodsonの前掲書Medical Applications of Con
trolled Release、vol. 2、p. 115〜138(1984)参照]。その他の制御放出シス
テムが、Langerによる総説[Sciende 24:1527〜1533(1990)]で論じられてい
る。
【0131】 したがって本発明の組成物は、静脈内、動脈内、腹腔内、筋肉内、または皮下
経路の投与によって送達することができる。別法として、適正に処方された組成
物は、鼻腔または経口投与によって投与することができる。生物学的材料の一定
の供給は、治療上有効な用量(すなわち被験者に代謝変化をもたらすのに有効な
用量)を必要な間隔で、例えば毎日供給したり12時間毎に供給することによっ
て、確実に行うことができる。これらのパラメータは、治療すべき病状の重さ、
実施される食事の変更などのその他の作用、被験者の体重、年齢、および性別、
当業者によって標準的な良好な医療行為に従い容易に決定することができるその
他の基準に依存する。
【0132】 本発明は、患者のAkt活性レベルを抑制することによって、腫瘍に罹ってい
る患者の血管形成を阻害する方法にも関し、そのようにすることによってVEG
Fの産生が阻害される。Aktのレベルは、アンチセンス核酸が細胞内条件下で
ハイブリダイズしてAktmRNAになる条件下、患者の細胞にAktアンチセ
ンス核酸を導入することによって低下させることができる。Aktのレベルは、
一本鎖Fv抗体(scFV)などの細胞内結合蛋白質を導入することによって低
下させることもでき、それによって、Aktに結合しかつAktを不活性化する
のに十分なレベルで患者の細胞にAktを特異的に結合させる。別の実施形態で
は、優性ネガティブ形のAktをエンコードする核酸を投与することによって、
Akt活性を低下させることができる。アンチセンス核酸、細胞内結合蛋白質ま
たはそれをエンコードする核酸、あるいは優性ネガティブは、腫瘍細胞に直接投
与することが好ましい。
【0133】 本発明によるアンチセンス配列は、Akt蛋白質をエンコードする配列に相補
的であり、Akt蛋白質の発現を下方調節またはブロックする。好ましい実施形
態は、アンチセンスポリヌクレオチド分子を含む。アンチセンスポリヌクレオチ
ドの調製および使用、アンチセンスRNA分子をエンコードするDNA、オリゴ
および遺伝子アンチセンスの使用が、WO92/15680に開示されており、その内容
全体を参照により本明細書に組み込む。
【0134】 本発明のアンチセンス核酸は、Akt蛋白質をエンコードするDNA配列の全
てまたは一部と特異的にハイブリダイズすることが可能なRNA、またはそれに
対応するメッセンジャーRNAであることが好ましい。本発明のアンチセンス配
列は、細胞内でのそ発現によってヒトAktmRNAの全てまたは一部と相補的
なRNAが産生される、DNA配列から得ることができる。これらのアンチセン
ス配列は、反対の向きにあるAkt蛋白質をエンコードする配列の全てまたは一
部の発現によって、調製することができる(EP140308)。アンチセンスは、Ak
tの発現の下方調節またはブロックが可能である限り、どのような長さであって
も本発明の実施に適している。アンチセンス配列は、少なくともヌクレオチド2
0個の長さであることが好ましい。
【0135】 この好ましい実施形態の別の態様では、核酸がアンチセンスRNA分子をエン
コードする。この実施形態で、核酸は、核酸配列の発現が可能なシグナルに動作
可能に結合しており、好ましくは組換えベクター構成を利用して細胞に導入され
、それによって、ベクターが細胞内に導入されるとアンチセンス核酸が発現する
ことになる。適切なベクターの例には、プラスミド、アデノウイルス、アデノ随
伴ウイルス、レトロウイルス、およびヘルペスウイルスが含まれる。
【0136】 Akt活性の阻害によって血管形成を特異的に阻害する本発明の方法の第2の
実施形態は、トランスフェクションされた細胞内でAktと選択的に相互に作用
することが可能な細胞内結合蛋白質をエンコードする核酸配列の発現を含む。そ
の内容全体が参照により本明細書に組み込まれるWO94/29446およびWO94/02610
は、細胞内結合蛋白質をエンコードする遺伝子による細胞トランスフェクション
について開示している。細胞内結合蛋白質には、細胞内で発現したAktと選択
的に相互に作用し結合することができ、結合したAkt蛋白質の機能を中立させ
る任意の蛋白質が含まれる。細胞内結合蛋白質は、抗体または抗体の断片である
ことが好ましい。
【0137】 WO94/02610は、抗体の調製、および特定の抗体をエンコードする核酸の同定
について開示している。Akt蛋白質またはその断片を使用して、その蛋白質に
特異的なモノクローナル抗体を、当業者に知られている技法に従って調製する。
細胞内結合蛋白質またはその一部をエンコードする核酸を含み、宿主細胞内での
発現が可能なベクターを、本発明の方法で使用するために続けて調製する。Ak
tを含む細胞に細胞内結合蛋白質をエンコードする核酸を送達する適切なベクタ
ーおよび方法には、上記論じたものが含まれる。Akt細胞内結合蛋白質をエン
コードする核酸配列は、細胞内結合蛋白質の目標をAktの細胞位置に定めるた
めの局在化シグナルをエンコードする配列、および/または形質膜への細胞内結
合蛋白質の挿入が可能な配列を、さらに含むことができる。局在化シグナルまた
は挿入配列は、Akt蛋白質への結合が妨げられない限り、細胞内結合蛋白質の
どの場所にも位置付けることができる。局在化シグナルの例が、WO94/02610に
開示されている。
【0138】 別の実施形態では、優性ネガティブ形のAktをエンコードする核酸を投与す
ることによって、Akt活性を低下させることができる。優性ネガティブ形のA
ktの例は、Fujio他、1999(J. Biol. Chem. 274.(23):16349〜16354)、W
ang他、1999(Mol. Cell Biol. 19(6):4008〜4018)、Jiang他、1999(Proc.
Natl. Acad. Sci. 96(5):2077〜2081)、およびGerber他、1998(J. Biol.
Chem. 273(46):30336〜30343)に記載されている。
【0139】 本発明の範囲に含まれる生物学的材料の投与が行われる生物体は、ヒトである
ことが好ましいが、どの動物でもよい。したがって当業者なら容易に理解できる
ように、本発明の方法および医薬品組成物は、任意の動物、特に哺乳類と、ネコ
類やイヌ類の被験動物など家庭で飼う動物、ウシ類やウマ類、ヤギ類、ヒツジ類
、ブタ類の被験動物などであるがこれらに限定されない家畜、野生動物(野生環
境にあるか動物園にいるかに関わらず)、マウスやラット、ウサギ、ヤギ、ヒツ
ジ、ブタ、イヌ、ネコなどの研究用の動物、ニワトリや七面鳥、鳴禽類などの鳥
類の種が含まれるがそれだけには限定されない任意の動物への投与に特に適して
おり、すなわち獣医学に属する医療に用いるのに特に適している。 本発明は、本発明の例示として提供された以下の非限定的な実施例を参照する
ことによって、より容易に理解できるであろう。
【0140】
【実施例】 一般的な分子生物学的技法 プラスミドDNAの調製抽出、塩化セシウム勾配でのプラスミドDNAの遠心
分離、アガロースおよびアクリルアミドゲル電気泳動、電気溶出によるDNA断
片の精製、フェノールまたはフェノール/クロロホルムによる蛋白質の抽出、食
塩水媒質中でのDNAのエタノールまたはイソプロパノール沈殿、Escherichia
coli(大腸菌)での形質転換など、分子生物学で従来から使用されている方法は
当業者に周知であり、文献に十分に記述されている[Maniatis T他、「Molecula
r Cloning、a Laboratory Manual」、Cold Spring Harbor Laboratory、Cold Sp
ring Harbor、N.Y.、1982;(第2版 1989);Ausubel F.M. 他(編)、「Curren
t Protocols in Molecular Biology」、John Wiley & Sons、New York、1987]
。 従来のクローニング媒体には、pBR322およびpUCタイプのプラスミド
と、M13シリーズのファージが含まれる。これらは市販されている(Bethesda
Research Laboratories)。
【0141】 連結反応では、DNA断片を、そのサイズに従ってアガロースまたはアクリル
アミドゲル電気泳動によって分離し、フェノールで、またはフェノール/クロロ
ホルム混合物で抽出し、エタノールで沈殿させ、次いでファージT4 DNAリ
ガーゼ(Biolabs)の存在下、その供給元のアドバイスに従ってインキュベート
することができる。
【0142】 5′突出末端の埋め込みは、E. Coli DNAポリメラーゼIのKlenow(クレノウ
)断片(Biolabs)を用い、その供給元の仕様に従って行うことができる。3′
突出末端の破壊は、製造元のアドバイスに従って使用されるファージT4 DN
Aポリメラーゼ(Biolabs)の存在下で行われる。5′突出末端の破壊は、S1
ヌクレアーゼで制御された処理によって行われる。
【0143】 合成オリゴデオキシヌクレオチドによってin vitroで誘導された突然
変異誘発は、Taylor他によって開発された方法[Nucleic Acids Res. 13(1985
)8749〜8764]に従って、Amershamから販売されているキットを使用して行うこ
とができる。
【0144】 PCR[Polymerase−catalyzed Chain Reaction、Saiki R.K. 他、Science 2
30(1985)1350〜1354;Mullis K.B. およびFaloona F.A.、Meth. Enzym. 155(
1987)335〜350]技法によるDNA断片の酵素増幅は、「DNA熱サイクラ」(
Perkin Elmer Cetus)を使用し、その製造元の仕様に従って行うことができる。
【0145】 ヌクレオチド配列の確認は、Sanger他が開発した方法[Proc. Natl. Acad. Sc
i. USA、74(1977)5463〜5467]により、Amershamから販売されているキットを
使用して行うことができる。 プラスミドDNAは、Qiagen Plasmid Purification System(Quiagenプラス
ミド精製システム)によって、その製造元の指示に従って精製することができる
【0146】 実施例1:ヒトAkt3のクローニング この実施例では、Akt3蛋白質をエンコードする核酸のクローニングについ
て述べる。 実施例1.1:Akt3のためのcDNAライブラリーのスクリーニング データベース検索によれば、1つのヒトcDNAクローンは、ヒトAkt1お
よびAkt2に相同であるが異なっている一連のヒトcDNA配列を含有するこ
とが、明らかにされた。以前は知られていなかったこのヒトAktアイソフォー
ム(本明細書ではヒトAkt3と呼ぶ)の完全長コード配列を分離するため、ヒ
ト心臓cDNAライブラリーを、5′−UTRおよびヒトAkt3のN末端に関
するコード領域に対応するcDNAプローブでスクリーニングした。
【0147】 ヒトcDNAクローン(ID#479072)を購入した(Genome System Inc.)。ヒ
トAkt3の5′−UTR(翻訳されていない領域)の部分および5'−コード
配列の部分を覆うこのDNAの1つの断片を、以下のプライマーを使用してポリ
メラーゼ連鎖反応(PCR)により増幅した。AKT3−5′UTR−F3(5
′TCC AAA CCC TAA AGC TGA TAT CAC3';配
列番号3)およびAKT3−C−R1(5′CCT GGA TAG CTT
CTG TCC ATT C3′;配列番号4)。cDNAプローブは、Random
Primer DNA標識キット(Boerhinger Mannheim)を使用してその製造元の指示に
従って[α−p32]dCTPで標識した。プローブは、Bio−Radクロマ
トグラフィスピンカラムを使用し、その製造元の指示に従って精製した。
【0148】 cDNAファージライブラリーをスクリーニングするため、初めに100万個
を超えるファージクローンを使用した(Clonetech、Cat#(カタログ番号) HL5
027t)。LB培地(20mg/mlのテトラサイクリン、0.2%マルトース、およ
び10mMMgCl2が補われた)で、宿主細胞XL1−Bに37℃で一晩接種し
た。Maniatis、1989に記述されるように、ファージ感染および膜リフティングを
行った。膜を変性させ、復元し、ベークし、次いでハイブリダイゼーション溶液
を用いて65℃で4時間プレハイブリダイズした。変性した形のp32−標識プ
ローブ(10分間熱変性させた)を膜に添加し、ハイブリダイゼーションを一晩
行った。ハイブリダイゼーション後、膜を、2×SSC/0.1%SDS、1×
SSC/0.1%SDS、および0.5×SSC/0.1%SDSで、65℃で順
次洗浄した。膜を風乾し、Kodak X線フィルムに曝した。この一次スクリーニン
グの後、ポジティブクローンを選択して、二次および三次スクリーニングにかけ
る。得られたポジティブファージを精製し、BM25.8−25宿主細胞を使用
して、その製造元(Boerhinger Mannheim)の指示に従ってファージDNAをプ
ラスミドDNAに変換した。
【0149】 2つのポジティブクローンを選択して、配列決定および別の特徴付けを終了さ
せた。これらのクローンの一方(クローン#9)は、ヒトAkt3の5'−UT
Rの部分およびN末端コード配列(aa1〜127)を含む。第2のクローン(
クローン#1)は、ヒトAkt3配列(aa15〜C末端)のほとんどと、3'
−UTRを含む。完全長cDNA配列は、これら2つの部分配列の融合によって
形成した。ヒトAkt3をエンコードする完全な配列を、配列番号1に示す。対
応するアミノ酸配列を、配列番号2に示す。Akt3は、Akt1およびAkt
2よりも短く、分子のC末端において、Akt3とAkt1またはAkt2との
間に大きな相同性はない。特に、ヒトAkt3のC末端部分の最後の14個のア
ミノ酸は、ヒトAkt1およびAkt2に存在するものとは異なっている。
【0150】 実施例2:Akt発現プラスミドの構成 この実施例では、活性化Akt3に関する発現プラスミドの構成について述べ
る。初めに2つの部分cDNAクローン(上述のクローン#1およびクローン#
9)を融合して、完全長AKT3コード配列を得た。ヒトSrcミリスチル化配
列を含むDNAを、完全長Akt3配列のN末端に融合させた。HAタグ配列を
、完全長Akt3配列のC末端に融合させた(発現の検出のため)。このキメラ
MyrAkt3HAに関する配列を、CMVプロモーターの制御下で配置した。
この完全な構成を、CMV6−MyrAkt3HAと呼ぶ(図1A)。
【0151】 実施例2.1:CMV6−MyrAktHA この実施例では、Akt3と、構成上活性な形のヒトAkt3を発現すること
が可能なプラスミドの構成について述べる。完全長Akt3コード配列は、以下
のプライマーを使用したクローン#1のPCR増幅によって得た。 Akt3の最初の24個のアミノ酸のコード配列を含む、hAKT3cl9−
PCR5(F):(5′−ATG AGC GAT GTT ACC ATT G
TG AAA GAA GGT TGG GTT CAG AAG AGG G
GA GAA TAT ATA AAA AAC TGG AGG CCA A
G−3′;配列番号5)、および hAKT3cll−PCR3(登録商標):(5′−TTA TTT TTT
CCA GGT ACC CAG CAT GCC−3′;配列番号6)。
【0152】 構成上活性なAkt3の形を作製するため、完全長Akt3のコード配列を、
以下のプライマーを使用してPCR増幅した:Kozak配列(CCACC)、
ヒトsrcからのミリスチル化配列(下線部分)、およびヒトAkt3の最初の
8個のアミノ酸(太字)を含む、 および、HAタグのコード配列(太字)を含む、 PCR産物を、EcoR1/Apa1で消化し、pCDNA3−Myr−Ak
t−HAを産生するpCDNA3.1のEcoR1/Apa1部位にサブクロー
ニングした。MyrAktHAのコード配列も、PCR増幅し、ベクターCMV
6のKpn1/EcoR1にサブクローニングした。PCR反応に使用されるプ
ライマーは、 CMV6−AKT3cat−F(5′−CGG GGT ACC ACC A
TG GGT AGC AAC AAG AGC AAG CCC AAG G
AT GCC AGC CAG−3′;配列番号9)、および CMV6−AKT3cat−R(5′−CCG GAA TTC TTA G
GC GTA GTC GGG GAC GTC−3′;配列番号10) であった。プラスミドを、配列決定によって確認した。
【0153】 実施例2.2:ヒトAKT3の発現 この実施例では、組織培養でのヒトAKT3の発現について述べる。HEK2
93およびCOS−7細胞を、10%ウシ胎児血清(FBS)が補われたDME
培地中に維持した。細胞を、5%CO2インキュベータ内で37℃で増殖させた
【0154】 プラスミドCMV6−[MyrAkt3HA]を、HEK293細胞に一時的に
トランスフェクションした。対照として、HEK293細胞にCMV6ベクター
をトランスフェクションした。それぞれのトランスフェクションの1日前に、細
胞を分けて0.2×106/cm2の密度にした。トランスフェクションは、Lipofec
tAmine(Gibco BRL)を使用して、その製造元の指示に従って行った。簡単に、
DNAをDME培地に混合した(血清も抗生物質もない状態で)。LipofectAmin
eを添加した(DNA:LipofectAmine=1mg:4ml)。短時間混合した後、DNA
/LipofectAmine混合物を室温で30分間保った。細胞を1×PBSで洗浄し、
DNA/LipofectAmine混合物に3時間曝した。トランスフェクション後、細胞
を1×PBSで2回洗浄し、DMEM−10%FBS培地に交換した。
【0155】 トランスフェクションの24時間後、細胞が溶解した。溶解産物を抗HA抗体
で免疫沈降させ、免疫ペレットのキナーゼ活性を、GSK−3から誘導したペプ
チド、Akt1の下流標的を使用して決定した(Cross他、1995)。トランスフ
ェクション後24時間で、Aktに関するin vitroキナーゼアッセイを
Cross他(Cross他、1995)に従って行った。細胞を1×PBS溶液で2回洗浄し
、溶解緩衝液(50mM Tris/HCl、pH7.4、1mMEDTA、1mMEGTA
、0.5mMNa3VO4、0.1%β−メルカプトエタノール、1%Triton
X−100、50mM NaF、5mMピロリン酸ナトリウム、10mMグリセロリン
酸ナトリウム、0.5mM PMSF、2ug/mlアプロチニン、2mg/mlロイペプ
チン、および1mMミクロシスチン)に溶解した。遠心分離を4℃で15分間行う
ことによって、不溶性材料を除いた。ポリクローナル抗HA抗体(BABCO)
を用い、プラットフォームを回転させながら、細胞溶解産物を4℃で1時間イン
キュベートした。溶解産物に、蛋白質A−アガロースビーズを1時間添加した。
免疫沈降後、ペレットを、洗浄溶液A(0.5M NaClが補われた溶解緩衝液
)で3回、洗浄溶液B(50mM Tris/HCl、pH7.4、0.03% Br
ij35、0.1mMEGTA、および0.1%β−メルカプトエタノール)で3回
、キナーゼ緩衝液(20mMMOPS、pH7.2、25mMβ−グリセロリン酸ナト
リウムpH7.0、1mMNa3VO4、1mM DTT)で3回洗浄した。洗浄後、ペ
レットを40μlのキナーゼ反応混合物[100mMATP、0.1mg/ml Crossti
de基質ペプチド(UBI)、20mM MgCl2、10mM 蛋白質キナーゼA阻
害剤/PKI(UBI)、および10mCi(g−32P)−ATP]に再懸濁
した。反応を、30℃で30分間行った。反応終了後、混合物を短時間遠心分離
し、上澄み30μlをp81の円形のニトロセルロース紙上に流し込んだ(Gi
bco BRL)。ニトロセルロース紙を、180mMリン酸で3回洗浄し(洗浄
時間は1回につき10分)、アセトンで2回洗浄した(洗浄時間は1回につき2
分)。この紙の放射能を、Scintillation Counting Machine(シンチレーション
計数器)で監視した。CMV6[MyrAkt3HA]がトランスフェクション
されたサンプル中に存在するキナーゼ活性は、このアッセイのために観察された
バックグラウンドレベルと同様の、対照ベクターCMV6がトランスフェクショ
ンされた細胞に存在するキナーゼ活性よりも、20倍高かった(図1B)。
【0156】 トランスフェクションされた細胞でのMyrAkt3HAの発現を試験するた
め、トランスフェクションされた細胞から調製された溶解産物を、抗HA抗体に
よる免疫ブロット法にかけた。細胞溶解産物は上述のように調製し、SDSポリ
アクリルアミドゲル上で電気泳動にかけた。蛋白質をニトロセルロース膜にトラ
ンスフェクションし、次いでこれを遮断溶液(1×PBS、0.2%Tween
20、5%脱脂粉乳、)で、4℃で一晩処理した。膜を、マウスのモノクローナ
ル抗HA抗体(遮断溶液で1:500に希釈)で3時間、室温でインキュベート
した。遮断溶液で3回洗浄した後(それぞれ15分)、膜をHRP共役ウサギ抗
マウスIgG抗体(遮断溶液で1:1000に希釈)で、室温で1時間インキュ
ベートした。遮断溶液で3回洗浄し(それぞれ10分)、0.2%Tween2
0が補われた1×PBSで3回洗浄した後、製造元の指示に従って膜をECL(
PIERCE)で形成し、Kodak X線フィルムに曝した。図1Cに見られるように、C
MV6−[MyrAkt3HA]がトランスフェクションされたサンプルには強
度の約60KDのバンド(MyrAkt1HAのサイズと同様、データは図示せず
)が存在するが、CMV6がトランスフェクションされたサンプル(負の対照)
には存在しない。総合すると、これらのデータは、CMV6−[MyrAkt3
HA]のトランスフェクションによって機能的なAkt活性が得られることを実
証している。
【0157】 実施例3:VEGF発現の刺激 実施例3.1:細胞培養 HeLa(ヒーラ)細胞(ATCC)を、10%ウシ胎児血清(FBS)が補
われたDME培地に維持した。細胞を、5%CO2インキュベータ内で、37℃
で増殖させた。ヒト骨格筋細胞(HSKMC)およびヒト冠状平滑筋細胞(HC
SMC)をClinetics Corporationから購入した。
【0158】 新生ラットの心筋細胞を、Myocyte Isolation System(Worthigton Biochemic
al Co.)を使用して分離した。簡単に、生後1〜3日のラットから採取した心臓
を細分し、トリプシン(最終濃度50μg/ml)で一晩4℃で消化し、その後、
コラゲナーゼを用いて37℃で45分間消化した。すり潰した後、混合物を細胞
ストレーナによりろ過した。短時間遠心分離を行った後、細胞を、平板培地(D
MEM:M199=4:1、10%心臓不活性化ウマ血清、5%ウシ胎児血清、
1×インスリン−トランスフェリン−セレンサプリメント(Gibco BRL
)、および1×ゲンタマイシン、100μg/mlBrdU)に再懸濁し、密度を
0.3×106細胞/mlにした。24時間後、細胞は、低マイトジェン培地(D
MEM:M199=4:1、1×ゲンタマイシン)に切り替えた。
【0159】 実施例3.2:トランスフェクション トランスフェクションの1日前、細胞を分けて、密度を0.2×106細胞/cm2 にした。トランスフェクションは、リポフェクトアミン(GibcoBRL)
を使用し、その製造元の指示に従って行った。簡単に、示されるDNAをDME
培地(血清も抗生物質もない)に入れて混合し、リポフェクトアミンを添加した
(DNA:LipofectAmine=1μg:4μl)。短時間撹拌した後、
DNA/リポフェクトアミン混合物を、30分間室温に保った。次いで細胞を1
×PBSで洗浄し、DNA/リポフェクトアミン混合物に3時間曝した。トラン
スフェクション後、細胞を1×PBSで2回洗浄し、DMEM−10%FBS培
地に切り替えた。
【0160】 3.3組換えアデノウイルス構成 構成上活性なヒトAkt3(hAkt3cak)含む組換えアデノウイルスを
、Crouzet他(1997)に記載されているように構成した(Proc. Natl. Acad. Sci
. USA. Vol. 94、1414〜1419)。構成上活性なヒトAkt3c(N末端のc−s
rcからのミリスチル化配列を含む)に関するcDNAをサブクローニングして
pXL2996にした(このプラスミドをpXL2996−hAkt3cakと
呼ぶ)。pXL2996−hAkt3cakからのhAkt3cakに関する発
現カセットをサブクローニングしてシャトルベクターpXL3474にした。h
Akt3cakに関するこのシャトルプラスミドと、アデノウイルス−bgal
に関するプラスミドDNA(pXL3215)を、エレクトロポレーションによ
って細菌JM83細胞に導入した。二重に相同的組換えを行った後、アデノウイ
ルス−hAkt3cakに関するプラスミドDNAをCsClにより精製した。
このDNAを、制限酵素PacIで消化することにより線状にし、リポフェクト
アミンを使用して293個の細胞にトランスフェクションした。トランスフェク
ションの3週間後、hAkt3cakを含む組換えアデノウイルス(AV−hA
KT3cak)を収集し、293個の細胞内で増幅させた。細胞質毒性アッセイ
(CPA)を使用して、ウイルス力価を決定した。
【0161】 構成上活性なマウスakt1を含む組換えアデノウイルス(AV−mAkt1
cak)を標準的な方法(上記に論じた)を使用して調製し、これはKenneth Wa
lsh博士(Boston、Ma)から提供された。
【0162】 ウイルス感染の前に、ウイルスを組織培養培地に入れて希釈し、3×107/m
lにした。ウイルス含有培地1mlを、6ウェル組織培養プレートの各ウェルに添
加し、ウイルス含有培地8mlを、100mm培養皿のそれぞれに添加した。一晩感
染させた後、培地中の過剰なウイルスを1×PBSで洗浄除去し、細胞を通常の
培地に替えた。
【0163】 実施例3.4:ELISAアッセイ VEGF−165 ELISA検出キット(R & D Systems Inc. 、ccat.DVE
00から購入)を使用して、ヒトVEGF Elisaアッセイを行った。培養培
地を収集し、短時間遠心分離にかけて澄ませた。アッセイ希釈剤RD1Wを添加
した後、サンプルを適切な各ウェルに添加した。次いでプレートにより、室温で
2時間インキュベートした。次いで各ウェルを洗浄緩衝液で3回洗浄した。この
後、各ウェルを、提供された共役抗VEGFで、室温で2時間処理した。この時
点で、前述と同様の洗浄ステップを繰り返した。基質を添加し、室温で20分間
インキュベートした。450nmに設定したマイクロプレートリーダにより光学密
度を決定し、波長補正は540nmに設定した。
【0164】 実施例3.5:RNA分離およびノーザンブロット法: 全RNAを、Ultraspec RNA Isolation試薬(Biotecx)使用して分離した。簡
単に、Ultraspec溶液1mlを、100mm組織培養プレートの細胞に添加した。細
胞をプレートからかき出し、RNアーゼを含まないEppendorf(エッペ
ンドルフ)管内に移した。クロロホルム200μlを添加した後、混合物を撹拌
し、4℃で遠心分離にかけた。水溶液(上層)を収集し、RNAを等体積のイソ
プロパノールで沈澱させた。70%エタノールで洗浄し乾燥した後、RNAを、
DEPCで処理した水に溶解した。全RNA20μgを1%アガロースゲル上に
分離した。電気泳動および移入後、ブロットを紫外線架橋した。
【0165】 Rondom Primer DNA標識キット(Boehringer Mannheim)を使用して生成したp
32標識DNAプローブを用い、ハイブリダイゼーションを行った。65℃でハ
イブリダイゼーションを行った後、ブロトを、2×SSC/0.1%SDSおよ
び0.1×SSC/0.1%SDSで順次洗浄し、Kodak X線フィルムに一
晩曝した。
【0166】 実施例3.6:Aktはトランスフェクションされた細胞からのVEGFの発現
を増大させる HeLa(ヒーラ)細胞に、活性化マウスAkt1(CMV6−mAkt1c
ak)、活性化ヒトAkt3(CMV6−hAKt3)、またはCMV6ベクタ
ー(対照として)に関する発現プラスミドをトランスフェクションした。トラン
スフェクション後、細胞は低マイトジェン培地(0.5%ウシ胎児血清が補われ
たDMEM)に切り替えた。16時間後、トランスフェクションされた細胞から
の培地を収集し、ヒトVEGF−165のためのELISAにかけた。図2に示
すように、Akt1またはAkt3トランスフェクション細胞の培地のVEGF
レベルは、ベクターCMV6をトランスフェクションした細胞の培地(対照)で
示されるレベルよりも著しく高い。これらのデータによれば、構成上活性なAk
t1またはAKt3によって、HELA細胞にVEGF−165発現が引き起こ
されることが実証された。
【0167】 実施例3.7:AV−mAkt1cakおよびAV−hAkt3cakはヒト骨
格筋細胞およびヒト平滑筋細胞でVEGF発現を誘発する ヒト骨格筋細胞(HSKMC)およびヒト冠状平滑筋細胞(HCASMC)に
、活性マウスAkt1(AV−mAkt1cak)または構成上活性なヒトAk
t3(AV−hAKT3cak)を発現する組換えアデノウイルスを感染させた
。対照として、細胞に、緑色蛍光蛋白質の発現を誘発するAV−GFPを感染さ
せた。感染した1日後、培養培地を収集し、培地のVEGFレベルをELISA
によって測定した。図3Aに示すように、AV−mAKT1cakおよびAV−
hAKT3cakは共に、HSKMCでのVEGF−165発現を著しく増大さ
せるが、AV−GFP感染ではほとんどまたは全く影響がなかった。さらに、図
3Bに示すように、AV−mAkt1およびAV−hAkt3cakは、ヒト冠
状動脈平滑筋細胞(HCASMC)からVEGF−165を誘発する。
【0168】 AktがVEGFメッセンジャーRNAに及ぼす影響を評価するため、HCA
SMCに、mAkt1cak、hAkt3cak、またはGFPを発現するアデ
ノウイルスを感染させた。正の対照として、細胞を、24時間低酸素状態に切り
替えた。全RNAを分離し、VEGF用のノーザンブロット分析にかけた。図3
Cに示すように、低酸素処理によって、発現VEGFが劇的に誘発される。さら
に、AV−GFPではなくAV−mAkt1cakおよびAV−hAkt3ca
kが、VEGFのmRNAレベルを著しく増大させる。これらのデータは、Ak
tが、mRNAのレベルを高めることによってVEGF発現を増大させることを
示している。
【0169】 実施例3.8:AV−mAKT1cakおよびAV−hAKt3cakは心筋細
胞内でVEGF発現を誘発する 新生ラット心筋細胞に、mAkt1cak(AV−mAkt1cak)、マウ
ス野生型Akt1(AV−mAkt1wt)、hAkt3cak(AV−hAk
t3cak)、またはAV−GFP(対照として)をエンコードするアデノウイ
ルスを感染させた。正の対照として、感染していない細胞を、低酸素状態で24
時間インキュベートした。感染の1日後、これらの細胞からのRNAを分離し、
ノーザンブロット分析によってVEGF発現を検出した。図3に示すように、A
V−mAKt1cakまたはAV−hAkt3cakは心筋細胞でのVEGFの
発現を著しく増大させるが、AV−GFPまたはAV−mAkt1wtは、VE
GF−165発現にほとんどまたは全く影響を及ぼさない。
【0170】 本発明は、本明細書に記述した特定の実施形態によって範囲を限定するもので
はない。実際に、前述の説明および添付図面から、本明細書に記述した実施形態
に加えて本発明の様々な変形例が当業者に明らかになるであろう。そのような変
形例は、上述の特許請求の範囲内に含まれるものとする。
【0171】 さらに、核酸またはポリペプチドに与えられた、全ての塩基サイズまたはアミ
ノ酸サイズ、および全ての分子量または分子質量値は、およその値であり、記述
するために与えられたものであることが、さらに理解される。 様々な文献を本明細書で引用したが、その開示の全体を参照により組み込む。
【0172】 Aams JM. et al. 1998. The Bcl-2 portein family: arbiters of cell survi
val. Science. Vol281 (5381): 1322-1326. Alessi DR. et al. 1996. Mechanism of activation of protein kinase B by
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1312-1316.
【図面の簡単な説明】
【図1A】 活性化Aktの概略図である。
【図1B】 HEK293細胞における活性化Akt3の異所発現を示す。
【図1C】 活性化Akt3のAkt活性を示す。
【図2】 AktのHeLa細胞からのVEGF−165の分泌を示す。
【図3A】 Aktのヒト骨格筋細胞(HSKMC)でのVEGFの発現を示す。
【図3B】 Aktのヒト冠動脈平滑筋細胞(HCASMC)からのVEGF産生を示す。
【図3C】 AktのHCASMCでのVEGF発現を示す。
【図4】 Aktのラット心筋細胞でのVEGF発現を示す。
【配列表】
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) A61K 38/22 A61K 48/00 38/46 A61P 9/10 39/395 C12N 15/00 ZNAA 45/06 A61K 37/54 48/00 37/24 A61P 9/10 37/43 (81)指定国 EP(AT,BE,CH,CY, DE,DK,ES,FI,FR,GB,GR,IE,I T,LU,MC,NL,PT,SE),OA(BF,BJ ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GW,ML, MR,NE,SN,TD,TG),AP(GH,GM,K E,LS,MW,MZ,SD,SL,SZ,TZ,UG ,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,MD, RU,TJ,TM),AE,AL,AM,AT,AU, AZ,BA,BB,BG,BR,BY,CA,CH,C N,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,EE,ES ,FI,GB,GD,GE,GH,GM,HR,HU, ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KP,K R,KZ,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LV ,MA,MD,MG,MK,MN,MW,MX,NO, NZ,PL,PT,RO,RU,SD,SE,SG,S I,SK,SL,TJ,TM,TR,TT,TZ,UA ,UG,US,UZ,VN,YU,ZA,ZW (72)発明者 ケネス・クラーク アメリカ合衆国ペンシルベニア州19525. ギルバーツビル.ロバーツロード1235 Fターム(参考) 4B024 AA01 DA02 EA02 EA04 HA17 4C084 AA02 AA13 AA17 AA19 BA44 CA18 CA53 DB52 DB54 DB57 DB70 DC22 MA02 NA14 ZA36 ZB26 ZC03 4C085 AA13 BB07 BB31 CC21 CC31 DD62 EE01 EE03 4C086 AA01 AA02 EA16 HA10 HA24 MA01 MA02 MA03 MA04 NA14 ZA36 ZB26 ZC03 4C087 AA01 AA02 BC83 CA12 NA14 ZA36 ZB26 ZC03

Claims (42)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 細胞にAKt蛋白質を投与することを包含する、細胞内でV
    EGFの発現を誘発する方法。
  2. 【請求項2】 Akt蛋白質が、Akt1、Akt2、およびAkt3から
    なる群から選択される請求項1に記載の方法。
  3. 【請求項3】 Akt蛋白質がAkt3である請求項2に記載の方法。
  4. 【請求項4】 VEGFが、VEGF121、VEGF165、VEGF189、V
    EGF206、VEGF−2、VEGF−B、およびVEGF−Dからなる群から
    選択される請求項1に記載の方法。
  5. 【請求項5】 投与が、発現制御配列に動作可能に関連付けられたAkt蛋
    白質をエンコードする核酸を細胞内に導入することを包含する、請求項1に記載
    の方法。
  6. 【請求項6】 核酸がプラスミドまたはウイルスベクターの一部である請求
    項5に記載の方法。
  7. 【請求項7】 核酸がプラスミドの一部である請求項6に記載の方法。
  8. 【請求項8】 ウイルスベクターが、レトロウイルス、アデノウイルス、ア
    デノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルス、およびワクシニアウイルスからなる群か
    ら選択される請求項6に記載の方法。
  9. 【請求項9】 Aktが、細胞内で構成上発現する請求項5に記載の方法。
  10. 【請求項10】 遷移金属イオンおよび/または血管拡張剤の投与をさらに
    包含する請求項1に記載の方法。
  11. 【請求項11】 発現制御配列に動作可能に関連付けられた第2の血管由来
    因子をエンコードする核酸を投与することをさらに包含する、請求項5に記載の
    方法。
  12. 【請求項12】 第2の血管由来因子が、VEGF、酸性線維芽細胞成長因
    子、塩基性線維芽細胞成長因子、内皮細胞成長因子、およびアンギオポイエチン
    からなる群から選択される請求項11に記載の方法。
  13. 【請求項13】 VEGFが、VEGF121、VEGF165、VEGF189
    VEGF206、VEGF−2、VEGF−B、およびVEGF−Dからなる群か
    ら選択される請求項12に記載の方法。
  14. 【請求項14】 第2の血管由来因子が内皮細胞成長因子である請求項12
    に記載の方法。
  15. 【請求項15】 少なくとも2つの形のAkt蛋白質が細胞に投与される請
    求項2に記載の方法。
  16. 【請求項16】 細胞が、虚血状態に罹っている患者の内部にある請求項1
    に記載の方法。
  17. 【請求項17】 虚血状態が、脳血管虚血、腎虚血、肺虚血、四肢虚血、心
    筋虚血、あるいは、虚血性、特発性、または肥大性の心筋症である請求項16に
    記載の方法。
  18. 【請求項18】 患者にAkt蛋白質を投与することを包含する虚血状態に
    罹っている患者の細胞内でVEGFの発現を誘発する方法。
  19. 【請求項19】 Akt蛋白質が、Akt1、Akt2、およびAkt3か
    らなる群から選択される請求項18に記載の方法。
  20. 【請求項20】 Akt蛋白質がAkt3である請求項19に記載の方法。
  21. 【請求項21】 VEGFが、VEGF121、VEGF165、VEGF189
    VEGF206、VEGF−2、VEGF−B、およびVEGF−Dからなる群か
    ら選択される請求項18に記載の方法。
  22. 【請求項22】 発現制御配列に動作可能に関連付けられているAkt蛋白
    質をエンコードする核酸を患者に投与する請求項18に記載の方法。
  23. 【請求項23】 核酸がプラスミドまたはウイルスベクターの一部である請
    求項22に記載の方法。
  24. 【請求項24】 核酸がプラスミドの一部である請求項23に記載の方法。
  25. 【請求項25】 ウイルスベクターが、レトロウイルス、アデノウイルス、
    アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルス、およびワクシニアウイルスからなる群
    から選択される請求項23に記載の方法。
  26. 【請求項26】 Aktが、細胞内で構成上発現する請求項22に記載の方
    法。
  27. 【請求項27】 遷移金属イオンおよび/または血管拡張剤を患者に投与す
    ることをさらに包含する請求項18に記載の方法。
  28. 【請求項28】 虚血状態が、脳血管虚血、腎虚血、肺虚血、四肢虚血、心
    筋虚血、あるいは、虚血性、特発性、または肥大性の心筋症である請求項18に
    記載の方法。
  29. 【請求項29】 発現制御配列に動作可能に関連付けられた第2の血管由来
    因子をエンコードする核酸を投与することをさらに包含する請求項22に記載の
    方法。
  30. 【請求項30】 第2の血管由来因子が、VEGF、酸性線維芽細胞成長因
    子、塩基性線維芽細胞成長因子、内皮細胞成長因子、およびアンギオポイエチン
    からなる群から選択される請求項29に記載の方法。
  31. 【請求項31】 VEGFが、VEGF121、VEGF165、VEGF189
    VEGF206、VEGF−2、VEGF−B、およびVEGF−Dからなる群か
    ら選択される請求項30に記載の方法。
  32. 【請求項32】 第2の血管由来因子が内皮細胞成長因子である請求項30
    に記載の方法。
  33. 【請求項33】 少なくとも2つの形のAkt蛋白質が患者に投与される請
    求項16に記載の方法。
  34. 【請求項34】 Akt蛋白質をエンコードする核酸と、遷移金属および/
    または血管拡張剤と、医薬品として許容される賦形剤とを含む医薬品組成物。
  35. 【請求項35】 核酸が、プラスミドまたはウイルスベクターの一部である
    請求項34に記載の組成物。
  36. 【請求項36】 核酸がプラスミドの一部である請求項35に記載の組成物
  37. 【請求項37】 ウイルスベクターが、レトロウイルス、アデノウイルス、
    アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルス、およびワクシニアウイルスからなる群
    から選択される請求項35に記載の組成物。
  38. 【請求項38】 腫瘍に罹っている患者の血管形成を抑制する方法であって
    、患者のAkt活性レベルを抑制することを含み、それによってVEGFの産生
    を抑制する方法。
  39. 【請求項39】 アンチセンス核酸が細胞内条件下でAktのmRNAにハ
    イブリダイズする条件下、Aktアンチセンス核酸を患者の細胞内に導入するこ
    とを含む請求項38に記載の方法。
  40. 【請求項40】 Aktに特異的に結合する細胞内結合蛋白質を、Aktに
    結合しかつAktを不活性化するのに十分なレベルで患者の細胞内に導入するこ
    とを含む、請求項38に記載の方法。
  41. 【請求項41】 細胞内結合蛋白質は一本鎖Fv抗体(scFv)である請
    求項40に記載の方法。
  42. 【請求項42】 優性ネガティブ形のAktをエンコードする核酸を導入す
    ることを含む請求項38に記載の方法。
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