JP2003528813A5 - - Google Patents

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【書類名】明細書
【発明の名称】遺伝子治療による固体腫瘍及び転移の治療方法
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒト癌患者に対して使用する、全身性抗腫瘍免疫応答を誘起することによって限局性或いは転移性腫瘍の量の増加を抑制または遅延させる薬剤の製造のための非増殖性アデノウィルス遺伝子を運搬するベクターの利用法であって、該ベクターは腫瘍に投与され、該ベクターはチミジンキナーゼをコード化したヌクレオチド配列を含んでおり、該チミジンキナーゼは、唯一のプロドラッグ活性化遺伝子であり、そして該ヒト癌患者は該ベクターの投与後にガンシクロビル或いは類似プロドラッグを投与され、
前記遺伝子運搬ベクターと前記プロドラッグは前記癌患者に対して放射線療法との組み合わせで投与されることを特徴とする利用法。
【請求項2】
前記ベクターは、免疫賦活遺伝子、ゼノ抗原、前記腫瘍に対するハイパー抗原或いはスーパー抗原をさらに含んでいることを特徴とする請求項1記載の利用法。
【請求項3】
前記プロドラッグはバルシクロビル、ファムシクロビル或いはその他の経口投与用類似体であることを特徴とする請求項1または2記載の利用法。
【請求項4】
前記ベクターはインターフェロン、コロニー刺激因子、インターロイキン、ケモカイン或いは共刺激分子である追加の外因性遺伝子を運搬することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の利用法。
【請求項5】
標的の腫瘍は前立腺癌、頭部、首、頚部、脳、膀胱、直腸、膵臓、結腸、肺臓或いは乳房の腫瘍であることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の利用法。
【請求項6】
前記腫瘍は前立腺の腫瘍であることを特徴とする請求項5記載の利用法。
【請求項7】
前記ベクターは109から1015の有効粒子投与量で投与されるように製剤されていることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の利用法。
【請求項8】
前記ベクターは109から1013の有効粒子投与量で投与されるように製剤されていることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の利用法。
【請求項9】
前記ベクターは109から1011の有効粒子投与量で投与されるように製剤されていることを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載の利用法。
【請求項10】
ヒト癌患者に対して使用する、全身性抗腫瘍免疫応答を誘起することによって限局性或いは転移性腫瘍の量の増加を抑制または遅延させる組成物であって、該組成物は非増殖性アデノウィルス遺伝子運搬ベクターを含有し、そして、該ベクターはチミジンキナーゼをコード化したヌクレオチド配列を含んでおり、該チミジンキナーゼは、唯一のプロドラッグ活性化遺伝子であり
前記組成物は、腫瘍に投与され、そして、前記ヒト癌患者は前記組成物の投与後にガンシクロビル或いは類似プロドラッグを投与されることを特徴とし;
前記組成物と前記プロドラッグは前記癌患者に対して放射線療法との組み合わせで投与されることをさらに特徴とする組成物。
【請求項11】
前記ベクターは、免疫賦活遺伝子、ゼノ抗原、前記腫瘍に対するハイパー抗原或いはスーパー抗原をさらに含んでいることを特徴とする請求項10記載の組成物。
【請求項12】
前記プロドラッグはバルシクロビル、ファムシクロビル或いはその他の経口投与用類似体であることを特徴とする請求項10または11記載の組成物。
【請求項13】
前記ベクターはインターフェロン、コロニー刺激因子、インターロイキン、ケモカイン或いは共刺激分子である追加の外因性遺伝子を運搬することを特徴とする請求項10から12のいずれかに記載の組成物。
【請求項14】
標的の腫瘍は前立腺癌、頭部、首、頚部、脳、膀胱、直腸、膵臓、結腸、肺臓或いは乳房の腫瘍であることを特徴とする請求項10から13のいずれかに記載の組成物。
【請求項15】
前記腫瘍は前立腺の腫瘍であることを特徴とする請求項14記載の組成物。
【請求項16】
前記ベクターは109から1015の有効粒子投与量で投与されるように製剤されていることを特徴とする請求項10から15のいずれかに記載の組成物。
【請求項17】
前記ベクターは109から1013の有効粒子投与量で投与されるように製剤されていることを特徴とする請求項10から16のいずれかに記載の組成物。
【請求項18】
前記ベクターは109から1011の有効粒子投与量で投与されるように製剤されていることを特徴とする請求項10から17のいずれかに記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
関連出願
本願は1999年10月7日出願の米国仮特許願第60/158068号「遺
伝子治療による固体腫瘍及び転移の治療方法」の優先権を主張する。
米国政府の権利
本研究は米国政府の援助資金を受けた。よって、米国政府は本願発明に一定の
権利を主張することができる。
【0001】
技術分野
本願発明は一般的に癌治療に関し、特定すれば、ベクター構造体、プロドラッ
グ活性技術、免疫刺激構造体及び現在の標準治療法と両立する方法によるそれら
の利用を通じた固体腫瘍の成長と転移の抑制方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
癌患者の増加
癌は何百万もの人々を苦しめている。癌は米国で第2位の死因であり、全死亡
件数の4分の1を占める。初期形態、転移形態を含んで多くの異なるタイプの癌
症状が存在し、次のものは米国における予想された疾病率と死亡率の一部である
(S. H :Landis, T. Murray, S. Bolden and P. A. Wingo, CA Cancer J. Clin. 49: 8-31,1999)
【0003】
1999年に1221800名が新たに癌にかかると予測された。そのうち、
623800名は男性であり、598000名は女性である。270000件の
生殖器系腫瘍(子宮頚部、子宮体、卵巣、陰門、膣、前立腺、睾丸等々)、22
6000件の消化器系腫瘍(食道、胃、小腸、結腸、直腸、肛門、膵臓、肝臓等
々)、18000件の新たに診断される乳癌が発生すると予測された。残りの新
たに診断された癌を含んだその他の腫瘍には、泌尿系(86500件)、リンパ
(64000件)、呼吸器系(187600件)、脳及び他の神経系(17000件)、皮膚(
54000件)が含まれる。非固体腫瘍(白血病)は新規に診断された腫瘍のう
ちのたった30000件である。
【0004】
1999年に癌で560000名が死亡すると予測された(290000名の
男性と270000名の女性)。女性の中で、61000名は消化器系、690
00名は呼吸系(ほとんどが肺癌)、43000名が乳癌で死亡し、その他の固
体腫瘍部位での死亡は27000名であると予測された。非固体腫瘍の癌を原因
とする死亡は約9700名を占めると予測された。男性では、70000名が消
化器系、95000名が呼吸系(ほとんどが肺癌)、37000名が前立腺癌で
、残りの290000名はその他の腫瘍が原因であると予測された。たった12
000名の癌による死亡者が非固体腫瘍によるものと予測された。
【0005】
癌による死亡のほとんどは病気の転移によるものである。転移性の疾患とは元
来の部位以外での腫瘍細胞の成長である。癌患者に初期の診断で転移が発見され
ないことは異常ではない。これらは微小転移(micrometastasis)と呼称されるこ
とがある。
現行治療法
癌は細胞の無制御な分裂を特徴とする。この無制御分裂は典型的には腫瘍の形
成につながる。それはその後に他の部位に転移することがある。
【0006】
現行の癌治療法は大きく4つのカテゴリーに分類できる。手術治療、放射線治
療、化学治療及び免疫治療である。
【0007】
手術による腫瘍治療はさらに3種に分類される。治癒を目的としたもの、縮小
を目的としたもの及び(痛み等の)軽減を目的としたものである。手術の主要な
目的は腫瘍を完全に切除し、“正常な”周囲部を確保することである。腫瘍を完
全に取り除くことはしばしば不可能である。腫瘍の部位の問題であったり、周囲
の正常組織が侵略されている場合である。例えば、神経根、筋肉または骨内に侵
略した腫瘍の場合である。手術は、血液またはリンパ管を介して他部位に転移し
ておらず、手術が困難な組織を冒していない癌の初期段階で診断された腫瘍に必
要な唯一の治療である。しかし、そのような場合でさえ追加的治療を要するであ
ろう。例えば、乳腺腫瘤摘出手術を受けた女性患者は再発防止のため、手術後に
放射線治療を受けることが多い。患者が手術のみで治癒すると認定されるには完
全な潜伏評価が必要である。この潜伏評価は病気が拡散していないことを確認す
るものである。しかし、その後でも、腫瘍を完全に切除したと考えられた多くの
患者で再発が見られる。手術は腫瘍縮小のためにも実行される。腫瘍はさらに化
学治療あるいは放射線治療、またはそれらの両方で抑制される。放射線治療及び
化学治療を最初に実施する理由は、当初、腫瘍が大きすぎて切除できず、手術が
できる程度にまで腫瘍を縮小させなければならないからである。手術の別の役割
は軽減(例えば、痛みの除去)である。この意味では手術は治療ではなく、症状
の軽減を目的とする。脊椎を圧迫する病気を有した患者の軽減腫瘍手術の場合、
腫瘍は痛みや神経欠損の症状を和らげるために取り除かれる。簡単に言えば、手
術は癌の切除により癌を治療するものである。
【0008】
放射線治療は癌患者の約50%に適用されている。放射線治療は治癒目的、補
助目的または軽減目的で利用される。放射線治療のみで治療できる癌も存在する
。放射線治療に適したと判断された患者群とは充分な潜伏観察が施され、局部的
または限定的な病気であると判断された患者たちである。外科医がメスを使用す
るのと同様に、放射線医師は放射線ビームを使用して細胞のDNAの二重螺旋の
破壊等の物理的ダメージを与えることで癌細胞を破壊する。放射線投与量は多量
、少量、短時間、長時間等で制御される。放射線源は放射性シード、放射性源プ
ローブ、またはリニア加速器と呼ばれる機械で発生される高エネルギーX線のご
とき外部放射線ビーム等である。程度や状況によって、放射線のみで治癒が可能
な癌は前立腺癌、頭部及び頚部癌、脳腫瘍等々である。しかし、他の癌治療法と
同様に再発する患者も多い。
【0009】
大抵の場合、放射線治療は補助的に利用される。放射線は手術前後または化学
治療前後に与えられる。これらの例には乳腺腫瘤摘出後に放射線が適用される乳
癌患者、手術で取り除かれた頭部または頚部の癌患者で再発が危惧される患者、
及び手術が困難な患者が含まれる。このような状況は化学治療の場合も同様であ
る。例えば、腫瘍が化学治療で縮小し、化学治療では破壊されなかった残りの腫
瘍細胞を全滅させる目的で放射線を使用する場合や、5-フルオロウラシル(5-fl
uorouracil)のごときで放射線治療と化学治療を相互に補完させる場合である。
【0010】
放射線治療が利用される別の場合は、脳または脊髄圧迫に関係する骨の痛みや
神経症状を軽減させることを目的とした場合である。
【0011】
化学治療は細胞サイクルを妨害することで、あるいは癌細胞のDNAに侵入す
ることで効果を発揮する。他の方法の場合と同様に、化学治療は完全治癒を目的
としたり、補助的に利用されたり、放射線に付随的に利用されたり、軽減目的で
利用される。利用される化学治療の養生法は治療部位と病理学上のサブタイプに
よって決定される。化学治療は全身的に行われ、全身の癌細胞に作用する。この
全身効果は治療部位の癌細胞のみを破壊する放射線治療や手術治療の場合とは異
なる点である。大抵の場合、化学治療剤はそれぞれの薬剤の作用の異なる作用を
利用し、1種の薬剤抵抗性突然変異細胞の拡散を回避するために複数の薬剤によ
る治療薬として投与される。
【0012】
化学治療は睾丸腫瘍とリンパ腫の患者に対して良好な治療結果をもたらす。化
学治療は手術、放射線治療あるいは両方と組み合わされて補助的に使用されるこ
とが多い。例えば、化学治療は非小型細胞肺癌、膀胱癌、頭部及び頚部癌並びに
ホドキンズリンパ腫の患者での放射線治療に先立って利用される。小型細胞肺癌
、肛門癌、ほとんどの胃腸悪性腫瘍(胃、直腸、食道、膵臓)の患者に対して放
射線と共に利用される。その治療は膀胱癌、膵臓癌、胃癌、乳癌及び他の固体腫
瘍の手術後に施される。痛みや神経症状を持つ患者の軽減措置としても利用され
る。
【0013】
現在の治療法の限界
前述の標準的治療法は大きな限界がある。100%の治療効果があるものは
なく、すべてのものに副作用がある。手術と放射線治療には限界があり、これら
は局部的にのみ利用できる。用量の限界もあり、付近の正常細胞を痛めないよう
に過剰な量の放射線を利用することができない。同様に、どこまで手術で切除す
るかの決定も困難であるという限界もある。正常な組織の過剰切除は患者に過剰
な疾病の可能性を残す。化学治療は身体の全ての組織に影響を及ぼす。なぜなら、
全身的に投与されるからである。複数の異なる化学治療剤は異なる臓器に異なる
作用で影響を及ぼす。最も普通に影響を受けるのは骨髄であり、血液値の降下は
化学治療剤の投与量を制限する。腎臓、肝臓、胃腸及び他の組織への悪影響もある。
【0014】
原発性固体腫瘍は一般的に手術による切除で治療される。しかし、固体腫瘍を
有する患者の大多数は原発性腫瘍部位以外に微小転移を有している。手術のみの治
療ではこれら患者の70%は癌の再発を経験するであろう。従って、手術に加え
て多くの患者は細胞毒性化学治療薬(例えば、ビンクリスチン、ビンブラスチン
、シスプラチン、メトトレキサー、5-FU、等々)が関与する治療及び/又は
放射線治療をも併せて受ける。しかしこの方法の1つの問題は、放射線治療と化
学治療剤は正常組織に有害であり、しばしば重大な副作用を起こすことである。
加えて、これらの方法はしばしば非常に高い失敗/回復率(癌のタイプによって
は90%程度まで)を有する。
【0015】
治療法の開発
手術、化学治療及び放射線治療の外に、癌細胞を排除するために患者自身の免
疫力を高める多くの試みがなされている。いくつかの免疫治療は腫瘍細胞を破壊
させる免疫力を高めるために補助体としてバクテリアあるいはウィルス成分を利
用する。そのような成分の例にはBCG、内生毒素、混合バクテリアワクチン、
インターフェロン(α、β及びγ)、インターフェロン誘引剤(例えば、牛流産
菌、様々なウィルス)及び胸腺因子(例えば、チモシン因子5、チモシンα1)
(概して、"Principlesof Cancer Biotherapy,"Oldham (ed.), Raven Press,
NewYork, 1987を参照のこと)が含まれる。そのような治療薬は一般的に補佐
薬として、及び動物の腫瘍モデルでの非特定刺激剤として有効であった。しかし、
人患者に対する効果は実証されていない。
【0016】
リンホカインも癌の治療に利用されてきた。リンホカインは種々な細胞により分泌され
、免疫反応の発生で特定細胞に影響を及ぼす。リンパ液の例には、TNF-α、
インターフェロン、インターロイキン(例えば、IL-1、-2、-3、-4及び-
12、G-CSF、GM-CSF、M-CSFのごときコロニー刺激因子)が含ま
れる。近年、腫瘍細胞に対して細胞毒性である多量の細胞を生産するためにIL
-2の利用が研究された。別な研究対象はケモカイン(chemokines)である
(Rosenberget al.,N. Engl. J Med. 313 : 1485-1492,1985)。これらは
免疫細胞を所定部位に引きつけて免疫反応を刺激し得別の薬剤である。この1例はラ
ンテス(Rantes)である。
【0017】
抗体利用抗癌治療も提案されている。ユニークであるか、正常細胞よりも癌細
胞において優勢な所定の細胞表面抗原を認識する抗体が開発される。これら抗体あ
るいは“魔法の弾丸”は腫瘍細胞を選択的に殺傷するために単独または毒素と共
に利用できる(Dillman,"AntibodyTherapy,"Principles of Cancer Biotherapy,
Oldham(ed.), Raven Press, Ltd., New York, 1987).。例えば、ボール他
(Blood 62 :1203-1210,1983)は、白血病に特定的な幾種類かのモノクロナー
ル抗体で急性骨髄性白血病の患者を数名治療し、治療中に循環する白血病細胞の
大きな減少を確認した。同様に、例えば、黒腫、結腸直腸癌、前立腺癌、乳癌、
及び肺癌等の様々な腫瘍の治療に毒素抱合抗体が利用された(Dillman、上記)
しかし、1つの問題は、大抵のモノクロナール抗体はマウスを源にしており、
マウス抗体に対するアレルギーが(特に反復治療後に)治療効果を限定的にする。
通常の副作用は、発熱、発汗、悪寒、発疹、関節炎、及び神経麻痺である。
最近、人間患者用モノクロナール薬剤が試験され、少なくとも1つは認可された
(“ハーセプチン/トラスズマブ”)。これは腫瘍細胞のher2-neuマーカを
認識するモノクロナール抗体である。この薬剤は転移性乳癌の治療に認可された
(Goldenberg,Clin. Therapy 21 : 309-318,1999) 。しかし、乳癌治療の
効果は決定されていない。
【0018】
遺伝子治療(遺伝子ビークル
遺伝子治療ベクターは2種のタイプに分類できる。ウィルスと非ウィルスであ
る。両タイプはT.フレイドマン編集の「ヒト遺伝子治療方法」(コールドスプ
リングプレス社出版、1999年)に詳述されている。最も普通に使用されるウ
ィルス系ベクターはレトロウィルスベクター(retroviral vector)とアデノウィ
ルスベクター(adenoviralvector)である。これは部分的には歴史的な理由と、
部分的には臨床的に有用な量で比較的簡単に生産できるからである。これらのベ
クターは両方とも臨床的に多用されており、アデノ関連ウィルスベクター(Adeno
-associatedviral vector)、ラブドウィルス(rhabdovirus)、ヘルペスウィルス
ベクター(herpesviral vector)及びクシニアウィルス(vaccinia virus)また
はポックスウィルス(poxvirus)に基くベクターを使用して臨床実験が実施された
。これらウィルスは利点と弱点とを併せ有している。しかし、これら全ては遺伝
子をターゲットである目標組織に比較的効率良く搬送する。これらの弱点は充分
な量が生産できないこと、生体内で遺伝子を正確にターゲットに運べないこと、
ウィルス遺伝子生成物の毒性あるいは免疫副作用があることである。しかしなが
ら、比較的に効率的なウィルスであっても遺伝子を全ての病気細胞に運搬すると
考えることはできない。よって、治療はこの問題を解消させる手段で実施される
必要がある。
【0019】
非ウィルス系には、裸(naked)DNA、細胞内脂肪粒子(lipososome)内で形成
されたDNA及びポリカチオン濃縮剤(polycation condensing agent)またはハ
イブリッド系で形成されたDNAが含まれる。これらの系は生体内で長期の半減期を
提供し、ターゲット細胞/組織へDNAを運搬し、細胞質と核への侵入を実現さ
せ、続いて発現させるように、充分に制御されたステップでの構築にさらに好都
合である。これらの問題にはそれぞれ可能な解消策が存在するが、それらは効率
的には組み合わされておらず、生体内の遺伝子搬送の効率化は今日でも問題であ
る。よって、これらのにおいても、遺伝子を全ての細胞(例えば腫瘍)
に搬送できると考えるのは妥当ではない。
【0020】
従って、遺伝子運搬体を使用した癌治療において、遺伝子運搬の効率を高める
手段の利用が必要である。それらには免疫系の刺激効果、種々な形態の傍観者効
果(bystandereffect)、アポトシス(apoptosis)の拡散効率、抗脈管形成効果、
凝結促進効果、転写性ウィルスベクターの利用等が含まれる。
【0021】
癌遺伝子治療法
多くの癌患者に対する一般的な治療の困難性及び前述したごときの従来治療法
の改善の停滞のため、癌の治療には遺伝子治療のごとき新規な方法への期待が高
まっている(F.Farzaneh, U. Trefzer, W. Sterry and P Walden :"Gene therapy
ofCancer"Immunology Today 19: 294-296,1998を参照)。これらには次のような
様々な例が含まれる。腫瘍及びその推定腫瘍関連抗原(例えば、Addison et al.
Gene Ther.5: 1400-1409 1998)に対する免疫力を高めるために様々なサイト
カイン及びケモカインのための遺伝子の導入、それら抗原(例えば、Schlom &
HodgeImmunol Rev. 170: 73-84 1999)に対する免疫力を高める特定TAAのための遺伝
子の投与、腫瘍抑制剤またはp53(Eastham JA J. Urol.164: 814-9 2000)
のごときアポトシス誘導遺伝子(apoptosis inducing gene)での治療、脈管形成
の抑圧に導く遺伝子による治療、またはその他の腫瘍部位への血流を減少させる
治療(例えば、Grischelli et al Proc Natl Acad Sci USA 95: 6367-6372 1998,
WO96/21416)、不活性化合物を活性抗腫瘍化合物に代謝させる遺伝子での治療
(Connors,Gene Ther. 2: 702-709 1995, Deonarian et al. Gene Ther. 2:
235-244 1995)、並びにそれらの組み合わせ(例えば、Soler MN,Cancer
ImmunolImmunother. 48: 91-99 1999)、及びT細胞抗腫瘍反応を有効化する
他の方法である。使用されるベクターにはレトロウィルスベクター、アデノ
ウィルスベクター、裸及び加工DNA、ヘルペスウイルスベクター、アデノ
関連ベクター、及び他の多種類のベクター(T. Friemann 1999 前掲)が含まれる。
動物実験はこれらの治療法とベクターの成功の可能性を示唆しており、多くは将
来の実用性を期待させる。しかし、前述のように、実用には論理的な困難が伴う。
残念なことは、遺伝子治療の取り組みは、一般的に単独治療であると考えられており、
他の治療に効果が期待できないような治療の最終段階の患者で単独に使用されている。
遺伝子治療の導入と利用は、他の標準的な治療と同列に扱われるべきものであり、
他の治療法と組み合わせて利用すべきであり、遺伝子治療が補助的に利用されると問
題は単純化する。
【0022】
多数の動物腫瘍研究が、ヘルペスウィルスチミジンキナーゼ(Herps virus thy
midine kinase)をエンコード(encode)したアデノウィルスベクターを使用して行
われてきた(HSVTK、AdTk、AdV-tk等々)(J. A. Eastham et al. Hum.
Gene Ther. 7515-523 1996 ; M. Y. Hurwitz et al. Human Gene Ther. 9:
1323-13331998、および他のこの文献で引用される文献、これらの文献は、
本明細書において参考として援用される。)。さらに、TKをエンコード
したアデノウィルスベクターの複製(O. Wildner etal. Gene Therapy 6:
57-621999) と、プロドラッグ活性遺伝子(PDAG)をエンコードした
アデノウィルスベクターの放射線治療との併用(Freytag et alHum. Gene
Ther. 9:1323-1333 1998、および他のこの文献で引用される文献、これらの文献は、
本明細書において参考として援用される。が動物モデルで報告された。しかし、
これら治療の臨床適用は前述の問題を孕んでいる。さらに、TKをエンコード
するアデノウィルスベクターとガンシクロビル(gancyclovir)とを使用した臨床
実験結果もステージT2での放射線治療後の局部再発を伴った前立腺癌の患者
で報告された(J.R. Herman, Hum. Gene Ther. 10: 1239-1249 1999)
このデータから、アデノ-TK単独治療は固体腫瘍の治療にはさほど有効では
ないように思われる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
新治療法導入での問題
臨床実験は正規なルールに基いて正当に行われる(例えば、米国法典第21を参照)。
このようなガイドラインは患者支援団体、米国立衛生研究所、倫理規準および
医師の助言によって、特定の医療機関で施行された各々の臨床試験における
そのような問題を具体的に検討するように設立された治験審査委員会によって、
そして、国の医薬品承認機関(米国では、これは、米国医薬品食品局、FDA
である。)によって実行され監視される。試験は患者から通常の場合に患者に
対してなされることになる最も適切な治療を受ける権利を奪うことなく進められる。
従って、特に癌の場合に、新治療法の単独効果を決定することは困難である。
そのような新治療法が臨床的に導入できるのは、他の治療法が試され、
他に有効な治療の手段が無い場合に限られる。そのような患者は通常において
病気が既に進行しており、余命が長くはないと考えられる患者である。
このことは新治療法の実験を非常に困難にし、効果の発揮が
ほとんど望めないものとする。このような取り組みの代用として、現行の治療に
追加する形で実験される。よって、新治療法は少なくとも現行の治療法の邪魔を
することができない。理想は、新治療法は現行の治療法の手助けをすることであ
る。さらに、遺伝子治療が入院や長いホームケアを必要とする場合には困難が増
幅し、費用もかかる。従って、そのような余分な負担がかからない新治療法が患
者、医者及び治療費を賄う団体にとって受け容れ易い。結果として、そのような
治療法は国の認可を得られ易くなり、医者に利用され易くなる。
【課題を解決するための手段】
【0024】
発明の概要
プロドラッグ活性遺伝子をードした遺伝子運搬ベクターが腫瘍の成長を阻害
するために、現行の標準治療法に加えて、さらなる遺伝子治療ベクターとともに
または伴わないで利用される。この遺伝子治療は現行の標準治療法に加えて実施さ
れる。本願発明の1特徴において、遺伝子治療はHSVTKのごときプロドラッ
グ活性遺伝子をエンコードするアデノウィルスベクターでの治療と組み合わされ
、対応するプロドラッグと放射線治療にフォローされて前立腺癌腫瘍または乳癌
腫瘍の成長を阻害するために行われる。本願発明の別な特徴によれば、方法は前
立腺癌と乳癌の転移病変の成長を阻害するために提供される。本願発明の1実施
例においては、ステージT2a以下、PSAレベル<10ng/ml、グリーソンスコ
ア(Gleasonscore)10以下の患者が、前立腺の両部分へ注射によって5x10
11のウィルス粒子(vp)のベクターが第0日に投与され、ほぼ同量が第15日に
投与される。第1日〜28日に2gの p.o.t.i.d.のバルシクロビル(Valacyclovi
r)(Valtrex(登録商標))が投与され、第2日〜3日に開始する放射線治療が7週間で約7
0GY投与される。本願発明の別実施例では、病気ステージT3、グリーソンス
コア7以上、PSAレベル10ng/ml以上の患者に対して、前立腺内に5x10
11のvpのアデノTKベクターを第0日、56日及び70日に注射投与し、バラ
シクロビルを第1日〜14日、57日〜71日、71日〜84日に投与し、第5
6日〜57日に開始される放射線治療が施され、70GYの量を7週間で投与さ
れた。本願発明の別実施例では、局部的リンパ腺へ転移した患者に対して、前立
腺に5x1011のvpのアデノTKベクターを第0日、50日及び70日に投与
し、バルシクロビルを第1日〜14日、57日〜1日、71日〜84日に投与し
、放射線治療を第56日〜57日に開始して7週間かけて70GYを投与した。
【0025】
別の実施例で膵臓癌患者はAd-tkが直接的に腫瘍内注入され、その後にアシク
ロビル投与及び放射線治療と化学治療を受けた。別の実施例では頚-子宮癌患者
はAd-tkの直接的腫瘍内注入され、アシクロビル投与及び放射線治療と化学治療
を受けた。別の頭部と首部の癌患者はAd-tkの直接的腫瘍内注入に続き、アシクロビ
ル投与及び放射線治療受けた。
本願発明の別の形態では、アデノウィルスベクターが利用可能な希釈剤または
キャリヤーと共に薬剤組成物として提供される。本願発明のこれら及び他の特徴
は以下の詳細な説明と図面とによって詳しく説明されている
【発明を実施するための形態】
【0027】
発明の詳細な説明
上述したように、本発明は、腫瘍の成長を抑制して固形腫瘍および転移におけ
る治療法を向上させる方法に関する。
【0028】
簡潔にまとめれば、遺伝子輸送ビークル(GDV)による腫瘍細胞へのヘルペ
スチミンキナーゼの導入によって、多数の腫瘍細胞を除去し、全身的な抗腫瘍効
果を刺激する能力は、さらにプロドラッグ、ガンシクロビルや類似の化合物を用
いた処置によって補足される。現行の治療法のコンテキスト内でこれを行なうこ
とは、標準治療の療法に魅力ある使用しやすい追加効果を提供する。さらに、こ
の治療法が標準治療と拮抗しない場合や、それどころか協調して働く場合には、
臨床試験ははるかに簡単になり、医師と患者はこの新しい治療法を進んで用いる
ことになり、患者には付加的な臨床的利益がもたらされるであろう。しかしなが
ら、さらなる問題は新治療法の複雑さと費用である。臨床治療に関する主要なコ
スト問題は、入院期間の長さ、およびまたは患者を看護する医師や看護婦の人数
である。このように、ガンシクロビル注入(通常は14日間毎日数時間にわたる
)のような治療法は、通常は、この期間の入院または費用のかさむ自宅療養が必
要となる。これが従来の処置では必要ない場合、入院、費用、不便といった余計
な負担が、この新治療法の使用の頻度を低下させることになろう。したがって、
本発明の一実施例は、経口で服用可能なバラシクロビルやファムシクロビルとい
った、容易に自己投与できるプロドラッグの使用である。
【0029】
遺伝子構成体
本発明では、様々な種類の遺伝子構成体が実施される。プロドラッグ活性化遺
伝子は通常、プロモータとなるコード化シークエンス(配列)を持つ。DNA形式
であればポリアデニル化部位である。もう一つの実施例においては、ベクタ
ーは以下のようなRNAゲノムを持つ。すなわち、アルファウイルスベクター、
ポリオウイルスベクター、インフルエンザウイルスベクター、棒状ウイルスベク
ター、ポリカチオン性凝縮剤により製剤化されたRNA分子、様々な種類の脂質
剤など、当該分野で公知のその他の製剤である。RNAベクターのケースで
は、コード化シークエンスは遺伝子の発現を導く配置で遺伝子輸送ベクタのゲノ
ムに挿入される。プロモータはウイルス性もしくは非ウイルス性で、一実施例に
おいては、前立腺組織にはPSAプロモータによってといったように、組織特異
的な発現を持つように設計されている。別の実施例においては、プロモータは、
細胞サイクルの回転に反応したり、p53突然変異腫瘍細胞内のp21プロモー
タのような、沈黙遺伝子の発現を導く腫瘍細胞内の変化に反応したりするプロモ
ータによって腫瘍特異的発現を示すように設計されている。さらに別の実施例に
おいては、プロモータは、ラウス肉腫ウイルスLTRプロモータやCMV最初期
プロモータなどによって、ほとんどの組織で無差別な発現をするように設計され
ている。さらに別の実施例においては、組織およびまたは腫瘍の特異性は、増大
エレメント、遺伝子座コントロール領域、特定のRNAの核外輸送、スプライシ
ング配列、翻訳コントロールエレメント、細胞タイプ特異的タンパク質プロセシ
ング機能など、その他の細胞特異的生化学的プロセスによって決められる。
【0030】
好適な実施例においては、遺伝子を活性化するプロドラッグはRSV LTR
プロモータによって駆動される。
【0031】
遺伝子及び薬剤を活性化するプロドラッグ(PDAG)
遺伝子を活性化するプロドラッグは、不活性の薬剤を、細胞増殖を抑制したり
、細胞や場合によっては近隣の細胞を殺したり(“bystander eff
ect” Touraine et al., Hum Gene Ther.
9:2385−239、1998”)、もしくは細胞の機能のいくつか(例え
ば、転移能力、血管形成プロモータの分泌能力、免疫システムの抑制能力、その
他腫瘍細胞や腫瘍床や腫瘍エリア内の細胞が持つ異常な特性)を抑制したりする
などの、薬学的に活性の状態に変化させる機能をエンコードした遺伝子やタンパ
ク質産物である。本発明において、遺伝子を活性化するプロドラッグ(ウイルス
性、非ヒト由来、ヒト由来)が、広範にわたって考察されている(Connor
s, Gene Ther. 2:702−709、1995、Deonari
an et al. Gene Ther. 2:235−244、1995、
参照。これらは出典を明記することによりその開示内容全体を本願明細書の一部
とする)。すなわち、ガンシクロビル、アシクロビル、バラシクロビル、ファム
シクロビルと併用したHSV TK遺伝子、同じプロドラッグと併用した他のヘ
ルペスウイルスTK遺伝子、フルオロシトシンと併用したシトシンデアミナーゼ
遺伝子、CB1945と併用したニトロレダクターゼ遺伝子、チオキサンチンと
併用した大腸菌gpt遺伝子、エトポサイドリン酸カルボキシペプチダーゼG2
とナイトロジェンマスタードプロドラッグと併用したアルカリ性ホスファターゼ
遺伝子など、その他様々な遺伝子と薬剤の組み合わせである。
【0032】
ベクタで搬送される他の遺伝子または機能
本発明の別の実施例においては、遺伝子輸送ビークルは、遺伝子活性化プロド
ラッグに加えて、付加的な外因性の遺伝子を、個別のコード化領域として、もし
くは遺伝子活性化プロドラッグと融合して運ぶ。本発明のもう1つの態様では、
遺伝子活性化プロドラッグの産物は活性化プロドラッグの特性のほかに付加的な
特性を持つ。それは例えば、本発明の別の実施例においてはHSV−tkのハイ
パー抗原機能である。付加される外因性の遺伝子は、他のPDAG、またはTK
シトシンデアミナーゼ融合物のようなこれらの物質の融合物である。本発明のさ
らに別の実施例においては、付加される外因性の遺伝子は、インターフェロンα
、β、γといったサイトカインや、GMCSF、GCSF、MCSFといったコ
ロニー刺激ファクタをエンコードしている。さらに別の実施例においては、付加
される外因性の遺伝子は、IL1、IL2、IL3、IL6、IL7、IL8、
IL10、IL12、IL13、IL15、TNFといったサイトカインから選
ばれる。別の実施例においては、付加される遺伝子は、ランテス、Myp1αC
XCR4リガンドといったケモカインであるか、B7.1、B7.2、β2マイ
クログロブリン、NK刺激分子、ICAM1、2、3、HLA分子といった免疫
学的共刺激分子である。さらに別の実施例においては、付加される遺伝子は、細
胞受容体や細胞経路といったプロドラッグ用の輸送分子をエンコードしている。
さらに別の実施例においては、付加される遺伝子は、近隣の細胞の外因性タンパ
ク質の摂取を促進するコネキシンやVP22との融合物やHIV−tatといっ
た、近隣に及ぼす効果を促進する分子をコードしている。さらに別の実施例にお
いては、付加される遺伝子は、エンドスタチン、アンジオスタチン、βインター
フェロンといった血管新生阻害剤や、組織因子(Tissue Factor
のような凝血促進遺伝子や、これらの変異体などをコードしている。さらに本発明は
、PDAGではなく、標準治療で使用されるカテゴリーの遺伝子のみとともにG
DVを使用する方法についても考察している。PDAGの中のタンパク質はまた
、従来の異物的抗原やスーパー抗原(例X参照)として免疫反応を刺激するとい
った、他の抗腫瘍機能も持っている。スーパー抗原はこの場合、免疫「拡張」に
よる抗腫瘍効果を持つ。その際、細胞内の1抗原に対する免疫反応が、他の抗原
や、その細胞内のそれ以前は免疫を生じるとは見なされなかった自己抗原にまで
対抗する免疫反応につながるのである。
【0033】
遺伝子輸送ビークル
様々なタイプのベクタ(例えば、Friedmann 1999、前掲書中の
D.J.Jolly参照)を複製することが、一つには、上で略述した諸問題に
対処するために、また一つには、関係するウイルスの自然特性を利用するために
提案された。これらは、例えばポックスウイルス、アデノウイルス(米国特許第
5998205号、米国特許第5871726号)、ヘルペスウイルス(米国特
許第5728379号)、パルボウイルス、アルファウイルス、レトロウイルス
、棒状ウイルス、その他に基づくものである。NEED noncondotional ref REFS
一実施例においては、ベクタ構築には、適性のある複製、第1世代(E1遺伝
子領域削除)、第2世代(E1、E4またはE2削除)、第3世代(「実質のな
い」)のアデノウイルスベクタを含む、アデノウイルスベクタが用いられる。本
発明の別の実施例においては、GDVは特定の細胞マーカーと結合されることに
よって、特定の細胞タイプをターゲットとできるアデノウイルスベクタに変更さ
れている。そのためにリガンドがウイルスベクタコートに加工されている(Pr
intz et al. Hum. Gene Ther. 11:191−2
04、2000)。本発明の遺伝子輸送ビークルはまた、他のウイルス性キャリ
ア(T.Friedmann 1999、前掲参照)でもよい。それ
には例えば、ポリオウイルス(Evans et al.、 Nature 3
39:385−388、1989およびSabin、J. of Biol S
tandardization 1:115−118、1973)、ハナカゼウ
イルスや、カナリアポックスウイルス、牛痘ウイルスなどのポックスウイルス(
Fisher−Hoch et al.、 PNAS 86:317−321、
1989、Flexner et al.、Ann. N.y. Acad.
Sci. 569:86−103、1989、Flexner et al.、
Vaccine 8:17−21、1990、米国特許第4,603,112号
および同第4,769,330号、WO 89/01973)、SV40(Mu
lligan et al.、 Nature 277:108−114、19
79、strayer et al.、Gene Ther. 4:219−2
25、1997)、インフルエンザウイルス(Luytjes et al.、
Cell 59:1107−1113、1989、McMicheal et
al.、 The New England Journal of Med
icine 309:13−17、1983、Yap et al.、 Nat
ure 273:238−239、1978)、条件つきで発現するベクタや複
製タイプやミニアデノタイプなどを含む様々なタイプのアデノウイルスベクタ(
Berkner、Biotechniques 6:616−627、1988
、Rosenfeld et al.、Science 252:431−43
4、1991、Kochanek、Hum. Gene Ther. 10:2
451、1999、Steiner et al.、Cancer Gene
Therapy 6:456−464、1999、Chen et al.、P
roc Natl. Acad. Sci. USA 94:1645−165
0、1997、Zhang、Cancer Gene Ther. 6:113
−138、1999)、アデノ関連ウイルスなどのパルボウイルス(Samul
ski et al.、Journal of Virology 63:38
22−3828、1989、Mendelson et al.、Virolo
gy J. 66:154−165、1988)、ヘルペス(Kit、Adv.
Exp.Med.Biol. 215:219−236、1989)、HIVと
レンチウイルス(Trono, et al.、Science 236:26
3、1996)、麻疹(EP0440,219)、シンドビスウイルスなどのア
ルファウイルス(Xiong et al.、Science 234:118
8−1191、1989、Polo et al.、Proc. Nail.
Acad. Sci.USA 96:4598−4603、1999)、棒状ウ
イルス、コロナウイルスがある。さらに、ウイルス性キャリアは同族関係で、非
病原性の(欠損がある)、複製に適したウイルスでもよい(例えば、Overb
augh et al.、Science 339:906−910、1988
)。様々なタイプの複製ベクタ(例えば、.J.Jolly in Fried
mann 1999、前掲参照)も使用されうる。これらは例えば、ポックス
ウイルス、アデノウイルス(米国特許第5998205米国特許第587
1726)、ヘルペスウイルス(米国特許第5728379)、パルボウイルス
、アルファウイルス、レトロウイルス、棒状ウイルスなどに基づいている。
【0034】
GDVはまた、1つ以上のベクタを構成要素とするハイブリッドベクタであっ
てもよい(例えば、D.Jolly ch 9 in T.Friedmann
1999 前掲参照)。
GDVはまた、非ウイルス性の輸送システムでもよい。
【0035】
用法及び標準治療処置との相乗作用
本発明はGDV処置を標準的がん治療法と併用して使用する。発明にいたる背
景について述べたように、がん治療には4つの主要なクラスがある。すなわち、
外科手術、放射線、化学療法、免疫療法である。以下に述べるのは、前立腺がん
患者の処置法を決定する際に生じる典型的な経過に基づいた評価のタイプと、そ
の結果とられる多様な治療法の一例である。なんらかの測定可能な発症を伴なう
ほとんどすべてのがんが、同様の方式で論じられる。したがって、処置の決定は
当初は複雑に見えたとしても、実際は広範な臨床経験に基づくものであり、一群
の処置ルールとしてまったく容易に理解されうるものである。これが「標準治療
」の治療法を構成している。そしてこれが、ほとんどの医師が処方し、同業者が
正規と認め、保険会社が支払いを行い、同等の臨床的業績のない治療法と恣意的
に交換されてはならない処置なのである。例えば、グリーソンスコアが6未満で
、PSAレベルが10ng/ml未満のT2段階の前立腺患者は、外部放射線照
射または放射性ペレットのインプランテーション(小線源治療)といった放射線療法
か、上述の考察に基づいた外科的介入によって処置される。乳がん患者は原発性
腫瘍の切除の後、外部放射線照射によって処置され、評価時にかなり進行した
段階のすい臓腫瘍患者は放射線療法で処置される。これらの標準治療の治療法は
腫瘍学者や専門技術者には周知のことで、多くは教科書にも載っており、
学会その他の関連団体の雑誌に定期的に発表されるガイドライン
にも示されている。標準治療の記録の例は、特定のがんに使用できるものについ
ては、Journal Oncologyで発表されているNational
Comprehensive Cancer Network、ペンシルベニア
州ロックレッジ19046(http://www.nccn.org)で入手
でき、また患者用のバージョンはAmerican Cancer Socie
ty, US National institutes of Health
Consensus Statement(http://odp.od.n
ih.gov/consensus/cons/cons.hun)で、おりお
りにNew England Journal of Medicineで発表
された医療トピックスや特定の疾病やがんの報告(例えば、Jay R. Ha
rris et al.、“Medical Progress:Breast
Cancer”、New Eng. J.Med. Vol.372−319
、July、30、1992)である。
【0036】
本発明の好適な実施例においては、プロドラッグの活性化機能やGDVがエン
コードした他の機能は、これらの治療法と拮抗するものではなく、特に好適な実
施例においては、遺伝子療法は「標準治療」の治療法と協働する。
【0037】
協働的、協調的、相助的効果といった用語はどれも、2つ以上の作用因の累積
効果がそれぞれの作用因の効果を加算したときに予想されるよりも大きい場合を
指す。これは専門技術者が知っている多くの方法によって規定されうる。例えば
、Enzyme and Metabolic Inhibitor、第1巻、
Academic Press所収のWebb, J.L.(1963)は、生
化学反応に関するこれらの用語のオリジナルの定義を記述している。またA.M
. Lopez et al(1999)Proc. Natl.Acad.S
ci.US 96:13023−13028では、マウスの腫瘍モデルのような
さらに複雑な状況について、これを再検討している。これらの論文は出典を明記
することによりその開示内容全体を本願明細書の一部とする。拮抗作用とは相助
作用と正反対のものであり、2つ以上の作用因が組み合わされると効果が加算さ
れたときよりも減少する場合である。作用因は、この定義によって形式的には拮
抗すると考えられた場合にも、なおも一緒に使われて役立つ場合もありうる。こ
れはまた、単純に加算された作用因についても当てはまる。
【0038】
したがって、拮抗作用や協力作用がない場合は、これらの治療法をマウスモデ
ルで遺伝子療法と併用して使用することで確認できる。単一の作用因による処置
のヒトに対する腫瘍治療法の結果調査が完全に予測可能なわけではないことは周
知のことであるが、2つの作用因間に相助作用があるかないかの決定は信頼性が
なければならず、これらのモデルにおいて容易に達成できるものでなければなら
ない。その一例として、HSVTKによって変化させ、次いでガンシクロビルと
放射線療法を行なった前立腺腫瘍のアッセイが、例2に示されている。
【0039】
投与法、投与量、製剤(化)
本発明のもう1つの態様においては、PDAGや他の遺伝子を運ぶGDV構成
体は、効果粒子数10から1015までの範囲の様々な投与量で、患者の固形
腫瘍に投与される。診療で使われるアデノウイルスベクタのタイターは、通常1
から1013vp/mlまでの範囲である。患者は1回または数回の投与で
0.3から500mlのベクタを注入される。腫瘍の病巣の大きさは、例えば軟
組織の肉腫、多発性骨髄腫、頭部や頚部の扁平上皮細胞がん腫では、1から20
cmまでである。患者は5日間にわたり、1回の注入につき0.3ml、0.5
ml、1.0mlと段階的に増量した投与量を与えられることもある。しかしな
がら、投与量は腫瘍のサイズと場所によって異なってもよいので、1日に500
mlのベクタまでは投与することができる。この投与量は、一定期間にわたり同
じ腫瘍に、1回または数回の注入で投与される。あるいはまた、1日500ml
までの投与量を5日間にわたって投与し、これを1クールと設定することもでき
る。患者は中毒を起こさなければ反応を確かめるのに必要な回数のクールを受け
られる。各クールは、例えば、数ヶ月または数年にわたって、毎週または隔週で
施される。
【0040】
上記のように、本発明の好適な実施例においては、薬学的混合物はPDAGベ
クタ構成体を運ぶGDVを、薬学的に許容できるキャリアや希釈剤と組み合わせ
て含有しているとことになる(Nyberg−Hoffman and Agu
liar−Cordova、 Nature Medicine、 April
1999参照−この論文の内容は参照により本明細書に組み込むものとする)
。混合物は、液状の水剤でも投与前に溶液に溶かす固体状(例えば、凍結乾燥)
でもよい。さらに、混合物には、表面投与、注入、経口投与、直腸投与などに適
したキャリアや希釈剤を調合してもよい。
【0041】
薬学的に許容できるキャリアや希釈剤は、使用される濃度と調剤量で、受診者
に中毒症状を起こさないものとする。注入溶液用のキャリアや希釈剤の典型例に
は、水や、生理学的pHやベクターが安定するpHに緩衝処理された等張食塩水
(リン酸緩衝食塩水、トリス緩衝食塩水など)、マンニトール、デキストロース
、サッカロース、グリセロール、エタノール、ならびにポリペプチドやヒトの血
清アルブミンのようなタンパク質がある。
【0042】
腫瘍にベクター構成体を直接に投与するには、本発明のコンテキスト内では、
病巣内直接注入、点滴投与、局部送達など、様々な方法が利用できる。例えば、
一実施例においては、病巣の位置が突き止められれば、ベクターは腫瘍本体の異
なった数箇所に1回または数回注入される。あるいはまた、腫瘍を養う動脈や血
管が同定されれば、ベクターは腫瘍に直接に届くように、その血管に注入される
。もう一つの実施例においては、腫瘍の中心にある壊死部分が吸引され、ベクタ
ーは中空となった腫瘍の中心に直接に注入される。さらに別の実施例においては
、ベクター構成体は、例えばベクター構成体を含有した局部的薬学的混合物や、
好ましくはベクター構成体を運ぶ組み換えウイルスベクターの塗布によって、腫
瘍の表面に直接に投与される。ベクター粒子は腫瘍病巣の場所に直接に投与する
(例えば、外科的介入の間に、静脈内、筋肉内、腹膜内、皮下、経口、直腸内、
眼球内、鼻内、膀胱内で)こともできる。または、ベクター構成体は以下のよう
な様々な身体的方法による製剤化の後で送達されることもある。すなわち、リポ
フェクション(Felgner et al.、PNAS 84:7413−7
417、1989)、DNA直接注入(Fung et al.、PNAS 8
0:353−357、1983;Seeger et al.、PNAS 81
:5849−5852;Ascadi et al.、Nature 352:
815−818、1991)、マイクロ弾射出(Williams et al
.、PNAS 88:2726−2730、1991)、数タイプのリポソーム
(例えば、Wang et al.、PNAS 84:7851−7855、1
987参照)、CaPO4(Dubensky et al.、PNAS 81
:7529−7533、1984)、DNAリガンド(Wu et al.、J
.Biol.Chem. 264:16985−16987、1989)、核酸
のみの投与(WO 90/11092)、殺したアデノウイルスと結合したDN
Aの投与(Curiel et al.、Hum.Gene Ther. 3:
147−154、1992)、受容体特異的リガンドを利用したポリリシンなど
のポリカチオン化合物を介して、ならびに、エレクトロポレーションや圧力仲介
送達によるソラーレンで不活性化したセンダイウイルスやアデノウイルスによっ
てである。さらに、ベクター粒子や製剤化された構成体は、複合注入、放射線シ
ード導入、組織分離、当該分野で公知のその他の方法で、望みの場所に直接注入
するか、もしくは患者への負担が最低限になるような様々な形式のカテーテルな
どの臨床的に許容できる他の方法を施した後に、カテーテルによって可能となっ
た操作と関連してベクターの注入や放出が行なわれる。
【0043】
ベクター粒子や定式化されたベクタ構成体は、病巣が存在する多様なタイプの
組織およびまたは細胞に投与されうる。例えば、脳およびまたは脊髄、骨髄、眼
球、肝臓、鼻、咽喉、肺、心臓、血管、脾臓、皮膚、循環器、筋肉、前立腺、乳
房、すい臓、腎臓、子宮頚管、その他の器官である。
【0044】
がん患者の評価
なんらかの腫瘍を持つ患者はすべて、信頼できる評価と効果的な疾病管理がで
きるように、使用する手段や方法や、その実績の累積に応じて、様々な方式で追
跡調査され、段階づけをされる(例えば、Medical Oncology:
Basic Principles and Clinical Manage
ment of Cancer by Paul Calabresi、Phi
lip S. ScheinMcGraw−Hill 1993、Cancer
, Principles and Practice of Oncolog
y 5th edition, Vincent T. DeVita, Sa
muel Hellman and Steven A.Rosenberg
Eds. Lippincott−Raven 1997参照)。例えば、睾丸
がんはベータHCG、AFP、LDHについて、結腸がんは多くの場合CEAレ
ベルについて、前立腺がんはPSAレベルについて、卵巣がんはCA−125レ
ベルについて、追跡調査される。頭部と頚部の腫瘍や上部呼吸管と消化管の腫瘍
は、目で見ることが容易な位置にあるので、多くの場合視覚的検査によって追跡
される。子宮頸管がんの場合も同様である。容易に目で見たり触診したりできな
いエリアは、CTスキャンやMRIスキャンで評価される。MRIスキャンは、
神経軸や中枢神経システムの腫瘍の評価にきわめて有用である。PETスキャン
はがんの診療にはそれほど利用されていない。以下の節では、固形腫瘍疾病の段
階づけと処置決定の一例として、前立腺がんが使われている。
【0045】
前立腺がん患者の段階づけと使用される治療法
上記のように、前立腺がんはアメリカ合衆国では毎年およそ18万件の新たな
評価が下され、数多くの患者が発生している。患者の段階づけと処置はスタンダ
ード化され、十分に定義されている(J.E.Oesterling, 2.F
uks, C.T.Lee and H.J.Scher “Cancer o
f the Prostate” in Vincent T.DeVita
Jr. et al. eds op cit 1997、Chapter 3
3.4 and W.J.Catalona N.Eng.J.Med. 33
1:996−1004、 1994参照)。
【0046】
前立腺がんはTMN(腫瘍サイズ、結節の状態、転移)段階づけシステムによ
って定義される。
【0047】
表1 前立腺がん用AJCC段階づけシステム
初期腫瘍
TX 初期腫瘍は発見されない
T0 初期腫瘍の徴候はない
T1 触診もできずイメージングで見ることもできない臨床的に不顕性
の腫瘍
T1a 組織学的所見に伴なう切除組織の5パーセント未満の腫瘍
T1b 組織学的所見に伴なう切除組織の5パーセント以上の腫瘍
T1c 針生検(例えば、精密なPSA)によって同定された腫瘍
T2 前立腺にとどまる触診可能な腫瘍*1
T2a 片葉を巻き込む腫瘍
T2b 両葉を巻き込む腫瘍
T3 前立腺嚢にまで広がった腫瘍*2
T3a 嚢外への拡張(一側性または両側性)
T3b 精嚢に侵入した腫瘍
T4 以下のような精嚢以外の近隣組織に侵入または定着した腫瘍
膀胱頸部、外部spincter、直腸、挙筋およびまたは骨盤壁

*1:針生検によって双葉に見つかったか、または葉には見つからなかったが、
触診できず、イメージングで見ることもできない腫瘍は、T1cに分類される。
*2:前立腺先端または前立腺嚢への(ただしそれ以上越えてはいない)侵入は
T3ではなくT2に分類される。

B.当該部分のリンパ節(N)
NX 領域リンパ節は発見されない
N0 領域リンパ節転移はない
N1−N3 1つ以上の領域リンパ節に転移
【0048】
遠隔の節の病変や転移病変の確証がある患者は、放射線療法の候補者とは見な
されない。このような患者はホルモン操作で処置されることになる。患者は、そ
のT段階の位置(図1参照。AICC Cancer Staging Man
ual, 5th edition p220, 1997, Lippinc
ott−Taven Publishers, Philadelphia,
USAから転載)、処置以前のグリーソンスコア(値が割り当てられる低倍率の
評価に基づく病理学的値−Gleason D.F., “Histologic
al grading and staging of prostatic
carcinoma”;in Urologic Pathology The
Prostate M.Tannenbaum Ed. 1977, 171
−198 Lea & Febiger Philadelphia参照)、処
置以前の血流中の前立腺特異的抗原(PSA)レベルに応じて、2グループに分
けられる。予後の良好な患者は、転移病変を探すために行なうそれ以上の段階づ
けをする必要はない。この患者グループは、T2a以下の病変、グリーソンスコ
ア6以下、処置以前のPSA<10ng/mlである。このグループ分けに当て
はまらない患者は、胸部X線撮影とともに腹部および骨盤の骨スキャンとCTス
キャンが必要である。予後の良くないグループの患者は、放射線とともにネオア
ジュバントのホルモン療法を受ける。
【0049】
予後の良好なグループの患者は、初期処置として外科手術か放射線療法を選択
できる。外科医は、患者の年齢やリスク要因(医学上危険な問題点など)に基づ
いて手術の候補者とするかどうかを決定する。一般に、70歳以上の患者には放
射線療法を施すことになる。外科医は多くの場合、手術時点のリンパ節への関与
、精嚢への関与、嚢外への拡張のリスクを記述するのにPartinの表を利用
する。
【0050】
予後の思わしくない患者は、予定された手術の時点でこれらの病理学的特質を
示す公算が高く、その場合は患者に手術を受けるのを思いとどまらせることにな
る。放射線療法を受ける患者は、PSAレベルについて綿密に追跡調査される。
放射線治療終了後およそ18ヶ月で、血流中のPSAレベルが最低を示すことが
期待される。血流中のPSAレベルは、1.0ng/ml未満でなければならな
い。処置以前の特質を示す予後のかんばしくない患者は、放射線治療の前に2ヶ
月間継続してホルモン投与を受ける。ホルモンは通常、放射線療法のクールを通
じて投与される。この時点では、患者がどれだけの期間ホルモン療法を続けなけ
ればならないかは誰にもわからないが、放射線治療の完了を以って中止されるこ
とが多い。患者がホルモン療法の延長クール中でなければ、PSAレベルはこの
場合もまた、放射線治療の完了後およそ18ヶ月で最低を示さなければならない
。ホルモン療法の延長クールの場合には、PSA最低値が現われるべき時点につ
いては定められた時刻表がある。PSA最低値が1未満であれば、この期間のお
よそ80パーセントの間、疾病をコントロールした指標となる。
【0051】
様々な段階と処置について、経過が適切に規定され、記録されている。これら
は、処置の5年後と10年後の時点で、PSAレベルと臨床検査により判断して
再発の徴候がない患者のパーセントによって計測されている(E.Oester
ling, Z.Fuks, C.T.Lee and H.I.Scher
“Cancer of the Prostate” in Vincent
T.DeVita Jr. et al. eds op cit 1997,
Chapter33.4参照)。こうした数字から見て、結果は完璧とは程遠
く、改善の余地がかなりあることは明白である。例えば、T2患者の50パーセ
ント程度(研究により異なる)が、外科手術か放射線治療の5年後に疾病再発の
徴候を見ている。この数字はT3/4段階の疾病の放射線治療(この段階の患者
には外科手術は選択できない)後になると70パーセントに跳ね上がる。
【0052】
【実施例】
例1:アデノウイルスベクターとその構築法
AdV.RSV−tkは、RSV−LTRプロモータの転写コントロールの下
で、HSV−tk遺伝子を運ぶ、複製−欠損組み換えウイルスである。AdV−
βgalは、β−ガラクトシダーゼ(β−gal)発現カセットを持つ同様のベ
クタである。これらのベクタは標準的方法で記述され、作成された(Chen
et al. Proc. Natl. Acad Sci USA 92:2
577−25812 1995, Nyberg−Hoffman et al
. Nature Medicine 3:506−511, 1998)。ベ
クター粒子(v.p.)タイターは、記述されたように(Nyberg−Hof
fman et al., 1998 op.cit.)、293細胞系の末端
の細胞変性効果を利用した連続的希薄化による分光光度吸収と伝染性ユニット(
i.u.)タイターによって規定された。どちらのベクターも、伝染性ユニット
(IU)に対するvpの比率が20未満で、5X1012vp/mlの範囲内の
タイターを持っていた。
【0053】
例2:アデノTK、プロドラッグ、放射線療法の協同を示す動物腫瘍モデル
マウスの前立腺がん細胞系RM−1は、記述された(Lu et al.,
1992; Baley et al., 1995)マウス前立腺再構成(M
PR)腫瘍組織に由来するものであった。細胞は、型どおりの中膜変化を続けて
、拡張しており、パッセージ8か9で、液体窒素の中に入れてあった。それぞれ
の実験には、凍結RM−1細胞の新しいバイアルが使われた。
【0054】
腫瘍モデルとベクター注入
ジャクソン研究所から来た免疫力の高いC57BL/6とBal/cのマウス
がRM−1の注入に使われた。動物は、American Associati
on for Accreditation of Laboratory A
nimal Careによって承認された設備内に置かれた。動物実験はすべて
、National Institute of HealthのGuide
for the Care and Use of Laboratory A
nimals「実験動物の管理と使用に関する手引き」に概説された原則と手続
きに沿うように遂行された。実験時には、動物たちは生後ほぼ6週間で、それぞ
れ体重20グラム程度であった。腫瘍は、50μl中1X10個のRM−1細
胞もしくはTM−40D細胞(それぞれ、前立腺と乳腺の細胞)の皮下注入によ
って作られた。この細胞投与は、それぞれ5−7日後と21−28日後に50−
60mmの腫瘍を生ぜしめた。腫瘍インプラントは、内臓に放射線損傷が広が
る合併症を避けるため、脇腹後部に行なわれた。AdV.RSV−tk投与量は
、投与量漸増実験により決定され、1腫瘍につき20ul中1X10から1X
1011までのv.p.の投与量を使用し、その後、6日間にわたり1日2回、
GCVを20mg/kg腹腔内に投与した。針を抜くときのベクタの漏出を最小
限にするために、腫瘍に届く前に皮内の管を通して針が入れられた。腫瘍のサイ
ズは4日ごとに副尺つきカリパスで縦横の軸で計測され、腫瘍の体積は公式(a
Xb)/2で算出された。この場合、aは腫瘍の長い方の軸で、bは短い方の
軸である(Miller et al., 1988)。
【0055】
腫瘍と細胞の注入、ベクターの接種、放射線治療は、ペントバルビタールを5
0ug/gの投与量で使用して、全身麻酔のもとで行なわれた。処置後のケアに
は、動物が麻酔から覚めるまで暖めたパッドの上に置いて、温かい環境を保つこ
とも含まれていた。動物は処置後の合併症の有無を同定するために、局部感染、
食物と液体の摂取、グルーミング、活動性についてモニタされた。腫瘍サイズが
どちらかの軸で最大25mmを越えた場合、または動物が、体重の著しい減少、
呼吸困難、身体的損傷、脱毛など、健康を害した徴候を表わした場合、その動物
は安楽死させた。
【0056】
放射線療法
50−60mmの腫瘍に、常用電圧X線発生器を用いて1回の照射量を5G
y、10Gy、15Gyとして、放射線を当てた。内臓が放射線の損傷に不必要
に晒されるのを避けるために、周囲の組織を護る適切なシールドが施された。動
物は、放射線が誘発する毒性の徴候を示すかモニタされた。
【0057】
併用治療法研究のために、上述のようにAdv/RSV−tkまたはAdV/
RSV−β−gal(1腫瘍につき3X1010v.p.)が腫瘍に直接に注入
された。ベクター注入の72時間後に、腫瘍は1回の照射量5Gyで放射線を当
てられた。上述のように、動物と腫瘍がモニタされた。
【0058】
組織構造と免疫学
組織は、厚さ5mmのセクションにカットしてパラフィンに埋め込み、ホルマ
リンに浸し、その後組織学的評価用にヘマトキシリンとエオシンで染色した。免
疫学的−組織学的分析のために、腫瘍標本は液体窒素で凍結させて組織−Tec
OCT化合物に留めた。それらを6umの薄片にスライスし、ポリリシンコー
トのスライドに乗せ、20分間−20℃の冷たいアセトン/メタノール(1:1
)に浸した。免疫組織化学的染色は、アビジン−ビオチン−ペルオキシダーゼV
ectastain Elite ABCキット(Vector Labora
tories、バーリンゲーム、カリフォルニア州)を用いて行なった。第一の
ラット抗マウスCD4とCD8は、Pharmingen(サンディエゴ、カリ
フォルニア州)から、アンチF4/80(抗マクロファージ)はSerotec
(オクスフォード、英国)から購入した。抗体の希釈率は、抗体CD4と抗体C
D8については1:100、抗体F40/80については1:400であった。
免疫反応産物はDAB/Hで視覚化された。ポジティブに染色された細胞
が、顕微鏡下でブラインドで、がんエリアのスクリーニングによってカウントさ
れた。その結果は、がんエリア1mmについての免疫陽性細胞の数として記録
された。
【0059】
統計的分析
異なった処置を施したグループで観察された腫瘍の成長と免疫成分に関するデ
ータの統計的分析は、スチューデントのテストとANOVA(分散分析)を用い
て行なわれた。さらに、生存率曲線はWilcoxon testを用いて比較
された。
【0060】
AdV/RSV−tkの樹立と放射線照射量
HSV−tk遺伝子と放射線療法の相助作用を評価するために、それぞれの作
用因で効果はあるが治癒力はない投与量が要求された。この研究のためのベクタ
投与量を選択するために、マウスの皮下で樹立された前立腺腫瘍と乳腺腫瘍に、
AdV−tkを投与量を漸増させて直接に注入し、24時間後に、IP GCV
を1日2回20mg/Kg、6日間注入した。AdV−tkの投与量は、1腫瘍
につき1X10、3X10、1X1010、3X1010、1X1011
v.p.)が分析された(図1A)。すべての処置グループが腫瘍成長の遅延を
示したが、ベクター注入後4日、8日、12日に施した最高投与量間で、統計的
に有意な差異はなかった(p>0.1)。いずれの処置グループも治癒力はなく
、明らかな毒性もなかった。これらの結果に基づいて、1腫瘍につき3X10
(v.p.)の投与量が、併用治療法研究のために選ばれた。
【0061】
放射線照射量を選択するために、1回分の照射量として5、10、15Gyが
比較された。3つの照射量で腫瘍の成長の遅延が観察されたが、5Gyと他の2
つの高照射量グループの間では統計的に有意な差異があり、ベクター注入後8日
と12日にp<0.002(図1B)であった。照射量の高い方では腫瘍の著し
い壊死を示した。腫瘍の成長には、5Gyと対照(p>0.2)の間で有意な差
異は観察できなかった。いずれの照射量でも、全身的な毒性は認められなかった
。このデータに基づいて、併用治療法研究のためには放射線照射量5Gyが選ば
れた。
【0062】
In vivoの併用治療法
併用治療法研究のために、6グループが設置された。第1グループは、処置な
しの対照群で、PBS注射のみを受けた。第2グループは、ベクタの特異的効果
のない対照群で、AdV−β−galの注射を受けた。第3と第4のグループは
単一の療法使用の効果を調べる対照群で、それぞれ、AdV−tk+GCVと5
GyのXRTを受けた。第5のグループは、XRTとアデノウイルスベクターの
潜在的な特異的相互作用なしの対照群であった。このグループはAdV−β−g
alと5GyのXRTを受けた。第6グループはテスト動物であり、AdV−t
k+GCVおよび5GyのXRTを受けた。予想されたとおり、単一の療法使用
のグループはどちらも、対照群と比較して腫瘍の成長に抑制が見られた(図2A
)。腫瘍の体積は一定に保たれ、AdV−β−galやPBSの対照群と比較し
て、動物は処置後8日間を通して健康に見えた。AdV−tk+GCVプラス放
射線のグループの動物はすべて、処置後12日まで健康に見えた。併用療法グル
ープでは、他の処置グループすべてと比較して、腫瘍の成長の有意な抑制が観察
された、p<0.02(図2A)。AdV−β−gal対照群では4日目と12
日目に腫瘍の成長が著しく進んだ(p≦0.006)が、8日目には単一療法の
対照群に匹敵する腫瘍の成長の遅延を示したことを注記する。さらに、AdV−
β−gal+XRTグループは、AdV−tkグループ(p=0.029)とX
RTグループ(p=0.077)を含めた他の単一療法グループと比較して、8
日目には腫瘍の成長の大きな遅延を示したが、処置から4日目と12日目には差
異は認められなかった(p>0.2)。
【0063】
生存率研究では、生存期間13.8日のPBSと14.3日のAdV−β−g
alの動物の間では有意な差異は見られなかった。単一療法グループは対照グル
ープ(p<0.02)と比較して、それぞれAdV.RSV−tkグループは1
6.4日、XRTグループは16.8日、AdV−β−gal+XRTグループ
は18.5日の中間生存期間で、生存率の向上を見た。3つの単一療法グループ
内で有意な差異は認められなかった(p>0.1)。併用療法グループは、中間
生存期間22日で、単一療法グループ、対照グループのどちらと比較しても、有
意な向上を示した、P<0.01。
【0064】
組織学的研究では、併用療法で、中庸から高度にいたる程度で広がったリンパ
細胞の浸潤とまだらの壊死エリアが発見された。単一療法や対照グループと比較
して、このグループではCD4+の浸潤に統計的に有意な増加が見られた。併用
処置グループではCD8+細胞も増えてていたが、これは重要ではない。異なっ
た処置グループの間で、マクロファージマーカー陽性細胞の数に有意な差異は認
められなかった(データは示していない)。
【0065】
例3:放射線シードと組み合わせたアデノウイルスベクターの使用
アデノウイルスベクターは、活動度100パーセント以上の放射線ゴールドシ
ードを内包したミクロ遠心分離機のチューブ内の3つの500ulのアリコート
に配置された。ゴールドシードは半減期2.5日である。対照アリコートがゴー
ルドシードを含むアリコートから離れた位置に配置された。アリコートはコンス
タントな混合を維持するために、回転する台に設置された。10から25ulの
サンプルが、15分、30分、60分に、そして24日、48日、72日に採取
され、滴定が行なわれた。放射線ゴールドシードに接触しているサンプルのタイ
ターは、対照アリコートのタイターと統計的に同一であった。これらの結果は、
アデノウイルスベクターの潜在能力を犠牲にすることなく、放射腺シードとアデ
ノウイルスベクターを共−注入できることを表わしている。
【0066】
例4:アデノTK、プロドラッグ、放射線療法が転移に及ぼす効果
腫瘍は、RM−1細胞の1X10の皮下接種と5X10の尾静脈注射によ
って樹立された。われわれは、併用療法を2つの単一療法使用と無処置の対照群
と比較した。20ulに3X1010のAdV−tkの投与量で、AdV/RS
V−tkが皮下の腫瘍に注入された。ガンシクロビル処置がHSV−tk注入2
4時間後に開始され、その72時間後に1回の照射量5Gyの放射線が当てられ
た。ベクター注入後10日に、胸腔内に腫瘍を探した。肺を解剖し、ピクリン酸
に浸し、腫瘍の小結節をカウントした。既述のように(Timme TL et
al., Cancer Gene Ther. Mar−Apr:5(2)
:74−82.(1998))、また付図に示したように、HSV−tk療法は
肺におけるコロニー形成を著しく縮減することが認められた(p<0.05)。
しかしながら、併用療法は肺への転移の数をさらに著しく縮減させる結果となっ
た(p<0.05)。
【0067】
例5:HSV−TKのハイパー抗原作用
ウイルス性ベクターを用いると、特定のベクター蛋白質に応答して、細胞傷害
性T細胞のエフェクター機能とT細胞依存抗体産生を含むT細胞媒介反応が次々
と起こる。腫瘍傷害に関連する細胞残屑及びアポトーシスが非特異的炎症性反応
を起こす。マクロファージは周囲を浸潤し、アポトーシス小体を食菌し且つ同族
のT細胞に抗原を提示する。この動的環境によって、免疫系がベクタ、腫瘍そし
ておそらくは導入遺伝子に対して複合反応を展開することが可能となる。免疫反
応は、有益な起こり得る有益な抗腫瘍免疫反応を強化する。
【0068】
大多数の人々は、循環抗体及び通常のアデノウイルス抗原型に対するメモリT
細胞特異性を持っている。これらの人々が、臨床上の攻撃に対して、抗体分泌や
Bリンパ球とT細胞エフェクター機能におけるクラススイッチを含む重要な反応
を開始するのである。これらの反応は、in vivoの治験及び実験モデルの
成功に重要な役割を果たしている。
【0069】
次に、特定の導入遺伝子に対する免疫反応が立証された。これらの細胞内蛋白
質は処理されて、ペプチド抗原と誘導細胞傷害性リンパ球(CTL)の同族のT
細胞からの反応として、通常の主要組織適合抗原系(MHC)クラスI経路に入
ると考えられる。CD4T細胞とMHCクラス2経路に依存する抗導入遺伝子抗
体の発生に関する証拠もある。それゆえ、ウイルス性ベクタによる導入遺伝子の
投与は、幾つかの異なるメカニズムによって主免疫系を著しく活性化する。我々
はアデノウイルスのバックボーンにおいて最も広く使われている自殺遺伝子、H
SV−tkに対する免疫反応を特徴づけることを目指した。
【0070】
驚くべきことに、HSV―tkは、ただMHCクラス2対立遺伝子がのあると
きにのみ、ナイーブT細胞の増殖を支援することができる。この観察は、HSV
−tkがスーパー抗原(SAgs)と呼ばれる明確に特徴づけられた一群の蛋白
質と同様に、固有の免疫活性化特性を持っているかもしれないということを示し
ている。定義上、これらのプロテインは多くのMHCクラス2イソタイプに抗原
結合溝の外側で結合する。続いて、この協働相互作用はTCRの二重鎖の比較的
不変な部分に結合することによって、さらに安定化する。適正なV?エレメント
をもつT細胞のポリクローナル活性化によってサイトカインが盛んに分泌される
ようになる。この免疫系との相互作用は、SAgsによって媒介された毒性の基
礎を成す。これらの蛋白質は、グラム陽性球菌やレトロウイルスを含むがそれだ
けには限定されない幅広い病原体によって作りあげられる。幅広く分岐した有機
体の間に構造的な相同関係がないにもかかわらず、この機能と生物学的活動の保
全が保全されていることは、これらの蛋白質が、宿主に感染している間又は病原
体のライフサイクルの中で選択的優位性を備えるということを示唆している。H
SV−tkは新しいウイルス性スーパー抗原或いはヒトTリンパ球に対する弱い
マイトジェンであるというのが我々の主張である。この所見は遺伝子治療におけ
る治療剤としてのHSV−tkの安全性及び/又は有効性に対し重大な影響を与
えるだろう。
【0071】
V−tkを含むアデノウイルスのin vitroでの促進能力
Ad5TKが、マウスL細胞(MHCクラス2ネガティブ)とヒトクラス2(
DR、DP及びDQ)によってトランスフェクションされたL細胞を形質導入す
るために使用された。これらの細胞は異種、同種及び同系Tリンパ球に対する抗
原提示細胞(APC)として使用された。トランスフェクションされたDR−1
(クローンD5−3.1)又は親L細胞は、Ad5含有ガラクトシダーゼ、HS
V−tk又はVSag−7(マウスレトロウイルススーパー抗原)を含むAd5
によって形質導入された。我々は、特定の提示分子の状況において、これらの細
胞がT細胞の増殖を支援する能力を試験した。導入制御ではないHSV−tkは
T細胞の増殖を支援する。この増殖はヒトMHCクラス2があるときに明らかで
あるにすぎなかった。MHCクラス2依存性の固有のパラメータは、人工物に特
徴的なものではない。次に我々はHSV−tkが限定されたDR−1であるか否
か、又二つの他のヒトイソタイプがT細胞の増殖を支援するかどうかを試験した
。DQ及びDPMHCクラス2トランスフェクタントが、同様のT細胞検査にけ
るAPCとして使用された。三つの全ての対立遺伝子が、同程度のトリチウム化
チミジンの滴定取り込み反応を支援することができた。T細胞刺激のレベルは名
ばかりの抗原反応よりもはるかに大きかった。用量漸増曲線の形は、緩やかな上
昇と低い極大振幅及びT細胞ドナとトンランスフェクションされた対立遺伝子の
独立性によって特徴づけられている。この特色は、有効性がHSV−tkそれ自
体の特徴を反映していることを示唆している。個別反応の絶対範囲は、約25,
000cpmを平均として、15,000cpm乃至60,000cpmの間に
ある。
【0072】
ベクターとインサート制御
我々は、アデノウイルスのバックボーン内に含まれるHSV−tkは、自由な
MHCクラス2分子があるときにT細胞の増殖を支援できることを示した。Ad
5含有ガラクトシダーゼ及びその他のインサートが同じタイプのT細胞の増殖を
支援しなかったという観察ゆえに、このT細胞増殖はインサート依存性であると
考えられた。インサートの分析には?1−抗トリプシン(分泌蛋白質)、緑色蛍
光蛋白質(クラゲ由来)或いはIDS(ヒト蛋白質)が含まれた。次に、我々は
また野生型Ad5も試験した。様々な濃度においても、同じドナからの細胞がA
dTkに反応するできる一方で、野生型Ad5はT細胞増殖を支援することはで
きなかった。これらの一連の実験は、HSV−tkが特にT細胞増殖を促進する
という観察と一致する。しかしながら、Ad5tkがアデノウイルス遺伝子産物
をトランスアクチベートしているのか否か、及びMHC2クラス依存T細胞増殖
を間接的に要求しているのか否かについては明らかでない。HSV−tkがアデ
ノウイルスのバックボーンの外で分裂誘起性を保持しているのか否かを試験する
ために、我々はDR−1(フロサイトメトリにより評価される)及びHSV−t
k(GCVに対する感受性により評価される)を発現する二重に安定的なトラン
スフェクタントを、プラスミド媒介トランスフェクションと薬剤選択によって造
った。三つの独立したクローンは、T細胞増殖を支援する能力を審査された。C
5、すなわちGCV反応性DR−1+クローンは、一貫してネオマイシン単独プ
ラスミドを以上にT細胞増殖を支援した。C5は、DR−1のみの場合と比較し
て、より低いレベルのMHCクラス2を発現した。この観察によって、我々は、
HSV−tkが、MHCクラス2決定基に対して常に不適当に組み合わされる混
合リンパ反応を単に強化しているだけではないと信ずるに至った。次に、MHC
クラス2適合個体がドナとして使用されるとき、T細胞はDR−1単独ではない
HSV−tkに反応して増殖した。これらの観察は、反応の大きさ(内因性の相
互刺激のない場合は、MLR反応は通常5,000cpm以下である)に加え、
同系反応に対する反証となる。興味深いのは、DR−1発現と、三つの安定的に
トランスフェクションされたクローン間のT細胞増殖との間に相関関係があると
いうことである。HSV−tkに対する反応は、大多数のドナにおいて見られた
が、これは絶対的なものではない(20試験済)。それにもかかわらず、DR−
1が存在してしかもT細胞がそのために選択されるMHCクラス2のハプロタイ
プではない場合に、多くのドナがHSV−tkに対して反応できるということは
、HSV−tkが自由なMHCクラス2依存性T細胞マイトジェンであることの
さらなる証拠である。
【0073】
DR−1繊維芽細胞を発現するHSV−tkによる刺激に対するT細胞の芽球

前方散乱対側方散乱における変化を受けた細胞の割合を量るために、T細胞の
フロサイトメトリック分析を行った。このタイプの変化は、マイトジェンとスー
パー抗原の様々なタイプに一致する。ドナ次第で、DR−1に対する同系反応に
比較してブラステッド細胞の総数は、2乃至3倍増加する。ブラステッドゲート
は、循環されているヨウ化プロビジウム染色によって評価される細胞を含む。こ
れらの細胞はCD3と殆どがCD25であり、細胞は活性化され、細胞のチ
ミジンのレベルではなく、トリチウム化したチミジンがDNAターンオーバーの
真の尺度であることを示唆している。細胞は、T細胞上のMHCクラスIマーカ
ーであるKに関しては着色しなかった。K陽性細胞の欠如は、ブラステッド
細胞が本質的には線維芽細胞ではないことをはっきりと示している。顕微分析は
フロサイトメトリックのデータと一致している。HSV−tkとDR−1がある
溶液中で、はっきりとしたリンパ球集合体が見られた。いくつかの細胞の凝集塊
がより長い時点で同系反応に一致するDR−1刺激と共に見られた。
【0074】
例6:アデノTK、バラシクロビル及び外部放射線療法による患者治療
これは、原発性及び転移性疾患に対するAdtk療法と放射線療法の結合の効
果を分析すべくたてられた既存の臨床研究計画の例である。一例として、我々は
前立腺のモデルを利用するが、この方法はこの疾患部位に限られるものではない

【0075】
この研究は三部門(被験者集団の基準に関しては下記を参照)よりなる。A部
門は低リスク患者(好ましい予後要因を有する)を含み、B部門は高リスク患者
(好ましくない予後要因を有する)を有し、C部門は局所的に重症な患者を含ん
でいる。B部門及びC部門の患者は、標準的治療としてネオアジュバントのアン
ドロゲン除去を受ける。アポトーシス、ネクロシス、腫瘍増殖及び免疫学的反応
が存在するような再生検時の組織交代によるばかりでなく、PSA血清レベルの
変化及びデジタル直腸検査によって評価されるような臨床反応は、次のようなH
SV−tkバラクシロビル治療により評価される。血液サンプルは、全身性免疫
反応の評価のためにも採取される。血清テストステロンは測定される。加えて、
患者はnadirPSA、PSA進行からの解放及び局部的、遠隔的進行からの
解放及び全体的な生存を評価するためにしっかりと追跡される。
【0076】
8.0 プロトコルの説明
8.1 患者登録
患者は、このプロトコルのためのインフォームドコンセントの書類に記入する
ことによってこの研究に参加する。患者の適格性(付属書2)は、ベイラー医科
大学Baylor College of Medicine放射線療法学科の
データマネージャによって確認される。患者は、データマネージャによってグル
ープ分けされる。この治験への参加或いは不参加によって、患者にとって望まし
い他の治療が影響を受けることはない。
【0077】
8.2 データ収集とモニタリング
8.2.1 研究のモニタリング
治験担当医師は研究モニタ及びFDAが研究書類(例えばコンセントフォーム
、分析証明書、事例報告書及び関連病院又は診療所のカルテ)を調べることを許
可する。
【0078】
8.2.2 副作用の報告
副作用(ADRs)はFDA、RAC及びIRBに速やかに報告される。AD
R報告は、単なる薬物作用の疑いだけであっても必要とされる。事前に分らなか
った第2度又は第3度の作用は、10就業日以内に書面で報告される。第四度及
び治療中の患者の死亡は24時間以内に電話で報告される。続いて書面での報告
を10就業日以内に行う。
【0079】
8.2.3 プロトコル修正手続
プロトコルの改定は全ての治験担当医師、FDA及び他に必要とされる者によ
って検討される。現行のプロトコルを改定する合意がなされると、変更の正式リ
ストが修正されたプロトコルに添付され、これらの書類はFDA、ベイラー医科
大学Baylor College of MedicineのIRB及び関係
委員会に提出される。
【0080】
8.2.4 治験結果の公表
あらゆる手稿、要約書または発表物は、このプロトコルに関係するすべての治
験担当医師に利用される。被験者及び研究からのデータの秘密は法律の範囲内で
保持される。
【0081】
8.3 手順(付属書3)と治療剤
8.3.1 HSV−tk遺伝子のデリバリ
注射に先だって、全ての患者は1日に2回服用の広域経口抗生物質を受け取り
、注射に先立つ日が開始される。これは3乃至5日間続けられる。経直腸超音波
が前立腺内注射の四ヶ所の部位を局限するために用いられ、2ヶ所はそれぞれ前
立腺葉に局限する。第0日目は、合計1乃至2ccのAdV HSV−tkアデ
ノウイルスベクター(IND6371、6636及び7311において使用され
たものと同一のベクター)(付属書4参照)が20ゲージ針を用いて注射される
(各側葉には1ccまで)。ベイラーBaylorでのフェーズ1投与量研究に
よる毒性結果に基づき、腫瘍ごとに総量5×1011のベクター粒子が注射され
る。前立腺注射に関連して起こり得る流出障害を防ぐために、フォーリカテーテ
ルを注射の後に取り付けてもよい。A部門の患者に対しては、アデノウイルス前
立腺内注射が14日繰り返される。B部門の患者に対しては、アデノウイルス前
立腺内注射は56及び70日繰り返される。
【0082】
8.3.2 バラシクロビルの投与
バラシクロビル(付属書5参照)治療は各ウイルス注射後24時間後に始まり
適当な時期に1回当り2gmの投与量で、14日間続く。この投与量は、8時間
毎に10mg/kg投与されるIVアシクロビルと同様の曲線下面積(auc、
h−μg/ml)を与えるよう計算された。これはIND7311(「再発性卵
巣癌の腺筋症温存手術後の患者における、アシクロビルの静脈投与及びトポテカ
ンによる化学療法が後に続く卵巣癌のHSV−tk遺伝子との併存アデノウイル
ス媒介形質導入のフェーズ1研究」)で用いられた投薬計画と同じ投与量である
。それゆえ、A部門の患者は第1日乃至第14日及び第15日乃至第28日にバ
ラシクロビルを与えられる。B部門の患者は、第1日乃至第14日、第57日乃
至第70日及び第71乃至第84日にバラシクロビルを与えられる。
【0083】
8.3.3 アンドロゲンの除去
高リスク患者に対しては、第0日に最初のアデノウイルス注射に付随してアン
ドロゲン除去が開始される。治療はLHRH作動薬酢酸リュープロライド徐放剤
(Lupron徐放剤、30mg−付属書5)の1回の筋肉注射とフルタミド(
Eulexin、125mg×2を一日3回経口服用―付属書5)よりなる。こ
れは、我々の標準的なアンドロゲン除去投薬計画であり、30mgのLupro
nは4ヵ月持続する。フルタミドはLupron投与と共に最初の2週間与えら
れる。
【0084】
8.3.4 放射線治療
放射線治療は、A部門においては最初のアデノウイルスベクター注射に続き4
8乃至72時間で開始され、B部門及びC部門においては2回目のアデノウイル
スベクター注射後48乃至72時間で開始される。高エネルギーフォトン(>1
0MV)及び2Gyフラクションで与えられた総線量70.0GyがA部門及び
B部門の前立腺を囲む等線量ラインに与えられる。C部門に対しては、骨盤リン
パ管をカバーするために1.8Gyフラクションで45Gyが骨盤に与えられ、
前立腺はさらに2Gyフラクションで26Gyによって増強される。
【0085】
9.0被験者集団と治療評価
9.1 患者の適格性
全ての患者は、前立腺癌であることを証明する生検を受けなければならない。
A部門の患者は、次の特性を有していなければならない:PSA<10、グリ
ーソンスコア≦6及び臨床病期T2a。
B部門の患者は次の特性のうち少なくとも1つ又はそれ以上を有しなければな
らない:PSA≧10、グリーソンスコア>6及び臨床病期T2b乃至T3
C部門の患者は前立腺の病理的領域リンパ節転移を有していなければならない

【0086】
先行する外科、ホルモン、又は放射線による前立腺治療がないこと。
転移性疾患又はその他の悪性腫瘍(扁平上皮乳頭腫又は基底細胞皮膚癌を除く
)の徴候がないこと。
患者はエントリから3ヵ月以内にPSAを受けなければならない。
患者は登録に先だち、研究に固有のインフォームドコンセントを提出しなけれ
ばならない。
【0087】
患者はプロトコルの開始に先だつ次の臨床検査によって評価された、十分な基
本臓器機能を有していなければならない:
血清中クレアチニン<1.5mg/dL
総ビリルビン<2.5mg/dL、ALT、AST、GGT及びAP<2×正常

Pts>100,000/ml、ANC>1500/ml、Hgb>10g
m/dL
正常な部分トロンボプラスチン時間(PTT)及びプロトロンビン時間(PT)
【0088】
9.2除外基準
転移性疾患又はリンパ節転移(C部門における領域腸骨リンパ節転移を除く)
の徴候があること。
【0089】
先行する前立腺外科治療(温熱療法、凍結療法等)があること。
【0090】
先行する骨盤放射線治療があること。
【0091】
先行するアンドロゲン除去ホルモン療法(登録に先だって3ヵ月以上中断され
ているフィナステライドは除く)があること。
【0092】
コルチコステロイド又は何らかの免疫抑制剤を服用中の患者。
【0093】
HIV+の患者。
【0094】
急性感染症(ウイルス性、細菌性又は治療を必要とする真菌感染症)を有する
患者。
【0095】
肝硬変を有する患者。
【0096】
9.3 治療前評価
病歴と前立腺ダイアグラム、身長及び体重を含む健康診断。
【0097】
血液検査―CBC、PLTS、PT、PTT
化学検査−Na、K、CL、CO2、BUN、Cr、LDH
肝機能検査−AST、ALT、AP、GGT、総ビリルビン
尿検査
登録の3ヵ月以内のPSA
6ヶ所の前立腺生検−ベイラー医科大学で検査されるべき病理外のもの。
【0098】
B部門患者においてはリンパ節症を除外するために骨盤CTが行われる。
B部門患者においてはCXR(後方及び前方図)、及び骨のスキャンが行われ
る。もし指示があれば、単純フィルム撮影が行われる。MRIは、何らかの疑い
のある部位をさらに評価するために予定さる。
A部門患者においてはテストステロンレベルがチェックされる。
C部門患者においては、骨盤リンパ節郭清(開放式か腹腔鏡のどちらかで)が
行われる。骨盤リンパ節転移は病理学的に確認される必要がある。
【0099】
9.4 治療中の評価
第0日は、最初にADV HSV−tk注射が行われる。PSA及び免疫学的
検討のために採血が行われる。
【0100】
排尿試験。必要があれば、フォーリカテーテルがウイルス注射の直後に取り付
けられ24時間以内にはずされる。もし患者が排尿できないようであれば、カテ
ーテルを再度取り付け、排尿試験が指示されたように繰り返される。
【0101】
理学検査は、治療に関連する急性毒性をモニタするために毎週行われる。
【0102】
化学検査:血小板を持つCBCは全患者の治療期間を通して毎週モニタされる
。AST、ALT、AP、GGT、総ビリルビン、LDH及びCrは第2及び第
4週(A部門);第2、第10、第12週(B、C部門)にモニタされる。B及
びC部門の患者に対しては、2回目のウイルス注射と放射線療法の開始の前に、
リピートPSAレベルが第56日に得られる。追加の血液検査が、臨床的に必要
とされたときに行われる。A部門の患者に対しては第二週及び第六週に、PSA
もまた採られる。
【0103】
免疫学的調査(付属書6)は、A部門の患者に対しては第14日と第28日に
、B及びC部門の患者に対しては第56日、第70及び第80日に行われる。
A部門の患者に対しては、第6週にテストステロンレベルがチェックされる。
バラシコビルのレベルは治療期間を通じてチェックされる。
前立腺生検:単一経直腸−超音波誘導前立腺生検は、A部門患者に対しては第
14日に、B及びC部門の患者に対しては第56と第70日に行われる。
【0104】
9.5 治療後評価
患者は、放射線治療の終了後6週間観察される。その後、最初の1年間は3―
4ヶ月毎に、それ以降は6ヵ月毎に追跡調査がある。それぞれの追跡調査訪問で
の評価は、以下を含む:
前立腺ダイアグラムを伴う理学検査
PSA
持続的又は再発性の局部疾患評価のための、放射線治療終了後およそ6週間後
、6ヵ月後、12ヵ月後、18ヵ月後及び24ヵ月後での前立腺生検
精液サンプルが求められ、起こり得るウイルス感染のために第6週(最初の追
跡調査訪問)にPCR分析を受け、もし陽性ならば、陰性になるまで後に続く追
跡調査訪問毎に分析を受ける。しかしながら、精液サンプルを提供することがで
きない患者もいる。
【0105】
6週間後の免疫学的調査(血清)
テストステロンレベルはA部門の患者に対して6週間後に行われる。
個別的調査或いはこのプロトコルに特定された試験は、患者の承諾、スケジュ
ール上の困難、設備の故障、或いは主要な治験担当医師又は主治医の判断のよう
な要因に支配されており、また試験が個別的事例においてプロトコルに違反する
ことなしには行われないだろうということが理解される。しかし、患者の安全に
関連しているか否かということに点で、オリジナルプロトコルのいかなる意図的
な変更も、IRBに提示される。どの死亡した患者についても完全な検死解剖が
なされるであろう。標準的な病理検査に加えて、細胞組織が持続性の組み換えア
デノウイルスDNAの発見のためのPCR分析用に採取されることもある。
【0106】
9.6 治療に対する腫瘍反応の基準
完全な反応は、血清PSAの<1.0ng/mlへの減少と定められる。
部分的反応は、治療前のベースラインと比較して、血清PSAレベルが少なく
とも50%減少と定められる。
最小反応は、血清PSAレベルの少なくとも25%(しかし50%以下)の減
少と定められる。
【0107】
病気の安定は、以下のうちの一つによって定められる:安定した血清PSAレ
ベル、25%以下レベル血清PSAの最小限の減少、或いは当初評価の20%以
下の血清PSAの最小限の増加。
病気の進行は、治療前ベースラインを20%以上超えるPSAの増加と定めら
れる。
また、DREの結果、繰り返し行われる生検、PSA減少率、nadirPS
Aに達する時間と期間、フリーPSAも治療に対する腫瘍反応の評価において評
価される。
【0108】
9.7 病気の再発
3回連続するPSAにおける上昇はどれも治療の失敗として記録される。治療
失敗の時間とは、ウイルス注射及びアンドロゲン除去開始から一連のPSA上昇
における最初の上昇までの時間間隔である。
【0109】
局所的失敗:2年後の陽性生検は局所的失敗として記録される。デジタル直腸
検査での増大する局所疾患及び上記のPSA上昇を有する患者は、局所的失敗と
記録される。
【0110】
遠隔的失敗:陰性のDRE及び陰性の経直腸超音波誘導生検を有し、上昇PS
Aを有し、転移性疾患のレントゲンの証拠を有する又は有しないすべての患者は
遠隔的には失敗であるが、局所的に制御されていると記録される。
【0111】
9.8 毒性及び生活の質(QOL)
HSV−tk+バラクシロビル及びアンドロゲン除去の毒性は、NCIのCT
EPにより公表されている共通毒性基準によって評価される(付属書7)。
放射線治療腫瘍班(RTOG)急性及び末期疾病率スコアリング(付属書8)が
放射線治療による毒性を等級化するために用いられる。国際前立腺症状スコア(
I−PSS)及び生活の質アンケート(付属書9及び10)が評価のために患者
に与えられる。
【0112】
9.9 治療中止基準
a. CTEP又はRTOGで特定された恒久的第3度毒性又は再発性第4度毒
性。
b. 前立腺腫瘍のウイルス形質導入には直接関連しない(バラシクロビル投与
に派生的な毒性のような)その他の予想される毒性現象、或いは悪性の前立腺腫
瘍の自然な生長によって説明される合併症は、研究中止に十分な指標とは考えら
れない。どんな追加的に現れる毒性もIRBの議長によって検討される。
c.患者又はその代理人の求めによって、患者は研究から離脱し得る。
【0113】
10.0 潜在的危険と不安
10.1 ベクタ注射の潜在的合併症
a. 投与が経直腸経由であるがゆえに、前立腺及び泌尿器系感染症及び全身性
敗血症が起こり得るが、これは前立腺生検を受けた患者の1%以下に現れる。抗
生物質療法は、前立腺へのウイルス注射の前と後の予防として行われる。
b. 前立腺生検に続く肉眼的血尿は、患者の1%以下で見られ、通常は自己制
限的である。
c. 限局性腫脹の結果尿閉が起こり得る。その処置の際にフォーリカテーテル
が取り付けられ24時間そのままにしておく。
【0114】
10.2 アデノウイルスベクタ注射に特有の潜在的合併症
前立腺への注射から生じる合併症に加えて、特にベクタ治療に関連した合併症
が起こり得る。今までのところ、AdV−HSV−tkの予定された投与量で治
療された患者に深刻な合併症は観察されていない。
【0115】
10.3 医療従事者に対する潜在的バイオハザードの危険
a. ベクタ注射に関わる要員:ベクタ注射に関わる要員に対し低い潜在的可能
性のバイオハザードの危険がある。ウイルスベクタは、少量(〜1.0ml)の
緩衝液に浮遊させられ、クライオバイアルに封入されている。注射器はベクタを
取りこぼしなくガラス瓶から充填される。腫瘍内注射がなされ、針の跡に沿って
漏出する量は極めて微量であると思われる。ガラス瓶からのベクタの流出事故が
発生した場合は、作用物質を不活性化するために一般の消毒薬を使用できる。全
ての要員は、処置を行う前にベクタの安全な利用と潜在的な生物学的災害につい
て指導を受ける。
【0116】
b.外科的医療後の労働者:ADV/HSV−tkウイルスが、患者の尿、便、
唾液、鼻汁、涙或いはその他の排泄物を通して漏出する可能性がある。人間以外
の霊長類の研究は、その可能性が非常に低いことを指摘している。6匹のヒヒ使
った研究では、2日前にベクタを注射された1匹のヒヒの血清からたった1個の
血小板が発見された(IND申請書6371又はRACプロトコル1294−0
98を参照)。やや寛容な宿主であるコットンラットでは、心臓内注射の後、極
僅かなウイルスが発見されたに過ぎなかった(Rojas他)。流出した複製欠
損ウイルスにさらされても、ウイルス価が極端に低いので、危険は非常に限定さ
れている。ベクタが、患者に宿っている野生型アデノウイルスを再結合する理論
的可能性はある(上記参照)。このウイルスに感染すると、通常のアデノウイル
ス感染に似た穏やかな自己制限感染が引き起こされる。医療労働者は、患者と働
く許可を得る前にウイルスベクタの安全な利用と潜在的な生物学的災害について
指導を受ける。
【0117】
10.4 バラシクロビル(Valtrexョ)
バラシクロビルカプレットは経口投与である。バラシクロビルはアシクロビル
のバリン−エステルであり、腸及び/又は肝代謝の初回通過によってアシクロビ
ルに急速に変換される。最大血漿バラシクロビル濃度は、一般的には全投与量で
0.5mcg/mlより少ない。
【0118】
4アシクロビルを経口バラシクロビルの搬送と比較する臨床研究は、8時間毎
に1時間以上の4アンシクロビル10mgr/kgと8時間毎の2グラムのバラシ
クロビルが、アンシクロビル濃度−時間曲線下の同様の面積を持っていることを
示した(「再発性卵巣癌の腺筋症温存手術後の患者における、アシクロビルの静
脈投与及びトポテカンによる化学療法が後に続く卵巣癌のHSV−tk遺伝子と
の併存アデノウイルス媒介形質導入のフェーズ1研究」、NIH/遺伝子組換え
局DNA#9801−228)。上記の研究に基づき、このプロトコルは14日
間にわたり8時間ごとに2グラムの投与量を用いる。
【0119】
バラシコビルの最もありふれた有害事象は、患者の6乃至15%が悪心、14
乃至35%が頭痛、1乃至6%が吐き気、2乃至11%がめまい又は腹痛、1乃
至6%が関節痛及び1乃至7%が憂鬱であった。貧血、白血球減少、血小板減少
及び血清クレアチニンの上昇が患者の1%に現れた一方で、肝機能の異常試験の
ような実験室での異常は、患者の1乃至4%に観察された。加えて、次の有害事
象が臨床実践において確認された:アレルギー反応(アナフラキシ、血管性浮腫
、呼吸困難、掻痒、発疹及び蕁麻疹)、CNS症状(錯乱、幻覚、動揺、攻撃行
動、躁病)、胃腸(下痢)、腎不全、多形性紅斑、顔面浮腫、高血圧、頻脈。
【0120】
10.5 放射線療法
放射線療法によるリスクには、放射線療法中に起こり得る放射線による膀胱炎
、尿道炎及び直腸炎がを含まれる。通常はこれらの症状は自己制限的で、放射線
療法後2乃至3週間で改善する。照射療法では遅発型の副作用は、非常にまれで
あるが、それには持続性の下痢、直腸又は泌尿器の出血、直腸潰瘍化、直腸壁壊
死及び臀部無血管性壊死が含まれる。大きな外科的処置(人工肛門形成術、臀部
置換等)を必要とする合併症が現れるのは、1%以下であると報告されている。
【0121】
10.6 アンドロゲン除去
10.6.1 フルタミド
最も頻繁に報告されているLHRH作動薬と併用でのEulexin Cap
sulesによる治療中の有害事象(5%以上のもの)は、ほてり61%、性欲
の喪失36%、インポテンス33%、下痢12%、悪心/吐き気11%、女性化
乳房9%、その他7%、その他の胃腸症状6%である。トランスアミナーゼ異常
、胆汁鬱滞性黄疸、肝臓壊死、肝性脳症状がフルタミドの使用によって報告され
ているので、定期的な肝機能検査を考慮にいれるべきである。肝機能障害(例え
ば掻痒症、暗色尿、持続的食欲不振、黄疸、右上方腹部の圧痛或いは説明できな
い「インフルエンザに似た」症状)の最初の症状/徴候があったときに適切な臨
床検査がなされるべきである。もし患者に黄疸が現れたり肝臓の損傷を示す検査
結果があれば、肝臓転移の生検確認がなくても、Eulexin療法を中止する
か又は投薬量を減らすべきである。この肝臓損傷は、通常治療を中止した後は可
逆であり、幾らかの患者においては、投薬の減量で可逆である。しかしながら、
フルタミドの使用に関連する重篤な肝臓損傷の後に死亡との報告もあった。
【0122】
10.6.2 リュープロライドアセテート
ルプロンデポットLupron Depot(徐放性製剤支持のためのリュー
プロライドアセテート)の治験において、以下の副作用は、治療担当医によって
副作用の原因とされた本剤に関係する可能性があるか又は確実に関係があると報
告されている:浮腫12.5%、悪心/吐き気5.4%、精巣の縮小5.4%、
ほてり/発汗58.9%、インポテンス5.4%、全身的な痛み7.1%、呼吸
困難5.4%及び無力症5.4%。以下の、検査室での調査の高さが注目される
:SGOT(>2×正常値)5.4%、LDH(>2正常値)19.6%、及び
アルカリホスファターゼ(>1.5×正常値)5.4%。
【0123】
11.0 費用
患者は、保険またはその他の手段により、全ての標準的治療薬剤及び処置に責
任を負う。ベクタ、ベクタ送達又はプロトコルで特定された薬剤又は処置に対す
る患者負担はない。
【0124】
12.0 同意手続
全ての患者は、この研究に対する適格者であるために、同意したインフォーム
ドコンセントの文書に署名しなければならない(A部門低リスク患者に対しては
付属文書11、B部門高リスク患者に対しては付属書12、C部門DIに対して
は付属書13)。
【0125】
13.0 秘密保持
患者の記録の秘密は法律の範囲内で保持される。本研究のデータは公表される
が、いかなる患者も氏名を明らかにされたり、特定されたりしない。
【0126】
14.0 潜在的利益
本研究は、研究の被験者になんら利益を与えるものではない。しかしながら、
臨床前研究は、ヒト前立腺癌腫瘍モデルにおける重要な細胞抹殺を示している。
もう一つのフェーズ1のヒト研究は、再発性前立腺癌においてGCVが後に続く
HSV−tkのADV搬送を用いて最小限の毒性を示した。大きな量の局所疾患
を有する前立腺癌においては、放射線療法によって最適な局所制御よりもより少
ない結果となっている。それゆえ、二つの局所治療を、毒性が重ならないように
組み合わせることにおいて、局所制御はほとんど余計な毒性なしに改善されるだ
ろう。臨床的に局所化された前立腺癌を有する患者においては、局所制御の改善
が、病気から解放された生存の改善に転換されるであろう。
15.0 リスク便益比
AdV/HSV−tk遺伝子治療だけのフェーズ1及び2の研究が示すところ
は、長くは続かない毒性と患者にとっての最小限の不安をである。この研究の患
者グループは、標準的な治療として、普通にアンドロゲン除去及び/又は放射線
治療を受け、それゆえ治療のこの部分に余計なリスクはない。局所制御の改善と
いう臨床上の利点を考えれば、リスク便益比は好ましいものであると思われる。
【0127】
本プロトコルはOSHA/HHSのHIV/HBV労働安全ガイドラインに適
合する。
【0128】
付表2
Figure 2003528813


【0129】
(はい/いいえ)1.前立腺癌を証明する生検
2.A部門=PSA<10、グリーソン ?6、臨床段階T1−T2a
B部門=次のうちの一つ又はそれ以上:PSA≧10、グリーソンスコア>6
及び臨床段階 T2b−T3
C部門=前立腺癌が関与する病理的領域リンパ節転移
(いいえ)3.先行する外科、ホルモン、放射線前立腺治療
(いいえ)4.転移性疾患又はその他の悪性腫瘍(骨盤リンパ節陽性、扁平上皮
乳頭腫又は基底細胞皮膚癌を除く)
(はい)5.PSAが登録の3ヶ月以内行われていること
日付
(はい)6.研究に固有のインフォームドコンセント書類にサイン済
(はい)7.以下の検査評価によって評価されている十分な基本臓器機能
血清中クレアチニン<1.5mg%
総ビリルビン<2.5mg/dL、ALT、AST、GGT及びAP<2×正常

Pts>100,000/mm、ANC>1500/ml、Hgb>10g
m/dL
正常な部分トロンボプラスチン時間(PTT)及びプロトロンビン時間(PT)
(いいえ)8.患者はコルチコステロイド剤又は何らかの免疫抑制薬を服用中で
あるか?
(いいえ)9.患者には何らかの急性感染症(ウイルス性、細菌性、又は治療を
必要とする真菌感染症)があるか?
(いいえ)10.患者には肝硬変があるか?
(はい)11.患者はHIV陰性であるか?
患者はどのようにして遺伝子治療を知ったか?
記入者名:
日付:
【0130】
Figure 2003528813

【0131】
例7 アデノTK、valacyclovir及び小線源照射療法による患者の
治療
これは、Adtk療法と放射性種を用いて実施される放射線療法との組合せの
効果を分析するための臨床検査計画の一例である。
プロトコルが上述したものと類似しておりその一部ではあるが本明細書中に例
として取り込まれているため、前立腺モデルを一例として使用するが、その手法
はこの罹患部位に限定されず、膵臓癌を非限定的に含む他の部位に対しても現在
適用されている。
【0132】
8.0 プロトコルの説明
8.1 患者の登録
患者は、このプロトコルに対するインフォームドコンセント形式を完了するこ
とにより、この検査に入ることができる。患者の適格性は、ベイラー医科大学(
Baylor College of Medicine)の放射線治療科のデ
ータ管理者により確認される。患者は、データ管理者によりグループ分けされる
。この臨床試験への参加或いは非参加は。患者が適格性を有し得る他の治療に影
響することはない。
【0133】
8.2 データ収集及びモニタ
8.2.1 検査のモニタ
検査者は、検査モニタとFDAに検査文書(例えば、同意書、分析証明書、症
例報告書、及び関連治療又は臨床チャート)を精査させる。
【0134】
8.2.2 副作用の報告
副作用(ADR)は、直ちにFDA、RAC、及びIRBに報告される。副作
用報告書は、薬剤の作用の疑いが例えわずかでもある場合には、提出が義務付け
られる。従来知られていない等級2又は3の副作用は、10就業日以内に文書で
報告される。等級4の副作用と治療中の患者の死亡は、24時間以内に電話で報
告される。続いて、文書による報告が10就業日以内に求められる。
【0135】
8.2.3 プロトコル改定手続き
プロトコルの改定は、全ての検査員、FDA及びその他必要とされる人員によ
り協議される。現在のプロトコルを改定することで合意がなされた場合には、正
規の変更表が作成され、FDA、ベイラー医科大学のIRB、及びその他の関係
部署に提出される。
【0136】
8.2.4 試験に基づく出版
このプロトコルに関わる全ての検査検査員は、どんな原稿、要約又は提示物で
も利用可能である。検査から生じる被験者及びデータの秘密は、法律の範囲内で
厳守される。
【0137】
8.3 手続き及び治療薬剤
8.3.1 HSV−tk遺伝子の送給
注射に先立ち、注射前日の晩及び注射当日の朝、全ての患者は、広範囲抗菌ス
ペクトル性の経口抗生物質を服用する。これを5日間継続する。前立腺内注射を
行なう部位を各前立腺葉に2ヵ所ずつ、計4ヶ所特定するために、経直腸超音波
が使用される。0日目に合計1乃至2ccのAdV.HSV−tkv.アデノウ
イルスベクター(IND−6371、6636、及び7311で使用されるもの
と同一のベクター)(付表1を参照)が、20番針を用いて(各前立腺葉に1c
cまで)注射される。ベイラー医科大学におけるフェーズ1投与量の増加に関す
る検査の毒性結果に基づいて,腫瘍毎に合計5x1011個のヴェクター粒子が
注射される。前立腺注射に関係した流出阻害が生じないように、フォリカテーテ
ルを注射に続いて留置してもよい。腕Aの患者に対して、アデノウイルスの前立
腺内注射が、2乃至3週間内に反復される。腕Bの患者に対しては、アデノウイ
ルス前立腺内注射は、54日及び70日目に反復される。
【0138】
8.3.2 Valacyclovirの投与
Valacyclovir(付表2参照)治療は、1日に2回、2gmの経口
投与で、各ウイルス注射後24時間経過時に開始され、14日間継続される。こ
の投与量は、10mg/kgのI.V.acyclovirを8時間毎に投与し
たときと同じ薬物血中濃度時間曲線下面積(AUC、h−μg/ml)を与える
ように計算されている。これは、IND7311「再発性卵巣癌の最適ディバル
キング手術後の患者のトポテカンに対するacyclovir静脈投与と化学療
法を伴なう、HSV−tk遺伝子による卵巣癌の付随アデノウイルス介在形質導
入のフェーズ1検査」(Phase 1 Study of Concomit
ant Adenovirus−Mediated Transduction
of Ovarian Cancer with HSV−tk Gene
Followed by Intravenous Administrati
on of Acyclovir and Chemotherapy wit
h Topotecan in Patients After optima
l Debulking Surgery for Recurrent Ov
arian Cancer)で使用されたものと同じ投薬計画である。従って、
腕Aの患者は、1乃至14日目と15乃至29日目にvalacyclovir
の投与を受ける。腕Bの患者は、1乃至14日目と、56乃至69日目と、70
乃至84日目にvalacyclovirの投与を受ける。
【0139】
8.3.3 アンドロゲン遮断
0日目に第一のアデノウイルス注射に付随して、高い確率で、アンドロゲン遮
断が生じる。治療法は、LHRH作用薬のロイプロライドアセテート沈着(ルプ
ロン沈着、30mg−付表2)の毎月の注射と、フラットアミド(ユーレキシン
、250mgを1日に3回経口投与−付表2)の投与とから成る。これは、我々
の標準的なアンドロゲン遮断投薬計画であり、合計4ヶ月に亘り継続される。
【0140】
8.3.4 放射線療法
腕Aに対して:放射性金種の移植が、0日目にHSV−tkアデノウイルスベ
クターの第一の前立腺内注射と同時に(経直腸超音波と透視評価の誘導下で)行
われる。放射性金種の移植後2乃至3週間以内に外部光線放射線療法(IMRT
)が開始される(外部光線放射線療法は、第二のアデノウイルス前立腺内注射後
72時間以内に行われる)。
【0141】
放射性金種の移植は、経直腸超音波の誘導下で会陰腺を経て前立腺内に約40
個の種を移植することにより行われる。各放射性金種は、約2mCiであるので
、合計約80mCiとなり、通常、20乃至30Gyを搬送する。
【0142】
高エネルギ光子(>10MV)及びフラクション当たり2Gyで与えられる5
0Gyの合計線量は、前立腺を覆う等線量線まで搬送される。寒冷部位は、強度
を調節した放射線療法で補償される。
【0143】
9.0 被検体数及び治療評価
全ての患者は、前立腺の生検で判明した腺癌を有しなければならない。
腕Aの患者は、以下の特性即ちPSA<10、グリソン点≦6、及び臨床段階
T2a以下の特性を有するべきである。
腕Bの患者は、以下の特性即ちPSA≧10、グリソン点>6、及び臨床段階
T2b乃至T3の特性のうち少なくとも一つ以上を有するべきである。
【0144】
以前に、外科的治療、ホルモン治療或いは放射線療法による前立腺治療を受け
たことが無いこと。
転移性疾患又は他の悪性腫瘍(扁平上皮細胞癌又は基底細胞皮膚癌を除く)の
徴候兆候が見られないこと。
【0145】
患者は、登録の3ヶ月以内にPSAを有しなければならない。
患者は、登録に先立ち、本検査固有のインフォームドコンセントを与えなけれ
ばならない。
患者は、プロトコルの開始前に、以下の実験値により評価されるような十分な
基準組織機能を有しなければならない。
【0146】
血清クレアチニン<1.5mg%
T.ビリルビン<2.5mg%、 ALT及びAST<Zxで正常
Pts>100,000mm、ANC>1500mm、Hgh>10gm

部分トロンボプラスチン時間(PTT)とプロトロンビン時間(PT)が正常
【0147】
9.2 排除基準
転移性疾患、リンパ腺関係疾患の徴候。
以前に前立腺の手術(加温療法、凍結療法等)を受けた経験があること。
以前に骨盤の放射線治療を受けた経験があること。
以前にアンドロゲン除去ホルモン治療(登録前に、中断時でフィナステライド
>3moの場合を除く)を受けた経験があること。
【0148】
コルチコステロイド又は任意の免疫抑制薬を服用中の患者。
HIV患者。
急性感染症(治療を必要とするウイルス性、細菌性、又は真菌性感染症)の患
者。
肝硬変の患者。
【0149】
9.3 前処置の評価
病歴及び前立腺図、身長、体重を含む検診。
血液学的評価 CBC、PLTS、PT、PTT。
化学的評価 Na、K、Cl、CO2、CR、AST、ALT、LDH、ビリ
ルビン、Ca。
尿検査。
登録の3ヶ月以内のPSA。
CXR(前後及び側方から視認)
疑わしい部位を評価するために確保されたMRIによる骨スキャン。
前立腺の六分儀生検。
【0150】
免疫学的検査:野生型アデノウイルスの抗体を中和する血清の存在。
骨盤アデノパシを防ぐためにリスクの高い患者内で骨盤のCTスキャンを実施

【0151】
9.4 処置中の評価
検診。検診は、各患者を診察して行なわれる。
【0152】
患者は、毎月評価され、急性毒性に対して患者が毎週モニタされる放射線療法
の間中、アンドロゲンの使用中止に対する耐性と薬剤関連の毒性とに関してLH
RH作用薬注射を受ける。
【0153】
排尿検査:必要に応じてフォリカテーテルをウイルス注射直後に留置してもよ
く、この場合、カテーテルを24時間以内に除去する。患者が排尿することがで
きない場合、カテーテルを交換し、排尿検査を指示通り行なう。
【0154】
化学的検査:血清クレアチニン、肝機能検査、CBC、凝固検査、及び血液の
化学検査は、治療の間中毎週、全患者に対してモニタされる。腕Bの患者に対し
ては、反復PSAレベルが、第二のウイルス注射と放射線療法の開始前の56日
目に得られる。臨床的に指示された場合、追加の血液検査が行われる。
【0155】
免疫学的検査:腕Aの患者に対しては15日目に、腕Bの患者に対しては56
日目と71日目にアデノウイルスに対する血清抗体のタイター。
【0156】
前立腺生検:経直腸超音波に誘導された前立腺生検が、腕Aの患者に対しては
HSV−tkの第二の前立腺内注射時に、腕Bの患者に対してはHSV−tkの
第二及び第三の注射時に反復される。
【0157】
膀胱内の種の評価のために及び膀胱内のウイルスの洗浄のために、放射性金種
の移植中に膀胱鏡検査。
【0158】
9.5 処置後の評価
患者は、放射線療法の終了後6週目に評価される。
次に、追跡検査が、最初の年は3ヶ月毎に、それ以降は6ヶ月毎に行なわれる
。各診察時の評価は、
前立腺図による検診、
PSA
持続性又は再発性の局部疾患の評価のために、放射線療法の終了後6週目、及
び6ヶ月目、12ヶ月目、18ヶ月目及び24ヶ月目に行なう前立腺生検、
を含む。
【0159】
6週目(第一回目の追跡検査時)に精液標本が採取され、ウイルス感染の可能
性に対するPCR分析が行われる。陽性の場合には、陰性になるまで、後の追跡
検査毎に採取とPCR分析が行われる。しかしながら、患者によってはこうした
標本を提出することができない。
【0160】
このプロトコルで指示された個々の検査又は試験の性能は、患者の従順さ、ス
ケジュールの困難さ、装置の誤動作、或いは主用検査者又は患者の主治医の臨床
判断等によって左右されること、並びに特定の場合には試験がプロトコルに違反
することなく行なわれ得ないことを理解されたい。しかしながら、この点に関し
ては、元のプロトコルの体系的な変更があれば、患者の安全性に関わりがあろう
があるまいが、IRBに提出される。死亡した患者に対しては完全な死体解剖を
行なう試みがなされる。標準的な病理学的検査に加えて、持続性の組換えアデノ
ウイルスDNAのPCR分析のために組織を採取してもよい。
【0161】
9.6 治療に対する腫瘍反応の基準
完全な反応は、正常範囲(≦1.0ng/ml)内への血清PSAの減少とし
て定義される。
部分的な反応は、治療前基準と比較して少なくとも50%の血清PSAレベル
の減少として定義される。
【0162】
最小反応は、少なくとも25%(しかし50%未満)の血清PSAレベルの減
少として定義される。
【0163】
安定疾患は、以下の中の一つにより定義される。安定した血清PSAレベル、
25%未満の血清PSAの最小減少、又はPSAレベルの初期値の20%以下の
PSAレベルの最小増加。
進行性疾患は、治療前基準の20%を超えるPSAの増加として定義される。
【0164】
また、治療に対する腫瘍反応の評価において、DREの結果、反復生検の結果
、PSA減少率、ネイダPSA、フリーPSA、PAPの時間と継続期間及びア
ルカリホスファターゼが評価されてもよい。
【0165】
9.7 疾患の再発
PSAが2度続けて上昇すると、治療不全として記録される。治療不全までの
時間は、ウイルス注射及びアンドロゲン遮断の開始の日から、一連のPSAの上
昇においてPSAが最初に上昇した日までの時間間隔である。
【0166】
局部不全:2年目に行なわれる生検が陽性の場合、局部不全として記録される
。デジタル直腸検査時に局部疾患が増加した患者、及び上述したようにPSAが
上昇した患者も、局部不全として記録される。
【0167】
遠隔不全:放射線写真による転移性疾患の徴候の有無に拘わらPSAが上昇し
且つDREと経直腸超音波誘導生検の結果が陰性の患者は、遠隔不全として記録
されるが、局部的には制御される。
【0168】
9.8 毒性
HSV−tk + valacyclovirとアンドロゲン遮断に対する毒
性は、NCIのCTEPにより出版された共通毒性基準により評価される(付表
3)。ラディエーション・セラピ・オンコロジ・グループ(RTOG:Radi
ation Therapy Oncology Group)による急性及び
晩発性疾病得点表(付表4)は、放射線療法から毒性を等級分けするために使用
される。
【0169】
9.9 治療中断基準
a.RTOGのCTEPで指定された固定等級3の毒性と再発性等級4の毒性

b.(valacyclovirの投与に付随する毒性等の)前立腺腫瘍のウ
イルスを介した形質導入に直接関係しない他の予期される毒性現象、或いは悪性
前立腺腫瘍の自然発達により説明し得る合併症は、検査を終了するための十分な
徴候として認められない。別の毒性の発生は、IRBの委員長と協議される。
c.患者又は代行権限を有する者の要求があり次第、患者は当該検査から撤退
することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1A】 図1は単一治療投与量増加分析(single therapy dose escalation analysis
)を示している。皮下RM-1腫瘍(50〜60mm3)が、組み合わせ治療の研究
目的で、効果的ではあるが非完全治癒単一治療量にて使用された。A)ベクター
投与量は、1x109から1x1011のv.p./腫瘍(half log increments)に対
して単一AdV.RSV-tkを腫瘍内注入し、その後に6日間、GCVを20mg/kg
(bid)投与することで分析された。B)放射線投与量は実施例2のごとく5、1
0、15Gyの単一部分搬送(singlefraction delivery)で分析された。
【図1B】 図1は単一治療投与量増加分析(single therapy dose escalation analysis
)を示している。皮下RM-1腫瘍(50〜60mm3)が、組み合わせ治療の研究
目的で、効果的ではあるが非完全治癒単一治療量にて使用された。A)ベクター
投与量は、1x109から1x1011のv.p./腫瘍(half log increments)に対
して単一AdV.RSV-tkを腫瘍内注入し、その後に6日間、GCVを20mg/kg
(bid)投与することで分析された。B)放射線投与量は実施例2のごとく5、1
0、15Gyの単一部分搬送(singlefraction delivery)で分析された。
【図2A】 図2Aはマウス前立腺腫瘍モデルの腫瘍成長に対する組み合わせ治療効果を示
す。アデノウィルスベクターを受領した腫瘍には3x1010のAdV-tkまたはA
dV-β-gal v.p.が注入された。放射線治療された腫瘍は5Gyの単一投与を受け
た。A)治療処置後のコントロール、単一治療及び組み合わせ治療グループの相
対的腫瘍成長。B)C57BL/6マウス、a)AdV-b-gal+5Gy、b)Ad-tkの
み、c)5Gyのみ、d)AdV-tk+5Gyでの治療後10日。腫瘍は動物の両脇腹に
見られる。C)治療動物とコントロールの相対的生存率。
【図2B】 図2Bはマウス前立腺腫瘍モデルの腫瘍成長に対する組み合わせ治療効果を示
す。アデノウィルスベクターを受領した腫瘍には3x1010のAdV-tkまたはA
dV-β-gal v.p.が注入された。放射線治療された腫瘍は5Gyの単一投与を受け
た。A)治療処置後のコントロール、単一治療及び組み合わせ治療グループの相
対的腫瘍成長。B)C57BL/6マウス、a)AdV-b-gal+5Gy、b)Ad-tkの
み、c)5Gyのみ、d)AdV-tk+5Gyでの治療後10日。腫瘍は動物の両脇腹に
見られる。C)治療動物とコントロール動物の相対的生存率。
【図2C】 図2Cはマウスの乳癌腫瘍モデルでの腫瘍成長に対する組み合わせ治療の効果
を示す。腫瘍は前述のようにアデノウィルスベクターを受領した。AdV-b-gal+
5Gy、AdV-tkのみ、5Gyのみ、AdV-tk+5Gyでの処理後10日のBalb/
cマウス。腫瘍は動物の右脇腹に見える。
【図3】 図3は治療の免疫効果を示す。単一または組み合わせ治療での治療後の腫瘍
の免疫細胞浸透結果。それぞれの腫瘍の冷凍部分は免疫特性に特定的な抗体で着
色され、mm2単位のポジティブ細胞の相対数が少なくとも10顕微鏡フィールド
定量(cuantitated)された。
【図4】 図4は組み合わせ治療の抗転移効果を示す。A)肺臓転移の数グラフ。B)
それぞれのグループからの代表肺臓。腫瘍は1x104の皮下注入と、5x103
のRM-1細胞の尻尾静脈注入で確立された。組み合わせ治療は2つの単一治療
法及び非治療コントロールと比較された。3x1010のAdV-tkが20ulのAd
V/RSV-tkで皮下腫瘍に注入された。ガンシクロビル治療はHSV-tk注入後
24時間で開始され、単一投与の5Gyの放射線が72時間後に投与された。胸
の孔部はベクトル注入後10日目に腫瘍の検査のために調べられた。肺臓は切開
され、ピクリン酸で固定され、腫瘍塊が数えられた。HSV-tk治療は肺臓のコ
ロニー化を大きく減少させた(p<0.05)。組み合わせ治療は肺臓の転移数をさら
に大きく減少させた(p<0.05)。
【図5A】 図5AはアデノウィルスエンコードHSV-tk移転マウス線維芽細胞と支持M
HCクラスII依存T細胞増殖を示す。A)Ad5tk移転DR-1トランスフェク
ト(transfected)L細胞溶解質からの細胞溶解質のウェスタンブロット分析(West
ern blotanalysis)。30x106の細胞が溶解され、SDS-PAGEで分離さ
れ、ニトロセルロース膜への移送が続いた。膜は、HSV-tkに対して惹起(raised)された
ラビットポリクロナル抗血清(polyclonal anti-serum)でプローブされ
ロバ抗ラビット(donkey anti-rabbit)HRPとECLで可視化された。純粋
HSV-tkがポジティブコントロールとして使用された。_-ガラクトシダーゼ(ga
lactosidase)とのアデノウィルス移転にバンド(band)は見られなかった。B)D
R-1+と親L細胞は1x109vp/mlで移転され、24〜36時間培養された。A
PCはミトマイシン(mitomycin)Cで治療され、洗浄された。APCは96丸底
フラスコで5x104でプレート処理(plated)され(2.5x105の純粋T細胞
)、培養された。β-ガラクトシダーゼはウィルス抗原に対するT細胞反応の決
定に使用された。これはネガティブコントロールとして作用した。VSAg-7(
ウィルススーパー抗原)を含んだアデノウィルスがポジティブコントロールとし
て使用された。MHCクラスII分子の存在下でVSAg-7のCPMは8000
0を超えた。特定の分子の不存在下で、cpmレベルは3000以下であった。デ
ータは4回実行された代表実験で得られた。同様な結果が種々なドナーで得られ
た。C)DR-1、DQ及びDP複基準が使用され、アデノウィルス移転とT細
胞増殖が支持された。APCは1x10vp/mlで移転され、前述のように処理
された。APCはT細胞を加える前に順番に希釈された。同様な結果が3名で得
られた。
【図5B】 図5BはHSV-tkにスペシフィックであり、アデノウィルスまたはインサー
トにはスペシフィックではないT細胞刺激を示す。A)Ad5tkは滴定され、T
細胞増殖を支持するアデノウィルスの最良濃度が決定された。非常に高い濃度で
明瞭な細胞病理効果が見られ、細胞死が確認された。最良の濃度は1x109vp/
mlであった。低濃度は多少のT細胞増殖を支持した。B)ワイルドタイプのAd
5が同様に滴定された。幅広い投与量曲線にも拘わらず、T細胞増殖は観察され
なかった。C)とD)T細胞増殖はHSV-tkに特有である。T細胞増殖を支持
する能力を調べるため、通常使用されるインサートを含んだいくつかのアデノウ
ィルスをテストした。ここには2つの代表ドナーを有した2つの代表インサート
が示されている。これらの結果は数回反復されたが、結果はどれも同様であった。

Claims (9)

  1. 癌患者に対して使用する、限局性或いは転移性腫瘍の量の増加を抑制または遅延させる薬剤の製造のための非増殖性アデノウィルス遺伝子を運搬するベクターの利用法であって、該ベクターはチミジンキナーゼをコード化したヌクレオチド塩基配列を含んでおり、癌患者は該ベクターの投与後にガンシクロビル或いは類似プロドラッグを投与され、
    既往性全身抗腫瘍免疫応答を誘起するために前記遺伝子運搬ベクターと前記プロドラッグは癌患者に対して放射線療法との組み合わせで投与されることを特徴とする利用法。
  2. ベクターは、追加のプロドラッグ活性化遺伝子、免疫賦活遺伝子、ゼノ抗原、腫瘍に対するハイパー抗原或いはスーパー抗原をさらに含んでいることを特徴とする請求項1記載の利用法。
  3. プロドラッグはバルシクロビル、ファムシクロビル或いはその他の経口投与用類似体であることを特徴とする請求項1または2記載の利用法。
  4. ベクターはインターフェロン、コロニー刺激因子、インターロイキン、ケモカイン或いは共刺激分子である追加の外因性遺伝子を運搬することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の利用法。
  5. 標的の腫瘍は前立腺癌、頭部、首、頚部、脳、膀胱、直腸、膵臓、結腸、肺臓或いは乳房の腫瘍であることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の利用法。
  6. 標的の腫瘍は前立腺の腫瘍であることを特徴とする請求項5記載の利用法。
  7. ベクターは109から1015の有効粒子投与量となるように製剤されていることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の利用法。
  8. ベクターは109から1013の有効粒子投与量となるように製剤されていることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の利用法。
  9. ベクターは109から1011の有効粒子投与量となるように製剤されていることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の利用法。
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