JP2003522528A - 薬剤代謝酵素 - Google Patents

薬剤代謝酵素

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JP2003522528A JP2001558463A JP2001558463A JP2003522528A JP 2003522528 A JP2003522528 A JP 2003522528A JP 2001558463 A JP2001558463 A JP 2001558463A JP 2001558463 A JP2001558463 A JP 2001558463A JP 2003522528 A JP2003522528 A JP 2003522528A
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シー、レオ・エル
ヤング、ジュンミング
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Abstract

(57)【要約】 本発明は、ヒト薬剤代謝酵素(DME)と、DMEを同定及びコードするポリヌクレオチドとを提供する。本発明はまた、発現ベクター及び宿主細胞、抗体、アゴニスト、アンタゴニストを提供する。更に、本発明は、DMEの異常な発現に関連する疾患の診断・治療・予防方法を提供する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】 (技術分野) 本発明は、薬剤代謝酵素の核酸配列及びアミノ酸配列に関する。本発明はまた
、これらの配列を自己免疫/炎症の疾患、細胞増殖異常、発生または発達障害、
内分泌障害、眼の疾患、代謝障害、および肝臓の疾患を含む胃腸疾患の診断・治
療・予防に利用することに関する。本発明はさらに、薬剤代謝酵素の核酸配列及
びアミノ酸配列の発現における外来性化合物の効果についての評価に関する。
【0002】 (発明の背景) 薬剤の代謝および薬剤の体内での移動(薬物動体学)は、その効果、毒性、お
よびその他の薬剤との相互作用を決定する上で重要である。薬剤の吸収、様々な
組織への薬剤の分布、および薬剤代謝産物の排除の3つのプロセスが薬物動体学
を司っている。これらのプロセスは、様々な代謝調節によって、溶解性、受容体
との結合性、および排泄の速度を含む薬剤の物理化学的特性および薬学的特性の
ほとんどを変えるため、薬剤代謝に密接に関係する。薬剤を変える代謝経路はま
た、ステロイド、脂肪酸、プロスタグランジン、ロイコトリエン、およびビタミ
ン等の様々な天然の基質を受容する。従って、これらの経路における酵素は、天
然の化合物、薬剤、発癌物質、変異誘発物質、および生体異物の間の生化学的お
よび薬理学的相互作用の重要な部位となる。
【0003】 薬剤代謝における遺伝的な差異が、個人間において薬剤効果および毒性のレベ
ルの著しい違いを引き起こすことが以前から知られている。治療指数が狭い薬剤
、またはコデイン等の生理活性を必要とする薬剤の場合、このような遺伝子多型
は極めて重要である。更に、有望な新規の薬剤が、一部の患者のグループのみに
副作用を引き起こすという毒性から臨床試験で排除されることがよくある。薬剤
代謝酵素が重要な部分を占める薬理ゲノミックス研究が進歩すれば、薬剤の効果
および毒性の疑問に耐え得るツールが発展し、そのような情報が拡大されるであ
ろう(Evans, W. E.およびR. V. Relling (1999) Science 286 : 487-491を参照
)。
【0004】 薬剤代謝反応は、薬剤分子を機能させて更なる代謝のために準備するフェーズ
I、およびフェーズIIに分類され、それらは連続している。一般に、フェーズIの
反応生成物は部分的或いは完全に不活性であり、フェーズIIの反応生成物は主に
排泄種である。しかしながら、フェーズI反応生成物は、投与された元の薬剤よ
りも活性が高い場合があり、この代謝活性の原理がプロドラッグとして利用され
る(例えば、レボドパ)。加えて、或る種の毒性化合物(例えば、アフラトキシ
ン、ベンゾ-a-ピレン)は、これらの経路を経て毒性中間体に代謝される。フェ
ーズI反応は通常、薬剤代謝における律速段階である。化合物或いは複数の化合
物への事前の暴露によって、フェーズI酵素の発現させることができるが、それ
によってこの代謝経路を介する基質の流入が増大する(Klaassen, C. D., Amdur
, M. O.およびJ. Doull (1996) Casarett and Doull's Toxicology : The Basic Science of Poisons , McGraw-Hill, New York, NY, pp. 113-186 ; B. G. Katz
ung (1995) Basic and Clinical Pharmacology, Appleton および Lange, Norwa
lk, CT, pp. 48-59 ; G. G. Gibson および P. Skett (1994) Introduction to Drug Metabolism , Blackie Academic and Professional, Londonを参照)。
【0005】 薬剤代謝酵素(DME)は幅広い基質特性を有する。これは、多種多様な抗体が
それらの抗原に対して高い特異性を有する免疫系とは対照的である。多様な分子
を代謝するDMEの能力によって、ある代謝レベルにおいて薬剤の相互作用の可能
性が生まれる。例えば、或る化合物のDMEの誘導により、その酵素によって別の
化合物が代謝され得る。
【0006】 DMEは、それらが触媒する反応の種類および関係する補助因子に従って分類す
ることができる。フェーズI酵素の主なクラスには、限定するものではないがチ
トクロームP450およびフラビン含有モノオキシゲナーゼが含まれる。フェーズI
型触媒サイクルおよび反応に関与するその他の酵素のクラスには、限定するもの
ではないが、NADPHチトクロームP450還元酵素(CPR)、ミクロソームチトクロー
ムb5/NADHチトクロームb5レダクターゼ系、フェレドキシン/フェレドキシンレ
ダクターゼレドックス対、アルド/ケト還元酵素、およびアルコールデヒドロゲ
ナーゼが含まれる。フェーズII酵素の主なクラスには、限定するものではないが
、UDPグルクロニルトランスフェラーゼ、スルホトランスフェラーゼ、グルタチ
オンSトランスフェラーゼ、Nアシルトランスフェラーゼ、およびNアセチルトラ
ンスフェラーゼが含まれる。
【0007】 チトクロームP450およびP450触媒サイクル関連酵素 酵素チトクロームP450のスーパーファミリーのメンバーは、様々な基質の酸化
的代謝を触媒する。そのような基質には、ステロイド、脂肪酸、プロスタグラン
ジン、ロイコトリエン、およびビタミン等の天然の化合物や、薬剤、発癌物質、
変異誘発物質、および生体異物が含まれる。P450ヘム−チオレートタンパク質と
しても知られるチトクロームP450は通常、P450含有モノオキシゲナーゼ系と呼ば
れる多成分電子伝達鎖における末端酸化酵素として作用する。触媒される特定の
反応には、ヒドロキシル化、エポキシ化、N-酸化、スルホキシド化、N-脱アルキ
ル、S−脱アルキル、およびO−脱アルキル、脱硫酸化、脱アミノ化、並びにアゾ
、ニトロ、およびN−オキシド基の還元が含まれる。これらの反応は、動物にお
ける糖質コルチコイド、コルチゾール、エストロゲン、およびアンドロゲンのス
テロイド産生や、昆虫における殺虫剤耐性や、植物における除草剤耐性および花
の発色や、微生物による環境浄化バイオレメディエーションに関係する。薬剤、
発癌物質、変異誘発物質、および生体異物にチトクロームP450が作用して、物質
の解毒或いはより毒性の強い生成物への変換を引き起こし得る。チトクロームP4
50は肝臓に豊富に存在するが、その他の組織にも存在し、その酵素はミクロソー
ムに存在する(ExPASY ENZYME EC 1. 14. 14. 1 ; Prosite PDOC00081 Cytochro
me P450 cysteine heme-iron ligand signature ; PRINTS EP450I E-Class P450
Group I signature ; Graham-Lorence, S.およびPeterson, J. A. (1996) FASE
B J. 10 : 206-214.を参照)。
【0008】 400種類のチトクロームP450が、細菌、真菌、植物、および動物を含む様々
な生物において同定された(Graham-Lorence、前出)。Bクラスは原核生物およ
び真菌に見られ、Eクラスは細菌、植物、昆虫、脊椎動物、および哺乳動物に見
られる。5つのサブクラス即ちグループが、EクラスチトクロームP450の大きな
ファミリーの中に含まれる(PRINTS EP450I E-Class P450 Group I signature)
【0009】 全てのチトクロームP450はヘム補助因子を用いており、構造的特性を共有する
。ほとんどのチトクロームP450は、400〜530のアミノ酸の長さである。酵
素の二次構造は、約70%のαヘリックスと約22%のβシートである。タンパ
ク質のC末端部におけるヘム結合部位の周りの領域は、全てのチトクロームP450
に保存されている。このヘム−鉄結合領域におけるアミノ酸10個のシグネチャ
配列が同定され、この配列には第5の配位部位にあるヘム−鉄の結合に関与する
保存されたシステインが含まれる。真核生物チトクロームP450では、通常は膜貫
通領域がタンパク質の初めの15〜20のアミノ酸において見られ、通常は約1
5の疎水性残基およびそれに続く正に帯電した残基からなる(Prosite PDOC0008
1前出 ; Graham-Lorence前出を参照)。
【0010】 チトクロームP450酵素は、細胞増殖および発達に関係する。この酵素は、DNA
と付加物を形成する反応性中間体に化学物質を代謝することで起こる化学的な変
異誘発および発癌において或る役割を果たす(Nebert, D. W.およびGonzalez, F
. J. (1987) Ann. Rev. Biochem. 56 : 945-993)。これらの付加物が、発癌を
引き起こすヌクレオチドの改変およびDNAの再編成を引き起こし得る。肝臓およ
びその他の組織におけるチトクロームP450の発現は、多環式芳香族炭化水素、ペ
ルオキシソーム増殖因子、フェノバルビタール、および糖質コルチコイドデキサ
メタゾン等の生体異物によって引き起こされる(Dogra, S. C.他 (1998) Clin.
Exp. Pharmacol. Physiol. 25 : 1-9)。チトクロームP450タンパク質は、P450
遺伝子CYP1B 1における突然変異が原発性先天性緑内障を引き起こすように、目
の発達に関与し得る(Online Mendelian Inheritance in Man (OMIM) *601771 C
ytochrome P450, subfamily I (dioxin-inducible), polypeptide 1 ; CYP1B 1
)。
【0011】 チトクロームP450は炎症および感染に関係する。肝チトクロームP450活性は、
様々な感染および炎症性の刺激によって著しく増減される(Morgan, E. T. (199
7) Drug Metab. Rev. 29 : 1129-1188)。in vivoで観察される効果は、炎症誘
発性のサイトカインおよびインターフェロンによって模倣され得る。2つのチト
クロームP450タンパク質に対する自己抗体は、自己免疫性多腺性内分泌不全症 I
型(APECED)即ち多腺性自己免疫症候群の患者に見られた(OMIM *240300 Auto
immune polyenodocrinopathy-candidiasis-ectodermal dystrophy)。
【0012】 チトクロームP450における突然変異は、乳児期および幼児期の副腎機能不全に
おいて最も一般的である副腎皮質過形成、プソイドビタミンD−欠損くる病、脳
腱黄色腫症、進行性の神経障害によって特徴付けられる脂質貯蔵病、早期アテロ
ーム性動脈硬化症、白内障、抗凝血薬であるクマリンおよびワルファリンに対す
る遺伝性の耐性を含む代謝障害に関係する(Isselbacher, K. J.他 (1994) Harr ison's Principles of Internal Medicine , McGraw-Hill, Inc. New York, NY,
pp. 1968-1970 ; Takeyama, K.他 (1997) Science 277 : 1827-1830 ; Kitanaka
, S.他 (1998) N. Engl. J. Med. 338 : 653-661 ; OMIM *213700 Cerebrotendi
nous xanthomatosis ; および OMIM #122700 Coumarin resistance)。チト
クロームP450タンパク質アロマターゼの極端に高い発現レベルが、重度の女性化
乳房(女性化)を有する少年の繊維層肝細胞癌(fibrolamellar hepatocellular
carcinoma)に見られた(Agarwal, V. R. (1998) J. Clin. Endocrinol. Metab
. 83 : 1797-1800)。
【0013】 チトクロームP450触媒サイクルは、NADPHチトクロームP450レダクターゼ(CPR
)によるチトクロームP450の還元によって完了する。チトクロームb5およびNADP
Hチトクロームb5レダクターゼからなる別のミクロソーム電子伝達系は、チトク
ロームP450触媒サイクルへの電子の小供与体として広く見られる。しかしながら
、Lamb, D. C.他(1999 ; FEBS Lett. 462 : 283-8)による近年の研究報告から
、ミクロソームチトクロームb5/NADPHチトクロームb5レダクターゼ系によって効
果的に還元され、支持され得るCandida albicansチトクロームP450(CYP51)が
確認された。従って、この別の電子供与系によって支持される多くのチトクロー
ムP450が存在すると思われる。
【0014】 チトクロームb5レダクターゼはまた、赤血球細胞における酸化型ヘモグロビン
(酸素を保持することができないメトヘモグロビン)の活性型ヘモグロビン(fe
rrohemoglobin)へ還元する。酸化剤即ち十分に還元されていない異常なヘモグ
ロビン(ヘモグロビンM)が高いレベルで存在すると、メトヘモグロビン血症が
引き起こされる。メトヘモグロビン血症はまた、赤血球チトクロームb5レダクタ
ーゼの先天的な欠損症からも起こり得る(Mansour, A.およびLurie, A. A. (199
3) Am. J. Hematol. 42 : 7-12を参照)。
【0015】 チトクロームP450ファミリーのメンバーもまた、ビタミンDの合成および異化
に密接に関係している。ビタミンDは、植物組織で生成されるエルゴカルシフェ
ロール(ビタミンD2)および動物組織で生成されるコレカルシフェロール(ビタ
ミンD3)の2つに生物学的に等価なプロホルモンとして存在する。後者のコレカ
ルシフェロールは、7−デヒドロコレステロールが近紫外線(例えば、290〜310
nm)に曝露されると形成される。通常は、皮膚が短時間日光に曝されると生成
される(Miller, W. L.およびPortale, A. A. (2000) Trends in Endocrinology
and Metabolism 11 : 315-319を参照)。
【0016】 両方のホルモン型は更に、肝臓において酵素25−ヒドロキシラーゼによって25
−ヒドロキシビタミンD(25(OH)D)に代謝される。25 (OH) Dは最も豊富に存在
するビタミンDの前駆体であって、更に酵素25−ヒドロキシビタミンD 1α−ヒド
ロキシラーゼ(1α−ヒドロキシラーゼ)によって、活性型である1α,25−ジヒ
ドロキシビタミンD(1α,25(OH)2D)に腎臓において代謝される。1α,25(OH)2D
生成の調節は主に合成経路の最終ステップで行われる。1α−ヒドロキシラーゼ
活性は、酵素産物(1α,25(OH)2D)の循環レベル、並びに副甲状腺ホルモン(PT
H)、カルシトニン、インスリン、カルシウム、リン、成長因子、およびプロラ
クチンのレベルを含む幾つかの生理学的因子に左右される。更に、腎臓外の1α
−ヒドロキシラーゼ活性が報告され、組織特異的かつ局所的なlα, 25 (OH) 2D
生成の調節が生物学的に重要であると考えられる。lα,25(OH)2Dの24,25−ジヒ
ドロキシビタミンD(24,25(OH)2D)への触媒作用は、酵素25−ヒドロキシビタミ
ンD24−ヒドロキシラーゼ(24−ヒドロキシラーゼ)を伴い腎臓でも起こる。24
−ヒドロキシラーゼはまた、基質として25 (OH)Dを利用することができる(Shin
ki, T.他 (1997) Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A. 94 : 12920-12925 ; Mille
r, W. L.およびPortale, A. A.、前出、を参照)。
【0017】 ビタミンD25−ヒドロキシラーゼ、lα−ヒドロキシラーゼ、および24−ヒドロ
キシラーゼは全て、NADPH依存性I型(ミトコンドリア)チトクロームP450酵素で
あって、そのファミリーの他のメンバーと高い相同性を有する。ビタミンD25−
ヒドロキシラーゼはまた、幅広い基質特異性を有し、胆汁酸中間体の26−ヒドロ
キシル化およびコレステロールの25−ヒドロキシル化、26−ヒドロキシル化、お
よび27−ヒドロキシル化を行う(Dilworth, F. J.他 (1995) J. Biol. Chem. 27
0 : 16766-16774 ; Miller, W. L.およびPortale, A. A. 前出、を参照)。
【0018】 ビタミンDの活性型(lα,25(OH)2D)は、カルシウムおよびリン酸の恒常性に
関与し、骨髄細胞および皮膚細胞の分化を促進する。ビタミンDの代謝に関与す
る酵素(例えば、1α−ヒドロキシラーゼ)の欠損によって生じるビタミンDの欠
損は、低カルシウム血症、低リン酸血症、ビタミンD依存性 (感受性)くる病、骨
密度の低下並びにあひる歩行を伴う内反膝およびO脚という症状を示す疾患を引
き起こす。ビタミンD25−ヒドロキシラーゼの欠損は、脳腱黄色腫症や、アキレ
ス腱、脳、肺、およびその他の多くの組織におけるコレステロールおよびコレス
タノールの蓄積という特徴をもつ脂質貯蔵病を引き起こす。この疾患は、思春期
後の小脳性運動失調症、アテローム性動脈硬化症、および白内障を含む進行性の
神経障害を示す。ビタミンD25−ヒドロキシラーゼの欠損がしてもくる病が起き
ないことから、25(OH)D合成の別の経路が存在することが推定される(Griffin,
J. E.およびZerwekh, J. E. (1983) J. Clin. Invest. 72 : 1190-1199 ; Gambl
in, G. T.他 (1985) J. Clin. Invest. 75 : 954-960 ; およびW. L.およびPort
ale, A. A. 前出)。
【0019】 フェレドキシンおよびフェレドキシンレダクターゼは電子伝達アクセサリータ
ンパク質であって、少なくとも1つのヒトチトクロームP450種、CYP27遺伝子に
よってコードされるチトクロームP450c27を支持する(Dilworth, F. J.他 (1996
) Biochem. J. 320 : 267-71)。ストレプトマイセス‐グリセウスチトクローム
P450であるCYP104D1は、大腸菌において異種と共に発現され、内在性フェレドキ
シンおよびフェレドキシンレダクターゼ酵素によって還元されている(Taylor,
M.他 (1999) Biochem. Biophys. Res. Commun. 263 : 838-42)。このことから
、多くのチトクロームP450種が、フェレドキシン/フェレドキシンレダクターゼ
対によって支持されていることが推定される。フェレドキシンレダクターゼはま
た、モデル薬剤代謝系に見られ、抗腫瘍性抗生物質であるアクチノマイシンDを
反応性フリーラジカル種に還元することが知られている(Flitter, W. D.および
Mason, R. P. (1988) Arch. Biochem. Biophys. 267 : 632-9)。
【0020】 フラビン含有モノオキシゲナーゼ(FMO) フラビン含有モノオキシゲナーゼは、基質の通常範囲外の求核性の窒素、硫黄
、およびリンのヘテロ原子を酸化する。チトクロームP450と同様に、FMOはミク
ロソーム酵素であってNADPHおよびOを用い、その基質がチトクロームP450の基
質と広範に重なる。FMOは、肝臓、腎臓、および肺などの組織に分布している。
【0021】 組織特異的に発現される5つの異なった既知のFMOのアイソフォーム(FMO1、F
MO2、FMO3、FM04、およびFMO5)が哺乳動物に見られる。これらのアイソフォー
ムは組織特異性が異なり、更に様々な化合物による阻害および反応の立体特異性
等のその他の特性も異なる。FMOは、アミノ酸13個のシグネチャ配列を有し、
その成分は配列のN末端の3分の2にまたがり、多くのNヒドロキシル化酵素に見
られるFATGYモチーフおよびFAD結合領域を含む(Stehr, M.他 (1998) Trends Bi
ochem. Sci. 23 : 56-57 ; PRINTS FMOXYGENASE Flavin-containing monooxygen
ase signature)。
【0022】 特異的な反応には、求核性三級アミンのNオキシドへの酸化、二級アミンのヒ
ドロキシルアミンおよびニトロンへの酸化、一級アミンのヒドロキシルアミンお
よびオキシムへの酸化、および硫黄含有化合物およびホスフィンのS−オキシド
およびP−オキシドへの酸化が含まれる。ヒドラジン、ヨウ化物、セレン化物、
および硼素含有化合物も基質である。FMOは化学的にチトクロームP450に類似し
ているが、FMOはその熱不安定性およびチトクロームP450の非イオン界面活性剤
感受性に基づいてin vitroのチトクロームP450から通常は区別することができる
。しかしながら、FMOのアイソフォームによって熱安定性および界面活性剤感受
性が異なるため、これらの特性を区別に用いることは複雑である。
【0023】 FMOは、幾つかの薬剤および生体異物の代謝に重要な役割を果たしている。FMO
(肺FMO3)は、尿中に排出される(S)ニコチンの(S)ニコチンN−1’−オキシ
ドへの代謝において主要な役割を果たす。FMOはまた、胃潰瘍の治療に広く用い
られているH2−アンタゴニストであるシメチジンのS−酸素化に関係する。FMOの
肺発現型は、チトクロームP450と同じ調節制御下にない。例えば、ラットにおい
て、フェノバルビタール治療によりチトクロームP450が生成されるが、FMO1は抑
制される。
【0024】 FMOの内因性基質には、ジスルフィドに酸化されるシステアミンおよびトリメ
チルアミンN−オキシドに代謝されるトリメチルアミン(TMA)が含まれる。TMA
は腐った魚のような臭いがし、FMO3アイソフォームの突然変異によって、悪臭が
する遊離アミンが大量に汗、尿、および呼気から排出されるようになる。このよ
うな現象は、魚臭症候群引き起こす(OMIM 602079 Trimethylaminuria)。
【0025】 リシルオキシダーゼ リシルオキシダーゼ(リシン6−オキシダーゼLO)は、コラーゲンとエラスチ
ンの架橋結合による結合組織マトリクスの形成に関与する銅依存性アミンオキシ
ダーゼである。LOは、約50 kDaのNグリコシル化前駆体タンパク質として分泌さ
れ、この前駆体も活性ではあるが、メタロプロテアーゼによって酵素の成熟型に
切断される。LOの銅原子は、酸素へ電子を伝達したりその反対に酸素から電子を
取り除いたりすることに関係し、これらの細胞外マトリクスタンパク質における
リシン残基の酸化的脱アミノ反応を促進する。銅の配位がLO活性に必須であるが
、食事によって銅が摂取されなくてもアポ酵素の発現はその影響を受けない。し
かしながら、機能的なLOの不在は、食事による銅の欠損に関係する骨格組織およ
び血管組織の疾患に関係する。LOはまた、様々なセミカルバジド、ヒドラジン、
および亜硝酸アミノ、並びにヘパリンによって阻害される。β−アミノプロピオ
ノニトリルは一般にインヒビターとして用いられる。LOの活性は、オゾン、カド
ミウム、および局所組織外傷に応答して放出されるホルモンのレベルの上昇に応
答して増大する。このようなホルモンには、トランスフォーミング成長因子−β
、血小板由来成長因子、アンギオテンシンII、および線維芽成長因子等が含まれ
る。LO活性における異常は、メンケス症候群および後角症候群(occipital horn
syndrome)に関係する。サイトゾル型の酵素は異常な細胞増殖に関係する(Ruc
ker, R. B.他. (1998) Am. J. Clin. Nutr. 67 : 996S-1002SおよびSmith-Mungo
. L. I.およびKagan, H. M. (1998) Matrix Biol. 16 : 387-398を参照)。
【0026】 ジヒドロ葉酸レダクターゼ ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)は遍在性の酵素であって、ジヒドロ葉酸の
テトラヒド葉酸へのNADPH依存性の還元を触媒する。この反応は、グリシンおよ
びプリンの新規の合成、並びにデオキシウリジン一リン酸(dUMP)のデオキシチ
ミジン一リン酸(dTMP)への変換における重要な過程である。この基本的な反応
は、7,8−ジヒドロ葉酸+NADPH→5,6,7,8−テトラヒド葉酸+NADPである。こ
の酵素は、trimethroprimおよびメトトレキセートを含む様々なジヒドロ葉酸類
似体によって阻害され得る。豊富なTMPがDNAの合成に必要であるため、迅速な細
胞の分裂にはDHFR活性が必要である。DNAウイルス(例えば、ヘルペスウイルス
)の複製はまた、高いレベルのDHFR活性を必要とする。そのため、DHFRを標的と
する薬剤が、DNAウイルスの複製を抑制するために癌の化学療法に用いられてい
る(同様の理由で、チミジル酸シンターゼが標的酵素である)。DHFRを抑制する
薬剤は、急激に分裂する細胞(またはDNAウイルス感染細胞)に対して細胞毒で
あるのが好ましいが、特異性を持たず、分裂する細胞を無差別に破壊する。更に
、癌細胞は、獲得性の輸送障害または1或いは複数のDHFR遺伝子の複製の結果と
して、メトトレキセート等の薬剤に対して耐性を有するようになり得る(Stryer
, L (1988) Biochemistry. W. H Freeman and Co., Inc. New York. pp. 511-56
19)。
【0027】 アルド/ケト還元酵素 アルド/ケト還元酵素は、単量体NADPH依存性オキシドレダクターゼであって
幅広い基質特異性を有する(Bohren, K. M.等 (1989) J. Biol. Chem. 264 : 95
47-51)。これらの酵素は、カルボニル含有糖および芳香族化合物を含むカルボ
ニル含有化合物の対応するアルコールへの還元を触媒する。従って、様々なカル
ボニル含有薬剤および生体異物はこのクラスの酵素によって代謝されると思われ
る。
【0028】 ファミリーメンバーであるアルドースレダクターゼによって触媒される既知の
或る反応は、グルコースがソルビトールへ還元され、更にソルビトールデヒドロ
ゲナーゼによってフルクトースに代謝される。通常の条件下で、グルコースのソ
ルビトールへの還元は主な経路ではない。しかしながら、高血糖状態では、ソル
ビトールの蓄積は糖尿病合併症の発症に関係する(OMIM *103880 Aldo-keto red
uctase family 1, member B1)。この酵素のファミリーのメンバーはまた、或る
種の肝癌で高発現される(Cao, D.他 (1998) J. Biol. Chem. 273 : 11429-35)
【0029】 アルコールデヒドロゲナーゼ アルコールデヒドロゲナーゼ(ADH)は、単純アルコールを対応するアルデヒ
ドに酸化する。ADHはサイトゾル酵素であって、補助因子NAD+を好み亜鉛イオン
を結合させる。ADHのレベルは肝臓において最も高く、腎臓、肺、および胃粘膜
においては低い。
【0030】 既知のADHアイソフォームは、40 kDaのサブユニットからなる二量体タンパク
質である。これらのサブユニット(a、b、g、p、c)をコードする5つの既知の
遺伝子座が存在し、その内の幾つかは特徴的な対立遺伝子変異体(b1、b2、b3、
g1、g2)を有する。サブユニットはホモ二量体およびヘテロ二量体を形成するこ
とができ、サブユニットの構成によって活性な酵素の特異的特性が決定される。
従って、ホロ酵素がクラスI(サブユニット構成、aa、ab、ag、bg、gg)、クラ
スII(pp)、およびクラスIII(cc)として分類される。クラスI ADHイソ酵素は
エタノールおよびその他の小さい脂肪族アルコールを酸化し、ピラゾールによっ
て阻害される。クラスIIイソ酵素は長鎖の脂肪族アルコールおよび芳香族アルコ
ールを好み、メタノールを酸化できない。また、ピラゾールによって阻害されな
い。クラスIIIイソ酵素は、更に長い長鎖脂肪族アルコール(5炭素およびそれ
以上)および芳香族アルコールを好み、ピラゾールによって阻害されない。
【0031】 短鎖アルコールデヒドロゲナーゼには、様々な基質特異性を有する幾つかの関
連酵素が含まれる。このグループに含まれるものは哺乳動物酵素であるD−β−
ヒドロキシ酪酸デヒドロゲナーゼ、(R)−3−ヒドロキシ酪酸デヒドロゲナーゼ、
15−ヒドロキシプロスタグランジンデヒドロゲナーゼ、NADPH−依存性カルボニ
ルレダクターゼ、コルチコステロイド11−β−デヒドロゲナーゼ、エストラジオ
ール−17−β−デヒドロゲナーゼ、細菌酵素であるアセトアセチル−CoAレダク
ターゼ、グルコース1−デヒドロゲナーゼ、3−β−ヒドロキシステロイドデヒ
ドロゲナーゼ、20−β−ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ、リビトールデ
ヒドロゲナーゼ、3−オキソアシルレダクターゼ、2,3-dihydro-2,3-dihydroxyb
enzoate dehydrogenase、ソルビトール−6−リン酸2−デヒドロゲナーゼ、7−α
−ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ、cis-1, 2-dihydroxy-3,4cyclohexad
iene-1-carboxylate dehydrogenase、シス−トルエンジヒドロジオールデヒドロ
ゲナーゼ、シス−ベンゼングリコールデヒドロゲナーゼ、ビフェニル−2,3−ジ
ヒドロ−2,3−ジオールデヒドロゲナーゼ、N-acylmannosamine 1dehydrogenase
、および2−デオキシ−D−グルコン酸3−デヒドロゲナーゼがある(Krozowski,
Z. (1994) J. Steroid Biochem. Mol. Biol. 51 : 125-130 ; Krozowski, Z. (1
992) Mol. Cell Endocrinol. 84 : C25-31 ; およびMarks, A. R.他 (1992) J.
Biol. Chem. 267 : 15459-15463)。
【0032】 UDPグルクロニルトランスフェラーゼ UDPグルクロニルトランスフェラーゼファミリー(UGT)のメンバーは、補助因
子ウリジン二リン酸−グルクロン酸(UDP−グルクロン酸)から基質へのグルク
ロン酸基の転送を触媒する。この転送は、通常は嗅覚性ヘテロ原子(O、N、また
はS)に対して行われる。基質には、フェーズI反応によって機能するようになる
生体異物、並びにビリルビン、ステロイドホルモン、および甲状腺ホルモン等の
内因性化合物が含まれる。グルクロン酸抱合の生成物は、基質の分子量が約250
g/mol未満であれば尿中に排泄されるが、グルクロン酸抱合された基質がそれよ
り大きい場合は胆汁に排泄される。
【0033】 UGTは肝臓、腎臓、小腸、皮膚、脳、脾臓、および鼻粘膜のミクロソームに局
在する。これらの局在化位置が、チトクロームP450酵素およびフラビン含有モノ
オキシゲナーゼと同じ小胞体膜の側であるため、フェーズI薬剤代謝の生成物へ
の到達に理想的な位置である。UGTは、そのUGTを小胞体膜に固着するC末端膜貫
通ドメイン、並びにそのC末端部分における約50のアミノ酸残基の保存された
シグネチャドメインを有する(Prosite PDOC00359 UDP-glycosyltransferase si
gnature)。
【0034】 薬剤代謝に関係するUGTは、UGT1およびUGT2の2つの遺伝子ファミリーによっ
てコードされる。UGT1ファミリーのメンバーは、補助因子結合および膜挿入に関
係する定常領域および可変基質結合ドメインを有する単一の遺伝子座の選択的ス
プライシングによって得られる。UGT2ファミリーのメンバーは異なる遺伝子座に
よってコードされ、UGT2AおよびUGT2Bの2つのファミリーに分類される。2Aサブ
ファミリーは嗅上皮で発現し、2Bサブファミリーは肝臓ミクロソームで発現する
。UGT遺伝子における突然変異は、高ビリルビン血症(OMIM#143500 Hyperbilir
ubinemia I)、出生児からの重度の高ビリルビン血症によって特徴付けられるク
リグラー−ナジャー症候群(OMIM#218800 Crigler-Najjar syndrome)、ギルベ
ール病と呼ばれる軽度の高ビリルビン血症(OMIM *191740 UGT1)に関係する。
【0035】 スルホトランスフェラーゼ 硫酸抱合は多くの同じ基質において起こり、O−グルクロン酸抱合により高水
溶性の硫酸エステルが生成される。スルホトランスフェラーゼ(ST)は、補助因
子3'‐ホスホアデノシン−5’‐ホスホ硫酸(PAPS)から基質へSO3を転移してこの
反応を触媒する。STの基質は主にフェノールおよび脂肪族アルコールであるが、
抱合して対応するスルファミン酸を生成する芳香族アミンおよび脂肪族アミンも
含まれる。これらの反応による生成物は主に尿中に排泄される。
【0036】 STは、肝臓、腎臓、腸管、肺、血小板、および脳を含む様々な組織に見られる
。これらの酵素は、一般にサイトゾル酵素であって、多数の型が同時に発現され
る場合が多い。例えば、12種類を越えるSTの型がラットの肝サイトゾルに存在
する。これらの生化学的に特徴付けられるSTは、それらの基質選択性に基づいて
、アリールスルホトランスフェラーゼ、アルコールスルホトランスフェラーゼ、
エストロゲンスルホトランスフェラーゼ、チロシンエステルスルホトランスフェ
ラーゼ、および胆汁酸塩スルホトランスフェラーゼの5つのクラスに分類される
【0037】 ST酵素活性は、ラットの性別および年齢によって著しく異なる。発生の合図お
よび性関連ホルモンとを組み合わせた効果が、ST発現プロファイルの差異並びに
チトクロームP450等の他のDMEのプロファイルの差異を生じさせると考えられて
いる。注目すべきは、ネコにおけるSTの高発現が、UDPグルクロニルトランスフ
ェラーゼ活性のレベルの低下を部分的に補償する。
【0038】 STの幾つかの型は、ヒト肝サイトゾルから精製されクローニングされた。熱安
定性および基質選択性が異なった2つのフェノールスルホトランスフェラーゼが
存在する。熱安定酵素は、パラニトロフェノール、ミノキシジル、およびアセト
アミノフェン等のフェノールの硫酸化を触媒し、熱不安定酵素は、ドーパミン、
エピネフリン、およびlevadopa等のモノアミン基質を好む。その他のクローニン
グされたSTには、エストロゲンスルホトランスフェラーゼおよびN−アセチルグ
ルコサミン−6−O−スルホトランスフェラーゼが含まれる。この最後の酵素は、
細胞生化学におけるSTのその他の重要な役割を示す。即ち、細胞分化およびプロ
テオグリカンの成熟に重要となり得る炭化水素基質の修飾である。実際に、スル
ホトランスフェラーゼの先天性の異常は、成熟した硫酸ケラタンプロテオグリカ
ンの合成不良という特徴をもつ障害である斑状角膜変性症に関係する(Nakazawa
, K.他 (1984) J. Biol. Chem. 259 : 13751-7 ; OMIM *217800 Macular dystro
phy, corneal)。
【0039】 ガラクトシルトランスフェラーゼ ガラクトシルトランスフェラーゼは、溶液に遊離している糖脂質または糖タン
パク質の一部であるN末端アセチルグルコサミン(GlcNAc)オリゴ糖鎖にガラク
トース(Gal)を転移するグリコシルトランスフェラーゼのサブセットである(K
olbinger, F.他 (1998) J. Biol. Chem. 273 : 433-440 ; Amado, M.他 (1999)
Biochim. Biophys. Acta 1473 : 35-53)。ガラクトシルトランスフェラーゼは
細胞表面で見出された可溶性細胞外タンパク質であり、ゴルジ体にも存在する。
β1,3−ガラクトシルトランスフェラーゼは、Gal(β1-3)GlcNAc結合を有するI型
炭化水素鎖を形成する。既知のヒトおよびマウスβ1,3−ガラクトシルトランス
フェラーゼは、短いサイトゾルドメイン、1つの膜貫通ドメイン、および8つの
保存された領域を有する触媒ドメインを有すると考えられる(Kolbinger, F.、
前出および Hennet, T.他 (1998) J. Biol. Chem. 273 : 58-65)。マウスUDP−
ガラクトースであるβ−N−アセチルグルコサミンβ1,3−ガラクトシルトランス
フェラーゼ−Iの領域1がアミノ酸残基の78−83、領域2がアミノ酸残基の
93−102、領域3がアミノ酸残基116−119、領域4がアミノ酸残基1
47−158、領域5がアミノ酸残基の172−183、領域6がアミノ酸残基
の203−206、領域7がアミノ酸残基の236−246、領域8がアミノ酸
残基の264−275に位置する。マウスUDP−ガラクトース内に見られる配列
の変異体であるβ−N−アセチルグルコサミンβ1,3−ガラクトシルトランスフェ
ラーゼ−Iの領域8が、細菌ガラクトシルトランスフェラーゼにも見られること
から、この配列がガラクトシルトランスフェラーゼ配列モチーフを決定すると考
えられる(Hennet, T. 前出)。近年の研究により、brainiacタンパク質がβ1,3
−ガラクトシルトランスフェラーゼであると報告された(Yuan, Y.他(1997) Cel
l 88:9-11; およびHennet, T. 前出)。
【0040】 UDP−GalであるGlcNAc−1,4−ガラクトシルトランスフェラーゼ(−1,4−GalT
)(Sato, T.他 (1997) EMBO J. 16: 1850-1857)が、Gal(βl−4)GlcNAc結合を
有するII型炭化水素鎖の形成を触媒する。βl,3−ガラクトシルトランスフェラ
ーゼの場合と同様に、可溶型の酵素が、膜結合型の切断によって形成される。β
l,4−ガラクトシルトランスフェラーゼに保存されているアミノ酸には、ジスル
フィド結合によって連結された2つのシステイン残基および触媒ドメインにおけ
る推定上のUDP−ガラクトース結合部位が含まれる(Yadav, S.およびBrew, K. (
1990) J. Biol. Chem. 265:14163-14169; Yadav, S. P.およびBrew, K. (1991)
J. Biol. Chem. 266:698-703;およびShaper, N. L.他(1997) J. Biol. Chem. 27
2:31389-31399)。βl,4−ガラクトシルトランスフェラーゼは、糖タンパク質ま
たは糖脂質上に炭化水素鎖を合成するのに加えて、いくつかの特定の役割を有す
る。哺乳動物において、α−ラクトアルブミンを有するヘテロ二量体の一部とし
てβl,4−ガラクトシルトランスフェラーゼが、乳汁分泌哺乳動物の乳汁の生成
に作用する。精子の表面上のβl,4−ガラクトシルトランスフェラーゼは、卵を
特異的に認識する受容体として働く。細胞表面β1,4−ガラクトシルトランスフ
ェラーゼはまた、細胞接着、細胞/基底板相互作用、正常な細胞遊走、および転
移性細胞遊走に作用する(Shur, B. (1993) Curr. Opin. Cell Biol. 5:854-863
; およびShaper, J. (1995) Adv. Exp. Med. Biol. 376:95-104)。
【0041】 グルタチオンSトランスフェラーゼ グルタチオンSトランスフェラーゼ(GST)によって触媒される基本的な反応は、
還元型グルタチオン(GSH)と求電子体の抱合である。GSTはホモ二量体またはヘテ
ロ二量体タンパク質であって、主にサイトゾルに局在化するが、ある程度の活性
がミクロソームにも見られる。主なイソ酵素は、共通の構造および触媒特性を有
し、ヒトにおいてそれらは、主にα、μ、π、およびθの4つのクラスに分類さ
れる。2つの最も大きなクラスであるαおよびμは、それぞれのタンパク質等電
点(αはpIが7.5−9.0まで、μはpIが6.6まで)によって同定される。それぞれ
のGSTは、GSHに対する共通の結合部位および可変性疎水性結合部位を有する。そ
れぞれのイソ酵素における疎水性結合部位は、特定の求電子性基質に対して特異
的である。GST内の特定のアミノ酸残基が、これらの結合部位および触媒活性に
重要であるとして同定された。残基Q67、T68、D101、E104、およびR131は、GSH
の結合に重要である(Lee, H-C他 (1995) J. Biol. Chem. 270:99-109)。残基R
13、R20、およびR69はGSTの触媒活性に重要である(Stenberg G他(1991) Bioche
m. J. 274:549-55)。
【0042】 殆どの場合、GSTは、潜在的な変異誘発性および発癌性の化学物質を不活性化
し解毒するなど好都合に作用する。しかしながら、場合によってはそれらの作用
が有害なもので、化学物質を活性化させて変異誘発性および発癌性にし得る。ラ
ットおよびヒトGSTの或る型は、発癌の検出を助ける信頼性の高い新生物発生前
マーカーとなる。変異誘発性を調べるための良く知られたエイムス試験に用いら
れるサルモネラチフィムリウムなどの細菌株におけるヒトGSTの発現は、変異誘
発におけるこれらの酵素の役割を決定するのに役立つ。マウスにおいて肝腫瘍を
引き起こすdihalomethanesは、GSTによって活性化されると考えられている。こ
の考えは、dihalomethanesが非感染細胞よりもヒトGSTを発現する細菌細胞にお
いて突然変異誘発性が高いということから支持される(Thier, R.他 (1993) Proc
. Natl. Acad. Sci. USA 90:8567-80)。二臭化エチレンおよび二塩化エチレンの
変異誘発性が、ヒトαGST,A1−1を発現する細菌細胞において上昇し、アフラト
キシンB1の変異誘発がGSTの発現が促進されることで実質的に減少する(Simula,
T. P.他(1993) Carcinogenesis 14:1371-6)。従って、GST活性の制御が、変異
誘発および発癌の制御において有用であろう。
【0043】 GSTは、多剤耐性(MDR)として知られる多くの癌の薬剤治療に対する耐性獲得
に関係する。MDRは、シクロホスファミドなどの細胞毒で治療を受けた癌患者に
起こり、その薬剤に対する耐性を有するようになった後、更にその他の様々な細
胞毒に対しても耐性を有するようになる。GSTレベルの上昇は、これらの薬剤耐
性癌に関係し、薬剤に応答してGSTレベルが上昇した後、GSTによって触媒された
GSH抱合反応によりその薬剤が不活化されると考えられる。次に上昇したGSTレベ
ルにより癌細胞がその他のGSTに結合する細胞毒から保護される。腫瘍におけるA
1−1のレベルの上昇は、シクロホスファミド治療によって生じた薬剤耐性に関係
する(Dirven H. A.他 (1994) Cancer Res. 54:6215-20)。従って、癌組織にお
けるGST活性の調節は、癌患者のMDR治療に有用であろう。
【0044】 γ−グルタミルトランスペプチダーゼ γ−グルタミルトランスペプチダーゼは広範に発現する酵素であって、γ−グ
ルタミルアミド結合を切断して細胞外のグルタチオン(GSH)の分解を開始させ
る。GSHの分解は、生合成経路のためにシステインが集まった領域を細胞に提供
する。γ−グルタミルトランスペプチダーゼはまた、細胞の酸化防止に寄与し、
その発現は酸化ストレスによって引き起こされる。細胞表面局在糖タンパク質は
、癌細胞において高いレベルで発現される。研究により、癌細胞の表面における
γ−グルタミルトランスペプチダーゼの高レベルの活性が、プロドラッグの活性
化に利用され、抗癌治療薬が局所的に高いレベルで蓄積され得る(Hanigan, M.
H. (1998) Chem. Biol. Interact. 111-112:333-42; Taniguchi, N.およびIkeda
, Y. (1998) Adv. Enzymol. Relat. Areas Mol. Biol. 72:239-78; Chikhi, N.
他 (1999) Comp. Biochem. Physiol. B. Biochem. Mol. Biol. 122:367-80)。
【0045】 アシルトランスフェラーゼ N−アシルトランスフェラーゼ酵素は、アミノ酸抱合体の活性化カルボキシル
基への転移を触媒する。内因性化合物および生体異物は、サイトゾル、ミクロソ
ーム、およびミトコンドリアにおけるアシル−CoAシンセターゼによって活性化
される。次に、アシル−CoA中間体は、サイトゾルまたはミトコンドリアにおけ
るN−アシルトランスフェラーゼによってアミノ酸(通常はグリシン、グルタミ
ン、またはタウリンであるが、オルニチン、アルギニン、ヒスチジン、セリン、
アスパラギン酸、およびいくつかのジペプチドを含む)と抱合し、アミド結合を
有する代謝産物を形成する。この反応は、O−グルクロン酸抱合に相補的である
が、アミノ酸抱合では、グルクロン酸抱合によって生じる場合が多い反応性およ
び毒性の代謝産物を生成されない。
【0046】 胆汁酸−CoAであるアミノ酸N−アシルトランスフェラーゼ(BAT)は、このク
ラスの良く特徴づけられた酵素の1つである。BATは、腸管において界面活性剤
として作用する胆汁酸抱合体の生成に関係する(Falany, C. N.他 (1994) J. Bio
l. Chem. 269:19375-9; Johnson, M. R.他 (1991) J. Biol. Chem. 266:10227-3
3)。BATはまた、部分肝切除の後の肝臓癌患者の予後の予測マーカーとして有用
である(Furutani, M.他(1996) Hepatology 24:1441-5)。
【0047】 アセチルトランスフェラーゼ アセチルトランスフェラーゼは、ヒストンのアセチル化におけるその役割につ
いて徹底的に研究された。ヒストンのアセチル化により、真核細胞におけるクロ
マチン構造が弛緩し、それによって転写因子が、ゲノムの影響を受けた領域(ま
たはゲノム全体)におけるDNAの鋳型のプロモータエレメントに到達できるよう
になる。これとは対照的に、ヒストンの脱アセチル化により、クロマチン構造が
閉じ転写因子への到達が制限されて転写物が減少する。この最後に、ヒストンの
脱アセチル化を阻害する化学薬品(例えば、酪酸ナトリウム)を細胞転写の刺激
の一般的な手段として用いると、人為的結果であるが遺伝子発現が全体的に上昇
する。アセチル化による遺伝子発現の調節はまた、限定するものではないが、p5
3、GATA−1、MyoD、ACTR、TFIIE、TFIIF、および高移動タンパク質を含むその他
のタンパク質のアセチル化によっても行うことができる。p53の場合、アセチル
化によりDNAへの結合が増大し、p53によって調節される遺伝子の転写が刺激され
る。プロトタイプヒストンアセチラーゼ(HAT)は、サッカロミセス‐セレビジ
エに由来するGcn5である。Gcn5は、テトラヒメナp55、ヒトGcn5、およびヒトp30
0/CBPを含むアセチラーゼのファミリーメンバーである。ヒストンのアセチル化
については文献(Cheung, W. L.他 (2000) Current Opinion in Cell Biology 1
2:326-333およびBerger, S. L (1999) Current Opinion in Cell Biology 11:33
6-341)を参照されたい。ある種のアセチルトランスフェラーゼ酵素は、限定す
るものではないが、アセチルコリンエステラーゼおよびカルボキシルエステラー
ゼを含む幾つかの他の酵素の主なクラスに一般的であるα/βヒドロラーゼフォ
ールド(α/βhydrolase fold)(Center of Applied Molecular Engineering I
nst. of Chemistry and Biochemistry University of Salzburg, http://predic
t.sanger.ac.uk/irbm-course97/Docs/ms/)を有する(Structural Classificatio
n of Proteins, http://scop.mrc-lmb.cam.ac.uk/scop/index.html)。
【0048】 N−アセチルトランスフェラーゼ 芳香族アミンおよびヒドラジン含有化合物は、肝臓およびその他の組織のN−
アセチルトランスフェラーゼ酵素によってNアセチル化される。ある種の生体異
物は、同じ酵素によってある程度Oアセチル化される。N−アセチルトランスフェ
ラーゼは、補助因子アセチル−補酵素A(アセチル−CoA)を用いて2つのステッ
プでアセチル基を転移するサイトゾル酵素である。第1のステップでは、アセチ
ル基がアセチル−CoAから活性部位システイン残基に転移され、第2のステップ
でアセチル基が基質アミノ基に転移され酵素が再生される。
【0049】 他のほとんどのDMEクラスとは対照的に、既知のN−アセチルトランスフェラー
ゼの数が少ない。ヒトの場合、2つの高度に類似した酵素であるNAT1およびNAT2
が存在し、マウスには第3型酵素であるNAT3が存在する。N−アセチルトランス
フェラーゼのヒト型は、独立した調節(NAT1は広範に発現されるが、NAT2は肝臓
および臓器のみに発現される)および重複した基質特異性を有する。両方の酵素
はある程度までほとんどの基質を受容するが、NAT1はある種の基質(パラアミノ
安息香酸、パラアミノサリチル酸、スルファメトキサゾール、およびスルファニ
ルアミド)を好み、一方NAT2は他の基質(イソニアジド、ヒドララジン、プロカ
インアミド、ダプソン、アミノグルテチミド、およびスルファメチアジン)を好
む。
【0050】 1950年代に、抗結核薬であるイソニアジドを投与された患者の臨床試験か
ら、化合物のアセチル化が速い人(rapid acetylator)および遅い人(slow ace
tylator)が報告された。これらの表現型は後に、酵素の活性または安定性に影
響を与えるNET2遺伝子における突然変異によることが示された。イソニアジドの
アセチル化が遅い表現型が、中東の集団に優性(約70%)であり、白人ではや
や劣り(約50%)、アジアの集団では25%未満である。近年になって、NET1
における機能的な多型が検出され、検査を受けた集団の約8%が、アセチル化が
遅い表現型を有する(Butcher, N. J.他 (1998) Pharmacogenetics 8:67-72)。NA
T1がある種の既知の芳香族アミン発癌物質を活性化することができるため、広範
に発現されるNAT1酵素における多型が癌のリスクの決定に重要であると考えられ
る(OMIM *108345 N-acetyltransferase1)。
【0051】 アミノトランスフェラーゼ アミノトランスフェラーゼは、ピリドキサール5'−リン酸(PLP)依存性酵素
のファミリーを含み、アミノ酸のトランスフォーメーションを触媒する。アスパ
ラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AspAT)は最も研究されたPLP含有酵素であ
る。AspATは、ジカルボキシルL−アミノ酸、アスパラギン酸およびグルタミン酸
、および対応する2−オキソ酸、オキサロ酢酸、および2−オキソグルタル酸の可
逆的なアミノ基転移反応を触媒する。このファミリーの他のメンバーには、推定
アミノトランスフェラーゼ、分枝鎖アミノ酸アミノトランスフェラーゼ、チロシ
ンアミノトランスフェラーゼ、芳香族アミノトランスフェラーゼ、アラニン−グ
リオキシル酸アミノトランスフェラーゼ(AGT)およびキヌレニンアミノトラン
スフェラーゼが含まれる(Vacca, R. A.他(1997) J. Biol. Chem. 272:21932-219
37)。
【0052】 原発性高シュウ酸尿症I型は、常染色体性劣性疾患であって、肝特異的ペルオ
キシソーム酵素であるアラニン−グリオキシル酸アミノトランスフェラーゼ−1
の欠損が起こる。この疾患の表現型は、グリオキシル酸代謝の欠損である。AGT
が存在しない場合、グリオキシル酸はグリシンに転移されるのではなく、シュウ
酸に酸化される。その結果、腎臓および尿管に不溶性カルシウムシュウ酸が蓄積
し、最終的に腎不全が起こる(Lumb, M. J. 他 (1999) J. Biol. Chem. 274 : 20
587-20596)。
【0053】 ヌレニンアミノトランスフェラーゼは、L−トリプトファン代謝産物L−キヌレ
ニンの不可逆的なアミノ転移を触媒してキヌレニン酸を形成する。この酵素はま
た、L−2−アミノアジピン酸から2−オキソグルタル酸およびその逆への可逆的
なアミノ基転移反応を触媒して2−oxoadipateおよびL−グルタミン酸を生成し得
る。キヌレイン酸は、グルタミン酸作動性神経伝達の推定上のモジュレーターで
あるため、キヌレインアミノトランスフェラーゼの欠損がpleotrophic効果に関
係すると思われる(Buchli, R.他 (1995) J. Biol. Chem. 270:29330-29335)。
【0054】 カテコール−O−メチルトランスフェラーゼ カテコール−O−メチルトランスフェラーゼ(COMT)は、カテコール基質にお
ける1つのヒドロキシル基(例えば、レボドパ、ドーパミン、またはDBA)へのS
−アデノシル−L−メチオニン(AdoMet; SAM)供与体のメチル基の転移を触媒す
る。3'−ヒドキシル基のメチル化は4'−ヒドキシル基のメチル化より優先され、
COMTの膜結合アイソフォームが可溶型よりも位置特異的である。この酵素の可溶
型の翻訳は、完全長mRNA(1.5kb)の内部の開始コドンの利用によるか、或いは
内部のプロモータから転写された短いmRNA(1.3kb)の翻訳による。提案されたS N 2様メチル化反応には、Mg2+が必要であり、Ca2+によって抑制される。供与体お
よび基質のCOMTへの結合が連続的に起こる。まず、AdoMetがMg2+非依存的にCOMT
に結合し、Mg2+の結合およびカテコール基質の結合がそれに続く。
【0055】 組織におけるCOMTの量は活性のために通常必要とされる量より多く存在するた
め阻害が困難である。しかしながら、インヒビターがin vitroでの使用(例えば
、没食子酸、トロポロン、U-0521、および3', 4'-dihydroxy-2-methyl-propioph
etropolone)および臨床での使用(例えば、nitrocatechol系化合物およびtolca
pone)のために開発された。これらのインヒビターを投与すると、レボドパの半
減期が長くなり、続いてドーパミンの生成が起こる。COMTの阻害により、エピネ
フリン/ノルエピネフリン、イソプレナリン、リミテロール、ドブタミン、feno
ldopam、アポモルフィン、およびα−メチルドパを含む他の様々なカテコール構
造化合物の半減期が長くなると思われる。ノルエピネフリンの欠損は臨床的抑鬱
症に繋がるため、COMTインヒビターの使用は抑鬱性の治療に有用であると思われ
る。COMTインヒビターは通常、副作用が最小限であり、最終的に肝臓で代謝され
、体内にはわずかな代謝物が残るのみである(Mannisto, P. T.およびKaakkola,
S. (1999) Pharmacological Reviews 51:593-628)。
【0056】 銅−亜鉛スーパーオキシドジスムターゼ 銅−亜鉛スーパーオキシドジスムターゼはコンパクトな二量体金属酵素であっ
て、酸化的な傷害に対する細胞防御に関係する。この酵素は1つの亜鉛原子およ
び1つの銅原子を各サブユニットに含み、スーパーオキシドアニオンのO2および
H2O2への不均化反応を触媒する。この不均化反応の速度は、拡散を制限し、後に
基質と酵素活性部位との間の好ましい静電的相互作用によって促進される。この
酵素のクラスの例が、全ての真核細胞の細胞質において同定され、或る細菌種の
周辺質でも同定された。銅−亜鉛スーパーオキシドジスムターゼは元気のいい酵
素であって、蛋白分解に高い耐性を有し、尿素およびSDSによって変性される。
この酵素のコンパクトな構造に加えて、金属イオンおよび内部サブユニットのジ
スルフィド結合が酵素の安定性に寄与していると考えられている。酵素は70℃
もの高温でも可逆的に変性される(Battistoni, A.他(1998) J. Biol. Chem. 27
3:5655-5661)。
【0057】 スーパーオキシドジスムターゼの過剰な発現は、遺伝子組み換えアルファルフ
ァの耐凍性を高めるのに関係しており、ジフェニルエーテル除草剤であるaciflu
orfenなどの環境毒に対する耐性を与える(McKersie, B. D.他(1993) Plant Phy
siol. 103:1155-1163)。加えて、酵母細胞が過酸化水素への暴露の後に解凍融
解損傷に対する耐性が高まる。これは、曝露によるスーパーオキシドジスムター
ゼの発現のアップレギュレートにより、酵母細胞が更なる過酸化ストレスに適応
するようになるためである。この研究により、酵母スーパーオキシドジスムター
ゼ遺伝子の突然変異は、冷凍保存過程を経て生物が存在するか否かを決定するの
に重要であると長い間考えられていたグルタチオン代謝の調節に影響を及ぼす突
然変異よりも、冷凍融解耐性に悪影響を与える(Jong-In Park, J-I.他(1998) J
. Biol. Chem. 273:22921-22928)。
【0058】 スーパーオキシドジスムターゼの発現はまた、結核を引き起こす生物である結
核菌に関連する。スーパーオキシドジスムターゼは、結核菌によって排泄される
10の主なタンパク質の内の1つであり、酸化ストレスに応じてその発現が約5
倍アップレギュレートされる。結核菌は、非病原性ミコバクテリアM. smegmatis よりスーパーオキシドジスムターゼをほぼ2桁多く発現し、極めて高い割合で発
現酵素を分泌する。この結果、結核菌によってM. smegmatisよりも最大350倍
多い酵素を分泌し、酸化ストレスに対する実質的な耐性を与える(Harth, G.お
よびHorwitz, M. A. (1999) J. Biol. Chem. 274:4281-4292)。銅−亜鉛スーパ
ーオキシドジスムターゼの発現の低下、並びに抗酸化能力を有するその他の酵素
の発現の低下は初期の癌に関係する。銅−亜鉛スーパーオキシドジスムターゼの
発現レベルは、正常な前立腺組織と比べ前立腺の上皮新生物および前立腺癌にお
いて低い(Bostwick, D. G. (2000) Cancer 89:123-134)。
【0059】 ホスホジエステラーゼ ホスホジエステラーゼは、ホスホジエステル化合物の2つのエステル結合の一
方の加水分解を触媒する酵素のクラスを構成する。従って、ホスホジエステラー
ゼは様々な細胞プロセスにとって重要である。ホスホジエステラーゼには、細胞
増殖および複製に必須であるDNAおよびRNAのエンドヌクレアーゼおよびエクソヌ
クレアーゼや、DNAのトポロジー再編成中の核酸鎖の分解および再形成をするト
ポイソメラーゼが含まれる。Tyr−DNAホスホジエステラーゼは、トポイソメラー
ゼI型およびDNAとの間に形成された行き止まり共有結合中間体を加水分解するこ
とでDNAの修復に作用する(Pouliot, J. J.他(1999) Science 286:552-555; Yan
g, S.-W. (1996) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 93:11534-11539)。
【0060】 酸性スフィンゴミエリナーゼは、膜リン脂質スフィンゴミエリンを加水分解し
てセラミドおよびホスホリルコリンを生成するホスホジエステラーゼである。ホ
スホリルコリンは、様々な細胞内シグナル伝達経路に関与するホスファチジルコ
リンの合成に用いられ、一方のセラミドは神経組織に高濃度で見られる膜脂質で
あるガングリオシドの生成のための必須前駆体である。酸性スフィンゴミエリナ
ーゼが欠損すると、イソソームにおいてスフィンゴミイリ分子が蓄積され、それ
によってニーマン−ピック病が引き起こされる(Schuchman, E. H.およびS. R.
Miranda (1997) Genet. Test. 1:13-19)。
【0061】 グリセロホスホリルジエステルホスホジエステラーゼ(glycerophosphoryl di
ester phosphodiesterase)(グリセロホスホジエステルホスホジエステラーゼ
とも呼ばれる)は、ジアセチル化リン脂質グリセロホスホジエステル(deacetyl
ated phospholipid glycerophosphodiesters)を加水分解してsn−グリセロール
−3−リン酸およびアルコールを生成するホスホジエステラーゼである。グリセ
ロホスホコリン、グリセルホスホエタノールアミン(glycerophosphoethanolami
ne)、グリセロホスホグリセロール(glycerophosphoglycerol)、およびグリセ
ロホスホイノシトール(glycerophosphoinositol)は、グリセロホスホリルジエ
ステルホスホジエステラーゼのための基質の例である。大腸菌由来のグリセロホ
スホリルジエステルホスホジエステラーゼは、グリセロホスホジエステル(glyc
erophosphodiester)基質に対して広範な特異性を有する(Larson, T. J.他(198
3) J. Biol. Chem. 248:5428-5432)。
【0062】 サイクリックヌクレオチドホスホジエステラーゼ(PDE)は、サイクリックヌ
クレオチドcAMPおよびcGMPの調節に極めて重要な酵素である。cAMPおよびcGMPは
、ホルモン、光、および神経伝達物質を含む様々な細胞外シグナルを伝達する細
胞内セカンドメッセンジャーとして機能する。PDEはサイクリックヌクレオチド
をそれらの対応する一リン酸に分解し、それによってサイクリックヌクレオチド
の細胞内濃度およびシグナル伝達におけるそれらの効果を調節する。それらの役
割がシグナル伝達の制御因子であることから、PDEは化学療法の標的として大規
模に研究された(Perry, M. J.およびG. A. Higgs (1998) Curr. Opin. Chem. B
iol. 2:472-481 ; Torphy, J. T. (1998) Am. J. Resp. Crit. Care Med. 157:3
51-370)。
【0063】 哺乳動物PDEのファミリーは、それらの基質特異性および親和性、補助因子に
対する感受性、および抑制剤に対する感受性に基づいて分類される(Beavo, J.
A. (1995) Physiol. Rev. 75:725-748; Conti, M.他(1995) Endocrine Rev. 16:
370-389)。これらのファミリーのいくつかは、固有の遺伝子を含み、その多く
は様々な組織でスプライスバリアントとして発現される。PDEファミリーの中に
は、多数のイソ酵素およびこれらのイソ酵素の多数のスプライスバリアントが存
在する(Conti, M.およびS.-L. C. Jin (1999) Prog. Nucleic Acid Res. Mol.
Biol. 63:1-38)。多数のPDEファミリー、イソ酵素、およびスプライスバリアン
トの存在は、サイクリックヌクレオチドを伴う調節経路の多様性および複雑性を
示すものである(Houslay, M. D.およびG. Milligan (1997) Trends Biochem. S
ci. 22:217-224)。
【0064】 PDE1型(PDE1)はCa2+/カルモジュリン依存性であって、それぞれが少なくと
も2つの異なったスプライスバリアントを有する少なくとも3つの異なった遺伝
子によってコードされると思われる(Kakkar, R. 他. (1999) Cell Mol. Life S
ci. 55:1164-1186)。PDE1は、肺、心臓、および脳で見出された。ある種のPDE1
イソ酵素は、in vitroでリン酸化/脱リン酸化によって調節される。これらのPD
E1イソ酵素のリン酸化すると、カルモジュリンに対するこの酵素の親和性が低下
し、PDE活性が低下し、cAMPのレベルが安定する(Kakkar, 前出)。PDE1は、PDE
1がサイクリックヌクレオチドおよびカルシウムのシグナル伝達の両方に関与す
ることによる中枢神経系および心血管、免疫系の疾患のための有用な治療標的を
提供し得る(Perry, M. J.およびG. A. Higgs (1998) Curr. Opin. Chem. Biol.
2:472-481)。
【0065】 PDE2は、小脳、新皮質、心臓、腎臓、肺、肺動脈、および骨格筋に見られるcG
MP刺激PDE(cGMP-stimulated PDE)である(Sadhu, K.他(1999) J. Histochem.
Cytochem. 47:895-906)。PDE2は、カテコールアミン分泌におけるcAMPの効果を
仲介し、アルドステロンの調節に関与し(Beavo, 前出)、更に嗅覚シグナル伝
達においても役割を果たしていると思われる(Juilfs, D. M.他(1997) Proc. Na
tl. Acad. Sci. USA 94:3388-3395)。
【0066】 PDE3はcGMPおよびcAMPの両方に対して高い親和性を有するため、これらのサイ
クリックヌクレオチドがPDE3の競合的基質(competitive substrate)として作
用する。PDE3は、心筋の収縮の刺激、血小板凝集の抑制、血管および気道の平滑
筋の弛緩、Tリンパ球および血管平滑筋培養細胞の増殖抑制、脂肪組織からのカ
テコールアミン誘導性遊離脂肪酸放出の調節に作用する。ホスホジエステラーゼ
のPDE3ファミリーは、cilostamide、enoximone、およびlixazinoneなどの特定
のインヒビターに対する感受性を有する。PDE3のイソ酵素は、cAMP依存性プロテ
インキナーゼまたはインスリン依存性キナーゼによって抑制され得る(Degerman
, E.他(1997) J. Biol. Chem. 272:6823-6826)。
【0067】 PDE4はcAMPに特異的であって、気道平滑筋、血管上皮、および全ての炎症細胞
に局在化し、cAMP依存性依存性リン酸化によって活性化され得る。cAMPのレベル
の上昇によって、炎症細胞の活性が抑制され気管平滑筋が弛緩し得るため、PDE4
は、喘息治療の発見に重点をおいて新規の抗炎症剤の可能性のある標的として広
範に研究された。PDEインヒビターは、喘息、慢性塞栓性肺疾患、およびアトピ
ー性湿疹の治療薬として臨床試験が行われている。PDE4の既知の4つ全てのイソ
酵素は、マウスの行動記憶を改善することが分かっている化合物であるインヒビ
ターロリプラムに対して感受性が高い(Barad, M.他(1998) Proc. Natl. Acad.
Sci. USA 95:15020-15025)。PDE4インヒビターもまた、急性肺傷害、内毒素血
症、リウマチ様関接炎、多発性硬化症、および様々な神経や胃腸の疾患に対する
可能性のある治療薬として研究された(Doherty, A. M. (1999) Curr. Opin. Ch
em. Biol. 3:466-473)。
【0068】 PDE5は、基質としてのcGMPに対して高い選択性を有し(Turko, I. V.他(1998)
Biochemistry 37:4200-4205)、2つのアロステリックcGMP特異的結合部位を有
する(McAllister-Lucas, L. M. 他. (1995) J. Biol. Chem. 270:30671-30679
)。cGMPのこれらのアロステリック結合部位への結合は、触媒活性の直接的な調
節よりもcGMP依存性プロテインキナーゼによるPDE5のリン酸化にとって重要であ
ると思われる。PDE5が高いレベルで、血管平滑筋、血小板、肺、および腎臓に見
られる。インヒビターザプリナストはPDE5およびPDE1に対して効果がある。PDE5
に対する特異性を得るためにザプリナストを改良してsildenafilを生成した(VI
AGRA; Pfizer, Inc., New York NY)。このsildenafilは男性勃起不全の治療薬
である(Terrett, N. 他. (1996) Bioorg. Med. Chem. Lett. 6:1819-1824)。P
DE5のインヒビターは、心血管治療薬として現在研究されている(Perry, M. J.
およびG. A. Higgs (1998) Curr. Opin. Chem. Biol. 2:472-481)。
【0069】 光受容体サイクリックヌクレオチドホスホジエステラーゼであるPDE6は、光伝
達カスケードの重要な要素である。PDE6はGタンパク質トランスデューシンと結
合して、cGMPを加水分解して光受容体膜におけるcGMP作動性陽イオンチャネルを
調節する。cGMP結合活性部位に加えて、PDE6はまた、PDE6の機能における調節的
な役割を果たすと考えられる2つの高親和性cGMP結合部位を有する(Artemyev,
N. O.他(1998) Methods 14:93-104)。PDE6の欠損は網膜の疾患に関係する。rd
マウスの網膜変性症(Yan, W.他(1998) Invest. Opthalmol. Vis. Sci. 39:2529
-2536)、ヒトの常染色体性劣性色素性網膜炎(Danciger, M.他(1995) Genomics
30:1-7)、およびアイリッシュセッター犬の杆状体/錐状体異形成1型(Suber,
M. L.他(1993) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:3968-3972)は、PDE6B遺伝子に
おける突然変異が原因である。
【0070】 PDEのPDE7ファミリーは、複数のスプライスバリアントを有する唯1つの既知
のメンバーから成る(Bloom, T. J.およびJ. A. Beavo (1996) Proc. Natl. Aca
d. Sci. USA 93:14188-14192)。PDE7はcAMP特異的であるが、その他の生理的機
能については殆ど知られていない。PDE7をコードするmRNAが骨格筋、心臓、脳、
肺、腎臓、および膵臓で見られるが、PDE7タンパク質の発現は特定の組織型に限
定される(Han, P.他(1997) J. Biol. Chem. 272:16152-16157; Perry, M. J.お
よびG. A. Higgs (1998) Curr. Opin. Chem. Biol. 2:472-481)。PDE7はPDE4フ
ァミリーに密接に関連するが、PDE4の特異的なインヒビターであるロリプラムに
よって阻害されない(Beavo, 前出)。
【0071】 PDE8はcAMP特異的であり、PDE4ファミリーに密接に関連する。PDE8は、甲状腺
、精巣、眼、肺、骨格筋、心臓、腎臓、卵巣、および脳において発現される。PD
E8のcAMP加水分解活性は、PDEのインヒビターであるロリプラム、ビンポセチン
、ミルリノン、IBMX(3−イソブチル−1−メチルキサンチン)、またはザプリナ
ストによって抑制されないが、PDE8はジピリダモールによって抑制される(Fish
er, D. A.他(1998) Biochem. Biophys. Res. Commun. 246:570-577; Hayashi, M
.他(1998) Biochem. Biophys. Res. Commun. 250:751-756; Soderling, S. H.他
(1998) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 95:8991-8996)。
【0072】 PDE9はcAMP特異的であって、PDEのPDE8ファミリーに最も類似している。PDE9
は腎臓、肺、肝臓、脳、脾臓、および小腸で発現される。PDE9はsildenafil(VIA
GRA; Pfizer, Inc., New York NY)、ロリプラム、ビンポセチン、ジピリダモー
ル、またはIBMX(3−イソブチル−1−メチルキサンチン)によって抑制されない
が、PDE5インヒビターであるザプリナストに対して感受性を有する(Fisher, D.
A.他(1998) J. Biol. Chem. 273:15559-15564 ; Soderling, S. H.他(1998) J.
Biol. Chem. 273:15553-15558)。
【0073】 PDE10は二重基質(dual-substrate)PDEであって、cAMPおよびcGMPの両方を加
水分解する。PDE10は、脳、甲状腺、および精巣で発現される(Soderling, S. H
.他(1999) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 96:7071-7076; Fujishige, K.他(1999)
J. Biol. Chem. 274:18438-18445; Loughney, K.他(1999) Gene 234:109-117)
【0074】 PDEは、約270−300のアミノ酸の触媒ドメイン、および補助因子の結合
に必要なN末端調節ドメインを含み、場合によっては機能が未知の親水性C末端ド
メインを含む(Conti, M. およびS.-L. C. Jin (1999) Prog. Nucleic Acid Res
. Mol. Biol. 63:1-38)。保存された推定上の亜鉛結合モチーフであるHDXXHXGX
XNが、全てのPDEの触媒ドメインにおいて同定された。N末端調節ドメインは、PD
E2、PDE5、およびPDE6における非触媒cGMP結合ドメイン、PDE1におけるカルモジ
ュリン結合ドメイン、およびPDE3およびPDE4におけるリン酸化部位を含むドメイ
ンを有する。PDE5では、N末端cGMP結合ドメインが約380のアミノ酸残基にま
たがり、保存された配列モチーフN(R/K)XnFX3DEのタンデムリピートを含む(McA
llister-Lucas, L. M.他(1993) J. Biol. Chem. 268:22863-22873)。NKXnDモチ
ーフは変異誘発によって見られ、cGMP結合に重要である(Turko, I. V.他(1996)
J. Biol. Chem. 271:22240-22244)。PDEファミリーは、触媒ドメイン内におい
て約30%のアミノ酸同一性を有するが、同じファミリー内のイソ酵素は通常約
85から95%のこの領域における同一性を示す(例えばPDE4AとPDE4B)。更に
、あるファミリー内の触媒ドメイン外の類似性は高いが(60%を超える)、フ
ァミリー間のこのドメイン外の配列類似性は殆ど存在しない。
【0075】 免疫反応および炎症反応を構成する作用の多くは、細胞内のcAMPのレベルを上
昇させる薬剤によって阻害される(Verghese, M. W.他(1995) Mol. Pharmacol.
47:1164-1171)。様々な疾患がPDE活性の上昇が原因で起こり、サイクリックヌ
クレオチドのレベルの低下に関係する。例えば、マウスにおける尿崩症の或る型
はPDE4活性の上昇に関係し、低KmcAMPPED活性の上昇がアトピー患者の白血球に
見られ、PDE3が心疾患に関連する。
【0076】 PDEの多くのインヒビターが同定され、臨床試験が行われている(Perry, M. J
.およびG. A. Higgs (1998) Curr. Opin. Chem. Biol. 2:472-481; Torphy, T.
J. (1998) Am. J. Respir. Crit. Care Med. 157:351-370)。PDE3インヒビター
は、血小板凝集阻止薬、血圧降下薬、および鬱血性心不全の治療に有用な強心薬
として開発された。PDE4インヒビターであるロリプラムは、抑鬱症の治療に用い
られ、PDE4のその他のインヒビターは抗炎症薬として評価が行われている。ロリ
プラムはまた、in vitroでHIV−1の複製を促すことが認められたリポ多糖(LPS)
誘導性TNF−aを阻害することが分かった。従って、ロリプラムはHIV−1の複製を
阻害すると考えられる(Angel, J. B.他(1995) AIDS 9:1137-1144)。更に、ロ
リプラムが、TNF−a、TNF−b、およびインターフェロンgなどのサイトカインの
生成を抑制する能力に基づいて脳髄膜炎の治療に有効であることが示された。ロ
リプラムはまた、遅発性ジスキネジアに有効であると考えられ、実験動物モデル
における多発性硬化症の治療に効果があった(Sommer, N.他(1995) Nat. Med. 1
:244-248 ; Sasaki, H.他(1995) Eur. J. Pharmacol. 282:71-76)。
【0077】 テオフィリンは、気管支喘息およびその他の呼吸器疾患の治療に用いられる非
特異的PDEインヒビターである。テオフィリンは、気道平滑筋の機能に作用し、
呼吸器疾患の治療における抗炎症能力即ち免疫調節能力があると考えられる(Ba
nner, K. H.およびC. P. Page (1995) Eur. Respir. J. 8:996-1000)。ペント
キシフィリンは、間欠性跛行および糖尿病性末梢血管疾患の治療に用いられる別
の非特異的PDEインヒビターである。ペントキシフィリンはまた、TNF−aの生成
を阻止し、HIV−1の複製を阻害し得る(Angel他, 前出)。
【0078】 PDEは、様々な細胞型の細胞増殖に影響を与え(Conti他(1995) Endocrine Rev
. 16:370-389)、様々な癌に関係すると報告された。前立腺癌細胞株DU145およ
びLNCaPの成長は、cAMP誘導体およびPDEインヒビターの送達によって抑制された
(Bang, Y. J.他(1994) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91:5330-5334)。これら
の細胞はまた、上皮からニューロン形態への表現型における永久的な変換を示し
た。また、PDEインヒビターがメサンギウム細胞の増殖を調節する可能性があり
(Matousovic, K.他(1995) J. Clin. Invest. 96:401-410)、またリンパ球の増
殖を調節する可能性もある(Joulain, C.他(1995) J. Lipid Mediat. Cell Sign
al. 11:63-79)ことが提案された。癌治療は、PDEを腫瘍の特定の細胞区画に送
達し、細胞死を導くことであると記載されている(Deonarain, M. P.およびA. A
. Epenetos (1994) Br. J. Cancer 70:786-794)。
【0079】 ホスホトリエステラーゼ ホスホトリエステラーゼ(PTE, paraoxonases)は、毒性有機リン化合物を加水
分解する酵素であって、様々な組織から単離された。この酵素は、哺乳動物には
豊富に存在するが鳥や昆虫では不足していると思われ、鳥や昆虫の有機リン化合
物に対する耐性の低さの説明となる(Vilanova, E.およびSogorb, M. A. (1999)
Crit. Rev. Toxicol. 29:21-57)。ホスホトリエステラーゼは、哺乳動物によ
る殺虫剤の解毒において中心的な役割を果たす。ホスホトリエステラーゼ活性は
個人によって差があり、大人より幼児の方が低い。ノックアウトマウスは、有機
リン系の毒素であるdiazoxonおよびchlorpyrifos oxonに対して顕著な感受性を
有する(Furlong, C. E.,他(2000) Neurotoxicology 21:91-100)。PTEは、有機
リン含有化学廃棄物および化学兵器(例えば、パラチオン)、並びに農薬や殺虫
剤の解毒能力を有する酵素として注目されている。ある研究により、ホスホトリ
エステラーゼがアテローム性動脈硬化症およびリポタンパク代謝に関係する疾患
に関与することが示された。
【0080】 チオエステラーゼ 脂肪酸生合成に関係する2つの可溶性チオエステラーゼが、哺乳動物組織から
単離された。その内の一方は、長鎖脂肪酸アシルチオエステルに対してのみ活性
であり、他方は様々な長さの脂肪酸アシル鎖を有するチオエステルに対して活性
である。これらのチオエステラーゼは、脂肪酸の新規合成における読み終わりス
テップを触媒する。読み終わり(chain-terminating)ステップは、脂肪酸アシ
ル鎖を脂肪酸シンターゼのアシルキャリアタンパク質(ACP)のサブユニットの4
'−ホスホパンテテイン補欠分子族と結合させるチオエステル結合の加水分解を
伴う(Smith, S. (1981a) Methods Enzymol. 71:181-188; Smith, S. (1981b) M
ethods Enzymol. 71:188-200)。
【0081】 大腸菌は、長鎖アシルチオエステルに対してのみ活性なチオエステラーゼI型
および様々な長さの鎖に対して特異性を有するチオエステラーゼII型(TEII)の
2つの可溶性チオエステラーゼを含む(Naggert, J.他(1991) J. Biol. Chem. 2
66:11044-11050)。大腸菌TEIIは、新規の脂肪酸生合成における読み終わり酵素
(chain-terminating enzyme)として機能する哺乳動物チオエステラーゼの2つ
の型のいずれとも配列類似性を有していない。哺乳動物チオエステラーゼとは異
なり、大腸菌TEIIは、特徴的なセリン活性部位gly−X−ser−X−gly配列モチー
フを含まず、セリン変性剤であるジイソプロピルフルオロリン酸によって不活化
されない。しかしながら、ヨードアセトアミドおよびジエチルピロカルボネート
によるヒスチジン58の修飾によってPEII活性が失われる。TEIIの過剰な発現は
大腸菌に含まれる脂肪酸を変化させない。これは、脂肪酸生合成において読み終
わり酵素として機能していないことを示すものである(Naggert他, 前出)。こ
のような理由から、Naggert他(前出)が、大腸菌TEIIの生理学的基質がACP−ホス
ホパンテテイン脂肪酸エステルではなく補酵素A(CoA)脂肪酸エステルであると考
えられる。
【0082】 カルボキシルエステラーゼ 哺乳動物カルボキシルエステラーゼは、様々な組織および細胞型で発現される
多重遺伝子ファミリーを構成する。イソ酵素は有意な配列相同性を有し、主にア
ミノ酸配列に基づいて分類される。アセチルコリンエステラーゼ、ブチリルコリ
ンエステラーゼ、およびカルボキシルエステラーゼは、エステラーゼのセリンス
ーパーファミリー(Bエステラーゼ)に分類される。その他のカルボキシルエス
テラーゼには、チログロブリン、トロンビン、IX因子、gliotactin、およびプラ
スミノーゲンがある。カルボキシルエステラーゼは、分子のエステル基およびア
ミド基の加水分解を触媒し、薬剤、環境毒、および発癌物質の解毒に関与する。
カルボキシルエステラーゼの基質には短鎖および長鎖アシルグリセロール、アシ
ルカルニチン、炭酸塩、ジピベフリン塩酸塩(dipivefrin hydrochloride)、コ
カイン、サリチル酸塩、カプサイシン、パルミトイル−CoA、イミダプリル、ハ
ロペリドール、ピロリジジンアルカロイド、ステロイド、p−ニトロフェニル酢
酸、マラチオン、butanilicaine、およびイソカルボキサジドが含まれる。この
酵素は低い基質特異性を示すことがよくある。カルボキシルエステラーゼはまた
、プロドラッグを対応する遊離酸に変換するために重要である。対応する遊離酸
は、例えば、血中コレステロールを低下させるために用いられるロバスタチンな
どのそのプロドラッグの活性型であり得る(Satoh, T.およびHosokawa, M. (199
8) Annu. Rev. Pharmacol. Toxicol. 38:257-288を参照)。
【0083】 neuroliginsは、(i)N末端シグナル配列を有し、(ii)細胞表面受容体に類似し
、(iii)カルボキシルエステラーゼドメインを含み、(iv)脳で高発現され、(v)カ
ルシウム依存的にニューレキシンと結合する分子のクラスである。カルボキシル
エステラーゼと相同性を有するにもかかわらず、neuroliginsは活性部位セリン
残基を含まず、触媒としてではなく基質結合において役割を果たすと考えられる
(Ichtchenko, K.他(1996) J. Biol. Chem. 271:2676-2682)。
【0084】 スクアレンエポキシダーゼ スクアレンエポキシダーゼ(スクアレンモノオキシゲナーゼ、SE)は、ミクロ
ソーム膜結合FAD依存性オキシドレドクターゼであって、真核細胞のステロール
生合成経路における初めの酸素負荷ステップを触媒する。コレステロールは、LD
L受容体仲介経路若しくは生合成経路によって獲得される細胞質膜の必須の構成
成分である。後者の場合、コレステロール分子における27全ての炭素原子がア
セチル−CoAに由来する(Stryer, L., 前出)。SEはスクアレンをまず2,3(S)−
オキシドスクアレンに変換し、次にラノステロールに変換し、更にコレステロー
ルに変換する。コレステロール生合成に関係するステップを以下に要約する(St
ryer, L (1988) Biochemistry. W. H FreemanおよびCo., Inc. New York. pp.55
4-560およびSakakibara, J.他(1995) 270:17-20)。
【0085】 アセテート(アセチル−CoA由来)→3ヒドロキシ−3−メチル−グルタリルCoA
→メバロン酸→5−ホスホメバロン酸→5−ピロホスホメバロン酸→イソペンテニ
ルピロリン酸→ジメチルアリルピロリン酸→ゲラニルピロリン酸→ファルネシル
ピロリン酸→スクアレン→スクアレンエポキシド→ラノステロール→コレステロ
ール コレステロールは真核細胞の生存に必須であるが、血清コレステロールのレベ
ルが過度に上昇すると高等生物の動脈においてアテローム斑が形成されるように
なる。例えば冠状動脈などの必須の血管壁部に不溶性の脂質が蓄積されると、血
流が減少して十分な血液が組織に流れないようになり組織壊死が起こる可能性が
ある。HMG−CoAレダクターゼは、3−ヒドロキシ−3−メチル−グルタリルCoA(H
MG−CoA)のメバロン酸への変換に必要であり、この変換がコレステロール生合
成の第1のステップである。HMG−CoAは、血漿コレステロールレベルを低下させ
るようにデザインされた様々な医薬化合物の標的である。しかしながら、MHG−C
oAの阻害はまた、その他の生合成経路に必要な非ステロール中間体(例えば、メ
バロン酸)の合成が減少する。SEは、ステロール合成経路の後の方で起こる律速
反応を触媒し、コレステロールはSEによる触媒ステップの後の経路の最終産物で
ある。従って、SEは、その他の必要な中間体を減少させない抗高脂血症薬をデザ
インするための理想的な標的である(Nakamura, Y.他(1996) 271:8053-8056)。
【0086】 エポキシドヒドロラーゼ エポキシドヒドロラーゼは、エポキシド含有化合物の水の添加を触媒し、それ
によってエポキシドがその対応する1,2−ジオールに加水分解される。これらは
、細菌ハロアルカンデハロゲナーゼ(haloalkane dehalogenase)に関連し、酵
素のα/βヒドロラーゼフォールド(α/βhydrolase fold)ファミリーのその
他のメンバーと配列類似性を有する(例えば、Streptomyces aureofaciens由来
ブロモペルオキシダーゼA2(bromoperoxidase A2)、シュードモナス‐プチダ由
来のhydroxymuconic semialdehyde hydrolases、および Xanthobacter autotrop hicus 由来ハロアルカンデハロゲナーゼ)。エポキシドヒドロラーゼは遍在性で
あって、哺乳動物、脊椎動物、植物、真菌、細菌に見られる。この酵素のファミ
リーは、生物内に導入されると求電子性が高く破壊性である場合が多い生体異物
エポキシド化合物の解毒にとって重要である。エポキシドヒドロラーゼ反応の例
には、cis-9,10-epoxyoctadec-9 (Z)-enoic acid (ロイコトキシン)からその対
応するジオールへの加水分解、 threo-9,10-dihydroxyoctadec-12 (Z)-enoic ac
id (leukotoxin diol)、およびcis-12,13-epoxyoctadec-9 (Z)-enoic acid (iso
leukotoxin)からその対応するdiol threo-12,13-dihydroxyoctadec-9 (Z)-enoic
acid (イソロイコトキシンジオール)への加水分解が含まれる。ロイコトキシン
は膜の透過性を変えてイオンを輸送し炎症反応を引き起こす。加えて、エポキシ
ド発癌物質は、薬剤および環境毒素の解毒における中間体としてチトクロームP4
50によって生成されることが知られている。
【0087】 この酵素は、Asp(求核性)、Asp(ヒスチジンを支持する酸)、およびHis(
水活性化ヒスチジン)の3つの触媒部分を有する。エポキシドヒドロラーゼの反
応のメカニズムは、標的分子のエポキシド環の第1の炭素原子に対するAsp残基
の1つへの求核攻撃によって開始される共有結合エステル中間体によって始まり
、共有結合エステル中間体が形成される(Michael Arand, M.他(1996) J. Biol.
Chem. 271:4223-4229 ; Rink, R.他(1997) J. Biol. Chem. 272:14650-14657;
Argiriadi, M. A.他(2000) J. Biol. Chem. 275:15265-15270)。
【0088】 チロシン触媒作用に関与する酵素 コハク酸とピルビン酸か、或いはフマル酸とアセト酢酸へのアミノ酸チロシン
の分解には多数の酵素が必要であり、多数の中間化合物が生成される。加えて、
多くの生体異物化合物は、チロシン分解経路の一部である1或いは複数の反応が
用いられて代謝され得る。この経路は初め細菌で研究されたが、チロシン分解は
様々な生物において起こることが知られ、多数の同様の生物学的反応が関係する
と思われる。
【0089】 コハク酸とピルビン酸へのチロシンの分解に関係する酵素には、4−ヒドロキ
シフェニルピルビン酸オキシダーゼ、4−ヒドロキシフェニル酢酸3−ヒドロキシ
ラーゼ(4-hydroxyphenylacetate 3-hydroxylase)、3,4−ジヒドロキシフェニ
ル酢酸(3,4-dihydroxyphenylacetate 2,3-dioxygenase)、5−カルボキシメチ
ル−2−ヒドロキシムコン酸セミアルデヒドデヒドロゲナーゼ(5-carboxymethyl
-2-hydroxymuconic semialdehyde dehydrogenase)、トランス,シス−5−カルボ
キシメチル−2−ヒドロキシムコン酸イソメラーゼ(trans,cis-5-carboxymethyl
-2-hydroxymuconate isomerase)、ホモプロトカテチュ酸イソメラーゼ/デカル
ボキシラーゼ(homoprotocatechuate isomerase/decarboxylase)、cis-2-oxohe
pt-3-ene-1,7-dioate hydratase、2,4-dihydroxyhept-trans-2-ene-1,7-dioate
aldolase、およびコハク酸セミアルデヒドデヒドロゲナーゼ(succinic semiald
ehyde dehydrogenase)が含まれる。
【0090】 チロシンのフマル酸塩とアセト酢酸塩への分解に関係する酵素には、4−ヒド
ロキシフェニルピルビン酸ジオキシゲナーゼ、ホモゲンチシン酸−1,2−ジオキ
シゲナーゼ、マレイルアセト酢酸イソメラーゼ、およびフマリルアセトアセター
ゼが含まれる。コハク酸/ピルビン酸経路からの中間体が受け入れられた場合は
、4−ヒドロキシフェニル酢酸1−ヒドロキシラーゼ(4-hydroxyphenylacetate 1
-hydroxylase)が関係し得る。
【0091】 異なった生物においてチロシン代謝に関係する更なる酵素には、4−クロロフ
ェニル酢酸−3,4−ジオキシゲナーゼ(4-chlorophenylacetate-3,4-dioxygenase
)、芳香族アミノトランスフェラーゼ、5-oxopent-3-ene-1,2,5-tricarboxylate
decarboxylase、2-oxo-hept-3-ene-1,7-dioate hydratase、および5−カルボキ
シメチル−2−ヒドロキシムコン酸イソメラーゼ(5-carboxymethyl-2-hydroxymu
conate isomerase)が含まれる(Ellis, L. B. M.他(1999) Nucleic Acids Res.
27:373-376; Wackett, L. P. および Ellis, L. B. M. (1996) J. Microbiol.
Meth. 25:91-93; および Schmidt, M. (1996) Amer. Soc. Microbiol. News 62:
102)。
【0092】 ヒトにおいて、チロシン分解経路の酵素における後天性或いは先天性の遺伝的
欠陥が、遺伝性チロシン血症I型を引き起こし得る。この疾患の1つの型である
遺伝性チロシン血症I型(HT1)は、チロシンをフマル酸とアセテート酢酸に代謝
する生物における経路の最後の酵素である酵素フルマリルアセトアセターゼヒド
ロラーゼの欠損によって引き起こされ得る。HT1は幼児期に始まる進行性の肝傷
害によって特徴づけられ、肝癌のリスクが高い(Endo, F.他(1997) J. Biol. Ch
em. 272:24426-24432)。
【0093】 複数の新規の薬剤代謝酵素、およびそれらをコードするポリヌクレオチドの発
見により、新規の組成物を提供することで当分野の要望に応えることができる。
この新規の組成物は、自己免疫/炎症の疾患、細胞増殖異常、発生または発達障
害、内分泌障害、眼の疾患、代謝障害、および肝臓の疾患を含む胃腸疾患の診断
・治療・予防において有用であり、また、薬剤代謝酵素の核酸配列及びアミノ酸
配列の発現における外来性化合物の効果についての評価にも有用である。
【0094】 (発明の要約) 本発明は、総称して「DME」、個別にはそれぞれ「DME-1」、「DME-2」、「DME
-3」、「DME-4」、「DME-5」、「DME-6」、「DME-7」、「DME-8」、「DME-9」、
「DME-10」、「DME-11」、および「DME-12」と呼ぶ薬剤代謝酵素である精製され
たポリペプチドを提供する。本発明の一実施態様では、(a)SEQ ID NO:1−12
からなる一群から選択されたアミノ酸配列と、(b)SEQ ID NO:1−12からなる
一群から選択されたアミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有する天然のアミ
ノ酸配列と、(c)SEQ ID NO:1−12からなる一群から選択されたアミノ酸配列
の生物学的に活性な断片と、(d)SEQ ID NO:1−12とからなる一群から選択さ
れたアミノ酸配列の免疫原性断片とで構成される一群から選択されたアミノ酸配
列を含む単離されたポリペプチドを提供する。別法では、SEQ ID NO:1−12のア
ミノ酸配列を含む単離されたポリペプチドを提供する。
【0095】 更に本発明は、(a)SEQ ID NO:1−12からなる一群から選択されたアミノ酸
配列と、(b)SEQ ID NO:1−12からなる一群から選択されたアミノ酸配列と9
0%以上の配列同一性を有する天然のアミノ酸配列と、(c)SEQ ID NO:1−12
からなる一群から選択されたアミノ酸配列の生物学的に活性な断片と、(d)SE
Q ID NO:1−12からなる一群から選択されたアミノ酸配列の免疫原性断片とで構
成される一群から選択されたアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードする単離
されたポリヌクレオチドを提供する。別法では、このポリヌクレオチドは、SEQ
ID NO:1−12からなる一群から選択されたポリペプチドをコードする。別法では
、このポリヌクレオチドは、SEQ ID NO:13−24からなる一群から選択される。
【0096】 更に、本発明は、(a)SEQ ID NO:1−12からなる一群から選択されたアミノ
酸配列と、(b)SEQ ID NO:1−12からなる一群から選択されたアミノ酸配列と
90%以上の配列同一性を有する天然のアミノ酸配列と、(c)SEQ ID NO:1−1
2からなる一群から選択されたアミノ酸配列の生物学的に活性な断片と、(d)S
EQ ID NO:1−12からなる一群から選択されたアミノ酸配列の免疫原性断片とで構
成される一群から選択されたアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードするポリ
ヌクレオチドと機能的に結合されたプロモーター配列を含む組換えポリヌクレオ
チドを提供する。別法では、本発明は、この組換えポリヌクレオチドで形質転換
された細胞を提供する。更なる別法では、本発明は、この組換えポリヌクレオチ
ドを含む遺伝子組換え生物を提供する。
【0097】 また、本発明は、(a)SEQ ID NO:1−12からなる一群から選択されたアミノ
酸配列と、(b)SEQ ID NO:1−12からなる一群から選択されたアミノ酸配列と
90%以上の配列同一性を有する天然のアミノ酸配列と、(c)SEQ ID NO:1−1
2からなる一群から選択されたアミノ酸配列の生物学的に活性な断片と、(d)S
EQ ID NO:1−12とからなる一群から選択されたアミノ酸配列の免疫原性断片とで
構成される一群から選択されたアミノ酸配列を含むポリペプチドの生産方法を提
供する。この方法は、(a)このポリペプチドの発現に好適な条件下で、このポ
リペプチドをコードするポリヌクレオチドと機能的に結合されたプロモーター配
列を含む組換えポリヌクレオチドで形質転換された細胞を培養するステップと、
(b)このように発現したポリペプチドを回収するステップとを含む。
【0098】 更に、本発明は、(a)SEQ ID NO:1−12からなる一群から選択されたアミノ
酸配列と、(b)SEQ ID NO:1−12からなる一群から選択されたアミノ酸配列と
90%以上の配列同一性を有する天然のアミノ酸配列と、(c)SEQ ID NO:1−1
2からなる一群から選択されたアミノ酸配列の生物学的に活性な断片と、(d)S
EQ ID NO:1−12とからなる一群から選択されたアミノ酸配列の免疫原性断片とで
構成される一群から選択されたアミノ酸配列を含むポリペプチドに特異的に結合
する単離された抗体を提供する。
【0099】 更に、本発明は、(a)SEQ ID NO:13−24からなる一群から選択されたポリヌ
クレオチド配列と、(b)SEQ ID NO:13−24からなる一群から選択されたポリヌ
クレオチド配列と90%以上の配列同一性を有する天然のポリヌクレオチド配列
と、(c)前記(a)に相補的なポリヌクレオチド配列と、(d)前記(b)に
相補的なポリヌクレオチド配列と、(e)前記(a)乃至(d)のRNA等化物と
で構成される一群から選択されたポリヌクレオチド配列を含む単離されたポリヌ
クレオチドを提供する。別法では、このポリヌクレオチドは、少なくとも60個
の連続するヌクレオチドを含む。
【0100】 更に本発明は、(a)SEQ ID NO:13−24からなる一群から選択されたポリヌク
レオチド配列と、(b)SEQ ID NO:13−24からなる一群から選択されたポリヌク
レオチド配列と90%以上の配列同一性を有する天然のポリヌクレオチド配列と
、(c)前記(a)に相補的なポリヌクレオチド配列と、(d)前記(b)に相
補的なポリヌクレオチド配列と、(e)前記(a)乃至(d)のRNA等化物とで
構成される一群から選択されたポリヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド配
列を有する標的ポリヌクレオチドをサンプルにおいて検出する方法を提供する。
この方法は、(a)前記サンプル内の標的ポリヌクレオチドと相補的な配列を構
成する少なくとも20個の連続するヌクレオチドを含むプローブと前記サンプル
をハイブリダイズさせるステップであって、前記プローブと前記標的ポリヌクレ
オチドまたはその断片とでハイブリダイゼーション複合体が形成される条件下で
、前記プローブが前記標的ポリヌクレオチドに特異的にハイブリダイズする、該
ステップと、(b)前記ハイブリダイゼーション複合体の存在するか否かを検出
し、存在する場合には随意選択でその収量を測定するステップとを含む。別法で
は、前記プローブは、少なくとも60個の連続するヌクレオチドを含む。
【0101】 更に本発明は、(a)SEQ ID NO:13−24からなる一群から選択されたポリヌク
レオチド配列と、(b)SEQ ID NO:13−24からなる一群から選択されたポリヌク
レオチド配列と90%以上の配列同一性を有する天然のポリヌクレオチド配列と
、(c)前記(a)に相補的なポリヌクレオチド配列と、(d)前記(b)に相
補的なポリヌクレオチド配列と、(e)前記(a)乃至(d)のRNA等化物とで
構成される一群から選択されたポリヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド配
列を有する標的ポリヌクレオチドをサンプルにおいて検出する方法を提供する。
この方法は、(a)ポリメラーゼ連鎖反応増幅を用いて、前記標的ポリヌクレオ
チドまたはその断片を増幅するステップと、(b)増幅された前記標的ポリヌク
レオチドまたはその断片が存在するか否かを検出し、存在する場合には随意選択
でその収量を測定するステップとを含む。
【0102】 更に本発明は、(a)SEQ ID NO:1−12からなる一群から選択されたアミノ酸
配列と、(b)SEQ ID NO:1−12からなる一群から選択されたアミノ酸配列と9
0%以上の配列同一性を有する天然のアミノ酸配列と、(c)SEQ ID NO:1−12
からなる一群から選択されたアミノ酸配列の生物学的に活性な断片と、(d)SE
Q ID NO:1−12とからなる一群から選択されたアミノ酸配列の免疫原性断片とで
構成される一群から選択されたアミノ酸配列を含む効果的な量のポリペプチド及
び好適な医薬用賦形剤を含む組成物を提供する。一実施例では、SEQ ID NO:1−1
2からなる一群から選択されたアミノ酸配列を含む組成物を提供する。更に、本
発明は、患者にこの組成物を投与することを含む、機能的DMEの発現の低下に関
連した疾患やその症状の治療方法を提供する。
【0103】 更に本発明は、(a)SEQ ID NO:1−12からなる一群から選択されたアミノ酸
配列と、(b)SEQ ID NO:1−12からなる一群から選択されたアミノ酸配列と9
0%以上の配列同一性を有する天然のアミノ酸配列と、(c)SEQ ID NO:1−12
からなる一群から選択されたアミノ酸配列の生物学的に活性な断片と、(d)SE
Q ID NO:1−12とからなる一群から選択されたアミノ酸配列の免疫原性断片とで
構成される一群から選択されたアミノ酸配列を含むポリペプチドのアゴニストと
して効果的な化合物をスクリーニングする方法を提供する。この方法は、(a)
このポリペプチドを含むサンプルを化合物に曝露するステップと、(b)このサ
ンプルのアゴニスト活性を検出するステップとを含む。別法では、本発明は、こ
の方法によって同定されたアゴニスト化合物と好適な医薬用賦形剤とを含む組成
物を提供する。更なる別法では、本発明は、この組成物の患者への投与を含む、
機能的DMEの発現の低下に関連した疾患やその症状の治療方法を提供する。
【0104】 更に、本発明は、(a)SEQ ID NO:1−12からなる一群から選択されたアミノ
酸配列と、(b)SEQ ID NO:1−12からなる一群から選択されたアミノ酸配列と
90%以上の配列同一性を有する天然のアミノ酸配列と、(c)SEQ ID NO:1−1
2からなる一群から選択されたアミノ酸配列の生物学的に活性な断片と、(d)S
EQ ID NO:1−12とからなる一群から選択されたアミノ酸配列の免疫原性断片とで
構成される一群から選択されたアミノ酸配列を含むポリペプチドのアンタゴニス
トとして効果的な化合物をスクリーニングする方法を提供する。この方法は、(
a)このポリペプチドを含むサンプルを化合物に曝露するステップと、(b)こ
のサンプルのアンタゴニスト活性を検出するステップとを含む。別法では、本発
明は、この方法によって同定されたアンタゴニスト化合物と好適な医薬用賦形剤
とを含む組成物を提供する。更なる別法では、本発明は、この組成物の患者への
投与を含む、機能的DMEの過剰な発現に関連した疾患やその症状の治療方法を提
供する。
【0105】 更に本発明は、(a)SEQ ID NO:1−12からなる一群から選択されたアミノ酸
配列と、(b)SEQ ID NO:1−12からなる一群から選択されたアミノ酸配列と9
0%以上の配列同一性を有する天然のアミノ酸配列と、(c)SEQ ID NO:1−12
からなる一群から選択されたアミノ酸配列の生物学的に活性な断片と、(d)SE
Q ID NO:1−12とからなる一群から選択されたアミノ酸配列の免疫原性断片とで
構成される一群から選択されたアミノ酸配列を含むポリペプチドに特異的に結合
する化合物をスクリーニングする方法を提供する。この方法は、(a)このポリ
ペプチドを好適な条件下で少なくとも1つの化合物と結合させるステップと、(
b)このポリペプチドとこの試験化合物との結合を検出して、このポリペプチド
と特異的に結合する化合物を同定するステップとを含む。
【0106】 更に本発明は、(a)SEQ ID NO:1−12からなる一群から選択されたアミノ酸
配列と、(b)SEQ ID NO:1−12からなる一群から選択されたアミノ酸配列と9
0%以上の配列同一性を有する天然のアミノ酸配列と、(c)SEQ ID NO:1−12
からなる一群から選択されたアミノ酸配列の生物学的に活性な断片と、(d)SE
Q ID NO:1−12とからなる一群から選択されたアミノ酸配列の免疫原性断片とで
構成される一群から選択されたアミノ酸配列を含むポリペプチドの活性を調節す
る化合物をスクリーニングする方法を提供する。このスクリーニング方法は、(
a)このポリペプチドを、その活性が許容される条件下で少なくとも1つの化合
物と結合させるステップと、(b)この試験化合物の存在下でのこのポリペプチ
ドの活性を評価するステップと、(c)この試験化合物の存在下でのこのポリペ
プチドの活性と、この試験化合物の不在下でのこのポリペプチドの活性とを比較
するステップとを含み、この試験化合物の存在下でのこのポリペプチドの活性の
変化が、このポリペプチドの活性を調節する化合物の存在を示唆するという特徴
を有する。
【0107】 更に本発明は、SEQ ID NO:13−24からなる一群から選択された配列を含む標的
ポリヌクレオチドの発現を変化させるのに効果的な化合物をスクリーニングする
方法であって、(a)この標的ポリヌクレオチドを含むサンプルを化合物に曝露
するステップと、(b)この標的ポリヌクレオチドの発現の変化を検出するステ
ップとを含む、該スクリーニング方法を提供する。
【0108】 本発明はさらに、試験化合物の毒性を評価する方法を提供する。この方法は、
(a)核酸を含む生体サンプルを前記試験化合物で処理するステップと、(b)
処理した前記生体サンプルの核酸をプローブとハイブリダイズするステップと、
(c)ハイブリダイゼーション複合体の収量を測定するステップと、(d)前記
処理した生体サンプルにおけるハイブリダイゼーション複合体の収量を、未処理
の生体サンプルにおけるハイブリダイゼーション複合体の収量とを比較するステ
ップとを含み、前記処理した生体サンプルにおけるハイブリダイゼーション複合
体の収量の差異が試験化合物の毒性を示唆する。この方法における前記プローブ
は、(1)SEQ ID NO:13−24からなる一群から選択されたポリヌクレオチド配列
と、(2)SEQ ID NO:13−24からなる一群から選択されたポリヌクレオチド配列
と少なくとも90%の配列同一性を有する天然のポリヌクレオチド配列と、(3
)前記(1)に相補的なポリヌクレオチド配列と、(4)前記(2)に相補的な
ポリヌクレオチド配列と、(5)前記(1)乃至(4)のRNA等価物とで構成さ
れる一群から選択されたポリヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドの連続す
る少なくとも20個のヌクレオチドを含む。また、前記ハイブリダイゼーション
は、前記プローブと前記生体サンプルの標的ポリヌクレオチドとの間で特異的な
ハイブリダイゼーション複合体が形成される条件下で行わる。また、前記標的ポ
リヌクレオチドが、(1)SEQ ID NO:13−24からなる一群から選択されたポリヌ
クレオチド配列と、(2)SEQ ID NO:13−24からなる一群から選択されたポリヌ
クレオチド配列と少なくとも90%の配列同一性を有する天然のポリヌクレオチ
ド配列と、(3)前記(1)に相補的なポリヌクレオチド配列と、(4)前記(
2)に相補的なポリヌクレオチド配列と、(5)前記(1)乃至(5)のRNA等
価物とを含む。代替的に前記標的ポリヌクレオチドは前記ポリヌクレオチド配列
の断片である。
【0109】 (本発明の記載について) 本発明のタンパク質及び核酸配列、方法について説明する前に、本発明は、こ
こに開示した特定の装置及び材料、方法に限定されず、その実施形態を変更でき
ることを理解されたい。また、ここで用いられる用語は、特定の実施例のみを説
明する目的で用いられたものであり、後述の請求の範囲によってのみ限定され、
本発明の範囲を限定することを意図したものではないということも理解されたい
【0110】 本明細書及び請求の範囲において単数形を表す「或る」、「その(この等)」
は、文脈で明確に示していない場合は複数形を含むことに注意されたい。従って
、例えば「或る宿主細胞」は複数の宿主細胞を含み、その「抗体」は複数の抗体
は含まれ、当業者には周知の等価物なども含まれる。
【0111】 本明細書で用いた全ての科学技術用語は、別の方法で定義されていない限り、
本発明の属する技術分野の一般的な技術者が普通に解釈する意味と同じである。
本明細書で記述したものと類似、或いは同等の全ての装置及び材料、方法は本発
明の実施及びテストに使用できるが、好適な装置及び材料、方法をここに記す。
本明細書に記載の全ての文献は、本発明に関連して使用する可能性のある文献に
記載された細胞系、プロトコル、試薬、ベクターを記述し開示するために引用し
た。従来の発明を引用したからと言って、本発明の新規性が損なわれると解釈さ
れるものではない。
【0112】 (定義) 用語「DME」は、天然、合成、半合成或いは組換え体など全ての種(特にウシ
、ヒツジ、ブタ、マウス、ウマ及びヒトを含む哺乳動物)から得られる実質的に
精製されたDMEのアミノ酸配列を指す。
【0113】 用語「アゴニスト」は、DMEの生物学的活性を強める、或いは模倣する分子を
指す。このアゴニストは、DMEに直接相互作用するか、或いはDMEが関与する生物
学的経路の成分と作用して、DMEの活性を調節するタンパク質、核酸、糖質、小
分子、任意の他の化合物や組成物を含み得る。
【0114】 用語「アレル変異配列」は、DMEをコードする遺伝子の別の形を指す。アレル
変異配列は、核酸配列における少なくとも1つの変異によって生じ、変異mRNA若
しくは変異ポリペプチドになり、これらの構造や機能は変わる場合もあれば変わ
らない場合もある。ある遺伝子は、天然型のアレル変異配列が存在しないもの、
1つ或いは多数存在するものがある。一般にアレル変異配列を生じる変異は、ヌ
クレオチドの自然な欠失、付加、或いは置換による。これらの各変異は、単独或
いは他の変異と同時に起こり、所定の配列内で一回或いはそれ以上生じる。
【0115】 DMEをコードする「変異」核酸配列は、様々なヌクレオチドの欠失、挿入、或
いは置換が起こっても、DMEと同じポリペプチド或いはDMEの機能特性の少なくと
も1つを備えるポリペプチドを指す。この定義には、DMEをコードするポリヌク
レオチド配列の正常な染色体の遺伝子座ではない位置でのアレル変異配列との不
適当或いは予期しないハイブリダイゼーション、並びにDMEをコードするポリヌ
クレオチドの特定のオリゴヌクレオチドプローブを用いて容易に検出可能な或い
は検出困難な多形性を含む。コードされたタンパク質も変異され得り、サイレン
ト変化を生じDMEと機能的に等価となるアミノ酸残基の欠失、挿入、或いは置換
を含み得る。意図的なアミノ酸置換は、生物学的或いは免疫学的にDMEの活性が
保持される範囲で、残基の極性、電荷、溶解度、疎水性、親水性、及び/または
両親媒性についての類似性に基づいて成され得る。例えば、負に荷電したアミノ
酸にはアスパラギン酸及びグルタミン酸が含まれ、正に荷電したアミノ酸にはリ
シン及びアルギニンが含まれ得る。類似の親水性の値をもち極性非荷電側鎖を有
するアミノ酸には、アスパラギン、グルタミン、セリン、トレオニンが含まれ得
る。類似の親水性の値をもち非荷電側鎖を有するアミノ酸には、ロイシン、イソ
ロイシン、バリン、グリシン、アラニン、フェニルアラニン及びチロシンが含ま
れ得る。
【0116】 用語「アミノ酸」及び「アミノ酸配列」は、オリゴペプチド、ペプチド、ポリ
ペプチド、タンパク質配列、或いはそれらの任意の断片を指し、天然の分子及び
合成分子を含む。「アミノ酸配列」が天然のタンパク質分子の配列を指す場合、
「アミノ酸配列」及び類似の用語は、アミノ酸配列を記載したタンパク質分子に
関連する完全で元のままのアミノ酸配列に限定するものではない。
【0117】 用語「増幅」は、核酸配列の複製物を作製することに関連する。一般に増幅は
、この技術分野で周知のポリメラーゼ連鎖反応(PCR)技術によって行われる。
【0118】 用語「アンタゴニスト」は、DMEの生物学的活性を阻害或いは減弱する分子で
ある。アンタゴニストは、DMEに直接相互作用するか、或いはDMEが関与する生物
学的経路の成分と作用して、DMEの活性を調節する抗体、核酸、糖質、小分子、
任意の他の化合物や組成物などのタンパク質を含み得る。
【0119】 用語「抗体」は、抗原決定基と結合可能なFab及びF(ab')2、及びそれらの断片
、Fv断片などの無傷の分子を指す。DMEポリペプチドと結合する抗体は、抗体を
免疫する小ペプチドを含む無傷の分子またはその断片を用いて作製可能である。
動物(例えば、マウス、ラット、若しくはウサギ)を免疫化するのに使用される
ポリペプチド或いはオリゴペプチドは、RNAの翻訳から、或いは化学的に合成可
能であり、必要に応じて担体タンパク質と結合させることも可能である。ペプチ
ドと化学的に結合した一般に用いられる担体は、ウシ血清アルブミン、チログロ
ブリン、及びキーホールリンペットヘモニアン(KLH)を含む。次ぎに、この結
合したペプチドを用いて動物を免疫化する。
【0120】 用語「抗原決定基」は、特定の抗体と接触する分子の領域(即ちエピトープ)
を指す。タンパク質或いはタンパク質の断片が、宿主動物を免疫化するのに用い
られるとき、このタンパク質の種々の領域は、抗原決定基(タンパク質上の特定
の領域或いは三次元構造体)に特異的に結合する抗体の産生を誘発し得る。抗原
決定基は、抗体と結合するために無傷の抗原(即ち、免疫応答を引き出すために
用いられる免疫原)と競合し得る。
【0121】 本明細書において「アンチセンス」は、特定の核酸配列のセンス(コーディン
グ)鎖と塩基対を形成し得る任意の組成物を指す。アンチセンス成分には、DNA
と、RNAと、ペプチド核酸(PNA)と、ホスホロチオネートやメチルホスホネート
、ベンジルホスホネート(benzylphosphonate)などの修飾された骨格(backbon
e linkage)を有するオリゴヌクレオチドと、2'-メトキシエチル糖または2'-メ
トキシエトキシ糖などの修飾された糖を有するオリゴヌクレオチドと、5-メチル
シトシンまたは2'-deoxyuracil、7-deaza-2'-deoxyguanosineなどの修飾された
塩基を有するオリゴヌクレオチドを含み得る。アンチセンス分子は、化学合成や
転写を含む任意の方法で作り出すことができる。相補的アンチセンス分子は、一
度細胞に導入されると、細胞によって作られた天然の核酸配列と塩基対となって
二重鎖を形成し、転写や翻訳を阻害する。「負」または「マイナス」という表現
はアンチセンス鎖であり、「正」または「プラス」という表現はセンス鎖である
【0122】 用語「生物学的に活性」は、天然分子の構造的、調節的、或いは生化学的な機
能を有するタンパク質を指す。同様に、用語「免疫学的に活性」または「免疫原
性」は、天然或いは組換え体のDME、合成のDMEまたはそれらの任意のオリゴペプ
チドが、適当な動物或いは細胞の特定の免疫応答を誘発して特定の抗体と結合す
る能力を指す。
【0123】 用語「相補的」は、塩基対合によってアニールする2つの一本鎖核酸配列間の
関係を指す。例えば、配列「5'AGT3'」が相補的な配列「3'TCA5'」と
対をなす。
【0124】 「所定のポリヌクレオチド配列を含む組成物」または「所定のアミノ酸配列を
含む組成物」は広い意味で、所定のヌクレオチド配列若しくはアミノ酸配列を含
む任意の組成物を指す。この組成物は、乾燥した製剤或いは水溶液を含み得る。
DME若しくはDMEの断片をコードするポリヌクレオチド配列を含む組成物は、ハイ
ブリダイゼーションプローブとして使用され得る。このプローブは、凍結乾燥状
態で保存可能であり、糖質などの安定化剤と結合させることが可能である。ハイ
ブリダイゼーションにおいて、プローブは、塩(例えば、NaCl)及び界面活性剤
(例えば、SDS:ドデシル硫酸ナトリウム)、その他の物質(例えば、デンハー
ト液、乾燥ミルク、サケ精子DNAなど)を含む水溶液に展開され得る。
【0125】 「コンセンサス配列」は、不要な塩基を分離するためにDNA配列の解析を繰り
返し行い、XL-PCRキット(PE Biosystems,Foster City CA)を用いて5'及び/
または3'の方向に伸長され、再度シークエンシングされた核酸配列、またはGEL
VIEW 断片構築システム(GCG, Madison, WI)またはPhrap (University of Wash
ington, Seattle WA)等の断片構築用のコンピュータプログラムを用いて1つ或
いはそれ以上の重複するcDNAやEST、またはゲノムDNA断片から構築された核酸配
列を指す。伸長及び重複の両方によって構築されるコンセンサス配列もある。
【0126】 用語「保存的なアミノ酸置換」は、元のタンパク質の特性を殆ど変えない置換
を指す。即ち、置換によってそのタンパク質の構造や機能が大きくは変わらず、
そのタンパク質の構造、特にその機能が保存される。以下に、あるタンパク質の
元のアミノ酸が別のアミノ酸に置換される保存的なアミノ酸置換を示す。 元の残基 保存的な置換 Ala Gly, Set Arg His, Lys Asn Asp, Gln, His Asp Asn, Glu Cys Ala, Ser Gln Asn, Glu, His Glu Asp, Gln, His Gly Ala His Asn, Arg, Gln, Glu Ile Leu, Val Leu Ile, Val Lys Arg, Gln, Glu Met Leu, Ile Phe His, Met, Leu, Trp, Tyr Ser Cys, Thr Thr Ser, Val Trp Phe, Tyr Tyr His, Phe, Trp Val Ile. Leu, Thr 一般に、保存されたアミノ酸置換の場合は、a)置換された領域のポリペプチ
ドの骨格構造、例えば、βシートやαヘリックス高次構造、b)置換された部位
の分子の電荷または疎水性、及び/または、c)側鎖の大半が維持される。
【0127】 用語「欠失」は、1個以上のアミノ酸残基が欠如するアミノ酸配列の変化、或
いは1個以上のヌクレオチドが欠如する核酸配列の変化を指す。
【0128】 用語「誘導体」は、化学修飾されたポリヌクレオチドまたはポリペプチドを指
す。ポリヌクレオチド配列の化学修飾には、例えば、アルキル基、アシル基、ヒ
ドロキシル基、或いはアミノ基による水素の置換がある。誘導体ポリヌクレオチ
ドは、自然分子(未修飾の分子)の生物学的或いは免疫学的機能の少なくとも1
つを維持するポリペプチドをコードする。誘導体ポリペプチドとは、もとのポリ
ペプチドの生物学的機能、或いは免疫学的機能の少なくとも1つを維持する、グ
リコシル化、ポリエチレングリコール化、或いは任意の同様のプロセスによって
修飾されたポリペプチドのことである。
【0129】 「検出可能な標識」は、測定可能な信号を生成し得る、ポリヌクレオチドやポ
リペプチドに共有結合或いは非共有結合するレポーター分子や酵素を指す。
【0130】 用語「断片」は、DMEまたはDMEをコードするポリヌクレオチドの固有の部分で
あって、その親配列(parent sequence)と同一であるがその配列より長さが短
いものを指す。「断片」の最大の長さは、親配列から1つのヌクレオチド/アミ
ノ酸残基を差し引いた長さである。例えば、ある断片は、5〜1000個の連続
するヌクレオチド或いはアミノ酸残基を含む。プローブ、プライマー、抗原、治
療用分子、またはその他の目的に用いる断片は、少なくとも5、10、15、1
6、20、25、30、40、50、60、75、100、150、250若し
くは500個の連続するヌクレオチド或いはアミノ酸残基の長さである。断片は
、優先的に分子の特定の領域から選択される場合もある。例えば、ポリペプチド
断片は、所定の配列に示された最初の250若しくは500のアミノ酸(或いは
、ポリペプチドの最初の25%または50%)から選択された連続するアミノ酸
の所定の長さを含み得る。これらの長さは一例であり、配列表及び表、図面を含
む明細書に記載の任意の長さが、本発明の実施例に含まれ得る。
【0131】 SEQ ID NO:13−24の断片は、例えば、この断片を得たゲノム内の他の配列とは
異なる、SEQ ID NO:13−24を明確に同定する固有のポリヌクレオチド配列の領域
を含む。SEQ ID NO:13−24のある断片は、例えば、ハイブリダイゼーションや増
幅技術、またはSEQ ID NO:13−24を関連ポリヌクレオチド配列から区別する類似
の方法に有用である。ある断片と一致するSEQ ID NO:13−24の正確な断片の長さ
や領域は、その断片の目的に基づいて当分野で一般的な技術によって日常的に測
定できる。
【0132】 SEQ ID NO:1−12のある断片は、SEQ ID NO:13−24のある断片によってコード
される。SEQ ID NO:1−12のある断片は、SEQ ID NO:1−12を特異的に同定する固
有のアミノ酸配列の領域を含む。例えば、SEQ ID NO:1−12のある断片は、SEQ I
D NO:1−12を特異的に認識する抗体の開発における免疫原性ペプチドとして有用
である。ある断片と一致するSEQ ID NO:1−12の正確な断片の長さや領域は、そ
の断片の目的に基づいて当分野で一般的な技術によって日常的に決定できる。
【0133】 「完全長」ポリヌクレオチド配列とは、少なくとも1つの翻訳開始コドン(例
えばメチオニン)、それに続くオープンリーディングフレーム及び翻訳終止コド
ンを有する配列である。「完全長」ポリヌクレオチド配列は、「完全長」ポリペ
プチド配列をコードする。
【0134】 「相同性」は、2つ以上のポリヌクレオチド配列間または2つ以上のポリペプ
チド配列間の配列類似性である。この配列類似性は配列同一性と言い換えること
ができる。
【0135】 ポリヌクレオチド配列についての用語「パーセントの同一性」または「%の同
一性」とは、標準化されたアルゴリズムを用いてアラインメントされる、2つ以
上のポリヌクレオチド配列間の一致する残基の百分率のことである。このような
アルゴリズムは、標準化され再現できる方法で、2つの配列間のアラインメント
を最適化するべく、配列にギャップを挿入して、より意味をもつ2つの配列間の
比較を行うことができる。
【0136】 ポリヌクレオチド配列間の同一性のパーセントは、MEGALIGN version 3.12e配
列アラインメントプログラムに組込まれるCLUSTAL Vアルゴリズムのデフォルト
パラメータを用いて決定可能である。このプログラムはLASERGENEソフトウェア
パッケージの一部であり、分子生物学分析プログラム一式(DNASTAR, Madison W
I)である。このCLUSTAL Vは、Higgins, D.G. 及び P.M. Sharp (1989) CABIOS
5:151-153、Higgins, D.G. 他 (1992) CABIOS 8:189-191に記載されている。ポ
リヌクレオチド配列の対のアライメントの場合、デフォルトパラメータは、Ktup
le=2、gap penalty=5、window=4、「diagonals saved」=4と設定する。「重み付
けされた」残基重み付け表が、デフォルトとして選択された。同一性のパーセン
トは、アラインメントされたポリヌクレオチド配列間の「類似性のパーセント」
としてCLUSTAL Vによって報告される。
【0137】 別法では、National Center for Biotechnology Information (NCBI) Basic L
ocal Alignment Search Tool (BLAST) (Altschul, S.F. 他 (1990) J. Mol. Bio
l. 215:403-410)が提供する、広く用いられている無料の配列比較アルゴリズム
一式が、NCBI(Bethesda、MD)を含む幾つかのソース及びインターネット(http
://WWW.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/)で入手可能である。このBLASTソフトウェア
一式には、既知のポリヌクレオチド配列と様々なデータベースの別のポリヌクレ
オチド配列とのアラインメントに用いられる「blastn」を含む、様々な配列分析
プログラムが含まれる。「BLAST 2 Sequences」と呼ばれるツールが入手可能で
あり、2つのヌクレオチド配列の対を直接比較するために用いられる。「BLAST
2 Sequences」は、http://WWW.ncbi.nlm.nih.gov/gorf/b12.htmlにアクセスして
、対話形式で利用ができる。「BLAST 2 Sequences」ツールは、blastn 及び bla
stp(以下に記載)の両方に用いることができる。BLASTプログラムは、一般的に
は、デフォルトを設定するギャップ及び他のパラメータと共に用いられる。例え
ば、2つのヌクレオチド配列を比較する場合、ある者は、デフォルトパラメータ
に設定された「BLAST 2 Sequences」ツールVersion 2.0.12 (April-21-2000)でb
lastnを使用するであろう。そのようなデフォルトパラメータは、例えば、以下
のようにする。
【0138】 Matrix: BLOSUM62 Reward for match: 1 Penalty for mismatch: -2 Open Gap: 5 及び Extension Gap: 2 penalties Gap x drop-off: 50 Expect: 10 Word Size: 11 Filter: on 同一性のパーセントは、例えば、特定の配列番号で決められた、所定の配列の
全長に対して測定してもよいし、それより短い長さに対して、例えば、ある大き
な所定の配列から得られた断片、例えば、連続する少なくとも、20または30
、40、50、70、100、200のヌクレオチドの断片の長さに対して測定
してもよい。このような長さは単なる例であり、配列表及び表、図面を含む明細
書に記載の配列の任意の長さの断片を用いて、同一性のパーセントが測定される
長さを示すことができる。
【0139】 高い同一性を示さない核酸配列でも、遺伝子コードの縮重によって類似のアミ
ノ酸配列をコードし得る。縮重を利用して核酸配列を変え、それぞれが実質的に
同じタンパク質をコードする様々な核酸配列を作製できることを理解されたい。
【0140】 ポリペプチド配列に用いられる用語「パーセントの同一性」または「%の同一
性」とは、標準化されたアルゴリズムを用いてアラインメントされる2つ以上の
ポリペプチド配列間の一致する残基の百分率のことである。ポリペプチド配列ア
ラインメントの方法は周知である。アラインメント方法の中には、保存的なアミ
ノ酸置換を考慮したものもある。詳細に上述したこのような保存的な置換は、一
般に、置換部位の電荷や疎水性が保存され、ポリペプチドの構造(従って機能も
)が保存される。
【0141】 ポリペプチド配列間の同一性のパーセントは、MEGALIGN バージョン3.12e配列
アラインメントプログラム(上記)に組込まれるCLUSTAL Vアルゴリズムのデフ
ォルトパラメータを用いて決定可能である。CLUSTAL Vを用いる対方式のポリぺ
プチド配列のアライメントの場合、デフォルトパラメータは、Ktuple=1、gap pe
nalty=3、window=5、及び「diagonals saved」=5と設定する。PAM250マトリクス
が、デフォルトの残基重み付け表として選択される。ポリヌクレオチドアライン
メントと同様に、アラインメントされたポリペプチド配列の対の同一性のパーセ
ントは、「類似性のパーセント」としてCLUSTAL Vによって報告される。
【0142】 別法では、NCBI BLASTソフトウェア一式が用いられる。例えば、2つのポリペ
プチド配列を対で比較をする場合、ある者は、デフォルトパラメータで設定され
た「BLAST 2 Sequences」ツールVersion 2.0.12 (Apr-21-2000)でblastpを使用
するであろう。そのようなデフォルトパラメータは、例えば、以下のようにする
【0143】 Matrix: BLOSUM62 Open Gap: 11 及び Extension Gap: 1 penalties Gap x drop-off: 50 Expect: 10 Word Size: 3 Filter: on 同一性のパーセントは、例えば、特定の配列番号で決められた、所定のポリペ
プチド配列の全長に対して測定してもよいし、それより短い長さに対して、例え
ば、ある大きな所定のポリペプチド配列から得られた断片、例えば、連続する少
なくとも15、20または30、40、50、70、150の残基の断片の長さ
に対して測定してもよい。このような長さは単なる例であり、配列表及び表、図
面を含む明細書に記載の配列の任意の長さの断片を用いて、同一性のパーセント
が測定される長さを示すことができる。
【0144】 「ヒト人工染色体(HAC)」は、約6kb(キロベース)〜10MbのサイズのDNA
配列を含み得る、安定した有糸分裂染色体の分離及び維持に必要な全てのエレメ
ントを含む直鎖状の小染色体である。
【0145】 用語「ヒト化抗体」は、もとの結合能力を保持しつつよりヒトの抗体に似せる
ために、非抗原結合領域のアミノ酸配列が変えられた抗体分子を指す。
【0146】 「ハイブリダイゼーション」とは、所定のハイブリダイゼーション条件下で、
ある一本鎖ポリヌクレオチドがある相補的な一本鎖と塩基対を形成するアニーリ
ングのプロセスである。特異的なハイブリダイゼーションとは、2つの核酸配列
が高い相同性を有することを意味する。アニーリングが許容される条件下で、特
異的なハイブリダイゼーション複合体が形成され、洗浄過程の後もハイブリダイ
ズしたままである。洗浄過程は、ハイブリダイゼーションプロセスの厳密性即ち
ストリンジェンシー(stringency)の決定において特に重要であり、よりストリ
ンジェントな条件では、非特異的な結合、即ち完全には一致しない核酸鎖間の対
の結合が減少する。核酸配列間のアニーリングが許容される条件は、当業者によ
って日常的に決定され、ハイブリダイゼーションの間は一定であるが、洗浄過程
は、目的のストリンジェンシーにするためにその最中に条件の変更が可能であり
、ハイブリダイゼーション特異性が得られる。アニーリングが許容される条件は
、例えば、温度が68℃で、約6×SSC、約1%(w/v)のSDS、並びに約100
μg/mlのせん断して変性したサケ精子DNAが含まれる。
【0147】 一般に、ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーは、洗浄過程を行う際
の温度によっても左右される。この洗浄温度は通常、所定のイオン強度とpHに
おける特定の配列の熱融点(Tm)より約5〜20℃低く選択される。このTmは、
(所定のイオン強度とpHの下)標的の配列の50%が完全に一致するプローブ
とハイブリダイズする温度である。Tmを計算する式及び核酸のハイブリダイゼー
ションの条件は、周知であり、Sambrook, J. 他による, 1989, Molecular Cloni ng: A Laboratory Manual , 第2版の1-3巻, Cold Spring Harbor Press, Plainvi
ew NY; 特に2巻の9章に記載されている。
【0148】 本発明のポリヌクレオチド間の高いストリンジェンシーのハイブリダイゼーシ
ョンでは、約0.2x SSC及び約1%のSDSの存在の下、約68℃で1時間の洗浄
過程を含む。別法では、65℃、60℃、55℃、42℃の温度で行う。SSCの
濃度は、約0.1%のSDSが存在の下、約0.1〜2x SSCの範囲である。通常は
、ブロッキング試薬を用いて非特異的なハイブリダイゼーションを阻止する。こ
のようなブロッキング試薬には、例えば、約100〜200μg/mlの切断さ
れ変性したサケ精子DNAが含まれる。約35〜50%v/vの濃度のホルムアミドな
どの有機溶剤が、例えば、RNAとDNAのハイブリダイゼーションなどの特定の場合
に用いることができる。これらの洗浄条件の有用な改変は、当業者には周知であ
る。特に高いストリンジェントな条件でのハイブリダイゼーションは、ヌクレオ
チド間の進化における類似性を示唆し得る。このような類似性は、それらのヌク
レオチド及びコードされたポリペプチドが類似の役割を果たしていることを強く
示唆する。
【0149】 用語「ハイブリダイゼーション複合体」は、相補的な塩基間の水素結合によっ
て、形成された2つの核酸配列の複合体を指す。ハイブリダイゼーション複合体
は溶液中(例えば、CtまたはRt分析)で形成されるか、或いは溶液中の
1つの核酸配列と固体の支持物(例えば、紙、膜、フィルタ、チップ、ピン、或
いはスライドガラス、または細胞及びその核酸を固定する任意の適当な基板)に
固定されたもう一つの核酸配列とで形成され得る。
【0150】 用語「挿入」或いは「付加」は、1個以上のアミノ酸残基或いはヌクレオチド
がそれぞれ追加されるアミノ酸配列或いは核酸配列の変化を指す。
【0151】 「免疫応答」は、炎症性疾患及び外傷、免疫異常、感染症、遺伝病などに関連
する症状を指す。これらの症状は、細胞系及び全身防衛系に影響を及ぼすサイト
カイン及びケモカイン、別の情報伝達分子などの様々な因子の発現という特徴を
もつ。
【0152】 用語「免疫原性断片」は、例えば哺乳動物などの生きている動物に導入すると
、免疫反応を引き起こすDMEのポリペプチド断片またはオリゴペプチド断片を指
す。用語「免疫原性断片」はまた、本明細書で開示するまたは当分野で周知のあ
らゆる抗体生産方法に有用なDMEのポリペプチド断片またはオリゴペプチド断片
を含む。
【0153】 用語「マイクロアレイ」は、基質上の複数のポリヌクレオチド、ポリペプチド
またはその他の化合物の構成を指す。
【0154】 用語「エレメント」または「アレイエレメント」は、マイクロアレイ上に固有
の指定された位置を有する、ポリヌクレオチド、ポリペプチドまたはその他の化
合物を指す。
【0155】 用語「調節」は、DMEの活性の変化を指す。例えば、調節によって、DMEのタン
パク質活性、或いは結合特性、またはその他の生物学的特性、機能的特性或いは
免疫学的特性の変化が起こる。
【0156】 用語「核酸」及び「核酸配列」は、ヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、ポリ
ヌクレオチド、或いはそれらの断片を指し、一本鎖若しくは二本鎖であって、セ
ンス鎖或いはアンチセンス鎖であるゲノム起源若しくは合成起源のDNA或いはRNA
、ペプチド核酸(PNA)、任意のDNA様物質、及びRNA様物質である。
【0157】 「機能的に結合した」は、第1の核酸配列と第2の核酸配列が機能的な関係に
ある状態を指す。例えば、プロモーターがコード配列の転写または発現に影響を
与える場合、そのプロモーターはそのコード配列に機能的に結合している。一般
に、機能的に結合したDNA配列は、同じ読み枠内で2つのタンパク質をコードす
る領域が結合する必要がある場合は、非常に近接或いは連続する。
【0158】 「ペプチド核酸(PNA)」は、末端がリシンで終わるアミノ酸残基のペプチド
骨格に結合した、少なくとも約5ヌクレオチドの長さのオリゴヌクレオチドを含
む、アンチセンス分子または抗遺伝子剤を指す。この末端のリシンにより、この
組成物が溶解性となる。PNAは、相補的な一本鎖DNAやRNAに優先的に結合して転
写物の伸長を止め、ポリエチレングリコール化して細胞における寿命を延ばし得
る。
【0159】 DMEの「翻訳後修飾」には、脂質化、グリコシル化、リン酸化、アセチル化、
ラセミ化、蛋白分解性切断及びその他の当分野で既知の修飾を含まれ得る。これ
らのプロセスは、合成或いは生化学的に生じ得る。生化学的修飾は、DMEの酵素
環境に依存し、細胞の種類によって異なり得る。
【0160】 「プローブ」とは、同一配列或いはアレル核酸配列、関連する核酸配列の検出
に用いる、DMEやそれらの相補配列、またはそれらの断片をコードする核酸配列
のことである。プローブは、検出可能な標識またはレポーター分子が結合され単
離されたオリゴヌクレオチドやポリヌクレオチドである。典型的な標識には、放
射性アイソトープ及びリガンド、化学発光試薬、酵素がある。「プライマー」と
は、相補的な塩基対を形成して標的のポリヌクレオチドにアニーリング可能な、
通常はDNAオリゴヌクレオチドである短い核酸である。プライマーがポリヌクレ
オチドにアニーリングした後、あるDNAポリメラーゼ酵素によって、標的のDNA一
本鎖に沿って伸長される。プライマーの組は、例えば、PCR法における核酸配列
の増幅(及び同定)に用いることができる。
【0161】 本発明に用いられるプローブ及びプライマーは、既知の配列の少なくとも15
の連続するヌクレオチドを含む。特異性を高めるために、より長いプローブ及び
プライマーが用いることも可能である。例えば、開示した核酸配列の連続する少
なくとも20または25、30、40、50、60、70、80、90、100
、150のヌクレオチドを含む。プローブ及びプライマーは、上記した例より相
当長いものも用いることができ、本明細書の表及び図面、配列表に示された任意
の長さのヌクレオチドも用いることができることを理解されたい。
【0162】 プローブ及びプライマーの準備及び使用方法については、例えば、Sambrook,
J.他による、1989年、名称「Molecular Cloning: A Laboratory Manual」、第2
版の1-3巻(Cold Spring Harbor Press, Plainview NY)、またはAusubel, F.M.
他による、1987年、名称「Current Protocols in Molecular Biology」(Greene
Pubi. Assoc. & Wiley-Intersciences, New York NY)、並びに Innis他による、
1990年、名称「PCR Protocols, A Guide to Methods and Applications」(Acade
mic Press, San Diego CA.)を参照されたい。PCR用のプライマーの組は、例えば
、Primer (Version 0.5, 1991, Whitehead Institute for Biomedical Research
, Cambridge MA)などのそのような目的のためのコンピュータプログラムを用い
て、ある既知の配列から引き出すことができる。
【0163】 プライマーとして用いるオリゴヌクレオチドは、当分野で周知のプライマー選
択用のコンピュータプログラムで選択される。例えば、OLIGO 4.06ソフトウェア
は、それぞれが最大100ヌクレオチドまでのPCR用のプライマーの対の選択、
及び32,000塩基までの入力ポリヌクレオチド配列から最大5,000ヌク
レオチドまでの大きなポリヌクレオチド及びオリゴヌクレオチドの分析に有用で
ある。類似のプライマー選択用プログラムには、能力を拡大する追加の機能が含
まれている。例えば、PrimOUプライマー選択プログラム(Genome Center at Uni
versity of Texas South West Medical Center, Dallas TXより入手可能)は、
メガベース配列から特定のプライマーを選択できるため、ゲノムワイドスコープ
(genome-wide scope)におけるプライマーの設計に有用である。Primer3プライ
マー選択プログラム(Whitehead Institute/MIT Center for Genome Research,
Cambridge MA1より入手可能)によって、ユーザーは、プライマー結合部位とし
て避けたい配列を指定できる「非プライミングライブラリ(mispriming libaray
)」を入力できる。また、Primer3は、特にマイクロアレイのオリゴヌクレオチ
ドの選択に有用である(後の方の2つのプライマー選択プログラムのソースコー
ドは、それぞれのソースから得ることができ、ユーザーのニーズを満たすように
変更することもできる)。PrimerGenプログラム(UK Human Genome Mapping Pro
ject Resource Centre, Cambridge UK より入手可能)は、多数の配列アライン
メントに基づいてプライマーを設計するため、アラインメントされた核酸配列の
最も保存された領域或いは最も保存されていない領域のどちらかとハイブリダイ
ズするプライマーを選択することができる。従って、このプログラムは、固有及
び保存されたオリゴヌクレオチドやポリヌクレオチドの断片の同定に有用である
。上記した任意の選択方法で同定されたオリゴヌクレオチドやポリヌクレオチド
の断片は、例えば、PCR法やシークエンシングプライマー、マイクロアレイエレ
メント、或いはサンプルの核酸の完全或いは部分的に相補的なポリヌクレオチド
を同定する特定のプローブなどの、ハイブリダイゼーション技術に有用である。
オリゴヌクレオチドの選択方法は、上記した方法に制限されるものではない。
【0164】 本明細書における「組換え核酸」は天然の配列ではなく、2つ以上の配列の離
れたセグメントを人工的に組み合わせた配列である。この人工の組み合せは、化
学合成によって作られる場合も多いが、前出のSambrook に記載されたような遺
伝子工学の技術を用いて核酸の離れたセグメントを人工的に操作する方がより一
般的である。この「組換え核酸」には、単に核酸の一部の追加または置換、欠失
によって変更された核酸も含む。組換え核酸は、あるプロモーター配列に機能的
に結合した核酸配列を含む場合もある。このような組換え核酸は、例えば、ある
細胞を形質転換するのに用いられるベクターの一部であり得る。
【0165】 別法では、このような組換え核酸は、この組換え核酸を発現する哺乳動物のワ
クチン接種に用いると、その哺乳動物の防衛的な免疫応答を誘発する、ワクシニ
アウイルスに基づいたウイルスベクターの一部であり得る。
【0166】 「調節エレメント」は、通常は遺伝子の非翻訳領域に由来する核酸配列であり
、エンハンサー、プロモーター、イントロン及び5'及び3'の非翻訳領域(UTR
)を含む。調節エレメントは、転写や翻訳、またはRNAの安定性を調節する宿主
またはウイルスタンパク質と相互作用する。
【0167】 「レポーター分子」は、核酸、アミノ酸または抗体の標識に用いられる化学的
または生化学的な部分である。レポーター分子には、放射性核種、酵素、蛍光剤
、化学発光剤、発色剤、基質、補助因子、インヒビター、磁気粒子及びその他の
当分野で既知の成分が含まれる。
【0168】 本明細書において、DNA配列に対する「RNA等価物」とは、基準となるDNA配列
と同じ直鎖の核酸配列から構成されるが、窒素性塩基のチミンがウラシルに置換
され、糖鎖の背骨がデオキシリボースではなくリボースからなる。
【0169】 用語「サンプル」は、その最も広い意味で用いられている。DME、DMEをコード
する核酸、またはその断片を含むと推定されるサンプルは、体液と、細胞からの
抽出物や細胞から単離された染色体や細胞内小器官、膜と、細胞と、溶液中に存
在するまたは基板に固定されたゲノムDNA、RNA、cDNAと、組織と、組織プリント
等を含み得る。
【0170】 用語「特異的結合」及び「特異的に結合する」は、タンパク質若しくはペプチ
ドと、アゴニスト、抗体、アンタゴニスト、小分子、若しくは任意の天然若しく
は合成の結合組成物との間の相互作用を指す。この相互作用は、結合する分子に
よって認識される、例えば、抗原決定基つまりエピトープなどのタンパク質の特
定の構造の存在によって左右される。例えば、抗体がエピトープ「A」に対して
特異的である場合、結合していない標識した「A」及び抗体を含む反応液に、エ
ピトープAを含むポリペプチド或いは結合していない無標識の「A」が存在する
と、抗体と結合する標識Aの量が減少する。
【0171】 用語「実質的に精製された」は、自然の環境から取り除かれてから、単離或い
は分離された核酸配列或いはアミノ酸配列であって、自然に結合している組成物
が少なくとも約60%除去されたものであり、好ましくは約75%以上の除去、
最も好ましいくは90%以上除去されたものを指す。
【0172】 「置換」とは、一つ以上のアミノ酸またはヌクレオチドをそれぞれ別のアミノ
酸またはヌクレオチドに置き換えることである。
【0173】 用語「基板」は、任意の好適な固体或いは半固体の支持物を指し、膜及びフィ
ルタ、チップ、スライド、ウエハ、ファイバー、磁気または非磁気ビード、ゲル
、チューブ、プレート、ポリマー、微小粒子、毛細管が含まれる。この基板には
、壁または塹壕、ピン、チャンネル、細孔などの様々な表面形態があり、そこに
ポリヌクレオチドやポリペプチドが結合する。
【0174】 「転写イメージ」は、所定条件下での所定時間における特定の細胞の種類また
は組織による集合的遺伝子発現のパターンを指す。
【0175】 「形質転換」とは、外来DNAが受容細胞に導入されるプロセスのことである。
形質転換は、当分野で周知の種々の方法により、自然或いは人工の条件下で起こ
り、原核宿主細胞若しくは真核宿主細胞の中に外来核酸配列を挿入する任意の周
知の方法によって行うことができる。この形質転換の方法は、形質転換される宿
主細胞のタイプによって選択される。この方法には、バクテリオファージまたは
ウイルス感染、電気穿孔法(エレクトロポレーション)、リポフェクション、及
び微粒子照射が含まれるが、これらに限定されるものではない。「形質転換され
た」細胞には、導入されたDNAが自律的に複製するプラスミドとして或いは宿主
染色体の一部として複製可能である安定的に形質転換された細胞が含まれる。さ
らに、限られた時間に一時的に導入DNA若しくは導入RNAを発現する細胞も含まれ
る。
【0176】 本明細書における「遺伝子組換え生物」とは、当分野で周知の遺伝子組換え技
術などを用いて、人間が生物の1つ以上の細胞に異種の核酸を導入した任意の生
物であり、動物及び植物を含むが、それらに限定されるものではない。微量注入
や組換えウイルスに感染させるなどの慎重な遺伝子操作によって、細胞の前駆体
に直接或いは間接的に異種核酸を細胞に導入する。「遺伝子操作」とは、典型的
な交雑育種やin vitroでの受精ではなく、組換えDNA分子を導入することである
。本発明に従った遺伝子組換え生物には、細菌及びラン藻類、菌類、植物、動物
が含まれる。本発明の単離されたDNAは、当分野で周知の、例えば、感染、形質
移入、形質転換、トランス接合(transconjugation)などの方法によって、宿主
に導入することができる。本発明のDNAをそのような生物に導入する技術は周知
であり、前出のSambrook他(1989)に記載されている。
【0177】 特定の核酸配列の「変異配列」とは、デフォルトパラメータ設定の「BLAST 2
Sequences」ツールVersion 2.0.9 (May-07-1999)を用いるblastnによって、ある
核酸配列のある長さに対する該特定の核酸配列の同一性が、少なくとも40%と
決定された核酸配列のことである。このような核酸の対は、ある長さにおいて、
例えば、少なくとも50%または60%、70%、80%、85%、90%、9
5%、98%、或いはそれ以上の同一性を示し得る。ある変異配列は、例えば、
「アレル」変異配列(上述)または「スプライス」変異配列、「種」変異配列、
「多型」変異配列と表すことができる。スプライス変異配列は基準分子と同一性
が極めて高い可能性があるが、mRNAプロセッシング中のエキソンの択一的スプラ
イシングによってポリヌクレオチドの数が多くなったり、少なくなったりする。
対応するポリペプチドは、基準分子に存在する追加の機能ドメインを有したり、
基準分子に存在するドメインが欠落したりし得る。種変異配列は、種によって異
なるポリヌクレオチド配列である。得られるポリペプチドは、互いに高いアミノ
酸同一性を有する。多型変異配列は、所定の種と種における特定の遺伝子のポリ
ヌクレオチド配列が異なる。多型変異配列はまた、ポリヌクレオチド配列の1つ
のヌクレオチドが異なる「1ヌクレオチド多型」(SNP)も含み得る。SNPの存在
は、例えば、或る集団、病態、病態の性向を示唆し得る。
【0178】 特定のポリペプチド配列の「変異体」とは、デフォルトパラメータ設定の「BL
AST 2 Sequences」ツールVersion 2.0.9 (May-07-1999)を用いるblastpによって
、ある核酸配列のある長さに対する該特定のポリペプチド配列の同一性が、少な
くとも40%と決定されたポリペプチド配列のことである。このようなポリペプ
チドの対は、ある長さにおいて、例えば、少なくとも50%または60%、70
%、80%、85%、90%、95%、98%、或いはそれ以上の同一性を示し
得る。
【0179】 (発明) 本発明は、新規のヒト薬剤代謝酵素(DME)及びDMEをコードするポリヌクレオ
チドの発見に基づき、これらの組成物を利用した自己免疫/炎症の疾患、細胞増
殖異常、発生または発達障害、内分泌障害、眼の疾患、代謝障害、および肝臓の
疾患を含む胃腸疾患の診断、治療、及び予防に関する。
【0180】 表1は、本発明のポリヌクレオチド配列及びポリペプチド配列の識別番号を示
す。各ポリヌクレオチドおよびそれに対応するポリペプチドは、1つのインサイ
トプロジェクト識別番号(Incyte Project ID)に相関する。各ポリペプチド配
列は、記載されているようにポリペプチド配列識別番号(Polypeptide SEQ ID N
O :)およびインサイトポリペプチド配列番号(Incyte Polypeptide ID)の両方
によって示されている。各ポリヌクレオチド配列は、記載されているようにポリ
ヌクレオチド配列識別番号(Polypeptide SEQ ID NO :)およびインサイトポリ
ヌクレオチドコンセンサス配列番号(Incyte Polypeptide ID)の両方によって
示されている。
【0181】 表2は、GenBankタンパク質(genept)データベースにおいてBLAST解析により
同定された本発明のポリペプチドに相同性を有する配列を示す。列1および列2
はそれぞれ、本発明の各ポリペプチドに対するポリペプチド配列識別番号(Poly
peptide SEQ ID NO :)およびそれに対応するインサイトポリペプチド配列番号
(Incyte Polypeptide ID)を示す。列3は、GenBankの最も近い相同体のGenBan
kの識別番号(Genbank ID NO :)を示す。列4は、各ポリペプチドとそのGenBan
k相同体との間の一致を表す確率スコアを示す。列5は、GwnBank相同体のアノテ
ーションを示し、更に該当箇所には適当な引用文も示す。これらを引用すること
を以って本明細書の一部とする。
【0182】 表3は、本発明のポリペプチドの様々な構造的特徴を示す。列1および列2は
それぞれ、本発明の各ポリペプチドのポリペプチド配列識別番号(SEQ ID NO :
)およびそれに対応するインサイトポリペプチド配列番号(Incyte Polypeptide
ID)を示す。列3は、各ポリペプチドのアミノ酸残基数を示す。列4および列
5はそれぞれ、GCG配列分析ソフトウェアパッケージのMOTIFSプログラム(Genet
ics Computer Group, Madison WI)によって決定された、潜在的なリン酸化部位
および潜在的なグリコシル化部位を示す。列6は、シグネチャ(signature)配
列、ドメイン、およびモチーフを含むアミノ酸残基を示す。列7は、タンパク質
の構造/機能の分析のための分析方法を示し、該当箇所にはさらに分析方法に利
用した検索可能なデータベースを示す。
【0183】 表2および表3は共に、本発明のポリペプチドの特性を要約したものであって
、これらの特性は請求するポリヌクレオチドが薬剤代謝酵素であることを立証す
るものである。例えば、SEQ ID NO:9は、M1残基からV512残基においてヒトチト
クロームP450レチノイド代謝タンパク質P450RAI-2 (GenBank ID g8515441)と9
9%の同一性を有することがBasic Local Alignment Search Tool (BLAST)によ
って示された(表2を参照)。BLASの確率スコアは0であり、探しているポリペ
プチド配列アラインメントが偶然の一致により得られる確率を示す。SEQ ID NO:
9はまた、チトクロームP450ドメインを有する。これは、隠れマルコフモデル(H
MM)を基にした保存されたタンパク質ファミリードメインのPFAMデータベースに
おいて、統計的に有意な一致を検索して決定された(表3を参照)。BLIMPS、MO
TIFS、およびPROFILESCAN解析から得られたデータによって、SEQ ID NO:9がチト
クロームP450であることが裏付けられた。SEQ ID NO:1、SEQ ID NO:2、SEQ ID N
O:3、SEQ ID NO:4、SEQ ID NO:5、SEQ ID NO:6、SEQ ID NO:7、SEQ ID NO:8、SE
Q ID NO:10、SEQ ID NO:11、およびSEQ ID NO:12も同様の方法で解析してアノテ
ーションを付けた。SEQ ID NO:1−12の解析のためのアルゴリズムおよびパラメ
ータを表7に記載する。
【0184】 表4に示されているように、本発明の完全長ポリヌクレオチド配列は、cDNA配
列、またはゲノムDNA由来のコード(エキソン)配列、或いはこれらの2種類の
配列のあらゆる組み合わせを用いて組み立てた。列1および列2はそれぞれ、本
発明の各ポリヌクレオチドのポリヌクレオチド配列識別番号(Polynucleotide S
EQ ID NO :)およびそれに対応するインサイトポリヌクレオチドコンセンサス配
列番号(Incyte Polynucleotide ID)を示す。列3は、塩基対における各ポリヌ
クレオチド配列の長さを示す。列4は、例えば、SEQ ID NO:13−24を同定するた
め、或いはSEQ ID NO:13−24と関連するポリヌクレオチド配列とを区別するため
のハイブリダイゼーションまたは増幅技術に有用なポリヌクレオチド配列の断片
を示す。列5は、cDNA配列、ゲノムDNAから推定されるコード配列(エキソン)
、および/またはcDNAおよびゲノムDNAの両方からなる群に対応する識別番号を
示す。これらの配列を用いて本発明の完全長ポリヌクレオチド配列を組み立てた
。表4の列6および列7はそれぞれ、列5の配列に対応するcDNA配列およびゲノ
ム配列の開始ヌクレオチド(5')位置および終了ヌクレオチド(3')位置を示
す。
【0185】 表4の列5に示されている識別番号は、具体的には、例えばインサイトcDNAお
よびそれらに対応するcDNAライブラリの識別番号を示す。例えば、456001R1はイ
ンサイトcDNA配列の識別番号であり、KERANOT01はそれが由来するcDNAライブラ
リの識別番号である。cDNAライブラリが示されていないインサイトcDNAは、プー
ルされているcDNAライブラリ(例えば、70683296V1)に由来する。または、列5
の識別番号は、ポリヌクレオチド配列の組み立てに用いたGenBankのcDNAすなわ
ちEST(例えば、g3250572)の識別番号の場合もある。または、列5の識別番号
は、Genscan分析によって推定されるゲノムDNAのコード領域の場合もある。例え
ば、GNN.g5091644.editは、Genscan推定コード配列の識別番号であって、g50916
44がGenscan分析によって得られたGenBankの配列の識別番号である。このGensca
n推定コード配列は、配列を組み立てる前に編集する場合がある(実施例4を参
照)。または、列5の識別番号は、“exon-stitching”アルゴリズムによってcD
NAおよびGenscan推定エキソンの両方からなる群の場合もある。例えば、FL72561
16_00002はステッチ配列(“stiched“sequence)であって、この7256116はアル
ゴリズムに用いた配列のクラスター識別番号を表し、00002はアルゴリズムによ
って推定された数を表す(実施例5を参照)。または、列5の識別番号は、“ex
on-stretching”アルゴリズムによってcDNAおよびGenscan推定エキソンの両方か
らなる群の場合もある(実施例5を参照)。場合によっては、列5に示されてい
る配列の範囲と重複するインサイトcDNAの範囲が得られ、最終的なコンセンサス
配列が決定されるが、それに相当するインサイトcDNAの識別番号は示されていな
い。
【0186】 表5は、インサイトcDNA配列を用いて組み立てられたこれらの完全長ポリヌク
レオチド配列が由来する代表的なcDNAライブラリを示す。代表的なcDNAライブラ
リとは、上記ポリヌクレオチド配列の組み立ておよび決定に用いられたインサイ
トcDNA配列を最も多く含むインサイトcDNAライブラリのことである。表5に示さ
れているcDNAライブラリを作製するために用いた組織およびベクターが表6に示
されている。
【0187】 本発明はまた、DMEの変異体も含む。好適なDMEの変異体は、DMEの機能的或い
は構造的特徴の少なくともどちらか一方を有し、かつDMEアミノ酸配列に対して
少なくとも約80%のアミノ酸配列同一性、或いは少なくとも約90%のアミノ
酸配列同一性、更には少なくとも約95%のアミノ酸配列同一性を有する。
【0188】 本発明はまた、DMEをコードするポリヌクレオチドを提供する。特定の実施例
において、本発明は、DMEをコードするSEQ ID NO:13−24からなる一群から選択
された配列を含むポリヌクレオチド配列を提供する。配列表に示したSEQ ID NO:
13−24のポリヌクレオチド配列は、窒素系塩基のチミンがウラシルに置換され、
糖鎖の背骨がデオキシリボースではなくリボースからなる等価RNA配列を含む。
【0189】 本発明はまた、DMEをコードするポリヌクレオチド配列の変異配列を含む。詳
細には、このようなポリヌクレオチド配列の変異配列は、DMEをコードするポリ
ヌクレオチド配列と少なくとも70%のポリヌクレオチド配列同一性、或いは少
なくとも85%のポリヌクレオチド配列同一性、更には少なくとも95%ものポ
リヌクレオチド配列同一性を有する。本発明の特定の実施形態は、SEQ ID NO:13
−24からなる一群から選択された核酸配列と少なくとも70%のポリヌクレオチ
ド配列同一性、或いは少なくとも85%のポリヌクレオチド配列同一性、更には
少なくとも95%ものポリヌクレオチド配列同一性を有するSEQ ID NO:13−24か
らなる一群から選択された配列を含むポリヌクレオチド配列の変異配列を提供す
る。上記したポリヌクレオチド変異配列は何れも、DMEの機能的或いは構造的特
徴の少なくとも1つを有するアミノ酸配列をコードする。
【0190】 遺伝暗号の縮重により作り出され得るDMEをコードする種々のポリヌクレオチ
ド配列には、既知の自然発生する任意の遺伝子のポリヌクレオチド配列と最小の
類似性しか有しないものも含まれることを、当業者は理解するであろう。したが
って本発明には、可能なコドン選択に基づいた組み合わせの選択によって作り出
され得る可能なポリヌクレオチド配列の変異の全てが含まれ得る。これらの組み
合わせは、天然のDMEのポリヌクレオチド配列に適用される標準的なトリプレッ
ト遺伝暗号を基に作られ、全ての変異が明確に開示されていると考慮する。
【0191】 DMEをコードするヌクレオチド配列及びその変異配列は一般に、好適に選択さ
れたストリンジェントな条件下で、天然のDMEのヌクレオチド配列とハイブリダ
イズ可能であるが、非天然のコドンを含めるなどの実質的に異なった使い方のコ
ドンを有するDME或いはその誘導体をコードするヌクレオチド配列を作ることは
有利となり得る。特定のコドンが宿主によって利用される頻度に基づいてコドン
を選択して、ペプチドの発現が特定の真核細胞または原核宿主に発生する割合を
高めることが可能である。コードされたアミノ酸配列を変えないで、DME及びそ
の誘導体をコードするヌクレオチド配列を実質的に変更する別の理由は、天然の
配列から作られる転写物より例えば長い半減期など好ましい特性を備えるRNA転
写物を作ることにある。
【0192】 本発明はまた、DME及びその誘導体をコードするDNA配列またはそれらの断片を
完全に合成化学によって作り出すことも含む。作製後にこの合成配列を、当分野
で良く知られた試薬を用いて、種々の入手可能な発現ベクター及び細胞系の何れ
の中にも挿入可能である。更に、合成化学を用いて、DMEまたはその任意の断片
をコードする配列の中に突然変異を導入することも可能である。
【0193】 更に本発明には、種々のストリンジェントな条件下で、請求項に記載されたポ
リヌクレオチド配列、特に、SEQ ID NO:13−24及びそれらの断片とハイブリダイ
ズ可能なポリヌクレオチド配列が含まれる(例えば、Wahl, G.M.及びS.L. Berger
(1987) Methods Enzymol. 152:399-407; and Kimmel. A.R. (1987) Methods En
zymol. 152:507-511.を参照)。アニーリング及び洗浄条件を含むハイブリダイゼ
ーションの条件は、「定義」に記載されている。
【0194】 当分野で周知のDNAのシークエンシング方法を用いて、本発明の何れの実施例
も実行可能である。この方法には、例えばDNAポリメラーゼIのクレノウ断片、SE
QUENASE(US Biochemical, Cleveland OH)、Taqポリメラーゼ(Applied Biosys
tems)、熱安定性T7ポリメラーゼ(Amersham, Pharmacia Biotech Piscataway N
J)、或いはELONGASE増幅システム(Life Technologies, Gaithersburg MD)にみ
られるような校正エキソヌクレアーゼとポリメラーゼとの組み合わせなどの酵素
が用いられる。好ましくは、MICROLAB2200液体転移システム(Hamilton, Reno,
NV)、PTC200 Thermal Cycler200(MJ Research, Watertown MA)及びABI CATAL
YST 800 (PE Biosystems) などの装置を用いて配列の準備を自動化する。次に、
ABI 373或いは377 DNAシークエンシングシステム(PE Biosystems)、MEGABACE 10
00 DNAシークエンシングシステム(Molecular Dynamics. Sunnyvale CA)または当
分野で周知の他の方法を用いてシークエンシングを行う。得られた配列を当分野
で周知の様々なアルゴリズムを用いて分析する(例えば、Ausubel, F.M. (1997) Short Protocols in Molecular Biology , John Wiley & Sons, New York NY, un
it 7.7; Meyers, R.A. (1995) Molecular Biology and Biotechnology, Wiley V
CH, New York NY, pp. 856-853.を参照)。
【0195】 当分野で周知のPCR法をベースにした種々の方法で、部分的なヌクレオチド配
列を利用して、DMEをコードする核酸配列を伸長し、プロモーターや調節エレメ
ントなどの上流にある配列を検出する。例えば制限部位PCR法を利用する1つの
方法では、一般的なプライマー及び入れ子プライマー(nested primer)を用い
てクローニングベクター内のゲノムDNAから未知の配列を増幅する(例えば、Sar
kar, G. (1993) PCR Methods Applic 2:318-322を参照)。逆PCR法を用いる別法
では、広範な方向に伸長して環状化した鋳型から未知の配列を増幅するプライマ
ーを用いる。この鋳型は、既知のゲノム遺伝子座及びその周辺の配列を含む制限
断片に由来する(例えば、Triglia, T.ら(1988)Nucleic Acids Res 16:8186を
参照)。キャプチャPCR法を用いる第3の方法は、ヒト及び酵母菌人工染色体DNA
の既知の配列に隣接するDNA断片のPCR増幅を含む(例えば、Lagerstrom, M.他(
1991)PCR Methods Applic 1:111-119を参照)。この方法では、多数の制限酵素
による消化及びライゲ−ションを用いて、PCRを行う前に未知の配列の領域の中
に組換え二本鎖配列を挿入することが可能である。また、当分野で周知の別の方
法を用いて未知の配列を得ることも可能である。(例えば、Parker, J.D. 他 (19
91)Nucleic Acids Res. 19:3055-3060を参照)。更に、PCR、ネスト化プライマー
、PROMOTERFINDERライブラリ(Clontech, Palo Alto CA)を用いれば、ゲノムDN
A内の歩行が可能である。この方法ではライブラリをスクリーニングする必要が
なく、イントロン/エキソン接合部を探すのに有用である。全てのPCR法をベー
スにした方法では、プライマーは、市販のOLIGO 4.06 Primer Analysis softwar
e(National Biosciences, Plymouth MN)或いは別の好適なプログラムなどを用
いて、長さが22〜30ヌクレオチド、GC含量が50%以上、約68℃〜72
℃の温度で鋳型に対してアニーリングするよう設計される。
【0196】 完全長のcDNAをスクリーニングする場合は、大きなcDNAを含むようにサイズが
選択されたライブラリを用いるのが好ましい。更に、オリゴd(T)ライブラリが完
全な長さのcDNAを産生できない場合は、遺伝子の5'領域を有する配列を含むも
のが多いランダムに初回抗原刺激を受けたライブラリが有用である。ゲノムライ
ブラリは、5'非転写調節領域への配列の伸長に有用であろう。
【0197】 市販のキャピラリー電気泳動システムを用いて、シークエンシングまたはPCR
産物のヌクレオチド配列のサイズの分析、または確認が可能である。詳しくは、
キャピラリーシークエンシングには、電気泳動による分離のための流動性ポリマ
ー、及び4つの異なったヌクレオチドに特異的なレーザーで活性化される蛍光色
素、放出された波長の検出に利用するCCDカメラを使用することが可能である。
出力/光強度は、適切なソフトウェア(例えば、GENOTYPER及びSEQUENCE NAVIGA
TOR、PE Biosystems)を用いて電気信号に変換され、サンプルのローディングか
らコンピュータ分析までのプロセス及び電子データ表示がコンピュータ制御可能
である。キャピラリー電気泳動法は、特定のサンプルに少量しか存在しない場合
もあるDNAの小片のシークエンシングに特に適している。
【0198】 本発明の別の実施例では、DMEをコードするポリヌクレオチド配列またはその
断片を組換えDNA分子にクローニングして、適切な宿主細胞内にDME、その断片ま
たは機能的等価物を発現させることが可能である。遺伝暗号固有の縮重により、
実質的に同じ或いは機能的に等価のアミノ酸配列をコードする別のDNA配列が作
られ得り、これらの配列をDMEのクローン化及び発現に利用可能である。
【0199】 種々の目的でDMEをコードする配列を変えるために、当分野で一般的に知られ
ている方法を用いて、本発明のヌクレオチド配列を組換えることができる。この
目的には、遺伝子産物のクローン化、プロセッシング及び/または発現の調節が
含まれるが、これらに限定されるものではない。ランダムな断片によるDNAの混
合や遺伝子断片と合成オリゴヌクレオチドのPCR再組み立てを用いて、ヌクレオ
チド配列の組換えが可能である。例えば、オリゴヌクレオチド媒介性定方向突然
変異誘発を利用して、新しい制限部位を生成する突然変異の導入、グリコシル化
パターンの変更、コドン選択の変更、スプライスバリアントの作製等が可能であ
る。
【0200】 本発明のヌクレオチドを、MOLECULARBREEDING (Maxygen Inc., Santa Clara C
A; 米国特許第5,837,458号; Chang, C.-C. 他 (1999) Nat. Biotechnol. 17:793
-797; Christians, F.C. 他 (1999) Nat. Biotechnol. 17:259-264; Crameri, A
. 他 (1996) Nat. Biotechnol. 14:315-319)などのDNAシャフリング技術を用い
てシャフリングして、DMEの生物学的または酵素的な活性、或いは他の分子や化
合物と結合する能力などのDMEの生物学的特性を変更或いは改良することができ
る。DNAシャフリングは、PCR法による遺伝子断片の組換えで遺伝子変異体のライ
ブラリを作製するプロセスである。次に、このライブラリを、目的の特性を有す
る遺伝子変異体を同定するために選択或いはスクリーニングする。これらの好ま
しい変異体をプールし、DNAシャフリング及び選択/スクリーニングを繰り返す
。従って、人工的な育種及び急速な分子の進化によって多様な遺伝子が作られる
。例えば、ランダムな位置に変異がある1つの遺伝子の断片を、目的の特性が最
適化するまで、組換え及びスクリーニング、シャフリングを実施することもでき
る。別法では、所定の遺伝子の断片を、同じ或いは異なった種の同じ遺伝子ファ
ミリーの相同な遺伝子の断片で組換え、それによってプロトコルに従った調節可
能な方法で、多数の天然遺伝子の遺伝子多様性を最大にすることができる。
【0201】 別の実施例によれば、DMEをコードする配列は、当分野で周知の化学的方法を
用いて、全体或いは一部が合成可能である(例えば、Caruthers. M.H.ら(1980
)Nucl. Acids Res. Symp. Ser 7:215-223; 及びHorn, T.他(1980)Nucl. Acid
s Res. Symp. Ser.225-232を参照)。別法として、化学的方法を用いてDME自体
またはその断片を合成することが可能である。例えば、ペプチド合成は種々の固
相技術を用いて実行可能である(例えば、Creighton, T. (1984) Proteins. Str uctures and Molecular Properties , WH Freeman, New York NY, pp. 55-60; Ro
berge, J.Y.ら(1995) Science 269:202-204を参照)。また、合成の自動化は例
えばABI 431Aペプチドシンセサイザー(PE Biosystems)を用いて達成し得る。
更にDMEのアミノ酸配列または任意のその一部は、直接的な合成の際の変更、及
び/または化学的方法を用いた他のタンパク質または任意のその一部からの配列
との組み合わせにより、天然のポリペプチド配列を有するポリペプチドまたは変
異体ポリペプチドを作製することが可能である。
【0202】 このペプチドは、分離用高速液体クロマトグラフィー(例えば、Chiez, R.M.
及び F.Z. Regnier (1990)Methods Enzymol. 182:392-421を参照)を用いて実質
的に精製可能である。合成されたペプチドの組成は、アミノ酸分析或いはシーク
エンシングにより確認することができる(例えば、Creighton、前出、pp28-53を
参照)。
【0203】 生物学的に活性なDMEを発現させるために、DMEをコードするヌクレオチド配列
またはその誘導体を好適な発現ベクターに挿入する。この発現ベクターは、好適
な宿主に挿入されたコーディング配列の転写及び翻訳の調節に必要なエレメント
を含む。これらのエレメントには、ベクター及びDMEをコードするポリヌクレオ
チド配列におけるエンハンサー、構成型及び発現誘導型のプロモーター、5'及
び3'の非翻訳領域などの調節配列が含まれる。このようなエレメントは、その
長さ及び特異性が様々である。特定の開始シグナルによって、DMEをコードする
配列のより効果的な翻訳を達成することが可能である。このようなシグナルには
、ATG開始コドン及びコザック配列などの近傍の配列が含まれる。DMEをコー
ドする配列及びその開始コドン、上流の調節配列が好適な発現ベクターに挿入さ
れた場合は、更なる転写調節シグナルや翻訳調節シグナルは必要なくなるであろ
う。しかしながら、コーディング配列或いはその断片のみが挿入された場合は、
インフレームのATG開始コドンを含む外来性の翻訳調節シグナルが発現ベクタ
ーに含まれなければならない。外来性の翻訳要素及び開始コドンは、自然及び合
成の様々なものから得ることが可能である。用いられる特定の宿主細胞系に好適
なエンハンサーを含めることで発現の効率を高めることが可能である。(例えば
、Scharf, D. 他 (1994) Results Probl. Cell Differ. 201−18-162.を参照)。
【0204】 当業者に周知の方法を用いて、DMEをコードする配列、好適な転写及び翻訳調
節エレメントを含む発現ベクターを作製することが可能である。これらの方法に
は、in vitro組換えDNA技術、合成技術、及びin vivo遺伝子組換え技術が含まれ
る。(例えば、 Sambrook, J. 他. (1989) Molecular Cloning. A Laboratory Ma nual , Cold Spring Harbor Press, Plainview NY, 4章及び8章, 及び16-17章;
及び Ausubel, F.M. 他. (1995) Current Protocols in Molecular Biology, Jo
hn Wiley & Sons, New York NY, ch. 9章及び13章1−4章を参照)。
【0205】 種々の発現ベクター/宿主系を利用して、DMEをコードする配列の保持及び発
現が可能である。これらには、限定するものではないが、組換えバクテリオファ
ージ、プラスミド、またはコスミドDNA発現ベクターで形質転換された細菌など
の微生物や、酵母菌発現ベクターで形質転換された酵母菌や、ウイルス発現ベク
ター(例えば、バキュロウイルス)に感染した昆虫細胞系や、ウイルス発現ベク
ター(例えば、カリフラワーモザイクウイルス、CaMV;タバコモザイクウイルス
、TMV)または細菌発現ベクター(例えば、TiまたはpBR322プラスミド)で形質
転換された植物細胞系や、動物細胞系などが含まれる(例えば、前出のSambrook
、前出のAusubel、Van Heeke, G. および S.M. Schuster (1989) J. Biol. Chem
. 264:5503-5509、Engelhard、E.K. 他 (1994) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91
:3224-3227、Sandig, V. 他 (1996) Hum. Gene Ther. 7:1937-1945、Takamatsu,
N. (1987) EMBOJ. 6:307-311; The McGraw Hill Yearbook of Science and Tec hnology (1992) McGraw Hill, New York NY, pp. 191-196、Logan, J. and T. S
henk (1984) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81:3655-3659、Harrington, J.J. 他
(1997) Nat. Genet. 15:345-355を参照)。レトロウイルス、アデノウイルス、
ヘルペスウイルスまたはワクシニアウイルス由来の発現ベクター、または種々の
細菌性プラスミド由来の発現ベクターを用いて、ヌクレオチド配列を標的器官、
組織または細胞集団へ輸送することができる(Di Nicola, M. 他 (1998) Cancer
Gen. Ther. 5(6):350-356、Yu, M. 他(1993) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90(
13):6340-6344、Buller, R.M. 他(1985) Nature 317(6040):813-815; McGregor,
D.P. 他(1994) Mol. Immunol. 31(3):219-226、Verma, I.M. and N. Somia (19
97) Nature 389:239-242等を参照)。本発明は使用される宿主細胞によって限定
されるものではない。
【0206】 細菌系では、多数のクローニングベクター及び発現ベクターが、DMEをコード
するポリヌクレオチド配列の使用目的に応じて選択可能である。例えば、DMEを
コードするポリヌクレオチド配列の日常的なクローニング、サブクローニング、
増殖には、PBLUESCRIPT(Stratagene, La Jolla CA)またはpSPORT1プラスミド(G
IBCO BRL)などの多機能の大腸菌ベクターを用いることができる。ベクターの多
数のクローニング部位にDMEをコードする配列をライゲーションするとlacZ遺伝
子が破壊され、組換え分子を含む形質転換された細菌の同定のための比色スクリ
ーニング法が可能となる。更に、これらのベクターを用いて、クローニングされ
た配列のin vitroでの転写、ジデオキシンスクリーニング、ヘルパーファージに
よる一本鎖の救出、入れ子状態の欠失を作り出すことが可能である(例えば、Van
Heeke, G.及びS.M. Schuster (1989) J. Biol. Chem. 264:5503-5509.を参照)
。例えば、抗体の産生のためなどに多量のDMEが必要な場合は、DMEの発現をハイ
レベルで誘導するベクターが使用できる。例えば、強力に発現を誘発するT5また
はT7バクテリオファージプロモーターを含むベクターを使用できる。
【0207】 DMEの発現に酵母の発現系の使用が可能である。α因子やアルコールオキシダ
ーゼやPGHプロモーターなどの構成型或いは誘導型のプロモーターを含む多種の
ベクターが、酵母菌サッカロミセス−セレビジエまたはPichia pastorisに使用
可能である。更に、このようなベクターは、発現したタンパク質の分泌か細胞内
への保持のどちらかを誘導し、安定した増殖のために宿主ゲノムの中に外来配列
を組み込む。(例えば、Ausubel, 1995,前出、Bitter, G.A. ら (1987) Methods
Enzymol.153:516-544、及びScorer. C. A. ら (1994) Bio/Technology 121−181
-184.を参照)。
【0208】 植物系もDMEの発現に使用可能である。DMEをコードする配列の転写は、例えば
、CaMV由来の35S及び19Sプロモーターなどのウイルスプロモーターが単独で、或
いはTMV(例えば、Coruzzi, G. ら. (1984) EMBO J. 3 : 1671-1680 ; Broglie,
R. ら (1984) Science 224 : 838-843 ; および Winter, J. ら (1991) Result
s Probl. Cell Differ. 17 : 85-105を参照)由来のオメガリーダー配列と組み
合わせて促進される。これらの作製物は、直接のDNA形質転換或いは病原体を介
したトランスフェクションによって、植物細胞の中に導入可能である。(例えば
The McGraw Hill Yearbook of Science and Technology(1992)McGraw Hill
NY, pp.191-196を参照)。
【0209】 哺乳動物細胞では、多種のウイルスベースの発現系が利用され得る。アデノウ
イルスが発現ベクターとして用いられる場合、後発プロモーター及び3連リーダ
ー配列からなるアデノウイルス転写物/翻訳複合体にDMEをコードする配列を結
合し得る。ウイルスのゲノムの非必須のE1またはE3領域への挿入により、感
染した宿主細胞にDMEを発現する生ウイルスを得ることが可能である(Logan, J.
及びShenk, T.(1984)Proc. Natl. Acad. Sci. 81:3655-3659を参照)。さらに
、ラウス肉腫ウイルス(RSV)エンハンサーなどの転写エンハンサーを用いて、
哺乳動物宿主細胞における発現を増大させることが可能である。タンパク質を高
レベルで発現させるために、SV40またはEBVを基にしたベクターを用いることが
可能である。
【0210】 ヒト人工染色体(HAC)を用いて、プラスミドで発現しそれに含まれているも
のより大きなDNAの断片を供給可能である。治療のために約6kb〜10MbのHACs
を作製し、従来の輸送方法(リポソーム、ポリカチオンアミノポリマー、または
ベシクル)で供給する。(例えば、Harrington. J.J. 他 (1997) Nat Genet.15:3
45-355.を参照)。
【0211】 哺乳動物系の組換えタンパク質の長期にわたる産生のためには、株化細胞にお
けるDMEの安定した発現が望ましい。例えば、発現ベクターを用いて、DMEをコー
ドする配列を株化細胞に形質転換することが可能である。このような発現ベクタ
ーは、ウイルス起源の複製及び/または内在性の発現要素や、同じ或いは別のベ
クターの上の選択マーカー遺伝子を含む。ベクターの導入の後、細胞を選択培地
に移す前に、強化培地で約1〜2日の間増殖させる。選択マーカーの目的は選択
的な媒介物に対する抵抗性を与えるとともに、その存在により導入された配列を
確実に発現する細胞の増殖及び回収が可能となる。安定的に形質転換された細胞
の耐性クローンは、その細胞型に好適な組織培養技術を用いて増殖可能である。
【0212】 任意の数の選択系を用いて、形質転換された細胞系を回収することが可能であ
る。選択系には、以下のものに限定はしないが、単純ヘルペスウイルスチミジン
キナーゼ遺伝子及びアデニンホスホリボシルトランスフェラーゼ遺伝子が含まれ
、それぞれtkまたはapr細胞において使用される。(例えば、Wigler, M. 他
(1977) Cell 11:223-232; 及びLowy, I. 他(1980) Cell 22:817-823を参照)。ま
た代謝拮抗物質、抗生物質或いは除草剤への耐性を選択のベースとして用いるこ
とができる。例えばdhfrはメトトレキセートに対する耐性を与え、neoはアミノ
グリコシッドネオマイシン及びG-418に対する耐性を与え、als或いはpatはクロ
ルスルフロン(chlorsulfuron)、ホスフィノトリシンアセチルトランスフェラ
ーゼ(phosphinotricin acetyltransferase)に対する耐性を与える(例えば、Wi
gler, M. 他. (1980) Proc. Natl. Acad. Sci. 77:3567-3570; Colbere-Garapin
, F. 他(1981) J. Mol. Biol. 150:1-14を参照)。さらに選択に利用できる遺伝
子、例えば、代謝のために細胞が必要なものを変えるtrpB及びhisDが文献に記載
されている(例えば、Hartman, S.C.及びR.C. Mulligan(1988)Proc. Natl. Ac
ad. Sci. 85:8047-51を参照)。アニトシアニン、緑色蛍光タンパク質(GFP;Cl
ontech)、βグルクロニダーゼ及びその基質GUS,ルシフェラーゼ及びその基質
ルシフェリンなどの可視マーカーが用いられる。緑色蛍光タンパク質(GFP)(Cl
ontech, Palo Alto, CA)も使用できる。これらのマーカーを用いて、トランスフ
ォーマントを特定するだけでなく、特定のベクター系に起因する一過性或いは安
定したタンパク質発現を定量することが可能である(例えば、Rhodes, C.A.他(
1995)Methods Mol. Biol. 55:121-131を参照)。
【0213】 マーカー遺伝子の発現の存在/不在によって目的の遺伝子の存在が示されても
、その遺伝子の存在及び発現の確認が必要な場合もある。例えば、DMEをコード
する配列がマーカー遺伝子配列の中に挿入された場合、DMEをコードする配列を
含む形質転換された細胞は、マーカー遺伝子機能の欠落により特定可能である。
または、1つのプロモーターの制御下でマーカー遺伝子がDMEをコードする配列
と一列に配置することも可能である。誘導または選択に応答したマーカー遺伝子
の発現は、通常タンデム遺伝子の発現も示す。
【0214】 一般に、DMEをコードする核酸配列を含み、DMEを発現する宿主細胞は、当業者
に周知の種々の方法を用いて特定することが可能である。これらの方法には、DN
A−DNA或いはDNA−RNAハイブリダイゼーションや、PCR法、核酸或いはタンパク
質の検出及び/または数量化のための膜系、溶液ベース、或いはチップベースの
技術を含むタンパク質生物学的試験法または免疫学的アッセイが含まれるが、こ
れらに限定されるものではない。
【0215】 特異的なポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体のどちらかを用いるDM
Eの発現の検出及び計測のための免疫学的な方法は、当分野で周知である。この
ような技法には、酵素に結合したイムノソルベントアッセイ(ELISA)、ラジオ
イムノアッセイ(RIA)、蛍光標示式細胞分取器(FACS)などがある。DME上の2
つの非干渉エピトープに反応するモノクローナル抗体を用いた、2部位のモノク
ローナルベースイムノアッセイ(two-site, monoclonal-based immunoassay)が
好ましいが、競合の結合アッセイも用いることもできる。これらのアッセイ及び
その他のアッセイは、当分野では十分に知られている。(例えば、 Hampton. R.
他.(1990) Serological Methods, a Laboratory Manual. APS Press. St Paul.
MN, Sect. IV; Coligan, J. E. 他Current Protocols in Immunology, Greene P
ub. Associates and Wiley-Interscience, New York. NY; 及びPound, J.D. (19
90) Immunochemical Protocols, Humans Press, Totowa NJ)。
【0216】 種々の標識技術及び結合技術が当業者には周知であり、様々な核酸アッセイお
よびアミノ酸アッセイに用いられ得る。DMEをコードするポリヌクレオチドに関
連する配列を検出するための、標識されたハイブリダイゼーションプローブ或い
はPCRプローブを生成する方法には、オリゴ標識化、ニックトランスレーション
、末端標識化、または標識されたヌクレオチドを用いるPCR増幅が含まれる。別
法として、DMEをコードする配列、またはその任意の断片をmRNAプローブを生成
するためのベクターにクローニングすることも可能である。当分野では周知であ
り市販されているこのようなベクターを、T7,T3,またはSP6などの好適なRNAポ
リメラーゼ及び標識されたヌクレオチドの追加によって、in vitroでのRNAプロ
ーブの合成に用いることができる。これらの方法は、例えば、Amersham Pharmac
ia Biotech及びPromega(Madison WI)、U.S. Biochemical Corp(Cleveland OH
)が市販する種々のキットを用いて行うことができる。容易な検出のために用い
得る好適なレポーター分子或いは標識には、基質、コファクター、インヒビター
、磁気粒子、及び放射性核種、酵素、蛍光剤、化学発光剤、色素産生剤などが含
まれる。
【0217】 DMEをコードするヌクレオチド配列で形質転換された宿主細胞は、細胞培地で
のこのタンパク質の発現及び回収に好適な条件下で培養される。形質転換された
細胞から産生されたタンパク質が分泌されるか細胞内に留まるかは、使用される
その配列及び/またはそのベクターによる。DMEをコードするポリヌクレオチド
を含む発現ベクターは、原核細胞膜及び真核細胞膜を透過するDMEの分泌を誘導
するシグナル配列を含むように設計できることは、当業者には理解されよう。
【0218】 更に、挿入した配列の発現調節能力または発現したタンパク質を所望の形にプ
ロセシングする能力によって宿主細胞株が選択される。このようなポリペプチド
の修飾には、アセチル化、カルボキシル化、グリコシル化、リン酸化、脂質化(
lipidation)、及びアシル化が含まれるが、これらに限定されるものではない。
タンパク質の「プレプロ」または「プロ」形を切断する翻訳後のプロセシングを
利用して、標的タンパク質、折りたたみ及び/または活性を特定することが可能
である。翻訳後の活性のための特定の細胞装置及び特徴のある機構をもつ種種の
宿主細胞(例えば、CHO、HeLa、MDCK、MEK293、WI38)がAmerican Type Culture
Collection(ATCC; Bethesda, MD)より入手可能であり、外来のタンパク質の
正しい修飾及びプロセシングを確実にするために選択される。
【0219】 本発明の別の実施例では、DMEをコードする自然或いは変更された、または組
換えの核酸配列を上記した任意の宿主系の融合タンパク質の翻訳となる異種配列
に結合させる。例えば、市販の抗体によって認識できる異種部分を含むキメラDM
Eタンパク質が、DME活性のインヒビターに対するペプチドライブラリのスクリー
ニングを促進し得る。また、異種タンパク質部分及び異種ペプチド部分が、市販
の親和性基質を用いて融合タンパク質の精製を促進し得る。このような部分には
、グルタチオンSトランスフェラーゼ(GST)、マルトース結合タンパク質(MBP
)、チオレドキシン(Trx)、カルモジュリン結合ペプチド(CBP)、6−His、FL
AG、c−mc、赤血球凝集素(HA)が含まれるが、これらに限定されるものではな
い。GST及びMBP、Trx、CBP、6−Hisによって、固定されたグルタチオン、マルト
ース、フェニルアルシン酸化物(phenylarsine oxide)、カルモジュリン、金属
キレート樹脂のそれぞれで同族の融合タンパク質の精製が可能となる。FLAG、c
−mc、及び赤血球凝集素(HA)によって、これらのエピトープ標識を特異的に認
識する市販のモノクローナル抗体及びポリクローナル抗体を用いた融合タンパク
質の免疫親和性の精製ができる。また、DMEをコードする配列と異種タンパク質
配列との間にあるタンパク質分解切断部位を融合タンパク質が含むように遺伝子
操作すると、DMEが精製の後に異種部分から切断され得る。融合タンパク質の発
現と精製の方法は、Ausubel. (1995、前出 ch 10).に記載されている。市販され
ている様々なキットを用いて、融合タンパク質の発現及び精製を促進できる。
【0220】 本発明の別の実施例では、TNTウサギ網状赤血球可溶化液またはコムギ胚芽抽
出系(Promega)を用いてin vitroで放射能標識したDMEの合成が可能である。これ
らの系は、T7またはT3、SP6プロモーターと機能的に結合したタンパク質をコー
ドする配列の転写と翻訳をつなげる。翻訳は、例えば、35Sメチオニンである放
射能標識されたアミノ酸前駆体の存在の下で起こる。
【0221】 本発明のDMEまたはその断片を用いて、DMEに特異結合する化合物をスクリーニ
ングすることができる。少なくとも1つまたは複数の試験化合物を用いて、DME
への特異的な結合をスクリーニングすることが可能である。試験化合物の例には
、抗体、オリゴヌクレオチド、タンパク質(例えば受容体)または小分子が挙げ
られる。
【0222】 一実施例では、このように同定された化合物は、例えばリガンドやその断片な
どのDMEの天然のリガンド、または天然の基質、構造的または機能的な擬態性ま
たは自然結合パートナーに密接に関連している(Coligan, J.E. 他 (1991) Curr ent Protocols in Immunology 1(2)の5章等を参照)。同様に、化合物は、DMEが
結合する天然受容体、或いは例えばリガンド結合部位などの少なくとも受容体の
ある断片に密接に関連し得る。何れの場合も、既知の技術を用いてこの化合物を
合理的に設計することができる。一実施例では、このような化合物に対するスク
リーニングには、分泌タンパク質或いは細胞膜上のタンパク質の何れか一方とし
てDMEを発現する好適な細胞の作製が含まれる。好適な細胞には、哺乳動物、酵
母、大腸菌からの細胞が含まれる。DMEを発現する細胞またはDMEを含有する細胞
膜断片を試験化合物と接触させて、DMEまたは化合物の何れかの結合、刺激また
は阻害を分析する。
【0223】 あるアッセイは、単に試験化合物をポリペプチドに実験的に結合させ、結合を
、フルオロフォア、放射性同位体、酵素抱合体またはその他の検出可能な標識に
より検出することができる。例えば、このアッセイは、少なくとも1つの試験化
合物を、溶液中の或いは固体支持物に固定されたDMEと結合させるステップと、D
MEとこの化合物との結合を検出するステップを含み得る。別法では、標識された
競合物の存在下での試験化合物の結合の検出及び測定を行うことができる。更に
このアッセイでは、細胞遊離剤、化学ライブラリまたは天然の生成混合物を用い
て実施することができ、試験化合物は、溶液中で遊離させるか固体支持体に固定
させる。
【0224】 本発明のDMEまたはその断片を用いて、DMEの活性を調整する化合物をスクリー
ニングすることが可能である。このような化合物には、アゴニスト、アンタゴニ
スト、或るいは部分的または逆アゴニスト等が含まれる。一実施例では、DMEが
少なくとも1つの試験化合物と結合する、DMEの活性が許容される条件下でアッ
セイを実施し、試験化合物の存在下でのDMEの活性が試験化合物不在下でのDMEの
活性と比較する。試験化合物の存在下でのDMEの活性の変化は、DMEの活性を調整
する化合物の存在を示唆する。別法では、試験化合物をDMEの活性に適した条件
下でDMEを含むin vitroまたは細胞遊離系と結合させてアッセイを実施する。こ
れらアッセイの何れかにおいて、DMEの活性を調整する試験化合物は間接的に結
合することが可能であり、試験化合物と直接接触する必要がない。少なくとも1
つから複数の試験化合物をスクリーニングすることができる。
【0225】 別の実施例では、胚性幹細胞(ES細胞)における相同組換えを用いて動物モデ
ル系内で、DMEまたはその哺乳動物相同体をコードするポリヌクレオチドを「ノ
ックアウト」する。このような技術は当技術分野において周知であり、ヒト疾患
動物モデルの作製に有用である(米国特許第5,175,383号及び第5,767,337号等を
参照)。例えば129/SvJ細胞株等のマウスES細胞は初期のマウス胚に由来し、培
地で増殖させることができる。このES細胞は、ネオマイシンホスホトランスフェ
ラーゼ遺伝子(neo: Capecchi, M.R. (1989) Science 244:1288-1292)等のマー
カー遺伝子で破壊した目的の遺伝子を含むベクターで形質転換する。このベクタ
ーは、相同組換えにより宿主ゲノムの対応する領域に組み込まれる。別法では、
Cre-loxP系を用いて相同組換えを行い、組織特異的または発生段階特異的に目的
遺伝子をノックアウトする(Marth, J.D. (1996) Clin. Invest. 97:1999-2002;
Wagner, K.U. 他 (1997) Nucleic Acids Res. 25:4323-43 30)。形質転換した
ES細胞を同定し、例えばC57BL/6マウス系等から採取したマウス細胞胚盤胞に微
量注入する。胚盤胞を偽妊娠メスに外科的に導入し、得られるキメラ子孫の遺伝
形質を決め、これを交配させてヘテロ接合性系またはホモ接合性系を作製する。
このようにして作製した遺伝子組換え動物は、潜在的な治療薬や毒性薬剤で検査
することができる。
【0226】 DMEをコードするポリヌクレオチドをin vitroでヒト胚盤胞由来のES細胞にお
いて操作することが可能である。ヒトES細胞は、内胚葉、中胚葉及び外胚葉の細
胞の種類を含む少なくとも8つの別々の細胞系統に分化する可能性を有する。こ
れらの細胞系統は、例えば神経細胞、造血系統及び心筋細胞に分化する(Thomso
n, J.A. 他 (1998) Science 282:1145-1 147)。
【0227】 DMEをコードするポリヌクレオチドを用いて、ヒト疾患をモデルとした「ノッ
クイン」ヒト化動物(ブタ)または遺伝子組換え動物(マウスまたはラット)を
作製することが可能である。ノックイン技術を用いて、DMEをコードするポリヌ
クレオチドの或る領域を動物ES細胞に注入し、注入した配列を動物細胞ゲノムに
組み込ませる。形質転換細胞を胞胚に注入し、胞胚を上記のように移植する。遺
伝子組換え子孫または近交系について研究し、潜在的な医薬品を用いて処理し、
ヒトの疾患の治療に関する情報を得る。別法では、例えばDMEを乳汁内に分泌す
るなどDMEを過剰に発現する哺乳動物近交系は、便利なタンパク質源となり得る
(Janne, J. 他 (1998) Biotechnol. Annu. Rev. 4:55-74)。
【0228】 (治療) DMEのある領域と薬剤代謝酵素のある領域との間に、例えば配列及びモチーフ
の文脈における化学的及び構造的類似性が存在する。更に、DMEの発現は、助骨
、脳、海馬、気管支、精巣、乳房、リンパ節、肺、および卵巣などの正常な組織
、並びに脳腫瘍、卵巣腫瘍、肺腫瘍、乳房腫瘍、喘息の肺、および病変した乳房
組織などの病変組織密接に関連する。従って、DMEは、自己免疫/炎症の疾患、細
胞増殖異常、発生または発達障害、内分泌障害、眼の疾患、代謝障害、および肝
臓の疾患を含む胃腸疾患においてある役割を果たすと考えられる。DMEの発現若
しくは活性の増大に関連する疾患の治療においては、DMEの発現または活性を低
下させることが望ましい。また、DMEの発現または活性の低下に関連する疾患の
治療においては、DMEの発現または活性を増大させることが望ましい。
【0229】 従って、一実施例において、DMEの発現または活性の低下に関連した疾患の治
療または予防のために、患者にDMEまたはその断片や誘導体を投与することが可
能である。限定するものではないが、このような疾患には自己免疫/炎症の疾患
、細胞増殖異常の異常、発生または発達障害、内分泌障害、眼の疾患、代謝障害
、および肝臓の疾患を含む胃腸疾患が含まれ、自己免疫/炎症の疾患の中には、
炎症及び日光性角化症、後天性免疫不全症候群(AIDS)及び副腎機能不全、成人
呼吸窮迫症候群、アレルギー、強直性脊椎炎、アミロイド症、貧血、喘息、アテ
ローム性動脈硬化症、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性甲状腺炎、自己免疫性
多腺性内分泌カンジダ性外胚葉ジストロフィー(APECED)、気管支炎、胆嚢炎、
接触皮膚炎、クローン病、アトピー性皮膚炎、皮膚筋炎、糖尿病、肺気腫、リン
パ球毒素性一時性リンパ球減少症、赤芽球症、結節性紅斑、萎縮性胃炎、糸球体
腎炎、グッドパスチャー症候群、痛風、グレーブス病、橋本甲状腺炎、過好酸球
増加症、過敏性大腸症候群、多発性硬化症、重症筋無力症、心筋または心膜炎症
、骨関節炎、骨粗しょう症、膵炎、乾癬、ライター症候群、リウマチ様関節炎、
強皮症、シェ−グレン症候群、全身性アナフィラキシー、全身性エリテマトーデ
ス、全身性硬化症、原発性血小板血症、血小板減少症、潰瘍性大腸炎、ウェルナ
ー症候群、癌合併症、血液透析、体外循環、ウイルス感染症、細菌感染症、真菌
感染症、寄生虫感染症、原虫感染症、蠕虫感染症、外傷が含まれ、細胞増殖異常
の中には日光性角化症及びアテローム性動脈硬化、滑液包炎、硬変、肝炎、混合
型結合組織病(MCTD)、骨髄線維症、発作性夜間ヘモグロビン尿症、真性多血症
、乾癬、原発性血小板血症、並びに腺癌及び白血病、リンパ腫、黒色腫、骨髄腫
、肉腫、及び奇形癌、具体的には、副腎、膀胱、骨、骨髄、脳、乳房、頚部、胆
嚢、神経節、消化管、心臓、腎臓、肝臓、肺、筋肉、卵巣、膵臓、副甲状腺、陰
茎、前立腺、唾液腺、皮膚、脾臓、精巣、胸腺、甲状腺、子宮の癌が含まれ、発
生または発達障害の中には尿細管性アシドーシス、貧血、クッシング症候群、軟
骨形成不全性小人症、デュシェンヌ‐ベッカー型筋ジストロフィー、癲癇、性腺
形成異常、WAGR症候群(ウィルムス腫瘍、無虹彩症、尿生殖器異常、精神薄弱)
、スミス‐マジェニス症候群(Smith- Magenis syndrome)、脊髄形成異常症候群
、遺伝性粘膜上皮異形成、遺伝性角皮症、シャルコー‐マリー‐ツース病及び神
経線維腫症などの遺伝性神経病、甲状腺機能低下症、水頭症、Syndenham舞踏病(
Syndenham's chorea)及び脳性小児麻痺などの発作障害、脊髄二分裂、無脳症、
頭蓋脊椎披裂、先天性緑内障、白内障、感覚神経性聴力損失が含まれ、内分泌障
害の中には原発脳腫瘍及び腺腫、妊娠性梗塞、下垂体切除、動脈瘤、血管奇形、
血栓症、感染症、免疫異常、頭部外傷による合併症などの病変から起こる視床下
部及び下垂体の障害と、性機能低下及びシーハン症候群、尿崩症、カルマン病、
ハンド‐シュラー‐クリスチャン病、レトラ‐シヴェ病、サルコイドーシス、エ
ンプティセラ症候群、小人症を含む下垂体低下に関連した障害と、良性線種によ
って発生しやすい不適当抗利尿ホルモン(ADH)分泌症候群(SIADH)及び先端巨
大症、巨人症を含む下垂体亢進に関連した障害と、甲状腺腫及び粘液水腫、細菌
感染性急性甲状腺炎、ウイルス感染性亜急性甲状腺炎、自己免疫性甲状腺炎(橋
本病)、クレチン病を含む甲状腺機能低下症に関連した障害と、甲状腺中毒症及
びその様々な型、グレーブス病、前脛骨粘液水腫、中毒性多結節性甲状腺腫、甲
状腺癌、プランマー病を含む甲状腺機能亢進症と、Conn病(chronic hypercalem
ia)を含む副甲状腺機能亢進症と、I型及びII型糖尿病及び合併症などの膵臓疾
患と、過形成及び副腎皮質の癌腫や腺腫、アルカローシスに関連した高血圧、ア
ミロイド症、低カリウム血、クッシング病、リドル症候群、Arnold-Healy-Gordo
n症候群、褐色細胞腫瘍、副腎機能不全などの副腎に関連した障害と、女性の異
常プロラクチン産生及び不妊症、子宮内膜症、月経周期の摂動、多嚢胞性卵巣疾
患、高プロラクチン血症、選択的性腺刺激ホルモン不全(isolated gonadotropi
n deficiency)、無月経、乳汁漏出症、半陰陽、多毛症及び男性化、乳癌、閉経
期後の骨粗鬆症、男性のライジッヒ細胞過形成、男性更年期、生殖細胞無形成症
、ライジッヒ細胞腫瘍に関連した性機能亢進、アンドロゲン受容体の欠如に関連
したアンドロゲン耐性、5α−還元酵素症候群、女性乳房症などの生殖腺ステロ
イドホルモンに関連した疾患とが含まれ、眼の疾患の中には、結膜炎、乾性角結
膜炎、角膜炎、上強膜炎、虹彩炎、後部ブドウ膜炎、緑内障、一過性黒内障、虚
血性視神経症、視神経炎、レーバー遺伝性視神経症、硝子体剥離、網膜剥離、白
内障、黄斑変性症、中心性漿液性脈絡網膜症、色素性網膜炎、脈絡膜黒色腫、球
後腫瘍、交叉腫瘍(chiasmal tumor)が含まれ、代謝障害の中には、副腎機能不
全、脳腱黄色腫症、副腎皮質過形成、クマリン耐性、嚢胞性線維症、糖尿病、脂
肪性肝硬変、果糖-1,6-ジホスファターゼ欠損症、ガラクトース血症、甲状腺腫
、グルカゴノーマ、糖原病、遺伝性果糖不耐症、アドレナリン過剰症、腎臟不全
症、上皮小体亢進症、副甲状腺低下症、高コレステロール血症、甲状腺亢進症、
低血糖症、甲状腺低下症、高脂血症、脂質ミオパシー(lipid myopathies)、脂
肪異栄養症、リソソーム蓄積症、メンケス症候群、後角症候群(occipital horn
syndrome)、マンノシドーシス、ノイラミニダーゼ欠損症、肥満症、ペントー
ス−フェニルケトン尿症、プソイドビタミンD欠損症、低カルシウム血症、低リ
ン酸血症、思春期後小脳性運動失調症、チロシン血症が含まれ、胃腸疾患の中に
は、嚥下障害、消化性食道炎、食道痙攣、食道狭窄、食道癌、消化不良、消化障
害、胃炎、胃癌、食欲不振、悪心、嘔吐、胃不全麻痺、洞または幽門の浮腫、腹
部アンギナ、胸焼け、胃腸炎、イレウス、腸管感染、消化性潰瘍、胆石症、胆嚢
炎、胆汁うっ滞、膵臓炎、膵臓癌、胆道疾患、肝炎、高ビリルビン血症、遺伝性
高ビリルビン血症、硬変症、肝臓の受動性うっ血、ヘパトーム、感染性大腸炎、
潰瘍性大腸炎、潰瘍性直腸炎、クローン病、ホイップル病、マロリー‐ヴァイス
症候群、結腸癌、結腸閉塞、過敏性腸症候群、短小腸症候群、下痢、便秘、胃腸
出血、及び後天性免疫不全症候群(AIDS)腸症、黄疸、肝性脳症、肝腎症候群、
肝炎、肝脂肪症、血色素症、ウィルソン病、α-1-アンチトリプシン欠損症、ラ
イ症候群、原発性硬化性胆管炎、肝梗塞、門脈循環閉塞及び血栓、小葉中心壊死
、肝臓紫斑病、肝静脈血栓、肝静脈閉塞症、子癇前症、子癇、妊娠性急性肝脂肪
、妊娠性肝臓内胆汁うっ滞と、結節性再生及び腺腫、癌腫を含む肝癌とが含まれ
る。
【0230】 別の実施例では、限定するものではないが上に列記した疾患を含むDMEの発現
または活性の低下に関連した疾患の治療または予防のために、DMEまたはその断
片や誘導体を発現し得るベクターを患者に投与することも可能である。
【0231】 更に別の実施例では、限定するものではないが上に列記した疾患を含むDMEの
発現または活性の低下に関連した疾患の治療または予防のために、実質的に精製
されたDMEを含む組成物を好適な医薬用担体と共に患者に投与することも可能で
ある。
【0232】 更に別の実施例では、限定するものではないが上に列記した疾患を含むDMEの
発現または活性の低下に関連した疾患の治療または予防のために、DMEの活性を
調節するアゴニストを患者に投与することも可能である。
【0233】 更なる実施例では、DMEの発現または活性の増大に関連した疾患の治療または
予防のために、患者にDMEのアンタゴニストを投与することが可能である。限定
するものではないが、このような疾患の例には、上記した自己免疫/炎症の疾患
、細胞増殖異常、発生または発達障害、内分泌障害、眼の疾患、代謝障害、およ
び肝臓の疾患を含む胃腸疾患が含まれる。一実施態様では、DMEと特異的に結合
する抗体が直接アンタゴニストとして、或いはDMEを発現する細胞または組織に
薬剤を運ぶターゲッティング或いは運搬機構として間接的に用いられ得る。
【0234】 別の実施例では、限定するものではないが上に列記した疾患を含むDMEの発現
または活性の増大に関連した疾患の治療または予防のために、DMEをコードする
ポリヌクレオチドの相補配列を発現するベクターを患者に投与することも可能で
ある。
【0235】 別の実施例では、本発明の任意のタンパク質、アンタゴニスト、抗体、アゴニ
スト、相補的な配列、ベクターを別の好適な治療薬と組み合わせて投与すること
もできる。当業者は、従来の医薬原理にしたがって併用療法で用いる好適な治療
薬を選択可能である。治療薬との組み合わせにより、上に列記した種々の疾患の
治療または予防に相乗効果をもたらし得る。この方法を用いて少ない量の各薬剤
で医薬効果をあげることが可能であり、広範囲な副作用の可能性を低減し得る。
【0236】 DMEのアンタゴニストは、当分野で一般的な方法を用いて製造することが可能
である。詳しくは、精製されたDMEを用いて抗体を作ったり、治療薬のライブラ
リをスクリーニングしてDMEと特異的に結合するものを同定が可能である。DMEの
抗体も、当分野で一般的な方法を用いて製造することが可能である。このような
抗体には、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、キメラ抗体、一本鎖、Fa
bフラグメント、及びFab発現ライブラリによって作られたフラグメントが含まれ
る。但し、これらに限定されるものではない。治療用には、中和抗体(即ち、二
量体の形成を阻害するもの)が特に好ましい。
【0237】 抗体の産生のためには、ヤギ、ウサギ、ラット、マウス、ヒト及びその他のも
のを含む種々の宿主が、DMEまたは任意の断片、または免疫原性の特性を備える
そのオリゴペプチドの注入によって免疫化され得る。宿主の種に応じて、種々の
アジュバントを用いて免疫応答を高めることもできる。このようなアジュバント
にはフロイントアジュバント、水酸化アルミニウムなどのミネラルゲルアジュバ
ント、リゾレシチン、プルロニックポリオル、ポリアニオン、ペプチド、油性乳
剤、キーホールリンペットヘモシニアン、及びジニトロフェノールなどの界面活
性剤が含まれるが、これらに限定されるものではない。ヒトに用いられるアジュ
バントの中では、BCG(bacilli Calmette-Guerin)及びCorynebacterium parvum が特に好ましい。
【0238】 DMEに対する抗体を誘発するために用いられるオリゴペプチド、ペプチド、ま
たは断片は、少なくとも約5個のアミノ酸からなり、一般的には約10個以上の
アミノ酸からなるものが好ましい。これらのオリゴペプチド或いはペプチド、ま
たはそれらの断片は、天然のタンパク質のアミノ酸配列の一部と同一であること
が望ましい。DMEアミノ酸の短いストレッチは、KLHなどの別のタンパク質の配列
と融合し、キメラ分子に対する抗体が産生され得る。
【0239】 DMEに対するモノクローナル抗体は、培地内の連続した細胞株によって、抗体
分子を産生する任意の技術を用いて作製することが可能である。これらの技術に
は、ハイブリドーマ技術、ヒトB細胞ハイブリドーマ技術、及びEBV−ハイブリ
ドーマ技術が含まれるが、これらに限定されるものではない(例えば、Kohler,
G. ら. (1975) Nature 256:495-497; Kozbor, D. ら. (1985) .J. Immunol. Met
hods 81−8-42; Cote, R.J. ら. (1983) Proc. Natl. Acad. Sci. 80:2026-2030
; Cole, S.P. ら. (1984) Mol. Cell Biol. 62:109-120を参照)。
【0240】 更に、「キメラ抗体」作製のために発達したヒト抗体遺伝子にマウス抗体遺伝
子をスプライシングするなどの技術が、好適な抗原特異性及び生物学的活性を備
える分子を得るために用いられる(例えば、Morrison, S.L.他. (1984) Proc. N
atl. Acad. Sci. 81−4851−4855; Neuberger, M.S.他. (1984) Nature 312:604
-608; Takeda, S.ら. (1985) Nature 314:452,454を参照)。別法では、当分野
で周知の方法を用いて、一本鎖抗体の産生のための記載された技術を適用して、
DME特異性一本鎖抗体を生成する。関連する特異性を備えるが別のイディオタイ
プの組成の抗体は、ランダムな組み合わせの免疫グロブリンライブラリから鎖混
合によって生成することもできる(例えば、Burton D.R. (1991) Proc. Natl. A
cad. Sci. 88:11120-3を参照)。
【0241】 抗体は、リンパ球集団の中のin vivo産生を誘発することによって、または免
疫グロブリンライブラリのスクリーニングまたは文献に示されているような、高
度に特異的な結合試薬のパネルをスクリーニングすることによって、得ることも
できる(例えば、Orlandi, R. 他. (1989) Proc. Natl. Acad. Sci. 86: 3833-3
837; Winter, G. 他. (1991) Nature 349:293-299を参照)。
【0242】 DMEに対する特異的な結合部位を含む抗体も得ることができる。例えば、この
ような断片には、抗体分子のペプシン消化によって生成されるF(ab')に断片と
、F(ab')に断片のジスルフィド架橋を減じることによって生成されるFab断片
が含まれるが、これらに限定されるものではない。別法では、Fab発現ライブラ
リを作製することによって、所望の特異性とモノクローナルFab断片の迅速且つ
容易な同定が可能となる(例えば、Huse, W.D. ら. (1989) Science 254:1275-1
281を参照)。
【0243】 種々のイムノアッセイを用いてスクリーニングし、所望の特異性を有する抗体
を同定する。隔離された特異性を有するポリクローナル抗体またはモノクローナ
ル抗体の何れかを用いる競合的な結合、または免疫放射線活性のための数々のプ
ロトコルが、当分野では周知である。通常このようなイムノアッセイには、DME
とその特異性抗体との間の複合体調整の計測が含まれる。二つの非干渉性DMEエ
ピトープに対して反応性のモノクローナル抗体を用いる、2部位モノクローナル
ベースのイムノアッセイが一般に利用されるが、競合的結合アッセイも利用する
ことができる(Pound、前出)。
【0244】 ラジオイムノアッセイ技術と共にScatchard分析などの様々な方法を用いて、D
MEに対する抗体の親和性を評価する。親和性を結合定数Kaで表すが、このKaは、
平衡状態の下でDME抗体複合体のモル濃度を遊離抗体と遊離抗原のモル濃度で除
して得られる値である。多数のDMEエピトープに対して親和性が不均一なポリク
ローナル抗体医薬のKaは、DMEに対する抗体の平均親和性または結合活性を表
す。特定のDMEエピトープに単一特異的なモノクローナル抗体医薬のKaは、親
和性の真の測定値を表す。Ka値が10〜1012L/molの高親和性抗体医
薬は、DME抗体複合体が激しい操作に耐えなければならないイムノアッセイに用
いるのが好ましい。Ka値が10〜10L/molの低親和性抗体医薬は、DM
Eが抗体から最終的に活性化状態で解離する必要がある免疫精製(immunopurific
ation)及び類似の処理に用いるのが好ましい。(Catty, D. (1988) Antibodies, Volume I: A Practical Approach . IRL Press, Washington, DC; Liddell, J.
E. and Cryer, A. (1991) A Practical Guide to Monoclonal Antibodies, John
Wiley & Sons, New York NY)。
【0245】 ある下流での適用におけるこのような医薬品の品質及び適性を調べるために、
ポリクローナル抗体医薬の抗体価及び結合活性を更に評価する。例えば、少なく
とも1〜2mg/mlの特異的な抗体、好ましくは5〜10mg/mlの特異的
な抗体を含むポリクローナル抗体医薬は一般に、DME抗体複合体を沈殿させなけ
ればならない処理に用いられる。様々な適用例における抗体の特異性及び抗体価
、結合活性、抗体の品質や使用法の指針は一般に入手可能である。(例えば、Cat
ty, 前出, 及びColigan 他、前出を参照)。
【0246】 本発明の別の実施例では、DMEをコードするポリヌクレオチド、またはその任
意の断片や相補配列が、治療目的で使用することができる。ある実施態様では、
DMEをコードする遺伝子のコーディング領域や調節領域に相補的な配列やアンチ
センス分子(DNA及びRNA、修飾ヌクレオチド)を設計して遺伝子発現を変更する
ことができる。このような技術は当分野では周知であり、センスまたはアンチセ
ンスオリゴヌクレオチドまたは大きな断片が、DMEをコードする配列の制御領域
から、またはコード領域に沿ったさまざまな位置から設計可能である。
【0247】 治療に用いる場合、アンチセンス配列を好適な標的細胞に導入するのに好適な
任意の遺伝子送達系を用いることができる。アンチセンス配列は、転写時に標的
タンパク質をコードする細胞配列の少なくとも一部に相補的な配列を発現する発
現プラスミドの形で細胞内に送達することができる(例えば、Slater, J.E. 他
(1998) J. Allergy Clin. Immunol. 102(3):469-475; and Scanlon, K.J. 他 (1
995)9(13):1288-1296.を参照 )。また、アンチセンス配列は、例えばレトロウ
イルスやアデノ関連ウイルスベクター等のウイルスベクターを用いて細胞内に導
入することもできる(例えば、Miller, A.D. (1990) Blood 76:271; Ausubel,
前出; Uckert, W. and W. Walther (1994) Pharmacol. Ther. 63(3):323-347を
参照)。その他の遺伝送達機構には、リポソーム系、人工的なウイルスエンベロ
ープ、及び当分野で周知のその他の系が含まれる(Rossi, J.J. (1995) Br. Med
. Bull. 51(1):217-225; Boado, R.J.他 (1998) J. Pharm. Sci. 87(11):1308-1
315; and Morris, M.C. 他 (1997) Nucleic Acids Res. 25(14):2730-2736.を参
照)。
【0248】 本発明の別の実施例では、DMEをコードするポリヌクレオチドを、体細胞若し
くは生殖細胞の遺伝子治療に用いることが可能である。遺伝子治療は、(i)遺
伝子欠損症(例えば、X染色体連鎖遺伝(Cavazzana-Calvo, M. 他 (2000) Scie
nce 288:669-672)によって特徴づけられる重度の複合型免疫欠損(SCID)-X1)
、遺伝性アデノシン−デアミナーゼ(ADA)欠損症(Blaese, R.M. 他 (1995) Sci
ence 270:475-480; Bordignon, C. 他 (1995) Science 270:470-475)に関連する
重度の複合型免疫欠損、嚢胞性繊維症(Zabner, J. 他 (1993) Cell 75:207-216
: Crystal, R.G. 他 (1995) Hum. Gene Therapy 6:643-666; Crystal, R.G. 他
. (1995) Hum. Gene Therapy 6:667-703)、サラセミア(thalassamia)、家族
性高コレステロール血症、第VIII因子若しくは第IX因子欠損による血友病(Crys
tal, 35 R.G. (1995) Science 270:404-410; Verma, I.M. and Somia. N. (199
7) Nature 389:239-242)を治療したり、(ii)条件的致死性遺伝子産物(例え
ば、細胞増殖の制御不能による癌の場合)を発現させたり、及び(iii)細胞内
の寄生虫(例えば、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)(Baltimore, D. (1988) Natu
re 335:395-396; Poescbla, E. 他 (1996) Proc. Natl. Acad. Sci. USA. 93:11
395-11399)や、B型若しくはC型肝炎ウイルス(HBV、HCV)、Candida albicans
及びParacoccidioides brasiliensis等の真菌寄生虫、Plasmodium falciparum
Trypanosoma cruzi等の原虫寄生体)に対する防御機能を有するタンパク質を
発現させて行うことができる。DMEの発現若しくは調節に必要な遺伝子の欠損が
疾患を引き起こす場合、導入した細胞の好適な集団からDMEを発現させて、遺伝
子欠損によって起こる症状の発現を緩和することが可能である。
【0249】 本発明の更なる実施例では、DMEの欠損による疾患や異常症は、DMEをコードす
る哺乳動物発現ベクターを作製して、これらのベクターを機械的手段によってDM
E欠損細胞に導入することによって治療する。in vivo或いはex vitroの細胞に用
いる機械的な導入技術には、(i)個々の細胞内へのDNAのマイクロインジェクシ
ョン、(ii)金粒子の打ち込み、(iii)リポソーム仲介性トランスフェクショ
ン、(iv)受容体仲介性遺伝子導入、及び(v)DNAトランスポソン(Morgan, R.
A. and W.F. Anderson (1993) Annu. Rev. Biochem. 62:191-217; Ivics, Z. (1
997) Cell 91:501-510; Boulay, J-L. and H. Recipon (1998) Curr. Opin. Bi
otechnol. 9:445-450)の使用が含まれる。
【0250】 DMEの発現に影響を及ぼし得る発現ベクターには、限定するものではないが、P
CDNA 3.1、EPITAG、PRCCMV2、PREP、PVAXベクター(Invitrogen, Carlsbad CA)、
PCMV-SCRIPT、PCMV-TAG、PEGSH/PERV (Stratagene, La Jolla CA)、PTET-OFF、
PTET-ON、PTRE2、PTRE2-LUC、PTK-HYG (Clontech, Palo Alto CA)が含まれる。D
MEを発現させるために、(i)恒常的に活性なプロモーター(例えば、サイトメ
ガロウイルス(CMV)、ラウス肉腫ウイルス(RSV)、SV40ウイルス、チミジンキ
ナーゼ(TK)、若しくはβ−アクチン遺伝子等)、(ii)誘導性プロモーター(例
えば、市販されているT-REXプラスミド(Invitrogen)に含まれている、テトラ
サイクリン調節性プロモーター(Gossen, M. and H. Bujard (1992) Proc. Natl
. Acad. Sci. U.S.A. 89:5547-5551; Gossen, M. 他 (1995) Science 268:1766-
1769; Rossi, F.M.V. and H.M. Blau (1998) Curr. Opin. Biotechnol. 9:451-4
56))、エクジソン誘導性プロモーター(市販されているプラスミドPVGRXR及び
PINDに含まれている:Invitrogen)、FK506/ラパマイシン誘導性プロモーター
、またはRU486/ミフェプリストーン誘導性プロモーター(Rossi, F.M.V. and H
.M. Blau, 前出)、または(iii)正常な個体に由来するDMEをコードする内在性
遺伝子の天然のプロモーター若しくは組織特異的プロモーターを用いることが可
能である。
【0251】 市販のリポソーム形質転換キット(例えば、Invitrogenが販売しているPERFEC
T LIPID及びTRANSFECTION KIT)を用いれば、当業者は経験にそれほど頼らない
でもポリヌクレオチドを培養中の標的細胞に導入することが可能である。別法で
は、リン酸カルシウム法(Graham. F.L. and A.J. Eb (1973) Virology 52:456-
467)若しくは電気穿孔法 (Neumann, B. 他 (1982) EMBO J. 1:841-845)を用い
て形質転換を行う。初代細胞にDNAを導入するためには、これらの標準的な哺乳
動物トランスフェクションプロトコルを変更する必要がある。
【0252】 本発明の別の実施例では、DMEの発現に関連する遺伝子欠損によって起こる疾
患や異常症は、(i)レトロウイルス末端反復配列(LTR)プロモーター若しくは
独立したプロモーターのコントロール下でDMEをコードするポリヌクレオチドと
、(ii)好適なRNAパッケージングシグナルと、(iii)追加のレトロウイルス・
シス作用性RNA配列及び効率的なベクターの増殖に必要なコーディング配列を伴
うRev応答性エレメント(RRE)とからなるレトロウイルスベクターを作製して治
療することができる。レトロウイルスベクター(例えば、PFB及びPFBNEO)はStr
atagene社から入手可能であり、公表データ(Riviere, I. 他. (1995) Proc. Na
tl. Acad. Sci. U.S.A. 92:6733-6737)に基づいている。上記データを引用する
ことをもって本明細書の一部とする。このベクターは、VSVg(Armentano, D. 他
(1987) J. Virol. 61:1647-1650; Bender, M.A. 他 (1987) J. Virol. 61:1639
-1646; Adam, M.A. and A.D. Miller (1988) J. Virol. 62:3802-3806; Dull, T
. 他 (1998) J. Virol. 72:8463-8471; Zufferey, R. 他 (1998) J. Virol. 72:
9873-9880)等の乱交雑エンベロープタンパク質若しくは標的細胞上の受容体に
対する親和性を有するエンベロープ遺伝子を発現する好適なベクター産生細胞系
(VPCL)において増殖される。RIGGに付与された米国特許第5,910,434号(「Met
hod for obtaining retrovirus packaging cell lines producing high transdu
cing efficiency retroviral supernatant」)において、レトロウイルスパッケ
ージング細胞系を得るための方法が開示されており、引用することをもって本明
細書の一部とする。レトロウイルスベクターの増殖、ある細胞集団(例えば、CD
4+T細胞)の形質導入、並びに形質導入した細胞を患者に戻す方法は、遺伝子治
療の分野では周知であり、多数の文献に記載されている(Ranga, U. 他. (1997)
J. Virol. 71:7020-7029; Bauer, G. 他 (1997) Blood 89:2259-2267; Bonyhad
i, M.L. (1997) J. Virol. 71:4707-4716; Ranga, U. 他 (1998) Proc. Natl. A
cad. Sci. U.S.A. 95:1201-1206: Su, L. (1997) Blood 89:2283-2290)。
【0253】 別法では、アデノウイルス系遺伝子治療の送達系を用いて、DMEの発現に関連
する1或いは複数の遺伝子異常を有する細胞にDMEをコードするポリヌクレオチ
ドを送達する。アデノウイルス系ベクターの作製及びパッケージングは当分野で
は周知である。複製欠損型アデノウイルスベクターは、免疫調節タンパク質をコ
ードする遺伝子を膵臓の無損傷の膵島の中に導入するために可変性であることが
証明された(Csete, M.E. 他. (1995) Transplantation 27:263-268)。使用で
きる可能性のあるアデノウイルスベクターが、米国特許第5,707,618号(「Adeno
virus vectors for gene therapy」)に記載されており、引用することをもって
本明細書の一部とする。アデノウイルスベクターについてはまた、Antinozzi, P
.A. 他 (1999) Annu. Rev. Nutr. 19:511-544; and Verma, I.M. and N. Somia
(1997) Nature 18:389:239-242を参照し、引用することをもって本明細書の一部
とする。
【0254】 別法では、ヘルペス系遺伝子治療の送達系を用いて、DMEの発現に関連する1
或いは複数の遺伝子異常を有する標的細胞にDMEをコードするポリヌクレオチド
を送達する。単純疱疹ウイルス(HSV)系のベクターは、HSV親和性の中枢神経細
胞にDMEを導入する際に特に重要である。ヘルペス系ベクターの作製及びパッケ
ージングは当分野では周知である。複製適格性の単純疱疹ウイルス(HSV)I型系
のベクターは、霊長類の眼にレポーター遺伝子を送達するために用いられてきた
(Liu, X. 他 (1999) Exp. Eye Res.169:385-395)。HSV-1ウイルスベクターの
作製は、DeLucaに付与された米国特許第5,804,413号(Herpes simplex virus swa
ins for gene transfer)に記載されており、引用することをもって本明細書の一
部とする。米国特許第5,804,413号には、ヒト遺伝子治療を含む目的のために、
好適なプロモーターのコントロールの下で、細胞に導入される少なくとも1つの
内在性遺伝子を含むゲノムからなる組換えHSV d92についての記載がある。また
上記特許には、ICP4、ICP27及びICP22のために除去される組換えHSV株の作製及
び使用方法が開示されている。HSVベクターについては、Goins, W.F. 他 (1999)
J. Virol. 73:519-532 and Xu, H. 他 (1994) Dev. Biol. 163:152-161を参照
し、引用することをもって本明細書の一部とする。クローニングされたヘルペス
ウイルス配列の操作や、巨大ヘルペスウイルスのゲノムの異なった部分を含む多
数のプラスミドをトランスフェクトした後の組換えウイルスの継代、ヘルペスウ
イルスの成長及び増殖、並びにヘルペスウイルスの細胞への感染は当分野で周知
の技術である。
【0255】 別法では、αウイルス(正の一本鎖RNAウイルス)ベクターを用いてDMEをコー
ドするポリヌクレオチドを標的細胞に送達する。プロトタイプのαウイルスであ
るセムリキ森林熱ウイルス(Semliki Forest Virus, SFV)の生物学的な研究が
広範に行われ、遺伝子伝達ベクター(gene transfer vector)がSFVゲノムに基
づいていることが分かった(Garoff, H. and K.-J. Li (1998) Cun. Opin. Biot
ech. 9:464-469)。αウイルスRNAの複製中に、通常はウイルスカプシドタンパ
ク質をコードするサブゲノムRNAが作り出される。このサブゲノムRNAが完全長の
ゲノムRNAより高いレベルで複製されるため、酵素活性(例えばプロテアーゼ及
びポリメラーゼ)を有するウイルスタンパク質に対してカプシドタンパク質が過
剰に産生される。同様に、DMEをコードする配列をαウイルスゲノムのカプシド
をコードする領域に導入することによって、ベクター導入細胞において多数のDM
EをコードするRNAが産生され、高いレベルでDMEが合成される。通常はαウイル
ス感染は2〜3日以内の細胞溶解に関係するが、シンドビスウイルス(SIN)の
変異体を有するハムスターの正常な腎細胞(BHK-21)の持続的な感染を確立する
能力は、αウイルスの溶解性の複製が遺伝子治療に適用できるように好適に変更
することが可能であることを示唆している(Dryga, S.A. 他. (1997) Virology
228 :74-83)。様々な宿主にαウイルスを導入できることから、様々なタイプの
細胞にDMEを導入することができる。ある集団における細胞のサブセットの特定
の形質導入には、形質導入する前に細胞のソーティングを必要とする場合がある
。αウイルスの感染性cDNAクローンの操作、αウイルスcDNA及びRNAのトランス
フェクション、並びにαウイルスの感染方法は当分野で周知である。
【0256】 例えば開始部位から約−10から約+10までの転写開始部位に由来するオリ
ゴヌクレオチドを用いて、遺伝子の発現を阻害することが可能である。同様に、
三重らせん塩基対合法を用いて阻害することができる。三重らせん構造は、二重
らせんがポリメラーゼ、転写因子、または調節分子の結合のために十分に広がる
のを阻止するため有用である。三重式DNAを用いる最近の治療の進歩は文献に記
載されている(例えば、Gee, J.E. ら. (1994) In: Huber, B.E. 及び B.I. Car
r, Molecular and Immunologic Approaches, Futura Publishing Co., Mt. Kisc
o, NYを参照)。相補的な配列またはアンチセンス分子もまた、転写物がリボソ
ームに結合するのを阻止することによってmRNAの翻訳を阻止するように設計でき
る。
【0257】 酵素性RNA分子であるリボザイムは、RNAの特異的切断を触媒するために用いる
ことができる。リボザイム作用の機構には、相補的な標的RNAへのリボザイム分
子の配列特異性ハイブリダイゼーションが含まれ、ヌクレオチド鎖切断が続く。
例えば、DMEをコードする配列のヌクレオチド鎖切断を、特異的且つ効果的に触
媒する組換え型のハンマーヘッド型リボザイム分子が含まれる。
【0258】 任意の潜在的RNA標的内の特異的なリボザイム切断部位が、後続の配列GUA
、GUU、及びGUCを含むリボザイム切断部位に対して、標的分子をスキャニ
ングすることによって初めに同定される。一度同定されると、切断部位を含む標
的遺伝子の領域に対応する15個から20個のリボヌクレオチドの短いRNA配列
を、オリゴヌクレオチドの機能を不全にする二次的な構造の特徴について評価す
ることが可能である。候補標的の適合性も、リボヌクレアーゼ保護アッセイを用
いて、相補的なオリゴヌクレオチドとのハイブリダイゼーションの容易性をテス
トすることによって評価することが可能である。
【0259】 本発明の相補的なリボ核酸分子及びリボザイムは、当分野で周知の方法を用い
て、核酸分子の合成のために作製することができる。これらの方法には、固相ホ
スホラミダイト化合物などのオリゴヌクレオチドを化学的に合成する方法が含ま
れる。別法では、RNA分子がin vitro及びin vivoでDMEをコードするDNA配列の転
写によって生成され得る、このようなDNA配列はT7またはSP6等の好適なRNAポリ
メラーゼプロモータを用いて、種々のベクターの中に組み入れることが可能であ
る。別法では、相補的なRNAを構成的または誘導的に合成するこれらのcDNA作製
物は、細胞株、細胞、または組織の中に導入することができる。
【0260】 RNA分子を修飾することによって、細胞内の安定性を高め、半減期を長くする
ことができる。可能な修飾には、分子の5’及び/または3’端部でのフランキ
ング配列の追加、または分子のバックボーン内のホスホジエステル結合の代わり
にホスホロチオネートまたは2’Oメチルを用いる修飾が含まれるが、これらに
限定されるものではない。PNAの生成に固有のこの概念は、内在性のエンドヌク
レアーゼによって容易には認識されないアデニン、シチジン、グアニン、チミン
、及びウリジンのアセチル−、メチル−、チオ−、及び同様の修飾形態だけでな
く、イノシン、キュエオシン(queosine)、及びワイブトシン(wybutosine)な
どの従来のものでない塩基を含めることによって、これらの分子の全体に拡大す
ることができる。
【0261】 本発明の更なる実施例は、DMEをコードするポリヌクレオチドの発現の変化に
有効な化合物をスクリーニングする方法を含む。特定のポリヌクレオチドの発現
の変化に有効な化合物には、限定するものではないが、特定のポリヌクレオチド
配列と相互作用可能な非高分子化学物質、オリゴヌクレオチド、アンチセンスオ
リゴヌクレオチド、三重らせん形成オリゴヌクレオチド、転写因子やその他のポ
リペプチド転写調節因子が含まれる。有効な化合物は、ポリヌクレオチド発現の
インヒビター或いはエンハンサーとして作用し、ポリヌクレオチドの発現を変化
させ得る。従って、DMEの発現または活性の増加に関連する疾患の治療において
は、DMEをコードするポリヌクレオチドの発現を特異的に阻害する化合物が治療
上有用であり、DMEの発現または活性の低下に関連する疾患の治療においては、D
MEをコードするポリヌクレオチドの発現を特異的に促進する化合物が治療上有用
であり得る。
【0262】 特定のポリヌクレオチドの発現の変化の有効性を調べるために、少なくとも1
個から複数個の試験化合物をスクリーニングすることができる。試験化合物は、
有効な化合物の化学修飾を含む当分野で周知の任意の方法で得ることができる。
このような方法は、ポリヌクレオチドの発現を変化させる場合、一般に市販され
ている或いは専売の天然または非天然の化合物ライブラリから選択する場合、標
的ポリヌクレオチドの化学的及び/または構造的特性に基づいて化合物を合理的
にデザインする場合、更に組合せ的にまたは無作為に生成した化合物のライブラ
リから選択する場合に有効である。DMEをコードするポリヌクレオチドを含むサ
ンプルは、少なくとも1つの試験化合物に曝露して得る。サンプルには、例えば
無傷細胞、透過化処理した細胞、in vitro細胞遊離系または再構成生化学系が含
まれ得る。DMEをコードするポリヌクレオチドの発現における変化は、当分野で
周知の任意の方法でアッセイする。通常、DMEをコードするポリヌクレオチドの
配列に相補的なヌクレオチド配列を有するプローブを用いたハイブリダイゼーシ
ョンにより、特定のヌクレオチドの発現を検出する。ハイブリダイゼーションの
収量を定量し、その値が1或いは複数の試験化合物に曝露される及び曝露されな
いポリヌクレオチドの発現の比較における基準となり得る。試験化合物に曝露さ
れるポリヌクレオチドの発現の変化が検出される場合は、ポリヌクレオチドの発
現の変化に試験化合物が有効であることを示している。特定のポリヌクレオチド
の発現の変化に有効な化合物を調べるために、例えばSchizosaccharomyces pomb e 遺伝子発現系(Atkins, D. 他 (1999) 米国特許第5,932,435号、Arndt, G.M.
他 (2000) Nucleic Acids Res. 28:E15)またはHeLa細胞等のヒト細胞株(Clark
e, M.L. 他 (2000) Biochem. Biophys. Res. Commun. 268:8-13)を用いてスク
リーニングする。本発明の特定の実施例は、特異的ポリヌクレオチド配列に対す
るアンチセンス活性を調べるための、各オリゴヌクレオチド(デオキシリボヌク
レオチド、リボヌクレオチド、ペプチド核酸、及び修飾オリゴヌクレオチド)の
組み合わせライブラリのスクリーニングを含む(Bruice, T.W. 他 (1997) 米国
特許第5,686,242号、Bruice, T.W. 他 (2000) 米国特許第6,022,691号)。
【0263】 ベクターを細胞または組織に導入する多数の方法が利用でき、in vivoin vi tro 、及びex vivoでの使用に等しく適している。ex vivoでの治療の場合、患者
から採取された肝細胞の中にベクターを導入して、自家移植で同じ患者に戻すた
めにクローニング増殖される。トランスフェクション、リボソーム注入またはポ
リカチオンアミノポリマーによる運搬は、当分野で周知の方法を用いて実行する
ことができる(例えば、Goldman, C.K. 他. (1997) Nature Biotechnology 15:4
62-66:を参照)。
【0264】 上記したいかなる治療方法も、例えば、ヒト、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ウサ
ギ及びサルなどの哺乳動物を含む、治療が必要な全ての被験者に適用できる。
【0265】 本発明の別の実施例は、上記した全ての治療効果のために、医学上認められる
担体と共に医薬品或いは無菌組成物の投与に関連する。このような組成物は、DM
E、DMEの抗体、擬態、アゴニスト、アンタゴニスト、またはDMEのインヒビター
などからなる。この組成物は、単体で、或いは安定剤などの1種類以上の別の薬
剤と共に、無菌の生体適合性医薬品担体に投与することができる。このような医
薬品担体には、生理食塩水、緩衝食塩水、ブドウ糖、及び水などが含まれるがこ
れらに限定されるものではない。この組成物は、単独或いは薬物またはホルモン
などの別の薬剤と共に投与することができる。
【0266】 本発明に用いられる組成物は、様々な経路を用いて投与するが可能である。こ
の経路には、経口、静脈内、筋肉内、動脈内、骨髄内、クモ膜下、心室内、経皮
、皮下、腹腔内、鼻腔内、腸内、局所、舌下、または直腸が含まれるがこれらに
限定されるものではない。
【0267】 肺投与用の組成物は、液状または乾燥粉末状に調製することができる。このよ
うな組成物は通常、患者が吸入する直前にエアロゾル化する。小分子(例えば、
従来の低分子量有機薬剤)の場合には、速効製剤のエアロゾル輸送が当分野で周
知である。高分子(例えばより大きなペプチドやタンパク質)の場合には、肺の
肺胞領域を介する肺輸送の技術が近年向上したため、インスリン等の薬剤を実際
に血中に輸送することが可能となった(Patton, J.S. 他, 米国特許第5,997,848
号等を参照)。肺輸送は、針注射を用いないで投与できるという点で優れており
、潜在的に有毒な浸透エンハンサーが必要でなくなる。
【0268】 本発明に用いる好適な組成物には、目的を達成するため、効果的な量の活性処
方成分を含む組成物が含まれる。当業者は、十分に自身の能力で効果的な服用量
を決めることができる。
【0269】 DMEまたはその断片を含む高分子を直接細胞内に輸送するべく、特殊な形態に
組成物が調製されるのが好ましい。例えば、細胞不透過性高分子を含むリポソー
ム製剤は、細胞融合及び高分子の細胞内輸送を促進し得る。別法では、DMEまた
はその断片をHIV Tat-1タンパク質の陽イオンN末端部に結合することもできる。
このようにして作製された融合タンパク質は、マウスモデル系の脳を含む全ての
組織の細胞に形質導入されることが確認されている(Schwarze, S.R. 他 (1999)
Science 285:1569-1572)。
【0270】 どのような組成物であっても、治療に効果的な薬用量は、初めは、例えば腫瘍
細胞の腫瘍細胞アッセイで、或いは動物モデルのどちらかで推定することができ
る。通常、動物モデルには、マウス、ウサギ、イヌ、サル、またはブタなどが用
いられる。動物モデルはまた、好適な濃縮範囲及び投与の経路を決めるのに用い
ることができる。このような治療をもとに、ヒトへの有益な薬用量及び投与経路
を決定することができる。
【0271】 医学的に効果的な薬用量は、症状や容態を回復させる、たとえばDMEまたはそ
の断片、DMEの抗体、DMEのアゴニストまたはアンタゴニスト、インヒビターなど
の活性処方成分の量に関連する。薬用有効度及び毒性は、たとえば、ED50(服
用に対して集団の50%に医薬的効果がある用量)またはLD50(服用に対して
集団の50%に致命的である用量)統計を計算するなど、細胞培養または動物実
験における標準的な薬剤手法によって決定することができる。毒性効果と治療効
果との薬用量比は治療指数であり、LD50/ED50と示すことができる。高い治
療指数を示す組成物が望ましい。細胞培養アッセイ及び動物実験から得られたデ
ータが、ヒトへの適用のために、薬用量の範囲を調剤するのに用いられる。この
ような組成物が含まれる薬用量は、毒性を殆ど或いは全く含まず、ED50を含む
血中濃度の範囲であることが望ましい。薬用量は、用いられる投与形態及び患者
の感受性、投与の経路によって、この範囲内で様々である。
【0272】 正確な薬用量は、治療が必要な患者に関する要素を考慮して、実務者によって
決められるであろう。薬用量及び投与は、効果的なレベルの活性成分を与えるた
め或いは所望の効果を維持するために調節される。薬用量の要素として考慮され
るものには、疾患の重症度、患者の一般的な健康状態、年齢、体重、及び患者の
性別、投与の時間及び頻度、併用する薬剤、反応感受性、及び治療に対する応答
が含まれる。作用期間が長い組成物は、三日か四日に一度、一週間に一度、二週
間に一度、特定の製剤の半減期及びクリアランス率によって左右され、投与され
得る。
【0273】 通常の薬用量は投与の経路によって異なるが、約0.1〜100,000μgまでの最大
約1グラムまでである。特定の薬用量及び運搬の方法に関するガイダンスは文献
に記載されており、一般に当分野の実務者はそれを利用することができる。当業
者は、タンパク質またはインヒビターとは異なったヌクレオチドの製剤を利用す
るであろう。同様に、ポリヌクレオチドまたはポリペプチドの運搬は、特定の細
胞、状態、位置などに対して特異的であろう。
【0274】 (診断) 別の実施例では、DMEに特異的に結合する抗体が、DMEの発現によって特徴付け
られる疾患の診断、またはDMEやDMEのアゴニストまたはアンタゴニスト、インヒ
ビターで治療を受けている患者をモニターするためのアッセイに用いられる。診
断に有用な抗体は、治療のところで記載した方法と同じ方法で製剤される。DME
の診断アッセイには、抗体及び標識を用いてヒトの体液或いは細胞や組織から採
取されたものからDMEを検出する方法が含まれる。これらの抗体は、修飾をして
或いはしないで使用され、レポーター分子の共有結合性或いは非共有結合性の接
着によって標識化され得る。当分野で周知の種々のレポーター分子が用いられる
が、その内の幾つかは上記した。
【0275】 DMEを測定するためのELISA,RIA,及びFACSを含む種々のプロトコルは、当分
野では周知であり、変わった或いは異常なレベルのDMEの発現を診断する元とな
るものを提供する。正常或いは標準的なDMEの発現の値は、複合体の形成に適し
た条件の下、正常な哺乳動物、例えばヒトなどの被験者から採取した体液または
細胞とDMEに対する抗体とを結合させることによって決定する。標準的な複合体
形成の量は、測光法(photometric)などの種々の方法で定量され得る。被験者
のDMEの発現の量、制御及び疾患、生検組織からのサンプルが基準値と比較され
る。基準値と被験者との間の偏差が、診断の指標となる。
【0276】 本発明の別の実施例によれば、DMEをコードするポリヌクレオチドを診断のた
めに用いることもできる。用いられるポリヌクレオチドには、オリゴヌクレオチ
ド配列、相補的なRNA及びDNA分子、及びPNAが含まれる。このポリヌクレオチド
を用いて、疾患と相関し得るDMEを発現する生検組織における遺伝子の発現を検
出し定量する。この診断アッセイを用いて、DMEの存在の有無、更に過剰な発現
を調べ、治療中のDME値の調節を監視する。
【0277】 一実施形態では、DMEまたは近縁の分子をコードする遺伝子配列を含むポリヌ
クレオチド配列を検出可能なPCRプローブを用いたハイブリダイゼーションによ
って、DMEをコードする核酸配列を同定することが可能である。例えば5'調節領
域である高度に特異的な領域か、例えば保存されたモチーフであるやや特異性の
低い領域から作られているかのプローブの特異性と、ハイブリダイゼーション或
いは増幅のストリンジェントは、プローブがDMEをコードする自然界の配列のみ
を同定するかどうか、或いはアレルや関連配列コードする自然界の配列のみを同
定するかどうかによって決まるであろう。
【0278】 プローブはまた、関連する配列の検出に利用され、DMEをコードする任意の配
列と少なくとも50%の配列同一性を有し得る。目的の本発明のハイブリダイゼ
ーションプローブには、DNAあるいはRNAが可能であり、SEQ ID NO:13−24の配列
、或いはDME遺伝子のプロモーター、エンハンサー、イントロンを含むゲノム配
列に由来し得る。
【0279】 DMEをコードするDNAに対して特異的なハイブリダイゼーションプローブの作製
方法には、DME及びDME誘導体をコードするポリヌクレオチド配列をmRNAプローブ
の作製のためのベクターにクローニングする方法がある。このようなベクターは
市販されており、当業者には周知であり、好適なRNAポリメラーゼ及び好適な標
識されたヌクレオチドを加えることによって、in vitroでRNAプローブを合成す
るために用いられる。ハイブリダイゼーションプローブは、例えば32P或いは 35 Sなどの放射性核種、或いはアビジン/ビオチン(biotin)結合系によって
プローブに結合されたアルカリホスファターゼなどの酵素標識等の種々のレポー
ターの集団によって標識され得る。
【0280】 DMEをコードするポリヌクレオチド配列を用いて、DMEの発現に関連する疾患を
診断することが可能である。限定するものではないが、このような疾患には自己
免疫/炎症の疾患、細胞増殖異常の異常、発生または発達障害、内分泌障害、眼
の疾患、代謝障害、および肝臓の疾患を含む胃腸疾患が含まれ、自己免疫/炎症
の疾患の中には、炎症及び日光性角化症、後天性免疫不全症候群(AIDS)及び副
腎機能不全、成人呼吸窮迫症候群、アレルギー、強直性脊椎炎、アミロイド症、
貧血、喘息、アテローム性動脈硬化症、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性甲状
腺炎、自己免疫性多腺性内分泌カンジダ性外胚葉ジストロフィー(APECED)、気
管支炎、胆嚢炎、接触皮膚炎、クローン病、アトピー性皮膚炎、皮膚筋炎、糖尿
病、肺気腫、リンパ球毒素性一時性リンパ球減少症、赤芽球症、結節性紅斑、萎
縮性胃炎、糸球体腎炎、グッドパスチャー症候群、痛風、グレーブス病、橋本甲
状腺炎、過好酸球増加症、過敏性大腸症候群、多発性硬化症、重症筋無力症、心
筋または心膜炎症、骨関節炎、骨粗しょう症、膵炎、乾癬、ライター症候群、リ
ウマチ様関節炎、強皮症、シェ−グレン症候群、全身性アナフィラキシー、全身
性エリテマトーデス、全身性硬化症、原発性血小板血症、血小板減少症、潰瘍性
大腸炎、ウェルナー症候群、癌合併症、血液透析、体外循環、ウイルス感染症、
細菌感染症、真菌感染症、寄生虫感染症、原虫感染症、蠕虫感染症、外傷が含ま
れ、細胞増殖異常の中には日光性角化症及びアテローム性動脈硬化、滑液包炎、
硬変、肝炎、混合型結合組織病(MCTD)、骨髄線維症、発作性夜間ヘモグロビン
尿症、真性多血症、乾癬、原発性血小板血症、並びに腺癌及び白血病、リンパ腫
、黒色腫、骨髄腫、肉腫、及び奇形癌、具体的には、副腎、膀胱、骨、骨髄、脳
、乳房、頚部、胆嚢、神経節、消化管、心臓、腎臓、肝臓、肺、筋肉、卵巣、膵
臓、副甲状腺、陰茎、前立腺、唾液腺、皮膚、脾臓、精巣、胸腺、甲状腺、子宮
の癌が含まれ、発生または発達障害の中には尿細管性アシドーシス、貧血、クッ
シング症候群、軟骨形成不全性小人症、デュシェンヌ‐ベッカー型筋ジストロフ
ィー、癲癇、性腺形成異常、WAGR症候群(ウィルムス腫瘍、無虹彩症、尿生殖器
異常、精神薄弱)、スミス‐マジェニス症候群(Smith- Magenis syndrome)、脊
髄形成異常症候群、遺伝性粘膜上皮異形成、遺伝性角皮症、シャルコー‐マリー
‐ツース病及び神経線維腫症などの遺伝性神経病、甲状腺機能低下症、水頭症、
Syndenham舞踏病(Syndenham's chorea)及び脳性小児麻痺などの発作障害、脊髄
二分裂、無脳症、頭蓋脊椎披裂、先天性緑内障、白内障、感覚神経性聴力損失が
含まれ、内分泌障害の中には原発脳腫瘍及び腺腫、妊娠性梗塞、下垂体切除、動
脈瘤、血管奇形、血栓症、感染症、免疫異常、頭部外傷による合併症などの病変
から起こる視床下部及び下垂体の障害と、性機能低下及びシーハン症候群、尿崩
症、カルマン病、ハンド‐シュラー‐クリスチャン病、レトラ‐シヴェ病、サル
コイドーシス、エンプティセラ症候群、小人症を含む下垂体低下に関連した障害
と、良性線種によって発生しやすい不適当抗利尿ホルモン(ADH)分泌症候群(S
IADH)及び先端巨大症、巨人症を含む下垂体亢進に関連した障害と、甲状腺腫及
び粘液水腫、細菌感染性急性甲状腺炎、ウイルス感染性亜急性甲状腺炎、自己免
疫性甲状腺炎(橋本病)、クレチン病を含む甲状腺機能低下症に関連した障害と
、甲状腺中毒症及びその様々な型、グレーブス病、前脛骨粘液水腫、中毒性多結
節性甲状腺腫、甲状腺癌、プランマー病を含む甲状腺機能亢進症と、Conn病(ch
ronic hypercalemia)を含む副甲状腺機能亢進症と、I型及びII型糖尿病及び合
併症などの膵臓疾患と、過形成及び副腎皮質の癌腫や腺腫、アルカローシスに関
連した高血圧、アミロイド症、低カリウム血、クッシング病、リドル症候群、Ar
nold-Healy-Gordon症候群、褐色細胞腫瘍、副腎機能不全などの副腎に関連した
障害と、女性の異常プロラクチン産生及び不妊症、子宮内膜症、月経周期の摂動
、多嚢胞性卵巣疾患、高プロラクチン血症、選択的性腺刺激ホルモン不全(isol
ated gonadotropin deficiency)、無月経、乳汁漏出症、半陰陽、多毛症及び男
性化、乳癌、閉経期後の骨粗鬆症、男性のライジッヒ細胞過形成、男性更年期、
生殖細胞無形成症、ライジッヒ細胞腫瘍に関連した性機能亢進、アンドロゲン受
容体の欠如に関連したアンドロゲン耐性、5α−還元酵素症候群、女性乳房症な
どの生殖腺ステロイドホルモンに関連した疾患とが含まれ、眼の疾患の中には、
結膜炎、乾性角結膜炎、角膜炎、上強膜炎、虹彩炎、後部ブドウ膜炎、緑内障、
一過性黒内障、虚血性視神経症、視神経炎、レーバー遺伝性視神経症、硝子体剥
離、網膜剥離、白内障、黄斑変性症、中心性漿液性脈絡網膜症、色素性網膜炎、
脈絡膜黒色腫、球後腫瘍、交叉腫瘍(chiasmal tumor)が含まれ、代謝障害の中
には、副腎機能不全、脳腱黄色腫症、副腎皮質過形成、クマリン耐性、嚢胞性線
維症、糖尿病、脂肪性肝硬変、果糖-1,6-ジホスファターゼ欠損症、ガラクトー
ス血症、甲状腺腫、グルカゴノーマ、糖原病、遺伝性果糖不耐症、アドレナリン
過剰症、腎臟不全症、上皮小体亢進症、副甲状腺低下症、高コレステロール血症
、甲状腺亢進症、低血糖症、甲状腺低下症、高脂血症、脂質ミオパシー(lipid
myopathies)、脂肪異栄養症、リソソーム蓄積症、メンケス症候群、後角症候群
(occipital horn syndrome)、マンノシドーシス、ノイラミニダーゼ欠損症、
肥満症、ペントース−フェニルケトン尿症、プソイドビタミンD欠損症、低カル
シウム血症、低リン酸血症、思春期後小脳性運動失調症、チロシン血症が含まれ
、胃腸疾患の中には、嚥下障害、消化性食道炎、食道痙攣、食道狭窄、食道癌、
消化不良、消化障害、胃炎、胃癌、食欲不振、悪心、嘔吐、胃不全麻痺、洞また
は幽門の浮腫、腹部アンギナ、胸焼け、胃腸炎、イレウス、腸管感染、消化性潰
瘍、胆石症、胆嚢炎、胆汁うっ滞、膵臓炎、膵臓癌、胆道疾患、肝炎、高ビリル
ビン血症、遺伝性高ビリルビン血症、硬変症、肝臓の受動性うっ血、ヘパトーム
、感染性大腸炎、潰瘍性大腸炎、潰瘍性直腸炎、クローン病、ホイップル病、マ
ロリー‐ヴァイス症候群、結腸癌、結腸閉塞、過敏性腸症候群、短小腸症候群、
下痢、便秘、胃腸出血、及び後天性免疫不全症候群(AIDS)腸症、黄疸、肝性脳
症、肝腎症候群、肝炎、肝脂肪症、血色素症、ウィルソン病、α-1-アンチトリ
プシン欠損症、ライ症候群、原発性硬化性胆管炎、肝梗塞、門脈循環閉塞及び血
栓、小葉中心壊死、肝臓紫斑病、肝静脈血栓、肝静脈閉塞症、子癇前症、子癇、
妊娠性急性肝脂肪、妊娠性肝臓内胆汁うっ滞と、結節性再生及び腺腫、癌腫を含
む肝癌とが含まれる。MADをコードするポリヌクレオチド配列は、サザーン法や
ノーザン法、ドットブロット法、或いはその他の膜系の技術、PCR法、ディップ
スティック(dipstick)、ピン(pin)、ELISA式アッセイ、及び変異DMEの発現
を検出するために患者から採取した体液或いは組織を利用するマイクロアレイに
使用することが可能である。このような質的或いは量的方法は、当分野では周知
である。
【0281】 ある実施態様では、DMEをコードするヌクレオチド配列は、関連する疾患、特
に上記した疾患を検出するアッセイにおいて有用であろう。DMEをコードするヌ
クレオチド配列は、標準的な方法で標識化され、ハイブリダイゼーション複合体
の形成に好適な条件の下、患者から採取した体液或いは組織のサンプルに加える
ことができるであろう。好適な培養期間の後、サンプルを洗浄し、シグナルを定
量して基準値と比較する。患者のサンプルのシグナルの量が、制御サンプルと較
べて著しく変わっている場合は、サンプル内のDMEをコードするヌクレオチド配
列の変異レベルにより、関連する疾患の存在が明らかになる。このようなアッセ
イを用いて、動物実験、臨床試験、或いは個人の患者の治療を監視における、特
定の治療効果を推定することが可能である。
【0282】 DMEの発現に関連する疾患の診断の基準となるものを提供するために、発現の
正常すなわち標準的なプロファイルが確立される。これは、ハイブリダイゼーシ
ョン或いは増幅に好適な条件の下、動物或いはヒトの何れかの正常な被験者から
抽出された体液或いは細胞と、DMEをコードする配列或いはその断片とを結合さ
せることにより達成され得る。標準的なハイブリダイゼーションは、正常な被験
者から得た値と周知の量の実質的に精製されたポリヌクレオチドが用いられる実
験からの値とを比較することによって定量可能である。正常なサンプルから得た
標準的な値を、疾患の症状を示す被験者から得た値と比較可能である。基準値と
被験者の値との偏差を用いて罹患しているかどうを決定する。
【0283】 疾患の存在が確定され、治療プロトコルが開始されると、ハイブリダイゼーシ
ョンアッセイを通常ベースで繰り返して、被験者における発現のレベルが正常な
患者に示される値に近づき始めたかどうかを推定することが可能である。繰り返
し行ったアッセイの結果を、数日から数ヶ月の期間の治療の効果を見るのに用い
ることができる。
【0284】 癌では、個体からの生体組織における異常な量の転写物が、疾患の発生の素因
を示し、また実際に臨床的症状が出る前に疾患を検出する方法を提供することが
可能である。この種のより明確な診断により、医療の専門家が予防方法或いは積
極的な治療法を早くから利用して、癌の発生または進行を防ぐことが可能となる
【0285】 DMEをコードする配列から設計されたオリゴヌクレオチドのさらなる診断への
利用には、PCRの利用が含まれ得る。このようなオリゴマーは、化学的な合成、
酵素を用いた生成、或いはin vitroで生成され得る。オリゴマーは、好ましくは
DMEをコードするポリヌクレオチドの断片、或いはDMEをコードするポリヌクレオ
チドと相補的なポリヌクレオチドの断片を含み、最適な条件の下、特定の遺伝子
や条件を識別するために利用される。また、オリゴマーは、やや緩いストリンジ
ェントな条件の下、近縁のDNA或いはRNA配列の検出及び/または定量のため用い
ることが可能である。
【0286】 或る実施態様において、DMEをコードするポリヌクレオチド配列由来のオリゴ
ヌクレオチドプライマーを用いて、一塩基多型(SNP)を検出し得る。SNPは、ヒ
トの先天性または後天性遺伝病の原因となる場合が多いヌクレオチドの置換、挿
入及び欠失である。限定するものではないが、SNPの検出方法には、一本鎖立体
構造多型(SSCP)及び蛍光SSCP(fSSCP)法が含まれる。SSCPでは、DMEをコード
するポリヌクレオチド配列由来のオリゴヌクレオチドプライマーを用いたポリメ
ラーゼ連鎖反応(PCR)でDNAを増幅する。このDNAは、例えば病変或いは正常な
組織、生検サンプル、体液等に由来し得る。このDNA内のSNPは、一本鎖形状のPC
R産物の2次及び3次構造に差異を生じさせる。この差異は非変性ゲル中でのゲ
ル電気泳動法を用いて検出可能である。fSCCPでは、オリゴヌクレオチドプライ
マーを蛍光標識することによって、DNAシークエンシング装置などのハイスルー
プット機器でアンプリマー(amplimer)の検出をすることが可能になる。更に、
インシリコSNP(in silico SNP:isSNP)と呼ばれる配列データベース分析法は
、共通のコンセンサス配列の構築に用いられる個々の重複するDNA断片の配列を
比較することによって、多型を同定することができる。これらのコンピュータベ
ースの方法は、DNA配列クロマトグラムの自動分析及び統計モデルを用いたシー
クエンシングエラーや研究室でのDNAの調整に起因する配列のばらつきを排除す
る。別法では、例えばハイスループットのMASSARRAYシステム(Sequenom, Inc.,
San Diego CA)を用いた質量分析によりSNPを検出し、特徴付ける。
【0287】 DMEの発現を定量するために用いられ得る方法には、ヌクレオチドの放射標識
或いはビオチン標識、調節核酸の相互増幅(coamplification)、及び標準的な
曲線に結果が加えられたものが含まれる(例えば、Melby, P.C.ら(1993) J. Imm
unol. Methods, 159:235-44;Duplaa, C.ら(1993) Anal. Biochem. 229-236を参
照)。多数のサンプルの定量速度は、ハイスループット型のアッセイを用いるこ
とで速くなるであろう。このアッセイでは、目的のオリゴマーやポリヌクレオチ
ドが様々な希釈液中に含まれ、分光光度法或いは非色応答によって定量が迅速で
ある。
【0288】 更に別の実施例では、本明細書で記載した任意のポリヌクレオチド配列に由来
するオリゴヌクレオチドまたはより長い断片を、マイクロアレイにおける標的と
して用いることができる。マイクロアレイを、上記したように多数の遺伝子の相
対的な発現レベルを同時にモニタリングする転写イメージング技術に用いてるこ
とができる。マイクロアレイはまた、遺伝子変異、突然変異及び多型の同定に用
いることができる。この情報を用いて、遺伝子機能を決定し、疾患の遺伝的根拠
を解明し、疾患を診断し、遺伝子発現に関連する疾病の進行/後退をモニタリン
グし、疾患の治療における治療薬の開発や活性のモニタリングを行うことができ
る。特に、患者にとって最適かつ有効な治療法を選択するために、この情報を用
いて患者の薬理ゲノムプロフィールを作成することができる。例えば、患者の薬
理ゲノムプロフィールに基づいて、患者に対して極めて効果的でありながら副作
用を殆ど示さない治療薬を選択することができる。
【0289】 別の実施例では、DME、DMEの断片、DMEに特異的な抗体をマイクロアレイ上の
エレメントとして用いることができる。マイクロアレイを用いて、上記のように
タンパク質間相互作用、薬剤−標的相互作用及び遺伝子発現プロファイルをモニ
タリング及び測定することが可能である。
【0290】 特定の実施例は、或る組織または細胞型の転写イメージを生成する本発明のポ
リヌクレオチドの使用に関連する。転写イメージは、特定の組織または細胞型に
より遺伝子発現の包括的パターンを表す。包括的遺伝子発現パターンは、所定の
条件下で所定の時間に発現した遺伝子の数及び相対存在量を定量することにより
分析される(Seilliamer 他、米国特許第5,840,484号の“Comparative Gene Tra
nscript Analysis”を参照。この特許に言及することを以って本明細書の一部と
する)。従って、特定の組織または細胞型の転写物または逆転写物の全てに本発
明のポリヌクレオチドまたはその相補配列をハイブリダイズすることにより、転
写イメージが生成され得る。或る実施例では、本発明のポリヌクレオチドまたは
その相補配列がマイクロアレイ上に複数のエレメントのサブセットを構成するハ
イスループット型でハイブリダイゼーションさせる。結果として得られる転写イ
メージは、遺伝子活性のプロファイルとなり得る。
【0291】 転写イメージは、組織、細胞株、生検サンプル、またはその他の生体サンプル
から単離した転写物を用いて生成し得る。従って、転写イメージは、組織または
生検サンプルの場合にはin vivo、または細胞株の場合にはin vitroにおける遺
伝子発現を反映する。
【0292】 本発明のポリヌクレオチドの発現プロファイルを示す転写イメージはまた、合
成化合物または天然化合物の毒性試験のみならず、in vitroモデル系及び薬剤の
前臨床評価に関連して使用され得る。全ての化合物は、作用及び毒性の機構を示
唆する、頻繁に分子フィンガープリント若しくは毒性シグネチャ(signature)
と称されるような特徴的な遺伝子発現パターンを引き起こす(Nuwaysir, E.F.
他 (1999) Mol. Carcinog. 24:15 3-159、Steiner, S. and N.L. Anderson (200
0) Toxicol. Lett. 112-113:467-471、また言及することを以って本明細書の一
部とする)。試験化合物が、毒性を有する既知の化合物のシグネチャと同一のシ
グネチャを有する場合には、毒性特性を共有している可能性が高い。フィンガー
プリンまたはシグネチャが、より多くの遺伝子及び遺伝子ファミリーからの発現
情報を含んでいれば、より有用かつ正確になる。理想としては、発現のゲノム全
域にわたって測定し、最高品質のシグネチャを提供することである。任意の試験
化合物によっても発現が変化しない遺伝子も同様に重要である。それは、これら
の遺伝子の発現レベルを用いて残りの発現データを標準化することができるため
である。標準化処理は、異なる化合物で処理した後の発現データの比較に有用で
ある。毒性シグネチャのエレメントへの遺伝子機能を割り当てることは毒性機構
の解明に役立つが、毒性の予測につながるシグネチャの統計的な一致には遺伝子
機能の知識は必要ではない(例えば2000年2月29日にNational Institute
of Environmental Health Sciencesより発行されたPress Release 00-02を参照
されたい。これについてはhttp://www.niehs.nih.gov/oc/news/toxchip.htmで入
手可能である)。従って、毒性シグネチャを用いる毒性スクリーニングにおいて
、全ての発現した遺伝子配列を含めることは重要でありまた望ましいことである
【0293】 一実施例では、試験化合物の毒性は、核酸を含有する生体サンプルをその試験
化合物で処理して評価する。処理した生体サンプル中で発現した核酸は、本発明
のポリヌクレオチドに特異的な1若しくは複数のプローブでハイブリダイズさせ
、それによって本発明のポリヌクレオチドに対応する転写レベルを定量すること
ができる。処理した生体サンプル中の転写レベルを、非処理生体サンプル中のレ
ベルと比較する。両サンプルの転写レベルの差が、処理されたサンプル中で試験
化合物が引き起こす毒性反応を示唆する。
【0294】 別の実施例は、本発明のポリペプチド配列を用いて組織または細胞型のプロテ
オームを分析することに関連する。「プロテオーム」という用語は、或る特定の
組織または細胞型におけるタンパク質発現の包括的パターンを指す。プロテオー
ムを構成する各タンパク質は、個々に更なる分析をすることができる。プロテオ
ーム発現パターン即ちプロファイルは、所定の条件下で所定の時間に発現したタ
ンパク質の数及びそれらの相対的な存在量を定量することにより分析する。従っ
て、ある細胞のプロテオームのプロファイルは、特定の組織または細胞型のポリ
ペプチドを分離及び分析することにより作成し得る。或る実施例では、このよう
な分離は2次元ゲル電気泳動によって行う。この2次元ゲル電気泳動法では、ま
ず、1次元の等電点電気泳動によりサンプルからタンパク質を分離し、次に、2
次元のドデシル硫酸ナトリウムスラブゲル電気泳動により分子量に従って分離す
る(前出のSteiner and Anderson)。これらのタンパク質は、通常クーマシーブ
ルーまたはシルバーまたは蛍光染色などの染色剤を用いてゲルを染色して、分散
した個別の位置にあるスポットとしてゲル中で可視化される。各タンパク質スポ
ットの光学密度は、通常サンプル中のタンパク質レベルに比例する。異なるサン
プル、例えば試験化合物または治療薬で処理済みまたは未処理のいずれかの生体
サンプルから得られる等位置にあるタンパク質スポットの光学密度を比較し、処
理に関連するタンパク質スポット密度の変化を調べる。スポット内のタンパク質
は、例えば化学的または酵素的に切断した後、質量分析する標準的な方法を用い
て部分的にシークエンシングする。スポット内のタンパク質の同一性は、好適に
は少なくとも5個の連続するアミノ酸残基であるその部分的な配列を、本発明の
ポリペプチド配列と比較することにより決定し得る。場合によっては、決定的な
タンパク質同定のための更なる配列が得られる。
【0295】 プロテオームのプロファイルは、DMEに特異的な抗体を用いてDME発現レベルを
定量することによっても作成可能である。或る実施例では、マイクロアレイ上の
エレメントとして抗体を用い、マイクロアレイをサンプルに曝露して各アレイエ
レメントへのタンパク質結合レベルを検出することによりタンパク質発現レベル
を定量する(Lueking, A. ら. (1999) Anal. Biochern. 270:103-111、Mendoze,
L.G. ら. (1999) Biotechniques 27:778-788)。検出は当分野で既知の様々な
方法で行うことができ、例えば、チオール反応性またはアミノ反応性蛍光化合物
を用いてサンプル中のタンパク質を反応させ、各アレイエレメントにおける蛍光
結合の量を検出し得る。
【0296】 プロテオームレベルでの毒性シグネチャも中毒学的スクリーニングに有用であ
り、転写レベルでの毒性シグネチャと並行して分析するべきである。或る組織に
おける或るタンパク質では、転写物の存在量とタンパク質の存在量との相関性が
低いことがあるため(Anderson, N.L. and J. Seilhamer (1997) Electrophores
is 18:533-537)、プロテオーム毒性シグネチャは、転写イメージにはそれ程影
響しないがプロテオームのプロファイルを変化させる化合物の分析において有用
たり得る。更に、体液中での転写の分析は、mRNAが急速に分解するため困難であ
る。しがたがって、このような場合にはプロテオームのプロファイル作成はより
信頼でき、情報価値がある。
【0297】 別の実施例では、試験化合物の毒性は、タンパク質を含む生体サンプルをその
試験化合物で処理して評価する。処理された生体サンプル中で発現したタンパク
質を分離して、各タンパク質の量が定量できるようにする。各タンパク質の量を
、未処理生体サンプル中の対応するタンパク質の量と比較する。両サンプル中の
タンパク質の量の差は、処理されたサンプル中の試験化合物に対する毒性反応を
示唆する。個々のタンパク質は、それらのアミノ酸残基をシークエンシングし、
これらの部分配列を本発明のポリペプチドと比較することで同定する。
【0298】 別の実施例では、試験化合物の毒性は、タンパク質を含む生体サンプルをその
試験化合物で処理することにより評価する。生体サンプルから得たタンパク質を
、本発明のポリペプチドに特異的な抗体と共にインキュベートする。その抗体に
より認識されたタンパク質の量を定量する。処理された生体サンプル中のタンパ
ク質の量を、未処理生体サンプル中のタンパク質の量と比較する。両サンプルの
タンパク質量の差が、処理サンプル中の試験化合物に対する毒性反応を示唆する
【0299】 当分野で周知の方法でマイクロアレイを準備して使用し、分析する。(例えば
、Brennan, T.M. 他 (1995) 米国特許第5,474,796号;Schena, M. 他 (1996) Pro
c. Natl. Acad. Sci. 93:10614-10619; Baldeschweiler 他(1995) PCT出願番号W
O95/251116; Shalon, D.他 (1995) PCT出願番号WO95/35505; Heller, R.A. 他(1
997) Proc. Natl. Acad. Sci. 94:2150-2155; 及び Heller, M.J. 他 (1997) 米
国特許第5,605,662号を参照)。様々なタイプのマイクロアレイが周知であり、詳
細については、DNA Microarrays: A Practical Approach, M. Schena, ed. (199
9) Oxford University Press, Londonに記載されている。また、この文献を引用
することを以って本明細書の一部とする。
【0300】 本発明の別の実施例ではまた、DMEをコードする核酸配列を用いて、天然のゲ
ノム配列をマッピングするのに有用なハイブリダイゼーションプローブを作製す
ることが可能である。コーディング配列または非コーディング配列の何れかを用
いることができるが、或る例では、コーディング配列より非コード配列が好まし
い。例えば、多重遺伝子ファミリーのメンバー間にコーディング配列が保存され
ていることにより、染色体マッピング時に望ましくない交差ハイブリダイゼーシ
ョンが生じる可能性がある。この配列は、特定の染色体、染色体の特定領域また
は人工の染色体、例えば、ヒト人工染色体(HAC)、酵母人工染色体(YAC)、細
菌人工染色体(BAC)、細菌P1産物、或いは単一染色体cDNAライブラリに対して
マッピングされる(Harrington, J.J. ら (1997) Nat Genet. 15:345-355、Pric
e, C.M. (1993) Blood Rev. 7:127-134、Trask, B.J. (1991) Trends Genet. 7:
149-154等を参照)。一度マッピングすると、本発明の核酸配列を用いて、例え
ば病状の遺伝と特定の染色体領域やまたは制限断片長多型(RFLP)の遺伝とが相
関するような遺伝子連鎖地図を作成可能である(Lander, E.S. and D. Botstein
(1986) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 83:7353-7357を参照)。
【0301】 in sit蛍光ハイブリダイゼーション(FISH)は、他の物理的及び遺伝子地図デ
ータと相関し得る(例えば、Heinz-Ulrich, 他による(1995) in Meyers, 前出,
pp. 965-968を参照)。遺伝子地図データの例は、種々の科学誌あるいはOnline
Mendelian Inheritance in Man(OMIM)のワールドワイドウェブのサイトで見付
けることができる。物理的な染色体地図上のDMEをコードする遺伝子の位置と特
定の疾患との相関性、或いは特定の疾患に対する素因が、このような疾患と関連
するDNA領域の決定に役立つため、更なる位置を決定するクローニングが行われ
る。
【0302】 染色体標本のin sitハイブリダイゼーション、及び確定した染色体マーカーを
用いた結合分析などの物理的マッピング技術を用いて、遺伝子地図を拡張するこ
ともできる。マウスなどの別の哺乳動物の染色体上に遺伝子を配置させることに
より、たとえ正確なヒト染色体の位置が分かっていなくても、関連するマーカー
が明らかになる場合が多い。この情報は、位置クローニング或いは別の遺伝子発
見技術を用いて遺伝的疾患の研究をしている研究者にとって価値がある。疾患や
症候群に関与する1つ或いは複数の遺伝子の位置が、例えば血管拡張性失調症の
11q22-23などの特定の遺伝子領域に遺伝子結合によって大まかに決定されると、
その領域に対するどの配列マッピングも、さらなる調査のための関連する遺伝子
或いは調節遺伝子を表す(例えば、Gatti, R.A.他による(1988)Nature 336:57
7-580を参照)。また、目的の本発明のヌクレオチド配列を用いて、正常者、保
有者、即ち感染者の間の、転位置、反転などによる染色体位置の違いを検出する
こともある。
【0303】 本発明の別の実施例では、DME、その触媒作用断片或いは免疫原断片またはそ
のオリゴペプチドを、種々の任意の薬剤スクリーニング技術における化合物のラ
イブラリのスクリーニングに用いることができる。このようなスクリーニングに
用いる断片は、溶液に遊離、固体支持物に固定、細胞の表面上に保持、或いは細
胞内に存在する。DMEと検査する薬剤との結合による複合体の形成を測定しても
よい。
【0304】 薬剤スクリーニングに用いる別の方法は、目的のタンパク質に対して、好適な
結合親和性を有する化合物のスクリーニング処理能力を高めるために用いられる
(例えば、Geysen,他による(1984) PCT出願番号 WO84/03564を参照)。この方法
では、相当な数の異なる小さな試験用化合物が、プラスチックピン或いは他の基
板の上に合成される。試験用化合物は、DME、或いはその断片と反応してから洗
浄される。次ぎに、結合されたDMEが、当分野で周知の方法で検出される。精製
されたDMEはまた、前記した薬剤をスクリーニングする技術に用いられるプレー
ト上で直接被覆することもできる。別法では、非中和抗体を用いて、ペプチドを
捕らえ、固体支持物に固定することもできる。
【0305】 別の実施例では、DMEと結合可能な中和抗体がDMEと結合するため試験用化合物
と特に競合する、競合的薬剤スクリーニングアッセイを用いることができる。こ
の方法では、抗体が、DMEと1つ以上の抗原決定因子を共有するどのペプチドの
存在も検出する。
【0306】 別の実施例では、発展途上の分子生物学技術にDMEをコードするヌクレオチド
配列を用いて、限定はされないが、現在知られているトリプレット暗号及び特異
的な塩基対相互作用などのヌクレオチド配列の特性に依存する新しい技術を提供
することができる。
【0307】 当分野の技術者であれば、更なる説明がなくても前述の説明だけで最大限に本
発明を利用できるであろう。したがって、以下に記載する特定の好適な実施例は
、例示目的であって本発明を限定するものではない。
【0308】 前述した及び以下に記載する全ての特許出願、特許、刊行物、特に米国特許出
願第60/181,856号、同第60/183,684号、同第60/185,141号、同第60/186,818号、
同第60/188,345号、および同第60/189,997号に言及することをもって本明細書の
一部とする。
【0309】 (実施例) 1 cDNAライブラリの作製 インサイトcDNAはLIFESEQ GOLD データベース (Incyte Genomics, Palo Alto
CA)に含まれているcDNAライブラリに由来し、表4の列5に示されている。組織
の一部をホモジナイズしてグアニジニウムイソチオシアネート溶液に溶解する一
方、この組織の別の一部をホモジナイズしてフェノールに溶解するか、或いはTR
IZOL (Life Technologies)、グアニジニウムイソチオシアネート及びフェノール
の単相溶液などの好適な変性剤の混合液に溶解した。この溶解物を塩化セシウム
において遠心分離によって、或いはクロロホルムで抽出した。イソプロパノール
或いは酢酸ナトリウムのどちらかとエタノール、或いは別の方法でこの溶解物か
らRNAを沈殿させた。
【0310】 RNAの純度を高めるためにRNAのフェノールによる抽出及び沈殿を必要な回数繰
り返した。場合によっては、DNA分解酵素でRNAを処理する。殆どのライブラリで
は、オリゴd(T)連結常磁性粒子(Promega)またはOLIGOTEXラテックス粒子(QIAGEN
. Valencia CA)、OLIGOTEX mRNA精製キット(QIAGEN)を用いてポリ(A+)RNAを
単離した。別法では、POLY(A)PURE mRNA精製キット(Ambion, Austin TX)などの
別のRNA単離キットを用いて組織溶解物から直接単離した。
【0311】 ある場合には、Stratagene社にRNAを提供し、Stratagene社が対応するcDNAラ
イブラリを作製した。そうでない場合は、UNIZAPベクターシステム(Stratagene)
またはSUPERSCRIPT プラスミドシステム(Life Technologies)を用いて当分野で
周知の推奨方法または類似の方法でcDNAを合成してcDNAライブラリを作製した。
(例えば、Ausubel, 1997,前出,ユニット5.1-6.6を参照)。逆転写は、オリゴd(T)
またはランダムプライマーを用いて開始した。合成オリゴヌクレオチドアダプタ
ーを二本鎖cDNAに結合させてから、好適な1つの制限酵素或いは複数の制限酵素
でcDNAを消化した。殆どのライブラリでは、SEPHACRYL S 1000または SEPHAROSE
CL2B、SEPHAROSE CL4Bカラムクロマトグラフィー(Amersham Pharmacia Biotech
)、アガロースゲル電気泳動法によってcDNAの大きさ(300〜1000bp)を選択した
。PBLUESCRIPTプラスミド(Stratagene)またはpSPORT1プラスミド(Life Technolo
gies)、pcDNA2.1プラスミド(Invitrogen Carlsbad CA)、PBK-CMVプラスミド(Str
atagene)、plNCYプラスミド(Incyte Pharmaceuticals, Palo Alto CA)、または
それらの誘導体などの好適なプラスミドのポリリンカーの適合性制限酵素部位に
cDNAを結合させた。この組換えプラスミドを、Stratagene社のXL1-Blue, XL1-BI
ueMRF、SOLR、またはLife Technologies社のDH5αまたはDH 10B、ELECTROMAX DH
10Bを含むコンピテント大腸菌細胞に導入し組み込んだ。
【0312】 2 cDNAクローンの単離 上記実施例1に記載したように得たプラスミドを、UNIZAPベクターシステム(S
tratagene)或いは細胞溶解を利用したin vivo切除によって宿主細胞から回収し
た。MagicまたはWIZARD Minipreps DNA精製システム(Promega)、及びAGTC Minip
rep精製キット(Edge Biosystems, Gaithersburg MD)、QIAGEN社のQIAWELL 8 Pla
smid、QIAWELL 8 Plus Plasmid、QIAWELL 8 Ultra Plasmid 精製システム、REAL
Prep 96プラスミドキットの内の少なくとも1つを用いてプラスミドを精製した
。沈殿させた後、0.1mlの蒸留水に再懸濁して、凍結乾燥して或いは凍結乾
燥しないで4℃で保管した。
【0313】 別法では、ハイスループットの直接結合PCR法によって宿主細胞溶解物からプ
ラスミドDNAを増幅した。(Rao, V.B. (1994) Anal. Biochem. 216:1-14)。宿主
細胞の溶解及び熱サイクリング過程を単一反応混合液で行った。サンプルを処理
してから384−ウェルプレートに移して保管し、増幅したプラスミドDNAの濃
度をPICOGREEN色素(Molecular Probes, Eugene OR)及びFluoroskan II蛍光スキ
ャナ(Labsystems Oy, Helsinki, Finland)を用いて蛍光定量的に測定した。
【0314】 3 シークエンシング及び分析 実施例2に記載したようにプラスミドから回収したインサイトcDNAを、以下に
示すようにシークエンシングした。cDNAのシークエンシング反応は標準的な方法
で行うか、またはHYDRAマイクロディスペンサー(Robbins Scientific)或いはMIC
ROLAB 2200 (Hamilton) 液体移送装置と共にABI CATALYST 800 (PE Biosystems)
サーマルサイクラー或いはPTC-200 thermal cycler (MJ Research)などのハイ
スループット装置を用いて行った。cDNAのシークエンシング反応は、Amersham P
harmacia Biotech社の試薬、またはABI PRISM BIGDYE Terminator cycle sequen
cing ready reactionキット(PE Biosystems)などのABIシークエンシングキット
に含まれる試薬を用いて行った。cDNAシークエンシングの反応物の電気泳動的に
よる分離及び標識したポリヌクレオチドの検出は、MEGABACE 1000 DNAシークエ
ンシングシステム(Molecular Dynamics)、標準ABIプロトコル及び塩基対呼び出
しソフトウェアを用いるABI PRISM 373または377シークエンシングシステム(PE
Biosystems)、または当分野で周知のその他の配列解析システムを用いて行った
。cDNA配列内の読み枠は、標準的な方法(Ausubel, 1997, 前出, unit 7.7)を用
いて決定した。cDNA配列の幾つかを選択して、実施例8に記載した方法で配列を
伸長した。
【0315】 インサイトcDNAに由来する本ポリヌクレオチド配列の確認は、BLAST、動的プ
ログラミング、およびジヌクレオチドの分布による解析(dinucleotide nearest
neighbor analysis)に基づいたプログラム及びアルゴリズムを用いて、ベクタ
ー、リンカー、およびポリA配列を取り除き、更にあいまいな塩基対をマスクす
ることで行った。次に、インサイトcDNA配列およびそれらの翻訳を、公共のデー
タベースであるGenBankの霊長類、げっ歯類、哺乳類、脊椎動物、および真核生
物のデータベース、およびBLOCKS、PRINTS、DOMO、PRODOM、およびPFAMなどの隠
れマルコフモデル(HMM)を基にしたタンパク質ファミリーのデータベースから
選択した配列に対して問合せた(HMMは、遺伝子ファミリーのコンセンサス主構
造を分析する確率的手法である。例えば、Eddy, S. R. (1996) Curr. Opin. Str
uct. Biol. 6 : 361-365を参照)。このような問合せは、BLAST、FASTA、BLIMPS
、およびHMMRに基づいたプログラムを用いて行った。インサイトcDNA配列を組み
立てて、完全長ポリヌクレオチド配列を作製した。或いは、GenBank cDNAs、Gen
Bank EST、ステッチ配列(stitched sequence)、ストレッチ配列(stretched s
equences)、またはGenscan-推定コード配列(実施例4および5を参照)を用い
て、インサイトcDNA群を完全長の配列に伸長した。配列の組み立ては、Phred、P
hrap、およびConsedに基づいたプログラムを用いて行い、GeneMark、BLAST、お
よびFASTAに基づいたプログラムを用いて、オープンリーディングフレームを決
定するべくcDAN群をスクリーニングした。完全長のポリヌクレオチド配列を翻訳
して対応する完全長ポリペプチド配列を得た。別法では、本発明のポリヌクレオ
チドは、完全長翻訳ポリヌクレオチドの任意のメチオニン残基から始まり得る。
次に、完全長ポリペプチド配列をGenBankタンパク質データベース(genpept)、
SwissProt、BLOCKS、PRINTS、DOMO、PRODOM、Prosite、およびPFAMなどの隠れマ
ルコフモデル(HMM)に基づいたタンパク質ファミリーデータベースに対して問
合せて分析した。こられの完全長ポリヌクレオチド配列はまた、MACDNASIS PRO
ソフトウェア(Hitachi Software Engineering, South San Francisco CA)およ
びLASERGENEソフトウェア(DNASTAR)を用いて分析した。ポリヌクレオチド配列
およびポリペプチド配列のアラインメントを、アライメントした配列間のパーセ
ント同一性も計算するMEGALIGNマルチシークエンスアラインメントプログラム(
DNASTAR)に組み込まれたCLUSTALアルゴリズムによって指定されたデフォルトパ
ラメータを用いて作成した。
【0316】 表7は、インサイトcDNAおよび完全長配列の組み立て、および組み立てた配列
の分析に利用したツール、プログラム、およびアルゴリズム、並びにそれらの説
明、引用文献、閾値パラメータを簡単に示す。表7の列1は用いたツール、プロ
グラム、およびアルゴリズム、列2はそれらの簡単な説明、列3は引用すること
で本明細書の一部とした引用文献、列4の記載されている部分は2つの配列の一
致の程度を評価するために用いたスコア、確率値、およびその他のパラメータを
示す(スコアが高くなれば高くなるほど即ち確率値が低ければ低いほど、配列間
の相同性が高くなる)。
【0317】 完全長のポリヌクレオチド配列およびポリペプチド配列の組み立て及び分析に
用いる上記のプログラムは、SEQ ID NO:13−24のポリヌクレオチド配列断片の同
定にも利用できる。ハイブリダイゼーション及び増幅技術に有用である約20〜
約4000ヌクレオチドの断片を表4の列4に示した。
【0318】 4 ゲノムDNAからコード配列の同定および編集 推定薬剤代謝酵素は、公共のゲノム配列データベース(例えば、gbpriやgbhtg
)においてGenscan遺伝子同定プログラムを実行して初めに同定された。Genscan
は、様々な生物に由来するゲノムDNA配列を分析するための汎用遺伝子同定プロ
グラムである(Burge, C. および S. Karlin (1997) J. Mol. Biol. 268 : 78-9
4、Burge, C. および S. Karlin (1998) Curr. Opin. Struct. Biol. 8 : 346-3
54を参照)。このプログラムは推定エキソンを連結して、メチオニンから停止コ
ドンまで伸長した組み立てcDNA配列を構築する。Genscanにより得られる配列は
、FASTAデータベースのポリヌクレオチド配列およびポリペプチド配列になる。G
enscanによって一回で解析できる配列の最大長さは30kbに設定されている。こ
れらのGenscan推定cDNA配列の内、どの配列が薬剤代謝酵素をコードするかを決
定するために、コードされたポリペプチドをPFAMモデルにおいて薬剤代謝酵素に
ついて問合せて分析した(7tm_1、7tm_2、7tm_3、および7tm_4)。潜在的な薬剤
代謝酵素が、薬剤代謝酵素としてアノテーションが付けられたインサイトcDNA配
列に対する相同性を基に同定された。次に、これらの選択されたGenscan推定配
列を、BLAST解析を用いてgeneptおよびgbpri公共データベースの配列と比較した
。必要に応じて、Genscan推定cDNA配列を、geneptにおいてBLASTで最もヒットし
た配列と比較して、Genscan推定配列における余分なエキソンや省いてしまった
エキソンなどのエラーを修正し、編集した。BLAST解析を用いてGenscan推定cDNA
配列を含むインサイトcDNAまたは公共のcDNAを見つけ出すことにより、転写の証
拠が得られる。インサイトcDNAがGenscan推定cDNA配列を含む場合、この情報を
用いてGenscan推定配列を修正或いは確認できる。完全長ポリヌクレオチド配列
は、実施例3に説明した組み立て方法でGenscan推定コード配列とインサイトcDN
Aおよび/または公共のcDNA配列を組み立てて作製した。別法では、完全長ポリ
ヌクレオチド配列は、その全てが編集した或いは未編集のGenscan推定コード配
列から作製した。
【0319】 5 ゲノム配列データとcDNA配列データとの組み立て ステッチ配列(Stiched Sequence) 部分的なcDNA配列を、実施例4に記載したGenscan遺伝子同定プログラムによ
って推定されたエキソンで伸長した。実施例3に記載されたように組み立てられ
た部分的なcDNAをゲノムDNAにマッピングし、関連するcDNAおよび1或いは複数
のゲノム配列に由来する関連する推定Genscanエキソンを含む複数のクラスター
に入れた。各クラスターを、グラフ理論および動的計画法に基づいたアルゴリズ
ムを用いて、cDNAおよびゲノム情報を統合して分析し、後に確認される潜在的な
スプライスバリアントを生成し、編集或いは伸長して完全長の配列を作製した。
或るクラスターの2つ以上の配列に或る区間の全長が存在する配列区間を同定し
、推移(transitivity)により同定した区間を同等と考える。例えば、或る区間
がcDNAおよび2つのゲノム配列のそれぞれに存在する場合、これら3つ全ての区
間を同等と考える。この方法によって、関連しないが連続するゲノム配列をcDNA
配列によって繋ぎ1つにする。このようにして同定された区間を、親配列(pare
nt sequence)に沿って現われるようにステッチアルゴリズムで縫い合わせ、可
能な最も長い配列および変異配列を作製する。或るタイプ(cDNAとcDNA、または
ゲノム配列とゲノム配列)の親配列に沿って連結される区間と区間との繋ぎ合わ
せは、親配列のタイプが異なる(cDNAとゲノム配列)連結より好ましい。得られ
たステッチ配列を翻訳し、BLAST解析でgenpeptおよびgbpri公共データベースに
おける配列と比較した。Genscanによって推定された不適当なエキソンを、genep
tにおいてBLASTで最もヒットした配列と比較して修正する。このような配列を更
なるcNDA配列で伸長し、必要に応じてゲノムDNAで検査した。
【0320】 ストレッチ配列(Stretched Sequence) 部分的なDNA配列をBLAST解析に基づいたアルゴリズムで完全長に伸長した。ま
ず、実施例3に記載したように組み立てた部分的なcDNAを、BLASTプログラムを
用いてGenBankの霊長類、げっ歯類、哺乳類、脊椎動物、および真核生物のデー
タベースなどの公共のデータベースに対して問い合わせた。次に、GenBankの相
同性の最も高いタンパク質を、実施例4に記載したインサイトcDNA或いはGenSca
nエキソン推定配列の何れかと比較した。得られた複数の高スコアのセグメント
対(HSP)を用いてキメラタンパク質を作製し、GenBnakの相同タンパク質上に翻
訳した配列をマッピングした。元のGenBnakの相同タンパク質に対して、キメラ
タンパク質に挿入や欠失が起こり得る。公共のヒトゲノムデータベースから相同
ゲノム配列を探し出すために、GenBnakの相同タンパク質およびキメラタンパク
質の両方をプローブとして用いた。このようにして、部分的なDNA配列を相同ゲ
ノム配列の付加によりストレッチすなわち伸長した。完全な遺伝子を含んでいる
か得られたストレッチ配列を検査した。
【0321】 6 DMEをコードするポリヌクレオチドの染色体マッピング SEQ ID NO:13−24を組み立てるために用いた配列を、BLAST及びSmith-Waterma
nアルゴリズムを用いて、インサイトLIFESEQデータベース及び公共のドメインデ
ータベースの配列と比較した。SEQ ID NO:13−24と一致するこれらのデータベー
スの配列を、Phrap(表7)などの構築アルゴリズムを使用して、連続及び重複
した配列のクラスターに組み入れた。Stanford Human Genonse Center (SHGC)、
Whitehead Institute for Genome Research (WIGR)及びGenethonなどの公共の情
報源から入手できる放射線ハイブリッド(radiation hybrid)及び遺伝子マッピ
ングのデータを用いて、クラスター化した配列がすでにマッピングされているか
を調べる。クラスターにマッピングされた配列が含まれている場合は、そのクラ
スターの全ての配列(特定のSEQ ID NOを含む)をそのマッピング位置に割り当
てた。
【0322】 遺伝子地図の位置は、範囲、区間、またはヒト染色体によって表される。セン
チモルガンで示したマッピング位置の範囲は、染色体の短腕(p)の末端から測
定した(センチモルガン(cM)は、同一染色体上の遺伝子間の乗換え率に基づい
た距離を表す単位である。平均すると、1cMはヒトの染色体の1メガベースに概
ね等しいいが、組換え率の高い部分と低い部分があるため、大きく変化し得る)
。距離cMは、配列がそれぞれのクラスターに含まれている放射線ハイブリッドマ
ーカーの境界を検出できるGenethonによってマッピングされた遺伝子マーカーに
基づいている。NCBI「GeneMap99」(http://www.ncbi.nlm.nih.gpv/genemap)な
どの公衆が入手可能なヒト遺伝子マップおよびその他の情報源を用いて、上記し
た区間が既に同定されている疾患遺伝子マップ内若しくは近傍に位置するかを決
定できる。
【0323】 7 ポリヌクレオチド発現の分析 ノーザン分析は、遺伝子の転写物の存在を検出するために用いられる実験用技
術であり、特定の細胞種或いは組織からのRNAが結合されている膜への標識され
たヌクレオチド配列のハイブリダイゼーションを伴う(例えば、Sambrook,前出,
7章; 及び Ausubel. F.M. 他、前出, 4章及び16章を参照)。
【0324】 BLASTに用いる類似のコンピュータ技術を用いて、GenBank或いはLIFESEQ(Inc
yte Pharmaceuticals)のようなcDNAデータベース内の同一或いは関連する分子
を検索する。この分析は多くの膜系ハイブリダイゼーションより非常に速度が速
い。さらにコンピュータ検索の感度を変更して、任意の特定の一致が、厳密な一
致或いは相同的一致の何れかとして分類されるかを確定することができる。検索
の基準は、
【0325】
【数1】 として定義される積スコアである。積スコアは、0〜100の標準化された値で
あり、以下のように求める。BLASTスコアにヌクレオチド配列の一致率を乗じ、
その積を2つの配列の短い方の長さの5倍で除する。高スコアのセグメントの対
(HSP)において一致する各塩基に+5のスコアを割り当て、各不適性塩基対に
−4を割り当てることにより、BLASTスコアを計算する。2つの配列は、2以上
のHSPを共有し得る(ギャップにより離隔される)。2以上のHSPがある場合には
、最高BLASTスコアの塩基対を用いて積スコアを計算する。積スコアは、BLASTア
ラインメントの断片的重複と質とのバランスを表す。例えば積スコア100は、
比較した2つの配列の短い方の長さ全体にわたって100%一致する場合にのみ
得られる。積スコア70は、100%の同一性で重畳が70%であるか、或いは
88%の同一性で重畳が100%であるかの何れかの場合である。積スコア50
は、100%の同一性で重畳が50%重畳であるか、或いは79%の同一性で重
畳が100%であるかの何れかの場合である。
【0326】 或いは、DMEをコードするポリヌクレオチド配列は、由来する組織に対して分
析する。例えば、ある完全長の配列は、少なくとも部分的にインサイトcDNA配列
をオーバーラップさせて組み立てられる(実施例3を参照)。各cDNA配列は、ヒ
ト組織から作製されたcDNAライブラリに由来する。各ヒト組織は、心血管系、結
合組織、消化系、胚構造、内分泌系、外分泌腺、女性生殖器、男性生殖器、生殖
細胞、血液および免疫系、肺、筋骨格系、神経系、膵臓、呼吸器系、感覚器官、
皮膚、顎口腔系、分類不能/混合、または尿管などの1つの生物/組織のカテゴ
リーに分類される。各カテゴリーにおけるライブラリの数をカウントし、その合
計数を全カテゴリーのライブラリ数で除す。同様に、各ヒト組織は、癌、細胞系
、発生、炎症、神経、外傷、心血管、プール(pooled)などの1つの疾患/症状
のカテゴリーに分類され、各カテゴリーにおけるライブラリの数をカウントし、
その合計数を全カテゴリーのライブラリ数で除す。得られるパーセンテージは、
DMEをコードするcDNAの疾患特異的な発現を反映する。cDNA配列およびcDNAライ
ブラリ/組織の情報は、LIFESEQ GOLD データベース(Incyte Genomics, Palo A
lto CA)から得ることができる。
【0327】 8 DMEをコードするポリヌクレオチドの伸長 完全長のポリヌクレオチド配列は、完全長分子の好適な断片から設計したオリ
ゴヌクレオチドプライマーを用いてその完全長分子の好適な断片を伸長して作製
した。一方のプライマーは既知の断片の5'の伸長を開始するために合成し、他
方のプライマーは既知の断片の3'の伸長を開始するために合成した。開始プラ
イマーは、OLIGO 4.06ソフトウェア(National Biosciences)或いは他の適切な
プログラムを用いて、約22個から約30個のヌクレオチドの長さで約50%以
上のGC含量を有し、かつ約68〜72℃の温度で標的配列にアニールするよう
に設計した。ヘアピン構造及びプライマー−プライマー二量体が生じないように
ヌクレオチドを伸長した。
【0328】 選択されたヒトcDNAライブラリを用いてこの配列を伸長した。2段階以上の伸
長が必要な場合、若しくは望ましい場合は、追加或いはネスト化プライマーの組
を設計する。
【0329】 当分野で既知の方法を利用したPCR法で高い忠実度で増幅した。PCRはPTC-200
thermal cycler (MJ Research, Inc.)用いて96ウェルブロックプレートで行った
。反応混合液は、鋳型DNA及び200 nmolの各プライマー、Mg2+と(NH4)2SO4とβ
−メルカプトエタノールを含むバッファー、Taq DNAポリメラーゼ(Amersham Pha
rmacia Biotech)、ELONGASE酵素(Life Technologies)、Pfu DNAポリメラーゼ(St
ratagene)を含む。プライマーの組、PCI AとPCI Bに対して以下のパラメータで
増幅を行った。 ステップ1 94℃で3分間 ステップ2 94℃で15秒 ステップ3 60℃で1分間 ステップ4 68℃で2分間 ステップ5 ステップ2、3、及び4を20回繰り返す ステップ6 68℃で5分間 ステップ7 4℃で保管 別法では、プライマーの組、T7とSK+に対して以下のパラメータで増幅を行った
。 ステップ1 94℃で3分間 ステップ2 94℃で15秒 ステップ3 57℃で1分間 ステップ4 68℃で2分間 ステップ5 ステップ2、3、及び4を20回繰り返す ステップ6 68℃で5分間 ステップ7 4℃で保管。
【0330】 各ウェルのDNA濃度は、1X TE及び0.5μlの希釈していないPCR産物に溶解した
100μlのPICOGREEN定量試薬(0.25% (v/v) PICOGREEN; Molecular Probes, Eugen
e OR)を不透明な蛍光光度計プレート(Coming Costar, Acton MA)の各ウェルに分
配してDNAが試薬と結合できるようにして測定する。このプレートをFluoroskan
II (Labsystems Oy, Helsinki, Finland)でスキャンして、サンプルの蛍光を計
測してDNAの濃度を定量化する。反応混合物の5〜10μlのアリコットを1%のア
ガロースミニゲル上での電気泳動によって解析し、何れの反応物が配列を伸長す
ることに成功したかを決定する。
【0331】 伸長したヌクレオチドを脱塩及び濃縮してから384ウェルプレートに移し、Cvi
JIコレラウイルスエンドヌクレアーゼ(Molecular Biology Research, Madison W
I)で消化し、pUC 18ベクター(Amersham Pharmacia Biotech)に再連結する前に音
波処理またはせん断を行った。ショットガンシークエンシングのために、消化し
たヌクレオチドを低濃度(0.6〜0.8%)のアガロースゲル上に分離して断
片を切断し、寒天をAgar ACE (Promega)で消化した。T4リガーゼ(New England B
iolabs, Beverly MA)を用いて伸長したクローンをpUC 18ベクター(Amersham Pha
rmacia Biotech)に再連結し、Pfu DNAポリメラーゼ(Stratagene)で制限部位の延
び出しを処理してコンピテント大腸菌細胞に形質移入した。形質移入した細胞を
選択して抗生物質を含む培地に移し、それぞれのコロニーを切りとってLB/2Xカ
ルベニシリン培養液の384ウェルプレートに37℃で一晩培養した。
【0332】 細胞を溶解して、Taq DNAポリメラーゼ(Amersham Pharmacia Biotech)及びPfu
DNAポリメラーゼ(Stratagene)を用いて以下の手順でDNAをPCR増幅した。 ステップ1 94℃で3分間 ステップ2 94℃で15秒 ステップ3 60℃で1分間 ステップ4 72℃で2分間 ステップ5 ステップ2、3、及び4を29回繰り返す ステップ6 72℃で5分間 ステップ7 4℃で保管。 上記したようにPICOGREEN試薬(Molecular Probes)でDNAを定量化した。DNA回収
率の悪いサンプルは、上記した条件で再び増幅した。サンプルを20%のジメチル
サルホサイド(dimethysulphoxide)(1:2, v/v)で希釈し、DYENAMIC DIRECTキッ
ト(Amersham Pharmacia Biotech)またはABI PRISM BIGDYE Terminator cycle se
quencing ready reactionキット(Applied Biosystems)を用いてシークエンシン
グした。
【0333】 同様に上述の手順で、完全長のポリヌクレオチド配列を検査したり、或いは完
全長のポリヌクレオチド配列を利用して、この伸長のために設計したオリゴヌク
レオチドと好適なゲノムライブラリを用いて5′調節配列を得た。
【0334】 9 個々のハイブリダイゼーションプローブの標識化及び使用法 SEQ ID NO:13−24から導き出されたハイブリダイゼーションプローブを用いて
、cDNA、mRNA、またはゲノムDNAをスクリーニングする。約20塩基対からなる
オリゴヌクレオチドの標識について特に記すが、より大きなcDNAフラグメントの
場合でも基本的に同じ手順を用いる。オリゴヌクレオチドを、OLIGO4.06ソフト
ウェア(National Bioscience)のような最新式のソフトウェアを用いてデザイ
ンし、50pmolの各オリゴマーと、250μCiの[γ‐32P]アデノシン三リン酸(A
mersham, Chicago, IL)及びT4ポリヌクレオチドキナーゼ(DuPont NEN、Bost
on MA)とを組み合わせて用いることにより標識する。標識されたオリゴヌクレ
オチドを、SEPHADEX G-25超精細排除デキストランビードカラム(Amersham Phar
macia Biotech)を用いて実質的に精製する。毎分10カウントの標識された
プローブを含むアリコットを、次のエンドヌクレアーゼ、Ase I、Bgl II、Eco R
I、Pst I、Xba1或いはPvu II(DuPont NEN)の1つを用いて切断したヒトゲノム
DNAの典型的な膜ベースのハイブリダイゼーション解析において用いる。
【0335】 各切断物からのDNAを、0.7%アガロースゲル上で分画して、ナイロン製メンブ
ラン(Nytran Plus, Schleicher & Schuell, Durham NH)に転写する。ハイブリ
ダイゼーションは40℃で16時間かけて行う。非特異的シグナルを取り除くた
め、例えば、最大0.1xクエン酸ナトリウム食塩水及び0.5%ドデシル硫酸
ナトリウムの条件の下、ブロットを順次室温にて洗浄する。ハイブリダイゼーシ
ョンパターンをオートラジオグラフィー或いは別のイメージ化手段で視覚化して
比較する。
【0336】 10 マイクロアレイ マイクロアレイ上のアレイエレメントの連結または合成は、フォトリソグラフ
ィ、ピエゾプリント(インクジェットプリンター、前出のBaldeschweiler等を参
照)、機械的マイクロスポッティング技術及びこれらから派生したものを用いて
達成することが可能である。上記各技術において基板は、均一な非多孔性の固体
とするべきである(Schena (1999).前出)。推奨する基板には、シリコン、シリ
カ、スライドガラス、ガラスチップ及びシリコンウエハがある。別法では、ドッ
トブロット法またはスロットブロット法に類似のアレイを利用して、熱や紫外線
、または化学的或いは機械的な結合手段で基板の表面にエレメントを配置して結
合させることができる。通常のアレイは利用可能な方法や機械を用いて作製でき
、任意の適正な数のエレメントを含めることができる(Schena, M. 他 (1995) S
cience 270:467-470、Shalon. D. 他 (1996) Genome Res. 6:639-645、Marshall
, A. and J. Hodgson (1998) Nat. Biotechnol. 16:27-31.を参照)。
【0337】 完全長cDNA、発現遺伝子配列断片(EST)、或いはそれらの断片やオリゴマー
が、マイクロアレイのエレメントとなり得る。ハイブリダイゼーションに好適な
断片やオリゴマーを、LASERGENEソフトウェア(DNASTAR)などの当分野で周知の
ソフトウェアを用いて選択することが可能である。このアレイエレメントを、生
体サンプル中のポリヌクレオチドとハイブリダイズさせる。生体サンプル中のポ
リヌクレオチドは、検出を容易にするために蛍光標識またはその他の分子タグに
結合する。ハイブリダイゼーションの後、生体サンプルからハイブリダイズしな
かったヌクレオチドを除去し、蛍光スキャナを用いて各アレイエレメントにおけ
るハイブリダイゼーションを検出する。別法では、レーザー脱離及び質量スペク
トロメトリーを用いてもハイブリダイゼーションを検出し得る。マイクロアレイ
上のエレメントにハイブリダイズする各ポリヌクレオチドの相補性の程度及び相
対的存在量は、算定することができる。一実施例におけるマイクロアレイの調整
及び使用について、以下に詳述する。
【0338】 組織または細胞サンプルの調製 グアニジウムチオシアネート法を用いて組織サンプルから全RNAを単離し、オ
リゴ(dT)セルロース法を用いてポリ(A)+RNAを精製する。各ポリ(A)+RNAサンプル
は、MMLV逆転写酵素、0.05 pg/μlのオリゴ(dT)プライマー(21mer)、1×
第1鎖緩衝液、0.03単位/μlのRNアーゼインヒビター、500μM dATP、5
00μM dGTP、500μM dTTP、40μM dCTP、40μM dCTP-Cy3(BDS)また
はdCTP-Cy5(Amersham Pharmacia Biotech)を用いて逆転写する。この逆転写反
応は、GEMBRIGHTキット(Incyte)を用いて、200 ngのポリ(A)+RNAを含む25 ml
容量で行う。特異的なコントロールポリ(A)+RNAは、in vitro転写により非コー
ディング酵母ゲノムDNAから合成する。370℃で2時間インキュベートした後
、各反応サンプル(一方はCy3標識、他方はCy5標識)は、2.5mlの0.5M 水酸
化ナトリウムで処理し、850℃で20分間インキュベートし、反応を停止させ
てRNAを変性する。サンプルは、2つの連続するCHROMA SPIN 30ゲル濾過スピン
カラム(CLONTECH Laboratories, Inc. (CLONTECH), Palo Alto CA)を用いて精
製する。結合後、2つの反応サンプルを、1mlのグリコーゲン(1mg/ml)、6
0mlの酢酸ナトリウム及び300mlの100%エタノールを用いてエタノール沈
殿させる。サンプルは次に、SpeedVAC(Savant Instruments Inc., Holbrook NY
)を用いて乾燥して仕上げ、14μl 5×SSC/0.2% SDS中で再懸濁する。
【0339】 マイクロアレイの準備 本発明の配列を用いて、アレイエレメントを作製する。各アレイエレメントは
、クローン化cDNA挿入断片を含むベクターを含有する細菌性細胞から増幅する。
PCR増幅は、cDNA挿入断片に隣接するベクター配列に相補的なプライマーを用い
る。30サイクルのPCRによって、1〜2ngの初期量から5μgを超える最終量ま
でアレイエレメントを増幅する。増幅されたアレイエレメントは、SEPHACRYL-40
0(Amersham Pharmacia Biotech)を用いて精製する。
【0340】 精製したアレイエレメントを、ポリマーコートされたスライドガラス上に固定
する。顕微鏡スライドガラス(Corning)は、処理中及び処理後に大量の蒸留水
での洗浄と、0.1%のSDS及びアセトン中で超音波による洗浄を行う。スライド
ガラスは、4%フッ化水素酸(VWR Scientific Products Corporation (VWR), W
est Chester PA)中でエッチングし、蒸留水中で広範囲にわたって洗浄し、95
%エタノール中の0.05%アミノプロピルシラン(Sigma)でコーティングする
。コーティングしたスライドガラスは、110℃の天火で硬化させる。
【0341】 米国特許第5,807,522号に記載されている方法を用いて、コーティングしたガ
ラス基板にアレイエレメントを付加する。この特許に引用することを以って本明
細書の一部とする。平均濃度が100ng/μlのアレイエレメントDNA1μlを高速
機械装置により開放型キャピラリープリンティングエレメント(open capillary
printing element)に充填する。次にこの装置が、スライド毎に約5nlのアレ
イエレメントサンプルを分注する。
【0342】 マイクロアレイには、STRATALINKER UVクロスリンカー(Stratagene)を用い
てUV架橋する。マイクロアレイは、室温において0.2%SDSで1回洗浄し、蒸留
水で3回洗浄する。非特異的な結合部位は、リン酸緩衝生理食塩水 (PBS)(Trop
ix, Inc., Bedford MA)における0.2%カゼイン中で60℃で30分間マイク
ロアレイをインキュベートし、その後上述したように0.2%SDS及び蒸留水で洗
浄することによってブロックする。
【0343】 ハイブリダイゼーション ハイブリダイゼーション反応液は、5×SSC、0.2%SDSハイブリダイゼーシ
ョン緩衝液にCy3及びCy5標識したcDNA合成産物を各0.2μg含む9μlのサンプ
ル混合体を含めたものである。サンプル混合液を、65℃で5分間加熱し、マイ
クロアレイ表面上に一定量分注してから1.8cm2 のカバーガラスで覆う。この
アレイを、顕微鏡スライドより僅かに大きいキャビティを有する防水チェンバー
に移す。チャンバーの角に140μlの5×SSCを加えて、チャンバー内を湿度10
0%に保持する。このアレイを含むチャンバーを、60℃で約6.5時間インキュ
ベートする。アレイは、第1洗浄緩衝液中(1×SSC,0.1%SDS)において45
℃で10分間、第2洗浄緩衝液中(0.1×SSC)において45℃で10分間それ
ぞれ3回洗浄し、その後乾燥させる。
【0344】 検出 レポーター標識されたハイブリダイゼーション複合体は、Cy3を励起するため
の488nm、及びCy3を励起するための632nmのスペクトル線を生成し得るInn
ova 70混合ガス10 Wレーザー(Coherent, Inc., Santa Clara CA)を備えた顕微
鏡で検出する。20倍の顕微鏡対物レンズ(Nikon, Inc., Melville NY)を用い
て、アレイ上に励起レーザー光を集中させる。このアレイを含むスライドを顕微
鏡のコンピュータ制御X-Yステージに置き、対物レンズを通してラスタスキャン
する。本実施例で用いた1.8cm×1.8cmのアレイは、20μmの解像度でスキ
ャンする。
【0345】 2つの異なるスキャンにおいて、混合ガスマルチラインレーザーは2つの蛍光
体を連続的に励起する。放射された光は、波長に基づいて2つの蛍光体に対応す
る2つの光電子増倍管検出器(PMT R1477, Hamamatsu Photonics Systems, Brid
gewater NJ)に分割される。アレイと光電子増倍管との間に配設された好適なフ
ィルタを用いて信号をフィルタリングする。用いる蛍光体の最大発光は、Cy3で
は565nm、Cy5では650nmである。装置は両方の蛍光体からのスペクトルを
同時に記録できるが、レーザー源に好適なフィルタを用いて、蛍光体1つにつき
1回スキャンし、各アレイを通常2回スキャンする。
【0346】 スキャンの感度は通常、既知濃度のサンプル混合体に添加されるcDNAコントロ
ール種により生成されるシグナル強度を用いて較正する。アレイ上の特定の位置
には相補的DNA配列を含め、その位置におけるシグナルの強度がハイブリダイズ
する種の重量比1:100,000に相関するようにする。異なる試料(例えば検査細胞
及びコントロール細胞を代表する)からの2つのサンプルを、各々異なる蛍光体
で標識し、他と異なって発現する遺伝子を同定するために単一のアレイにハイブ
リダイズさせる場合には、較正は2つの蛍光体を有する較正するcDNAのサンプル
を標識して、ハイブリダイゼーション混合液に各々等量を加えて行う。
【0347】 光電子増倍管の出力は、IBMコンパチブルPCコンピュータにインストールされ
た12ビットRTI-835Hアナログ−ディジタル(AID)変換ボード(Analog Device
s, Inc., Norwood MA)を用いてディジタル化される。ディジタル化されたデー
タは、リニア20色変換を用いてシグナル強度が青色(低シグナル)から赤色(
高シグナル)までの擬似カラー範囲にマッピングされるイメージとして表示され
る。データはまた、定量的に分析される。2つの異なる蛍光体を同時に励起して
測定する場合には、各蛍光体の発光スペクトルを用いて、先ずデータは蛍光体間
の光学的漏話(重複発光スペクトルに起因する)に対して補正される。
【0348】 グリッドを蛍光シグナルイメージ上に重畳して、各スポットからのシグナルが
グリッドの各エレメントに中央に位置するようにする。各エレメント内の蛍光シ
グナルを統合し、シグナルの平均強度に対応する数値を得る。シグナル分析に用
いるソフトウェアは、GEMTOOLS遺伝子発現分析プログラム(Incyte)である。
【0349】 11 相補的ポリヌクレオチド DMEをコードする配列或いはその任意の一部に対して相補的な配列は、天然のD
MEの発現を低下させるため即ち阻害するために用いられる。約15〜約30個の
塩基対を含むオリゴヌクレオチドの使用について記すが、より小さな或いはより
大きな配列の断片の場合でも本質的に同じ方法を用いることができる。Oligo4.0
6ソフトウェア(National Biosciences)及びDMEのコーディング配列を用いて、
適切なオリゴヌクレオチドを設計する。転写を阻害するためには、最も独特な5
′配列から相補的なオリゴヌクレオチドを設計し、これを用いてプロモーターが
コーディング配列に結合するのを阻害する。翻訳を阻害するためには、相補的な
オリゴヌクレオチドを設計して、リボソームがDMEをコードする転写物に結合す
るのを阻害する。
【0350】 12 DMEの発現 DMEの発現及び精製は、細菌若しくはウイルスを基にした発現系を用いて行う
ことができる。細菌でDMEが発現するために、抗生物質耐性及びcDNAの転写レベ
ルを高める誘導性のプロモーターを含む好適なベクターにcDNAをサブクローニン
グする。このようなプロモーターには、lacオペレーター調節エレメントに関連
するT5またはT7バクテリオファージプロモーター及びtrp-lac(tac)ハイブリッド
プロモーターが含まれるが、これらに限定されるものではない。組換えベクター
を、BL21(DE3)などの好適な細菌宿主に形質転換する。抗生物質耐性をもつ細菌
が、イソプロピルβ−Dチオガラクトピラノシド(IPTG)で誘発されるとDMEを発現
する。真核細胞でのDMEの発現は、昆虫細胞株または哺乳動物細胞株に一般にバ
キュロウイスルスとして知られているAutographica californica核多面性ウイル
ス(AcMNPV)を感染させて行う。バキュロウイルスの非必須ポリヘドリン遺伝子を
、相同組換え或いは転移プラスミドの媒介を伴う細菌の媒介による遺伝子転移の
どちらかによって、DMEをコードするcDNAと置換する。ウイルスの感染力は維持
され、強いポリヘドリンプロモータによって高いレベルのcDNAの転写が行われる
。組換えバキュロウイルスは、多くの場合はSpodoptera frugiperda (Sf9)昆虫
細胞に感染に用いられるが、ヒト肝細胞の感染にも用いられることもある。後者
の感染の場合は、バキュロウイルスの更なる遺伝的変更が必要になる。(例えば
、Engelhard. E. K.他 (1994) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91:3224-3227; San
dig, V. 他 (1996) Hum. Gene Ther. 7:1937-1945.を参照)。
【0351】 殆どの発現系では、DMEが、例えばグルタチオンSトランスフェラーゼ(GST)、
またはFLAGや6-Hisなどのペプチドエピトープ標識で合成された融合タンパク質
となるため、未精製の細胞溶解物からの組換え融合タンパク質の親和性ベースの
精製が素早く1回で行うことができる。Schistosoma japonicumからの26キロ
ダルトンの酵素GSTによって、タンパク質の活性及び抗原性を維持した状態で固
定されたグルタチオンで融合タンパク質の精製が可能となる(Amersham Pharmaci
a Biotech)。精製の後、GST部分を特定の操作部位でDMEからタンパク分解的に切
断できる。アミノ酸8個のペプチドであるFLAGで、市販のモノクローナル及びポ
リクローナル抗FLAG抗体(Eastman Kodak)を用いた免疫親和性の精製が可能とな
る。6個の連続するヒスチジン残基のストレッチである6-Hisによって、金属キ
レート樹脂(QIAGEN)で精製が可能となる。タンパク質の発現及び精製の方法は、
Ausubel (1995,前出, ch 10, 16)に記載されている。これらの方法で精製したDM
Eを直接用いて以下の実施例16、17、及び18のアッセイを行うことができ
る。
【0352】 13 機能のアッセイ DMEの機能は、哺乳動物細胞培養系において生理学的に高められたレベルでのD
MEをコードする配列の発現によって評価する。cDNAを、cDNAを高いレベルで発現
する強いプロモーターを含む哺乳動物発現ベクターにサブクローニングする。こ
のようなベクターには、pCMV SPORTTM (Life Technologies.)及びpCR 3.1 (Invi
trogen, Carlsbad, CA)が含まれ、どちらもサイトメガロウイルスプロモーター
を含んでいる。5〜10μgの組換えベクターを、例えば内皮由来か造血由来の
ヒト細胞株にリポソーム製剤或いは電気穿孔法によって一時的に形質移入する。
更に、標識タンパク質をコードする配列を含む1〜2μgのプラスミドを同時に
形質移入する。標識タンパク質の発現により、形質移入された細胞と形質移入さ
れていない細胞とを区別できる。また、標識タンパク質の発現によって、cDNAの
組換えベクターからの発現を正確に予想できる。このような標識タンパク質には
、緑色蛍光タンパク質(GFP;Clontech)、及びCD64またはCD64-GFP融合タンパク
質が含まれる。レーザー光学に基づいた技術を利用した自動流動細胞計測法(FCM
)を用いて、GFPまたはCD64-GFPを発現する形質移入された細胞を同定し、その細
胞のアポトーシス状態や他の細胞特性を評価する。また、FCMで、先行した或い
は同時の細胞死の現象を診断する蛍光分子の取り込みを検出して計量する。これ
らの現象には、プロピジウムヨウ化物でのDNAの染色によって計測される核DNA内
容物の変化と、ブロモデオキシウリジンの取り込み量の低下によって計測される
DNA合成の下方調節と、特異的な抗体との反応性によって計測される細胞表面及
び細胞内のタンパンク質の発現の変化と、蛍光複合アネキシンVタンパク質の細
胞表面への結合によって計測される原形質膜組成の変化とが含まれる。流動細胞
計測法は、Ormerod, M. G.による (1994) Flow Cytometry Oxford, New York, N
Y.に記載されている。
【0353】 遺伝子発現におけるDMEの影響は、DMEをコードする配列とCD64またはCD64-GFP
のどちらかが形質移入された高度に精製された細胞集団を用いて評価することが
できる。CD64またはCD64-GFPは形質転換された細胞表面で発現し、ヒト免疫グロ
ブリンG(IgG)の保存された領域と結合する。形質転換された細胞と形質転換され
ない細胞とは、ヒトIgGかCD64に対する抗体のどちらかで被覆された磁気ビード
を用いて分離することができる(DYNAL. Lake Success. NY)。mRNAは、当分野で
周知の方法で細胞から精製することができる。DME及び目的の他の遺伝子をコー
ドするmRNAの発現は、ノーザン分析やマイクロアレイ技術で分析することができ
る。
【0354】 14 DMEに特異的な抗体の作製 ポリアクリルアミドゲル電気泳動法(PAGE;例えば、Harrington, M.G. (1990)
Methods Enzymol. 1816−3088-495を参照)または他の精製技術で実質的に精製
されたDMEを用いて、標準的なプロトコルでウサギを免疫化して抗体を作り出す
【0355】 別法では、DMEアミノ酸配列をLASERGENEソフトウェア(DNASTAR)を用いて解
析して免疫原性の高い領域を決定し、対応するオリゴペプチドを合成してこれを
用いて当業者に周知の方法で抗体を生産する。C末端付近の、或いは隣接する親
水性領域内のエピトープなどの適切なエピトープの選択については、当分野で周
知である(例えば、前出のAusubel, 1995,11章を参照)。
【0356】 通常、約15残基の長さのオリゴペプチドを、Applied BiosystemsのABI 431A
ペプチドシンセサイザー(PE Biosystems)を用いてfmoc法のケミストリにより
合成し、N−マレイミドベンゾイル−N−ヒドロキシスクシンイミドエステル(
MBS)を用いた反応によりKLH(Sigma-Aldrich, St. Louis MO)に結合させて、
免疫原性を高める(例えば、前出のAusubel, 1995を参照)。フロイントの完全ア
ジュバントにおいてオリゴペプチド−KLH複合体を用いてウサギを免疫化する。
得られた抗血清の抗ペプチド活性及び抗DME活性を検査するには、ペプチドまた
はDMEを基板に結合し、1%BSAを用いてブロッキング処理し、ウサギ抗血清と反
応させて洗浄し、さらに放射性ヨウ素標識されたヤギ抗ウサギIgGと反応させる
【0357】 15 特異的抗体を用いる天然DMEの精製 天然DME或いは組換えDMEを、DMEに特異的な抗体を用いるイムノアフィニティ
ークロマトグラフィにより実質的に精製する。イムノアフィニティーカラムは、
CNBr-活性化SEPHAROSE(Amersham Pharmacia Biotech)のような活性化クロマト
グラフィー用レジンと抗DME抗体とを共有結合させることにより形成する。結合
の後、そのレジンを製造者の使用説明書に従ってブロッキング処理し洗浄する。
【0358】 DMEを含む培養液をイムノアフィニティーカラムに通し、DMEを優先的に吸着で
きる条件で(例えば、界面活性剤の存在下において高イオン強度のバッファーで
)そのカラムを洗浄する。そのカラムを、抗体とDMEとの結合を切るような条件
で(例えば、pH2〜3のバッファー、或いは高濃度の尿素またはチオシアン酸
塩イオンのようなカオトロピックイオンで)溶出させ、DMEを回収する。
【0359】 16 DMEと相互作用する分子の同定 DMEまたは生物学的に活性なその断片を、125Iボルトンハンター試薬(例
えば、Bolton A.E.及びW.M. Hunter (1973) Biochem. J. 133:529を参照)で標
識する。マルチウェルプレートに予め配列しておいた候補の分子を、標識したDM
Eと共にインキュベートし、洗浄して、標識したDME複合体を有する全てのウェル
をアッセイする。様々なDME濃度で得られたデータを用いて、候補分子と結合し
たDMEの数量及び親和性、会合についての値を計算する。
【0360】 別法では、DMEと相互作用する分子を、Fields, S.及びO. Song(1989, Nature
340:245-246)に記載の酵母2−ハイブリッドシステム(yeast two-hybrid syste
m)やMATCHMAKERシステム(Clontech)などの2−ハイブリッドシステムに基づい
た市販のキットを用いて分析する。
【0361】 DMEはまた、ハイスループット型の酵母2ハイブリッドシステムを使用するPAT
HCALLINGプロセス(CuraGen Corp., New Haven CT)に用いて、遺伝子の2つの
大きなライブラリによってコードされるタンパク質間の全ての相互作用を決定す
ることができる(Nandabalan, K. 他 (2000) 米国特許第6,057,101号)。
【0362】 17 DME活性の実証 DMEのチトクロームP450活性を、アニリンの4−ヒドロキシル化を利用して測定
する。アニリンは酵素によって4−アミノフェノールに変換され、630nmにおいて
光吸収率が最大である(GibsonoおよびSkett、前出)。このアッセイは便利な方
法であるが、ヒドロキシル化が2位および3位でも起こるため全体のヒドロキシ
ル化が過少評価される。アッセイは37℃で行い、反応バッファには酵素のアリ
コットおよび好適な量のアニリン(最大2mM)が含まれている。バッファは、反
応のためにNADPHまたはNADPH生成補助因子系を含まなければならない。この反応
バッファのある調整では、85mM Tris pH 7.4、15mM MgCl2, 50mMニコチンアミド
、40mg trisodium isocitrate、および2単位のイソクエン酸デヒドロゲナーゼ
を含め、アッセイの前に8mg NADP+を10mLの反応バッファストックに加える。反
応は蛍光キュベットで行い、630nmで吸光度を測定する。吸光度の上昇の割合が
、アッセイにおける酵素活性に比例する。既知の濃度の4−アミノフェノールを
用いて標準的な曲線を作成することができる。
【0363】 ABBRの1α,25−ジヒドロキシビタミンD24−ヒドロキシラーゼ活性を、ABBRを
発現する遺伝子組換えラットにおける3H標識された1α,25−ジヒドロキシビタミ
ンD(1α,25(OH)2D)の24,25−ジヒドロキシビタミンD(24,25(OH)2D)への変換をモ
ニタリングして決定する。エタノール(或いはコントロールとしてエタノールの
み)に溶解した1μgの1α,25(OH)2Dを、ABBRの破壊変異体を発現する若しくはAB
BRを発現していないという点を除けばコントロールラットと同一のABBRを発現す
る約6週目のオス遺伝子組換えラットに静脈内投与する。ラットを8時間後に断
頭により屠殺し、腎臓を手早く取り除き、洗浄し、9倍量の氷冷バッファ(15mM
Tris-acetate(pH7.4)、0.19Mスクロース、2mM酢酸マグネシウム、および5mMコハ
ク酸ナトリウム)においてホモジナイズする。次に、各ホモジネートの所定量(
例えば3ml)を、約3.5GBq/mmolの特定の活性を有する0.25nM 1α,25(OH)2[1-3H]
Dにおいて、常に振盪しながら酸素存在下、37℃で、15分間インキュベート
する(Bligh, E. G.およびDyer, W. J. (1959) Can. J. Biochem. Physiol. 37:
911-917)。次にクロロホルム相を、1ml/minの流速でn−ヘキサン/クロロホル
ム/メタノール (10:2.5:1.5) の溶液を含むFINEPAK SILカラム (JASCO, Tokyo,
Japan) を用いてHPLCで分析する。別法では、クロロホルム相は、1ml/minの流
速でアセトニトリルバッファ系(40〜100%, 水中で30分間)でJ SPHERE ODS-AM
カラム (YMC Co. Ltd., Kyoto, Japan) を用いて逆相HPLCで分析する。溶出液を
30秒(或いは30秒未満)毎に集め、その容量における3Hの存在量をシンチレ
ーションカウンタで測定する。コントロールサンプル(すなわち、1α,25−ジヒ
ドロキシビタミンDまたは24,25−ジヒドロキシビタミンD(24,25(OH)2D)を含むサ
ンプル)のクロマトグラムと反応生成物のクロマトグラムとを比較し、基質(24
,25(OH)2D)および生成物(24,25(OH)2[1-3H]D)の相対的な移動度を決定し、そ
の値が収集した容量における存在量と相関性を有する。コントロールラットにお
いて生成された24,25(OH)2[1-3H]Dの量を、ABBRを発現する遺伝子組換えラット
の24,25(OH)2[1-3H]Dの量から差し引く。遺伝子組換えラットとコントロールラ
ットとの24,25(OH)2[1-3H]Dの生成物の差が、そのサンプルに存在するABBRの25
−ヒドラーゼ活性のレベルに比例する。基質および生成物の同定は、質量分光法
によって行う(Miyamoto, Y.他(1997) J. Biol. Chem. 272:14115-14119)。
【0364】 DMEのフラビン含有モノオキシゲナーゼ活性を代謝産物のクロマトグラフ分析
によって測定する。例えば、Ring, B. J.他(1999 ; Drug Metab. Dis. 27:1099-
1103) は、0.1Mリン酸ナトリウムバッファ(pH7.4または8.3)および1mM NADPH
においてFMOを37℃でインキュベートし、有機溶剤で反応を停止させ、HPLCに
より生成物の形成を決定する。別法では、活性はクラーク型電極を用いて炭素の
取り込み量をモニタリングして測定する。例えば、Ziegler, D. M.およびPoulse
n, L. L. (1978 ; Methods Enzymol. 52:142-151) は、基質メチマゾールを含む
NADPH生成補助因子系(上記したものに類似)において37℃でこの酵素をイン
キュベートした。酸素の取り込み割合が酵素活性に比例する。
【0365】 DMEのUDPグルコニルトランスフェラーゼ活性を、遊離アミノ基の比色測定を用
いて測定する(GibsonおよびSkett、前出)。2−アミノフェノールなどのアミン
含有基質は、必要な補助因子を含む反応バッファ(40mM Tris pH8.0, 7.5mM MgC
l2, 0.025% Triton X-100, 1mMアスコルビン酸, 0.75 mM UDP−グルクロン酸)
において酵素のアリコットと共に37℃でインキュベートする。十分な時間が経
過した後に、0. 1Mリン酸バッファpH2.7に氷冷した20%トリクロロ酢酸を加え
て反応を停止させ、氷上でインキュベートし、遠心分離器にかけて上澄みを除去
する。反応しなかった全ての2−アミノフェノールをこのステップで破壊する。
次に、新しく準備した亜硝酸ナトリウムを加え、グルクロン酸抱合体であるジア
ゾニウム塩が形成されるようにする。過剰な亜硝酸は、十分なスルファミン酸ア
ンモニウムを加えて除去し、ジアゾニウム塩を芳香族アミン(例えば、N−ナフ
チルエチレンジアミン)と反応させて、分光光度計でアッセイ可能な(例えば54
0nmにおいて)着色アゾ化合物を生成する。2−アミノフェノールグルクロニドと
特性が類似した発色団を形成するアニリンの既知の濃度を用いて標準的な曲線を
作成することができる。
【0366】 DMEのグルタチオンS−トランスフェラーゼ活性を、340nmにおける最大吸光率
を有するモデル基質を用いて測定する。このモデル基質は、グルタチオンと反応
して2,4−ジニトロフェニルグルタチオンを生成する2,4−ジニトロ−1−クロロ
ベンゼンなどである。GSTが様々な基質特異性を有することは重要であり、モデ
ル基質は目的のGSTの基質選択制に基づいて選択しなければならない。アッセイ
は室温で行われ、酵素のアリコットを好適な反応バッファ(例えば1mM グルタチ
オン, 1mM ジニトロクロロベンゼン, 90mMリン酸カリウムバッファ、pH6.5)に
含める。反応は蛍光キュベットで行い、340nmにおける吸光度を測定する。吸光
度の上昇の割合がアッセイにおける酵素活性に比例する。
【0367】 DMEのN−アシルトランスフェラーゼ活性を、放射標識したアミノ酸基質を用い
、抱合体の中に取り込まれた放射標識を測定して決定する。酵素を、無標識のア
シル−CoA化合物および放射線標識したアミノ酸を含む反応バッファにおいてイ
ンキュベートし、放射線標識アシル抱合体をn−ブタノールまたはその他の好適
な有機溶剤の中に抽出して反応しなかったアミノ酸から分離する。例えば、John
son, M. R.他(1990; J. Biol. Chem. 266:10227-10233)が、この酵素をコリルCo
A(cholyl-CoA)および3Hグリシンまたは3Hタウリンと共にインキュベートして
トリチウム化コール酸抱合体をn−ブタノールの中に抽出し、抽出した生成物の
中の放射活性をシンチレーションカウンタで測定して、胆汁酸CoA:アミノ酸N−
アシルトランスフェラーゼ活性を決定した。別法では、N−アシルトランスフェ
ラーゼ活性を、分光光度計で後述する還元型CoA (CoASH)を測定して決定する。
【0368】 DMEのN−アセチルトランスフェラーゼ活性を、[l4C]アセチルCoAから基質分子
への放射標識の転移を利用して測定する(例えば、Deguchi, T. (1975) J. Neur
ochem. 24:1083-5を参照)。別法では、CoASHとDTNB(5,5'−ジチオビス(2−ニ
トロ安息香酸); エルマン試薬)の反応に基づいた分光光度アッセイが用いられ
得る。N−アセチルトランスフェラーゼの触媒によるアセチル基の基質への転移
の間に、遊離チオール含有CoASHが生成される。CoASHは、412nmにおけるDTNB複
合体の吸光度を用いて決定される(De Angelis, J.他(1997) J. Biol. Chem. 27
3:3045-3050)。酵素活性は基質の中に取り込まれた放射活性の割合、または分
光光度アッセイにおける吸収率の上昇の割合に比例する。
【0369】 DMEのカテコール−O−メチルトランスフェラーゼ活性を、50mM Tris-HCl (pH7
.4)、1.2mM MgCI2、200μM SAM (S−アデノシル−L−メチオニン) ヨウ化物(0.5
μCiのメチル−[H3]SAMを含む)、1mMジチオスレイトール、および様々な濃度の
カテコール基質(例えば、レボドパ、ドーパミン、またはDBA)から成る最終容量
が1.0mlの反応液において測定する。この反応は、精製したDMEまたは未精製のDM
Eを含むサンプル250〜500μgを加えて開始し、37℃で30分間行った。この反
応は、氷上で素早く冷却して停止させ、直後に氷冷n−ヘプタンで抽出する。次
に10分間1000×gで遠心分離した後、液体シンチレーションカウンタで有機抽
出物の3 mlのアリコットをその中に含まれている放射活性について分析した。有
機相におけるカテコール関連放射活性のレベルがDMEのカテコール−O−メチルト
ランスフェラーゼ活性に比例する(Zhu, B. T. Liehr, J. G. (1996) 271:1357-
1363)。
【0370】 DMEのDHFR活性を、340nm (ε340 = 11,800 M-1・cm-1)においてNADPHの消滅の
後に15℃で分光光度法で測定する。標準的なアッセイ混合液は、100μM NADPH
、14mM 2−メルカプトエタノール、MTEN バッファ(50mM 2-morpholinoethanesu
lfonic acid、25 mM tris(hydroxymethyl)aminomethane、25mMエタノールアミン
、および100mM NaCl、pH7.0)を含み最終容量を2.0mlとする。反応は50μmのジ
ヒドロ葉酸(基質として)を追加して開始させる。反応液におけるNADPHのNADP
への酸化がジヒドロ葉酸の還元に一致し、サンプルにおけるDHFR活性の量に比
例する(Nakamura, T.およびIwakura, M. (1999) J. Biol. Chem. 274:19041-19
047)。
【0371】 DMEのアルド/ケト還元酵素活性を、NADPHが消費される時の340nmにおける吸
光率の低下を測定する。標準的な反応混合液は、135mMのリン酸ナトリウムバッ
ファ(酵素によりpH6.2〜7.2の範囲)、0.2mM NADPH、0.3M硫酸リチウム、0.5〜
2.5μg酵素、および好適なレベルの基質を含む。この混合液を30℃でインキュ
ベートし、反応を分光光度計で連続的に測定する。酵素活性は、酵素1μg当たり
消費されるNADPHのモル数として計算される。
【0372】 DMEのアルコールデヒドロゲナーゼ活性を、NADがNADHに還元される時の340n
mにおける吸光率の増大を利用して測定する。標準的な反応混合液は、50mMのリ
ン酸ナトリウム、pH7.5、および0.25mM EDTAである。反応液を25℃でインキュ
ベートし、分光光度計でモニタリングする。酵素活性は、酵素1μg当たり生成さ
れたNADHのモル数として計算する。
【0373】 DMEのカルボキシルエステラーゼ活性を、基質として4−酢酸メチルウンベルフ
ェリル(4-methylumbelliferyl acetate)を用いて測定する。酵素反応は、約10
μlのDME含有サンプルを、0.5mM 4−酢酸メチルウンベルフェリルを含む1mlの反
応バッファ(90mM KH2PO4, 40mM KC1, pH7.3)に加えて開始させる。4−メチル
ウンベルフェロンの生成を分光光度計(ε350 = 12.2mM-1・cm-1)で1分30秒
モニタリングする。酵素活性は、1分間に1mgのタンパク質で生成され生成物の
μモルとして表すことができ、サンプルにおけるDME活性に非例する(Evgenia,
V.他(1997) J. Biol. Chem. 272:14769-14775)。
【0374】 別法では、DMEのコカインベンゾイルエステルヒドロラーゼ(cocaine benzoyl
ester hydrolase)活性を、約0.1mlの酵素および3.3 mM コカインを、1mM benz
amidineおよび1mM EDTAを含む反応バッファ(50mM NaH2PO4, pH7.4)で37℃でイ
ンキュベートして測定する。全量で0.4mlの反応液を1時間インキュベートし、
等量の5%トリクロロ酢酸で終了させる。0.1mlの内部標準3,4−ジメチル安息香
酸(10μg/ml)を加える。沈降したタンパク質を10分間12,000×gで遠心分離
して分離する。上澄みを新しいチューブに移して、0.4mlの塩化メチレンで2回
抽出する。2つの抽出物を混ぜ、窒素を流して乾燥させる。この残滓を、100 ml
当たり8μ1のジエチルアミンを含む14%アセトニトリル、250mM KH2PO4、pH4.0に
再懸濁してから、C18逆相HPLCカラム上に注入して分離する。このカラム溶出液
を235nmでモニタリングする。DME活性は、内部標準に対する分析物のピーク面積
の割合を比較して定量する。標準曲線は、トリクロロ酢酸処理タンパク質基質内
に準備した安息香酸標準で作成する(Evgenia, V.他(1997) J. Biol. Chem. 272
:14769-14775)。
【0375】 別法では、水溶性基質であるパラニトロフェニル酪酸に対するDMEカルボキシ
ルエステラーゼ活性を、当分野で周知の分光光度法によって測定する。この方法
では、DME含有サンプルを、6 mMタウロコール酸塩の存在下で0.5M Tris-HCl (pH
7.4または8.0)または酢酸ナトリウム(pH5.0)で希釈する。このアッセイは、新た
に準備したパラニトロフェニル酪酸溶液(酢酸ナトリウムに100μg/ml, pH5.0)
を加えて開始する。次にカルボキシルエステラーゼ活性をモニタリングし、405n
mにセットした分光光度計で基質のコントロール自己加水分解と比較する(Wan,
L.他(2000) J. Biol. Chem. 275:10041-10046)。
【0376】 DMEのスルホトランスフェラーゼ活性を、[35S]PAPSからフェノールなどのモデ
ル基質内への35Sの取り込みを用いて測定する(Folds, A.およびMeek, J. L. (1
973) Biochim. Biophys. Acta 327:365-374)。酵素のアリコットを1mLの10mMリ
ン酸バッファ、pH6.4、50μMフェノール、および0.4〜4.0μM[35S]PAPSで37℃
でインキュベートする。放射標識の5〜20%が基質に転移するのに十分な時間が経
過した後、0.2mLの0.1M酢酸バリウムを加えタンパク質およびリン酸バッファを
沈降させる。次に0.2mLの0.1M Ba(OH)2を加え、その後に0.2mLのZnSO4を加える
。円心分離して上澄みをはっきりさせ、タンパク質および未反応の[35S]PAPSを
除去する。上澄みの放射活性をシンチレーションカウンタで測定する。酵素活性
は、反応生成物における放射活性のモル数から決定する。
【0377】 DMEのへパラン硫酸6−スルホトランスフェラーゼ活性を、DMEを含むサンプル
を、2.5μmolイミダゾールHC1 (pH6.8)、3.75μgの塩化プロタミン(protamine
chloride)、25nmolの完全に脱硫酸化されN−再硫酸化されたヘパリン(ヘキソサ
ミンとして)、および50pmol (約 5×105cpm)の[35S] アデノシン3'−リン酸5'−
ホスホ硫酸(PAPS)と共に最終反応容量50μlで37℃で20分間インキュベート
し、in vitroで測定する。この反応は、熱湯に反応チューブを1分間浸漬して停
止させる。0.1μmolのコンドロイチン硫酸A(グルクロン酸として)を、キャリ
アとして反応混合液に加える。35S標識ポリ多糖を、1.3%酢酸カリウムを含む冷
却した三倍量のエタノールで沈殿させ、脱塩カラムを用いてゲルクロマトグラフ
フィによって取り込まれなかった[35S]PAPSおよびその分解生成物から完全に分
離する。一単位の酵素活性を1分間に1pmolの硫酸を移送するのに必要な量と定
義し、沈殿した多糖の中に取り込まれた[35S]PAPSの量によって測定する(Habuc
hi, H.他 (1995) J. Biol.. Chem. 270:4172-4179)。
【0378】 別法では、DMEのへパラン硫酸6−スルホトランスフェラーゼ活性を、ドデシル
硫酸ナトリウムポリアクリアミドゲル電気泳動法(SDS-PAGE)によって分離した後
、ゲルから酵素を抽出して再生し測定する。分離した後、ゲルをバッファ(0.05
M Tris-HCl, pH8.0)で洗浄し、3〜5mmのセグメントに切断し、0.15M NaCIを含
む同じバッファを100μlで4℃で48時間撹拌する。溶出した酵素を遠心分離し
て収集し、上記したように、スルホトランスフェラーゼ活性についてアッセイす
る(Habuchi, H.他(1995) J. Biol. Chem. 270:4172-4179)。
【0379】 別法では、DMEのスルホトランスフェラーゼ活性を、[35S]PAPSから固定された
ペプチドへの[35S]硫酸の転移を測定して決定する。この固定されたペプチドは
、C末端システイン残基が付加された成熟P−セレクチン糖タンパク質リガンド−
1ポリペプチドのN末端の15残基である。このペプチドは3つの潜在的なチロシン
硫酸化部位に渡っている。このペプチドは、システイン残基によってヨードアセ
トアミド活性化樹脂に結合される(1mlの樹脂あたり1.5〜3.0μmolペプチドの密
度)。この酵素アッセイは、140mM Pipes (pH6.8)、0.3M NaCl、20mM MnCl2、50
mM NaF、1% Triton X-100、および1mM 5'-AMPを含む最終容量130μlにおいて10
μlのペプチド誘導体ビーズと2〜20μlのDME含有サンプルを結合させて行った。
このアッセイは、0.5μCiの[35S]PAPS (1.7μM; 1Ci = 37GBq)を加えて開始させ
た。37℃で30分経過した後に、反応ビーズを65℃で6Mグアニジンで洗浄し
、ビーズに取り込まれた放射活性を液体シンチレーションカウンタで測定する。
ビーズ結合ペプチドに移送された[35S]硫酸を測定し、サンプルにおけるDME活性
を決定する。1単位の活性は1分間に1pmolの生成物が生成されると定義する(O
uyang, Y-B.他 (1998) Biochemistry 95:2896-2901)。
【0380】 別法では、DMEスルホトランスフェラーゼのアッセイを、50mM Hepes-NaOH (pH
7.0)、250mM スクロース、1mMジチオスレイトール、14μM[35S]PAPS (15Ci/mmol
)、およびドーパミン(25μM),ρ−ニトロフェノール(5μM)またはその他の候補
基質を含む最終容量30μlにおいて硫酸供与体として[35S]PAPSを用いて行った。
アッセイの反応は、精製されたDME酵素試薬或いはDME活性を含むサンプルを加え
て開始させ、その反応を37℃で15分間続け、100℃で3分間加熱して停止
させる。生成された沈降物を遠心分離によって除去する。次に35S硫酸化物を調
べるために、上澄みを薄膜クロマトグラフィ或いは二次元薄膜分離方法のいずれ
かによって分析する。35S硫酸化物の同定ができるように好適な標準を上澄みと
平行に流し、反応性生物の移動の相対速度に基づいてDME含有サンプルの酵素特
異性を決定する(Sakakibara, Y.他 (1998) J. Biol. Chem. 273:6242-6247)。
【0381】 DMEのスクアレンエポキシラーゼ活性を、精製したDME (またはDMEを含む未精
製の混合液), 20mM Tris-HCl (pH7.5)、0.01mM FAD、0.2単位のNADPH−チトクロ
ームC (P-450)レダクターゼ、0.01 mM[l4C]スクアレン(20μlのTween 80を用い
て拡散された)、および0.2% Triton X-100を含む混合液においてアッセイする。
1mM NADPHを加えて反応を開始させ、37℃で30分間インキュベートする。非
けん化脂質を、酢酸エチル/ベンゼン(0.5:99.5, v/v)で作製したシリカゲルTLC
によって分析する。反応生成物を、DMEを含まない反応混合液による反応生成物
と比較する。2,3(S)−オキシドスクアレンの存在を、好適な脂質標準を用いて確
認する(Sakakibara, J.他(1995) 270:17-20)。
【0382】 DMEのエポキシドヒドロラーゼ活性を、エーテル抽出物のガスクロマトグラフ
ィ(GC)分析を用いて基質を除去した後、或いはアセトンで失活させた反応混合液
をGC分析により基質を除去してジオールを生成した後に測定する。DMEを含むサ
ンプルまたはエポキシドヒドロラーゼコントロールサンプルを、10mM Tris-HCl
(pH8.0)、1mM エチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)、および5mM エポキシド基質
(例えば、エチレンオキシド、スチレンオキシド、プロピレンオキシド、isopre
ne monoxide、エピクロロヒドリン、epibromohydrin、epifluorohydrin、グリシ
ドール、1,2-epoxybutane、1,2-epoxyhexane、または1,2-epoxyoctane)でイン
キュベートする。様々な時点でサンプルの一部を反応混合液から取り出して、内
部標準を含む1mlの氷冷アセトンに加えてGC分析を行う(例えば、1−ノナノール
)。タンパク質および塩を遠心分離(15分、4000×g)によって除去し、抽出
物を0.2mm×25m CP-Wax57-CBカラム(CHROMPACK, Middelburg, The Netherlands)
および水素炎イオン化検出器を用いてGCにより分析する。GC産物の同定は、当分
野で周知の好適な標準およびコントロールを用いて行う。1単位のDME活性は、
1分間に1μmolのジオール生成を触媒する酵素の量と定義する(Rink, R.他(199
7) J. Biol. Chem. 272:14650-14657)。
【0383】 DMEのアミノトランスフェラーゼ活性は、DMEを含むサンプルを、1mM L−キヌ
レニンおよび1mM 2-オキソグルタル酸の存在下で、最終容量200μlの70μM PLP
を含む150mM Tris 酢酸バッファ(pH8.0)で37℃で1時間インキュベートしてア
ッセイする。キヌレニン酸の生成は、当分野で周知の好適な標準およびコントロ
ールを用いて330nmで分光光度検出によりHPLCで定量する。別法では、L-3-ヒド
ロキシキヌレニンを基質として用い、キサンツレン酸の生成を340nmでのUV検出
で生成物のHPLC分析により測定する。キヌレニン酸およびキサンツレン酸の生成
はそれぞれ、アミノトランスフェラーゼ活性を示す(Buchli, R.他(1995) J. Bi
ol. Chem. 270:29330-29335)。
【0384】 別法では、DMEのアミノトランスフェラーゼ活性の測定は、酵素結合補助因子
であるピリドキサール5'-リン酸(PLP)のUV/VIS吸収スペクトルにおける変化をモ
ニタリングして、一回のターンオーバーの条件下で精製したDMEのサンプル或い
はDMEを含む未精製のサンプルの様々なアミノ酸およびオキソ酸基質に対する活
性をして決定して行う。この反応は、9μM 精製DME またはサンプル含有DMEおよ
び検査する基質(アミノ酸およびオキソ酸基質)を含む50mM4-メチルモルフォリ
ン(pH7.5)において25℃で行う。アミノ酸からオキソ酸への半反応の後に、酵
素結合PLPのピリドキサミン5'リン酸(PMP)への変換により生じる360nmにおけ
る吸収率の低下および330nmにおける吸収率の増加を測定する。DMEの特異性およ
び相対的な活性を、特定の基質に対する酵素活性によって測定する(Vacca, R.
A.他 (1997) J. Biol. Chem. 272:21932-21937) DMEのスーパーオキシドジスムターゼ活性を、細胞ペレット、培養した上澄み
、または精製したタンパク質試薬からアッセイする。サンプルすなわち溶解物を
15%非変性ポリアクリルアミドゲル上での電気泳動法によって分離する。この
ゲルを、2.5mMニトロブルーテトラゾリウムにおいて30分間インキュベートし
、その後30mMリン酸カリウム、30mM TEMED、および30μMリボフラビン(pH7.8)に
おいて20分間インキュベートする。スーパーオキシドジスムターゼ活性は、背
景のブルーに対して白いバンドとして見ることができ、ライトボックスでゲルに
照明を当てる。スーパーオキシドジスムターゼ活性の定量は、好適なスーパーオ
キシドジスムターゼのポジティブおよびネガティブコントロール(例えば、様々
な量の市販されている大腸菌スーパーオキシドジスムターゼなど)を用いて活性
ゲルの比重走査により行う(Harth, G.およびHorwitz, M. A. (1999) J. Biol. C
hem. 274:4281-4292)。
【0385】 18 DMEインヒビターの同定 検査する化合物を、実施例17のアッセイで記載したように、好適なバッファ
および基質と共に様々な濃度でマルチウェルプレートのウェルに入れる。DME活
性をそれぞれのウェルについて測定し、それぞれの化合物のDME活性を阻害する
能力を決定して用量反応曲線を作成する。このアッセイを用いてDME活性を促進
する分子を同定することが可能であろう。
【0386】 当業者は、本発明の範囲及び精神から逸脱することなく本発明の記載した方法
及びシステムの種々の改変を行うことができるであろう。特定の好適な実施例に
基づいて本発明を説明したが、本発明の範囲が、そのような特定の実施例に不当
に制限されるべきではないことを理解されたい。実際に、分子生物学或いは関連
する分野の専門家には明らかな、本明細書に記載の本発明の実施例の様々な改変
は、特許請求の範囲に含まれる。
【0387】 (表の簡単な説明) 表1は、本発明の完全長ポリヌクレオチド配列及びポリペプチド配列に対する
系統的な名称を示す。
【0388】 表2は、本発明のポリペプチドに最も近いGenBankの相同体のGenBankの識別番
号およびアノテーションを示す。ポリペプチドとそのGenBankの相同体との間の
一致を表す確率値スコアも示す。
【0389】 表3は、推定上のモチーフおよびドメインを含む本発明のポリペプチド配列の
構造的な特徴、並びに本発明のポリペプチドの分析に用いた方法、アルゴリズム
、および検索可能なデータベースを示す。
【0390】 表4は、本発明のポリヌクレオチド配列の組み立てに用いたcDNA断片およびゲ
ノムDNA断片のリスト、並びに本発明のポリヌクレオチド配列の選択された断片
のリストを示す。
【0391】 表5は、本発明のポリヌクレオチドの代表的なcDNAライブラリを示す。
【0392】 表6は、表5に示すcDNAライブラリの作製に用いた組織およびベクターを示す
付録である。
【0393】 表7は、本発明のポリヌクレオチド及びポリペプチドの分析に用いたツール、
プログラム、及びアルゴリズム、並びにその説明、引用文献、閾値パラメータを
示す。
【表1】
【表2】
【表3】
【表4】
【表5】
【表6】
【表7】
【表8】
【表9】
【表10】
【表11】
【表12】
【表13】
【表14】
【表15】
【表16】
【表17】
【表18】
【表19】
【配列表】
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) A61P 3/00 A61P 15/00 4C084 5/00 27/02 4H045 15/00 29/00 27/02 35/00 29/00 37/02 35/00 43/00 111 37/02 C07K 16/40 43/00 111 C12N 1/15 C07K 16/40 1/19 C12N 1/15 1/21 1/19 9/02 1/21 9/10 5/10 9/14 9/02 C12Q 1/26 9/10 1/34 9/14 1/48 C12Q 1/26 1/68 A 1/34 G01N 33/15 Z 1/48 33/50 Z 1/68 33/53 M G01N 33/15 33/566 33/50 C12N 15/00 ZNAA 33/53 5/00 A 33/566 A61K 37/02 (31)優先権主張番号 60/185,141 (32)優先日 平成12年2月25日(2000.2.25) (33)優先権主張国 米国(US) (31)優先権主張番号 60/186,818 (32)優先日 平成12年3月3日(2000.3.3) (33)優先権主張国 米国(US) (31)優先権主張番号 60/188,345 (32)優先日 平成12年3月9日(2000.3.9) (33)優先権主張国 米国(US) (31)優先権主張番号 60/189,997 (32)優先日 平成12年3月17日(2000.3.17) (33)優先権主張国 米国(US) (81)指定国 EP(AT,BE,CH,CY, DE,DK,ES,FI,FR,GB,GR,IE,I T,LU,MC,NL,PT,SE,TR),OA(BF ,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GW, ML,MR,NE,SN,TD,TG),AP(GH,G M,KE,LS,MW,MZ,SD,SL,SZ,TZ ,UG,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ, MD,RU,TJ,TM),AE,AG,AL,AM, AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BR,BY,B Z,CA,CH,CN,CR,CU,CZ,DE,DK ,DM,DZ,EE,ES,FI,GB,GD,GE, GH,GM,HR,HU,ID,IL,IN,IS,J P,KE,KG,KP,KR,KZ,LC,LK,LR ,LS,LT,LU,LV,MA,MD,MG,MK, MN,MW,MX,MZ,NO,NZ,PL,PT,R O,RU,SD,SE,SG,SI,SK,SL,TJ ,TM,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ, VN,YU,ZA,ZW (72)発明者 ボーグン、マライア・アール アメリカ合衆国カリフォルニア州94577・ サンレアンドロ・サンティアゴロード 14244 (72)発明者 ヤオ、モニーク・ジー アメリカ合衆国カリフォルニア州94043・ マウンテンビュー・フレデリックコート 111 (72)発明者 バンドマン、オルガ アメリカ合衆国カリフォルニア州94043・ マウンテンビュー・アンナアベニュー 366 (72)発明者 アジムザイ、ヤルダ アメリカ合衆国カリフォルニア州94552・ カストロバレー・ボールダーキャニオンド ライブ 5518 (72)発明者 ラル、プリーティ アメリカ合衆国カリフォルニア州95054・ サンタクララ・ラスドライブ 2382 (72)発明者 ガンディー、アミーナ・アール アメリカ合衆国カリフォルニア州94025・ メンロパーク・#1・ローブルアベニュー 837 (72)発明者 リング、ヒュイジュン・ジィー アメリカ合衆国カリフォルニア州94022・ ロスアルトス・オレンジアベニュー 625 (72)発明者 シー、レオ・エル アメリカ合衆国カリフォルニア州94303・ パロアルト・アパートメント ビー・タン ランドドライブ 1081 (72)発明者 ヤング、ジュンミング アメリカ合衆国カリフォルニア州95129・ サンノゼ・バークレーン 7125 (72)発明者 ポリッキー、ジェニファー・エル アメリカ合衆国カリフォルニア州95124・ サンノゼ・ナショナルアベニュー 4864 Fターム(参考) 2G045 AA40 DA12 DA13 DA14 FB02 4B024 AA01 BA08 BA10 BA11 CA04 CA09 DA02 DA06 EA02 EA04 GA11 GA18 GA19 HA03 HA14 4B050 CC01 CC03 DD07 LL01 LL10 4B063 QA01 QA18 QQ02 QQ20 QQ42 QR02 QR06 QR10 QR32 QR38 QR41 QR55 QR57 QR77 QR82 QS12 QS25 QS28 QS34 QS39 QX01 QX07 4B065 AA26X AA90X AA91X AA93X AA93Y AB01 AC14 BA01 CA27 CA44 4C084 AA02 AA07 AA17 BA01 BA08 BA21 BA22 BA23 DC50 NA14 ZA332 ZA662 ZA752 ZA812 ZB072 ZB112 ZB262 ZC022 ZC032 4H045 AA10 AA11 AA20 AA30 BA10 CA40 DA75 EA20 FA74

Claims (28)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 単離されたポリペプチドであって、 (a)SEQ ID NO:1乃至SEQ ID NO:12(SEQ ID NO:1−12)からなる群から選択
    されたアミノ酸配列と、 (b)SEQ ID NO:1−12からなる群から選択されたアミノ酸配列と少なくとも
    90%の配列同一性を有する天然のアミノ酸配列と、 (c)SEQ ID NO:1−12からなる群から選択されたアミノ酸配列の生物学的に
    活性な断片と、 (d)SEQ ID NO:1−12からなる群から選択されたアミノ酸配列の免疫原性断
    片とで構成される群から選択されたアミノ酸配列を含むことを特徴とする単離さ
    れたポリペプチド。
  2. 【請求項2】 SEQ ID NO:1−12からなる群から選択された請求項1の単
    離されたポリペプチド。
  3. 【請求項3】 請求項1のポリペプチドをコードする単離されたポリヌク
    レオチド。
  4. 【請求項4】 請求項2のポリペプチドをコードする単離されたポリヌク
    レオチド。
  5. 【請求項5】 SEQ ID NO:13−24からなる群から選択された請求項4の単
    離されたポリヌクレオチド。
  6. 【請求項6】 請求項3のポリヌクレオチドに機能的に結合されたプロモ
    ーター配列を含む組換えポリヌクレオチド。
  7. 【請求項7】 請求項6の組換えポリヌクレオチドで形質転換された細胞
  8. 【請求項8】 請求項6の組換えポリヌクレオチドを含む遺伝子組換え生
    物。
  9. 【請求項9】 請求項1のポリペプチドを生産する方法であって、 (a)前記ポリペプチドの発現に好適な条件下で、請求項1のポリペプチドを
    コードするポリヌクレオチドに機能的に結合されたプロモーター配列を含む組換
    えポリヌクレオチドで形質転換された細胞を培養するステップと、 (b)そのように発現したポリペプチドを回収するステップとを含むことを特
    徴とする請求項1のポリペプチドの生産方法。
  10. 【請求項10】 請求項1のポリペプチドに特異的に結合する単離された
    抗体。
  11. 【請求項11】 単離されたポリヌクレオチドであって、 (a)SEQ ID NO:13−24からなる群から選択されたポリヌクレオチド配列と、 (b)SEQ ID NO:13−24からなる群から選択されたポリヌクレオチド配列と少
    なくとも90%の配列同一性を有する天然のポリヌクレオチド配列と、 (c)前記(a)に相補的なポリヌクレオチド配列と、 (d)前記(b)に相補的なポリヌクレオチド配列と、 (e)前記(a)乃至(d)のRNA等価物とで構成される群から選択されたポ
    リヌクレオチド配列を含む単離されたポリヌクレオチド。
  12. 【請求項12】 請求項11のポリヌクレオチドの少なくとも60個の連
    続するヌクレオチドを含む単離されたポリヌクレオチド。
  13. 【請求項13】 サンプルにおいて、請求項11に記載のポリヌクレオチ
    ド配列を有する標的ポリヌクレオチドを検出する方法であって、 (a)前記サンプルをプローブでハイブリダイズするステップであって、前記
    プローブが、前記サンプル内の前記標的ポリヌクレオチドと相補的な配列を含む
    少なくとも20個の連続するヌクレオチドを含み、前記プローブと前記標的ポリ
    ヌクレオチドまたはその断片との間でハイブリダイゼーション複合体が形成され
    る条件下で、前記プローブが前記標的ポリヌクレオチドと特異的にハイブリダイ
    ズする、該ステップと、 (b)前記ハイブリダイゼーション複合体が存在するか否かを検出し、存在す
    る場合には随意選択でその収量を測定するステップとを含むことを特徴とする標
    的ポリヌクレオチドの検出方法。
  14. 【請求項14】 前記プローブが少なくとも60個の連続するヌクレオチ
    ドを含むことを特徴とする請求項13に記載の方法。
  15. 【請求項15】 サンプルにおいて、請求項11のポリヌクレオチド配列
    を有する標的ポリヌクレオチドを検出する方法であって、 (a)ポリメラーゼ連鎖反応増幅を用いて、前記標的ポリヌクレオチドまたは
    その断片を増幅するステップと、 (b)増幅された前記標的ポリヌクレオチドまたはその断片が存在するか否か
    を検出し、存在する場合には随意選択でその収量を測定するステップとを含むこ
    とを特徴とする標的ポリヌクレオチドの検出方法。
  16. 【請求項16】 有効量の請求項1のポリペプチド及び医薬的に容認でき
    る賦形剤を含む組成物。
  17. 【請求項17】 前記ポリペプチドが、SEQ ID NO:1−12からなる群から
    選択されたアミノ酸配列を含むことを特徴とする請求項16の組成物。
  18. 【請求項18】 機能的なDME(新規の薬剤代謝酵素)の発現の低下に関
    連する疾患や病態の治療方法であって、そのような治療が必要な患者に請求項1
    6の組成物を投与することを含むことを特徴とする治療方法。
  19. 【請求項19】 請求項1のポリペプチドのアゴニストとして効果的な化
    合物をスクリーニングする方法であって、 (a)請求項1のポリペプチドを含むサンプルを化合物に曝露するステップと
    、 (b)前記サンプルにおいてアゴニスト活性を検出するステップとを含むこと
    を特徴とするスクリーニング方法。
  20. 【請求項20】 請求項19のスクリーニング方法によって同定されたア
    ゴニスト化合物及び医薬的に容認できる賦形剤を含む組成物。
  21. 【請求項21】 機能的なDMEの発現の低下に関連する疾患や病態の治療
    方法であって、そのような治療が必要な患者に請求項20の組成物を投与するこ
    とを含むことを特徴とする治療方法。
  22. 【請求項22】 請求項1のポリペプチドのアンタゴニストとして効果的
    な化合物をスクリーニングする方法であって、 (a)請求項1のポリペプチドを含むサンプルを化合物に曝露するステップと
    、 (b)前記サンプルにおいてアンタゴニスト活性を検出するステップとを含む
    ことを特徴とするスクリーニング方法。
  23. 【請求項23】 請求項22のスクリーニング方法によって同定されたア
    ンタゴニスト化合物及び医薬的に容認できる賦形剤を含む組成物。
  24. 【請求項24】 機能的なDMEの過剰な発現に関連する疾患や病態の治療
    方法であって、そのような治療が必要な患者に請求項23の組成物を投与するこ
    とを含むことを特徴とする治療方法。
  25. 【請求項25】 請求項1のポリペプチドに特異的に結合する化合物をス
    クリーニングする方法であって、 (a)請求項1のポリペプチドを好適な条件下で少なくとも1つの試験化合物
    と結合させるステップと、 (b)請求項1のポリペプチドと前記試験化合物との結合を検出して、請求項
    1のポリペプチドと特異的に結合する化合物を同定するステップとを含むことを
    特徴とするスクリーニング方法。
  26. 【請求項26】 請求項1のポリペプチドの活性を変化させる化合物をス
    クリーニングする方法であって、 (a)請求項1のポリペプチドを、その活性が許容される条件下で少なくとも
    1つの試験化合物と結合させるステップと、 (b)前記試験化合物の存在下での請求項1のポリペプチドの活性を評価する
    ステップと、 (c)前記試験化合物の存在下での請求項1のポリペプチドの活性と、前記試
    験化合物の不在下での請求項1のポリペプチドの活性とを比較するステップとを
    含み、 前記試験化合物の存在下での請求項1のポリペプチドの活性の変化が、請求項
    1のポリペプチドの活性を変化させる化合物の存在を示唆すること特徴とするス
    クリーニング方法。
  27. 【請求項27】 請求項5の配列を含む標的ポリヌクレオチドの発現を変
    化させるのに効果的な化合物をスクリーニングする方法であって、 (a)前記標的ポリヌクレオチドの発現に好適な条件下で、前記標的ポリヌク
    レオチドを含むサンプルを化合物に曝露するステップと、 (b)前記標的ポリヌクレオチドの発現の変化を検出するステップと、 (c)様々な量の前記化合物の存在下での前記標的ポリヌクレオチドの発現と
    、前記化合物の不在下での前記標的ポリヌクレオチドの発現とを比較するステッ
    プとを含むことを特徴とするスクリーニング方法。
  28. 【請求項28】 試験化合物の毒性を評価する方法であって、 (a)核酸を含む生体サンプルを前記試験化合物で処理するステップと、 (b)処理した前記生体サンプルの核酸と、請求項11のポリヌクレオチドの
    少なくとも20の連続するヌクレオチドを含むプローブをハイブリダイズさせる
    ステップであって、このハイブリダイゼーションゼーションが、前記プローブと
    前記生体サンプルの標的ポリヌクレオチドとの間で特異的なハイブリダイゼーシ
    ョン複合体が形成される条件下で行われ、前記標的ポリヌクレオチドが、請求項
    11のポリヌクレオチドのポリヌクレオチド配列またはその断片を含むポリヌク
    レオチドである、前記ステップと、 (c)ハイブリダイゼーション複合体の収量を定量するステップと、 (d)前記処理した生体サンプルにおけるハイブリダイゼーション複合体の収
    量を、未処理の生体サンプルにおけるハイブリダイゼーション複合体の収量と比
    較するステップとを含み、 前記処理した生体サンプルにおけるハイブリダイゼーション複合体の収量の差
    が試験化合物の毒性を示唆することを特徴とする試験化合物の毒性評価方法。
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