JP2004526414A - 薬物代謝酵素 - Google Patents

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Abstract

本発明はヒト薬物代謝酵素(DME)およびDMEを同定し、コードするポリヌクレオチドを提供する。本発明はまた、発現ベクター、宿主細胞、抗体、アゴニストおよびアンタゴニストをも提供する。本発明はまた、DMEの異常発現に関連する疾患を診断、治療または予防する方法をも提供する。

Description

【0001】
(技術分野)
本発明は、薬剤代謝酵素の核酸配列及びアミノ酸配列に関する。 本発明はまた、これらの配列を自己免疫/炎症の疾患、細胞増殖異常、発生または発達障害、内分泌障害、眼の疾患、代謝障害、および肝臓の疾患を含む胃腸疾患の診断・治療・予防に利用することに関する。 本発明はさらに、薬剤代謝酵素の核酸配列及びアミノ酸配列の発現における外来性化合物の効果についての評価に関する。
【0002】
(発明の背景)
薬剤の代謝および薬剤の体内での移動(薬物動態学)は、その効果、毒性、および他の薬剤との相互作用を決定する上で重要である。薬剤の吸収、様々な組織への分布、および薬剤代謝産物の排泄の3つのプロセスが薬物動態を支配している。様々な代謝調節によって、溶解性、受容体との結合性、および排泄速度を含む薬剤の物理化学的特性および薬理学的特性の大部分が変えられるため、これらのプロセスは、薬剤代謝に密接に関連している。薬剤を変える代謝経路はまた、ステロイド、脂肪酸、プロスタグランジン、ロイコトリエン、およびビタミン等の様々な天然の基質を受容する。従って、これらの経路における酵素は、天然の化合物、薬剤、発癌物質、変異誘発物質および生体異物との間の生化学的および薬理学的相互作用の重要部位となる。
【0003】
薬剤代謝における遺伝的な差異が、個人間において薬剤効果および毒性のレベルの著しい違いを引き起こすことが以前から知られている。治療指数が狭い薬剤、またはコデイン等の生理活性を必要とする薬剤の場合、このような遺伝子多型は極めて重要である。更に、一部の患者群のみに副作用を引き起こす毒性があることから有望な新規の薬剤が臨床試験で排除されることがよくある。薬剤代謝酵素が重要な部分を占める薬理ゲノミックス研究が進歩すれば、薬剤の効果および毒性の疑問に耐え得るツールが発展し、そのような情報が拡大されるであろう(Evans, W. E.およびR. V. Relling (1999) Science 286 : 487−491を参照)。
【0004】
薬剤代謝反応は、薬剤分子を機能させて更なる代謝のために準備するフェーズI、およびそれに引き続くフェーズIIに分類される。一般に、フェーズIの反応生成物は部分的或いは完全に不活性であり、フェーズIIの反応生成物は主に排泄物である。しかしながら、フェーズI反応生成物は、投与された元の薬剤よりも活性が高い場合があり、この代謝活性の原理がプロドラッグとして利用される(例えば、L−ボドパ)。加えて、或る種の非毒性化合物(例えば、アフラトキシン、ベンゾ[a]ピレン)は、これらの経路を経て代謝されて毒性中間体になる。フェーズI反応は通常、薬剤代謝における律速段階である。化合物或いは他の複数の化合物への事前の暴露によって、フェーズI酵素の発現を誘発させることができるが、それによってこの代謝経路を介する基質の流入が増大する(Klaassen, C. D.他(1996) Casarett and Doull’s Toxicology The Basic Science of Poisons, McGraw−Hill, New York, NY, 113−186 頁; Katzung,B. G. (1995) Basic and Clinical Pharmacology, Appleton および Lange, Norwalk, CT, 48−59頁 ; G. G. Gibson および P. Skett (1994) Introduction to Drug Metabolism, Blackie Academic and Professional, Londonを参照)。
【0005】
薬剤代謝酵素(DME)は幅広い基質特異性を有する。これは、多種多様な抗体がそれらの抗原に対して高い特異性を有する免疫系とは対照的である。多様な分子を代謝するDMEの能力によって、代謝レベルにおける薬剤の相互作用の可能性が生まれる。例えば、或る化合物によってDMEが誘導されることにより、その酵素によって別の化合物が代謝され得る。
【0006】
DMEは、それらが触媒する反応の種類および関係する補助因子に従って分類することができる。フェーズI酵素の主なクラスには、限定するものではないがチトクロームP450およびフラビン含有モノオキシゲナーゼが含まれる。フェーズ I 型触媒サイクルおよび反応に関与する他の酵素のクラスには、限定するものではないが、NADPHチトクロームP450還元酵素(CPR)、ミクロソームチトクロームb5/NADHチトクロームb5レダクターゼ系、フェレドキシン/フェレドキシンレダクターゼレドックス対、アルド/ケト還元酵素、およびアルコールデヒドロゲナーゼが含まれる。フェーズII酵素の主なクラスには、限定するものではないが、UDPグルクロニルトランスフェラーゼ、スルホトランスフェラーゼ、グルタチオンSトランスフェラーゼ、Nアシルトランスフェラーゼ、およびNアセチルトランスフェラーゼが含まれる。
【0007】
チトクローム P450 および P450 触媒サイクル関連酵素
酵素チトクロームP450のスーパーファミリーのメンバーは、様々な基質の酸化的代謝を触媒する。 そのような基質には、ステロイド、脂肪酸、プロスタグランジン、ロイコトリエン、およびビタミン等の天然の化合物や、薬剤、発癌物質、変異誘発物質、および生体異物が含まれる。P450ヘム−チオレートタンパク質としても知られるチトクロームP450は通常、P450含有モノオキシゲナーゼ系と呼ばれる多成分電子伝達鎖における末端酸化酵素として作用する。触媒される特定の反応には、ヒドロキシル化、エポキシ化、N−酸化、スルホキシド化、N−脱アルキル化、S−脱アルキル化、およびO−脱アルキル化、脱硫酸化、脱アミノ化、並びにアゾ、ニトロ、およびN−オキシド基の還元が含まれる。これらの反応は、動物における糖質コルチコイド、コルチゾール、エストロゲン、およびアンドロゲンのステロイド産生や、昆虫における殺虫剤耐性や、植物における除草剤耐性および花の発色や、微生物による環境浄化バイオレメディエーションに関係する。薬剤、発癌物質、変異誘発物質、および生体異物にチトクロームP450が作用して、物質の解毒或いはより毒性の強い生成物への変換を引き起こし得る。チトクロームP450は肝臓に豊富に存在するが、その他の組織にも存在し、その酵素はミクロソームに存在する(ExPASY ENZYME EC 1. 14. 14. 1 ; Prosite PDOC00081 Cytochrome P450 cysteine heme−iron ligand signature ; PRINTS EP450I E−Class P450 Group I signature ; Graham−Lorence, S.およびPeterson, J. A. (1996) FASEB J. 10 : 206−214.を参照)。
【0008】
400種類のチトクロームP450が、細菌、真菌、植物、および動物を含む様々な生物において同定されている(Graham−Lorence、前出)。Bクラスは原核生物および真菌に見られ、Eクラスは細菌、植物、昆虫、脊椎動物、および哺乳動物に見られる。5つのサブクラス即ちグループが、EクラスチトクロームP450の大きなファミリーの中に含まれる(PRINTS EP450I E−Class P450 グループ I シグネチャ)。
【0009】
全てのチトクロームP450はヘム補助因子を用いており、構造的特性を共有する。ほとんどのチトクロームP450は、400〜530のアミノ酸の長さである。酵素の二次構造は、約70%のαヘリックスと約22%のβシートである。タンパク質のC末端部におけるヘム結合部位の周りの領域は、全てのチトクロームP450に保存されている。このヘム−鉄結合領域におけるアミノ酸10個のシグネチャ配列が同定されており、この配列には第5の配位部位にあるヘム−鉄の結合に関与する保存されたシステインが含まれている。真核生物チトクロームP450では、通常は膜貫通領域がタンパク質の初めの15〜20のアミノ酸において見られ、通常は約15の疎水性残基およびそれに続く正に帯電した残基からなる(Prosite PDOC00081前出 ; Graham−Lorence前出を参照)。
【0010】
チトクロームP450酵素は、細胞増殖および発達に関係する。この酵素は、化学物質を代謝して、DNAと付加物を形成する反応性中間体にすることで起こる化学的な変異誘発および発癌において或る役割を果たす(Nebert, D. W.およびGonzalez, F. J. (1987) Ann. Rev. Biochem. 56 : 945−993)。これらの付加物が、発癌を引き起こすヌクレオチドの改変およびDNAの再編成を引き起こし得る。肝臓およびその他の組織におけるチトクロームP450の発現は、多環式芳香族炭化水素、ペルオキシソーム増殖因子、フェノバルビタール、および糖質コルチコイドデキサメタゾン等の生体異物によって引き起こされる(Dogra, S. C.他 (1998) Clin. Exp. Pharmacol. Physiol. 25 : 1−9)。チトクロームP450タンパク質は、P450遺伝子CYP1B 1における突然変異が原発性先天性緑内障を引き起こすように、目の発達に関与し得る(Online Mendelian Inheritance in Man (OMIM) *601771 Cytochrome P450, subfamily I (dioxin−inducible), polypeptide 1 ; CYP1B 1)。
【0011】
チトクロームP450は炎症および感染に関係する。肝チトクロームP450活性は、様々な感染および炎症性の刺激によって著しく増減される(Morgan, E. T. (1997) Drug Metab. Rev. 29 : 1129−1188)。in vivoで観察される効果は、炎症誘発性のサイトカインおよびインターフェロンによって模倣され得る。2つのチトクロームP450タンパク質に対する自己抗体は、自己免疫性多発性内分泌腺−カンジダ−外胚葉性ジストロフィ(APECED)即ち多腺性自己免疫症候群の患者に見られた(OMIM *240300 Autoimmune polyenodocrinopathy−candidiasis−ectodermal dystrophy)。
【0012】
チトクロームP450における突然変異は、副腎皮質過形成(乳児期および幼児期の副腎機能不全において最も一般的)、偽ビタミンD−欠損くる病、脳腱黄色腫症(進行性の神経障害、早期アテローム性動脈硬化症、および白内障によって特徴付けられる脂質貯蔵病)、抗凝血薬であるクマリンおよびワルファリンに対する遺伝性の耐性を含む代謝障害に関係する(Isselbacher, K. J.他 (1994) Harrison’s Principles of Internal Medicine, McGraw−Hill, Inc. New York, NY, 1968−1970頁 ; Takeyama, K.他 (1997) Science 277 : 1827−1830 ; Kitanaka, S.他 (1998) N. Engl. J. Med. 338 : 653−661 ; OMIM *213700 Cerebrotendinous xanthomatosis ; および OMIM #122700 Coumarin resistance)。チトクロームP450タンパク質アロマターゼの極端に高度の発現が、重度の女性化乳房(女性化)の少年の繊維層板肝細胞癌に見られた(Agarwal, V. R. (1998) J. Clin. Endocrinol. Metab. 83 : 1797−1800)。
【0013】
チトクロームP450触媒サイクルは、NADPHチトクロームP450レダクターゼ(CPR)によるチトクロームP450の還元によって完了する。チトクロームb5およびNADPHチトクロームb5レダクターゼからなる別のミクロソーム電子伝達系からのチトクロームP450触媒サイクルへの電子の寄与は、小規模であると一般的に見られている。しかしながら、Lamb, D. C.他(1999 ; FEBS Lett. 462 : 283−288)による近年の研究報告から、ミクロソームチトクロームb5/NADPHチトクロームb5レダクターゼ系によって効果的に還元され、支持され得るCandida albicansチトクロームP450(CYP51)が確認された。従って、この別の電子供与系によって支持される多くのチトクロームP450が存在すると思われる。
【0014】
チトクロームb5レダクターゼはまた、赤血球細胞における酸化型ヘモグロビン(酸素を保持することができないメトヘモグロビン)を活性型ヘモグロビン(フェロヘモグロビン)へ還元する。酸化剤、または十分に還元されていない異常なヘモグロビン(ヘモグロビンM)が高いレベルで存在すると、メトヘモグロビン血症が引き起こされる。メトヘモグロビン血症はまた、赤血球チトクロームb5レダクターゼの先天的な欠損症からも起こり得る(Mansour, A.およびLurie, A. A. (1993) Am. J. Hematol. 42 : 7−12を参照)。
【0015】
チトクロームP450ファミリーのメンバーもまた、ビタミンDの合成および異化に密接に関係している。ビタミンDは、植物組織で生成されるエルゴカルシフェロール(ビタミンD2)および動物組織で生成されるコレカルシフェロール(ビタミンD3)の2つに生物学的に等価なプロホルモンとして存在する。後者のコレカルシフェロールは、7−デヒドロコレステロールが近紫外線(例えば、290〜310 nm)に曝露されると形成される。 通常は、皮膚が短時間日光に曝されると生成される(Miller, W. L.およびPortale, A. A. (2000) Trends in Endocrinol. Metab. 11 : 315−319を参照)。
【0016】
両方のホルモン型は更に、肝臓において酵素25−ヒドロキシラーゼによって25−ヒドロキシビタミンD(25(OH)D)に代謝される。25 (OH) Dは最も豊富に存在するビタミンDの前駆体であって、腎臓でさらに酵素25−ヒドロキシビタミンD 1α−ヒドロキシラーゼ(1α−ヒドロキシラーゼ)によって代謝されて、活性型である1α,25−ジヒドロキシビタミンD(1α,25(OH)D)になる。1α,25(OH)D生成の調節は主に合成経路の最終ステップで行われる。1α−ヒドロキシラーゼの活性は、酵素産物(1α,25(OH)D)の循環レベル、並びに副甲状腺ホルモン(PTH)、カルシトニン、インスリン、カルシウム、リン、成長ホルモン、およびプロラクチンのレベルを含む幾つかの生理学的因子に左右される。更に、腎臓外の1α−ヒドロキシラーゼ活性が報告され、組織特異的かつ局所的なlα, 25 (OH) D生成の調節が生物学的に重要であると考えられる。lα,25(OH)Dの24,25−ジヒドロキシビタミンD(24,25(OH)D)への触媒作用は、酵素25−ヒドロキシビタミンD24−ヒドロキシラーゼ(24−ヒドロキシラーゼ)を伴い腎臓でも起こる。24−ヒドロキシラーゼはまた、基質として25 (OH)Dを利用することができる(Shinki, T.他 (1997) Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A. 94 : 12920−12925 ; Miller, W. L.およびPortale, A. A.、前出、を参照)。
【0017】
ビタミンD25−ヒドロキシラーゼ、lα−ヒドロキシラーゼ、および24−ヒドロキシラーゼは全て、NADPH依存性I型(ミトコンドリア)チトクロームP450酵素であって、そのファミリーの他のメンバーと高い相同性を示す。ビタミンD25−ヒドロキシラーゼはまた、幅広い基質特異性を有し、胆汁酸中間体の26−ヒドロキシル化およびコレステロールの25−ヒドロキシル化、26−ヒドロキシル化、および27−ヒドロキシル化を行う(Dilworth, F. J.他 (1995) J. Biol. Chem. 270 : 16766−16774 ; Miller, W. L.およびPortale, A. A. 前出、を参照)。
【0018】
ビタミンDの活性型(lα,25(OH)D)は、カルシウムおよびリン酸の恒常性に関与し、骨髄細胞および皮膚細胞の分化を促進する。ビタミンDの代謝に関与する酵素(例えば、1α−ヒドロキシラーゼ)の欠損によって生じるビタミンD欠乏症は、低カルシウム血症、低リン酸血症、ビタミンD依存性 (感受性)くる病、骨密度の低下並びにヨタヨタ歩行を伴う内反膝およびO脚という症状を示す疾患を引き起こす。ビタミンD25−ヒドロキシラーゼの欠損は、脳腱黄色腫症や、アキレス腱、脳、肺、およびその他の多くの組織におけるコレステロールおよびコレスタノールの蓄積という特徴をもつ脂質貯蔵病を引き起こす。この疾患は、思春期後の小脳性運動失調症、アテローム性動脈硬化症、および白内障を含む進行性の神経障害を示す。ビタミンD25−ヒドロキシラーゼの欠損によってくる病が起きないことから、25(OH)D合成の別の経路が存在することが推定される(Griffin, J. E.およびZerwekh, J. E. (1983) J. Clin. Invest. 72 : 1190−1199 ; Gamblin, G. T.他 (1985) J. Clin. Invest. 75 : 954−960 ; およびW. L.およびPortale, A. A. 前出)。
【0019】
フェレドキシンおよびフェレドキシンレダクターゼは電子伝達アクセサリータンパク質であって、少なくとも1つのヒトチトクロームP450種、CYP27遺伝子によってコードされるチトクロームP450c27を支持する(Dilworth, F. J.他 (1996) Biochem. J. 320 : 267−71)。ストレプトマイセス‐グリセウスチトクロームP450であるCYP104D1は、大腸菌において異種と共に発現され、内在性フェレドキシンおよびフェレドキシンレダクターゼ酵素によって還元されている(Taylor, M.他 (1999) Biochem. Biophys. Res. Commun. 263 : 838−42)。 このことから、多くのチトクロームP450種が、フェレドキシン/フェレドキシンレダクターゼ対によって支持されていることが推定される。フェレドキシンレダクターゼはまた、モデル薬剤代謝系に見られ、抗腫瘍性抗生物質であるアクチノマイシンDを反応性フリーラジカル種に還元することが知られている(Flitter, W. D.およびMason, R. P. (1988) Arch. Biochem. Biophys. 267 : 632−639)。
フラビン含有モノオキシゲナーゼ( FMO
フラビン含有モノオキシゲナーゼは、求核性の窒素、硫黄、およびリンのヘテロ原子のように異例な範囲の基質を酸化する。チトクロームP450と同様に、FMOはミクロソーム酵素であり、NADPHおよびOを用い、その基質がチトクロームP450の基質と広範に重なる。FMOは、肝臓、腎臓、および肺などの組織に分布している。
【0020】
組織特異的に発現される5つの異なった既知のFMOのアイソフォーム(FMO1、FMO2、FMO3、FM04、およびFMO5)が哺乳動物に見られる。これらのアイソフォームは組織特異性が異なり、更に様々な化合物による阻害および反応の立体特異性等のその他の特性も異なる。FMOは、アミノ酸13個のシグネチャ配列を有し、その成分は配列のN末端の3分の2にまたがり、多くのNヒドロキシル化酵素に見られるFATGYモチーフおよびFAD結合領域を含む(Stehr, M.他 (1998) Trends Biochem. Sci. 23 : 56−57 ; PRINTS FMOXYGENASE Flavin−containing monooxygenase signature)。
【0021】
特異的な反応には、求核性三級アミンのNオキシドへの酸化、二級アミンのヒドロキシルアミンおよびニトロンへの酸化、一級アミンのヒドロキシルアミンおよびオキシムへの酸化、および硫黄含有化合物およびホスフィンのS−オキシドおよびP−オキシドへの酸化が含まれる。ヒドラジン、ヨウ化物、セレン化物、および硼素含有化合物も基質である。FMOは化学的にチトクロームP450に類似しているが、FMOはその熱不安定性およびチトクロームP450の非イオン界面活性剤感受性に基づいてin vitroのチトクロームP450から通常は区別することができる。 しかしながら、FMOのアイソフォームによって熱安定性および界面活性剤感受性が異なるため、これらの特性を区別に用いることは複雑である。
【0022】
FMOは、幾つかの薬剤および生体異物の代謝に重要な役割を果たしている。FMO(肺FMO3)は、尿中に排出される(S)ニコチンの(S)ニコチンN−1’−オキシドへの代謝において主要な役割を果たす。FMOはまた、胃潰瘍の治療に広く用いられているH−アンタゴニストであるシメチジンのS−酸素化に関係する。FMOの肝臓発現型は、チトクロームP450と同じ調節制御下にない。例えば、ラットにおいて、フェノバルビタール治療によりチトクロームP450が生成されるが、FMO1は抑制される。
FMOの内因性基質には、ジスルフィドに酸化されるシステアミン、シスタミンおよびトリメチルアミンN−オキシドに代謝されるトリメチルアミン(TMA)が含まれる。TMAは腐った魚のような臭いがし、FMO3アイソフォームの突然変異によって、悪臭がする遊離アミンが大量に汗、尿、および呼気から排出されるようになる。このような現象は、魚臭症候群引き起こす(OMIM 602079 Trimethylaminuria)。
【0023】
リシルオキシダーゼ
リシルオキシダーゼ(リシン6−オキシダーゼLO)は、コラーゲンとエラスチンの架橋結合による結合組織マトリクスの形成に関与する銅依存性アミンオキシダーゼである。LOは、約50 kDaのNグリコシル化前駆体タンパク質として分泌され、この前駆体も活性ではあるが、メタロプロテアーゼによって酵素の成熟型に切断される。LOの銅原子は、酸素へ電子を伝達したりその反対に酸素から電子を取り除いたりすることに関係し、これらの細胞外マトリクスタンパク質におけるリシン残基の酸化的脱アミノ反応を促進する。銅の配位がLO活性に必須であるが、食事によって銅が摂取されなくてもアポ酵素の発現はその影響を受けない。しかしながら、機能的なLOの不在は、食事による銅の欠損に関係する骨格組織および血管組織の疾患に関係する。LOはまた、様々なセミカルバジド、ヒドラジン、および亜硝酸アミノ、並びにヘパリンによって阻害される。β−アミノプロピオノニトリルは一般にインヒビターとして用いられる。LOの活性は、オゾン、カドミウム、および局所組織外傷に応答して放出されるホルモンのレベルの上昇に応答して増大する。 このようなホルモンには、トランスフォーミング成長因子−β、血小板由来成長因子、アンギオテンシンII、および線維芽成長因子等が含まれる。LO活性における異常は、メンケス症候群および後角症候群(occipital horn syndrome(X連鎖劣性遺伝性疾患))に関係する。サイトゾル型の酵素は異常な細胞増殖に関係する(Rucker, R. B.他. (1998) Am. J. Clin. Nutr. 67 : 996S−1002SおよびSmith−Mungo. L. I.およびKagan, H. M. (1998) Matrix Biol. 16 : 387−398を参照)。
【0024】
ジヒドロ葉酸レダクターゼ
ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)は遍在性の酵素であって、ジヒドロ葉酸のテトラヒド葉酸へのNADPH依存性の還元を触媒するが、この反応はグリシンおよびプリンの新規な合成並びにデオキシウリジン一リン酸(dUMP)のデオキシチミジン一リン酸(dTMP)への変換における重要な過程である。この基本的な反応は、
7,8−ジヒドロ葉酸+NADPH→5,6,7,8−テトラヒド葉酸+NADPである。
【0025】
この酵素は、トリメトプリムおよびメトトレキセートを含む多くのジヒドロ葉酸類似体によって阻害され得る。豊富なdTMPがDNAの合成に必要であるため、迅速な細胞の分裂にはDHFR活性が必要である。DNAウイルス(例えば、ヘルペスウイルス)の複製はまた、高いレベルのDHFR活性を必要とする。そのため、DHFRを標的とする薬剤が、DNAウイルスの複製を抑制するために癌の化学療法に用いられている(同様の理由で、チミジル酸シンターゼが標的酵素である)。DHFRを抑制する薬剤は、急激に分裂する細胞(またはDNAウイルス感染細胞)に対して細胞毒であるのが好ましいが、特異性を持たず、分裂する細胞を無差別に破壊する。更に、癌細胞は、獲得性の輸送障害または1つ以上のDHFR遺伝子の複製の結果として、メトトレキセート等の薬剤に対して耐性を有するようになり得る(Stryer, L (1988) Biochemistry. W. H Freeman および Co., Inc. New York. 511−5619頁)。
【0026】
アルド/ケト還元酵素
アルド/ケト還元酵素は、単量体NADPH依存性オキシドレダクターゼであり、幅広い基質特異性を有する(Bohren, K. M.等 (1989) J. Biol. Chem. 264 : 9547−9551)。これらの酵素は、カルボニル含有糖および芳香族化合物を含むカルボニル含有化合物が対応するアルコールに還元されるのを触媒する。従って、様々なカルボニル含有薬剤および生体異物はこのクラスの酵素によって代謝されると思われる。
ファミリーメンバーであるアルドースレダクターゼによって触媒される既知の或る反応は、グルコースがソルビトールへ還元され、更にソルビトールデヒドロゲナーゼによってフルクトースに代謝される。通常の条件下で、グルコースのソルビトールへの還元は主な経路ではない。しかしながら、高血糖状態では、ソルビトールの蓄積は糖尿病合併症の発症に関係する(OMIM *103880 Aldo−keto reductase family 1, member B1)。この酵素のファミリーのメンバーはまた、或る種の肝癌で高度に発現される(Cao, D.他 (1998) J. Biol. Chem. 273 : 11429−11435)。
【0027】
アルコールデヒドロゲナーゼ
アルコールデヒドロゲナーゼ(ADH)は、単純アルコールを対応するアルデヒドに酸化する。ADHはサイトゾル酵素であって、補助因子NAD+を好み亜鉛イオンを結合させる。ADHのレベルは肝臓において最も高く、腎臓、肺、および胃粘膜においては低い。
【0028】
既知のADHアイソフォームは、40 kDaのサブユニットからなる二量体タンパク質である。これらのサブユニット(a、b、g、p、c)をコードする5つの既知の遺伝子座が存在し、その内の幾つかは特徴的な対立遺伝子変異体(b1、b2、b3、g1、g2)を有することを特徴とする。サブユニットはホモ二量体およびヘテロ二量体を形成することができ、サブユニットの構成によって活性な酵素の特異的特性が決定される。従って、ホロ酵素がクラスI(サブユニット構成、aa、ab、ag、bg、gg)、クラスII(pp)、およびクラスIII(cc)として分類される。クラスI ADHイソ酵素はエタノールおよびその他の小さい脂肪族アルコールを酸化し、ピラゾールによって阻害される。クラスIIイソ酵素は長鎖の脂肪族アルコールおよび芳香族アルコールを好み、メタノールを酸化できない。 また、ピラゾールによって阻害されない。クラスIIIイソ酵素は、更に長い長鎖脂肪族アルコール(5炭素およびそれ以上)および芳香族アルコールを好み、ピラゾールによって阻害されない。
【0029】
短鎖アルコールデヒドロゲナーゼには、様々な基質特異性を有する幾つかの関連酵素が含まれる。このグループに含まれるものは哺乳動物酵素であるD−β−ヒドロキシ酪酸デヒドロゲナーゼ、(R)−3−ヒドロキシ酪酸デヒドロゲナーゼ、15−ヒドロキシプロスタグランジンデヒドロゲナーゼ、NADPH−依存性カルボニルレダクターゼ、コルチコステロイド11−β−デヒドロゲナーゼ、エストラジオール−17−β−デヒドロゲナーゼ、細菌酵素であるアセトアセチル−CoAレダクターゼ、グルコース1−デヒドロゲナーゼ、3−β−ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ、20−β−ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ、リビトールデヒドロゲナーゼ、3−オキソアシルレダクターゼ、2,3−ジヒドロ−2,3−ジヒドロキシ安息香酸デヒドロゲナーゼ、ソルビトール−6−リン酸2−デヒドロゲナーゼ、7−α−ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ、cis−1, 2−ジヒドロキシ−3,4シクロヘキサジエン−1−カルボン酸デヒドロゲナーゼ、シス−トルエンジヒドロジオールデヒドロゲナーゼ、シス−ベンゼングリコールデヒドロゲナーゼ、ビフェニル−2,3−ジヒドロ−2,3−ジオールデヒドロゲナーゼ、N−アシルマンノサミン1デヒドロゲナーゼ、および2−デオキシ−D−グルコン酸3−デヒドロゲナーゼがある(Krozowski, Z. (1994) J. Steroid Biochem. Mol. Biol. 51 : 125−130 ; Krozowski, Z. (1992) Mol. Cell Endocrinol. 84 : C25−31 ; およびMarks, A. R.他 (1992) J. Biol. Chem. 267 : 15459−15463)。
【0030】
UDP グルクロニルトランスフェラーゼ
UDPグルクロニルトランスフェラーゼファミリー(UGT)のメンバーは、補助因子ウリジン二リン酸−グルクロン酸(UDP−グルクロン酸)から基質へのグルクロン酸基の転移を触媒する。この転移は、通常は求核性ヘテロ原子(O、N、またはS)に対して行われる。基質には、フェーズI反応によって機能するようになる生体異物、並びにビリルビン、ステロイドホルモン、および甲状腺ホルモン等の内因性化合物が含まれる。グルクロン酸抱合の生成物は、基質の分子量が約250 g/mol未満であれば尿中に排泄されるが、グルクロン酸抱合された基質がそれより大きい場合は胆汁に排泄される。
【0031】
UGTは肝臓、腎臓、小腸、皮膚、脳、脾臓、および鼻粘膜のミクロソームに局在する。 これらの局在化位置は、チトクロームP450酵素およびフラビン含有モノオキシゲナーゼと同じ小胞体膜の側であるため、フェーズI薬剤代謝の生成物への到達に理想的な位置である。UGTは、そのUGTを小胞体膜に固着するC末端膜貫通ドメイン、並びにそのC末端部分における約50のアミノ酸残基の保存されたシグネチャドメインを有する(Prosite PDOC00359 UDP−糖転移酵素シグネチャ)。
【0032】
薬剤代謝に関係するUGTは、UGT1およびUGT2の2つの遺伝子ファミリーによってコードされる。UGT1ファミリーのメンバーは、補助因子結合および膜挿入に関係する定常領域および可変基質結合ドメインを有する単一の遺伝子座の選択的スプライシングによって得られる。UGT2ファミリーのメンバーは異なる遺伝子座によってコードされ、UGT2AおよびUGT2Bの2つのファミリーに分類される。2Aサブファミリーは嗅上皮で発現し、2Bサブファミリーは肝臓ミクロソームで発現する。UGT遺伝子における突然変異は、高ビリルビン血症(OMIM#143500 Hyperbilirubinemia I)、出生児からの重度の高ビリルビン血症によって特徴付けられるクリグラー−ナジャー症候群(OMIM#218800 Crigler−Najjar syndrome)、ギルベール病と呼ばれる軽度の高ビリルビン血症(OMIM *191740 UGT1)に関係する。
【0033】
スルホトランスフェラーゼ
硫酸抱合は多くの同じ基質において起こり、O−グルクロン酸抱合により高水溶性の硫酸エステルが生成される。スルホトランスフェラーゼ(ST)は、補助因子3’‐ホスホアデノシン−5’‐ホスホ硫酸(PAPS)から基質へSO を転移してこの反応を触媒する。STの基質は主にフェノールおよび脂肪族アルコールであるが、抱合して対応するスルファミン酸を生成する芳香族アミンおよび脂肪族アミンも含まれる。これらの反応による生成物は主に尿中に排泄される。
【0034】
STは、肝臓、腎臓、腸管、肺、血小板、および脳を含む様々な組織に見られる。これらの酵素は、一般にサイトゾル酵素であって、多数の型が同時に発現される場合が多い。例えば、12種類を越えるSTの型がラットの肝サイトゾルに存在する。これらの生化学的に特徴付けられるSTは、それらの基質選択性に基づいて、アリールスルホトランスフェラーゼ、アルコールスルホトランスフェラーゼ、エストロゲンスルホトランスフェラーゼ、チロシンエステルスルホトランスフェラーゼ、および胆汁酸塩スルホトランスフェラーゼの5つのクラスに分類される。
ST酵素活性は、ラットの性別および年齢によって著しく異なる。発生の合図および性関連ホルモンとを組み合わせた効果が、ST発現プロファイルの差異並びにチトクロームP450等の他のDMEのプロファイルの差異を生じさせると考えられている。注目すべきは、ネコにおけるSTの高発現が、UDPグルクロニルトランスフェラーゼ活性のレベル低下を部分的に補償する。
【0035】
STの幾つかの型は、ヒト肝サイトゾルから精製されクローニングされた。熱安定性および基質選択性が異なった2つのフェノールスルホトランスフェラーゼが存在する。熱安定酵素は、パラニトロフェノール、ミノキシジル、およびアセトアミノフェン等のフェノールの硫酸化を触媒し、熱不安定酵素は、ドーパミン、エピネフリン、およびlevadopa等のモノアミン基質を好む。その他のクローニングされたSTには、エストロゲンスルホトランスフェラーゼおよびN−アセチルグルコサミン−6−O−スルホトランスフェラーゼが含まれる。この最後に述べた酵素は、細胞生化学におけるSTのその他の重要な役割を示す。 即ち、細胞分化およびプロテオグリカンの成熟に重要となり得る炭化水素基質の修飾である。実際に、スルホトランスフェラーゼの先天性の異常は、成熟したケラタン硫酸プロテオグリカンの合成不良という特徴をもつ障害である斑状角膜変性症に関係する(Nakazawa, K.他 (1984) J. Biol. Chem. 259 : 13751−13757 ; OMIM *217800 Macular dystrophy, corneal)。
【0036】
ガラクトシルトランスフェラーゼ
ガラクトシルトランスフェラーゼは、溶液に遊離している糖脂質または糖タンパク質の一部であるN末端アセチルグルコサミン(GlcNAc)オリゴ糖鎖にガラクトース(Gal)を転移するグリコシルトランスフェラーゼ(糖転移酵素)のサブセットである(Kolbinger, F.他 (1998) J. Biol. Chem. 273 : 433−440 ; Amado, M.他 (1999) Biochim. Biophys. Acta 1473 : 35−53)。ガラクトシルトランスフェラーゼは細胞表面で見出された可溶性細胞外タンパク質であり、ゴルジ体にも存在する。 β1,3−ガラクトシルトランスフェラーゼは、Gal(β1−3)GlcNAc結合を有するI型炭化水素鎖を形成する。既知のヒトおよびマウスβ1,3−ガラクトシルトランスフェラーゼは、短いサイトゾルドメイン、1つの膜貫通ドメイン、および8つの保存された領域を有する触媒ドメインを有すると考えられる(Kolbinger(前出)および Hennet, T.他 (1998) J. Biol. Chem. 273 : 58−65)。マウスUDP−ガラクトースであるβ−N−アセチルグルコサミンβ1,3−ガラクトシルトランスフェラーゼ−Iの領域1がアミノ酸残基の78−83、領域2がアミノ酸残基の93−102、領域3がアミノ酸残基116−119、領域4がアミノ酸残基147−158、領域5がアミノ酸残基の172−183、領域6がアミノ酸残基の203−206、領域7がアミノ酸残基の236−246、領域8がアミノ酸残基の264−275に位置する。 マウスUDP−ガラクトース内に見られる配列の変異体であるβ−N−アセチルグルコサミンβ1,3−ガラクトシルトランスフェラーゼ−Iの領域8が、細菌ガラクトシルトランスフェラーゼにも見られることから、この配列がガラクトシルトランスフェラーゼ配列モチーフを決定すると考えられる(Hennet、前出)。近年の研究により、brainiacタンパク質がβ1,3−ガラクトシルトランスフェラーゼであると報告された(Yuan, Y.他(1997) Cell 88:9−11; およびHennet、前出)。
【0037】
UDP−GalであるGlcNAc−1,4−ガラクトシルトランスフェラーゼ(−1,4−GalT)(Sato, T.他 (1997) EMBO J. 16: 1850−1857)が、Gal(βl−4)GlcNAc結合を有するII型炭化水素鎖の形成を触媒する。βl,3−ガラクトシルトランスフェラーゼの場合と同様に、酵素の可溶型が、膜結合型の切断によって形成される。βl,4−ガラクトシルトランスフェラーゼに保存されているアミノ酸には、ジスルフィド結合によって連結された2つのシステイン残基および触媒ドメインにおける推定上のUDP−ガラクトース結合部位が含まれる(Yadav, S.及びBrew, K. (1990) J. Biol. Chem. 265:14163−14169; Yadav, S. P.及びBrew, K. (1991) J. Biol. Chem. 266:698−703、及びShaper, N. L.他(1997) J. Biol. Chem. 272:31389−31399)。 βl,4−ガラクトシルトランスフェラーゼは、糖タンパク質または糖脂質上に炭化水素鎖を合成するのに加えて、いくつかの特定の役割を有する。哺乳動物において、α−ラクトアルブミンを有するヘテロ二量体の一部としてβl,4−ガラクトシルトランスフェラーゼが、乳汁分泌哺乳動物の乳汁の生成に作用する。精子の表面上のβl,4−ガラクトシルトランスフェラーゼは、卵を特異的に認識する受容体として働く。細胞表面β1,4−ガラクトシルトランスフェラーゼはまた、細胞接着、細胞/基底板相互作用、正常な細胞遊走、および転移性腫瘍細胞遊走に作用する(Shur, B. (1993) Curr. Opin. Cell Biol. 5:854−863; およびShaper, J. (1995) Adv. Exp. Med. Biol. 376:95−104)。
【0038】
グルタチオン トランスフェラーゼ
グルタチオンSトランスフェラーゼ(GST)によって触媒される基本的な反応は、還元型グルタチオン(GSH)と求電子体の抱合である。GSTはホモ二量体またはヘテロ二量体タンパク質であって、主にサイトゾルに局在化するが、ある程度の活性がミクロソームにも見られる。主なイソ酵素は、共通の構造および触媒特性を有し、ヒトにおいてそれらは、主にα、μ、π、およびθの4つのクラスに分類される。2つの最も大きなクラスであるαおよびμは、それぞれのタンパク質等電点(αはpIが7.5−9.0まで、μはpIが6.6まで)によって同定される。+それぞれのGSTは、GSHに対する共通の結合部位および可変性疎水性結合部位を有する。それぞれのイソ酵素における疎水性結合部位は、特定の求電子性基質に対して特異的である。GST内の特定のアミノ酸残基が、これらの結合部位および触媒活性に重要であるとして同定された。残基Q67、T68、D101、E104、およびR131は、GSHの結合に重要である(Lee, H−C他 (1995) J. Biol. Chem. 270:99−109)。残基R13、R20、およびR69はGSTの触媒活性に重要である(Stenberg G他(1991) Biochem. J. 274:549−555)。
【0039】
殆どの場合、GSTは、潜在的な変異誘発性および発癌性の化学物質を不活性化し解毒するなど好都合に作用する。しかしながら、場合によってはそれらの作用が有害なもので、化学物質を活性化させて変異誘発性および発癌性になる。ラットおよびヒトGSTの或る型は、発癌の検出を助ける信頼性の高い新生物発生前マーカーとなる。変異誘発性を調べるための良く知られたエイムス試験に用いられるSalmonella typhimurium( ネズミチフス菌 などの細菌株におけるヒトGSTの発現は、変異誘発におけるこれらの酵素の役割を決定するのに役立つ。マウスにおいて肝腫瘍を引き起こす二ハロゲン化メタン(dihalomethanes)は、GSTによって活性化されると考えられている。この考えは、二ハロゲン化メタンが非感染細胞よりもヒトGSTを発現する細菌細胞において突然変異誘発性が高いということから支持される(Thier, R.他 (1993) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:8567−8580)。二臭化エチレンおよび二塩化エチレンの変異誘発性が、ヒトαGST,A1−1を発現する細菌細胞において上昇し、アフラトキシンB1の変異誘発がGSTの発現が促進されることで実質的に減少する(Simula, T. P.他(1993) Carcinogenesis 14:1371−1376)。従って、GST活性の制御が、変異誘発および発癌の制御において有用であろう。
【0040】
GSTは、多剤耐性(MDR)として知られる多くの癌の薬剤治療に対する耐性獲得に関係する。MDRは、シクロホスファミドなどの細胞毒で治療を受けた癌患者に起こり、その薬剤に対する耐性を有するようになった後、更にその他の様々な細胞毒に対しても耐性を有するようになる。GSTレベルの上昇は、これらの薬剤耐性癌に関係し、薬剤に応答してGSTレベルが上昇した後、GSTによって触媒されたGSH抱合反応によりその薬剤が不活化されると考えられる。次に上昇したGSTレベルにより癌細胞がその他のGSTに結合する細胞毒から保護される。腫瘍におけるA1−1のレベルの上昇は、シクロホスファミド治療によって生じた薬剤耐性に関係する(Dirven H. A.他 (1994) Cancer Res. 54:6215−6220)。従って、癌組織におけるGST活性の調節は、癌患者のMDR治療に有用であろう。
【0041】
γ−グルタミルトランスペプチダーゼ
γ−グルタミルトランスペプチダーゼは広範に発現する酵素であって、γ−グルタミルアミド結合を切断して細胞外のグルタチオン(GSH)の分解を開始させる。GSHの分解は、生合成経路のために局所的なシステインプールを細胞に提供する。γ−グルタミルトランスペプチダーゼはまた、細胞の酸化防止に寄与し、その発現は酸化ストレスによって引き起こされる。細胞表面局在糖タンパク質は、癌細胞において高いレベルで発現される。研究により、癌細胞の表面におけるγ−グルタミルトランスペプチダーゼの高レベルの活性が、プロドラッグの活性化に利用され、抗癌治療薬が局所的に高いレベルで蓄積され得る(Hanigan, M. H. (1998) Chem. Biol. Interact. 111−112:333−42; Taniguchi, N.およびIkeda, Y. (1998) Adv. Enzymol. Relat. Areas Mol. Biol. 72:239−78; Chikhi, N.他 (1999) Comp. Biochem. Physiol. B. Biochem. Mol. Biol. 122:367−380)。
【0042】
アシルトランスフェラーゼ
N−アシルトランスフェラーゼ酵素は、アミノ酸抱合体の活性化カルボキシル基への転移を触媒する。内因性化合物および生体異物は、サイトゾル、ミクロソーム、およびミトコンドリアにおけるアシル−CoAシンセターゼによって活性化される。次に、アシル−CoA中間体は、サイトゾルまたはミトコンドリアにおけるN−アシルトランスフェラーゼによってアミノ酸(通常はグリシン、グルタミン、またはタウリンであるが、オルニチン、アルギニン、ヒスチジン、セリン、アスパラギン酸、およびいくつかのジペプチドを含む)と抱合し、アミド結合を有する代謝産物を形成する。この反応は、O−グルクロン酸抱合に相補的であるが、アミノ酸抱合では、グルクロン酸抱合によって生じる場合が多い反応性および毒性の代謝産物を生成されない。
【0043】
胆汁酸−CoAであるアミノ酸N−アシルトランスフェラーゼ(BAT)は、このクラスの良く特徴づけられた酵素の1つである。 BATは、腸管において界面活性剤として作用する胆汁酸抱合体の生成に関与する(Falany, C. N.他 (1994) J. Biol. Chem. 269:19375−19379; Johnson, M. R.他 (1991) J. Biol. Chem. 266:10227−10233)。BATはまた、部分肝切除の後の肝臓癌患者の予後の予測マーカーとして有用である(Furutani, M.他(1996) Hepatology 24:1441−1445)。
【0044】
アセチルトランスフェラーゼ
アセチルトランスフェラーゼは、ヒストンのアセチル化におけるその役割について非常に良く研究されている。ヒストンのアセチル化により、真核細胞におけるクロマチン構造が弛緩し、それによって転写因子が、ゲノム(またはゲノム全体)の影響を受けた領域におけるDNAの鋳型のプロモータエレメントに到達できるようになる。これとは対照的に、ヒストンが脱アセチル化すると、クロマチン構造が閉じ転写因子への到達が制限されて転写物が減少する。この最後に、ヒストンの脱アセチル化を阻害する化学薬品(例えば、酪酸ナトリウム)を細胞転写の刺激の一般的な手段として用いると、人為的結果であるが遺伝子発現が全体的に上昇する。アセチル化による遺伝子発現の調節はまた、限定するものではないが、p53、GATA−1、MyoD、ACTR、TFIIE、TFIIF、および高移動グループタンパク質(HMG)を含むその他のタンパク質のアセチル化によっても行うことができる。p53の場合、アセチル化によりDNAへの結合が増大し、p53によって調節される遺伝子の転写が刺激される。プロトタイプヒストンアセチラーゼ(HAT)は、サッカロミセス‐セレビジエ(酵母)に由来するGcn5である。Gcn5は、テトラヒメナp55、ヒトGcn5、およびヒトp300/CBPを含むアセチラーゼのファミリーメンバーである。ヒストンのアセチル化については文献(Cheung, W. L.他 (2000) Curr. Opin. Cell Biology 12:326−333およびBerger, S. L (1999) Curr. Opin. Cell Biol 11:336−341)を参照されたい。ある種のアセチルトランスフェラーゼ酵素は、限定するものではないが、アセチルコリンエステラーゼおよびカルボキシルエステラーゼを含む幾つかの他の酵素の主なクラスに一般的であるα/βヒドロラーゼ折畳み(α/βhydrolase fold)(Center of Applied Molecular Engineering Inst. of Chemistry and Biochemistry University of Salzburg, http://predict.sanger.ac.uk/irbm−course97/Docs/ms/)を有する(Structural Classification of Proteins, http://scop.mrc−lmb.cam.ac.uk/scop/index.html)。
【0045】
−アセチルトランスフェラーゼ
芳香族アミンおよびヒドラジン含有化合物は、肝臓およびその他の組織のN−アセチルトランスフェラーゼ酵素によってNアセチル化される。ある種の生体異物は、同じ酵素によってある程度O−アセチル化される。N−アセチルトランスフェラーゼは、補助因子アセチル−補酵素A(アセチル−CoA)を用いて2つの過程でアセチル基を転移するサイトゾル酵素である。第1の過程では、アセチル基がアセチル−CoAから活性部位システイン残基に転移され、第2の過程でアセチル基が基質アミノ基に転移され酵素が再生される。
【0046】
他のほとんどのDMEクラスとは対照的に、既知のN−アセチルトランスフェラーゼの数が少ない。ヒトの場合、2つの高度に類似した酵素であるNAT1およびNAT2が存在し、マウスには第3型酵素であるNAT3が存在する。N−アセチルトランスフェラーゼのヒト型は、独立した調節(NAT1は広範に発現されるが、NAT2は肝臓および臓器のみに発現される)および重複した基質特異性を有する。両方の酵素はある程度までほとんどの基質を受容するが、NAT1はある種の基質(パラアミノ安息香酸、パラアミノサリチル酸、スルファメトキサゾール、およびスルファニルアミド)を好み、一方NAT2は他の基質(イソニアジド、ヒドララジン、プロカインアミド、ダプソン、アミノグルテチミド、およびスルファメチアジン)を好む。
【0047】
1950年代に、抗結核薬であるイソニアジドを投与された患者の臨床試験から、化合物のアセチル化が速い人(rapid acetylator)および遅い人(slow acetylator)が報告された。これらの表現型は後に、酵素の活性または安定性に影響を与えるNET2遺伝子における突然変異によることが示された。イソニアジドのアセチル化が遅い表現型が、中東の集団に優性(約70%)であり、白人ではやや劣り(約50%)、アジアの集団では25%未満である。近年になって、NET1における機能的な多型が検出され、検査を受けた集団の約8%が、アセチル化が遅い表現型を有する(Butcher, N. J.他 (1998) Pharmacogenetics 8:67−72)。NAT1がある種の既知の芳香族アミン発癌物質を活性化することができるため、広範に発現されるNAT1酵素における多型が癌のリスクの決定に重要であると考えられる(OMIM *108345 N−acetyltransferase1)。
【0048】
アミノトランスフェラーゼ
アミノトランスフェラーゼは、ピリドキサール5’−リン酸(PLP)依存性酵素のファミリーを含み、アミノ酸のトランスフォーメーションを触媒する。アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AspAT)は最も研究されたPLP含有酵素である。 AspATは、ジカルボキシルL−アミノ酸、アスパラギン酸およびグルタミン酸、および対応する2−オキソ酸、オキサロ酢酸、および2−オキソグルタル酸の可逆的なアミノ基転移反応を触媒する。このファミリーの他のメンバーには、推定アミノトランスフェラーゼ、分枝鎖アミノ酸アミノトランスフェラーゼ、チロシンアミノトランスフェラーゼ、芳香族アミノトランスフェラーゼ、アラニン−グリオキシル酸アミノトランスフェラーゼ(AGT)およびキヌレニンアミノトランスフェラーゼが含まれる(Vacca, R. A.他(1997) J. Biol. Chem. 272:21932−21937)。
【0049】
原発性高シュウ酸尿症I型は、常染色体性劣性疾患であって、肝特異的ペルオキシソーム酵素であるアラニン−グリオキシル酸アミノトランスフェラーゼ−1の欠損が起こる。 この疾患の表現型は、グリオキシル酸代謝の欠損である。AGTが存在しない場合、グリオキシル酸はグリシンに転移されるのではなく、シュウ酸に酸化される。その結果、腎臓および尿管に不溶性カルシウムシュウ酸が蓄積し、最終的に腎不全が起こる(Lumb, M. J. 他 (1999) J. Biol. Chem. 274 : 20587−20596)。
【0050】
ヌレニンアミノトランスフェラーゼは、L−トリプトファン代謝産物L−キヌレニンの不可逆的なアミノ転移を触媒してキヌレニン酸を形成する。この酵素はまた、L−2−アミノアジピン酸から2−オキソグルタル酸およびその逆への可逆的なアミノ基転移反応を触媒して2−オキソアジピン酸およびL−グルタミン酸を生成し得る。キヌレイン酸は、グルタミン酸作動性神経伝達の推定上のモジュレーターであるため、キヌレインアミノトランスフェラーゼの欠損が多面発現性(pleotrophic)効果に関係すると思われる(Buchli, R.他 (1995) J. Biol. Chem. 270:29330−29335)。
【0051】
カテコール− −メチルトランスフェラーゼ
カテコール−O−メチルトランスフェラーゼ(COMT)は、カテコール基質における1つのヒドロキシル基(例えば、エルドーパ、ドーパミン、またはDBA)へのS−アデノシル−L−メチオニン(AdoMet; SAM)供与体のメチル基の転移を触媒する。3’−ヒドキシル基のメチル化は4’−ヒドキシル基のメチル化より優先され、COMTの膜結合アイソフォームが可溶型よりも位置特異的である。この酵素の可溶型の翻訳は、完全長mRNA(1.5kb)の内部の開始コドンの利用によるか、或いは内部のプロモータから転写された短いmRNA(1.3kb)の翻訳による。提案されたS2様メチル化反応には、Mg2+が必要であり、Ca2+によって抑制される。供与体および基質のCOMTへの結合が連続的に起こる。まず、AdoMetがMg2+非依存的にCOMTに結合し、Mg2+の結合およびカテコール基質の結合がそれに続く。
【0052】
組織におけるCOMTの量は活性のために通常必要とされる量より多く存在するため阻害が困難である。しかしながら、インヒビターがin vitroでの使用(例えば、没食子酸、トロポロン、U−0521、および3’, 4’−dihydroxy−2−methyl−propiophetropolone)および臨床での使用(例えば、nitrocatechol系化合物およびtolcapone)のために開発された。これらのインヒビターを投与すると、エルドーパの半減期が長くなり、続いてドーパミンの生成が起こる。COMTの阻害により、エピネフリン/ノルエピネフリン、イソプレナリン、リミテロール、ドブタミン、フェノルドパム(fenoldopam)、アポモルフィン、およびα−メチルドパを含む他の様々なカテコール構造化合物の半減期が長くなると思われる。ノルエピネフリンの欠損は臨床的抑鬱症に繋がるため、COMTインヒビターの使用は抑鬱性の治療に有用であると思われる。COMTインヒビターは通常、副作用が最小限であり、最終的に肝臓で代謝され、体内にはわずかな代謝物が残るのみである(Mannisto, P. T.およびKaakkola, S. (1999) Pharmacological Reviews 51:593−628)。
【0053】
銅−亜鉛スーパーオキシドジスムターゼ
銅−亜鉛スーパーオキシドジスムターゼはコンパクトな二量体金属酵素であって、酸化的な傷害に対する細胞防御に関係する。この酵素は1つの亜鉛原子および1つの銅原子を各サブユニットに含み、スーパーオキシドアニオンのOおよびHへの不均化反応を触媒する。この不均化反応の速度は、拡散によって律速されるため、基質と酵素活性部位との間の好ましい静電的相互作用によって促進される。この酵素のクラスの例が、全ての真核細胞の細胞質において同定され、或る細菌種のペリプラズムでも同定された。銅−亜鉛スーパーオキシドジスムターゼは強壮な酵素であって、蛋白分解および尿素およびSDSによる変性に高度な耐性を有する。この酵素のコンパクトな構造に加えて、金属イオンおよび内部サブユニットのジスルフィド結合が酵素の安定性に寄与していると考えられている。酵素は70℃もの高温でも可逆的に変性される(Battistoni, A.他(1998) J. Biol. Chem. 273:5655−5661)。
【0054】
スーパーオキシドジスムターゼの過剰発現は、遺伝子組み換えアルファルファの耐凍性を高めるのに関係しており、ジフェニルエーテル除草剤であるアシフルオリフェン(acifluorfen)などの環境毒に対する耐性を与える(McKersie, B. D.他(1993) Plant Physiol. 103:1155−1163)。加えて、酵母細胞が過酸化水素への暴露の後に凍結融解損傷に対する耐性が高まる。 これは、曝露によるスーパーオキシドジスムターゼの発現の上方制御により、酵母細胞が更なる過酸化ストレスに適応するようになるためである。この研究により、酵母スーパーオキシドジスムターゼ遺伝子の突然変異は、冷凍保存過程を経て生物が存在するか否かを決定するのに重要であると長い間考えられていたグルタチオン代謝の調節に影響を及ぼす突然変異よりも、冷凍融解耐性に悪影響を与える(Jong−In Park, J−I.他(1998) J. Biol. Chem. 273:22921−22928)。
【0055】
スーパーオキシドジスムターゼの発現はまた、結核を引き起こす生物である結核菌に関連する。スーパーオキシドジスムターゼは、結核菌によって排泄される10の主なタンパク質の内の1つであり、酸化ストレスに応じてその発現が約5倍上方制御される。 結核菌は、非病原性ミコバクテリアM. smegmatisよりスーパーオキシドジスムターゼをほぼ100倍多く発現し、極めて高い割合で発現酵素を分泌する。この結果、結核菌はM. smegmatisよりも最大350倍多い酵素を分泌し、酸化ストレスに対する実質的な耐性を与える(Harth, G.およびHorwitz, M. A. (1999) J. Biol. Chem. 274:4281−4292)。
【0056】
銅−亜鉛スーパーオキシドジスムターゼの発現の低下、並びに抗酸化能力を有するその他の酵素の発現の低下は初期の癌に関係する。銅−亜鉛スーパーオキシドジスムターゼの発現レベルは、正常な前立腺組織と比べ前立腺の上皮新生物および前立腺癌において低い(Bostwick, D. G. (2000) Cancer 89:123−134)。
【0057】
ホスホジエステラーゼ
ホスホジエステラーゼは、ホスホジエステル化合物の2つのエステル結合の一方の加水分解を触媒する酵素のクラスを構成する。従って、ホスホジエステラーゼは様々な細胞プロセスにとって重要である。ホスホジエステラーゼには、細胞増殖および複製に必須であるDNAおよびRNAのエンドヌクレアーゼおよびエクソヌクレアーゼや、DNAのトポロジー再編成中の核酸鎖の分解および再形成をするトポイソメラーゼが含まれる。Tyr−DNAホスホジエステラーゼは、トポイソメラーゼI型およびDNAとの間に形成されたデッドエンド共有結合中間体を加水分解することでDNAの修復に作用する(Pouliot, J. J.他(1999) Science 286:552−555; Yang, S.−W. (1996) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 93:11534−11539)。
【0058】
酸性スフィンゴミエリナーゼは、膜リン脂質スフィンゴミエリンを加水分解してセラミドおよびホスホリルコリンを生成するホスホジエステラーゼである。ホスホリルコリンは、様々な細胞内シグナル伝達経路に関与するホスファチジルコリンの合成に用いられ、一方のセラミドは神経組織に高濃度で見られる膜脂質であるガングリオシドの生成のための必須前駆体である。酸性スフィンゴミエリナーゼが欠損すると、リソソームにおいてスフィンゴミエリン分子が蓄積され、それによってニーマン−ピック病が引き起こされる(Schuchman, E. H.およびS. R. Miranda (1997) Genet. Test. 1:13−19)。
【0059】
グリセロホスホリルジエステルホスホジエステラーゼ(グリセロホスホジエステルホスホジエステラーゼとも呼ばれる)は、ジアセチル化リン脂質グリセロホスホジエステル(deacetylated phospholipid glycerophosphodiesters)を加水分解してsn−グリセロール−3−リン酸およびアルコールを生成するホスホジエステラーゼである。グリセロホスホコリン、グリセロホスホエタノールアミン、グリセロホスホグリセロール、およびグリセロホスホイノシトールは、グリセロホスホリルジエステルホスホジエステラーゼのための基質の例である。大腸菌由来のグリセロホスホリルジエステルホスホジエステラーゼは、グリセロホスホジエステル基質に対して広範な特異性を有する(Larson, T. J.他(1983) J. Biol. Chem. 248:5428−5432)。
【0060】
サイクリックヌクレオチドホスホジエステラーゼ(PDE)は、サイクリックヌクレオチドcAMPおよびcGMPの調節に極めて重要な酵素である。 cAMPおよびcGMPは、ホルモン、光、および神経伝達物質を含む様々な細胞外シグナルを伝達する細胞内セカンドメッセンジャーとして機能する。PDEはサイクリックヌクレオチドをそれらの対応する一リン酸に分解し、それによってサイクリックヌクレオチドの細胞内濃度およびシグナル伝達におけるそれらの効果を調節する。それらの役割がシグナル伝達の調節因子であることから、PDEは化学療法の標的として大規模に研究された(Perry, M. J.およびG. A. Higgs (1998) Curr. Opin. Chem. Biol. 2:472−481 ; Torphy, J. T. (1998) Am. J. Resp. Crit. Care Med. 157:351−370)。
【0061】
哺乳動物PDEのファミリーは、それらの基質特異性および親和性、補助因子に対する感受性、および阻害物質に対する感受性に基づいて分類される(Beavo, J. A. (1995) Physiol. Rev. 75:725−748; Conti, M.他(1995) Endocrine Rev. 16:370−389)。これらのファミリーのいくつかは、固有の遺伝子を含み、その多くは様々な組織でスプライス変異体として発現される。PDEファミリーの中には、多数のイソ酵素およびこれらのイソ酵素の多数のスプライス変異体が存在する(Conti, M.およびS.−L. C. Jin (1999) Prog. Nucleic Acid Res. Mol. Biol. 63:1−38)。多数のPDEファミリー、イソ酵素、およびスプライス変異体の存在は、サイクリックヌクレオチドを伴う調節経路の多様性および複雑性を示すものである(Houslay, M. D.およびG. Milligan (1997) Trends Biochem. Sci. 22:217−224)。
【0062】
PDE1型(PDE1)はCa2+/カルモジュリン依存性であって、それぞれが少なくとも2つの異なったスプライス変異体を有する少なくとも3つの異なった遺伝子によってコードされると思われる(Kakkar, R. 他. (1999) Cell Mol. Life Sci. 55:1164−1186)。PDE1は、肺、心臓、および脳で見出された。ある種のPDE1イソ酵素は、in vitroでリン酸化/脱リン酸化によって調節される。これらのPDE1イソ酵素をリン酸化すると、カルモジュリンに対するこの酵素の親和性が低下し、PDE活性が低下し、cAMPのレベルが安定する(Kakkar, 前出)。PDE1は、PDE1がサイクリックヌクレオチドおよびカルシウムのシグナル伝達の両方に関与するため、中枢神経系および心血管、免疫系の疾患に対する有用な治療標的を提供し得る(Perry, M. J.およびG. A. Higgs (1998) Curr. Opin. Chem. Biol. 2:472−481)。
【0063】
PDE2は小脳、新皮質、心臓、腎臓、肺、肺動脈および骨格筋に存在するcGMP−刺激性PDEである(Sadhu, K. 他(1999) J. Histochem. Cytochem. 47:895−906)。PDE2はカテコールアミン分泌でのcAMP の作用を媒介し、アルドステロン(Beavo, 前出), の制御に関与し、嗅覚シグナル伝達において役割を果たしていると考えられている(Juilfs, D.M. 他 (1997) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 94:3388−3395)。
【0064】
PDE3はcGMPおよびcAMPの両方に対して高い親和性を有するため、これらのサイクリックヌクレオチドがPDE3の競合的基質として作用する。PDE3は、心筋の収縮の刺激、血小板凝集の抑制、血管および気道平滑筋の弛緩、Tリンパ球および血管平滑筋培養細胞の増殖抑制、脂肪組織からのカテコールアミン誘導性遊離脂肪酸放出の調節に作用する。ホスホジエステラーゼのPDE3ファミリーは、シロスタマイド(cilostamide)、エノキシモン(enoximone)、およびlixazinoneなどの特定のインヒビターに対する感受性を有する。PDE3のイソ酵素は、cAMP依存性プロテインキナーゼまたはインスリン依存性キナーゼによって制御され得る(Degerman, E.他(1997) J. Biol. Chem. 272:6823−6826)。
【0065】
PDE4はcAMPに特異的であって、気道平滑筋、血管上皮、および全ての炎症細胞に局在化し、cAMP依存性依存性リン酸化によって活性化され得る。cAMPのレベルの上昇によって、炎症細胞の活性が抑制され気管平滑筋が弛緩し得るため、PDE4は、喘息治療の発見に重点をおいて新しい抗炎症剤としての可能性のある標的として広範に研究された。PDEインヒビターは、喘息、慢性塞栓性肺疾患、およびアトピー性湿疹の治療薬として現在、臨床試験が行われている。PDE4の既知の4つ全てのイソ酵素は、マウスの行動記憶を改善することが分かっている化合物であるインヒビターロリプラムに対して感受性が高い(Barad, M.他(1998) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 95:15020−15025)。PDE4インヒビターもまた、急性肺傷害、内毒素血症、リウマチ様関接炎、多発性硬化症、および様々な神経や胃腸の疾患に対する可能性のある治療薬として研究された(Doherty, A. M. (1999) Curr. Opin. Chem. Biol. 3:466−473)。
【0066】
PDE5は、基質としてcGMPに対して高い選択性を有し(Turko, I. V.他(1998) Biochemistry 37:4200−4205)、2つのアロステリックcGMP特異的結合部位を有する(McAllister−Lucas, L. M. 他. (1995) J. Biol. Chem. 270:30671−30679)。cGMPのこれらのアロステリック結合部位への結合は、触媒活性の直接的な調節よりもcGMP依存性プロテインキナーゼによるPDE5のリン酸化にとって重要であると思われる。PDE5が高いレベルで、血管平滑筋、血小板、肺、および腎臓に見られる。インヒビターザプリナストはPDE5およびPDE1に対して効果がある。PDE5に対する特異性を得るためにザプリナストを改良してシルデナフィル(sildenafil)を生成した(VIAGRA; Pfizer, Inc., New York NY)。 このsildenafilは男性勃起不全の治療薬である(Terrett, N. 他. (1996) Bioorg. Med. Chem. Lett. 6:1819−1824)。PDE5のインヒビターは、心血管治療薬として現在研究されている(Perry, M. J.およびG. A. Higgs (1998) Curr. Opin. Chem. Biol. 2:472−481)。
【0067】
光受容体サイクリックヌクレオチドホスホジエステラーゼであるPDE6は、光伝達カスケードの重要な要素である。PDE6はGタンパク質トランスデューシンと会合して、cGMPを加水分解して光受容体膜におけるcGMP作動性陽イオンチャネルを調節する。cGMP結合活性部位に加えて、PDE6はまた、PDE6の機能における調節的な役割を果たすと考えられる2つの高親和性cGMP結合部位を有する(Artemyev, N. O.他(1998) Methods 14:93−104)。PDE6の欠損は網膜の疾患に関係する。rdマウスの網膜変性症(Yan, W.他(1998) Invest. Opthalmol. Vis. Sci. 39:2529−2536)、ヒトの常染色体性劣性色素性網膜炎(Danciger, M.他(1995) Genomics 30:1−7)、およびアイリッシュセッター犬の杆状体/錐状体異形成1型(Suber, M. L.他(1993) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:3968−3972)は、PDE6B遺伝子における突然変異が原因である。
【0068】
PDEのPDE7ファミリーは、複数のスプライス変異体を有する唯1つの既知のメンバーから成る(Bloom, T. J.およびJ. A. Beavo (1996) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 93:14188−14192)。PDE7はcAMP特異的であるが、その他の生理的機能については殆ど知られていない。PDE7をコードするmRNAが骨格筋、心臓、脳、肺、腎臓、および膵臓で見られるが、PDE7タンパク質の発現は特定の組織型に限定される(Han, P.他(1997) J. Biol. Chem. 272:16152−16157; Perry, M. J.およびG. A. Higgs (1998) Curr. Opin. Chem. Biol. 2:472−481)。PDE7はPDE4ファミリーに密接に関連するが、PDE4の特異的なインヒビターであるロリプラムによって阻害されない(Beavo, 前出)。
【0069】
PDE8はcAMP特異的であり、PDE4ファミリーに密接に関連する。PDE8は、甲状腺、精巣、眼、肺、骨格筋、心臓、腎臓、卵巣、および脳において発現される。PDE8のcAMP加水分解活性は、PDEのインヒビターであるロリプラム、ビンポセチン、ミルリノン、IBMX(3−イソブチル−1−メチルキサンチン)、またはザプリナストによって抑制されないが、PDE8はジピリダモールによって抑制される(Fisher, D. A.他(1998) Biochem. Biophys. Res. Commun. 246:570−577; Hayashi, M.他(1998) Biochem. Biophys. Res. Commun. 250:751−756; Soderling, S. H.他(1998) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 95:8991−8996)。
【0070】
PDE9はcAMP特異的であって、PDEのPDE8ファミリーに最も類似している。PDE9は腎臓、肺、肝臓、脳、脾臓、および小腸で発現される。 PDE9はsildenafil(VIAGRA; Pfizer, Inc., New York NY)、ロリプラム、ビンポセチン、ジピリダモール、またはIBMX(3−イソブチル−1−メチルキサンチン)によって抑制されないが、PDE5インヒビターであるザプリナストに対して感受性を有する(Fisher, D. A.他(1998) J. Biol. Chem. 273:15559−15564 ; Soderling, S. H.他(1998) J. Biol. Chem. 273:15553−15558)。
【0071】
PDE10は二重基質(dual−substrate)PDEであって、cAMPおよびcGMPの両方を加水分解する。PDE10は、脳、甲状腺、および精巣で発現される(Soderling, S. H.他(1999) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 96:7071−7076; Fujishige, K.他(1999) J. Biol. Chem. 274:18438−18445; Loughney, K.他(1999) Gene 234:109−117)。
【0072】
PDEは、約270−300のアミノ酸の触媒ドメイン、および補助因子の結合に必要なN末端調節ドメインを含み、場合によっては機能が未知の親水性C末端ドメインを含む(Conti, M. およびS.−L. C. Jin (1999) Prog. Nucleic Acid Res. Mol. Biol. 63:1−38)。保存された推定上の亜鉛結合モチーフであるHDXXHXGXXNが、全てのPDEの触媒ドメインにおいて同定された。N末端調節ドメインは、PDE2、PDE5、およびPDE6における非触媒cGMP結合ドメイン、PDE1におけるカルモジュリン結合ドメイン、およびPDE3およびPDE4におけるリン酸化部位を含むドメインを有する。PDE5では、N末端cGMP結合ドメインが約380のアミノ酸残基にまたがり、保存された配列モチーフN(R/K)XnFXDEのタンデムリピートを含む(McAllister−Lucas, L. M.他(1993) J. Biol. Chem. 268:22863−22873)。NKXnDモチーフは変異誘発によって見られ、cGMP結合に重要である(Turko, I. V.他(1996) J. Biol. Chem. 271:22240−22244)。PDEファミリーは、触媒ドメイン内において約30%のアミノ酸同一性を有するが、同じファミリー内のイソ酵素は通常約85から95%のこの領域における同一性を示す(例えばPDE4AとPDE4B)。更に、あるファミリー内の触媒ドメイン外の類似性は高いが(60%を超える)、ファミリー間のこのドメイン外の配列類似性は殆ど存在しない。
【0073】
免疫反応および炎症反応を構成する作用の多くは、細胞内のcAMPのレベルを上昇させる薬剤によって阻害される(Verghese, M. W.他(1995) Mol. Pharmacol. 47:1164−1171)。様々な疾患がPDE活性の上昇が原因で起こり、サイクリックヌクレオチドのレベルの低下に関係する。例えば、マウスにおける尿崩症の或る型はPDE4活性の上昇に関係し、低いKをもったcAMPPED活性の上昇がアトピー患者の白血球に見られ、PDE3が心疾患に関連する。
【0074】
PDEの多くのインヒビターが同定され、臨床試験が行われている(Perry, M. J.およびG. A. Higgs (1998) Curr. Opin. Chem. Biol. 2:472−481; Torphy, T. J. (1998) Am. J. Respir. Crit. Care Med. 157:351−370)。PDE3インヒビターは、血小板凝集阻止薬、血圧降下薬、および鬱血性心不全の治療に有用な強心薬として開発された。PDE4インヒビターであるロリプラムは、抑鬱症の治療に用いられ、PDE4のその他のインヒビターは抗炎症薬として評価が行われている。ロリプラムはまた、in vitroでHIV−1の複製を促すことが明らかにされているリポ多糖(LPS)誘導性TNF−aを阻害することが分かった。従って、ロリプラムはHIV−1の複製を阻害すると考えられる(Angel, J. B.他(1995) AIDS 9:1137−1144)。更に、ロリプラムが、TNF−α、TNF−β、およびインターフェロンγなどのサイトカインの生成を抑制する能力に基づいて脳髄膜炎の治療に有効であることが示された。ロリプラムはまた、遅発性ジスキネジアに有効であると考えられ、実験動物モデルにおける多発性硬化症の治療に効果があった(Sommer, N.他(1995) Nat. Med. 1:244−248 ; Sasaki, H.他(1995) Eur. J. Pharmacol. 282:71−76)。
【0075】
テオフィリンは、気管支喘息およびその他の呼吸器疾患の治療に用いられる非特異的PDEインヒビターである。テオフィリンは、気道平滑筋の機能に作用し、呼吸器疾患の治療における抗炎症能力即ち免疫調節能力があると考えられる(Banner, K. H.およびC. P. Page (1995) Eur. Respir. J. 8:996−1000)。ペントキシフィリンは、間欠性跛行および糖尿病性末梢血管疾患の治療に用いられる別の非特異的PDEインヒビターである。ペントキシフィリンはまた、TNF−αの生成を阻止し、HIV−1の複製を阻害し得る(Angel他, 前出)。
【0076】
PDEは、様々な細胞型の細胞増殖に影響を与え(Conti他(1995) Endocrine Rev. 16:370−389)、様々な癌に関係すると報告された。前立腺癌細胞株DU145およびLNCaPの成長は、cAMP誘導体およびPDEインヒビターの送達によって抑制された(Bang, Y. J.他(1994) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91:5330−5334)。これらの細胞はまた、上皮からニューロン形態への表現型における永久的な変換を示した。また、PDEインヒビターがメサンギウム細胞の増殖を調節する可能性があり(Matousovic, K.他(1995) J. Clin. Invest. 96:401−410)、またリンパ球の増殖を調節する可能性もある(Joulain, C.他(1995) J. Lipid Mediat. Cell Signal. 11:63−79)ことが示唆された。細胞内でPDEを腫瘍の特定の細胞区画に送達し、細胞死を導く癌治療が報告されている(Deonarain, M. P.およびA. A. Epenetos (1994) Br. J. Cancer 70:786−794)。
【0077】
ホスホトリエステラーゼ
ホスホトリエステラーゼ(PTE, paraoxonases)は、毒性有機リン化合物を加水分解する酵素であって、様々な組織から単離された。 この酵素は、哺乳動物には豊富に存在するが鳥や昆虫では不足していると思われ、鳥や昆虫の有機リン化合物に対する耐性の低さの説明となる(Vilanova, E.およびSogorb, M. A. (1999) Crit. Rev. Toxicol. 29:21−57)。ホスホトリエステラーゼは、哺乳動物による殺虫剤の解毒において中心的な役割を果たす。ホスホトリエステラーゼ活性は個人によって差があり、大人より幼児の方が低い。PTE ノックアウトマウスは、有機リン系の毒素であるダイアジノン オキソン(diazoxon)およびクロルピリホス オキソン(chlorpyrifos oxon)に対して顕著な感受性を有する(Furlong, C. E.,他(2000) Neurotoxicology 21:91−100)。PTEは、有機リン含有化学廃棄物および化学兵器(例えば、パラチオン)、並びに農薬や殺虫剤の解毒能力を有する酵素として注目されている。ある研究により、ホスホトリエステラーゼがアテローム性動脈硬化症およびリポタンパク代謝に関係する疾患に関与することが示された。
【0078】
チオエステラーゼ
脂肪酸生合成に関係する2つの可溶性チオエステラーゼが、哺乳動物組織から単離された。 その内の一方は、長鎖脂肪酸アシルチオエステルに対してのみ活性であり、他方は様々な長さの脂肪酸アシル鎖を有するチオエステルに対して活性である。これらのチオエステラーゼは、脂肪酸の新規合成における脂肪酸鎖の終結段階を触媒する。脂肪酸鎖の終結段階は、脂肪酸アシル鎖を脂肪酸シンターゼのアシルキャリアタンパク質(ACP)のサブユニットの4’−ホスホパンテテイン補欠分子族と結合させるチオエステル結合の加水分解を伴う(Smith, S. (1981a) Methods Enzymol. 71:181−188; Smith, S. (1981b) Methods Enzymol. 71:188−200)。
【0079】
大腸菌は、長鎖アシルチオエステルに対してのみ活性なチオエステラーゼI型および様々な長さの鎖に対して特異性を有するチオエステラーゼII型(TEII)の2つの可溶性チオエステラーゼを含む(Naggert, J.他(1991) J. Biol. Chem. 266:11044−11050)。大腸菌TEIIは、新規の脂肪酸生合成における脂肪酸鎖終結酵素として機能する哺乳動物チオエステラーゼの2つの型のいずれとも配列類似性を有していない。哺乳動物チオエステラーゼとは異なり、大腸菌TEIIは、特徴的なセリン活性部位gly−X−ser−X−gly配列モチーフを含まず、セリン変性剤であるジイソプロピルフルオロリン酸によって不活化されない。しかしながら、ヨードアセトアミドおよびジエチルピロカルボネートによるヒスチジン58の修飾によってPEII活性が失われる。TEIIの過剰な発現は大腸菌に含まれる脂肪酸を変化させない。 これは、脂肪酸生合成において脂肪酸鎖終結酵素として機能していないことを示すものである(Naggert他, 前出)。このような理由から、大腸菌TEIIの生理学的基質がACP−ホスホパンテテイン脂肪酸エステルではなく補酵素A(CoA)脂肪酸エステルであるとNaggert他(前出)は提唱した。
【0080】
カルボキシルエステラーゼ
哺乳動物カルボキシルエステラーゼは、様々な組織および細胞型で発現される多重遺伝子ファミリーを構成する。イソ酵素は有意な配列相同性を有し、主にアミノ酸配列に基づいて分類される。 アセチルコリンエステラーゼ、ブチリルコリンエステラーゼ、およびカルボキシルエステラーゼは、エステラーゼのセリンスーパーファミリー(Bエステラーゼ)に分類される。 その他のカルボキシルエステラーゼには、チログロブリン、トロンビン、第IX因子、gliotactin、およびプラスミノーゲンがある。カルボキシルエステラーゼは、分子のエステル基およびアミド基の加水分解を触媒し、薬剤、環境毒、および発癌物質の解毒に関与する。カルボキシルエステラーゼの基質には短鎖および長鎖アシルグリセロール、アシルカルニチン、炭酸塩、ジピベフリン塩酸塩(dipivefrin hydrochloride)、コカイン、サリチル酸塩、カプサイシン、パルミトイル−CoA、イミダプリル、ハロペリドール、ピロリジジンアルカロイド、ステロイド、p−ニトロフェニル酢酸、マラチオン、butanilicaine、およびイソカルボキサジドが含まれる。 この酵素は低い基質特異性を示すことがよくある。カルボキシルエステラーゼはまた、プロドラッグを対応する遊離酸に変換するために重要である。 対応する遊離酸は、例えば、血中コレステロールを低下させるために用いられるロバスタチンなどのそのプロドラッグの活性型であり得る(Satoh, T.およびHosokawa, M. (1998) Annu. Rev. Pharmacol. Toxicol. 38:257−288を参照)。
【0081】
neuroliginsは、(i)N末端シグナル配列を有し、(ii)細胞表面受容体に類似し、(iii)カルボキシルエステラーゼドメインを含み、(iv)脳で高発現され、(v)カルシウム依存的にニューレキシンと結合する分子のクラスである。カルボキシルエステラーゼと相同性を有するにもかかわらず、neuroliginsは活性部位セリン残基を含まず、触媒としてではなく基質結合において役割を果たすと考えられる(Ichtchenko, K.他(1996) J. Biol. Chem. 271:2676−2682)。
【0082】
スクアレンエポキシダーゼ
スクアレンエポキシダーゼ(スクアレンモノオキシゲナーゼ、SE)は、ミクロソーム膜に結合しFAD依存性のオキシドレドクターゼであって、真核細胞のステロール生合成経路における最初の酸素添加ステップを触媒する。コレステロールは、LDL受容体仲介経路若しくは生合成経路によって獲得される細胞質膜の必須の構成成分である。後者の場合、コレステロール分子における27全ての炭素原子がアセチル−CoAに由来する(Stryer, L., 前出)。SEはスクアレンをまず2,3(S)−オキシドスクアレンに変換し、次にラノステロールに変換し、更にコレステロールに変換する。コレステロール生合成に関係するステップを以下に要約する(Stryer, L (1988) Biochemistry. W. H FreemanおよびCo., Inc. New York. 554−560頁およびSakakibara, J.他(1995) 270:17−20)。アセテート(アセチル−CoA由来)→3ヒドロキシ−3−メチル−グルタリルCoA→メバロン酸→5−ホスホメバロン酸→5−ピロホスホメバロン酸→イソペンテニルピロリン酸→ジメチルアリルピロリン酸→ゲラニルピロリン酸→ファルネシルピロリン酸→スクアレン→スクアレンエポキシド→ラノステロール→コレステロール
【0083】
コレステロールは真核細胞の生存に必須であるが、血清コレステロールのレベルが過度に上昇すると高等生物の動脈においてアテローム斑が形成されるようになる。例えば冠状動脈などの必須の血管壁部に不溶性の脂質が蓄積されると、血流が減少して十分な血液が組織に流れないようになり組織壊死が起こる可能性がある。HMG−CoAレダクターゼは、3−ヒドロキシ−3−メチル−グルタリルCoA(HMG−CoA)のメバロン酸への変換に必要であり、この変換がコレステロール生合成の第1のステップである。HMG−CoAは、血漿コレステロールレベルを低下させるようにデザインされた様々な医薬化合物の標的である。しかしながら、MHG−CoAの阻害はまた、その他の生合成経路に必要な非ステロール中間体(例えば、メバロン酸)の合成が減少する。SEは、ステロール合成経路の後の方で起こる律速反応を触媒し、コレステロールはSEによる触媒ステップ後の経路の唯一の最終産物である。従って、SEは、その他の必要な中間体を減少させない抗高脂血症薬をデザインするための理想的な標的である(Nakamura, Y.他(1996) 271:8053−8056)。
【0084】
エポキシドヒドロラーゼ
エポキシドヒドロラーゼは、エポキシド含有化合物への水の付加を触媒し、それによってエポキシドがその対応する1,2−ジオールに加水分解される。これらは、細菌ハロアルカンデハロゲナーゼに関連し、酵素のα/βヒドロラーゼ折畳み(α/βhydrolase fold)ファミリーの他のメンバーと(例えば、黄色ブドウ球菌(Streptomyces aureofaciens 由来ブロモペルオキシダーゼA2、緑膿菌(Pseudomonas putida 由来のヒドロキシムコンセミアルデヒドヒドロラーゼおよび 水素細菌(Xanthobacter autotrophicus 由来ハロアルカンデハロゲナーゼ)と配列類似性を示す。 エポキシドヒドロラーゼは遍在性であって、哺乳動物、脊椎動物、植物、真菌、細菌に見られる。この酵素のファミリーは、生物内に導入されると求電子性が高く破壊性である場合が多い生体異物エポキシド化合物の解毒にとって重要である。エポキシドヒドロラーゼ反応の例には、cis−9,10−epoxyoctadec−9 (Z)−enoic acid (ロイコトキシン)からその対応するジオール(threo−9,10−dihydroxyoctadec−12 (Z)−enoic acid (ロイコトキシンジオール))への加水分解、およびcis−12,13−epoxy −octadec−9 (Z)−enoic acid (イソロイコトキシン)からその対応するジオール(diol threo−12,13−dihydroxyoctadec−9 (Z)−enoic acid (イソロイコトキシンジオール))への加水分解が含まれる。ロイコトキシンは膜の透過性やイオン輸送を変えて、炎症反応を引き起こす。加えて、エポキシド発癌物質は、薬剤および環境毒素の解毒における中間体としてチトクロームP450によって生成されることが知られている。
【0085】
この酵素は、Asp(求核性)、Asp(ヒスチジンを支持する酸)、およびHis(水活性化ヒスチジン)の3つの触媒部分を有する。エポキシドヒドロラーゼの反応メカニズムは、標的分子のエポキシド環の第1の炭素原子に対するAsp残基の1つへの求核攻撃によって開始される共有結合エステル中間体によって始まり、共有結合エステル中間体が形成される(Michael Arand, M.他(1996) J. Biol. Chem. 271:4223−4229 ; Rink, R.他(1997) J. Biol. Chem. 272:14650−14657; Argiriadi, M. A.他(2000) J. Biol. Chem. 275:15265−15270)。
【0086】
チロシン触媒作用に関与する酵素
コハク酸とピルビン酸か、或いはフマル酸とアセト酢酸のいずれかへのアミノ酸チロシンの分解には多数の酵素が必要であり、多数の中間化合物が生成される。加えて、多くの生体異物化合物は、チロシン分解経路の一部である1つ以上の反応が用いられて代謝され得る。この経路は初め細菌で研究されたが、チロシン分解は様々な生物において起こることが知られ、多数の同様の生物学的反応が関係すると思われる。
【0087】
チロシンのコハク酸とピルビン酸(例えば、アルトロバクター属における)への分解に関係する酵素には、4−ヒドロキシフェニルピルビン酸オキシダーゼ、4−ヒドロキシフェニル酢酸3−ヒドロキシラーゼ、3,4−ジヒドロキシフェニル酢酸2,3−ジオキシゲナーゼ、5−カルボキシメチル−2−ヒドロキシムコニック(hydroxymuconic) セミアルデヒドデヒドロゲナーゼ、トランス,シス−5−カルボキシメチル−2−ヒドロキシムコン酸イソメラーゼ、ホモプロトカテチュ酸(homoprotocatechuate)イソメラーゼ/デカルボキシラーゼ、シス−2−オキソヘプト−3−ene−1,7−ジオエートヒドラターゼ、2,4−ジヒドロキシヘプト−トランス−2−ene−1,7−ジオエートアルドラーゼ、およびスクシニック(succinic)セミアルデヒドデヒドロゲナーゼが含まれる。
【0088】
チロシンのフマル酸とアセト酢酸への分解に関係する酵素には、4−ヒドロキシフェニルピルビン酸ジオキシゲナーゼ、ホモゲンチシン酸−1,2−ジオキシゲナーゼ、マレイルアセト酢酸イソメラーゼ、およびフマリルアセトアセターゼが含まれる。コハク酸/ピルビン酸経路からの中間体が受け入れられた場合は、4−ヒドロキシフェニル酢酸1−ヒドロキシラーゼが関係し得る。
【0089】
異なった生物におけるチロシン代謝に関係する更なる酵素には、4−クロロフェニル酢酸−3,4−ジオキシゲナーゼ、芳香族アミノトランスフェラーゼ、5−オキソペント−3−ene−1,2,5−トリカルボン酸デカルボキシラーゼ、2−oxo−hept−3−ene−1,7−dioate ヒドラターゼおよび5−カルボキシメチル−2−ヒドロキシムコン酸イソメラーゼが含まれる(Ellis, L. B. M.他(1999) Nucleic Acids Res. 27:373−376; Wackett, L. P. および Ellis, L. B. M. (1996) J. Microbiol. Meth. 25:91−93; および Schmidt, M. (1996) Amer. Soc. Microbiol. News 62:102)。
【0090】
ヒトにおいて、チロシン分解経路の酵素における後天性或いは先天性の遺伝的欠陥が、遺伝性チロシン血症I型を引き起こし得る。この疾患の1つの型である遺伝性チロシン血症I型(HT1)は、チロシンを代謝してフマル酸とアセト酢酸にする生物の経路での最後の酵素である酵素フマリルアセト酢酸ヒドロラーゼの欠損によって引き起こされ得る。HT1は幼児期に始まる進行性の肝傷害によって特徴づけられ、肝癌のリスクが高い(Endo, F.他(1997) J. Biol. Chem. 272:24426−24432)。
【0091】
複数の新規の薬剤代謝酵素、およびそれらをコードするポリヌクレオチドの発見により、新規の組成物を提供することで当分野の要望に応えることができる。 この新規の組成物は、自己免疫/炎症の疾患、細胞増殖異常、発生または発達障害、内分泌障害、眼の疾患、代謝障害、および肝臓の疾患を含む胃腸疾患の診断・治療・予防において有用であり、また、薬剤代謝酵素の核酸配列及びアミノ酸配列の発現における外来性化合物の効果についての評価にも有用である。
【0092】
(発明の要約)
本発明は、総称して「DME」、個別にはそれぞれ「DME−1」、「DME−2」、「DME−3」、「DME−4」、「DME−5」、「DME−6」、「DME−7」、「DME−8」、「DME−9」、「DME−10」、「DME−11」、「DME−12」、「DME−13」、「DME−14」、「DME−15」、「DME−16」、「DME−17」および「DME−18」と呼ぶ薬物代謝酵素である精製されたポリペプチドを提供する。或る実施態様において本発明は、(a)SEQ ID NO:1−18を有する群から選択したアミノ酸配列からなるポリペプチド、(b)SEQ ID NO:1−18を有する群から選択したアミノ酸配列と少なくとも90%が同一である天然のアミノ酸配列を有するポリペプチド、(c)SEQ ID NO:1−18を有する群から選択したアミノ酸配列を有するポリペプチドの生物学的活性断片、および(d)SEQ ID NO:1−18を有する群から選択したアミノ酸配列を有するポリペプチドの免疫原性断片を含む群から選択した単離されたポリペプチドを提供する。 一実施態様では、SEQ ID NO:1−18のアミノ酸配列を含む単離されたポリペプチドを提供する。
【0093】
また、本発明は(a)SEQ ID NO:1−18を有する群から選択したアミノ酸配列からなるポリペプチド、(b)SEQ ID NO:1−18を有する群から選択したアミノ酸配列と少なくとも90%が同一である天然のアミノ酸配列からなるポリペプチド、(c)SEQ ID NO:1−18を有する群から選択したアミノ酸配列を有するポリペプチドの生物学的活性断片、および(d)SEQ ID NO:1−18を有する群から選択したアミノ酸配列を有するポリペプチドの免疫原性断片、を含む群から選択されたポリペプチドをコードする単離されたポリヌクレオチドを提供する。 一実施態様では、ポリヌクレオチドはSEQ ID NO:1−18を有する群から選択したポリペプチドをコードする。 別の実施態様では、ポリヌクレオチドはSEQ ID NO:19−36を有する群から選択される。
【0094】
本発明は更に、(a)SEQ ID NO:1−18を有する群から選択したアミノ酸配列からなるポリペプチド、(b)SEQ ID NO:1−18を有する群から選択したアミノ酸配列と少なくとも90%の相同性のある天然のアミノ酸配列からなるポリペプチド、(c)SEQ ID NO:1−18を有する群から選択したアミノ酸配列を有するポリペプチドの生物学的活性断片、または(d)SEQ ID NO:1−18を有する群から選択したアミノ酸配列を有するポリペプチドの免疫原性断片を有する群から選択したポリペプチドをコードするようなポリヌクレオチドと機能的に連結したプロモーター配列を有する組換えポリヌクレオチドを提供する。 一実施態様では、本発明は組換えポリヌクレオチドを用いて形質転換した細胞を提供する。別の実施態様では、本発明は組換えポリヌクレオチドを含む遺伝形質転換体を提供する。
【0095】
更に本発明は、(a)SEQ ID NO:1−18からなる群から選択されたアミノ酸配列からなるポリペプチドと、(b)SEQ ID NO:1−18からなる群から選択されたアミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有する天然のアミノ酸配列からなるポリペプチドと、(c)SEQ ID NO:1−18からなる群から選択されたアミノ酸配列を有するポリペプチドの生物学的に活性な断片と、(d)SEQ ID NO:1−18とからなる群から選択されたアミノ酸配列を有するポリペプチドの免疫原性断片とで構成される群から選択されたポリペプチドを製造する方法を提供する。製造方法は、(a)組換えポリヌクレオチドを用いて形質転換した細胞をポリペプチドの発現に適した条件下で培養する過程と、(b)そのように発現したポリペプチドを回収する過程とを有し、組換えポリヌクレオチドはポリペプチドをコードするポリヌクレオチドに機能的に連結したプロモーター配列を有する。
【0096】
本発明は更に、(a)SEQ ID NO:1−18からなる群から選択したアミノ酸配列を有するポリペプチド、(b)SEQ ID NO:1−18からなる群から選択したアミノ酸配列と少なくとも90%同一である天然のアミノ酸配列を含むポリペプチド、(c)SEQ ID NO:1−18からなる群から選択したアミノ酸配列を有するポリペプチドの生物学的活性断片、および(d)SEQ ID NO:1−18からなる群から選択したアミノ酸配列を有するポリペプチドの免疫原性断片から構成される群から選択されたポリペプチドに特異結合するような単離された抗体を提供する。
【0097】
本発明は更に、(a)SEQ ID NO:19−36からなる群から選択したポリヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチド、(b)SEQ ID NO:19−36からなる群から選択したポリヌクレオチド配列と少なくとも90%の同一性を有する天然のポリヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド、(c)(a)に相補的なポリヌクレオチド配列、(d)(b)に相補的なポリヌクレオチド配列、および(e)(a)〜(d)のRNA等価物からなる群から選択された単離されたポリヌクレオチドを提供する。一実施態様では、ポリヌクレオチドは少なくとも60の連続したヌクレオチドを有する。
本発明は更に、サンプル中の標的ポリヌクレオチドを検出する方法を提供する。ここで、標的ポリヌクレオチドは(a)SEQ ID NO:19−36からなる群から選択したポリヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド、(b)SEQ ID NO:19−36からなる群から選択したポリヌクレオチド配列と少なくとも90%の同一性を有する天然のポリヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド、(c)(a)に相補的なポリヌクレオチド、(d)(b)に相補的なポリヌクレオチド配列、および(e)(a)〜(d)のRNA等価物からなる群から選択されたポリヌクレオチド配列を含む。検出方法は、(a)サンプル中の標的ポリヌクレオチドに相補的な配列を含む少なくとも20の連続したヌクレオチドを含むプローブを用いて該サンプルをハイブリダイズする過程と、(b)ハイブリダイゼーション複合体の存在・不存在を検出し、複合体が存在する場合にはオプションでその量を検出する過程からなり、プローブと標的ポリヌクレオチドあるいはその断片の間でハイブリダイゼーション複合体が形成されるような条件下で、プローブは標的ポリヌクレオチドに特異的にハイブリダイズする。一実施態様では、プローブは少なくとも60の連続したヌクレオチドを含む。
【0098】
本発明はまた、サンプル中の標的ポリヌクレオチドを検出する方法を提供する。 ここで、標的ポリヌクレオチドは(a)SEQ ID NO:19−36を有する群から選択したポリヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチド、(b)SEQ ID NO:19−36を有する群から選択したポリヌクレオチド配列と少なくとも90%同一である天然のポリヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチド、(c)(a)のポリヌクレオチドに相補的なポリヌクレオチド、(d)(b)のポリヌクレオチドに相補的なポリヌクレオチド、または(e)(a)〜(d)のRNA等価物を含む群から選択されたポリヌクレオチドの配列を有する。検出方法は、(a)ポリメラーゼ連鎖反応増幅を用いて標的ポリヌクレオチドまたはその断片を増幅する過程と、(b)標的ポリヌクレオチドまたはその断片の存在・不存在を検出し、該標的ポリヌクレオチドまたはその断片が存在する場合にはオプションでその量を検出する過程を含む。
【0099】
本発明は更に、有効量のポリペプチドと薬剤として許容できる賦形剤とを含む成分を提供し、有効量のポリペプチドは、(a)SEQ ID NO:1−18を有する群から選択したアミノ酸配列を有するポリペプチド、(b)SEQ ID NO:1−18を有する群から選択したアミノ酸配列と少なくとも90%同一である天然のアミノ酸配列を有するポリペプチド、(c)SEQ ID NO:1−18を有する群から選択したアミノ酸配列を有するポリペプチドの生物学的活性断片、または(d)SEQ ID NO:1−18を有する群から選択したアミノ酸配列を有するポリペプチドの免疫原性断片を含む。一実施例では、SEQ ID NO:1−18からなる一群から選択されたアミノ酸配列を含む組成物を提供する。 更に、本発明は、患者にこの組成物を投与することを含む、機能的DMEの発現の低下に関連した疾患やその症状の治療方法を提供する。
【0100】
本発明はまた、(a)SEQ ID NO:1−18を有する群から選択したアミノ酸配列を含むポリペプチド、(b)SEQ ID NO:1−18を有する群から選択したアミノ酸配列と少なくとも90%の相同性を有する天然のアミノ酸配列を含むポリペプチド、(c)SEQ ID NO:1−18を有する群から選択したアミノ酸配列のポリペプチドの生物学的活性断片、または(d)SEQ ID NO:1−18を有する群から選択したアミノ酸配列のポリペプチドの免疫原性断片を含む群から選択されたポリペプチドのアゴニストとしての有効性を確認するために化合物をスクリーニングする方法を提供する。 スクリーニング方法は、(a)ポリペプチドを有するサンプルを化合物に曝す過程と、(b)サンプル中のアゴニスト活性を検出する過程とを含む。別法では、本発明は、この方法によって同定されたアゴニスト化合物と好適な医薬用賦形剤とを含む組成物を提供する。更なる別法では、本発明は、この組成物の患者への投与を含む、機能的DMEの発現の低下に関連した疾患やその症状の治療方法を提供する。
【0101】
本発明は更に、(a)SEQ ID NO:1−18を有する群から選択したアミノ酸配列を有するポリペプチド、(b)SEQ ID NO:1−18を有する群から選択したアミノ酸配列と少なくとも90%が同一である天然のアミノ酸配列を有するポリペプチド、(c)SEQ ID NO:1−18を有する群から選択したアミノ酸配列を有するポリペプチドの生物学的活性断片、または(d)SEQ ID NO:1−18を有する群から選択したアミノ酸配列を有するポリペプチドの免疫原性断片を含むポリペプチドのアンタゴニストとしての有効性を確認するために化合物をスクリーニングする方法を提供する。 スクリーニング方法は、(a)ポリペプチドを含むサンプルを化合物に曝す過程と、(b)サンプル中のアンタゴニスト活性を検出する過程とを含む。一実施態様で本発明は、この方法によって同定したアンタゴニスト化合物と薬剤として許容できる賦形剤とを含む成分を提供する。更なる別法では、本発明は、この組成物の患者への投与を含む、機能的DMEの過剰な発現に関連した疾患やその症状の治療方法を提供する。
【0102】
本発明は更に、(a)SEQ ID NO:1−18からなる群から選択したアミノ酸配列を含むポリペプチド、(b)SEQ ID NO:1−18からなる群から選択したアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有する天然のアミノ酸配列を含むポリペプチド、(c)SEQ ID NO:1−18を有する群から選択したアミノ酸配列の生物学的活性断片、または(d)SEQ ID NO:1−18からなる群から選択したアミノ酸配列の免疫原性断片を含むポリペプチドに特異結合する化合物をスクリーニングする方法を提供する。 スクリーニング方法は、(a)ポリペプチドを適切な条件下で少なくとも1つの試験化合物に混合させる過程と、(b)試験化合物とのポリペプチドの結合を検出し、それによってポリペプチドに特異結合する化合物を同定する過程とを含む。
【0103】
本発明は更に、(a)SEQ ID NO:1−18を有する群から選択したアミノ酸配列、(b)SEQ ID NO:1−18を有する群から選択したアミノ酸配列と少なくとも90%の相同性を有する天然のアミノ酸配列、(c)SEQ ID NO:1−18を有する群から選択したアミノ酸配列の生物学的活性断片、または(d)SEQ ID NO:1−18を有する群から選択したアミノ酸配列の免疫原性断片を含むポリペプチドの活性を調節する化合物をスクリーニングする方法を提供する。 スクリーニング方法は、(a)ポリペプチドの活性が許容された条件下で、ポリペプチドを少なくとも1つの試験化合物と混合させる過程と、(b)ポリペプチドの活性を試験化合物の存在下で算定する過程と、(c)試験化合物の存在下でのポリペプチドの活性を試験化合物の不存在下でのポリペプチドの活性と比較する過程とを含み、試験化合物の存在下でのポリペプチドの活性の変化は、ポリペプチドの活性を調節する化合物であることを意味する。
【0104】
更に本発明は、SEQ ID NO:19−36からなる群から選択された配列を含む標的ポリヌクレオチドの発現を変化させるのに効果的な化合物をスクリーニングする方法であって、(a)この標的ポリヌクレオチドを含むサンプルを化合物に曝露するステップと、(b)この標的ポリヌクレオチドの発現の変化を検出するステップとを含む、該スクリーニング方法を提供する。
【0105】
本発明は更に、(a)核酸を含む生物学的サンプルを試験化合物で処理する過程と、(b)(i)SEQ ID NO:19−36からなる群から選択したポリヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド、(ii)SEQ ID NO:19−36からなる群から選択したポリヌクレオチド配列と少なくとも90%の同一性を有する天然のポリヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド、(iii)(i)に相補的な配列を有するポリヌクレオチド、(iv)(ii)のポリヌクレオチドに相補的なポリヌクレオチド、(v)(i)〜(iv)のRNA等価物からなる群から選択したポリヌクレオチドの少なくとも20の連続したヌクレオチドを含むプローブを用いて、処理した生物学的サンプルの核酸をハイブリダイズする過程とを含む試験化合物の毒性の算定方法を提供する。ハイブリダイゼーションは、上記プローブと生物学的サンプル中の標的ポリヌクレオチドの間に特定のハイブリダイゼーション複合体が形成されるような条件下で発生し、上記標的ポリヌクレオチドは、(i)SEQ ID NO:19−36からなる群から選択したポリヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド、(ii)SEQ ID NO:19−36からなる群から選択したポリヌクレオチド配列と少なくとも90%の同一性を有する天然のポリヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド、(iii)(i)のポリヌクレオチドに相補的な配列を有するポリヌクレオチド、(iv)(ii)のポリヌクレオチドに相補的なポリヌクレオチド、および(v)(i)〜(iv)のRNA等価物からなる群から選択する。或いは、標的ポリヌクレオチドは、上記(i)〜(v)からなる群から選択したポリヌクレオチド配列の断片と、(c)ハイブリダイゼーション複合体の量を定量する過程と、(d)処理した生物学的サンプルのハイブリダイゼーション複合体の量を、非処理の生物学的サンプルのハイブリダイゼーション複合体の量と比較する過程を含み、処理した生物学的サンプルのハイブリダイゼーション複合体の量の差は、試験化合物の毒性を示す。
【0106】
(本発明の記載について)
本発明のタンパク質、ヌクレオチド配列及び方法について説明する前に、説明した特定の装置、材料及び方法に本発明が限定されるものではなく、改変し得ることを理解されたい。また、ここで使用する専門用語は特定の実施例を説明する目的で用いたものに過ぎず、特許請求の範囲にのみ限定される本発明の範囲を限定することを意図したものではないことも併せて理解されたい。
【0107】
請求の範囲及び明細書中で用いている単数形の「或る」及び「その(この)」の表記は、文脈から明らかにそうでないとされる場合を除いて複数のものを指す場合もあることに注意しなければならない。従って、例えば「或る宿主細胞」と記されている場合にはそのような宿主細胞が複数あることもあり、「或る抗体」と記されている場合には単数または複数の抗体、及び、当業者に公知の抗体の等価物等についても言及しているのである。
【0108】
本明細書中で用いる全ての専門用語及び科学用語は、特に定義されている場合を除き、当業者に一般に理解されている意味と同じ意味を有する。本明細書で説明するものと類似あるいは同等の任意の装置、材料及び方法を用いて本発明の実施または試験を行うことができるが、ここでは好適な装置、材料、方法について説明する。本発明で言及する全ての刊行物は、刊行物中で報告されていて且つ本発明に関係があるであろう細胞株、プロトコル、試薬及びベクターについて説明及び開示する目的で引用しているものである。本明細書のいかなる開示内容も、本発明が先行技術の効力によってこのような開示に対して先行する権利を与えられていないことを認めるものではない。
【0109】
(定義)
用語「DME」は、天然、合成、半合成或いは組換え体など全ての種(特にウシ、ヒツジ、ブタ、マウス、ウマ及びヒトを含む哺乳動物)から得られる実質的に精製されたDMEのアミノ酸配列を指す。
【0110】
用語「アゴニスト」は、DMEの生物学的活性を強める、或いは模倣する分子を指す。このアゴニストは、DMEに直接相互作用するか、或いはDMEが関与する生物学的経路の成分と作用して、DMEの活性を調節するタンパク質、核酸、糖質、小分子、任意の他の化合物や組成物を含み得る。
【0111】
用語「対立遺伝子変異配列」は、DMEをコードする遺伝子の別の形を指す。対立遺伝子変異体は、核酸配列における少なくとも1つの突然変異から作製し得る。 また、変異mRNAまたはポリペプチドを作製し得る。その構造または機能は、変異することもしないこともある。遺伝子は、天然の対立遺伝子変異体を全く有しないか、1個若しくは数個の天然の対立遺伝子変異体を有し得る。一般に対立遺伝子変異体を生じさせる通常の突然変異性変化は、ヌクレオチドの自然欠失、付加または置換に帰するものである。これら各変化は、単独或いは他の変化と共に、所定の配列内で1回若しくは数回生じ得る。
【0112】
DMEをコードする「変異」核酸配列は、様々なヌクレオチドの欠失、挿入、或いは置換が起こっても、DMEと同じポリペプチド或いはDMEの機能特性の少なくとも1つを備えるポリペプチドを指す。この定義には、DMEをコードするポリヌクレオチド配列の正常な染色体の遺伝子座ではない位置での対立遺伝子変異配列との不適当或いは予期しないハイブリダイゼーション、並びにDMEをコードするポリヌクレオチドの特定のオリゴヌクレオチドプローブを用いて容易に検出可能な或いは検出困難な多形性を含む。コードされたタンパク質も変異され得り、サイレント変化を生じDMEと機能的に等価となるアミノ酸残基の欠失、挿入、或いは置換を含み得る。意図的なアミノ酸置換は、生物学的或いは免疫学的にDMEの活性が保持される範囲で、残基の極性、電荷、溶解度、疎水性、親水性、及び/または両親媒性についての類似性に基づいて成され得る。例えば、負に帯電したアミノ酸にはアスパラギン酸及びグルタミン酸があり、正に帯電したアミノ酸にはリジン及びアルギニンがある。親水性値が近似している非荷電極性側鎖を有するアミノ酸には、アスパラギンとグルタミン、セリンとスレオニンがある。親水性値が近似している非荷電側鎖を有するアミノ酸には、ロイシン、イソロイシンとバリン、グリシンとアラニン、フェニルアラニンとチロシンがある。
【0113】
「アミノ酸」または「アミノ酸配列」の語は、オリゴペプチド、ペプチド、ポリペプチド若しくはタンパク質の配列またはその断片を指し、天然または合成分子を指す。ここで「アミノ酸配列」は天然のタンパク質分子のアミノ酸配列を指すものであり、「アミノ酸配列」及び類似の語は、アミノ酸配列を、列挙したタンパク質分子に関連する完全な本来のアミノ酸配列に限定しようとするものではない。
【0114】
「増幅」は、核酸配列の追加複製に関連する。増幅は通常、当業者によく知られたポリメラーゼ連鎖反応(PCR)技術を用いて行う。
【0115】
用語「アンタゴニスト」は、DMEの生物学的活性を阻害或いは減弱する分子である。アンタゴニストは、DMEに直接相互作用するか、或いはDMEが関与する生物学的経路の成分と作用して、DMEの活性を調節する抗体、核酸、糖質、小分子、任意の他の化合物や組成物などのタンパク質を含み得る。
【0116】
「抗体」の語は、抗原決定基と結合することができる、そのままの免疫グロブリンやその断片、例えばFa、F(ab’)2 及びFv断片を指す。DMEポリペプチドと結合する抗体は、免疫抗原として、そのままのポリペプチド、または関心のある小ペプチドを含む断片を用いて作製可能である。動物(マウス、ラット、ウサギ等)を免疫化するために用いるポリペプチドまたはオリゴペプチドは、RNAの翻訳、または化学合成によって得られるポリペプチドまたはオリゴペプチドに由来し得るもので、好みに応じて担体タンパク質に抱合することも可能である。通常用いられる担体であってペプチドと化学結合するものは、ウシ血清アルブミン、サイログロブリン及びスカシガイのヘモシアニン(KLH)等がある。結合ペプチドは、動物を免疫化するために用いる。
【0117】
「抗原決定基」の語は、特定の抗体と接触している分子の領域(即ちエピトープ)を指す。タンパク質またはタンパク質断片を用いて宿主動物を免疫化する場合、タンパク質の多数の領域が、抗原決定基(タンパク質の特定の領域または3次元構造)に特異結合する抗体の産生を誘導し得る。抗原決定基は、抗体への結合において無損傷抗原(即ち免疫応答を誘発するために用いられる免疫原)と競合し得る。
【0118】
用語「アプタマー」は、特定の分子標的に結合する核酸またはオリゴヌクレオチド分子を指す。アプタマーは、in vitroの進化過程(例えば米国特許番号第5,270,163号に記載されたSELEX(Systematic Evolution of Ligands by EXponential Enrichment))から由来するもので、そのような過程は大きな組み合わせライブラリから標的特異的なアプタマー配列を選択する。アプタマーの組成は2本鎖か、または一本鎖であり、デオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチド、ヌクレオチド誘導体、或いは他のヌクレオチド様分子を含み得る。アプタマーのヌクレオチド構成要素は修飾された糖基(例えば、リボヌクレオチドの2’−OH 基が2’−F または 2’−NHで置換されている。)を有することが可能で、これらの糖基は、例えば、ヌクレアーゼに対する耐性あるいは血中でのより長い生存期間などの望ましい性質を改善する。循環系からアプタマーが除去される速度を遅くするために、アプタマーを高分子量担体等の分子に抱合させることができる。アプタマーは、例えば、架橋剤の光活性化によって各々のリガンドと特異的に架橋させることができる(例えば、 Brody, E.N. 及びL. Gold (2000) J. Biotechnol. 74:5−13参照)。
【0119】
用語「イントラマー(intramer)」はin vivoで発現されるアプタマーを指す。例えば、ワクシニアウイルス性RNA 発現系は白血球の細胞質において高レベルで特定のRNAアプタマーを発現させるのに使われている(Blind, M. 他 (1999) Proc. Natl Acad. Sci. USA 96:3606−3610)。
【0120】
用語「スピーゲルマー(spiegelmer)」は L−DNA、L−RNA、または、他の左旋性ヌクレオチド誘導体あるいはヌクレオチド様分子を含むアプタマーを指す。左旋性ヌクレオチドを含むアプタマーは、右旋性のヌクレオチドを含む基質に通常作用する天然の酵素による分解に耐性がある。
【0121】
「アンチセンス」の語は、特定の核酸配列の「センス」(コーディング)鎖と塩基対を形成することが可能な任意の成分を指す。アンチセンス成分には、DNAや、RNAや、ペプチド核酸(PNA)や、ホスホロチオ酸、メチルホスホン酸またはベンジルホスホン酸等の修飾されたバックボーン連鎖を有するオリゴヌクレオチドや、2’−メトキシエチル糖または2’−メトキシエトキシ糖等の修飾された糖類を有するオリゴヌクレオチドや、或いは5−メチルシトシン、2−デオキシウラシルまたは7−デアザ−2’−デオキシグアノシン等の修飾された塩基を有するオリゴヌクレオチドが含まれうる。アンチセンス分子は、化学合成または転写を含む任意の方法で製造することができる。相補的アンチセンス分子は、ひとたび細胞に導入されたら、細胞が形成した天然の核酸配列と塩基対を形成し、転写または翻訳を阻止する二重鎖を形成する。「負」若しくは「マイナス(−)」の語が参照DNA分子のアンチセンス鎖を、「正」若しくは「プラス(+)」がセンス鎖を指すことがある。
【0122】
「生物学的に活性」の語は、天然分子の構造的機能、調節機能または生化学的機能を有するタンパク質を指す。同様に、用語「免疫学的に活性」または「免疫原性」は、天然或いは組換え体のDME、合成のDMEまたはそれらの任意のオリゴペプチドが、適当な動物或いは細胞の特定の免疫応答を誘発して特定の抗体と結合する能力を指す。
【0123】
「相補(的)」または「相補性」の語は、塩基対形成によってアニーリングする2つの一本鎖核酸の間の関係を指す。例えば、配列「5’A−G−T3’」は、相補配列「3’T−C−A5’」に結合する。
【0124】
「所定のポリヌクレオチド配列を含む成分」及び「所定のアミノ酸配列を含む成分」は、所定のポリヌクレオチド配列またはアミノ酸配列を含む広範囲の任意の成分を指す。この成分には、乾燥製剤または水溶液が含まれ得る。DME 若しくはDME の断片をコードするポリヌクレオチド配列を含む組成物は、ハイブリダイゼーションプローブとして使用され得る。このプローブは、凍結乾燥状態で保存可能であり、糖質などの安定化剤と結合させることが可能である。ハイブリダイゼーションにおいては、塩(例えばNaCl)、界面活性剤(例えばドデシル硫酸ナトリウム;SDS)及びその他の構成エレメント(例えばデンハート液、脱脂粉乳、サケの精子のDNA等)を含む水溶液中にプローブを分散させることができる。
【0125】
「コンセンサス配列」は、不要な塩基を分離するためにDNA配列の解析を繰り返し行い、XL−PCRキット(PE Biosystems,Foster City CA)を用いて5’及び/または3’の方向に伸長され、再度シークエンシングされた核酸配列、またはGELVIEW 断片構築システム(GCG, Madison, WI)またはPhrap (University of Washington, Seattle WA)等の断片構築用のコンピュータプログラムを用いて1つ或いはそれ以上の重複するcDNAやEST、またはゲノムDNA断片から構築された核酸配列を指す。伸長及び構築の両方を行ってコンセンサス配列を作製する配列もある。
【0126】
「保存的なアミノ酸置換」は、置換がなされた時に元のタンパク質の特性を殆ど損なわないと予測されるような置換、即ちタンパク質の構造と特に機能が保存され、そのような置換による大きな変化がない置換を指す。下表は、タンパク質中で元のアミノ酸と置換可能で、保存アミノ酸置換と認められるアミノ酸を示している。
Figure 2004526414
【0127】
保存アミノ酸置換では通常、(a)置換領域におけるポリペプチドのバックボーン構造、例えばβシートやαヘリックス構造、(b)置換部位における分子の電荷または疎水性、及び/または(c)側鎖の大部分が保持される。
【0128】
「欠失」は、結果的に1個若しくは数個のアミノ酸残基またはヌクレオチドが失われてなくなるようなアミノ酸またはヌクレオチド配列における変化を指す。
【0129】
「誘導体」の語は、ポリペプチドまたはポリヌクレオチドの化学修飾を指す。例えば、アルキル基、アシル基、ヒドロキシル基またはアミノ基による水素の置換は、ポリヌクレオチド配列の化学修飾に含まれ得る。ポリヌクレオチド誘導体は、天然分子の生物学的または免疫学的機能を少なくとも1つは保持しているポリペプチドをコードする。ポリペプチド誘導体は、グリコシル化、ポリエチレングリコール化(pegylation)、或いは任意の同様なプロセスであって誘導起源のポリペプチドから少なくとも1つの生物学的若しくは免疫学的機能を保持しているプロセスによって、修飾されたポリペプチドである。
【0130】
「検出可能な標識」は、測定可能な信号を生成することができ、ポリヌクレオチドまたはポリペプチドに共有結合または非共有結合するようなレポーター分子または酵素を指す。
【0131】
「示差発現」は少なくとも2つの異なったサンプルを比較することによって決められる、増加、または非調節、あるいは減少、下方調節、または欠損遺伝子またはタンパク発現を指す。このような比較は例えば、治療後サンプルと未治療のサンプルまたは病態のサンプルと正常サンプルの間で行われ得る。
【0132】
「エキソンシャフリング」は、異なるコード領域の組換えを指す(エキソン)。エキソンはコードされたタンパク質の構造的或いは機能的ドメインを表しうるので、新たなタンパク質は安定的な下部構造の新規な再組合せにより構築される。それによって新たなタンパク質機能の進化の加速が可能となる。
【0133】
用語「断片」は、DMEまたはDMEをコードするポリヌクレオチドの固有の部分であって、その親配列(parent sequence)と同一であるがその配列より長さが短いものを指す。断片は、画定された配列の全長から1ヌクレオチド/アミノ酸残基を差し引いた長さよりも短い長さを有し得る。例えば或る断片は、5〜1000の連続したヌクレオチドまたはアミノ酸残基を有し得る。プローブ、プライマー、抗原、治療用分子として、或いはその他の目的のために用いられる断片は、少なくとも5、10、15、16、20、25、30、40、50、60、75、100、150、250若しくは500の連続したヌクレオチド或いはアミノ酸残基長さであり得る。断片は、分子の特定領域から優先的に選択し得る。例えば、ポリペプチド断片は、所定の配列に示すような最初の250または500アミノ酸(またはポリペプチドの最初の25%または50%)から選択された或る長さの連続したアミノ酸を有し得る。これらの長さは明らかに例として挙げているものであり、本発明の実施例では、配列表、表及び図面を含む明細書に裏付けされた任意の長さであってよい。
【0134】
SEQ ID NO:19−36の断片は、例えば、この断片を得たゲノム内の他の配列とは異なる、SEQ ID NO:19−36を明確に同定する固有のポリヌクレオチド配列の領域を含む。SEQ ID NO:19−36のある断片は、例えば、ハイブリダイゼーションや増幅技術、またはSEQ ID NO:19−36を関連ポリヌクレオチド配列から区別する類似の方法に有用である。SEQ ID NO:19−36の断片の正確な長さ及び断片に対応するSEQ ID NO:19−36の領域は、断片に対する意図した目的に基づき当業者が慣例的に決定することが可能である。
【0135】
SEQ ID NO:1−18 の断片は、SEQ ID NO:19−36の断片によってコードされる。 SEQ ID NO:1−18 の断片には、SEQ ID NO:1−18を特異的に同定する固有のアミノ酸配列領域が含まれている。 例えば、SEQ ID NO:1−18 の断片は、SEQ ID NO:1−18を特異認識する抗体を産出するための免疫原性ペプチドとして有用である。 SEQ ID NO:1−18 の断片及び断片に対応するSEQ ID NO:1−18の領域の正確な長さは、断片に対する意図した目的に基づき当業者が慣例的に決定することが可能である。
【0136】
「完全長」ポリヌクレオチド配列とは、少なくとも1つの翻訳開始コドン(例えばメチオニン)、オープンリーディングフレーム及び翻訳終止コドンを有する配列である。「完全長」ポリヌクレオチド配列は、「完全長」ポリペプチド配列をコードする。
【0137】
「相同性」の語は、配列類似性即ち2つ以上のポリヌクレオチド配列または2つ以上のポリペプチド配列の配列間で互換可能な配列同一性である。
【0138】
ポリヌクレオチド配列に適用される「一致率」または「一致%」の語は、標準化されたアルゴリズムを用いてアラインメントされた少なくとも2つ以上のポリヌクレオチド配列間で一致する残基の割合を意味する。このようなアルゴリズムは、2配列間のアラインメントを最適化するために比較する配列において、標準化された再現性のある方法でギャップを挿入するので、2つの配列をより有意に比較できる。
【0139】
ポリヌクレオチド配列間の一致率は、MEGALIGN version 3.12e配列アラインメントプログラムに組込まれているようなCLUSTAL Vアルゴリズムのデフォルトのパラメータを用いて決定できる。このプログラムは、LASERGENE ソフトウエアパッケージ(一組の分子生物学的分析プログラム)(DNASTAR, Madison WI)の一部である。このCLUSTAL Vは、Higgins, D.G. 及び P.M. Sharp (1989) CABIOS 5:151−153、Higgins, D.G. 他 (1992) CABIOS 8:189−191に記載されている。ポリヌクレオチド配列を2つ1組でアラインメントする際のデフォルトパラメータは、Ktuple=2、gap penalty=5、window=4、「diagonals saved」=4と設定する。「重み付けされた」残基重み付け表が、デフォルトとして選択された。CLUSTAL Vは、アラインメントされたポリヌクレオチド配列対間の「類似率」として一致率を報告する。
【0140】
或いは、米国国立バイオテクノロジー情報センター(NCBI)のBasic Local Alignment Search Tool(BLAST)が一般的に用いられ、且つ、無料で入手可能な配列比較アルゴリズム一式を提供している(Altschul, S.F. ら (1990) J. Mol. Biol. 215:403−410)。 このアルゴリズムは、幾つかの情報源から入手可能であり、メリーランド州ベセスダにあるNCBI及びインターネット(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/)からも入手可能である。BLASTソフトウェア一式には様々な配列分析プログラムが含まれており、既知のポリヌクレオチド配列を種々のデータベースから得た別のポリヌクレオチド配列とアラインメントする「blastn」もその1つである。その他にも、2つのヌクレオチド配列を対で直接比較するために用いる「BLAST 2 Sequences」と称されるツールも利用可能である。「BLAST 2 Sequences」は、http://www.ncbi.nlm.nih.gov/gorf/bl2.htmlにアクセスして対話形式で利用することが可能である。「BLAST 2 Sequences」ツールは、blastn と blastp(後述)の両方に用いることができる。BLASTプログラムは、一般的には、ギャップ及びデフォルト設定に設定された他のパラメータと共に用いる。例えば、2つのヌクレオチド配列を比較するために、デフォルトパラメータとして設定された「BLAST 2 Sequences」ツールVersion 2.0.12(2000年4月21日)を用いてblastnを実行してもよい。デフォルトパラメータの設定例を以下に示す。
Figure 2004526414
【0141】
一致率は、完全に画定された(例えば特定の配列番号で画定された)配列長さと比較して測定し得る。 或いは、より短い長さ、例えばより大きな画定された配列から得られた断片(例えば少なくとも20、30、40、50、70、100または200の連続したヌクレオチドの断片)の長さと比較して一致率を測定してもよい。ここに挙げた長さは単なる例示的なものに過ぎず、表、図及び配列リストを含めた本明細書に記載された配列に裏付けられた任意の配列長さの断片を用いて、一致率を測定し得る長さを説明し得ることを理解されたい。
【0142】
高度の相同性を示さない核酸配列が、それにもかかわらず遺伝子コードの縮重が原因で類似のアミノ酸配列をコードする場合がある。この縮重を利用して核酸配列内で変化を生じさせて、全ての核酸配列が実質上同一のタンパク質をコードするような多数の核酸配列を生成し得ることを理解されたい。
【0143】
ポリペプチド配列に適用される「一致率」または「一致%」の語は、標準化されたアルゴリズムを用いてアラインメントされた少なくとも2以上のポリペプチド配列間で一致する残基の割合を意味する。ポリペプチド配列アラインメントの方法は公知である。保存的アミノ酸置換を考慮するアラインメント方法もある。既に詳述したこのような保存的置換は通常、置換部位の電荷及び疎水性を保存するので、ポリペプチドの構造を(従って機能も)保存する。
【0144】
ポリペプチド配列間の一致率は、MEGALIGN version 3.12e配列アラインメントプログラムに組込まれているようなCLUSTAL Vアルゴリズムのデフォルトのパラメータを用いて決定できる(既に説明したのでそれを参照されたい)。CLUSTAL Vを用いて、ポリペプチド配列を2つ1組でアラインメントする際のデフォルトパラメータは、Ktuple=1、gap penalty=3、window=5、「diagonals saved」=5と設定する。デフォルトの残基重み付け表としてPAM250マトリクスを選択する。ポリヌクレオチドアラインメントと同様に、CLUSTAL Vは、アラインメントされたポリペプチド配列対間の「類似率」として一致率を報告する。
【0145】
或いは、NCBI BLASTソフトウェア一式を用いてもよい。例えば、2つのポリペプチド配列を対で比較をする場合、ある者は、デフォルトパラメータで設定された「BLAST 2 Sequences」ツールVersion 2.0.12 (Apr−21−2000)でblastpを使用するであろう。デフォルトパラメータの設定例を以下に示す。
Figure 2004526414
【0146】
一致率は、完全に画定された(例えば特定の配列番号で画定された)ポリペプチド配列の長さと比較して測定し得る。 一致率は、配列或いは、より短い長さ、例えばより大きな画定されたポリペプチド配列から得られた断片(例えば少なくとも15、20、30、40、50、70または150の連続した残基の断片)の長さと比較して一致率を測定してもよい。ここに挙げた長さは単なる例示的なものに過ぎず、表、図及び配列リストを含めた本明細書に記載された配列に裏付けられた任意の配列長さの断片を用いて、或る長さであってその長さに対して一致率を測定し得る長さを説明し得ることを理解されたい。
【0147】
「ヒト人工染色体(HAC)」は、約6kb(キロベース)〜10MbのサイズのDNA配列を含み得る、染色体の複製、分離及び維持に必要な全てのエレメントを含む直鎖状の小染色体である。
【0148】
「ヒト化抗体」の語は、非抗体結合領域におけるアミノ酸配列はヒト抗体により近づくように変異させた抗体分子であって、本来の結合能力はそのまま保持しているような抗体分子を指す。
【0149】
「ハイブリダイゼーション」は、所定のハイブリダイゼーション条件下で塩基対を形成することによって、一本鎖ポリヌクレオチドが相補的鎖とアニーリングするプロセスを指す。特異的ハイブリダイゼーションは、2つの核酸配列が高い相同性を共有することを示すものである。特異的ハイブリダイゼーション複合体は許容されるアニーリング条件下で形成され、「洗浄」ステップ後もハイブリダイズされたままである。洗浄ステップは、ハイブリダイゼーションプロセスのストリンジェンシーを決定する際に特に重要であり、更にストリンジェントな条件では、非特異結合(即ち完全には一致しない核酸鎖間の対の結合)が減少する。核酸配列のアニーリングに対する許容条件は、本技術分野における当業者が慣例的に決定する。 許容条件はハイブリダイゼーション実験の間は一定でよいが、洗浄条件は所望のストリンジェンシーを得るように、従ってハイブリダイゼーション特異性も得るように実験中に変更することができる。アニーリングが許容される条件は、例えば、温度が68℃で、約6×SSC、約1%(w/v)のSDS、並びに約100μg/mlのせん断して変性したサケ精子DNAが含まれる。
【0150】
一般に、ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーは或る程度、洗浄ステップを実行する温度を基準にして表すことができる。このような洗浄温度は通常、所定のイオン強度及びpHにおける特定の配列の融点(Tm)より約5〜20℃低くなるように選択する。このTmは、所定のイオン強度及びpHの下で、完全に一致するプローブに標的配列の50%がハイブリダイズする温度である。Tmを計算する式及び核酸のハイブリダイゼーション条件はよく知られており、Sambrook ら (1989) Molecular Cloning: Laboratory Manual, 第2版, 1−3巻, Cold Spring Harbor Press, Plainview NYに記載されており、特に2巻の9章を参照されたい。
【0151】
本発明のポリヌクレオチド間の高いストリンジェンシーのハイブリダイゼーションでは、約0.2x SSC及び約0.1%のSDSの存在下、約68℃で1時間の洗浄過程を含む。別法では、65℃、60℃、55℃、または42℃の温度で行う。SSC濃度は、約0.1%のSDS存在下で、約0.1〜2×SSCの範囲で変化し得る。通常は、ブロッキング剤を用いて非特異ハイブリダイゼーションを阻止する。このような遮断剤には、例えば、約100〜200μg/mlの変性サケ精子DNAがある。例えばRNAとDNAのハイブリダイゼーションのような特定条件下では、有機溶剤、例えば約35〜50%v/vの濃度のホルムアミドを用いることもできる。洗浄条件の有用なバリエーションは、当業者には自明であろう。 ハイブリダイゼーションは、特に高ストリンジェント条件下では、ヌクレオチド間の進化的な類似性を示唆し得る。このような類似性は、ヌクレオチド及びヌクレオチドにコードされるポリペプチドに対する類似の役割を強く示唆している。
【0152】
「ハイブリダイゼーション複合体」の語は、相補的塩基対間の水素結合の形成力によって2つの核酸配列間に形成された複合体を指す。ハイブリダイゼーション複合体は、溶解状態で形成し得る(CtまたはRt解析等)。 或いは、一方の核酸配列が溶解状態で存在し、もう一方の核酸配列が固体支持体(例えば紙、膜、フィルタ、チップ、ピンまたはガラススライド、或いは他の適切な基板であって細胞若しくはその核酸が固定される基板)に固定されているような2つの核酸配列間に形成され得る。
【0153】
「挿入」及び「付加」の語は、1個若しくは数個のアミノ酸残基またはヌクレオチドを各々付加するようなアミノ酸またはヌクレオチド配列における変化を指す。
【0154】
「免疫応答」は、炎症、外傷、免疫異常症、伝染性疾患または遺伝性疾患に関連する症状を指し得る。 これらの症状は、細胞及び全身の防御系に作用し得る種々の因子、例えばサイトカイン、ケモカイン、その他のシグナル伝達分子の発現によって特徴づけることができる。
【0155】
用語「免疫原性断片」は、例えば哺乳動物などの生きている動物に導入すると、免疫反応を引き起こすGVREDのポリペプチド断片またはオリゴペプチド断片を指す。用語「免疫原性断片」はまた、本明細書で開示するまたは当分野で周知のあらゆる抗体生産方法に有用なDMEのポリペプチド断片またはオリゴペプチド断片を含む。
【0156】
「マイクロアレイ」の語は、基板上の複数のポリヌクレオチド、ポリペプチドまたはその他の化合物の構成を指す。
【0157】
「エレメント」または「アレイエレメント」の語は、マイクロアレイ上に定義された固有の位置にあるハイブリダイズ可能なポリヌクレオチド、ポリペプチドその他の化合物を指す。
【0158】
用語「調節」は、DMEの活性の変化を指す。例えば、調節によって、DMEのタンパク質活性、或いは結合特性、またはその他の生物学的特性、機能的特性或いは免疫学的特性の変化が起こる。
【0159】
「核酸」及び「核酸配列」の語は、ヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチドまたはこれらの断片を指す。「核酸」及び「核酸配列」の語は、ゲノム起源または合成起源のDNAまたはRNAであって一本鎖または二本鎖であるか或いはセンス鎖またはアンチセンス鎖を表し得るようなDNAまたはRNAや、ペプチド核酸(PNA)や、任意のDNA様またはRNA様物質を指すこともある。
【0160】
「機能的に連結した」は、第1核酸配列が第2核酸配列と機能的な関係があるように配置された状態を指す。例えば、プロモーターがコード配列の転写または発現に影響を及ぼす場合には、そのプロモーターはそのコード配列に機能的に連結している。機能的に連結したDNA配列は非常に近接するか、或いは連続し得る。そして、2つのタンパク質コード領域を結合する必要がある場合は、同一のリーディングフレーム内にある。
【0161】
「ペプチド核酸」(PNA)は、アンチセンス分子または抗遺伝子物質であって、リジンを末端とするアミノ酸残基のペプチドバックボーンに結合した、少なくとも約5ヌクレオチドの長さのオリゴヌクレオチドからなるものを指す。末端のリジンは、成分に溶解性を与える。PNAは、相補的一本鎖DNAまたはRNAに優先的に結合して転写の拡張を停止するものであり、ポリエチレングリコール化して細胞におけるPNAの寿命を延長し得る。
【0162】
DMEの「翻訳後修飾」には、脂質化、グリコシル化、リン酸化、アセチル化、ラセミ化、蛋白分解性切断及びその他の当分野で既知の修飾を含まれ得る。 これらのプロセスは、合成或いは生化学的に生じ得る。生化学的修飾は、DMEの酵素環境に依存し、細胞の種類によって異なり得る。
【0163】
「プローブ」とは、同一配列或いは対立遺伝子核酸配列、関連する核酸配列の検出に用いる、DMEやそれらの相補配列、またはそれらの断片をコードする核酸配列のことである。プローブは、単離されたオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドであって、検出可能な標識またはレポーター分子に結合したものである。典型的な標識には、放射性アイソトープ、リガンド、化学発光試薬及び酵素がある。「プライマー」は、短い核酸、通常はDNAオリゴヌクレオチドであり、相補的塩基対を形成することで標的ポリヌクレオチドにアニーリングされ得る。プライマーは次に、DNAポリメラーゼ酵素によって標的DNA鎖に沿って伸長し得る。プライマー対は、例えばポリメラーゼ連鎖反応(PCR)による核酸配列の増幅(及び同定)に用い得る。
【0164】
本発明に用いるようなプローブ及びプライマーは通常、既知の配列の少なくとも15の連続したヌクレオチドを含んでいる。特異性を高めるために長めのプローブ及びプライマー、例えば開示した核酸配列の少なくとも20、25、30、40、50、60、70、80、90、100または150の連続したヌクレオチドからなるようなプローブ及びプライマーを用いてもよい。これよりもかなり長いプローブ及びプライマーもある。表、図面及び配列リストを含む本明細書に裏付けされた任意の長さのヌクレオチドを用いることができるものと理解されたい。
【0165】
プローブ及びプライマーの調製及び使用方法については、Sambrook, J. ら (1989) Molecular Cloning: Laboratory Manual, 第2版, 1−3巻, Cold Spring Harbor Press, Plainview NY、Ausubel, F.M. ら, (1987) Current Protocols in Molecular Biology, Greene Pubi. Assoc. & Wiley−Intersciences, New York NY、Innisら (1990) PCR Protocols, Guide to Methods and Applications Academic Press, San Diego CA等を参照されたい。PCRプライマー対は、その目的のためのコンピュータプログラム、例えばPrimer(Version 0.5, 1991, Whitehead Institute for Biomedical Research, Cambridge MA)を用いるなどして既知の配列から得ることができる。
【0166】
プライマーとして用いるオリゴヌクレオチドの選択は、そのような目的のために本技術分野でよく知られているソフトウェアを用いて行う。例えばOLIGO 4.06ソフトウェアは、各100ヌクレオチドまでのPCRプライマー対の選択に有用であり、オリゴヌクレオチド及び最大5,000ヌクレオチドまでの大きめのポリヌクレオチドであって32キロベースまでのインプットポリヌクレオチド配列から得たものを分析するのにも有用である。類似のプライマー選択プログラムには、拡張能力のための追加機能が組込まれている。例えば、PrimOUプライマー選択プログラム(テキサス州ダラスにあるテキサス大学南西部医療センターのゲノムセンターから一般向けに入手可能)は、メガベース配列から特定のプライマーを選択することが可能であり、従ってゲノム全体の範囲でプライマーを設計するのに有用である。Primer3プライマー選択プログラム(マサチューセッツ州ケンブリッジのWhitehead Institute/MITゲノム研究センターから一般向けに入手可能)ではユーザーが「ミスプライミング・ライブラリ」をインプットすることができ、ここでプライマー結合部位として避けたい配列はユーザーが指定する。Primer3は特に、マイクロアレイのためのオリゴヌクレオチドの選択に有用である。(後二者のプライマー選択プログラムのソースコードは、各自のソースから得てユーザー固有のニーズを満たすように変更してもよい。)PrimerGenプログラム(英国ケンブリッジ市の英国ヒトゲノムマッピングプロジェクト−リソースセンターから一般向けに入手可能)は、多数の配列アラインメントに基づいてプライマーを設計し、それによって、アラインメントされた核酸配列の最大保存領域または最小保存領域の何れかとハイブリダイズするようなプライマーの選択を可能にする。従って、このプログラムは、固有な、および保存されたオリゴヌクレオチド及びポリヌクレオチドの断片の同定に有用である。上記選択方法のいずれかによって同定したオリゴヌクレオチド及びポリヌクレオチドの断片は、ハイブリダイゼーション技術において、例えばPCRまたはシークエンシングプライマーとして、マイクロアレイエレメントとして、或いは核酸のサンプルにおいて完全または部分的相補的ポリヌクレオチドを同定する特異プローブとして有用である。オリゴヌクレオチドの選択方法は、上記の方法に限定されるものではない。
【0167】
「組換え核酸」は天然配列ではない配列であるか或いは人為的に組み合わせなければ離隔しているような配列の2以上のセグメントを人為的に組み合わせて産出した配列を有する配列である。この人為的組合せはしばしば化学合成によって達成するが、より一般的には核酸の単離セグメントの人為的操作によって、例えばのSambrookらの文献(前出)に記載されているような遺伝子工学的手法によって達成する。組換え核酸の語は、単に核酸の一部を付加、置換または欠失した変異核酸も含む。しばしば組換え核酸には、プロモーター配列に機能的に連結した核酸配列が含まれる。このような組換え核酸は、例えばある細胞を形質転換するために使用されるベクターの一部とすることが可能である。
【0168】
或いはこのような組換え核酸は、ウイルスベクターのの一部であって、例えばワクシニアウイルスに基づくものであり得る。 ワクシニアウイルスは哺乳動物のワクチン接種に用いることが可能で、その際に組換え核酸が発現して哺乳動物の防御免疫応答を誘導する。
【0169】
「調節エレメント」は、通常は遺伝子の未翻訳領域に由来する核酸配列であり、エンハンサー、プロモーター、イントロン及び5’及び3’の未翻訳領域(UTR)を含む。調節エレメントは、転写、翻訳またはRNA安定性を調節する宿主タンパク質またはウイルスタンパク質と相互作用する。
【0170】
「レポーター分子」とは、核酸、アミノ酸または抗体を標識するのに用いられる化学的または生化学的成分である。レポーター分子には、放射性核種、酵素、蛍光剤、化学発光剤、発色剤、基質、補助因子、阻害因子、磁気粒子及び当分野で既知のその他の成分がある。
【0171】
DNA配列に関する「RNA等価物」は、窒素塩基チミンが全てウラシルに置換されていることと、糖のバックボーンがデオキシリボースではなくリボースから構成されていることを除いて、参照DNA配列と同一のヌクレオチド線形配列から構成されている。
【0172】
「サンプル」の語は、その最も広い意味で用いられる。DME、DMEをコードする核酸、またはその断片を含むと推定されるサンプルは、体液と、細胞からの抽出物や細胞から単離された染色体や細胞内小器官、膜と、細胞と、溶液中に存在するまたは基板に固定されたゲノムDNA、RNA、またはcDNAと、組織と、組織プリント等を含み得る。
【0173】
「特異結合」または「特異的に結合する」の語は、タンパク質またはペプチドと、アゴニスト、抗体、アンタゴニスト、小分子、任意の天然成分または合成結合成分との間の相互作用を指す。この相互作用は、タンパク質の特定の構造(例えば抗原決定基即ちエピトープ)であって結合分子が認識するものが存在するか否かに依存している。例えば、抗体がエピトープ「A」に対して特異的である場合、標識された遊離したA及びその抗体を含む反応において、エピトープA(つまり遊離し、標識されていないA)を含むポリペプチドの存在が、抗体に結合している標識されたAの量を低減させる。
【0174】
「実質上精製された」の語は、自然環境から取り除かれ、或いは単離または分離された核酸またはアミノ酸配列であって、自然に会合するその他の構成エレメントの少なくとも約60%、好ましくは少なくとも約75%、最も好ましいのは少なくとも約90%が遊離しているものを指す。
【0175】
「置換」は、1個若しくは数個のアミノ酸残基またはヌクレオチドを各々別のアミノ酸残基またはヌクレオチドに置換することを意味する。
【0176】
「基板」は、任意の好適な固体または半固体の支持体を指すものであって、膜、フィルタ、チップ、スライド、ウエハ、ファイバー、磁性または非磁性ビーズ、ゲル、管、プレート、ポリマー、微細粒子、毛管が含まれる。基板は、凹み、溝、ピン、チャネル、孔等、様々な表面形態を有することができ、基板表面にはポリヌクレオチドやポリペプチドが結合する。
【0177】
「転写イメージ」は、所与の時間、条件での固有の細胞タイプまたは組織による遺伝子発現の集合的パターンを指す。
【0178】
「形質転換」は、外来性のDNAが受入細胞に入り込むプロセスを表す。形質転換は、本技術分野で知られている種々の方法に従って自然条件または人工条件下で生じ得るものであり、外来性の核酸配列を原核または真核宿主細胞に挿入する任意の既知の方法を基にし得る。形質転換の方法は、形質転換する宿主細胞の種類によって選択する。 限定するものではないが形質転換方法には、バクテリオファージまたはウイルス感染、電気穿孔法(エレクトロポレーション)、熱ショック、リポフェクション及び微粒子銃を用いる方法がある。「形質転換された」細胞には、導入されたDNAが自己複製するプラスミドとして或いは宿主染色体の一部として複製可能である安定的に形質転換された細胞が含まれる。 さらに、限られた時間に導入DNA若しくは導入RNAを発現する、一過的に形質転換された細胞も含まれる。
【0179】
ここで用いる「遺伝形質転換体」とは任意の生物体であり、限定するものではないが動植物を含み、生物体の1個若しくは数個の細胞が、ヒトの関与によって、例えば本技術分野でよく知られている形質転換技術によって導入された異種核酸を有する。 核酸の細胞への導入は、直接または間接的に、細胞の前駆物質に導入することによって、計画的な遺伝子操作によって、例えば微量注射法によって或いは組換えウイルスの導入によって行う。遺伝子操作の語は、古典的な交雑育種或いはin vitro受精を指すものではなく、組換えDNA分子の導入を指すものである。本発明に基づいて予期される遺伝形質転換体には、バクテリア、シアノバクテリア、真菌及び動植物がある。本発明の単離されたDNAは、本技術分野で知られている方法、例えば感染、形質移入、形質転換またはトランス接合によって宿主に導入することができる。本発明のDNAをこのような生物体に移入する技術はよく知られており、前出のSambrook ら (1989) 等の参考文献に示されている。
【0180】
特定の核酸配列の「変異体」は、核酸配列1本全部の長さに対して特定の核酸配列と少なくとも40%の相同性を有する核酸配列であると定義する。 その際、デフォルトパラメータに設定した「BLAST 2 Sequences」ツールVersion 2.0.9(1999年5月7日)を用いてblastnを実行する。このような核酸対は、所定の長さに対して、例えば少なくとも50%、60%、70%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上の相同性を示し得る。或る変異体は、例えば「対立遺伝子」変異体(前述)、「スプライス」変異体、「種」変異体または「多型性」変異体として説明し得る。スプライス変異体は参照分子とかなりの相同性を有し得るが、mRNAプロセッシング中のエキソンの交互スプライシングによって通常、ポリヌクレオチドがより多くまたはより少数の塩基を有することになる。対応するポリペプチドは、追加機能ドメインを有するか或いは参照分子に存在するドメインが欠落していることがある。種変異体は、種相互に異なるポリヌクレオチド配列である。結果的に生じるポリペプチドは通常、相互にかなりのアミノ酸相同性を有する。多型性変異体は、与えられた種の個体間で特定の遺伝子のポリヌクレオチド配列が異なる。また、多型性変異体は、1つのヌクレオチド塩基によってポリヌクレオチド配列が変化する「1塩基多型」(SNP)を含み得る。SNPの存在は、例えば特定の個体群、病状または病状性向を示し得る。
【0181】
特定のポリペプチド配列の「変異体」は、ポリペプチド配列の1本の長さ全体で特定のポリペプチド配列に対して少なくとも40%の相同性を有するポリペプチド配列として画定される。 ここで、デフォルトパラメータに設定した「BLAST 2 Sequences」ツールVersion 2.0.9(1999年5月7日)を用いてblastpを実行する。このようなポリペプチド対は、所定の長さに対して、例えば少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上の配列同一性を示し得る。
【0182】
(発明)
本発明は、新規のヒト薬剤代謝酵素(DME)及びDMEをコードするポリヌクレオチドの発見に基づき、これらの組成物を利用した自己免疫/炎症の疾患、細胞増殖異常、発生または発達障害、内分泌障害、眼の疾患、代謝障害、および肝臓の疾患を含む胃腸疾患の診断、治療、及び予防に関する。
【0183】
表1は、本発明の完全長ポリヌクレオチド配列及びポリペプチド配列の命名の概略である。各ポリヌクレオチド及びその対応するポリペプチドは、1つのIncyteプロジェクト識別番号(IncyteプロジェクトID)と相関する。各ポリペプチド配列は、ポリペプチド配列識別番号(ポリペプチドSEQ ID NO)とIncyteポリペプチド配列番号(IncyteポリペプチドID)によって表示した。各ポリヌクレオチド配列は、ポリヌクレオチド配列識別番号(ポリヌクレオチドSEQ ID NO)とIncyteポリヌクレオチドコンセンサス配列番号(IncyteポリヌクレオチドID)によって表示した。
【0184】
表2は、GenBankタンパク質(genpept)データベースに対するBLAST分析によって同定されたような、本発明のポリペプチドとの相同性を有する配列を示している。列1および列2はそれぞれ、本発明の各ポリペプチドに対するポリペプチド配列識別番号(ポリペプチド SEQ ID NO :)およびそれに対応するIncyte ポリペプチド配列番号(Incyte ポリペプチド ID)を示す。列3は、GenBankの最も近い相同体のGenBankの識別番号(Genbank ID NO :)を示す。列4は、各ポリペプチドとそのGenBank相同体との間の一致を表す確率スコアを示す。列5は、GenBank相同体のアノテーションを示し、更に該当箇所には適当な引用文も示す。
これらを引用することを以って本明細書の一部とする。
【0185】
表3は、本発明のポリペプチドの様々な構造的特徴を示す。列1および列2はそれぞれ、本発明の各ポリペプチドのポリペプチド配列識別番号(SEQ ID NO :)およびそれに対応するIncyte ポリペプチド配列番号(Incyte ポリペプチド ID)を示す。列3は、各ポリペプチドのアミノ酸残基数を示す。列4および列5はそれぞれ、GCG配列分析ソフトウェアパッケージのMOTIFSプログラム(Genetics Computer Group, Madison WI)によって決定された、リン酸化およびグリコシル化の可能性のある部位を示す。列6は、シグネチャ(signature)配列、ドメイン、およびモチーフを含むアミノ酸残基を示す。列7は、タンパク質の構造/機能の分析のための分析方法を示し、該当箇所にはさらに分析方法に利用した検索可能なデータベースを示す。
【0186】
表2および表3は共に、本発明のポリペプチドの特性を要約したものであって、これらの特性は請求するポリヌクレオチドが薬剤代謝酵素であることを立証するものである。SEQ ID NO:1 はBasic Local Alignment (BLAST)検索ツールによって確認すると、ウシのアリルアセチル−CoA N−アセチルトランスフェラーゼ(GenBank ID g3004445) に64%の同一性を有する(表2参照)。BLAST確率スコアは7.1e−86であり、これは観察されたポリペプチド配列アラインメントが偶然に得られる確率を示している。
【0187】
別の例において、SEQ ID NO:2 はハムスターのカルボキシルエステラーゼ前駆体(GenBank ID g2641986) に51%の相同性があることが、BLAST 分析によって確認され、その確率スコアは4.3e−128であった。SEQ ID NO:2はまた、カルボキシルエステラーゼドメインを有するが、 これは、隠れマルコフモデル(HMM)を基にした保存されたタンパク質ファミリードメインのPFAMデータベースにおいて、統計的に有意な一致を検索して決定された(表3参照)。BLIMPS、MOTIFS、及びPROFILESCAN解析よりのデータは、SEQ ID NO:2 がカルボキシルエステラーゼであるという、さらに確証的な証拠を提供する。
【0188】
別の例では、SEQ ID NO:3 は、線虫アセチルトランスフェラーゼ(GenBank ID g1825778) に45%の相同性があり、これはBLAST 分析により確認され、その確率スコアは8.1e−67であった。SEQ ID NO:3 は、またα/βヒドロラーゼ折たたみをも含んでおり、SEQ ID NO:3 がアセチルトランスフェラーゼのクラスであることと一致するが、これは、隠れマルコフモデル(HMM)を基にした、保存されたタンパク質ファミリードメインのPFAMデータベースにおいて、統計的に有意な一致を検索して決定された(表3参照)。BLIMPS 解析から得られたデータによって、さらにSEQ ID NO:3がα/βヒドロラーゼおりたたみを含むことが裏付けられた。
【0189】
別の例において、SEQ ID NO:4 はヒトのスルホトランスフェラーゼ1C2 (GenBank ID g8117877) に対して68%の相同性があり、これはBLAST 分析によって確認され、その確率スコアは9.2e−114であった。SEQ ID NO:4はまた、スルホトランスフェラーゼドメインを有するが、 これは、隠れマルコフモデル(HMM)を基にした保存されたタンパク質ファミリードメインのPFAMデータベースにおいて、統計的に有意な一致を検索して決定された(表3参照)。BLIMPS解析よりのデータは、SEQ ID NO:4 がスルホトランスフェラーゼである、さらに実証的な証拠を提供する。SEQ ID NO:4 の DOMO データベースに対するBLAST 解析では、3’−ホスホアデノシン 5’−ホスホサルフェート(PAPS) 結合部位の存在を示している。PAPS はスルホトランスフェラーゼ反応の供与基である(表3参照)。
【0190】
別の例において、 SEQ ID NO:5 はヒトアンドロゲン調節性短鎖デヒドロゲナーゼ/レダクターゼ(GenBank ID g9622124) に36%の相同性があり、これはBLAST 分析によって確認され、その確率スコアは5.3e−31である。SEQ ID NO:5はまた、デヒドロゲナーゼドメインを有するが、 これは、隠れマルコフモデル(HMM)を基にした保存されたタンパク質ファミリードメインのPFAMデータベースにおいて、統計的に有意な一致を検索して決定された(表3参照)。BLIMPS解析よりのデータは、SEQ ID NO:5 がデヒドロゲナーゼである、さらに実証的な証拠を提供する。
【0191】
別の例において、SEQ ID NO:6 はラットのUDP−グルクロノシルトランスフェラーゼ (GenBank ID g458395) に83%の相同性があり、これはBasic Local Alignment 検索ツール (BLAST)によって確認される。(表2参照)BLAST確率スコアは2.5e−248であり、これは観測されたポリペプチド配列アラインメントが偶然に得られる確率を示している。SEQ ID NO:6 はヒトUDP−グルクロノシルトランスフェラーゼ(GenBank ID g475759 ) に84%の相同性があるが、これはBLAST 分析によって確認され、その確率スコアは1.1e−245.である。SEQ ID NO:6はまた、UDP−グルクロノシルトランスフェラーゼドメインを有するが、 これは、隠れマルコフモデル(HMM)を基にした保存されたタンパク質ファミリードメインのPFAMデータベースにおいて、統計的に有意な一致を検索して決定された(図3参照)。BLIMPS、 MOTIFSおよびPROFILESCAN 解析よりのデータは、SEQ ID NO:6がUDP−グルクロノシルトランスフェラーゼである、さらに確証な証拠を提供する。
【0192】
別の例において、SEQ ID NO:7 はマウスのスクワレンエポキシダーゼ (スクワレンモノオキギゲナーゼ)(GenBank ID g1217593) と87%の同一性を有することがBasic Local Alignment Search Tool (BLAST)によって確認される。(表2参照)BLAST確率スコアは2.5e−273であり、これは観測されたポリペプチド配列アラインメントが偶然に得られる確率を示している。SEQ ID NO:7 はまた、ラットのスクワレンエポキシダーゼ(GenBank ID g666019)に86%の相同性を有し、これはBLAST 分析によって確認され、その確率スコアは4.6e−272である。またSEQ ID NO:7は、ヒトのスクワレンエポキシダーゼ(GenBank ID g4204675) に86%の相同性を有し、確率スコアは4.9e−268である。SEQ ID NO:7 はまた、モノオキシゲナーゼシグネチャドメインを有するが、これは、隠れマルコフモデル(HMM)を基にした保存されたタンパク質ファミリードメインのPFAMデータベースにおいて、統計的に有意な一致を検索して決定された。 (表3参照)BLIMPS解析よりのデータは、配列識別番号7がモノオキシゲナーゼである、さらに実証的な証拠を提供する。
【0193】
別の例において、SEQ ID NO:8 はヒトのジヒドロ葉酸レダクターゼ (GenBank ID g1617080) に92%の同一性を有するが、これはBasic Local Alignment Search Tool (BLAST)によって同定される。(表2参照)BLAST確率スコアは1.2e−87であり、これは保存されたポリペプチド配列アラインメントが偶然に得られる確率を示している。SEQ ID NO:8はまた、ジヒドロ葉酸レダクターゼ活性部位ドメインを有するが、 これは、隠れマルコフモデル(HMM)を基にした保存されたタンパク質ファミリードメインのPFAMデータベースにおいて、統計的に有意な一致を検索して決定された。(表3参照)BLIMPS及びPROFILESCAN解析よりのデータは、SEQ ID NO:8がジヒドロ葉酸レダクターゼであることをさらに確証する証拠を提供する。
【0194】
別の例において、SEQ ID NO:9 はヒトヘパラン硫酸D−グルコサミニル3−O−スルホトランスフェラーゼ 3B(GenBank ID g4835725) に66%の相同性を有するが、これはBLAST 分析によって確認され、その確率スコアは4.8e−114である。
【0195】
他の例においてSEQ ID NO:10 はマウスのフラビン含有モノオキシゲナーゼ5(GenBank ID g1899255) に57%の相同性があるが、これはBLAST 分析によって確認され、その確率スコアは1.0e−157であった。また、SEQ ID NO:10 はフラビン結合モノオキシゲナーゼ活性部位ドメインを有し、これは、隠れマルコフモデル(HMM)を基にした保存されたタンパク質ファミリードメインのPFAMデータベースにおいて、統計的に有意な一致を検索して決定された。 (表3参照)BLIMPS解析よりのデータは、SEQ ID NO:10 がフラビン含有モノオキシゲナーゼドメインである、さらに実証的な証拠を提供する。
【0196】
別の例におて、SEQ ID NO:11 はヒト11−β水酸化ステロイドデヒドロゲナーゼ(GenBank ID g179475)(短鎖アルコールデヒドロゲナーゼ酵素ファミリのメンバー)に48%の相同性があるが、これは Basic Local Alignment Search Tool (BLAST)によって確認された(表2参照)。BLAST確率スコアは1.7e−54であり、これは観測されたポリペプチド配列アラインメントが偶然に得られる確率を示している。SEQ ID NO:11 はまた、BLAST 分析によると、 5.3e−53の確率スコアで、ウシ11−β水酸化ステロイドデヒドロゲナーゼ(GenBank ID g1191)に45%の相同性があり、また、2.0e−51の確率スコアでマウス11−β水酸化ステロイドデヒドロゲナーゼ (GenBank ID g806928)に44%の相同性を有し、5.4e−51の確率スコアでリスザル11−β水酸化ステロイドデヒドロゲナーゼ (GenBank ID g388414)に45%の相同性、そして4.5e−47の確率スコアでモルモット11−β水酸化ステロイドデヒドロゲナーゼ(GenBank ID g6010775)に43%の相同性がある SEQ ID NO:11はまた、短鎖アルコールデヒドロゲナーゼファミリシグネチャドメインを有するが、 これは、隠れマルコフモデル(HMM)を基にした保存されたタンパク質ファミリードメインのPFAMデータベースにおいて、統計的に有意な一致を検索して決定された。 (表3参照)BLIMPS、MOTIFS、及びPROFILESCAN解析よりのデータは、SEQ ID NO:11 が短鎖アルコールデヒドロゲナーゼである、さらに実証的な証拠を提供する。
【0197】
別の例において、SEQ ID NO:12 はウサギのフラビン含有ジメチルアラニンモノオキギゲナーゼ (GenBank ID g164989) に55%の相同性があることが、BLAST 分析により確認され、その確率スコアは1.3e−154であった。SEQ ID NO:12 はまた、3.3e−154の確率スコアでモルモットフラビン含有モノオキシゲナーゼ(GenBank ID g559027)に55%の相同性があり、1.4e−153の確率スコアでマウスフラビン含有モノオキシゲナーゼ(GenBank ID g1899255)に56%の相同性、1.5e−151の確率スコアでヒトフラビン含有モノオキシゲナーゼ(GenBank ID g559046)に53%の相同性がある。SEQ ID NO:12はまた、1つのフラビン含有モノオキシゲナーゼドメインを有するが、 これは、隠れマルコフモデル(HMM)を基にした保存されたタンパク質ファミリードメインのPFAMデータベースにおいて、統計的に有意な一致を検索して決定された。 BLIMPS解析よりのデータは、SEQ ID NO:12 がフラビン含有モノオキシゲナーゼである、さらに実証的な証拠を提供する。
【0198】
他の例においてSEQ ID NO:13 はUDP−グリコシルトランスフェラーゼの特異的タイプであるウサギのUDP−グルクロノシルトランスフェラーゼ (GenBank ID g165801)に36%の相同性があり、これはBLAST 分析によって確認された。BLAST確率スコアは2.8e−70である。SEQ ID NO:13 はまた、いくつかのヒトUDP−グルクロノシルトランスフェラーゼ (GenBank ID g1403658、g1407590 および g1923219)に対してすべて 1.2e−69の確率スコアで33%の相同性を有し、またマウスUDP−グルクロノシルトランスフェラーゼ ( GenBank ID g1246787)に 2.0e−69の確率スコアで34%の相同性がある。SEQ ID NO:13はまた、UDP−グルクロノシルトランスフェラーゼドメインを有するが、 これは、隠れマルコフモデル(HMM)を基にした保存されたタンパク質ファミリードメインのPFAMデータベースにおいて、統計的に有意な一致を検索して決定された。 BLIMPS及びPROFILESCAN解析よりのデータは、SEQ ID NO:13がUDP−グルクロノシルトランスフェラーゼであることをさらに確証する証拠を提供する。
【0199】
別の例において、SEQ ID NO:14 はヒトUDP−グルクロノシルトランスフェラーゼ(GenBank ID g3360273 および g516150)に96%の相同性を有し、これはBLAST 分析により、確率スコアがそれぞれ 3.2e−181 と8.7e−179で確認された。SEQ ID NO:14 はまた、7.4e−171の確率スコアでサルのUDP−グルクロノシルトランスフェラーゼ(GenBank ID g4079707)に92%の相同性を有する。SEQ ID NO:14はまた、UDP−グルクロノシルトランスフェラーゼドメインを有するが、 これは、隠れマルコフモデル(HMM)を基にした保存されたタンパク質ファミリードメインのPFAMデータベースにおいて、統計的に有意な一致を検索して決定された。 BLIMPS及びPROFILESCAN解析よりのデータは、SEQ ID NO:14がUDP−グルクロノシルトランスフェラーゼであることをさらに確証する証拠を提供する。
【0200】
別の例において、SEQ ID NO:15 はまた、NADPH依存性、I型(ミトコンドリア)チトクロムP450酵素ファミリのメンバーである、25−ヒドロキシビタミンD 1α−ヒドロキシラーゼ (GenBank ID g2516244)に43%の相同性を有し、これはBasic Local Alignment Search Tool (BLAST)によって確認された。(表2参照)BLAST確率スコアは1.7e−95であり、これは観測されたポリペプチド配列アラインメントが偶然に得られる確率を示している。SEQ ID NO:15はまた、チトクロムP450 活性部位ドメインを有するが、 これは、隠れマルコフモデル(HMM)を基にした保存されたタンパク質ファミリードメインのPFAMデータベースにおいて、統計的に有意な一致を検索して決定された。 (表3参照)BLIMPS、MOTIFS、およびPROFILESCAN解析から得られたデータによって、SEQ ID NO:15がチトクロムP450ファミリのメンバーであることがさらに実証される。
【0201】
別の例においてSEQ ID NO:16 は、チロシン触媒経路を通過するチロシンと生体異物化合物の異化作用に関与する酵素であるBacillus halodurans 2−ヒドロキシヘプタ−2,4−ジエン−1,7−ジオエートイソメラーゼ(アルドラーゼ) (GenBank ID g10174619)に40%の相同性があり、これはBLAST 分析によって確認された。BLAST確率スコアは4.7e−45である。SEQ ID NO:16はまた、フマリルアセト酢酸ヒドロラーゼファミリ活性部位ドメインを有する。 これは、隠れマルコフモデル(HMM)を基にした保存されたタンパク質ファミリードメインのPFAMデータベースにおいて、統計的に有意な一致を検索して決定された。アセト酢酸フマリルヒドロラーゼはBacillus halodurans アルドラーゼに密接な関係があり、またチロシン異化作用にも関与している。
【0202】
別の例においては、SEQ ID NO:17 は、ヒトグルタチオンS−トランスフェラーゼθ1(GenBank ID g9937245) と44%の局所的相同性(すなわち、167の連続するアミノ酸残基について)を共有し、これはBasic Local Alignment Search Tool (BLAST)によって確認された(表2参照)。BLAST確率スコアは3.2e−58であり、これは保存されたポリペプチド配列アラインメントが偶然に得られる確率を示している。SEQ ID NO:17 はまた、ヒトグルタチオンS−トランスフェラーゼT1(GenBank ID g510905)に44%の相同性(167の連続するアミノ酸残基について)があり、確率スコア1.7e−57でBLAST 分析により確認され、またマウスグルタチオンS−トランスフェラーゼθ(GenBank ID g1340076)に対しては、41%の相同性(181の連続するアミノ酸残基)があり、確率スコアは4.5e−53である。SEQ ID NO:17はまた、グルタチオンS−トランスフェラーゼ活性部位ドメインを有するが、 これは、隠れマルコフモデル(HMM)を基にした保存されたタンパク質ファミリードメインのPFAMデータベースにおいて、統計的に有意な一致を検索して決定された。 (表3参照)
【0203】
別の例において、SEQ ID NO:18 は短鎖アルコールデヒドロゲナーゼ酵素ファミリのメンバーである、ヒト(R)−3−ヒドロキシ酪酸デヒドロゲナーゼ (GenBank ID g177198)に96%相同性がある。BLAST確率スコアは4.6e−170である。SEQ ID NO:18はまた、短鎖アルコールデヒドロゲナーゼ活性部位ドメインを有する。 これは、隠れマルコフモデル(HMM)を基にした保存されたタンパク質ファミリードメインのPFAMデータベースにおいて、統計的に有意な一致を検索して決定された。 BLIMPS、MOTIFS、及びPROFILESCAN解析よりのデータは、SEQ ID NO:18 が短鎖アルコールデヒドロゲナーゼである、さらに実証的な証拠を提供する。SEQ ID NO:1−18の解析のためのアルゴリズム及びパラメータが表7で記述されている。
【0204】
表4に示すように、本発明の完全長ポリヌクレオチド配列は、cDNA配列またはゲノムDNA由来のコード(エキソン)配列を用いて、或いはこれら2種類の配列を任意に組み合わせて構築した。列1および列2はそれぞれ、本発明の各ポリヌクレオチドのポリヌクレオチド配列識別番号(Polynucleotide SEQ ID NO :)およびそれに対応するIncyte ポリヌクレオチドコンセンサス配列番号(Incyte Polynucleotide ID)を示す。列3は、各ポリヌクレオチド配列の長さ(塩基対単位)を示す。列4は、例えば、SEQ ID NO:19−36を同定するため、或いはSEQ ID NO:19−36と関連するポリヌクレオチド配列とを区別するためのハイブリダイゼーションまたは増幅技術に有用なポリヌクレオチド配列の断片を示す。列5はcDNA配列、ゲノムDNAから予想されたコード配列(エキソン)及び/またはcDNA及びゲノムDNAを共に有する配列集合に対応する識別番号を示している。これらの配列は、本発明の完全長ポリヌクレオチド配列を構築するのに用いた。表4の列6および列7はそれぞれ、列5の配列に対応するcDNA配列およびゲノム配列の開始ヌクレオチド(5’)位置および終了ヌクレオチド(3’)位置を示す。
【0205】
表4の列5の識別番号は、特に例えばIncyte cDNAとそれに対応するcDNAライブラリを指す場合もある。例えば、7219095H1 はIncyte cDNA配列の識別番号であり、SPLNDIC01 はそれが由来するcDNAライブラリの識別番号である。cDNAライブラリが示されていないIncyte cDNAは、プールされているcDNAライブラリ(例えば、55143913H1)に由来する。または、列5の識別番号は、ポリヌクレオチド配列の組み立てに用いたGenBankのcDNAすなわちEST(例えば、g2787922)の識別番号の場合もある。さらに、列5の識別番号はENSEMBL (The Sanger Centre, Cambridge, UK) データベース(すなわち、「ENST」と命名された配列)から由来した配列を示す。あるいは、列5の識別番号はNCBI RefSeq ヌクレオチド配列記録データベース(すなわち、「NM」または「NT」と命名された配列)またはNCBIRefSeq タンパク質配列記録(すなわち、「NP」と命名された配列)から由来している。または列5の識別番号は、「エキソンスティッチング(exon−stitching)」アルゴリズムにより結び合わせたcDNA及びGenscan予想エキソンの両方の集合を指す場合もある。例えば、FL_XXXXXX_N_N_YYYYY_N_N は「スティッチ」配列を表しており、XXXXXXはアルゴリズムが適用された配列のクラスターの識別番号であり、また、YYYYY はアルゴリズムによって出された予測の番号である。N1,2,3.. が存在する場合は、解析している時に手動で編集された可能性のある特定のエキソンを示す(実施例5を参照)。または列5の識別番号は、「エキソンストレッチング(exon−stretching)」アルゴリズムにより結び合わせたエキソンの集合を指す。例えば、FLXXXXXX_gAAAAA_gBBBBB_1_N は「ストレッチ」配列の識別番号であり、XXXXXX はIncyte プロジェクト識別番号で、gAAAAA は「エキソンストレチング」アルゴリズムが適用されたヒトゲノム配列のGenBank 識別番号である。さらに、gBBBBB は最も近親のGenBank タンパク質相同体のGenBank 識別番号か、またはNCBI RefSeq 識別番号であり、Nは特定のエキソンを指す(実施例5を参照)。RefSeq 配列が「エキソンストレッチング」アルゴリズムのタンパク質相同体として使われた場合は、RefSeq 識別子(「NM 」、「NP」または「 NT」と表示された)はGenBank 識別子(すなわち、gBBBBB)の代わりに使われる場合もある。
あるいは、接頭コードは手で編集されたか、ゲノムDNA配列から予測されたか、または配列解析方法の組み合わせから由来している構成配列を識別する。次の表は構成配列の接頭コードと、接頭コードと関連する同じ配列の分析方法の例を列記する(実施例4と5を参照)。
Figure 2004526414
【0206】
場合によっては、最終コンセンサスポリヌクレオチド配列を確認するための列5に示すような配列の適用範囲と重複するIncyte cDNAの適用範囲が得られたが、関連するIncyte cDNA識別番号は示さなかった。
【0207】
表5はIncyte cDNA配列を用いて構築された完全長ポリヌクレオチド配列のための代表的なcDNAライブラリを示している。代表的なcDNAライブラリは、上記のポリヌクレオチド配列を構築及び確認するために用いられるIncyte cDNA配列によって最も頻繁に表されるIncyte cDNAライブラリである。cDNAライブラリを作製するために用いた組織及びベクターを表5に示し、表6で説明している。
【0208】
本発明はまた、DMEの変異体も含む。好適なDMEの変異体は、DMEの機能的或いは構造的特徴の少なくともどちらか一方を有し、かつDMEアミノ酸配列に対して少なくとも約80%のアミノ酸配列同一性、或いは少なくとも約90%のアミノ酸配列同一性、更には少なくとも約95%のアミノ酸配列同一性を有する。
【0209】
本発明はまた、DMEをコードするポリヌクレオチドを提供する。特定の実施例において、本発明は、DMEをコードするSEQ ID NO:19−36からなる一群から選択された配列を含むポリヌクレオチド配列を提供する。SEQ NO ID:19−36のポリヌクレオチド配列は、配列表に示されているように等価RNA配列と同等の価値を有しているが、窒素塩基チミンの出現はウラシルに置換され、糖のバックボーンはデオキシリボースではなくシリボースから構成されている。
【0210】
本発明はまた、DMEをコードするポリヌクレオチド配列の変異配列を含む。詳細には、このようなポリヌクレオチド配列の変異配列は、DMEをコードするポリヌクレオチド配列に対して少なくとも70%のポリヌクレオチド配列同一性、或いは少なくとも85%のポリヌクレオチド配列同一性、更には少なくとも95%ものポリヌクレオチド配列同一性を有する。本発明の特定の実施形態は、SEQ ID NO:19−36からなる群から選択された核酸配列と少なくとも70%のポリヌクレオチド配列同一性、或いは少なくとも85%のポリヌクレオチド配列同一性、更には少なくとも95%ものポリヌクレオチド配列同一性を有するSEQ ID NO:19−36からなる群から選択された配列を含むポリヌクレオチド配列の変異配列を提供する。 上記のポリヌクレオチド変異配列は何れも、DMEの機能的或いは構造的特徴の少なくとも1つを有するアミノ酸配列をコードする。
【0211】
遺伝暗号の縮重により作り出され得るDMEをコードする種々のポリヌクレオチド配列には、既知の自然発生する任意の遺伝子のポリヌクレオチド配列と最小の類似性しか有しないものも含まれることを、当業者は理解するであろう。したがって本発明には、可能コドン選択に基づく組合せの選択によって産出し得るようなありとあらゆる可能性のあるポリヌクレオチド配列変異体を網羅し得る。これらの組み合わせは、天然のDMEのポリヌクレオチド配列に適用される標準的なトリプレット遺伝暗号を基に作られ、全ての変異が明確に開示されているとみなす。
【0212】
DMEをコードするヌクレオチド配列及びその変異配列は一般に、好適に選択されたストリンジェントな条件下で、天然のDMEのヌクレオチド配列とハイブリダイズ可能であるが、非天然のコドンを含めるなどの実質的に異なった使い方のコドンを有するDME或いはその誘導体をコードするヌクレオチド配列を作ることは有利となり得る。
【0213】
宿主が特定のコドンを利用する頻度に基づいて、特定の真核又は原核宿主に発生するペプチドの発現率を高めるようにコドンを選択することが可能である。コードされたアミノ酸配列を変えずに、DME及びその誘導体をコードするヌクレオチド配列を実質的に変更する別の理由は、天然の配列から作られる転写物より例えば長い半減期など好ましい特性を備えるRNA転写物を作ることにある。
【0214】
本発明はまた、DME及びその誘導体をコードするDNA配列またはそれらの断片を完全に合成化学によって作り出すことも含む。作製後にこの合成配列を、当分野で良く知られた試薬を用いて、種々の入手可能な発現ベクター及び細胞系の何れの中にも挿入可能である。 更に、合成化学を用いて、DMEまたはその任意の断片をコードする配列の中に突然変異を導入することも可能である。
【0215】
更に本発明には、種々のストリンジェントな条件下で、請求項に記載されたポリヌクレオチド配列、特に、SEQ ID NO:19−36 及びそれらの断片とハイブリダイズ可能なポリヌクレオチド配列が含まれる(例えば、Wahl, G.M.及びS.L. Berger (1987) Methods Enzymol.152:399−407、Kimmel, A.R. (1987) Methods Enzymol. 152:507−511等を参照)。アニーリング及び洗浄条件を含むハイブリダイゼーションの条件は、「定義」に記載されている。
【0216】
DNAシークエンシングの方法は当分野でよく知られており、本発明の何れの実施例もDNAシークエンシング方法を用いて実施可能である。DNAシークエンシング方法には酵素を用いることができ、例えばDNAポリメラーゼIのクレノウ断片、SEQUENASE(US Biochemical, Cleveland OH)、Taqポリメラーゼ(Applied Biosystems)、熱安定性T7ポリメラーゼ(Amersham, Pharmacia Biotech, Piscataway NJ)を用いることができる。 或いは、例えばELONGASE増幅システム(Life Technologies, Gaithersburg MD)において見られるように、ポリメラーゼと校正エキソヌクレアーゼを併用することができる。好しくは、MICROLAB2200液体転移システム(Hamilton, Reno, NV)、PTC200サーマルサイクラー(MJ Research, Watertown MA)及びABI CATALYST 800サーマルサイクラー(Applied Biosystems)等の装置を用いて配列の調製を自動化する。次に、ABI 373 或いは 377 DNAシークエンシングシステム(Applied Biosystems)、MEGABACE 1000 DNAシークエンシングシステム(Molecular Dynamics, Sunnyvale CA)または当分野でよく知られている他の方法を用いてシークエンシングを行う。 結果として得られた配列を当分野でよく知られている種々のアルゴリズムを用いて分析する。 (Ausubel, F.M. (1997) Short Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, New York NY, unit 7.7、Meyers, R.A. (1995) Molecular Biology and Biotechnology, Wiley VCH, New York NY, 856−853ページ.等を参照)。
【0217】
当分野で周知のPCR法をベースにした種々の方法で、部分的なヌクレオチド配列を利用して、DMEをコードする核酸配列を伸長し、プロモーターや調節エレメントなどの上流にある配列を検出する。例えば、使用し得る方法の1つである制限部位PCR法は、ユニバーサルプライマー及びネステッドプライマーを用いてクローニングベクター内のゲノムDNAから未知の配列を増幅する方法である(例えば、 Sarkar, G. (1993) PCR Methods Applic. 2:318322を参照。)別の方法に逆PCR法があり、これは広範な方向に伸長させたプライマーを用いて環状化した鋳型から未知の配列を増幅する方法である。鋳型は、既知のゲノム遺伝子座及びその周辺の配列からなる制限断片から得る(Triglia, T.ら (1988) Nucleic Acids Res 16:8186等を参照)。第3の方法としてキャプチャPCR法があり、これはヒト及び酵母菌人工染色体DNAの既知の配列に隣接するDNA断片をPCR増幅する方法に関与している。(Lagerstrom, M.ら(1991) PCR Methods Applic 1:111−119等を参照)。この方法では、PCRを行う前に複数の制限酵素の消化及び連結反応を用いて未知の配列領域内に組換え二本鎖配列を挿入することが可能である。また、未知の配列を検索するために用い得る別の方法については当分野で知られている。 (Parker, J.D.ら (1991) Nucleic Acids Res. 19:3055−3060等を参照)。更に、PCR、ネステッドプライマー及びPromoterFinder(商標)ライブラリ(Clontech, Palo Alto CA)を用いてゲノムDNAをウォーキングすることができる。この手順は、ライブラリをスクリーニングする必要がなく、イントロン/エキソン接合部を見付けるのに有用である。全てのPCRベースの方法に対して、市販されているソフトウェア、例えばOLIGO 4.06プライマー分析ソフトウェア(National Biosciences, Plymouth MN)或いは別の好適なプログラムを用いて、長さが約22〜30ヌクレオチド、GC含有率が約50%以上、温度約68℃〜72℃で鋳型に対してアニーリングするようにプライマーを設計し得る。
【0218】
完全長cDNAをスクリーニングする際は、より大きなcDNAを含むようにサイズ選択されたライブラリを用いるのが好ましい。更に、ランダムプライマーのライブラリは、しばしば遺伝子の5’領域を有する配列を含み、オリゴd(T)ライブラリが完全長cDNAを作製できない状況に対して好適である。ゲノムライブラリは、5’非転写調節領域への配列の伸長に有用であろう。
【0219】
市販されているキャピラリー電気泳動システムを用いて、シークエンシングまたはPCR産物のサイズを分析し、またはそのヌクレオチド配列を確認することができる。具体的には、キャピラリーシークエンシングは、電気泳動による分離のための流動性ポリマーと、4つの異なるヌクレオチドに特異的であるような、レーザで活性化される蛍光色素と、放出された波長の検出に利用するCCDカメラとを有し得る。出力/光の強度は、適切なソフトウェア(Applied Biosystems社のGENOTYPER、SEQUENCE NAVIGATOR等)を用いて電気信号に変換し得る。 サンプルのロードからコンピュータ分析及び電子データ表示までの全プロセスがコンピュータ制御可能である。キャピラリー電気泳動法は、特定のサンプルに少量しか存在しないようなDNA小断片のシークエンシングに特に適している。
【0220】
本発明の別の実施例では、DMEをコードするポリヌクレオチド配列またはその断片を組換えDNA分子にクローニングして、適切な宿主細胞内にDME、その断片または機能的等価物を発現させることが可能である。遺伝暗号固有の縮重により、実質的に同じ或いは機能的に等価のアミノ酸配列をコードする別のDNA配列が作られ得り、これらの配列をDMEのクローン化及び発現に利用可能である。
【0221】
種々の目的でDMEをコードする配列を変えるために、当分野で一般的に知られている方法を用いて、本発明のヌクレオチド配列を組換えることができる。 この目的には、遺伝子産物のクローン化、プロセッシング及び/または発現の調節が含まれるが、これらに限定されるものではない。遺伝子断片及び合成オリゴヌクレオチドのランダムなフラグメンテーション及びPCR再アセンブリによるDNAシャッフリングを用い、ヌクレオチド配列を組み換えることが可能である。例えば、オリゴヌクレオチド仲介特定部位突然変異誘導を利用して、新規な制限部位の生成、グリコシル化パターンの変更、コドン優先の変更、スプライス変異体の生成等を行う突然変異を導入し得る。
【0222】
本発明のヌクレオチドを、MOLECULARBREEDING (Maxygen Inc., Santa Clara CA; 米国特許第5,837,458号; Chang, C.−C. 他 (1999) Nat. Biotechnol. 17:793−797; Christians, F.C. 他 (1999) Nat. Biotechnol. 17:259−264; Crameri, A. 他 (1996) Nat. Biotechnol. 14:315−319)などのDNAシャフリング技術を用いてシャフリングして、DMEの生物学的または酵素的な活性、或いは他の分子や化合物と結合する能力などのPKINの生物学的特性を変更或いは改良することができる。DNAシャッフリングは、遺伝子断片のPCR仲介再組換えを用いて遺伝子変異体のライブラリを生成するプロセスである。ライブラリはその後、その遺伝子変異体を所望の特性に同定するような選択またはスクリーニングにかける。次にこれらの好適な変異体をプールし、更に反復してDNAシャッフリング及び選択/スクリーニングを行ってもよい。このように、遺伝の多様性は「人為的」品種改良及び急速な分子の進化を経て創生される。例えば、ランダムポイント突然変異を有する単一の遺伝子の断片を組み換えて、スクリーニングし、その後所望の特性が最適化されるまでシャッフリングすることができる。或いは、所定の遺伝子を同種または異種のいずれかから得た同一遺伝子ファミリーの相同遺伝子と組み換えて、それによって天然に存在する複数の遺伝子の遺伝多様性を、指図された制御可能な方法で最大化させることができる。
【0223】
別の実施例によれば、DMEをコードする配列は、当分野で周知の化学的方法を用いて、全体或いは一部が合成可能である(例えば、Caruthers. M.H.ら(1980)Nucl. Acids Res. Symp. Ser 7:215−223; 及びHorn, T.他(1980)Nucl. Acids Res. Symp. Ser.225−232を参照)。別法として、化学的方法を用いてDME自体またはその断片を合成することが可能である。例えば、種々の液相または固相技術を用いてペプチド合成を行うことができる(Creighton, T. (1984) Proteins, Structures and Molecular Properties, WH Freeman, New York NY, 55−60頁、Roberge, J.Y.ら (1995) Science 269:202204等を参照)。自動合成はABI 431Aペプチドシンセサイザ(Perkin Elmer)を用いて達成し得る。更にDMEのアミノ酸配列または任意のその一部は、直接的な合成の際の変更、及び/または化学的方法を用いた他のタンパク質または任意のその一部からの配列との組み合わせにより、天然のポリペプチド配列を有するポリペプチドまたは変異体ポリペプチドを作製することが可能である。
【0224】
ペプチドは、分離用高速液体クロマトグラフィーを用いて実質上精製可能である(Chiez, R.M.and F.Z. Regnier (1990) Methods Enzymol. 182:392−421等を参照)。合成ペプチドの組成は、アミノ酸分析またはシークエンシングによって確認することができる(前出のCreighton, 28−53頁等を参照)。
【0225】
生物学的に活性なDMEを発現させるために、DMEをコードするヌクレオチド配列またはその誘導体を好適な発現ベクターに挿入する。 この発現ベクターは、好適な宿主に挿入されたコーディング配列の転写及び翻訳の調節に必要なエレメントを含む。これらのエレメントには、ベクター及びDMEをコードするポリヌクレオチド配列におけるエンハンサー、構成型及び発現誘導型のプロモーター、5’及び3’の非翻訳領域などの調節配列が含まれる。このような要素は、長さ及び特異性が様々である。特定の開始シグナルによって、DMEをコードする配列のより効果的な翻訳を達成することが可能である。このようなシグナルには、ATG開始コドンと、コザック配列などの近傍の配列が含まれる。DMEをコードする配列及びその開始コドン、上流の調節配列が好適な発現ベクターに挿入された場合は、更なる転写調節シグナルや翻訳調節シグナルは必要なくなるであろう。しかしながら、コーディング配列或いはその断片のみが挿入された場合は、インフレームのATG開始コドンを含む外来性の翻訳調節シグナルが発現ベクターに含まれるようにすべきである。外来性の翻訳要素及び開始コドンは、様々な天然物及び合成物を起源とし得る。用いられる特定の宿主細胞系に好適なエンハンサーを含めることで発現の効率を高めることが可能である。(例えば、Scharf, D. 他 (1994) Results Probl. Cell Differ. 201−18−162.を参照)。
【0226】
当業者に周知の方法を用いて、DMEをコードする配列、好適な転写及び翻訳調節エレメントを含む発現ベクターを作製することが可能である。これらの方法には、in vitro組換えDNA技術、合成技術、及びin vivo遺伝子組換え技術が含まれる。(例えば、 Sambrook, J. 他. (1989) Molecular Cloning. Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Press, Plainview NY, 4章及び8章, 及び16−17章; 及び Ausubel, F.M. 他. (1995) Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, New York NY, ch. 9章及び13章1−4章を参照)。
【0227】
種々の発現ベクター/宿主系を利用して、DMEをコードする配列の保持及び発現が可能である。限定するものではないがこのような発現ベクター/宿主系には、組換えバクテリオファージ、プラスミドまたはコスミドDNA発現ベクターで形質転換させた細菌や、酵母菌発現ベクターで形質転換させた酵母菌や、ウイルス発現ベクター(例えばバキュロウイルス)に感染した昆虫細胞系や、ウイルス発現ベクター(例えばカリフラワーモザイクウイルスCaMVまたはタバコモザイクウイルスTMV)または細菌発現ベクター(例えばTiまたはpBR322プラスミド)で形質転換させた植物細胞系、動物細胞系などの微生物等がある。(前出のSambrook、前出のAusubel、Van Heeke, G. and S.M. Schuster (1989) J. Biol. Chem. 264:5503−5509、; Engelhard、E.K. ら (1994) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91:3224−3227、Sandig, V. ら (1996) Hum. Gene Ther. 7:1937−1945、Takamatsu, N. (1987) EMBOJ. 6:307−311、;『マグローヒル科学技術年鑑』(The McGraw Hill Yearbook of Science and Technology) (1992) McGraw Hill New York NY, 191−196頁、Logan, J. and T. Shenk (1984) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81:3655−3659、Harrington, J.J. ら (1997) Nat. Genet. 15:345−355等を参照)レトロウイルス、アデノウイルス、ヘルペスウイルスまたはワクシニアウイルス由来の発現ベクター、または種々の細菌性プラスミド由来の発現ベクターを用いて、ヌクレオチド配列を標的器官、組織または細胞集団へ輸送することができる(Di Nicola, M. ら (1998) Cancer Gen. Ther. 5(6):350−356、Yu, M. ら (1993) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90(13):6340−6344、Buller, R.M. ら (1985) Nature 317(6040):813−815; McGregor, D.P. ら (1994) Mol. Immunol. 31(3):219−226、Verma, I.M. and N. Somia (1997) Nature 389:239−242等を参照)。本発明は使用される宿主細胞によって限定されるものではない。
【0228】
細菌系では、多数のクローニングベクター及び発現ベクターが、DMEをコードするポリヌクレオチド配列の使用目的に応じて選択可能である。例えば、DMEをコードするポリヌクレオチド配列の日常的なクローニング、サブクローニング、増殖には、PBLUESCRIPT(Stratagene, La Jolla CA)またはpSPORT1プラスミド(GIBCO BRL)などの多機能の大腸菌ベクターを用いることができる。ベクターの多数のクローニング部位にDMEをコードする配列をライゲーションするとlacZ遺伝子が破壊され、組換え分子を含む形質転換された細菌の同定のための比色スクリーニング法が可能となる。更にこれらのベクターは、クローニングされた配列におけるin vitro転写、ジデオキシのシークエンシング、ヘルパーファージによる一本鎖の救出、入れ子状態の欠失の生成にも有用であろう(例えば、Van Heeke, G. および S.M. Schuster (1989) J. Biol. Chem. 264:55035509を参照)。例えば、抗体の産生のためなどに多量のDMEが必要な場合は、DMEの発現をハイレベルで誘導するベクターが使用できる。例えば、強力な誘導T5バクテリオファージプロモーターまたは誘導T7バクテリオファージプロモーターを含むベクターが使用できる。
【0229】
DMEの発現に酵母の発現系の使用が可能である。α因子、アルコールオキシダーゼ、PGHプロモーター等の構成型或いは誘導型のプロモーターを含む多数のベクターが、酵母菌サッカロミセス−セレビジエまたはPichia pastorisに使用可能である。更に、このようなベクターは、発現したタンパク質の分泌か細胞内への保持のどちらかを誘導し、安定した増殖のために宿主ゲノムの中に外来配列を組み込む。(例えば、Ausubel, 1995,前出、Bitter, G.A. ら (1987) Methods Enzymol.153:516−544、及びScorer. C. A. ら (1994) Bio/Technology 121−181−184.を参照)。
【0230】
植物系もDMEの発現に使用可能である。DMEをコードする配列の転写は、ウイルスプロモーター、例えば単独或いはTMV(Takamatsu, N. (1987) EMBO J 6:307−311)由来のオメガリーダー配列と組み合わせて用いられるようなCaMV由来の35S及び19Sプロモーターによって促進される。或いは、RUBISCOの小サブユニット等の植物プロモーターまたは熱ショックプロモーターを用いてもよい(例えば、Coruzzi, G. ら. (1984) EMBO J. 3 : 1671−1680 ; Broglie, R. ら (1984) Science 224 : 838−843 ; および Winter, J. ら (1991) Results Probl. Cell Differ. 17 : 85−105を参照)これらの構成物は、直接DNA形質転換によって、または病原体を媒介とする形質移入によって、植物細胞内に導入可能である。(『マグローヒル科学技術年鑑』(The McGraw Hill Yearbook of Science and Technology) (1992) McGraw Hill New York NY, 191−196頁等を参照。
【0231】
哺乳動物細胞においては、多数のウイルスベースの発現系を利用し得る。アデノウイルスが発現ベクターとして用いられる場合、後発プロモーター及び3連リーダー配列からなるアデノウイルス転写物/翻訳複合体にDMEをコードする配列を結合し得る。可欠E1またはE3領域へウイルスのゲノムを挿入し、宿主細胞でDMEを発現する感染ウイルスを得ることが可能である。(例えば、Logan, J. および T. Shenk (1984) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81:36553659を参照)。更に、ラウス肉腫ウイルス(RSV)エンハンサー等の転写エンハンサーを用いて、哺乳動物宿主細胞における発現を増大させ得る。SV40またはEBVをベースにしたベクターを用いてタンパク質を高レベルで発現させることもできる。
【0232】
ヒト人工染色体(HAC)を用いて、プラスミドに含まれ且つプラスミドから発現するものより大きなDNAの断片を輸送することもできる。治療のために約6kb〜10MbのHACsを作製し、従来の輸送方法(リポソーム、ポリカチオンアミノポリマー、またはベシクル)で供給する。(例えば、Harrington. J.J. 他 (1997) Nat Genet.15:345−355を参照)。
【0233】
哺乳動物系の組換えタンパク質の長期にわたる産生のためには、株化細胞におけるDMEの安定した発現が望ましい。例えば、発現ベクターを用いて、DMEをコードする配列を株化細胞に形質転換することが可能である。 このような発現ベクターは、ウイルス起源の複製及び/または内在性の発現要素や、同じ或いは別のベクター上の選択マーカー遺伝子を含む。ベクターの導入後、選択培地に移す前に強化培地で約1〜2日間細胞を増殖させることができる。選択可能マーカーの目的は選択培地への抵抗性を与えることであり、選択可能マーカーが存在することにより、導入された配列をうまく発現するような細胞の成長及び回収が可能となる。安定的に形質転換された細胞の耐性クローンは、その細胞型に適した組織培養技術を用いて増殖可能である。
【0234】
任意の数の選択系を用いて、形質転換細胞株を回収できる。限定するものではないがこのような選択系には、tk単純細胞のために用いられるヘルペスウイルスチミジンキナーゼ遺伝子と、apr細胞のために用いられるアデニンホスホリボシルトランスフェラーゼ遺伝子がある(例えば、Wigler, M. 他 (1977) Cell 11:223−232; 及びLowy, I. 他(1980) Cell 22:817−823を参照)。また、選択の基礎として代謝拮抗物質、抗生物質或いは除草剤への耐性を用いることができる。例えばdhfrはメトトレキセートに対する耐性を与え、neoはアミノグリコシッドネオマイシン及びG−418に対する耐性を与え、alsはクロルスルフロンに対する耐性を、patはホスフィノトリシンアセチルトランスフェラーゼに対する耐性を各々与える( Wigler, M. ら (1980) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 77:35673570; ColbereGarapin, F. ら (1981) J. Mol. Biol. 150:114 等を参照。)この他の選択可能な遺伝子、例えば、代謝のための細胞の必要条件を変えるtrpB及びhisDは、文献に記載されている(例えば、 Hartman, S.C. 及びR.C. Mulligan (1988) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:80478051参照。)可視マーカー、例えばアントシアニン、緑色蛍光タンパク質(GFP;Clontech)、βグルクロニダーゼ及びその基質βグルクロニド、またはルシフェラーゼ及びその基質ルシフェリン等を用いてもよい。これらのマーカーを用いて、トランスフォーマントを特定するだけでなく、特定のベクター系に起因する一過性或いは安定したタンパク質発現を定量することが可能である(Rhodes, C.A. (1995) Methods Mol. Biol. 55:121131等を参照)。
【0235】
マーカー遺伝子発現の存在/不存在によって目的の遺伝子の存在が示唆されても、その遺伝子の存在及び発現の確認が必要な場合もある。例えば、DMEをコードする配列がマーカー遺伝子配列の中に挿入された場合、DMEをコードする配列を含む形質転換された細胞は、マーカー遺伝子機能の欠落により同定可能である。または、1つのプロモーターの制御下でマーカー遺伝子がDMEをコードする配列と一列に配置することも可能である。誘導または選択に応答したマーカー遺伝子の発現は通常、タンデム遺伝子の発現も示す。
【0236】
一般に、DMEをコードする核酸配列を含み、DMEを発現する宿主細胞は、当業者に周知の種々の方法を用いて特定することが可能である。 これらの方法には、DNA−DNA或いはDNA−RNAハイブリダイゼーションや、PCR法、核酸或いはタンパク質の検出及び/または数量化のための膜系、溶液ベース、或いはチップベースの技術を含むタンパク質生物学的試験法または免疫学的アッセイが含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0237】
特異的なポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体のどちらかを用いるDMEの発現の検出及び計測のための免疫学的な方法は、当分野で周知である。 このような技法には、酵素に結合したイムノソルベントアッセイ(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、蛍光標示式細胞分取器(FACS)などがある。DME上の2つの非干渉エピトープに反応するモノクローナル抗体を用いた、2部位のモノクローナルベースイムノアッセイ(two−site, monoclonal−based immunoassay)が好ましいが、競合の結合アッセイも用いることもできる。これらのアッセイ及びこれ以外のアッセイは、当分野で公知である(Hampton. R. ら (1990) Serological Methods, Laboratory Manual. APS Press. St Paul. MN, Sect. IV、Coligan, J. E. ら (1997) Current Protocols in Immunology, Greene Pub. Associates and Wiley−Interscience, New York NY、Pound, J.D. (1998) Immunochemical Protocols, Humans Press, Totowa NJ等を参照)。
【0238】
多岐にわたる標識方法及び結合方法が、当業者に知られており、また、様々な核酸アッセイおよびアミノ酸アッセイにおいて用いられ得る。DMEをコードするポリヌクレオチドに関連する配列を検出するための、標識されたハイブリダイゼーションプローブ或いはPCRプローブを生成する方法には、オリゴ標識化、ニックトランスレーション、末端標識化、または標識されたヌクレオチドを用いるPCR増幅が含まれる。別法として、DMEをコードする配列、またはその任意の断片をmRNAプローブを生成するためのベクターにクローニングすることも可能である。このようなベクターは、当分野において知られており、市販もされており、T7、T3またはSP6等の好適なRNAポリメラーゼ及び標識されたヌクレオチドを加えて、in vitroでRNAプローブの合成に用いることができる。このような方法は、例えばAmersham Pharmacia Biotech、Promega(Madison WI)、U.S. Biochemical等から市販されている種々のキットを用いて実行することができる。検出を容易にするために用い得る好適なレポーター分子或いは標識には、基質、補助因子、インヒビター、磁気粒子のほか、放射性核種、酵素、蛍光剤、化学発光剤、発色剤等がある。
【0239】
DMEをコードするヌクレオチド配列で形質転換された宿主細胞は、細胞培地でのこのタンパク質の発現及び回収に好適な条件下で培養される。形質転換細胞から製造されたタンパク質が分泌されるか細胞内に留まるかは、使用される配列、ベクター、或いはその両者に依存する。DMEをコードするポリヌクレオチドを含む発現ベクターは、原核細胞膜及び真核細胞膜を透過するDMEの分泌を誘導するシグナル配列を含むように設計できることは、当業者には理解されよう。
【0240】
更に、宿主細胞株の選択は、挿入した配列の発現を調節する能力または発現したタンパク質を所望の形に処理する能力によって行い得る。限定するものではないがこのようなポリペプチドの修飾には、アセチル化、カルボキシル化、グリコシル化、リン酸化、脂質化及びアシル化がある。タンパク質の「プレプロ」または「プロ」形を切断するような翻訳後処理を利用して、タンパク質のターゲティング、折りたたみ及び/または活性を特定することも可能である。翻訳後の活性のための固有の細胞装置及び特徴のある機構を有する種々の宿主細胞(例えばCHO、HeLa、MDCK、MEK293、WI38等)は、American Type Culture Collection(ATCC, Manassas, VA)から入手可能であり、外来タンパク質の正しい修飾及び処理を確実にするように選択し得る。
【0241】
本発明の別の実施例では、DMEをコードする自然或いは変更された、または組換えの核酸配列を上記した任意の宿主系の融合タンパク質の翻訳となる異種配列に結合させる。例えば、市販の抗体によって認識できる異種部分を含むキメラDMEタンパク質が、DME活性のインヒビターに対するペプチドライブラリのスクリーニングを促進し得る。また、異種タンパク質部分及び異種ペプチド部分も、市販されている親和性基質を用いて融合タンパク質の精製を促進し得る。限定されるものではないがこのような部分には、グルタチオンSトランスフェラーゼ(GST)、マルトース結合タンパク質(MBP)、チオレドキシン(Trx)、カルモジュリン結合ペプチド(CBP)、6−His、FLAG、c−myc、赤血球凝集素(HA)がある。GSTは固定化グルタチオン上で、MBPはマルトース上で、Trxはフェニルアルシンオキシド上で、CBPはカルモジュリン上で、そして6−Hisは金属キレート樹脂上で、同族の融合タンパク質の精製を可能にする。FLAG、c−myc及び赤血球凝集素(HA)は、これらのエピトープ標識を特異的に認識する市販のモノクローナル抗体及びポリクローナル抗体を用いて、融合タンパク質の免疫親和性精製を可能にする。また、DMEをコードする配列と異種タンパク質配列との間にあるタンパク質分解切断部位を融合タンパク質が含むように遺伝子操作すると、DMEが精製の後に異種部分から切断され得る。融合タンパク質の発現及び精製方法は、前出のAusubel (1995) 10章に記載されている。市販されている種々のキットを用いて融合タンパク質の発現及び精製を促進することもできる。
【0242】
本発明の別の実施例では、TNTウサギ網状赤血球可溶化液またはコムギ胚芽抽出系(Promega)を用いてin vitroで放射能標識したDMEの合成が可能である。これらの系は、T7、T3またはSP6プロモーターと機能的に連結したタンパク質コード配列の転写及び翻訳を結合する。翻訳は、例えば35Sメチオニンのような放射能標識したアミノ酸前駆体の存在下で起こる。
【0243】
本発明のDMEまたはその断片を用いて、DMEに特異結合する化合物をスクリーニングすることができる。少なくとも1つまたは複数の試験化合物を用いて、DMEへの特異的な結合をスクリーニングすることが可能である。試験化合物の例には、抗体、オリゴヌクレオチド、タンパク質(例えば受容体)または小分子が挙げられる。
一実施例では、このように同定された化合物は、例えばリガンドやその断片などのDMEの天然のリガンド、または天然の基質、構造的または機能的な擬態性または自然結合パートナーに密接に関連している(Coligan, J.E. 他 (1991) Current Protocols in Immunology 1(2)の5章等を参照)。同様に、化合物は、DMEが結合する天然受容体、或いは例えばリガンド結合部位などの少なくとも受容体のある断片に密接に関連し得る。何れの場合も、既知の技術を用いてこの化合物を合理的に設計することができる。一実施例では、これらの化合物に対するスクリーニングには、分泌タンパク質或いは細胞膜上のタンパク質の何れか一方としてDMEを発現する好適な細胞の作製が含まれる。好適な細胞には、哺乳動物、酵母、ショウジョウバエ、大腸菌からの細胞が含まれる。DMEを発現する細胞またはDMEを含有する細胞膜断片を試験化合物と接触させて、DMEまたは化合物の何れかの結合、刺激または阻害を分析する。
【0244】
あるアッセイは、単に試験化合物をポリペプチドに実験的に結合させ、結合を、蛍光色素、放射性同位体、酵素抱合体またはその他の検出可能な標識により検出することができる。例えば、このアッセイは、少なくとも1つの試験化合物を、溶液中の或いは固体支持物に固定されたDMEと混合させるステップと、DMEとこの化合物との結合を検出するステップを含み得る。別法では、標識された競合物の存在下での試験化合物の結合の検出及び測定を行うことができる。更にこのアッセイでは、無細胞再構成標本、化学ライブラリまたは天然の生成混合物を用いて実施することができ、試験化合物は、溶液中で遊離させるか固体支持体に固定させる。
【0245】
本発明のDMEまたはその断片を用いて、DMEの活性を調整する化合物をスクリーニングすることが可能である。このような化合物には、アゴニスト、アンタゴニスト、或るいは部分的または逆アゴニスト等が含まれる。一実施例では、DMEが少なくとも1つの試験化合物と混合させ、DMEの活性が許容される条件下でアッセイを実施し、試験化合物の存在下でのDMEの活性を試験化合物不在下でのDMEの活性と比較する。試験化合物の存在下でのDMEの活性の変化は、DMEの活性を調整する化合物の存在を示唆する。別法では、試験化合物をDMEの活性に適した条件下でDMEを含むin vitroまたは無細胞系と結合させてアッセイを実施する。これらアッセイの何れにおいても、DMEの活性を調節する試験化合物は間接的に結合することが可能であり、試験化合物と直接接触する必要がない。少なくとも1つから複数の試験化合物をスクリーニングすることができる。
【0246】
別の実施例では、胚性幹細胞(ES細胞)における相同組換えを用いて動物モデル系内で、DMEまたはその哺乳動物相同体をコードするポリヌクレオチドを「ノックアウト」する。このような技術は当技術分野において周知であり、ヒト疾患動物モデルの作製に有用である(米国特許第5,175,383号及び第5,767,337号等を参照)。例えば129/SvJ細胞株等のマウスES細胞は初期のマウス胚に由来し、培地で増殖させることができる。このES細胞は、ネオマイシンホスホトランスフェラーゼ遺伝子(neo: Capecchi, M.R. (1989) Science 244:1288−1292)等のマーカー遺伝子で破壊した目的の遺伝子を含むベクターで形質転換する。このベクターは、相同組換えにより宿主ゲノムの対応する領域に組み込まれる。別法では、Cre−loxP系を用いて相同組換えを行い、組織特異的または発生段階特異的に目的遺伝子をノックアウトする(Marth, J.D. (1996) Clin. Invest. 97:1999−2002; Wagner, K.U. 他 (1997) Nucleic Acids Res. 25:4323−43 30)。形質転換したES細胞を同定し、例えばC57BL/6マウス系等から採取したマウス細胞胚盤胞に微量注入する。胚盤胞を偽妊娠メスに外科的に導入し、得られるキメラ子孫の遺伝形質を決め、これを交配させてヘテロ接合性系またはホモ接合性系を作製する。このようにして作製した遺伝子組換え動物は、可能性のある治療薬や毒性薬剤で検査することができる。
【0247】
DMEをコードするポリヌクレオチドをin vitroでヒト胚盤胞由来のES細胞において操作することが可能である。ヒトES細胞は、内胚葉、中胚葉及び外胚葉の細胞の種類を含む少なくとも8つの別々の細胞系統に分化する可能性を有する。これらの細胞系統は、例えば神経細胞、造血系統及び心筋細胞に分化する(Thomson, J.A. 他 (1998) Science 282:1145−1 147)。
【0248】
DMEをコードするポリヌクレオチドを用いて、ヒト疾患をモデルとした「ノックイン」ヒト化動物(ブタ)または遺伝子組換え動物(マウスまたはラット)を作製することが可能である。ノックイン技術を用いて、DMEをコードするポリヌクレオチドの或る領域を動物ES細胞に注入し、注入した配列を動物細胞ゲノムに組み込ませる。形質転換細胞を胞胚に注入し、胞胚を上記のように移植する。遺伝子組換え子孫または近交系について研究し、可能性のある医薬品を用いて処理し、ヒトの疾患の治療に関する情報を得る。別法では、例えばDMEを乳汁内に分泌するなどDMEを過剰発現する哺乳動物近交系は、便利なタンパク質源となり得る(Janne, J. 他 (1998) Biotechnol. Annu. Rev. 4:55−74)。
【0249】
(治療)
DMEのある領域と薬剤代謝酵素のある領域との間に、例えば配列及びモチーフのからみで化学的及び構造的類似性が存在する。さらに、DMEの発現は脳組織、腎組織および、乳房腫瘍、脳腫瘍、他の癌および皮膚線維芽細胞などの迅速に分裂する細胞に密接に関連する。したがって、DMEは自己免疫/炎症性疾患、細胞異常増殖、発達性疾患、内分泌性疾患、眼疾患、代謝疾患および肝臓障害を含む胃腸疾患において役割を果たしていると考えられる。DMEの発現若しくは活性亢進に関連する疾患の治療においては、DMEの発現または活性を低下させることが望ましい。また、DMEの発現または活性の低下に関連する疾患の治療においては、DMEの発現または活性を亢進させることが望ましい。
【0250】
従って、一実施例において、DMEの発現または活性の低下に関連した疾患の治療または予防のために、患者にDMEまたはその断片や誘導体を投与することが可能である。そのような疾患の例には、限定するものではないが、自己免疫/炎症性の疾患の中には、後天性免疫不全症候群(AIDS)及びアジソン病、成人呼吸窮迫症候群、アレルギー、強直性脊椎炎、アミロイド症、貧血、喘息、アテローム性動脈硬化症、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性甲状腺炎、自己免疫性多腺性内分泌カンジダ性外胚葉ジストロフィー(APECED)、気管支炎、胆嚢炎、接触皮膚炎、クローン病、アトピー性皮膚炎、皮膚筋炎、糖尿病、肺気腫、リンパ球毒素性一時性リンパ球減少症、赤芽球症、結節性紅斑、萎縮性胃炎、糸球体腎炎、グッドパスチャー症候群、痛風、グレーブス病、橋本甲状腺炎、過好酸球増加症、過敏性大腸症候群、多発性硬化症、重症筋無力症、心筋または心膜炎症、骨関節炎、骨粗しょう症、膵炎、多発性筋炎、乾癬、ライター症候群、リウマチ様関節炎、強皮症、シェ−グレン症候群、全身性アナフィラキシー、全身性エリテマトーデス、全身性硬化症、血小板減少性紫斑病、潰瘍性大腸炎、ブドウ膜炎、ウェルナー症候群、癌合併症、血液透析、体外循環、ウイルス感染症、細菌感染症、真菌感染症、寄生虫感染症、原虫感染症、蠕虫感染症、外傷が含まれ、
細胞増殖異常の中には日光性角化症及びアテローム性動脈硬化、滑液包炎、硬変、肝炎、混合型結合組織病(MCTD)、骨髄線維症、発作性夜間ヘモグロビン尿症、真性多血症、乾癬、原発性血小板血症、並びに腺癌及び白血病、リンパ腫、黒色腫、骨髄腫、肉腫、及び奇形癌、具体的には、副腎、膀胱、骨、骨髄、脳、乳房、頚部、胆嚢、神経節、消化管、心臓、腎臓、肝臓、肺、筋肉、卵巣、膵臓、副甲状腺、陰茎、前立腺、唾液腺、皮膚、脾臓、精巣、胸腺、甲状腺、子宮の癌が含まれ、
また発達障害の中には尿細管性アシドーシス、貧血、クッシング症候群、軟骨形成不全性小人症、デュシェンヌ‐ベッカー型筋ジストロフィー、癲癇、性腺形成異常、WAGR症候群(ウィルムス腫瘍、無虹彩症、尿生殖器異常、精神薄弱)、スミス‐マジェニス症候群(Smith− Magenis syndrome)、脊髄形成異常症候群、遺伝性粘膜上皮異形成、遺伝性角皮症、シャルコー‐マリー‐ツース病及び神経線維腫症などの遺伝性神経病、甲状腺機能低下症、水頭症、Syndenham舞踏病(Syndenham’s chorea)及び脳性小児麻痺などの発作障害、脊髄二分裂、無脳症、頭蓋脊椎披裂、先天性緑内障、白内障、感覚神経性聴力損失が含まれ、
内分泌疾患の中には原発脳腫瘍及び腺腫、妊娠性梗塞、下垂体切除、動脈瘤、血管奇形、血栓症、感染症、免疫異常、頭部外傷による合併症などの病変から起こる視床下部及び下垂体の障害と、性機能低下及びシーハン症候群、尿崩症、カルマン病、ハンド‐シュラークリスチャン病、レトラ‐シヴェ病、サルコイドーシス、エンプティセラ症候群、小人症を含む下垂体低下に関連した障害と、良性線種によって発生しやすい不適当抗利尿ホルモン(ADH)分泌症候群(SIADH)及び先端巨大症、巨人症を含む下垂体亢進に関連した障害と、甲状腺腫及び粘液水腫、細菌感染性急性甲状腺炎、ウイルス感染性亜急性甲状腺炎、自己免疫性甲状腺炎(橋本病)、クレチン病を含む甲状腺機能低下症に関連した障害と、甲状腺中毒症及びその様々な型、グレーブス病、前脛骨粘液水腫、中毒性多結節性甲状腺腫、甲状腺癌、プランマー病を含む甲状腺機能亢進症と、Conn病(chronic hypercalemia)を含む副甲状腺機能亢進症と、I型及びII型糖尿病及び合併症などの膵臓疾患と、過形成及び副腎皮質の癌腫や腺腫、アルカローシスに関連した高血圧、アミロイド症、低カリウム血、クッシング病、リドル症候群、Arnold−Healy−Gordon症候群、褐色細胞腫瘍、、アジソン病、副腎機能不全などの副腎に関連した障害と、女性の異常プロラクチン産生及び不妊症、子宮内膜症、月経周期の摂動、多嚢胞性卵巣疾患、高プロラクチン血症、選択的性腺刺激ホルモン不全(isolated gonadotropin deficiency)、無月経、乳汁漏出症、半陰陽、多毛症及び男性化、乳癌、閉経期後の骨粗鬆症、男性のライジッヒ細胞過形成、男性更年期、生殖細胞無形成症、ライジッヒ細胞腫瘍に関連した性機能亢進、アンドロゲン受容体の欠如に関連したアンドロゲン耐性、5α−還元酵素症候群、女性化乳房症などの生殖腺ステロイドホルモンに関連した疾患とが含まれる。
【0251】
眼疾患では、結膜炎、乾性角結膜炎、角膜炎、上強膜炎、虹彩炎、後部ブドウ膜炎、緑内障、一過性黒内障、虚血性視神経症、視神経炎、レーバー遺伝性視神経症、硝子体剥離、網膜剥離、白内障、黄斑変性症、中心性漿液性脈絡網膜症、色素性網膜炎、脈絡膜黒色腫、球後腫瘍、交叉腫瘍(chiasmal tumor)が含まれ、
代謝障害の中には、副腎機能不全、脳腱黄色腫症、副腎皮質過形成、クマリン耐性、嚢胞性線維症、糖尿病、脂肪性肝硬変、果糖−1,6−ジホスファターゼ欠損症、ガラクトース血症、甲状腺腫、グルカゴノーマ、糖原病、遺伝性果糖不耐症、アドレナリン過剰症、腎臟不全症、上皮小体亢進症、副甲状腺低下症、高コレステロール血症、甲状腺亢進症、低血糖症、甲状腺低下症、高脂血症、脂質ミオパシー(lipid myopathies)、脂肪異栄養症、リソソーム蓄積症、メンケス症候群、後角症候群(occipital horn syndrome)、マンノシドーシス、ノイラミニダーゼ欠損症、肥満症、ペントース−フェニルケトン尿症、プソイドビタミンD欠損症、低カルシウム血症、低リン酸血症、思春期後小脳性運動失調症、チロシン血症が含まれ、また、胃腸疾患が含まれ、その中には嚥下障害、消化性食道炎、食道痙攣、食道狭窄、食道癌、消化不良、消化障害、胃炎、胃癌、食欲不振、悪心、嘔吐、胃不全麻痺、洞または幽門の浮腫、腹部アンギナ、胸焼け、胃腸炎、イレウス、腸管感染、消化性潰瘍、胆石症、胆嚢炎、胆汁うっ滞、膵臓炎、膵臓癌、胆道疾患、肝炎、高ビリルビン血症、遺伝性高ビリルビン血症、硬変症、肝臓の受動性うっ血、ヘパトーム、感染性大腸炎、潰瘍性大腸炎、潰瘍性直腸炎、クローン病、ホイップル病、マロリー‐ヴァイス症候群、結腸癌、結腸閉塞、過敏性腸症候群、短小腸症候群、下痢、便秘、胃腸出血、後天性免疫不全症候群(AIDS)腸症、黄疸、肝性脳症、肝腎症候群、肝炎、血色素症、ウィルソン病、αアンチトリプシン欠損症、ライ症候群、原発性硬化性胆管炎、肝梗塞、門脈循環閉塞及び血栓、小葉中心壊死、肝臓紫斑病、肝静脈血栓、肝静脈閉塞症、子癇前症、子癇、妊娠性急性肝脂肪、妊娠性肝臓内胆汁うっ滞と、結節性再生及び腺腫、癌腫を含む肝癌が含まれる。
【0252】
別の実施例では、限定するものではないが上に列記した疾患を含むDMEの発現または活性の低下に関連した疾患の治療または予防のために、DMEまたはその断片や誘導体を発現し得るベクターを患者に投与することも可能である。
【0253】
更に別の実施例では、限定するものではないが上に列記した疾患を含むDMEの発現または活性の低下に関連した疾患の治療または予防のために、実質的に精製されたDMEを含む組成物を好適な医薬用担体と共に患者に投与することも可能である。
【0254】
更に別の実施例では、限定するものではないが上に列記した疾患を含むDMEの発現または活性の低下に関連した疾患の治療または予防のために、DMEの活性を調節するアゴニストを患者に投与することも可能である。
【0255】
更なる実施例では、DMEの発現または活性の増大に関連した疾患の治療または予防のために、患者にDMEのアンタゴニストを投与することが可能である。限定するものではないが、このような疾患の例には、上記した自己免疫/炎症の疾患、細胞増殖異常、発生または発達障害、内分泌障害、眼の疾患、代謝障害、および肝臓の疾患を含む胃腸疾患が含まれる。一実施態様では、DMEと特異的に結合する抗体が直接アンタゴニストとして、或いはDMEを発現する細胞または組織に薬剤を運ぶターゲッティング或いは運搬機構として間接的に用いられ得る。
【0256】
別の実施例では、限定するものではないが上に列記した疾患を含むDMEの発現または活性の増大に関連した疾患の治療または予防のために、DMEをコードするポリヌクレオチドの相補配列を発現するベクターを患者に投与することも可能である。
【0257】
別の実施例では、本発明の任意のタンパク質、アンタゴニスト、抗体、アゴニスト、相補配列、またはベクターを、別の好適な治療薬と組み合わせて投与することもできる。併用療法で用いる好適な治療薬は、当業者が従来の医薬原理に従ってを選択し得る。治療薬と組み合わせることにより、上記した種々の疾患の治療または予防に相乗効果をもたらし得る。この方法を用いることにより少量の各薬剤で医薬効果をあげることが可能となり、それによって副作用の可能性を低減し得る。
【0258】
DMEのアンタゴニストは、当分野で一般的な方法を用いて製造することが可能である。 詳しくは、精製されたDMEを用いて抗体を作ったり、治療薬のライブラリをスクリーニングしてDMEと特異的に結合するものを同定することが可能である。DMEの抗体も、当分野で一般的な方法を用いて製造することが可能である。 このような抗体には、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、キメラ抗体、一本鎖、Fabフラグメント、及びFab発現ライブラリによって作られたフラグメントが含まれる。 但し、これらに限定されるものではない。中和抗体(即ち二量体の形成を阻害する抗体)は通常、治療用に好適である。
【0259】
抗体の産生のためには、ヤギ、ウサギ、ラット、マウス、ヒト及びその他のものを含む種々の宿主が、DMEまたは任意の断片、または免疫原性の特性を備えるそのオリゴペプチドの注入によって免疫化され得る。宿主の種に応じて、種々のアジュバントを用いて免疫応答を高めることもできる。限定するものではないがこのようなアジュバントには、フロイントアジュバントと、水酸化アルミニウム等のミネラルゲルアジュバントと、リゾレシチン、プルロニックポリオル、ポリアニオン、ペプチド、油性乳剤、スカシガイのヘモシニアン、ジニトロフェノール等の界面活性剤とがある。ヒトに用いられるアジュバントの中では、BCG(カルメット‐ゲラン杆菌)及びコリネバクテリウム‐パルヴムが特に好ましい。
【0260】
DMEに対する抗体を誘発するために用いられるオリゴペプチド、ペプチド、または断片は、少なくとも約5個のアミノ酸からなり、一般的には約10個以上のアミノ酸からなるものが好ましい。また、これらのオリゴペプチド、ペプチドまたは断片は、天然のタンパク質のアミノ酸配列の一部と同一であることが好ましい。DMEアミノ酸の短いストレッチは、KLHなどの別のタンパク質の配列と融合し、キメラ分子に対する抗体が産生され得る。
【0261】
DMEに対するモノクローナル抗体は、培地内の連続した細胞株によって、抗体分子を産生する任意の技術を用いて作製することが可能である。限定するものではないがこのような技術には、ハイブリドーマ技術、ヒトB細胞ハイブリドーマ技術及びEBV−ハイブリドーマ技術がある(Kohler, G. ら. (1975) Nature 256:495−497、Kozbor, D. ら (1985) .J. Immunol. Methods 81:31−42、Cote, R.J. ら (1983) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 80:2026−2030、Cole, S.P. ら (1984) Mol. Cell Biol. 62:109−120等を参照)。
【0262】
更に、ヒト抗体遺伝子にマウス抗体遺伝子をスプライシングするなどの「キメラ抗体」作製のために発達した技術が、好適な抗原特異性及び生物学的活性を備える分子を得るために用いられる(例えば、Morrison, S.L.他. (1984) Proc. Natl. Acad. Sci. 81:68516855; Neuberger, M.S.他. (1984) Nature 312:604−608; Takeda, S.ら. (1985) Nature 314:452,454を参照)。別法では、当分野で周知の方法を用いて、一本鎖抗体の産生のための記載された技術を適用して、DME特異性一本鎖抗体を生成する。関連特異性を有するがイディオタイプ組成が異なるような抗体を、ランダムな組合せの免疫グロブリンライブラリからチェーンシャッフリングによって産生することもできる(Burton D.R. (1991) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88:10134−10137等を参照)。
【0263】
抗体の産生は、リンパ球集団におけるin vivo産生の誘導によって、或いは免疫グロブリンライブラリのスクリーニングまたは文献に開示されているような高特異結合試薬のパネルのスクリーニングによっても行い得る(Orlandi, R. ら (1989) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86: 3833−3837、Winter, G. ら (1991) Nature 349:293−299等を参照)。
【0264】
DMEに対する特異的な結合部位を含む抗体断片も得ることができる。例えば、このような断片には、限定するものではないが、抗体分子のペプシン消化によって作製されるF(ab’) 断片と、F(ab’) 断片のジスルフィド架橋を還元することによって作製されるFab断片とがある。或いは、Fab発現ライブラリを作製することによって、モノクローナルFab断片を所望の特異性で迅速且つ容易に同定することが可能となる(Huse, W.D. ら (1989) Science 256:1275−1281等を参照)。
【0265】
種々のイムノアッセイを用いてスクリーニングし、所望の特異性を有する抗体を同定することができる。確立された特異性を有するポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体の何れかを用いる競合的な結合、または免疫放射線活性のための数々のプロトコルが、当分野では周知である。 通常このようなイムノアッセイには、DMEとその特異性抗体との間の複合体形成の計測が含まれる。二つの非干渉性DMEエピトープに対して反応性のモノクローナル抗体を用いる、2部位モノクローナルベースのイムノアッセイが一般に利用されるが、競合的結合アッセイも利用することができる(Pound、前出)。
【0266】
ラジオイムノアッセイ技術と共にScatchard分析などの様々な方法を用いて、DMEに対する抗体の親和性を評価する。親和性を結合定数Kaで表すが、このKaは、平衡状態の下でDME抗体複合体のモル濃度を遊離抗体と遊離抗原のモル濃度で除して得られる値である。複数のDMEエピトープに対して親和性が不均一なポリクローナル抗体試薬のKaは、DMEに対する抗体の平均親和性または結合活性を表す。特定のDMEエピトープに単一特異的なモノクローナル抗体試薬のKaは、親和性の真の測定値を表す。Ka値が10〜1012L/molの高親和性抗体試薬は、DME抗体複合体が激しい操作に耐えなければならないイムノアッセイに用いるのが好ましい。Ka値が10〜10L/molの低親和性抗体医薬は、DMEが抗体から最終的に活性化状態で解離する必要がある免疫精製(immunopurification)及び類似の処理に用いるのが好ましい。 (Catty, D. (1988) Antibodies, Volume I: Practical Approach. IRL Press, Washington, DC; Liddell, J. E. and Cryer, A. (1991) Practical Guide to Monoclonal Antibodies, John Wiley & Sons, New York NY)。 Practical Approach. IRL Press, Washington, DC; Liddell, J. E. 及び Cryer, A. (1991) Practical Guide to Monoclonal Antibodies, John Wiley & Sons, New York NY)。
【0267】
ポリクローナル抗体試薬の抗体価及び結合活性を更に評価して、後に使う或る適用例に対するこのような試薬の品質及び適性を決定することができる。例えば、少なくとも1〜2mg/mlの特異的な抗体、好ましくは5〜10mg/mlの特異的な抗体を含むポリクローナル抗体試薬は一般に、DME抗体複合体を沈殿させなければならない処理に用いられる。抗体の特異性、抗体価、結合活性、様々な適用例における抗体の品質や使用に対する指針については、一般に入手可能である。(前出のCattyの文献、同Coligan らの文献等を参照)。
【0268】
本発明の別の実施例では、DMEをコードするポリヌクレオチド、またはその任意の断片や相補配列が、治療目的で使用することができる。ある実施態様では、DMEをコードする遺伝子のコーディング領域や調節領域に相補的な配列やアンチセンス分子(DNA及びRNA、修飾ヌクレオチド)を設計して遺伝子発現を変更することができる。このような技術は当分野では周知であり、センスまたはアンチセンスオリゴヌクレオチドまたは大きな断片が、DMEをコードする配列の制御領域から、またはコード領域に沿ったさまざまな位置から設計可能である。(Agrawal, S., ed. (1996) Antisense Therapeutics, Humana Press Inc., Totawa NJを参照。)
【0269】
治療に用いる場合、アンチセンス配列を好適な標的細胞に導入するのに好適な任意の遺伝子送達系を用いることができる。アンチセンス配列は、転写時に標的タンパク質をコードする細胞配列の少なくとも一部に相補的な配列を発現する発現プラスミドの形で細胞内に輸送することが可能である(Slater, J.E. ら (1998) J. Allergy Clin. Immunol. 102(3):469−475 及び Scanlon, K.J. ら (1995)9(13):1288−1296.等を参照)アンチセンス配列はまた、例えばレトロウイルスやアデノ関連ウイルスベクター等のウイルスベクターを用いて細胞内に導入することもできる(Miller, A.D. (1990) Blood 76:271、前出のAusubel、Uckert, W. and W. Walther (1994) Pharmacol. Ther. 63(3):323−347等を参照)。その他の遺伝送達機構には、リポソーム系、人工的なウイルスエンベロープ及び当分野で公知のその他の系が含まれる(Rossi, J.J. (1995) Br. Med. Bull. 51(1):217−225; Boado、R.J.ら (1998) J. Pharm. Sci. 87(11):1308−1315、Morris, M.C. ら (1997) Nucleic Acids Res. 25(14):2730−2736. 等を参照)。
【0270】
本発明の別の実施例では、DMEをコードするポリヌクレオチドを、体細胞若しくは生殖細胞の遺伝子治療に用いることが可能である。遺伝子治療を行うことにより、(i)遺伝子欠損症(例えばX染色体連関遺伝(Cavazzana−Calvo, M.他 (2000) Science 288:669−672)により特徴付けられる重度の複合型免疫欠損症(SCID)−X1の場合)、先天性アデノシンデアミナーゼ(ADA)欠損症に関連する重度の複合型免疫欠損症(Blaese, R.M. 他 (1995) Science 270:475−480、Bordignon, C.他 (1995) Science 270:470−475)、嚢胞性繊維症(Zabner, J.他 (1993) Cell 75:207−216: Crystal、R.G.他 (1995) Hum. Gene Therapy 6:643−666、Crystal, R.G.他. (1995) Hum. Gene Therapy 6:667−703)、サラセミア(thalassamia)、家族性高コレステロール血症、および第VIII因子若しくは第IX因子欠損に起因する血友病(Crystal, 35 R.G. (1995) Science 270:404−410、Verma, I.M. および Somia. N. (1997) Nature 389:239−242)を治療し、(ii)条件的致死性遺伝子産物を発現させ(例えば制御不能な細胞増殖に起因する癌の場合)、(iii)細胞内の寄生生物(例えばヒト免疫不全ウイルス(HIV)(Baltimore, D. (1988) Nature 335:395−396、Poescbla, E.他 (1996) Proc. Natl. Acad. Sci. USA. 93:11395−11399)、B型若しくはC型肝炎ウイルス(HBV、HCV)、Candida albicans及びParacoccidioides brasiliensis等の真菌寄生菌、並びに熱帯熱マラ リア原虫及びクルーズトリパノソーマ等の原虫寄生生物に対する防御機能を有するタンパク質を発現させることができる。DMEの発現若しくは調節に必要な遺伝子の欠損が疾患を引き起こす場合、導入した細胞の好適な集団からDMEを発現させて、遺伝子欠損によって起こる症状の発現を緩和することが可能である。
【0271】
本発明の更なる実施例では、DMEの欠損による疾患や異常症は、DMEをコードする哺乳動物発現ベクターを作製して、これらのベクターを機械的手段によってDME欠損細胞に導入することによって治療する。in vivo或いはex vitroの細胞に用いる機械的導入技術には、(i)個々の細胞内への直接的なDNA微量注射法、(ii)遺伝子銃、(iii)リポソームを介した形質移入、(iv)受容体を介した遺伝子導入、及び(v)DNAトランスポソンの使用(Morgan, R.A. および W.F. Anderson (1993) Annu. Rev. Biochem. 62:191−217、Ivics, Z. (1997) Cell 91:501−510; Boulay, J−L. および H. Recipon (1998) Curr. Opin. Biotechnol. 9:445−450)がある。
CYSKP の発現に影響を及ぼし得る発現ベクターには、限定するものではないが、PCDNA 3.1、EPITAG、PRCCMV2、PREP、PVAXベクター(Invitrogen, Carlsbad CA)、PCMV−SCRIPT、PCMV−TAG、PEGSH/PERV (Stratagene, La Jolla CA)、PTET−OFF、PTET−ON、PTRE2、PTRE2−LUC、PTK−HYG (Clontech, Palo Alto CA)が含まれる。DMEを発現させるために、(i)恒常的に活性なプロモーター(例えば、サイトメガロウイルス(CMV)、ラウス肉腫ウイルス(RSV)、SV40ウイルス、チミジンキナーゼ(TK)、若しくはβ−アクチン遺伝子等)、(ii)誘導性プロモーター(例えば、市販のT−REXプラスミド(Invitrogen)に含まれている、テトラサイクリン調節性プロモーター(Gossen, M. and H. Bujard (1992) Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 89:5547−5551; Gossen, M. 他 (1995) Science 268:1766−1769; Rossi, F.M.V. 及び H.M. Blau (1998) Curr. Opin. Biotechnol. 9:451−456))、エクジソン誘導性プロモーター(市販のプラスミドPVGRXR及びPINDに含まれている:Invitrogen)、FK506/ラパマイシン誘導性プロモーター、またはRU486/ミフェプリストーン誘導性プロモーター(Rossi, F.M.V. and H.M. Blau, 前出)、または(iii)正常な個体に由来するDMEをコードする内在性遺伝子の天然のプロモーター若しくは組織特異的プロモーターを用いることが可能である。
【0272】
市販のリポソーム形質転換キット(例えばInvitrogen社のPerFect Lipid Transfection Kit)を用いれば、当業者は経験にそれほど頼らないでもポリヌクレオチドを培養中の標的細胞に導入することが可能になる。別法では、リン酸カルシウム法(Graham. F.L. および A.J. Eb (1973) Virology 52:456−467)若しくは電気穿孔法(Neumann, B. ら (1982) EMBO J. 1:841−845)を用いて形質転換を行う。初代培養細胞にDNAを導入するためには、標準化された哺乳動物の形質移入プロトコルの修飾が必要である。
【0273】
本発明の別の実施例では、DMEの発現に関連する遺伝子欠損によって起こる疾患や異常症は、(i)レトロウイルス末端反復配列(LTR)プロモーター若しくは独立したプロモーターの調節の下でDMEをコードするポリヌクレオチドと、(ii)好適なRNAパッケージングシグナルと、(iii)追加のレトロウイルス・シス作用性RNA配列及び効率的なベクターの増殖に必要なコード配列を伴うRev応答性エレメント(RRE)とからなるレトロウイルスベクターを作製して治療することができる。レトロウイルスベクター(例えばPFB及びPFBNEO)はStratagene社から市販されており、刊行データ(Riviere, I. ら. (1995) Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 92:6733−6737)に基づいている。 上記データを引用することをもって本明細書の一部とする。ベクターは、好適なベクター産生細胞系(VPCL)において増殖され、VPCLは、標的細胞上の受容体に対する親和性を有するエンベロープ遺伝子またはVSVg等の汎親和性エンベロープタンパク質を発現する(Armentano, D. ら (1987) J. Virol. 61:1647−1650、Bender, M.A. ら (1987) J. Virol. 61:1639−1646、Adam, M.A. and A.D. Miller (1988) J. Virol. 62:3802−3806、Dull, T. ら (1998) J. Virol. 72:8463−8471、Zufferey, R. ら (1998) J. Virol. 72:9873−9880)。RIGGに付与された米国特許第5,910,434号(「Method for obtaining retrovirus packaging cell lines producing high transducing efficiency retroviral supernatant」)において、レトロウイルスパッケージング細胞系を得るための方法が開示されており、引用することをもって本明細書の一部とする。レトロウイルスベクターの増殖、細胞集団(例えばCD4 T細胞)の形質導入、及び形質導入した細胞の患者への戻しは、遺伝子治療の分野では当業者に公知の方法であり、多数の文献に記載されている(Ranga, U. ら. (1997) J. Virol. 71:7020−7029、Bauer, G. ら (1997) Blood 89:2259−2267、Bonyhadi, M.L. (1997) J. Virol. 71:4707−4716、Ranga, U. ら (1998) Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 95:1201−1206、Su, L. (1997) Blood 89:2283−2290)。
別法では、アデノウイルス系遺伝子治療の送達系を用いて、DMEの発現に関連する1或いは複数の遺伝子異常を有する細胞にDMEをコードするポリヌクレオチドを送達する。アデノウイルス系ベクターの作製及びパッケージングについては、当業者に公知である。 複製欠損型アデノウイルスベクターは、免疫調節タンパク質をコードする遺伝子を膵臓の無損傷の膵島内に導入するために可変性であることが証明された(Csete, M.E. ら. (1995) Transplantation 27:263−268)。使用できる可能性のあるアデノウイルスベクターは、Armentanoに付与された米国特許第5,707,618号(「Adenovirus vectors for gene therapy」)に記載されており、引用することをもって本明細書の一部とする。アデノウイルスベクターについては、Antinozzi, P.A. ら (1999) Annu. Rev. Nutr. 19:511−544 及び Verma, I.M. および N. Somia (1997) Nature 18:389:239−242も参照されたい。 両文献は、引用することをもって本明細書の一部とする。
【0274】
別法では、ヘルペス系遺伝子治療の送達系を用いて、DMEの発現に関して1或いは複数の遺伝子異常を有する標的細胞にDMEをコードするポリヌクレオチドを送達する。単純疱疹ウイルス(HSV)系のベクターは、HSV親和性の中枢神経細胞にDMEを導入する際に特に重要である。ヘルペス系ベクターの作製及びパッケージングは、当業者に公知である。 複製適格性単純ヘルペスウイルス(HSV)I型系のベクターは、レポーター遺伝子を霊長類の眼に送達するために用いられてきた(Liu, X. ら (1999) Exp. Eye Res.169:385−395)。HSV−1ウイルスベクターの作製についても、DeLucaに付与された米国特許第5,804,413号(「Herpes simplex virus swains for gene transfer」)に開示されており、該特許の引用をもって本明細書の一部とする。 米国特許第5,804,413号には、ヒト遺伝子治療を含む目的のために好適なプロモーターの制御下において細胞に導入される少なくとも1つの外来性遺伝子を有するゲノムを含む組換えHSV d92についての記載がある。上記特許はまた、ICP4、ICP27及びICP22のために除去される組換えHSV系統の作製及び使用について開示している。HSVベクターについては、Goins, W.F. ら (1999) J. Virol. 73:519−532 及び Xu, H. ら (1994) Dev. Biol. 163:152−161も参照されたい。 両文献は、引用をもって本明細書の一部とする。クローン化ヘルペスウイルス配列の操作、巨大ヘルペスウイルスのゲノムの異なった部分を含む多数のプラスミドを形質移入した後の組換えウイルスの産生、ヘルペスウイルスの成長及び増殖、並びにヘルペスウイルスの細胞への感染は、当業者に公知の技術である。
【0275】
別法では、αウイルス(正の一本鎖RNAウイルス)ベクターを用いてDMEをコードするポリヌクレオチドを標的細胞に送達する。プロトタイプのαウイルスであるセムリキ森林熱ウイルス(Semliki Forest Virus, SFV)の生物学的研究が広範に行われており、遺伝子導入ベクターがSFVゲノムに基づいていることが分かった(Garoff, H. および K.−J. Li (1998) Cun. Opin. Biotech. 9:464−469)。αウイルスRNAの複製中に、通常はウイルスのキャプシッドタンパク質をコードするサブゲノムRNAが作り出される。このサブゲノムRNAは、完全長のゲノムRNAより高いレベルに複製されるため、酵素活性(例えばプロテアーゼ及びポリメラーゼ)を有するウイルスタンパク質に比べてキャプシッドタンパク質が過剰産生される。同様に、DMEをコードする配列をαウイルスゲノムのカプシドをコードする領域に導入することによって、ベクター導入細胞において多数のDMEをコードするRNAが産生され、高いレベルでDMEが合成される。通常はαウイルスの感染が数日以内での細胞溶解に関連する一方で、シンドビスウイルス(SIN)の変異体を有するハムスター正常腎臓細胞(BHK−21)の持続的な感染を確立する能力は、αウイルスの溶解複製を遺伝子治療に適用できるように好適に変更可能であることを示唆している(Dryga, S.A. ら. (1997) Virology 228 :74−83)。様々な宿主にαウイルスを導入できることから、様々なタイプの細胞にDMEを導入することができる。或る集団におけるサブセットの細胞の特定形質導入は、形質導入前に細胞の選別を必要とし得る。αウイルスの感染性cDNAクローンの処置方法、αウイルスのcDNA及びRNAの形質移入方法及びαウイルスの感染方法は、当業者に公知である。
【0276】
転写開始部位由来のオリゴヌクレオチドを用いて遺伝子発現を阻害することも可能である。転写開始部位とは例えば開始部位から数えて約−10と約+10の間である。同様に、三重らせん塩基対の形成方法を用いて阻害が可能となる。三重らせん塩基対形成は、ポリメラーゼ、転写因子または調節分子の結合のために十分に開くような二重らせんの能力を阻害するので、三重らせん塩基対形成は有用である。三重らせんDNAを用いる最近の治療の進歩については文献に記載がある(Gee, J.E. ら (1994) in: Huber, B.E.及びB.I. Carr, Molecular and Immunologic Approaches, Futura Publishing Co., Mt. Kisco, NY, 163−177頁等を参照)。相補配列またはアンチセンス分子もまた、転写物がリボソームに結合するのを阻止することによってmRNAの翻訳を阻止するように設計することができる。
【0277】
リボザイムは酵素性RNA分子であり、RNAの特異的切断を触媒するためにリボザイムを用いることもできる。リボザイム作用のメカニズムは、相補的標的RNAへのリボザイム分子の配列特異性ハイブリダイゼーションとその後に起こる内ヌクレオチド鎖切断に関与している。例えば、遺伝子操作で作られたハンマーヘッド型リボザイム分子が、DMEをコードする配列の内ヌクレオチド鎖分解性の切断を特異的且つ効果的に触媒できる可能性がある。
【0278】
任意のRNA標的内の特異的リボザイム切断部位を、GUA、GUU、GUC配列を含めたリボザイム切断部位に対する標的分子をスキャンすることによって先ず同定する。一度同定すると、切断部位を含む標的遺伝子の領域に対応する15〜20リボヌクレオチドの短いRNA配列が、そのオリゴヌクレオチドを機能不全にするような2次構造の特徴をもっていないかを評価することが可能になる。候補標的の適合性の評価も、リボヌクレアーゼ保護アッセイを用いて相補的オリゴヌクレオチドとのハイブリダイゼーションの実施容易性をテストすることによって行うことができる。
【0279】
本発明の相補リボ核酸分子及びリボザイムは、核酸分子合成のために当分野でよく知られている任意の方法を用いて作製し得る。任意の方法には、固相ホスホラミダイト化学合成のようにオリゴヌクレオチドを化学的に合成する方法がある。或いは、DMEをコードするDNA配列のin vitro及びin vivo転写によってRNA分子を産出し得る。このようなDNA配列は、T7やSP6等の好適なRNAポリメラーゼプロモーターを用いて多様なベクター内に取り込むことが可能である。或いは、相補的RNAを構成的或いは誘導的に合成するようなこれらcDNA産物を、細胞系、細胞または組織内に導入することができる。
【0280】
RNA分子を修飾して細胞内の安定性を高め、半減期を長くすることができる。限定するものではないが可能な修飾には、分子の5’末端、3’末端、あるいはその両方においてフランキング配列を追加したり、分子の主鎖内においてホスホジエステラーゼ結合ではなくホスホロチオネートまたは2’ O−メチルを使用したりすることが含まれる。この概念は、PNAの産出に固有のものであり、これら全ての分子に拡大することができる。 それには、内在性エンドヌクレアーゼによって容易には認識されないアデニン、シチジン、グアニン、チミン、及びウリジンにアセチル−、メチル−、チオ−及び同様の修飾をしたものの他、非従来型塩基、例えばイノシン、クエオシン(queosine)、ワイブトシン(wybutosine)等を加えることでできる。
【0281】
本発明の更なる実施例は、DMEをコードするポリヌクレオチドの発現の変化に有効な化合物をスクリーニングする方法を含む。特異ポリヌクレオチドの発現変異を起こすのに有効な化合物には、限定するものではないが、オリゴヌクレオチド、アンチセンスオリゴヌクレオチド、三重らせん形成オリゴヌクレオチド、転写因子その他のポリペプチド転写制御因子、及び特異ポリヌクレオチド配列と相互作用し得る非高分子化学的実体がある。有効な化合物は、ポリヌクレオチド発現のインヒビターまたはエンハンサーのいずれかとして作用することによりポリヌクレオチド発現を変異し得る。従って、DME の発現または活性の増加に関連する疾患の治療においては、DME をコードするポリヌクレオチドの発現を特異的に阻害する化合物が治療上有用であり、DME の発現または活性の低下に関連する疾患の治療においては、DME をコードするポリヌクレオチドの発現を特異的に促進する化合物が治療上有用であり得る。
【0282】
特異ポリヌクレオチドの変異発現における有効性に対して、少なくとも1個から複数個の試験化合物をスクリーニングし得る。試験化合物は、当分野で通常知られている任意の方法により得られる。 このような方法には、ポリヌクレオチドの発現を変異させる場合と、既存の、市販のまたは専売の、天然または非天然の化合物ライブラリから選択する場合と、標的ポリヌクレオチドの化学的及び/または構造的特性に基づく化合物を合理的にデザインする場合と、組合せ的にまたは無作為に生成した化合物のライブラリから選択する場合に有効であることが知られているような化合物の化学修飾がある。DMEをコードするポリヌクレオチドを含むサンプルは、少なくとも1つの試験化合物に曝露して得る。サンプルには例えば、無傷細胞、透過化処理した細胞、in vitro の無細胞系または再構成生化学系があり得る。DMEをコードするポリヌクレオチドの発現における変化は、当分野で周知の任意の方法でアッセイする。 通常、DMEをコードするポリヌクレオチドの配列に相補的なヌクレオチド配列を有するプローブを用いたハイブリダイゼーションにより、特定のヌクレオチドの発現を検出する。ハイブリダイゼーション量を定量し、それによって1つ以上の試験化合物に曝露される及び曝露されないポリヌクレオチドの発現の比較に対する基礎を形成し得る。試験化合物に曝露されるポリヌクレオチドの発現における変化の検出は、ポリヌクレオチドの発現を変異する際に試験化合物が有効であることを示している。特異ポリヌクレオチドの変異発現に有効な化合物に対して、例えばSchizosaccharomyces pombe遺伝子発現系(Atkins, D. ら (1999) 米国特許第5,932,435号、Arndt, G.M. ら (2000) Nucleic Acids Res. 28:E15)またはHeLa細胞等のヒト細胞系(Clarke, M.L. ら (2000) Biochem. Biophys. Res. Commun. 268:8−13)を用いてスクリーニングを実行する。本発明の特定の実施例は、特異的ポリヌクレオチド配列に対するアンチセンス活性を調べるためのオリゴヌクレオチド(デオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチド、ペプチド核酸、修飾オリゴヌクレオチド)の組み合わせライブラリをスクリーニングすることに関与している(Bruice, T.W. ら (1997) 米国特許第5,686,242号、Bruice, T.W. ら (2000) 米国特許第6,022,691号)。
【0283】
ベクターを細胞または組織に導入する多数の方法が利用可能であり、in vivoin vitro及びex vivoの使用に対して同程度に適している。ex vivo治療の場合、ベクターを患者から採取した幹細胞内に導入し、クローニング増殖して同一患者に自家移植で戻すことができる。トランスフェクション、リボソーム注入またはポリカチオンアミノポリマーによる送達は、当分野でよく知られている方法を用いて実行することができる(Goldman, C.K. ら (1997) Nat. Biotechnol. 15:462−466.等を参照)。
【0284】
上記の治療方法はいずれも、例えば、ヒト、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ウサギ、サル等の哺乳動物を含めて治療が必要な全ての対象に適用できる。
【0285】
本発明の追加実施例は、通常薬剤として許容できる賦形剤で処方される活性成分を含む組成物の投与に関連する。賦形剤には例えば、糖、でんぷん、セルロース、ゴム及びタンパク質がある。様々な処方が通常知られており、詳細はRemington’s Pharmaceutical Sciences(Maack Publishing, Easton PA)の最新版に記載されている。このような組成物は、DME、DMEの抗体、擬態、アゴニスト、アンタゴニスト、またはDMEのインヒビターなどからなる。
【0286】
本発明に用いられる成分は、任意の数の経路によって投与することができ、限定するものではないが経路には、経口、静脈内、筋肉内、動脈内、骨髄内、クモ膜下腔内、心室内、肺、経皮、皮下、腹腔内、鼻腔内、腸内、局所、舌下または直腸がある。
【0287】
肺から投与する成分は、液状または乾燥粉末状で調製し得る。このような成分は通常、患者が吸入する直前にエアロゾル化する。小分子(例えば伝統的な低分子量有機薬)の場合には、速効製剤のエアロゾル送達は当分野で公知である。 高分子(例えばより大きなペプチド及びタンパク質)の場合には、当該分野において肺の肺胞領域を介しての肺送達が最近向上したことにより、インスリン等の薬剤を実質的に血液循環へ輸送することを可能にした(Patton, J.S. ら, 米国特許第5,997,848号等を参照)。肺送達は、針注射なしに投与する点で優れており、有毒な可能性のある浸透エンハンサーの必要性をなくす。
【0288】
本発明での使用に適した成分には、所定の目的を達成するために必要なだけの量の活性成分を含有する成分が含まれる。有効投与量の決定は、当業者の能力の範囲内で行う。
【0289】
DMEまたはその断片を含む高分子を直接細胞内に輸送するべく、特殊な形態に組成物が調製されるのが好ましい。例えば、細胞不透過性高分子を含むリポソーム製剤は、細胞融合及び高分子の細胞内送達を促進し得る。別法では、DMEまたはその断片をHIV Tat−1タンパク質の陽イオンN末端部に結合することもできる。このようにして生成された融合タンパク質は、マウスモデル系の脳を含む全ての組織の細胞に形質導入することがわかっている(Schwarze, S.R. ら (1999) Science 285:1569−1572)。
【0290】
任意の化合物に対して、細胞培養アッセイ、例えば新生物性細胞の細胞培養アッセイにおいて、或いは、動物モデル、例えばマウス、ウサギ、イヌまたはブタ等において、先ず治療の有効投与量を推定することができる。動物モデルはまた、好適な濃度範囲及び投与経路を決定するためにも用い得る。このような情報を用いて、次にヒトに対する有益な投与量及び投与経路を決定することができる。
【0291】
治療有効量は、症状や容態を回復させる活性分の量、たとえばDMEまたはその断片、DMEの抗体、DMEのアゴニストまたはアンタゴニスト、インヒビターなどの量を指す。治療有効性及び毒性は、細胞培養または動物実験における標準的な薬剤手法によって、例えばED50(集団の50%の治療有効量)またはLD50(集団の50%の致死量)を測定するなどして決定することができる。治療効果に対する毒性効果の用量比は、治療指数であり、LD50/ED50比として表すことができる。高い治療指数を示すような成分が望ましい。細胞培養アッセイ及び動物実験から得られたデータは、ヒトに用いるための投与量の範囲を処方するのに用いられる。このような組成物が含まれる投与量は、毒性を殆ど或いは全く含まず、ED50を含むような血中濃度の範囲にあることが好ましい。用いられる投与形態、患者の感受性及び投与の経路によって、投与量はこの範囲内で様々に変わる。
【0292】
正確な投与量は、治療が必要な被験者に関する要素を考慮して、現場の医者が決定することになる。効果的なレベルの活性成分を与え、或いは所望の効果を維持するべく、投与量及び投与を調節する。被験者に関する要素としては、疾患の重症度、患者の通常の健康状態、患者の年齢、体重及び性別、投与の時間及び頻度、薬剤の配合、反応感受性及び治療に対する応答等を考慮する。作用期間が長い成分は、特定の製剤の半減期及びクリアランス率によって3〜4日毎に1度、1週間に1度、或いは2週間に1度の間隔で投与し得る。
【0293】
通常の投与量は、投与の経路にもよるが約0.1〜100,000μgであり、合計で約1gまでとする。特定の投与量及び送達方法に関するガイダンスは文献に記載されており、現場の医者は通常それを利用することができる。 当業者は、タンパク質またはインヒビターに対する処方とは異なる、ヌクレオチドに対する処方を利用することになる。同様に、ポリヌクレオチドまたはポリペプチドの送達は、特定の細胞、状態、位置等に特異的なものとなる。
【0294】
(診断)
別の実施例では、DMEに特異的に結合する抗体が、DMEの発現によって特徴付けられる疾患の診断、またはDMEやDMEのアゴニストまたはアンタゴニスト、インヒビターで治療を受けている患者をモニターするためのアッセイに用いられる。診断目的に有用な抗体は、上記の治療の箇所で記載した方法と同じ方法で作製される。DMEの診断アッセイには、抗体及び標識を用いてヒトの体液或いは細胞や組織内のDMEを検出する方法が含まれる。この抗体は修飾されたものもされていないものも可能であり、レポーター分子との共有結合または非共有結合で標識化できる。レポーター分子としては広くさまざまな種類が本分野で知られており、また使用可能であるが、そのうちのいくつかは上記で説明されている。
【0295】
DMEを測定するためのELISA,RIA,及びFACSを含む種々のプロトコルは、当分野では周知であり、変わった或いは異常なレベルのDMEの発現を診断する元となるものを提供する。正常或いは標準的なDMEの発現の値は、正常な哺乳動物、例えばヒトなどの被験者から採取した体液または細胞とDMEに対する抗体とを複合体の形成に適した条件の下で結合させることによって決定する。標準複合体形成量は、種々の方法、例えば測光法で定量できる。被験者、対照および生検組織からの疾患サンプルで発現するDMEの量を標準値と比較する。標準値と被験者との偏差が疾患を診断するパラメータとなる。
【0296】
本発明の別の実施例によれば、DMEをコードするポリヌクレオチドを診断のために用いることもできる。用いることができるポリヌクレオチドには、オリゴヌクレオチド配列、相補的RNA及びDNA分子、そしてPNAが含まれる。このポリヌクレオチドを用いて、疾患と相関し得るDMEを発現する生検組織における遺伝子の発現を検出し定量する。この診断アッセイを用いて、DMEの存在の有無、更に過剰な発現を調べ、治療中のDME値の調節を監視する。
【0297】
一実施形態では、DMEまたは近縁の分子をコードする遺伝子配列を含むポリヌクレオチド配列を検出できるPCRプローブを用いたハイブリダイゼーションによって、DMEをコードする核酸配列を同定することが可能である。5’調節領域のような高度に特異的な領域から作られていても、あるいは、保存されたモチーフ等のやや特異性の低い領域から作られていても、プローブの特異性と、ハイブリダイゼーション或いは増幅のストリンジェントは、プローブがDMEをコードする自然界の配列のみを同定するかどうか、或いは対立遺伝子や関連配列コードする自然界の配列のみを同定するかどうかによって決まるであろう。
【0298】
プローブはまた、関連する配列の検出に利用され、DMEをコードする任意の配列と少なくとも50%の配列同一性を有し得る。目的の本発明のハイブリダイゼーションプローブには、DNAあるいはRNAが可能であり、SEQ ID NO:19−36の配列、或いはDME遺伝子のプロモーター、エンハンサー、イントロンを含むゲノム配列に由来し得る。
【0299】
DMEをコードするDNAに対して特異的なハイブリダイゼーションプローブの作製方法には、DMEまたはDME誘導体をコードするポリヌクレオチド配列をmRNAプローブの作製のためのベクターにクローニングする方法がある。mRNAプローブ作製のためのベクターは、当業者に知られており、市販されており、好適なRNAポリメラーゼ及び好適な標識ヌクレオチドを加えることによって、in vitroでRNAプローブを合成するために用いられ得る。ハイブリダイゼーションプローブは、種々のレポーターの集団によって標識され得る。 レポーター集団の例としては、32Pまたは35S等の放射性核種、或いはアビジン/ビオチン結合系を介してプローブに結合されたアルカリホスファターゼ等の酵素標識などが挙げられる。
【0300】
DMEをコードするポリヌクレオチド配列を用いて、DMEの発現に関連する疾患を診断することが可能である。そのような疾患の例には、限定するものではないが、自己免疫/炎症性の疾患では、後天性免疫不全症候群(AIDS)及びアジソン病、成人呼吸窮迫症候群、アレルギー、強直性脊椎炎、アミロイド症、貧血、喘息、アテローム性動脈硬化症、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性甲状腺炎、自己免疫性多腺性内分泌カンジダ性外胚葉ジストロフィー(APECED)、気管支炎、胆嚢炎、接触皮膚炎、クローン病、アトピー性皮膚炎、皮膚筋炎、糖尿病、肺気腫、リンパ球毒素性一時性リンパ球減少症、赤芽球症、結節性紅斑、萎縮性胃炎、糸球体腎炎、グッドパスチャー症候群、痛風、グレーブス病、橋本甲状腺炎、過好酸球増加症、過敏性大腸症候群、多発性硬化症、重症筋無力症、心筋または心膜炎症、骨関節炎、骨粗しょう症、膵炎、多発性筋炎、乾癬、ライター症候群、リウマチ様関節炎、強皮症、シェ−グレン症候群、全身性アナフィラキシー、全身性エリテマトーデス、全身性硬化症、血小板減少性紫斑病、潰瘍性大腸炎、ブドウ膜炎、ウェルナー症候群、癌合併症、血液透析、体外循環、ウイルス感染症、細菌感染症、真菌感染症、寄生虫感染症、原虫感染症、蠕虫感染症、外傷が含まれ、
細胞増殖異常では日光性角化症及びアテローム性動脈硬化、滑液包炎、硬変、肝炎、混合型結合組織病(MCTD)、骨髄線維症、発作性夜間ヘモグロビン尿症、真性多血症、乾癬、原発性血小板血症、並びに腺癌及び白血病、リンパ腫、黒色腫、骨髄腫、肉腫、及び奇形癌、具体的には、副腎、膀胱、骨、骨髄、脳、乳房、頚部、胆嚢、神経節、消化管、心臓、腎臓、肝臓、肺、筋肉、卵巣、膵臓、副甲状腺、陰茎、前立腺、唾液腺、皮膚、脾臓、精巣、胸腺、甲状腺、子宮の癌が含まれ、
また発達障害では尿細管性アシドーシス、貧血、クッシング症候群、軟骨形成不全性小人症、デュシェンヌ‐ベッカー型筋ジストロフィー、癲癇、性腺形成異常、WAGR症候群(ウィルムス腫瘍、無虹彩症、尿生殖器異常、精神薄弱)、スミス‐マジェニス症候群(Smith− Magenis syndrome)、脊髄形成異常症候群、遺伝性粘膜上皮異形成、遺伝性角皮症、シャルコー‐マリー‐ツース病及び神経線維腫症などの遺伝性神経病、甲状腺機能低下症、水頭症、Syndenham舞踏病(Syndenham’s chorea)及び脳性小児麻痺などの発作障害、脊髄二分裂、無脳症、頭蓋脊椎披裂、先天性緑内障、白内障、感覚神経性聴力損失が含まれ、
内分泌疾患の中には原発脳腫瘍及び腺腫、妊娠性梗塞、下垂体切除、動脈瘤、血管奇形、血栓症、感染症、免疫異常、頭部外傷による合併症などの病変から起こる視床下部及び下垂体の障害と、性機能低下及びシーハン症候群、尿崩症、カルマン病、ハンド‐シュラークリスチャン病、レトラ‐シヴェ病、サルコイドーシス、エンプティセラ症候群、小人症を含む下垂体低下に関連した障害と、良性線種によって発生しやすい不適当抗利尿ホルモン(ADH)分泌症候群(SIADH)及び先端巨大症、巨人症を含む下垂体亢進に関連した障害と、甲状腺腫及び粘液水腫、細菌感染性急性甲状腺炎、ウイルス感染性亜急性甲状腺炎、自己免疫性甲状腺炎(橋本病)、クレチン病を含む甲状腺機能低下症に関連した障害と、甲状腺中毒症及びその様々な型、グレーブス病、前脛骨粘液水腫、中毒性多結節性甲状腺腫、甲状腺癌、プランマー病を含む甲状腺機能亢進症と、Conn病(chronic hypercalemia)を含む副甲状腺機能亢進症と、I型及びII型糖尿病及び合併症などの膵臓疾患と、過形成及び副腎皮質の癌腫や腺腫、アルカローシスに関連した高血圧、アミロイド症、低カリウム血、クッシング病、リドル症候群、Arnold−Healy−Gordon症候群、褐色細胞腫瘍、アジソン病、副腎機能不全などの副腎に関連した障害と、女性の異常プロラクチン産生及び不妊症、子宮内膜症、月経周期の摂動、多嚢胞性卵巣疾患、高プロラクチン血症、選択的性腺刺激ホルモン不全(isolated gonadotropin deficiency)、無月経、乳汁漏出症、半陰陽、多毛症及び男性化、乳癌、閉経期後の骨粗鬆症、男性のライジッヒ細胞過形成、男性更年期、生殖細胞無形成症、ライジッヒ細胞腫瘍に関連した性機能亢進、アンドロゲン受容体の欠如に関連したアンドロゲン耐性、5α−還元酵素症候群、女性化乳房症などの生殖腺ステロイドホルモンに関連した疾患とが含まれる。
【0301】
眼疾患では、結膜炎、乾性角結膜炎、角膜炎、上強膜炎、虹彩炎、後部ブドウ膜炎、緑内障、一過性黒内障、虚血性視神経症、視神経炎、レーバー遺伝性視神経症、硝子体剥離、網膜剥離、白内障、黄斑変性症、中心性漿液性脈絡網膜症、色素性網膜炎、脈絡膜黒色腫、球後腫瘍、交叉腫瘍(chiasmal tumor)が含まれ、
代謝障害の中には、副腎機能不全、脳腱黄色腫症、副腎皮質過形成、クマリン耐性、嚢胞性線維症、糖尿病、脂肪性肝硬変、果糖−1,6−ジホスファターゼ欠損症、ガラクトース血症、甲状腺腫、グルカゴノーマ、糖原病、遺伝性果糖不耐症、アドレナリン過剰症、腎臟不全症、上皮小体亢進症、副甲状腺低下症、高コレステロール血症、甲状腺亢進症、低血糖症、甲状腺低下症、高脂血症、脂質ミオパシー(lipid myopathies)、脂肪異栄養症、リソソーム蓄積症、メンケス症候群、後角症候群(occipital horn syndrome)、マンノシドーシス、ノイラミニダーゼ欠損症、肥満症、ペントース−フェニルケトン尿症、プソイドビタミンD欠損症、低カルシウム血症、低リン酸血症、思春期後小脳性運動失調症、チロシン血症が含まれ、また、
また、胃腸疾患が含まれ、その中には嚥下障害、消化性食道炎、食道痙攣、食道狭窄、食道癌、消化不良、消化障害、胃炎、胃癌、食欲不振、悪心、嘔吐、胃不全麻痺、洞または幽門の浮腫、腹部アンギナ、胸焼け、胃腸炎、イレウス、腸管感染、消化性潰瘍、胆石症、胆嚢炎、胆汁うっ滞、膵臓炎、膵臓癌、胆道疾患、肝炎、高ビリルビン血症、遺伝性高ビリルビン血症、硬変症、肝臓の受動性うっ血、ヘパトーム、感染性大腸炎、潰瘍性大腸炎、潰瘍性直腸炎、クローン病、ホイップル病、マロリー‐ヴァイス症候群、結腸癌、結腸閉塞、過敏性腸症候群、短小腸症候群、下痢、便秘、胃腸出血、後天性免疫不全症候群(AIDS)腸症、黄疸、肝性脳症、肝腎症候群、肝炎、血色素症、ウィルソン病、αアンチトリプシン欠損症、ライ症候群、原発性硬化性胆管炎、肝梗塞、門脈循環閉塞及び血栓、小葉中心壊死、肝臓紫斑病、肝静脈血栓、肝静脈閉塞症、子癇前症、子癇、妊娠性急性肝脂肪、妊娠性肝臓内胆汁うっ滞と、結節性再生及び腺腫、癌腫を含む肝癌が含まれる。DMEをコードするポリヌクレオチド配列は、サザーン法やノーザン法、ドットブロット法、或いはその他の膜系の技術、PCR法、ディップスティック(dipstick)、ピン(pin)、ELISA式アッセイ、及び変異DMEの発現を検出するために患者から採取した体液或いは組織を利用するマイクロアレイに使用することが可能である。このような定性方法または定量方法は、当分野で公知である。
【0302】
ある実施態様では、DMEをコードするヌクレオチド配列は、関連する疾患、特に上記した疾患を検出するアッセイにおいて有用であろう。DMEをコードするヌクレオチド配列は、標準的な方法で標識化され、ハイブリダイゼーション複合体の形成に好適な条件の下、患者から採取した体液或いは組織のサンプルに加えることができるであろう。好適なインキュベーション期間が経過したらサンプルを洗浄し、シグナルを定量して標準値と比較する。患者のサンプルのシグナルの量が、対照サンプルと較べて著しく変わっている場合は、サンプル内のDMEをコードするヌクレオチド配列の変異レベルにより、関連する疾患の存在が明らかになる。このようなアッセイは、動物実験、臨床試験における特定の治療効果を推定するため、或いは個々の患者の治療をモニターするために用いることもできる。
【0303】
DMEの発現に関連する疾患の診断の基準となるものを提供するために、発現の正常すなわち標準的なプロファイルが確立される。これは、ハイブリダイゼーション或いは増幅に好適な条件の下で、動物或いはヒトの何れかの正常な被験者から抽出された体液或いは細胞と、DMEをコードする配列或いはその断片とを結合させることにより達成され得る。実質的に精製されたポリヌクレオチドを既知量用いて行った実験から得た値を正常な対象から得た値と比較することにより、標準ハイブリダイゼーションを定量することができる。このようにして得た標準値は、疾患の徴候を示す患者から得たサンプルから得た値と比較することができる。標準値からの偏差を用いて疾患の存在を確定する。
【0304】
疾患の存在が確定されて治療プロトコルが開始されると、患者の発現レベルが正常な被検者に観察されるレベルに近づき始めたかどうかを測定するため、ハイブリダイゼーションアッセイを通常ベースで繰り返し得る。連続アッセイから得られた結果を用いて、数日から数ヶ月の期間にわたる治療の効果を示し得る。
【0305】
癌に関しては、個体からの生体組織における異常な量の転写物(過少発現または過剰発現)の存在は、疾患の発生素質を示したり、実際に臨床的症状が現れる前に疾患を検出する方法を提供したりし得る。この種のより明確な診断により、医療の専門家が予防方法または積極的な治療法を早くから利用し、それによって癌の発生または更なる進行を防止することが可能となる。
【0306】
DMEをコードする配列から設計されたオリゴヌクレオチドのさらなる診断への利用には、PCRの利用が含まれ得る。これらのオリゴマーは、化学的に合成するか、酵素により生産するか、或いはin vitroで産出し得る。オリゴマーは、好ましくはDMEをコードするポリヌクレオチドの断片、或いはDMEをコードするポリヌクレオチドと相補的なポリヌクレオチドの断片を含み、最適な条件の下、特定の遺伝子や条件を識別するために利用される。また、オリゴマーは、やや緩いストリンジェント条件下で、近縁のDNA或いはRNA配列の検出、定量、或いはその両方のため用いることが可能である。
【0307】
或る実施態様において、DMEをコードするポリヌクレオチド配列由来のオリゴヌクレオチドプライマーを用いて、一塩基多型(SNP)を検出し得る。SNPは、多くの場合にヒトの先天性または後天性遺伝病の原因となるような置換、挿入及び欠失である。限定するものではないがSNPの検出方法には、SSCP(single−stranded conformation polymorphism)及び蛍光SSCP(fSSCP)法がある。SSCPでは、DMEをコードするポリヌクレオチド配列由来のオリゴヌクレオチドプライマーを用いたポリメラーゼ連鎖反応(PCR)でDNAを増幅する。DNAは例えば、病変組織または正常組織、生検サンプル、体液その他に由来し得る。DNA内のSNPは、一本鎖形状のPCR生成物の2次及び3次構造に差異を生じさせる。 差異は非変性ゲル中でのゲル電気泳動法を用いて検出可能である。fSCCPでは、オリゴヌクレオチドプライマーを蛍光性に標識する。それによってDNAシークエンシング機などの高処理機器でアンプリマー(amplimer)の検出が可能になる。更に、インシリコSNP(in silico SNP, isSNP)と呼ばれる配列データベース分析法は、一般的なコンセンサス配列に配列されるような個々の重畳するDNA断片の配列を比較することにより、多型性を同定し得る。これらのコンピュータベースの方法は、DNAの実験室での調整及び統計モデル及びDNA配列クロマトグラムの自動分析を用いたシークエンシングのエラーに起因する配列の変異をフィルタリングして除去する。別の態様では、例えば高処理MASSARRAYシステム(Sequenom, Inc., San Diego CA)を用いた質量分析によりSNPを検出し、特徴付ける。
【0308】
DMEの発現を定量するために用い得る方法には、ヌクレオチドの放射標識またはビオチン標識、調節核酸の相互増幅(coamplification)及び標準曲線から得た結果の補間もある(例えば、 Melby, P.C. 他 (1993) J. Immunol. Methods 159:235244; Duplaa, C. 他 (1993) Anal. Biochem. 212:229236を参照。)目的のオリゴマーが種々の希釈液中に存在し、分光光度法または比色反応によって定量が迅速になるような高処理フォーマットのアッセイを行うことによって、複数のサンプルの定量速度を加速することができる。
【0309】
更に別の実施例では、本明細書で記載した任意のポリヌクレオチド配列由来のオリゴヌクレオチドまたはより長い断片を、マイクロアレイにおけるエレメントとして用いることができる。多数の遺伝子の関連発現レベルを同時にモニターする転写イメージング技術にマイクロアレイを用いることが可能である。 これについては、以下に記載する。マイクロアレイはまた、遺伝変異体、突然変異及び多型性の同定に用いることができる。この情報を用いることで、遺伝子機能を決定し、疾患の遺伝的根拠を理解し、疾患を診断し、遺伝子発現の機能としての疾病の進行/後退をモニターし、疾病治療における薬剤の活性を開発及びモニターすることができる。特に、患者にとって最もふさわしく、有効的な治療法を選択するために、この情報を用いて患者の薬理ゲノムプロフィールを開発することができる。例えば、患者の薬理ゲノムプロフィールに基づき、患者に対して高度に有効的で副作用を殆ど示さない治療薬を選択することができる。
【0310】
別の実施例では、DME、DMEの断片、DMEに特異的な抗体をマイクロアレイ上のエレメントとして用いることができる。マイクロアレイを用いて、上記のようなタンパク質−タンパク質相互作用、薬剤−標的相互作用及び遺伝子発現プロフィールをモニターまたは測定することが可能である。
【0311】
或る実施例は、或る組織または細胞タイプの転写イメージを生成するような本発明のポリヌクレオチドの使用に関連する。転写イメージは、特定の組織または細胞タイプにより遺伝子発現の包括的パターンを表す。包括的遺伝子発現パターンは、所定の条件下で所定の時間に発現した遺伝子の数及び相対存在量を定量することにより分析される(Seilliamer 他、米国特許第5,840,484号の「Comparative Gene Transcript Analysis」 を参照。この特許に言及することを以って本明細書の一部とする)。従って、特定の組織または細胞タイプの転写または逆転写全体に本発明のポリヌクレオチドまたはその補体をハイブリダイズすることにより、転写イメージを生成し得る。或る実施例では、本発明のポリヌクレオチドまたはその補体がマイクロアレイ上のエレメントのサブセットを複数含むような高処理フォーマットでハイブリダイゼーションを発生させる。結果として得られる転写イメージは、遺伝子活性のプロフィールを提供し得る。
【0312】
転写イメージは、組織、株化細胞、生検またはその生物学的サンプルから単離した転写物を用いて生成し得る。転写イメージは従って、組織または生検サンプルの場合にはin vivo、または株化細胞の場合にはin vitroでの遺伝子発現を反映する。
本発明のポリヌクレオチドの発現のプロフィールを作製する転写イメージはまた、工業的または天然の環境化合物の毒性試験のみならず、in vitroモデル系及び薬剤の前臨床評価に関連して使用し得る。全ての化合物は、作用及び毒性のメカニズムを暗示する、しばしば分子フィンガープリントまたは毒性シグネチャと称されるような特徴的な遺伝子発現パターンを惹起する(Nuwaysir, E.F. ら. (1999) Mol. Carcinog. 24:15 3−159、Steiner, S. および N.L. Anderson (2000) Toxicol. Lett. 112−113:467−471、該文献は特に引用することを以って本明細書の一部となす)。試験化合物が、既知の毒性を有する化合物のシグネチャと同一のシグネチャを有する場合には、毒性特性を共有している可能性がある。フィンガープリントまたはシグネチャは、多数の遺伝子及び遺伝子ファミリーからの発現情報を含んでいる場合は、最も有用且つ正確である。理想的には、発現をゲノム全域にわたって測定すると、最高品質のシグネチャが得られる。たとえ、発現が任意の試験された化合物によって変化しない遺伝子があったとしても、それらの発現レベルを残りの発現データを標準化するために使用できるため、それらの遺伝子は重要である。規準化手順は、異なる化合物で処理した後の発現データの比較に有用である。毒性シグネチャの要素に遺伝子機能を割り当てることが毒性メカニズムの解釈に役立つが、毒性の予測につながるシグネチャを統計的に一致させるのに遺伝子機能の知識は必要とされない(例えば2000年2月29日にNational Institute of Environmental Health Sciencesより発行されたPress Release 00−02を参照されたい。これについてはhttp://www.niehs.nih.gov/oc/news/toxchip.htmで入手可能である)。従って、毒性シグネチャを用いた中毒学的スクリーニングの際に、全ての発現した遺伝子配列を含めることは重要且つ望ましいことである。
【0313】
或る実施例では、核酸を含有する生物学的サンプルを試験化合物で処理することにより試験化合物の毒性を算定する。処理した生物学的サンプル中で発現した核酸は、本発明のポリヌクレオチドに特異的な1つ若しくは複数のプローブでハイブリダイズし、それによって本発明のポリヌクレオチドに対応する転写レベルを定量し得る。処理した生物学的サンプル中の転写レベルを、非処理生物学的サンプル中のレベルと比較する。両サンプルの転写レベルの差は、処理されたサンプル中で試験化合物が引き起こす毒性反応を示す。
【0314】
別の実施例は、本発明のポリペプチド配列を用いて組織または細胞タイプのプロテオームを分析することに関連する。プロテオームの語は、特定の組織または細胞タイプでのタンパク質発現の包括的パターンを指す。プロテオームの各タンパク質成分は、個々に更に分析の対象とすることができる。プロテオーム発現パターン即ちプロフィールは、所与の条件下で所与の時間に発現したタンパク質の数及び相対存在量を定量することにより分析し得る。従って細胞のプロテオームのプロフィールは、特定の組織または細胞タイプのポリペプチドを分離及び分析することにより作成し得る。或る実施例では、1次元等電点電気泳動によりサンプルからタンパク質を分離し、2次元ドデシル硫酸ナトリウムスラブゲル電気泳動により分子量に応じて分離するような2次元ゲル電気泳動により分離が達成される(前出のSteiner および Anderson)。タンパク質は、通常クーマシーブルーまたはシルバーまたは蛍光染色などの物質を用いてゲルで染色することにより、分散した、独特な位置にある点としてゲル中で可視化される。各タンパク質スポットの光学密度は、通常サンプル中のタンパク質レベルに比例する。異なるサンプル、例えば試験化合物または治療薬で処理または非処理のいずれかの生物学的サンプルから得られるタンパク質スポットの光学密度を比較し、処理に関連するタンパク質スポット密度の変化を同定する。スポット内のタンパク質は、例えば化学的または酵素的切断とそれに続く質量分析を用いる標準的な方法を用いて部分的にシークエンシングする。スポット内のタンパク質の同一性は、その部分配列を、好適には少なくとも5個の連続するアミノ酸残基を、本発明のポリペプチド配列と比較することにより決定し得る。場合によっては、決定的なタンパク質同定のための更なる配列が得られる。
+プロテオームのプロファイルは、DMEに特異的な抗体を用いてDME発現レベルを定量することによっても作成可能である。或る実施例では、マイクロアレイ上でエレメントとして抗体を用い、マイクロアレイをサンプルに曝して各アレイ要素へのタンパク質結合レベルを検出することによりタンパク質発現レベルを定量する(Lueking, A. ら. (1999) Anal. Biochern. 270:103−111、Mendoze, L.G. ら. (1999) Biotechniques 27:778−788)。検出は当分野で既知の様々な方法で行うことができ、例えば、チオールまたはアミノ反応性蛍光化合物を用いてサンプル中のタンパク質を反応させ、各アレイのエレメントにおける蛍光結合の量を検出し得る。
【0315】
プロテオームレベルでの毒性サインも中毒学的スクリーニングに有用であり、転写レベルでの毒性シグネチャと並行に分析するべきである。或る組織の或るタンパク質に対しては、転写とタンパク質の存在量の相関が乏しいこともあるので(Anderson, N.L. および J. Seilhamer (1997) Electrophoresis 18:533−537)、転写イメージにはそれ程影響しないがタンパク質のプロフィールを変える化合物の分析においてプロテオーム毒性シグネチャは有用たり得る。更に、体液中での転写の分析はmRNA急速な分解により困難であるので、タンパク質のプロフィール作成はこのような場合により信頼でき、情報価値がある。
【0316】
別の実施例では、タンパク質を含有する生物学的サンプルを試験化合物で処理することにより試験化合物の毒性を算定する。処理された生物学的サンプル中で発現したタンパク質は、各タンパク質の量を定量し得るように分離する。各タンパク質の量を、非処理生物学的サンプル中の対応するタンパク質の量と比較する。両サンプルのタンパク質量の差は、処理サンプル中の試験化合物に対する反応を示す。個々のタンパク質は、個々のタンパク質のアミノ酸残基をシークエンシングし、これら部分配列を本発明のポリペプチドと比較することにより同定する。
【0317】
別の実施例では、タンパク質を含有する生物学的サンプルを試験化合物で処理することにより試験化合物の毒性を算定する。生物学的サンプルから得たタンパク質は、本発明のポリペプチドに特異的な抗体を用いてインキュベートする。抗体により認識されたタンパク質の量を定量する。処理された生物学的サンプル中のタンパク質の量を、非処理生物学的サンプル中のタンパク質の量と比較する。両サンプルのタンパク質量の差は、処理サンプル中の試験化合物に対する反応を示す。
【0318】
マイクロアレイは、本技術分野でよく知られている方法を用いて調製し、使用し、そして分析する(Brennan, T.M. ら (1995) の米国特許第5,474,796号、Schena, M. ら (1996) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 93:10614−10619、Baldeschweiler らの (1995) PCT出願第WO95/251116号、Shalon, D.らの (1995) PCT出願第WO95/35505号、Heller, R.A. ら (1997) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 94:2150−2155、Heller, M.J. らの (1997) 米国特許第5,605,662号等を参照)。様々なタイプのマイクロアレイが公知であり、詳細については、DNA Microarrays: Practical Approach, M. Schena, 編集. (1999) Oxford University Press, Londonに記載されている。該文献は、特に引用することを以って本明細書の一部となす。 Practical Approach, M. Schena, ed. (1999) Oxford University Press, Londonに記載されている。 該文献は、特別に引用することを以って本明細書の一部となす。
【0319】
本発明の別の実施例ではまた、DMEをコードする核酸配列を用いて、天然のゲノム配列をマッピングするのに有用なハイブリダイゼーションプローブを作製することが可能である。コード配列または非コード配列のいずれかを用いることができ、ある場合には、コード配列より非コード配列が好ましい。例えば、多重遺伝子ファミリーのメンバー内でのコード配列の保存により、染色体マッピング中に望ましくないクロスハイブリダイゼーションが生じる可能性がある。核酸配列は、特定の染色体、染色体の特定領域または人工形成の染色体、例えば、ヒト人工染色体(HAC)、酵母人工染色体(YAC)、細菌人工染色体(BAC)、細菌P1産物、或いは単一染色体cDNAライブラリに対してマッピングされる。(例えば、 Harrington, J.J. 他 (1997) Nat. Genet. 15:345−355; Price, C.M. (1993) Blood Rev. 7:127134; and Trask, B.J. (1991) Trends Genet. 7:149154を参照。)一度マッピングすると、本発明の核酸配列を用いて例えば病状の遺伝を特定の染色体領域の遺伝または制限酵素断片長多型(RFLP)と相関させるような遺伝子連鎖地図を作製できる。(例えば、 Lander, E.S. and D. Botstein (1986) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 83:7353−7357を参照。)
【0320】
蛍光原位置ハイブリッド形成法(FISH)は、他の物理的及び遺伝地図データと相関し得る(前出のHeinz−Ulrich, ら (1995) in Meyers, 965−968ページ.等を参照)遺伝地図データの例は、種々の科学雑誌あるいはOnline Mendelian Inheritance in Man(OMIM)のウェブサイトに見ることができる。物理的な染色体地図上のDMEをコードする遺伝子の位置と特定の疾患との相関性、或いは特定の疾患に対する素因が、このような疾患と関連するDNA領域の決定に役立つため、更なる位置を決定するクローニングが行われる。
【0321】
確定した染色体マーカーを用いた結合分析等の物理的マッピング技術及び染色体標本原位置ハイブリッド形成法を用いて、遺伝子地図を拡張することができる。例えばマウスなど別の哺乳動物の染色体上に遺伝子を配置することにより、正確な染色体の遺伝子座がわかっていない場合でも関連するマーカーを明らかにし得る。この情報は、位置クローニングその他の遺伝子発見技術を用いて疾患遺伝子を探す研究者にとって価値がある。いったん、疾患または症候群の原因となる遺伝子が、血管拡張性失調症の11q22−23領域等、特定の遺伝子領域への遺伝的結合によって大まかに位置決めがなされると、該領域に対するいかなるマッピングも、更なる調査のための関連遺伝子或いは調節遺伝子を表すことができる(Gatti, R.A.ら (1988) Nature 336:577−580等を参照)健常者、保有者、感染者の三者間における転座、反転等に起因する染色体位置の相違を発見するために本発明のヌクレオチド配列を用いてもよい。
【0322】
本発明の別の実施例では、DME、その触媒作用断片或いは免疫原断片またはそのオリゴペプチドを、種々の任意の薬剤スクリーニング技術における化合物のライブラリのスクリーニングに用いることができる。薬剤スクリーニングに用いる断片は、溶液中に遊離しているか、固体支持物に固定されるか、細胞表面上に保持されるか、細胞内に位置することになろう。DMEと検査する薬剤との結合による複合体の形成を測定してもよい。
【0323】
別の薬剤スクリーニング方法は、目的のタンパク質に対して好適な結合親和性を有する化合物を高い処理能力でスクリーニングするために用いられる(Geysen, 他 (1984) PCT application WO84/03564等を参照。)この方法においては、多数の異なる小さな試験用化合物を固体基板上で合成する。試験用化合物は、DME、或いはその断片と反応してから洗浄する。次ぎに、結合されたDMEが、当分野で周知の方法で検出される。 精製されたDMEはまた、前記した薬剤をスクリーニングする技術に用いられるプレート上に直接被覆することもできる。別法では、非中和抗体を用いてペプチドを捕捉し、ペプチドを固体支持物に固定することもできる。
【0324】
別の実施例では、DMEと結合可能な中和抗体がDMEと結合するため試験用化合物と特に競合する、競合的薬剤スクリーニングアッセイを用いることができる。この方法では、抗体が、DMEと1つ以上の抗原決定因子を共有するどのペプチドの存在も検出する。
【0325】
別の実施例では、将来に開発される分子生物学技術で、現在知られているヌクレオチド配列の特性(限定はされないが、トリプレット遺伝コード、特異的な塩基対相互作用等を含む)に依存しているならば、DMEをコードするヌクレオチド配列にその新技術を用い得る。
【0326】
更に詳細説明をしなくとも、当業者であれば以上の説明を以って本発明を最大限に利用できるであろう。従って、これ以下に記載する実施例は単なる例示目的にすぎず、いかようにも本発明を限定するものではない。
【0327】
本明細書において開示した全ての特許、特許出願及び刊行物、特に米国特許第60/236.947号、第60/238.864号、第60/242.323号、第60/247.581号、第60/249.519号、第60/252.834及び第60/250.567は、言及することをもって本明細書の一部となす。
【0328】
(実施例)
cDNA ライブラリの作製
Incyte cDNAは、LIFESEQ GOLDデータベース(Incyte Genomics, Palo Alto CA)に記載されたcDNAライブラリに由来するものであり、表4の列5に列記した。 ホモジナイズしてグアニジニウムイソチオシアネート溶液に溶解した組織もあり、また、ホモジナイズしてフェノールまたは好適な変性剤の混合液に溶解した組織もある。 変性剤の混合液は、例えばフェノールとグアニジニウムイソチオシアネートの単相溶液であるTRIZOL(Life Technologies)等である。結果として得られた溶解物は、塩化セシウムクッション上で遠心分離するかクロロホルムで抽出した。イソプロパノールか、酢酸ナトリウムとエタノールか、いずれか一方、或いは別の方法を用いて、溶解物からRNAを沈殿させた。
【0329】
RNAの純度を高めるため、RNAのフェノールによる抽出及び沈殿を必要な回数繰り返した。場合によっては、DNアーゼでRNAを処理した。殆どのライブラリでは、オリゴd(T)連結常磁性粒子(Promega)、OLIGOTEXラテックス粒子(QIAGEN, Valencia CA)またはOLIGOTEX mRNA精製キット(QIAGEN)を用いて、ポリ(A+) RNAを単離した。別法では、別のRNA単離キット、例えばPOLY(A)PURE mRNA精製キット(Ambion, Austin TX)を用いて組織溶解物からRNAを直接単離した。
【0330】
場合によってはStratagene社へのRNA提供を行い、対応するcDNAライブラリをStratagene社が作製することもあった。そうでない場合は、UNIZAPベクターシステム(Stratagene)またはSUPERSCRIPTプラスミドシステム(Life Technologies)を用いて本技術分野で公知の推奨方法または類似の方法でcDNAを合成し、cDNAライブラリを作製した(前出のAusubel, 1997, unit 5.1−6.6等を参照)。逆転写は、オリゴd(T)またはランダムプライマーを用いて開始した。合成オリゴヌクレオチドアダプターを二本鎖cDNAに連結反応させ、好適な制限酵素でcDNAを消化した。殆どのライブラリに対して、cDNAのサイズの選択(300〜1000bp)は、SEPHACRYL S1000、SEPHAROSE CL2BまたはSEPHAROSE CL4Bカラムクロマトグラフィー(Amersham Pharmacia Biotech)、或いは調製用アガロースゲル電気泳動法を用いて行った。cDNAは好適なプラスミドのポリリンカーの適合する制限酵素部位に連結させた。 好適なプラスミドは例えば、PBLUESCRIPT プラスミド (Stratagene)、PSPORT1 プラスミド(Life Technologies)、PCDNA2.1 プラスミド(Invitrogen, Carlsbad CA)、PBK−CMV プラスミド(Stratagene)、 PCR2−TOPOTA (Invitrogen)、 PCMV−ICISプラスミド (Stratagene)、pIGEN (Incyte Genomics, Palo Alto CA)、または pINCY (Incyte Genomics)、あるいはその誘導体である。組換えプラスミドは、Stratagene社のXL1−Blue、XL1−BIueMRFまたはSOLR、或いはLife Technologies社のDH5α、DH10BまたはELECTROMAX DH10Bを含むコンピテント大腸菌細胞に形質転換した。
【0331】
cDNA クローンの単離
UNIZAPベクターシステム(Stratagene)を用いたin vivo切除によって、或いは細胞溶解によって、実施例 のようにして得たプラスミドを宿主細胞から回収した。MagicまたはWIZARD Minipreps DNA精製システム(Promega)、AGTC Miniprep精製キット(Edge Biosystems, Gaithersburg MD)、QIAGEN社のQIAWELL 8 Plasmid、QIAWELL 8 Plus Plasmid及びQIAWELL 8 Ultra Plasmid 精製システム、QIAGEN社のR.E.A.L. Prep 96プラスミドキットの中から少なくとも1つを用いて、プラスミドを精製した。沈殿させた後、0.1mlの蒸留水に再懸濁して、凍結乾燥して或いは凍結乾燥しないで4℃で保管した。
【0332】
別法では、高処理フォーマットにおいて直接結合PCR法を用いて宿主細胞溶解物からプラスミドDNAを増幅した(Rao, V.B. (1994) Anal. Biochem. 216:1−14)。宿主細胞の溶解及び熱サイクリング過程は、単一反応混合液中で行った。サンプルを処理し、それを384穴プレート内で保管し、増幅したプラスミドDNAの濃度をPICOGREEN色素(Molecular Probes, Eugene OR)及びFluoroskan II蛍光スキャナ(Labsystems Oy, Helsinki, Finland)を用いて蛍光分析的に定量した。
【0333】
3 シークエンシング及び分析
実施例2に記載したようにプラスミドから回収したIncyte cDNAを、以下に示すようにシークエンシングした。cDNAのシークエンス反応は、標準的方法或いは高処理装置、例えばABI CATALYST 800 サーマルサイクラー(Applied Biosystems)またはPTC−200 サーマルサイクラー(MJ Research)をHYDRAマイクロディスペンサー(Robbins Scientific)またはMICROLAB 2200(Hamilton)液体転移システムと併用して処理した。 cDNAのシークエンス反応は、Amersham Pharmacia Biotech社が提供する試薬またはABIシークエンシングキット、例えばABI PRISM BIGDYE Terminator cycle sequencing ready reaction kit(Applied Biosystems)に与えられた試薬を用いて準備した。cDNAのシークエンス反応の電気泳動的分離及び標識したポリヌクレオチドの検出には、MEGABACE 1000 DNAシークエンシングシステム(Molecular Dynamics)か、標準ABIプロトコル及び塩基対呼び出しソフトウェアを用いるABI PRISM 373または377シークエンシングシステム(Applied Biosystems)か、或いはその他の本技術分野でよく知られている配列解析システムを用いた。 cDNA配列内のリーディングフレームは、標準的方法(前出のAusubel, 1997, unit 7.7に概説)を用いて決定した。cDNA配列の幾つかを選択して、実施例8に記載した方法で配列を伸長させた。
【0334】
Incyte cDNA配列に由来するポリヌクレオチド配列は、ベクター、リンカー及びポリ(A)配列を除去し、あいまいな塩基対をマスクすることによって有効性を確認した。 その際、BLAST、動的プログラミング及び隣接ジヌクレオチド頻度分析に基づくアルゴリズム及びプログラムを用いた。公共のデータベース、例えばGenBankの霊長類及びげっ歯類、哺乳動物、脊椎動物、真核生物のデータベースと、BLOCKS、PRINTS、DOMO、PRODOM、及びPFAM等のようなHidden Markov Model(HMM)ベースのタンパク質ファミリーデータベースの選択に対して、Incyte cDNA配列またはその翻訳を問い合わせた(HMMは、遺伝子ファミリーのコンセンサス1次構造を分析する確率的アプローチである。例えば、Eddy, S.R. (1996) Curr. Opin. Struct. Biol. 6:361−365を参照のこと)。問合せは、BLAST、FASTA、BLIMPS及びHMMERに基づくプログラムを用いて行った。Incyte cDNA配列は、完全長のポリヌクレオチド配列を産出するように構築した。或いは、GenBank cDNA、GenBank EST、ステッチされた配列、ストレッチされた配列またはGenscan予測コード配列(実施例4及び5を参照)を用いてIncyte cDNAの集団を完全長まで伸長させた。Phred、Phrap及びConsedに基づくプログラムを用いて構築し、GenMark、BLAST及びFASTAに基づくプログラムを用いてcDNAの集団をオープンリーディングフレームに対してスクリーニングした。対応する完全長ポリペプチド配列を誘導するべく完全長ポリヌクレオチド配列を翻訳した。或いは、本発明のポリペプチドは完全長翻訳ポリペプチドの任意のメチオニン残基で開始し得る。引き続いて、GenBankタンパク質データベース(genpept)、SwissProt、BLOCKS、PRINTS、DOMO、PRODOM及びProsite等のデータベース、PFAM等の隠れマルコフモデル(HMM)ベースのタンパク質ファミリーデータベースに対する問合せによって完全長ポリペプチド配列を分析した。完全長ポリヌクレオチド配列はまた、MACDNASIS PROソフトウェア(日立ソフトウェアエンジニアリング, South San Francisco CA)及びLASERGENEソフトウェア(DNASTAR)を用いて分析した。ポリヌクレオチド及びポリペプチド配列アラインメントは、アラインメントした配列と配列の一致率も計算するMEGALIGNマルチシークエンスアラインメントプログラム(DNASTAR)に組み込まれているようなCLUSTALアルゴリズムによって特定されるデフォルトパラメータを用いて生成する。
【0335】
Incyte cDNA及び完全長配列の分析及びアセンブリに利用したツール、プログラム及びアルゴリズムの概略と、適用可能な説明、引用文献、閾値パラメータを表7に示す。用いたツール、プログラム及びアルゴリズムを表7の列1に、それらの簡単な説明を列2に示す。 列3は好適な引用文献であり、全ての文献はそっくりそのまま引用を以って本明細書の一部となす。 適用可能な場合には、列4は2つの配列が一致する強さを評価するために用いたスコア、確率値その他のパラメータを示す(スコアが高ければ高いほど2配列間の相同性が高くなる)。
【0336】
完全長ポリヌクレオチド配列およびポリペプチド配列の組み立て及び分析に用いる上記のプログラムは、SEQ ID NO:19−36のポリヌクレオチド配列断片の同定にも利用できる。 ハイブリダイゼーション及び増幅技術に有用である約20〜約4000ヌクレオチドの断片を表4の列4に示した。
【0337】
4 ゲノム DNA からのコード配列の同定及び編集
推定薬物代謝酵素は、公共のゲノム配列データベース(例えば、gbpriやgbhtg)においてGenscan遺伝子同定プログラムを実行して初めに同定された。Genscanは、様々な生物からゲノムDNA配列を分析する汎用遺伝子同定プログラムである(Burge, C. および S. Karlin (1997) J. Mol. Biol. 268:78−94 及びBurge, C. 及び S. Karlin (1998) Cuff. Opin. Struct. Biol. 8:346−354参照)。プログラムは予測エキソンを連結し、メチオニンから停止コドンに及ぶ構築されたcDNA配列を形成する。Genscanの出力は、ポリヌクレオチド及びポリペプチド配列のFASTAデータベースである。Genscanが一度に分析する配列の最大範囲は、30kbに設定した。これらのGenscan推定cDNA配列の内、どの配列が薬物代謝酵素をコードするかを決定するために、コードされたポリペプチドをPFAMモデルにおいて薬物代謝酵素について問合せて分析した。潜在的な薬物代謝酵素が、薬物代謝酵素としてアノテーションが付けられたインサイトcDNA配列に対する相同性を基に同定された。こうして選択されたGenscan予測配列は、次にBLAST分析により公共データベースgbpri及びgbhtgと比較した。必要であれば、genpeptからヒットしたトップのBLASTと比較することによりGenscan予測配列を編集し、余分なまたは取り除かれたエキソンなどのGenscanにより予測された配列のエラーを修正する。BLAST分析はまた、任意のIncyte cDNAまたはGenscan予測配列の公共cDNA適用範囲の発見に用いられるので、転写の証拠を提供する。Incyte cDNA適用範囲が利用できる場合には、この情報を用いてGenscan予測配列を修正または確認した。完全長ポリヌクレオチド配列は、実施例3に記載された構築プロセスを用いて、Incyte cDNA配列及び/または公共のcDNA配列でGenscan予測コード配列を構築することにより得た。或いは、完全長ポリヌクレオチド配列は編集または非編集のGenscan予測コード配列に完全に由来する。
【0338】
cDNA 配列データを使ったゲノム配列データの構築
ステッチ配列( Stiched Sequence
部分cDNA配列は、実施例4に記載のGenscan遺伝子同定プログラムにより予測されたエキソンを用いて伸長させた。実施例3に記載されたように構築された部分cDNAは、ゲノムDNAにマッピングし、関連するcDNA及び1つ若しくは複数のゲノム配列から予測されたGenscanエキソンを含むクラスタに分解した。cDNA及びゲノム情報を統合するべくグラフ理論及び動的プログラミングに基づくアルゴリズムを用いて各クラスタを分析し、引き続いて確認、編集または伸長して完全長配列を産出するような潜在的スプライス変異体を生成した。間隔全体の長さがクラスタ中の2以上の配列に存在するような配列を同定し、そのように同定された間隔は推移により等しいと考えられた。例えば、1つのcDNA及び2つのゲノム配列に間隔が存在する場合、3つの間隔は全て等しいと考えられる。このプロセスは、無関係であるが連続したゲノム配列をcDNA配列により結び合わせて架橋し得る。このようにして同定された区間を、親配列(parent sequence)に沿って現われるようにステッチアルゴリズムで縫い合わせ、可能な最も長い配列および変異配列を作製する。1種類の親配列に沿って発生した間隔と間隔との連鎖(cDNA−cDNAまたはゲノム配列−ゲノム配列)は、親の種類を変える連鎖(cDNA−ゲノム配列)に優先した。結果として得られるステッチ配列は、BLAST分析により公共データベースgenpept及びgbpriに翻訳されて比較された。Genscanにより予測された不正確なエキソンは、genpeptからヒットしたトップのBLASTと比較することにより修正した。必要な場合には、追加cDNA配列を用いるかゲノムDNAの検査により配列を更に伸長させた。
【0339】
ストレッチ配列( Stretched Sequence
部分DNA配列は、BLAST分析に基づくアルゴリズムにより完全長まで伸長された。先ず、BLASTプログラムを用いて、GenBankの霊長類、げっ歯類、哺乳動物、脊椎動物及び真核生物のデータベースなどの公共データベースに対し、実施例3に記載されたように構築された部分cDNAを問い合わせた。次に、最も近いGenBankタンパク質相同体をBLAST分析によりIncyte cDNA配列または実施例4に記載のGenScanエキソン予測配列のいずれかと比較した。結果として得られる高スコアリングセグメント対(HSP)を用いてキメラタンパク質を産出し、翻訳した配列をGenBankタンパク質相同体上にマッピングした。元のGenBankタンパク質相同体に関連して、キメラタンパク質内で挿入または削除が起こり得る。GenBankタンパク質相同体、キメラタンパク質またはその両方をプローブとして用い、公共のヒトゲノムデータベースから相同ゲノム配列を検索した。このようにして、部分的なDNA配列を相同ゲノム配列の付加によりストレッチすなわち伸長した。結果として得られるストレッチ配列を検査し、完全遺伝子を含んでいるか否かを決定した。
【0340】
DME をコードするポリヌクレオチドの染色体マッピング
SEQ ID NO:19−36を構築するために用いた配列を、BLAST及びSmith−Watermanアルゴリズムを用いて、Incyte LIFESEQデータベース及び公共のドメインデータベースの配列と比較した。SEQ ID NO:19−36と一致するこれらのデータベースの配列を、Phrap(表7)などの構築アルゴリズムを使用して、連続及び重複した配列のクラスターに組み入れた。スタンフォード・ヒトゲノムセンター(SHGC)、ホワイトヘッド・ゲノム研究所(WIGR)、Genethon等の公的な情報源から入手可能な放射線ハイブリッド及び遺伝地図データを用いて、クラスタ化された配列が前もってマッピングされたかを決定した。マッピングされた配列がクラスタに含まれている場合は、個々の配列番号を含めてそのクラスタの全配列が地図上の位置に割り当てられた。
【0341】
地図上の位置は、ヒト染色体の範囲または間隔として表される。センチモルガン間隔の地図上の位置は、染色体のpアームの末端に関連して測定する。(センチモルガン(cM)は、染色体マーカー間の組換え頻度に基づく計測単位である。平均して、1cMは、ヒト中のDNAの1メガベース(Mb)にほぼ等しい。尤も、この値は、組換えのホットスポット及びコールドスポットに起因して広範囲に変化する。)cM距離は、配列が各クラスタ内に含まれるような放射線ハイブリッドマーカーに対して境界を提供するようなGenethonによってマッピングされた遺伝マーカーに基づく。NCBI「GeneMap99」(http://www.ncbi.nlm.nih.gpv/genemap)などの一般個人が入手可能なヒト遺伝子マップおよびその他の情報源を用いて、上記した区間が既に同定されている疾患遺伝子マップ内若しくは近傍に位置するかを決定できる。
【0342】
このようにして、SEQ ID NO:21 はp アームの末端から16.30 センチモルガンの間隔以内で染色体14にマップされ、またSEQ ID NO:23 は57.30 〜65.00 センチモルガンの間隔以内で染色体9にマップされた。SEQ ID NO:25 は、230.70センチモルガンからq末端までの間以内で染色体3にマッピングされた。SEQ ID NO: 25は、114.00〜117.70センチモルガン以内で染色体3に、また、92.50〜99.00センチモルガン以内で染色体5にマッピングされた。SEQ ID NO:26については一つ以上のマップ位置が報告され、異なったマップ位置を持つ配列が、一つのクラスターに構築されたことを示す。極めて類似しているが、完全に同一でない配列が一つのクラスターに構築される場合にこの状態が発生する。
【0343】
7 ポリヌクレオチド発現の分析
ノーザン分析は、転写された遺伝情報の存在を検出するために用いられる実験技術であり、特定の細胞種または組織からのRNAが結合される膜への標識されたヌクレオチド配列のハイブリダイゼーションに関与している。(前出のSambrook, 7章、同Ausubel. F.M. ら, 4章及び16章等を参照。)
【0344】
BLASTに適用する類似のコンピュータ技術を用いて、GenBankやLifeSeq(Incyte Pharmaceuticals)等のヌクレオチドデータベースにおいて同一または関連分子を検索する。ノーザン分析は、多数膜系ハイブリダイゼーションよりも非常に速い。更に、特定の同一を厳密な或いは相同的なものとして分類するか否かを決定するため、コンピュータ検索の感度を変更することができる。検索の基準は積スコアであり、次式で定義される。
【数1】
Figure 2004526414
【0345】
積スコアは、2つの配列間の類似度及び配列が一致する長さの両方を考慮している。積スコアは、0〜100の規準化された値であり、次のようにして求める。BLASTスコアにヌクレオチドの配列一致率を乗じ、その積を2つの配列の短い方の長さの5倍で除する。高スコアリングセグメント対(HSP)に一致する各塩基に+5のスコアを割り当て、各不適性塩基対に−4を割り当てることにより、BLASTスコアを計算する。2つの配列は、2以上のHSPを共有し得る(ギャップにより隔離され得る)。2以上のHSPがある場合には、最高BLASTスコアの塩基対を用いて積スコアを計算する。積スコアは、断片的重畳とBLASTアラインメントの質とのバランスを表す。例えば積スコア100は、比較した2つの配列の短い方の長さ全体にわたって100%一致する場合のみ得られる。積スコア70は、一端が100%一致し、70%重畳しているか、他端が88%一致し、100%重畳しているかのいずれかの場合に得られる。積スコア50は、一端が100%一致し、50%重畳しているか、他端が79%一致し、100%重畳しているかのいずれかの場合に得られる。
【0346】
或いは、DMEをコードするポリヌクレオチド配列は、由来する組織に対して分析する。例えば或る完全長配列は、Incyte cDNA配列(実施例3を参照)と少なくとも一部は重畳するように構築される。各cDNA配列は、ヒト組織から作製されたcDNAライブラリに由来する。各cDNA配列は、ヒト組織から作製されたcDNAライブラリに由来する。各ヒト組織は、以下の生物/組織カテゴリー即ち心血管系、結合組織、消化器系、胎芽構造、内分泌系、外分泌腺、女性生殖器、男性生殖器、生殖細胞、血液及び免疫系、肝、筋骨格系、神経系、膵臓、呼吸器系、感覚器、皮膚、顎口腔系、非分類性/混合性または尿路の1つに分類される。各カテゴリーのライブラリ数を数えて、全カテゴリーの総ライブラリ数で除する。同様に、各ヒト組織は、以下の疾患/病状カテゴリー即ち癌、細胞系、発達、炎症、神経性、外傷、心血管、鬱血、その他の1つに分類される。 各カテゴリーのライブラリ数を数えて、全カテゴリーの総ライブラリ数で除する。得られるパーセンテージは、DMEをコードするcDNAの疾患特異的な発現を反映する。 cDNA配列およびcDNAライブラリ/組織の情報は、LIFESEQ GOLD データベース(Incyte Genomics, Palo Alto CA)から得ることができる。
【0347】
DME をコードするポリヌクレオチドの伸長
完全長のポリヌクレオチド配列もまた、完全長分子の適切な断片から設計したオリゴヌクレオチドプライマーを用いて該断片を伸長させて生成した。一方のプライマーは既知の断片の5’伸長を開始するべく合成し、他方のプライマーは既知の断片の3’伸長を開始するべく合成した。開始プライマーは、長さが約22〜30ヌクレオチド、GC含有率が約50%以上となり、約68〜72℃の温度で標的配列にアニーリングするように、OLIGO 4.06ソフトウェア(National Biosciences)或いは別の適切なプログラムを用いて、cDNAから設計した。 ヘアピン構造及びプライマー−プライマー二量体を生ずるようなヌクレオチドの伸長は全て回避した。
【0348】
配列を伸長するために、選択されたヒトcDNAライブラリを用いた。2段階以上の伸長が必要または望ましい場合には、付加的プライマー或いはプライマーのネステッドセットを設計した。
【0349】
高忠実度の増幅が、当業者によく知られている方法を利用したPCR法によって得られた。 PCRは、PTC−200 サーマルサイクラー(MJ Research, Inc.)を用いて96穴プレート内で行った。反応混合液は、鋳型DNA及び200 nmolの各プライマー、Mg と(NHSOと2−メルカプトエタノールを含むバッファー、Taq DNAポリメラーゼ(Amersham Pharmacia Biotech)、ELONGASE酵素(Life Technologies)、Pfu DNAポリメラーゼ(Stratagene)を含む。 プライマーの組、PCI AとPCI Bに対して以下のパラメータで増幅を行った。ステップ 1:94℃で3分間、ステップ 2:94℃で15秒間、ステップ 3:60℃で1分間、ステップ 4:68℃で2分間、ステップ 5:ステップ2、3及び4を20回繰り返す。ステップ 6:68℃で5分間、ステップ 7:4℃で保存。別法では、プライマー対、T7とSK+に対して以下のパラメータで増幅を行った。ステップ1: 94℃, 3分、 ステップ 2: 94℃, 15 秒、ステップ 3: 57℃, 1 分、ステップ 4: 68℃, 2 分、 ステップ 5: ステップ2、3および 4を20回反復する。 ステップ6: 68℃, 5 分、ステップ7: 4℃で保存する。
【0350】
各ウェルのDNA濃度は、1X TE及び0.5μlの希釈していないPCR産物に溶解した100μlのPICOGREEN定量試薬(0.25(v/v) PICOGREEN; Molecular Probes, Eugene OR)を不透明な蛍光光度計プレート(Coming Costar, Acton MA)の各ウェルに分配してDNAが試薬と結合できるようにして測定する。サンプルの蛍光を計測してDNAの濃度を定量するためにプレートをFluoroskan II (Labsystems Oy, Helsinki, Finland)でスキャンした。反応混合物のアリコート5〜10μlを1%アガロースミニゲル上で電気泳動法によって解析し、どの反応が配列の伸長に成功したかを決定した。
【0351】
伸長させたヌクレオチドは、脱塩及び濃縮して384穴プレートに移し、CviJIコレラウイルスエンドヌクレアーゼ(Molecular Biology Research, Madison WI)を用いて消化し、pUC 18ベクター(Amersham Pharmacia Biotech)への再連結反応前に音波処理またはせん断した。ショットガン・シークエンシングのために、消化したヌクレオチドを低濃度(0.6〜0.8%)のアガロースゲル上で分離し、断片を切除し、寒天をAgar ACE(Promega)で消化した。伸長させたクローンをT4リガーゼ(New England Biolabs, Beverly MA)を用いてpUC 18ベクター(Amersham Pharmacia Biotech)に再連結し、Pfu DNAポリメラーゼ(Stratagene)で処理して制限部位のオーバーハングを満たし、大腸菌細胞に形質移入した。形質移入した細胞を選択して抗生物質を含む培地に移し、それぞれのコロニーを切りとってLB/2Xカルベニシリン培養液の384ウェルプレートにて37℃で一晩培養した。
【0352】
細胞を溶解して、Taq DNAポリメラーゼ(Amersham Pharmacia Biotech)及びPfu DNAポリメラーゼ(Stratagene)を用いて以下の手順でDNAをPCR増幅した。ステップ1: 94℃, 3分、 ステップ 2: 94℃, 15 秒、ステップ 3: 60℃, 1 分、ステップ 4: 72℃, 2 分、 ステップ 5: ステップ2、3および 4を29回反復する。 ステップ6: 72℃, 5 分、ステップ7: 4℃で保存する。上記したようにPICOGREEN試薬(Molecular Probes)でDNAを定量した。DNAの回収率が低いサンプルは、上記と同一の条件を用いて再増幅した。サンプルは20%ジメチルスルホキシド(1:2, v/v)で希釈し、DYENAMIC エネルギートランスファー シークエンシングプライマー、及びDYENAMIC DIRECT kit(Amersham Pharmacia Biotech)またはABI PRISM BIGDYE ターミネーターサイクル シークエンシング反応キット(Terminator cycle sequencing ready reaction kit)(Applied Biosystems)を用いてシークエンシングした。
【0353】
同様に、上記手順を用いて完全長ヌクレオチド配列を検証し、或いはそのような伸長のために設計されたオリゴヌクレオチド及び適切なゲノムライブラリを用いて5’調節配列を得る。
【0354】
9 個々のハイブリダイゼーションプローブの標識及び使用
SEQ ID NO:19−36から導き出されたハイブリダイゼーションプローブを用いて、cDNA、mRNA、またはゲノムDNAをスクリーニングする。約20塩基対からなるオリゴヌクレオチドの標識について特に記載するが、より大きなヌクレオチド断片に対しても事実上同一の手順が用いられる。オリゴヌクレオチドは、OLIGO 4.06ソフトウェア(National Biosciences)等の最新ソフトウェアを用いて設計し、各オリゴマー50pmolと、[γ−32P]アデノシン3リン酸 (Amersham Pharmacia Biotech)250μCiと、T4ポリヌクレオチドキナーゼ(DuPont NEN, Boston MA)を混合することにより標識する。標識したオリゴヌクレオチドは、SEPHADEX G−25超細繊分子サイズ排除デキストラン ビードカラム(Amersham Pharmacia Biotech)を用いて十分に精製する。Ase I、Bgl II、Eco RI、Pst I、Xba1またはPvu II(DuPont NEN)のいずれか1つのエンドヌクレアーゼで消化したヒトゲノムDNAの典型的な膜ベースのハイブリダイゼーション解析において、毎分10カウントの標識されたプローブを含むアリコットを用いる。
【0355】
各消化物から得たDNAは、0.7%アガロースゲル上で分画してナイロン膜(Nytran Plus, Schleicher & Schuell, Durham NH)に移す。ハイブリダイゼーションは、40℃で16時間行う。 非特異的シグナルを除去するため、例えば0.1×クエン酸ナトリウム食塩水及び0.5%ドデシル硫酸ナトリウムに一致する条件下で、ブロットを室温で順次洗浄する。オートラジオグラフィーまたはそれに代わるイメージング手段を用いてハイブリダイゼーションパターンを視覚化し、比較する。
【0356】
10 マイクロアレイ
マイクロアレイ上でアレイエレメントの結合または合成は、フォトリソグラフィ、圧電印刷(インクジェット印刷、前出のBaldeschweiler等を参照)、機械的マイクロスポッティング技術及びこれらから派生したものを用いて達成することが可能である。上記各技術において基板は、均一且つ非多孔性の固体とするべきである(Schena (1999) 前出)。推奨する基板には、シリコン、シリカ、スライドガラス、ガラスチップ及びシリコンウエハがある。或いは、ドットブロット法またはスロットブロット法に類似のアレイを利用して、熱的、紫外線的、化学的または機械的結合手順を用いて基板の表面にエレメントを配置及び結合させてもよい。通常のアレイは、当業者に周知の利用可能な方法や機械を用いて作製でき、任意の適正数のエレメントを有し得る(Schena, M. ら (1995) Science 270:467−470、Shalon. D. ら (1996) Genome Res. 6:639−645、Marshall, A. および J. Hodgson (1998) Nat. Biotechnol. 16:27−31.を参照)。
【0357】
完全長cDNA、発現配列タグ(EST)、またはその断片またはオリゴマーは、マイクロアレイのエレメントと成り得る。ハイブリダイゼーションに好適な断片またはオリゴマーを、レーザGENEソフトウェア(DNASTAR)等の本技術分野で公知のソフトウェアを用いて選択することが可能である。アレイエレメントは、生物学的サンプル中でポリヌクレオチドを用いてハイブリダイズされる。生物学的サンプル中のポリヌクレオチドは、検出を容易にするために蛍光標識またはその他の分子タグに抱合される。ハイブリダイゼーション後、生物学的サンプルからハイブリダイズされていないヌクレオチドを除去し、蛍光スキャナを用いて各アレイエレメントにおいてハイブリダイゼーションを検出する。或いは、レーザ脱離及び質量スペクトロメトリを用いてもハイブリダイゼーションを検出し得る。マイクロアレイ上のエレメントにハイブリダイズする各ポリヌクレオチドの相補性の度合及び相対存在度は、算定し得る。 一実施例におけるマイクロアレイの調整及び使用について、以下に詳述する。
【0358】
組織または細胞サンプルの調製
グアニジウムチオシアネート法を用いて組織サンプルから全RNAを単離し、オリゴ(dT)セルロース法を用いてポリ(A)RNAを精製する。各ポリ(A)RNAサンプルは、MMLV逆転写酵素、0.05pg/μlのオリゴ(dT)プライマー(21mer)、1×第1鎖バッファ、0.03unit/μlのRNアーゼ阻害剤、500μMのdATP、500μMのdGTP、500μMのdTTP、40μMのdTP、40μMのdCTP−Cy3(BDS)またはdCTP−Cy5(Amersham Pharmacia Biotech)を用いて逆転写する。逆転写反応は、GEMBRIGHTキット(Incyte)を用いてポリ(A)RNA含有の25体積ml内で行う。特異的対照ポリ(A)RNAは、非コード酵母ゲノムDNAからin vitro転写により合成する。37℃で2時間インキュベートした後、各反応サンプル(1つはCy3、もう1つはCy5標識)は、2.5mlの0.5M水酸化ナトリウムで処理し、85℃で20分間インキュベートし、反応を停止させてRNAを分解させる。サンプルは、2つの連続するCHROMA SPIN 30ゲル濾過スピンカラム(CLONTECH Laboratories, Inc. (CLONTECH), Palo Alto CA)を用いて精製する。 混合後、2つの反応サンプルは、1mlのグリコーゲン(1mg/ml)、60mlの酢酸ナトリウム及び300mlの100%エタノールを用いてエタノール析出させる。サンプルは次に、SpeedVAC(Savant Instruments Inc., Holbrook NY)を用いて乾燥して仕上げ、14μlの5×SSC/0.2%SDS中で再懸濁する。
【0359】
マイクロアレイの調製
本発明の配列を用いて、アレイエレメントを生成する。各アレイエレメントは、クローン化cDNAインサートによりベクター含有細菌性細胞から増幅する。PCR増幅は、cDNAインサートの側面に位置するベクター配列に相補的なプライマーを用いる。30サイクルのPCRで1〜2ngの初期量から5μgより大きい最終量までアレイエレメントを増幅する。増幅されたアレイエレメントは、SEPHACRYL−400(Amersham Pharmacia Biotech)を用いて精製される。
【0360】
精製したアレイエレメントは、ポリマーコートされたスライドグラス上に固定する。顕微鏡スライドグラス(Corning)は、処理中及び処理後に0.1%のSDS及びアセトン中で超音波をかけ、蒸留水で非常に良く洗って洗浄する。スライドグラスは、4%フッ化水素酸(VWR Scientific Products Corporation (VWR), West Chester PA)中でエッチングし、蒸留水中で広範囲にわたって洗浄し、95%エタノール中で0.05%アミノプロピルシラン(Sigma)を用いてコーティングする。コーティングしたスライドガラスは、110℃のオブンで硬化させる。
【0361】
米国特許第5,807,522号に記載されている方法を用いて、コーティングしたガラス基板にアレイエレメントを付加する。 この特許に引用することを以って本明細書の一部とする。平均濃度が100ng/μlのアレイエレメントDNA1μlを高速機械装置により開放型キャピラリープリンティングエレメント(open capillary printing element)に充填する。装置はここで、スライド毎に約5nlのアレイエレメントサンプルを加える。
【0362】
マイクロアレイには、STRATALINKER UV架橋剤(Stratagene)を用いてUV架橋する。マイクロアレイは、室温において0.2%SDSで1度洗浄し、蒸留水で3度洗浄する。リン酸緩衝生理食塩水 (PBS)(Tropix, Inc., Bedford MA)中の0.2%カゼイン中において60℃で30分間マイクロアレイをインキュベートした後、前に行ったように0.2%SDS及び蒸留水で洗浄することにより、非特異結合部位をブロックする。
【0363】
ハイブリダイゼーション
ハイブリダイゼーション反応は、5×SSC,0.2%SDSハイブリダイゼーション緩衝液中のCy3及びCy5標識したcDNA合成生成物を各0.2μg含む9μlのサンプル混合体を有する。サンプル混合体は、65℃まで5分間加熱し、マイクロアレイ表面上で等分して1.8cm のカバーガラスで覆う。アレイは、顕微鏡スライドより僅かに大きい空洞を有する防水チェンバーに移す。チェンバーのコーナーに140μlの5×SSCを加えることにより、チェンバー内部を湿度100に保持する。アレイを含むチェンバーは、60℃で約6.5時間インキュベートする。 アレイは、第1洗浄緩衝液中(1×SSC,0.1%SDS)において45℃で10分間洗浄し、第2洗浄緩衝液中(0.1×SSC)において45℃で10分間各々3度洗浄して乾燥させる。
【0364】
検出
レポーター標識ハイブリダイゼーション複合体は、Cy3の励起のためには488nm、Cy5の励起のためには632nmでスペクトル線を発生し得るInnova 70混合ガス10 Wレーザ(Coherent, Inc., Santa Clara CA)を備えた顕微鏡で検出する。20×顕微鏡対物レンズ(Nikon, Inc., Melville NY)を用いて、アレイ上に励起レーザ光の焦点を当てる。アレイを含むスライドを顕微鏡のコンピュータ制御のX−Yステージに置き、対物レンズを通過してラスタースキャンする。本実施例で用いた1.8cm×1.8cmのアレイは、20μmの解像度でスキャンした。
【0365】
2つの異なるスキャンのうち、混合ガスマルチラインレーザは2つの蛍光色素を連続的に励起する。発光された光は、波長に基づき分離され、2つの蛍光色素に対応する2つの光電子増倍管検出器(PMT R1477, Hamamatsu Photonics Systems, Bridgewater NJ)に送られる。アレイと光電子増倍管間に設置された好適なフィルターを用いて、シグナルをフィルターする。用いる蛍光色素の最大発光の波長は、Cy3では565nm、Cy5では650nmである。装置は両方の蛍光色素からのスペクトルを同時に記録し得るが、レーザ源において好適なフィルターを用いて、蛍光色素1つにつき1度スキャンし、各アレイを通常2度スキャンする。
【0366】
スキャンの感度は通常、既知濃度のサンプル混合体に添加されるcDNA対照種により生成されるシグナル強度を用いて較正する。アレイ上の特定の位置には相補的DNA配列が含まれ、その位置におけるシグナルの強度をハイブリダイジング種の重量比1:100,000に相関させる。 異なる源(例えば試験される細胞及び対照細胞など)からの2つのサンプルを、各々異なる蛍光色素で標識し、他と異なって発現した遺伝子を同定するために単一のアレイにハイブリダイズする場合には、その較正を、2つの蛍光色素で較正するcDNAのサンプルを標識し、ハイブリダイゼーション混合体に各々等量を加えることによって行う。
【0367】
光電子増倍管の出力は、IBMコンパチブルPCコンピュータにインストールされた12ビットRTI−835Hアナログ−ディジタル(A/D)変換ボード(Analog Devices, Inc., Norwood MA)を用いてディジタル化される。ディジタル化されたデータは、青色(低シグナル)から赤色(高シグナル)までの擬似カラー範囲へのリニア20色変換を用いてシグナル強度がマッピングされたようなイメージとして表示される。データは、定量的にも分析される。2つの異なる蛍光色素を同時に励起及び測定する場合には、各蛍光色素の発光スペクトルを用いて、データは先ず蛍光色素間の光学的クロストーク(発光スペクトルの重なりに起因する)を補正する。
【0368】
グリッドが蛍光シグナルイメージ上に重ねられ、それによって各スポットからのシグナルはグリッドの各エレメントに集められる。各エレメント内の蛍光シグナルは統合され、シグナルの平均強度に応じた数値が得られる。シグナル分析に用いるソフトウェアは、GEMTOOLS遺伝子発現分析プログラム(Incyte)である。
【0369】
11 相補的ポリヌクレオチド
DMEをコードする配列或いはその任意の一部に対して相補的な配列は、天然のDMEの発現を検出、低下、または阻害するために用いられる。約15〜30塩基対を含むオリゴヌクレオチドの使用について記すが、これより小さな或いは大きな配列の断片の場合でも本質的に同じ方法を用いることができる。Oligo4.06ソフトウェア(National Biosciences)及びDMEのコーディング配列を用いて、適切なオリゴヌクレオチドを設計する。転写を阻害するためには、最も独特な5’ 配列から相補的オリゴヌクレオチドを設計し、これを用いてプロモーターがコーディング配列に結合するのを阻害する。翻訳を阻害するためには、相補的なオリゴヌクレオチドを設計して、リボソームがDMEをコードする転写物に結合するのを阻害する。
【0370】
12 DME の発現
DMEの発現及び精製は、細菌若しくはウイルスを基にした発現系を用いて行うことができる。細菌でDMEが発現するために、抗生物質耐性遺伝子及びcDNAの転写レベルを高める誘導性のプロモーターを含む好適なベクターにcDNAをサブクローニングする。このようなプロモーターには、lacオペレーター調節エレメントに関連するT5またはT7バクテリオファージプロモーター及びtrp−lac(tac)ハイブリッドプロモーターが含まれるが、これらに限定するものではない。組換えベクターを、BL21(DE3)等の好適な細菌宿主に形質転換する。抗生物質耐性をもつ細菌が、イソプロピルβ−Dチオガラクトピラノシド(IPTG)で誘発されるとDMEを発現する。真核細胞でのDMEの発現は、昆虫細胞株または哺乳動物細胞株に一般にバキュロウイスルスとして知られているAutographica californica核多面性ウイルス(AcMNPV)を感染させて行う。バキュロウイルスの非必須ポリヘドリン遺伝子を、相同組換え或いは転移プラスミドの媒介を伴う細菌の媒介による遺伝子転移のどちらかによって、DMEをコードするcDNAと置換する。ウイルスの感染力は維持され、強い多角体プロモーターによって高いレベルのcDNAの転写が行われる。組換えバキュロウイルスは、多くの場合はSpodoptera frugiperda(Sf9)昆虫細胞に感染に用いられるが、ヒト肝細胞の感染にも用いられることもある。後者の感染の場合は、バキュロウイルスの更なる遺伝的変更が必要になる。(Engelhard. E. K.ら (1994) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91:3224−3227、Sandig, V. ら (1996) Hum. Gene Ther. 7:1937−1945.等を参照)。
【0371】
殆どの発現系では、DMEが、例えばグルタチオンSトランスフェラーゼ(GST)、またはFLAGや6−Hisなどのペプチドエピトープ標識で合成された融合タンパク質となるため、未精製の細胞溶解物からの組換え融合タンパク質の親和性ベースの精製が素早く1回で行うことができる。GSTは日本住血吸虫からの26kDaの酵素であり、タンパク質の活性及び抗原性を維持した状態で、固定化グルタチオン上で融合タンパク質の精製を可能とする(Amersham Pharmacia Biotech)。精製の後、GST部分を特定の操作部位でDMEからタンパク分解的に切断できる。FLAGは8アミノ酸のペプチドであり、市販されているモノクローナル及びポリクローナル抗FLAG抗体(Eastman Kodak)を用いて免疫親和性精製を可能にする。6ヒスチジン残基が連続して伸長した6−Hisは、金属キレート樹脂(QIAGEN)上での精製を可能にする。タンパク質の発現及び精製の方法は、前出のAusubel(1995)10章、16章に記載されている。これらの方法で精製したDMEを直接用いて以下の実施例16、17、及び18のアッセイを行うことができる。
【0372】
13 機能的アッセイ
DMEの機能は、哺乳動物細胞培養系において生理学的に高められたレベルでのDMEをコードする配列の発現によって評価する。 cDNAを、cDNAを高いレベルで発現する強いプロモーターを含む哺乳動物発現ベクターにサブクローニングする。選択ベクターには、pCMV SPORTプラスミド(Life Technologies)及びpCR 3.1プラスミド(Invitrogen)が含まれ、どちらもサイトメガロウイルスプロモーターを有する。リポソーム製剤或いは電気穿孔法を用いて、5〜10μgの組換えベクターをヒト細胞株、例えば内皮由来または造血由来の細胞株に一過的に形質移入する。更に、標識タンパク質をコードする配列を含む1〜2μgのプラスミドを同時に形質移入する。標識タンパク質の発現により、形質移入細胞と非形質移入細胞を区別する手段が与えられる。 また、標識タンパク質の発現によって、cDNAの組換えベクターからの発現を正確に予想できる。標識タンパク質は、例えば緑色蛍光タンパク質(GFP;Clontech)、CD64またはCD64−GFP融合タンパク質から選択できる。自動化された、レーザー光学に基づく技術であるフローサイトメトリー(FCM)を用いて、GFPまたはCD64−GFPを発現する形質移入された細胞を同定し、その細胞のアポトーシス状態や他の細胞特性を評価する。FCMは、細胞死に先行するか或いは同時に発生する現象を診断する蛍光分子の取込を検出して計量する。このような現象として挙げられるのは、プロピジウムヨウ化物によるDNA染色によって計測される核DNA内容物の変化、前方光散乱と90°側方光散乱によって計測される細胞サイズと顆粒状性の変化、ブロモデオキシウリジンの取込量の低下によって計測されるDNA合成の下方調節、特異抗体との反応性によって計測される細胞表面及び細胞内におけるタンパンク質の発現の変化、及び蛍光複合アネキシンVタンパク質の細胞表面への結合によって計測される原形質膜組成の変化とがある。フローサイトメトリー法については、Ormerod, M. G. (1994) Flow Cytometry Oxford, New York, NY.に記述がある。
【0373】
遺伝子発現におけるDMEの影響は、DMEをコードする配列とCD64またはCD64−GFPのどちらかが形質移入された高度に精製された細胞集団を用いて評価することができる。CD64またはCD64−GFPは、形質転換された細胞表面で発現し、ヒト免疫グロブリンG(IgG)の保存領域と結合する。形質転換された細胞と形質転換されない細胞とは、ヒトIgGかCD64に対する抗体のどちらかで被覆された磁気ビードを用いて分離することができる(DYNAL. Lake Success. NY)。 mRNAは、当分野で周知の方法で細胞から精製することができる。 DME及び目的の他の遺伝子をコードするmRNAの発現は、ノーザン分析やマイクロアレイ技術で分析することができる。
【0374】
14 DME に特異的抗体の作製
ポリアクリルアミドゲル電気泳動法(PAGE;例えば、Harrington, M.G. (1990) Methods Enzymol. 1816−3088−495を参照)または他の精製技術で実質的に精製されたDMEを用いて、標準的なプロトコルでウサギを免疫化して抗体を作り出す。別法では、DMEアミノ酸配列をLASERGENEソフトウェア(DNASTAR)を用いて解析して免疫原性の高い領域を決定し、対応するオリゴペプチドを合成してこれを用いて当業者に周知の方法で抗体を生産する。 C末端付近の、或いは隣接する親水性領域内のエピトープなどの適切なエピトープの選択については、当分野で周知である(例えば、前出のAusubel, 1995,11章を参照)。
【0375】
通常は、長さ約15残基のオリゴペプチドを、Fmocケミストリを用いるABI 431A ペプチドシンセサイザ(Applied Biosystems)を用いて合成し、N−マレイミドベンゾイル−N−ヒドロキシスクシンイミドエステル(MBS)を用いた反応によってKLH(Sigma−Aldrich, St. Louis MO)に結合させて、免疫原性を高める(前出のAusubel, 1995 等を参照)。完全フロイントアジュバントにおいてオリゴペプチド−KLH複合体を用いてウサギを免疫化する。得られた抗血清の抗ペプチド活性及び抗DME活性を検査するには、ペプチドまたはDMEを基板に結合し、1%BSAを用いてブロッキング処理し、ウサギ抗血清と反応させて洗浄し、さらに放射性ヨウ素標識されたヤギ抗ウサギIgGと反応させる。
【0376】
15 特異的抗体を用いた天然 DME の精製
天然DME或いは組換えDMEを、DMEに特異的な抗体を用いるイムノアフィニティークロマトグラフィにより実質的に精製する。イムノアフィニティーカラムは、CNBr−活性化SEPHAROSE(Amersham Pharmacia Biotech)のような活性化クロマトグラフィー用レジンと抗DME抗体とを共有結合させることにより形成する。結合後に、製造者の使用説明書に従って樹脂をブロックし、洗浄する。
【0377】
DMEを含む培養液をイムノアフィニティーカラムに通し、DMEを優先的に吸着できる条件で(例えば、界面活性剤の存在下で高イオン強度のバッファーで)そのカラムを洗浄する。そのカラムを、抗体とDMEとの結合を切るような条件で(例えば、pH2〜3のバッファー、或いは高濃度の尿素またはチオシアン酸塩イオンのようなカオトロピックイオンで)溶出させ、DMEを回収する。
【0378】
16 DME と相互作用する分子の同定
CYAPまたは生物学的に活性であるCYAP断片を、125Iボルトンハンター試薬で標識する。(例えば Bolton A.E. and W.M. Hunter (1973) Biochem. J. 133:529−539を参照。)マルチウェルプレートに予め配列しておいた候補の分子を、標識したDMEと共にインキュベートし、洗浄して、標識したDME複合体を有する全てのウェルをアッセイする。様々なDME濃度で得られたデータを用いて、候補分子と結合したDMEの数量及び親和性、会合についての値を計算する。
【0379】
別法では、DMEと相互作用する分子を、Fields, S.及びO. Song(1989, Nature 340:245−246)に記載の酵母2−ハイブリッドシステム(yeast two−hybrid system)やMATCHMAKERシステム(Clontech)などの2−ハイブリッドシステムに基づいた市販のキットを用いて分析する。
【0380】
DMEはまた、ハイスループット型の酵母2ハイブリッドシステムを使用するPATHCALLINGプロセス(CuraGen Corp., New Haven CT)に用いて、遺伝子の2つの大きなライブラリによってコードされるタンパク質間の全ての相互作用を決定することができる(Nandabalan, K. 他 (2000) 米国特許第6,057,101号)。
【0381】
17 DME 活性の実証
DMEのチトクロームP450活性はアニリンの4−ヒドロキシル化を用いて測定する。アニリンは酵素によって4−アミノフェノールに変換され、630nmで最大吸光度を有する(Gibson および Skett、前出)。このアッセイは便利な測定ではあるが、2− および3−位置でも発生する全ヒドロキシル化が過小評価される。アッセイは37℃で行い、反応緩衝液には一定分量の酵素および適量のアニリン(約2mM)が含まれる。この反応の場合、緩衝液にNADPH またはNADPH産生補助因子系を入れる必要がある。この反応緩衝液の一つの処方には85 mM トリスpH 7.4、15 mM 塩化マグネシウム、 50 mM ニコチン酸アミド、40 mgイソクエン酸三ナトリウムおよび 2 単位のイソクエン酸デヒドロゲナーゼが含まれ、アッセイの直前に10mLの反応緩衝液ストックに8mgのNADP を加える。反応は光学キュベットで行い、630nmの吸光度を測定する。このアッセイでは、吸光度の増加率が酵素活性に比例する。標準曲線は4−アミノフェノールの既知濃度を用いて作成できる。
【0382】
DMEの1α,25−ジヒドロキシビタミンD24−ヒドロキシラーゼ活性は、DMEを発現する遺伝子組換えラットにおけるH標識された1α,25−ジヒドロキシビタミンD(1α,25(OH)D)の24,25−ジヒドロキシビタミンD(24,25(OH)D)への変換をモニタリングして決定する。エタノールに溶解した1μgの1α,25(OH)D(或いはコントロールとしてエタノールのみ)を、DMEの欠損変異体を発現する若しくはDMEを発現しないという点を除けばコントロールラットと同一のDMEを発現する約6週目のオス遺伝子組換えラットに静脈内投与する。ラットを8時間後に断頭により屠殺し、腎臓を手早く取り除き、洗浄し、9倍量の氷冷バッファ(15mM Tris−acetate(pH7.4)、0.19Mスクロース、2mM酢酸マグネシウム、および5mMコハク酸ナトリウム)においてホモジナイズする。次に、各ホモジネートの所定量(例えば3ml)を、約3.5GBq/mmolの特定の活性を有する0.25nM 1α,25(OH)[1−H]Dと、常に振盪しながら酸素存在下、37℃で、15分間インキュベートする。総脂質を記載 (Bligh, E.G. 及びW.J. Dyer (1959) Can. J. Biochem. Physiol. 37: 911917) された通りに抽出し、流速1 ml/分にてnヘキサン/クロロホルム/メタノール (10:2.5:1.5) 溶媒系を用いたFINEPAK SIL カラム(JASCO, 東京都) によってクロロホルム相を分析する。あるいは、1ml/分の流速にてアセトニトリルバッファ系(40 〜100%、水中 、30分) を用いたJ SPHERE ODSAM カラム (YMC Co. Ltd.、京都市) を使って逆相HPLCによってクロロホルム相を分析する。この溶出物は30秒(またはそれ以下)分画にて集め、各分画中に存在するH の量をシンチレーションカウンターを用いて測定する。コントロールサンプル(すなわち、1α,25−ジヒドロキシビタミンDまたは24,25−ジヒドロキシビタミンD(24,25(OH)D)を含むサンプル)のクロマトグラムと反応生成物のクロマトグラムとを比較することによって、基質(1α,25(OH)[1H]D) および生成物(24,25(OH)[1−H]D)の相対的な移動度は測定され、また、集めた容量と相関する。コントロールラットにおいて生成された24,25(OH)[1−H]Dの量を、DMEを発現する遺伝子組換えラットの24,25(OH)[1−H]Dの量から差し引く。遺伝子組換えラットとコントロールラットとの24,25(OH)[1−H]Dの生成物の差が、そのサンプルに存在するDMEの25−ヒドラーゼ活性のレベルに比例する。基質および生成物の同定は、質量分光法によって行う(Miyamoto, Y.他(1997) J. Biol. Chem. 272:14115−14119)。
【0383】
DMEのフラビン含有モノオキシゲナーゼ活性は代謝産物のクロマトフラフィー分析によって測定される。例えば、Ring, B.J. ら (1999; Drug Metab. Dis. 27:1099−1103) は0.1 M リン酸ナトリウムバッファ(pH 7.4 または8.3) と 1 mM NADPH 中、37℃でフラビン含有モノオキシゲナーゼをインキュベートし、反応を有機溶媒で停止させ、 HPLCによって生成物生成を同定する。あるいは、活性はクラーク型電極を用いて酸素の取り込みをモニタリングして測定する。例えば、Ziegler, D.M. と Poulsen, L.L. (1978; Methods Enzymol. 52:142−151) は、基質メチマゾールを含むNADPH生成補助因子系(上記のものに類似の)において、酵素を37℃でインキュベートした。酸素取込み率は酵素活性に比例する。
【0384】
DMEのUDPグルクロニルトランスフェラーゼ活性は遊離アミン基の比色定量測定を用いて測定される(Gibson 及び Skett, 前出)。2−アミノフェノールのようなアミン含有基質は必要な補助因子(40 mM Tris pH 8.0、 7.5 mM MgCl、 0.025% Triton X−100、1 mM アスコルビン酸、0.75 mM UDP−グルクロン酸)を含む反応緩衝液中でアリコートの酵素と37℃にてインキュベートする。十分な時間の後、0.1 M リン酸バッファ pH 2.7中で氷冷の20% トリクロロ酢酸を加えて反応を停止し、氷上でインキュベートし、遠心分離して、上清を明らかにする。未反応の2−アミノフェノールはこのステップによって分解される。次に、新たに調製した十分な硝酸ナトリウムを加える。このステップによって、グルクロン酸抱合生成物のジアゾニウム塩が生成される。過剰の亜硝酸塩は十分なアンモニウムサルファメートを加えることによって取り除く、また、ジアゾニウム塩は芳香族アミン(例えば、N−ナフチルエチレンジアミン)と反応して、有色のアゾ化合物を生成する。この化合物は分光光度的に(例えば、540 nmで)定量できる。標準曲線は既知の濃度のアニリンを用いて作成することができる。アニリンは2−アミノフェノールグルクロニドに類似の性状を有する発色団を形成する。
【0385】
DME のグルタチオン S−トランスフェラーゼ活性は、例えば、2,4−ジニトロ−1−クロロベンゼンのようなモデル基質を用いて測定されるが、2,4−ジニトロ−1−クロロベンゼンは、グルタチオンと反応して生成物、2,4−ジニトロフェニル−グルタチオンを形成する。この生成物は340 nmで最高の吸光度を有する。GSTは種々の基質特異性を有することに注意することが重要であり、モデル基質は目的のGSTの基質優先度に基づいて選択する必要がある。アッセイは室温で行い、好適な反応バッファ(例えば、1 mM グルタチオン、 1 mM ジニトロクロロベンゼン、90 mM リン酸カリウムバッファ、pH 6.5)中でアリコートの酵素を含める。反応は光学キュベットで行い、340nmの吸光度を測定する。このアッセイでは、吸光度の増加率が酵素活性に比例する。
DME のN−アシルトランスフェラーゼ活性は、放射標識されたアミノ酸基質を用いて、放射標識の抱合型生成物への取り込みを測定することによって測定される。非標識アシル−CoA 化合物と放射標識アミノ酸を含む反応緩衝液中で酵素をインキュベートし、放射標識アシル抱合体はn−ブタノールまたは他の適切な有機溶媒に抽出することによって未反応のアミノ酸から分離する。例えば、Johnson, M. R ら (1990; J. Biol. Chem. 266:10227−10233) は、胆汁酸CoA:アミノ酸N−アシルトランスフェラーゼ活性を測定した。すなわち、酵素をcholyl−CoA とH−グリシンまたは、 H−タウリンとインキュベートし、n−ブタノールに抽出することによってトリチウム化コール酸抱合体を分離し、抽出産物中の放射活性をシンチレーションで測定する。あるいは、N−アシルトランスフェラーゼ活性は次に述べるように、還元されたCoA (CoASH) の分光光度法を用いて測定される。
【0386】
DME のN−アシルトランスフェラーゼ活性は[14C]アセチル−CoA から基質分子への放射標識の転移を用いて測定される(Deguchi, T. (1975) J. Neurochem. 24:1083−5等を参照)。あるいは、DTNB (5,5’−ジチオ−ビス(2−ニトロ安息香酸; Ellman試薬) のCoASHとの反応に基づいた分光光度測定を用いることができる。N−アセチルトランスフェラーゼによって触媒される、アセチル基の基質への転移反応の際に遊離チオール含有CoASH が生成される。CoASH はDTNB 抱合体の412 nm における吸光度を用いて検出される(De Angelis, J. 他 (1997) J. Biol. Chem. 273:3045−3050)。酵素活性は放射活性の基質への取り込み率に比例するか、あるいは、分光光度測定における吸光度の増加率に比例する。
【0387】
別の例では、ABBR のヒストンアセチルトランスフェラーゼ活性は、組換えアフリカツメガエルヒストンH32 H42 四量体(100 μg/ml)、HeLa 細胞(100 μg/ml)から精製されたヒトヒストン H2A H2B および23 pmol [H]−アセチル補酵素 A (11.2 Ci/mmol) の混合物を12.5 μl の緩衝液(pH 8.5の25 mM TrisHCl、1 mM ジチオスレイトール、 0.5 mM EDTA、5 mM ナトリウム酪酸、 150 mM NaClおよび10% グリセロール) 中、37℃にて1時間インキュベートしたものを用いて測定する。ヒストンはSDS−18%ポリアクリルアミドゲル中で分解し、クーマシーブリリアントブルー色素で染色して視覚化し、蛍光光度分析を行った後、オートラジオグラフィーを行う。
染色によって視覚化されたヒストンの位置に対応する放射活性バンドによって、標識がアセチル化によって特定のヒストン基質への取り込まれたことが示される。
【0388】
DMEのタンパク質アルギニンメチルトランスフェラーゼ活性を37℃で様々な時間にわたって測定する。SアデノシルL[メチルH]メチオニン ([H]AdoMet; 特異的活性 = 75 Ci/mmol; NEN Life Science Products) はメチル基供与基質として用いられる。有用なメチル受容基質にはグルタチオンS−トランスフェラーゼフィブリラリングリシン−アルギニンドメイン融合タンパク質(GST_−GAR)、異種核リボ核タンパク質(hnRNP)または、アデノシンジアルデヒドで処理した細胞からの可溶化液中に存在する低メチル化タンパク質が含まれる。メチル化反応はSDSPAGE サンプルバッファーを加えると停止する。反応の産物はSDSPAGE によって分解され、蛍光光度分析によって視覚化される。H標識メチル供与基質の存在は、DMEのタンパク質アルギニンメチルトランスフェラーゼ活性の標示となる(Tang, J. ら. (2000) J. Biol. Chem. 275:77237730 および Tang, J. ら(2000) J. Biol. Chem.275:1986619876)。
DMEのカテコール−O−メチルトランスフェラーゼ活性を、50mM Tris−HCl (pH7.4)、1.2mM MgCI 200μM SAM (S−アデノシル−L−メチオニン) ヨウ化物(0.5μCiのメチル−[H]SAMを含む)、1mMジチオスレイトール、および様々な濃度のカテコール基質(例えば、L−ドパ、ドーパミン、またはDBA)から成る最終容量が1.0mlの反応液において測定する。この反応は、精製したDMEまたは未精製のDMEを含むサンプル250〜500μgを加えて開始し、37℃で30分間行った。 この反応は、氷上で素早く冷却して停止させ、直後に氷冷n−ヘプタンで抽出する。次に10分間1000×gで遠心分離した後、液体シンチレーションカウンタで有機抽出物の3 mlのアリコットをその中に含まれている放射活性について分析した。有機相におけるカテコール関連放射活性のレベルはDMEのカテコール−O−メチルトランスフェラーゼ活性に比例する(Zhu, B. T. 及びLiehr, J. G. (1996) 271:1357−1363)。
【0389】
DMEのDHFR活性を、340nm (ε340 = 11,800 M−1・cm−1)においてNADPHの消滅によって15℃で分光光度法で測定する。標準的なアッセイ混合液は、100μM NADPH、14mM 2−メルカプトエタノール、MTEN バッファ(50mM 2−モルフォリノエタンスルホン酸、25 mM トリス(ヒドロキシメチル)エミノメタン、25mMエタノールアミン、および100mM NaCl、pH7.0)とDMEを含み、最終容量を2.0mlとする。反応は50μmのジヒドロ葉酸(基質として)を加えることによって開始される。反応液におけるNADPHのNADPへの酸化がジヒドロ葉酸の還元に一致し、サンプルにおけるDHFR活性の量に比例する(Nakamura, T.およびIwakura, M. (1999) J. Biol. Chem. 274:19041−19047)。
【0390】
DMEのアルド/ケト還元酵素活性を、NADPHが消費される時の340nmにおける吸光度の低下を測定する。標準的な反応混合液は、135mMのリン酸ナトリウム緩衝液(酵素によりpH6.2〜7.2の範囲)、0.2mM NADPH、0.3M硫酸リチウム、0.5〜2.5μg酵素、および好適なレベルの基質を含む。この混合液を30℃でインキュベートし、反応を分光光度計で連続的に測定する。酵素活性は、酵素1mg 当たり消費されるNADPHのモル数として計算される。
【0391】
DMEのアルコールデヒドロゲナーゼ活性を、NADがNADHに還元される時の340nmにおける吸光度の増大を利用して測定する。標準的な反応混合液は、50mMのリン酸ナトリウム、pH7.5、および0.25mM EDTAである。反応液を25℃でインキュベートし、分光光度計でモニタリングする。酵素活性は、酵素1mg当たり生成されたNADHのモル数として計算する。
【0392】
DMEのカルボキシルエステラーゼ活性は、4−メチルウンベルフェリルアセテートを基質として用いて測定する。酵素反応は約10 μlの DME含有サンプルを 0.5 mM の4メチルウンベルフェリルアセテートとともに、1mlの反応緩衝液(90 mM KHPO、40 mM KCl、 pH 7.3) に加えると開始する。4−メチルウンベリフェロンの生成を分光光度計(ε350 = 12.2 mM−1 cm−1) で1.5分間モニターする。特異的活性は蛋白質1mgにつき、一分間に生成される生成物のミクロモルとして発現され、サンプル中のDMEの活性に相当する(Evgenia, V. 他 (1997) J. Biol. Chem. 272:1476914775)。
【0393】
別法では、DMEのコカインベンゾイルエステルヒドロラーゼ活性は、約0.1mlのDMEおよび3.3 mM のコカインを、1mM benzamidineおよび1mM EDTAおよび1mMジチオスレイトールを含む反応緩衝液(50mM NaHPO, pH7.4)で37℃でインキュベートして測定する。 全量で0.4mlの反応液を1時間インキュベートし、反応は等量の5%トリクロロ酢酸で終了させる。0.1mlの内部標準3,4ジメチル安息香酸(10 μg/ml) を加える。沈澱タンパク質は12,000 × g で10分間遠心分離して分離する。上澄はきれいな試験管に移して、0.4mlの塩化メチレンで2回抽出する。2つの抽出液を合わせて、窒素流下で乾燥する。この残留物を、100 ml当たり8μ1のジエチルアミンを含む14%アセトニトリル、250mM KHPO pH4.0に再懸濁してから、C18逆相HPLCカラム上に注入して分離する。このカラム溶出液を235nmでモニタリングする。DME 活性は内部標準に対する分析物の最高域の割合を比べて定量する。標準曲線は、トリクロロ酢酸処理のタンパク質基質において調製された安息香酸標準を用いて作成する。
【0394】
別法では、水溶性基質のパラニトロフェニル酪酸に対するDMEカルボキシルエステラーゼ活性を当分野で周知の分光光度計法で測定する。この方法では、DME含有サンプルを、6mMのタウロコール酸塩の存在下で0.5 M トリスHCl (pH 7.4または8.0)または酢酸ナトリウム(pH 5.0) で希釈する。このアッセイは新たに調製されたパラ−ニトロフェニル酪酸溶液(pH 5.0の酢酸ナトリウム中100 μg/ml )を加えることによって開始される。次に、カルボキシエステラーゼ活性をモニターして、405 nm に設定した分光光度計でコントロールの自己加水分解の基質と比較する(Wan, L. et al. (2000) J. Biol. Chem. 275:1004110046)。
【0395】
DME のスルホトランスフェラーゼ活性は[35S]PAPS からフェノールのようなモデル基質への35S の取り込みを用いて測定する(Folds, A. 及び J. L. Meek (1973) Biochim. Biophys. Acta 327:365−374)。アリコートの酵素は 1 mL の10 mMリン酸緩衝液、 pH 6.4の50 mM フェノールおよび、 0.4−4.0 mM [35S] アデノシン3’−ホスフェート5’−ホスホサルフェート (PAPS)とともに37℃でインキュベートする。5−20% の放射標識が基質に転移するのに十分な時間の後、0.2 mL の0.1 M 酢酸バリウムを加えてタンパク質とリン酸緩衝液を沈澱させる。次に、0.2 mL の 0.1 M Ba(OH) を加え、続いて、0.2 mLの ZnSOを加える。遠心分離によってタンパク質および未反応の[35S]PAPSを除去し、上澄を分離させる。上澄の放射活性はシンチレーションによって測定する。この酵素活性は反応生成物の放射活性のモル数から決まる。
DMEのへパラン硫酸6−スルホトランスフェラーゼ活性を、DMEを含むサンプルを、2.5μmolイミダゾールHC1 (pH6.8)、3.75μgの塩化プロタミン(protamine chloride)、25nmolの完全に脱硫酸化されN−再硫酸化されたヘパリン(ヘキソサミンとして)、および50pmol (約 5×10cpm)の[35S] PAPSと共に最終反応容量を50μlとして37℃で20分間インキュベートし、in vitroで測定する。 この反応は、熱湯に反応チューブを1分間浸漬して停止させる。 0.1μmolのコンドロイチン硫酸A(グルクロン酸として)を反応混合液にキャリアとして加える。35S標識多糖を、1.3%酢酸カリウムを含む冷却した三倍量のエタノールで沈殿させ、脱塩カラムを用いてゲルクロマトグラフフィによって取り込まれなかった[35S]PAPSおよびその分解生成物から完全に分離する。一単位の酵素活性を1分間に1pmolの硫酸を移送するのに必要な量と定義し、沈殿した多糖の中に取り込まれた[35S]PAPSの量によって測定する(Habuchi, H.他 (1995) J. Biol.. Chem. 270:4172−4179)。
【0396】
別法では、DMEのへパラン硫酸6−スルホトランスフェラーゼ活性を、ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動法(SDS−PAGE)によって分離した後、ゲルから酵素を抽出して再生し測定する。分離した後、ゲルを緩衝液(0.05M Tris−HCl, pH8.0)で洗浄し、3〜5mmのセグメントに切断し、0.15M NaCIを含む同じ緩衝液、100μlで4℃で48時間撹拌する。 溶出した酵素を遠心分離して収集し、上記したように、スルホトランスフェラーゼ活性についてアッセイする(Habuchi, H.他(1995) J. Biol. Chem. 270:4172−4179)。
【0397】
別法では、DMEのスルホトランスフェラーゼ活性を、[35S]PAPSから固定されたペプチドへの[35S]硫酸の転移を測定して決定する。 この固定されたペプチドは、C末端システイン残基が付加された成熟P−セレクチン糖タンパク質リガンド−1ポリペプチドのN末端の15残基である。このペプチドは3つの潜在的なチロシン硫酸化部位に渡っている。このペプチドは、システイン残基によってヨードアセトアミド活性化樹脂に結合される(1mlの樹脂あたり1.5〜3.0μmolペプチドの密度)。この酵素アッセイは、40mM Pipes (pH6.8)、0.3M NaCl、20mM MnCl 50mM NaF、1%Triton X−100、および1mM 5’−AMPを含む最終容量130μl中にて、10μlのペプチド誘導体化ビーズと2〜20μlのDME含有サンプルを結合させて行った。このアッセイは、0.5μCiの[35S]PAPS (1.7μM; 1Ci = 37GBq)を加えて開始した。37℃で30分経過した後に、反応ビーズを65℃で6Mグアニジンで洗浄し、ビーズに取り込まれた放射活性を液体シンチレーションカウンタで測定する。ビーズ結合ペプチドに移送された[35S]硫酸を測定し、サンプルにおけるDME活性を決定する。1単位の活性は1分間に1pmolの生成物が生成されると定義する(Ouyang, Y−B.他 (1998) Biochemistry 95:2896−2901)。
【0398】
別法では、DMEスルホトランスフェラーゼのアッセイを、50mM Hepes−NaOH (pH7.0)、250mM スクロース、1mMジチオスレイトール、14μM[35S]PAPS (15Ci/mmol)、およびドーパミン(25μM),ρ−ニトロフェノール(5μM)またはその他の候補基質を含む最終容量30μlにおいて硫酸供与体として[35S]PAPSを用いて行った。アッセイの反応は、精製されたDME酵素試薬或いはDME活性を含むサンプルを加えて開始させ、その反応を37℃で15分間続け、100℃で3分間加熱して停止させる。 生成された沈降物を遠心分離によって除去する。次に35S硫酸化物を調べるために、上澄みを薄層クロマトグラフィ或いは二次元薄膜分離方法のいずれかによって分析する。35S硫酸化物の同定ができるように好適な標準を上澄みと平行に流し、反応性生物の移動の相対速度に基づいてDME含有サンプルの酵素特異性を決定する(Sakakibara, Y.他 (1998) J. Biol. Chem. 273:6242−6247)。
【0399】
DMEのスクアレンエポキシラーゼ活性を、精製したDME (またはDMEを含む未精製の混合液), 20mM Tris−HCl (pH7.5)、0.01mM FAD、0.2単位のNADPH−チトクロームC (P−450)レダクターゼ、0.01 mM[l4C]スクアレン(20μlのTween 80を用いて拡散された)、および0.2Triton X−100を含む混合液においてアッセイする。 1mM NADPHを加えて反応を開始させ、37℃で30分間インキュベートする。 非けん化脂質を、酢酸エチル/ベンゼン(0.5:99.5, v/v)で作製したシリカゲルTLCによって分析する。反応生成物を、DMEを含まない反応混合液による反応生成物と比較する。2,3(S)−オキシドスクアレンの存在を、好適な脂質標準を用いて確認する(Sakakibara, J.他(1995) 270:17−20)。
【0400】
DME のエポキシドヒドロラーゼ活性は、エーテル抽出物のガスクロマトグラフィー分析(GC) を用いて基質の消失によって測定するか、またはアセトンで急冷した反応混合物のGC分析により基質の消失とジオール生成によって測定する。DMEを含むサンプルまたはエポキシドヒドロラーゼのコントロールサンプルを10 mM Tris−HCl (pH 8.0)、1 mM エチレンジアミン四酢酸 (EDTA)、および 5 mM エポキシド基質 (例えば、エチレンオキシド、スチレンオキシド、プロピレンオキシド、イソプレンモノオキシド、エピクロロヒドリン、エピブロモヒドリン、エピフルオロヒドリン、グルシドール 、 1,2エポキシブタン、1,2エポキシヘキサン、1,2エポキシオクタン)でインキュベートする。様々な時点でサンプルの一部を反応混合液から取り出して、内部標準を含む1mlの氷冷アセトンに加えてGC分析を行う(例えば、1−ノナノール)。タンパク質および塩を遠心分離(15分、4000×g)によって除去し、抽出物を0.2mm×25m CP−Wax57−CBカラム(CHROMPACK, Middelburg, The Netherlands)および水素炎イオン化検出器を用いてGCにより分析する。GC産物の同定は、当分野で周知の好適な標準およびコントロールを用いて行う。 1単位のDME活性は、1分間に1μmolのジオール生成を触媒する酵素の量と定義する(Rink, R.他(1997) J. Biol. Chem. 272:14650−14657)。
【0401】
DMEのアミノトランスフェラーゼ活性は、DMEを含むサンプルを、1mM L−キヌレニンおよび1mM 2−オキソグルタル酸の存在下で、最終容量200μlの70μM PLPを含む150mM Tris 酢酸バッファ(pH8.0)で37℃で1時間インキュベートしてアッセイする。キヌレニン酸の生成は、当分野で周知の好適な標準およびコントロールを用いて330nmで分光光度検出によりHPLCで定量する。 別法では、L−3−ヒドロキシキヌレニンを基質として用い、キサンツレン酸の生成を340nmでのUV検出で生成物のHPLC分析により測定する。キヌレニン酸およびキサンツレン酸の生成はそれぞれ、アミノトランスフェラーゼ活性を示す(Buchli, R.他(1995) J. Biol. Chem. 270:29330−29335)。
【0402】
別法では、DMEのアミノトランスフェラーゼ活性の測定は、酵素結合補助因子であるピリドキサール5’−リン酸(PLP)のUV/VIS吸収スペクトルにおける変化をモニタリングして、一回のターンオーバーの条件下で精製したDMEのサンプル或いはDMEを含む未精製のサンプルの様々なアミノ酸およびオキソ酸基質に対する活性を測定して行う。この反応は、9μM 精製DME またはDME含有サンプルおよび検査する基質(アミノ酸およびオキソ酸基質)を含む50mM4−メチルモルフォリン(pH7.5)において25℃で行う。アミノ酸からオキソ酸への半反応の後に、酵素結合PLPのピリドキサミン5’リン酸(PMP)への変換により生じる360nmにおける吸光度の低下および330nmにおける吸光度の増加を測定する。DMEの特異性および相対的な活性を、特定の基質に対する酵素活性によって測定する(Vacca, R. A.他 (1997) J. Biol. Chem. 272:21932−21937)
【0403】
DMEのスーパーオキシドジスムターゼ活性を、細胞ペレット、培養した上澄み、または精製したタンパク質試薬からアッセイする。サンプルすなわち溶解物を15%非変性ポリアクリルアミドゲル上での電気泳動法によって分離する。このゲルを、2.5mMニトロブルーテトラゾリウムにおいて30分間インキュベートし、その後30mMリン酸カリウム、30mM TEMED、および30μMリボフラビン(pH7.8)において20分間インキュベートする。スーパーオキシドジスムターゼ活性は、背景のブルーに対して白いバンドとして見ることができ、ライトボックスでゲルに照明を当てる。スーパーオキシドジスムターゼ活性の定量は、好適なスーパーオキシドジスムターゼのポジティブおよびネガティブコントロール(例えば、様々な量の市販されている大腸菌スーパーオキシドジスムターゼなど)を用いて活性ゲルの比重走査により行う(Harth, G.およびHorwitz, M. A. (1999) J. Biol. Chem. 274:4281−4292)。
【0404】
18 DME インヒビターの同定
実施例17のアッセイで説明したように、検査する化合物を、好適なバッファーおよび基質と共に様々な濃度でマルチウェルプレートのウェルに注入する。DME 活性はそれぞれのウェルについて測定し、DME活性を阻害するそれぞれの化合物の能力および用量反応動態(dose−response kinetics)を決定することができる。DME活性を促進する分子の同定にも、このアッセイを用いることができる。
【0405】
当業者は、本発明の範囲及び精神から逸脱することなく本発明に記載した方法及びシステムの種々の改変を行い得る。本発明について説明するにあたり特定の好適実施例に関連して説明を行ったが、本発明の範囲が、そのような特定の実施例に不当に制限されるべきではないことを理解されたい。実際に、分子生物学または関連分野の専門家には明らかな、本明細書に記載されている本発明の実施方法の様々な改変は、特許請求の範囲内にあるものとする。
【0406】
(表の簡単な説明)
表1は、本発明の完全長ポリヌクレオチド配列及びポリペプチド配列の命名法の概略を示す。
【0407】
表2は、GenBank識別番号及び本発明のポリペプチドに最も近いGenBank相同体の注釈を示す。各ポリペプチドとそのGenBank相同体が一致する確率スコアも併せて示す。
【0408】
表3は、予測されるモチーフ及びドメインを含む本発明のポリヌクレオチド配列の構造的特徴を、ポリペプチドの分析に用いるための方法、アルゴリズム及び検索可能なデータベースと共に示す。
【0409】
表4は、本発明のポリヌクレオチド配列を構築するために用いたcDNAやゲノムDNA断片を、ポリヌクレオチド配列の選択した断片と共に示す。
表5は、本発明のポリヌクレオチドの代表的なcDNAライブラリを示す。
【0410】
表6は、表5に示したcDNAライブラリの作製に用いた組織及びベクターを説明する付表である。
【0411】
表7は、PKINの分析に用いたツール、プログラム、アルゴリズムを、適用可能な説明、引用文献及び閾値パラメータと共に示す。
【表1】
Figure 2004526414
【表2】
Figure 2004526414
【表3】
Figure 2004526414
【表4】
Figure 2004526414
【表5】
Figure 2004526414
【表6】
Figure 2004526414
【表7】
Figure 2004526414
【表8】
Figure 2004526414
【表9】
Figure 2004526414
【表10】
Figure 2004526414
【表11】
Figure 2004526414
【表12】
Figure 2004526414
【表13】
Figure 2004526414
【表14】
Figure 2004526414
【表15】
Figure 2004526414
【表16】
Figure 2004526414
【表17】
Figure 2004526414
【表18】
Figure 2004526414
【表19】
Figure 2004526414
【表20】
Figure 2004526414
【表21】
Figure 2004526414

Claims (91)

  1. 以下の(a)乃至(d)からなる群から選択した単離されたポリペプチド。
    (a)SEQ ID NO:1−18(配列番号1乃至18)を有する群から選択したアミノ酸配列を有するポリペプチド
    (b)SEQ ID NO:1−16からなる群から選択したアミノ酸配列と少なくとも90%が同一であるような天然のアミノ酸配列を含むポリペプチド
    ( C )SEQ ID NO:17−18からなる群から選択したアミノ酸配列と少なくとも97%が同一であるような天然のアミノ酸配列を含むポリペプチド
    ( d )SEQ ID NO:1−18からなる群から選択したアミノ酸配列を有するポリペプチドの生物学的活性断片
    ( e )SEQ ID NO:1−18を有する群から選択したアミノ酸配列を有するポリペプチドの免疫原性断片
  2. SEQ ID NO:1−18を有する群から選択した請求項1に記載の単離されたポリペプチド。
  3. 請求項1のポリペプチドをコードする単離されたポリヌクレオチド。
  4. 請求項2のポリペプチドをコードする単離されたポリヌクレオチド。
  5. SEQ ID NO:19−36(配列番号19乃至36)を有する群から選択した請求項4に記載の単離されたポリヌクレオチド。
  6. 請求項3に記載のポリヌクレオチドに機能的に連結したプロモーター配列を含む組換えポリヌクレオチド。
  7. 請求項6に記載の組換えポリヌクレオチドを用いて形質転換した細胞。
  8. 請求項6に記載の組換えポリヌクレオチドを含む遺伝形質転換体。
  9. 請求項1のポリペプチドを生産する方法であって、以下の過程を含む方法。
    (a)前記ポリペプチドの発現に好適な条件下で、請求項1のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドに機能的に連結されたプロモーター配列を含む組換えポリヌクレオチドで形質転換された細胞を培養する過程と、
    (b)そのように発現した前記ポリペプチドを回収する過程。
  10. 前記ポリペプチドがSEQ ID NO:1−18からなる群から選択したアミノ酸配列を有することを特徴とする請求項9に記載の方法。
  11. 請求項1に記載のポリペプチドと特異的に結合する単離された抗体。
  12. 以下の(a)乃至(d)からなる群から選択した単離されたポリヌクレオチド。
    (a)SEQ ID NO:19−36からなる群から選択したポリヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド
    (b)SEQ ID NO:19−36からなる群から選択したポリヌクレオチド配列と少なくとも90%が同一であるような天然のポリヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド
    (c)(a)のポリヌクレオチドに相補的なポリヌクレオチド
    (d)(b)のポリヌクレオチドに相補的なポリヌクレオチド
    (e)(a)〜(d)のRNA等価物
  13. 請求項12に記載のポリヌクレオチドの少なくとも60の連続したヌクレオチドを含む単離されたポリヌクレオチド。
  14. 請求項12に記載のポリヌクレオチドの配列を有する標的ポリヌクレオチドをサンプル中から検出する方法であって、
    (a)前記サンプル中の前記標的ポリヌクレオチドに相補的な配列を含む少なくとも20の連続したヌクレオチドを含むプローブを用いて前記サンプルをハイブリダイズする過程(ただし、前記プローブと前記標的ポリヌクレオチドまたは断片の間でハイブリダイゼーション複合体が形成されるような条件下で、前記プローブが前記標的ポリヌクレオチドに特異的にハイブリダイズする)と、
    (b)前記ハイブリダイゼーション複合体の存在・不存在を検出し、該複合体が存在する場合にはオプションでその量を検出する過程からなり、 前記プローブと前記標的ポリヌクレオチドまたは断片の間でハイブリダイゼーション複合体が形成されるような条件下で、前記プローブが前記標的ポリヌクレオチドに特異的にハイブリダイズすることを特徴とする方法。
  15. 前記プローブが少なくとも60の連続したヌクレオチドを含むことを特徴とする請求項14に記載の方法。
  16. 請求項12に記載のポリヌクレオチドの配列を有する標的ポリヌクレオチドをサンプル中から検出する方法であって、
    (a)ポリメラーゼ連鎖反応増幅を用いて前記標的ポリヌクレオチドまたはその断片を増幅する過程と、
    (b)前記の増幅した標的ポリヌクレオチドまたはその断片の存在・不存在を検出し、該標的ポリヌクレオチドまたはその断片が存在する場合にはオプションでその量を検出する過程を含むことを特徴とする方法。
  17. 請求項1に記載のポリペプチドと、薬剤として許容できる賦形剤とを含む組成物。
  18. 前記ポリペプチドが、SEQ ID NO:1−18を有する群から選択したアミノ酸配列を含むことを特徴とする請求項17に記載の成分。
  19. 機能的なDME(新規の薬剤代謝酵素)の発現の低下に関連する疾患や病態の治療方法であって、そのような治療が必要な患者に請求項17の組成物を投与することを含むことを特徴とする治療方法。
  20. 請求項1に記載のポリペプチドのアゴニストとして有効性を確認するために化合物をスクリーニングする方法であって、
    (a)請求項1のポリペプチドを含むサンプルを化合物に曝露する過程と、
    (b)前記サンプルにおいてアゴニスト活性を検出する過程とを含むことを特徴とするスクリーニング方法。
  21. 請求項20に記載の方法によって同定したアゴニスト化合物と薬剤として許容できる賦形剤とを含む組成物。
  22. 機能的なDMEの発現の低下に関連する疾患や病態の治療方法であって、そのような治療が必要な患者に請求項21の組成物を投与することを含むことを特徴とする治療方法。
  23. 請求項1に記載のポリペプチドのアンタゴニストとして有効性を確認するために化合物をスクリーニングする方法であって、
    (a)請求項1のポリペプチドを含むサンプルを化合物に曝露する過程と、
    (b)前記サンプルにおいてアンタゴニスト活性を検出するステップとを含むことを特徴とするスクリーニング方法。
  24. 請求項23に記載の方法によって同定したアンタゴニスト化合物と、薬剤として許容できる賦形剤とを含む組成物。
  25. 機能的なDMEの過剰な発現に関連する疾患や病態の治療方法であって、そのような治療が必要な患者に請求項24の組成物を投与することを含むことを特徴とする治療方法。
  26. 請求項1に記載のポリペプチドに特異結合する化合物をスクリーニングする方法であって、
    (a)適切な条件下で請求項1に記載のポリペプチドを少なくとも1つの試験化合物に混合させるステップと、
    (b)請求項1に記載のポリペプチドの試験化合物との結合を検出し、それによって請求項1に記載のポリペプチドに特異結合する化合物を同定するステップを含むことを特徴とする方法。
  27. 請求項1に記載のポリペプチドの活性を調節する化合物をスクリーニングする方法であって、
    (a)請求項1に記載のポリペプチドの活性が許容される条件下で、請求項1に記載のポリペプチドを少なくとも1つの試験化合物に混合させる過程と、
    (b)請求項1に記載のポリペプチドの活性を試験化合物の存在下で算定する過程と、
    (c)試験化合物の存在下での請求項1に記載のポリペプチドの活性を、試験化合物の不存在下での請求項1に記載のポリペプチドの活性と比較する過程とを含み、試験化合物の存在下での請求項1に記載のポリペプチドの活性の変化が、請求項1に記載のポリペプチドの活性を調節する化合物を標示することを特徴とする方法。
  28. 請求項5の配列を含む標的ポリヌクレオチドの発現を変化させるのに効果的な化合物をスクリーニングする方法であって、
    (a)前記標的ポリヌクレオチドの発現に好適な条件下で、前記標的ポリヌクレオチドを含むサンプルを化合物に曝露する過程と、
    (b)前記標的ポリヌクレオチドの変異発現を検出する過程と、
    (c)可変量の前記化合物の存在下と前記化合物の不存在下で、前記標的ポリヌクレオチドの発現を比較する過程とを含むことを特徴とする方法。
  29. 試験化合物の毒性を算定する方法であって、
    (a)核酸を含む生物学的サンプルを前記試験化合物で処理する過程と、
    (b)処理した前記生体サンプルの核酸と、請求項12のポリヌクレオチドの少なくとも20の連続するヌクレオチドを含むプローブをハイブリダイズさせるステップであって、このハイブリダイゼーションゼーションが、前記プローブと前記生体サンプルの標的ポリヌクレオチドとの間で特異的なハイブリダイゼーション複合体が形成される条件下で行われ、前記標的ポリヌクレオチドが、請求項12のポリヌクレオチドのポリヌクレオチド配列またはその断片を含むポリヌクレオチドである、前記ステップと、
    (c)ハイブリダイゼーション複合体の収量を定量するステップと、
    (d)前記処理された生物学的サンプル中の前記ハイブリタイゼーション複合体の量を、処理されていない生物学的サンプル中の前記ハイブリタイゼーション複合体の量と比較する過程とを含み、前記処理された生物学的サンプル中の前記ハイブリタイゼーション複合体の量の差が、前記試験化合物の毒性を標示することを特徴とする方法。
  30. 生物学的サンプル中のDME の発現に関連する症状または疾患に対する診断試験法であって、
    (a)前記抗体が前記ポリペプチドに結合し、抗体とポリペプチドとの複合体が形成されるのに適した条件下で、前記生物学的サンプルを請求項11に記載の抗体と結合する過程と、
    (b)前記複合体を検出する過程とを含み、前記複合体の存在が、前記生物学的サンプル中の前記ポリペプチドの存在と相関することを特徴とする方法。
  31. 前記抗体が、
    (a)キメラ抗体
    (b)単鎖抗体
    (c)Fab断片
    (d)F(ab’) 断片
    (e)ヒト化抗体 のいずれかであることを特徴とする請求項11に記載の抗体。
  32. 請求項11に記載の抗体と、許容できる賦形剤とを含む化合物。
  33. 被検者のDME の発現に関連する病状又は疾患の診断方法であって、請求項32に記載の化合物の有効量を前記被検者に投与する過程を含むことを特徴とする方法。
  34. 前記抗体が標識されることを特徴とする請求項32に記載の化合物。
  35. 被検者のDME の発現に関連する病状又は疾患の診断方法であって、請求項34に記載の化合物の有効量を前記被検者に投与する過程を含むことを特徴とする方法。
  36. 請求項11に記載の抗体の特異性を有するポリクローナル抗体を調製する方法であって、
    (a)抗体反応を誘発する条件下で、SEQ ID NO:1−18からなる群から選択したアミノ酸配列を有するポリペプチドまたはその免疫原性断片を用いて動物を免疫化する過程と、
    (b)前記動物から抗体を単離する過程と、
    (c)前記単離された抗体を前記ポリペプチドでスクリーニングし、それによって、SEQ ID NO:1−18を有する群から選択したアミノ酸配列を有するポリペプチドに特異結合するようなポリクローナル抗体を同定する過程とを含むことを特徴とする方法。
  37. 請求項36に記載の方法で産出したポリクローナル抗体。
  38. 請求項37に記載のポリクローナル抗体及び好適なキャリアを含む化合物。
  39. 請求項11に記載の抗体の特異性を有するモノクローナル抗体を製造する方法であって、
    (a)抗体反応を誘発する条件下で、SEQ ID NO:1−18からなる群から選択したアミノ酸配列を有するポリペプチドまたはその免疫原性断片を用いて動物を免疫化する過程と、
    (b)前記動物から抗体産出細胞を単離する過程と、
    (c)前記抗体産出細胞を不死化の細胞と融合して、モノクローナル抗体を産出するハイブリドーマ細胞を形成する過程と、
    (d)前記ハイブリドーマ細胞を培養する過程と、
    (e)SEQ ID NO:1−18を有する群から選択したアミノ酸配列を有するポリペプチドに特異結合するような前記培養モノクローナル抗体から単離する過程とを含むことを特徴とする方法。
  40. 請求項39に記載の方法で産出したモノクローナル抗体。
  41. 請求項40に記載のモノクローナル抗体及び好適なキャリアを含む化合物。
  42. Fab発現ライブラリのスクリーニングにより前記抗体を産出することを特徴とする請求項11に記載の抗体。
  43. 組換え免疫グロブリンライブラリのスクリーニングにより前記抗体を産出することを特徴とする請求項11に記載の抗体。
  44. SEQ ID NO:1−18からなる群から選択したアミノ酸配列を有するポリペプチドをサンプル中から検出する方法であって、
    (a)前記抗体と前記ポリペプチドの特異結合を許容する条件下で、サンプルを用いて請求項11に記載の抗体をインキュベートする過程と、
    (b)特異結合を検出する過程とを含み、 該特異結合が、SEQ ID NO:1−18を有する群から選択したアミノ酸配列を有するポリペプチドがサンプル中に存在することを標示することを特徴とする方法。
  45. SEQ ID NO:1−18を有する群から選択したアミノ酸配列を有するポリペプチドを精製する方法であって、
    (a)前記抗体と前記ポリペプチドの特異結合を許容する条件下で、サンプルを用いて請求項11に記載の抗体をインキュベートする過程と、
    (b)前記サンプルから前記抗体を分離し、SEQ ID NO:1−18を有する群から選択したアミノ酸配列を有する精製ポリペプチドを得る過程を含むことを特徴とする方法。
  46. マイクロアレイの少なくとも一つの要素が請求項13に記載のポリヌクレオチドであるマイクロアレイ。
  47. ポリヌクレオチドを含むサンプルの転写イメージを作成する方法であって、
    (a)サンプルのポリヌクレオチドを標識するステップと、
    (b)ハイブリダイゼーション複合体の形成に好適な条件下で、請求項46に記載のマイクロアレイの要素をサンプルの標識されたポリヌクレオチドと接触させるステップと
    (c )サンプル中のポリヌクレオチドの発現を定量するステップとを含むサンプルの転写イメージを作製する方法。
  48. 固体基板上の物理的に異なった位置に付加された異なったヌクレオチド分子を含むアレイであって、前記ヌクレオチド分子の少なくとも一つが、標的ポリヌクレオチドの少なくとも30の近接するヌクレオチドと特異的にハイブリダイズできるポリヌクレオチド配列または最初のオリゴヌクレオチドを含み、前記標的ポリヌクレオチドが請求項12に記載のポリヌクレオチドであるようなアレイ。
  49. 請求項48に記載のアレイであって、前記最初のオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチド配列が前記標的ポリヌクレオチドの少なくとも30の近接するヌクレオチドに完全に相補的であるアレイ。
  50. 請求項48に記載のアレイであって、前記最初のオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチド配列が前記標的ポリヌクレオチドの少なくとも60の近接するヌクレオチドに完全に相補的であるアレイ。
  51. 請求項48に記載のアレイであって、前記最初のオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチド配列が前記標的ポリヌクレオチドに完全に相補的であるアレイ。
  52. マイクロアレイである請求項48に記載のアレイ。
  53. 前記の最初のオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチド配列を含むヌクレオチド分子にハイブリダイズされた前記標的ポリヌクレオチドをさらに含む請求項48に記載のアレイ。
  54. 請求項48のアレイであって、リンカーが前記ヌクレオチド分子の少なくとも一つを前記固体基板に結合するアレイ。
  55. 請求項48に記載のアレイであって、基板上の物理的に異なった各々の位置が複数のヌクレオチド分子を含み、またその複数のヌクレオチド分子が任意の一つの物理的に異なった位置で同じ配列を有し、基板上の物理的に異なった各々の位置が基板上の別の物理的に異なった位置のヌクレオチド分子の配列とは異なった配列を有するヌクレオチド分子を含むようなアレイ。
  56. SEQ ID NO:1のアミノ酸配列を含む請求項1に記載のポリペプチド。
  57. SEQ ID NO:2のアミノ酸配列を含む請求項1に記載のポリペプチド。
  58. SEQ ID NO:3のアミノ酸配列を含む請求項1に記載のポリペプチド。
  59. SEQ ID NO:4のアミノ酸配列を含む請求項1に記載のポリペプチド。
  60. SEQ ID NO:5のアミノ酸配列を含む請求項1に記載のポリペプチド。
  61. SEQ ID NO:6のアミノ酸配列を含む請求項1に記載のポリペプチド
  62. SEQ ID NO:7のアミノ酸配列を含む請求項1に記載のポリペプチド。
  63. SEQ ID NO:8のアミノ酸配列を含む請求項1に記載のポリペプチド。
  64. SEQ ID NO:9のアミノ酸配列を含む請求項1に記載のポリペプチド。
  65. SEQ ID NO:10のアミノ酸配列を含む請求項1に記載のポリペプチド。
  66. SEQ ID NO:11のアミノ酸配列を含む請求項1に記載のポリペプチド。
  67. SEQ ID NO:12のアミノ酸配列を含む請求項1に記載のポリペプチド。
  68. SEQ ID NO:13のアミノ酸配列を含む請求項1に記載のポリペプチド。
  69. SEQ ID NO:14のアミノ酸配列を含む請求項1に記載のポリペプチド。
  70. SEQ ID NO:15のアミノ酸配列を含む請求項1に記載のポリペプチド。
  71. SEQ ID NO:16のアミノ酸配列を含む請求項1に記載のポリペプチド。
  72. SEQ ID NO:17のアミノ酸配列を含む請求項1に記載のポリペプチド。
  73. SEQ ID NO:18のアミノ酸配列を含む請求項1に記載のポリペプチド。
  74. SEQ ID NO:19のポリヌクレオチド配列を有する請求項12に記載のポリヌクレオチド。
  75. SEQ ID NO:20のポリヌクレオチド配列を有する請求項12に記載のポリヌクレオチド。
  76. SEQ ID NO:21のポリヌクレオチド配列を有する請求項12に記載のポリヌクレオチド。
  77. SEQ ID NO:22のポリヌクレオチド配列を有する請求項12に記載のポリヌクレオチド。
  78. SEQ ID NO:23のポリヌクレオチド配列を有する請求項12に記載のポリヌクレオチド。
  79. SEQ ID NO:24のポリヌクレオチド配列を有する請求項12に記載のポリヌクレオチド。
  80. SEQ ID NO:25のポリヌクレオチド配列を有する請求項12に記載のポリヌクレオチド。
  81. SEQ ID NO:26のポリヌクレオチド配列を有する請求項12に記載のポリヌクレオチド。
  82. SEQ ID NO:27のポリヌクレオチド配列を有する請求項12に記載のポリヌクレオチド。
  83. SEQ ID NO:28のポリヌクレオチド配列を有する請求項12に記載のポリヌクレオチド。
  84. SEQ ID NO:29のポリヌクレオチド配列を有する請求項12に記載のポリヌクレオチド。
  85. SEQ ID NO:30のポリヌクレオチド配列を有する請求項12に記載のポリヌクレオチド。
  86. SEQ ID NO:31のポリヌクレオチド配列を有する請求項12に記載のポリヌクレオチド。
  87. SEQ ID NO:32のポリヌクレオチド配列を有する請求項12に記載のポリヌクレオチド。
  88. SEQ ID NO:33のポリヌクレオチド配列を有する請求項12に記載のポリヌクレオチド。
  89. SEQ ID NO:34のポリヌクレオチド配列を有する請求項12に記載のポリヌクレオチド。
  90. SEQ ID NO:35のポリヌクレオチド配列を有する請求項12に記載のポリヌクレオチド。
  91. SEQ ID NO:36のポリヌクレオチド配列を有する請求項12に記載のポリヌクレオチド。
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