JP2003517049A - 可逆的に架橋されたハイドロゲル - Google Patents

可逆的に架橋されたハイドロゲル

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JP2003517049A JP2001541068A JP2001541068A JP2003517049A JP 2003517049 A JP2003517049 A JP 2003517049A JP 2001541068 A JP2001541068 A JP 2001541068A JP 2001541068 A JP2001541068 A JP 2001541068A JP 2003517049 A JP2003517049 A JP 2003517049A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】望ましい機械的性質と分解特性を併せ持つハイドロゲルの組成物、その製造方法及びその応用を提供すること。 【解決手段】二つまたはそれ以上の架橋形成可能な官能基を持つ、十分多量の架橋剤と反応したハイドロゲル高分子からなるハイドロゲル組成物。前記架橋剤は、前記高分子が他のハイドロゲル高分子との間に十分多量の架橋を形成すると共に、少なくとも一つの官能基で高分子と結合すると同時に可逆的架橋可能な未反応官能基を少なくとも一つ有するような架橋剤が十分多量に存在するように架橋し得る架橋剤である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、NIHからの一部支援を受けた研究(Grant No.DE13033)の過程でな
されたものであり、米国政府が本発明の権利を有する。 本発明は、ハイドロゲル組成物とその製造方法、およびその用途を含む。
【0002】
【従来技術】
水を含むハイドロゲルは、食品添加物、血液接触素材、生体接着剤、コンタク
トレンズ、創傷保護剤、人工臓器、薬物輸送、放出制御性薬剤、超吸収剤、細胞
包装剤、免疫隔離素材、および薬剤を含む生体活性物質の輸送担体など、数多く
の応用面をもつ。ハイドロゲルの生体適合性は、それらの水含有量の多さ、およ
び生体環境との間の界面張力の低さによるものと思われる。ハイドロゲルの最近
における応用例の一つに、組織工学的手法による細胞輸送の担体がある。この方
法の目的は、細胞外マトリックスの機能を模倣するように3次元的にデザインさ
れた人工マトリックスを用いて、組織および器官を再構成することであり、その
ことによって新たな組織および器官を必要としている患者に、その代替物を提供
することである。ハイドロゲルは、体内に存在する高度に水和した高分子組織と
の類似性によって、柔軟組織を対象とする工学的手段のための有力な物質群と言
えよう。これらの応用におけるハイドロゲルの重要な性質は、それらの分解時間
と機械的性質である。
【0003】 ハイドロゲルの分解速度は、新しい組織の生成速度と等しいように調節できる
ことが望ましいが、組織生成速度は組織ごとに大きく異なる。ハイドロゲルの機
械的性質は、生体内部での新たな組織形成のための空間を保持すると言う目的の
ために、極めて重要である。更にまた、細胞が接着しているゲルの機械的性質は
、細胞内での遺伝子発現を制御する。多数の人工および天然高分子が、ハイドロ
ゲルを構成する分子として使われる。特に広く使われている分子に、海藻から抽
出される親水性多糖類であるアルギネイト(alginate)がある。アルギネイトは
、自然界に存在するβ-D-mannoric acid とα-L-guluronic acidとの共重合体
である(Martinsen et al., Biotechnoloty and Bioengineering 33: p. 79-89
(1989) を参照のこと)。
【0004】 ハイドロゲルの特に有望な応用分野は組織工学である。組織工学は、供給が欠
乏しがちな器官移植に頼るのではなく、生体内の組織を作り出すという方向を目
指している。ヒトを含む多くの多細胞生物においては、細胞以外に細胞外マトリ
ックス(ECM)の存在が知られている。ECMは、特化した糖蛋白、プロテオグリカ
ン、および複雑な炭水化物を含む。多様なECM構造が既に知られており、ECMは組
織形成に利用されてきた。簡単に言えば、組織工学の手法は、人工の(たとえば
人工高分子の)3次元的媒体を用いて、組織並びに器官を再構成することであり
、また換言すれば生体内のECMを模倣することにより、新たな組織の形成のため
に“足場”を提供することであると言える。アルギネイトは高度の生体適合性を
もち、多量に存在し、安価であるので、組織工学的応用にも、またそれ以外の応
用にも非常に適した素材である。
【0005】 組織工学的応用へのハイドロゲルの使用は、特にその分解時間と機械的性質に
依存する。アルギネイトは種々の生体医療応用に用いられるハイドロゲルの原料
として広く用いられているが、イオンによって架橋されたアルギネイトは、その
機械的性質および分解性を制御する事ができない。ところが、組織工学で使用す
るハイドロゲルとして求められることは、新たな組織が形成されるまでの間は、
少なくとも組織形成のための足場として機能することなのである。更にまた、通
常のハイドロゲルに用いられるアルギネイトの分子量は、ヒト腎臓の浄化値の上
限を越えており、その為に分解後のハイドロゲル分子は、ヒトの腎臓では処理す
る事ができない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ハイドロゲルを、体外へ排出することが可能な形で、薬剤および/または細胞
の輸送に用いることは有益である。体外への排出が可能であれば、患者の苦痛お
よび医療費用を最小にすることができる。 従来から、ハイドロゲルの分解は架橋密度に依存すると考えられてきたので、
ハイドロゲルの急速な分解と言う問題に対する一つの解決策は、架橋密度が大き
いハイドロゲルを合成することである。しかしながら、架橋密度が大きいハイド
ロゲルは機械的に硬く、そのことは生体医療応用には適当でない。 従って本発明の目的は、望ましい機械的性質と分解特性を併せ持つハイドロゲ
ル組成物を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明のハイドロゲルの組成は、過剰な可逆的架橋剤の存在によって特徴づけ
られる。このことは、架橋剤分子の中には、初期には結合していないいくつかの
結合可能部位が存在し、他の架橋点の分解によって結合すべき相手が生じたとき
に、それらの結合可能な部位が新たな架橋を作ることを意味する。少なくとも一
つの部位が結合を形成しており、また少なくとも一つの結合可能部位が空である
ような架橋剤分子を、以下ではダングリング架橋剤、またはダングラーと呼ぶこ
とにする。
【0008】
【発明の実施の形態】
従来は、上記のようなダングラーは有害であり除かれるべきである、とされて
きた。なぜなら、それらの存在は有効な架橋の形成を阻害するからである。しか
しながら、本発明者はこの不利益と見なされてきた点を、有益な働きに転化する
方法を発明した。すなわち、本発明のハイドロゲルにおいては、ダングラーの働
きにより、ゲルの機械的固さを減少させることが出来る。なぜなら、架橋可能な
部位のいくつかが、ダングラーのために結合形成を阻止されているからである。
【0009】 驚くべきことに、機械的固さの減少は、分解に対する安定性の減少をもたらす
ものではないことが明らかになった。架橋が分解すると、ダングリング架橋剤が
新たな架橋を形成するので、分解速度を遅らせることが出来る。従って、本発明
に基づけばその機械的性質と分解性とが無関係であるようなハイドロゲルを合成
することが可能となる。特筆すべき点は、応用上望ましい遅い分解性を有しなが
ら、望ましくない機械的固さにはなっていないようなゲルを合成する方法が実現
することである。そのようなハイドロゲルは、薬剤輸送や組織工学への応用にと
って特に有用である。それらの応用においては、加工、管理、および移植等の操
作のために固すぎることがないだけでなく、その機能を提供するために十分な期
間、分解しないことが要求される。
【0010】 このように、本発明は改良された高分子ハイドロゲル組成物とその製造方法に
関するものであり、具体的には、酸化された多糖を成分とするハイドロゲルと、
二つまたはそれ以上の官能基を有し、多糖を可逆的に架橋する事が出来る架橋剤
の少なくとも一種類に関する発明である。その架橋剤は、上に述べたように、ダ
ングリング架橋剤として働く。以下に具体例として示すハイドロゲルでは、高分
子として人工または天然に得られるアルデヒドグループを持つアルギネイト重合
体を用い、架橋剤としてはアジピン酸ジヒドラジド(AAD)のような、少なくと
も二つのヒドラジドグループを有する分子を用いる。このハイドロゲルは、その
応用上有利なように、可逆架橋可能な多くのダングリング架橋剤を含むので、そ
のようなダングリング架橋剤を持たず、高い架橋密度を持つハイドロゲルに比べ
ると、驚異的に改良された分解特性と機械特性を示す。
【0011】 既に述べたように、ハイドロゲルの高分子としては酸化された多糖、特にアル
ギネイトを用いる。応用の観点から特に望ましいアルギネイトとして、カルシウ
ム、ナトリウム、カリウムなどのアルギン酸塩またはアルギン酸プロピレングリ
コールを含むアルギン酸誘導体があげられる。本発明においては、特にグルロン
酸塩の含有量が多いアルギン酸塩が最適である。架橋剤としては、可逆的架橋を
起こし得る官能基を少なくとも二つ含む分子、特に、少なくとも二つのヒドラジ
ド基を持つものが好ましく、なかでもAADを含む架橋剤が最適である。
【0012】 ハイドロゲル合成に有用な高分子および架橋剤の例は、1998年3月2日に公開
されたWO 98 / 12228 に示されている。 ハイドロゲル高分子と架橋剤は、高濃度の架橋を妨げる働きをもつダングリン
グ架橋が生じるように、過剰の架橋剤を含むような割合で混合する。ハイドロゲ
ルには、一端だけで繋がっているダングリング架橋剤が20〜90%の割合で含まれ
ることが好ましく、より詳細に言えば20〜80%、20〜70%、特に30〜50%の範囲
に入っていることが好ましい。
【0013】 過剰な量の架橋剤を用いることによって、ダングリング架橋剤の割合を増すこ
とが出来る。更にまた、ハイドロゲル形成が塩の溶液中で行われることが好まし
い。上記塩の溶液は、0.02 〜 2.0 g/lのNaCl、および適宜以下のいずれかの塩
を含むことが望ましい。 0.01 〜 1.0 g/l のCaCl2 (0.1 〜 0.5が望ましい) ; 0.01 〜 2.0 g/l のKCl (0.2 〜 1.0が望ましい) ; 0.01 〜 1.0 g/l のNaH2PO4・H2O (0.05 〜 0.5が望ましい) ; 0.01 〜 1.0 g/l のMgSO4 (0.05 〜 0.5が望ましい) ;
【0014】 本発明のハイドロゲル高分子は、生体医療応用に適する低分子量であることが
好ましい。分子量が50,000ダルトンにも及ぶ分子からなるハイドロゲルの応用も
可能であるが、分子量が1,000から30,000または1,000から10,000の範囲にあるハ
イドロゲルがより好ましい。分子量は、必要ならば加水分解や酸化といった手段
で変化させることが可能である。ここに示す例では、アルギネイトは酸化雰囲気
中の加水分解によって、比較的低分子量(たとえば分子量約7,000)のポリグル
ロン酸ナトリウム(PG)になっている。沈殿したPGは過ヨウ素酸ナトリウム
によって酸化され、ポリアルギネイト、PAG(分子量約5,700)になる。こうして
得られたPAGを、AADのような適当な架橋剤を用い、既に述べたような方法によっ
て架橋することにより、ダングリング架橋剤を含んだハイドロゲルが得られる。
【0015】 こうして得られたPAGハイドロゲルは、高密度架橋を持つPAGハイドロゲルに比
べて、より大きな膨潤率(Q)とより小さなずれ弾性率(G)を持つ。望まれる
膨潤率(Q)は1から200、さらに好ましくは5から100である。望まれるすれ弾
性率(G)は、0.005から200 KPa, より好ましくは0.05から100 KPa である。
【0016】 更に、このハイドロゲルは、長時間にわたる安定性の増大、すなわち分解性の
低下によって特徴づけられる。可逆的に架橋可能なダングリング架橋剤の存在に
よって引き起こされる遅い分解性を持つハイドロゲルは、組織工学、細胞移植、
薬剤輸送などを含む、数多くの応用に適している。より詳細な議論と有用な応用
については、1998年3月26日に発表されたWO 98/12228に開示されている。
【0017】 本発明は、前記した如く高分子ハイドロゲル組成物とその製造方法および使用
法に関連しており、特に可逆的な架橋が可能な官能基を少なくとも、二つ持つよ
うな架橋剤によって特徴づけられるハイドロゲルに関連している。さらにこのハ
イドロゲルは、単一の架橋剤によって架橋出来る位置を、二つのダングリング架
橋剤が占めているために、潜在的に架橋可能な位置が架橋されないままで残って
いるという、架橋の程度によっても特徴づけられる。このようなハイドロゲルは
、通常のハイドロゲルに比べて改良された機械的性質と、より緩やかな分解速度
を持つ。
【0018】 ここで使われている“ハイドロゲル”とは、架橋された親水性高分子からなる
3次元網目が水を含んでいる状態を指す。ハイドロゲルは、ゲルであることが望
ましいが、必ずしもその様に限定されなくてもよい。ハイドロゲルは、正または
負のイオンを含んでもよいし、中性でもよい。 ここで使われている“架橋”という語とそれによって形成されるものは、二つ
の高分子鎖を橋かけすることによって結合することであり、橋かけは、鎖に含ま
れる特定の原子を化学結合によって結びつける、原子、原子群、または化合物に
よってなされる。架橋は自然に起こることもあり、人工的に起こさせることも可
能である。単独の鎖に含まれる二つの位置の間に架橋が起こることもあり得る。
【0019】 また、ここで使われている“架橋物”または“架橋剤”は、高分子鎖の間を架
橋する作用を持つ原子、原子群、または化合物を指す。 “ダングリング架橋剤”または“ダングラー”という語は、少なくとも一つの
部位がハイドロゲル高分子に結合し、そして少なくとも一つの結合可能部位が空
のままであるような架橋剤を指す。 本明細書で使われている“可逆的架橋”という語およびそれによって起こる事
柄は、分解性のハイドロゲルにおいて、時間の経過とともに起こる分解と再結合
の現象を指す。 優先権主張した、米国仮出願第60/167,632号(出願日:1999年
11月26日)の全内容、2000年1月に発行された、ケイ・ワイ・リー(K.
Y.Lee et al.)らによる“高分子”、及び、本明細書で言及した他の全ての特許
、特許出願ならびに公表物の全内容は、これを文献として引用する。
【0020】 実施例 ここまでの記述およびこれ以後の記述において、温度はすべて未更正の摂氏温
度であり、また、特に断らない限り、すべての比率と百分率は重量による値であ
る。
【0021】 <ハイドロゲルの合成> 簡単に言えば、本発明で提示されるハイドロゲルは、ポリアルギネイトの様な
酸化された多糖類を、少なくとも二つの官能基を持つ架橋剤によって架橋するこ
とによって製造される。上記の架橋剤は可逆的架橋が可能であり、既に議論した
ダングリング架橋をもたらすものである。典型的な具体例としてのハイドロゲル
を構成する高分子は、二つのヒドラジド官能基を持つ架橋剤で架橋されたポリア
ルギネイトである。
【0022】 高分子と架橋剤の量の比は、合成されるハイドロゲルが、かなりの数のダング
リング架橋を持つように決定する。本発明においては、フローリ−レーナ(Flor
y-Rehner)方程式で決定される架橋密度が比較的低い値を持つようなハイドロゲ
ルが好ましい。ここで典型例として挙げるハイドロゲルは、AADで架橋されたグ
ルロン酸ポリアルデヒド(PAG , poly-aldehyde gluronate,)であり、架橋密度
(Ve)は16.0 x 105 モル/cm3 以下であり、もっとも望ましくは約12.3 x 105
モル/cm3 以下の値である。
【0023】 図で示した例によれば、本発明におけるハイドロゲルの一般的製造方法は以下
の通りである。まず、酸性雰囲気下でアルギネイトを加水分解し、それで得られ
たポリグルロネイト(PG)を更に酸化してポリアルデヒドグルロネイト(PAG)
を合成する。次にPAG(20重量%水溶液)をアジピン酸ジヒドラジドで架橋し
てハイドロゲルが得られる。架橋剤の濃度は50mMから250mMの範囲である。
【0024】 ハイドロゲルの製造に用いた高分子は、たとえばPRONAVA(Drammen,ノルウェ
ー)から市販されているアルギン酸ナトリウム(PROTANAL LF 20/60)のような
酸化された多糖類である。アルギネイトとしては、グルロネイトの含有量が高い
ものが好ましい。これは、グルロネイトが2価の陽イオンを組み込んでイオン架
橋を形成する機能を持つからである。しかしながら、種々のアルギネイトが、本
発明の用途に使用可能であることを理解されたい。
【0025】 ここで用いる“アルギネイト”という語は、アルギン酸誘導体(たとえばカル
シウム、ナトリウム、カリウム等の塩、またはアルギン酸プロピレングリコール
等)のすべてを意味する。これらの化合物は合成出来るし、天然にも存在する。
合成および天然アルギネイトは、ともに市販されているし、自ら製造することも
できるので、本明細書で述べられている合成段階はそれらで代替する事も可能で
ある。
【0026】 天然由来のアルギネイトは、海藻またはバクテリアから通常の方法によって得
られる。生物材料(Biomaterials) : 「生物資源から得られる新材料(Novel M
aterials from Biological Sources),ビラム編( ed. Byrum), 「アルギネー
ト章(Alginates chapter)、サザーランド編 (ed. Sutherland), p.309 〜 331
(1991) を参照のこと。天然物および合成物いずれにおいても、既知の方法によ
り、側鎖に含まれるマヌロネイトとグルロネイトの割合を所望の値に調整するこ
とが出来る。
【0027】 本発明は、アルギネイトまたは特別の高分子に限定されるものではないし、ま
た特別の製造方法に限定されるものでもない。たとえば、セルロース、アガロー
ス、デキストラン、プルラン、スターチ、ヒアルロネイト等、いかなる種類の合
成および天然の多糖類でも、本実施例に述べられているアルギネイトと置き換え
ることが出来る。更に、生体適合性を持つ他の高分子の場合でも、本発明にした
がって、架橋したハイドロゲルを製造することが出来る。多くの合成高分子やタ
ンパク質は、ゲル化、および/または架橋を促進するように分子修飾することが
可能である。
【0028】 PAGは、ヒュアン等(Huang et al), Acta Chem. Scand. 20: p.183 〜 190 (
1966) に従って合成したので、その方法の詳細を以下に述べる。先ず、原料のア
ルギネイトを酸性溶液中で加水分解し、マヌロン酸残基とグルロン酸残基の間の
β-グルコシド結合を切断した。それによって、PG中にはマヌロン酸残基がほと
んど無くなり、その分子量を低減する事が出来た。ついでPGをpH2.85の環境中に
保持して、サイズ選別クロマトグラフィー(SEC)によって分子量7,000(Mw/Mn=1.
60)の成分を抽出した。SECは、3種類の検出器、すなわちレーザー屈折率計(LR
40、VISCOTEK)、微分粘度計、およびRALLS(T60, VISCOTEK)を用いて行い、移
動相として0.1M NaNO3のバッファー溶液(pH 6.3)を、流速0.7l/分で用いた。
【0029】 分離用として、二つのTSKゲルカラム(G4000PWX1 および G3000PWX1)を使用
した。PG沈殿物のより一層の精製のため、PGを中性pH で2重に蒸留した蒸留水に
溶解し、次いで活性炭素を加えた。得られた溶液を十分攪拌したのち、濾過によ
って活性炭素を除去し、エタノールによってPGを沈殿させた。 分離したPGを、室温で0.25 M過ヨウ素酸(ALDRICH, Milwaukee, WI)溶液中、
室温で酸化し、PAGを調整した。グルロネイト基と過ヨウ素酸との比は1:1で
あった。19時間酸化した後、反応を停止させるために、溶液に等モルのエチレン
グリコールを加えた。得られた溶液をろ過した後、エタノールを用いて沈殿させ
た。
【0030】 沈殿物を集め、2重に蒸留した蒸留水に溶解した後、3日間透析(MWCO 1000
、SPECTRA/POR)を行い、得られた溶液をさらに減圧下で濃縮し、乾燥した。 SECで決定したPAGの分子量は5,700(Mw/Mn=1.64)であり、酸化の割合はPAGに含
まれるアルデヒド基の数を数えることにより66.5%と決定された(酸化の割合は
、グルロネイト単位100に対する酸化されたグルロン酸残基の数で定義した。)
。この測定は、過剰のt-ブチルカルバゼイトをPAG溶液に加え、さらにトリニト
ロベンゼンスルフォン酸(TNBS)を加えることにより、未反応のt-ブチルカルバ
ゼイトの量を測定することによってなされた(t-ブチルカルバゼイトとTNBSとの
化合物は着色しているので、334nmでの分光光度測定によって同定した。)。 合成するハイドロゲルの分子量は、腎臓の浄化値の閾値以下であることが望ま
れる。例として述べたポリアルギネイトの場合には、酸化反応によって分子量を
減少させることが出来る。
【0031】 本記載で例として示したハイドロゲルの製造方法では、上記したような通常の
技術的方法を利用するのであるから、この製造法は決してこの例のみに限定され
るものでないことが理解できるであろう。本方法または他の既知の方法によって
調整される、酸化された多糖類を含む種々の高分子が、ハイドロゲル系として利
用出来るであろう。
【0032】 このようにして得られたPAGは、二官能基架橋剤であるAAD(ALDRICH, Milwauk
ee, WI)によって架橋された。PAGとAADとの架橋反応は、触媒または他の添加物
を加えなくても進行する。それは、アルデヒド基がカルボキシル基に比べてヒド
ラジドとの反応性が遙かに高いからである。ここで取り上げた例では、AADを架
橋剤として用いたが、これ以外にも可逆的架橋可能な官能基を少なくとも二つ有
しているような架橋剤は、同様に用いることが出来る。官能基としてはヒドラジ
ド基が好ましいので、複数のヒドラジドを含む架橋剤は、どれでも本発明に利用
することができる。
【0033】 しかしながら、用いる高分子の種類に応じて、官能基が異なることを理解する
必要がある。たとえば、アミンを含む架橋剤も可能である。アルデヒドと複数の
ヒドラジドを含むハイドロゲルであれば、高分子と架橋剤の役割が逆になること
もあり得る。つまり、アルデヒドを含む架橋剤とヒドラジドを含む高分子を用い
てもハイドロゲルが得られる。
【0034】 例として示したハイドロゲル合成では、PAGの20%溶液に50mM から200mMの濃
度のAADを加えた。これらの溶液は、すべて、混合前のpHを7.4に調整したDull
beccoの修正Eagle培地(DMEM)(LIFE TECHNOLOGY, Grand Island, NY) を用いて
得られた。ハイドロゲル中の最終的なPAG濃度は6%に固定した。ゲル化前の溶
液を培養皿に注入し、室温で4時間保持してゲル化反応を行わせた。アルデヒド
とヒドラジドとの反応は、AVATAR 360 分光高度計(NICOLET, WI)を用い、KBr
錠剤法によるFT-irスペクトルの測定によって確認した(分解能 2cm-1、32回走
査。)。冷却後、アルデヒドの1735 cm-1バンドが消失し、ヒドラゾンの1658 cm
-1バンドが出現したことが確認された。
【0035】 例として取り上げた、AAD架橋PAGハイドロゲルの化学構造は下図の通りである
【0036】 <実験結果> 上で説明した方法に従い、架橋剤AADの濃度50mMから250mMの範囲で、48種のハイ
ドロゲルを製造した。得られた全てのハイドロゲルは、分解性と機械的性質を評
価する前に完全な水和を実現するため、37℃でDMEM(pH 7.4)に24時間液浸し
た。しかしながら、AAD 50mMのハイドロゲルは非常に弱いので、完全な水和が起
こる以前に分解した。一方、AAD 250mMの場合には、ハイドロゲルは合成されな
かった。これは、PAGに比して架橋剤が余りに過剰に存在したからであろう。理
論的には、一端のみが結合したダングリング架橋分子が超過剰に存在すると、意
味のある架橋がほとんど起こらないと言える。
【0037】 AADの濃度100mMから200mMの範囲で製造したPAGハイドロゲルの、有効架橋、分
解特性、および機械的特性を調べた(後2者については、その時間依存性を調べ
た)。既に述べたように、架橋されたPAGゲルは、PAGのアルデヒドとAADのヒド
ラジドとの間のに生じるヒドラゾン結合がもつ1658 cm−1吸収バンドで特徴づ
けられる。ハイドロゲルの分解が起こる際には、水環境の存在によりヒドラゾン
結合が加水分解される。KBr錠剤法によるFT-irスペクトルの測定(分解能2cm-1、 32回走査)によって、ヒドラゾン結合の特性吸収バンドは時間の経過とともに
弱くなることが確認された。
【0038】 図1は、PAGおよび150mMAADで架橋されたPAGハイドロゲルにおける測定結果を
示す。(a)はPAG、(b)はPAGハイドロゲル、(c)は5日間分解後のPAGハイドロゲル
、(d)は15日間分解後のPAGハイドロゲル、(e)は29日間分解後のPAGハイドロゲル
である。図1の矢印は1658 cm-1のヒドラゾンバンド位置を示す。 スルフォン酸ニトロベンゼン溶液(TNBS)を用いて、有効架橋(両端結合)、
架橋反応中の不完全架橋(一端のみで結合)、および未反応の架橋剤の、各々の
割合を決定することが出来る。
【0039】 簡単に言えば、ハイドロゲルを合成した後、1時間ほどTNBS溶液(5.76mM)で
処理する。混合溶液を0.22μmのフィルターで濾過し、濾過液を分析に用いた。
ハイドロゲル中の未反応AADは、2等量のTNBSと反応して溶解性化合物となる。
この溶液を0.5N HClで薄め、334nmにおける分光分析で化合物濃度を決定した。
【0040】 一端ダングリングAAD分子は1等量のTNBSと反応するので、その場合に生じた
化合物はハイドロゲルに一箇所で結合したままであり、溶液での分光分析では検
出できないはずである。従って、その後過剰のAADを濾過液に加え、残存TNBSと
反応させた。ハイドロゲルに結合している化合物の量は、最初にハイドロゲルに
加えたTNBSの総量から可溶性化合物の量を差し引くことによって求めた。未反応
および一端で結合したAAD分子の量をAAD総量から差し引くことにより、架橋効率
が得られる。その結果を表1に示す。
【0041】 本発明の方法に従って製造されたハイドロゲルの機械的強度を、MTS BIONIX
100 機械試験機(MTS SYSTEMS, France)を用いて、圧縮試験によって測定し、
圧縮に対応する弾性率を求めた。変形速度は0.5 mm/分 であり、加圧端子(inde
ntor)の直径は3.15 mmであった。 また、ハイドロゲルのずれ弾性率(G)は、σv-(λ・λ2)の勾配から決定し
た。ここで、σは応力、λは変形後の長さと変形前の長さとの比(アフィン網目
を仮定)である。これらについては、Treloar、Physics of Rubber Elasticity
(Clarendon Press, Oxford, 1975), および Stainsby、Food Chemistry 6, p.3
(1980) に解説されており、これらの文献はその全体が参考文献としてここに含
まれている。
【0042】 こうして作製されたハイドロゲルの膨潤もまた測定された。既に述べたように
、全てのハイドロゲルはDMEM(pH 7.4 )に37℃ で24時間液浸し、その後余分の水
分を除去してから秤量した。ハイドロゲルの膨潤度(Q)は、ハイドロゲルに含ま
れる高分子の体積分率(v2)の逆数で定義され、以下の式で与えられる。 ここで、ρp は高分子の密度(アルギン酸ナトリウムでは0.87555 g/cm3), ρs
は水の密度 (25 ℃で0.9971 g/cm3),Qmは乾燥ゲルと吸収された水との重量
比で決まる膨潤比である(DeRossi et al.,Polymer Gels, Fundamentals and Bi
omedical Applications (Plenum Press, New York 1991) を参照)。
【0043】 上記の方法で製造されたハイドロゲルの架橋密度は、Flory-Rehnerの方程式に
よって計算された。 ここで、Xは相互作用パラメータ、fは架橋の官能性、vは水のモル体積
(18.062 cm3/モル),そしてvは膨潤平衡が達成された場合の高分子の体積分
率である(Bell er al., Biomaterials, 17, p.1203を参照)。 Xは同様の
相互作用に対する以前のモデルから0.35と仮定した(Figuly et al., Macromole
cules 30, p.6174 (1997)を参照)。fは4と仮定した。より高い架橋密度はより
固い機械的性質とより低い膨潤率に対応する。
【0044】 表1は、AAD濃度100mMから200mMで製造したPAGゲルの特性を示す。データには
、上で定義した架橋効率、ずれ弾性率(G)、膨潤比(Qm)、膨潤率(Q)お
よび架橋密度(Vc)が含まれている。
【表1】 表からわかるように、初めに高い架橋密度(Vc)(即ち、100mM及び150mMのA
ADと架橋したハイドロゲル)を有するものの一端部でダングリング結合する架橋
剤が少ないPAGハイドロゲルは、ずれ弾性率(G)及び膨潤データ(Qm、Q
)によって実証されているように、当初より硬い機械的性質と低い膨潤性を示し
た。一端部でダングリング結合する架橋剤の使用量の高いPAGハイドロゲルは
硬さが減った機械的性質を当初有する。
【0045】 <分解特性> アルデヒドとヒドラジドとの間の反応は非常に速いので、結果として生じるヒ
ドラゾン結合は加水分解を受けやすいと思われる。そしてその故に、この反応で
作られるハイドロゲルは、どれも水環境中では、全体積の劣化により分解するで
あろう。しかしながら、驚くべきことであり、また予期されなかったことでもあ
るが、本発明で例として示したハイドロゲル、200mMのAAD濃度で合成され、した
がって16.0 x 105 mol/cm3以下の架橋濃度を持ち、高い割合でダングリング架橋
を含むハイドロゲルは、より小さい架橋密度(Flory-Rehnerの式によって決定し
た)を持つ100mM または150mM AADで製造したハイドロゲルに比べて,より遅い分
解特性を示した (表1)。
【0046】 これらの驚くべき、また予期されなかった結果は、上に述べた方法によって得
られた物であり、その証拠を以下に示す。 特にハイドロゲルの乾燥重量の損失を、分解時間の関数として測定した(図2
)。AAD濃度100mMをもつハイドロゲル(O)は、10日以内に100%の重量損失が
あった(完全分解)。一方、150mM AADを持つハイドロゲル(□)では、30日以
内に完全な分解が起こった。ところが、200mMAADを持つハイドロゲル(△)では
、37℃でDMEM中に6週間保持した後でも、重量損失は最小(<20%)であった。 図3は、ずれ弾性率(G / G0)の時間依存性を、200mMAADの濃度で製造された
PAGハイドロゲル(△)および、それとの比較のために100mM(O)、150mM(
□)のAAD濃度で製造されたPAGハイドロゲルについて示す。これらすべての試料
は、37℃でDMEM(pH 7.4)に保持された。示したように、100mMおよび150mMAAD
の試料では機械的強度が急速に失われるが、200mMAADの試料では低い架橋密度(
表1)にもかかわらず、評価のための時間の範囲内では、機械的強度の低下がず
っと少ない。 図4は、AAD濃度100mM(O)、150mM(□)および200mM(△)の
溶液中で架橋されたPAGハイドロゲルの膨潤度(Q / Q0)の時間依存性を示す。
これら全てのハイドロゲルは、37℃でDMEM(pH 7.4)中に保持された。これら
のデータは、本発明の方法に従って製造された架橋密度の低いゲルの、相対的安
定性を反映している。特に、比較例として示したハイドロゲル、つまり100mM お
よび200mMのAADで架橋したハイドロゲルは、分解過程で膨潤度の増大を示すが、
一方200mMのAADで架橋したハイドロゲルは意味のある変化を示さない。 図5は、AAD濃度100mM(O)、150mM (□)、200m(△)のPAGゲルにおける
架橋密度(Vc/(Vc)0)の時間変化を示す。既に述べたように、架橋密度(Vc)
はFlory-Rehnerの式を用いて計算された。図5の場合、これらのデータは分解後
のハイドロゲルの、ずれ弾性率(G)と膨潤率(Q)との線形関係(図6)によ
って支持される。そして、この関係はガウス弾性を暗示するもので、Flory-Rehn
er方程式の使用を正当化するものである。 本発明で製造したハイドロゲルの、改良された分解特性は、多重ヒドラジド架
橋剤が一端だけで結合したダングリング架橋の状態で多量に存在することの結果
である。そのような架橋剤は、初期に形成された結合が加水分解された後に、再
度架橋を形成することが可能であり、それによって長時間の安定性維持が可能と
なる。従来の考えでは、分解速度を遅くすることは架橋密度を増加させることに
よって可能であるが、その方法は望ましくない機械的性質をもたらすことになっ
ていた。本発明では、驚くべきことに、また予期出来なかったことに、可逆的に
架橋可能な架橋剤を使用することで、ハイドロゲルの機械的性質と分解特性との
間の相関を切断し、機械的には比較的柔軟でありながら、分解が遅い様なハイド
ロゲルを作製する方法を開発した。
【図面の簡単な説明】
【図1】 PAGおよび150mMAADによって架橋されたハイドロゲルの特性赤外吸収の時間変化
を示す。
【図2】 100mM(O)、150mM(□)および200mM(△)のAAD架橋剤濃度において製造された、PAG
ゲルの時間経過に伴う重量減少(%)を示す。
【図3】 100mM(O)、 150mM(□)および200mM(△)のAAD架橋剤濃度において製造された、PA
Gゲルに対するずれ弾性率の経時変化(G/G0)を示す。
【図4】 100mM(O)、 150mM(□)、および200mM(△)のAAD架橋剤濃度において製造された
、PAGゲルに対する膨潤率(Q/Q0)の経時変化を示す。
【図5】 100mM(O)、 150mM(□)および200mM(△)のAAD架橋剤濃度において製造された、PA
Gゲルに対する架橋密度(Ve/(Ve)0)の経時変化を示す。
【図6】 ずれ弾性率(G)の膨潤率(Q)に対する関係を示す。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) A61L 26/00 A61L 15/01 27/00 25/00 (81)指定国 EP(AT,BE,CH,CY, DE,DK,ES,FI,FR,GB,GR,IE,I T,LU,MC,NL,PT,SE,TR),OA(BF ,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GW, ML,MR,NE,SN,TD,TG),AP(GH,G M,KE,LS,MW,MZ,SD,SL,SZ,TZ ,UG,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ, MD,RU,TJ,TM),AE,AG,AL,AM, AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BR,BY,B Z,CA,CH,CN,CR,CU,CZ,DE,DK ,DM,DZ,EE,ES,FI,GB,GD,GE, GH,GM,HR,HU,ID,IL,IN,IS,J P,KE,KG,KP,KR,KZ,LC,LK,LR ,LS,LT,LU,LV,MA,MD,MG,MK, MN,MW,MX,MZ,NO,NZ,PL,PT,R O,RU,SD,SE,SG,SI,SK,SL,TJ ,TM,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ, VN,YU,ZA,ZW Fターム(参考) 4C081 AA03 AA12 BA16 BB08 BC01 CC05 CD031 CD041 CD081 CD111 4F070 AA01 AA62 AB02 AB22 AC45 AE08 GA08 GA09 GB06 4J002 AA001 AB001 AB051 AD001 EQ026 FD146 GB01

Claims (19)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】二つまたはそれ以上の架橋形成可能な官能基を持つ、十分多量
    の架橋剤と反応したハイドロゲル高分子からなるハイドロゲル組成物であって、
    前記架橋剤が、前記高分子が他のハイドロゲル高分子との間に十分多量の架橋を
    形成すると共に、少なくとも一つの官能基で高分子と結合すると同時に可逆的架
    橋可能な未反応官能基を少なくとも一つ有するような架橋剤が十分多量に存在す
    るように架橋し得る架橋剤である、ハイドロゲル組成物。
  2. 【請求項2】少なくとも一つの官能基でハイドロゲル高分子と結合している
    と同時に可逆的架橋可能な未反応官能基を少なくとも一つ有する架橋剤の架橋効
    率が20%から90%である、請求項1に記載されたハイドロゲル組成物。
  3. 【請求項3】少なくとも一つの官能基でハイドロゲル高分子と結合している
    と同時に可逆的架橋可能な未反応官能基を少なくとも一つ有する様な架橋剤の架
    橋効率が20%から70%である、請求項1に記載されたハイドロゲル組成物。
  4. 【請求項4】少なくとも一つの官能基でハイドロゲル高分子と結合している
    と同時に、可逆的架橋可能な未反応官能基を少なくとも一つ有する様な架橋剤の
    架橋効率が30%から50%である、請求項1に記載されたハイドロゲル組成。
  5. 【請求項5】ハイドロゲル高分子が選択的に酸化された多糖である、請求項
    1に記載されたハイドロゲル組成物。
  6. 【請求項6】ハイドロゲル高分子が天然または人工アルギネイトであると共
    に、選択的に加水分解及び/又は酸化されている、請求項1に記載されたハイド
    ロゲル組成物。
  7. 【請求項7】架橋されたハイドロゲルが1,000から5,000ダルトンの間の重量
    平均分子量を持つ、請求項6に記載されたハイドロゲル組成物。
  8. 【請求項8】架橋されたハイドロゲルが1,000から30,000ダルトンの間の重
    量平均分子量を持つ、請求項6に記載されたハイドロゲル組成物。
  9. 【請求項9】架橋されたハイドロゲルが1,000から10,000ダルトンの間の重
    量平均分子量を持つ、請求項6に記載されたハイドロゲル組成物。
  10. 【請求項10】架橋される以前のハイドロゲル高分子が、ヒトの腎臓の閾値
    に等しいか、それ以下の分子量を持つ、請求項1に記載されたハイドロゲル組成
    物。
  11. 【請求項11】架橋剤が少なくとも二つのヒドラジド官能基を持つ、請求項
    5に記載されたハイドロゲル組成物。
  12. 【請求項12】架橋剤がジヒドラジドアジピン酸である、請求項5に記載さ
    れたハイドロゲル組成物。
  13. 【請求項13】ハイドロゲルの初期ずれ弾性率が0.005から200kPaである、
    請求項1に記載されたハイドロゲル組成物。
  14. 【請求項14】ハイドロゲルの初期ずれ弾性率が0.05から100kPaである、請
    求項1に記載されたハイドロゲル組成物。
  15. 【請求項15】請求項1に記載されたハイドロゲル組成物からなる組成物を
    持って実行される組織工学、細胞移植または薬剤輸送の方法。
  16. 【請求項16】多糖類が、アルギネイト、デキストラン、プルラン、スター
    チ、アガロース、またはヒアルロネイトである、請求項5に記載されたハイドロ
    ゲル組成物。
  17. 【請求項17】架橋剤が少なくとも二つのアルデヒドグループを有すると共
    に、ハイドロゲル高分子がヒドラジドグループを有しているか、またはそれを有
    するように変更された高分子である、請求項1に記載されたハイドロゲル組成物
  18. 【請求項18】ハイドロゲル高分子が合成高分子である、請求項1に記載さ
    れたハイドロゲル組成物。
  19. 【請求項19】ハイドロゲル高分子が変更されたタンパク質である、請求項
    1に記載されたハイドロゲル組成物。
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