JP2003513906A5 - - Google Patents

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JP2003513906A5
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【書類名】 明細書
【発明の名称】 活性成分を急速放出するための親水性ポリマーの薄膜状多層薬剤
【特許請求の範囲】
【請求項1】 薄膜状の多層薬剤であって、どの層も、その一つの層は非水性の溶媒に対して溶解するが、それに隣接する各層は、前記非水性の溶媒に溶解しないかまたはごくわずかしか溶解しないというように、隣接する層が互いに異なることを特徴とする、薄膜層中の物質を液状環境へ急速に放出するための親水性ポリマーの薄膜状多層薬剤。
【請求項2】 前記薄膜層は、それらが非水性系液に対しても可溶性であるかどうかに関わらず、水または水性系液、好ましくは人間または動物の体液に対し可溶性であることを特徴とする、請求項1に記載の薬剤。
【請求項3】 前記薄膜層から放出され得る前記物質は、薬理学的活性成分、リフレッシュ効果を有する物質、芳香剤(flavorings)、着香剤(odorizers)、および甘味剤(sweeteners)から成る群から選択されることを特徴とする、請求項1または2に記載の薬剤。
【請求項4】 前記物質の前記薄膜層からの放出は、生理的液体またはその人工模造液、好ましくは人間または動物の体液に前記薄膜層が溶解することによりもたらされることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の薬剤。
【請求項5】 10cm2以下の面積を有する薬剤が生理的液体またはかかる液体の人工模造品に溶解するために要する時間は15分以下、好ましくは5分以下、特に好ましくは1分以下であることを特徴とする、前記請求項の一つまたは複数のいずれかに記載の薬剤。
【請求項6】 少なくとも一つの層が少なくとも一種類の薬理学的活性物質を含有することを特徴とする、前記請求項の一つまたは複数のいずれかに記載の薬剤。
【請求項7】 少なくとも二つの層が、放出すべき物質として、同一の物質、または同一の薬理学的活性成分、またはこれら物質から成る同一の混合物を含有することを特徴とする、前記請求項の一つまたは複数のいずれかに記載の薬剤。
【請求項8】 少なくとも二つの層が、互いに異なる放出可能な物質または薬理学的活性成分を含有することを特徴とする、前記請求項の一つまたは複数のいずれかに記載の薬剤。
【請求項9】 水溶性である二層から成り、そのうち一層はさらに、他の一層が溶解しない有機性溶媒またはかかる溶媒の混合物に対し、可溶性であることを特徴とする、前記請求項の一つまたは複数のいずれかに記載の薬剤。
【請求項10】 水溶性である三層から成り、そのうち外側の二層はさらに、その間の一層が溶解しない有機性溶媒またはかかる溶媒の混合物に対し、可溶性であることを特徴とする、前記請求項の一つまたは複数のいずれかに記載の薬剤。
【請求項11】 前記親水性ポリマーは高い水溶性を有し、当該親水性ポリマーは、セルロースエーテル、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセテート、ポリビニルピロリドン、および前記ポリマーのコポリマー、ならびにアルギン酸エステル(aluginates)、ゼラチン、およびその他の合成、半合成、または天然物由来の物質から成る群から選択されることを特徴とする、前記請求項の一つまたは複数のいずれかに記載の薬剤。
【請求項12】 どの隣接する二層も、そのうちの一層、好ましくは先に形成される一層が、ポリビニルアルコールまたはその混合物より成ることを特徴とする、前記請求項の一つまたは複数のいずれかに記載の薬剤。
【請求項13】 どの隣接する二層も、そのうちの一層、好ましくは先に形成される一層が、セルロースエーテル、好ましくはヒドロキシメチルプロピルセルロース、またはセルロースエーテルの混合物より成ることを特徴とする、前記請求項の一つまたは複数のいずれかに記載の薬剤。
【請求項14】 どの隣接する二層も、そのうちの一層が、ポリビニルピロリドンまたはその混合物より成ることを特徴とする、前記請求項の一つまたは複数のいずれかに記載の薬剤。
【請求項15】 前記層のうち一層が、ポリビニルアルコール――またはポリビニルアルコールの混合物――およびセルロースエーテル、好ましくはヒドロキシメチルプロピルセルロース――またはセルロースエーテルの混合物から成る群より選択されるポリマーから成り、少なくとももう一層がポリビニルピロリドンまたはその混合物から成ることを特徴とする、請求項9または10に記載の薬剤。
【請求項16】 少なくとももう一層が、(a)セルロースエーテル、好ましくはヒドロキシメチルプロピルセルロース、またはセルロースエーテルの混合物から成る、または(b)ポリビニルピロリドンまたはその混合物から成る、または(c)ポリビニルアルコールまたはその混合物から成ることを特徴とする、前記請求項の一つまたは複数のいずれかに記載の薬剤。
【請求項17】 前記層のうち少なくとも一層は、可塑剤、顔料、分解促進剤(disintegration promotors)、湿潤剤、吸収または浸透促進物質(absorption- or permeation-promoting substances)、構造化剤(structuring agents)および組織変性剤(texture modifiers)からなる群より選択される助剤または添加剤を含有することを特徴とする、前記請求項の一つまたは複数のいずれかに記載の薬剤。
【請求項18】 薄膜状多層薬剤の厚さは、少なくとも100μm、特に好ましくは、少なくとも150μmであることを特徴とする、前記請求項の一つまたは複数のいずれかに記載の薬剤。
【請求項19】 前記請求項の一つまたは複数のいずれかに記載の薬剤を製造する方法であって、
活性成分を含有するポリマー溶液を製造する工程、
前記ポリマー溶液をナイフ塗布、ローラー塗布、または吹き付け塗布して不活性基板上を被覆し、その後乾燥させて初期膜を形成する工程、
前記初期層を侵食または溶解しない溶媒または溶媒混合物を使用し、別の活性成分含有ポリマー溶液を製造する工程、
前記溶液をナイフ塗布、ローラー塗布、または吹き付け塗布して前記初期膜の片面または両面を被覆しその後乾燥させる工程、
すでに形成した層を侵食または溶解しない溶媒を使用し、前記複合膜を次の別の一層または更なる多数の層で、同様に被覆する工程を特徴とする薬剤製造方法。
【請求項20】 請求項1〜18のいずれかに記載の薬剤を製造する方法であって、
活性成分を含有するポリマー溶融体を製造する工程、
前記ポリマー溶融体をナイフ塗布、ローラー塗布、吹き付け塗布、または押出成形して不活性基板上を被覆し、その後冷却および/または乾燥させて初期膜を形成する工程、
前記初期層を侵食または溶解しない溶媒または溶媒混合物を用いて、活性成分含有ポリマー溶液を製造する工程、
前記溶液をナイフ塗布、ローラー塗布、または吹き付け塗布して前記初期膜の片面または両面を被覆しその後乾燥させる工程、
すでに形成した層を侵食または溶解しない溶媒を使用し、前記複合膜を次の一層または更なる多数の層で、同様に被覆する工程を特徴とする薬剤製造方法。
【請求項21】 物質、好ましくは医薬成分を人間または動物の体液、またはその人工模造液へ放出するための、請求項1〜18のいずれかに記載の薬剤の使用。
【請求項22】 人間または動物の口腔、鼻腔、咽頭腔、またはその他の身体の孔または腔へ薬理学的活性成分またはその他の物質を放出するための、請求項1〜18のいずれかに記載の薬剤の使用。
【請求項23】 人間または動物の医療または病気の予防のための医薬品、好ましくは口腔への施薬のための医薬品を製造するための、請求項1〜18のいずれかに記載の薬剤の適用。
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、自身の中に存在する物質を短時間で周囲へ送り出すのに適した親水性ポリマーの薄膜状多層薬剤(multilayer prepartion)に関する。本発明は特に、かかる薬剤(prepartions)であって、その層が薬理的活性物質を含有するものに関する。本発明は更に、かかる薬剤を製造する方法、およびその使用に関する。
【0002】
活性成分を送り出すシステムにおいて、とくに薬剤の形態では、比較的多量の薬理学的活性物質が短時間に人間または動物の体内に放出されることが、ある使用領域に対しては、必要である。これはたとえば、薬剤の形態の処方で、その体積と比較してできるだけ面積が広い領域にたいして適用することによって達成される。拡散の法則によると、これによって成分を周囲に送り出す速度が速められる。
【0003】
ただし、一方では、そのシステムに適度な強度を与え、かつできるだけ取り扱いを容易にするために、物質を送り出す組成はできるだけコンパクトでなければならないので、面積を広げるには限界が有る。たとえば、経口投与の場合、面積はまったく拡大できない。
【0004】
活性成分の急速放出が可能であり、それと同時にコンパクトでもあるという要件は、溶解、乳化、または懸濁された当該活性成分が含有される薄膜という処方形態によって満たされる。当該薄膜の厚さ方向の寸法は比較的小さいため、拡散経路は短く、したがって、溶解に要する時間もまた短く、急速放出が可能である。
【0005】
膜形成剤としての親水性ポリマーからかかる膜を製造し、その際に適宜、助剤を添加することによって当該膜の物理化学的パラメータ、化学的安定性、および/または味を調整することが知られている。かかる膜は、親水性溶媒(通常は水)中に、ポリマーマトリックスを含有する溶液を製造することによって得られる。この溶液は活性成分および助剤と混合され、プラスチックまたは金属の処理シート上に塗布される。その後の乾燥により溶媒が除去され、前記ポリマーマトリックスが薄膜状に残留する。ただしこの方法では所定の最大膜厚しか得られず、乾燥の速度特性(kinetics)が前記限定要因を代表している。特に水性系のためのコーティングの可能速度は、比較的高い気化熱のため、塗布乾燥装置(coupled coating and drying machines)中では比較的遅く、前記方法で得られる膜厚に対応した限界がある。
【0006】
確かに、かかる比較的薄い膜は、身体中で比較的早く溶解し、したがって活性成分の急速な放出をもたらすという利点を有する。しかし、製造形式により膜厚が制限されるので、これもまた活性成分の配合量に関し制限となる。このため、単層膜は全投薬量の最大値が低くなるという欠点を有する。
【0007】
前記複数の特性を有する組み合わせ製造品が必要であれば、2種類以上の活性成分とか、着香剤(odorizers)などのその他の構成成分が互いに化学的不適合になる場合などの問題がこれら薄膜に関してさらに起こりうる。
【0008】
確かに原理的には、すでに形成された活性成分含有膜の上に、更に複数の、同一の膜形成溶液の層を順次塗布し各塗布工程後に乾燥処理を行うことで、多層被覆することは可能である。しかし、実際のところ、これによってすでに存在する層がそれぞれ、その後に塗布されたポリマー溶液中の溶媒によって侵食されたり溶解されたりすることとなる。一方ではこれが製造プロセスの妨げとなり、他方では個々の層が互いに分離している真の多層膜システムの生成を妨害する。確かに、最初に生成される層の溶解は何らかの結晶化を行うことによって防ぐことができる。しかし、これが前記薄膜層の水性溶液への可溶性を減少させ、かえって活性成分の放出に悪影響を及ぼす。
【0009】
したがって、本発明の目的は、薬理学的活性成分等を送り出すための組成物であって、寸法が小さくとも、活性成分の配合量を大きくでき、また同時に、投与された位置においての放出を急速に行なえる組成物を提供することである。特に、かかる組成が水性媒体、たとえば体液に容易に溶解するものを意図している。更に、かかる組成物は互いに不適合な活性成分やその他の成分がいっしょに投与されることができるものを提供する事も目的としている。また更に、前記組成物を形成することができる簡便な方法を示すことも目的としている。
【0010】
前記目的は、請求項1およびそのさらに有用な実施形態および有利な製造方法及び使用を示す従属請求項に記載の薄膜状多層薬剤によって驚異的に達成される。
【0011】
前記目的は、本発明によると、親水性ポリマーの薄膜状多層薬剤中の互いに隣接する層を、どの層も、その一つの層は非水性の溶媒に対して溶解するが、それに隣接する各層は、前記非水性の溶媒に溶解しないかまたはごくわずかしか溶解しないというように、互いに異ならせることにより達成される。
【0012】
このような構造によって、その製造方法を、まず活性成分含有薄膜層(ベースシート)が溶液、たとえば水中の親水性ポリマーから形成され、次に、最初に形成されたベースシートが溶解しないか、してもわずかである非水性溶媒中に膜形成ポリマーが溶解した別の溶液を、すでに存在する前記ベースシートに塗布するような方法とすることができる。前記ベースシートはたとえば、水溶性ポリマーまたはポリマー混合物からなり、その後隣接して形成されるシート層のポリマーは高級アルコールまたはクロロホルムに対し可溶性であるが、前記ベース層のポリマーは前記有機溶媒に対しては不溶性である。ただし、後で形成される層のポリマーが有機溶媒に対し可溶性であるということは、それらが水にもまた容易に溶解することを除外するものではない。すでに存在する層が隣接する薄膜層の形成に使用される溶媒によって侵食も溶解もされないような上記の方法で、第二の(またはそれ以降の)活性成分含有層をすでに存在する層の上に塗膜することが可能になる。
【0013】
各層の厚みは、多層構造が可能になるように薄くすることができ、またそれによって、製造中の乾燥時間が減少するという利点も得られる。
【0014】
本発明に係る多層システムは、単層システムに比べ活性成分の配合量を大きくすることを可能にし、その総配合量は存在する層の数に比例して増加する。この活性成分配合量の増加は、膜表面積が増加したり、コンパクト性の喪失を伴わずに達成できる。また、多層構造は、互いに化学的に不適合である活性成分などの放出可能な構成要素を同一の薬剤中、ただし別の層の中に存在させることを可能にする。このように、互いに不適合な活性成分や着香剤、その他の成分を空間的に離間させることができ、また、それによって初めて可能になった組み合わせ製造品を膜状投与形状で製造することができる。また、互いに不適合な成分を異なる薄膜層に配分することにより、かかる薬品形態の安定性を高めることも可能である。
【0015】
本発明に係る薄膜状多層薬剤は表面積と体積の好適な比を有するため、活性成分の液状周囲環境への急速な放出は拡散によって起こる。
【0016】
本発明の特に有利な実施形態は、前記薄膜層は、それらが非水性系に対しても可溶性であるかどうかに関わらず、水または水性系、好ましくは人間または動物の体液に対し可溶性であるよう構成されたものである。このように、放出速度を更に上げることが、特に生理学的な条件のもとで、可能である。単層構造に比べ多層構造では溶解時間が長いが、それでもそれに適した配合であれば十分短く、それが前記活性成分放出における速度決定要因とはならない。
【0017】
たとえば、もし薬剤が口腔に使用される製薬を製造するために使用されるのであれば、薬剤の急速な溶解は別の理由からも望ましい。これは、水溶性でありながら、他方ではまた、すでに形成された層が多層薬剤の他の層を形成するときに溶解されることを防ぐために、非水性または有機性溶媒に対しても可溶性であることが必要であれば、その特性を有している前記膜形成ポリマーを選択することによって達成される。
【0018】
本発明の一実施例で得られる放出速度は、10cm2以下の面積を有する薬剤が生理的液体またはかかる液体の人工模造品に溶解するために要する時間が15分以下、好ましくは5分以下、特に好ましくは1分以下であることを特徴とする。
【0019】
本発明に係る薬剤の使用の一形態が薬理学的活性物質を人間または動物に投与することであることを考えると、前記薬剤がその構造に基づいて、前記物質の前記薄膜層からの放出が、生理的液体またはその人工模造品、好ましくは人間または動物の体液に前記薄膜層が溶解することによりもたらされることを可能にすることが有効である。これは、適切な水溶性膜形成ポリマーおよびその他の可溶性添加物を選択することにより実現され、当業者であれば適切なポリマーおよび添加物を熟知しているものである。
【0020】
本発明に係る薄膜状薬剤のポリマー層は、幅広い種類の構成成分を保持しその後放出するためのマトリクスとして好適である。これに関連して、好適に使用される物質は、薬理学的活性成分、リフレッシュ効果を有する物質、芳香剤(flavorings)、着香剤(odorizers)、および甘味剤(sweeteners)から成る群から選択される。前記物質はどれも、単独でまたは組み合わされて特定の層に存在しても良く、前記物質の相互の適合性を考慮に入れる必要が有る。前記薄膜層は、活性成分やその他の成分を、溶解、乳化、または懸濁された状態で含有している。
【0021】
本発明の特に好適な実施形態は、前記薄膜層中の少なくとも一つの層に少なくとも一種類の薬理学的活性物質を含有するものである。同様に、一つまたは複数の層が複数の活性成分を含有することも可能である。また、同じく、少なくとも二つの層に互いに異なる物質または活性成分を含有するように本発明の薬剤の異なる態様のものを使用することも可能であるし、有効である。このように、互いに不適合な物質を含有する組み合わせ製品を処方することが可能である。
【0022】
前記層構造は幅広く種々の構成を採用することができる。一方で、ベース層からはじまり、その他の層が上記のように順次塗膜されるような複合体であってもよい。他方で、ベース層の両側(上下側)に別の一層が塗膜されるような対称構造でもよく、適宜更なる層が塗膜されてもよい。
【0023】
特に好適な実施形態において、前記組成物は水溶性である二層から成り、そのうち一層はさらに、他の一層が溶解しない有機性溶媒またはかかる溶媒の混合物に対し、可溶性である。
【0024】
別の特に好適な組成物は、水溶性である三層から成る構造を有する。この場合、そのうち外側の二層はさらに、その中間の一層が溶解しない有機性溶媒またはかかる溶媒の混合物に対し、可溶性である。この場合の前記中間層は、製造の一連の工程において、前記ベース層に対応する。
【0025】
本発明に係る薄膜状多層組成物を製造するために好適な親水性膜形成ポリマーは、特に、高い水溶性を有し、特に各種セルロースエーテル、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセテート、ポリビニルピロリドン、および前記ポリマーのコポリマー、ならびにアルギン酸エステル(aluginates)、ゼラチン、および当業者に公知の、その他の様々な合成、半合成、または天然物由来の物質である。
【0026】
特に好ましい組成物は、ベース層がポリビニルアルコールまたはその混合物、たとえば部分的に加水分解された低粘度のポリビニルアルコール(Clariant社製の“Mowiol 8−88”)などにより成る組成物である。ポリビニルアルコールは水に容易に溶解するが、たとえばエタノールなどには溶解しない。後者の溶媒は従って本発明では、ポリビニルアルコールの前記ベース層上にさらに薄膜層を塗膜するために使用することができる。
【0027】
本発明のさらに好適な実施形態は、ベース層がセルロースエーテル、好ましくはヒドロキシメチルプロピルセルロースを、またはセルロースエーテルの混合物を使用して形成されるものである。前記ベース層を形成するための前記のもの以外には、多層薬剤の製造に適宜の異なる一連の工程を適用するときに次の(隣接の)層を形成するために、ポリビニルアルコールまたはセルロースエーテルを使用することもできる。
【0028】
さらに好適な実施形態においては、本発明に係る多層薬剤の一層またはそれ以上の薄膜層が、親水性、水溶性の膜形成ポリマーとしてポリビニルピロリドン、たとえば“Kollidon”(BASF社製)を使用して形成される。
【0029】
本発明に係る薬剤の特性は、助剤または添加剤を加えることによって、最適化したり、所定の要件に適応させることができる。これらには、たとえば、可塑剤、顔料、分解促進剤(disintegration promotors)、湿潤剤、吸収または浸透促進物質(absorption- or permeation-promoting substances)、構造化剤(structuring agents)および組織変性剤(texture modifiers)が含まれ、適切な添加剤の選択は当業者が精通しているところである。本発明に係る多層膜状薬剤は、好ましくは少なくとも100μm、特に好ましくは、少なくとも150μmの厚みを有する。
【0030】
前記薄膜状多層薬剤は、本発明で提案された方法により、簡便に、時間がかからず、コスト効率良く製造することができる。このためには、まず、所定の活性成分を含有し、適宜、助剤も含有するするポリマー溶液を製造する。前記溶液は、ナイフ塗布、ローラー塗布、または吹き付け塗布により、プラスチックまたは金属の不活性な加工シート上にコートされる。その後の乾燥処理により初期膜(またはベース層とも呼ばれる)が形成される。次の工程で、同様の処理により、別の活性成分含有ポリマー溶液が前記ベース層に塗布されるが、前記ポリマー溶液は、前記ベース層を侵食または溶解しない溶媒または溶媒混合物を使用して生成される。再度乾燥処理が行なわれ、二層複合体となる。続いて、前記溶媒の選択に関する本発明に係る開示を考慮しつつ、前記二層複合体に更に一層または複数の層を塗布形成することもできる。もし二層複合体を加工シートから取り外すのであれば、その後、まだ被覆されていない前記初期膜の下側面も上記方法によって同様にポリマー膜で被覆でき、三層複合体を得ることができるという可能性もある。この場合に加えられた第三の層は、第二と同じ組成を有することができ、その結果対称構造が得られるが、または異なる組成を有していても良い。ただしどの場合も、前記第三の層の一種または複数種のポリマーは、本発明の開示によると、前記初期層を侵食せずまた溶解もしない溶媒またはその混合物に含有されていなければならない。
【0031】
本発明に係る別の製造方法において、前記第一の層はまず、所定の活性成分を含有し、適宜助剤または添加剤を含有するポリマー溶融体により、形成される。前記溶融体の不活性な加工シートへの塗布は、好ましくはナイフ塗布、ローラー塗布、吹き付け塗布、または押出成形によりなされる。冷却および/または乾燥処理され、初期膜(ベース層とも呼ばれる)が形成される。多層薬剤を製造するために、前記初期膜にさらに活性成分含有ポリマー膜をコーティングする工程は、前に記載した方法でポリマー溶液を用意することから始まるが、この場合もまた、前記ポリマーおよび溶媒を選択するにあたり、後者は前記初期層、また適宜、すでに存在するその他の薄膜層を侵食または溶解してはならないということを考慮に入れる必要が有る。
【0032】
本発明に係る方法は、連続法でもバッチ法でも行なうことができる。連続処理で使用される不活性基板は、好ましくは加工シート、もしくは金属シートまたはベルトであり、バッチ法では原則的にはいかなる不活性基板も使用できる。本発明に係る薬剤は、好ましくは、活性製薬成分を人間または動物の体液、もしくはその人工模造液中へ放出するのに適している。それらは特に、人間または動物の口腔、鼻腔、咽頭腔、またはその他の身体の孔または腔へ薬理的活性成分等の物質を投与するために、とりわけ好適には口腔への投与に、効果的に使用することができる。それらはまた、人間または動物の医療または病気の予防のための医薬品、好ましくは口腔への施薬のための医薬品を製造するのに適していることから、本発明に係る薬剤の更なる有用な用途が提供される。
【0033】
本発明を説明するため、以下に実施例を示す。
【0034】
【実施例】
部分的に加水分解された低粘度のポリビニルアルコール(Clariant社製の“Mowiol 8−88”)が熱水に溶解される。当業者に公知の可塑剤、顔料、分解促進剤(disintegration promotors)等の適当な助剤および類似の添加剤、ならびに前記活性成分が添加されて粘着性の組成物を製造し、不活性基板に塗布される。乾燥処理により、取り扱いが容易で水に溶けやすい不活性膜Aが得られる。乾燥させた初期膜は以下の組成を有する。
“Mowiol 8−88”:28.6wt%
二酸化チタン:7.9wt%
二酸化珪素:37.2wt%
ポリエチレングリコール400:11.5wt%
ポリエチレングリコール4000:4.6wt%
ソルビトール:10.2wt%
次に第二の組成が、第二層Bのために、ポリビニルピロリドン(BASF社製の“Kollidon”)をベースにして、この膜形成ポリマーをエタノールに溶解して製造される。この第二の組成も同様に、活性成分および、第一の層の組成に類似した適した助剤を適宜含有している。
【0035】
乾燥された前記膜Bは以下に示す組成を有する。
ポリビニルピロリドン:32.8wt%
ヒドロキシプロピルセルロース:11.5wt%
二酸化チタン:6.6wt%
二酸化珪素:32.8wt%
ポリエチレングリコール:16.4wt%
前記初期“Mowiol”膜は、前記第二層Bのポリマーのために選択された前記溶媒(エタノール)に対し不溶性であり、したがって前記第二の組成に対し不活性な挙動を示し、これは前記初期膜に対しても同様である。再度乾燥処理することにより、一連の層A−Bを有し、両層の成分が水溶性なので水性溶媒系に対し可溶性である二層膜組成物が得られる。
【0036】
前記二層薬剤を前記不活性基板から取り外した後、好ましくはさらに、前記不活性膜のまだ被覆されていない下部面を膜で被覆することができる。このためにも同様に、層Bを形成するために使用したポリマー溶液を使用することが可能であるが、これは当該ポリマー溶液が前記初期層を溶解しないためである。その結果、一連の層B−A−Bを有する三層組成物が得られる。当該三層薬剤もまた、水性系に容易に溶解する。概して、かかる三層系においては、単層膜薬剤で投入できる活性成分の最大量に基づいた活性成分の量の3倍を投与することが可能である。15×15mmのサイズの膜片で、生体内(in vivo)の条件下、適切な処方によると、60秒以下という溶解時間が達成された。
JP2001536121A 1999-11-11 2000-11-03 活性成分を急速放出するための親水性ポリマーの薄膜状多層薬剤 Expired - Lifetime JP4213383B2 (ja)

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