JP2003507472A - 消化管運動および食物摂取を調節するための方法ならびに組成物 - Google Patents

消化管運動および食物摂取を調節するための方法ならびに組成物

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JP2003507472A JP2001518668A JP2001518668A JP2003507472A JP 2003507472 A JP2003507472 A JP 2003507472A JP 2001518668 A JP2001518668 A JP 2001518668A JP 2001518668 A JP2001518668 A JP 2001518668A JP 2003507472 A JP2003507472 A JP 2003507472A
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クランティス,アンソニー
ダースト,トニー
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Abstract

(57)【要約】 消化管運動および食物摂取を調節するための方法ならびに組成物を開示する。そのような組成物および方法は、肥満を治療するために、または体重増加を刺激するために使用することができる。食物摂取を制御するのに好適な化合物は、DON(4-デオキシニバレノール)およびその誘導体である。また、新規DON誘導体も開示する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】 本出願は、米国仮出願第60/143,054号(1999年7月6日出願)の優先権を主張す
るものである。
【0002】発明の分野 本発明は、全体として肥満の治療および食物摂取の調節の分野に属する。特に
本発明は、トリコテセン、その誘導体および類似体、またはプリン性(purinergi
c)化合物を投与して消化管運動を変化させそれにより満腹感を生じさせる、食物
摂取を調節するための方法、ならびに組成物に関する。本発明はまた、食物摂取
を調節する上で有用である、トリコテセンの誘導体または類似体について、さら
にプリン受容体のアゴニストおよびアンタゴニストについて、スクリーニングす
る方法に関する。
【0003】発明の背景 肥満につながる過食は、重要な健康問題である。肥満により、身体にかかる物
理的または力学的制限が増大するだけでなく、糖尿病、心臓病、癌、およびその
他の慢性疾患のリスクが高まる。そのような肥満の健康への有害作用は科学的に
十分立証されており、公衆にも一般に十分理解されているが、個々人の基準で食
欲および過食を効果的に制御することは、何百万人という人々にとっては成し遂
げることが困難な目標であった。北アメリカでは子供の約25%は太り過ぎ、すな
わち肥満とみなされている。北アメリカの人々だけで、体重低減のための処置に
一年に約400億ドルを費しており、この額は増大しつつあるようである。最近の
研究で、カナダにおいて肥満症治療に費やされる一年分のコストは控えめにみて
18億ドルに上ると算出されたが、これは全疾患に対する全ヘルスケア支出額の2.
4%に当たる(「肥満のコスト:18億ドル」Pharmaceutical Manufactures Assoc
iation of Canada, March 1999, 11頁中、を参照されたい)。
【0004】 現在入手可能な抗肥満薬は、中枢神経系(CNS)経路を標的とし、食欲抑制を誘
導することによって効果を奏するものが大部分である。しかしながら、そのよう
な薬剤にはCNSに関連した多くの副作用(例えば不安等)があり、高血圧、心血
管系疾患、および糖尿病等の慢性の健康上の問題を生ずる可能性がある。肥満症
治療のための最近の別の方法では、通常の食物の代わりに摂取する「かさ高な」
製品を利用することにより、食欲を制御するというものがある。そのようなかさ
高製品には、該かさ高製品が必要な範囲の望ましい栄養素を含まない点で、栄養
状態を変化させるという問題がある。さらに、かさ高製品を摂取する個人が、い
かなる食物をも(望ましい栄養素でも)食することを拒むことがあり得る。
【0005】 食欲を抑制する薬剤は、そのような薬剤の投与がひとたび停止されれば普通は
体重が元に戻ってしまうため、肥満症治療の上で最も望ましくない手段のうちの
1つである。さらに、原発性肺高血圧症等の疾患のリスクを増大させることを含
む好ましくない深刻な副作用のために、そのような薬剤の使用は制限され得る。
例えば食欲抑制剤であるフェンフルラミンおよびデキスフェンフルラミンは、肺
および心臓に対して深刻な有害作用を及ぼす可能性があるために、最近、それら
の製造業者によって市場から排除された。
【0006】 最近出現した別のタイプの肥満症治療には、小腸からの脂肪の吸収を妨げる薬
剤の利用がある。そのような薬剤は、例えば脂肪の消化のために用いられる膵臓
の酵素を阻害するものであり得る。そして未消化の脂肪は消化管を通過して排泄
される。脂肪吸収を低下させる結果、便が油性となり、下着に油状物のしみがつ
き、腸内ガスが発生し、便通が頻繁になり、さらにビタミンA、D、およびE等
の脂溶性の栄養素の吸収が低減する可能性がある。
【0007】 健康に有害な副作用を生じたり疾患のリスクを増大させたりすることなく体重
増加を減らす、医学的方法は現在存在しない。ヒトおよび他の動物における、厄
介な栄養上および医学上の副作用を生じない肥満の有効な治療法ならびに体重増
加を制御する方法に対する需要は、依然として存在している。
【0008】発明の概要 本発明は、ヒトおよび他の動物において肥満症を治療する方法および食物摂取
を制御する方法を提供する。本発明は、マイコトキシンのトリコテセンがヒトお
よび他の脊椎動物において食物または飼料拒否をもたらす機序についての発見、
また、消化管を通して食物を前進させる消化管運動活性(「消化管運動」)のパ
ターンを調節する神経回路の解明に基づくものである。本明細書に記載する治療
方法は、消化管運動のパターン、すなわち消化管の平滑筋組織の収縮、弛緩、お
よび休止のパターンに影響を及ぼす化合物を投与することを含む。消化管運動活
性の「摂食時パターン」の刺激は、満腹(すなわち満腹感)のシグナルとなり、
それにより個体が食事や摂食に費やす時間が短縮される。したがって、消化管運
動の摂食時パターンを刺激する化合物は、肥満症治療の場合と同様に、目的が食
物摂取を制限するところにある処置方法において有用である。「絶食時パターン
」を刺激するか、または消化管運動の摂食時パターンの開始を延期もしくは妨げ
る化合物は、満腹が身体に対して合図されないため、食事時間もしくは摂食時間
を増加させやすいであろう。そのような化合物は、動物、例えば市販の食肉源と
して飼育される家畜および家禽の体重増加を増大させる方法において、特に有用
である。
【0009】 本発明により提供される肥満の治療方法は、消化管運動の摂食時パターンを刺
激するトリコテセン・マイコトキシンまたはその誘導体を有効量投与することを
含む。本発明のある好適な実施形態においては、肥満の治療方法は、構造上関連
した化合物からなるニバレノール関連群に由来するトリコテセンを個体に投与す
ることを含む。その構造上関連した化合物からなるニバレノール関連群は、以下
の化合物からなる:ニバレノール、4-デオキシニバレノール(「DON」, C15H20O 6 )、トリコテコロン、トリコテシン、3-アセチルデオキシニバレノール(「3-
アセチルDON」, C17H22O7)、7-アセチルデオキシニバレノール、3,15-ジアセチ
ルデオキシニバレノール、4-アセチルニバレノール(フサレノン-X)、4,15-ジ
アセチルニバレノール。他のDON系誘導体もまた本発明の好適な方法において有
用であり、例えば以下のものが挙げられる:DONカーボネート(すなわち、3-ヒ
ドロキシ-12,13-エポキシ-9-トリコテシン-8-オン-7,15カーボネート, C16H18O7 )、3-アセチル-DONカーボネート(すなわち、3-アセトキシ-12,13-エポキシ-9-
トリコテシン-8-オン-7,15カーボネート, C18H20O8)、3-アセチル-DONベンジリ
デンアセタール(すなわち、3-アセトキシ-7,15-ベンジリデン-12,13-エポキシ-
9-トリコテシン-8-オン, C24H26O8)、DON-ベンジリデンアセタール(すなわち
、3-ヒドロキシ-7,15-ベンジリデン-12,13-エポキシ-9-トリコテシン-8-オン, C 22 H24O7)、イソプロピリジンDON(すなわち、3-ヒドロキシ-7,15-イソプロピリ
ジン-12,13-エポキシ-9-トリコテシン-8-オン, C18H24O6)、およびイソプロピ
リジン-3-アセチル-DON(すなわち、3-アセトキシ-7,15-イソプロピリジン-12,1
3-エポキシ-9-トリコテシン-8-オン, C20H26O7)。より好ましくは、肥満の治療
方法は、非毒性および非催吐性であるが個体において消化管運動の摂食時パター
ンを刺激する用量で、DONまたはDON系誘導体等のトリコテセンを該個体に投与す
ることを含む。トリコテセンまたはその誘導体は、様々な経路(経口的または非
経口的を含む)のいずれにより投与してもよい。
【0010】 あるいは、肥満の治療方法は、トリコテセンのように消化管運動の摂食時パタ
ーンを刺激するようにはたらく化合物であるトリコテセン類似体を投与すること
を含む。トリコテセン類似体は、トリコテセンと構造的に関連していても構造的
に全く異なっていてもよい。すなわちトリコテセン類似体は、DON等のトリコテ
センから誘導されるものであっても、また無機化合物、有機化合物、アミノ酸、
ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、ヌクレオチド、核酸、炭水化物、脂質、
およびそれらの組合せであって摂食時パターン消化管運動を刺激する能力を有す
るものを含む様々な化合物のいずれかであってもよい。
【0011】 別の実施形態においては、本発明は個体において消化管運動を調節して肥満症
を治療するための組成物および方法を提供する。本発明のそのような方法は、消
化管組織の平滑筋に存在して消化管運動の摂食時パターンの調節に直接関与する
P2X1プリン受容体(プリノセプター)に結合しそれを刺激する化合物を個体に投
与することを含む。特に、P2X1プリン受容体のアゴニストは、該受容体に結合す
ることにより消化管運動の摂食時パターンを刺激するプリン性化合物である。ト
リコテセンによる場合と同様に、プリン性化合物による消化管運動活性の摂食時
パターンの刺激は満腹のシグナルとなり、それにより摂食時間が短縮され食物摂
取が低減される。好ましくは本発明の肥満症治療に有用なP2X1受容体のアゴニス
トは、該アゴニスト分子がP2X1受容体に結合することができ、それによりその受
容体を結局ブロックまたは不活化することなくP2X1が媒介する消化管運動の摂食
時パターンを刺激することができる、プリン受容体の「非脱感受性」アゴニスト
である。より好ましい実施形態においては、P2X1受容体の非脱感受性アゴニスト
は、消化管運動の摂食時パターンを刺激する方法における使用および肥満症治療
のための、ATPまたは2',3'-O-(2,4,6-トリニトロフェニル)-ATP(「TNP-ATP」)
の構造的類似体である。
【0012】 別の実施形態において、本発明は個体において体重を増加させるための組成物
および方法を提供する。そのような方法は、P2X1受容体の脱感受性アゴニストま
たはアンタゴニスト(TNP-ATP等)を個体に投与することを含む。本発明のその
ような方法において有用な脱感受性アゴニストまたはアンタゴニスト化合物は、
P2X1受容体に結合してブロックし、それにより消化管運動の摂食時パターンを抑
制または妨害し、さらに/または消化管運動の絶食時パターンを延長させて、結
果として摂食時間および食物摂取を増大させる。そのような方法は市場で販売す
る家畜および家禽を飼育する上で特に有用である。
【0013】 本発明のさらに別の態様においては、被験体において投与の間のin vivoでの
消化管運動のパターンおよび該被験体における該化合物の代謝を直接記録するこ
とにより、消化管運動の摂食時パターンを刺激または抑制(妨害)する化合物を
同定するための方法が提供される。そのような方法は、既知または新規のトリコ
テセン化合物、トリコテセン誘導体化合物、トリコテセン類似体化合物、P2X1
容体のアゴニスト、またはP2X1受容体のアンタゴニスト等の化合物の調節活性を
試験するために用いられ得る。消化管運動のパターンを調節(刺激または抑制)
する化合物の能力は、in vitro消化管浴アッセイ、ex vivo消化管アッセイ、ま
たはin vivoアッセイを用いて測定することができる。そのようなスクリーニン
グ法により消化管運動の摂食時パターンを刺激できるものとして同定されたトリ
コテセンおよびプリン性化合物、ならびにそれらの誘導体または類似体は、本発
明の方法に従って肥満症を治療するために用いられ得る。一方、消化管運動の摂
食時パターンを抑制する化合物は、市販用の家畜および家禽における体重増加を
促進する際などに食物摂取を増加させるために用いられ得る。
【0014】図面の説明 図1は、Krantisら(Can. J. Physiol. Pharmacol., 74: 894-903 (1996))の
、ラット(1)のような麻酔した実験動物における胃腸運動を記録するために用い
られるin vivoセットアップの概略図を示す。ラットの消化管の詳細な(A)拡大図
には、金属箔歪みゲージ(2)が消化管の選択部位、例えば胃腔(3)、近位十二指腸
(4)、または遠位回腸(5)の漿膜表面に、縦方向の筋肉層に沿って(例えば接着剤
で)取り付けられることが示されている。リード線はIBMコンピュータデータ取
り込みシステム(6)に接続される。
【0015】 図2は、十二指腸および回腸における消化管運動の摂食時パターンおよび絶食
時パターンを制御する神経経路の概略図を示す。コリン作動性ニューロン(ACh)
、一酸化窒素作動性ニューロン(NO)、プリン作動性(ATP)ニューロンの配置を、
別個の受容体標的および/または入力:mus.(コリン作動性ムスカリン性)、5-HT 3 (セロトニン作動性)、nic.(コリン作動性ニコチン性)、P2X(プリン作動性)、と
合わせて示す。プラス記号(「+」)は、ニューロン間の刺激性入力、および消化
管の平滑筋における刺激と収縮を表し、マイナス記号(「−」)は抑制性入力を表
す。DON=デオキシニバレノール、これは消化管活動亢進(摂食時パターン)お
よび満腹の刺激物質である。NO=一酸化窒素、これは近位十二指腸における非ア
ドレナリン作動性、非コリン作動性(NANC)の抑制性伝達物質であり、また十二指
腸および回腸における伝播性P2X-プリン作動性およびコリン作動性(ムスカリン
性、mus.)運動活性の抑制性伝達物質でもある。コリン作動性ニコチン性入力(
nic.)を伴った一酸化窒素作動性介在ニューロン(NO)の環状経路(最も右側)は
回腸には存在しない。ATP=アデノシン三リン酸、これはP2X受容体等のプリン受
容体の脱感受性アゴニストである。ACh=アセチルコリン、これはムスカリン性(
mus.)受容体に結合して運動ニューロンを興奮させるコリン作動性化学シグナル
である。5-HT=5-ヒドロキシトリプタミン(セロトニン)、これはニューロンの
5-HT3(セロトニン作動性)受容体に結合して消化管の平滑筋のNANC弛緩および
コリン作動性収縮のニューロン作動性刺激を媒介する消化管性介在ニューロンの
主たる伝達物質である。nic.=ニューロンのコリン作動性ニコチン性受容体。
【0016】 図3Aおよび3Bは、4-デオキシニバレノール(DON)および関連する誘導体化合
物の化学構造を図式的に示す。図3AはDON(C15H20O6)、3-アセチル-DON(C17H 22 O7)、イソプロピリジンDON(C18H24O6、呼称EN139491)、およびイソプロピ
リジン-3-アセチル-DON(C20H26O7、呼称EN139492)の化学構造を図式的に示す
。図3Bは、DONカーボネート(C16H18O7、呼称EN139494)、3-アセチル-DONカー
ボネート(C18H20O8、呼称EN139495)、3-アセチル-DONベンジリデンアセタール
(C24H26O8、呼称EN139496)、およびDON-ベンジリデンアセタール(C22H24O7
呼称EN139497)の化学構造を図式的に示す。「Ph」はフェニル基を表す。「OAc
」はアセチル基を表す。
【0017】 図4は、対照動物におけるラット胃腔の自発性運動活性の記録を示す。この記
録は、収縮および弛緩反応の振動様相を示している。垂直線の目印は記録開始の
0分後および50分後の時間(t)を示す。体重1kg当たり10mgのDONを静脈内に投与
すると(t=0分の右側にある第1の矢印)、胃腔の運動活性は急激に減衰した
。40分以内に対照の運動パターンは回復したが、DONの近位再投与(第2の矢印
)ではそのような効果は生じなかった。
【0018】 図5は、ラット十二指腸の対照活性であるin vivo運動パターンの記録の1例
を示す。この十二指腸の対照活性(DONを使用せず)である自発性in vivo運動パ
ターンは、周期的な「群」(grouped)活性(G)と「群間」(intergroup)活性(I)と
からなる。垂直線の目印は、記録開始から0、30、120、および150分後の時間(t)
を示す。t=30分後の第1の矢印は、体重1kg当たり10mgのDONを計画的に投与し
た(静脈内に)(矢印)ことを示しており、このDONにより持続的な活動亢進(4
6±15分)が誘導された。対照レベルまで運動活性が回復した後のDONの再投与(
t=150分後の矢印)はそのような効果は生じなかった。
【0019】 図6A〜6Dは、L-NAMEおよびα,β-メチレンATPがラット十二指腸および回腸
におけるDON誘導性弛緩の振動数(Freq)ならびに振幅(Amp)に及ぼす効果の定量的
解析から得られたデータを示す(十二指腸について図6Aは振動数、図6Bは振幅
、回腸について図6Cは振動数、図6Dは振幅)。L-NAMEおよびDONの存在下(間
隔の広い斜線のバー)での群運動活性は、DON単独(間隔の狭い斜線のバー)を
用いた場合と同程度である。α,β-メチレンATPは、十二指腸(n=8)および回
腸(n=4)において、DON誘導性弛緩(塗りつぶされたバー)の振動数および振
幅を対照の群間活性レベル(DON使用せず、白抜きのバー)まで有意に減衰させ
た。
【0020】 図7A〜7Dは、5-HT3受容体アンタゴニストであるグラニセトロンがラット十
二指腸における自発性およびDON誘導性の活性に及ぼす効果の定量的解析の結果
を示す。グラニセトロン(静脈内または動脈内、間隔の広い斜線のバー)は、「
群」弛緩(n=6)の振動数(Freq)および振幅(Amp)(図7Aは振動数、図7Bは振
幅)を、また「群」収縮(n=3)の振動数(Freq)および振幅(Amp)(図7Cは振動
数、図7Dは振幅)を、選択的に減衰させるが、典型的なDON誘導性の活動亢進は
変化させなかった(間隔の狭い斜線のバー(DON単独)を、塗りつぶされたバー(DO
N+グラニセトロン)、対照である「群」活性(白抜きのバー)と比較せよ)。
【0021】 図8は、子豚の十二指腸の収縮および弛緩に関するDON増強された運動活性に
対するα,β-メチレンATPの効果を(対照に対するパーセントとして)示す棒グ
ラフである。「対照」は、DONもα,β-メチレンATPも与えられていない1グルー
プの子豚を表す。「DON」は、DONのみ(1mg/kg)を与えられた1グループの子豚
を表す。「α,β-メチレンATP+DON」は、十二指腸の運動活性のDON(1mg/kg)
増強時にα,β-メチレンATPの動脈内注射(300μg/kg、動脈内)を受けた1グル
ープの子豚を表す。対照グループ値を100%とした。他の値は全て、対照値に対
するパーセントとする。白抜きのバーは(4匹の子豚の)弛緩の平均振幅を表す
。塗りつぶしたバーは(5匹の子豚の)弛緩の平均振動数を表す。白抜きの斜交
平行線のバーは(3匹の子豚の)収縮の平均振幅を表す。間隔の狭い斜交平行線
のバーは(2匹の子豚の)収縮の平均振動数を表す。「Ψ」は対照と比較してp<
0.05であることを示す。「Φ」はDON増強された活性と比較してp<0.05であるこ
とを示す。
【0022】 図9は、子豚の回腸のDON増強された運動活性(収縮および弛緩)に対するα,
β-メチレンATPの効果を(対照に対するパーセントとして)示す棒グラフである
。「対照」は、DONもα,β-メチレンATPも与えられていない1グループの子豚を
表す。「DON」は、DONのみ(10mg/kg)を与えられた1グループの子豚を表す。
「α,β-メチレンATP+DON」は、回腸の運動活性のDON(10mg/kg)増強時にα,
β-メチレンATPの動脈内注射(300μg/kg、動脈内)を受けた1グループの子豚
を表す。対照グループ値を100%とした。他の値は全て、対照値に対するパーセ
ントとする。白抜きのバーは(4匹の子豚の)弛緩の平均振幅を表す。塗りつぶ
したバーは(5匹の子豚の)弛緩の平均振動数を表す。白抜きの斜交平行線のバ
ーは(3匹の子豚の)収縮の平均振幅を表す。間隔の狭い斜交平行線のバーは(
2匹の子豚の)収縮の平均振動数を表す。「Ψ」は対照と比較してp<0.05である
ことを示す。「Φ」はDON増強された活性と比較してp<0.05であることを示す。
【0023】 図10は、ラット十二指腸および回腸における自発性運動活性を制御するとさ
れている緊張性および調節性経路中のコリン作動性、一酸化窒素作動性、GABA作
動性、プリン作動性およびVIP作動性の神経構成要素の配置についての概略図を
示す。コリン作動性ニコチン性入力(nic.)と共にGABA作動性および一酸化窒素
作動性介在ニューロン(NO)を有する環状経路(最も右側)は回腸には存在しな
い。VIP=血管作用性腸管ペプチド、これは運動神経支配の一酸化窒素作動性の
接合前抑制のアクチベーターである。
【0024】 図11は、ラット胃腔(S1部位)および近位十二指腸(D1部位)の対照である
自発性運動活性の記録の一例を示す。DON(体重(bw)1kg当たり10mg、静脈内投
与した)は、腔内運動活性を急激に減衰させ、十二指腸(D1)における持続的な
活動亢進を誘導した。60分以内に対照の運動パターンが回復した。
【0025】 図12は、ラット胃腸のin vivo運動活性に対する3-アセチルDONの効果を示す
。十二指腸(十二指腸部位D2において記録)および胃腔(S1)における消化管運
動活性の典型的な絶食時パターンを、3-アセチルDON処置の投与に先立って示す
。3-アセチルDON(10mg/kg、静脈内)の注射(垂直方向の矢印)に続いて、運動
活性は約40分継続する典型的な摂食時パターン運動活性に変化した。「MMC」は
消化管運動の絶食時パターンの「群」活性部分である。
【0026】 図13は、ラット胃腔(S1)および十二指腸(D1)における自発性運動活性に
対する体重1kg当たり10mgを静脈内投与された3-アセチルDONの効果を示す。60
分以内に対照の運動パターンが回復した(130分後の記録を参照されたい)。「M
MC」は消化管運動の絶食時パターンの「群」活性部分である。
【0027】 図14は、ラット十二指腸(D1)および胃腔(S1)における運動活性の典型的
なin vivo記録を示しており、これは「絶食時パターンの」運動活性に対する化
合物EN139491の効果(静脈内に10mg/kg bwの場合)を表している。一番上のパネ
ルは、化合物投与に先立つ20分の通常の絶食時パターン運動活性を示している。
この期間の間の記録は、十二指腸が、自発性運動活性の振動数が少なく、同時に
「群」運動活性が延長されている(MMCs)典型的なパターンを示し、また胃腔は典
型的な律動的運動活性を示したことを明らかにしている。記録の第2のパネルは
、EN139491の注射時間、および注射の30秒以内の、摂食時パターン運動活性に特
徴的である、十二指腸における長期継続(40〜60分)活動亢進と、胃腔における
運動活性の同時平行減衰の生起を示す。絶食時パターンの運動活性の回復は、「
群」MMC活性およびあまり活動的でない「群間」活性の期間によって証明される
ように、最下段のパネルに示す。
【0028】 図15は、D2部位(D1歪みゲージから1.5cm遠位)で記録された十二指腸の運
動活性に対する化合物EN139491の効果を示す。略語は先の図で示されたものと同
じである。
【0029】 図16は、ハロタン麻酔した雄のSprague Dawleyラットの近位十二指腸(D1)お
よび胃腔からin vivoで記録した、自発性運動活性の絶食時パターン中のEN13949
1 DON誘導体化合物の投与(10mg/kg, 静脈内)によって、消化管運動活性の弛緩
構成要素である振幅に対する効果の棒グラフを示す。弛緩の振幅は、対照の「群
間」活性に対するパーセントとして表される。EN139491の投与に先立つ「群」運
動活性の運動活性の弛緩構成要素の振幅(斜線のバー)、EN139491の投与に先立
つ対照の「群間」運動活性についての運動活性の弛緩構成要素の振幅(白抜きの
バー、100%としてある)、およびEN139491の静脈内投与後の活動亢進について
の運動活性の弛緩構成要素の振幅を示している。各棒グラフは、5〜8匹のSpra
gue Dawleyラットから得られたin vivoでの記録から抽出されたデータの平均値
±SEMである。
【0030】 図17は、消化管運動活性の弛緩構成要素の振動数に関して消化管運動活性に
対するEN139491投与の効果が示されていること以外は、図16に記載した棒グラ
フと同様である。
【0031】 図18は、消化管運動活性の収縮構成要素の振幅に関して消化管運動活性に対
するEN139491投与の効果が示されていること以外は、図16に記載した棒グラフ
と同様である。
【0032】 図19は、消化管運動活性の収縮構成要素の振動数に関して消化管運動活性に
対するEN139491投与の効果が示されていること以外は、図16に記載した棒グラ
フと同様である。
【0033】 図20は、ラット十二指腸(D1およびD2の十二指腸記録部位)および胃腔(S1
の腔記録部位)における運動活性の典型的なin vivo記録を示しており、これは
消化管運動活性の絶食時パターンに対するDON誘導体化合物EN139492の効果(静
脈内に10mg/kgでの場合)を表している。典型的な絶食時パターン運動活性は、E
N139492の投与に先立つ記録において明らかである。この絶食時パターン期間の
間、十二指腸(D1およびD2)は、自発性運動活性の振動数が少なく、同時に「群
」運動活性が延長されている(MMCs)、典型的なパターンを示し、また胃腔は典型
的な周期的運動活性を示した。注射によるEN139492(垂直方向の矢印)から30秒
以内に、消化管運動活性の摂食時パターンの特徴である、十二指腸における長期
継続(40〜60分)活動亢進と胃腔における運動活性の同時減衰とが生じたが、腔
内運動活性に対する効果は十二指腸の運動活性における場合ほど持続的ではなか
った。
【0034】 図21は、ハロタン麻酔した雄のSprague Dawleyラットの十二指腸(D1部位)に
おける自発性運動活性に対する静脈注射したP2X1プリノセプターアンタゴニスト
であるTNP-ATP(3.5mg/kg)の効果を示す、典型的なin vivo記録を示す。この記
録は、TNP-ATPは直接注入の際(垂直方向の矢印)にいかなる反応をも引き起こ
さなかったが、延長された運動活性(MMCs)は注入から1分以内に減衰したことを
示している。「群間」運動活性は有意に変化しなかった。対照レベルの90%以内
までの運動活性の回復は、20分以内に生じた。
【0035】 図22は、ラット十二指腸(D1部位)におけるDON誘導性(体重1kg当たり10mg
、静脈内、DONの上方の垂直方向の矢印)の摂食時パターン運動活性に対する静
脈注射したTNP-ATP(3.5mg/kg)の効果を示す、典型的なin vivo記録を示す。TN
P-ATPの注射(TNP-ATPの上方の垂直方向の矢印)の1分以内にDON誘導性摂食時
パターンにTNP-ATP抑制効果が生ずる。
【0036】 図23は、ラット胃腔(S1)および十二指腸(D2)におけるDON誘導性摂食時
パターン運動活性に対する静脈注射したTNP-ATP(3.5mg/kg)の効果を示す。60
分以内に、対照の運動パターンは回復した。記録の四角で囲った部分は、各部位
におけるTNP-ATPの初期作用を示している。
【0037】 図24は、ハロタン麻酔した雄のSprague Dawleyラットの近位十二指腸(D1部
位)にてin vivoで記録した消化管運動活性の弛緩構成要素である振幅の棒グラフ
を示す。TNP-ATPの不在下(白抜きのバー)およびTNP-ATPの存在下(3.5mg/kg、
静脈内)(チェック模様のバー)におけるDON誘導性(10mg/kg、静脈内)消化管
活動亢進の弛緩構成要素の振幅を示す。また「群」MMCの弛緩構成要素の振幅(
斜線のバー)、および対照の「群間」活性の弛緩構成要素の振幅(塗りつぶされ
たバー)も示す。弛緩構成要素の振幅は、対照である「群間」弛緩振幅を100%
とした場合のパーセントとして表される。星印は、対照である「群間」運動活性
と比較した場合の有意差(p<0.05)を示す。各棒グラフは、5〜8匹のSprague D
awleyラットから得られたin vivoでの記録から抽出されたデータの平均値±SEM
である。D1は幽門括約筋の10mm遠位に位置する歪みゲージから得られた記録を表
す。
【0038】 図25は、ハロタン麻酔した雄のSprague Dawleyラットの近位十二指腸(D1部
位)にてin vivoで記録した消化管運動活性の弛緩構成要素である振動数の棒グラ
フを示す。TNP-ATPの不在下(白抜きのバー)およびTNP-ATPの存在下(3.5mg/kg
、静脈内)(斜交平行線のバー)におけるDON誘導性(10mg/kg、静脈内)消化管
活動亢進の弛緩構成要素の振動数を示す。また「群」MMCの弛緩構成要素の振動
数(斜線のバー)、および対照の「群間」活性の弛緩構成要素の振動数(塗りつ
ぶされたバー)も示す。弛緩構成要素の振動数は、対照である「群間」弛緩振動
数を100%とした場合のパーセントとして表される。星印、統計値、および実験
の記録条件は、図24に記載した通りである。
【0039】 図26は、ハロタン麻酔した雄のSprague Dawleyラットの近位十二指腸(D1部
位)にてin vivoで記録した消化管運動活性の収縮構成要素である振幅の棒グラフ
を示す。TNP-ATPの不在下(白抜きのバー)およびTNP-ATPの存在下(3.5mg/kg、
静脈内)(斜交平行線のバー)におけるDON誘導性(10mg/kg、静脈内)消化管活
動亢進の収縮構成要素の振幅を示す。また「群」MMCの収縮構成要素の振幅(斜
線のバー)、および対照の「群間」活性の収縮構成要素の振幅(塗りつぶされた
バー)も示す。収縮構成要素の振幅は、対照である「群間」収縮振幅を100%と
した場合のパーセントとして表される。星印、統計値、および実験の記録条件は
、図24に記載した通りである。
【0040】 図27は、ハロタン麻酔した雄のSprague Dawleyラットの近位十二指腸(D1部
位)にてin vivoで記録した消化管運動活性の収縮構成要素である振動数の棒グラ
フを示す。TNP-ATPの不在下(白抜きのバー)およびTNP-ATPの存在下(3.5mg/kg
、静脈内)(斜交平行線のバー)におけるDON誘導性(10mg/kg、静脈内)活動亢
進の収縮構成要素の振動数を示す。また「群」MMCの収縮構成要素の振動数(斜
線のバー)、および対照の「群間」活性の収縮構成要素の振動数(塗りつぶされ
たバー)も示す。収縮構成要素の振動数は、対照である「群間」収縮振動数を10
0%とした場合のパーセントとして表される。星印、統計値、および実験の記録
条件は、図24に記載した通りである。
【0041】詳細な説明 本発明は、ヒトや他の脊椎動物において消化器官の運動活性を調節することに
よって食物摂取を制御するための、また、肥満症を治療するための組成物及び方
法を提供する。これらの方法は、4−デオキシニバレノール(DON)のようなト
リコテセン化合物が、食物の経口摂取の際に通常起こる消化器官内での収縮と弛
緩のパターンを刺激するという発見に基いている。この消化管運動の「摂食時パ
ターン(fed pattern)」の刺激が飽満、即ち個人が食事に費やす時間に影響を与
える重要な因子である満腹感、をシグナル伝達する。DONのようなトリコテセン
類は、消化器官の外側の部位に作用しシグナルを送るが、このシグナルは神経経
路に送られ消化器官の平滑筋に導かれる。本発明者らは、小腸の平滑筋細胞上に
存在する特定の受容体であるプリン作動性受容体P2X1が、消化管運動活性の特定
の面を調節することに関与することを見出した。したがって、P2X1受容体のアゴ
ニスト又はアンタゴニストとして作用する化合物もまた、消化管運動を調節し飽
満や食事に費やす時間を制御することに有用である。
【0042】 本発明を正確に説明するために、下記の用語を定義づける。
【0043】 本明細書中で使用する「消化管」は、胃、小腸及び大腸からなる胃腸器官を指
す。
【0044】 本明細書中で使用する「消化管運動」又は「消化管運動活性」は、ヒトや他の
動物の胃腸器官(胃、小腸及び大腸)における平滑筋の運動挙動を意味し、その
活性は、筋肉の収縮と弛緩を交互に反復する期間と、休止又は比較的小さな活性
の期間とからなる。たとえば、正常で健常なヒトや他の動物では、食物が経口的
に摂取され栄養の抽出と吸収のために腸内に口から遠ざかる(つまり前進する)
ように食物を進めるときには、小腸の筋肉収縮と弛緩の頻度と振幅は高くなる(
下記の、消化管運動の「摂食時パターン」参照)。消化管運動の他のパターンは
、消化器官の種々の部分での食物の存在もしくは不在に応じて生じ得る。さらに
、特定の消化器官の近位の部分は、消化器官の遠位の部分における、たとえば十
二指腸(小腸の開始部分)や回腸(小腸の終末部分)の場合における活性とは異
なる運動挙動を示し得る。
【0045】 本明細書中で使用する「摂食時パターン」、「摂食時パターン活性」及び「セ
グメンテーション(segmentation)」は同義語であり、ヒトを含む動物における消
化管である小腸の収縮及び弛緩の連続パターンを指し、このパターンは通常、食
物の摂取の結果生じる。消化管運動の摂食時パターンは、栄養の抽出と吸収、そ
して最終的に未吸収物質を汚物として排泄することのために消化管を通して摂取
食物を前進させる。消化管運動活性の摂食時パターンは典型的に、食物を摂取し
た数分以内に始まり、飽満即ち満腹感をシグナル伝達することを担う。したがっ
て、消化管運動の摂食時パターンからの飽満は通常、個人に食事が終了可能なこ
とを知らせる。飽満は、脳が血中の栄養含量を分析する機会(食物が消費された
数時間後に起こる、且つ、健康のために特定のレベルに維持される特定の栄養物
(たとえばタンパク質、炭水化物、塩、及び脂肪)に対する欲求のシグナル伝達を
担う別個の過程)をもつしばらく前に消化管運動の摂食時パターンを介して個人
によって感知される。
【0046】 摂食時パターンは、各消化器官について、また、同じ消化器官内の異なる部位
でさえ、特徴的且つ相違的である。小腸での摂食時パターンは、その平滑筋の連
続する一連の収縮と弛緩によって特徴付けられており、このパターンは、小腸の
内容物を混合し、食物を口から遠ざけるように小腸内に進め、前方への動きと前
進を遅らせて基質の吸収を高める(Lundgrenら, Dig. Dis. Sci., 34:264-283 (1
989))。Krantisら(Can.J.Physiol.Pharmacol.,74:894-903(1996))の方法によっ
てin vivoで測定され記録されるときには、十二指腸内の消化管運動活性の摂食
時パターンは活性亢進を特徴とする強烈なパターンであるが、一方同時に、胃の
洞部での摂食時パターンは記録された組織運動活性の測定可能な抑制又は低下を
特徴とする。この摂食時パターン活性は、消化管運動活性の「絶食時パターン」
にとって換わる(下記参照)が、この絶食時パターンは、栄養抽出のために食物
が消化管を通って前進した後に生じる。摂食時パターン運動は、主に迷走神経の
入力を介して末梢の自律神経節によって主として活性化されるが、より低い程度
には、中枢神経系(CNS)によって制御されている(Yoshidaら, J . Pharmacol. Ex
p. Therap., 256:272-278 (1991); Tanakaら, J. Surg. Res., 53:588-595 (199
6); Chungら, Can. J. Physiol. Pharmacol., 70:1148-1153 (1992))。自律神経
の過剰活性化は、摂食時パターンの開始を促進し、その持続期間を増大し、同時
に消化管の伝達的運動活性の頻度と振幅を高める(Hallら,Am. J. Physiol., 250
:G501-G510 (1986); Johnsonら, Am. J. Surg., 167:80-88 (1994),下記の実施
例も参照のこと)。上述したように、トリコテセンマイコトキシン(たとえばDON
)は、今や適正量で使用されて消化管運動の摂食時パターンを刺激することが可
能である。
【0047】 消化管運動活性の「絶食時パターン」又は「絶食時サイクル運動パターン」は
、摂取食物の不在下の、又は食物の摂取前の、胃から腸へ前進させるための摂食
物質が存在しない場合の、消化管の運動挙動を指す。十二指腸(小腸の開始部)
での消化管運動活性の絶食時パターンは、自然に起こる不規則な収縮と弛緩の交
互期間(「群(grouped)」活性)と、比較的休止の期間(「群間(intergroup)」
活性)とによって特徴付けられる。交互に生じる群活性及び群間活性をもつ十二
指腸の絶食時パターンの具体例は、図5の消化管運動の記録における初期部分(t
=0とt=30分との間)に示されている。回腸(小腸の終末領域)での絶食時パター
ンは、ランダムな収縮及び/又は弛緩の運動活性、あるいは一般的に休止の状態
、を特徴とする。食物の摂取は消化管運動の絶食時パターンを中断させ消化管運
動の摂食時パターンの連続活性を刺激する。
【0048】 最近まで、実験条件下で収縮及び弛緩のいずれか一方の成分のみを測定可能で
あるという点において消化管運動を正確に測定し特徴付ける方法は得られていな
かった。しかしごく最近になって、Krantisと共同研究者らは、消化器官上の種
々の位置にin vivoで結合可能である小型で柔軟な薄片状のひずみゲージを用い
て胃腸管の種々の器官について消化管運動の収縮及び弛緩成分を同時に測定する
方法を開発した(Krantisら, Can. J. Physiol. Pharmacol., 74:894-903 (1996)
)。この方法では、器官に結合したゲージからのワイヤーがコンピュータによるデ
ータ解析システムに接続される(図1参照)。Krantisら(1996年)の方法はin vi
vo、ex vivo(体腔の外に配置された器官)及びin vitro(消化器官から取り出
された組織)手順を用いて消化管の薬理学的、神経学的、及び生理学的研究に使用
することができる(下記の実施例参照)。消化器官内及び器官内の複数の部位で
収縮と弛緩を同時に記録する能力は、消化管運動の異なるパターンなどの消化管
運動のより正確な特徴付けと、そのようなパターンに対する食物や種々の化学物
質の作用とを提供する。
【0049】 絶食状態の消化管は、「MMC」、「移動性運動コンプレックス(migrating moto
r complex)」又は「移動性筋電性コンプレックス(migrating myoelectric compl
ex)」として知られるサイクル性運動挙動を示す。MMCは、腸内容物の相互消化を
伴う前進的な送り込みと関連し、興奮ニューロンと抑制ニューロンの連続的活性
化、それによる胃や回腸末端部で開始する収縮と弛緩のサイクルの伝達を含む。
MMCサイクルは3つの異なる相からなる。即ち、第I相は休止期、第II相は不規則
な活性突出期、そして第III相は短期の迅速で突発的な活性突出期である。MMCは
基本的な固有の運動パターンを提供し、このパターンは小腸の「ハウスキーパー
」として機能する。たとえば、各MMCサイクルの高度に前進性の第III相運動活性
は腸内腔を掃除し、その残存物を取り除き細菌の過度の増殖、逆流及び腸分泌物
の蓄積を抑える(Caenepeelら, Dig. Dis. Sci., 34:1180-1184 (1989))。Kran
tisら(1996年)の方法を使用すると、消化管運動が平滑筋の収縮と弛緩を共に含
むことが今や明らかである。食物が無い場合、腸消化管運動の絶食時パターンの
「群」活性は、古典的にはMMC第III相によると考えられていた同じタイプの運動
活性に対応しているように思われる。腸内腔に食物があると、消化管運動活性は
絶食時パターンから摂食時パターンへ切り替えられる。
【0050】 Krantisら(1996年)の方法はまた、トリコテセンもしくはトリコテセンマイコ
トキシンと呼ばれる化合物が消化管運動に作用する様式の発見を可能にした。実
施例1及び2(下記)に示すように、トリコテセン4−デオキシニバレノール(D
ON)は消化管の外側の部位に作用し消化管運動の摂食時パターンを刺激するが、
この事象は食物の摂取後に起こることを特徴とし、また飽満即ち満腹感をシグナ
ル伝達する。これらの知見によって、DONもしくは他のトリコテセンを産生する
真菌種に汚染された作物を摂取したヒトや他の動物の十分に文書で証明された食
欲減退又は食事拒否行動を説明する機序が提供される。本発明は、消化管運動の
摂食時パターンや飽満を誘導するトリコテセン化合物の能力を利用する肥満症を
治療する方法を提供する。本明細書で説明する肥満症の治療方法は、トリコテセ
ンもしくは同類の作用化合物を投与して、消化管運動の摂食時パターンを刺激し
、そしてこれによって飽満に導く。満腹を感知すると、個人には食事を止めるた
めのシグナルが発せられる。投与化合物の循環レベルが減少すると、飽満感が減
退し個人は食べること即ち食事を続けることができる。
【0051】 本発明はまた、消化管組織の集団化された弛緩を仲介するP2X1プリン受容体(
プリノセプター)のアゴニストもしくはアンタゴニストを投与することによって
食物の摂取を調節する方法を提供する。本発明によれば、消化管運動の摂食時パ
ターンを刺激する、トリコテセン(たとえばDON)やその誘導体及び類似体は実際
、消化管の外側の部位に作用する。その遠隔作用部位からシグナルが神経経路、
P2X1プリン受容体を発現する消化管平滑筋細胞に伝達される。この受容体は、消
化管運動の摂食時パターンの調節に関与する(図2参照)。したがって、P2X1
リノセプターに結合し影響を与える化合物は神経経路の終末部分で作用すること
になるが、DON又は他の同類のトリコテセンは上流で作用する。本発明によれば
、本明細書で説明される方法に有用な一群の化合物は、アデノシン三リン酸(AT
P)の類似体からなり、この類似体はP2X1プリノセプターのアゴニストもしくは
アンタゴニストとして作用することができる。この後で説明するように、P2X1
リノセプターの特定の種類のアゴニストは該受容体に結合し消化管運動の摂食時
パターンを刺激する。そのようなP2X1プリノセプターのアゴニストは、肥満症の
治療方法においてトリコテセンの代わりに用いることができる。P2X1プリノセプ
ターのアンタゴニストは、該受容体に結合しそれを遮断し、それによって摂食時
パターンを弱めたり又はそのスイッチを切る化合物である。そのようなP2X1受容
体アンタゴニストは、摂食時パターンや飽満感を抑制もしくは防止し、したがっ
て食事時間を延長したり体重増加を促進するために用いることができる。
【0052】本発明に有用なトリコテセン 歴史的にトリコテセン化合物は、作物を汚染しうる種々の真菌類によって産生
される毒性のある二次代謝産物の1つ、即ち名称トリコテセンマイコトキシン、
として同定されている。そのような汚染作物を摂取した動物(ヒトを含む)はマ
イコトキシン中毒の種々の病理学的症状、たとえば嘔吐、下痢、内部器官内の出
血性損傷、食中毒性無白血球症(ATA;alimentary toxic aleukia)、顆粒球減少症
(agranolocytosis)、再生不良性貧血、壊死性アンギナ、粘膜の炎症、拒食症、痙
攣、敗血症、及びある場合には死、を経験することができる(たとえばAdvances i
n Nutritional Research 1980, 3:301-353 (1980)中のUeno「トリコテセンマイ
コトキシン:菌類学、化学及び毒物学(Trichothecene Mycotoxins: Mycology, C
hemistry, and Toxicology)」参照)。
【0053】 本明細書で使用する「トリコテセンマイコトキシン」又は「トリコテセン」は
、非オレフィン性親もしくは核化合物トリコテセンをベースにした一群のセスキ
テルペノイドファミリーの化学物質の構成員を指す。全てのトリコテセン類は修
飾されたセスキテルペンであり、9位と10位の炭素原子(C-9, C-10)間にオレフ
ィン性(二重)結合(故にトリコテセン)及び12位と13位の炭素原子(C-12,C-13)
間に形成されたエポキシ環を含む。したがってトリコテセンはまた、12,13-エポ
キシトリコテセン化合物として特徴付けられる。Uenoは、天然のトリコテセンマ
イコトキシン類を構造及び真菌の特性に基いて4つのグループに分類した(たと
えばUeno,1980年,上記参照)。この分類スキームによれば、ニバレノールによっ
て表わされる一群のトリコテセンの構成員は、炭素-8(C-8)がケトン(オキソ-)
基で置換された非マクロ環状化合物である。ニバレノールの他に、「ニバレノー
ル関連」トリコテセン類の群は天然トリコテセンマイコトキシン類、たとえば4
−デオキシニバレノール(DON)、トリコテコロン、トリコテシン、3−アセチル
デオキシニバレノール(3-アセチル-DON)、7−アセチルデオシニバレノール、3,
15-ジアセチルデオキシニバレノール、4−アセチルニバレノール(フサレノン-
X)、及び4,15-ジアセチルニバレノールを含む。本明細書中で使用する「DON」
、「4-DON」、「デオキシニバレノール」、「4-デオキシニバレノール」及び「
ボミトキシン(vomitoxin)」はすべて、図3に示す化学構造を有する同一のトリ
コテセン化合物を指す。したがって、ニバレノールは、それはC-4にヒドロキシ
ル基を含むがDONは4位にヒドロキシル基を欠く(「4-デオキシ」)という点で、D
ONと異なる。
【0054】 十分に高い量を摂取すると重い且つ広汎性の中毒の発症を明らかに引き起こす
ことが可能であるが、しかしながらDONは亜致死性中毒に関して最も効力の弱い
トリコテセンの1つであると考えられている(たとえば、Preluskyら, Arch. En
viron. Contam. Toxicol., 22:36-40 (1992); Friendら, Can. J. Anim. Sci.,
66: 765-775 (1986); 食物科学の発展IV(Developments in Food Science IV)中
のUeno, トリコテセン類、化学的、生物学的及び毒物学的な面(Trichothecenes,
chemical, biological, and toxicological aspects)(Elsevier, アムステルダ
ム, 1983年)135−146頁参照)。
【0055】 DONはまた、V79チャイニーズハムスター肺細胞を使用する肝細胞仲介の突然変
異アッセイ(Rogers及びHeroux-Metcalf,Cancer Lett., 20:29-35 (1983))又は皮
膚腫瘍形成性Sencarマウスモデル(Lambertら, Food Chem. Toxicol., 33:217-22
2 (1995))を用いて決定されたように、突然変異原性がない。細胞毒性はデオキ
シリボ核酸(DNA)合成又は修復の変更によって仲介されることはない(Bradlaw
ら, Food Chem. Toxicol., 23:1063-1067 (1985); Robbana-Barnatら, Toxicolo
gy, 48: 155-166 (1988))。
【0056】 DONは、肝臓でその大規模な代謝が全く行われず、尿中に容易に且つ主に排出さ
れる。その誘導体であるデオキシニバレノールグルクラニドやデエポキシドDON
もまた、DONを受容した動物の消化管内の微生物による明らかな代謝の結果、尿
中に見出されている(たとえば、Worrellら, Xenobiotica, 19:25-32 (1989); L
akeら, Food Chem. Toxicol., 25:589-592 (1987))。さらに、本発明者らが発
見したように、DONや他のトリコテセン類は消化管の外側の反応を刺激すること
によって効力を示し、消化管の筋肉活性に対して著しい作用を有している。即ち
、DONは平滑筋又は消化管組織の他の構造体に直接作用しないし、また、消化管組
織に有害な影響を与えず消化管運動への効果を達成する。したがって、DON及び
他のニバレノール関連トリコテセン化合物は特に、本明細書に記載する肥満症の
治療方法への使用に十分に適している。DON及び他のニバレノール関連化合物と
構造的に無関係なトリコテセン類もまた、肥満症の治療方法に使用できるが、但
し、これらの化合物もまた、臨床中毒症の望ましくない又は重い症状のいずれに
も導かない用量で消化管運動の摂食時パターンを刺激するものとする。
【0057】 本発明に有用なトリコテセン類及びその誘導体は真菌の培養物から生物学的に
或いは化学合成によって製造することができる。穀粒や他の作物を汚染しその上
で増殖することが判明している種々の土壌真菌類は二次代謝産物としてトリコテ
セン類を産生する。そのような真菌類には、フサリウム(Fusarium)、トリコテシ
ウム(Tricothecium)、トリコデルマ(Trichoderma)、ミロテシウム(Myrothecium)
、シリンドロカルポン(Cylindrocarpon)、及びスタチボトリス(Stachybotrys)が
含まれる(Ueno,1980年参照)。フサリウム培養物からDONやDONのアセチルエス
テル(たとえば3-アセチルDON及び15-アセチルDON)を製造し精製する方法は記
載されている(Can. J. Microbiol., 29:1171-1178 (1983); Miller及びBlackwe
ll, Can. J. Bot., 64:1-5 (1986); Greenhalghら, Proceedings of the 6th IU
PAC International Symposium on Mycotoxins and Phycotoxins: 137-152 (Stey
n, P.S.編)(Elsevier Press,アムステルダム,1986年);Miller及びArnison(Ca
n. J. Plant Path., 8:147-150 (1986)参照)。このように本明細書中に記載の方
法で有用な種々のトリコテセン類は標準培養法や生産法を用いて真菌培養物から
生成、抽出可能である(たとえば、Ehrlichら, Biochim. Biophys. Acta, 932:20
6-213 (1987); Ueno, 1980(上記)及びその引用文献参照)。上記のとおりDONはト
ウモロコシや麦の豊富な天然汚染物質である。それゆえ、DONや他のトリコテセ
ン類もまた汚染作物から単離できるし、あるいは、それらはブラジルの低木、Ba
ccharis magapotomica及びcordfoliaから単離してもよい(Kupchanら, J. Org.
Chem., 42:4221-4225 (1977))。さらに、本発明は新規のDON誘導体を提供し、
この誘導体は下記の実施例の部で説明するようにDON又は3-アセチル-DONから合
成することができる。
【0058】 さらに、トリコテセンを産生する真菌類を用いて予め存在するトリコテセンを
修飾することができる。DON及びその誘導体のそのような生物変換は種々の実験
室で細菌 (Shimaら, Appl. Environ. Microbiol., 63:3825-3830 (1997)) 或い
はフサリウム株を用いて行われている。たとえば、ペプトンを補充した培地中に
維持されたF. roseumは3-アセチルデオキシニバレノールをDONに変換する(Yosh
izawaら, Appl. Microbiol., 29:54-58 (1975))。F. nivaleはDONの3位の炭素
をアセチル化し3-アセチル-DONを与える。さらにまた、これらの株は7,15-ジア
セチル-DONを脱アセチル化して7-アセチル-DONを与える。
【0059】 トリコテセン類の化学はよく知られており、種々のトリコテセン化合物が化学
的方法又は生化学的方法によって合成可能である。トリコテセンは、テトラ-環
状12,13-エポキシトリコテセ-9-エン骨格が化学的に関連するセスキテルペンア
ルコール又はエステルである(Williams, Arch. Environ Contam. Toxicol., 18
:374-387 (1989))。4-DONと関連する特定のトリコテセン類はまた出発物質とし
てトリコテセンT-2トキシン(4β,15-ジアセトキシ-3α-ヒドロキシ-8α-[3-メ
チルブチリルオキシ]-12,13エポキシトリコテセ-9-エン)を用いて調製できるが
、その理由は、この出発物質はF. tricinctumによって豊富に産生されるし、ま
た、C-3及びC-8位の修飾が容易であるからである(Ehrlichら, Appl. Environ. M
icrobiol., 50:914-919 (1985); Udellら, Z. Naturfarsch, 44:660-668 (1989)
)。T-2のC-3ヒドロキシルの除去は、最初にT-2を3-フェニルチオノカーボネート
へ変換し、ついでこの中間体をトリ-n-ブチル錫ハイドライドを用いて還元し3-
デオキシ-T-2を得ることを含む。この方法は他の人々によって3-デオキシアンギ
ジンや4-デオキシベルカロールを調製するために使用されている(Schudaら, J.
Nat. Prod., 47:514-519 (1984))。
【0060】 さらに、C-8オキソ官能基(即ち、DON関連トリコテセン)を生成するためにT-
2及びデオキシ-T-2を二酸化セレンを用いて酸化することが示されている(Bambu
rg ら, Tetrahedron, 24:3329-3336 (1968))。更なる誘導体、たとえばTHP-7-D
ON(テトラヒドロピラニル-7-DON)及びDIDON(3,7-ジデオキシニバレノール)はT
-2トキシン中にC-8ケトンを導入することによって製造されている(Bamburgら,1
968年)。これは初めに3-THP-T-2トリオールと3-デオキシ-T-2トリオールを調製
し、ついでそれらを二酸化マンガン(MnO2)で酸化することによって達成される(
Warpehoskiら, J. Org. Chem., 47:2897-2900 (1982))。T-2テトラオールから7
-DONを調製するには酸化は不可能であるが、それは、開環反応と競合すること、
及び、反応溶媒として使用される塩化メチレンへのT-2テトラオールの溶解性が
低いことによる。THP-T-2トリオールからTHP-7-DONを調製するためには、MnO2
化が唯一可能な方法であり、その理由は、二酸化セレン酸化用の溶媒として用い
られる酢酸がテトラヒドロピラニル基を脱離するからである。MnO2酸化の副生成
物は15-カルボキシアルデヒド官能基をもつトリコテセンである。
【0061】DON関連化合物の同定 マススペクトル、NMR(核磁気共鳴)分光法、赤外分光法、アニスアルデヒド
染色法およびTLC(薄層クロマトグラフィー)を使用して、DON関連トリコテセン
化合物を同定して、DONもしくはその他のトリコテセンの各種の構造的特徴の1
種以上の存在を検出することができる。
【0062】 すべてのDON関連トリコテセンは、予測されるC-13aおよびC-13bプロトンに由
来するABカップリングパターンと6.5 ppmの位置にC-10についてのプロトンを示
すNMRスペクトルを持つはずである(Cole and Cox,Handbook of Toxic Fungal M etabolites (Academic Press,New York,1981),pp.152-263)。
【0063】 アニスアルデヒド染色によって、8-オキソ置換(ケト)トリコテセンはレモン
イエローの付加物を形成するが、8位にケト基を欠如している化合物は赤または
茶色の付加物を形成する。
【0064】 赤外スペクトルでは、8位のカルボニル基が1600〜1680 cm-1に吸収を持つ。こ
れから、トリコテセンがアルファ、ベータ不飽和ケトン官能基を保持しているこ
とが確認される。
【0065】 DONのアセチル化類似体についてのマススペクトルデータは、親イオンと、反
応工程におけるアセチルもしくは酢酸の喪失から予想される断片イオンとを示す
はずである。
【0066】 本明細書で記載する方法で使用する各トリコテセンは好ましくは薄層クロマト
グラフィー(TLC)上で1個の分離スポットとして移動するようになるまで精製
する。均一性は、特定のトリコテセンが単一ピークとして溶出するはずの高圧液
体クロマトグラフィー(HPLC)を使用して、さらに評価することができる。GC-M
S(ガスクロマトグラフィーおよびマススペクトル分光)分析も、例えば精製し
たそれぞれのタイプのアセチル化トリコテセンについて単一のピークを示すこと
などで、純度を評価するのに有用とされてきた(Cole and Cox,1981、上記)。
【0067】 以下に考察するように、本発明は、本発明の組成物および方法において使用す
ることができる誘導体化合物を作製するために、DONもしくは別のトリコテセン
の上記の構造的特徴の1種以上が改変、またはさらには除去された化合物をも包
含する。
【0068】トリコテセン誘導体および類似体 DONは肥満症の治療などの本発明の方法において使用することができるが、こ
れはマイコトキシン中毒の臨床症状の1つである催吐(嘔吐)を含むその他の望
ましくない副作用をもたらさずに、消化管運動の摂食時パターンを刺激する用量
で使用しなければならない。DONなどのトリコテセンの医薬として許容される用
量は標準的方法を使用して決定することができるが、トリコテセンの化学的構造
に改変を施すことにより、生じ得る不適当な副作用に関してさらに良性な、構造
的に関連する化合物を生成させることも好ましい。こうした「良性」トリコテセ
ン(例えば「良性DON」)は本来のトリコテセンの誘導体であって、消化管運動
の摂食時パターンを刺激する点で本来のトリコテセンに匹敵するかまたはさらに
強力であるが、望ましくない副作用はより少ないかまたは全くないことが期待さ
れるものである。したがって、好ましい誘導体トリコテセン(例えばDON誘導体
)とは、肥満症の治療方法において、1種以上の改善された特性を示し、DONな
どの既知のトリコテセンよりも好ましいものである。
【0069】 例えば、DONの様々な構造的特徴は、DON誘導体を形成させる改変のために特に
魅力的な候補となる部位を、この化合物上に提供している。有利なのは、DONは
比較的小さい分子であって、この化合物の活性を変化させるための改変に利用し
得る部位の数が限られていることである。こうした部位として、C-9およびC-10
の間の不飽和結合、12,13エポキシ環の存在、トリコテセンの構造上の核にある
ヒドロキシルもしくはその他の基の存在、ならびにC-3、C-4およびC-15における
ヒドロキシルもしくはその他の置換基の出現が含まれる(図3A参照)。その上、
空間充填分子モデルから、トリコテセン核のいくつかの特徴が明らかになり、こ
れらから、有用なDONの誘導体を提供する場合にどの部位(群)を改変すべきか
を考慮するための更なるその他の情報が提供される。A環(C-8ケトおよびC-7ヒ
ドロキシル基)中の酸素置換基は分子のこの側を、置換基が存在しない場合、ま
たはT-2トキシンのようにイソバレルオキシ側鎖が存在する場合よりも、親水性
にする。核上の適切な位置におけるヒドロキシル基の存在は生物学的活性を改変
させる。例えば、4-デオキシニバレノール(DON)とニバレノールの間の差異は
、DONのC-4のヒドロキシル基の存在である。
【0070】 トリコテセンの構造とタンパク質合成の阻害というトリコテセンに特徴的な性
質との間の関係の研究から、本発明の方法において使用することができるDONも
しくはその他のトリコテセン誘導体を作成する際に考慮に入れることができるい
くつかの興味深い特徴も明らかになった(Erlichら、Biochim.Biophys.Acta,923
:206-213(1987);Rotterら、Env.Health,48:1-34(1996)参照)。タンパク質合成
の阻害に関しては、最も有力なトリコテセンは8-オキソ置換基を含むA環中の置
換を欠如しているか、またはエステル化されたヒドロキシルを持っている。C-7
ヒドロキシルが存在する場合は、C-8ケトとの水素(H)結合が生じ得るが、これ
によって環が立体的にさらにひずむ。C-15およびC-7ヒドロキシル基間でもH-結
合が発生し得る。C-7ヒドロキシル基の除去はトリコテセンの12,13エポキシドか
ら離れた側のC-15置換基を露出させる。その上、C-7ヒドロキシル基はトリコテ
センの有効性に寄与するに違いない。なぜならば、C-7ヒドロキシル基を保有す
るニバレノールは、このヒドロキシル基を欠如している7-DONよりも一桁の差で
より強力だからである。したがって、DONおよびその他のトリコテセン、特にニ
バレノール関連トリコテセン中のこれに匹敵するかまたはこれに相当する部位は
、本発明の組成物および方法において有用なDONもしくはその他のトリコテセン
誘導体を製造するための改変にとっての有力な部位と考えることができる。
【0071】 本発明の組成物および方法において有用なトリコテセンDONの誘導体の例とし
て、本明細書で以下のように称する化合物が含まれる。3-アセチルDON(C17H22O 7 );イソプロピリジンDON(3-ヒドロキシ-7,15-イソプロピリジン-12,13-エポ
キシ-9-トリコテシン-8-オン、C18H24O6、EN139491と命名);イソプロピリジン
-3-アセチルDON(3-アセトキシ-7,15-イソプロピリジン-12,13-エポキシ-9-トリ
コテシン-8-オン、C20H26O7、EN139492と命名);DONカーボネート(3-ヒドロキ
シ-12,13-エポキシ-9-トリコテシン-8-オン-7,15カーボネート、C16H18O7、EN13
9494と命名);3-アセチル-DONカーボネート(3-アセトキシ-12,13-エポキシ-9-
トリコテシン-8-オン-7,15カーボネート、C18H20O8、EN139495と命名);DONベ
ンジリデンアセタール(3-ヒドロキシ-7,15-ベンジリデン-12,13-エポキシ-9-
トリコテシン-8-オン、C22H24O7、EN139497と命名);および3-アセチル-DONベ
ンジリデンアセタール(3-アセトキシ-7,15-ベンジリデン-12,13-エポキシ-9-ト
リコテシン-8-オン、C24H26O8、EN139496と命名)(図3Aおよび3B参照)。これ
らの 化合物は、さらに改変することにより別の新しいDON誘導体化合物を生成さ
せることができる「親」化合物または出発物質としても役立つ。そして、この新
しいDON誘導体化合物は、本明細書で記載する消化管運動を調節するための組成
物および方法における使用に関し、親化合物もしくはその他の既知のトリコテセ
ンよりもこの新しい誘導体化合物の方を好ましいものとするような改善された性
質を1種以上示すのが好ましい。
【0072】 また、DONもしくはその他のトリコテセンの代替品は必ずしも構造的に関連性
がある誘導体化合物である必要はないものと理解すべきである。なぜならば、あ
る用量で消化管運動を調節し、不適当な副作用が最少であるかまたは全くないあ
らゆる化合物が、本明細書に記載する方法において有用でありうるからである。
【0073】 本発明によれば、トリコテセン類似体とは、その化合物がトリコテセンの構造
的特徴を持つかどうかに関わらず、トリコテセンの特徴的で望ましい生化学的活
性の1つ以上を模倣するあらゆる化合物である。DONと同様に、本発明の方法に
おいて有用なトリコテセン類似体は消化管の周辺においてその外側に作用するこ
とによって、消化管運動を調節する。特に、肥満症の治療のための本明細書で記
載する方法において有用なトリコテセン類似体は、消化管の外側で作用して、消
化管運動の摂食時パターンを刺激し、それによって充足の信号を伝達して食べる
ことを停止させる。こうしたトリコテセン類似体は、DONもしくはその他のトリ
コテセンに構造的に関連があるか、これらから化学的に誘導されたもの(上記参
照);無機分子;トリコテセンに無関係な有機分子;ヌクレオチド、核酸、ペプ
チド、ポリペプチド、タンパク質、炭水化物、脂質などの生体分子;またはこれ
らの組合せである。ある特定の化合物が本発明のトリコテセン類似体であるかど
うかは、本明細書に記載するトリコテセンの活性についてスクリーニングする方
法の1以上を使用して、判定することができる。
【0074】P 2X1 プリン受容体(消化管神経伝達物質受容体)のアゴニストおよびアンタゴニ スト 消化管組織中にあるP2X1サブタイプのプリノセプターに結合する化合物もまた
、本明細書に記載する方法において使用することができる。このP2X1プリノセプ
ターは消化管の平滑筋中に存在する神経伝達物質受容体であり、消化管運動の制
御に関与する(実施例、図2参照)。アデノシン三リン酸(ATP)は天然のP2X1
容体リガンドである。小腸の十二指腸および回腸中で、プリン作動性運動ニュー
ロンの刺激によってATPが放出される。最初、ATPはP2X1プリノセプターに対する
アゴニストとして作用し、このとき平滑筋細胞上のP2X1プリノセプターに結合す
る最初のATP分子が平滑筋の抑制のシグナルを送り、平滑筋がその後弛緩する。
上述のように、こうした弛緩はKrantisら(1996)の方法を使用して検出および
測定することができる消化管運動の構成要素である。しかし、1分子のATPはP2X 1 プリノセプターに結合したままでいると見られ、したがって別のATP分子がその
受容体に結合して追加の弛緩事象のシグナルを送ることができないので、その筋
肉はATPによる追加の弛緩に対して、脱感受性となる(Smitsら、Br.J.Pharmacol
.,303:695-703(1996))。したがって、消化管運動活性に対してP2X1受容体が介
在する経路は遮断され、その結果として全体の消化管運動活性の減衰が観察され
、これは追加のATPに影響されることはない(タキフィラキシーの発達)。した
がって、ATPは、追加の弛緩を抑制する「脱感受性」アゴニストであって、消化
管運動の摂食時パターンおよび絶食時パターンの両方にとって重要である。ATP
はすべてのタイプのプリン作動性受容体に結合することができる。合成ATP類似
体、α、βメチレンATPも脱感受性アゴニストであるが、これはP2X種のプリノセ
プターに特異的である。さらに、P2X1サブタイプのプリノセプターは、消化管運
動の弛緩構成要素に関与するP2X種の受容体であるので、α、βメチレンATPを使
用する研究から、消化管運動における弛緩の特異的神経生理学的様相を正確に示
すデータが提供される(実施例参照)。
【0075】 ATPもしくはα、βメチレンATPなどのP2X1受容体の脱感受性アゴニストとは対
照的に、P2X1受容体の「非脱感受性」アゴニストは、消化管運動活性について、
継続した弛緩刺激を提供するのに必要な受容体結合特性を持っている。特に、P2 X1 受容体の非脱感受性アゴニストは、受容体に結合するがこれを遮蔽しない化合
物である。非脱感受性アゴニストのそれぞれの分子はP2X1受容体に結合し、弛緩
を引き出し、その後解離して、同種の別のものと入れ代わることができ、これが
次に別の弛緩シグナルを送り、それが繰り返される。このように、P2X1受容体の
非脱感受性アゴニストは、P2X1受容体に結合するための非脱感受性アゴニストの
分子が得られる限り、弛緩事象を刺激することができる。P2X1受容体の非脱感受
性アゴニストは消化管運動の摂食時パターンを刺激する。このように、P2X1受容
体の非脱感受性アゴニストは、本明細書に記載する肥満症の治療方法における、
DON、その他のトリコテセンもしくはトリコテセン類似体の使用に対する化学的
代替品である。
【0076】 P2X1受容体の脱感受性アゴニスト(上記参照)もしくはアンタゴニストはこの
受容体を遮蔽して消化管運動を減衰させる。こうした化合物は消化管運動の摂食
時パターンを妨害もしくは抑制して、それによって充足感を抑制するために使用
することができる。充足感の抑制により、満腹感が引き出されないので、より長
時間の食事または摂餌を助長されることになる。本発明によれば、消化管組織中
のP2X1受容体に作用する、2',3'-O-(2,4,6-トリニトロフェニル)アデノシン5'-
三リン酸(「TNP-ATP」)などのアンタゴニスト、またはα、βメチレンATPなど
の脱感受性アゴニストは、食事時間を延長させて体重を増加させる方法において
有用である。こうした成果は、家畜の体重増加または動物を市場価値がある重量
にするまでに必要な時間の短縮が商業上望ましくまた有利である、食肉および家
禽飼養工業において特に有用である。
【0077】 多数のATPの構造類似体ならびにそれらのいくつかについての薬理学的特徴お
よび受容体結合特性が知られている(Hardenらによる総説、Annu.Rev.Pharmacol
.Toxicol.,35:541-579(1995)参照)。こうした化合物は、P2X1サブタイププリノ
セプターに結合し、そして消化管運動に影響を与える能力について、さらにスク
リーニングすることができる候補化合物になり得る。あるいは、こうした既知の
ATP類似体の化学構造をさらに改変して、別のATP類似体を作成し、これを次に、
本明細書に記載する各種の方法において使用することができる、P2X1受容体の非
脱感受性アゴニスト、脱感受性アゴニスト、もしくはアンタゴニストとして作用
する能力についてスクリーニングすることができる。
【0078】 ATP類似体であるTNP-ATPは、P2X1およびP2X31ホモマーならびにP2X2/3ヘテロ
マープリノセプターの役割を判定するために、P2Xサブタイプの選択的アンタゴ
ニスト(μM範囲で全組織IC50)としてin vitroで使用されてきたP2Xプリノセプ
ターアンタゴニストである(Lewisら、Br.J.Pharmacol.,124:1463-1466(1998);
Virginioら、Mol.Pharmacol.,53:969-973(1998)参照)。P2X3受容体は 感覚ニュ
ーロン上でのみ発現することが報告されている(Evansら、Semin.Neurosci.,8:2
17-223(1996))。本明細書に示すように、TNP-ATPアンタゴニストはin vivoで消
化管運動の摂食時パターンを調節する際のP2X1サブタイププリノセプターの直接
の関与を示すのに有用である。TNP-ATPはDON、その他のトリコテセン化合物、お
よびそれらの誘導体によって誘発される消化管運動の摂食時パターンを妨害もし
くは抑制することができるので、このP2X1アンタゴニスト自体を、充足感の開始
を遅延させて食物の摂取を増加させるための本発明の方法において使用すること
ができる。こうした方法は市販用の家畜および家禽を生産するために特に有用で
ある。さらに、消化管運動に影響を与える強化されかつ改善された特性を持つ誘
導体化合物を製造するための親分子として、TNP-ATPを使用することができる。
【0079】 本発明において有用なP2X1受容体のアゴニストもしくはアンタゴニストの起源
として役立つ別のクラスの化合物は、最初にBohmeら(Chromatogr.,69:209-213(
1972))によって記載されたアントロキノンスルホン酸誘導体である。こうした
誘導体はATP類似体とみなすことができ、トリアジニル部分を含んでいる。該部
分はモルモットにおいてある種のATP介在作用に拮抗することが示されている(K
err and Krantis,Proc.Austr.Physiol.Soc.,10:156P(1979)参照)。P2X1受容体
に結合して消化管運動のパターンを調節(すなわち刺激もしくは抑制のいずれか
を)することができるアントロキノンスルホン酸誘導体は、本明細書に記載した
各種の方法において有用であることが期待される。
【0080】 肥満症の治療において有用なP2X1受容体の非脱感受性アゴニストを開発するた
めの別の手法は、スルホニル尿素から、例えば親化合物(アデノシン5'-テトラ
水素三リン酸)の三リン酸部分を独特の革新的な酸性官能基と置換することによ
って、化合物を開発することである。該酸性官能基は、二リン酸もしくは三リン
酸の電荷分布を模倣することが知られているが、これまでアデノシン分子と結合
されたことはない基である。重要なのは、アデノシン-SO2-NH-CO部分はポリマー
基体上でのコンビナトリアルケミストリー(Chiron Technologies)に利用し得
ることである。P2X1受容体に結合して消化管運動の摂食時パターンを刺激する化
合物は、本発明による肥満症の治療方法において有用である。
【0081】スクリーニング方法 本発明の方法および組成物において有用なこれらのトリコテセン、トリコテセ
ン類似体、非脱感受性P2X1受容体アゴニスト、P2X1受容体アンタゴニストおよび
その他の消化管運動調節化合物を同定するために、各種の方法を利用することが
できる。
【0082】 DONおよび15-アセチルDONを検出するための特異的抗体が作成され、ELISA(酵
素結合イムノソルベントアッセイ)において使用された(Sinhaら、J.Agric.Foo
d Chem.,43:1740-1744(1955)参照)。このように、DONおよびその他のトリコテ
センに対する抗体をELISAなどの各種の免疫学的工程で利用して、本明細書に記
載する方法において利用することができる誘導体もしくは関連するトリコテセン
を迅速にスクリーニングすることができる。
【0083】 Vero(Green Monkey腎)細胞、マウス赤白血病(MEL)細胞およびラット脾臓
リンパ球のin vitro細胞培養物を使用して、多数の12,13-エポキシトリコテセン
について、構造と機能の関連性を判定した。例えば、こうした細胞培養系を使用
して、各種の12,13-エポキシトリコテセンのペプチジルトランスフェラーゼ活性
の阻害能、それによるタンパク質合成の阻害能を試験した(例えば、Erlich and
Daigle,Biochim.Biophys.Acta,923:206-213(1987);Rotterら、J.Toxicol.Env.
Health,48:1-34(1996)、参照)。特に、トリコテセンは真核細胞リボソームの60
Sサブユニットに結合し、それによってペプチジルトランスフェラーゼを阻害す
る。トリコテセンセスキテルペン上の構造的置換の程度はペプチジルトランスフ
ェラーゼへの結合特性に影響を与え、そうしてこの酵素の阻害の程度に影響を与
える(Erlichら、1987;Rotterら、1996)。
【0084】 上記の細胞培養物を利用して、本明細書に記載する組成物および治療方法に有
用となる可能性がある候補化合物として、未知の活性を有する化合物を試験また
はスクリーニングすることができる。こうした細胞を基礎とする試験およびスク
リーニング方法は、DONもしくはその他のニバレノール関連トリコテセンといっ
た既知のトリコテセンの構造的特性を持つ新しく合成または発見された化合物な
ど、未知の活性を有する各種のトリコテセンもしくは誘導体化合物を試験および
特性決定するのに特に有用である。既知のトリコテセンに構造的に関連性がない
その他の化合物も、こうした細胞培養物を使用してスクリーニングすることがで
きる。
【0085】 細胞を基礎とするスクリーニング方法において、各試験化合物をDONなどの既
知のトリコテセンの1種以上の標準調製品と比較することができる。これは典型
的にはジメチルスルホキシド中のストック溶液(10μg/ml)として調製される。
細胞とのインキュベート中、ジメチルスルホキシドの濃度を常に1%(v/v)また
はそれ以下になるように調節する。トリコテセンは一般的には室温(27℃)で1
年まで安定である。
【0086】 Krantisら(1996)の方法を使用して、候補化合物をスクリーニングおよび特性
決定することも好ましい。これは小型化箔歪みゲージおよびコンピュータデータ
分析システムを使用して、消化管内の平滑筋の弛緩および収縮を正確にかつ瞬時
に記録するものである。これは消化管運動に対するそれらの影響について化合物
を直接スクリーニングする方法の1つである。上述のように、Krantisら(1996)
の方法は、in vivo、ex vivoもしくはin vitroでの消化管運動の摂食時および絶
食時パターンに対する化合物の影響の現実の記録を提供することができる(例え
ば実施例1および2参照)。本発明の組成物および方法で使用するための新規化
合物をスクリーニングもしくは同定するこうした方法は、候補化合物が消化管運
動活性に対して有する影響とDONなどの既知のトリコテセンが消化管運動活性に
対して有する影響とを比較することをも含む。
【0087】P 2X1 アゴニストもしくはアンタゴニストに関する結合アッセイおよびスクリーニ ング 候補化合物(「リード」化合物もしくは「試験」化合物としても称される)は
、P2X1サブタイプのプリン受容体に結合するかまたはこれを遮蔽する能力につい
て、試験またはスクリーニングすることもできる。P2X1サブタイプのプリン受容
体は、平滑筋上で発現するプリン作動性受容体であって、特に小腸内の消化管運
動の弛緩構成要素の調節に関与する。P2プリノセプターの構造については、現在
その多くが知られている(例えば、Virginioら、Mol.Pharmacol.,53:969-973(19
98);Humphreyら、Naunyn Schmiedeberg's Arch.Pharmacol.,352:585-596(1995)
;Boら、Br.J.Pharmacol.,112:1151-1159(1994);ならびにBurnstock,G.,Ciba F
ound Symp.,198:1-28(1996)(P2受容体の分類)およびSurprenant,A.,Ciba Found
Symp.,198:208-219(1996)(天然およびクローン化P2X受容体の機能的特性)の総説
、参照)。ある化合物のP2X1プリノセプターに対する結合能力も、ATPまたはATP
類似体、例えばα、βメチレンATPもしくはTNP-ATP、などの既知の受容体リガン
ドの結合能力と比較することができる。
【0088】 細胞外刺激のための細胞表面受容体の放射性標識が成功するかどうかは、高親
和性、高安定性かつ高タンパク質結合特異性があるリガンドの利用可能性による
。最近まで、特定のサブタイプのP2プリノセプターのための選択的アンタゴニス
トはなく、P2プリノセプターを競合的に阻害することがわかっていたいくつかの
化合物(例えばスラミン、反応性ブルー(reactive blue)2)がわずかにマイクロ
モル親和性でその作用を示したが、別の多くのタンパク質と相互作用する点にお
いて、特異性は欠如していた。一貫した問題点は、結合アッセイを例えば膜を用
いた条件で実施したので、受容体に対する生物学的応答を測定することができる
条件とは非常に異なっていたことである。したがって、結合定数と受容体活性定
数との間の直接の相関性を取得することは困難だった。P2プリノセプターのアゴ
ニストもまた問題を提起する。なぜならば、それらの結合親和性はその他のATP
結合性タンパク質に対するその親和性よりもわずかに高いにすぎず、またヌクレ
オチド加水分解性酵素によって加水分解を受けるからである。
【0089】 [3H]標識α、βメチレンATPは膀胱および精管平滑筋の調製品中のP2X-プリノ
セプターに対する放射性リガンドとして使用されてきた。一般的に、アゴニスト
結合親和性は無傷の組織中で観測されるものに従う。例えば、精管における結合
部位での競合に関するα、βメチレンATPと2-メチル-S-ATPの見かけの結合親和
性の差異は、わずかに約30倍であり、P2X-アゴニストではないと推定される多く
のヌクレオチドも放射性リガンドの結合を完全に阻害する。[3H]標識α、βメチ
レンATPで標識された結合部位の密度はその他のすべての神経伝達物質受容体に
ついて観測されるよりもはるかに高かった。
【0090】 P2X1受容体を発現する消化管平滑筋を分離し、単離された平滑筋細胞を一次培
養物中に維持した。これらの培養物をP2X1受容体のアゴニストもしくはアンタゴ
ニストとして作用する能力があるリード化合物もしくは候補化合物に対する結合
アッセイにおいて使用することができる。あるいは、P2X1受容体を発現する胚性
腎293細胞を 使用することもできる(Virginioら、Mol.Pharmacol.,53:969-973(
1998))。この受容体サブタイプは血小板および巨核芽細胞系中(Vialら、Throm
b.Haemost.,78:1500-1504(1997))、ならびにHL60細胞中(Buellら、Blood,87:2
659-2664(1996))でも発現される。したがって、培養中にP2X1受容体を発現する
、組換え改変細胞を含むどんな細胞も、P2X1受容体のアゴニストもしくはアンタ
ゴニストのスクリーニングにとって有用となり得る。
【0091】 P2X1プリン受容体は精製され(Valeraら、Nature,371:516-519(1994))、そし
てクローン化される(Sunら、J.Biol.Chem.,273:11544-11547(1998))。組換えP 2X1 受容体に関する結合特性が記載されている(Michelら、Br.J.Pharmacol.,118
:1806-1812(1996))。精製したP2X1受容体を、多様な連結剤のいずれかによって
、マイクロタイタープレートのウェルの表面、樹脂粒子、またはアッセイチップ
表面などの固体基体に結合させることができる。こうした準備によって、受容体
に対する結合能力について試験する化合物を非常に少量とすることができる。さ
らに、マイクロタイタープレートおよびアッセイチップでサンプルをスクリーニ
ングするために利用し得るロボット工学技術によって、技術専門家の最小限の監
視下で、数百あるいは数千の化合物を数時間で、正確かつ連続的にスクリーニン
グすることが可能である。
【0092】 上記のスクリーニング方法の1つで活性を持つことが同定されたリード化合物
または候補化合物を、例えばKrantisら(1996)の方法によって、消化管運動に関
するin vitroアッセイ、ex vivo消化器官アッセイ、および/または in vivoア
ッセイを使用して、さらに評価することができる(実施例1参照)。in vitro消
化器官浴アッセイの1つにおいて、消化器官の部分、例えば1動物から小腸の十
二指腸、空腸および回腸の部分を切除し、生理学的体温でKrebs液などの生理学
的維持媒体中に入れる。個々の消化管の部分を通常、好ましくは2つの接着点で
取り付け、輪筋活性を記録する。取り出した消化器官の部分に化合物の1つを注
射、混合もしくは適用し、器官の運動性に対する影響を測定する。ex vivo消化
器官アッセイにおいては、麻酔した動物の消化器官を露出させるが、無傷のまま
で生理学的条件を維持する。次に、試験もしくはリード化合物をその器官上に直
接適切に(局所)投与し、その器官の運動性に対する影響をモニターする。in v
ivoアッセイにおいては、化合物を動物に注入するかまたは経口摂取させて、消
化管運動に対する影響を直接測定する。
【0093】 本明細書に記載する組成物および方法での使用のために試験またはスクリーニ
ングする化合物の起源として、限定するわけではないが、小分子群、コンビナト
リアルライブラリー、真菌、細菌および各種の真核細胞培養物もしくは発酵物由
来の増殖培地または細胞抽出物、ならびにヒトおよびその他の動物由来の生体液
、組織および血清サンプルが含まれる。
【0094】治療方法、医薬組成物、投与様式 本発明は、肥満症を治療する方法において用いられる医薬組成物を提供する。
本発明の他の組成物は動物に投与して体重増加を促進するために調製されるが、
これは商用の家畜や市販の家禽の飼育において特に有用である。ヒトおよび他の
脊椎動物は、消化管運動の制御に関して同じ基本的な消化管神経生理を有する。
したがって、本明細書中に記載される方法を用いて治療することができる動物と
して、ヒトおよび他の霊長類、ブタ、ウシ、ヒツジ、トリ(家禽および他のトリ
)、ウマ、ネコ、イヌのほか、ハムスター、モルモット、ラット、およびマウス
を含むげっ歯類が挙げられるが、これらに限定されない。本明細書中に記載され
る医薬組成物および他の動物に投与するための組成物は、重大なまたは望ましく
ない副作用なしに消化管運動に対する所望の効果を達成するのに有効な量の化合
物を含む。
【0095】 本発明によれば、ヒトまたは他の動物に対し、消化管運動の摂食時パターンを
刺激または活性化し、それによって、飽食信号(signal satiety)を刺激または活
性化するのに有効な量のDONまたは他のトリコテセン、トリコテセン誘導体、
トリコテセン類似体、またはP2x1プリノセプターの非脱感受性アゴニストを
投与することにより肥満症が治療される。対照的に、TNP−ATPなどのP x1 プリノセプターアンタゴニスト、またはα,β−メチレンATPなどの脱感
受性アゴニストをヒトまたは他の動物に投与し、消化管運動の摂食時パターンを
阻害または抑制し、それによって、食事時間を延長させ、体重増加を促進するこ
とができる。
【0096】 このような組成物は、固形、半固形または液体の投与形態、例えば、錠剤、ト
ローチ剤、丸剤、カプセル、散剤、坐剤、液体、散剤、水性または油性懸濁液、
シロップ、エリキシル剤、および水溶液を含む意図された投与様式に特に適した
さまざまな形態のいずれでもありうる。医薬組成物は、消化管運動に対して所望
の影響を誘発するように計算された用量の数分の一または数倍でありうる正確な
投与量の単回投与に適した単位投与形態であることが好ましい。その組成物は、
上記の通り、薬学的に許容される担体および/または緩衝液と組み合わせた有効
な量の選択化合物を含み、また、非毒性、不活性、および薬学的に許容される他
の薬物または薬剤、担体、希釈液、賦形剤および製剤補助剤、またはこれらの組
み合わせを含むことができる。液体混合物または製剤において、リン酸緩衝生理
食塩水など薬学的に許容される緩衝液を用いることができる。「薬学的に許容さ
れる」により、生物学的に、化学的に、または他の意味で身体の化学および代謝
と不適合性ではなく、医薬組成物中に存在しうる他の成分に対して悪影響を与え
ることもない物質が意味される。
【0097】 固形組成物用の在来の非毒性固形担体としては、例えば、医薬グレードのマン
ニトール、乳糖、でんぷん、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム
、滑石、セルロース、グルコース、ショ糖、炭酸マグネシウム、などがある。薬
学的に許容される液体組成物は、例えば、本明細書中に記載された消化管運動を
調節する活性化合物および最適な医薬アジュバントを水、食塩水、水性右旋糖、
グリセロール、エタノールなどのような賦形剤に溶解または分散させることによ
り溶液または懸濁液を形成して調製することができる。好みに応じて、投与され
る医薬組成物は、湿潤剤、乳化剤、pH緩衝剤、例えば、酢酸ナトリウム、オレ
イン酸トリエタノールアミンなど少量の非毒性補助物質も含みうる。
【0098】 投与形態を調製する標準方法は、当業者には周知であり、または明らかであろ
う(例えば、レミングトン薬学(マーチン、E.M.(編集)最新版マーク パ
ブリッシング社、イーストン、PAを参照)。DONおよび他のトリコテセンの
場合、エメシス(嘔吐)を起こすことのない用量が調製される。このような催吐
を起こさない用量は動物試験で明らかにされている通り容易に決定できる(実施
例1および2を参照)。
【0099】 本発明の組成物の主要な活性成分は、消化管運動に影響を与える(調節する)
トリコテセン、トリコテセン類似体、P2x1受容体のアゴニスト、またはP x1 受容体のアンタゴニストである化合物である。DONなどのトリコテセンは
摂取すると消化管運動に対してその活性を発揮する明らかな能力がある。したが
って、本発明の好適な組成物は経口投与用に調製される。このような化合物は、
例えば、静脈内、筋肉内、または腹腔内注射により非経口的にも投与しうる。
【0100】 好適である経口投与では、本発明の組成物は、消化管運動に影響を与える化合
物を含有する微細な粉末または顆粒として調製され、希釈剤、分散剤、および/
または界面活性剤を含んでもよい。経口投与用の組成物は、溶液または懸濁液と
して水中またはシロップ中、乾燥状態の丸剤、錠剤、カプセルまたはサシエ中、
または懸濁剤が含まれる非水性溶液または懸濁液中にも存在しうる。結合剤また
は潤滑剤も経口投与用の組成物中に用いてもよい。望ましくまたは必要な場合、
香料添加剤、保存剤、懸濁剤、増粘剤、または乳化剤が含まれてもよい。錠剤ま
たは顆粒は好ましい経口投与形態であり、コーティングされていてもよい。
【0101】 非経口投与は、それが用いられる場合は、一般に注射の方法である。注射可能
な製剤は、在来の形態で、液体の溶液もしくは懸濁液として、注射の前に液体に
溶解もしくは懸濁するのに適した固体形態で、または乳濁液として調製すること
ができる。ほとんどの目的のために、消化管運動を調節することにおいて有用な
化合物を薬学的に許容される緩衝剤で静脈内注射しうる。しかし、もう一つの方
法として、このような化合物を注射部位から徐々に放出するための粘着剤を含み
うる巨丸剤として調製しうることは本発明の範囲内である。非経口投与の一方法
は、投与量の一定濃度が維持されるように、徐放性または持効性系の使用を含む
(例えば、米国特許第3,710,795号を参照)。
【0102】 本明細書中に記載された組成物および方法における消化管運動を調節すること
において有用な正確で有効な化合物の量は、対象によって異なり、対象の年齢、
体重および状態、治療される肥満の程度、用いられる特定の化合物、その投与様
式などに依存する。したがって、全個体に適用される理想的な用量として正確な
量を特定することは不可能である。しかし、一般にDONなどのトリコテセンは
0.01〜100mg/kg体重の範囲で使用または試験されることが予想され
る。さらに、特定の個体のために選択される有用な投与量は催吐を起こさない用
量、すなわち、その個体において嘔吐を誘発することのない用量となる。商用の
医薬組成物については、トリコテセン、トリコテセン誘導体、トリコテセン類似
体、P2x1受容体アゴニスト、またはP2x1受容体アンタゴニストの薬学的
に有効かつ適切な量は、ヒトに使用される場合、合衆国食品医薬品局(または同
等の機関)の基準に合致した試験において医療従事者により決定されるであろう
。動物における使用については、市販の家畜飼料または動物薬の基準または実施
に従い決定され調製されるであろう。
【0103】 本発明の別の実施形態および特徴は以下の非限定実施例から明らかであろう。
【0104】実施例 実施例1 以下の実施例は、DONが消化管の外側部位で作用し、胃および小腸の特異的
な内因性神経経路に干渉し、運動活性のパターン変化を引き起こすことを示す。
これらの所見は、DONが食欲の喪失を誘発する(動物における摂食拒否により
示される)ことを示し、このような食欲の喪失を誘発する方法を裏づける。
【0105】 通常の胃腸運動は、末梢神経系および中枢神経系(CNS)からの調節性イン
プットとともに、消化管壁の内因性(腸内)神経回路網に依存する。内因性回路
網は、蠕動反射など反射活性、または絶食パターンおよび分節運動駆動性摂食時
パターンを起こす消化間遊走性筋電性複合体(MMC)などの複雑にパターン化
した運動活性と協調する。
【0106】 ラットの胃および腸の消化間自発性運動活性を制御する経路に対するDONの
効果を検査した。ラットは催吐反射を持たないが、嘔吐と関連した病気または不
快感を示す(アンドリュース、Br. J. Anaesth., 69: 2s〜19s(1992)、ラプレイ
W. A.とヒルストM.、Lab. Anim. Sci.における要約、38: 504 (1988))
。in vivoの消化間運動パターンに対するDONの低閾値濃度の効果を検査した
。補助的な薬理学的情報を得るためにin vitroの消化管浴実験から追加の情報を
得た。
【0107】 実験は体重250〜350グラムの雄のSD系ラット(チャールズ リバー社
)で行った。すべての実験プロトコルはオタワ大学における飼養委員会のガイド
ラインに従い行った。
【0108】 水を自由に与えて24時間絶食させた個々のラットを酸素混合物中のハロタン
(4%)を用いて麻酔した。加熱スカベンジングテーブル上でハロタン(2%)
麻酔下にラットを維持し、体温を37℃に維持した。右頚動脈を露出させPE5
0管を用いてカニューレ挿入し、IBM PCデータ収集システムに接続した圧
力トランスデューサ(P23ID、グールド ステーサム社、OH)により血圧
をモニタリングした。頚静脈にカニューレ挿入し(PE50管)、静脈内(i.
v.)注射を可能にした。しかし、各種薬剤の短い半減期により、また肝初回通
過代謝を回避するため、動脈内の投与経路がしばしば必要であった。近接動脈内
(i.a.)注射により薬剤が導入される動物において、カニューレ(PE10
管)は大腿動脈から挿入し、逆方向に供給して上腸間膜動脈レベルに先端を配置
した。
【0109】 正中開腹術で対象となる胃腸部を露出した。フェト ボンド接着剤を用いて、
箔歪みゲージ(昭和型N11、ダラム インストルメント社、ピカリング、ON
)を胃幽門洞(幽門括約筋の2cm近位);十二指腸の反腸間膜縁(胃十二指腸
接合部の1〜2cm遠位);および回腸の反腸間膜縁の外側(回盲接合部の直基
部)に連続的に付着させた。すべての箔歪みゲージを縦走筋層に対して平行に方
向づけたが、これは周囲の運動活性を記録するために最も感受性の設定が得られ
るためである。箔歪みゲージからのワイヤーリードを体外に出し、3チャンネル
インターフェースボックスによってIBM PCデータ収集システムに取り付け
た。コンピュータに基づくデータ収集システムに結合した箔歪みゲージを用いて
in vivoの運動を記録し分析する詳細な方法は、クランティスら(1996年)
により記載されている。消化管運動を記録するこの方法の概略図を図1に示す。
手術の終了後、ラットを腹臥位に変え、ハロタンを実験の残りのあいだ1%で維
持した。
【0110】 ex vivoの器官標本は、箔歪みゲージ付着部位を露出して維持するためにラッ
トを仰臥位にしたまま以外、同じ外科的処置を用いて行った。これは消化管の漿
膜の表面上に直接、薬剤の局所投与を可能にした。暖めた食塩水の規則的な適用
により露出した消化管部分の湿性を維持した。
【0111】 in vitro消化管器官浴において使用するための消化管器官は、マッケイとクラ
ンティス(Can. J. Physiol. Pharmacol.、69: 199〜204(1991))に従い調製した
。ラットを安楽死させ、近位十二指腸、空腸、および回腸の4〜5cm部分を迅
速に取り出し、注意深く内容物を洗浄し、腸間膜付属物をすべて切除し、以下の
成分のクレブス液(mM)を含有する器官浴中に配置した: Na(151.
0)、K(4.6)、Mg2+(0.6)、Ca2+(2.8)、Cl(1
34.9)、HCO (24.9)、HPO (1.3)、SO 2−
0.6)、およびグルコース(7.7)。この溶液を37℃で維持し、持続的に
95%O:5%COのガスを供給し、pH7.4とした。
【0112】 次に個々の消化管部分を水平に置き、25mm離した腸間膜縁上の2つの付着
点で輪状筋活性を記録し、それぞれ対向部分をカエルハートクリップで器官浴槽
の下部につなぎ、それぞれ薄いポリエステルの紐でグラス等力トランスデューサ
に接続した。トランスデューサにより検出された機械的活性をマックラボ マッ
キントッシュ データ収集システム(アップル社、トロント、オンタリオ)によ
り直接モニタリングした。
【0113】 それぞれの付着点を1グラムの静止張力下に配置し、部分を薬剤処置前の60
分間平衡化させた。器官浴標本は15分ごとおよび薬剤投与の間に新しい浴用ク
レブス液で洗浄した。その後の薬剤投与は、少なくとも5分の平衡期間後のみま
たは基礎緊張が静止張力の90%まで回復するまで試験した。
【0114】 in vivoおよびex vivoの実験において記録された運動活性は、他の変数に加え
て、運動反応の振幅および振動数を計算するIBMデータ収集システムにより収
集し、デジタル化し、保存した(クランティスら、1996年)。制限時間内に
満たすべきユーザー規定閾値に基づき、(収縮と弛緩について別々に)一組の6
つの数値パラメーターを満たす能力によって適格な反応をマークした。これらの
パラメーターを経時的に2分間にわたりモニタリングし、必要に応じて調整して
95〜100%の精度で効果的に運動反応をマークした。次にデータを出力し、
統計分析のために表形式に編成した。
【0115】 スタットグラフィックス プラス5.0ソフトウェア(スタティスティカル
グラフィックス社)を用いた、チュ−キーの多重分析検定による一方向ANOV
Aを用いて平均値を比較した。0.05未満の確率(p<0.05)を有意とみ
なした。すべての値を実験の平均値±S.E.Mで表した。
【0116】 in vivoおよびex vivoの実験において利用したDONを含む薬剤のすべてを生
理的食塩水(0.9%)中で溶解した。注入濃度(0.5ml/分の速度で送達
)は、α,β−メチレンアデノシン三リン酸(α,β−メチレンATP、300
mg/kg)、N−ω−ニトロ−L−アルギニンメチルエステル(L−NAME
、10mg/kg)、BRL 43694(グラニセトロン、80mg/kg)
、ペントリニウム(5x10−5M)およびヘキサメトニウム(18mg/kg
、s.c.)であった。薬剤はすべてシグマ ケミカル カンパニー、トロント
、ONから購入した。ただし、α,β−メチレンATPはRBI、ナティック、
MAから得、DONはデーブ ミラー博士、アグリカルチャー カナダ、オタワ
、ONにより提供され、ミラーら(Can.J Microbiol.,29:1171-1178(1983);ミ
ラーとブラックウェル、Can.J Bot.,64: 1-5(1986);ミラーとアルニソン(Can.
J Plant Path.,8:147-150 (1986))の方法に従い生合成され、精製されたもので
あった。ラベル「mg/kg(またはmg・kg−1)」は、個々の被験者/動
物の体重キログラム当りのミリグラムを指す。
【0117】 器官浴標本(in vitro)において、またはex vivoの実験において局所に使用
される薬剤の濃度は、カルバコール(0.5mM)、パパベリン(10mM)、
ATP(0.5mM)、DMPP(50mM)、3−APS(0.5mM)(シ
グマ ケミカル カンパニー、トロント、ON)およびDON(20mM)であ
った。薬容量は浴量の1%をけっして上回ることはなかった。
【0118】 コントロール条件下に、麻酔したラットの胃および小腸は典型的な自発性運動
活性を示した。胃幽門洞において、これは振動性の収縮および弛緩運動反応から
なっていた。近位十二指腸において、自発性運動活性は、主に高振幅、高振動数
の弛緩および収縮からなる、強い「群」活性(1〜5分間持続)の期間にパター
ン化された。この「群」運動活性の期間は、主に低振幅、低振動数の弛緩および
収縮からなる、「群間」活性(3〜10分間持続)により分離されていた。「群
間」活性とは対照的に、「群」活性は反口側方向に3.4±0.6cm/分の速
度で伝播された。遠位回腸のコントロール自発性運動活性は、主にランダムに生
じる比較的高い振幅および低い振動数の収縮および/または弛緩からなっていた
【0119】 DONは、1または2mg・kg−1ボーラスで全身投与すると、コントロー
ルの運動活性に影響を与えなかった。しかし、10mg・kg−1では、以下に
述べる通り、DONは自発性運動パターンを途絶した。20mg・kg−1のD
ONの処置はそれより有意に大きな効果を生じることがなかった。
【0120】胃幽門洞 静脈内注射後2分以内に、DON(10mg・kg−1、i.v.、n=7)
は洞性運動活性を抑制し(図4)、自発性の収縮(コントロールの20±6%ま
で)および弛緩(コントロールの27±11%まで)の両方を弱めた(p<0.
05)。この効果は、運動活性が18±3分以内にコントロールレベルの90%
まで回復したため一時的であった。DONの直接の再投与は一般的に無効であっ
た。
【0121】近位十二指腸 全身DON(10mg・kg−1、n=12)注射の2分以内に、自発性十二
指腸運動活性は、交互の「群」および「群間」活性のコントロールパターンから
持続性の「群」様活性の期間(46±15分)に変化した。この活動亢進はコン
トロールの「群」運動活性と振幅または振動数には有意差がなかった。DONの
投与後60分以内に、交互の「群」および「群間」活性のコントロールパターン
が回復した。DONのその後の注射(n=6)は運動パターンを有意に変化させ
ることがなく、タキフィラキシーの発現を示した。DONに対するこのタキフィ
ラキシーは比較的短命であり、30分後のDONの再試験(n=5)では再び活
動亢進を誘発した(p<0.05)が、この活性の持続時間(24±14分)は
最初のDON誘発活動亢進に比べ大幅に減少した。
【0122】遠位回腸 DON(10mg・kg−1、n=9)の全身注射は、2分以内に、回腸の活
動亢進を誘発した。収縮および弛緩運動反応の振動数および振幅は有意に(p<
0.05)に増大した。したがって、DON存在下の回腸における消化管運動の
パターンは、食物が摂取され、消化管の中を推進される必要があるときに生じる
消化管運動の特徴的な摂食時パターンに似ていた。この効果は63±22分間持
続した。その後、運動活性は徐々にコントロールレベルに回復した。十二指腸と
同様に、DONの再投与(n=6)に対するタキフィラキシーが回腸にも発現し
た。このタキフィラキシーは90分間まで持続し、その後、活動亢進は再びDO
Nの再投与(n=6)により誘発し得た。
【0123】局所投与DONの効果 ex vivoの標本はin vivoの標本と類似のパターン化運動活性を示した。胃幽門
洞(n=3)、近位十二指腸(n=3)、または遠位回腸(n=3)の漿膜への
20mM DON(in vivoの投与量よりも大幅に上回る濃度)の直接(局所)
投与は、in vivoで確認されたものに匹敵する運動反応を誘発することはなかっ
た。検査した消化管領域の活力性は、平滑筋を弛緩するパパベリン(10mM)
、およびコリン作動性ムスカリン受容体介在収縮を誘発するカルバコール(0.
5mM)などの、平滑筋に対して直接作用することが知られている薬理学的刺激
に対する予測可能な反応を観察することで確認された。局所投与されたDONは
これらの薬剤の作用に干渉することはなかった。
【0124】 十二指腸、空腸、および回腸の単離消化管浴標本(n=5)は、それぞれカル
バコール(0.5mM)またはパパベリン(10mM)の投与に対して収縮また
は弛緩のいずれかの反応をした。また、消化管部分は、GABA受容体アゴニ
スト3−APS(0.5mM)またはニコチン性受容体アゴニストDMPP(5
0mM)を用いることにより、推定上の非アドレナリン作動性、非コリン作動性
(NANC)抑制性伝達物質ATP(0.5mM)および神経刺激に対する弛緩
反応を示した。しかし、これらの同じ標本において、DON(20mM)は無効
であった。さらに、DONは試験した薬剤に対するこれらの消化管部分の反応性
に干渉することはなかった。
【0125】DON誘発活動亢進の薬理 L−NAME: 自発性運動活性を示す麻酔したラットにおいて、一酸化窒素
(NO)合成酵素阻害剤L−NAMEは、十二指腸のNO介在「群間」弛緩を弱
め、「群」活性を強化する(未発表所見)。したがって、DONの作用に対する
L−NAMEの効果を検査した。全身投与されたL−NAME(10mg・kg −1 、n=5)は、十二指腸における弛緩の振動数および振幅のDON誘発活動
亢進を軽減することはなかった(p>0.05)(図6A、振動数、および図6
B、振幅を参照)。回腸において、L−NAMEはつねに、自発性運動活性の弛
緩の振動数および振幅の両者をDONのみの存在の場合と同じレベルまで強化し
た(図6C、振動数、および図6D、振幅を参照)。
【0126】 プリノセプタータキフィラキシー: 自発性十二指腸「群」弛緩はP2x受容
体関連プリン作動性伝達により特異的に介在される(未発表所見)。これは、こ
こで特異的アゴニスト、α,β−メチレンATPへの長期暴露によるP2xプリ
ノセプターの脱感受後に確認された。α,β−メチレンATP (300mg・k
−1、i.a、n=3) の最初の注射は顕著な弛緩を誘発した。基線緊張への
回復後、α,β−メチレンATPの再投与は無効であり、タキフィラキシーの発
現を示した。こうした条件下に、自発性十二指腸「群」弛緩および回腸弛緩は特
異的に遮断された。また、DON誘発活動亢進も十二指腸(n=8)および回腸
(n=4)におけるα,β−メチレンATP誘発タキフィラキシー中に消滅した
【0127】 ニコチン受容体: コリン作動性ニコチン性機序は基本的に腸運動の制御に関
与している(フルンネスとコスタ、Neurosci. 5:1-20(1980);ゲルスホン、Ann
. Rev. Neurosci. 4:227-272(1981)を参照)。in vivoにおいて、神経節ニコチ
ンアンタゴニスト、ペントリニウム(50mMの局所適用、n=2)またはヘキ
サメトニウム(18mg/kg、s.c.、n=2、図示せず)は、十二指腸お
よび回腸におけるDON誘発活動亢進の振動数および振幅を有意に減少させた。
【0128】 グラニセトロン: 十二指腸において、全身投与された5−HT受容体アン
タゴニストのグラニセトロン(80mg・kg−1、n=8)は、「群」活性の
自発性収縮および弛緩の振動数と振幅を弱めた(p<0.05)(図7A〜7D
におけるコントロールの群活性の白棒と密度の薄い斜線を付した棒(グラニセト
ロンのみ)を比較)。グラニセトロンのこの効果は30分間まで持続した。しか
し、十二指腸はこの薬剤の作用に対する脱感受性を示すことがなかったため、グ
ラニセトロンを反復再投与し、「群」活性の遮断を維持した。こうした条件下に
、DON(10mg・kg−1、n=5)は一貫して活動亢進を誘発した(p<
0.05)(図7A〜7Dにおける密度のもっとも濃い斜線を付した棒(グラニ
セトロン+DON)と中間の密度の斜線を付した棒(DONのみ)を比較)。
【0129】 同様に、回腸において、グラニセトロン(80mg・kg−1、i.a.)は
消化管運動を弱め(p<0.05)、自発性収縮および弛緩運動反応はそれぞれ
、コントロールレベルの40±18%(n=4)および27±10%(n=3)
になるが、しかし、DON誘発活動亢進に拮抗することはなかった(図示せず)
【0130】 これらの実験は、マイコトキシンDONに暴露した麻酔したラットにおける胃
および小腸のレベルでの運動パターンを特徴づけた。DONの全身注射は胃幽門
洞の振動性運動活性を途絶し、静止状態のパターンに代わり、十二指腸において
は、DONは伝播性および非伝播性運動活性の自発性周期性パターンの代わりに
活動亢進を誘発した。DONは回腸における現存の運動パターンの活動亢進も引
き起こした。DONにより誘発されるパターン化活性は、典型的な「摂食時パタ
ーン」運動活性を思わせた。低レベルのDON、すなわち、嘔吐または嘔吐行動
を誘発することがないレベルを用いた。DONの作用は、10mg/kgのDO
Nで最大であったが、この用量は、40mg/kg(i.v.)までのDONを
用いて摂食の変化を誘発した、げっ歯類を用いた他の試験(ラペリーら、Lab. A
nim. Sci. 38:5041(1988))に匹敵する。
【0131】 DONに対する漸進的な耐性が検査したラットにおいて明らかであった。小腸
におけるDON誘発活動亢進は60分まで持続し、その後にコントロールの運動
パターンが完全に回復した。その後、ほぼ連続的な適用後に無効であったDON
を除き、ルーチンに適用される薬理刺激に対する反応性を維持したが、これはD
ONに対するタキフィラキシー発現の特徴である。しかし、このタキフィラキシ
ーは、おそらくラットにおける高い率のDON解毒により持続しなかった(プレ
ルスキーら、Fund. Appl. Toxicol. 10:276-286(1988))。
【0132】 多くの薬剤、特に催吐剤は、中枢神経系(CNS)の自律神経節および/また
は嘔吐中枢に突出する迷走神経の求心性神経を活性化する消化管のレベルでの腸
の運動を変化させ、次に反射的に消化管を刺激する(キャステックスら、Brain
Res. 688:149-160(1995)、クベドゥーら、Sem. Oncol. 19:2-13(1992))。しか
し、ここに示したex vivoおよびin vitroの実験の結果は、単離した消化管部分
がさまざまな薬理学的刺激に対して感受性であると同時に、直接投与されたDO
Nは無効であったことを示す。したがって、DONはその効果を、消化管の外側
の部位から間接的に発揮するに違いない。この所見は、胃内対静脈内注射後のD
ON誘発効果の開始までの遅延時間の文献における一部の報告(それぞれ30分
対15分)と一致する(コポックら、Am. J. Vet. Res. 46:169-174(1985)、フ
ォーサイスら、Appl. Environ. Microbiol. 34:547-552(1977)、プレルスキーら
、Natural. Toxins, 1:296-302(1993))。
【0133】 通常の条件下に、摂食は消化管のすべてのレベルで絶食周期性運動パターンを
中断させ、連続的、不規則な低レベルの活性に代わる(分断、摂食時パターン)
。上記の通り、分断は小腸における弛緩間に挿入される狭い環状の収縮および胃
幽門洞における運動性の減少により特徴づけられる。摂食時パターンは、腸内容
物を混合し、順行性の推進を遅延させ、基質吸収を強化する(ルンドグレンら、
Dig. Dis. Sci. 34:264-283(1989))。摂食時パターンの運動は主に迷走神経の
インプットによって末梢自律神経節により活性化され、より低い程度でCNSに
より制御される(チャンら、Can. J. Physiol. Pharmacol. 70:1148-1153(1992)
、タナカら、J. Surg. Res.、53:588-595(1996)、ヨシダら、J. Pharmacol. Exp.
Therap. 256:272-278(1991))。自律神経の過活性化は摂食時パターンの開始を
速め、持続時間を増大し、同時に伝播性運動活性の振動数および振幅を増大する
(ハルら、Am. J. Physio. 250:G501-G510(1986)、ジョンソンら、Am. J. Surg.
167:80-88(1994))。この運動活性は、上で確認された小腸におけるDON誘発
活動亢進とほぼ同じである。また、洞性運動活性のDON誘発抑制および胃排出
の遅延(フィオラモンティら、J. Pharmacol. Exp. Therap. 266:1255-1260(199
3))も摂食時パターン(ハルら、1986)の特徴である。まとめると、これら
の結果は、DONは、外因性部位から、末梢自律神経節または迷走神経の遠心性
神経のいずれかによって、摂食時パターンを介在する経路を刺激することを示す
【0134】 摂食時パターンの運動は部分的に抑制性神経の影響の抑制により活性化され得
る(ルンドグレンら、1989)。したがって、消化管の外側で作用するDON
は、消化管運動を制御する腸の神経回路の持続性抑制を除去することにより活動
亢進を刺激しうる。NO(一酸化窒素)は、胃腸運動を調節する持続的に放出さ
れる抑制性介在物質であることが示されている(ダニエルら、Am. J. Physio. 2
66:G31-G39(1994)、グスタファソら、J. Aut. Nerv. Sys. 44:179-187(1993)、
フリホレンコら、J. Pharmacol. Exp. Therap. 271:918-926(1994))。in vivo
の実験において、NO合成抑制剤であるL−NAMEによる処置(10mg/k
g、i.v.)は、十二指腸および回腸の特異的な運動活性を増強することによ
り、ある程度、DONの効果に擬した。しかし、L−NAME処置は消化管にお
けるDONの作用に影響を与えることはなかった。
【0135】 これらの実験は、消化管におけるDONの効果を介在する経路への貴重な洞察
を提供する。NO合成酵素阻害剤L−NAMEは、自発性「群間」十二指腸弛緩
を選択的に遮断し、群運動活性を増強したが、DON誘発活動亢進に影響を与え
ることはなかった。対照的に、選択的に「群」弛緩を弱めたα,β−メチレンA
TP誘発タキフィラキシーも、十二指腸におけるDON誘発活動亢進を防止した
。ATPおよびNOはラットの十二指腸におけるNANCの抑制性神経伝達物質
であることを示す強力な証拠がある(カツラギら、J. Pharmacol. Exp. Therap.
, 259:513-518(1991)、マンジーニら、Eur. J. Pharmacol. 123:229-236(1986)
、ポストリーノら、J. Auton. Pharmacol. 15: 65-71(1995)、ウィンドシーフら
、Br. J. Pharmacol. 115:1509-1517(1995))。DONによるプリン作動性弛緩
のこのターゲティングは、DON誘発活動亢進がα,β−メチレンATPタキフ
ィラキシーにより遮断された回腸においても明らかであった。これまで、in viv
oの自発性回腸弛緩を介在する伝達物質の確認はラットにおいて検査されていな
い。しかし、ラットの回腸におけるNANC弛緩を介在するATPおよびNOの
多くのin vitroの機能的証拠がある(ベライら、Cell. Tiss. Res. 278:197-200
(1994)、ファルギアスら、Gastroenterol. 102:157-162(1992)、マーモッドとフ
ダルト、Comp. Biochem. Physiol. 106C:79-85(1993)、スミツら、Br. J. Pharm
acol. 118:695-703(1996))。
【0136】 ニコチン受容体遮断薬は小腸における自発性およびDON誘発運動活性を消滅
させ、これにより一部の以前の研究結果が説明される。ニコチン神経節伝達は、
腸の神経シグナルを調節し処理する興奮性および抑制性の壁内ニューロンのコリ
ン作動性刺激を介在することが知られている(ボルンシュテインら、Clin. Exp.
Pharmacol. PhysioL 21:441-452(1994)、ガーショム、Ann. Rev. Neurosci. 4:
227-272(1981))。事実、コリン作動性ニューロンは、蠕動反射およびMMCを
含む胃腸管のすべての運動パターンを介在する。したがって、ニコチンアンタゴ
ニストによる処置は、すべてではないにしてもほとんどの腸の神経回路を効果的
に遮断するとみられる。
【0137】 迷走神経の求心性神経上の5−HT部位は消化管運動活性に関連したDON
作用に関与している可能性はないが、これは全動物の露出された消化管に直接適
用するとDONは無効であったためである。5−HT受容体も摂食間運動パタ
ーンを調節する腸の回路に関与する腸筋層間ニューロンに局在し(ホイヤー、Ne
uropsychopharmacol. 3:371-383(1990)、ヨシダら、1991)、これらのニューロ
ンはDONによりターゲティングされる腸の経路内で生じるとみられる。十二指
腸における自発性「群」活性および回腸の運動活性を消滅させた十分に高い用量
での強力かつ特異的な5−HT受容体アンタゴニストであるグラニセトロンに
よる処置は、DON誘発活動亢進に影響を与えることはなかった。したがって、
DONおよび5−HTは、小腸における共通の腸成分をターゲティングする異な
る経路により作用する。しかし、DON活性化経路および5−HT受容体依存
性経路はいずれも、抑制性プリン作動性運動ニューロンの同じ集団に集中する。
【0138】 これらの所見はDON誘発摂食拒絶に対する説明を与える。DONの「低い」
閾値レベルの効果は消化管運動の途絶において著明であり、洞性運動活性が減少
し、小腸の運動活性が増強する。それと共に、これらの運動パターンは、通常飽
食と関連した「摂食状態」を例証する。こうした条件下に、ヒトまたは他の動物
は食事を止める。このDON誘発摂食時パターンは一時的であり、摂食間の周期
性パターンはすぐに回復するが、これはDON血漿濃度が閾値以下に低下するた
めと考えられる。
【0139】 この試験の一貫した特徴は、腸内P2xプリノセプター介在抑制性腸内運動神
経支配のDONによるターゲティングであった。しかし、この神経支配は、上記
の通り、ニコチン性受容体をも含むが、腸内神経回路内のニコチン性部位の広範
な分布および関与は、DONの作用を弱めるニコチン性アンタゴニストの使用を
防止する。しかしさらに有望なことは、P2xプリノセプター関連活性を活性化
することにおけるDONの特異性である。P2xプリン作動性部位は腸内経路の
高度に制限された成分を表すため、これらの部位のターゲティングは消化管にお
けるDONの効果を弱める簡単な方法を示しうる。
【0140】実施例2 in vivoのブタにおける胃腸管の自発性運動活性に対するDONの効果: 腸内P2 xプリノセプターの関与 この実施例は、トリコテセンDONが末梢神経系における部位で作用することに
より消化管運動に影響を与え、高い結合性で腸組織上のP2x1プリノセプターと結
合するP2x1プリノセプター脱感受性アゴニスト、α,β−メチレンATPによりDON
の影響が弱められることを示す。このプリン作動性ATP類似体による強度の結合
は、DONからの消化管運動のP2x1プリノセプター調節を脱感受するだけではなく
、プリノセプターアンタゴニストのように効果的に消化管運動の調節経路を停止
することもできる。
【0141】 1週間離乳させた雄のヨークシャーブタ(生体重10〜15kg)を、水を自
由に与えて12時間一夜絶食させた。手術の朝に、筋内注射によってケタミン(
8mg/kg)を用いて鎮静させた。ケタミンは解離麻酔薬であり、血圧および
骨格緊張の上昇を引き起こし、気管は硬直する。強硬症の鎮静が周囲の感覚の欠
除とともに生じる。しかし、唾液分泌が増大するため、気道閉塞の危険があるが
、アトロピンを用いることはできない。麻酔は顔面マスクを使用してハロタン酸
素混合物を用いて導入した。局所咽頭麻酔は1〜2用量のリドカインエアロゾル
(1用量当り10mg、ザイロカイン、シグマ)を用いた。次にブタに挿管し、
麻酔が手術レベルに達するように閉鎖した非再呼吸回路によって酸素(200m
l/分)中ハロタン(3〜4%)を用いて得た。電解質補充(0.9%食塩水)
および静脈内薬剤注射のためにカテーテルを表在耳静脈に挿入した。動脈内薬剤
注射のために大腿動脈もカニューレ処置した。PE205管を逆方向に供給し、
カニューレの先端を上腸間膜動脈のレベルに配置した。オンラインIBMデータ
収集システムに接続した圧力トランスデューサ(P23ID、グールド ステー
サム社、OH、USA)によって血圧もモニタリングした。次にブタに開腹術を行い
、実施例1に記載したフェト ボンド接着剤を用いて、箔ひずみゲージ(昭和型
N11、ダラム インストルメント社、ピカリング、ON)を胃腸管の漿膜上に
固定した。1つの箔ひずみゲージを胃幽門洞(幽門の遠位5〜10cm)に配置
し、第2のゲージを近位十二指腸の反腸間膜縁上(幽門から2〜10cm)に配
置し、最後のゲージを遠位回腸(盲腸の2〜10cm遠位)の漿膜上に配置した
。3つの箔ひずみゲージすべてを縦走筋層に対して平行に方向づけた。箔ひずみ
ゲージからのリードを体外に出し、インターフェイスボックスによってIBMデ
ータ収集システムに取り付けた。手術の終了後、ブタの向きを側面にし、残りの
実験の間、1〜2%ハロタンで軽度の麻酔レベルを維持した。
【0142】 データ収集ソフトウェア(AD1000アナログ・デジタル変換カード、リア
ル タイム デバイス株式会社、フランク ジョンソン博士、オタワ大学、医用
工学研究所)およびIBM互換性コンピュータを用いて、同時にすべての箔ひず
みゲージから運動活性を連続的に記録した。2組の(収縮および弛緩の)6つの
数値を満たす能力に基づき適格な運動反応を選択した。これらの値は、ユーザー
による記録の視覚的検査に基づき運動活性を効果的にマークする閾値の持続時間
および振幅パラメータを規定した。ユーザーはこれらのパラメーターを連続2分
間にわたりモニタリングし、その値を必要に応じて調整し、95〜100%の精
度内で運動反応を効果的にマークすることができる。データ収集ソフトウェアは
、収縮および弛緩運動反応の頻度、振幅、領域、ピークまでの時間および持続時
間を出力する。
【0143】 スタットグラフィックス プラス5.0プログラムを用いた、チュ−キーの多
重分析検定による一元配置のANOVAを用いて平均値を比較した。0.05未
満の確率(p<0.05)を有意とみなした。すべての値を実験の平均±S.E.M.
で表した。
【0144】 in vivoおよびex vivoの実験において利用されるDONを含む薬剤はすべて、生
理的食塩水(0.9%)中で溶解した。注入濃度(0.5ml/分の速度で送達
)は、α,β−メチレンATP(300μg/kg)、L−NAME(10mg/
kg)、グラニセトロン(80μg/kg)、ペントリニウム(5x10−5
)およびヘキサメトニウム(18mg/kg、s.c.)であった。すべての薬
剤は、RBI、ナティック、MAから得たα,β−メチレンATPおよびメチルチ
オATPを除き、シグマ ケミカル カンパニー、トロント、ONから購入した。D
ONは1986年、ミラーとアルニソンの方法に従い生合成的に生成され、精製さ
れた、デーブ ミラー博士、アグリカルチャー カナダ、オタワ、ONにより提
供された。
【0145】 胃腸管の自発性運動活性 胃: 胃幽門洞における運動活性は一般に振動性の収縮および弛緩からなって
いた。これらは対照の記録の全期間に存在するか、またはランダムに生じた。M
MCsに類似した運動パターンは胃の記録において明らかではなかった。自発性
運動活性の要約を表1に示す。
【0146】 十二指腸: 自発性運動活性は収縮および/または弛緩運動活性の不規則なパ
ターンからなっていた(表1)。場合により、第III相増大型活性(「群」活性
)および静止期間からなるMMcを示す活性が明らかであった。「群」活性の持
続時間は約5分であったが、「群」活性はわれわれの実験において2時間までし
か持続しなかった対照期間中に2ないし3回以上は生じなかったため、サイクル
寿命は正確には判定することはできなかった。絶食ブタにおけるMMCのサイク
ル寿命は70〜115分であることが知られている。われわれのブタにおいて、
「群」活性は比較的高い振幅、高い頻度の弛緩および収縮からなっており、収縮
頻度は11.9±0.5イベント/分、収縮頻度は0.08±0.01g、弛緩
頻度は12.9±0.8イベント/分、弛緩振幅は0.07±0.01gであっ
た。
【0147】 回腸: 回腸は通常、ランダムの収縮性および/または弛緩性の運動活性を示
した(表1)。MMC様活動はまれにしか確認されなかった。3分の1(n=5
)のブタにおいて、回腸の運動活性は静止状態にあったが、しかし、これらの実
験において、回腸はDON処置に対して反応性であることがわかった。
【0148】
【表1】
【0149】 DONは静脈内(i.v.)または動脈内(i.a.)経路のいずれかによって0.1m
g/kg(n=3)、0.7mg/kg(n=2)および1.0mg/kg(n
=10)で投与した。注射後5分以内に、DON(n=6)は自発性収縮および弛
緩運動反応の頻度および振幅を低下させた(p<0.05)。このDONの持続期
間は10分から不明確な時間まで持続する抑制を誘発した。対照的に、ブタ3匹
において、DONは自発性運動活性の頻度および振幅をそれぞれ、182±40%
および206±38%低下させ(p<0.05)、この効果は対照パターンに回
復する30分前まで持続した。DONのこの特異的作用は注射用量または投与経路
のいずれかと相関しなかったことは明らかである。さらに、注射用量または投与
経路も平均動脈血圧にいかなる変化も誘発せず、これは対照期間およびDON処置
期間の定常レベルを持続した。
【0150】 DONの効果は、十二指腸(n=21)においてさらに一貫しており、自発性運
動活性を常にに増強した(p<0.05)。用量1mg/kg以上のDONの全身
投与により有意な増強が一貫して誘発されたが、これは十二指腸の運動活性の頻
度および振幅を増大させた用量であることも表す。DONの頻度は活動亢進を誘発
し、一般的に実験の全期間で上昇し続けると同時に、運動反応の振幅は対照レベ
ルに次第まで回復した。
【0151】 収縮性および弛緩性の運動活性の頻度および振幅のパラメーターに対するDON
の用量効果を、0.1mg/kg、n=3;1.0mg/kg、n=12;10
mg/kg、n=3の投与量について検査した。用量反応効果が明らかなのは、
運動活性の振幅についてのみであった。また、10mg/kgでのDONによる運
動活性の強化は、1mg/kgでのDONの効果と有意差がなかった。
【0152】 DONの全身投与は回腸の運動活性の用量依存性増大を誘発した。DONは、0.1
mg/kg(n=3);0.7mg/kg(n=3);1.0mg/kg(n=
12);および10mg/kg(n=4)の用量で投与した。回腸において、用
量反応効果は運動活性の頻度および振幅の両方のパラメーターで明らかであった
。しかし、DONの最大の効果は用量1mg/kg以上で生じ、その場合に収縮性
および弛緩性の自発性運動活性の頻度および振幅はいずれも有意に(p<0.0
5)増大した。DONが活性を強化した30ないし60分後に、現在の運動活性の
頻度および振幅は低下し始めたが、しかし、DONの最初の注射から2時間後に、
運動活性は依然として対照よりも有意に高かった。
【0153】 DON誘発活動亢進に対するα,β−メチレンATPの効果 α,β−メチレンATPは常にDON誘発活動亢進中に投与した。これによってDON作
用の内部調節が生じた。用量300μg/kgでは、α,β−メチレンATPは、動
脈内投与すると、平均動脈血圧の一時的な上昇(1分未満)のみを誘発した。
【0154】 α,β−メチレンATP(300μg/kg、i.a.)の投与は常に胃における初期
弛緩反応を誘発したが、しかし、これは胃の運動活性に対するDONの効果を弱め
ることはなかった。
【0155】 注射時、α,β−メチレンATP(175μg/kg、i.a.)は通常、十二指腸の
小位相性の弛緩を誘発した。しかし、DON誘発活動亢進は影響を受けるとは思わ
れなかった。高用量のα,β−メチレンATP (300 μg/kg、i.a.)はさらに一
貫して初期位相性弛緩を誘発し(0.5±0.1g、n=10)、その後、一時
的に(3〜10分間)DON誘発活動亢進を低下させた。α,β−メチレンATPは、D
ON誘発弛緩および収縮の振幅を有意に低下させたが、頻度は有意に低下しなかっ
た(図8を参照)。α,β−メチレンATP(300μg/kg、n=3)を最初の
注射後10〜20分に再投与したところ、十二指腸は再び弛緩した。しかし、DO
N誘発活動亢進に対するさらなる効果はないように思われた。
【0156】 類似の結果が回腸において確認されたが、その場合、α,β−メチレンATP(3
00μg/kg、i.a.)は注射時に大きな位相性弛緩(1.2±0.2g、n=
6)を誘発し、DON誘発活動亢進を低下させた。回腸におけるDON誘発弛緩および
収縮の振幅および頻度におけるα,β−メチレンATPの効果は図9に示されている
。3つの試験において、α,β−メチレンATP(300μg/kg)を最初の投与
の10分以内に再投与し、タキフィラキシーも発現について試験した。α,β−
メチレンATPに対する弛緩の振幅は、この薬剤の最初の投与に比べ68±18%
減少した。
【0157】実施例3 in vivoのラット小腸における消化間(interdigestive)運動活性の非アドレ
ナリン作動性、非コリン作動性(NANC)調節 この実施例は、in vivoのラット小腸の異なる部分における消化間運動活性を
調節する神経経路の研究を提供する。この実施例のデータは、上記の実施例1お
よび2のデータと共に、腸運動性の調節が図2および図10の概略図に示された
神経回路網により調節されることを示す。
【0158】 移動性運動コンプレックス(migrating motor complex:MMC)は腸内容物
の消化間推進と関連し、蠕動のように、興奮性および抑制性経路の連続的活性化
に関与する。蠕動の基礎をなす神経回路網は、胃腸の平滑筋を神経支配する興奮
性(主にコリン作動性)および抑制性の非アドレナリン作動性、非コリン作動性
(NANC)運動ニューロンのほか、興奮性および抑制性の介在ニューロンを含
む(コスタとブルークス、Am. Gastroenterol.、89: S129-S137(1994))。しかし
、主にMMCはin vitroでの評価が容易ではないため、消化間運動性を調節する
壁内ニューロンについては従来ほとんど不明であった。さらに、in vivoのMM
Csの分析は大部分が収縮活性のみに集中していた。本明細書中に記載されたよ
うなin vivoの運動性の研究は、MMCsの特徴である増大性の腸運動活性が収
縮および弛緩からなることを示した。
【0159】 われわれは、十二指腸および回腸の自発性運動活性における、コリン作動性お
よび5−HTの関与の程度、ならびにATP、VIPおよびNOの役割を判定した
【0160】 雄のSD系ラット(250〜350g)を、水を自由に与えて24時間絶食さ
せた。手術のために、500ml/分酸素中2%ハロタンで麻酔を導入し、サー
モスタット制御の過熱テーブルおよび保温効果の高い毛布を用いて体温を37℃
で一定に維持した。右頚動脈を暴露し、カニューレ処置し、圧力トランスデュー
サ(P23ID、グールド ステーサム社、OH)によって血圧をモニタリング
した。右頚静脈を静脈内薬剤注射のためにカニューレ処置した。多くの薬剤の短
い半減期により、また肝初回通過代謝を回避するため、薬剤投与の動脈内(i.a.
)経路が好まれる場合が多かった。このため、カニューレを右大腿動脈から挿入
し、逆方向に供給して上腸間膜動脈レベルに先端を配置した。
【0161】 上記の通り、in vivoの運動性を評価するためにラットを調製した。フェト
ボンド接着剤を用いて、箔ひずみゲージを十二指腸の反腸間膜縁、胃十二指腸接
合部の1〜2cm遠位、および回腸の反腸間膜縁の外側、回盲接合部の直基部に
連続的に付着させた。ラット6匹において、2つまたは3つの箔ひずみゲージを
近位十二指腸から2cm離して取り付けた。これらの実験から、われわれは「群
」活性の増大速度を推定した。腸に配置した箔ひずみゲージはすべて縦走筋層に
対して平行に方向づけたが、これは周囲の運動活性を記録するために最も感受性
の設定が得られるためである。ラットは1時間で外科的処置から回復し、いずれ
かの薬剤投与の1時間前に対照の運動活性を測定した。手術および実験プロトコ
ルはすべて、オタワ大学における飼養委員会のガイドラインに従い行った。
【0162】 データ収集および統計分析は上記の通り行った。
【0163】 薬剤はすべて0.5mlの生理的食塩水(0.9%)中に溶解した。用量(1
分以内に送達)は、α,β−メチレンATP(300μg/kg)、メチル−S A
TP(360μg/kg)、N−ω−ニトロ−L−アルギニンメチルエステル(L
−NAME、10mg/kg)、血管作動性腸管ペプチド(VIP、4〜10μ
g/kg)、BRL 43694(グラニセトロン、80mg/kg)、アトロ
ピン(4〜6mg/kg)およびヘキサメトニウム(18mg/kg、s.c.
)であり、すべて薬剤は、RBIから得たα,β−メチレンATPおよびメチル−
S ATP;R.K.ハーディング博士から寄贈されたグラニセトロンを除き、シ
グマ社から購入した。
【0164】 自発性運動活性の部位特異的パターンはラットの小腸において容易に特徴づけ
られた。十二指腸(n=8)において、これは再発生サイクルの増大性「群」お
よび非増大性「群間」運動活性からなり、サイクル寿命は5.4±0.4分であ
った。「群」活性は、MMCsを暗示する挙動で、3.4±0.6cm・分−1 の速度で尾状に増大する集中的時間(約2〜4分)の収縮および/または弛緩運
動活性に特徴的である。「群間」活性はランダムに発生する低振幅、低頻度の弛
緩および/または収縮からなっていた。
【0165】 回腸の自発性運動活性は、弛緩(全試験動物の50%)または収縮のみ(全試
験動物の30%)のいずれかからなり、残りの実験では、収縮および弛緩運動活
性が共に発生した。1つの型の運動反応(収縮対弛緩)の優位性は、平滑筋の内
因性緊張を示すと考えられ、高い緊張を伴う組織が主に弛緩活性を示すが、低い
緊張を伴う組織は収縮をより示しやすい。一般に、自発性回腸弛緩および収縮は
比較的低い頻度で発生し、振幅は比較的高かった。実験の10%において、回腸
は第III相MMC活性に匹敵する高頻度の運動反応の周期的群発を示した。
【0166】 ATP、α,β−メチレンATPおよびメチル−S ATPの置換誘導体は、P2x
よびP2Y−プリノセプターに対してそれぞれ特異的な結合性を有する(ブルン
ストックとケネディ、Gen. Pharmacol.、16: 433-440(1985))。組織はこれらの
薬剤への長期の暴露後にタキフィラキシーを発現するため、このようにして、P 2x とP2Y−レセプター介在性反応との区別が可能であった。注射時、α,β
−メチレンATP(300μg/kg、i.a.)は十二指腸における位相性弛緩を誘
発し(1.0±0.1g、n=5)、その後、選択的に「群」弛緩の頻度および
振幅をそれぞれ、73±7%および48%±5%増強した(p<0.05)。α,
β−メチレンATPの自発性十二指腸収縮に対する効果はばらつきがあり、分析す
ることができなかった。
【0167】 回腸において、α,β−メチレンATP(300μg/kg、i.a.、n=8)は
初期位相性弛緩を誘発した。α,β−メチレンATPの直ぐの再投与は別の反応を
誘発することはなく、タキフィラキシーの発現を示した。この期間中、自発性回
腸弛緩が30分間まで増強した(p<0.05、n=8)。自発性収縮はα,β
−メチレンATP処置により影響を受けなかった。メチル−S ATP(360μg/
kg、i.a.、n=4)も回腸弛緩を増強した(p<0.05)が、メチル−S
ATPは初期位相性弛緩を誘発することはなかった。
【0168】 L−NAME(10mg/kg、i.v.、n=8)、十二指腸の自発性「群間」
弛緩の頻度および振幅をそれぞれ44±8%および66±1%選択的に増強した
。回腸において、L−NAMEは収縮(n=6)および弛緩(n=8)運動活性
を強化した。この効果はしばしば実験の全期間中持続した。L−NAMEにより
強化された弛緩は、α,β−メチレンATP(59±12%)またはメチル−S A
TP(70±3%)のいずれかにより増強された。
【0169】 「群」および「群間」運動活性の自発性収縮および弛緩、ならびに回腸の運動
活性はすべて、ニコチンレセプターアンタゴニストのヘキサメトニウムにより2
0分間まで増強した(p<0.05、n=6)。アトロピン(4〜6mg/kg
、i.a.、n=4)は自発性回腸収縮をそれぞれ、87±3%および89±7
%増強した。十二指腸収縮は同様に影響を受けた。
【0170】 VIP(4〜10μg/kg、i.a.)は十二指腸における位相性弛緩(n=8
)を誘発した。その後、VIPは一時的に十二指腸の「群間」運動活性を抑制し
(p<0.05)、「群」活性を強化した(p<0.05)。回腸において、V
IPは一貫して緩徐な収縮のみを誘発し、これは6分以内に対照レベルまで回復
した。この収縮と同時に、自発性(n=4)およびL−NAME強化(n=6)
弛緩は8分間までの間に弱まった(p<0.05)。自発性弛緩の頻度および振
幅はそれぞれ、対照の33±8%および21±5%に減少した。L−NAME誘
発弛緩の頻度および振幅はそれぞれ、対照の32±12%および14±3%に減
少した。
【0171】 5分以内に、グラニセトロン(80μg・kg−1、i.v.またはi.a.)は自発
性十二指腸「群」弛緩(n=9)および収縮(n=4)は弱まったが(p<0.
05)、「群間」運動活性に影響を与えることはなかった。「群」運動活性は4
0分間まで減少し、その後、消化間運動性の対照パターンは漸進的に回復した。
グラニセトロン処置も自発性回腸収縮および弛緩を弱めた(p<0.05、n=
4)。回腸の消化間運動パターンは、約60分以内に対照レベルに漸進的に回復
した。L−NAMEで強化された回腸運動活性の振幅もグラニセトロンの存在下
に76±8%まで弱めた(p<0.05、n=6)。
【0172】 群弛緩はα,β−メチレンATP処置の対して感受性であったが、「群間」弛緩
はNO合成酵素抑制剤L−NAMEの存在下に抑制された。対照的に、われわれ
の結果は、NOが自発性回腸弛緩のメディエーターではないことを示している。
他の結果は、分離したラット回腸標本において、ATPの適用が弛緩を誘発し、ATP
−脱感受性がこれらの弛緩を減少させることを示している(スミスら、Br. J. P
harmacol.、 118: 695-703(1996))。この試験において、P2x−プリノセプタ
ーアトニスト、α,β−メチレンATPの全身注射は回腸の初期弛緩を誘発した。
α,β−メチレンATPの直ぐの再投与は反応を誘発することがなく、タキフィラ
キシーの発現を示した。誘発されたタキフィラキシーと同時に、自発的回腸の弛
緩は抑制された。したがって、ATPは、P2x−部位によって、ラットの回腸に
おける自発性NANC弛緩を介在する伝達物質である。
【0173】 ATPは多数の腸内神経機能を示すが、これは十二指腸および回腸におけるP
−プリノセプター依存性弛緩を介在するほかに、P2Y−プリノセプターによ
ってATPが十二指腸におけるNO介在性の非増大性「群間」弛緩を刺激しうるた
めである(グラスウら、Am. J Physiol、276 (Gastrointest. Liver. Physiol.、3
8): G889-G896(1998))。本実施例において、P2Y−プリノセプターアゴニス
ト、メチル−S−ATPは自発性回腸弛緩を抑制した。しかし、α,β−メチレンA
TPと対照的に、メチル−S−ATPは注射時に回腸弛緩を誘発することはなかった
。これは、P2Y−プリノセプターが平滑筋には存在せず、または回腸の抑制性
運動神経支配内で活性ではないことを示す。データは、ラットの回腸において、
2Y−プリノセプターがP2x−プリノセプターをターゲティングするプリン
作動性NANC運動ニューロンの持続性抑制を介在する経路の活性化に関与して
いるという見解を裏づけている。P2Y−プリノセプターは持続性抑制を促進す
る一酸化窒素作動性の介在ニューロン、またはこの接合部前のインプット内の介
在ニューロンに存在するとみられる。一酸化窒素作動性のプリン作動性介在ニュ
ーロンは同じ集団をも示すとみられるが、それはATPおよびNO合成酵素がラッ
トの回腸における腸筋層間ニューロンに共に局在しているためである(ベライと
ブルンストック、Cell Tiss. Res.、278 : 197-200(1994))。
【0174】 VIPは多数の消化管部分におけるNANC抑制性伝達物質である(ボーヨら
、Eur. J. Pharmacol.、236: 443-448 (1993);ムルら、J. Auton. Pharmacol.、12: 8 1-88(1992))。これらの実験において、VIPはラットの十二指腸における一時
的な弛緩を誘発した。VIPに対するタキフィラキシーのその後の発現は収縮お
よび弛緩「群間」活性を抑制し、「群」運動活性を強化した。データは初期VI
P誘発弛緩がNOに依存し、VIP脱感作に対して感受性であることを示してい
る。したがって、VIP作動性介在ニューロンは「群間」活性の直接の運動神経
支配(一酸化窒素作動性コリン作動性の運動ニューロン)、および「群」活性の
一酸化窒素作動性の接合部前調節性インプットをターゲティングしているに違い
ない。
【0175】 これらの実験において、VIPによる処置は回腸の自発性弛緩を抑制した。V
IPは注射時に弛緩を誘発することがなかったため、VIP作動性ニューロンが
回腸の平滑筋への直接の抑制性インプットを介在する可能性は低い(スミスら、
Br. J. Pharmacol.、118: 695-703(1996))。イヌの回腸におけるin vivoの実験
において、VIPは抑制性神経作用によって環状筋運動活性の持続性抑制におけ
る主要な役割を果たしていることを示す(フォックス−スレルケルドら、Peptid
es, 12 : 1039-1045(1991))。データは、VIPが十二指腸および回腸における
プリン作動性抑制性運動神経支配のNO依存性接合部前調節をターゲティングす
るという見解を裏づけている。これらのプリン作動性運動経路は特に小腸の増大
性運動活性を発生させる。さらに、VIPは特にMMCsの第III相活性を抑
制し、VIPアンタゴニストは第III相活性を開始させる(ヘルストロームと
ユング、Neurogastroenterol. Motil.、8: 299-306(1996))。結論は、VIPは
ラットの回腸におけるプリン作動性運動ニューロンの興奮性運動インプットおよ
び抑制性の一酸化窒素作動性接合部前インプットを同時に刺激するということで
ある。
【0176】 消化間運動コンプレックスのすべての成分は迷走交感神経統合性に依存してい
る(チャンら、Am. J. Physio.、267: G800-G809 (1994); ガリガンら、J. Pha
rmacol. Exp.Therap.、238: 1114-1125(1986))。胃腸運動性を調節するコリン作
動性介在性ニューロンは、ニコチン性シナプスを介して作用するが、平滑筋上の
ACh(アセチルコリン)の作用はムスカリン性レセプターを介して行われる。
アトロピンは小腸のすべての自発性収縮を抑制した。この研究の結果は、十二指
腸および回腸の自発性消化間運動活性のすべてが持続的に駆動され、ニコチン性
レセプター遮断に対して感受性であることを示している。
【0177】 in vitroの研究は、神経性由来の5−HTがプリン作動性NANC弛緩(ブリ
エールら、Naunyn-Schmiedebergs Arch. Pharamacol.、351: 126-135 (1995);
ブリエールら、J. Pharmacol. Exp. Therap.、274: 641-648(1995))、およびコ
リン作動性収縮(ブリエールら、Eur.J. Pharmacol.、308: 173-180(1996))を刺
激することを示している。この研究におけるin vivoの結果は、5−HTレセ
プターが十二指腸および回腸における自発性コリン作動性収縮およびプリン作動
性弛緩を介在する運動経路内に含まれていることを示している。
【0178】 ラットの十二指腸および回腸における自発性運動活性を調節する提案された持
続性および調節性経路内のコリン作動性、一酸化窒素作動性、GABA作動性、
プリン作動性およびVIP作動性神経成分の配置の概略が図10の簡単に示した
配線図に示されており、これは経路におけるP2xおよびP2Yレセプターの重
要な位置も示している。類型的な運動性パターンは、駆動回路が「腸内神経プロ
グラム」により決定される興奮性および抑制性運動経路を活性化するときに誘発
される。しかし、抑制性介在性ニューロンからの連続的な駆動が筋性活動静止状
態を維持する。この同調の抑制および脱抑制には、抑制性の一酸化窒素作動性イ
ンプットが介在し、運動活性の現存の基線上に周期性の(消化間)運動性パター
ンを発生させる、持続的に活性な運動経路といっしょにこれらの接合部前ニュー
ロン経路を正確に調節する。GABA作動性/一酸化窒素作動性の組合わせ経路
回路は回腸には存在しない。
【0179】実施例4 自発性胃腸運動活性に対するDONおよびDON性誘導体の効果 本実施例は、DONと同様の方法で消化管運動の摂食時パターンを誘発するDON性
誘導体の能力を示す。
【0180】 DONの試験および消化管運動に対するその効果の記録のために前記実施例に説
明した方法を用いてラットにおけるDONとの比較研究用にDON誘導体を選択した。
代表的なDON誘導体の1つは、3−アセチルDON(C1722)であった。
他の新しいDON性誘導体も試験のために選択した。すなわち、イソプロピリジンD
ON(すなわち、EN139491で示される式C1824を有する、3−
ヒドロキシ−7,15−イソプロピリジン−12,13−エポキシ−9−トリコ
テシン−8−オン);イソプロピリジン−3−アセチル−DON(すなわち、EN
139492で示される、式C2026を有する、3−アセチオキシ−7
,15−イソプロピリジン−12,13−エポキシ−9−トリコテシン−8−オ
ン);DONカーボネート(すなわち、EN139494で示される式C16
を有する3−ヒドロキシ−12,13−エポキシ−9−トリコテシン−8
−オン−7,15カーボネート);3−アセチル−DONカーボネート(すなわち
、EN139495で示される式C1820を有する、3−アセトキシ−
12,13−エポキシ−9−トリコテシン−8−オン−7,15カーボネート)
;3−アセチル−DONベンジリデンアセタール(すなわち、EN139496で
示される式C24268を有する、3−アセトキシ−7,15−ベンジリデン−
12,13−エポキシ−9−トリコテシン−8−オン);およびDON−ベンジリ
デンアセタール(すなわち、EN139497で示される式C2224
有する、3−ヒドロキシ−7,15−ベンジリデン−12,13−エポキシ−9
−トリコテシン−8−オン)を選択した。DONおよびこれらの代表的なDON誘導体
の化学構造は図3Aおよび3Bに示されている。
【0181】新規DON誘導体の合成 イソプロピリジンDON(EN139491) : 0℃にて無水アセトン2.0ml中にデオキシニバレノール(DON)50mg
(0.168mmol)および2,2-ジメトキシプロパン70mgを含む溶液
にp−トルエンスルホン酸を約1mg添加した。反応混合液を攪拌し室温まで温
めた。反応の進行を薄層クロマトグラフィー(TLC)でモニタリングし、5時
間後に反応が終了したことを判定した。溶剤を蒸発させ、粗製物を水2mlと酢
酸エチル5mlの間に分配した。有機層を飽和NaHCO2mlで洗浄した
後、飽和ブライン2mlで洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥させた。溶剤を
蒸発させ、残留物を酢酸エチルとへキサンの6:4の混合物を用いてシリカゲル
上でクロマトグラフィーを行った。これにより38mg(67%)の白色固形物
が得られた。
【0182】 H NMR 分析(CDCl、200 MHz):δ: 6.81 (m
,1H)、4.82(m,1H)、4.45(s,1H)、4.40 (m,l
H)、3.85(bs,2H)、3.61(d,J=8.0 Hz,1H)、2
.91(d,J=8.0 Hz,1H)、1.91−2.10(m,2H),1
.99(s,3H)、1.49(s,3H)、1.26(s,3H)、0.99
(s,3H)。OH基のピークはこのスペクトルに検出されなかった。 質量分析データにより、図3Aに示したイソプロピリジンDON(EN1394
91)の構造が確認された。
【0183】イソプロピリジン−3−アセチル−DON(EN139492) : 本化合物は、3−アセチル−DON 70mgおよび2,2-ジメトキシプロパン 87mgで開始して収率62%で調製された。生成物は、溶離剤として酢酸エ
チルとへキサンの1:5の混合物を用いてシリカゲルクロマトグラフィー後に白
色固形物として得られた。
【0184】 H NMR分析(アセトン−d6,200 MHz):δ:6.67 (d
,J=8.0 Hz,1H)、5.09(m,1H)、4.81(m,2H)、
3.85(d,J=8.0 Hz,1H)、3.51(bs, 2H)、3.1
2(m,2H)、2.61(dd,J=8.0 Hz,16.0 Hz,lH)
、2.01(s,3H)、1.99(dd,J=8.0 Hz,1H,16.0
Hz)、1.82(s,3H)、1.25(s,6H)、1.15(s,3H
)。 質量分析データにより、図3Aに示したイソプロピリジン−3−アセチル−DO
N(EN139492)の構造が確認された。
【0185】DON−7,15−カーボネート(EN139494) : CHCl 1ml中のトリホスゲン(5mg、0.016mmol)を、
-78℃下、無水ジクロメタン1ml中にDON 10mg(0.033mmol)
およびピリジン0.015mlを含む溶液に滴下により添加した。反応混合物を
室温まで温め、さらに6時間攪拌した。溶剤および残った揮発性試薬を蒸発させ
、溶離剤として酢酸エチルを用いたシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより
残留物を精製した。白色固形物であるDON−7,15−カーボネートの収量は1
0mg(99%)であった。
【0186】 H NMR分析(アセトン−d6,200 MHz):δ: 6.71(d
,J=8.0 Hz, 1H)、5.49(s,1H)、4.81 (d,J=
8.0 Hz,1H)、4.51(m,3H)、4.31(d, J=16.0
Hz, 1H)、3.51(d,J=4.0 Hz,1H)、3.21(m,
2H)、1.90 2.21(m,2H)、1.86(s,3H)、1.01(
s,3H)。 質量分析データにより、図3Bに示したDON−7,15−カーボネート(EN
139494)の構造が確認された。
【0187】3−アセチル−DON−7,15−カーボネート(EN−139495) : 本化合物は、3−アセチル−DON 20mg、ピリジン 0.023ml、お
よびトリホスゲン 10mgで開始して収率99%で調製された。生成物は、溶
離剤として酢酸エチルとヘキサンの7:3の混合物を用いてシリカゲルクロマト
グラフィー後に白色固形物として得られた。
【0188】 H NMR分析(CDCl3,200 MHz):δ: 6.61(d,
J=8.0 Hz,1H)、5.36(m,1H)、5.29(s,1H)、
4.49(d,J=8.0 Hz,lH)、4.41(d,J=16. 0 H
z, 1H)、4.19(d,J=16.0 Hz,1H)、3.95(d,J
=4.0 Hz,1H)、3.20(m,2H)、2.39 (s,1H)、2
.12(s,3H)、1.92(m,1H)、1.92 (s,3H)、1.1
2(s,3H)。 質量分析データにより、図3Bに示した3-アセチル-DON-7,15-カルボネート(EN1
39495)の構造が確認された。
【0189】7,15-ベンジリデン-3-アセチルDONアセタール(EN-139496) : この化合物は20 mgの3-アセチル-DONおよび13 mgのベンズアルデヒドジメチル
アセタールから開始して、95 %の収率で調製された。この生成物は、4:6の酢酸
エチル-ヘキサン混合物を展開剤として用いるシリカゲルクロマトグラフィーの
後で白色の固体として得られた。
【0190】 1H-NMR分析(CDC13,200 MHz):δ: 7.45 (m, 5H), 6.81 (d, J = 8.0 Hz, 1H),
5.39 (s, 1H), 5.10 (m, 1H), 4.90 (s, 1H), 4.35 (d, J=8. 0Hz, 1H), 4.31 (
d, J=16. 0Hz, 1H), 3.81 (d, J = 16.0 Hz), 3.81 (d, J = 16 Hz, 1H), 3.21
(m, 2H), 2,20-2.45 (m, 2H), 2.01 (s, 3H), 1.91 (s, 3H), 1.31 (s, 3H)。 質量分析データにより、図3Bに示したイソプロピリジン-3-アセチル-DON(EN13
9496)の構造が確認された。
【0191】7,15-ベンジリデン-DONアセタール (EN139497) : 2 mlの無水アセトニトリル中の25 mg (0.084 mmol) DONおよび20 mg (0.126 m
mol) ベンズアルデヒドジメチルアセタール(20 mg, 0.126 mmol)の溶液に、約 1
mgのp-トルエンスルホン酸を添加した。反応混合物を室温で2時間にわたり混
合し、溶媒を蒸発させた。粗製残存物を酢酸エチル(5 ml)中に取り、飽和重炭酸
ナトリウム溶液(2 ml)で、続いて水(2 ml)で洗浄した。有機層を分離し、無水Mg
S04で乾燥させ、濃縮して粗製生成物を得た。これをカラムクロマトグラフィー(
7: 3の酢酸エチル-ヘキサン)により精製して27 mg (87 %)の表題の化合物を白色
固体として得た。 1H NMR (アセトン-d6, 200 MHz)分析:δ: 7.45 (m, 5H), 6.
75 (d, J = 8.0 Hz, 1H), 5.35 (s, 1H), 4.95 (s, 1H), 4.51 (d, J = 8.0 Hz,
1H), 4.49 (m, 1H), 4.25 (d, J = 16.0 Hz, 1H), 3.85 (d, J = 16.0 Hz, 1H)
, 3.45 (d, J = 5.0 Hz, 1H), 3.11 (m, 2H), 2.10 (m, 2H), 1.85 (s, 3H), 1.
25 (s, 3H)。OH基のピークはこのスペクトルには位置しなかった。 質量分析データにより、図3Bに示したイソプロピリジン-3-アセチルDON(EN139
497)の構造が確認された。
【0192】 局所的に投与されたDON(10 mg/kg, i. v.)により、ラットの胃および十二指腸
において典型的な消化管運動の摂食時パターンが誘導された(図11を参照)。DON
は急速に胃腔(S1部位)の運動活性を低減させ、十二指腸において持続的な運動亢
進を誘導した(十二指腸D1部位近傍)。60分以内に、対照の運動パターンが回復し
た。時には、トリコテシン誘導性の運動亢進は、最初の高い振動数の運動活性(
振幅は、「群間」応答より大きいがMMC運動活性より小さい)という特徴を有する
ものであった。これを図11に示す。この最初の期間は3〜10分間続き、その後振
幅はMMCレベルまで増加した。
【0193】 3-アセチル-DON(10 mg/体重kg(kg bw)、i. v.)により、ラットの胃と十二指腸
において典型的な摂食時パターンの運動活性が誘導された(n = 4)。図12は作用
の開始までの時間(1分)と作用の持続(40±4分)がDONについてのものと類似して
いることを示す。図13は、静脈内に投与された3-アセチルDONの、ラットの胃腔(
S1)および周辺の十二指腸(D2)における自発的運動活性に対する作用を示す。60
分以内に、対照の運動パターンが回復した。
【0194】 EN139491の静脈内投与(10 mg/kg bw)から30秒以内に、十二指腸において長時
間持続する(40±1.75分、n = 6)運動亢進が生じ、胃腔において同時にかつ並行
して運動活性の低減が生じた。これはDONについて見られる典型的な作用である
。図14は、ラット十二指腸(D1)および胃腔(S1)における典型的なin vivo運動活
性の記録を示す。この図は消化管運動活性の絶食時パターンに対する化合物EN13
9491の作用を示すものである。記録の最上部のパネルはいずれの薬物処理も受け
ていない通常の絶食時パターン運動活性の20分間を示す。この期間の間、十二指
腸は低振動数の自発的運動活性の典型的なパターンを、運動活性の増大と共に示
す(MMC)。胃腔は典型的な律動的運動活性を示した。記録の第2のパネルはEN139
491の注入時の活性を示す。注入から30秒以内に、十二指腸内の長時間持続する(
40〜60分)運動亢進および胃における同時かつ並行した運動亢進の低減が生じた
。このEN139491誘導性運動活性は、摂食時パターン運動活性に典型的なものであ
った。絶食時パターン運動活性の回復は、図14の下部のパネル中に示されている
。図15は、D2(即ちD1ストレーンゲージから1.5 cm遠方)において記録された、EN
139491が十二指腸運動活性に対して有していた作用の記録を示す。図15に示され
る通り、このEN139491によるD2における摂食時パターンの誘導と持続の記録は、
図14に示される十二指腸のD1部位において記録された結果と類似のものであった
【0195】 EN139491により誘導される消化管運動活性の、摂食時パターンの個々の弛緩と
収縮の構成要素の特性を、同様により詳細に分析した。この分析において、十二
指腸D1部位においてEN139491によって誘導されたMMCと摂食時パターンの弛緩ま
たは収縮構成要素の振幅と振動数は、絶食時パターンの通常の「群間」活性にお
いて観察される弛緩または収縮構成要素の振動数および振幅(各動物の内部対照
として機能)それぞれのパーセントとして表した。分析の結果は、EN139491によ
り誘導された摂食時パターンの弛緩構成要素の振幅(図16)および振動(図17)の双
方が、消化管の自発的な「群」MMC活性において見られるものと比較し得るもの
であることが示された。同様に、EN139491により誘導された摂食時パターンの収
縮構成要素の振幅(図18)および振動(図19)の双方が、消化管の自発的な「群」MM
C活性において見られるものと比較し得るものであることが示された。これらの
結果は、EN139491により誘導される摂食時パターンは、DONにより誘導される摂
食時パターンと同様の特徴を有することを示した。
【0196】 EN139491の場合と同様に、DON誘導体であるEN139492(10 mg/kg bw)の静脈注入
から30秒以内に、長期間持続する(48.5±2分、n=6)運動亢進が十二指腸のD1およ
び D2部位において誘導され、また胃腔S1部位において同時かつ並行した運動活
性の低減が生じた。in vivo消化管運動活性に対するこれらの効果の例を図20に
示す。図20は、ラット十二指腸D1およびD2部位、および胃腔S1部位における運動
活性の典型的なin vivo記録を示す。この記録は、EN139492の消化管運動活性の
絶食時パターンに対する作用を示す。記録の最上部のパネルは、DONまたはDON誘
導体の不在下での通常の絶食時パターン運動活性の40分間以降の記録を示す。こ
の期間の間、十二指腸は自発的運動「群間」活性の典型的な低振動数パターンを
「群」運動活性(即ち「MMC」)の増大と共に示した。胃腔は典型的な律動的運動
活性を示した。注入から30秒以内に、十二指腸において長時間持続する運動亢進
が開始され、また胃腔において同時かつ並行した運動活性の低減が生じた。
【0197】 EN139492により誘導された消化管運動活性の摂食時パターンをより詳細に分析
すると、弛緩および収縮構成要素の振動数と振幅は、消化管のMMC活性の弛緩お
よび収縮構成要素の振動数と振幅と、少なくとも比較し得るものであることが判
明した(データは示さず)。このように、EN139491と同様に、DON誘導体であるEN1
39492は、DON(構造上の親であるEN139491およびEN139492)により誘導された摂食
時パターンと比較し得る、消化管運動活性の摂食時パターンを誘導する能力を有
する。
【0198】 上記のEN139491およびEN139492に関する研究に用いた方法と同様の方法により
、DON誘導体化合物(DONカーボネート(EN139494)および3-アセチル-DONカーボネ
ート(EN139495)と称する)(図3B参照のこと)も試験し、これらが、運動活性の摂
食時パターンを、構造的に元になったDONにより誘導されるレベルに最低でも匹
敵し得るレベルで誘導し得ることを示した。トリコテセンに基づく誘導体である
EN139495(10mg/kg)を静脈注射すると、ハロタン(halothane)で麻酔した雄のSpra
gue Dawleyラット(n=4)の近位十二指腸(D1)および胃腔(S1)で記録された消化管
の典型的なin vivoの摂食時パターンの運動活性を誘導した。EN139495の作用は
、注射後40秒以内に明らかに認められ、40〜60分間作用が持続した。S1収縮の振
幅および頻度は、それぞれ対照の運動活性の59±8.7%および64.25±12.0%SEM
に減少した。胃腔の弛緩の振幅および頻度も、それぞれ28.4±3.4%および48.0
±10.5%SEMに減少した。腸(D1)において、顕著な活性亢進があった。即ち、収
縮の振幅および頻度は、それぞれ対照の運動活性の119.0±12.0%および1598.8
±421.9%SEMに増加した。弛緩の振幅および頻度もまた、それぞれ331.0±39.8
%および724.4±180.75%SEMに増加した。
【0199】 実験の約20%において、3-アセチル-DONおよびEN139491誘導性の活性亢進は、
即効性の大きな振幅活性を示さなかった。この実施例は、図15に示している。初
期に高頻度の運動活性が認められたが、大きな振幅の運動活性は遅延し、「群間
」応答より大きな応答により取って代わられるが、MMC運動活性より小さい応答
では取って代わられることはなかった。振幅におけるこの「遅延」が起こる場合
は、通常3〜10分持続した。その後、誘導された活性亢進の振幅は図16〜19に示
すように、MMCレベルまで増大した。これらのDON誘導化合物の相違のある初期作
用は、消化管運動活性の誘導された摂食時パターンの持続期間に対しては影響を
与えなった。
【0200】 1回目の注射から90分以内でのDONまたはその誘導体の近位再適用は典型的な効
果を示さなかった。120分後に、DONおよびその誘導体は再び効果を示し、消化管
運動活性の摂食時パターンを誘導することができた。
【0201】 以上の結果は、DONおよびDONの誘導体ファミリー、3-アセチル化DON(これは、
全てのトリコテセンのうち最も毒性が低いと報告されている)が消化管運動活性
の摂食時パターンを誘導する能力を調べた。さらに、2つのDONに基づく新規誘導
体(EN139491およびEN139492)を合成し、これらが最低でもDONに匹敵し得る様式
で消化管運動活性の摂食時パターンを誘導し得るということを示した。全ての誘
導体(10mg/kgの1mlの一回の静脈内ボーラス投与により調べた)は、DONの一回の
ボーラスの静脈注射の作用と同様のプロファイルを示した。即ち、麻酔したSpra
gue Dawleyラットに静脈注射した後1分以内に、胃十二指腸の自発性絶食時運動
パターンが典型的な摂食時パターンの運動活性に変化した。胃腔では振動性運動
活性は静止パターンに変わり、十二指腸においては、DONは周期性の「群」のMMC
パターンに替えて持続的な活性亢進を誘導した。この効果は40〜60分持続し、そ
の後自発性運動活性は運動活性の絶食時パターンへと回復した。DONおよびその
誘導体のいずれも、血圧、心拍速度または呼吸速度に明らかな影響をもたらさな
かった。
【0202】実施例5 選択的P 2X1-2x3 プリノセプターアンタゴニストである2',3'-O-(2,4,6-トリニト ロフェニル)アデノシン三リン酸(TNP-ATP)の影響 本実施例は、消化管運動活性の制御、およびP2X1-2x3プリノセプターアンタゴ
ニストであるTNP-ATPのP2X1プリノセプターを阻害する能力、すなわち、DONまた
はDONに基づく誘導体により誘導される消化管運動活性の摂食時パターンを阻害
する能力に消化管組織の平滑筋に存在するP2X1プリノセプターが直接的に関与し
ていることを示す。
【0203】 上記の実施例において、ラットおよびブタの胃十二指腸の内在性運動抑制神経
支配の薬理学は、特異的な一酸化窒素(NO)合成阻害剤およびプリノセプター介
在性応答の阻害剤(一般的なP2受容体のアンタゴニスト、スラミンおよび一般的
なP2Xアゴニスト、α,β-メチレンATP、およびP2Yアゴニスト、メチル-チオール
-ATPなど)を用いて特性解析された。これらのプリノセプターアゴニストのそれ
ぞれに対する近位再チャレンジ(proximate re-challenge)は、顕著な組織タキ
ヒラキシー(これは、対応するプリノセプターを阻害するために開発された)に
より示された。その結果により、ラットの近位十二指腸のパターン化された自発
性運動活性における弛緩は、NOまたはATPのいずれかに示差的に依存しているこ
とが示された。即ち、十二指腸の「群」のMMC弛緩は、α,β-メチレンATP処理に
感受性であったが、「群間」の弛緩はNO合成阻害剤であるL-NAMEでの処理により
阻害された。さらに、このデータから、NOは回腸の自発性弛緩のメディエーター
ではないことが示された。この回腸弛緩は、MMCの関連する弛緩と同様にP2Xプリ
ノセプターを介して作用するATPに依存していた。
【0204】 前述の実施例もまた、いずれかの運動構成要素の妨害が運動活性のDON誘導性
摂食時パターンを効果的に阻害することも示した。該実施例において、腸管内の
DON誘導性摂食時パターンの運動活性において起こる弛緩がP2X1プリノセプター
サブタイプにより媒介されているという仮説をさらに検討した。この検討には、
in vitroでサブタイプ選択性アンタゴニストとして使用されてきた新規プリノセ
プターアンタゴニストであるTNP-ATP (完全な組織でのIC50はμMレベルである)(
Lewisら、Br. J. Pharmacol., 124: 1463-1466(1998))を用いて、P2X1およびP2X 3 のホモマー性およびP2X2/3のヘテロマー性のプリノセプターの作用を測定した(
Virginioら、Mol. Pharmacol., 53: 969-973(1998))。P2X3受容体は、感覚神経
上にのみ発現されていると報告されている(EvansおよびSuprenant、Semin. Neur
osci., 8: 217-223 (1996))。この研究により、P2X1選択的アンタゴニストTNP-A
TPのin vitroでの1つ目の使用が提示される。その目的は、胃十二指腸のパター
ン化された運動行動の制御におけるP2X1受容体の役割を調べ、P2X1プリノセプタ
ーサブタイプが消化管におけるDON誘導性活性亢進を媒介するという仮説を直接
検証することである。
【0205】 4容量のTNP-ATPを、上述の通りラットをモデルとしてin vivoで調べた。Sprag
ue Dawleyラットの血圧、呼吸速度、蒼白さ、および一般的健康状態を継続的に
モニターした。TNP-ATPは、実験(しばしば、6時間に渡って継続した)を通して上
記のパラメーターにおける明らかな効果を示さなかった。
【0206】 TNP-ATPは、消化管の自発性運動活性に対する影響は呈さなかった(データは示
していない)。対照的に、TNP-ATPを1回のボーラスで静脈注射した場合、顕著か
つ特異的に十二指腸の自発性弛緩に影響を与えた。2.5mg/kgでは、TNA-ATPの影
響はほとんど観察できなかった。これとは異なり、4.5および5mg/kgは過剰容量
であると考えられ、その効果は矛盾したものであった。場合によっては、このよ
うな相対的に高い容量では消化管の運動活性に対して何らかの非特異的な影響が
見られた。
【0207】 TNP-ATPを3.5mg/kgで投与した場合、その作用は再現性に優れ、かつ特異的な
ものであることが明らかになった。ラット十二指腸(十二指腸D1部位)における自
発性運動活性へのTNP-ATP(3.5mg/kg)の静脈注射の影響を示すin vivoでの典型的
な記録を、図21に示している。TNP-ATPは注射の際の応答は全く誘起しなかった
。しかし、注射後1分以内に、MMCが関与する弛緩が低減された。「群間」の運動
活性には顕著な影響はなかった。MMCが関与する弛緩の運動活性は、TNP-ATP注射
後30分以内に対照レベルの90%まで回復した。
【0208】 ラットの胃および十二指腸のDON誘導性摂食時パターンの運動活性へのTNP-ATP
(3.5mg/kg)の静脈注射の影響を示すin vivoの記録を図22(十二指腸D1部位の記録
)および図23(十二指腸D2部位および胃前庭S1部位)に示している。他の全ての実
験と一致するように、TNP-ATPは注射の際には全く応答を誘起しなかった。しか
し、注射後1分以内に、DON(10mg/kg、静脈注射)の効果は顕著に低減された。TN
P-ATPのこの阻害作用は、初期の顕著な効果(80%に及ぶ阻害)が約5分間継続し、
その後の比較的顕著さを失った(40%に及ぶ阻害)効果からなるが、DONの作用と
の顕著な拮抗作用は含んでいない。
【0209】 DONの作用に対抗するTNP-ATPの能力は、図24〜27にグラフとして示している。
図24〜27の棒グラフは、近位十二指腸(D1)で記録されたTNP-ATPでの静脈処理のD
ON誘導性弛緩および収縮に対する影響を示している。DON誘導性弛緩の振幅(図24
)および頻度(図25)に対するTNP-ATPの影響を「群」のMMCおよび対照の「群間」
の運動活性の弛緩構成要素の振幅および頻度(これを100%と設定する)と比較した
。同様に、DON誘導性収縮の振幅(図26)および頻度(図27)に対するTNP-ATPの影響
を「群」のMMCおよび対照の「群間」の運動活性弛緩構成要素の振幅および頻度
と比較した。TNP-ATPの影響の一貫した動向は、DON誘導性十二指腸の活性亢進の
振幅の特異的な低減に見られたが、その頻度には認められなかった(図24〜27の
白い棒と格子模様の棒とを比較のこと)。十二指腸におけるDON誘導性活性亢進の
弛緩構成要素の頻度に対するTNP-ATPの影響は、TNP-ATP投与後20秒以内に明らか
に認められ、該弛緩構成要素の頻度の最大の低減は2分以内に認められた。DONが
誘起する活性亢進は、TNP-ATP投与後35分以内に再開してTNP-ATP投与前のレベル
の90%まで回復する。
【0210】 選択的P2X1プリノセプターアンタゴニストであるTNP-ATPの影響を測定した。
該アンタゴニストの1回の静脈内ボーラス注射はMMCが関与する弛緩を迅速かつ特
異的に低減し、これは、消化管運動活性へのP2X1プリノセプターの関与を示唆す
る。1回のボーラス注射でのTNP-ATPの静脈注射はDON誘導性の摂食時パターンを
容量依存的な様式で(一過性に)低減した。これらの結果より、一般的P2Xレセプ
ターアンタゴニストを用いたデータの動向が確認された。P2Xプリン作動性部位
は、消化管経路の非常に限定された構成要素を示す。この結果は明らかに、P2X1 レセプターサブタイプが十二指腸における内在性プリン作動性抑制神経支配を媒
介しており、これらの受容体を阻害することにより消化管におけるDONの収縮作
用に対する単純なアプローチが提示され得る。さらに、係るデータは、これらの
受容体部位が摂食行動を制御する薬剤の開発における潜在的標的であるというこ
とを支持するものである。
【0211】 本文中で引用する全ての刊行物は、参照として本明細書中に組込むものとする
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1は、Krantisら(Can. J. Physiol. Pharmacol., 74: 894-903 (1996))の
、ラット(1)のような麻酔した実験動物における胃腸運動を記録するために用い
られるin vivoセットアップの概略図を示す。
【図2】 図2は、十二指腸および回腸における消化管運動の摂食時パターンおよび絶食
時パターンを制御する神経経路の概略図を示す。
【図3】 図3Aおよび3Bは、4-デオキシニバレノール(DON)および関連する誘導体化合
物の化学構造を図式的に示す。
【図4】 図4は、対照動物におけるラット胃腔の自発性運動活性の記録を示す。この記
録は、収縮および弛緩反応の振動相を示している。
【図5】 図5は、ラット十二指腸の対照活性であるin vivo運動パターンの記録の1例
を示す。
【図6】 図6A〜6Dは、ラット十二指腸および回腸におけるDON誘導性弛緩の振動数(Fr
eq)ならびに振幅(Amp)についての、L-NAMEおよびα,β-メチレンATPの効果の定
量的解析から得られたデータを示す(十二指腸について図6Aは振動数、図6Bは
振幅、回腸について図6Cは振動数、図6Dは振幅)。
【図7】 図7A〜7Dは、ラット十二指腸における自発性かつDON誘導性の活性に対する
、5-HT3受容体アンタゴニストであるグラニセトロンの効果の定量的解析の結果
を示す。
【図8】 図8は、子豚の十二指腸の収縮および弛緩に関するDON増強された運動活性に
対するα,β-メチレンATPの効果を(対照に対するパーセントとして)示す棒グ
ラフである。
【図9】 図9は、子豚の回腸のDON増強された運動活性(収縮および弛緩)に対するα,
β-メチレンATPの効果を(対照に対するパーセントとして)示す棒グラフである
【図10】 図10は、ラット十二指腸および回腸における自発性運動活性を制御するとさ
れている緊張性およびモジュレーション性経路中のコリン作動性、一酸化窒素作
動性、GABA作動性、プリン作動性およびVIP作動性の神経構成要素の配置につい
ての概略図を示す。
【図11】 図11は、ラット胃腔(S1部位)および近位十二指腸(D1部位)の対照である
自発性運動活性の記録の一例を示す。
【図12】 図12は、ラット胃腸のin vivo運動活性に対する3-アセチルDONの効果を示す
【図13】 図13は、ラット胃腔(S1)および十二指腸(D1)における自発性運動活性に
対する体重1kg当たり10mgを静脈内投与された3-アセチルDONの効果を示す。
【図14】 図14は、ラット十二指腸(D1)および胃腔(S1)における運動活性の典型的
なin vivo記録を示しており、これは「絶食時パターンの」運動活性に対する化
合物EN139491の効果(静脈内に10mg/kg bwの場合)を表している。
【図15】 図15は、D2部位(D1歪みゲージから1.5cm遠位)で記録された十二指腸の運
動活性に対する化合物EN139491の効果を示す。
【図16】 図16は、ハロタン麻酔した雄のSprague Dawleyラットの近位十二指腸(D1)お
よび胃腔からin vivoで記録した、自発性運動活性の絶食時パターン時のEN13949
1 DON誘導体化合物の投与(10mg/kg, 静脈内)によって、消化管運動活性の弛緩
構成要素である振幅に対する効果の棒グラフを示す。
【図17】 図17は、消化管運動活性の弛緩構成要素の振動数に関して消化管運動活性に
対するEN139491投与の効果が示されていること以外は、図16に記載した棒グラ
フと同様である。
【図18】 図18は、消化管運動活性の収縮構成要素の振幅に関して消化管運動活性に対
するEN139491投与の効果が示されていること以外は、図16に記載した棒グラフ
と同様である。
【図19】 図19は、消化管運動活性の収縮構成要素の振動数に関して消化管運動活性に
対するEN139491投与の効果が示されていること以外は、図16に記載した棒グラ
フと同様である。
【図20】 図20は、ラット十二指腸(D1およびD2の十二指腸記録部位)および胃腔(S1
の腔記録部位)における運動活性の典型的なin vivo記録を示しており、これは
消化管運動活性の絶食時パターンに対するDON誘導体化合物EN139492の効果(静
脈内に10mg/kgでの場合)を表している。
【図21】 図21は、ハロタン麻酔した雄のSprague Dawleyラットの十二指腸(D1部位)に
おける自発性運動活性に対する静脈注射したP2X1プリノセプターアンタゴニスト
であるTNP-ATP(3.5mg/kg)の効果を示す、典型的なin vivo記録を示す。
【図22】 図22は、ラット十二指腸(D1部位)におけるDON誘導性(体重1kg当たり10mg
、静脈内、DONの上方の垂直方向の矢印)の摂食時パターン運動活性に対する静
脈注射したTNP-ATP(3.5mg/kg)の効果を示す、典型的なin vivo記録を示す。
【図23】 図23は、ラット胃腔(S1)および十二指腸(D2)におけるDON誘導性摂食時
パターン運動活性に対する静脈注射したTNP-ATP(3.5mg/kg)の効果を示す。
【図24】 図24は、ハロタン麻酔した雄のSprague Dawleyラットの近位十二指腸(D1部
位)にてin vivoで記録した消化管運動活性の弛緩構成要素である振幅の棒グラフ
を示す。
【図25】 図25は、ハロタン麻酔した雄のSprague Dawleyラットの近位十二指腸(D1部
位)にてin vivoで記録した消化管運動活性の弛緩構成要素である振動数の棒グラ
フを示す。
【図26】 図26は、ハロタン麻酔した雄のSprague Dawleyラットの近位十二指腸(D1部
位)にてin vivoで記録した消化管運動活性の収縮構成要素である振幅の棒グラフ
を示す。
【図27】 図27は、ハロタン麻酔した雄のSprague Dawleyラットの近位十二指腸(D1部
位)にてin vivoで記録した消化管運動活性の収縮構成要素である振動数の棒グラ
フを示す。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) C07D 493/10 C07D 493/10 C 493/20 493/20 (81)指定国 EP(AT,BE,CH,CY, DE,DK,ES,FI,FR,GB,GR,IE,I T,LU,MC,NL,PT,SE),OA(BF,BJ ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GW,ML, MR,NE,SN,TD,TG),AP(GH,GM,K E,LS,MW,MZ,SD,SL,SZ,TZ,UG ,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,MD, RU,TJ,TM),AE,AG,AL,AM,AT, AU,AZ,BA,BB,BG,BR,BY,BZ,C A,CH,CN,CR,CU,CZ,DE,DK,DM ,DZ,EE,ES,FI,GB,GD,GE,GH, GM,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,K E,KG,KP,KR,KZ,LC,LK,LR,LS ,LT,LU,LV,MA,MD,MG,MK,MN, MW,MX,MZ,NO,NZ,PL,PT,RO,R U,SD,SE,SG,SI,SK,SL,TJ,TM ,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VN, YU,ZA,ZW Fターム(参考) 4C071 AA04 AA07 AA08 BB01 BB02 CC12 CC14 EE02 FF17 GG01 GG03 HH05 HH08 LL01 4C084 AA17 AA19 NA07 ZA702 4C086 AA01 AA02 CA01 MA01 MA02 MA04 MA52 MA66 NA07 ZA66 ZA70

Claims (31)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 無毒で、消化管運動を調節する量のトリコテセンまたはその
    誘導体を脊椎動物に投与することを含んでなる、脊椎動物の肥満症の治療方法。
  2. 【請求項2】 トリコテセンまたはその誘導体がDON、ニバレノール、トリ
    コテコロン、トリコテシン、3-アセチルDON、7-アセチルデオキシニバレノール
    、3,15-ジアセチルデオキシニバレノール、4-アセチルニバレノール(フサレノ
    ン-X)、4,15-ジアセチルニバレノール、イソプロピリジンDON、イソプロピリジ
    ン3-アセチル-DON、DONカーボネート、3-アセチル-DONカーボネート、3-アセチ
    ル-DONベンジリデンアセタール、およびDONベンジリデンアセタールからなる群
    より選択される、請求項1に記載の肥満症の治療方法。
  3. 【請求項3】 トリコテセンがDONである、請求項2に記載の肥満症の治療
    方法。
  4. 【請求項4】 トリコテセンを経口的、非経口的、静脈内、筋肉内、または
    動脈内に投与する、請求項1に記載の肥満症の治療方法。
  5. 【請求項5】 トリコテセンを経口的に投与する、請求項4に記載の肥満症
    の治療方法。
  6. 【請求項6】 脊椎動物が霊長類、ブタ、ウシ、ヒツジ、トリ、ウマ、ネコ
    、イヌ、およびげっ歯類からなる群より選択される、請求項1に記載の肥満症の
    治療方法。
  7. 【請求項7】 脊椎動物がヒトである、請求項1に記載の肥満症の治療方法
  8. 【請求項8】 無毒で、消化管運動を調節する量のトリコテセンもしくはそ
    の誘導体、トリコテセン類似体、またはP2X1レセプターの非脱感受性アゴニスト
    を脊椎動物に投与することを含んでなる、脊椎動物における消化管運動の摂食時
    パターンの刺激方法。
  9. 【請求項9】 トリコテセンまたはその誘導体がDON、ニバレノール、トリ
    コテコロン、トリコテシン、3-アセチルDON、7-アセチルデオキシニバレノール
    、3,15-ジアセチルデオキシニバレノール、4-アセチルニバレノール(フサレノ
    ン-X)、4,15-ジアセチルニバレノール、イソプロピリジンDON、イソプロピリジ
    ン3-アセチル-DON、DONカーボネート、3-アセチル-DONカーボネート、3-アセチ
    ル-DONベンジリデンアセタール、およびDONベンジリデンアセタールからなる群
    より選択される、請求項8に記載の方法。
  10. 【請求項10】 トリコテセンがDONである、請求項8に記載の方法。
  11. 【請求項11】 トリコテセンを経口的、非経口的、静脈内、筋肉内、また
    は動脈内に投与する、請求項8に記載の方法。
  12. 【請求項12】 トリコテセンを経口的に投与する、請求項8に記載の肥満
    症の治療方法。
  13. 【請求項13】 脊椎動物が霊長類、ブタ、ウシ、ヒツジ、トリ、ウマ、ネ
    コ、イヌ、およびげっ歯類からなる群より選択される、請求項8に記載の方法。
  14. 【請求項14】 脊椎動物がヒトである、請求項8に記載の方法。
  15. 【請求項15】 P2X1受容体の非脱感受性アゴニストがATPの類似体である
    、請求項8に記載の方法。
  16. 【請求項16】 摂食時パターン消化管運動活性を阻害するのに十分な量の
    ATPの類似体を脊椎動物に投与することを含んでなる、脊椎動物の体重を増加さ
    せる方法。
  17. 【請求項17】 ATPの類似体がP2X1プリノセプターの脱感受性アゴニスト
    またはアンタゴニストである、請求項16に記載の方法。
  18. 【請求項18】 ATPの類似体がα,β-メチレンATPおよび2',3'-O-(2,4,6-
    トリニトロフェニル)-ATPからなる群より選択される、請求項17に記載の方法。
  19. 【請求項19】 ATPの類似体を投与することを含んでなる、脊椎動物にお
    ける消化管運動の摂食時パターンの妨害方法。
  20. 【請求項20】 ATPの類似体がP2X1受容体の脱感受性アゴニストまたはア
    ンタゴニストである、請求項19に記載の方法。
  21. 【請求項21】 ATPの類似体がα,β-メチレンATPおよびTNP-ATPからなる
    群より選択される、請求項20に記載の方法。
  22. 【請求項22】 化合物が摂食時パターン消化管運動活性を誘導することが
    できるか否かを判定することを含んでなる、肥満症を治療するための化合物の同
    定方法。
  23. 【請求項23】 化合物がin vitro消化管浴アッセイ、ex vivo消化管アッ
    セイ、または消化管運動活性のin vivoアッセイを用いて摂食時パターン消化管
    運動活性を誘導する能力を試験される、請求項22に記載の肥満症を治療するため
    の化合物の同定方法。
  24. 【請求項24】 化合物によって誘導された摂食時パターン消化管運動活性
    を、DONによって誘導された摂食時パターン消化管運動活性と比較する、請求項2
    2に記載の方法。
  25. 【請求項25】 摂食時パターン消化管運動活性を誘導するための医薬組成
    物であって、 (a) ニバレノール、4-デオキシニバレノール、トリコテコロン、トリコテシン
    、3-アセチルデオキシニバレノール、7-アセチルデオキシニバレノール、3,15-
    ジアセチルデオキシニバレノール、4-アセチルニバレノール(フサレノン-X)、
    4,15-ジアセチルニバレノール、3-ヒドロキシ-12,13-エポキシ-9-トリコテシン-
    8-オン-7,15 カーボネート、3-アセトキシ-12,13-エポキシ-9-トリコテシン-8-
    オン-7,15 カーボネート、3-アセトキシ-7,15-ベンジリデン-12,13-エポキシ-9-
    トリコテシン-8-オン、3-ヒドロキシ-7,15-ベンジリデン-12,13-エポキシ-9-ト
    リコテシン-8-オン、3-ヒドロキシ-7,15-イソプロピリジン-12,13-エポキシ-9-
    トリコテシン-8-オン、3-アセトキシ-7,15-イソプロピリジン-12,13-エポキシ-9
    -トリコテシン-8-オン、およびこれらの組合せからなる群より選択される化合物
    、および (b) 製薬上許容される担体、 を含有する上記医薬組成物。
  26. 【請求項26】 化合物3-ヒドロキシ-7,15-イソプロピリジン-12,13-エポ
    キシ-9-トリコテシン-8-オン。
  27. 【請求項27】 化合物3-アセトキシ-7,15-イソプロピリジン-12,13-エポ
    キシ-9-トリコテシン-8-オン。
  28. 【請求項28】 化合物3-ヒドロキシ-12,13-エポキシ-9-トリコテシン-8-
    オン-7,15 カーボネート。
  29. 【請求項29】 化合物3-アセトキシ-12,13-エポキシ-9-トリコテシン-8-
    オン-7,15 カーボネート。
  30. 【請求項30】 化合物3-アセトキシ-7,15-ベンジリデン-12,13-エポキシ-
    9-トリコテシン-8-オン。
  31. 【請求項31】 化合物3-ヒドロキシ-7,15-ベンジリデン-12,13-エポキシ-
    9-トリコテシン-8-オン。
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