JP2003500065A - 高スループット機能ゲノム学 - Google Patents

高スループット機能ゲノム学

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JP2003500065A JP2000620119A JP2000620119A JP2003500065A JP 2003500065 A JP2003500065 A JP 2003500065A JP 2000620119 A JP2000620119 A JP 2000620119A JP 2000620119 A JP2000620119 A JP 2000620119A JP 2003500065 A JP2003500065 A JP 2003500065A
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ジェームス ジェイ. ヒックマン
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ジェームス ジェイ. ヒックマン
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Abstract

(57)【要約】 本発明は、固体電子工学と神経機能を融合させ、細胞機能に対する化合物の急性的および慢性的な影響を決定するための新たな高スループット電気生理学的アッセイ法を作り出すことに焦点を絞っている。電子工学、表面化学、バイオテクノロジーおよび基礎神経科学を統合することにより、レポーター要素が電気的活動性のある細胞のアレイであるようなアッセイ法を提供する。この革新的技術は、神経毒性に対して、ならびにコンビナトリアルケミストリーに由来する化合物のスクリーニング、遺伝子機能の分析および基礎生物科学の用途に応用しうる。本発明のシステムは、活動電位がいかにして薬物または毒素によって妨げられるかを分析する。活動電位の差は、異なる生化学経路に作用して、続いて異なるイオンチャネルに影響を及ぼし、それによって活動電位の形状を各毒素によって異なる様式で変化させる、個々の毒素に起因するものである。新たな薬物または化合物の存在によって影響される経路を示すために、活動電位のピークの形状の違いを分析するためのアルゴリズムを用いる;これにより、その細胞におけるその機能の様相が導き出される。この観察所見は、未知の化合物の生化学的作用の機能的カテゴリーを決定するために利用しうる。本発明の1つの重要局面は、細胞と金属微小電極との間に高インピーダンス封止部を設定することを可能にする表面化学である。この封止部により、ガラスマイクロピペットによる機能的なパッチクランプ電気生理学的手法を可能とするインターフェースが再現され、微小電極アレイ上での細胞外電気生理学的手法が可能となる。したがって、本発明は、細胞機能の高スループット・リアルタイムアッセイ法のための診断手法として生細胞を用いる実現可能性を開示するものである。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】 関連出願に対する相互参照 本出願は、1999年5月21日に提出された米国仮特許出願第60/135,275号(その
すべての開示は参照として本明細書に組み入れられる)による優先権を主張する
、仮出願でない出願(non-provisional application)である。
【0002】1. 発明の分野 本発明は、薬物、毒素、遺伝子、遺伝子産物などを含む試料および被験物質の
分析のための装置、プロセス、方法およびシステムに関する。さらに、本発明は
、1つまたは複数の選択された遺伝子が「ノックアウト」された1つまたは複数の
トランスジェニック動物の作出といった手間のかかる従来の方法に頼らずに、単
離された核酸の機能に関する情報を入手することができる、機能ゲノム学(func
tional genomics)の研究を行うために特に適した高スループットの方法を開示
する。特に、本発明は、インビボでの研究を模倣する条件下で、試料または被験
物質の生理的、薬理的または他の生物的な影響に関する各種の情報を集めること
を可能にする。
【0003】2. 発明の背景 現在のところ用いられうる、認知または「細胞機能」に基づく唯一の「アッセ
イ法」は生きた生物である。これらのアッセイ法には、センチュウ(C. elegans
)およびショウジョウバエが主として用いられる。細胞の組織化および情報交換
を研究するために、特に「ノックアウト」技術を用いた、ラットおよびマウスの
胚組織のインビトロ細胞培養も用いられてきた。しかし、これまでの研究では、
面倒な上に、培養物の脱組織化をもたらすおそれがあり、高スループット分析も
行えない、費用のかかるパッチクランプ法を除いて、単一のニューロンは今日の
電子機器と電気的に一体化されていない。電位感受性色素を用いた画像化も導入
されている。しかし、上記の通り、このような技法の用途は限られており、色素
は一般にニューロンに対して有毒である。
【0004】 したがって、細胞の機能に基づく、例えば神経毒性を研究するためのインビト
ロアッセイ法が不足していることは明らかである。また、毒性を計測する手法も
形態学的分析のほかには極めて乏しい。標準的な電気生理学の手法によって細胞
の長期的な電気生理学的観測を行うことにも問題がある。さらに、ゲノム学の分
野には、ヒトゲノムプロジェクトによって明らかになりつつある多数の配列およ
び遺伝子を解析するための高スループットアッセイ法もない。最近用いられるよ
うになったコンビナトリアル化学合成法を用いて、何千種という新たな化合物も
生成されている。
【0005】 情報処理に関するモデル系として生物細胞およびそれらの背景にある細胞機能
を用いることが、数多くの実際的な応用に向けて検討されている。嗅覚情報処理
に基づくアルゴリズム(Ambrose-Ingerson, J、Granger, R.およびLynch, G.(1
990). Science 247:1344〜1348;Granger, R.、Ambrose-Ingerson, J.、Anton
, P.S.、Whitson, J.およびLynch, G.(1991)「神経および電子ネットワーク入
門(An Introduction to Neural and Electronic Networks)」、Zornetzer, S.
F.、Davis, J.L.およびLau, C.編(Academic Press, Inc.、San Diego)、pp. 2
5〜42)、試験管内でのDNAを用いた計算(Adleman, L.(1994)「組み合わせの
問題の分子計算による解法(Molecular Computation of Solutions to Combinat
orial Problems)」. Science Vol. 266)、またはおそらくは細菌もしくは他の
細胞におけるDNAの操作などは、いくつかの例に過ぎない。最近の論文では、生
物情報、およびコンピュータ・モデルを用いた生物学的経路または遺伝的回路の
作成に関心が向けられている(Palsson、1997)。組織切片標本、培養神経ネッ
トワーク(Gross, G. W.、Rhoades, B. K.、Azzazy, H. M. E.およびWu, M. C.
(1995)「多電極アレイ上にある神経ネットワークのバイオセンサーとしての使
用(The use of neuronal networks on multielectrode arrays as biosensors
)」. Biosens. Bicelectron.、10、553〜567;1:Stenger DA、Hickman JJ、Ba
teman KE、Ravenscroft MS、Ma W、Pancrazio JJ、Shaffer K、Schaffner AE、C
ribbs DH、Cotman CW. 「関連文献 培養海馬ニューロンにおける軸索/樹状突
起極性のマイクロリソグラフィックによる決定(Related Articles Microlithog
raphic determination of axonal/dendritic polarity in cultured hippocampa
l neurons)」. J Neurosci Methods. 1998 Aug 1;82(2):167〜73)、およ
び単一ニューロン(例えば、LeMasson, G.、E. MarderおよびL. F. Abbott(199
3)「モデルニューロンにおける伝導度の活性依存的な調節(Activity-dependen
t regulation of conductances in model neurons)」. Science 259、1915〜7
;Marder, E.およびL. F. Abbott(1995)「運動における理論(Theory in moti
on)」. Cuff Opin Neurobiol 5、832-40;Schizas, C. N.およびC. S. Pattich
is(1997)「生体シグナル分析における学習システム(Learning Systems in bi
osignal analysis)」. Biosystems 41、105〜25)を用いた実験が、デュアルパ
ッチクランプ(dual patch-clamp)による電気生理学的手法および画像化システ
ムを用いて行われている。ほかにも多くの者が、細胞を生物的計算(biological
computation)用にプログラムするための原型としての細胞内機能の「コンピュ
ータ(in silica)」モデルを提唱している。例えば、その内容が参照として本
明細書に組み入れられる、ダグラス(Douglas)らに対する米国特許第5,648,926
号を参照されたい。本出願は、細胞情報を効率的な様式で解明するためのハイブ
リッドシステムを記載している。新たな生物的/非生物的な高スループットアッ
セイ法を作り出すことを目的として、コンピュータシステムの速度および有用性
と細胞生理学の妥当性を組み合わせた、ヒトに認められる生理的条件またはセン
チュウおよびショウジョウバエで得られたデータを用いてモデル化された生理的
条件を再現するための新たなアルゴリズムを組み合わせる需要が存在する。
【0006】 新たな遺伝物質を含む、新たな物質の探索、単離、発見または作製(または、
さらには古くからの物質に対する新たな用途の発見)の能力が高まったことによ
り、被験物質の効果、役割または機能に関して考えられる何らかの概念を提供す
る「機能的アッセイ法」に対する需要はさらに強くなっている。機能は、生物体
における分子、化合物および蛋白質の機能または役割が何であるかという観点か
ら捉えることができる。また、分子、化合物および蛋白質の集まりがいかにして
、組み合わされて細胞におけるエネルギー代謝、細胞外シグナル伝達、転写また
は蛋白質合成といった機能的カテゴリーを形成する経路を形成するか、または経
路に影響を及ぼすかという観点から機能を捉えることもできる。これらの経路は
細胞を維持する過程および機能の基盤をなしており、それらの同定は、高等生物
における被験物質の実体および役割または「細胞機能」を確立する一助となる。
独特な「細胞機能」を有する特定の群の細胞が組織化された様式で混ざり合うこ
とにより、動物などの高等生物が生じる。
【0007】 伝統的には、生物体全体を一定の期間にわたって観察せずに、細胞の内的な「
機能的カテゴリー」に対する化合物または蛋白質の影響をアッセイすることは困
難であった。生物体全体レベルの実験に頼らずに情報を得るために数多くのアッ
セイ法が開発されているが、その結果はさまざまである。インビトロ生化学アッ
セイ法でこれらの経路の一部を細胞外で再現しようと試みられているが、このよ
うなアッセイ法には細胞内の他の無数の経路との相互作用が欠如している。
【0008】 蛍光プローブ、マイクロセンサーおよび電気生理学的記録は豊富な情報をもた
らしてきたが、欠点も数多くある。パッチクランプによる電気生理学的記録では
正確な記録が得られるが、実験条件は細胞死につながる。この欠点はほとんどの
蛍光プローブにも当てはまり、これは光退色による毒性作用を引き起こすおそれ
がある。このため、薬物探索、機能ゲノム学および基礎科学には、分子、化合物
および蛋白質(またはそれらの遺伝子)に関して、これらの物質が生細胞および
その種々の細胞経路または機能的カテゴリーと一定期間にわたって非侵襲的に相
互作用する際の情報およびデータを提供するアッセイ法に対する需要が存在する
。好ましくは、影響を受ける種々の細胞経路または機能的カテゴリーに関する情
報およびデータは、このようなアッセイ法から得られる。より好ましくは、この
ような情報およびデータを電気生理学的に取り込めることが望ましいと考えられ
る。このような特徴を単純な試料標本と組み合わせることができ、このようなア
ッセイ法によって統計的に意味のある数の細胞に対して多くの条件を迅速に検討
することが可能になれば、高スループットの細胞機能的能力を有し、これまでは
生物体全体のレベルでの実験または大規模で時間のかかる実験のみによって得る
ことができた情報の大半をもたらしうる、極めて有用なアッセイ法が得られると
考えられる。細胞機能に影響を及ぼす生物的化合物は極めて多岐にわたる。マー
ダー(Marder)は、ロブスターの消化系におけるニューロン間の情報交換だけで
も40種を超える生化学物質が関与していることを示している(Marder, E.および
L. F. Abbott(1995)「運動における理論(Theory in motion)」. Curr Opin
Neurobiol 5、832〜40)。これらの生化学物質の多くはイオンチャネルに特異的
であるが、さらに多くのものは受容体を介して作用する。他の系についても既知
の生化学物質および細胞過程または経路の相互作用に関する同様の情報を任意の
神経科学の教科書から得ることができる。さらに、さまざまな化合物がいかにし
て例えば細胞機能に影響を及ぼすかを示す豊富な臨床的および疫学的なデータも
ある。
【0009】 間接的な参照により、本出願者らは、これらの生化学物質の数多くが、影響を
受けた細胞の膜電位に何らかの形で影響を及ぼすに違いないと考えている。例え
ば、いくつかの化合物(サキシトキシンなど)は、ナトリウムイオンチャネルの
阻害によって働く。塩化テトラエチルアンモニウム(TEA)などのようにカリウ
ムチャネルに作用することによって働くものもある。さらに、カルシウム動員お
よび特定遺伝子の活性化に至る細胞内カスケードを活性化する化合物もある。こ
のため、本出願者は本明細書において、生化学物質の特に膜電位に対する影響を
利用するシステム、装置および方法を述べる。すなわち、本出願者は、電気的活
動性のある細胞(例えば神経細胞)に特定の生化学化合物または「誘因」を添加
した後にこのような電気的活動性のある細胞から得られる活動電位の変化を、薬
物探索または機能ゲノム学に関連する細胞機能の解明を可能にする平面微小電極
を用いて、特徴づけることができることを見いだした。膜電位の変化の1つの特
定の態様は、活動電位に関して観察しうる変化であることを明記しておく。した
がって、電気的活動性のある細胞とは、その膜電位が認知可能な(測定可能な)
変化を呈するもの、より好ましくは、その活動電位が認知可能な変化を呈するも
のである。
【0010】 対象となる生化学物質の例には、以下の機序を介してシグナルの変化を誘発す
るものが非制限的に含まれる:(a)ホスファチジルイノシトールの代謝回転(t
urn-over);(b)カルシウム動員;(c)細胞内蛋白質メッセンジャーのリン酸
化;(d)イオンチャネル遮断(Na、K、Ca2+など);および(e)cAMP形
成。神経伝達阻害薬および蛋白質合成阻害薬などのように、特定の経路に対する
阻害特性の点から生化学物質を選択することもできる。これらの化合物のいくつ
かは膜電位および他の個々のイオンチャネルに影響を及ぼすことが示されている
【0011】 自己組織化単分子膜(SAM)を用いる表面改質技術は、有機分子から構成され
る改質層を調製するためのプロセスとして知られており、これは露出面上の反応
性基と強い相互作用または共有結合を自発的に形成することが可能である。表面
改質のためのSAMの利用は、二酸化珪素、生分解性ポリマーおよびテフロン(登 録商標)などの他のポリマーといった電子工学材料で示されている。多岐にわた る官能基または官能基の組み合わせをSAMの結合点とは反対側の末端に配置する ことができ、表面自由エネルギーを体系的に変化させるために化学組成を操作す ることができる。生物細胞をSAM上に付着させて増殖させることが可能であるほ か、SAMは表面のパターン形成に用いることができる。SAMは生体分子、特に抗体 のパターン形成のための鋳型として配置するにも有用である。このため、SAMは 、細胞相互作用を目的に適合させることを目的として人工的表面を設計するため の理想的なツールとなりうる。
【0012】 絶縁体に囲まれた金属微小電極は、細胞の電気的活動を細胞外で記録するため
に用いることができる。本出願者は、細胞を微小電極上に保つようにインターフ
ェースを適合させることができれば、高スループット細胞アッセイ法のための実
行可能なシステムを作り出せると考えている。本出願者は、2つの異なる金属上
(例えば、Hickman, J.J.、Laibinis, P.E.、Auerbach, D.I.、Zou, C.、Gardne
r, T.J.、Whitesides, G.M.およびWrighton, M.S.(1992)。「PtおよびAu上の
酸化還元活性分子の直交性自己集合に向けて:ジスルフィドとAu、イソニトリル
とPtとの選択的反応(Toward orthogonal self-assembly of redox active mole
cules on Pt and Au: Selective reaction of disulfide with Au and isonitri
le with Pt)」. Langmuir 8:357を参照)ならびに金属および絶縁体のコーテ
ィング領域から構成される表面上での直交性自己集合がかかわる以前の研究を利
用することによってこの種のシステムを製造しうると考えている。その内容が本
明細書に参照として組み入れられる、ライトン(Wrighton)らに対する米国特許
第5,223,117号も参照されたい。
【0013】 表面分析の手法は、細胞培養物の表面を培養前後に分析するため、ならびに定
量的および定性的な結果を細胞の形態および生存と関連づけるために応用されて
いる(例えば、Schaffner, A.、Barker, J.L.、Stenger, D.A.およびHickman, J
.(1995)。「規定システムにおける海馬ニューロンの成長に必要な因子の検討
(Investigation of the factors necessary for growth of hippocampal neuro
ns in a defined system)」. J. Neurosci. Methods、62、111〜119を参照)。
別の者による以前の研究でも、細胞の挙動が、最初に定量化された細胞表面の特
性、すなわち細胞の添加の前のものと関連づけられている。培地の多くの成分は
表面に吸着し、細胞は可溶性分子に加えて、細胞外マトリックス(ECM)を含む
物質も分泌する。これらの生体分子の多くは観測される細胞の挙動の原因となる
可能性があり、価値のある情報源ともなりうる。
【0014】 細胞系をセンサー要素として用いる場合に遭遇する問題の一つに、細胞系(例
えば、NG108-15、これは神経膠腫×神経芽腫に由来する)に不安定なゲノムが内
在することがある。本出願者は、本システムには初代細胞が極めて適切であると
考えているが、これはこの種の細胞の方が腫瘍由来の細胞系よりもインビボ系に
近いと推定されるためである。しかし、初代細胞は培養が難しい傾向にあり、不
均質でもある。これらの欠点に対して考えられる解決策には、CNS幹細胞に由来
するクローン細胞系を用いることが含まれる。すなわち、安定的で寿命の長い表
現型を有する好ましい細胞の一つは、幹細胞に由来するものである。本発明にお
いては、個々の細胞がそれぞれ一意的なアッセイ要素となり、細胞は個々の微小
電極上に配置される。培地に導入した化合物に対する反応に関して、再現性のあ
る集団に対する統計的手法を用いることが可能である。さらに、本発明者らは、
意味のある生理的状態の再現もしくは表現、または製薬企業もしくは他のバイオ
テクノロジー企業によって行われる既知のアッセイ法の再現が可能になるような
システムレベルのアルゴリズムを適用することが考えられる。
【0015】 このため、本発明は、例えばライリー(Riley, M.)(1993)「大腸菌の遺伝
子産物の機能(Functions of gene products of Escherichia coli)」. Microb
iol. Rev. 57、862〜952によって定義された細胞内の「機能的カテゴリー」を用
いる、細胞機能のアッセイ法を提供することを考えている。本システムは、機能
の知られた既知の生化学物質を用いること、および培地に既知の生化学物質を導
入した際の電位の変化を観測することによって確認される。本発明およびその広
範囲に応用可能な技法は、遺伝子機能の分析を含む、分子機能の分析に新たなパ
ラダイムを付け加えるものと考えられる。本技法は胚細胞を用いて適用しうるた
め、さまざまな発生段階にある細胞のマッピングを行うことも可能である。特に
有用な細胞にはCNS細胞が含まれるが、本アプローチは膜電位の電気的変化の観
測が可能な任意の種類の細胞に用いることができる。本明細書に提示する考察に
より、本発明に対する明らかな需要が立証されたものと考えている。
【0016】3. 発明の概要 したがって、本発明は、細胞に対する生理的または薬理的な影響を含む、被験
物質の影響を決定するためのシステム、装置、プロセスおよび方法に向けられて
いる。被験物質の影響に関する都合の良い指標は細胞の電気的活動に対する影響
であり、電気的活動は膜電位の変化を含むさまざまな形式で細胞から提示させる
ことができる。特に、ある一定の期間にわたる膜電位の変化の発現とみなせる細
胞の活動電位の変化を測定することが可能である。すなわち、本出願者は、電気
的活動性のある細胞の電気的特性の変化(この変化は、基礎にある細胞の過程、
機構または経路に対する影響を含む、細胞の生理に対する被験物質の影響を反映
する変化である)を記録および検討することにより、被験物質の影響を調査して
明らかにしうることを見いだした。そこで、本発明は、被験物質の生物的活性の
重要な指標として、または少なくとも細胞機能のある種のカテゴリーにおける被
験物質の生物的活性と考えられるものの指標として役立つ可能性がある。このよ
うな測定または表示はインビボモデルの使用に頼らずに首尾良く用いることがで
き、これは当技術分野における大きな進歩である。
【0017】 特に、本発明は、固体微小電極の表面上に配置された細胞である、電気的活動
性のある細胞から記録した活動電位のデコンボリューションのためのシステムお
よび方法を提供しようとしている。より詳細には、細胞をさまざまな条件にさら
し、観察される活動電位に対するそのような条件またはそのような条件の変化の
影響を記録する。既知の物質の生理的、薬理的および関連した影響(例えば、文
献で明らかにされている機構的経路)に関して蓄積された知識を用いることによ
り、本発明は細胞の電気的活動の1つまたは複数の特性の変化(例えば、その活
動電位に反映されるもの)をさらに解明することを可能とし、その変化を各物質
またはその組み合わせによって同定された特定の影響または機構的経路と関連ま
たは相関づけることができる。このため、本発明の1つの特定の態様においては
、被験物質に関して、活動電位に対するその影響、さらには被験物質による影響
を受ける細胞の基礎にある過程または機能的カテゴリーを決定するための検討を
可能にする一連の知識が提供される。
【0018】 本発明の1つの特定の態様では、被験物質による影響を受けるチャネルである
、細胞の1つまたは複数のイオンチャネルを同定しうるシステムが提供される。
このようなシステムは、ソフトウエア(例えば、コンピュータプログラム、デー
タ処理アプリケーション、アルゴリズムなど)が選択的に付属した装置であって
、以下のものを含む装置を含む:(a)固体微小電極;(b)その電気的特性に関
して測定可能な変化を提供しうる(例えば、1つまたは複数の認知可能な特性を
呈する測定可能な活動電位を提供する)1つまたは複数の細胞である、1つまたは
複数のイオンチャネルを含む細胞膜を有する1つまたは複数の電気的活動性のあ
る細胞、を含む細胞培養物;(c)(i)表面改質剤を含み、(ii)少なくとも細
胞培養物の1つまたは複数の細胞の近傍で高インピーダンス封止部(high impeda
nce seal)が得られるように微小電極と細胞培養物の1つまたは複数の細胞との
間に配置された、介在層。選択的に付属するソフトウエアは、コンピュータによ
って実行可能であって、1つまたは複数の細胞を被験物質に曝露させた際に、電
気的活動によって呈示される1つまたは複数の特性(例えば、活動電位によって
呈示されるもの)の変化を、1つまたは複数の細胞の1つまたは複数のイオンチャ
ネルと関連づけることが可能な命令を含む。より詳細には、本出願者は、周囲の
培地からの微小電極を横切るイオンの側方流を減少させる一方で、細胞と微小電
極との間の垂直流は許容または促進するような高インピーダンス封止部を想定し
ている。この方式により、微小電極は、細胞に起因し、周囲の培地には起因しな
いイオン流の変化を検出するように最適化される。
【0019】 本発明は、膜電位または活動電位によって呈示される1つまたは複数の特性が
、その波形またはその導関数(derivative)によって示されるようなシステムを
考慮している。さらに他の態様において、1つまたは複数の特性には、後電位、
活動停止までの時間、頻度、振幅、形状、スパイク頻度または時定数のうち少な
くとも1つが含まれる。本発明の好ましい態様において、データ処理命令はさら
に、膜電位、活動電位またはその変化の時間的記載に関するデータを含むインプ
ットデータを受け取ることが可能である。
【0020】 さらに別の態様では、データ処理命令がさらに、ナトリウムチャネル、カリウ
ムチャネル、カルシウムチャネルまたはそれらの組み合わせからなる群より選択
されるイオンチャネルを通過するイオン流に関するデータを含むインプットデー
タを受け取ることが可能なシステムが提供される。本発明のシステムのその他の
局面には、微小電極が電界効果トランスデューサー(FET)である平面微小電極
の利用が含まれる。さらに、金属微小電極を取り囲む、またはFETのゲートを覆
う絶縁体をシステムがさらに含むことも考慮される。適した絶縁体には、珪素、
改変(modified)二酸化珪素、窒化珪素、炭化珪素、ゲルマニウム、シリカ、ガ
リウム、砒化物、エポキシ樹脂、ポリスチレン、ポリスルホン、アルミナ、シリ
コーン、フルオロポリマー、ポリエステル、アクリル共重合体、ポリ乳酸または
それらの組み合わせからなる群より非制限的に選択される材料が含まれる。
【0021】 本発明における使用のために適した細胞培養物は、電気的活動性のある細胞を
含み、これには代謝活性のある任意の細胞が含まれうる。その例には、神経細胞
または心臓細胞が非制限的に含まれる。好ましくは、本システムはNG-108細胞を
用いる。さらに他の細胞培養物には、海馬細胞、幹細胞、形質転換がなされた幹
細胞、そのそれぞれの子孫またはそれらの組み合わせが含まれる。さらに、分化
因子に曝露された幹細胞またはその他の子孫もしくは前駆細胞の使用を考慮する
ことも可能である。
【0022】 本発明には、好ましくは自己組織性単分子膜を含む、表面改質剤の使用が含ま
れる。適した表面改質剤の例には、シラン、チオール、イソシアニド、高分子電
解質など、またはそれらの組み合わせが非制限的に含まれる。より好ましくは、
本システムには、細胞接着分子をさらに含む介在層が組み込まれる。適した細胞
接着分子には、抗体、抗原、受容体リガンド、受容体、レクチン、糖質、酵素、
酵素阻害薬、ビオチン、アビジン、ストレプトアビジン、カドヘリン、RGD型ペ
プチド、インテグリン、カドヘリン、修飾脂質またはそれらの組み合わせが非制
限的に含まれる。
【0023】 本発明の1つの特定の態様において、介在層は、アルコール、エーテル、エス
テル、ケトン、アミド、グリコール、アミノ酸、糖類、カルボキシメチルサッカ
ライド、カルボキシエチルサッカライド、アミノサッカライド、アセチルアミノ
サッカライド、それらの重合体またはそれらの組み合わせを含む高粘度の混合物
を含む。本発明の1つの好ましい態様において、細胞培養物はセルロース、メチ
ルセルロース、デキストランなどの高分子によってコーティングされる。本発明
の1つの好ましい態様のさらに他の特徴には、誘引層または反発層であることを
特徴とする介在層が含まれる。好ましいシステムはさらに、検出回路を含む。ま
た、細胞培養物の1つまたは複数の細胞として、内因性または外因性核酸による
トランスフェクションを受けた細胞を用いてもよい。このような場合、核酸は機
能が知られた、または知られていないヌクレオチド配列を含みうる。
【0024】 被験物質によって影響を受ける1つまたは複数のイオンチャネルを決定する方
法であって、(a)検査しようとする物質を、固体微小電極と、1つまたは複数の
イオンチャネルを含む細胞膜を有する1つまたは複数の細胞であって、1つまたは
複数の認知可能な特性を呈する測定可能な活動電位を提供しうる1つまたは複数
の細胞を含む細胞培養物と、高インピーダンス封止部として作用する、微小電極
と細胞培養物との間に配置された介在層とを含む装置に接触させる段階;(b)
活動電位、その1つもしくは複数の特性、またはその1つもしくは複数の変化に関
するデータを収集する段階;ならびに(c)被験物質によって影響を受ける1つま
たは複数のイオンチャネルをデータから決定する段階を含む方法を提供すること
も本発明の1つの目的である。本発明の特定の態様において、被験物質には、毒
素、薬物、病原性作用物質、神経伝達物質、神経作用物質またはそれらの混合物
が含まれる。本方法は、活動電位、その1つもしくは複数の特性、またはその1つ
もしくは複数の変化のデコンボリューションを含む決定段階を用いることが好ま
しい。
【0025】 また、本発明は、対象となる生理的状態または条件を、このような検査条件の
下で被験物質の影響、副作用または意図しない結果を評価または決定することを
目的として模倣するアルゴリズムを用いることができるシステムにも向けられて
いる。例えば、本発明によって考慮されるシステムは、1つまたは複数の所定の
被験物質に曝露された際に結果として生じる細胞(例えば、神経細胞)の挙動を
観察するために最善のシナリオが得られるような様式で、特定の経路がオンもし
くはオフの状態になる、または単離されるように操作することができる。もう1
つの例として、うつ病に対する候補薬物の、血糖値の高い個人(例えば、糖尿病
の患者、または単に炭水化物の多い食事を摂取したばかり、もしくはある特定の
食事を摂取している人々)または血糖値の低い個人(例えば、低血糖症の患者)
またはコレステロール値の高い個人に関する影響を知ることに関心を抱くことも
想定される。その場合には、例えば、細胞培養物の栄養分の添加もしくは除去、
任意の核酸による細胞培養物の細胞のトランスフェクション、またはそれらを蛋
白質、ペプチドもしくは低分子に曝露させること、細胞培養物に対する培地の化
学的もしくは電気化学的特性を変化させることなどによって、本発明のシステム
を調整することができる(システムの変数の調整がシステムコンピュータプログ
ラムまたは他の付属のシステムソフトウエアによって制御および追跡される場合
)。この方式により、本発明のシステムは、これまでは動物またはヒトでの試験
のみによって入手可能であった、薬物候補の生理的または薬理的な影響に関する
情報を提供することができる。
【0026】 したがって、本発明のもう1つの局面においては、装置および付属のソフトウ
エアを含む、被験物質の潜在的な生理的影響を決定する高スループット能力を有
するシステムであって、装置が固体微小電極、および電気的活動を呈する、また
は好ましくは、1つもしくは複数の認知可能な特性を呈する測定可能な活動電位
を提供しうる、1つまたは複数の細胞を含む細胞培養物を含んでいるシステムが
考慮される。また、本システムは、細胞培養物の1つまたは複数の細胞に被験物
質を曝露させた際に、電気的活動の変化、または好ましくは、活動電位によって
呈示される1つもしくは複数の特性の変化を、被験物質が及ぼす1つまたは複数の
潜在的な生理的影響と関連づけることができるデータ処理命令をそれ自体が含む
、付属のソフトウエアを選択的に含むことができる。特に、このような装置はさ
らに、高インピーダンス封止部として作用する、微小電極と細胞培養物の1つま
たは複数の細胞との間に配置された介在層を含んでもよく、その付属のソフトウ
エアはさらに、所定の実験の1つまたは複数の条件を変更する目的で1つまたは複
数のシステムパラメーターを操作するため、このような操作の結果を解釈するた
め、およびその両方のための、コンピュータによって実行可能な命令を含む。当
然ながら、システムの必要条件、設計または便宜によって決定されるように、個
々の作業を分割するような別々のソフトウエアプログラムを書くことができる。
【0027】 本発明は、細胞培養物への対象となる化合物の添加、または細胞培養物からの
その除去を含む操作を考慮している。特に、対象となる化合物は栄養物または細
胞モジュレーターであってもよく、データ処理命令は活動電位またはそれに関し
て観察された変化の時間的分析を含んでよい。より詳細には、データ処理命令は
、対象となる1つまたは複数の細胞経路または受容体の関与を示唆するアウトプ
ットを提供することが可能である。本システムには好ましくは、望ましいアウト
プットを増強または最大化するために、システムのパラメーターの操作における
柔軟性を付与するフィードバックループに関する命令を含むソフトウエアが付属
する。
【0028】 本発明の1つの目的は、関連のある対象となる1つまたは複数の細胞経路または
受容体に基づいて被験物質の作用機序を決定することができるシステムを実現す
ることである。
【0029】 本発明のシステムにおいて、被験物質には毒素、薬物候補、病原性作用物質、
神経伝達物質、神経作用物質、遺伝子、遺伝子産物またはそれらの混合物が含ま
れる。本発明の目的に対応するように、装置および付属のソフトウエアを含む、
単離された核酸、その発現産物、または核酸もしくは発現産物の1つもしくは複
数の活性断片の1つまたは複数の機能を決定するためのシステムであって、装置
が固体微小電極、および1つまたは複数の認知可能な特性を呈する測定可能な活
動電位を提供しうる1つまたは複数の細胞を含む細胞培養物を含み、細胞が単離
された核酸によるトランスフェクションを受けており、またはその発現産物に曝
露されており、付属のソフトウエアが、活動電位によって呈示される1つまたは
複数の特性の変化を、単離された核酸、その発現産物、または核酸もしくは発現
産物の1つもしくは複数の活性断片の1つまたは複数の機能と関連づけることがで
きるデータ処理命令を含むようなシステムが提供される。
【0030】 本発明のさらにもう1つの目的には、単離された核酸、その発現産物、または
核酸もしくは発現産物の1つもしくは複数の活性断片の1つまたは複数の機能を決
定する方法であって、(a)固体微小電極と、単離された核酸によるトランスフ
ェクションを受けた、またはその発現産物に曝露された細胞である、1つまたは
複数の認知可能な特性を呈する測定可能な活動電位を提供しうる1つまたは複数
の細胞を含む細胞培養物とを含む装置を提供する段階、(b)活動電位、その1つ
もしくは複数の特性、またはその1つもしくは複数の変化に関するデータを収集
する段階;ならびに(c)単離された核酸、その発現産物、または核酸もしくは
発現産物の1つもしくは複数の活性断片の1つまたは複数の機能をデータから決定
する段階を含む方法が含まれる。本発明のその他の態様の場合と同じように、好
ましい決定段階は、活動電位、その1つもしくは複数の特性、またはその1つもし
くは複数の変化に関するデータのデコンボリューションを含むもの;所定の実験
の1つまたは複数の条件を変更する目的で1つまたは複数のシステムパラメーター
を操作する段階をさらに含むもの;およびこのような操作の結果を解釈する段階
をさらに含むものである。
【0031】 本発明のさらにもう1つの目的には、1つまたは複数の細胞に被験物質を曝露さ
せた際に、観察される活動電位によって呈示される1つまたは複数の特性の変化
を、細胞培養物の1つまたは複数の細胞の1つまたは複数のイオンチャネルと関連
づけるデータ処理段階を含む命令である、コンピュータによる実行のための命令
を含むプログラムがコード化されたコンピュータ可読媒体が含まれる。詳細には
、本発明のコンピュータ可読媒体は、観察された活動電位によって呈示される1
つまたは複数の特性の変化を過去の観察による記録情報と比較し、その変化を1
つまたは複数の細胞の1つまたは複数のイオンチャネルによるものと帰属させる
ことを可能にする、デコンボリューションの段階をデータ処理段階が含みうるよ
うなものである。重要なことは、本発明の好ましい態様において、活動電位のデ
コンボリューションに関するコンピュータ可読媒体(またはデコンボリューショ
ンソフトウエア)は、データ処理段階が分光分析を含まない、より詳細には、フ
ーリエ変換を用いる分光分析を含まないものであるということである。特に、本
発明のデコンボリューションの段階は、生物学的な知識によって着想したもので
ある。すなわち、ある既知の物質が細胞の生理に作用する影響または機構に関す
る本発明者らの知識は、活動電位の変化を基礎にある過程または経路とより効率
的に関連づける目的で、活動電位のより効率的な分析またはデコンボリューショ
ンを行うために、本発明の方法によって利用される。すなわち、本デコンボリュ
ーションの段階によって特定の機能的カテゴリーを解明しうることが見いだされ
た。このため、少なくとも、本発明のシステムを被験物質に曝露させ、デコンボ
リューションのプロセスによって、システムによって記録された活動電位に対す
る被験物質の影響をこれらの機能的カテゴリーの1つまたは複数に対して「適合
」させることが可能である。このため、被験物質が最も適合する機能的カテゴリ
ーの決定は、本発明の1つの目的である。
【0032】 これとは別に、実験条件を変化させられるように、システムのパラメーターを
変更および/または操作することを可能にする、もう1つのコンピュータ可読媒
体が提供される。特に、好ましいコンピュータ可読媒体にコード化された命令は
、1つまたは複数の被験物質の曝露に関して望ましい結果が得られるようにシス
テムをカスタマイズすることが可能である。このような「システムソフトウエア
」は、デコンボリューションソフトウエアを含む他のプログラムから構成される
ものでよい。重要なことは、本発明のデコンボリューションソフトウエアからは
分光分析、より詳細にはフーリエ変換が除外されることが好ましいが、本発明の
システムソフトウエアはこのような分光分析またはフーリエ変換を利用してもよ
いことである。
【0033】 本発明のさらにもう1つの目的は、固体微小電極;測定可能な活動電位を呈す
る細胞培養物;表面改質性単分子膜を含む、高インピーダンス封止部として働く
介在層;および対象となる細胞経路または受容体を解明するために活動電位を分
析することができるソフトウエア、を含むシステムを開示することである。本発
明のさらにもう1つの態様では、固体微小電極が平面微小電極であるシステムが
開示される。
【0034】 高スループット分析に関する方法であって、表面改質剤、好ましくは自己組織
性単分子膜を含む、高インピーダンス封止部として働く介在層を有する固体微小
電極を提供する段階;測定可能な活動電位を呈する細胞培養物を添加する段階;
および細胞培養物の活動電位を分析する段階を含む方法も開示される。本発明の
さらにもう1つの態様では、添加物がシステムに選択的に導入される。
【0035】 また、本発明は、以下の要素を含むシステムを含む装置も考慮している:微小
電極;測定可能な活動電位を呈する細胞培養物;表面改質剤を含み、高インピー
ダンス封止部として働く介在層;および対象となる細胞経路または受容体を解明
するために活動電位を分析することができるソフトウエア;および対象となるア
ッセイ法を開発するためにシステムの要素を操作することができるシステムアル
ゴリズム。本発明の1つの態様は、1つまたは複数の細胞経路または受容体に対す
る薬物候補の作用機序を決定するためのアッセイ法として働く装置である。
【0036】 本発明の1つの特定の態様においては、細胞培養物の1つまたは複数の細胞が、
少なくとも1つの遺伝子(例えば、遺伝子機能が不明なもの)によるトランスフ
ェクションを受けた細胞を含み、システムアルゴリズムが、システムの挙動に対
する遺伝子の影響の解明または遺伝子機能の発見を補助するためにシステムの要
素を操作することができるようなシステムが提供される。
【0037】 本発明のさらにもう1つの目的は、作用物質を検出する方法であって、作用物
質を、測定可能な膜電位を呈する少なくとも1つの細胞を有する細胞培養物、固
体微小電極および高インピーダンス封止部として働く介在層を含むセンサーであ
るセンサーと相互作用させる段階;膜電位の変化を観察および記録する段階;な
らびに作用物質の作用によって影響を受ける、対象となる細胞経路、イオンチャ
ネル、受容体などを解明するために膜電位の変化を分析する段階を含む方法を提
供することである。
【0038】 本発明のその他の目的は、本明細書に提供する考察および記載を考慮すれば当
業者には明らかであると考えられる。
【0039】5. 発明の好ましい態様の詳細な説明 本発明には、被験物質の影響を決定するためにともに機能するいくつかの成分
がある。本発明の1つの態様は、固体微小電極;電気的活動を呈する細胞培養物
;および高インピーダンス封止部として働く介在層を含むシステムである。本シ
ステムには、細胞培養物の1つまたは複数の細胞の電気的活動の変化を被験物質
の生理的活性と関連づけることができる(例えば、活動電位のデコンボリューシ
ョンを行える)ソフトウエアが付属することが好ましい。「被験物質」という用
語は、細胞などの生体システムに対する影響を決定しようとする任意の物質を広
くカバーするものとする。被験物質には、薬物、蛋白質、ペプチド、糖質、核酸
、脂質、天然物、低分子などが非制限的に含まれる。被験物質の「影響」という
用語は同様に広義に解釈され、イオン流、イオンチャネルの挙動、基礎にある細
胞経路、受容体機能およびアゴニストまたはアンタゴニストに対する反応、遺伝
子発現、疾患の原因/影響/進行などが非制限的に含まれうる。
【0040】 図9は、特に二酸化炭素/分子酸素雰囲気下における、細胞と微小電極との関
係を示した概略図である。これは活動電位―細胞の膜を介する電位の急速な変化
―を生じうる電気的活動性のある細胞を備えた微小電極アレイである。
【0041】 図9を参照すると、栄養分の水溶液などの液体または規定培地4が各細胞2を取
り囲んでいる。規定培地4は各細胞2の生存能を維持する。雰囲気中のガスは培地
4中の溶存ガスと平衡状態にある。
【0042】 1つまたは複数のシステムセンサー6は、規定培地4のパラメーターの制御およ
び観測を行う。これらのパラメーターには、例えば、pH、温度およびオスモル濃
度が含まれる。また、センサー6は、規定培地4への栄養分の流入のほかに温度も
これらの変化に応じて調節する。
【0043】 1つの態様では、図9に示す通り、上方の表面領域にある微小電極8が、改質封
止部表面10とともに形成される。表面10は微小電極8と結合し、その上部に高イ
ンピーダンス封止部を形成する。または、図示していないが、細胞2の接着に役
立つ介在層が存在する。細胞2は微小電極8によって観測可能な電気的活動を呈し
うる。
【0044】 細胞は一般に、細胞接着に対して反発的な第2の改質表面12によって分離され
る(図示した通り)。各微小電極8からのシグナルは電極のリード線14によって
デコンボリューション・アルゴリズムおよび電子工学制御システム16へと伝達さ
れる。システム16は、細胞2の活動電位におけるいくつかのイオンチャネルの役
割を解読する。
【0045】 システムアルゴリズム18は制御システム16から情報を収集し、活動電位の特性
をイオンチャネルに影響を及ぼす種々の既知の作用物質と関連づけたデータベー
スを作成する。システムアルゴリズム18はコマンドシグナルを制御システム16に
送る。また、システムアルゴリズム18は生物システム制御器20にもコマンドを送
るが、これは更新および状態の情報をシステムアルゴリズム18に戻すほか、被験
化合物の添加も制御する。
【0046】5.1. 固体微小電極 1つの特定の態様において、本発明は、柔軟性または平面型の微小電極であり
うる固体微小電極を含む。柔軟な微小電極アレイは、種々の表面(または特定の
内部構造の内部)に微小電極を配置しうるように、曲げ、屈曲およびひねりに容
易に適応する電極および絶縁体の組み合わせを含む。このため、本発明に適した
微小電極は、平坦表面または弯曲表面に配置可能なものである。本システムの固
体微小電極は金属微小電極でありうる。さらに、微小電極は電界効果トランスデ
ューサーでありうる。
【0047】 本発明のもう1つの特定の態様において、微小電極はさらに絶縁体および伝導
体を含みうる。同様に、本システムの伝導体は、金、白金、銀、銅、導電ガラス
もしくはそれらの組み合わせ、または任意の他の適した材料から構成しうる。さ
らに、本システムの導電ガラスは酸化インジウムスズ(indium tin oxide)を含
みうる。同様に、本システムの微小電極の活性表面はさらに、白金黒または酸化
イリジウムを含みうる。本発明の1つの特定の態様において、システムの金属微
小電極を取り囲む絶縁体は、珪素、改変二酸化珪素、窒化珪素、炭化珪素、ゲル
マニウム、シリカ、ガリウム、砒化物、エポキシ樹脂、ポリスチレン、ポリスル
ホン、アルミナ、シリコーン、フルオロポリマー、ポリエステル、アクリル共重
合体、ポリ乳酸もしくはそれらの組み合わせ、または他の適した材料でありうる
【0048】5.2. 微小電極と細胞との間に介在する層 本発明の1つの特定の態様では、微小電極/絶縁体アレイと細胞成分との間に
介在層が設定される。介在層は表面改質剤を含みうる。本システムの表面改質剤
は、自己組織性単分子膜でありうる。本発明のシステムのさらにもう1つの態様
において、自己組織性単分子膜はシランである。介在層の一部を形成するために
細胞接着分子をさらに用いることができる。本発明のシステムのもう1つの態様
において、細胞接着分子は、抗体、抗原、受容体リガンド、受容体、レクチン、
糖質、酵素、酵素阻害薬、ビオチン、アビジン、ストレプトアビジン、カドヘリ
ン、RGD型ペプチド、インテグリン、カドヘリン、修飾脂質またはそれらの組み
合わせである。
【0049】 本発明のシステムのさらにもう1つの態様において、介在層は高粘度の混合物
を含む。適した高粘度の混合物には、アルコール、エーテル、エステル、ケトン
、アミド、グリコール、アミノ酸、糖類、カルボキシメチルサッカライド、カル
ボキシエチルサッカライド、アミノサッカライド、アセチルアミノサッカライド
、それらの重合体またはそれらの組み合わせが非制限的に含まれる。有用なグリ
コールとしてはポリエチレン、ポリプロピレングリコールなどが可能である。本
発明のシステムのさらにもう1つの態様では、アルコール、エーテル、エステル
、ケトン、アミド、グリコール、アミノ酸、糖類、カルボキシメチルサッカライ
ド、カルボキシエチルサッカライド、アミノサッカライド、アセチルアミノサッ
カライド、それらの重合体またはそれらの組み合わせを単分子層に付着させる。
【0050】 本発明の介在層はさらに細胞の接着性を高める誘引層を含むことができる、ま
たは細胞の接着性を低くする反発層を含むことができる。または、介在層は、細
胞を規定領域に限局させうる誘引層および反発層の双方のパターンであってもよ
い。
【0051】5.3. 細胞培養のための細胞および培地 本発明には、電気的活動性のある細胞成分および種々の細胞培養培地を用いる
。細胞培養物の細胞は、電気的活動性のある細胞から、好ましくは測定可能な膜
電位または活動電位を生じるものから選択する。本システムの細胞培養物には、
ヒト、動物または脊椎動物からの神経細胞または心臓細胞が含まれうる。細胞培
養物には初代細胞または任意の細胞系の細胞が含まれうる。同様に、本システム
の神経細胞としては海馬細胞、皮質ニューロン、小脳ニューロン、中脳ニューロ
ン、脊髄ニューロンまたは末梢ニューロンが可能である。同じく適切なものとし
て、本システムの細胞培養物は幹細胞、その子孫またはそれらの組み合わせを含
みうる。本発明の1つの態様においては、本システムの幹細胞を分化因子に曝露
させることができる。形質転換(トランスフェクト)細胞を本細胞培養物に用い
ることもできる。本発明のシステムの1つのさらなる態様において、トランスフ
ェクト細胞には、被験ゲノム配列またはcDNAヌクレオチド配列を有する細胞が含
まれうる。もう1つの態様において、被験ヌクレオチド配列はジェンバンク(GEN
BANK)およびその最新版に提供されている任意の遺伝子配列でありうる。さらに
、被験ヌクレオチド配列は、セレラ(Celera)社の遺伝子データベースおよびそ
の最新版に提供されている任意の遺伝子配列であってもよい。
【0052】 本細胞培養物は選択的に高分子によってコーティングすることができる。細胞
培養物をコーティングする高分子はセルロース、メチルセルロースなどであって
よい。本発明の細胞培養物には種々の培地を用いることができる。好ましい培地
は無血清培地である。しかし、有用な培地は、細胞の機能または増殖を促進する
添加物または栄養分を有することが可能である。添加物には増殖因子、必須因子
、ビタミン、微量元素および接着因子が含まれうる。細胞培養物の成分は操作す
ることができる。例えば、細胞培養物が模倣する物理的または生理的条件に応じ
て、特定の物質を添加、補充または除去することができる。このため、細胞培養
物にストレスを与えるために栄養物または細胞修飾因子を除去することが可能で
ある。もう1つの例においては、グルコースを培地から部分的または完全に除去
することができる。グルコースまたは何らかの他の糖質を添加することもできる
。細胞培養法に関するこのほかの情報は、例えば、フレッシュニー(Freshney,
I. I.)、「動物細胞の培養:基本技法マニュアル(Culture of Animal Cells:
A Manual of Basic Techniques)」第4版、Wiley、John & Sons、March 2000に
記載があり、本明細書に提供されるこのおよびすべての他の参考文献の内容は参
照として本明細書に組み入れられる。
【0053】5.4. デコンボリューションのアルゴリズム 1つの特定の態様において、本発明は、活動電位のデコンボリューションのた
めの少なくとも1つのアルゴリズムを含む。デコンボリューション分析は、活動
電位または一連の活動電位の形成における複数のイオンチャネル、イオンポンプ
および電気的活動の他の原因の寄与を決定するものである。検出回路、好ましく
は改良型フロムヘルツ回路(modified Fromherz circuit)も本発明のシステム
に含まれうる。
【0054】 典型的には、デコンボリューション・アルゴリズムは、本発明のシステムから
基礎シグナルを得ることによって入手しうる。すなわち、被験物質を添加してい
ない基礎細胞培養物からシグナル(例えば、活動電位)を記録する。続いて、シ
ステムパラメーターの1つを変更したシステム、または被験物質を添加したシス
テムから記録されたシグナルと後に比較するために、このような基礎シグナルを
記憶する。記録されたシグナルの差から、変更したパラメーターまたは添加した
被験物質の影響に関する一定の指標が得られる。生物的影響が知られている特定
の既知の物質を記録シグナルを得るために用いるならば、最終的には、検討対象
の生物的影響または望ましい生物的影響の種類と相関する、電気的活動の変化に
関するライブラリーを構築することができる。このようにして、既知の物質によ
って誘発された電気的変化から記録および記憶された情報の総体からアルゴリズ
ムが得られる。続いて、この同じデコンボリューション・アルゴリズムを用いて
、被験物質が、既知の物質が及ぼす生物的影響の指標となるタイプの電気的活動
の変化を誘発するかどうかを解読する。最終的には、以下の実施例の項で例示す
るように、1つまたは複数のこのような機能的カテゴリーに分類されうる生理的
影響を所定の被験物質が呈する可能性の指標として役立つ種々の機能的カテゴリ
ーに関する知識が蓄積される。
【0055】 デコンボリューション・アルゴリズムおよび電子工学制御システム16のさらに
詳細な説明は図10に提示されている。第1の段階はブロックS22として示した開始
手順から始まる。続いて、ブロックS24に示すように、活動電位をサンプリング
してデータベースと比較する。次の段階では、ブロックS26に示すように、測定
された活動電位がデータベースに記録された活動電位の範囲内にあるか否かを決
定することが必要である。測定された活動電位が記憶された活動電位のパラメー
ターの範囲を外れれば、エラーメッセージが表示され(ブロックS28)、手順は
最初に戻る。
【0056】 これに対して、測定された活動電位が記憶された活動電位のパラメーターの範
囲にある場合には、1つまたは複数の望ましい化合物を規定培地4に添加する(ブ
ロックS30)。次の段階では、添加した化合物が活動電位の変化を引き起こした
否かを決定することが必要である(ブロックS32)。変化が全く測定されない、
または認められない場合には、システムが必要に応じて、特定の細胞経路を遮断
するための拮抗物質または特定の細胞経路を刺激するための作動物質を添加する
(ブロックS34)。
【0057】 ここでさらに、添加した化合物が活動電位の変化を引き起こしたか否かに関す
る決定が必要となる(ブロックS36)。変化が全く測定されない、または認めら
れない場合には、ブロックS37のように細胞の種類または培地条件を変更し、手
順を繰り返す。
【0058】 これに対して、S32およびS36のように、規定培地4に添加した化合物が活動電
位の変化を引き起こした場合には、活動電位のアウトプットモデルを生成する(
ブロックS38)。活動電位のアウトプットモデルは一般に少なくとも3群のイオン
によって表現される。第1の群はナトリウムであり、この場合にはフラックスは
細胞の外側から内側に流れる。第2の群のイオンであるカルシウムの場合も、フ
ラックスは細胞の外側から内側に流れる。第3の群であるカリウムの場合は、フ
ラックスは細胞の内側から外側に流れた上で、膜電位を再び形成する。
【0059】 ブロックS40では、デコンボリューション・アルゴリズムおよび電子工学制御
システムがアウトプットモデルの活動電位の変化を決定および/または測定し、
測定結果をデータベースに記憶されたものと比較する(ブロックS40)。次の段
階では、活動電位のアウトプットモデルの変化が化合物の機能的カテゴリーに対
応するか否かを決定することが必要となる(ブロックS42)。
【0060】 変化が化合物の既知の機能的カテゴリーに対応しない場合には、システムが必
要に応じて、特定の細胞経路を遮断するための拮抗物質または特定の細胞経路を
刺激するための作動物質を添加し(ブロックS34)、上記の通りに段階が進行す
る。
【0061】 その反対に、変化が既知の機能的化合物カテゴリーに対応する場合には、レポ
ートの形態のアウトプットが提示される(ブロックS44)。
【0062】5.5. 被験物質に関するデコンボリューションのためのシステムの応用 このようにして、被験物質を添加する段階、および改変された活動電位をデコ
ンボリューション・アルゴリズムを用いて分析する段階を含む方法が提供される
。図10参照。基本的な形態のデコンボリューションの段階は、種々のイオンチャ
ネルに起因するイオン流の相対的な寄与を解読する段階を含む。より高度の形態
にあるデコンボリューションの段階は、観察されたイオン流の変化の原因となる
、基礎にある過程、機構または経路に関する情報を提供する。電気的活動の変化
(例えば、活動電位の変化)に関するデコンボリューションでは、波形、活動電
位またはその変換物(例えば、導関数、度数関数など)の観察および分析を行っ
てもよい。活動電位の波形を分析することが好都合である。本発明の1つの好ま
しい態様においては、最適化されたホジキン-ハクスレー波形を用いることを含
む方法が提供される。
【0063】 その他の態様には、電気的活動、好ましくは膜電位または活動電位の変化の時
間的分析が含まれる。このため、本発明は、例えば、活動電位、その1つもしく
は複数の特性、またはその1つまたは複数の変化に関するデータを収集した後に
、このようなデータから、1つまたは複数のイオンチャネル、G蛋白質、輸送体、
イオンポンプまたはそれらの組み合わせが被験物質による影響を受けるかどうか
を決定することを考慮している。
【0064】5.6. 機能的ゲノム学的解析のためのシステム 本発明の1つの特定の用途においては、単離された核酸、その発現産物、また
はこのような核酸もしくは発現産物の1つもしくは複数の活性断片に関して考え
られる1つまたは複数の機能を決定するためのシステムが提供される。特に、本
システムは、ソフトウエアが選択的に付属する装置を含む。本装置は、固体微小
電極、および単離された核酸によるトランスフェクションを受けた、またはその
発現産物に曝露された細胞である、1つまたは複数の認知可能な特性を呈する測
定可能な活動電位を提供しうる1つまたは複数の細胞、を含む細胞培養物を含む
。選択的に付属するソフトウエアは、このような活動電位によって呈示される1
つまたは複数の特性の変化を、このような単離された核酸、その発現産物、また
はこのような核酸もしくは発現産物の1つもしくは複数の活性断片の1つまたは複
数の機能と関連づけることができるデータ処理命令を含む。好ましくは、本装置
はさらに、高インピーダンス封止部として作用する、微小電極と細胞培養物の1
つまたは複数の細胞との間に配置された介在層を含む。
【0065】 このようにして、トランスフェクションを受けた細胞培養物からの電気的シグ
ナルの記録を記録し、基礎記録と比較する。記録された電気的シグナルと基礎的
な電気的シグナルとの差は、細胞培養物の細胞の形質転換に用いた核酸の影響の
指標として役立つ。続いて、これらの影響を模倣する、または低下させる被験物
質に関する高スループットアッセイ法に着手することができる。または、遺伝子
機能を識別するために、核酸の影響を、影響および基礎にある経路が知られたデ
ータベースと比較することもできる。
【0066】5.7. システムアルゴリズム 本発明の1つの態様において、本システムは、どの細胞過程が影響されるかを
決定するためにイオンチャネル機能の変化に関する情報を分析する、少なくとも
1つのアルゴリズムを含む。図11参照。
【0067】 ここで図11を参照すると、システムアルゴリズム18のさらに詳細な説明が提示
されている。このアルゴリズムは100種類またはそれ以上の化合物の検査を保証
する。第1の段階はブロックS50として示した開始手順に始まる。ブロックS52の
通りに分極値、温度などの生理的状態パラメーターを設定する。ここで、活動電
位を生成させる。次の段階では、設定パラメーターが標準的な範囲にあるか否か
を決定することが必要である(ブロックS54)。設定パラメーターがこれらの範
囲を外れる場合には、エラー表示が生成され(ブロックS56)、システムは診断
を実行し(ブロックS58)、手順を再び開始する。しかし、設定パラメーターが
望ましい範囲にあるという決定がなされれば、デコンボリューション・アルゴリ
ズムが実行される(ブロックS60)。
【0068】 この際には、被験化合物が活動電位に影響を及ぼしたか否かに関する決定が必
要である。被験化合物が活動電位に実質的に全く影響を及ぼさない場合には、ブ
ロックS64の通りに細胞の種類および/または培地条件を変更し、手順を繰り返
す(すなわち、最初に戻る)。化合物が活動電位に影響を及ぼす場合には、S66
のようにデータ報告をアウトプットし、その次または別の化合物を検査するため
にブロックS52までの手順を繰り返す。
【0069】 ブロックS52の通りに生理的状態パラメーターを設定するのと同時に、システ
ムアルゴリズムがS68のように生物学的サブルーチンを実行しうることを認識す
ることが重要である。ここで、このサブルーチンは一般に細胞の完全性に関する
ものであり、例えば、細胞が生存し続けているか否かに関してS70のようなシス
テムチェックを行うことができるが、これはそれらを正しいオスモル濃度および
温度に曝露させる必要があるためである。システムチェックが陰性であれば、S7
2のようにエラー表示をアウトプットして、S74のように診断を実行し、手順を最
初に戻す。
【0070】 しかし、システムチェックが肯定的であった場合には、ブロックS76のように
フィードバックループが設定される。
【0071】 未知の作用物質の検出および決定 薬物および他の作用物質の可能性があるものの機能に対してシステムアルゴリ
ズム(操作アルゴリズム)を適用することにより、どの細胞過程が作用物質によ
る影響を受けるかが決定される。本発明の方法のさらに別の特定の態様において
、デコンボリューションは細胞において影響を受ける経路または機能的カテゴリ
ーに関する情報につながる。
【0072】 ゲノム学解析 本システムの1つのさらに別の特定の態様において、前記付属のソフトウエア
は、所定の実験の1つまたは複数の条件を変更する目的で1つまたは複数のシステ
ムパラメーターを操作するため、このような操作の結果を解釈するため、および
その両方のための命令を含む。
【0073】 本発明の1つの態様は、高インピーダンス封止部として働く表面改質性単分子
膜を含む介在層を有する固体微小電極;測定可能な活動電位を呈する細胞培養物
;および細胞培養物の活動電位の生物学的分析のため、すなわちデコンボリュー
ションのための手段、を含む、高スループット分析のためのシステムである。細
胞培養物には、遺伝子、単離された核酸、核酸の断片またはそれらの組み合わせ
によるトランスフェクションを行うことができる。本発明の装置の1つのさらな
る態様において、遺伝子、単離された核酸、または核酸の断片はヒトからのもの
である。
【0074】 本発明の装置のさらにもう1つの態様において、アルゴリズムはフィードバッ
クループを含む。デコンボリューションおよびシステムのアルゴリズムは、記憶
媒体、例えば、磁気媒体(磁気ディスクまたはテープ)または光学媒体(CD-ROM
)に保存することが好ましい。
【0075】5.8. 発明のその他の好ましい態様 本発明のもう1つの態様は、測定可能な活動電位を呈する少なくとも1つの細胞
を含む細胞培養物、固体微小電極、高インピーダンス封止部として働く表面改質
性単分子膜を含む介在層を含むセンサー;および活動電位の生物学に基づくデコ
ンボリューションを行うことができるソフトウエア;およびサンプリング装置を
含む、作用物質を検出するためのキットに関する。本発明のキットのさらにもう
1つの態様において、サンプリング装置は、例えば空気ポンプを含む、環境サン
プリング装置を含む。
【0076】 本発明のもう1つの態様は、上記のキットを提供する段階、および作用物質を
検出するために作用物質をセンサーと相互作用させる段階を含む、作用物質の検
出の方法に関する。
【0077】 本発明のもう1つの態様は、固体微小電極、高インピーダンス封止部として働
く表面改質性単分子膜を含む介在層;活動電位の生物学的分析を行うことができ
るソフトウエア;および遺伝子機能の決定のために対象となる細胞経路または受
容体を解明することができるアルゴリズム;および測定可能な活動電位を呈する
トランスフェクションが可能な細胞培養物;トランスフェクションのための少な
くとも1つの遺伝子;およびトランスフェクション促進因子を含む、遺伝子機能
を決定するためのキットに関する。本発明のキットのさらにもう1つの態様にお
いて、トランスフェクション促進因子はアデノウイルスまたはリポフェクチンで
ある。
【0078】 本発明のもう1つの態様は、高スループット分析の方法を実行するようにコン
ピュータに命じる命令であって、細胞培養物の活動電位のデコンボリューション
を含む命令である、コンピュータによって実行される命令を含むコンピュータ可
読媒体である。コンピュータ可読媒体のさらにもう1つの態様において、細胞培
養物は固体微小電極に対して付着性である。
【0079】 本発明のもう1つの態様は、高スループット分析のためのコンピュータシステ
ムであって、プロセッサ;プロセッサに細胞培養物の活動電位のデコンボリュー
ションを行わせるための命令を含むプログラムである、プロセッサの動作を制御
するコンピュータプログラム、を含むシステムである。コンピュータシステムの
さらにもう1つの態様において、プロセッサはネットワークを含む。コンピュー
タシステムのさらにもう1つの態様において、ネットワークはインターネット、
エクストラネット(extranet)またはバーチャルプライベートネットワークを含
む。コンピュータシステムのさらなる態様において、プロセッサは標準的な優先
または標準的な無線の手段によってネットワークとリンクしている。
【0080】 1つのさらなる態様では、実験条件を変化させられるようにシステムのパラメ
ーターを変更および/または操作することを可能にする、もう1つの別のコンピ
ュータ可読媒体が提供される。特に、好ましいコンピュータ可読媒体にコード化
された命令は、1つまたは複数の被験物質の曝露に関して望ましい結果が得られ
るようにシステムをカスタマイズすることが可能である。このような「システム
ソフトウエア」は、デコンボリューションソフトウエアを含む他のプログラムか
ら構成されるものでよい。重要なことは、本発明のデコンボリューションソフト
ウエアからは分光分析、より詳細にはフーリエ変換が除外されることが好ましい
が、本発明のシステムソフトウエアはこのような分光分析またはフーリエ変換を
利用してもよいことである。
【0081】 本発明をさらに例示する目的で、読者による考察のために以下の実施例を提供
する。
【0082】6. 実施例 6.1. 心筋細胞および脊髄ニューロンの使用 神経細胞ネットワークの正確な空間配置のための鋳型は、シグナルの検出に対
して広範囲にわたる回路および製造技術の適用を可能とするSAMの使用によって
得られる。心筋細胞からのシグナルを測定するために金微小電極を用いる(図1
)。記録は37℃で行う。平面微小電極アレイに白金処理を施し、細胞許容性の人
工基質でコーティングする。図面aは自発発火性単層からの単一の活動電位(AP
)を示している。図面bは、同じ微小電極部位からの記録を、細胞外シグナルの
拍動性を示すためにさらに長い時間幅にわたって示したものである。図2には脊
髄ニューロンからのシグナルを示している(図2)。この記録は脱分極刺激によ
って誘発させた細胞発火を示している。培養系における神経細胞の基体として金
属微小電極を用いている(図3)。ニューロンを改質Si3N4をコーティングした微
小電極上で成長させ、無血清培地中でAu微小電極からのシグナルを記録している
。このため、細胞を規定培地中にてSi3N4表面上で培養し、シグナルを記録して
処理し、電子インターフェースによって表示している。微小電極上での細胞の活
動度はインビボ環境への毒素の導入によって低下しており、これは神経毒性アッ
セイ法に関する実験的証明となる(Jung, D.R.:Cuttino, D.S.;Pancrazio, J.
J.;P. Manos, P.;Custer, T.;Sathanoori, R.S.;Aloi, L.E.;Coulombe, M.
G.;Czarnaski, M.A.;Borkholder, D.A.;Kovacs, G.T.A.;Stenger, D.A.;Hi
ckman, J.J.(1998)、これはその全体が参照として本明細書に組み入れられる
。「撮像X線光電子分光法、走査型電子顕微鏡、インピーダンス測定および細胞
外記録を特徴とする、細胞を用いるセンサー微小電極アレイ(Cell-based senso
r microelectrode array characterized by imaging x-ray photoelectron spec
troscopy, scanning electron microscopy, impedance measurements, and extr
acellular recordings)」. J. Vac. Sci. Technol. A、16(3)、May/June、1
183〜88)。
【0083】 図1と図2との間の信号対雑音比の違いは、より大きい心臓細胞によって形成さ
れる単層は、イオン輸送に対する機械的障壁を単純に形成することにより、周囲
の培地に対して大きな封止抵抗を生じるが、脊髄培養における単一ニューロンは
はるかに小さく、分離されているため、イオンがより自由に電極表面へと拡散し
うるというという事実によるものである。しかし、これらの結果は、哺乳動物に
よって生じるシグナルが、微小電極によって容易に検出される程度に十分に強い
ことを示している。封止抵抗が高くなるにつれて信号対雑音比はガラスマイクロ
ピペットで得られる値に近づき、それにより、チップを用いる記録によるAP波形
の分析が可能になる。
【0084】6.2. イオンチャネルの活動電位への寄与 本発明のもう1つの局面は、活動電位の形状を、生物学的反応モジュレーター
によって刺激される経路と関連づけることである。種々の病原性作用物質および
毒素を作用させた後に電子素子によって記録すると、ニューロンは改変された活
動電位を呈する。活動電位に対する種々の毒素の影響を示すために、化学刺激時
に安定した電気的活動を呈するNG108-15(神経芽腫×神経膠腫)細胞系で試験を
行っている。用いた培養方法およびこの細胞系の詳細な電気生理学的特徴はマー
(Ma)ら、1998に報告されている。NG108-15細胞のモデル系は図4に示されてお
り、これは種々の「機能的カテゴリー」に属する毒素の種々の経路との関連を文
献からまとめて示したものである((Becerril, B.、Marangoni, S.、Possani,
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xin-resistant sodium channels)」. Cell Mol. Neurobiol. 14:227〜44))
。図4において、太字は検討した毒素を示している。これらのデータは表1にも示
されている。これらの結果の意義は、テトロドトキシン(TTX)などの明らかな
神経毒素だけでなく、それほど明らかではないリシンなどの他の多くのものもAP
に影響を及ぼした点にある。表記の通り、14種の機能的カテゴリーのうち(表1
)、細胞過程、シグナル伝達経路、転写を修飾する作用物質を含む6種がAPに影
響を及ぼしている。VXを除き、列挙した毒素のすべてが180秒以内に活動電位を
停止させる。しかし、特定の毒素によってどの経路および最終的にはどのイオン
チャネルが主として影響されるかを決定するために本発明者らが用いた、活動電
位の停止様式に関しては差が認められた。これを図5に示すが、これには輸送お
よび結合蛋白質であるパラオキソン;蛋白質合成阻害薬であるリシン;およびエ
ネルギー代謝阻害薬であるシアン化物の投与後のAPが示されている。図5は(上
部)3mMパラオキソンの投与後のシグナル消失を示し、シグナルの減速または位
相の変化、膜での脱分極および60秒未満の遮断開始が示されているが、これは毒
素を洗い流した後も非可逆性であった。細胞内記録を用いた刺激活動電位(中央
部)では、持続期間、振幅(AMP)および後過分極電位(AHP)に関する、活動電
位の形状の劇的な変化が示されている。このように、記録されたシグナルの詳細
な解釈による細胞経路の同定は、電気生理学的データを同定し、本発明者らのデ
コンボリューション・アルゴリズムを用いてそれらを「細胞機能」カテゴリーと
関連づけるための本発明の診断概念の基盤となる。
【0085】 活動電位は、経路特異的な様式でイオンチャネルが妨げられることに対応して
、種々の毒度によって異なる形式で変更または遮断される。細胞に対する種々の
生物学的反応モジュレーターまたは作用物質の投与後にAPを比較することは、分
析アルゴリズムをさらに開発するための経路の同定につながる。経路の決定には
、APの形状の変化、活動停止までの時間、頻度および振幅の変化ならびに他の因
子などのパラメーターがかかわる。
【0086】 活動電位シグナルの分析は、関連のある生化学経路または機能的カテゴリーに
関する感度の高い指標である。その論理は、いくつかのクラスの毒素の影響は、
イオン伝導度のパラメーター(例えば、大きさまたは時定数)の変化であり、そ
の結果、細胞外記録による波形およびスパイク頻度に変化が生じるというもので
ある。振幅が減少した膜電位のコピー(封止抵抗が高い場合)または膜電位の導
関数(封止抵抗が低い場合)のいずれかのシグナルを記録する。この概念の実現
性を例示するために、ナトリウムチャネルの時定数を2倍にし、カリウムチャネ
ルの時定数を5倍にしたホジキン-ハクスレーモデルを作成する。刺激された細胞
外波形は膜電位(図6-a)またはその導関数(図6-b)のいずれかである。図6に
おける最大のピークは、カリウムチャネルの時定数を5倍に延長させた場合のも
のである―後電位が長いことに注目されたい。最も小さいピークはナトリウムの
時定数を2倍にすることによる。残りのピークは通常の「教科書」によるホジキ
ン-ハクスレーのシミュレーションである。ナトリウムチャネルの遅延によって
シグナル振幅は減少し、その主ピークの幅は広くなるが、後電位には影響は及ば
ない。カリウムチャネルの遅延によって速いナトリウム性ピークは幾分強くなり
、そのピークは延長するがその導関数は延長せず、後電位は著明に延長し、一定
の刺激下でのスパイク頻度は大きく低下する(後者は提示していない)。これら
の結果は、波形が伝導性のわずかな変動に対しても極めて感度が高いことを明ら
かに示している。これらのシミュレーションを毒素データとあわせて考えると、
経路に影響を及ぼす受容体、イオンチャネルおよびAPの形状の間に直接的な関連
があることが示される。これらのデータは、本発明者らのシステムで既知の化合
物または薬物を検討し、AP形状の変化をカタログ化することによって形成される
と考えられるライブラリーの手始めである。デコンボリューション・アルゴリズ
ムはこれらのライブラリーを利用して、未知の化合物または遺伝子による影響を
受ける機能的カテゴリーおよび経路を同定すると考えられる。
【0087】6.3. 本発明において有用な細胞の種類 電気的活動性のある任意の細胞を診断要素として用いることができる。これら
の1つは細胞系であると考えられる。用いたNG-108-15細胞系は神経膠腫×神経芽
腫の交雑に由来し、再現性のある結果をもたらすことが示されている。データの
大部分はこの細胞種を用いて収集しており、それらは本発明者らの規定培養シス
テムで2〜3カ月生存することが示されている。本発明者らの規定された、または
再現性のある細胞培養物システムにおける初代CNS細胞の寿命は約1カ月である。
しかし、初代細胞には腫瘍由来の細胞系よりもインビボ系に近いという利点があ
る。これらの2つの選択肢の好ましい面を組み合わせる解決策は、CNS幹細胞に由
来するクローン系を用いることである。ニューラルステム(NeuralStem)社およ
びバイオウィティカー(BioWhitaker)社などの企業は、幹細胞からCNSニューロ
ンの安定的細胞系を開発するとともに、初代神経細胞から細胞系への形質転換を
行っている。
【0088】 これらのすべての細胞の電気的特性を微小電極アレイ上で観測することができ
る。多くの細胞分裂を経ても固有のニューロンの特徴の安定性を維持する顕著な
能力に加えて、CNS幹細胞は著しく可塑性が高い。すなわち単一の細胞外因子に
よって、細胞の運命の内容をある種の細胞または別のものへと大きく変化させる
ことができる。このようにして、安定的で寿命の長い表現型を、シグナル伝達の
ために微小電極アレイ上に細胞を特異的に配置するための新規の先進的な表面化
学と組み合わせることにより、アッセイシステムの重要な要素が形成される。個
々の細胞がそれぞれ一意的なアッセイ要素となり、細胞はチップ上の個々の微小
電極上に配置されるため、検討しようとする化合物または蛋白質に対する反応に
関して、再現性のある細胞集団に対する統計的手法を用いることが可能である。
【0089】6.4. 細胞カテゴリーの解明を可能にするための、パッチクランプおよび固体微
小電極を用いる電気生理学的手法 生化学物質の導入後の神経活動電位の変化に関連した細胞機能は、それぞれが
上記の機能的カテゴリーにおける異なる経路を活性化する、生化学的「誘因」を
用いて決定される。本システムは、6.4.1に述べる遺伝的カテゴリーのいくつか
に伴って変化する活動電位の形状に関する再現性のある変化によって立証される
。このほかの裏づけは図4〜7に提示されている。さらに、モデル系において配列
相同性に基づく主要カテゴリーのサブセットにより、各経路に関して2つの「誘
因」を決定し、これらの化合物の存在下でAPを観測して、経路に対して一意的な
APの特徴を示すことが可能である。細菌などの単純なシステムにより、評価のた
めの単純な遺伝的基盤を定義することができる。
【0090】
【表1】 NG-108-15細胞に対する生体作用物質(Bio-Agents)の評価 *反復発火を阻害する化合物を示す。
【0091】6.4.1.遺伝的データによる細胞カテゴリー 分析用の機能のサブセットを得るために、細菌に関して定義された配列相同性
に基づく遺伝的カテゴリーをまず用いた。ライリー(Riley)ら(Riley, M.(19
93)「大腸菌の遺伝子産物の機能(Functions of Gene products of Escherichi
a coli)」. Microbiol. Rev. 57、862〜952)によって定義された14種の遺伝的
カテゴリーのうち、本発明者らは例として細胞調節に最も関連のある群を用いて
いるが、14種のカテゴリーのすべてを本発明の方法で検討することも可能である
。以下の6種類の広範囲にわたるカテゴリーを選択した:(a)エネルギー代謝、
(b)アミノ酸生合成、(c)細胞過程、(d)脂肪酸、リン脂質およびステロイ
ドの代謝、(e)転写調節、および(f)輸送蛋白質および結合蛋白質。細胞上(
on-cell)細胞外記録法でガラス微小電極により、または微小電極アレイにより
、ニューロンまたは心筋細胞でAPの変化を観測した。上記の方法を用いて、膜電
位の変化に対応するシグナルのデコンボリューションを行った。2つの細胞標本
が本発明において特に有用である。第1に培養NG-108-15胚性海馬ニューロンを用
いる。これらのデータの分析によって各カテゴリーの特性が同定される。第2の
データのセットは、微小電極アレイ上に位置する細胞に関して収集する。このデ
ザインにより、これらの6種の広範囲にわたるクラスに特徴的な活動電位の形状
変化のほか、十分に確立された培養細胞モデルと比較して微小電極アレイ上の細
胞が刺激にどのように反応するかを決定することが可能となる。
【0092】6.4.2. 実験デザインおよび化合物の詳細な選択理由 有効濃度を決定するために、それぞれの被験化合物または「誘因」を用いて試
験を行う。有効濃度とは、初回曝露から12時間以内に、細胞死を引き起こさずに
生理的影響生じさせるものをいう。試験は細胞の平板培養から7〜10日後に行う
。別に特記する場合を除き、実施例の項において、細胞は以前の記載の通りに、
10mMグルコースを含む無血清培地中で培養して維持する(Schaffner, A.、Barke
r, J.L.、Stenger, D.A.およびHickman, J.(1995)「規定された系における海
馬ニューロンの成長に必要な因子の検討(Investigation of the factors neces
sary for growth of hippocampal neurons in a defined system)」. J. Neuro
sci. Methods、62、111〜119)が、他の培地処方も当業者に知られている。
【0093】 海馬ニューロンをさまざまな生化学的「誘因」に曝露させた際に活動電位がど
のように変化するかを観測するためには、細胞外クランプ法による電気生理学的
手法を用いる。これらの変化を用いて、細胞内で生じ、その活動の総体が活動電
位を構成する個々のイオンチャネルの電気的活動とも関連する、特定のランドマ
ーク的なイベントのマッピングを行う。活動電位の形状のデコンボリューション
を行い、それを経路またはカテゴリーに関連づけるための第一段階のアルゴリズ
ムを作成するためにこの情報を用いる(AP波形分析については以下を参照)。誘
因物質および調節カテゴリーの具体例を以下に示す。当業者はこれらの例に基づ
き、列挙されていないその他の作用物質を用いうると考えられる。
【0094】6.4.2.1. エネルギー代謝:2-デオキシ-D-グルコース(2-DG) 成体海馬AC1ニューロンを用いた数多くの研究から、2-デオキシ-D-グルコース
(2-DG)による解糖の一時的遮断によって、海馬スライスのCA1領域におけるシ
ナプス伝達が可逆的に抑制されることが示されている。ニューロンが回復すると
、興奮性シナプス後電位(EPSP)の持続的増強が観察される。したがって、2-DG
は、活動電位に直接影響を及ぼしうるとともに、解糖を遮断する代謝作用に基づ
いて遺伝子発現および蛋白質合成の変化も誘導しうる分子である。
【0095】 シグナル収集の開始から24時間前に、エネルギー源としてβ-ヒドロキシ酪酸
:アセト酢酸を2:1の比で供給する形で5mMケトン体を添加することにより、本
発明の装置中の培地への補充を行う。最初の2-DGは10mMの濃度が得られるように
添加する。NADH生成によってトリカルボン酸回路におけるエネルギー産生を遮断
する化合物であるマロン酸、および酸化的リン酸化の脱共役薬である2,4-ジニト
ロフェノールを含む、異なる部位に作用するほかのエネルギー代謝の阻害薬も、
同じく用いることができる。
【0096】 このほかの誘因にはグルコースおよびフルクトースがある。グルコースは幅広
い機能を持つエネルギー代謝物質であるが、濃度変化によって活動電位に影響を
及ぼす。活動電位に対するグルコースの影響とフルクトースの影響との比較は、
経路に対して、ならびに糖尿病および低血糖症を含む特定の疾患状態に対して意
味がある。
【0097】6.4.2.2. アミノ酸生合成:アミノ-オキシアセテート アミノ-オキシアセテート(amino-oxyacetate)は、詳細な記載のあるトラン
スアミナーゼ活性の阻害薬、特にグルタミン酸のアミノ基転移が起こる反応の阻
害薬である。トランスアミナーゼ活性がなくてもグルタミン酸およびGABAの両方
を合成することはできるが、この阻害薬によって窒素代謝に大きな変化が生じる
。このような変化は、この化合物の影響に対する代償として遺伝子発現の変化を
もたらすおそれがある。
【0098】 アミノ-オキシアセテートを5mMで本発明のシステムとともに用いる。トランス
アミナーゼ活性の変化を確認するために、アミンまたはアミドのNを標識した[ N]-グルタミンを少量の細胞のアリコートに含めた上で、グルタミン酸、アス
パラギン酸、GABAまたはアラニンにおける15Nの回収をこれらのアミノ酸のガ
スクロマトグラフィー/質量分析によって観測する。グルタミン酸の主要なNか
ら他のアミノ酸への15Nの転移はトランスアミナーゼの阻害薬によって遮断さ
れる。15Nのパターンに対する蛋白質合成阻害の影響を用いて、活動電位の特
性をこれらの経路の変化の程度と関連づける。
【0099】6.4.2.3. 細胞過程:コレシストキニン(CCK) CCKは海馬の介在ニューロンにおいて、抑制性神経伝達物質であるGABAと共存
する。CCK受容体は海馬に大量に認められ、オピエートの興奮性作用に拮抗する
ことが知られている。最近の報告で、硫酸化オクタペプチドCCK-8Sが大半の海馬
介在ニューロンにおける活動電位の頻度を増加させること、または遺伝子に関連
した内向き電流を生じさせることが明らかになっている(Miller, K.K.、Hoffer
, A.、Svoboda, K.R.、Lupica, C.R. 「関連文献 コレシストキニンは海馬介在
ニューロンにおける静止時Kコンダクタンスを抑制することによってGABAの放
出を増加させる(Related Articles Cholecystokinin increases GABA release
by inhibiting a resting K conductance in hippocampal intemeurons)」.
J Neurosci. 1997 Jul 1;17(13):4994〜5003)。CCKは脳内で満腹感に対す
る役割、および虚血性障害において考えられている有害な役割を含む、複雑な機
能を果たすことが知られているため、この化合物により、活動電位に対して直接
的かつ即時的な影響を及ぼす古典的受容体を介するペプチド型ホルモンが得られ
る。
【0100】 CCK-8Sペプチドを、オピエートの作用に影響を及ぼすことが知られた濃度であ
る100nMで本発明に用いる。CCK-8応答をさらに解明するために、プロテインホス
ファターゼ阻害薬であるGTPγS(300nM)およびプロテインキナーゼ阻害薬であ
るオカダ酸(100nM)に関して検討する。さらに、ニューロペプチドY、血管作動
性腸ペプチドおよびトランスフォーミング増殖因子-βなどの、海馬膜上の受容
体を介して作用する他のペプチドホルモンを本発明のシステムにて用いる。
【0101】6.4.2.4.脂肪酸およびリン脂質の代謝/コレステロールの合成 HMG CoAレダクターゼ阻害薬:ロバスタチン 神経細胞はアセチルCoAを用いてコレステロールをデノボ合成する(Edmondら
、1991)。この経路は高度に調節されており、最も重要な制御段階はHMGCoAレダ
クターゼの箇所である。デノボ脂質生合成およびコレステロール合成は後期胎児
および生後初期の時期に特に重要である。HMG-CoAレダクターゼ、ファルネシル
ピロリン酸シンターゼおよびコレステロール7α-ヒドロキシラーゼを含む、コレ
ステロール合成経路における重要な酵素のメッセンジャーRNAはこの時期に増加
する。さらに、ロバスタチンなどの親油性HMG CoAレダクターゼ阻害薬は神経系
の睡眠および認知機能にかかわる領域に影響を及ぼす。コレステロールは細胞膜
の重要な成分であるため、活動電位の形状の変化はコレステロールの合成能の変
化と関連している可能性がある。
【0102】 ロバスタチンを、培養細胞におけるHMG CoAレダクターゼを阻害する濃度であ
る10μMで本発明の組織培養培地に含める。コレステロール合成の阻害に関する
この化合物の効果をさらに明らかにするため、安定同位体法を用いてコレステロ
ール合成に対するロバスタチンの作用を定量化する。さらに、25-OH-コレステロ
ールなどのその他のコレステロール合成阻害薬、ならびにカルニチンパルミトイ
ルトランスフェラーゼ阻害薬であるTGDAおよび抗結核薬であるイソニアジドなど
の脂質代謝のその他の修飾因子を本発明のシステムにおいて用いる。
【0103】6.4.2.5. 転写調節:副腎皮質ステロイド 副腎皮質ステロイドによるニューロンの興奮性の修飾は、特に海馬CA1領域で
詳細に記載されている(Okuhara, D.Y.、Beck, S.G.「関連文献 副腎皮質ステ
ロイドは海馬CA3領域の錐体細胞における5-ヒドロキシトリプタミン1A受容体-エ
フェクター経路を変化させる(Related Articles Corticosteroids alter 5-hyd
roxytryptamine 1A receptor-effector pathway in hippocampal subfield CA3
pyramidal細胞)」。J Pharmacol Exp Ther. 1998 Mar;284(3):1227〜33)
。海馬は中枢神経系の中でミネラルコルチコイド受容体およびグルココルチコイ
ド受容体の密度が最も高い。副腎皮質ステロイドは核内のミネラルコルチコイド
受容体およびグルココルチコイド受容体の活性化を介して遺伝子発現を調節する
【0104】 コルチコステロンは本発明において、細胞の電気的活動性に反映されるイオン
平衡を検査するために用いられる。さらに、アルドステロン、デキサメタゾンお
よびRU38486を含むその他のステロイドも本発明のシステムにおいて用いられる
【0105】6.4.2.6.輸送蛋白質および結合蛋白質:コリンアゴニスト、カルバコール 内側中隔から海馬へのコリン性インプットは、θリズムおよび空間学習を含む
、海馬の活動性および機能の調節に重要な役割を果たす。最近、コリンアゴニス
トであるカルバコールが、海馬スライス中のCA1錐体細胞から記録される活動電
位にいくつかの可逆性変化を引き起こすことが見いだされた(Figenschou, A.、
Hu, G.Y.、Storm, J.F.「関連文献 ラット海馬ニューロンにおける活動電位の
コリン性調節(Related Articles Cholinergic modulation of the action pote
ntial in rat hippocampal neurons)」。Eur J Neurosci. 1996 Jan;8(1):
211〜9)。
【0106】 コリンアゴニストであるカルバコールは本発明において、コリン受容体を検索
するために2μMの濃度で用いられる。さらに、ピレンゼピンまたはアトロピンな
どのその他のコリンアゴニスト、およびアセチルコリンまたはムスカリンなどの
アゴニスト、ならびにピロカルピンなどの部分的アゴニストも評価される。
【0107】 イオンチャネル遮断薬は活動電位を修飾するために用いられる。TEA(例えば
、臭化テトラエチルアンモニウム)はカリウムチャネルに対して極めて特異的で
ある。同様に、TTX(テトロドトキシン)はナトリウムチャネルに対して特異的
である。TTXはニューロンの自発的な電気活動を阻害しうる可逆性遮断薬である
。TTXによって誘導される電気的活動の遮断は発生中のニューロンにおいて遺伝
子発現パターンの変化をもたらす。TTXの影響を阻害するためにはL型電位感受性
カルシウムチャネルのアゴニストを用いる。
【0108】6.4.3.生物的成分の要素 6.4.3.1.規定システムの作成およびニューロンの特徴決定 18日齢の胚性CNS幹細胞ニューロン、その他の神経細胞、心筋細胞および測定
可能な膜電位変化を呈するその他の細胞に由来する海馬ニューロンは本発明にお
いて有用である。NG-108-15細胞、海馬ニューロンは種々の神経培養系において
モデルとして幅広く用いられている。それらは、本発明の目的にとって極めて重
要である、必要な神経伝達物質受容体およびイオンチャネルを発現する。海馬ニ
ューロンは終末分化した非分裂細胞である。CNS幹細胞は、望ましい神経伝達物
質受容体およびイオンチャネルのいくつかを発現すると考えられる神経様表現型
に分化することができる。
【0109】 細胞を均質なSAM表面上で培養する。短期間(1カ月未満)の海馬培養にはDETA
が最も優れた人工的表面であることが報告されている(Schaffner,A.、Barker,J
.L.、Stenger,D.A.およびHickman,J.(1995)「規定システムにおける海馬ニュ
ーロンの成長に必要な因子の検討(Investigation of the factors necessary f
or growth of hippocampal neurons in a defined system)」。J. Neurosci. M
ethods、62、111〜119)。神経成長のためにはB27を補充した神経基本培地を用
い、細胞を5%二酸化炭素を含む大気(v/v)中でインキュベートして、無血清
規定システムを作成する(Brewer, G.J.、Torricelli, J.R.、Evege, E.K.、Pri
ce, P.J.「関連文献 B27を補充した神経基本培地中での海馬ニューロンの生存
の最適化、新たな無血清培地の配合(Related Articles Optimized survival of
hippocampal neurons in B27-supplemented Neurobasal、a new serum-free me
dium combination)」。J Neurosci Res. 1993 Aug 1;35(5):567〜76)。こ
の無血清システムはグリア細胞に対抗するように選択されている。健全な培養物
が確実に得られるように培地は週2回交換する。
【0110】 膜電位の変化を評価するために、本発明の装置内にあるニューロンの特徴を形
態的、免疫細胞化学的に、および細胞外電気生理学的記録によって調べる。各分
析の際には、最初の細胞浮遊液の全般的健全性を評価するためにポリ-D-リジン
(PL)標準物質を流した。
【0111】6.4.3.2.ニューロン形態の特徴分析 培養下にあるニューロンの特徴分析は、以下に述べるいくつかの基準に従って
行う。細胞の生存および形態的特徴の評価は平板培養から24時間後に培養皿の写
真撮影によって行う。細胞の生存は、所定の時点で生存している細胞の数を最初
の細胞数と比較することによって評価する。以下の定量的な値も測定する。
【0112】6.4.3.3.細胞-基質表面の接触面積 十分に分離している細胞の接触面積を、画像上の細胞の境界線に印を付け、囲
まれた面積を算出することによって測定する。接着性の強い基層では、より平坦
で接着性の強い細胞が得られるため、基層と接触している面積は大きくなる。
【0113】6.4.3.4.凝集の程度 遊走および細胞間接着の指標として、接触阻止がみられなくなった細胞塊また
は神経節様構造が占有している総面積を測定することによって凝集を評価する。
【0114】 これらのデータを分析するために、(1)面積の算出のために細胞体もしくは
凝集体の周囲の境界線を描くこと、または交点を算出して主な神経突起の数を決
定するために細胞体のすぐ外側の境界線を描くこと、(2)度数ヒストグラムを
描くこと、および(3)プロトコールが異なると分布も異なるか否かを決定する
ためにカイ二乗分析を行うこと、が可能な画像化プログラムを用いる。処理間の
差ならびにプレートによる差があるかどうかを判定するために分散分析を行う。
これにより、統計的に意味のある結果を得るために必要な反復回数を決定するこ
とができる。
【0115】6.4.3.5. 免疫細胞化学:培養下にあるグリアの同定 ニューロン特異的抗原(神経フィラメントニューロン特異的エノラーゼ、Tuj1
)、アストロサイト特異的抗原(グリア繊維酸性蛋白質)およびオリゴデンドロ
サイト特異的抗原(ガラクトセレブロシド)に関して、細胞の免疫細胞化学的な
特徴分析を行う。
【0116】6.4.3.6. 神経伝達物質の発現 神経伝達物質であるGABAおよびグルタミン酸に対する市販の抗血清を用いて、
神経伝達物質の発現に関するニューロンの特徴分析を行う。平板培養から7日後
および10日後に免疫細胞化学実験を行う。
【0117】6.4.4. 遺伝子発現の識別 遺伝子発現の変化の検出に関しては、実験プロトコールにより、遺伝子発現の
変化に起因する活動電位の差を容易に検出しうる。すなわち、ルーチン的には各
化合物に関して5種類の検査条件を比較する: (a)対照; (b)詳細に記載されている蛋白質合成阻害薬であるシクロヘキサミドとともに3
時間プレインキュベートする; (c)+被験化合物のみ; (d)3時間のプレインキュベーション+被験化合物;および (e)3時間のプレインキュベーション+シクロヘキサミド+被験化合物。
【0118】 この手法では、シクロヘキサミドの影響を考慮することにより、即時的であっ
て蛋白質合成の変化とは関連しないと思われる被験化合物に対する応答(1と3と
の比較による)、蛋白質合成を必要とする応答(4と5との比較による)が識別さ
れる。
【0119】6.4.5. ニューロンからのガラス微小電極記録 オンチップ(on-chip)記録に用いられる条件を模倣した細胞外記録を神経細
胞に適用する。ノイズを低く保つためにギガオーム封止部を形成させ、イオンチ
ャネルが代表的なものとなるように十分な細胞膜と接触させる細胞上(on-cell
)パッチである「マキシパッチ(maxipatch)」モードにおける膜電位の変化を
測定する。記録溶液は膜をできるだけ通常の環境に置くために細胞外培地と同じ
にする。膜電位の近似値であるピペット内の膜電位を記録する(電流固定モード
、電流はゼロとする)。(膜、増幅器および封止インピーダンスによって形成さ
れる回路は、ピペットによって記録される電位と真の膜電位と推定されるものと
の間の差が補正されるようにモデル化されている)。膜の電気的脱分極の代わり
に40mM KClの添加によってニューロンの発火を誘導する。シナプス伝達を抑制す
るために記録前にMg2+を培地に添加する。平板培養7日後と平板培養10日後の
海馬ニューロンの電気生理学的特性を比較する。必要に応じてその他の時点にも
検討を行う。
【0120】6.4.6. 活動電位ピーク形状のデコンボリューション分析 AP検出及び分類のための一般法が最近概説されている。(Wheeler, B. C. (19
99), 「シングルユニットの自動化識別のためのリアルタイム法(Real Time Tech
niques for Automatic Discrimination of Single Units)」, book chapter,印
刷中, 神経調和記録の方法(Methods for Neural Ensemble Recordings), M. Nic
olelis (編), CRC Press.) 活動電位の分析、即ちデコンボリューションは、完
全に適合するアルゴリズム、即ち記録や波形において多くの異なるAPを検出する
目的で自動的にクラスターを切断することはもちろん、増幅、鋳型適合性、及び
原理的成分により分類することを含むアルゴリズムに基づいていて、またそのア
ルゴリズムには種々のスパイク列の特徴(例えばスパイク頻度、バースト頻度、
及びバースト期間);刺激作動基準(例えば、周囲刺激時間のヒストグラム、イ
ンプット/アウトプット関数);及び内部−ニューロン相関関係基準(例えば、
クロス−相関関係図、相互情報)を導き出すアルゴリズムも含まれる。
【0121】 シグナル処理は、適当な毒素を前述した濃度で用いて処理する前、処理の途中
、及び処理した後に活動電位を記録し、分析することによって行われる。第1の
段階においては波形(例えば幅、高さ、スパイク頻度)の変化は、毒素が作用す
る「トリガー」、濃度、及び細胞のカテゴリーの関数として記載される。モデル
は、解釈を助けるために記録された波形から封止抵抗を見積もるために適用され
る。第2にホジキン-ハクスレータイプのモデルは、コンダクタンス機構と海馬
状組織の錐体ニューロンについての文献にあるデータを用いて応用される。この
モデルのパラメータは、要求される波形及び波形状の基準に適合するように最適
化される。第3段階では膜生理が変化したことの指標として変化の特有性が評価
され、例えば実施例の刺激では、一次ピーク幅が、封止抵抗が高い場合のカリウ
ムダイナミックスの良好な指標であるが、それが低い場合はそうではない(反対
に、封止抵抗が低い場合には後電位期間の利用性が高いであろう)。全ての場合
で満足のゆく評価が、取り除けない変異−装置のノイズや細胞から細胞への変化
の両方−に関して膜生理に起こる変化についての測定感度が推定されて評価され
る。
【0122】6.4.6.1. カリウムチャネルモジュレーターの効果 固体微小電極アレイは、シリコンベース上に32ゴールドの微小電極と1μmの
厚みの窒化シリコン上層を斜めに通る14μmの直径の手段によってアクセスした
リードを用いて提供される。このアレイは電極をプレートする前に化学的にクリ
ーンにされ、またシラン単層を用いて基質の修飾を行う前にもう一度クリーン処
理される。始めにそのアレイは脱イオン水を用いてすすがれ、続いて高純度の液
相クロマトグラフィー(HPLC)グレートのアセトンを用いてすすがれる。その後、
それぞれのアレイは、ヘキサン中に5分間浸漬され、続いてアセトンで3度すすが
れる。これらの後で行った工程に引き続き、そのアレイを濃硫酸:30%(v/v)の
過酸化水素(4:1 V/V)中に2分間浸漬し、続いてHPLCグレードの水で5回洗浄し、
続いてHPLCグレードのアセトンを用いて3度すすぐ。その後、微小電極を標準的
な方法によりプラチナブラックを用いて電極プレーティングする。シランの自己
組織性単分子膜は、そのアレイを94%(v/v)の1mM酢酸の無水メタノール溶液及び
5%の水1%(v/v)に入れた1%(v/v)の(アミノエチルアミノメチル)−フェネチ
ルトリメトキシシラン溶液とともに15分間反応させることによって提供される。
溶液は、N-カドヘリンに対するそれぞれの抗体1%(w/v)と、任意でR-カドヘリン
に対する抗体、成人と胚のpan-N-CAMに対する工程、及び神経突起の細胞接着分
子L1に対する抗体とからなり、50mMのリン酸緩衝液、pH7中で調製する。抗体を
含むこの溶液を1mMのカルボジイミドの非存在下、または存在下で、1時間、前記
のアレイとともにインキュベートする。続いてそのアレイを、HPLCグレードの水
とともに一度洗浄し、さらに神経基本培地を用いて一度洗浄する。海馬状組織の
ニューロンは、18〜19日目のラットの胎児からパパイン(2ユニット/ml)を用い
て酵素分解して得られる。ニューロンは1から1.5×104個の細胞/cm2の密度で基
質にプレーティングし、2%(v/v)のB27、0.5mMのグルタミン、及び25μMのグル
タミン酸塩を補充した神経基本培地中で培養する。
【0123】 それぞれの電極のインピーダンスを実施例6.5.5.に記載したように測定する。
適度に高インピーダンスを伴うそれぞれの微小電極をさらに測定用に用いる。2
μMのカルバコールで励起した活動電位を評価して、1〜10μMのアパミン、1〜10
μMのカリブドトキシン、または1〜10mMのTEAの存在下でインキュベートした細
胞で2μMのカルバコールによって励起した活動電位と比較する。活動電位に対す
るカリウムチャネルの寄与は、6.4.6に記載された分析法、特定すると波形の変
化を分析し、続いてホジキン-ハクスレーモデルの適用することによって測定で
きる。さらにカリウムチャネルの機能は、システムアルゴリズム(操作アルゴリ
ズム)を用いてブロッカーの濃度とタイプの点からみて分析する。
【0124】6.4.6.2. コレラ毒素で調製することによるサイクリック−AMP調節経路の分析 統合され、即ちより高い次元の経路の分析は、ナトリウムチャネルおよびカル
シウムチャネルの分析と同様に、6.4.6.1.に記載したようなイオンチャネルの分
析に基づいて達成される。より高い次元の分析(システム分析)では、数個のイ
オンチャネルが影響する可能性がある。例えば、活動電位に対するコレラ毒素の
影響は次のように評価される。コレラ毒素はアデニレートサイクラーゼのG−タ
ンパク質に対して主要な作用を持つことがわかっており、それは結果的に、その
酵素が持続的に活性化してサイクリックAMPの産生を起こす。実施例6.4.6.1に記
載されたシステムを用いると、海馬ニューロンの活動電位に対するコレラ毒素の
段階的な投与量の影響が評価される。活動電位の変化は、ナトリウム、カリウム
、及びカルシウムチャネルでのイオン流の変化を部分的に反映している。
【0125】6.4.6.3. 活動電位に対する未知の薬物の影響によるそれらの薬物の分析 ハンターカタツムリ、及び他の動物から、デノボ合成法から、医療用植物から
、並びに別の起源から誘導される未知の機能の薬剤の集まりは、実施例6.4.6.2
に記載されたシステムを用いて評価される。海馬活動電位における薬剤の影響は
、作用機構が既知である毒素により誘導される影響と比較して急激に起こる。従
って、薬剤は、影響を受ける経路またはイオンチャネルを基に、アパミン様また
はコレラ毒素様などとして表される。さらに、多数の経路に影響を与える薬剤は
、活動電位において複合的影響の点から解析されうる。
【0126】6.4.6.4. さらなる分析のための既存の状態としての代謝状態:グルコースおよ
びインシュリンにおける変動による実験的薬剤の交差効果 代謝状態は、薬剤の作用および影響において重要な決定因子であるが、現在の
インビトロのアッセイ法でモデル化されているものはほとんどない。より重要な
代謝状態の中には、運動のような活動性、摂食または絶食、炭水化物または脂肪
のダイエット、並びに糖尿病のような疾患を反映する状態がある。絶食及び摂食
に対応する生理学的状態は、媒体中のグルコース濃度をそれぞれ減少させたり増
加させたりすることによってモデル化され、それはインシュリン濃度の調節と同
時に起こる。同様にケトアシドーシス、低血糖、高浸透圧性、乳酸アシドーシス
、及び他の代謝状態も、当業者によってモデル化されうる。神経経路に対する、
低血糖及び糖尿病といった正常状態と病的状態の影響が測べられる。それによっ
て異なる代謝状態での複雑な薬物相互作用を素早く分析することが可能になる。
【0127】 固体微小電極に海馬ニューロンまたは心臓の筋細胞が固定された後、そのイン
ピーダンスをモニターして高インピーダンス封止部の形成を確認する。KClを添
加して活動電位を刺激する。同様に、神経伝達物質またはpHの変化を、活動電位
を励起させるために用いてもよい。得られる活動電位は、そのシステムの生理学
的応答の分析のためのアルゴリズムによってデコンボリューションされる。固体
微小電極に培養培地を浸した海馬ニューロンを、2%(v/v)のB27、0.5mMのグルタ
ミン及び25μMのグルタミン酸塩を補充した修飾グルコース濃度の神経基本培地
に、段階的な様式で置き換える。その培地は25、12.5、6.25、3.12、1.56、0.78
、0.39、及び0.20mMのグルコースを用いて調製する。さらにその細胞を、投与量
を段階にわけたインシュリンにさらす。続いてその活動電位を再びそれぞれのグ
ルコース及びインシュリンのペアで分析し、イオンチャネルの機能に対するグル
コースとインシュリンの影響を解明する。KClは活動電位を開始させるために用
いる。システム分析の第1段階では、細胞処理におけるグルコース−インシュリ
ンの影響が既知のエフェクターの作用に比較することで決定される。次に薬物を
スクリーニングしたり、更に評価したりできる。例えばアカルボースは反応性の
低血糖に対して時に用いられるα-グルコシダーゼ阻害剤であって、それは食後
の血糖値を減少させ、またインシュリンの反応は海馬培養物に添加される。同様
に、薬剤の組み合わせライブラリー全体をスクリーニングするとよい。活動電位
が発生して記録したところで細胞処理の進行の第2段階の分析が開始される。
【0128】 同様の方法によって、糖尿病治療のための臨床上及び実験的薬剤の作用が評価
される。得られる情報は、複雑な薬剤的相互作用がかかわる多数の疾患や病的状
態を患っている患者にとって特に価値がある。例えばレパグリナイドは、膵臓の
ベータ細胞のATP−依存性カリウムチャネルでの作用によって正常血糖を保存す
る薬剤である。レパグリナイドの段階的に変えた投与量を本発明のシステムに添
加することによって、さまざまな代謝状態、即ち低血糖、高血糖、低インシュリ
ン症、及び高インシュリン症といった代謝状態にある神経の活動電位に対するレ
パグリナイドの作用を素早く分析できる。同様に当業者は、他の薬剤も本発明の
システムを用いて試験できることを理解するであろう。
【0129】 微小電極に固定された海馬ニューロンは、高インピーダンス封止部の形成につ
いて評価される。活動電位はKClまたはカルバコールの添加によって開始するが
、別の刺激物質や神経伝達物質も同等に利用できる。得られる活動電位を、特定
のイオンチャネルの相対的な関与について測定すべく分析する。ニューロンを浸
漬している培養培地は、ニューロンがグルコース及びインシュリンの段階的な投
与量にさらされるように変化させる。システム分析の第1段階では、細胞処理に
対する代謝状態の影響が評価される。次にその細胞をそれぞれのグルコース−イ
ンシュリン濃度ペアで、レパグリナイド、TEA、及び既知の機能の他の神経調節
物質に接触させる。システム分析の第2段階では、レパグリナイド、インシュリ
ン、及びグルコースの複雑な相互作用を解明し、臨床的使用に対する改良された
投与計画を提供する。同様にトログリタゾン及びスルホニルウレアといった疾患
の治療で有用な他の薬物のパネルを評価することによって、それぞれの代謝性、
または疾患の状態に対して最適の効果のある薬剤を選択できる。
【0130】6.4.6.5. 中間層の粘度の修飾 中間層の粘度は、数種の方法で都合良く増加させることが可能である。細胞と
微小電極上のシラン層の間に存在する適度な、あるいは高粘度の中間層は、封止
部のインピーダンスの増加と関連する。
【0131】 1つの方法では、細胞が付着する際に濃縮剤を大量の培地に添加し、続いてそ
の大量の溶液を培養培地とともに洗浄除去する。その薬剤のうちのいくらかは、
細胞と微小電極アレイチップの界面との間でトラップされる。こうして海馬ニュ
ーロンのプレーティング用調製剤には、0.1%から10%(w/v)の間のヒドロキシエ
チルスターチ、好ましくは1%のスターチを含む培養培地が細胞が付着するまで
用いられ、そして高インピーダンス封止部が確率される。
【0132】 別の方法では、粘度の濃縮剤は微小電極のシラン層に結合させる。ストレプト
アビジンは、標準的な架橋化学によってシランのアミノ基に共有結合する。その
後で微小電極を、約1:1から約1:0.01(結合したストレプトアビジンのモル数に対
する抗体のモル数)の比、最適には約1:0.1の比でビオチン−複合型抗体に接触さ
せる。その抗体をシラン層上のストレプトアビジンに結合させた(室温で30分間
)後、微小電極アレイをわずかに過剰のモル数(結合したストレプトアビジンを
越える)のビオチン複合化粘着剤である、約20,000ダルトンの分子量を持つビス
(ポリオキシエチレンビス[ビオチン]に接触させる。30分間インキュベートした
後、過剰の試薬をHPLC水を用いて洗浄除去し、続いて培養培地ですすぐ。それか
ら細胞(ニューロン細胞、NG-108細胞、または心臓の筋細胞が等しく有効である
)が微小電極アレイに蒔かれる。高インピーダンス封止部の形成がインピーダン
スの測定によって確かめられると、本発明のハイブリッドバイオ−電極または装
置が使用可能になる。
【0133】6.4.6.6. 微小電極アレイの診断試験: 細胞及び電極成分 主要な海馬ニューロンは、先に記載された高度に標準化された条件で増殖させ
る。次の細胞が用いられる:即ち、青年期またはまだ若い成人(年齢15才から30
才)の新しい献体から単離した若者対照ニューロン(Young Control Neurons)(
「YC」);年輩のヒト(60才から80才)の新しい献体から単離した年齢適合型対
照ニューロン(「AC」);及び臨床的にアルツハイマー病と診断された年輩のヒト
(60才から80才)の新しい献体から単離したアルツハイマー病ニューロン(「AD
」)である。神経芽腫×神経膠腫ハイブリッド(例えば、NG-108-15細胞系)及び
アミロイド前駆体タンパク質に対する遺伝子でトランスフェクトした細胞が同等
に利用できる。
【0134】 細胞は、富化した培養培地中の、上記したように調製した微小電極アレイに散
布され(約5細胞/mm2)、インピーダンスの測定値が少なくとも一つのニューロ
ンと基底との間に高インピーダンス封止部が確立されたことを示している場合に
用いられる。
【0135】 電気生理学的な測定が室温(21〜23℃)で行われ、また他の場合では温度の関数
として行われる。記録をする前に、培養培地を次の溶液、即ち、115mMのNaCl、4
0mMのKCl、2mMのCaCl2、1mMのMgCl2、10mMのHEPES(NaCl) pH=7.4、または他の場
合では選択された神経伝達物質を伴う新しい培地で置き換える。記録は、保存と
分析のためのパーソナルコンピュータに連結した下記の装置を用いて得られる。
【0136】 それぞれの細胞及び細胞型に含まれる多数のタイプのナトリウム、カルシウム
、カリウムチャネルは、コンダクタンス及び電流などのそれぞれのチャネルのパ
ラメータに基づいて識別され、かつ記録される。異なる系統の細胞同士のイオン
チャネルの特徴の違いも記録される。他の測定では神経伝達物質アゴニストの強
打に対する細胞の応答が記録されるが、そこでの神経伝達物質にはグルタミン酸
塩、カルバコール、γアミノ酪酸(GABA)、及びセロトニンが含まれる。
【0137】 TEA(K+チャネル)、テトロドキシン(Na+チャネル)及びアミロライド(Ca2+チャ
ネル)を含む毒素の段階的な投与量を用いてイオンチャネルが部分的ではあるが
特異的に減衰することは、モデル阻害剤の影響を測定するために活動電位のデコ
ンボリューションと関連して用いられる。更なる薬剤、及びチャネルブロッカー
も用いられ、それらに限定するわけでないが、ストリキニーネ、レッドタイドト
キシン(Red Tide toxin)、ベラパミル、ニフェジピン、ω−コノトキシン、ω
−アガトキシン、アパミン、キニン、カリブドトキシン、デンドロトキシン、マ
イトキシン、及びBa2+が含まれる。
【0138】6.4.6.7. TEA−Ca2+診断試験 主要な神経細胞は上記したように増殖させる。13個のAD、10個のAC、及び6個
のYCをカルシウム流とカルシウム画像化実験のために利用する。培養培地を置き
換えて、140mMのNaCl、5mMのKCl、2.5mMのCaCl2、1.5mMのMgCl2、5mMのグルコー
ス、10mMのHEPES(NaOH) pH=7.4からなる基本塩溶液(「BBS」)を用いて3回洗浄
する。名目上Ca2+を含まないのBSSは、CaClを添加することなくBSSとして調製
される。
【0139】 Fura-2(アセチルオキシメチルエステル)(Fura-2AM)は、Molecular Probes(
Eugene, OR)から購入し、ジメチルスルホキシドに1mM溶液として保存される。Fu
ra-2AMを添加して最終濃度を2μMにし、室温(21〜23℃)で60分間インキュベート
する。インキュベートを行った後、細胞を、[Ca2+]iの測定を行う前にBSS中、室
温で少なくとも3回洗浄する。蛍光をパーソナルコンピュータ(ハママツ画像化
パッケージ)の調節下で、ハママツARGUS50画像化システム(Hamamatsu Photoni
cs, Japan)を用いて測定する。340nm及び380nmでの励起はニュートラル強度フ
ィルターを用いて減弱させる。蛍光画像は400nmの二色性ミラーと510nmの長波−
通過バリアフィルターを用いて得られる。対物レンズは×10 Nikon UV蛍光であ
る。蛍光は、全体の画像のうち均一に発光するフラクション(1/4)にて測定する
【0140】 得られたサイトソル内と核細胞区間内における15×15ピクセルの平均Ca2+応答
は、340nmで活性化した510nmの放出蛍光と、380nmで活性化した510nmの放出蛍光
との比率で定量する。これらの比率は、以下の等式に基づく補正を行った後で、
[Ca2+]の吸収値に変換される。
【数1】 ここでRは、380nmによって発光した蛍光強度によって、340nmによって発光し
た蛍光強度を割った値(F340/F380)を示していて、またRmax及びRminは、それぞ
れカルシウムの濃度が最大と最少(即ち測定条件で装置によって測定可能な最大
値及び最小値)の場合のRの値である。Kdは、Ca2+に対するfura-2の解離定数で
あり、それは240nMで測定される。bの値は不斉の程度に依存していて、通常は1.
2である。TEAの適用を利用すると、いずれの対照細胞でも細胞の少なくとも18%
に最少の100%の[Ca2+]iの増加が引き起こされる。従って、ある系統における少
なくとも10%の細胞で100%[Ca2+]i 増加の応答は、正の応答についての保守的
基準である。
【0141】 細胞内の遊離のカルシウムイオン濃度([Ca2+]i)の測定は、カルシウムイオ
ン流に対応する電流を特異的に用いるデコンボリューションした活動電位によっ
て測定されるように、Ca2+流に関連する。
【0142】 ニューロンは、AC及びADニューロンに比較してYCでの細胞内Ca2+([Ca2+]i
の増加を区別するために増加した外部のカリウムの流入によって脱分極する。こ
の脱分極誘導性の[Ca2+]i増加は、外部のカルシウムを減少させたり、またはカ
ルシウムチャネルブロッカーを添加したりすることによって減少する。ニューロ
ンは、高K+の添加によって脱分極し、種々の細胞グループで顕著な[Ca2+]i の増
加を引き起こす。カルシウムチャネルのスパイク後の期間はFURA-2の蛍光によっ
て測定されるように[Ca2+]i のピークに関連していて、それは外部のカルシウム
が刺激前に「名目上Ca2+を含まない」溶液、もしくは5mMのEGTA(遊離Ca2+=0.0
4μMと推定される)の置換によって、またはCa2+チャネルブロッカー(0.1mMのL
aCl3、10mMのCoCl2、10mMのNiCl2、10mMのCdCl2、または10μMのニフェジピン)
によって低下した場合に遮断できる。
【0143】 ニューロンはTEAの添加によって脱分極して[Ca2+]iの増加を引き起こし、それ
は外部のカルシウムを減少させることによって、またはカルシウムチャネルブロ
ッカーを添加することによって除去される。ADニューロンは、100mMのTEAの添加
に伴い[Ca2+]i 応答させることなく高まった外部カリウムで[Ca2+]i の増加を示
すであろう。そのうえAC及びYC細胞は、AD細胞がTEAに反応しない場合でさえもT
EAに反応できる。
【0144】 1mMのTEAの適用を利用すると、YCニューロンでの[Ca2+]i を増加できる。10mM
のTEAの適用を利用した場合はYCとACニューロンでの[Ca2+]i を増加できる。同
様に100mMのTEA適用を利用すると、YCとACニューロンでの[Ca2+]i を増加できる
。同様に、外部カルシウムイオンをなくすることは、応答を減少させたり除去し
たりするために用いられる。
【0145】 TEAは、アルツハイマーニューロン及び対照ニューロンを含むコードサンプル
に対して[Ca2+]i の増加を誘導するために用いられる。測定及び分析は、細胞の
同一性について実験者の知見がなくても誘導される。この結果は、非ブラインド
サンプルと比較して記録される。
【0146】 家族性または非家族性の症例から得られるアルツハイマーのニューロンをさら
に用いることによって、改善に役立つ性質がありうる薬剤が評価できる。例えば
、コリンエステラーゼ阻害剤は、本発明のシステムを用いて比較できる。YC、AC
、及びADニューロンの活動電位の評価、即ち波形のデコンボリューションや既知
のイオンチャネル阻害剤との比較といった評価を行った後で、段階的な投与量の
コリンエステラーゼ阻害剤、即ち3-[1-(フェニルメチル)-4-ピペリジニル]-1-(
2,3,4,5-テトラヒドロ-1H-1-ベンズアゼピン-8-イル)-1-プロパンフマル酸塩、
メトリホナート、ドネペジル、タクリン、及びリバスチグミンを含む阻害剤が別
個に添加される。得られる活動電位をこのシステムのアルゴリズムを適用して分
析することによって、神経機能とカルシウムチャネル機能についての絶対的及び
相対的影響を決定できる。
【0147】6.4.6.8. ボンベシン−Ca2+診断試験 上記したヒト海馬ニューロンは、上記した培養方法及び電気生理学的方法にし
たがって用いられる。ボンベシンは、Calbiochem(San Diego, Calf.)から購入し
、蒸留水中で1mMの溶液として保存される。Fura-2(アセチルオキシメチルエステ
ル)、fura-2(ペンタカリウム塩)及びω−コノトキシン(ω−CgTX)GVIAをMolec
ular Probes(Eugene, OR)から入手する。Fura-2AMは、ジメチルスルホキシド中
に1mMの溶液として保存し、fura-2ペンタカリウム塩は酢酸カリウム中に6mMの溶
液として保存し、そしてω−CgTXは蒸留水中に100μMの溶液として保存する。フ
ェニトインについて以外のすべての化学物質は-20℃で維持し、遮光する。
【0148】 細胞は、BSSに入れた2μMのfura-2 AMとともに、室温(21〜23℃)で60分間イ
ンキュベートする。BSSを用いて少なくとも3回洗浄した後、その細胞を室温で[C
a2+]を測定するために用いる。細胞の蛍光は上記したように測定する。絶対的な
カルシウムの値、及びカルシウムの流量は上記に示したように算出する。
【0149】 ボンベシンを最終濃度が1μMになるように細胞に添加する。カルシウムの移動
レベルはボンベシン処理を行った後、-30秒から150秒で測定する。AD細胞と対照
細胞との間の[Ca2+]iの最大の差異を測定し、カルシウムチャネルの機能の違い
に相関させる。
【0150】 ボンベシンを用いることによって、全てのグループ由来のニューロンにある細
胞内保存部位からのIP誘導性のCa2+ 放出を刺激することができ、且つADニュ
ーロンのより大きく、そしてより長い応答性を生じさせることができる。AD細胞
におけるこのより大きくかつより長い応答性と細胞外Ca2+との相関関係を決定す
る。これに対してAC及びYC細胞におけるIPが仲介するCa2+ 応答に続いて、Ca2 + の流入が起こりまたイオンチャネルに対する影響が生じる。このCa2+の流入を
細胞外のCa2+の除去、または無機のCa2+ブロッカーを用いる遮断によって減じる
と、対照細胞でのボンベシンにより励起されたCa2+応答がAD細胞におけるのより
も、より素早く基底レベルに戻る。したがってこの試験を用いることによって、
上記のカリウムチャネルの機能不全に基づく試験によりなされた評価を別個に確
認できる。米国特許第5,976,816号を参照のこと。
【0151】6.4.6.9. 神経崩壊性疾患についてのモデルにおけるリバスチグミンとニモジピ
ンの影響: β−アミロイドを過剰発現するニューロンにおける活動電位の調節 本発明のシステムを用いることによって、神経崩壊性疾患の結果または原因を
改善する点について実験的薬剤の効力を評価できる。具体的には、アルツハイマ
ー病のモデルはニューロンにおけるβ−アミロイドの過剰発現を誘導することに
よって構築できる。開示内容がその全体で本明細書に参照として組み入れられる
米国特許第6,037,521号を参照のこと。他の神経崩壊性疾患についてのモデルも
当技術分野では既知であり、同等にうまく用いることが可能である。
【0152】 米国特許第6,037,521号に記載のプラスミド、pfβ/NORβ、pβA/FADβ、pβA/
Dβ、pβA/ΔNORβ及びpβA/NLβをトランスフェクトした海馬ニューロンは、別
個に微小電極にプレーティングし、その接着性を倒立型光学顕微鏡によって、そ
れぞれの微小電極でのインピーダンスの増加によってモニターする。その培地を
改変して、アルツハイマー患者の脳脊髄液を模倣する。細胞が固定されて高イン
ピーダンス封止部が形成された後、KClなどの非特異性の神経刺激物質やpHの変
化による刺激に対する正常でトランスフェクトされた細胞の応答が測定される。
さらに特異的な神経伝達物質、即ち限定するわけでないが、カルバコール、グル
タミン酸塩、ドーパミン、ノルエピネフリン、セロトニン、及びGABAを含む神経
伝達物質の影響が別個に評価される。活動電位は個々のニューロンを生物学的分
析するためにデコンボリューションされる。デコンボリューション分析に続いて
、システム分析の第1段階(また操作アルゴリズムが知られている)が、疾患関
連医学的状態の影響及び疾患−関連遺伝子構築物を用いるトランスフェクション
に対して向けられる。その後、神経崩壊性疾患の治療に対して関心の持たれる薬
剤がそのアレイ上のニューロンに適用される。アセチルコリンエステラーゼ阻害
剤、カルシウムチャネルブロッカー、及び細胞還元阻害剤がアルツハイマー病に
対して特に関心の持たれるものであるが、他の薬剤も同等にうまく評価できる。
本発明の鍵である強度は、かなり多くの非常に種類の多い実験的薬剤及び臨床的
薬剤を素早くスクリーニングする能力がある。例えば、対照神経細胞とpfβ/NOR
β、pβA/FADβ、pβA/Dβ、pβA/ΔNORβ、またはpβA/NLβを用いてトランス
フェクトした神経細胞とが、段階的な投与量のリバスチグミン、アセチルコリン
エステラーゼ阻害剤、またはニモジピン、またはカルシウムチャネルブロッカー
を用いて別個に処理される。デコンボリューションした活動電位に対するその薬
剤の相対的な影響は、疾患モデルの機能としてイオンチャネルの関与の同定を可
能にし、且つイオンチャネルアゴニスト、アンタゴニスト、及び毒素に対する既
知の応答性のライブラリーと比較される。その後、得られたデータを第2段階の
システムアルゴリズム(操作アルゴリズム)でさらに分析することによって、エ
ネルギー代謝、アミノ酸生合成、細胞処理、脂質代謝、転写の調節、及び輸送と
結合性のタンパク質に対するpfβ/NORβ、pβA/FADβ、pβA/Dβ、pβA/ΔNORβ
及びpβA/NLβの影響が解明できる。その結果はさらに、これらの主要な細胞シ
ステムにおける薬剤の相対的影響に関して定量する。このようにいくつかの薬剤
は同様の分子経路によって機能すると推測されるが、その薬剤が活動電位に反映
する異なる影響を持つ可能性があること、また臨床的な効力と効能の違いに対応
できることが期待される。
【0153】6.4.6.10. 細胞表面受容体の活性化の測定及び二次メッセンジャーの応答性要素 による細胞内のシグナル伝達 細胞表面の受容体が活性化されると細胞内メッセンジャーの濃度に変化が生じ
、それがまた、細胞内の転写因子の活性を調節する。ニューロンでは、メッセン
ジャーイオンのカルシウムの細胞内濃度が増加するため、核因子の活性化がもた
らされる。カルシウムレベルのみの増加が十分であると、β−ラクタマーゼのよ
うな受容体遺伝子の転写を顕著に増加させ、且つ活動電位を調節できる。
【0154】 微小電極アレイに固定されたラットの海馬ニューロンは、二つのプラスミドを
用いてインサイチューで一過的に同時トランスフェクトされる。一個のプラスミ
ドはβ−アドレナリン作動性受容体を含んでいて、それは強力で構成的に活性な
サイトメガロウイルス(CMV)プロモーターの転写調節下で細胞表面に位置してい
る。他のプラスミドには、NFAT部位のトリマーを含むプロモーターの転写調節下
で改良された哺乳動物の発現を行うように修飾された大腸菌(Escherichia coli
)から得られる細菌性RTEMβ−ラクタマーゼ遺伝子が含まれる。このプラスミド
は、電気穿孔法を用いて細胞に導入される。0.5mlの電気穿孔用緩衝液に入れた5
×106個の細胞に、BioRad Gene Pulser(250V、960μF、16μ秒)を用いて二つの
プラスミドをそれぞれ10μg存在させて電気穿孔する。トランスフェクションを
行って24時間後に細胞を、β−アドレナリン作動性アゴニストであるイソプロテ
レノール(10μモル濃度)の存在下または非存在下でインキュベートし、そしてそ
の刺激を反応の発生が脱感作するまで5時間続ける。イソプロテレノールを用い
た刺激から、また逐次の脱感作の最中に得られる活動電位を、イオンチャネルの
役割を測べるために分析する。その後、このデータの操作、即ちシステムアルゴ
リズムを適用することによって、鍵となる細胞調節システムの寄与度を評価でき
る。
【0155】6.4.7. 幹細胞の培養及び利用 CNS幹細胞は、正常の胎児が発生する過程の原始的な脊髄構造に存在する天然
の創始細胞である。NuralStem Biopharmaceuticals及びBiowhittakerを含む多く
の商業的企業から入手可能なCNS幹細胞技術によって、CNS幹細胞のインビトロで
の単離、増殖、及び分化が可能になる。こうしてインビボで発見されたニューロ
ンの下位集団が、それらの創始の前駆体細胞からインビトロで産生できる。この
技術の大きな特徴は、CNS幹細胞が大量に(ラット胎児の脳あたり>107個の細胞
)単離でき、さらに培養物で30日間かけて100万倍にまで増殖し、かつインビト
ロで効率的に分化して細胞の80%までがニューロンになることである。多数回の
細胞分裂を経て本来備わっている情報を安定に維持する望ましい性質がそれらに
あることに加えて、CNS幹細胞はまた、顕著に人工的でもある。したがってこの
細胞を一個の細胞外因子にさらすと、細胞の運命的特定化を大きく一個の細胞型
または別の型にシフトできる。例えば血小板誘導性増殖因子(PDGF)は、50%から
90%の細胞に神経分化を増加させる。したがって海馬ニューロンとニューロンに
分化した幹細胞が本発明で用いられる。さらに遺伝子を、そのニューロン及び/
または幹細胞にトランスフェクトすることによって、外因性遺伝子の機能を分析
するための細胞構築物が形成できる。
【0156】6.5. 微小電極ニューロンインターフェース 神経細胞本体の配置についての表面改質プロトコールを作成するための方法論
及び原理、ならびに高インピーダンス封止部の作成については本セクションに記
載されている。
【0157】 電極アレイは固体状の基材からなり、その上にある導線のパターンが電極サイ
トから外部接続パッドにつながっている。多くの組成物が基材材料として適当で
ある。その基材はガラスのことが多く、それは生物学的な(倒立型)顕微鏡を用
いて使用するのに好適であるが、シリコン基材もそれらが電極加工やシグナルが
実際に増幅される際の電位に悪影響を及ぼし合わないため、時には用いられる。
導線(例えば、金、インジウム錫酸化物、ポリシリコン)は絶縁体、通常はプラ
スチック(例えば、ポリイミド、ポリシロキサン)、またはガラス(例えば、二
酸化珪素及び/または窒化珪素)で被覆される。穴は通常、直径5μmまたは10μm
であり、電極部位を形作るために絶縁体にエッチングされる。電極部位はしばし
ば望ましいインターフェース材料(例えば、金、白金、イリジウム酸化物、チタ
ン窒化物)が内部にあるため、記録性と生物学的適合性が改善できる。好ましい
態様では、絶縁材と電極の表面はそれぞれ二酸化珪素と金であり、それはどちら
も必要に応じて化学的にさらに修飾できる。
【0158】 金属製の微小電極は、神経または心臓の筋細胞によって発生したシグナルの変
換器として用いられる。その検出機構、及びそれが回路設計にどのように影響を
与えるかについては図7に示されている。活動電位が発生している間はNa+とCa2 + のチャネルが開放し、Na及びCa2+イオンが細胞に輸送されて膜を通過する。N
a及びCa2+の流入によって膜の脱分極が生じ、それは金属微小電極と接触する
細胞膜の領域にわたっていて、結果的に容量性放電電流、Ic=CjmdVm/dtが流れ
る。なおここでCjmは連結膜の電気容量であって、Vmは膜電位である。インター
フェースを覆う絶縁材上の電荷の局在化が変動すると、金属を横切る電位差が生
じ、するとそれが微小電極の荷電電流の変化として検出される。ある時間が経過
するとK+チャネルが開放し、K+イオンが膜を通過して細胞の外に流出し、反対で
はあるが同様のサインインパルスがその電極に伝達される。
【0159】 検出器システムの適当な回路モデルが図8に示されている。この回路は、等価
のキャパシタンスとしての電極と、理想的には別個の装置としての外部増幅器を
本発明者らが示した以外は、Fromherzら(Wheeler, B. C. (1999). 「シングル
ユニットの自動化識別法のためのリアルタイム法(Real Time Techniques for Au
tomatic Discrimination of Single Units」, book chapter, 印刷中、神経調和
記録法(Methods for Neural Ensemble Recordings), M. Nicolelis(編), CRC
Press)によって本質的に示されている。膜電位、即ちVmは、膜のキャパシタン
ス、即ちCmと比較して理想的と考えられるAC源であるように採用される。この膜
の反対側に現れるある電圧は、連結膜のキャパシタンスCjmと比較してこのキャ
パシタンスを反対側に現わす。シグナル電流は封止抵抗Rsealの間を分割し、ま
た電極のキャパシタンスCelecにより増幅器に結合する。本発明の一態様は、界
面化学を用いて調製され、かつ封止部を通して電流を最小化するのに適した高イ
ンピーダンス封止部である。また、Rsealが非常に大きい場合には、膜の電圧が
ほとんど減弱することなく増幅器のインプットで現れ、小さい場合には、そのシ
グナルの導関数に比例するより小さな増幅シグナルが増幅器のインプットで現れ
る。
【0160】 この効果は、電極での電圧分割(理想的な増幅器について)を考慮することに
よって図示される。
【数2】 ここでKは増幅器の増幅割合であり、またwは測定したシグナル成分のラジアン
周波数である。10μmの四角形の電極パッドは1μF/cm2の特定の膜キャパシタン
スを持つ膜によって充分に覆われていて、Cjmは約1pFであって、1kHzではそのイ
ンピーダンスは0.16Gohmである。封止抵抗が0.16Gohmよりもずっと大きい場合、
アウトプットは膜電位と等しく、それがずっと小さい場合、アウトプットは膜電
位の導関数である。増幅器が非理想的で封止抵抗が高い場合、Cjm(1pF)、Celect (約1nF)、及び増幅インプットキャパシタンス(マルチチャネルシステムによる
前置増幅器に対する3pF)の間が電気容量で電圧分割されるであろう。膜電圧の
増幅の約25%が増幅器で現れるのに対して、75%が電極近くの膜を横切って現れ
る。
【0161】 本発明のシステムの主要な利点は、32個までのニューロンまたは他の細胞から
得られるデータの収集を可能にすることであり、全てが温度、培養培地、化学刺
激物、及び阻害剤の同一条件にさらされる。したがって統計的純度が非常に高い
データが得られる。さらに当業者は、32個よりも多く、または少ない電極を用い
、例えばそのアレイの全体の大きさを変えたり、電極間に間隔をあけたりするこ
とで容易にアレイを調製できることを認識するであろう。
【0162】 本明細書に示された簡単なモデルは、記録可能なシグナルが、膜電位に比例す
るシグナルからその導関数に比例するシグナルまで変化することを図示している
。変化は、封止抵抗、膜電位、及び増幅回路構成の関数である。この観察結果は
、基質電極にニューロンがパッチの特色でカップリングするのと同様に、パッチ
電極を用いた予備的な作業を提供する。このモデルは、電極につながった細胞か
らのパッチ記録の発生についてさらに改良を加えることができる。
【0163】6.5.1. ニューロン−微小電極インターフェースの構築及び特徴付け この発明の鍵となる構成要素は、ニューロン電極インターフェースの電気的特
徴である。生物学的/シリコンインターフェースは、ニューロンの糖衣とシリコ
ン/修飾された二酸化シリコン表面との間の密接な接触の結果である。このニュ
ーロンは、細胞の接着性及び生存性に重要であるだけでなく、シリコンベースの
装置を用いてニューロンに発生させた電気シグナルを検出する能力を持つことが
重要であるという特殊なケースである。このシグナルはその表面に電気容量で結
合し、そのためニューロン膜と電極の間の距離を大きくした場合にはシグナルが
減少する。これらのシグナルは、金属電極に電気容量で結合することによって検
出される。本発明の鍵となる要件は、固体でシグナルを検出するだけでなく、イ
ンターフェースとの神経の最適な相互作用である。
【0164】6.5.2. 表面改質による電極上の高インピーダンス封止部の構築 ニューロン膜が金属製の微小電極に近接するほど、検出できるシグナルがより
強くなる。圧力差と表面相互作用の組み合わせを用いることで、ギガオームの封
止部が細胞の表面と電極チップとの間に作成されるため、パッチ−クランプ型作
業がうまくゆく。このギガオームの封止部があると、周りの媒体からのイオンの
流れがほとんどなくなり、且つ膜電位と小さくても増幅チャネルの活性とが、刺
激に応答してモニターできるようになる。ギガオームの封止部は最も望ましい結
果であるが、最小限の必要条件は、波形の詳細な分析を可能にするシグナルに比
べて、ノイズが充分に小さくなることである。本発明では、神経細胞表面が微小
電極上の人工的に作成した表面にしっかりと結合すると、高インピーダンス封止
部の形成が促進される。強い相互作用を持つ種類に富んだ生物学的な分子が封止
部を形成するために用いられ、それらに限定するわけでないが、神経マーカーと
して用いられる抗体が挙げられる。適当な抗体には、下記の抗体またはその等価
物が含まれるがこれらに限定されることはなく、それらはBD Biosciencesから入
手できる。
【0165】
【表2】 神経学的抗体
【0166】 また類似の抗体が他の供給元からも容易に入手可能であるし、または標準的な
方法によって調製することもできる。それらは標準的な架橋化学によって金上の
チオールに結合する。これらの結果は、金属微小電極でのインピーダンスを測定
することによってモニターされる。インターフェース上にある細胞から生じたタ
ンパク質は、過剰に生じると細胞と金属微小電極との間の距離が大きくなり、そ
れによってシグナル強度が小さくなるため、表面分析法を用いてモニターされる
【0167】6.5.3. 別の表面 他の表面及び変形は、細胞を分離したり、長期間、パターンの忠実度を維持し
たり、また細胞と電極チップとの間に高抵抗封止部を形成したりする場合に役立
つ。SAMは、電価−誘導性の蓄電、ヘテロ二官能基性の架橋、または単純な吸収
によってさらに誘導させるための鋳型として用いられる。上記のような抗体とは
別に、ウシ血清アルブミン(BSA)、ラミニン、テナシン、神経細胞接着分子(NCAM
)、L1、塩基性繊維芽細胞増殖因子(bFGF)、及び数種のグリコサミノグリカン類(
GAG)を含む他のマクロ分子が、細胞としっかりした封止部を形成するのに適して
いる。これらの特定の分子を選択するための原理は以下のとおりである。
【0168】 (i)BSA: アルブミンは開発中のシステムで特に有力なタンパク質であり、原
始細胞の分化を支持する際に重要な役割を果たすであろう。さらにアルブミンは
、他のタンパク質の非特異的な吸収を妨げることが判明した。(Ligler, F. S.,
Calvert, J. M., Georger, J. H., Shriver-Lake, L. C., Bhatia, S. K., Bred
ehorst, R.米国特許第5,077,210号(1991)。) (ii)ラミニン、テナシン、及びNCAM: ラミニンは神経の成長を促進する。NC
AMはニューロンの増殖を誘導する可能性がある、テナシンはニューロンおよびグ
リアに拒絶されることがわかっていて、パターン化された表面の、ある領域の細
胞を避けるのに役立つ。 (iii)増殖因子(bFGF、BDNF): 増殖因子は細胞が成長または分化するための
シグナルとしいて用いられるが、それらの正確な機能はわかっていない。bFGF及
びBDNFはニューロンの生存性を助長する。 (iv)GAG類: これらのポリサッカライドは、EMCを形成する別の主要なクラス
の細胞外のマクロ分子(タンパク質以外)を意味する。本発明に適したGAGにはH
S(ヘパラン硫酸塩)、コンドロイチン硫酸鉛、及びヒアルロン酸が含まれる。
【0169】6.5.4. 界面化学を用いる金属上へのニューロンの調節配置 上記したように、二つの異なるSAMは、同じ溶液から二つの異なる表面に分離
できる。この結果はまた、ある材料を用いれば連続して得ることができ、例えば
金属電極を差異的に修飾するために用いることができる。Si3N4/SiO2絶縁剤はシ
ランを用いて修飾し、続いてAu微小電極がSAMで改質されて、細胞本体の接着を
促進したり、または生物学的材料に対し、この相互作用を助長するアンカーを提
供したりする。Au上のSAMは通常チオールである。種々の電気的材料との相互作
用について(Hickmann, J. J., Ofer, D., Laibinis, P. E., Whitesides, G. M
., 及びWrighton, M. S. (1991)。Molecular self-assembly of two-terminal,
voltammetric microsensors with internal references. Science 252: 688)、
及び更に誘導するための方法ついては広範囲の文献がある。
【0170】6.5.5. インピーダンスの測定 インピーダンスは図4に示した方法によって測定する。(Jung, D. R.、Cuttin
o, D. S.、Pancrazio, J. J.、P. Manos, P.、Custer, T.、Sathanoori, R.S. ;
Aloi, L.E. ; Coulombe, MG. ;Czarnaski, M.A. ; Borkholder, D.A. ; Kovacs
, G.T.A ; Stenger, D. A.、Hickman, J. J. (1998)。細胞ベースのセンサー微
小電極アレイは、画像化x線光電子スペクトル分析、走査型電子顕微鏡、インピ
ーダンスの測定、及び細胞外記録によって特徴を明らかにした。J. Vac. Sci. T
echnol. A, 16(3), May/June, 1183-88。) 100mV二乗平均平方根(rms)シグナル
を、微小電極アレイを含む0.9%の塩水中で白金線によって提供する。固定化し
た増幅器(Model 5210 EG&G Princeton Applied Research)を用いることによって
、得られるフェーズをモニターできるとともに、1.01Mオームをわたして、(微
小電極とグラウンドとの間の精密レジスタであって、微小電極のインピーダンス
の実際部分と想像部分が得られる。Re(Zma)=Rma及びIm(Zma)=Xma=-j/(Cma))
、この振動数(通常は1kHzまたは100Hz)で電位の増幅を行える。
【0171】6.5.6. 表面の特徴付け 6.5.5.1. 細胞培養の前の表面の特徴付け 培養したニューロンの形態学的及び電気的特徴を条件の変化に関連させるため
に、それぞれ利用する前に、それぞれのSAMで改質された表面を、適当であるな
らば接触角分析、及びXPSによって特徴づける。接触角の測定は、修飾した表面
の表面自由エネルギーを定量する方法である。表面の疎水性または親水性を特徴
づけると、相対的疎水性または官能基の利用性を決定することが可能になり、そ
れは細胞接着性または表現型と相互関係を持つ。XPSは、修飾技術の効力の決定
をするとともに、良好な封止部を確立するための欠陥モードを決定することが可
能であるが、表面を覆う上層の要素の分析及び特徴付けを行うための技術である
【0172】6.5.5.2. 細胞培養後の表面の特徴付け 神経増殖を支持する表面の役割は、細胞培養の後、基礎をなすSAM上のマクロ
分子の量、厚み、または分布に生じた何らかの再現可能な変化を測定することに
よって決定される。その重要性は、適切または必要とされる場合に、定量的XPS
、画像化XPS、及び生物学的アッセイ法を用いて表面の特徴を定量化することに
ある。
【0173】6.6. 装置の組立及び試験 培養したニューロン及び筋肉細胞の平面状電極アレイの記録は、1972年のThom
asらの仕事以来、ほぼ30年の間にわたって報告されている。記録のための基本的
な技術は標準的でよく理解されており、現在ではアレイと支持エレクトロニクス
の両方の商業的な提案において、進行中の重要な改良がなされている。標準的な
装置と本発明のデータ記録システムは本明細書に記載されている。商業的に入手
できる基盤の詳細な説明は、当業者に周知である。
【0174】 支持電気装置は、標準的な前置増幅器、標準的な増幅器、標準的なフィルター
、及び標準的なコンピュータデータ獲得インターフェースからなる。このシステ
ムでは、数マイクロボルトから数ミリボルトの範囲で、および数Hzから5000Hzの
範囲のシグナルがデジタル記録できるように、調節可能なゲインとバンドパスフ
ィルター調整によって、同時に全てのチャネルを増幅することが可能である。さ
らにこのシステムは、個々の電極部位で、手動または完全なコンピュータ調節の
いずれかによって電気刺激するための設備を形成し、それには人工物の排除が含
まれる。
【0175】 活動電位(APまたはスパイク)は、電極アレイ上で培養されたニューロンから
得られる記録可能な一次シグナルであり、培養された関連するニューロンからの
記録を行った多くの研究者の実験と一致する。(Wheeler, BC, & Brewer, GJ 19
94.多ニューロンのパターン化と記録(Multineuron patterning and recording).
McKenna & Stenger (編), 培養された神経ネットワークのための効果的技術(Ena bling Technologies for Cultured Neural Networks) (pp. 167-185). Academic
Press.) さらに、例えばニューロンと電極の間に他を上回る電気的カップリン
グが起こるところでは、時折閾値下のイベントが起こる可能性があり、且つニュ
ーロンの密度が非常に高いところでは時折電位シグナルが発生する可能性がある
。本発明のデータ記録は主にAP検出と分析に焦点が当てられており、その際、他
のタイプのシグナルを記録し、且つ分析する能力が保存されている。これは、デ
コンボリューションアルゴリズムの展開で考慮されるであろう。
【0176】6.6.1. 市販の記録システム 現在では、Plexon Inc., Dallas TXが64チャネル(128チャネルも同様に)の
スパイクをリアル−タイム分類する能力のある、本発明に適した製品を提供して
おり、ソフトウェアはスパイク分類性能の選択に自由度があるだけでなく、自動
化クラスター切断を含むように設計されている。このシステムには、シグナルの
オフ−ラインを再分類する目的で、ディスクに検出した波形を保存することが含
まれる。この製品は、優れたデータ分析ソフトウェアパッケージ(Neuroexplorer
)によってサポートされており、スパイク後のシグナルを分析することに向けら
れている。この製品系列には、電極アレイとのコネクターに存在し、前置増幅器
およびフィルターを含む。
【0177】 64チャネルのMNAP(多チャネル神経取得プロセッサ(Multichannel Neuronal A
cquisition Processor))には、ハイエンド(high end)パーソナルコンピュータ、
ヘッドステージ刺激/記録前置増幅器、インプットシグナルコンディショニング(
SIGボード)、A/D変換器(ADCボード)及びデジタルシグナルプロセッシング(DSP
ボード)、高速ホストデータ連結器(DCCボード)、及びアウトプットモニター(O
UTボード)が含まれる。
【0178】 多チャネルシステム(Reutlingen, Germany)は、64チャネルからのシグナルの
連続時点の獲得が可能な製品を提供しており、それには連続的なデータ分析のた
めに対象のイベントを検出する、限界リアルタイム性能が含まれる。このデータ
分析ソフトウェアが強力な製品を提案している。このシステムには、電極アレイ
と、記録理論を非常に簡単にする小型のステージ前置−増幅器が含まれる。
【0179】6.7. 高インピーダンススループット分析のためのプロトコール 細胞外クランプのインプットアウトプット関係(スペクトルの密度とフェーズ
)は、閾値下の電圧クランプ正弦波形を適用し、且つアウトプットを測定するこ
とより誘導される。対照的にチップの微小電極では、理想的な界面はシグナルの
減弱やフェーズのシフトを引き起こさず、しかしながら界面に電気容量的なカッ
プリングが起きると低フィルター通過特性が発生する。このように、スペクトル
密度とフェーズとは関連性があるため、さまざまなSAMまたはSAMで改質された表
面の間を比較できるインターフェース特性の定量的測定法が提供される。
【0180】6.8. 本発明の装置のコンピュータへの接続 本発明の装置は、コンピュータまたはコンピュータネットワークに有利に接続
されるであろう。
【0181】 当業者は、上記したコンピュータネットワークに関して本発明の範囲には任意
の適当なインターネット(ロアーケース)、即ちネットワークまたはイントラネ
ットの間のメッセージまたはメッセージのフラグメントを転送するルーターのよ
うな装置を用いて内部接続したネットワークのセットが含まれることを認識する
であろう。当然、インターネット(アパーケース)はインターネットの最大の例
の一つである。
【0182】 この最後に、サービスプロバイダネットワークのエレメントによって、実質的
に中心に集まる処理環境で互いに地理的に近接して位置づけることが可能になっ
たり、または二カ所もしくはそれ以上のサイトに位置しているリソース、例えば
サーバー及び保存の装置を活用するために、標準的な分配された処理環境に配設
することが可能になったりすることもまた理解できる。
【0183】 別の態様では、上記で記述したコンピュータネットワークには、バーチャルプ
ライベートネットワーク(VPN)が含まれてもよく、それによってPSTN基礎構造を
示す利点を採用できるが、これに対してリソース使用に関する情報交換のための
安全でプライベートな環境が整えられる。有利なことに、VPNから送られたデー
タは符号化され、それによって取引先のプライバシーが高められる。即ち、VPN
にはトンネル化プロトコールが含まれるため、本発明はプライベートで安全なネ
ットワークの一部としてインターネットを効率的に利用する。即ち「トンネル」
は、与えられた仲間のメッセージまたはファイルがインターネットを通じて伝わ
ることが可能な特定の経路である。
【0184】 別の態様では、上記したコンピュータネットワークはまたエクストラネットを
含んでいてもよく、それは標準的なデータ交換フォーマットである、例えばエレ
クトロニックデータインターチェンジを用いて、大容量のリソース利用データを
安全に交換できる。この範囲内で、エクストラネットは共通の対象、例えば集め
たリソース使用法のニュースを、取引先がパートナーの仲間と独占的に共有する
ことが可能になるかもしれない。
【0185】 標準の図解のユーザーインターフェースブラウザが論じられたが、表重のテキ
スト−オンリーのリンクス(Lynx)のようなブラウザがUNIX(登録商標)シェルと VMSユーザーのために用いられる可能性が理解されるであろう。このようなテキ ストオンリーのブラウザのユーザーは、例えばそれらの使用データのコンマで区 切られたASCIIファイルをダウンロードできる。
【0186】 前述した発明は、理解を明確にする目的で図示と実施例の方式により、ある程
度詳細に記述したが、本発明の精神または範囲を逸脱することなくそれにある変
形と修飾を加えることができうることは、本発明の開示に照らして当業者にとっ
て容易に明らかであると思われる。したがって本発明の範囲には、本発明を例示
するために選択した特定の態様によって意味されるべき制限はない。
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1aは、微小電極アレイ上で7日培養した自発発火性の新生ラッ
ト心筋による単一の細胞外活動電位を示している。図1bは、同じ微小電極部位か
らの記録を、細胞外シグナルの拍動性を示すためにさらに長い時間幅にわたって
示したものである。
【図2Aおよび2B】 微小電極アレイ上の脊髄ニューロンによる細胞外活
動電位を示している。細胞の発火は脱分極刺激によって誘発している。
【図3】 微小電極アレイ上で培養したニューロンの光学像を示している。
【図4】 NG108-15細胞に関していくつかの重要な受容体および細胞内経路
の模式図を示したものである。太字は検査した毒素を示している。活動電位に対
する毒素の影響は、15分以内に生じたVXを除いて、60〜180秒以内に生じている
【図5】 NG-108-15細胞に対するパラオキソン(LD50が1.8mg/kgの神経作
用刺激薬)、リシンおよびシアン化物の投与の結果を示している。細胞内記録を
用いた刺激活動電位から、活動電位の形状が持続時間、振幅および後過分極電位
(AHP)に関して劇的に変化することが示されている。
【図6】 膜時定数の変化に対する細胞外波形の感受性を示すためのホジキ
ン-ハクスレー・シミュレーションである(a―膜電位;b―膜電位の導関数)。
最大のピークはカリウムチャネルの時定数を5倍に延長させた場合のものである
―後電位が長いことに注目されたい。最も小さいピークはナトリウムの時定数を
2倍にすることによる。残りのピークは通常の「教科書」によるホジキン-ハクス
レー・シミュレーションである。
【図7】 ニューロン-微小電極の境界面の模式図を示したものであり、容
量性放電電流=(I)=C dv/dtである。
【図8】 フロムヘルツ(Fromherz)ら(Fromherz, P.、Offenhausser, A.
、Vetter, T.およびWeis, J.(1991). ニューロン-珪素の接合部:絶縁ゲート
電界効果トランジスタ上にあるヒルのレチウス細胞(A neuron-silicon junctio
n: A Retzius cell of the leech on an insulated-gate filed-effect transis
tor). Science 252、1290〜1293)から改変した、ニューロン-微小電極の境界
面に関する等価回路である。
【図9】 装置の重ね図を、本発明のシステムの1つの特定の態様に関する
好ましい連結図とともに示したものである。
【図10】 デコンボリューションのアルゴリズムに関するフローチャート
を提示している。
【図11】 システムまたは操作のアルゴリズムに関するフローチャートを
提示している。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (81)指定国 EP(AT,BE,CH,CY, DE,DK,ES,FI,FR,GB,GR,IE,I T,LU,MC,NL,PT,SE),OA(BF,BJ ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GW,ML, MR,NE,SN,TD,TG),AP(GH,GM,K E,LS,MW,MZ,SD,SL,SZ,TZ,UG ,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,MD, RU,TJ,TM),AE,AG,AL,AM,AT, AU,AZ,BA,BB,BG,BR,BY,CA,C H,CN,CR,CZ,DE,DK,DM,DZ,EE ,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,HR, HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,K R,KZ,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LV ,MA,MD,MG,MK,MN,MW,MX,MZ, NO,NZ,PL,PT,RO,RU,SD,SE,S G,SI,SK,SL,TJ,TM,TR,TT,TZ ,UA,UG,US,UZ,VN,YU,ZA,ZW

Claims (49)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 細胞の1つまたは複数のイオンチャネルであって、装置およ
    び付属のソフトウエアを含む、被験物質による影響を受けるチャネルを同定しう
    るシステムであって、 該装置が、 (a)固体微小電極(solid state microelectrode); (b)1つまたは複数の認知可能な特性を呈する測定可能な活動電位を提供しう
    る1つまたは複数の細胞である、1つまたは複数のイオンチャネルを含む細胞膜を
    有する1つまたは複数の電気的活動性のある細胞を含む細胞培養物;および (c)(i)表面改質剤を含み、(ii)少なくとも該細胞培養物の該1つまたは
    複数の細胞の近傍で高インピーダンス封止部(high impedance seal)が得られ
    るように、該微小電極と該細胞培養物の1つまたは複数の細胞との間に配置され
    た、介在層 を含み、 該付属のソフトウエアが、コンピュータによって実行可能であって、該1つま
    たは複数の細胞を被験物質に曝露させた際に、該活動電位によって呈示される1
    つまたは複数の特性の変化を、該1つまたは複数の細胞の1つまたは複数のイオン
    チャネルと関連づけることが可能な命令を含んでいる、システム。
  2. 【請求項2】 活動電位によって呈示される1つまたは複数の特性が、その
    波形またはその導関数(derivative)によって示される、請求項1記載のシステ
    ム。
  3. 【請求項3】 1つまたは複数の特性が、後電位、活動停止までの時間、頻
    度、振幅、形状、スパイク頻度または時定数のうち少なくとも1つを含む、請求
    項2記載のシステム。
  4. 【請求項4】 データ処理命令がさらに、ナトリウムチャネル、カリウムチ
    ャネル、カルシウムチャネルまたはそれらの組み合わせからなる群より選択され
    るイオンチャネルを通過するイオン流に関するデータを含むインプットデータを
    受け取ることができる、請求項1記載のシステム。
  5. 【請求項5】 微小電極が平面型または柔軟性である、請求項1記載のシス
    テム。
  6. 【請求項6】 微小電極が電界効果トランスデューサーである、請求項1記
    載のシステム。
  7. 【請求項7】 珪素、改変(modified)二酸化珪素、窒化珪素、炭化珪素、
    ゲルマニウム、シリカ、ガリウム、砒化物、エポキシ樹脂、ポリスチレン、ポリ
    スルホン、アルミナ、シリコーン、フルオロポリマー、ポリエステル、アクリル
    共重合体、ポリ乳酸またはそれらの組み合わせからなる群より選択される絶縁体
    をさらに含む、請求項1記載のシステム。
  8. 【請求項8】 電気的活動性のある細胞が神経細胞または心臓細胞を含む、
    請求項1記載のシステム。
  9. 【請求項9】 神経細胞が海馬細胞である、請求項8記載のシステム。
  10. 【請求項10】 細胞培養物が、幹細胞、形質転換がなされた幹細胞、そのそ
    れぞれの子孫またはそれらの組み合わせを含む、請求項1記載のシステム。
  11. 【請求項11】 幹細胞が分化因子に曝露される、請求項10記載のシステム。
  12. 【請求項12】 表面改質剤が1種または複数の自己組織性単分子膜を含む、
    請求項1記載のシステム。
  13. 【請求項13】 自己組織性単分子膜が、シラン、チオール、イソシアニド、
    高分子電解質もしくは類似の分子、またはそれらの組み合わせを含む、請求項12
    記載のシステム。
  14. 【請求項14】 データ処理命令がさらに、活動電位の時間的記載における変
    化に関するデータを含むインプットデータを受け取ることができる、請求項1記
    載のシステム。
  15. 【請求項15】 介在層が細胞接着分子をさらに含む、請求項1記載のシステ
    ム。
  16. 【請求項16】 細胞接着分子が、抗体、抗原、受容体リガンド、受容体、レ
    クチン、糖質、酵素、酵素阻害薬、ビオチン、アビジン、ストレプトアビジン、
    カドヘリン、RGD型ペプチド、インテグリン、カドヘリン、修飾脂質またはそれ
    らの組み合わせを含む、請求項15記載のシステム。
  17. 【請求項17】 介在層が、アルコール、エーテル、エステル、ケトン、アミ
    ド、グリコール、アミノ酸、糖類、カルボキシメチルサッカライド、カルボキシ
    エチルサッカライド、アミノサッカライド、アセチルアミノサッカライド、それ
    らの重合体またはそれらの組み合わせを含む高粘度の混合物を含む、請求項1記
    載のシステム。
  18. 【請求項18】 細胞培養物の1つまたは複数の細胞が、内因性または外因性
    核酸によるトランスフェクションを受けた1つまたは複数の細胞を含む、請求項1
    記載のシステム。
  19. 【請求項19】 核酸が、機能が知られた、または知られていないヌクレオチ
    ド配列を含む、請求項18記載のシステム。
  20. 【請求項20】 細胞培養物が高分子によってコーティングされる、請求項1
    記載のシステム。
  21. 【請求項21】 高分子がセルロース、メチルセルロース、デキストランなど
    を含む、請求項20記載のシステム。
  22. 【請求項22】 介在層が誘引層または反発層であることを特徴とする、請求
    項1記載のシステム。
  23. 【請求項23】 検出回路をさらに含む、請求項1記載のシステム。
  24. 【請求項24】 被験物質によって影響を受ける1つまたは複数のイオンチャ
    ネルを決定する方法であって、 (a)検査しようとする物質を、固体微小電極と、1つまたは複数のイオンチャ
    ネルを含む細胞膜を有する1つまたは複数の細胞であって、1つまたは複数の認知
    可能な特性を呈する測定可能な活動電位を提供しうる1つまたは複数の細胞を含
    む細胞培養物と、高インピーダンス封止部として作用する、該微小電極と該細胞
    培養物との間に配置された介在層とを含む装置に接触させる段階; (b)活動電位、その1つもしくは複数の特性、またはその1つもしくは複数の
    変化に関するデータを収集する段階;ならびに (c)被験物質によって影響を受ける1つまたは複数のイオンチャネルを該デー
    タから決定する段階 を含む方法。
  25. 【請求項25】 被験物質が、毒素、薬物、病原性作用物質、神経伝達物質、
    神経作用物質またはそれらの混合物を含む、請求項24記載の方法。
  26. 【請求項26】 決定段階が、活動電位もしくはその導関数、その1つもしく
    は複数の特性、またはその1つもしくは複数の変化のデコンボリューションを含
    む、請求項24記載の方法。
  27. 【請求項27】 デコンボリューションが、細胞において影響を受ける経路ま
    たは機能的カテゴリーに関する情報につながる、請求項24記載の方法。
  28. 【請求項28】 装置および付属のソフトウエアを含む、被験物質の潜在的な
    生理的影響を決定する高スループット能力を有するシステムであって、 該装置が固体微小電極、および1つもしくは複数の認知可能な特性を呈する測
    定可能な活動電位を提供しうる1つまたは複数の細胞を含む細胞培養物を含み、 該付属のソフトウエアが、該細胞培養物の1つまたは複数の細胞に被験物質を
    曝露させた際に、該活動電位によって呈示される1つもしくは複数の特性の変化
    を、被験物質が及ぼす1つまたは複数の潜在的な生理的影響と関連づけることが
    できるデータ処理命令を含んでいる、システム。
  29. 【請求項29】 装置が、高インピーダンス封止部として作用する、微小電極
    と細胞培養物の1つまたは複数の細胞との間に配置された介在層をさらに含む、
    請求項28記載のシステム。
  30. 【請求項30】 付属のソフトウエアが、所定の実験の1つまたは複数の条件
    を変更する目的で1つまたは複数のシステムパラメーターを操作するため、この
    ような操作の結果を解釈するため、およびその両方のための命令を含む、請求項
    28記載のシステム。
  31. 【請求項31】 このような操作が、細胞培養物への対象となる化合物の添加
    、または該細胞培養物からのその除去を含む、請求項30記載のシステム。
  32. 【請求項32】 対象となる化合物が栄養物または細胞モジュレーターである
    、請求項31記載のシステム。
  33. 【請求項33】 データ処理命令が、活動電位またはそれに関して観察された
    変化の時間的分析を含む、請求項28記載のシステム。
  34. 【請求項34】 データ処理命令が、対象となる1つまたは複数の細胞経路ま
    たは受容体の関与を示唆するアウトプットを提供することができる、請求項28記
    載のシステム。
  35. 【請求項35】 関連のある対象となる1つまたは複数の細胞経路または受容
    体に基づいて被験物質の作用機序を決定することができる、請求項34記載のシス
    テム。
  36. 【請求項36】 付属のソフトウエアがフィードバックループのための命令を
    含む、請求項28記載のシステム。
  37. 【請求項37】 被験物質が、毒素、薬物候補、病原性作用物質、神経伝達物
    質、神経作用物質、遺伝子、遺伝子産物またはそれらの混合物を含む、請求項28
    記載のシステム。
  38. 【請求項38】 装置および付属のソフトウエアを含む、単離された核酸、そ
    の発現産物、または該核酸もしくは発現産物の1つもしくは複数の活性断片の1つ
    または複数の機能を決定するためのシステムであって、 該装置が固体微小電極、および1つまたは複数の認知可能な特性を呈する測定
    可能な活動電位を提供しうる1つまたは複数の細胞を含む細胞培養物を含み、該
    細胞が単離された核酸によるトランスフェクションを受けており、またはその発
    現産物に曝露されており、 該付属のソフトウエアが、該活動電位によって呈示される1つまたは複数の特
    性の変化を、単離された核酸、その発現産物、または該核酸もしくは発現産物の
    1つもしくは複数の活性断片の1つまたは複数の機能と関連づけることができるデ
    ータ処理命令を含んでいる、システム。
  39. 【請求項39】 装置が、高インピーダンス封止部として作用する、微小電極
    と細胞培養物の1つまたは複数の細胞との間に配置された介在層をさらに含む、
    請求項38記載のシステム。
  40. 【請求項40】 付属のソフトウエアが、所定の実験の1つまたは複数の条件
    を変更する目的で1つまたは複数のシステムパラメーターを操作するため、この
    ような操作の結果を解釈するため、およびその両方のための命令を含む、請求項
    38記載のシステム。
  41. 【請求項41】 単離された核酸、その発現産物、または該核酸もしくは発現
    産物の1つもしくは複数の活性断片の1つまたは複数の機能を決定する方法であっ
    て、 (a)固体微小電極と、単離された核酸によるトランスフェクションを受けた
    、またはその発現産物に曝露された細胞である、1つまたは複数の認知可能な特
    性を呈する測定可能な活動電位を提供しうる1つまたは複数の細胞を含む細胞培
    養物とを含む装置を提供する段階、 (b)活動電位、その1つもしくは複数の特性、またはその1つもしくは複数の
    変化に関するデータを収集する段階;ならびに (c)該単離された核酸、その発現産物、または該核酸もしくは発現産物の1つ
    もしくは複数の活性断片の1つまたは複数の機能を該データから決定する段階 を含む方法。
  42. 【請求項42】 決定段階が、活動電位、その1つもしくは複数の特性、また
    はその1つもしくは複数の変化のデコンボリューションを含む、請求項41記載の
    方法。
  43. 【請求項43】 所定の実験の1つまたは複数の条件を変更する目的で1つまた
    は複数のパラメーターを操作する段階をさらに含む、請求項41記載の方法。
  44. 【請求項44】 このような操作の結果を解釈する段階をさらに含む、請求項
    43記載の方法。
  45. 【請求項45】 装置が、高インピーダンス封止部として作用する、微小電極
    と細胞培養物の1つまたは複数の細胞との間に配置された介在層をさらに含む、
    請求項41記載の方法。
  46. 【請求項46】 1つまたは複数の細胞に被験物質を曝露させた際に、観察さ
    れる活動電位によって呈示される1つまたは複数の特性の変化を、細胞培養物の1
    つまたは複数の細胞の1つまたは複数のイオンチャネルと関連づけるデータ処理
    段階を含む命令である、コンピュータによる実行のための命令を含むプログラム
    がコード化されたコンピュータ可読媒体。
  47. 【請求項47】 データ処理段階が、観察された活動電位によって呈示される
    1つまたは複数の特性の変化を過去の観察による記録情報と比較し、その変化を1
    つまたは複数の細胞の1つまたは複数のイオンチャネルによるものと帰属させる
    ことを可能にする、デコンボリューションの段階を含む、請求項46記載のコンピ
    ュータ可読媒体。
  48. 【請求項48】 データ処理段階が分光分析を含まない、請求項46記載のコン
    ピュータ可読媒体。
  49. 【請求項49】 分光分析がフーリエ変換を用いる、請求項48記載のコンピュ
    ータ可読媒体。
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