JP2003342059A - アルミナ質仮焼粉及びその製造法並びにアルミナ質焼結体及びその製造法 - Google Patents

アルミナ質仮焼粉及びその製造法並びにアルミナ質焼結体及びその製造法

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JP2003342059A
JP2003342059A JP2002151624A JP2002151624A JP2003342059A JP 2003342059 A JP2003342059 A JP 2003342059A JP 2002151624 A JP2002151624 A JP 2002151624A JP 2002151624 A JP2002151624 A JP 2002151624A JP 2003342059 A JP2003342059 A JP 2003342059A
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alumina
zirconia
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JP2002151624A
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Tsutomu Katamoto
勉 片元
Takahisa Nishio
尊久 西尾
Daiki Miyamoto
大樹 宮本
Yoshito Nishikawa
義人 西川
Hideki Kume
秀樹 久米
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Osaka Prefecture
Toda Kogyo Corp
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Osaka Prefecture
Toda Kogyo Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 本発明は、安価かつ耐熱性・耐磨耗性・耐薬
品性に優れ、しかも、高抗折強度を有するアルミナ質焼
結体を提供する。 【解決手段】 粒子表面が、Mg、Ca、Y及び希土類
元素から選ばれる一種類以上の元素並びにAlを固溶す
るジルコニアによって被覆されたアルミナ粒子からなる
仮焼粉であって、ジルコニア含有量が1〜25重量%で
あり、Na含有量がNaO換算で0.05〜0.5重
量%であるアルミナ質仮焼粉は、アルミナ粒子を含有す
る水懸濁液中に、Mg、Ca、Y及び希土類元素から選
ばれる一種類以上の金属イオンとZrイオンとAlイオ
ンとSO 2−とを含む混合溶液を添加すると同時に、
アルカリ金属からなるアルカリ水溶液を添加して前記水
懸濁液をpH7.0〜10.5の範囲に維持することに
よって、Zrを主成分とする水酸化物微粒子をアルミナ
粒子の粒子表面に緻密に被覆させた後、300℃〜10
00℃の温度範囲で仮焼して得られる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、粒子表面全体にジルコ
ニアを主成分とする酸化物微粒子を緻密に被覆させたア
ルミナ粒子からなるアルミナ質仮焼粉及び該アルミナ質
仮焼粉を用いて得られる安価かつ耐熱性・耐磨耗性・耐
薬品性に優れ、しかも、高抗折強度を有するアルミナ質
焼結体を提供する。
【0002】
【従来の技術】アルミナセラミックスは耐熱性・耐磨耗
性・耐薬品性などの面で非常に優れた材料であり、耐火
物・産業用機械部品・触媒担体・IC基盤・ICパッケ
ージなど広範囲な産業分野で利用されている。
【0003】その原料となるアルミナ粉末が安価である
ことも材料としての魅力の一つであるが、窒化珪素やジ
ルコニアと比べて抗折強度が低く、高い応力のかかる部
分に安定して使用することができないと言う欠点があ
る。反面、窒化珪素やジルコニアなどのセラミックスは
その優れた性能にもかかわらず原料粉末価格が非常に高
いために未だ限定された分野で使用されるに留まってい
る。
【0004】そのような背景を反映し、安価かつ耐熱性
・耐磨耗性・耐薬品性に優れ、また高抗折強度を有する
材料が求められている。
【0005】従来、Zrイオンと、Mg、Ca、Yおよ
び希土類元素のうち1種以上のイオン、ならびにAlイ
オンを均一に混合した溶液を作製し、この溶液にアルミ
ナ粒子粉末を添加し、アンモニアで中和反応させること
により、アルミナ粒子とZr−Al系水酸化物とからな
る準原料粉体を得たあと、この準原料粉体を仮焼するこ
とにより、アルミナ凝集体の表面にジルコニア微粒子が
付着した原料粉体を製作し、この原料粉体を所定形状に
成形後焼成することにより、高強度でかつ高硬度を有す
るアルミナ質焼結体を得る方法が提案されている(特開
平9−286660号公報、特開平11−335159
号公報、特開2000−344569号公報)。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかし、前出公開公報
に記載の製造法では、ジルコニア粒子が不均一、且つ、
粒状にアルミナ粒子表面に付着するため、ジルコニアは
焼結体中の粒界全体に均一に分散せず粒界3重点に偏在
しやすい傾向があり、膜状に形成されておらず、そのた
めに抗折強度が十分とは言い難いものである。殊に、特
開2000−344569号公報に記載の写真より求め
た焼結体中のジルコニアの平均アスペクト比は1.0で
あり、図3に示すモデル2のような粒界の3重点にジル
コニアが存在するものと考えられる。また中和に用いる
アルカリ原料としてアンモニア溶液を用いるために廃水
等の処理が必要であり、工業的生産性に優れるとは言い
難いものである。
【0007】そこで、本発明は、粒子表面にジルコニア
を主成分とする酸化物微粒子を緻密且つ全体的に被覆し
たアルミナ粒子からなるアルミナ質仮焼粉及び該アルミ
ナ質仮焼粉を用いて、高抗折強度を有するアルミナ質焼
結体を提供することを技術的課題とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】前記技術的課題は、次の
通りの本発明によって達成できる。
【0009】即ち、本発明は、粒子表面が、Mg、C
a、Y及び希土類元素から選ばれる一種類以上の元素並
びにAlを固溶するジルコニア微粒子によって被覆され
たアルミナ粒子からなるアルミナ質仮焼粉であって、ジ
ルコニア含有量が1〜25重量%であり、Na含有量が
NaO換算で0.05〜0.5重量%であることを特
徴とするアルミナ質仮焼粉である(本発明1)。
【0010】また、本発明は、アルミナ粒子を含有する
水懸濁液中に、Mg、Ca、Y及び希土類元素から選ば
れる一種類以上の金属イオンとZrイオンとAlイオン
とSO 2−とを含む混合溶液を添加すると同時に、ア
ルカリ金属からなるアルカリ水溶液を添加して前記水懸
濁液をpH7.0〜10.5の範囲に維持することによ
って、Mg、Ca、Y及び希土類元素から選ばれる一種
類以上の金属とAlとを含有するZrを主成分とする水
酸化物微粒子をアルミナ粒子の粒子表面に緻密に被覆さ
せた後、その水懸濁液の水洗・乾燥・粉砕することによ
って得られる粉末を、300℃〜1000℃の温度範囲
で仮焼することにより得られる本発明1のアルミナ質仮
焼粉の製造法である(本発明2)。
【0011】また、本発明は、正方晶及び/又は立方晶
の結晶構造を有するジルコニアがアルミナ粒子の周りに
膜状に存在し、また当該ジルコニアを1〜25重量%含
有し、且つ、NaをNaO換算で0.05〜0.5重
量%含有することを特徴とするアルミナ質焼結体である
(本発明3)。
【0012】また、本発明は、本発明3のアルミナ質焼
結体であって、焼結体表面の中心線平均粗さ(Ra)を
0.2μm以下まで研磨し、該研磨面の表面の反射電子
像を画像解析したときの膜状のジルコニアの平均アスペ
クト比が1.5以上であることを特徴とするアルミナ質
焼結体である(本発明4)。
【0013】また、本発明は、本発明2のアルミナ質仮
焼粉の製造法によって得られたアルミナ質仮焼粉を造
粒、成形した後、1400〜1600℃で焼成すること
を特徴とする本発明3又は本発明4のアルミナ質焼結体
の製造法である(本発明5)。
【0014】次に、本発明の構成をより詳しく説明すれ
ば次の通りである。
【0015】先ず、本発明に係るアルミナ質仮焼粉につ
いて述べる。
【0016】本発明に係るアルミナ質仮焼粉は、Mg、
Ca、Y及び希土類元素から選ばれる一種類以上の元素
とAlとを固溶するジルコニア微粒子で全体が被覆され
ているアルミナ粒子からなる粉末である。
【0017】ジルコニアの含有量は1〜25重量%であ
り、1重量%未満の場合には焼結体にした場合に強度向
上効果が少ない。25重量%を越える場合にはジルコニ
ア含有量が多いため原料価格が高価なものとなり好まし
くない。好ましくは3〜23重量%である。
【0018】Naの含有量はNaO換算で0.05〜
0.5重量%である。0.05重量%未満の場合には、
原料であるアルミナ粒子として高純度アルミナを用いる
必要があるため、安価に製造することが困難である。
0.5重量%を越える場合には、これを用いて焼結体を
作製した場合アルミナ質焼結体の強度が低下する。好ま
しくは0.06〜0.45重量%である。
【0019】次に、本発明に係るアルミナ質仮焼粉の製
造法について述べる。
【0020】本発明においては、Na含有量がNa
換算で0.01〜0.1重量%の範囲にあるアルミナ粒
子粉末を用いることが好ましい。
【0021】アルミナ粒子を含有する水懸濁液はあらか
じめ解こうしておくことが好ましい。解こうには、ボー
ルミル、ビーズミル、高速攪拌機等を用いることができ
る。
【0022】Mg、Ca、Y及び希土類元素から選ばれ
る一種類以上の金属イオンとZrイオンとAlイオンと
SO 2−とを含む混合溶液とアルカリ金属からなるア
ルカリ水溶液は、アルミナ粒子を含有する水懸濁液に同
時に滴下・混合することが好ましい。添加するときの水
懸濁液のpHは7.0〜10.5の範囲に維持する。
【0023】アルカリ金属からなるアルカリ水溶液はp
H調整に用い、殊に水酸化ナトリウム水溶液を用いるこ
とが好ましい。
【0024】水懸濁液のpHが7.0未満の場合、水酸
化物微粒子中に取り込まれるSO 2−イオン量が多
く、仮焼時及び焼成時にアルミナ粒子の異常粒子成長を
促進するため好ましくない。pHが10.5以上の場
合、共沈させたAl成分が再溶解してしまうため、目的
とする組成からのずれを生じるため好ましくない。
【0025】添加するZr化合物としては、四塩化ジル
コニウム、オキシ塩化ジルコニウム及び硫酸ジルコニウ
ム等を用いることができる。Al化合物としては塩化ア
ルミニウム、硫酸アルミニウム等を用いることができ
る。ただし、Zr化合物もしくはAl化合物のどちらか
一つもしくは両方に硫酸塩原料を用いる。
【0026】Mg、Ca、Y及び希土類元素から選ばれ
る一種類以上の金属イオンとZrイオンとAlイオンと
を含む混合溶液中のZrとAlイオンの比は酸化物換算
で、ZrO:Al=95:5〜60:40(m
ol比)の間であることが好ましい。
【0027】アルミナ粒子の粒子表面を、Zrを主成分
とする水酸化物微粒子で被覆した後、常法に従って、水
洗、乾燥、粉砕することが好ましい。
【0028】次いで、Zrを主成分とする水酸化物微粒
子で粒子表面を被覆したアルミナ粒子からなる乾燥粉末
を、300℃〜1000℃の温度範囲で仮焼する。
【0029】300℃未満の場合には、アルミナ粒子に
被覆したZrを主成分とする水酸化物微粒子を完全に酸
化物微粒子にすることが困難である。1000℃を越え
る場合には、アルミナ粒子およびジルコニア粒子の粒子
成長が速くなるために、隙間が無く密度の高い焼結体を
製造するのに適した仮焼粉を得ることができない。
【0030】次に、本発明に係るアルミナ質焼結体につ
いて述べる。
【0031】本発明に係るアルミナ質焼結体は、正方晶
及び/又は立方晶の結晶構造を有するジルコニアがアル
ミナ粒子の粒子表面に膜状に存在する。ジルコニアが膜
状に存在することによってアルミナ粒子間の粒界結合力
が向上し、高抗折強度化が可能となる。
【0032】本発明に係るアルミナ質焼結体は、焼結体
表面の中心線平均粗さ(Ra)が0.2μm以下になる
まで研磨し、該研磨面の表面の反射電子像を画像解析し
たときのジルコニアの平均アスペクト比が1.5以上で
あることが好ましい。アスペクト比が1.5未満の場合
には、ジルコニアが膜状に存在しているとは言い難く、
十分な強度向上効果が見られない。
【0033】本発明に係るアルミナ質焼結体はジルコニ
アを1〜25重量%含有する。1重量%未満の場合には
強度向上効果が少ない。25重量%を越える場合にはジ
ルコニア含有量が多いため原料価格が高価なものとな
り、本発明の目的とする安価に焼結体を提供することが
達成できない。好ましくは3.0〜23重量%である。
【0034】本発明に係るアルミナ質焼結体のNa含有
量は0.05〜0.5重量%である。0.05重量%未
満の場合、原料であるアルミナ粒子として高純度アルミ
ナを用いる必要があるため、安価に製造することが困難
である。0.5重量%を越える場合には、アルミナ質焼
結体の強度が低下する。好ましくは0.06〜0.45
重量%である。
【0035】次に、本発明に係るアルミナ質焼結体の製
造法について述べる。
【0036】本発明に係るアルミナ質焼結体は、前記ア
ルミナ質仮焼粉を造粒後、希望する形に成型を行い、1
400〜1600℃の温度範囲で焼成することにより得
ることができる。1400℃未満の場合には、焼結体中
の欠陥構造がまだ数多く残っているために高抗折強度の
アルミナ質焼結体を得ることができない。1600℃を
越える場合には、アルミナ及びジルコニアの粒子成長が
進みすぎるために抗折強度は低下する。
【0037】なお、より高強度のアルミナ質焼結体を得
るためには、高圧下で焼結してもよい。
【0038】
【発明の実施の形態】本発明の代表的な実施の形態は次
の通りである。
【0039】当該仮焼粉におけるジルコニア微粒子のア
ルミナ粒子への付着状態の確認は透過型電子顕微鏡によ
る観察によって行った。
【0040】本発明におけるNa含有量は、ICP分析
および原子吸光度分析により測定した。
【0041】アルミナ質焼結体の強度は、常圧焼結体及
びHIP焼結体に切削加工を施し、JIS R1601
に規定されている形状・寸法・表面粗さを持つ3点曲げ
強度試験用試験片を作成した。焼結体の強度は日本工業
規格JIS R1601に従い、試験片の荷重点にクロ
スヘッド速度0.5 mm/minの荷重を加え、試験
片が破壊するまでの最大荷重を測定した。
【0042】またアルミナ質焼結体中のジルコニア分布
は、アルミナ質焼結体の表面をRAP盤により鏡面仕上
げをした後、FE−SEMにて反射電子像写真撮影を行
った。
【0043】<実施例1>易焼結性低ソーダアルミナ
(AL−160−SG3、昭和電工製)1kgをイオン
交換水中に添加・混合し、スラリー濃度28.6wt%
のアルミナスラリーを作製した。このスラリー中のアル
ミナ凝集体を、高速攪拌機を用いて回転数1600rp
mで1時間かけて解こうした。
【0044】なお、前記低ソーダアルミナ(AL−16
0−SG3)中に含まれるNa量が0.058重量%で
あることを原子吸光分析法により確認した。また水可溶
性塩テストによって、水洗によりアルミナ原料中に含ま
れるNa量のこれ以上の低減は困難であることを確認し
た。
【0045】次に、前記スラリー中に、Al(S
・8HO粉末を136.1g(アルミナ10
0重量部に対し13.6重量部)、Zr(SO
4HO粉末を748.8g(アルミナ100重量部に
対し74.9重量部)、Y(NO の2M溶液を4
1.86g(アルミナ100重量部に対し4.2重量
部)配合した混合水溶液と水酸化ナトリウム水溶液とを
同時に滴下して、スラリーのpHを8.0〜9.5の範
囲に維持することによって、粒子表面にZrを主成分と
する水酸化物微粒子が付着したアルミナ粒子を得た。
【0046】この粒子粉末を洗浄・乾燥した後、粗粉砕
を行い、600℃で2時間30分仮焼することにより、
アルミナ粒子の粒子表面全体にMg、Ca、Y及び希土
類元素から選ばれる一種類以上の元素とAlとを固溶す
るジルコニア微粒子が付着したアルミナ質仮焼粉を得
た。ジルコニア含有量は20重量%であった。Na含有
量は0.065重量%であった。
【0047】ここに得たアルミナ質仮焼粉について、ア
ルミナ粒子の粒子表面全体にZrを主成分とする酸化物
微粒子が付着している様子を直接的に観測するために、
FIB(Focused ion beam)を用いて
微粒子付着アルミナ粒子を輪切りにしたTEM観察用の
試料を作成し、透過型電子顕微鏡によって写真撮影を行
った。電子顕微鏡写真を図1に示す。当該仮焼粉におい
て、アルミナ粒子の粒子表面全体にZrを主成分とする
酸化物微粒子が付着していることを確認した。
【0048】アルミナ質仮焼粉を有機系分散剤およびイ
オン交換水とともにボールミルで24時間湿式粉砕する
ことにより、目粗さ20μmのふるい上に粒子が残らな
い程度まで粉砕した。次いで、湿式粉砕後のスラリーが
沈降しないよう軽く攪拌しながら、スプレードライヤー
にて造粒をおこなった。造粒後、目粗さ149μmのふ
るいを通すことにより、粗大粒子を取り除いた。
【0049】前記造粒粉末を用いてステンレス製金型に
よる一軸加圧成形を行うことにより、30×50×10
mmの直方型成形体を作成した。加えた圧力は33MP
aである。更に、加圧成形後の成形体を冷間静水圧処理
(CIP処理)によりさらに強固に押し固めた。
【0050】その後に常圧下、大気中1600℃で本焼
成を行い、常圧焼結体を得た。
【0051】得られたアルミナ常圧焼結体は、ジルコニ
ア含有量は20重量%であり、含有するジルコニアは正
方晶及び立方晶の混合相であった。Na含有量は0.0
65重量%であった。抗折強度は987.70MPaで
あった。
【0052】ここに得たアルミナ常圧焼結体に対して、
Arガスを媒体として1450℃、2000気圧で1時
間、熱間等方圧処理(HIP処理)を行い、HIP焼結
体を得た。
【0053】得られたアルミナ焼結体の抗折強度は12
91.10MPaであった。HIP処理により、ほぼ欠
陥を取り除かれたHIP焼結体の表面にRAP盤で鏡面
仕上げをほどこした後、FE−SEMを用いて反射電子
像写真撮影を行うことにより、焼結体中でのジルコニア
分布について観察した。その結果、ジルコニアのアスペ
クト比は、2.06であった。
【0054】結果として、本発明の燒結体は粒界に均一
に膜状にジルコニア粒子が分布することにより粒界結合
力が向上したために焼結体の強度が向上したと考えられ
る。
【0055】
【作用】アルミナ・ジルコニア複合粉末を用いた焼結体
について図3に示すような3通りのモデルが考えられ
る。
【0056】モデル1はアルミナ粒子とジルコニア粒子
が同等の大きさまで粒子成長したケースである。安定化
された正方晶ジルコニア粒子がアルミナマトリックス中
に存在することにより高強度化は起こるが、焼結体中に
ジルコニア分布の偏りが生じている。
【0057】モデル2ではジルコニア粒子は粒界3重点
に偏って存在している。この場合、モデル1と同様に安
定化された正方晶ジルコニア粒子がアルミナマトリック
ス中に存在することによる高強度化は起こるが、ジルコ
ニア粒子によるアルミナ粒子間の粒界結合力向上効果は
小さい。
【0058】モデル3ではジルコニア粒子はアルミナ粒
子間の粒界に均一に存在している。この場合、高強度化
に必要とされるジルコニア量は少なく、またアルミナ粒
子間の粒界結合力の向上によりさらなる高強度化が可能
である。
【0059】いずれのモデルも正方晶ジルコニア粒子が
焼結体中に存在することにより、焼結体中でのクラック
が正方晶ジルコニアから単斜晶ジルコニアへの応力誘起
変態に伴う体積膨張により抑制される点は共通してい
る。そこで、ジルコニア量が少なく且つ高抗折強度な材
料を得るためには、図3のモデル3のようにアルミナ粒
子間の粒界に広く均一に膜状にジルコニア粒子を存在さ
せることが重要である。
【0060】従来、アルミナ質焼結体の原料には各種イ
オンの塩化物塩やオキシ塩化物塩が用いられているが、
本発明では硫酸塩原料を用いて水酸化ナトリウムで中和
したことにより、Zr、Al及びYイオンが原子レベル
で均一に分散した混合溶液を、アルミナ粒子表面全体に
緻密にZrを主成分とする水酸化物微粒子が付着した粒
子を合成することができた。アルミナ粒子全体を覆うよ
うに、緻密なZrを主成分とする水酸化物微粒子の付着
層が形成された理由は未だ明らかではないが、SO
2−イオンの存在に起因していると推定している。
【0061】このように粒子表面全体をZrを主成分と
する酸化物微粒子が覆っているアルミナ粒子からなる仮
焼粉を用いて焼結体を作成することにより、図3のモデ
ル3に示すような、焼結体中の粒界でアスペクト比の大
きな膜状のジルコニアを成長させることができた。
【0062】本発明に係るアルミナ質焼結体が高い抗折
強度を有する理由について、本発明者は、ジルコニアを
アルミナ粒子の粒界に広く均一に膜状に存在させること
ができたことに起因すると考えている。また一般に不純
物Naは粒子成長促進剤として働くために強度低下を招
くとの考えから敬遠されがちだが、酸化物換算で0.0
5〜0.5重量%の範囲ではその影響により抗折強度が
大幅に低下することは無く、そのために苛性ソーダを中
和反応時のアルカリ原料として用いることができるとの
知見を得た。アルカリ原料としてアンモニアを用いない
ので廃液中に窒素分が含まれず、また臭い等の問題も無
いため環境負荷が小さい点において優れている。
【0063】
【実施例】次に、実施例を示す。
【0064】<実施例2>前記実施例1と同様にして作
成したCIP処理後の成形体を、常圧下、大気中155
0℃で本焼成を行い、常圧焼結体を得た。
【0065】得られたアルミナ常圧焼結体は、ジルコニ
ア含有量は20重量%であり、含有するジルコニアは正
方晶及び立方晶の混合相であった。Na含有量は0.0
65重量%であった。抗折強度773.90MPaであ
った。
【0066】得られたアルミナ常圧焼結体に対して、A
rガスを媒体として1450℃、2000気圧で1時
間、熱間等方圧処理(HIP処理)を行い、HIP焼結
体を得た。
【0067】得られたアルミナ焼結体の抗折強度は11
78.80MPaであった。
【0068】HIP処理により、ほぼ欠陥を取り除かれ
たHIP焼結体の表面にRAP盤で鏡面仕上げをほどこ
した後、FE−SEMを用いて反射電子像写真撮影を行
うことにより、焼結体中でのジルコニア分布について観
察した。その結果を図2に示す。白く見える所がジルコ
ニアであり、黒く見える所がアルミナ粒子である。ジル
コニアがアルミナ粒子の周りに膜状に存在していること
及び膜状のジルコニアが「く」の字型に屈折している様
子が確認された。
【0069】更に、膜状に形成されたジルコニアの形状
を数値化するために、ジルコニアのアスペクト比の平均
値を求めた。即ち、アルミナ質焼結体像において、屈曲
部分で区切り線を入れ、区切られた各部分につき、粒界
に沿う方向に長さ、アルミナ粒子間方向に幅を測定し、
(長さ)/(幅)をアスペクト比とした。得られたアル
ミナ質焼結体中のジルコニアは平均アスペクト比が2.
07であった。
【0070】<実施例3>前記実施例1において、粒子
表面にZrを主成分とする水酸化物微粒子が付着したア
ルミナ粒子の洗浄水量を少なくすることによって、実施
例1と比較して多量のNaを含有する水酸化物微粒子が
付着したアルミナ粒子を得た。
【0071】得られた水酸化物微粒子が付着したアルミ
ナ粒子を実施例1と同様にして600℃、2時間30分
仮焼した結果、Na含有量が0.4重量%のアルミナ質
仮焼粉を得た。
【0072】得られたアルミナ質仮焼粉を実施例1と同
様にして造粒した後、1550℃で焼成してアルミナ質
焼結体を得た。得られたアルミナ質焼結体のジルコニア
含有量は20重量%であり、含有するジルコニアは正方
晶及び立方晶の混合相であった。Na含有量は0.4重
量%であった。抗折強度790.6MPaであった。
【0073】<実施例4>易焼結性低ソーダアルミナ
(AL−160−SG3、昭和電工製)1.228kg
の易焼結性低ソーダアルミナ(AL−160−SG3、
昭和電工製)を用いた以外は、実施例1と同様にして、
スラリー濃度28.6wt%のアルミナスラリーを作製
した。
【0074】次に、前記スラリー中に、Al(S
・8HO粉末を34.03g(アルミナ10
0重量部に対し13.6重量部)、Zr(SO
4HO粉末を187.2g(アルミナ100重量部に
対し74.9重量部)、Y(NO の2M溶液を1
0.47g(アルミナ100重量部に対し4.2重量
部)配合した混合水溶液と水酸化ナトリウム水溶液とを
同時に滴下して、スラリーのpHを8.0〜9.5の範
囲に維持することによって、粒子表面にZrを主成分と
する水酸化物微粒子が付着したアルミナ粒子を得た。
【0075】得られた粒子表面にZrを主成分とする水
酸化物微粒子が付着したアルミナ粒子を実施例1と同様
にして600℃、2時間30分仮焼した。
【0076】得られたアルミナ質仮焼粉は、ジルコニア
含有量が5.0重量%、Na含有量が0.065%であ
った。
【0077】次いで、ここに得たアルミナ質仮焼粉を実
施例1と同様にして造粒した後、1550℃で焼成して
アルミナ質焼結体を得た。
【0078】得られたアルミナ質焼結体のジルコニア含
有量は5.0重量%であり、含有するジルコニアは正方
晶及び立方晶の混合相であった。Na含有量は0.06
5重量%であった。抗折強度647.70MPaであっ
た。
【0079】
【発明の効果】本発明によれば、アルミナ粒子の粒子表
面全体にZrを主成分とする酸化物微粒子を緻密に被覆
させたアルミナ粒子からなる仮焼粉を用いて焼結体を製
造することにより、安価かつ耐熱性・耐磨耗性・耐薬品
性に優れ、しかも、高抗折強度を有するアルミナ質焼結
体を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1のアルミナ質仮焼粉の断面図を示す。
(FIB=Focused ion beamにより切
断)
【図2】実施例2のアルミナ質焼結体表面の反射電子像
写真(1万倍)を示す。(HIP焼結品、1550℃焼
成)
【図3】アルミナ・ジルコニア複合粉末の焼結状態のモ
デル図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 西尾 尊久 広島県大竹市明治新開1番4 戸田工業株 式会社大竹創造センター内 (72)発明者 宮本 大樹 奈良県奈良市西千代ヶ丘1丁目23番17号 (72)発明者 西川 義人 大阪府貝塚市久保95番地の5 (72)発明者 久米 秀樹 大阪府大阪市此花区伝法1丁目1番1− 628 Fターム(参考) 4G030 AA03 AA07 AA08 AA12 AA17 AA36 BA19 BA20 BA25 BA32 CA01 CA05 GA07 GA27

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 粒子表面が、Mg、Ca、Y及び希土類
    元素から選ばれる一種類以上の元素とAlとを固溶する
    ジルコニア微粒子によって被覆されたアルミナ粒子から
    なるアルミナ質仮焼粉であって、ジルコニア含有量が1
    〜25重量%であり、Na含有量がNaO換算で0.
    05〜0.5重量%であることを特徴とするアルミナ質
    仮焼粉。
  2. 【請求項2】 アルミナ粒子を含有する水懸濁液中に、
    Mg、Ca、Y及び希土類元素から選ばれる一種類以上
    の金属イオンとZrイオンとAlイオンとSO 2−
    を含む混合溶液を添加すると同時に、アルカリ金属から
    なるアルカリ水溶液を添加して前記水懸濁液をpH7.
    0〜10.5の範囲に維持することによって、Mg、C
    a、Y及び希土類元素から選ばれる一種類以上の金属と
    Alとを含有するZrを主成分とする水酸化物微粒子を
    アルミナ粒子の粒子表面に緻密に被覆させた後、前記水
    酸化物微粒子を被覆したアルミナ粒子を水洗、乾燥、粉
    砕した後、300℃〜1000℃の温度範囲で仮焼する
    ことにより得られる請求項1記載のアルミナ質仮焼粉の
    製造法。
  3. 【請求項3】 正方晶及び/又は立方晶の結晶構造を有
    するジルコニアがアルミナ粒子の周りに膜状に存在し、
    また当該ジルコニアを1〜25重量%含有し、且つ、N
    aをNaO換算で0.05〜0.5重量%含有するこ
    とを特徴とするアルミナ質焼結体。
  4. 【請求項4】 請求項3記載のアルミナ質焼結体であっ
    て、焼結体表面の中心線平均粗さ(Ra)を0.2μm
    以下まで研磨し、該研磨面の表面の反射電子像を画像解
    析したときの膜状のジルコニアの平均アスペクト比が
    1.5以上であることを特徴とするアルミナ質焼結体。
  5. 【請求項5】 請求項2記載のアルミナ質仮焼粉の製造
    法によって得られたアルミナ質仮焼粉を造粒、成形した
    後、1400〜1600℃で焼成することを特徴とする
    請求項3記載又は請求項4記載のアルミナ質焼結体の製
    造法。
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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2018083746A (ja) * 2016-11-25 2018-05-31 京セラ株式会社 セラミック磁器、配線基板および電子部品
WO2022138760A1 (ja) * 2020-12-22 2022-06-30 クラレノリタケデンタル株式会社 ジルコニア顆粒、圧粉体及びそれらの製造方法

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