JP2003328081A - 高面圧疲労強度部材および高面圧疲労強度部材の製造方法 - Google Patents

高面圧疲労強度部材および高面圧疲労強度部材の製造方法

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JP2003328081A JP2002142433A JP2002142433A JP2003328081A JP 2003328081 A JP2003328081 A JP 2003328081A JP 2002142433 A JP2002142433 A JP 2002142433A JP 2002142433 A JP2002142433 A JP 2002142433A JP 2003328081 A JP2003328081 A JP 2003328081A
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high surface
surface pressure
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Kazuyoshi Ogawa
一義 小川
Shoji Hotta
昇次 堀田
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Toyota Central R&D Labs Inc
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 面圧疲労強度が高く、かつ、従来に比べ大幅
な低コスト化が図れる高面圧疲労強度部材およびその製
造方法を提供する。 【解決手段】 Cを0.9〜1.2%、Crを0.3〜
1.5%含む合金鋼からなる部材であって、表層部のビ
ッカース硬さが700〜850で、内部のコア部のビッ
カース硬さが250〜350の部材とした。部材に
は、、微細な析出物を析出させる析出工程と、焼ならし
処理によりビッカース硬さを250〜350とする焼な
らし工程と、高面圧を受ける表面から最大剪断応力振幅
発生位置の少なくとも1.5倍の深さまでの表層部のビ
ッカース硬さを700〜850とする表層部硬化工程
と、を行った。この部材は、トロイダル式無段変速機の
入力ディスク1、出力ディスク2、および伝動ローラ3
等として適用することができる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、トラクションドラ
イブやトロイダル式無段変速機の入出力部品、転動体カ
ム駆動装置などにおいて、特に高い面圧(接触圧力)に
よる転動部材の内部に発生する亀裂の発生が低減された
高面圧疲労強度部材およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】トラクションドライブ等に用いられる転
動部材は、大きなトルクを接触面における接線方向の力
で伝達するため、接触面にはそれに応じた大きなせん断
力が作用すると同時に、非常に大きな押付け荷重を受け
る。そのため、かなり大きな接触面圧が作用する。接触
面圧の作用する面積は、押付け荷重が大きいことと、転
動部材そのものが大きな接触面積をもつため、非常に大
きくなっている。従って、この接触面圧によって転動部
材の内部に発生する応力は、より深くかつ幅広い範囲で
大きな値を持ち、最大剪断応力発生位置は、その深さが
1mm以上となることも稀ではない。
【0003】現在、これらの転動体の材料としては、高
炭素クロム軸受鋼や浸炭鋼が用いられている。このうち
高炭素クロム軸受鋼は、全体焼入れ焼戻し処理であり処
理コストは低いものであるが、全体が硬化しているため
に曲げ疲労強度が低くなるという欠点がある。一方、浸
炭鋼は、表面硬化処理であるために曲げ疲労強度は高い
が、内部を起点とする破壊を防止するのに充分な硬化深
さを得るためには、例えば30時間以上の、非常に長時
間の処理を必要とし、そのためコストが高くなるという
問題が発生する。
【0004】上記問題を解決するために、特開平11−
315901号公報においては、Crを含む機械構造用
低合金鋼に、短時間の浸炭処理を施した後、更に高周波
焼入れを施して、表面から2mm以上の硬化深さを得る
手法が提案されている。この手法では、浸炭処理時間を
短縮するために浸炭処理と高周波焼き入れの2つの表面
硬化処理を組み合わせているが、全く異なった設備を必
要とする2つの処理を行うために、コストの上昇は避け
られない。
【0005】また、特開2001−181785号公報
においては、Cを0.7%以上1.3%以下含む炭素鋼
を用いて、焼入れ焼戻しにより、その硬さをロックウェ
ル硬さHRC40以上55以下にし、その後、高周波焼
入れを施して表面から1mmまでをHRC58以上とす
る手法が提案されている。ところが、HRC40以上5
5以下という値は、機械加工を行う際には非常に高いも
のであるため、加工コストの面での問題が生じる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、面圧
疲労強度が高く、かつ、従来に比べ大幅な低コスト化が
図れる高面圧疲労強度部材およびその製造方法を提供す
ることにある。本発明の高面圧疲労強度部材およびその
製造方法は、トラクションドライブ等に用いられる転動
部材において、その効果を発揮するものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、合金鋼に
含まれるC、Cr等の量を適正範囲に収め、さらに、球
状化焼なまし処理後に焼ならし処理、次いで高周波焼入
れ処理を行うことで、破損寿命が長く、高い面圧疲労強
度が得られることを発見した。本発明は、この発見に基
づいて成されたものである。
【0008】本発明の第1発明である高面圧疲労強度部
材は、主として3μm以下の析出炭化物を含む金属組織
を有する、Cを0.9〜1.2%、Crを0.3〜1.
5%含む合金鋼からなる部材であって、高面圧を受ける
表面から最大剪断応力振幅発生位置の少なくとも1.5
倍の深さまでの表層部のビッカース硬さが700〜85
0で、内部のコア部のビッカース硬さが250〜350
であることを特徴とする。
【0009】合金鋼に含まれるC、Crの量を適正範囲
に押さえることによって、析出炭化物の量が適切に制御
されるので、高い面圧疲労強度が得られる。また、析出
炭化物のサイズを粗大化させることがないため、強度低
下を引き起こすのを防止することができる。
【0010】本第1発明の高面圧疲労強度部材の合金鋼
は、Mnを0.4〜1.5%含むのが好ましい。Mnを
0.4〜1.5%とすることにより、コア部の硬さを高
くすることができ、コア部からの破壊を抑制することが
できる。
【0011】本第1発明の高面圧疲労強度部材におい
て、コア部のマトリックス組織は、パーライトであるの
が好ましい。また、表層部の厚さは、部材の大きさ、寸
法に依るため、この限りではないが、1〜4mmである
のが好ましい。
【0012】本発明の第2発明である高面圧疲労強度部
材の製造方法は、Cを0.9〜1.2%、Crを0.3
〜1.5%含む合金鋼部材に、球状化焼なまし処理によ
り主として3μm以下の析出炭化物を含む金属組織とす
る析出工程と、焼ならし処理によりビッカース硬さを2
50〜350とする焼ならし工程と、高周波焼入れ処理
により高面圧を受ける表面から最大剪断応力振幅発生位
置の少なくとも1.5倍の深さまでの表層部のビッカー
ス硬さを700〜850とする表層部硬化工程と、を行
うことを特徴とする。
【0013】本第2発明である高面圧疲労強度部材の製
造方法では、合金鋼部材に含まれるC、Crの量を適正
範囲に押さえることによって、析出炭化物の量が適切に
制御され、析出炭化物のサイズの粗大化を防止すること
ができる。また、高周波焼入れ処理後のマトリックスの
性質が最適に制御されるため、高い面圧疲労強度が得ら
れる。
【0014】さらに、高周波焼入れ処理前の焼ならし処
理によりマトリックスの炭素濃度を上昇させることがで
き、その後の高周波焼入れの硬化層深さが深くなると共
に、コア部の硬さを適切に保って、コア部からの破壊を
防止することができる。さらに、高周波焼入れ処理後の
硬化層の組織が均一となり、面圧疲労強度が向上する。
焼ならし処理を行わず球状化焼なまし処理のままでは、
高周波焼入れを施す際に、マトリックスの炭素量が少な
いために硬化層深さが浅くなり、コア部崩壊の危険性が
増大する。
【0015】また、高周波焼入れ処理は、従来使用され
ている浸炭焼入れに比べ、処理時間を飛躍的に低減で
き、さらに、熱処理による歪も非常に小さいため、大幅
な低コスト化が図れる。
【0016】本第2発明の高面圧疲労強度部材の製造方
法において合金鋼部材は、Mnを0.4〜1.5%含む
のが好ましい。Mnを0.4〜1.5%とすることによ
り、マトリックスの焼入れ性が向上し、焼ならし処理後
のコア部の硬さを高くすることができると共に、高周波
焼入れ処理時の硬化深さを深くでき、コア部からの破壊
を抑制することができる。
【0017】さらに、本第2発明の高面圧疲労強度部材
の製造方法において、表層部の厚さは、合金部材の大き
さ、寸法に依るため、この限りではないが、1〜4mm
であるのが望ましい。
【0018】なお、本第1および第2発明において、
「最大剪断応力振幅発生位置」とは、最大剪断応力振幅
が発生する深さdsmaxであり、これは、H.A.Ro
thbart編、”Mechanical Desig
n and System Handbook”McG
rowHill(1964年発行)に記載された理論計
算により求められる。この理論計算によれば、二つの転
動部材が小さな楕円領域で点接触する場合に発生する二
種類のせん断応力のうち、転動面と平行な方向に発生す
るせん断応力は両振になり、このせん断応力振幅は接触
楕円の長軸/短軸比によって、転動方向の径の約四分の
一から六分の一の深さの点で最大となることが知られて
いる。
【0019】本第1および第2発明の高面圧疲労強度部
材およびその製造方法は、いずれも、面圧疲労強度が高
く、かつ、大幅な低コスト化が図れる高面圧疲労強度部
材およびその製造方法を提供することができる。
【0020】
【発明の実施の形態】本発明の高面圧疲労強度部材およ
び高面圧疲労強度部材の製造方法の実施の形態を、図1
を用いて説明する。
【0021】本第1発明である高面圧疲労強度部材は、
Cを0.9〜1.2%、Crを0.3〜1.5%含む合
金鋼からなるのが好ましい。Cの添加量は、0.9%を
下回ると充分な析出炭化物を析出させることができず、
硬さの低下、および熱処理時の結晶粒の粗大化を引き起
こすおそれがあり、好ましくない。逆に、Cが1.2%
を上回ると析出炭化物の量が過剰となると共に、その大
きさが数μmを越えるようになり、疲労破壊の起点とな
って強度低下を招くので、好ましくない。Crは、焼入
れ性を向上させると共に微細な炭化物を形成して結晶粒
の微細化および強度の向上に寄与するため、少なくとも
0.3%含むのが好ましい。1.5%以上のCrの添加
は、炭化物の量および大きさが過大となり好ましくな
い。
【0022】また、焼入れ性を向上させ、マトリックス
を強化させるために、Mnを0.4〜1.5%添加する
のが望ましい。Mnは、その効果を生ずるためには、少
なくとも0.4%以上添加する必要があるが、1.5%
を越えると加工性が劣化するので、望ましくない。
【0023】さらに、Siを添加しても良い。Siを添
加することによりマトリックスの強度を上げると共に、
転動部材として使用する際に、高温に曝されたときの硬
さの低下を抑制することができる。Siの添加量は、
0.2〜2.0%が望ましい。上記の効果を得るために
は、0.2%以上の添加が必要であり、一方、2.0%
以上の添加は、加工性の悪化を招くので好ましくない。
【0024】上記の成分を含む高面圧疲労強度部材は、
はじめに、析出工程では、球状化焼なまし処理により炭
化物を均一に析出させる。この析出炭化物は、略球状
で、その粒径は3μm以下、が良い。球状化焼きなまし
は、部材の成分にも依存するが、マトリックスのオース
テナイト化温度であるA1変態点(約730℃)の直上
および直下の温度の間で加熱冷却を繰り返す、あるい
は、A1変態点以上の温度で数時間保持した後、A1変態
点直下の温度で数時間保持し、その後徐冷する、あるい
はA1変態点以上の温度で数時間保持した後徐冷する、
のが望ましい。球状化焼なまし処理後の状態では、マト
リックスはフェライトであり、その硬さはビッカース硬
さHv200程度で低いものである。焼ならし工程で
は、析出工程後の部材をA1変態点以上に加熱後、空冷
する焼ならし処理を施す。焼ならし処理は、通常空冷を
行うが、空冷に準ずる冷却速度であれば、これに限定す
るものではない。この処理により、マトリックスに炭素
が拡散し、その硬さはHv250〜350が良い。Hv
250以下では、コア部からの破壊の危険性が増大し、
また、Hv350以上では、加工性の悪化を招くので望
ましくない。この状態で、マトリックスはパーライトと
なっているのが望ましい。
【0025】焼ならし処理後の状態での機械加工は容易
であるため、例えば、図1に示すようなトロイダル式無
段変速機の入出力部品である図1の入力ディスク1、出
力ディスク2および伝動ローラ3といった略必要な形状
に加工後、表層部硬化工程において、高周波焼入れ処理
を施す。高周波焼入れ処理は、目標とする焼入れ深さに
応じて、周波数、出力、時間を調節して行う。周波数
は、通常1〜400kHzで、目標焼入れ深さが浅いほ
ど高い周波数を選択する。出力および時間は、最高加熱
温度が1000℃を大きく上回らない条件で、所定の焼
入れ深さが得られるように調節するのが望ましい。この
表層部硬化工程により、表層部のビッカース硬さがHv
700〜850となるのが良い。Hv700以下では、
塑性変形に対する抵抗力が弱く、寿命が低下する。ま
た、Hv850以上では、鋼に不可避的に含まれる非金
属介在物による亀裂発生の危険性が増大するので、望ま
しくない。表層部は、表面から最大剪断応力振幅発生位
置の少なくとも1.5倍の深さまでであり、好ましく
は、表面から1〜4mmである。1.5倍に満たなけれ
ば、所望の面圧疲労強度が得られない。
【0026】高周波焼入れ処理後、必要に応じて多少の
仕上げ加工を施し、所望の高面圧疲労強度部材を得る。
なお、高周波焼入れ処理後の部材に、焼戻し処理を施す
のが望ましい。焼戻し処理は、150〜200℃程度で
再加熱する低温焼戻しが好ましい。焼戻しにより、靭性
や耐摩耗性を向上させることができる。
【0027】本発明の高面圧疲労強度部材および高面圧
疲労強度部材の製造方法は、図1に示すようなトロイダ
ル式無段変速機等に適用することができる。トロイダル
式無段変速機10は、入力軸11と一体で回転する入力
ディスク1を回転させ、それを伝動ローラ3を介して出
力軸12と一体で回転する出力ディスク2へ伝達するよ
うになっているため、その接触面は非常に高い面圧を受
けながら転動する。そのため、少なくとも、大きな押付
け荷重を受ける入力、および出力ディスク1、2と伝動
ローラ3との接触面に高周波焼入れを行う必要がある。
【0028】本発明は、トロイダル式無段変速機の他に
も、リングコーン式の無断変速機や大型の軸受といった
大きな接触面圧を受ける様々な転動部材に適用できる。
【0029】
【実施例】本願発明の実施例を比較例と共に、図、およ
び表を用いて説明する。
【0030】表1に本発明の実施例1、2および比較例
1〜9を示す。
【0031】
【表1】
【0032】実施例1、2および比較例1〜9は、上記
化学成分および熱処理条件で以下のように製造した。 (実施例1)実施例1で熱処理は、図3に示す条件で行
った。すなわち、はじめに780℃で4時間保持し、そ
の後720℃で4時間保持した後に徐冷する球状化焼な
まし処理を施した。次に、850℃で0.5時間保持
し、その後空冷する焼ならし処理を行った。この状態
で、転動試験片20、21の形状に粗加工した。その
後、周波数80kHz、出力40kWで10秒間、高周
波焼入れ処理を施し、急冷後、150℃で2時間保持す
る低温焼戻し処理を行った。こうして得られた部材に、
仕上げ加工を施し、転動試験片20および21を得た。 (実施例2)実施例2では、化学成分の割合を除いて、
実施例1と同様にして転動試験片20および21を得
た。 (比較例1)比較例1で熱処理は、850℃で0.5時
間保持し、その後空冷する焼ならし処理を行い、その
後、転動試験片20、21の形状に粗加工した。次に、
周波数80kHz、出力40kWで10秒間、高周波焼
入れ処理を施し、150℃で2時間保持する低温焼戻し
処理を行った。こうして得られた部材に、仕上げ加工を
施し、転動試験片20および21を得た。 (比較例2)比較例2では、化学成分の割合を除いて、
比較例1と同様にして転動試験片20および21を得
た。 (比較例3)比較例3では、化学成分の割合を除いて、
実施例1と同様にして転動試験片20および21を得
た。 (比較例4)比較例4では、化学成分の割合を除いて、
実施例1と同様にして転動試験片20および21を得
た。 (比較例5)比較例5で熱処理は、はじめに780℃で
4時間保持し、その後720℃で4時間保持した後に徐
冷する球状化焼なまし処理を施した。その後、転動試験
片20、21の形状に粗加工した。次に、850℃で
0.5時間保持し、その後急冷する焼入れ処理を行い、
170℃で1.5時間保持する低温焼戻し処理を行っ
た。こうして得られた部材に、仕上げ加工を施し、転動
試験片20および21を得た。 (比較例6)比較例6で熱処理は、890℃で0.5時
間保持し、その後空冷する焼ならし処理を行い、その
後、転動試験片20、21の形状に粗加工した。次に、
930℃で18時間浸炭焼入れ処理を施し、急冷後、1
50℃で2時間保持する低温焼戻し処理を行った。こう
して得られた部材に、仕上げ加工を施し、転動試験片2
0および21を得た。 (比較例7)比較例7で熱処理は、はじめに780℃で
4時間保持し、その後720℃で4時間保持した後に徐
冷する球状化焼なまし処理を行い、徐冷後、転動試験片
20、21の形状に粗加工した。その後、周波数80k
Hz、出力40kWで10秒間、高周波焼入れ処理を施
し、急冷後、150℃で2時間保持する低温焼戻し処理
を行った。こうして得られた部材に、仕上げ加工を施
し、転動試験片20および21を得た。 (比較例8)比較例8では、化学成分の割合を除いて、
比較例7と同様にして転動試験片20および21を得
た。 (比較例9)比較例9では、化学成分の割合を除いて、
比較例7と同様にして転動試験片20および21を得
た。 [評価]実施例1、2および比較例1〜9で得られた転
動試験片の表層部硬さ、コア硬さ、表層部の厚さ、およ
び有効硬化層深さを測定した。その結果を表2に示す。
【0033】尚、表層部およびコア部のビッカース硬さ
Hvの測定は、試料を切断した断面において、マイクロ
ビッカース硬さ計を用いて測定荷重1kgfで行った。
また、表層部の厚さはビッカース硬さHv700以上の
領域の厚さであり、有効硬化層深さは、表面からビッカ
ース硬さHv550までの深さである。
【0034】
【表2】
【0035】また、実施例1、2及び比較例1〜6につ
いて、図2に示すような転動試験片を用いて転動疲労試
験をしたとき、各転動試験片が破損するまでの回転回数
は表3に示す通りである。
【0036】何れの実施例および比較例でも、図2に示
す一方の転動試験片20は円板状で、直径60mm、幅
16mmで、転動面20aは半径50mmの円弧面とし
た。他方の転動試験片21は円板状で直径60mm、幅
16mmで、転動面21aは平坦面とした。このように
一方の転動試験片20の転動面20aを円弧面とし、他
方の転動試験片21の転動面21aを平坦面としたの
は、軸受の転動体及び無段変速機のローラの転動面は曲
率の大きい(曲率半径の小さい)球面の一部からなり、
軸受の内外輪及び無段変速機の入出力ディスクの転動面
は曲率の小さく(曲率半径の大きく)より平面に近い球
面の一部から成ることを考慮したものである。
【0037】
【表3】
【0038】ここで、「すべり率」とは、一方(通常駆
動側)の転動部材の転動距離に対する他方(通常被駆動
側)の転動部材の転動距離の割合をいい、駆動側の転動
部材の転動距離をL1とし、被駆動側の転動部材の転動
距離をL2とするとき、 すべり率=(L1−L2)/L1 で表わされる。また、ヘルツ面圧Pmaxは、加重Fと Pmax∝F1/3 の関係にある。
【0039】表2において、実施例1および2では、表
層部硬さがHv700〜800、コア部硬さがHv28
0〜320、表層部の厚さが3.0mmおよび3.3m
m、と3つの値が適切で、バランスのとれた優れた特性
が得られた。そのため、これらの転動試験片を用いて転
動疲労試験を行った場合、比較例1〜6よりも破損寿命
が大幅に延長した。
【0040】また、比較例1は、全体的に硬さが低く、
実際に転動疲労試験を行った場合、その寿命はかなり短
いものであった。比較例2,3および7,8,9は、表
層部硬さは高いものであっても、コア部硬さが低く、ま
た、表層部の厚さも浅いものであったため、部材の使用
に当たってはコア部破壊の可能性が高い。比較例2,3
の転動試験片を用いて転動疲労試験を行うと、破損まで
の寿命は短いことが分かった。比較例4は、Cr量が多
いことにより、炭化物の凝集や形状の劣化を招き、寿命
が短かった。比較例5は、全体に焼入れを行ったため、
全体的に硬さの高いものとなったが、その破損寿命は長
くはなかった。
【0041】以上の結果より、実施例1および2で示さ
れた本発明の高面圧疲労強度部材および高面圧疲労強度
部材の製造方法は、高い面圧疲労強度をもち、破損寿命
が長く優れた部材を得ることができるものである。
【0042】
【発明の効果】以上に述べたように本第1発明の高面圧
疲労強度部材は、Cを0.9〜1.2%、Crを0.3
〜1.5%含み、表面から最大剪断応力振幅発生位置の
少なくとも1.5倍の深さまでの表層部のビッカース硬
さが700〜850で、内部のコア部のビッカース硬さ
が250〜350としたため、高い面圧(接触圧力)に
よる転動部材の内部に発生する亀裂の発生が低減され、
破損寿命が長く、面圧疲労強度が高い。
【0043】本第2発明の高面圧疲労強度部材の製造方
法は、Cを0.9〜1.2%、Crを0.3〜1.5%
含む合金鋼部材に、微細な析出物を析出させる析出工程
と、焼ならし処理によりビッカース硬さを250〜35
0とする焼ならし工程と、高面圧を受ける表面から最大
剪断応力振幅発生位置の少なくとも1.5倍の深さまで
の表層部のビッカース硬さを700〜850とする表層
部硬化工程と、を行うことにより、破損寿命が長く、高
い面圧疲労強度をもつ部材が得られる。また、この製法
により、低コスト化を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の高面圧疲労強度部材および高面圧疲労
強度部材の製造方法がトロイダル式無段変速機に適用さ
れた場合の一例を示す断面図である。
【図2】本発明に係る転動試験片を示す正面図である。
【図3】本発明の高面圧疲労強度部材および高面圧疲労
強度部材の製造方法の実施例における熱処理工程を示す
説明図である。
【符号の説明】
1…入力ディスク 2…出力ディスク 3
…伝動ローラ 11…入力軸 12…出力軸 20,21…転動試験片 20a,21a…転動面
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き Fターム(参考) 3J051 AA03 BA03 BD02 BE09 CA05 CB07 EC02 EC03 EC08 4K042 AA23 AA25 BA04 CA06 DA01 DA02 DA03 DA04 DB01 DC02 DC03 DE02 DE03 DE04

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】主として3μm以下の析出炭化物を含む金
    属組織を有する、Cを0.9〜1.2%、Crを0.3
    〜1.5%含む合金鋼からなる部材であって、高面圧を
    受ける表面から最大剪断応力振幅発生位置の少なくとも
    1.5倍の深さまでの表層部のビッカース硬さが700
    〜850で、内部のコア部のビッカース硬さが250〜
    350であることを特徴とする高面圧疲労強度部材。
  2. 【請求項2】前記合金鋼は、Mnを0.4〜1.5%含
    む請求項1記載の高面圧疲労強度部材。
  3. 【請求項3】前記合金鋼は、Siを0.2〜2.0%含
    む請求項1および2記載の高面圧疲労強度部材。
  4. 【請求項4】前記コア部のマトリックス組織は、パーラ
    イトである請求項1記載の高面圧疲労強度部材。
  5. 【請求項5】前記表層部の厚さは、1〜4mmである請
    求項1記載の高面圧疲労強度部材。
  6. 【請求項6】Cを0.9〜1.2%、Crを0.3〜
    1.5%含む合金鋼部材に、球状化焼なまし処理により
    主として3μm以下の析出炭化物を含む金属組織とする
    析出工程と、焼ならし処理によりビッカース硬さを25
    0〜350とする焼ならし工程と、高周波焼入れ処理に
    より高面圧を受ける表面から最大剪断応力振幅発生位置
    の少なくとも1.5倍の深さまでの表層部のビッカース
    硬さを700〜850とする表層部硬化工程と、を行う
    高面圧疲労強度部材の製造方法。
  7. 【請求項7】前記合金鋼部材は、Mnを0.4〜1.5
    %含む請求項6記載の高面圧疲労強度部材の製造方法。
  8. 【請求項8】前記合金鋼部材は、Siを0.2〜2.0
    %含む請求項6および7記載の高面圧疲労強度部材の製
    造方法。
  9. 【請求項9】前記表層部の厚さは、1〜4mmである請
    求項6記載の高面圧疲労強度部材の製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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