JP2003321728A - 超大入熱溶接熱影響部の靭性に優れた溶接用高張力鋼およびその製造方法 - Google Patents

超大入熱溶接熱影響部の靭性に優れた溶接用高張力鋼およびその製造方法

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JP2003321728A
JP2003321728A JP2002125530A JP2002125530A JP2003321728A JP 2003321728 A JP2003321728 A JP 2003321728A JP 2002125530 A JP2002125530 A JP 2002125530A JP 2002125530 A JP2002125530 A JP 2002125530A JP 2003321728 A JP2003321728 A JP 2003321728A
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Genichi Shigesato
元一 重里
Masaaki Sugiyama
昌章 杉山
Akihiko Kojima
明彦 児島
Ryuji Uemori
龍治 植森
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 超大入熱溶接熱影響部の靭性に優れた溶接用
高張力鋼およびその製造方法を提供すること。 【解決手段】 質量%で、C:0.04〜0.2%、S
i:0.02〜0.4%、Mn:0.6〜2%、P:
0.02%以下、S:0.001〜0.008%、A
l:0.0005〜0.01%、Ti:0.005〜
0.025%、Ca:0.0005〜0.01%、M
g:0.0001〜0.01%、N:0.002〜0.
008%、O:0.0005〜0.008%を含有し、
残部がFeおよび不可避的不純物よりなる鋼であって、
Mg含有酸化物を内包する粒子径が0.01〜0.5μ
mのTiNが10000個/mm2以上存在し、かつ、C
aを1〜49原子%含有する粒子径が0.1〜10μm
のMn硫化物を10〜400個/mm2含む超大入熱溶接
熱影響部の靭性に優れた溶接用高張力鋼。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、高層建築のボック
ス柱の組み立てで適用されるエレクトロスラグ溶接など
の超大入熱溶接における熱影響部(以下、HAZと称す
る)靭性に優れた溶接用高張力鋼およびその製造方法に
関するものである。
【0002】
【従来の技術】最近の建築構造物の高層化に伴い、鋼製
柱が大型化し、これに使用される鋼材の板厚も増してき
た。このような板厚の大きな鋼を高能率で溶接するため
に、入熱量の大きなエレクトロスラグ溶接が広く用いら
れるようになってきた。その際の入熱量は500〜15
00kJ/cmであり、このような超大入熱溶接では、HA
Zは1350℃以上の高温に長時間さらされるためオー
ステナイト粒の粗大化が著しく、HAZの高靭性を確保
することが困難であった。最近の大地震を契機に、建築
構造物の信頼性確保が大きな課題となってきており、超
大入熱溶接におけるHAZの靭性向上が望まれている。
【0003】従来のHAZ靭性向上技術は大きく二つに
分類される。一つはピン止め粒子によるオーステナイト
粒の粗大化抑制技術であり、他の一つはオーステナイト
粒内フェライト変態を利用した有効結晶粒微細化技術で
ある。オーステナイト粒の粗大化抑制に有効な粒子とし
て、TiNやMg含有酸化物がある。例えば、「鉄と
鋼」vol.61、No.11、68頁には、TiNの微細分
散によりオーステナイト粒粗大化が抑制されることが示
されている。また、Mg含有酸化物は1350℃以上の
高温でも安定であり、超大入熱溶接のHAZにおけるオ
ーステナイト粒の粗大化抑制に適用可能であることが、
特開平9−157787号公報に示されている。しか
し、オーステナイト粒の粗大化抑制だけでは超大入熱溶
接におけるHAZ靭性向上は十分でなく、粒内フェライ
ト変態を利用した有効結晶粒微細化技術を併用する必要
がある。
【0004】前記特開平9−157787号公報では、
粒内フェライト変態を起こさせる目的でTi含有酸化物
とMnSの複合体を利用することを開示している。しか
しながら、オーステナイト粒粗大化抑制のためにMgを
添加した鋼の場合、SがMgと結合するためMnSが生
成しないか、あるいは少量しか生成せず、粒内フェライ
ト変態を発生させる能力が十分でない。すなわち、従来
技術では、オーステナイト粒の粗大化を抑制と粒内フェ
ライト変態の促進を両立させることが困難であった。そ
の結果、超大入熱溶接におけるHAZ靭性向上が十分で
なかった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、以上のよう
な問題点を解決し、高層建築のボックス柱の組み立てで
適用されるエレクトロスラグ溶接などの超大入熱溶接に
おけるHAZ靭性に優れた溶接用高張力鋼を提供するこ
とをその課題としている。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明は、鋼中にMg含
有酸化物を内包する粒子径が0.01〜0.5μmのT
iNを10000個/mm2以上含ませ、かつ、Caを1
〜49原子%含有する粒子径が0.1〜10μmのMn
硫化物を10〜400個/mm2含ませることで、オース
テナイト粒粗大化を抑制し、粒内フェライト変態を促進
し、超大入熱溶接熱影響部の靭性に優れた溶接用高張力
鋼を得るものであり、その要旨とするところは以下の通
りである。
【0007】(1) 質量%で、C :0.04〜0.
2%、Si:0.02〜0.4%、Mn:0.6〜2
%、P :0.02%以下、S :0.001〜0.0
08%、Al:0.0005〜0.01%、Ti:0.
005〜0.025%、Ca:0.0005〜0.01
%、Mg:0.0001〜0.01%、N :0.00
2〜0.008%、O :0.0005〜0.008%
を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物よりなる鋼
であって、Mg含有酸化物を内包する粒子径が0.01
〜0.5μmのTiNが10000個/mm2以上存在
し、かつ、Caを1〜49原子%含有する粒子径が0.
1〜10μmのMn硫化物を10〜400個/mm2含む
ことを特徴とする超大入熱溶接熱影響部の靭性に優れた
溶接用高張力鋼。 (2) 前記Mn硫化物が、Ca、およびMg、Cu、
Cr、Nb、Tiのうちの1種または2種以上を1〜4
9原子%含有する(1)記載の超大入熱溶接熱影響部の
靭性に優れた溶接用高張力鋼。 (3) 質量%で、C :0.04〜0.2%、Si:
0.02〜0.4%、Mn:0.6〜2%、P :0.
02%以下、S :0.001〜0.008%、Al:
0.0005〜0.01%、Ti:0.005〜0.0
25%、Ca:0.0005〜0.01%、Mg:0.
0001〜0.01%、N :0.002〜0.008
%、O :0.0005〜0.008%を含有し、残部
がFeおよび不可避的不純物よりなる鋼であって、Mg
含有酸化物を内包する粒子径が0.01〜0.5μmの
TiNが10000個/mm2以上存在し、かつ、Mgを
1〜49原子%含有する粒子径が0.1〜10μmのM
n硫化物を10〜400個/mm2含むことを特徴とする
超大入熱溶接熱影響部の靭性に優れた溶接用高張力鋼。 (4) 前記Mn硫化物が、Mg、およびCu、Cr、
Nb、Tiのうちの1種または2種以上を1〜49原子
%含有する(3)記載の超大入熱溶接熱影響部の靭性に
優れた溶接用高張力鋼。 (5) 前記鋼成分が、質量%で、さらに、Cu:1.
5%以下、Ni:1.5%以下、Mo:1%以下、C
r:1%以下、Nb:0.05%以下、V:0.05%
以下、B:0.002%以下、Zr:0.03%以下、
REM:0.003%以下の1種または2種以上を含有
することを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載
の超大入熱溶接熱影響部の靭性に優れた溶接用高張力
鋼。 (6) (1)〜(5)のいずれかに記載の超大入熱溶
接熱影響部の靭性に優れた溶接用高張力鋼の製造方法で
あって、溶鋼にCaを添加してから鋳型に注入するまで
の時間T(分)が、4<T−1000([Ca]+[M
g]−[O]−[S])<120([Ca]:質量%で
あらわしたCa濃度、[Mg]:質量%であらわしたM
g濃度、[O]:質量%であらわしたO濃度、[S]:
質量%であらわしたS濃度)を満たすことを特徴とする
超大入熱溶接熱影響部の靭性に優れた溶接用高張力鋼の
製造方法。
【0008】
【発明の実施の形態】以下、本発明について詳細に説明
する。発明者は、超大入熱溶接HAZの組織と靭性に関
する詳細な研究を実施した結果、Caを1〜49原子%
含有する粒子径が0.1〜10μmのMn硫化物が粒内
フェライト変態発生を著しく促進することを見出し、本
発明を完成した。
【0009】オーステナイト粒粗大化を抑制するために
はMg添加が効果的である。しかしながら、Mgを添加
した場合、溶鋼中でのS濃度が低下し、冷却途中でのM
nS析出が抑制される。一方、粒内フェライト変態を起
こさせるためには、冷却中にMnSを析出させることが
効果的である。なぜならば、冷却中のMnS析出はMn
Sの周囲にMn欠乏層を形成し、粒内フェライト変態を
促進させるからである。従って、Mgを添加した場合、
冷却途中でのMnS析出が抑制されるため、粒内フェラ
イト変態がほとんど起こらなくなる。
【0010】そこで発明者らは、MnS析出以外の手段
で粒内フェライト変態を促進させる方法を検討した。実
験を繰り返した結果、鋼中にCaMnSが存在する場合
に、CaMnSの周囲にMn欠乏層が形成されており、
粒内フェライト変態を促進させることが可能であること
を見出した。CaMnSの周囲にMn欠乏層が形成され
るメカニズムの詳細はわかっていないが、発明者らは次
のように考えている。最初にCaSが溶鋼中で晶出し、
その後凝固過程および冷却過程においてCaS中にMn
が吸収され、CaSはMnを含有したCaMnSとな
り、周囲にはMn欠乏層が形成される。その結果、粒内
フェライト変態が促進される。ただし、CaMnS粒子
の大きさが小さい場合、粒内フェライト変態は促進され
なかった。この原因としては次のように考えている。C
aS粒子のサイズが小さい場合、CaS中へMnが吸収
されないか、あるいは吸収されたとしてもMn吸収量が
少ないため、粒内フェライト変態に十分な大きさのMn
欠乏層が形成されない。
【0011】CaS粒子がMnを吸収し、粒内フェライ
ト変態を促進させるのに十分な大きさのMn欠乏層を形
成するため、Mn吸収後のCaMnS粒子の大きさは
0.1μm以上でなければならない。CaMnS粒子は
Ca酸化物粒子やMg酸化物粒子に複合していることが
多いが、この場合のCaMnS粒子の大きさとは、Ca
MnS粒子と同じ体積の球の直径に換算したものであ
る。CaSにMnが吸収されてできたCaMnS粒子の
大きさが10μm超になると、粒子が破壊起点となり靱
性が劣化するため、CaMnS粒子の大きさは10μm
以下とした。
【0012】溶鋼中で晶出するCaS粒子の大きさを十
分に大きくし、Mn吸収後のCaMnSの大きさを0.
1μm以上とするためには、Ca添加から溶鋼を鋳型へ
注入するまでの時間を長くする必要がある。この時間を
T(分)とした場合、T−1000([Ca]+[M
g]−[O]−[S])>4を満たす場合にMn吸収後
のCaMnS粒子の大きさが0.1μm以上になった。
T−1000([Ca]+[Mg]−[O]−[S])
≧120の場合、Mn吸収後のCaMnS粒子の大きさ
は10μm超となる。従って、4<T−1000([C
a]+[Mg]−[O]−[S])<120を満たす製
造条件が望ましい。ここで[Ca]は質量%であらわし
たCa濃度、[Mg]は質量%であらわしたMg濃度、
[O]は質量%であらわしたO濃度、[S]は質量%で
あらわしたS濃度である。
【0013】また、粒内フェライト変態を促進させるC
aMnS粒子の密度が10個/mm2未満では十分なHA
Z靭性向上を達成できない。従って、CaMnS粒子密
度の下限を10個/mm2とした。一方、CaMnS粒子
密度が400個/mm2を超えると延性低下を示すため、
CaMnS粒子密度の上限を400個/mm2とした。こ
こで、CaMnS粒子密度の測定は、製造した鋼の断面
をEPMA分析装置(電子プローブマイクロアナライザ
ー)で元素マッピングを行い、粒子個数を計測し、粒子
密度に換算した。
【0014】さらには、CaSと同様にCa、およびM
g、Cu、Cr、Nb、Tiのうちの1種または2種以
上を含有する硫化物もMnを吸収し、粒内フェライト変
態促進効果がある。また、Mgのみを含有する硫化物も
Mnを吸収し、粒内フェライト変態促進効果がある。ま
た、さらには、Mg、およびCu、Cr、Nb、Tiの
うちの1種または2種以上を含有する硫化物もMnを吸
収し、粒内フェライト変態促進効果がある。
【0015】オーステナイト粒粗大化抑制のためには、
Mg含有酸化物を内包する粒子径が0.01〜0.5μ
mのTiNが10000個/mm2以上存在することが望
ましく、本発明の手法では、Mgを適量添加しているた
め、前記条件の粒子を鋼中に分散させることが可能であ
る。次に、成分元素の限定理由を示す。なお、%は質量
%を表す。
【0016】C:0.04%未満では母材強度が確保で
きないので下限を0.04%とした。また、0.2%を
超えると脆性破壊起点となるセメンタイトが増加するた
め靱性が低下する。このため上限を0.2%とした。
【0017】Si:0.02%未満では母材強度が確保
できないので下限を0.02%とした。また、0.4%
を超えるとHAZ中に島状マルテンサイトが生成し、靱
性が低下する。このため上限を0.4%とした。
【0018】Mn:粒内フェライト変態を発生させるに
はMnが必須である。0.6%未満では粒内フェライト
変態率が著しく減少するため、0.6%を下限とした。
また、2%を超えると粒内フェライト変態が発生して
も、母材の靱性劣化が激しく、良好なHAZ靱性が得ら
れない。従って2%を上限とした。
【0019】P:粒界脆化をもたらすため低い方が望ま
しい。0.02%を超えると靱性低下が顕著になるため
0.02%以下とした。
【0020】S:Sは粒内フェライト変態を促進させる
ために必須である。0.001%未満では粒内フェライ
ト変態促進効果がほとんどなくなるため、下限を0.0
01%とした。ただし、0.008%を超えると板厚方
向の延性低下が顕著となるため、上限を0.008%と
した。
【0021】Al:Alは酸素との親和力が強く、Mg
含有酸化物やCa含有酸化物の形成を抑制するため低い
方が望ましい。0.01%を超えるとMgおよびCa含
有酸化物の生成が著しく低下するため、0.01%以下
とした。ただし、十分な酸素濃度が得られた状態で、酸
素を使いきらない程度のAl添加は靱性向上に効果があ
る。従って、下限値を0.0005%とした。
【0022】Ti:TiはTiNを生成し、オーステナ
イト粒粗大化を抑制するために必須である。0.005
%未満ではTiN密度が低すぎるため0.005%を下
限とした。逆に0.025%を超えると、破壊起点とな
る粗大なTi酸化物を生成し靱性低下をもたらす。従っ
て上限を0.025%した。
【0023】N:NもTiNを析出するために必要であ
る。Nが0.002%未満では十分なTiNが析出しな
いため、下限を0.002%とした。0.008%を超
えるとフェライト鋼中に固溶して靱性低下をもたらすた
め、上限を0.008%とした。
【0024】Mg:MgはMg含有酸化物を生成し、T
iNの発生核となり、TiNを微細分散させる効果を持
つ。0.0001%未満では酸化物密度が低すぎるため
0.0001%を下限とした。逆に0.01%を超える
と、酸化物が多くなりすぎて延性低下をもたらす。従っ
て、上限を0.01%した。
【0025】O:酸化物を生成するために必要である。
0.0005%未満では酸化物の個数が不足するため、
下限を0.0005%とした。逆に0.008%を超え
ると、酸化物が多くなりすぎて延性低下をもたらす。従
って、上限を0.008%とした。
【0026】Ca:粒内フェライト変態促進に必須であ
る。適当な粒子密度を実現するため0.0005%以上
含有することが望ましい。逆に0.01%を超えると、
酸化物が多くなりすぎて延性低下をもたらす。従って、
上限を0.01%した。
【0027】また、強度および靭性を向上するために、
以下の元素をさらに含有することが望ましい。 Cu、Ni:焼入れ性を向上させ、強度向上に効果があ
る。1.5%超含有すると、強度が高くなり過ぎて、靭
性が劣化するため上限を1.5%とした。 Mo、Cr:強度向上に効果がある。1%超含有する
と、強度が高くなり過ぎて、靭性が劣化するため上限を
1%とした。 Nb、V:強度および靭性向上に効果がある。0.05
%超含有すると、効果がほとんど変化しなくなるため、
上限を0.05%とした。 B:粒界からのフェライト生成を抑制し、粒内フェライ
ト生成を促進するため、靭性向上に効果がある。0.0
02%超含有すると、効果がほとんど変化しなくなるた
め、上限を0.002%とした。 Zr:粒内フェライト変態促進、オーステナイト粒粗大
化抑制に効果がある。0.03%超含有すると、効果が
ほとんど変化しなくなるため、上限を0.03%とし
た。 REM:粒内フェライト変態促進、オーステナイト粒粗
大化抑制に効果がある。0.003%超含有すると、効
果がほとんど変化しなくなるため、上限を0.003%
とした。
【0028】
【実施例】転炉を用いてCaを添加してから溶鋼を取鍋
に注入するまでの時間T(分)を変えて鋼を溶製し、連
続鋳造により厚さ240mmのスラブを製造した。製造し
た鋼の化学組成を表1に示す。これらの鋼を用いて、図
1に示すエレクトロスラグ溶接により溶接試験体を作成
した。溶接の電流は380A、電圧は46V、速度は
1.14cm/分とした。入熱は920kJ/cmである。図
1に示すように、溶接融合線および溶接融合線から3mm
の位置がノッチ位置に一致するようにシャルピー試験片
を採取した。シャルピー衝撃試験を0℃で行い、靱性を
評価した結果を表2に示す。
【0029】また、エレクトロスラグ溶接部融合線近傍
のHAZの光学顕微鏡組織観察を行い、オーステナイト
粒径と粒内変態フェライト分率を測定した。さらに、M
g酸化物を内包する0.01〜0.5μmのTiN粒
子、および、Ca、および/またはMg、Cu、Cr、
Nb、Tiのうちの1種または2種以上を1〜49原子
%含有する粒子径が0.1〜10μmのMn硫化物の密
度をEPMA分析装置により調べた。調べた結果を表2
に示す。
【0030】表2から明らかなように、本発明鋼No.
1〜15は比較鋼No.16〜30に比べて超大入熱溶
接におけるHAZ靱性が優れている。本発明鋼では、M
g含有酸化物を内包する0.01〜0.5μmのTiN
を10000個/mm2以上含み、かつ、Ca、および/
またはMg、Cu、Cr、Nb、Tiのうちの1種また
は2種以上を1〜49原子%含有する粒子径が0.1〜
10μmのMn硫化物を10〜400個/mm2含むた
め、オーステナイト粒径が小さく、かつ、粒内変態フェ
ライト分率が著しく高いことが判る。
【0031】一方、比較鋼No.16〜30において
は、Mg含有酸化物を内包する0.01〜0.5μmの
TiNを10000個/mm2以上含むため、オーステナ
イト粒径は小さいが、Ca、および/またはMg、C
u、Cr、Nb、Tiのうちの1種または2種以上を1
〜49原子%含有する粒子径が0.1〜10μmのMn
硫化物が存在しないかあるいは10個/mm2未満の分布
密度であるため、粒内変態フェライト分率は低い。この
ため、HAZ靱性はそれほど良くない。
【0032】
【表1】
【0033】
【表2】
【0034】
【表3】
【0035】
【発明の効果】本発明は、高層建築のボックス柱の組み
立てで適用されるエレクトロスラグ溶接などの500kJ
/cm以上の超大入熱溶接におけるHAZ部で、粒内変態
フェライト分率を著しく高くし、オーステナイト粒径を
小さくすることができ、その結果HAZ靭性に優れた溶
接用高張力鋼を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例におけるエレクトロスラグ溶接条件を示
す模式図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 児島 明彦 千葉県君津市君津1番地 新日本製鐵株式 会社君津製鐵所内 (72)発明者 植森 龍治 千葉県富津市新富20−1 新日本製鐵株式 会社技術開発本部内 Fターム(参考) 4K013 BA14

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 質量%で、 C :0.04〜0.2%、 Si:0.02〜0.4%、 Mn:0.6〜2%、 P :0.02%以下、 S :0.001〜0.008%、 Al:0.0005〜0.01%、 Ti:0.005〜0.025%、 Ca:0.0005〜0.01%、 Mg:0.0001〜0.01%、 N :0.002〜0.008%、 O :0.0005〜0.008%を含有し、 残部がFeおよび不可避的不純物よりなる鋼であって、 Mg含有酸化物を内包する粒子径が0.01〜0.5μ
    mのTiNが10000個/mm2以上存在し、かつ、C
    aを1〜49原子%含有する粒子径が0.1〜10μm
    のMn硫化物を10〜400個/mm2含むことを特徴と
    する超大入熱溶接熱影響部の靭性に優れた溶接用高張力
    鋼。
  2. 【請求項2】 前記Mn硫化物が、Mg、Cu、Cr、
    Nb、Tiのうちの1種または2種以上とCaを合わせ
    て1〜49原子%含有する請求項1記載の超大入熱溶接
    熱影響部の靭性に優れた溶接用高張力鋼。
  3. 【請求項3】 質量%で、 C :0.04〜0.2%、 Si:0.02〜0.4%、 Mn:0.6〜2%、 P :0.02%以下、 S :0.001〜0.008%、 Al:0.0005〜0.01%、 Ti:0.005〜0.025%、 Ca:0.0005〜0.01%、 Mg:0.0001〜0.01%、 N :0.002〜0.008%、 O :0.0005〜0.008%を含有し、 残部がFeおよび不可避的不純物よりなる鋼であって、 Mg含有酸化物を内包する粒子径が0.01〜0.5μ
    mのTiNが10000個/mm2以上存在し、かつ、M
    gを1〜49原子%含有する粒子径が0.1〜10μm
    のMn硫化物を10〜400個/mm2含むことを特徴と
    する超大入熱溶接熱影響部の靭性に優れた溶接用高張力
    鋼。
  4. 【請求項4】 前記Mn硫化物が、Cu、Cr、Nb、
    Tiのうちの1種または2種以上とMgを合わせて1〜
    49原子%含有する請求項3記載の超大入熱溶接熱影響
    部の靭性に優れた溶接用高張力鋼。
  5. 【請求項5】 前記鋼成分が、質量%で、さらに、C
    u:1.5%以下、Ni:1.5%以下、Mo:1%以
    下、Cr:1%以下、Nb:0.05%以下、V:0.
    05%以下、B:0.002%以下、Zr:0.03%
    以下、REM:0.003%以下の1種または2種以上
    を含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに
    記載の超大入熱溶接熱影響部の靭性に優れた溶接用高張
    力鋼。
  6. 【請求項6】 請求項1〜5のいずれかに記載の超大入
    熱溶接熱影響部の靭性に優れた溶接用高張力鋼の製造方
    法であって、溶鋼にCaを添加してから鋳型に注入する
    までの時間T(分)が、4<T−1000([Ca]+
    [Mg]−[O]−[S])<120([Ca]:質量
    %であらわしたCa濃度、[Mg]:質量%であらわし
    たMg濃度、[O]:質量%であらわしたO濃度、
    [S]:質量%であらわしたS濃度)を満たすことを特
    徴とする超大入熱溶接熱影響部の靭性に優れた溶接用高
    張力鋼の製造方法。
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