JP2003320988A - 船舶甲板上のハッチカバー構造体およびその製造方法 - Google Patents

船舶甲板上のハッチカバー構造体およびその製造方法

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JP2003320988A
JP2003320988A JP2002133633A JP2002133633A JP2003320988A JP 2003320988 A JP2003320988 A JP 2003320988A JP 2002133633 A JP2002133633 A JP 2002133633A JP 2002133633 A JP2002133633 A JP 2002133633A JP 2003320988 A JP2003320988 A JP 2003320988A
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Gosaburo Sugiyama
伍三郎 杉山
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Harada Sangyo Co Ltd
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Harada Sangyo Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 簡単な作業で、ハッチカバーの側壁部底面と
甲板との間の空隙寸法や天井部の水平度を適正値に調節
する。 【解決手段】 天井部10、側壁部15、フランジ部2
0、三角支持板30を有するハッチカバー本体1を用意
する。上甲板110のハッチ開口部Hの周囲近傍の甲板
上の複数箇所に、4枚の発泡スチロール板を立てること
により型枠となる堤部50を形成する。フランジ部20
の下面の、個々の堤部50に対応する部分に、鋼材製ブ
ロックからなる上部スツール45を針金で仮止めする。
この状態で、ハッチカバー本体1をクレーンで吊して徐
々に降下させ、各上部スツール45の下半分を各堤部5
0内に挿入させる。側壁部15の底面各所にジャッキを
挿入し、上甲板110との間の空隙寸法を最適値に調節
した後、各堤部50内に樹脂を流し込み硬化させる。最
後に、針金を切断し、仮止めを解除する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、船舶甲板上のハッ
チ開口部を覆うためのハッチカバー構造体に関し、甲板
上に設けられたハッチ開口部にハッチカバーを被せて蓋
をする構造をもった船舶に広く利用することが可能な技
術である。
【0002】
【従来の技術】貨物船などの船舶では、船体内の収容庫
から積み荷を出し入れするために、甲板上にハッチが設
けられている。このハッチは、ハッチカバーを被せるこ
とにより蓋がされる。このハッチの開口部の大きさは、
個々の船舶によって様々であるが、一般的な貨物船で
は、一辺が数m〜数10mにも及び、鋼材からなるハッ
チカバーは、数10〜数100トンもの重量になる。ま
た、貨物船では、このハッチカバーの上面にも、コンテ
ナなどの積み荷を積載することが多く、ハッチカバーを
甲板上に支持する支持構造体には、極めて大きな荷重が
加わることになる。
【0003】一般的なハッチカバーは、ハッチ開口部の
上方を覆う天井部と、この天井部を支持する側壁部と、
を有しているが、通常、側壁部を直接甲板上に載置する
構造は採らない。これは、航海中の船舶の甲板には、常
に動的な撓みや捩じれが生じるためである。そこで、通
常は、側壁部から外側へ張り出すフランジ部を形成し、
甲板上に設けられたスツール部によって、このフランジ
部を支持することにより、ハッチカバー全体を甲板上に
載置する構造を採る。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】上述したように、航海
中の船舶の甲板には、常に動的な撓みや捩じれが生じて
おり、甲板上面は、決して幾何学的な平面を維持するわ
けではない。このため、ハッチカバーの側壁部底面と甲
板との間には、通常、所定の空隙が設けられる。別言す
れば、側壁部底面が甲板から若干浮いた状態になるよう
に、スツール部によってフランジ部が支持されることに
なる。この側壁部底面と甲板との間の空隙寸法には、個
々の船舶ごとに定まる適正値がある。この空隙寸法が適
正値より小さくなると、航海中に甲板が撓んだときに側
壁部底面と甲板上面とが接触して衝撃が生じることにな
り好ましくない。逆に、空隙寸法が適正値より大きくな
ると、甲板上に打ち寄せた海水がハッチ開口部へ大量に
流入する要因になり好ましくない。このため、船舶にハ
ッチカバー構造体(ハッチカバー本体とその支持構造
体)を取り付ける製造工程では、この空隙寸法がいずれ
の箇所においてもできるだけ適正値に維持されるように
位置調節を行う必要がある。また、コンテナ船の場合、
通常、ハッチカバーの上に更に荷物を積載することにな
るため、ハッチカバー本体の天井部ができるだけ水平に
なるような位置調節も必要になる。しかしながら、実際
の船舶は、必ずしも設計どおりの寸法で製造されるもの
ではなく、各部にそれぞれ多少の寸法誤差が生じる。し
たがって、空隙寸法や水平度がいずれの箇所についても
適正値となるような設定を行うためには、細かな補正作
業が必要になり、ハッチカバーの位置や姿勢の調節のた
めに多大な労力が必要になる。
【0005】そこで本発明は、比較的簡単な作業で、ハ
ッチカバーの位置や姿勢を適正に調節することが可能な
ハッチカバー構造体を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】(1) 本発明の第1の態
様は、船舶甲板上のハッチ開口部を覆うためのハッチカ
バー構造体において、ハッチ開口部の上方を覆う天井部
と、この天井部を支持する側壁部と、この側壁部から外
側へ張り出したフランジ部と、を有するハッチカバー本
体と、下面がハッチ開口部の周囲近傍の甲板上に固定さ
れ、上面がフランジ部の下面に摺動可能な態様で接触
し、フランジ部を甲板上に支持する機能を果たすスツー
ル部と、を設け、スツール部を、フランジ部の下面に接
触するための金属材料層と、この金属材料層の下方に配
置された樹脂材料層と、の少なくとも2層構造によって
構成するようにしたものである。
【0007】(2) 本発明の第2の態様は、船舶甲板上
のハッチ開口部を覆うためのハッチカバー構造体の製造
方法において、ハッチ開口部の上方を覆う天井部と、こ
の天井部を支持する側壁部と、この側壁部から外側へ張
り出したフランジ部と、を有するハッチカバー本体を用
意する本体準備段階と、ハッチ開口部の周囲近傍に、フ
ランジ部を支持するための複数の支持領域を定義し、個
々の支持領域の周囲を囲うようにそれぞれ堤部を形成す
る堤部形成段階と、フランジ部の下面の各支持領域に対
応する部分に、各支持領域よりもひとまわり小さな断面
を有する上部スツールを仮止めする仮止段階と、上部ス
ツールが仮止めされた状態のハッチカバー本体を、ハッ
チ開口部の上方に配置し、各上部スツールを各堤部の内
側に挿入した状態で、ハッチカバー本体の位置もしくは
姿勢を調節する調節段階と、調節が完了した状態で、各
堤部内に液状の樹脂を流し込んで硬化させ、各上部スツ
ールと甲板との間に形成された硬化樹脂層により下部ス
ツールを形成し、上部スツールを下部スツールを介して
甲板上に固定するスツール固定段階と、各上部スツール
の仮止めを解除し、各上部スツールの上面によりフラン
ジ部の下面が摺動可能な態様で支持されるようにする仮
止解除段階と、を行うようにしたものである。
【0008】(3) 本発明の第3の態様は、上述の第2
の態様に係るハッチカバー構造体の製造方法において、
樹脂が硬化した後に堤部を除去する堤部除去段階を更に
行うようにしたものである。
【0009】(4) 本発明の第4の態様は、上述の第2
または第3の態様に係るハッチカバー構造体の製造方法
において、ハッチカバー本体および上部スツールを金属
材料により構成するようにしたものである。
【0010】(5) 本発明の第5の態様は、上述の第2
〜第4の態様に係るハッチカバー構造体の製造方法にお
いて、上部スツールをフランジ部の下面に対して針金を
用いて仮止めし、この針金を切断することにより仮止め
の解除を行うようにしたものである。
【0011】(6) 本発明の第6の態様は、上述の第2
〜第5の態様に係るハッチカバー構造体の製造方法にお
いて、上部スツールの側面周囲に緩衝用テープを貼り付
けてから液状の樹脂を流し込むようにし、上部スツール
の側面に対して硬化樹脂層が緩衝用テープを介して接触
するようにしたものである。
【0012】(7) 本発明の第7の態様は、上述の第2
〜第6の態様に係るハッチカバー構造体の製造方法にお
いて、調節段階において、甲板とフランジ部との間にジ
ャッキを挿入し、このジャッキを操作することにより、
側壁部の底面と甲板との間の間隔または天井部の水平度
を調節するようにしたものである。
【0013】
【発明の実施の形態】以下、本発明を図示する実施形態
に基づいて説明する。
【0014】<<< §1.従来のハッチカバー構造体
>>> 図1は、従来の一般的な貨物船100(コンテナ船等も
含む)を上方から見た平面図である。ここに示す例で
は、上甲板110には、8組のハッチカバー101〜1
08が配置されており、その後方には、ブリッジ120
が設けられている。各ハッチカバー101〜108を、
クレーンなどで吊り上げて取り外すと、上甲板110に
はハッチ開口部が露出した状態となり、このハッチ開口
部を介して、船体内の収容庫から積み荷を出し入れする
ことができる。入港中の貨物船100への積み荷は、こ
のハッチ開口部から船体内の収容庫へと積み込まれる。
積み込みが完了した後、ハッチ開口部には、ハッチカバ
ー101〜108が被せられるが、通常、これらハッチ
カバー101〜108の上面にも、コンテナなどの積み
荷が積載される。このように、コンテナなどが積載され
ても十分な堅牢性を保つことができるように、通常、ハ
ッチカバー101〜108は、鋼材によって構成され
る。
【0015】図1の平面図では、図示の便宜上、ハッチ
カバー101〜108を単純な正方形で描いているが、
実際は、ハッチカバーを上甲板110上に支持するため
の支持構造体が存在する。ここでは、支持構造体を含め
たハッチカバー全体をハッチカバー構造体と呼ぶことに
する。図2は、従来の一般的なハッチカバー構造体を上
甲板110上に取り付けた状態を示す側断面図であり、
図1に示すハッチカバー101を図の切断線2−2に沿
って切断した断面図に対応する。なお、実際には、図2
に示す構造の他、海水の侵入を防ぐための防水構造体な
どが付加されることが多いが、ここでは、この防水構造
体などの図示は省略する。
【0016】上甲板110には、図2に示すとおり、ハ
ッチ開口部Hが形成されており、この下方が船体内の収
容庫になる。ハッチカバー本体1は、この上甲板110
上のハッチ開口部Hを覆う蓋としての機能を果たす。す
なわち、ハッチカバー本体1は、ハッチ開口部Hの上方
を覆う天井部10と、この天井部10を支持する側壁部
15と、この側壁部15から外側へ張り出したフランジ
部20と、このフランジ部20を側壁部15に対して支
持するための三角支持板30と、によって構成されてい
る。天井部10およびその四方に接続された側壁部15
は、いわば底が抜けた箱を形成しており、フランジ部2
0は、この箱の周囲に取り付けられた鍔状の平板部材で
ある。三角支持板30は、所定間隔おきに配置された支
持部材である。ハッチカバー本体1を構成するこれらの
各構成要素は、いずれも鋼材から構成されている。フラ
ンジ部20は、複数箇所に配置されたスツール部40
(ブロック状の鋼材)によって上甲板110上に支持さ
れている。
【0017】図3は、ハッチカバー本体1をクレーンな
どで吊り上げた状態を示す側断面図である。貨物船10
0が入港すると、このように、ハッチカバー本体1はク
レーンなどで吊り上げられて他の場所へ移される。図4
は、ハッチカバー本体1を除去した状態の上甲板110
の平面図であり、ハッチ開口部Hの周囲近傍に、12組
のスツール部40が配置された状態が示されている。各
スツール部40の下面は、上甲板110の上面に固着さ
れている。図3に示されている上甲板110の断面は、
図4の上甲板110を、切断線3−3に沿って切断した
側断面に相当する。ハッチ開口部Hから船体内の収容庫
へと積み荷を入れたら、クレーンで吊り上げたハッチカ
バー本体1を元に戻し、図2に示す状態にする。そし
て、コンテナ船等の場合は、必要に応じて、天井部10
の上面に、コンテナなどを更に積載する。この図2に示
す状態では、フランジ部20の下面は、12組のスツー
ル部40によって支持されている。このとき、側壁部1
5の底面と上甲板110との間には、空隙Sが形成され
ており、側壁部15は上甲板110から若干浮いた状態
になっている。スツール部40の上面とフランジ部20
の下面とは、互いに面接触の状態になっているだけであ
り、必要に応じて、両者は摺動可能である。これは、航
海中に上甲板110に撓みや捩じれが生じたとしても、
それによって生じる応力を、スツール部40とフランジ
部20との摺動により解消させ、ハッチカバー本体1に
過度の応力が加わることがないようにするための配慮で
ある。
【0018】既に述べたとおり、空隙Sの寸法適正値
は、たとえば、100mmのように、個々の船舶ごとに
定められる。空隙Sの寸法がこの適正値よりも小さすぎ
ると、航海中の上甲板110の撓みや捩じれにより、側
壁部15の底面が上甲板110の上面と接触して衝撃が
生じることになり好ましくない。逆に、空隙Sの寸法が
この適正値よりも大きすぎると、甲板上に打ち寄せた海
水がハッチ開口部へ大量に流入する要因になり好ましく
ない。このため、空隙Sの寸法は、いずれの箇所におい
ても、できるだけ適正値に近くなるように設定するのが
好ましい。しかしながら、実際の船舶では、航海前の状
態であっても、上甲板110の上面は必ずしも幾何学的
な平面にはなっておらず、部分ごとに反りがあり、空隙
Sの寸法がいずれの箇所でも適正値となるようにする調
整は非常に困難である。また、コンテナ船の場合は、天
井部10の上面に更にコンテナを積載することになるた
め、天井部10の水平度を確保するための姿勢調整を行
う必要性も生じるため、これらの調整作業は極めて熟練
を要するものになる。
【0019】<<< §2.本発明のハッチカバー構造
体 >>> 本発明の基本思想は、このような調節を容易にするため
に、スツール部40の一部分を樹脂層によって構成しよ
うという点にある。具体的には、スツール部40の上方
部分(フランジ部20の下面に接触する部分)を金属材
料層によって構成し、スツール部40の下方部分(上甲
板110に固定される部分)を樹脂材料層によって構成
するようにすればよい。上述したように、スツール部4
0の上面は、フランジ部20の下面と接触し、必要に応
じて両者は摺動することになるので、スツール部40の
上面を金属材料層によって構成しておけば、摩耗などの
影響を受けにくいメリットが得られる。一方、スツール
部40の下方部分を樹脂材料層によって構成しておけ
ば、この樹脂材料層の樹脂を硬化させる前の時点で空隙
Sの寸法調節やハッチカバー全体の姿勢調節の作業を行
うことができるようになるので、調節作業の負担は大幅
に軽減されることになる。以下、本発明に係るハッチカ
バー構造体の製造プロセスを順を追って説明しながら、
これらの調節作業が容易に行える理由を説明する。
【0020】まず、図3の上半分に示されているような
ハッチカバー本体1を用意する。これは、従来のハッチ
カバー構造体におけるハッチカバー本体1と全く同じ構
成でかまわない。すなわち、このハッチカバー本体1
は、ハッチ開口部Hの上方を覆う天井部10と、この天
井部10を支持する側壁部15と、この側壁部15から
外側へ張り出したフランジ部20と、これを支持するた
めの三角支持板30と、によって構成されている。
【0021】続いて、図5の平面図に示すように、ハッ
チ開口部Hの周囲近傍に、フランジ部20を支持するた
めの複数の支持領域を定義し、個々の支持領域の周囲を
囲うようにそれぞれ堤部50を形成する。図5に示す例
では、ハッチ開口部Hの周囲の上甲板110上に、合計
12組の矩形状の支持領域が定義され、これら支持領域
の周囲にそれぞれ堤部50が形成されている(図5にお
ける12組の矩形の輪郭部分が堤部50であり、その内
部が支持領域ということになる)。この堤部50の構造
は、図6の下半分の側断面図に明瞭に示されている。こ
の側断面図は、図5に示す構造を切断線6−6に沿って
切断した断面に相当する。堤部50は、後述するよう
に、その内部に液状の樹脂を流し込むための型として機
能する矩形枠状の構成要素であり、この実施形態では、
4枚の発泡スチロール製の板を、矩形状の支持領域の四
辺に沿って立てることによって構成されている。流し込
んだ樹脂が漏出しないように、堤部50を構成する4枚
の発泡スチロール製の板の下面は、上甲板110上に合
成ゴム系の速乾性接着剤で固定されており、また、これ
ら4枚の板の相互間も接着剤で固定されている。
【0022】一方、図6の上半分の側断面図に示されて
いるように、ハッチカバー本体1側には、フランジ部2
0の下面に、上部スツール45を仮止めする。この上部
スツール45は、直方体状の鋼製ブロックであり、その
水平方向に関する断面は、上甲板110側に定義された
支持領域(図5の堤部50の内側の領域)よりもひとま
わり小さな矩形をなす。後述するように、この上部スツ
ール45は、最終的には、ハッチカバー本体1を支持す
るスツール部の上側を構成する金属材料層になる。上部
スツール45は、上甲板110側に定義された支持領域
と同じ数だけ用意され、この支持領域に対応する位置に
仮止めされる。ここに示す実施形態では、12組の支持
領域に対応して、合計12組の上部スツール45が用意
され、フランジ部20の下面に仮止めされることにな
る。別言すれば、図6に示すように、上甲板110上の
定位置にハッチカバー本体1を配置したときに、合計1
2組の堤部50のそれぞれ上方位置に、合計12組の上
部スツール45が仮止めされる。なお、ここで「仮止
め」とは、後の工程で取り外しが可能となるように一時
的に固定することを意味する。
【0023】さて、こうして、上甲板110側に12組
の堤部50が用意され、ハッチカバー本体1側に12組
の上部スツール45が仮止めされたら、この上部スツー
ル45が仮止めされた状態のハッチカバー本体1をクレ
ーンなどで吊り上げ、図6に示すように、ハッチ開口部
Hの上方に配置する。そして、クレーンを操作しなが
ら、吊り上げたハッチカバー本体1を徐々に下げてゆ
き、図7の側断面図に示す状態までもってゆく。すなわ
ち、各上部スツール45の下部が、各堤部50の内側に
挿入された状態になるようにする。このとき、各上部ス
ツール45の下面は、上甲板110の上面に接触するこ
となく、若干、浮いた状態になるようにする。また、こ
の状態では、側壁部15の底面と上甲板110の上面と
の間にも、ある程度の空隙Sが維持されるようにする。
したがって、各上部スツール45の高さは、このような
状態が維持できるように、予め所定の寸法に設計してお
く必要がある。
【0024】この図7の状態において、側壁部15の底
面と上甲板110の上面との間隔、すなわち、空隙Sの
寸法の調節(別言すれば、上甲板110に対するハッチ
カバー本体1の位置調節)を行う。この例では、側壁部
15の底周面は正方形状をしているので、この正方形状
のいずれの箇所においても、空隙Sの寸法が所定の適正
値(たとえば、100mm:個々の船舶ごとに異なる)
となるような位置調整が行われるようにすればよい。こ
のような位置調節を行うには、上甲板110とフランジ
部20との間にジャッキを挿入し、このジャッキを操作
することにより、各部の空隙Sを調節するようにすれば
よい。図5の平面図に示されているように、堤部50は
所定のピッチで配置されており、1つの堤部50と隣接
する堤部50との間には、所定の間隙がある。これら個
々の間隙部分に、それぞれジャッキを挿入し、フランジ
部20を持ち上げるようにすれば、各ジャッキを操作す
ることにより、個々の位置における空隙Sの寸法を適正
値に調節することが容易にできる。また、コンテナ船の
場合は、天井部10の水平度が確保されるように、ハッ
チカバー本体1の全体的な姿勢調節も行うことができ
る。
【0025】こうして、ハッチカバー本体1についての
位置や姿勢の調節が完了したら、各堤部50内に液状の
樹脂を流し込んで硬化させる。前述したように、上部ス
ツール45は、各支持領域よりもひとまわり小さな断面
を有しているため、各上部スツール45の側面と、堤部
50の内側面との間には、若干の隙間が生じている。そ
こで、この隙間から、堤部50内に液状の樹脂を流し込
むことができる。樹脂は、少なくとも、上部スツール4
5の底面と上甲板110の上面との間の隙間を埋めるの
に十分な量だけ流し込むようにする。図8は、各堤部5
0内に樹脂60を流し込んだ状態を示す側断面図であ
る。こうして、流し込んだ樹脂が硬化すると、各上部ス
ツール45と上甲板110との間に、硬化樹脂層60が
形成されることになる。この硬化樹脂層60は、下部ス
ツールとして機能する。ここでは、この下部スツール6
0と上部スツール45の集合体をスツール部と呼ぶこと
にする。
【0026】なお、堤部50内に流し込む樹脂として
は、硬化した状態において、十分な耐荷重性を有し、か
つ、上甲板110および上部スツール45に対して十分
な接着力もしくは摩擦力を有するものを用いるようにす
るのが好ましい。このような樹脂を用いれば、下部スツ
ールとして機能する硬化樹脂層60の下面は上甲板11
0に対して、上面は上部スツール45に対して、それぞ
れ接着され、もしくは摩擦力により固定され、上部スツ
ール45は、硬化樹脂層60を介して上甲板110上に
固定される。しかも、下部スツールとして機能する硬化
樹脂層60は、十分な耐荷重性を有するので、ハッチカ
バー本体1あるいはその上に載置されたコンテナの重量
を十分に支えることが可能になる。また、樹脂は、空隙
Sの位置調節を完了した後に流し込まれるので、16組
のスツール部(下部スツール60と上部スツール45の
集合体)はいずれも最適の高さをもったものになり、こ
れら16組のスツール部によって支持されるハッチカバ
ー本体1の各部の空隙Sの寸法は、いずれも最適値に維
持される。
【0027】本実施形態では、上述のような性質をもつ
理想的な樹脂として、米国ペンシルバニア州のアイティ
ーダブリュー・フィラデルフィアレジンズ(ITW Philad
elphia Resins )社が「CHOCKFAST」なる商品
名で販売している樹脂を用いた。この樹脂の硬化後の圧
縮荷重は、1平方cm当たり、1100kgcm
極めて高く、本発明の用途に最適である。また、この樹
脂は、鋼材からなる上部スツール45の下面や、上甲板
110の上面(通常、防錆ペイントが塗布されている)
に対して十分な接着力もしくは摩擦力を有するため、上
部スツール45および下部スツール60(硬化樹脂層)
は、堅固なスツール部として、上甲板110上に固定さ
れる。
【0028】最後に、各上部スツール45の仮止めを解
除し、各上部スツール45の上面と、フランジ部20の
下面とが、摺動可能な状態になるようにする。こうし
て、上部スツール45および下部スツール60(硬化樹
脂層)の二層構造からなるスツール部が、フランジ部2
0を摺動可能な態様で支持する構造が得られる。別言す
れば、ハッチカバー本体1は、12組のスツール部の上
に載置された状態になる。上部スツール45の上面とフ
ランジ部20の下面とは固定されていないため、航海中
に甲板に撓みや捩じれが生じても、この撓みや捩じれに
起因した応力は、両者が摺動することにより解消され、
天井部10や側壁部15側に過度の応力が伝達されるこ
とはない。
【0029】なお、上甲板110上の堤部50は、樹脂
を流し込む際の型枠として機能した後は、その役割を終
了する。したがって、樹脂が硬化した後には、堤部50
を上甲板110上から除去する作業を行うのが好まし
い。特に、上述の実施形態の場合、堤部50として発泡
スチロール板を用いているため、実用上は、樹脂硬化後
に、これら堤部50をすべて除去するようにする。
【0030】<<< §3.より具体的な実施形態 >
>> 上述の§2では、本発明の基本的な実施形態を述べた。
ここでは、細かな点についてのより具体的な実施形態を
説明する。まず、上部スツール45の仮止めの具体的な
方法について述べる。上部スツール45をフランジ部2
0の下面に仮止めするのは、堤部50内に流し込んだ樹
脂が硬化するまでの間、上部スツール45が上甲板11
0上に落下しないようにするためである。上部スツール
45とフランジ部20との間は、最終的には、船舶航海
中に摺動可能となるような状態にしておく必要があるの
で、後の工程で取り外しが可能となるような形態で、一
時的に固定しなければならない。ただ、上部スツール4
5は鋼材からなり、かなりの重量があるため、落下事故
を防ぐために、ある程度確実な方法で仮止めするのが好
ましい。そこで、ここで述べる実施形態では、上部スツ
ール45をフランジ部20の下面に対して針金を用いて
仮止めし、後に、この針金を切断することにより仮止め
の解除を行うことができるようにしている。
【0031】図9は、フランジ部20の周辺部分を示す
拡大側断面図である。上部スツール45はフランジ部2
0の下面に対して、針金Wによって仮止めされている。
図10は、図9に示すフランジ部20の周辺部分を、別
な切断面(上部スツール45を避けた切断位置)で切断
した状態を示す側断面図である。この切断位置では、フ
ランジ部20に貫通孔hが形成されている。フランジ部
20の奥の位置にも、同様にもう1つの貫通孔が形成さ
れている(図示されていない)。針金Wは、手前側の貫
通孔hを上から下へ挿通し、上部スツール45の手前側
面、下面、反対側の側面を取り巻き、更に奥の貫通孔を
下から上へと挿通して一周し、両端が括られた状態にな
っている。すなわち、上部スツール45は、ループ状に
なった針金Wによって、フランジ部20の下面に仮止め
されていることになる。
【0032】なお、ここに示す実施形態では、図10に
示されているとおり、上部スツール45の下部の側面周
囲には、緩衝用テープ48が巻き付けられており、針金
Wは、この緩衝用テープ48ごと上部スツール45を仮
止めする構造になっている。この緩衝用テープ48は、
硬化後の樹脂にクラックが生じるのを防ぐ役割を果た
す。この実施形態では、厚み3mm程度のニトリロゴム
系のテープを緩衝用テープ48として用いているが、あ
る程度の弾力性を有し、樹脂に含まれる溶剤に溶けださ
ない性質をもったテープであれば、どのような材質のテ
ープを緩衝用テープ48として用いてもかまわない。
【0033】図11は、図9に示す堤部50内に液状の
樹脂60を流し込んだ状態を示す側断面図である。樹脂
60は、少なくとも、上部スツール45の底面と上甲板
110の上面との間の間隙部分を埋めるのに十分な量を
流し込むようにする。前述したように、樹脂硬化後に
は、堤部50は除去され、上部スツール45が下部スツ
ール(硬化樹脂層60)によって、上甲板110上に固
定されることになる。上部スツール45の側面周囲に巻
き付けた緩衝用テープ48は、そのまま樹脂60内に埋
め込まれる。したがって、上部スツール45の側面に対
しては、硬化樹脂層60が緩衝用テープ48を介して接
触するようになる。このような構造は、硬化樹脂層60
にクラックが生じるのを防ぐために効果的である。すな
わち、航海中の船舶に横揺れが生じると、上部スツール
45によって、硬化樹脂層60に対して横方向の力が加
えられることになる。すると、上部スツール45の側面
の延長面に沿って、硬化樹脂層60にクラックを生じさ
せる応力が働くことになるが、緩衝用テープ48を介在
させておくことにより、この応力の伝達が弱められ、硬
化樹脂層60にクラックが入るのを防止させる効果が得
られる。
【0034】樹脂60が硬化したら、上部スツール45
の仮止めを解除する必要がある。ここに示す実施形態で
は、針金Wによって仮止めをしているため、単に、針金
Wを切断することにより、仮止めの解除が可能である。
図12は、針金Wを切断した状態を示す側断面図であ
る。図には、上部スツール45の手前側の針金Wを切断
した状態が示されているが、上部スツール45の奥側の
針金Wも同様に切断される。針金Wの切断位置は、特に
限定されないが、見栄えをよくするためには、できるだ
け硬化樹脂層60の近くで切断するのが好ましい。
【0035】以上、本発明を図示する実施形態に基づい
て説明したが、本発明はこの実施形態に限定されるもの
ではなく、この他にも種々の形態で実施可能である。た
とえば、上述の実施形態では、上部スツール45の仮止
めに針金Wを用いたが、仮止めの方法は必ずしも針金を
用いた方法に限定されるものではなく、ボルトなどを用
いた仮止めを行ってもよい。ただ、実用上は、針金を用
いるのが最も簡便な仮止め方法である。
【0036】
【発明の効果】以上のとおり本発明に係るハッチカバー
構造体およびその製造方法によれば、比較的簡単な作業
で、ハッチカバーの位置や姿勢を適正に調節することが
可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来の一般的な貨物船100を上方から見た平
面図である。
【図2】従来の一般的なハッチカバー構造体を上甲板1
10上に取り付けた状態を示す側断面図であり、図1に
示すハッチカバー101を図の切断線2−2に沿って切
断した断面に対応する。
【図3】図2に示すハッチカバー本体1をクレーンなど
で吊り上げた状態を示す側断面図である。
【図4】図2に示すハッチカバー本体1を除去した状態
の上甲板110の平面図であり、ハッチ開口部Hの周囲
近傍に、12組のスツール部40が配置された状態が示
されている。
【図5】本発明に係るハッチカバー構造体を製造するた
めに、ハッチ開口部Hの周囲近傍に、フランジ部20を
支持するための複数の支持領域を定義し、個々の支持領
域の周囲を囲うようにそれぞれ堤部50を形成した状態
を示す平面図である。
【図6】本発明に係るハッチカバー構造体を製造するた
めに、ハッチカバー本体1を上甲板110の上方に配置
した状態を示す側断面図である。
【図7】図6に示すハッチカバー本体1を下降させ、空
隙Sの寸法調節を行っている状態を示す側断面図であ
る。
【図8】図7に示す調節が完了した後、堤部50内に樹
脂60を流し込んだ状態を示す側断面図である。
【図9】図7に示すフランジ部20の周囲近傍部分の拡
大側断面図である。
【図10】図9に示されている部分の別な断面位置にお
ける拡大側断面図である。
【図11】図9に示す堤部50内に液状の樹脂60を流
し込んだ状態を示す拡大側断面図である。
【図12】図10に示す堤部50内に液状の樹脂60を
流し込み、針金Wを切断した状態を示す拡大側断面図で
ある。
【符号の説明】
1…ハッチカバー本体 10…天井部 15…側壁部 20…フランジ部 30…三角支持板 40…スツール部 45…上部スツール 48…緩衝用テープ 50…堤部 60…樹脂/硬化樹脂層/下部スツール 100…貨物船 101〜108…ハッチカバー 110…上甲板 120…ブリッジ H…ハッチ開口部 h…貫通孔 S…空隙 W…針金

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 船舶甲板上のハッチ開口部を覆うための
    ハッチカバー構造体であって、 ハッチ開口部の上方を覆う天井部と、この天井部を支持
    する側壁部と、この側壁部から外側へ張り出したフラン
    ジ部と、を有するハッチカバー本体と、 下面が前記ハッチ開口部の周囲近傍の甲板上に固定さ
    れ、上面が前記フランジ部の下面に摺動可能な態様で接
    触し、前記フランジ部を前記甲板上で支持する機能を果
    たすスツール部と、 を備え、前記スツール部が、前記フランジ部の下面に接
    触するための金属材料層と、この金属材料層の下方に配
    置された樹脂材料層と、を有することを特徴とする船舶
    甲板上のハッチカバー構造体。
  2. 【請求項2】 船舶甲板上のハッチ開口部を覆うための
    ハッチカバー構造体を製造する方法であって、 ハッチ開口部の上方を覆う天井部と、この天井部を支持
    する側壁部と、この側壁部から外側へ張り出したフラン
    ジ部と、を有するハッチカバー本体を用意する本体準備
    段階と、 前記ハッチ開口部の周囲近傍に、前記フランジ部を支持
    するための複数の支持領域を定義し、個々の支持領域の
    周囲を囲うようにそれぞれ堤部を形成する堤部形成段階
    と、 前記フランジ部の下面の前記各支持領域に対応する部分
    に、前記各支持領域よりもひとまわり小さな断面を有す
    る上部スツールを仮止めする仮止段階と、 上部スツールが仮止めされた状態の前記ハッチカバー本
    体を、前記ハッチ開口部の上方に配置し、各上部スツー
    ルを各堤部の内側に挿入した状態で、前記ハッチカバー
    本体の位置もしくは姿勢を調節する調節段階と、 前記調節が完了した状態で、前記各堤部内に液状の樹脂
    を流し込んで硬化させ、各上部スツールと甲板との間に
    形成された硬化樹脂層により下部スツールを形成し、前
    記上部スツールを前記下部スツールを介して前記甲板上
    に固定するスツール固定段階と、 各上部スツールの仮止めを解除し、各上部スツールの上
    面により前記フランジ部の下面が摺動可能な態様で支持
    されるようにする仮止解除段階と、 を有することを特徴とする船舶甲板上のハッチカバー構
    造体の製造方法。
  3. 【請求項3】 請求項2に記載の製造方法において、 樹脂が硬化した後に堤部を除去する堤部除去段階を更に
    有することを特徴とする船舶甲板上のハッチカバー構造
    体の製造方法。
  4. 【請求項4】 請求項2または3に記載の製造方法にお
    いて、 ハッチカバー本体および上部スツールを金属材料により
    構成することを特徴とする船舶甲板上のハッチカバー構
    造体の製造方法。
  5. 【請求項5】 請求項2〜4のいずれかに記載の製造方
    法において、 上部スツールをフランジ部の下面に対して針金を用いて
    仮止めし、この針金を切断することにより仮止めの解除
    を行うことを特徴とする船舶甲板上のハッチカバー構造
    体の製造方法。
  6. 【請求項6】 請求項2〜5のいずれかに記載の製造方
    法において、 上部スツールの側面周囲に緩衝用テープを貼り付けてか
    ら液状の樹脂を流し込むようにし、上部スツールの側面
    に対して硬化樹脂層が前記緩衝用テープを介して接触す
    るようにしたことを特徴とする船舶甲板上のハッチカバ
    ー構造体の製造方法。
  7. 【請求項7】 請求項2〜6のいずれかに記載の製造方
    法において、 調節段階において、甲板とフランジ部との間にジャッキ
    を挿入し、このジャッキを操作することにより、側壁部
    の底面と甲板との間の間隔または天井部の水平度を調節
    することを特徴とする船舶甲板上のハッチカバー構造体
    の製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
KR200456602Y1 (ko) 2009-07-21 2011-11-08 주식회사 한진중공업 Lng선 리퀴드 돔 커버 설치용 지그
KR101099694B1 (ko) 2009-12-18 2011-12-28 삼성중공업 주식회사 해치커버를 구비하는 선박
KR101224916B1 (ko) 2010-08-20 2013-01-22 삼성중공업 주식회사 매립형 리퀴드 돔 구조
CN104354834A (zh) * 2014-10-23 2015-02-18 扬州市三诚机械制造有限公司 舱口围固定装置
KR102039680B1 (ko) * 2018-07-27 2019-11-01 삼성중공업 주식회사 부유식 구조물

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