JP2003317368A - パルス性ノイズのデジタル信号処理による検出および除去方法 - Google Patents

パルス性ノイズのデジタル信号処理による検出および除去方法

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pulse noise
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Abstract

(57)【要約】 【課題】アナログディスク再生時などに生じるパルス性
ノイズを検出し除去する 【解決手段】 パルス性ノイズ検出において、従来の技
術では困難であったノイズか楽音の一部なのかを判定す
る手段として自己相関関数および単峰性かどうかという
指標を導入することで検出精度を高めた。また、ノイズ
除去方法として線形予測法を用いることで、本来の音声
信号の再現性を高めるとともに、誤検出された区間の本
来の音声信号への影響を最小限に抑えた。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明が属する技術分野】本発明は、アナログレコード
の再生時などに発生するパルス性ノイズをデジタル信号
処理を用いて検出しかつ除去する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】パルス性ノイズの検出方法としては、パ
ルス性ノイズが高い周波数成分を含むことを利用した方
法がいくつか提案されている。実公昭60−7572記
載のノイズ除去回路では、入力音声信号を高域通過フィ
ルタに通し、その高域通過信号のエンベロープ信号を低
域通過フィルタを用いて抽出する。高域通過信号とその
エンベロープ信号とのレベル比較の結果、高域通過信号
の方が著しく大きいとき、入力音声信号にパルス性ノイ
ズ信号が含まれていると判断する。
【0003】しかしこの方法では、金管楽器音のような
周期的なパルス波によって構成されている楽音を、パル
ス性ノイズとして誤検出をしてしまう。そこで、特公平
8−321001では、実公昭60−7572のパルス
性信号検出回路の後段に、検出されたパルス性信号を、
予め定めた期間内に反復する連続パルスから成るパルス
性音声信号と、それ以外の単発パルスであるノイズとに
判別するノイズ判別回路を備えている。具体的には、検
出したパルス性信号をリリースフィルタに通して得られ
る、時間と共に減衰する振幅値が、高域通過信号のエン
ベロープ信号の振幅値より十分大きい時間内に次のパル
ス性信号が現れた場合には、それらのパルス性信号を音
声信号パルスと判別する、というものである。
【0004】この方法にも欠点がある。第1に、音声信
号パルスとみなしたパルス性信号が連続している区間内
に、もし本当のパルス性ノイズが混入していたとして
も、それを検出することはできない。第2に、パルス性
ノイズが、あらかじめ見積もった音声信号パルス周期以
下の時間間隔で連続しているような場合、これらは音声
信号パルスとみなされ、パルス性ノイズとして判別され
ない。よって、特公平8−321001の方法は、パル
ス性ノイズ混入の頻度が多い音声信号に対しては、十分
な効果を発揮できない。
【0005】先述のような手法で検出したパルス性ノイ
ズを、聴感上聞こえにくくする手法としては、ノイズ部
分波形の振幅を下げて抑圧する方法(特公平8−321
001)と、ノイズ部分の波形を前後の信号音波形から
補間する、あるいは適切な波形と置き換える方法(特公
平8−149098)の二つに大きく分類できる。ノイ
ズ波形の振幅を下げて抑圧する場合に、急激な振幅変化
が生じると新たなノイズの原因となるので、ノイズ波形
区間の直前の信号振幅を徐々に下げていく処理と、直後
の信号振幅を徐々にあげていく処理とが必要である(実
公昭60−7572)。
【0006】しかしこの方法では、ノイズ部分の前後が
振幅ゼロ近傍でない場合には、ノイズ部分を振幅ゼロに
近付けることによって、波形に歪みが生じる。特公昭5
9−66230では、ノイズ部分では、その直前の振幅
値を保持することによって、ノイズ部分波形を置き換え
る。しかしこの方法も、ノイズ部分前後の振幅値がほぼ
同じ値でない場合に、ノイズ部分を置換した波形と、前
後の波形が不連続となり、新たなノイズを生成してしま
う。
【0007】特公平8−149098では、ノイズ部分
前後の信号より多項式補間を行って波形を生成し、ノイ
ズ部分の波形と置き換える。この方法では、ノイズ部分
の前後の波形とノイズ部分を置換する波形とを連続につ
なぐことは可能であるが、置換された波形が本当にそこ
に存在するべき音楽信号情報を含んでいるかについての
保証はない。このため、新たなクリックノイズ等の発生
は起こらないにしても、音楽信号としての連続性を乱
し、音質劣化の原因となりやすい。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】本発明が解決しようと
する課題は、ノイズ部分の検出精度向上とノイズ部分の
波形補間精度向上である
【0009】
【課題を解決するための手段】従来の技術で示されたパ
ルス性ノイズ検出における問題点、つまりパルス性ノイ
ズと似たパルスが周期的に発生する楽音と、パルス性ノ
イズとの混同する危険性を低減させる方法として自己相
関関数を用いる周期判定方法および単峰性パルスかどう
かによる判定方法を導入した。また、パルス性ノイズの
除去方法として、その前後の波形の周期性やスペクトル
情報を利用した線形予測法によって生成される予測信号
によってパルス性ノイズを置換する手法を導入した。
【発明の実施の形態】
【0010】図1にパルス性ノイズ除去処理の大まかな
流れを示す。本発明はパルス性ノイズ判別部とパルス性
ノイズ除去部に関するものである。以下の説明に使用す
るパラメータは以下の通りである。()内はサンプル値 ・サンプリング周波数に依存しないパラメータ a1(7) S1 におけるエンベロープ振幅に対するパルス検出閾値 a2(a1×0.3) 隣接する周期位置のS1におけるエンベロープ振幅に対す
るパルス検出閾値 p1(0.35) 周期判定時の自己相関ピークの閾値 p2(4) 周期判定時の自己相関平均値に対する最大値の比の閾値 a3(4) 隣接する周期位置におけるS1の最大値間の、 最小値と
最大値との比 ・サンプリング周波数に比例するパラメータ w1(110) ローパスフィルタとして用いる矩形時間窓長 t1(10) 隣接する N1 の連結を行う最大間隔 t2(80) パルス性ノイズ区間の最大値 t3(2) パルス性ノイズ区間の過去への延長幅 t4(8) パルス性ノイズ区間の未来への延長幅 t5(440) 自己相関算出用波形長 r1(20) 自己相関関数より抽出する最短周期長 t6(5) 周期抽出時間幅 t7(880) 線形予測係数の算出に必要な波形時間長 m1(100) 線形予測係数の次数
【0011】図2に、パルス性ノイズを検出する処理の
流れ図を示した。以下、各処理についての説明を行う。
パルス性ノイズを検出する手法は、基本的に従来の技術
と同じであり、パルス性雑音には高域パワーが豊富であ
ることを利用して検出を行う。入力信号(S0)に施す高域
通過フィルタとしては、高速に演算できる2階差分を採
用した。この高域通過信号を全波整流したもの(S1)に、
低域通過フィルタに通すことにより、高域通過信号のエ
ンベロープ(E1)を求める。低域通過フィルタとしてはw1
点の矩形窓を用いた。S1の振幅が、E1のa1倍を超える区
間を、パルス性ノイズ区間(N0)の候補とした。このよう
な検出手法は、高周波数成分の多い入力信号部分ではE1
が大きくなることによってパルス性ノイズの検出閾値を
上昇させ、高周波数成分を多く含む楽音をパルス性雑音
として誤検出することを防ぐ意味がある。
【0012】入力信号波形振幅に急激な変動が続く際
に、短い時間間隔で複数のN0が生じる場合がある。この
ような場合、これら複数N0は、ひとつのパルス性雑音に
よって生じた可能性が高く、これらを一つのN0と見なし
た方が妥当である。よって、隣合った2つのN0の間隔がt
1サンプル以下である場合には、これらを連結すること
とした。一方、シンバル音のように波形振幅に急激な変
動が続く楽音の場合、上記に従って連結されたN0がかな
り長くなることがある。このような場合のN0はパルス性
雑音によって生じた可能性は低いため、連結後のN0の長
さがt2より大きいときには、この区間はパルス性ノイズ
ではないと見なした。
【0013】アナログディスク再生時に生じるパルス性
ノイズは、カートリッジ内のカンチレバーの振動特性、
RIAAフィルタ、AD変換時に用いる回路の伝達特性などに
よって、パルスの前後ににプリエコーやポストエコーを
伴うことが多い。このような、パルス性ノイズによる影
響を受けた波形区間をN0に含めるため、N0の前後をそれ
ぞれt3;t4だけ延長し、これをN1と置く。
【0014】アナログディスク再生時に生じるパルス性
ノイズ波形に多く見られるのは、1周期分のサイン波の
ように、振幅が正負に振動し、正の山と負の谷の両方を
持つ特徴である。しかし、前節までの処理で求められた
N1区間に対応するS0に、正の山あるいは負の谷のどちら
かしか含まない単峰性のパルスの存在する場合がある。
このような場合のN1はパルス性雑音によって生じた可能
性は低いため、この区間はパルス性ノイズではないと見
なした。具体的な判定方法としては、N1区間におけるS0
波形の一次差分が、一度だけ正から負に、あるいは負か
ら正に変わる場合は、単峰性パルスと見なした。
【0015】入力信号S0が周期波形であり、その1周期
の特定の時刻にパルス性波形が含まれているとき、S0の
2階差分波形も周期的となる。この性質を利用して、検
出されたN1区間にパルス性ノイズが存在するのか、楽音
の周期的なパルス性波形が存在するのかを判別する。図
3に、この処理全体の流れ図を、図4に自己相関関数を
用いた周期判定部における処理の流れ図を示した。ま
ず、S0の2階差分を半波整流した波形から、N1を時間的
中央とした区間長t5の波形を抽出し、その自己相関関数
a1(dt)を求める。自己相関関数には、対象波形の周期に
相当する遅れ時刻において、ピークを持つ性質がある。
ここで、dtは自己相関関数における遅れ時間であり、0
からt5=2の値をとる。自己相関関数から抽出しうる最短
周期(r1)をあらかじめ定めておき、a1(dt)において、r1
<dtt5=2の範囲で最大値をとる遅れ時間(xdt1)を、S1波
形の周期とする。ここまでの処理では、求められた周期
が本当に周期のある波形のものなのか、単に自己相関関
数の最大値をもつ遅れ時間が求められただけなのかは分
からない。このため、a1(dt)のもつ特徴より、S1波形が
周期をもつ波形か否かを判定する処理が必要となる。
【0016】このための処理は以下のとおりである。ま
ず、a1(0)によってa1(dt)を基準化する。基準化されたa
1(dt)のr1<dtt5=2における最大値をamaxとおく。amaxが
p1を超えてかつ、r1<dtt5=2で求めたa1(dt)の平均値ame
anに対するamaxの比がp2以上であるときに、S1波形が周
期を持っているものと判定する。
【0017】次に、今注目しているN1区間のパルス性ノ
イズ候補が、周期波形の一部として繰り返し現れるの
か、それとも周期信号内に混入したパルス性ノイズなの
かを判定する必要がある。具体的には、N1におけるS1の
最大値をemax1とし、その時刻から、前および後に1周期
(xdt1)だけ離れた時刻を中心としてt6の区間のS1に生じ
た最大値をそれぞれemax0;emax2とする。これら、emax
0;emax1;emax2がいずれもE1のa2倍を超えており、かつ
それらのうちの最小値と最大値との比がa3以内であると
きに、N1区間には周期信号の一部としてパルスが現れた
ものと考え、パルス性ノイズとしては扱わないことにし
た。
【0018】しかし、上記の周期信号におけるパルス性
ノイズ判定方法では、周期波形に高周波成分を多く含む
場合には、S1の周期が正確に推定できない。そこで、入
力信号であるS0の半波整流波形からも、同様な自己相関
を用いた手法によって周期の推定を行った。そして得ら
れた周期(xdt0)を、前段落におけるxdt1と置き換え、S1
波形に対して同様なパルス性ノイズ判定う。周期xdt0と
xdt1を元に行ったパルス性ノイズ判定のいずれかにおい
て、N1がパルス性ノイズであると判定された場合には、
次節に説明するパルス性ノイズの除去処理を行う。
【0019】ここでは、パルス性ノイズが混入している
N1にあるべき本来の音楽信号を、線形予測法によって推
定し、S0におけるN1区間を推定された波形によって置き
換える処理について説明する。
【0020】線形予測法は、過去の信号に線形予測係数
を掛けて足し合わせる線形結合によって、未来の信号を
予測する方法である。ここでは、N1にあるべき信号が未
来の波形であり、N1以前にある波形が過去の信号と考え
る。つまり、パルス性ノイズが混入する直前の音楽信号
からパルス性ノイズが混入した部分本来の波形を予測す
るわけである。具体的には、N1直前の長さt7区間の波形
よりm1次の線形予測係数を求め、その線形結合によって
N1にあるべき信号S2を予測していく。N1区間直前の入力
音声信号をx(n-k);(k>0)、N1区間直前の入力音声信号よ
り算出した線形予測係数をc(k)、予測誤差をe(n)とする
と、予測するN1区間の信号x(n)は、 と表される。次数m1が十分大きいとき、e(n)は白色雑音
となる性質を持つ。そこで、e(n)をゼロとおいて、この
(1)式をnを増やしながら順次計算していくことによっ
て、N1区間の信号を予測していく。線形予測係数はLevi
nson-Durbin法あるいはBurg法などによって求めること
ができる。
【0021】この方法の利点としては、1.予測開始部分
とその直前とで波形が不連続にならない 2.周期性を持つ音であればほぼ正確な予測が可能である 3.周期性を持たない音であっても、予測波形のスペクト
ルは、その直前にある波形のスペクトルと同じ特徴をも
つ 4.仮に楽音における周期信号波形の一部をノイズとして
検出し、予測波形による置換処理を行ったとしても、音
楽信号としての連続性を保つことができ、音質劣化が少
ないという点が挙げられる。
【0022】しかし、現実的には、予測終了部とその直
後の波形との連続性については保証はないし、完全に周
期的な信号の一部を予測するとも限らない。このため、
N1の直後にある長さt7の波形を用いて、時間軸を逆に辿
って同様な線形予測を行い、N1の予測波形S3を得る。そ
して、S2は、その振幅がN1区間に伴い線形に1から0まで
減衰する窓をかけ、S3には逆に0から1まで増加する窓を
かけて、両者を足し合わせる。こうして得られる、N1区
間を予測した信号の開始部および終了部は共に、その前
後のS0の波形と連続になる。このように未来の入力音声
信号波形を予測に用いるため、実際には、現在注目して
いるN1区間より、少なくともt7だけ先の信号まで読み込
んだ時点からでないと、処理を進めることができない。
つまり、ある程度入力音声信号をバッファリングしてお
く処理を必要とする。
【0023】図6に、パルス性ノイズ区間候補を検出
し、それを前後に延長した後、そのパルス性ノイズ区間
を線形予測による予測波形で置換した波形の例を示し
た。図7に線形予測による予測波形の合成と置換を表す
波形を示した。
【実施例】
【0024】今回提案する手法の、客観的なパルス性ノ
イズ除去能力を調べる。具体的には、パルス性ノイズを
含まない音楽信号に対して、パルス性ノイズを付加し、
そのノイズをどれだけ検出できたか、またノイズ除去信
号として、どれだけノイズ付加前の信号に近い信号を出
力できたについて、コンピュータ・シミュレーションを
行い定量的に検討する。
【0025】実際のアナログディスクの無音部分再生時
に生じたパルス性ノイズ波形データを20個記録した。そ
れらのうちから任意のパルスを、任意の最大振幅になる
よう線形に増幅あるいは減衰させて、音楽波形の任意の
時刻において加算することによって、パルス性ノイズを
含む音楽信号を生成した。ここでは、音楽信号の絶対値
最大振幅を1として、付加するパルス性ノイズの絶対値
振幅は、0.1〜1の範囲で矩形一様分布となるように決定
した。また、20個あるパルス性雑音からランダムに選ば
れたノイズが、1秒あたり20個ランダムな時刻に付加さ
れるようにした。対象とした音楽信号は、RWC研究用音
楽データベース(ポピュラー音楽)RWC-MDB-P-2001No.1〜
100の100曲のうち、効果音としてあらかじめレコード雑
音が混入しているNo.11を除いた、99曲の左チャンネル
冒頭1分間とした。
【0026】前節のように作成したパルス性ノイズ混入
音楽信号を、提案する手法によってノイズ除去処理し、
正しい位置にパルス性ノイズを検出できたかどうかを調
べた。ここで検出率を、付加したノイズ個数(1200個)に
対する正しい位置にノイズを検出した率とした。また、
誤検出率を、パルス性ノイズを検出した個数に対する、
ノイズを付加していない位置にノイズを検出した率とし
た。
【0027】また、従来法である特公平8−32100
1を用いて、同じ条件にてパルス性ノイズ区間の検出を
行い、同様な検出率と誤検出率を算出した。なお、本手
法と従来法とを同条件で比較するため、特開平8−32
1001における図1中の高域フィルタ2は、本手法と
同じ2階差分フィルタとし、図1中の低域フィルタ4は、
本手法と同じw1点移動平均フィルタを用いた。図8に
は、全99曲に対する処理の結果得られた平均値を、最も
検出率に影響を及ぼすパラメータである、a1を横軸に取
り、示した。この図からは、従来法と本手法の誤検出率
はほぼ同程度であるが、本検出手法の方が検出率が高い
ことが分かる。これは従来法が、周期パルス性楽音の間
に含まれるパルス性ノイズの検出ができないのに対し
て、本手法ではそのような検出が可能なためである。
【0028】ここでの分析は、前節のコンピュータ・シ
ミュレーションおいて、妥当な検出率を誤検出率を示し
た、a1=7の時の結果である。パルス性ノイズを正しく検
出して除去した信号は、ノイズ付加前の波形とどの程度
類似しているのかを調べた。一つのノイズ除去区間に対
して、ノイズ付加前信号波形をSx、ノイズ除去後信号波
形をSyとし、2つの波形の差分を求めると、Sy-Sxは除去
後も残ってしまうノイズ成分の波形となる。このパワー
と、このときに付加されていたパルス性ノイズのパワー
との比を求めると、ノイズ除去処理によってパルス性ノ
イズのパワーがどの程度低減されたかが分かる。これを
正しくノイズが検出された全てについて求め、その平均
値をパルス性ノイズ低減の指標とした。その結果、全99
曲の平均値は、-15.6dBであった。
【0029】また、本パルス性ノイズ検出手法によっ
て、検出されないノイズも存在する。そのようなノイズ
波形のパワーの平均値を求めた。その結果、全99曲の平
均値としては、-23.9dBであった。なお、ここでの0dBは
最大振幅の純音のパワーとした。さらに、パルス性ノイ
ズを誤検出してしまうと、パルス性ノイズ除去処理によ
ってノイズを含まないはずの信号が変化することにな
る。この変化を捉える指標としては、ひとつの誤除去区
間に対して、2つの波形の差分(Sy-Sx)のパワーを、誤除
去によって付加されたノイズのパワーとした。全誤除去
における平均値を、誤検出時の音質変化の指標とした。
その結果、全99曲の平均値としては、-26.5dBであっ
た。なお、ここでの0dBは最大振幅の純音のパワーとし
た。ここで得られた値は、検出されずに残った雑音のパ
ワーより、誤検出によって生成されたノイズのパワー
が、平均で-2.6dB低いことを示しており、誤検出による
音質劣化は、検出できないことによる音質劣化より小さ
いことを定量的に示しており、本発明の効果が確認され
た。
【0030】
【発明の効果】以上説明したとおり、本発明のパルス性
ノイズの検出方法を用いることにより、従来検出できな
かった周期パルス性楽音の間に含まれるパルス性ノイズ
を検出できる。また、本発明の線形予測法を用いたノイ
ズ除去方法を用いることにより、本来の楽音の再現性に
優れ、またパルス性ノイズを誤検出した場合も、本来の
楽音への影響を最小限に抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】処理の流れ
【図2】パルス性ノイズの検出
【図3】周期性パルスとパルス性ノイズとの判別
【図4】自己相関関数を用いた周期判定
【図5】波形周期による周期性パルスの判別
【図6】パルス性ノイズ区間候補の検出と区間延長、
置換後の波形
【図7】線形予測による予測波形の合成と置換
【図8】本手法と従来法の検出率と誤検出率

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 入力音声信号から高域通過フィルタによ
    り高周波成分信号を抽出し、抽出した高周波成分信号の
    エンベロープと比較することにより、パルス性ノイズが
    混入していると考えられる区間を検出し、そのパルス性
    ノイズ候補区間に含まれる音声信号波形が、パルス波を
    含んだ楽音の一部なのか、楽音にパルス性ノイズが混入
    したものかを、自己相関関数を用いて判断することを特
    徴とするパルス性ノイズ検出方法。
  2. 【請求項2】 入力音声信号から高域通過フィルタによ
    り高周波成分信号を抽出し、抽出した高周波成分信号の
    エンベロープと比較することにより、パルス性ノイズが
    混入していると考えられる区間を検出し、そのパルス性
    ノイズ候補区間に含まれる音声信号波形が、正の山ある
    いは負の山のどちらかしか含まれない単峰性パルスの場
    合は楽音とみなすことを特徴とするパルス性ノイズ検出
    方法。
  3. 【請求項3】 検出されたパルス性ノイズが混入された
    と認められる区間の波形を、区間の前、後あるいは前後
    両方の入力音声信号から線形予測法によって予測し、入
    力音声信号と置き換えることを特徴とするパルス性ノイ
    ズ除去方法。
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