JP2003313257A - 光硬化性樹脂組成物並びにそれを用いた光硬化性シートおよび成形品の製造方法 - Google Patents

光硬化性樹脂組成物並びにそれを用いた光硬化性シートおよび成形品の製造方法

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JP2003313257A
JP2003313257A JP2002124310A JP2002124310A JP2003313257A JP 2003313257 A JP2003313257 A JP 2003313257A JP 2002124310 A JP2002124310 A JP 2002124310A JP 2002124310 A JP2002124310 A JP 2002124310A JP 2003313257 A JP2003313257 A JP 2003313257A
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photocurable
sheet
resin
resin composition
mold
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JP2002124310A
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English (en)
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Shogo Okazaki
正吾 岡崎
Yoko Sumino
洋子 角野
Kenji Suemura
賢二 末村
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Mitsubishi Rayon Co Ltd
Original Assignee
Mitsubishi Rayon Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 意匠性の良好な成形品の製造に有利に用いる
ことのできる、耐磨耗性、耐候性および耐薬品性に優
れ、かつ、表面粘着性がなく、加工性および保存安定性
に優れた光硬化性シートを提供する。 【解決手段】 側鎖に光重合性官能基を有する熱可塑性
樹脂(a−1)、光重合開始剤(a−2)および光重合
性単量体(a−3)を含み、(a−1)成分と(a−
3)成分の総量に対して(a−3)成分が10質量%未
満である光硬化性樹脂組成物を用いる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、光硬化性樹脂組成
物、およびそれを用いた光硬化性シートおよび成形品の
製造方法に関する。本発明は、特に、優れた外観、意匠
性、耐磨耗性、耐薬品性および耐候性を有し、表面粘着
性のない光硬化性樹脂組成物、光硬化性シートおよびそ
のシートを用いた成形品の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】プラスチック製品の成形と同時にその表
面に装飾を施す方法として、(1)金型内表面に予め模
様を付けておく方法、(2)金型内壁面に転写フィルム
を装着し、成形と同時にフィルムの模様等を成形品の外
面に転写する方法、(3)機能付シートまたは印刷シー
トを金型内壁面に貼り付けておき、成形と同時にそのシ
ートを成形品表面に貼り付けする方法等が提案されてい
る。(2)または(3)の方法については、例えば、特
開昭60−250925号公報、特公昭59−3684
1号公報、特公平8−2550号公報に耐候性付与シー
トまたは印刷シートを金型内壁面に形成した後、成形用
樹脂を射出成形することにより、シートで表面が被覆さ
れた成形品を製造する方法が提案されている。
【0003】しかしながら、上記の技術は、加飾や機能
性の付与を熱可塑性シートや印刷の転写で行っているた
め、得られた成形品の表面硬度が不十分なものであっ
た。例えば、成形品に耐候性を付与する場合には、ポリ
フッ化ビニリデン(PVDF)などからなる高耐候性シ
ートを用いれば良いが、充分な表面硬度が得られないと
いう問題がある。これに対して、表面硬度の高い成形品
を得ようとする場合には、予め架橋した表面硬度の高い
シートを用いなければならない。しかしながら、そのよ
うなシートは、立体形状の成形品への適用が困難であ
る。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】そこで、特公平7−3
23号公報に示されているように、アクリル樹脂、反応
性ビニル基を有する化合物および光重合開始剤を含有す
る樹脂組成物により形成される光硬化性樹脂層とシート
基材とが積層されてなる光硬化性シートが提案された。
しかしながら、この方法では、光硬化させる前のシート
は、低分子量の反応性ビニル基を有する化合物を多量に
含有するため、表面に粘着性が有り、あるいは表面の粘
着性が時間と共に変化する等の現象が起こり、ロール状
態での保存安定性が不良である。具体的には、粘着して
巻き出せない、低温で保存しないと両端より化合物がし
み出す等の問題があった。さらには、その表面粘着性の
ため、印刷シートとして使用する場合の印刷工程におい
て不具合が生じていた。
【0005】かかる課題を解決するために鋭意検討の結
果、本発明者らは、特定組成を有する光硬化性樹脂組成
物層を有する光硬化性シートが、前記課題を解決するも
のであることを見出し、本発明を完成させた。
【0006】すなわち、本発明の目的は、意匠性の良好
な成形品の製造に有利に用いることのできる、耐磨耗
性、耐候性および耐薬品性に優れ、かつ、表面粘着性が
なく、加工性および保存安定性に優れた光硬化性シート
を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明は、上記課題を解
決するため、側鎖に光重合性官能基を有する熱可塑性樹
脂(a−1)、光重合開始剤(a−2)および光重合性
単量体(a−3)を含み、(a−1)成分と(a−3)
成分の総量に対して(a−3)成分が10質量%未満で
ある光硬化性樹脂組成物を提供する。
【0008】本発明は、また、基材シート(B)と、お
よびその上に積層された上記光硬化性樹脂組成物(A)
の層を含む光硬化性シートを提供する。
【0009】本発明は、さらに、上記光硬化性シートの
基材シート側に形成された印刷層および/または蒸着層
を含む光硬化性加飾シートを提供する。
【0010】本発明は、また、上記光硬化性シートの基
材シート側に形成された印刷層および/または蒸着層、
および接着層を含む光硬化性加飾シートを提供する。
【0011】本発明は、また、上記光硬化性シートの基
材シート側に形成された印刷層および/または蒸着層、
および接着層およびプライマーシートを含む光硬化性加
飾シートを提供する。
【0012】本発明は、さらに、上記光硬化性シートま
たは光硬化性加飾シートを、光硬化性樹脂組成物(A)
側が金型の内壁面に向かい合うように挿入配置する工
程、金型を閉じて、溶融樹脂を金型内に射出し、樹脂を
固化させることにより光硬化性シートまたは光硬化性加
飾シートが表面に配置された樹脂成形品を形成する工
程、および光照射することにより成形品表面の光硬化性
樹脂組成物を光硬化させる工程を含む成形品の製造方法
を提供する。
【0013】本発明は、また、上記光硬化性シートまた
は光硬化性加飾シートを、光硬化性樹脂組成物(A)側
が金型の内壁面に向かい合うように挿入配置する工程、
光硬化性シートまたは光硬化性加飾シートを予備成形し
てシートを金型形状に追従させる工程、金型を閉じて、
溶融樹脂を金型内に射出し、樹脂を固化させることによ
り光硬化性シートまたは光硬化性加飾シートが表面に配
置された樹脂成形品を形成する工程、および光照射する
ことにより成形品表面の光硬化性樹脂組成物を光硬化さ
せる工程を含む成形品の製造方法を提供する。
【0014】本発明は、また、上記光硬化性シートまた
は光硬化性加飾シートを、光硬化性樹脂組成物(A)側
が金型の内壁面に向かい合うように予備成形用金型に挿
入配置する工程、光硬化性シートまたは光硬化性加飾シ
ートを予備成形してシートを金型形状に追従させる工
程、予備成形した光硬化性シートまたは光硬化性加飾シ
ートを、光硬化性樹脂組成物(A)側が金型の内壁面に
向かい合うように成形用金型に挿入配置する工程、成形
用金型を閉じて、溶融樹脂を金型内に射出し、樹脂を固
化させることにより光硬化性シートまたは光硬化性加飾
シートが表面に配置された樹脂成形品を形成する工程、
および光照射することにより成形品表面の光硬化性樹脂
組成物を光硬化させる工程を含む成形品の製造方法を提
供する。
【0015】本発明は、また、上記の方法により得られ
た成形品を提供する。
【0016】
【発明の実施の形態】以下に、本発明の好ましい実施の
形態について順次説明する。
【0017】本発明の光硬化性樹脂組成物(A)は、側
鎖に光重合性官能基を有する熱可塑性樹脂(a−1)、
光重合開始剤(a−2)および光重合性単量体(a−
3)を含み、(a−1)成分と(a−3)成分の総量に
対して(a−3)成分が10質量%未満のものである。
さらに、光硬化性樹脂組成物(A)の層を基材シート
(B)上に積層することにより、光硬化性シートを得る
ことができる。本発明の光硬化性樹脂組成物(A)にお
いては、光重合性単量体(a−3)の添加量を特定し、
さらに側鎖に光重合性官能基を有するポリマーを導入し
たことにより、ポリマー側鎖間やポリマー側鎖−単量体
間等で架橋反応が進行して著しく良好な耐磨耗性が得ら
れるだけでなく、さらに表面粘着性が無く、保存安定性
に優れるシートが得られるという利点を有する。
【0018】側鎖に光重合性官能基を有する熱可塑性樹
脂(a−1)の光重合性官能基としては、光を照射する
ことにより重合を進行せしめるものであればよいが、好
ましくはラジカル重合性不飽和基、または下記構造式
(1)で示される脂環式エポキシ基が挙げられる。
【0019】
【化1】
【0020】側鎖にラジカル重合性不飽和基を有する熱
可塑性樹脂としては、例えば、ガラス転移温度が25〜
175℃、好ましくは30〜150℃の、ポリマー中に
ラジカル重合性不飽和基を有するものが挙げられる。具
体的には、ポリマーとして以下の化合物(1)〜(8)
を重合または共重合させたものに対し、後述する方法
(イ)〜(ニ)によりラジカル重合性不飽和基を導入し
たものを用いることができる。
【0021】(1) 水酸基を有する単量体:N−メチ
ロールアクリルアミド、2−ヒドロキシエチル(メタ)
アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリ
レート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、
2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アク
リレート等 (2) カルボキシル基を有する単量体:(メタ)アク
リル酸、アクリロイルオキシエチルモノサクシネート等 (3) エポキシ基を有する単量体:グリシジル(メ
タ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメ
チル(メタ)アクリレート等 (4) アジリジニル基を有する単量体:2−アジリジ
ニルエチル(メタ)アクリレート、2−アジリジニルプ
ロピオン酸アリル等 (5) アミノ基を有する単量体:(メタ)アクリルア
ミド、ジアセトンアクリルアミド、ジメチルアミノエチ
ル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メ
タ)アクリレート等 (6) スルホン基を有する単量体:2−アクリルアミ
ド−2−メチルプロパンスルホン酸等 (7) イソシアネート基を有する単量体:2,4−ト
ルエンジイソシアネートと2−ヒドロキシエチルアクリ
レートの等モル付加物のような、ジイソシアネートと活
性水素を有するラジカル重合性単量体の付加物、2−イ
ソシアネートエチル(メタ)アクリレート等 (8) さらに、上記の共重合体のガラス転移温度を調
節したり、光硬化性シートの物性を調和させたりするた
めに、上記の化合物をそれと共重合可能な単量体と共重
合させることもできる。そのような共重合可能な単量体
としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、トリ
シクロデカニル(メタ)アクリレート、イソボルニル
(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート類、N
−フェニルマレイミド、シクロヘキシルマレイミド、N
−ブチルマレイミド等のイミド誘導体、ブタジエン等の
オレフィン系単量体、スチレン、α−メチルスチレン等
の芳香族ビニル化合物等を挙げることができる。
【0022】次に、上述のようにして得た重合体に、以
下に述べる方法(イ)〜(ニ)によりラジカル重合性不
飽和基を導入する。
【0023】(イ) 水酸基を有する単量体の重合体ま
たは共重合体の場合には、(メタ)アクリル酸等のカル
ボキシル基を有する単量体等を縮合反応させる。
【0024】(ロ) カルボキシル基、スルホン基を有
する単量体の重合体または共重合体の場合には、前述の
水酸基を有する単量体を縮合反応させる。
【0025】(ハ) エポキシ基、イソシアネート基ま
たはアジリジニル基を有する単量体の重合体または共重
合体の場合には、前述の水酸基を有する単量体又はカル
ボキシル基を有する単量体を付加反応させる。
【0026】(ニ) 水酸基またはカルボキシル基を有
する単量体の重合体または共重合体の場合には、エポキ
シ基を有する単量体またはアジリジニル基を有する単量
体、あるいはイソシアネート基を有する単量体、または
ジイソシアネート化合物と水酸基含有アクリル酸エステ
ル単量体との等モル付加物を付加反応させる。
【0027】上記の反応は、微量のハイドロキノン等の
重合禁止剤を加え、乾燥空気を送りながら行うことが好
ましい。
【0028】本発明に用いられる、側鎖に脂環式エポキ
シ基を有する熱可塑性樹脂としては、例えば、ガラス転
移温度が25〜175℃、好ましくは30〜150℃
の、ポリマー側鎖中に脂環式エポキシ基を有するものが
挙げられる。具体的な合成例を挙げると、例えば、第1
の方法として、脂環式エポキシ基を有する(メタ)アク
リレート(9)をラジカル重合開始剤の存在下で溶液重
合法等の公知の重合方法により単独重合したり、上記
(1)〜(8)に示すような他の共重合可能なモノマー
と共重合したりすることにより得ることができる。
【0029】また、側鎖に脂環式エポキシ基を有する熱
可塑性樹脂は、上記単独重合や共重合以外の方法によっ
ても得ることができる。例えば、第2の方法として、脂
環式エポキシ基と第1の反応性基とを有する化合物と、
第1の反応性基と反応する第2の反応性基を有する熱可
塑性樹脂とを反応させることによって得ることができ
る。この第1の反応性基と第2の反応性基との組合せの
代表例としては、下記の表1に示すようなイソシアネー
ト基と水酸基との組合せが挙げられる。
【0030】
【表1】
【0031】上記の第1の方法において、脂環式エポキ
シ基を有する(メタ)アクリレート(9)としては、他
のラジカル重合性単量体と共重合可能なものであれば特
に限定されないけれども、具体的には下記構造式(2)
で示されるような化合物が挙げられる。
【0032】
【化2】
【0033】(上式中、Rはメチル基または水素原子を
表し、nは0〜5の整数である) 熱可塑性樹脂(a−1)の側鎖の光重合性官能基の量
は、二重結合当量(側鎖ラジカル重合性不飽和基1個あ
たりの平均分子量)または脂環式エポキシ当量(側鎖脂
環式エポキシ基1個あたりの平均分子量)が、仕込み値
からの計算値で平均3000g/モル以下であること
が、耐擦傷性、耐磨耗性向上の観点から好ましい。さら
に好ましい範囲は、平均1200g/モル以下であり、
最も好ましい範囲は、平均600g/モル以下である。
【0034】このように、架橋に関与する光重合性官能
基を熱可塑性樹脂中に複数導入することにより、効率的
に硬化物性を向上させることが可能となる。
【0035】熱可塑性樹脂(a−1)の数平均分子量
は、5,000〜2,500,000の範囲が好まし
く、10,000〜1,000,000の範囲がさらに
好ましい。熱可塑性樹脂(a−1)を含む光硬化性樹脂
組成物(A)を用いて形成した光硬化性シートをインサ
ート成形やインモールド成形する際に、金型離型性が良
好になる点や光硬化後の成形品表面硬度の観点から、数
平均分子量は5,000以上であることが好ましい。一
方、合成の容易さや外観の観点、また、基材シート
(B)との密着性発現の観点から、数平均分子量が2,
500,000以下であることが好ましい。
【0036】また、熱可塑性樹脂(a−1)は、ガラス
転移温度が25〜175℃に調節されていることが好ま
しく、30〜150℃に調節されていることがさらに好
ましい。インサート成形やインモールド成形時の光硬化
性シートの金型剥離性や光硬化後の成形品表面硬度の観
点から、ガラス転移温度が25℃以上であることが好ま
しい。一方、光硬化性シートの取り扱い性の観点からガ
ラス転移温度は175℃以下であることが好ましい。
【0037】また、得られる熱可塑性樹脂共重合体のガ
ラス転移温度を考慮すると、ホモポリマーとして高いガ
ラス転移温度を有するものとなるビニル重合性単量体を
使用することが好ましい。
【0038】さらに、熱可塑性樹脂共重合体の耐候性向
上の観点からは、ビニル重合性単量体として(メタ)ア
クリレート類を主成分として用いることが好ましい。
【0039】また、後述するように、本発明の光硬化性
樹脂組成物(A)中に無機微粒子(a−4)を添加する
場合、無機微粒子(a−4)の表面の官能基(ヒドロキ
シル基,カルボキシル基,シラノール基等)と反応しう
る基、例えば、ヒドロキシル基、カルボキシル基、ハロ
ゲン化シリル基およびアルコキシシリル基からなる群よ
り選ばれた少なくとも1種の官能基を分子内に有するビ
ニル重合性単量体は、得られる光硬化性樹脂組成物の剛
性、靱性、耐熱性等の物性をより向上させるように働く
ので、かかる官能基がラジカル重合可能なビニル重合性
単量体成分の一部として含有されていてもよい。
【0040】このような反応性の基を分子内に含有する
ビニル重合性単量体としては、2−ヒドロキシエチル
(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メ
タ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、ビニルトリク
ロロシラン、ビニルトリメトキシシラン、γ−(メタ)
アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン等が挙
げられる。
【0041】本発明の光硬化性樹脂組成物(A)には、
光重合開始剤(a−2)が含有されている。光重合開始
剤(a−2)としては、光照射によってラジカルを発生
させる光ラジカル重合開始剤や酸を生成する光カチオン
重合開始剤が挙げられる。熱可塑性樹脂(a−1)およ
び光重合性単量体(a−3)が共に光ラジカル重合能を
有する場合には光ラジカル重合開始剤が使用され、熱可
塑性樹脂(a−1)および光重合性単量体(a−3)が
共に光カチオン重合能を有する場合には光カチオン重合
開始剤が使用される。熱可塑性樹脂(a−1)が光ラジ
カル重合能を有し、光重合性単量体(a−3)が光カチ
オン重合能を有する場合、またはその反対の組み合わせ
の場合には、光ラジカル重合開始剤と光カチオン重合開
始剤を併用してもよい。
【0042】光ラジカル重合開始剤としては、公知の化
合物を用いることができ、特に限定はないけれども、硬
化時の黄変性や耐候時の劣化を考慮すると、アセトフェ
ノン系、ベンゾフェノン系、アシルホスフィンオキサイ
ド系のような分子内にアミノ基を含まない開始剤がよ
い。例えば、1−(4−ドデシルフェニル)−2−ヒド
ロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−ヒドロキ
シシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2
−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−(4
−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチ
ルプロパン−1−オン、2,4,6−トリメチルベンゾ
イルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−
ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペン
チルホスフィンオキサイド等が好ましい。これらのうち
には成形方法によっては一時的にその化合物の沸点以上
の温度になることがあるので、注意が必要である。成形
品の表面硬度を上げるため、n−メチルジエタノールア
ミンなどの酸素による重合硬化阻害を抑制する添加剤を
添加しても良い。また、これらの光重合開始剤の外に、
成形時の熱を利用しての硬化も考慮して、各種過酸化物
を添加してもよい。光硬化性シートに過酸化物を含有さ
せる場合には、150℃、30秒程度で硬化させる必要
があるので、臨界温度の低い過酸化物、例えば、ラウロ
イルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ−2−エチ
ルヘキサノエート、1,1−ビス(t−ブチルパーオキ
シ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン等が好ま
しく用いられる。
【0043】光ラジカル重合開始剤の添加量は、硬化後
の残存量が耐候性に影響するため、側鎖に光重合性官能
基を有する化合物に対して5質量%以下が望ましく、特
に硬化時の黄変に関連するアミノ系の光ラジカル重合開
始剤は1質量%以下が望ましい。
【0044】光カチオン重合開始剤としては、公知の化
合物を用いることができ、特に限定はないけれども、具
体的にはジアリールヨードニウム塩、トリアリールスル
ホニウム塩、鉄アレーン(芳香族炭化水素)錯体等が挙
げられる。なかでも、脂環式エポキシ基を有する化合物
との反応性、着色の問題等を考慮すると下記構造式
(3)で示されるトリアリールスルホニウム塩がより好
ましい。
【0045】
【化3】
【0046】(上式中、R1 は炭素−炭素結合もしくは
炭素−硫黄結合を介する置換もしくは未置換の芳香族環
を表し、R2 およびR3 は、それぞれ、置換もしくは未
置換の芳香族環を表す) このような光カチオン重合系を選択することにより、光
ラジカル重合系と比較して、硬化収縮が少なく、樹脂と
の密着性に優れるため、硬化層の割れ、剥がれが発生し
にくく、硬化前後において低臭気であり、酸素による重
合阻害が無い等の利点が得られることがある。
【0047】光カチオン重合開始剤の添加量は、側鎖に
光重合性官能基を有する化合物100質量部に対して
0.1〜10質量部が好ましい。
【0048】本発明で用いる光重合性単量体(a−3)
としては、光重合性単官能化合物や光重合性多官能化合
物がある。光重合性単量体が存在することにより、光硬
化性樹脂組成物(A)層と基材シート(B)との密着性
が良好となる傾向にあり、好ましい。
【0049】光重合性単量体(a−3)として使用可能
な単官能化合物としては、前述した側鎖に光重合性官能
基を有する熱可塑性樹脂(a−1)を構成する化合物を
用いることができる。また、例えば、N−ビニルピロリ
ドン、N−ビニルカプロラクタム等のビニル基含有ラク
タム、イソボルニル(メタ)アクリレート、ボルニル
(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)ア
クリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート
等の脂環式構造含有(メタ)アクリレート、ベンジル
(メタ)アクリレート、4−ブチルシクロヘキシル(メ
タ)アクリレート、アクリロイルモルホリン、ビニルイ
ミダゾール、ビニルピリジン等を用いることもできる。
【0050】さらに、2−ヒドロキシエチル(メタ)ア
クリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレ
ート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、メ
チル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレー
ト、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メ
タ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、アミ
ル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレ
ート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メ
タ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、
ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アク
リレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチ
ル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)
アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル
(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレー
ト、ウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メ
タ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ス
テアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メ
タ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)ア
クリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、エ
トキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、ベ
ンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メ
タ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メ
タ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メ
タ)アクリレート、メトキシエチレングリコール(メ
タ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレー
ト、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレ
ート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アク
リレート、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、イソブ
トキシメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチ
ル(メタ)アクリルアミド、t−オクチル(メタ)アク
リルアミド、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレー
ト、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、7−
アミノ−3,7−ジメチルオクチル(メタ)アクリレー
ト、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N
−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ヒ
ドロキシブチルビニルエーテル、ラウリルビニルエーテ
ル、セチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニル
エーテル、(メタ)アクリル酸等を用いることもでき
る。
【0051】また、光重合性多官能化合物としては、例
えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジ
エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレ
ングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレング
リコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロ
パントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパ
ントリオキシエチル(メタ)アクリレート、ペンタエリ
スリトールトリ(メタ)アクリレート、トリエチレング
リコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリ
コールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジイ
ルジメチレンジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタン
ジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジ
オールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコー
ルジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコール
ジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジグリシジ
ルエーテルの両末端(メタ)アクリル酸付加体、ペンタ
エリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリ
スリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリ
スリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ポリエステル
ジ(メタ)アクリレート、トリス(2−(メタ)アクリ
ルオキシエチル)イソシアヌレート、ビス(2−(メ
タ)アクリルオキシエチル)(2−ヒドロキシエチル)
イソシアヌレート、トリシクロデカンジメタノールジ
(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのエチレンオ
キサイドまたはプロピレンオキサイド付加体のジオール
のジ(メタ)アクリレート、水添ビスフェノールAのエ
チレンオキサイドまたはプロピレンオキサイド付加体の
ジオールのジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールA
のジグリシジルエーテルに(メタ)アクリレートを付加
させたエポキシ(メタ)アクリレート、トリエチレング
リコールジビニルエーテル、エチレングリコールジビニ
ルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、
トリエチレングリコールジビニルエーテル、シクロヘキ
サンジメタノールジビニルエーテル、ジビニルベンゼ
ン、ジアリルフタレート、ジアリルイソフタレート、ト
リアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート等
が挙げられる。
【0052】光重合性単量体(a−3)として、これら
の光重合性単官能化合物や光重合性多官能化合物をそれ
ぞれ単独で用いてもよいし、2種以上組み合わせて用い
てもよい。なかでも、常温(25℃)で固体状の光重合
性単量体を用いると、光硬化性樹脂組成物の表面に粘着
性がなく、また表面の粘着性が時間と共に変化する等の
現象も起こらず、保存安定性が良好な光硬化性シートを
得ることができ、好ましい。
【0053】光重合性単量体(a−3)の添加量は、前
記の(a−1)成分と(a−3)成分の総量に対して1
0質量%未満であり、5質量%未満であることが好まし
く、3質量%未満であることがさらに好ましい。光重合
性単量体(a−3)の添加量が10質量%を超えると、
密着性は良好となるものの、光硬化前の光硬化性樹脂組
成物(A)層の表面が粘着性を有し、印刷工程における
不具合や、ロール状態での保存安定性の低下、耐金型汚
染性の低下等が起こることがある。
【0054】光硬化性樹脂組成物(A)には、さらに耐
擦傷性や耐磨耗性を向上させる目的で、無機微粒子(a
−4)を添加することができる。本発明に用いられる無
機微粒子(a−4)においては、得られる光硬化性樹脂
組成物が透明となれば、その種類や粒子径、形態は特に
制限されない。無機微粒子の例としては、コロイダルシ
リカ、アルミナ、酸化チタン、酸化スズ、異種元素ドー
プ酸化スズ(ATO等)、酸化インジウム、異種元素ド
ープ酸化インジウム(ITO等)、酸化カドミウム、酸
化アンチモン等が挙げられる。これらは単独で用いられ
てもよいし、2種以上組み合わせて用いられてもよい。
なかでも、入手の容易さや価格面、得られる光硬化性樹
脂組成物層の透明性や耐磨耗性発現の観点から、コロイ
ダルシリカが特に好ましい。
【0055】コロイダルシリカは、通常の水性分散液の
形態や、有機溶媒に分散させた形態で用いることができ
るが、(a−1)成分である熱可塑性樹脂や(a−3)
成分である光重合性単量体とともに均一かつ安定に分散
させるためには、有機溶媒に分散させたコロイダルシリ
カを用いることが好ましい。
【0056】そのような有機溶媒としては、メタノー
ル、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、エチレ
ングリコール、キシレン/ブタノール、エチルセロソル
ブ、ブチルセロソルブ、ジメチルホルムアミド、ジメチ
ルアセトアミド、メチルエチルケトン、メチルイソブチ
ルケトン、トルエン等を例示することができる。熱可塑
性樹脂や光重合性単量体とともに均一に分散させるため
には、熱可塑性樹脂や光重合性単量体を溶解可能な有機
溶媒を選択することが好ましい。
【0057】有機溶媒に分散させた形態のコロイダルシ
リカとしては、分散媒に分散されている市販品、例え
ば、メタノールシリカゾルMA−ST、イソプロピルア
ルコールシリカゾルIPA−ST、n−ブタノールシリ
カゾルNBA−ST、エチレングリコールシリカゾルE
G−ST、キシレン/ブタノールシリカゾルXBA−S
T、エチルセロソルブシリカゾルETC−ST、ブチル
セロソルブシリカゾルBTC−ST、ジメチルホルムア
ミドシリカゾルDBF−ST、ジメチルアセトアミドシ
リカゾルDMAC−ST、メチルエチルケトンシリカゾ
ルMEK−ST、メチルイソブチルケトンシリカゾルM
IBK−ST(以上商品名、日産化学工業(株)製)を
用いることができる。
【0058】無機微粒子(a−4)の粒子径は、得られ
る光硬化性樹脂組成物層の透明性の観点から、通常は2
00nm以下であるのが好ましい。より好ましくは10
0nm以下であり、さらに好ましくは50nm以下であ
る。
【0059】無機微粒子(a−4)の添加量は、側鎖に
光重合性官能基を有する熱可塑性樹脂(a−1)の固形
分100質量部に対して、無機微粒子固形分で5〜40
0質量部の範囲が好ましく、10〜200質量部の範囲
が特に好ましい。無機微粒子の添加量が5質量部未満の
場合には、耐磨耗性向上効果が認められないことがあ
り、また添加量が400質量部を超える場合には、光硬
化性樹脂組成物(A)の保存安定性が低下するばかり
か、得られる光硬化性シートの成形性が低下することが
ある。
【0060】また、本発明で用いられる無機微粒子(a
−4)としては、下記構造式(4)で表されるシラン化
合物によって、予め表面が処理されたものを用いてもよ
い。表面処理された無機微粒子の使用は、光硬化性樹脂
組成物(A)の保存安定性がさらに良好となり、また得
られる光硬化性シートの表面硬度および耐候性も良好と
なるので好ましい。
【0061】 SiR4 a5 b (OR6c (4) (上式中、R4 およびR5 は、それぞれ、エーテル結
合、エステル結合、エポキシ結合または炭素−炭素二重
結合を有していてもよい炭素数1〜10の炭化水素残基
を表し、R6 は水素原子またはエーテル結合、エステル
結合、エポキシ結合もしくは炭素−炭素二重結合を有し
ていてもよい炭素数1〜10の炭化水素残基を表し、a
およびbは、それぞれ、0〜3の整数であり、cは4−
a−bを満足する1〜4の整数である) 前記構造式(4)で表されるシラン化合物のなかでも、
下記構造式(5)〜(10)で表されるシラン化合物を
好ましいものとして挙げることができる。
【0062】 SiR7 a8 b (OR9c (5) SiR7 n (OCH2 CH2 OCO(R10)C=CH24-n (6) CH2 =C(R10)COO(CH2p SiR11 n (OR93-n (7) CH2 =CHSiR11 n (OR93-n (8) HS(CH2p SiR11 n (OR93-n (9)
【0063】
【化4】
【0064】(上式中、R7 およびR8 は、それぞれ、
エーテル結合、エステル結合またはエポキシ結合を有し
ていてもよい炭素数1〜10の炭化水素残基を表し、R
9 は水素原子または炭素数1〜10の炭化水素残基を表
し、R10は水素原子またはメチル基を表し、R11は炭素
数1〜3のアルキル基またはフェニル基を表し、aおよ
びbは、それぞれ、0〜3の整数であり、cは4−a−
bを満足する1〜4の整数であり、nは0〜2の整数で
あり、pは1〜6の整数である) 前記構造式(5)で表されるシラン化合物としては、例
えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、
テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、メチ
ルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エ
チルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、
フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシ
ラン、ジメチルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキ
シシラン、メチルエチルジエトキシシラン、メチルフェ
ニルジメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、メ
トキシエチルトリエトキシシラン、アセトキシエチルト
リエトキシシラン、ジエトキシエチルジメトキシシラ
ン、テトラアセトキシシラン、メチルトリアセトキシシ
ラン、テトラキス(2−メトキシエトキシ)シラン、γ
−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリ
シドキシプロピルメチルジエトキシシラン、β−(3,
4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラ
ン等が挙げられる。
【0065】前記構造式(6)で表されるシラン化合物
としては、例えば、テトラキス(アクリロイルオキシエ
トキシ)シラン、テトラキス(メタクリロイルオキシエ
トキシ)シラン、メチルトリス(アクリロイルオキシエ
トキシ)シラン、メチルトリス(メタクリロイルオキシ
エトキシ)シラン等が挙げられる。
【0066】前記構造式(7)で表されるシラン化合物
としては、例えば、β−アクリロイルオキシエチルジメ
トキシメチルシラン、γ−アクリロイルオキシプロピル
メトキシジメチルシラン、γ−アクリロイルオキシプロ
ピルトリメトキシシラン、β−メタクリロイルオキシエ
チルジメトキシメチルシラン、γ−メタクリロイルオキ
シプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0067】前記構造式(8)で表されるシラン化合物
としては、例えば、ビニルメチルジメトキシシラン、ビ
ニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等
が挙げられる。
【0068】前記構造式(9)で表されるシラン化合物
としては、例えば、γ−メルカプトプロピルジメトキシ
メチルシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシ
ラン等が挙げられる。
【0069】前記構造式(10)で表されるシラン化合
物としては、例えば、p−ビニルフェニルメチルジメト
キシシラン、p−ビニルフェニルトリメトキシシラン等
が挙げられる。
【0070】かかるシラン化合物は、無機微粒子(a−
4)の固形分1モル部に対して、0〜3モル部の割合で
使用することが好ましい。シラン化合物の使用量が3モ
ル部を超える場合には、得られる光硬化性シートの耐磨
耗性が低下することがある。
【0071】シラン化合物で表面処理された無機微粒子
は、少量の水の存在下で、シラン化合物と無機微粒子を
加熱攪拌することにより、得ることができる。
【0072】無機微粒子(a−4)を、側鎖に光重合性
官能基を有する熱可塑性樹脂(a−1)および光重合性
単量体(a−3)に添加する方法としては、予め熱可塑
性樹脂(a−1)を合成後、光重合性単量体(a−3)
と無機微粒子を混合してもよいし、また熱可塑性樹脂
(a−1)を構成するビニル重合性単量体と無機微粒子
を混合した条件下で熱可塑性樹脂を重合した後に光重合
性単量体(a−3)を混合する方法等の任意の方法を選
択することができる。
【0073】本発明において、側鎖に光重合性官能基を
有する熱可塑性樹脂(a−1)中の光重合性官能基が脂
環式エポキシ基の場合には、脂環式エポキシ基と無機微
粒子表面の官能基(ヒドロキシル基,カルボキシル基,
シラノール基等)が混合の間に架橋し、ゲル化を起こす
ことがある。このようなゲル化現象を防止するために
は、アンモニアおよび沸点が100℃以下であるアミン
化合物から選ばれた少なくとも1種を含むことが好まし
い。光硬化性樹脂組成物(A)を用いて光硬化性シート
を形成する際に、シート中に過剰に残存しないために
は、アミン化合物の沸点は100℃以下であることが必
要である。
【0074】かかるアミン化合物としては、例えば、メ
チルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルア
ミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、トリメチルア
ミン、トリエチルアミン等が挙げられる。
【0075】アンモニアおよび沸点が100℃以下であ
るアミン化合物から選ばれた少なくとも1種の添加量と
しては、側鎖に脂環式エポキシ基を有する熱可塑性樹脂
(a−1)の固形分100質量部に対して、0.01〜
0.5質量部の範囲であることが好ましい。光硬化性樹
脂組成物(A)の安定性保持の観点から、アンモニアお
よび沸点が100℃以下であるアミン化合物から選ばれ
た少なくとも1種の添加量は0.01質量部以上が好ま
しいが、アミン化合物の添加量が0.5質量部を超える
と、光硬化性シートをインサート成形やインモールド成
形することによって得られた成形品を光硬化させても、
光カチオン重合が進行せず、耐擦傷性や耐薬品性が劣る
ことがある。
【0076】本発明の光硬化性樹脂組成物(A)におい
ては、熱可塑性樹脂(a−1)、光重合開始剤(a−
2)、光重合性単量体(a−3)および無機微粒子(a
−4)以外に、必要に応じて、増感剤、変性用樹脂、染
料、顔料およびレベリング剤やハジキ防止剤、紫外線吸
収剤、光安定剤、酸化安定剤等の添加剤を配合すること
ができる。
【0077】上記の増感剤は、光硬化反応を促進するも
のであって、その例としてはベンゾフェノン、ベンゾイ
ンイソプロピルエーテル、チオキサントン等が挙げられ
る。
【0078】また、熱可塑性樹脂(a−1)中の光重合
性官能基が脂環式エポキシ基の場合は、上記変性用樹脂
としては、光カチオン重合性を有することが好ましく、
グリシジルエーテル型エポキシ樹脂、グリシジルエステ
ル型エポキシ樹脂、エポキシ基としてグリシジル基を有
する熱可塑性樹脂等が挙げられる。
【0079】本発明に用いる基材シート(B)として
は、その使用方法によって好適なものが選ばれるが、例
えば、ABS(アクリロニトリル/ブタジエン/スチレ
ン共重合体)系樹脂、AS(アクリロニトリル/スチレ
ン共重合体)系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリスチレン
系樹脂、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、フ
ッ素系樹脂、セロファン系樹脂、セルロース系樹脂、ポ
リウレタン系樹脂、ナイロン等のポリアミド系樹脂、ポ
リエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリビニ
ルアルコール系樹脂、エチレンビニルアルコール系樹
脂、軟質アクリル系樹脂等の材質からなるシートが挙げ
られる。また、これらの各シートの複合体、積層体など
も使用することができる。なかでも、100℃加熱時に
おける伸度が100%以上である熱可塑性樹脂シート
が、インサート成形やインモールド成形時に金型形状へ
の追従性が良好となるので好ましい。光硬化性樹脂組成
物(A)との密着性や耐候性、透明性等を考慮すると、
さらに好ましくは、架橋ゴム成分を有する熱可塑性アク
リル樹脂シートである。架橋ゴム成分を有する透明熱可
塑性アクリル樹脂シートとしては、特開平8−3239
34号公報、特開平9−263614号公報等に開示さ
れているような、透明熱可塑性アクリルシートがある。
【0080】基材シート(B)の厚みは、500μmを
超える場合には剛性が大きくなり、インサート成形やイ
ンモールド成形用シートとしては適当でないため、通
常、基材シートの厚みは500μm以下であるのが好ま
しい。
【0081】また、基材シート(B)中には、必要に応
じて、適宜、ポリエチレンワックス、パラフィンワック
ス等の滑剤、シリカ、球状アルミナ、鱗片状アルミナ等
の減摩剤、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、
微粒子酸化セリウム系等の紫外線吸収剤、ヒンダードア
ミン系ラジカル捕捉剤等の光安定剤、可塑剤、安定剤、
着色剤等の各種添加剤を添加してもよい。
【0082】本発明の光硬化性シートは、基材シート
(B)上に光硬化性樹脂組成物(A)の層が積層された
構造を有し、インサート成形やインモールド成形時の加
工性に優れるだけでなく、各種物性(特に、耐候性−耐
磨耗性(表面硬度)−密着性のバランス)に優れた成形
品を与えることが可能な光硬化性シートである。光硬化
性樹脂組成物(A)層と基材シート(B)の間には、本
発明の光硬化性シートの優れた性状を損なわない限りに
おいては、さらに1層以上の光硬化性樹脂組成物層を積
層することも可能である。この場合、新たに導入する1
層以上の光硬化性樹脂組成物としては、光硬化性樹脂組
成物(A)と同等もしくは類似の組成物を用いると、光
硬化後の光硬化性シートの表面性状(特に、密着性、耐
候性、外観、意匠性)が良好となる傾向にあり、好まし
い。
【0083】本発明の光硬化性シートの製造方法として
は、例えば、光硬化性樹脂組成物(A)を有機溶媒等の
溶剤(S)に十分に攪拌溶解させ、グラビア印刷法、ス
クリーン印刷法、オフセット印刷法等の公知の印刷方法
や、ブレードコート法、ロッドコート法、ロールドクタ
ーコート法、ナイフコート法、コンマコート法、リバー
スロールコート法、トランスファーロールコート法、キ
スロールコート法、カーテンコート法、ディップコート
法等の公知のコート方法により基材シート(B)上に塗
工し、溶剤(S)除去のための加熱乾燥を行い、積層シ
ートとする方法がある。
【0084】溶剤(S)の除去のための加熱乾燥の際に
使用する乾燥機としては、溶剤(S)として可燃性有機
溶剤を使用する場合には、安全性の点から蒸気による空
気加熱式の熱源を備えたものを用い、乾燥機内の熱風を
向流接触せしめる方式およびノズルより光硬化性シート
に吹き付ける方式等を用いることができる。乾燥機の形
状は、アーチ式、フラット式等の公知のものを、目的に
合わせて選択して用いることができる。
【0085】光硬化性樹脂組成物(A)を攪拌溶解させ
る溶剤(S)としては、光硬化性樹脂組成物(A)の各
成分を溶解または均一に分散させ、かつ、基材シート
(B)の物性(機械的強度、透明性等)に実用上甚大な
悪影響を及ぼさない揮発性の溶剤であれば、特に制限さ
れない。そのような溶剤としては、メタノール、エタノ
ール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、エチ
レングリコール等のアルコール系溶剤、キシレン、トル
エン、ベンゼン等の芳香族系溶剤、ヘキサン、ペンタン
等の脂肪族炭化水素系溶剤、クロロホルム、四塩化炭素
等のハロゲン化炭化水素系溶剤、フェノール、クレゾー
ル等のフェノール系溶剤、メチルエチルケトン、メチル
イソブチルケトン、アセトン等のケトン系溶剤、ジエチ
ルエーテル、メトキシトルエン、1,2−ジメトキシエ
タン、1,2−ジブトキシエタン、1,1−ジメトキシ
メタン、1,1−ジメトキシエタン,1,4−ジオキサ
ン、THF等のエーテル系溶剤、ギ酸、酢酸、プロピオ
ン酸等の脂肪酸系溶剤、無水酢酸等の酸無水物系溶剤、
酢酸エチル、酢酸ブチル、ギ酸ブチル等のエステル系溶
剤、エチルアミン、トルイジン、ジメチルホルムアミ
ド、ジメチルアセトアミド等の窒素含有溶剤、チオフェ
ン、ジメチルスホキシド等の硫黄含有溶剤、ジアセトン
アルコール、2−メトキシエタノール(メチルセロソル
ブ)、2−エトキシエタノール(エチルセロソルブ)、
2−ブトキシエタノール(ブチルセロソルブ)、ジエチ
レングリコール、2−アミノエタノール、アセトシアノ
ヒドリン、ジエタノールアミン、モルホリン等の2種以
上の官能基を有する溶剤、あるいは水等の各種の公知の
溶剤を使用することができる。
【0086】また、ポリエチレン、ポリプロピレン等の
ポリオレフィンからなる基材シート上に上記樹脂液をコ
ーティングする際には、基材シートと光硬化性樹脂組成
物との密着性を上げるため、(1)予め、基材シート上
に低分子量ポリオレフィン等からなるプライマーを塗布
しておくか、または(2)予め、コロナ放電などで基材
シート表面を活性化しておく(このコロナ放電の行う工
程としては、活性化された直後が密着性が高いので、コ
ーティングの少し前であるのが好ましい)のが好まし
い。さらに、光硬化性樹脂組成物が光硬化時に体積収縮
し、基材シートとの密着性が低下するのを防ぐ目的で、
プライマー層を積層することが好ましい。
【0087】上記の方法により得られる本発明の光硬化
性シートは、基材シート側に印刷層を設けることによ
り、光硬化性加飾シートとすることもできる。
【0088】印刷層は、成形品表面に模様や文字等の加
飾を施すものである。加飾は、任意であるが、例えば、
木目、石目、布目、砂目、幾何学模様、文字、全面ベタ
等からなる絵柄が挙げられる。印刷層の材料としては、
塩化ビニル/酢酸ビニル系共重合体等のポリビニル系樹
脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアク
リル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリビニルアセター
ル系樹脂、ポリエステルウレタン系樹脂、セルロースエ
ステル系樹脂、アルキッド樹脂、塩素化ポリオレフィン
系樹脂等の樹脂をバインダーとし、適切な色の顔料また
は染料を着色剤として含有する着色インキを用いるのが
よい。
【0089】印刷層に用いられるインキの顔料として
は、例えば、次のものが使用できる。通常、顔料として
は、黄色顔料としてポリアゾ等のアゾ系顔料、イソイン
ドリノン等の有機顔料や黄鉛等の無機顔料、赤色顔料と
してポリアゾ等のアゾ系顔料、キナクリドン等の有機顔
料や弁柄等の無機顔料、青色顔料としてフタロシアニン
ブルー等の有機顔料やコバルトブルー等の無機顔料、黒
色顔料としてアニリンブラック等の有機顔料、白色顔料
として二酸化チタン等の無機顔料が使用できる。
【0090】印刷層に用いられるインキの染料として
は、本発明の効果を損なわない範囲で、各種公知の染料
を使用することができる。
【0091】また、インキの印刷方法としては、オフセ
ット印刷法、グラビア輪転印刷法、スクリーン印刷法等
の公知の印刷法やロールコート法、スプレーコート法等
の公知のコート法を用いるのが良い。この際、本発明に
おけるように、光重合性単量体の添加量を限定し、さら
に側鎖に光重合性官能基を有するポリマーを用いた場合
には、表面に粘着性が無く、印刷時のトラブルが少な
く、歩留まりが良好である。
【0092】また、成形品表面に加飾を施すための層と
して、印刷層の代わりに蒸着層を設けてもよいし、印刷
層と蒸着層の両方を設けてもよい。
【0093】蒸着層は、アルミニウム、ニッケル、金、
白金、クロム、鉄、銅、インジウム、スズ、銀、チタニ
ウム、鉛、亜鉛等の群から選ばれる少なくとも1種の金
属、またはこれらの合金もしくは化合物を使用して、真
空蒸着法やスパッタリング法、イオンプレーティング
法、鍍金法等の方法により形成することができる。
【0094】これらの加飾のための印刷層や蒸着層は、
所望の成形品表面外観が得られるよう、インサート成形
やインモールド成形時のシートの伸張度合いに応じて、
適宜その厚みを選択すればよい。
【0095】また、本発明の光硬化性シートは、基材シ
ート側に印刷層および/または蒸着層、接着層および必
要に応じてプライマーシートが形成された光硬化性加飾
シートとすることができる。その場合、光硬化性加飾シ
ートの好ましい厚み範囲は、30〜750μmである。
シート厚みが30μm未満の場合には、深しぼり成形を
行った際に、曲面でのシート厚みが著しく低下し、結果
として耐擦傷性や耐薬品性等のシート物性が低下するこ
とがある。また、シート厚みが750μmを超える場合
には、金型への形状追従性が低下することがある。
【0096】上記接着層には、印刷層または蒸着層と成
形樹脂、印刷層または蒸着層とプライマーシートとの密
着性を高める性質のものであれば、任意の合成樹脂状材
料を選択して用いることができる。例えば、成形樹脂が
ポリアクリル系樹脂の場合は、ポリアクリル系樹脂を用
いるとよい。また、成形樹脂がポリフェニレンオキシド
・ポリスチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、スチ
レン共重合体系樹脂、ポリスチレン系ブレンド樹脂の場
合は、これらの樹脂と親和性のあるポリアクリル系樹
脂、ポリスチレン系樹脂、ポリアミド系樹脂等を使用す
ればよい。さらに、成形樹脂がポリプロピレン系樹脂等
のポリオレフィン系樹脂である場合には、塩素化ポリオ
レフィン樹脂、塩素化エチレン−酢酸ビニル共重合体樹
脂、環化ゴム、クマロンインデン樹脂、ブロックイソシ
アネートを用いた熱硬化型ウレタン樹脂等が使用可能で
ある。なお、接着層の粘着性低減や耐熱性向上の目的
に、疎水性シリカやエポキシ樹脂、石油樹脂等をさらに
含有させることもできる。
【0097】上記プライマーシートは、必要に応じて形
成されるものであり、アクリル系樹脂、 ポリエステル
系樹脂、ポリウレタン系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル
共重合体系樹脂、塩素化ポリプロピレン系樹脂、塩素化
ポリエチレン系樹脂等の公知の樹脂が使用可能である。
なお、成形樹脂との密着性を高める目的からは、成形樹
脂と相溶性の材料からなるのが良い。現実的には、プラ
イマーシートは成形樹脂と同じ、または類似のポリマー
材料からなるのが好ましい。また、プライマーシートの
存在は、射出成形品の表面欠陥が光硬化性樹脂組成物上
に伝搬されるのを最少にするといった利点を与え、また
プライマーシート上に印刷層や接着層が存在する場合に
は射出成形時の溶融樹脂により各層の厚みや模様が乱れ
ることを防ぐといった利点を与える。その場合、プライ
マーシートは、光硬化性樹脂組成物の完全に円滑な上面
を呈しながら、成形樹脂の表面欠陥を吸収するほどの厚
みを有するのがよく、その厚みは50〜700μmの範
囲であることが好ましい。プライマーシートの厚みが5
0μm未満の場合には、 成型樹脂表面の表面欠陥を十
分に吸収することが困難となる場合がある。一方、プラ
イマーシート厚みが700μmを超える場合には、 金
型への形状追従性が低下することがある。
【0098】また、本発明の光硬化性シートは、基材シ
ート(B)上の光硬化性樹脂組成物(A)層の上に、さ
らにカバーフィルムを設けることもできる。このカバー
フィルムは、光硬化性シート表面の防塵に有効であり、
また活性エネルギー線照射前の光硬化性樹脂組成物
(A)層表面の傷つき防止にも有効である。
【0099】上記カバーフィルムは、後述するようにイ
ンサート成形やインモールド成形する前まで光硬化性樹
脂組成物(A)層に密着し、インサート成形やインモー
ルド成形する際は直ちに剥離されるので、光硬化性樹脂
組成物(A)層に対して適度な密着性と良好な離型性を
有していることが好ましい。このような条件を満たした
フィルムであれば、任意のフィルムを選択して用いるこ
とができる。そのようなフィルムとしては、例えば、ポ
リエチレン系フィルム、ポリプロピレン系フィルム、ポ
リエステル系フィルム等が挙げられる。
【0100】ところで、自動車のボディーパネルやスポ
イラー等のような成形品のサイズが大きく、かつ、成形
品の肉厚が薄い場合には、成形樹脂から発生するガスが
成形樹脂内に残留したり、金型内の空気が成形樹脂とシ
ートの間に介在しやすくなり、成形樹脂に対するシート
の密着性が低下するという問題が生じることがある。そ
のような場合、成形樹脂に接するシート面に、ガス透過
性を有する層を設けることで、問題を解決することがで
きる。そのようなガス透過性を有する層として、スパン
デックス、アクリル繊維、ポリエチレン系繊維、ポリア
ミド系繊維等で構成された織布または不織布を挙げるこ
とができる。また、織布/不織布の代わりに、発泡層か
らなるものを用いてもよい。発泡層の形成方法として
は、公知の発泡剤を含む樹脂溶液を塗布した後に加熱等
により発泡させて連続空孔を形成させる方法等が挙げら
れる。
【0101】次に、上記の光硬化性シートおよび光硬化
性加飾シートを用いた成形品の製造方法の一例について
説明する。
【0102】まず、光硬化性シートまたは光硬化性加飾
シートにカバーフィルムが設けられている場合は、カバ
ーフィルムをシートより剥離除去する。なお、カバーフ
ィルムは、金型内にシートを挿入配置する直前に剥離し
てもよいし、シートを金型内に挿入配置する遥か以前に
剥離しておいてもよい。ただし、光照射前の光硬化性樹
脂組成物(A)層の防塵や傷つき防止を考慮すると、前
者の方が好ましい。
【0103】光硬化性シートまたは光硬化性加飾シート
を、光硬化性樹脂組成物(A)側が金型の内壁面に向か
い合うように挿入配置する(すなわち、光硬化性樹脂組
成物(A)層の反対側が成形樹脂と接する状態にす
る)。この際、長尺のシートのまま(ロールから巻き出
しながら)必要部分を間欠的に送り込んでもよいし、シ
ートを枚葉化して1枚ずつ送り込んでもよい。特に、加
飾のための印刷層や蒸着層を有する長尺のシートを使用
する場合、位置決め機構を有する送り装置を使用して、
加飾のための層と金型との見当が一致するようにすると
よい。また、シートを間欠的に送り込む際に、シートの
位置をセンサーで検出した後にシートを固定するように
すれば、常に同じ位置でシートを固定することができ、
加飾のための層の位置ずれが生じないので便利である。
【0104】次いで、必要に応じて、光硬化性シートま
たは光硬化性加飾シートを予備成形する。例えば、ホッ
トパック等の加熱手段によりシートをその軟化点以上に
軟化させ、金型に設けられた吸引孔を通じて真空吸引す
ることにより金型形状にシートを追従させることで予備
成形することができる。なお、シートを金型内に挿入配
置する前に、シートを予めシートの熱変形温度未満の温
度に予熱しておくと、シートを金型内に挿入配置後に行
う加熱時間を短縮することができ、生産性を向上させる
ことが可能となる。もちろん、シートを予備成形せず
に、後述する成形樹脂の射出圧により、シートの成形お
よび成形樹脂との一体化を同時に行うことも可能であ
る。この際、シートを予め予備加熱して軟化させておく
ことも可能である。
【0105】また、射出成形用金型とは別の予備成形用
金型を用いて、真空成形法、圧空成形法、熱せられたゴ
ムを押し付ける押圧成形法、プレス成形法等の公知の成
形法により、シートを予め所望の形状に予備成形した後
に、予備成形したシートを光硬化性樹脂組成物樹脂組成
物側が金型の内壁面に向かい合うように成形用金型に挿
入配置してもよい。
【0106】その後、金型を閉じて、キャビティー内に
溶融状態の成形樹脂を射出し、樹脂を固化させることに
より光硬化性シートまたは光硬化性加飾シートが表面に
配置された成形品を形成する。
【0107】本発明で使用する成形樹脂としては、種類
は問わず、射出成形可能な全ての樹脂が使用可能であ
る。そのような成形樹脂としては、例えば、ポリエチレ
ン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリブテン系樹脂、
ポリメチルペンテン系樹脂、エチレン−プロピレン共重
合体樹脂、エチレン−プロピレン−ブテン共重合体樹
脂、オレフィン系熱可塑性エラストマー等のオレフィン
系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ABS(アクリロニトリ
ル/ブタジエン/スチレン系共重合体)系樹脂、AS
(アクリロニトリル/スチレン系共重合体)系樹脂、ア
クリル系樹脂、ウレタン系樹脂、不飽和ポリエステル系
樹脂、エポキシ系樹脂等の汎用の熱可塑性または熱硬化
性樹脂を挙げることができる。また、ポリフェニレンオ
キシド・ポリスチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹
脂、ポリアセタール系樹脂、ポリカーボネート変性ポリ
フェニレンエーテル系樹脂、ポリエチレンテレフタレー
ト系樹脂等の汎用エンジニアリング樹脂やポリスルホン
系樹脂、ポリフェニレンサルファイド系樹脂、ポリフェ
ニレンオキシド系樹脂、ポリエーテルイミド系樹脂、ポ
リイミド系樹脂、液晶ポリエステル系樹脂、ポリアリル
系耐熱樹脂等のスーパーエンジニアリング樹脂を使用す
ることもできる。さらに、ガラス繊維や無機フィラー
(タルク、炭酸カルシウム、シリカ、マイカ等)等の補
強材、ゴム成分等の改質剤を添加した複合樹脂や各種変
性樹脂を使用することができる。なお、成形樹脂の成形
後の収縮率を前記シートの収縮率に近似させることに
り、インサート成形やインモールド成形により得られた
成形品の反りやシートの剥がれ等の不具合を解消できる
ので好ましい。
【0108】最後に、金型内より成形品を取り出した
後、光照射することにより成形品表面の光硬化性樹脂組
成物を光硬化させる。
【0109】照射する光としては、電子線、紫外線、γ
線等を挙げることができる。照射条件は、光硬化性樹脂
組成物(A)層の光硬化特性に応じて定められるが、照
射量は、通常500〜10,000mJ/cm2 程度で
ある。これによって、光硬化性樹脂組成物が硬化して硬
質の被膜が表面に形成された成形品を得ることができ
る。
【0110】成形品に接着した光硬化性シートまたは光
硬化性加飾シートのうち、不要な部分は必要に応じて適
宜トリミングして除去する。このトリミングは、シート
を金型内に挿入配置した後や、成形品に光照射する前、
または光照射した後に行うことができる。トリミングの
方法としては、レーザー光線等を照射してシートを焼き
切る方法、トリミング用の打ち抜き型を作製しプレス加
工によってシートを打ち抜く方法、人手によりシートを
ちぎるようにして除去する方法等の公知の方法を用いる
ことができる。
【0111】なお、上記では、成形品の製造方法とし
て、射出成形を用いた製造方法について説明したが、射
出成形の代わりにブロー成形を用いることも可能であ
る。
【0112】また、本発明の光硬化性シートにより加飾
された成形品が主に屋外で使用される場合には、シート
に紫外線吸収剤や光安定剤を加えることもできる。紫外
線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール、ベンゾフェノ
ン、サリチル酸エステル等の有機物、または粒径0.2
μm以下の微粒子状の酸化亜鉛、酸化セリウム、酸化チ
タン等の無機物を使用することができる。また、光安定
剤としては、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4
−ピペリジニル)セバケート等のヒンダードアミン系ラ
ジカル捕捉剤、ピペリジン系ラジカル捕捉剤等のラジカ
ル捕捉剤を用いることができる。
【0113】このようにして得られた成形品は、成形と
同時に色もしくはデザインが付与され、さらには短時間
の光照射によって、耐磨耗性、耐薬品性および耐候性等
が向上する。さらに、従来の成形後のスプレー塗装等と
比較して、工程の短縮、歩留まりの向上、環境への影響
低減がはかれる。
【0114】また、本発明の光硬化性シートは、直接あ
るいは接着剤層を介して被着体にラミネートすることに
より、被着体表面に積層して使用することもできる。被
着体としては、各種素材からなる平板、曲面板等の板
材、シート、フィルムあるいは各種立体形状物品(成形
品)がある。例えば、射出成形品等の曲面を有する成形
品に対しても、本発明の光硬化性シートを使用すること
ができる。また、本発明の光硬化性シートをラミネート
した被着体をさらに真空成形等の二次加工に付すること
も可能である。
【0115】被着体として用いられる素材としては、木
材単板、木材合板、パーティクルボード、中密度繊維板
(MDF)等の木材板、木質繊維板等の木質板、鉄、ア
ルミニウム等の金属、アクリル系樹脂、ポリカーボネー
ト系樹脂、エチレン・酢酸ビニル共重合体系樹脂、エチ
レンビニルアセテート系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポ
リスチレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ABS系樹
脂、フェノール系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、セルロ
ース系樹脂、ゴム等の樹脂が挙げられる。
【0116】これらの各被着体への本発明の光硬化性シ
ートの積層方法としては、例えば、次の1〜4の方法を
挙げることができる。
【0117】1.接着剤層を間に介して、または介さず
に、板状またはフィルム状基材に加圧ローラーで加圧し
て積層する方法 2.特公昭56−45768号公報、特公昭60−58
014号公報等に記載されているように、光硬化性シー
トを成形品の表面に接着剤層を介して、または介さず
に、対向させないしは載置し、成形品側からの真空吸引
による圧力差により光硬化性シートを成形品表面に積層
する、いわゆる真空プレス積層方法 3.特公昭61−5895号公報、特公平3−2666
号公報等に記載されているように、円柱、多角柱等の柱
状基材の長軸方向に、光硬化性シートを間に接着剤層を
介して、または介さずに、供給しつつ、多数の向きの異
なるローラーにより、柱状体を構成する複数の側面に順
次光硬化性シートを加圧接着して積層していく、いわゆ
るラッピング加工方法 4.特開昭48−47972号公報等に記載されている
ように、まず光硬化性シートを板状基材に接着剤層を介
して、または介さずに、積層し、次いで板状基材の光硬
化性シートとは反対側の面に、光硬化性シートと板状基
材との界面に到達する、断面がV字状またはU字状の溝
を切削し、次いでこの溝内に接着剤を塗布した上で、溝
を折り曲げ、箱体または柱状体を成形する、いわゆるV
カットまたはUカット加工法
【0118】
【実施例】以下に、本発明を実施例に基づいて具体的に
説明する。なお、例中、「部」は「質量部」を意味す
る。
【0119】合成例1(側鎖に光重合性官能基を有する
熱可塑性樹脂Aの合成) 窒素導入口、攪拌機、コンデンサーおよび温度計を備え
た1Lの4つ口フラスコに、メチルエチルケトン50部
を入れ、80℃に昇温した。窒素雰囲気下でメチルメタ
クリレート67.8部、グリシジルメタクリレート3
2.2部およびアゾビスイソブチロニトリル0.5部の
混合物を3時間かけて滴下した。その後、メチルエチル
ケトン80部とアゾビスイソブチロニトリル0.2部の
混合物を加え、重合させた。4時間後、メチルエチルケ
トン44.3部、ハイドロキノンモノメチルエーテル
0.5部、トリフェニルホスフィン2.5部およびアク
リル酸16.2部を加え、空気を吹き込みながら80℃
で30時間攪拌した。その後、冷却した後、反応物をフ
ラスコより取り出し、側鎖に光重合性官能基を有する熱
可塑性樹脂Aの溶液を得た。
【0120】側鎖に光重合性官能基を有する熱可塑性樹
脂Aにおける単量体の重合率は99.5%以上であり、
ポリマー固形分量は40質量%、数平均分子量は約6
万、ガラス転移温度は約77℃、二重結合当量は平均5
18g/モルであった。
【0121】合成例2(側鎖に光重合性官能基を有する
熱可塑性樹脂Bの合成) 窒素導入口、撹拌機、コンデンサーおよび温度計を備え
た1Lの4つ口フラスコに、窒素雰囲気下で、3,4−
エポキシシクロヘキシルメチルメタクリレート100
部、メチルエチルケトン60部およびアゾビスイソブチ
ロニトリル0.3部を入れ、撹拌しながら湯浴の温度を
75℃に上げ、その温度で2時間重合させた。次いで、
アゾビスイソブチロニトリル0.7部を1時間おきに5
回に分けて添加した後、フラスコ内温度を溶剤の沸点ま
で上昇させてその温度でさらに2時間重合させた。その
後、フラスコ内温度が50℃以下になってから、メチル
エチルケトン90部を添加して重合反応物をフラスコよ
り取り出し、側鎖に光重合性官能基を有する熱可塑性樹
脂Bの溶液を得た。
【0122】側鎖に光重合性官能基を有する熱可塑性樹
脂Bにおける単量体の重合率は99.5%以上であり、
ポリマー固形分量は40質量%、数平均分子量は約1.
2万、ガラス転移温度は約73℃、脂環式エポキシ当量
(側鎖脂環式エポキシ基1個あたりの平均分子量)は平
均196g/モルであった。
【0123】コロイダルシリカの表面処理例1(表面処
理コロイダルシリカS1の調製)
【0124】
【表2】
【0125】注)数値は固形分換算のモル部である。 1)IPA−ST:イソプロパノール分散コロイダルシ
リカゾル(日産化学工業(株)製)、シリカ粒子径=1
5nm 2)KBM503:γ−メタクリロイルオキシプロピル
トリメトキシシラン(信越化学工業(株)製)、分子量
=248 攪拌機、コンデンサーおよび温度計を備えたフラスコ
に、上記表2に記載の成分を入れ、攪拌しながら湯浴の
温度を75℃に上げ、その温度で2時間反応させること
により、イソプロパノール中に分散され、表面がシラン
化合物で処理されたコロイダルシリカを得た。続いて、
イソプロパノールを留去した後にトルエンを添加するこ
とを繰り返し、完全にイソプロパノールをトルエンに置
換することにより、トルエン中に分散され、表面がシラ
ン化合物で処理されたコロイダルシリカS1を得た。コ
ロイダルシリカS1が分散されたトルエン溶液の固形分
は63質量%であった。
【0126】光硬化性樹脂溶液の調製(光硬化性樹脂溶
液1〜6の調製) 上記で合成した側鎖に光重合性官能基を有する熱可塑性
樹脂A溶液およびB溶液、表面処理コロイダシリカS1
分散トルエン溶液および表3に示す化合物を用い、表3
の組成を有する光硬化性樹脂溶液1〜6を調製した。
【0127】
【表3】
【0128】注)数値は質量部である。 1)トリメチロールプロパントリアクリレート 2)トリス(2−(メタ)アクリルオキシエチル)イソ
シアヌレート 3)1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン 4)トリフェニルスルホニウム6フッ化アンチモネート 5)光硬化性樹脂溶液中の熱可塑性樹脂と単量体の合計
質量に対する、単量体の質量分率 実施例1〜4、比較例1 得られた光硬化性樹脂溶液1〜5をそれぞれプロペラ型
ミキサーで撹拌し、基材シートとして架橋ゴム成分を含
む、厚さ125μmで幅640mmの透明軟質アクリル
シートA(三菱レイヨン(株)製、HBX−N47)上
にコンマロールコーターにて塗工幅600mmで塗工を
行った。
【0129】引き続いて、下記表4に示す温度条件に設
定したトンネル型乾燥炉(巾800mm、高さ100m
m、長さ8m、4つの乾燥ゾーン(1ゾーンの長さ2
m)に分割、シートの動きに対して向流になるように熱
風を送り込む方式)の中を、3m/分の速度で通過させ
て溶剤を揮発させ、厚さ8μmの光硬化性樹脂層を形成
した。この時の各乾燥ゾーンの滞在時間を表4に示す。
【0130】
【表4】
【0131】続いて、幅550mmにスリットして20
mの長さにABS製コアにロール状に巻き取った。な
お、透明軟質アクリルシートAのみの破断伸度をテンシ
ロンにより測定すると、100℃加熱時の破断伸度は2
60%であった。
【0132】これらの光硬化性シートを、光硬化性樹脂
組成物が金型の内壁面に向き合うように金型内に配置
し、次いで赤外線ヒーター(温度350℃)で10秒間
シートを予備加熱した後、さらに加熱を行いながら真空
吸引することにより金型形状にシートを追従させた。な
お、この金型の形状は、切頭角錐形状で、切頭面のサイ
ズは100mm×100mmで、底面のサイズは108
mm×117mm、深さは10mmであり、切頭面の端
部の曲率半径はそれぞれ3、5、7、10mmであっ
た。その際の金型追従性を目視で評価したところ、各端
部とも良好に追従していた。
【0133】次に、成形温度280〜300℃、金型温
度40〜60℃の条件において、ポリカーボネート樹脂
を成形樹脂として用いてインモールド成形を行い、光硬
化性シートが成形品表面に密着した成形品を得た。この
際の成形用金型の汚れを目視で評価した。結果を表5に
示す。
【0134】次いで、紫外線照射装置を用いて、約70
0mJ/cm2 の紫外線を照射して光硬化性樹脂組成物
を硬化させ、表面物性を評価した。結果を表5に示す。
【0135】また、40℃にてロール状態で長期間(2
週間、6ヶ月間、1年間)保存した後、巻きだしながら
表面の粘着性を評価した。結果を表5に示す。
【0136】シート物性評価方法 密着性:JIS K 5400に準じて、カッターで1
×1mm幅の碁盤目を100マス作製し、ニチバン製セ
ロテープ(登録商標)を圧着後、90度の角度に剥離し
た。さらに、同じ部位でセロテープの圧着−剥離を合計
5回繰り返した後の、フィルム外観を目視評価した。
【0137】 ○:外観変化なし △:碁盤目周囲の剥離、もしくは碁盤目剥離少し有り ×:碁盤目周囲の剥離、および/もしくは碁盤目剥離著
しい 耐酸性:47質量%硫酸水溶液を40℃で3時間スポッ
ト試験した後の外観を目視評価した。
【0138】 ○:良好 △:薄く跡有り ×:著しい跡有り 耐温水性:80℃の温水中に24時間浸漬後のシート状
態を目視評価した。
【0139】 ○:良好 △:薄く白化有り ×:著しい白化有り 透明性:ASTM D1003に準じて、ヘイズメータ
ーを用いて全光線透過率およびヘイズを測定した。
【0140】耐磨耗性:テーバー磨耗試験(片側500
g荷重、CS−10F磨耗輪を用い、回転速度60rp
m、試験回数100回で試験を実施)後の曇価をヘイズ
メーターで測定した。そして(試験後の曇価)−(試験
前の曇価)で表される数値を耐磨耗性(%)として示し
た。
【0141】耐候性:サンシャインウエザーメーター
(スガ試験機製)を用い、乾燥48分、雨12分のサイ
クルで2000時間曝露試験したときの外観を目視評価
した。
【0142】 ○:良好 ×:白化またはクラック有り 比較例2 光硬化性樹脂溶液として表3の光硬化性樹脂溶液6を用
いたことを除き実施例1の操作を繰り返して、光硬化性
シートを得た。しかし、得られた光硬化性シート表面は
粘着性が非常に強かった。
【0143】この光硬化性シートを用い、実施例1と同
様にしてインモールド成形を行ったが、金型に光硬化性
シート面が貼り付いてしまい、容易に金型から成形品を
取り外すことはできなかった。また、成形品を取り出し
た後の金型は汚れており、成形品の表面も平滑性が無
く、外観不良であった。
【0144】
【表5】
【0145】1)○:粘着性無し、○△:僅かに粘着性
あり、△:粘着性有り、×:粘着性大で、巻きだし不可 2)○:汚れ無し、△:若干汚れ有り、×:汚れ大 3)本発明の光硬化性樹脂層を有していない透明軟質ア
クリルシートのみをインモールド成形した成形品の耐磨
耗性は50%であった。
【0146】実施例5〜8 実施例1〜4で使用した光硬化性樹脂溶液をそれぞれプ
ロペラ型ミキサーで撹拌し、基材シートとして架橋ゴム
成分を含む、厚さ200μmで幅640mmの透明軟質
アクリルシートB(三菱レイヨン(株)製、HBX−N
47)上に塗工幅600mmに塗布した。
【0147】引き続き、上記表4の条件にて乾燥させ、
厚さ20μmの光硬化性樹脂層を形成した。続いて、幅
550mmにスリットして20mの長さにABS製コア
にロール状に巻き取った。なお、透明軟質アクリルシー
トBのみの破断伸度をテンシロンにより測定すると、1
00℃加熱時の破断伸度は400%であった。
【0148】次いで、黒、茶、黄の各色の顔料から成る
インキを用い、透明軟質アクリルシート面に絵柄をグラ
ビア印刷法によって印刷した後、光硬化性加飾シートを
得た。これらのシートは表面粘着性がないので、印刷適
性は良好であった。シートの厚みは223μmであっ
た。
【0149】これらの光硬化性加飾シートを、光硬化性
樹脂組成物が金型の内壁面に向き合うように金型内に配
置し、次いで赤外線ヒーター(温度300℃)で15秒
間シートを予備加熱した後、さらに加熱を行いながら真
空吸引することにより金型形状にシートを追従させた。
【0150】次に、成形温度220〜250℃、金型温
度40〜60℃の条件において、アクリロニトリル/ブ
タジエン/スチレン共重合体樹脂を成形樹脂として用い
てインモールド成形を行い、光硬化性加飾シートが成形
品表面に密着した成形品を得た。その際のシートの金型
追従性および金型離型性は共に良好であった。
【0151】次いで、紫外線照射装置を用いて、約70
0mJ/cm2 の紫外線を照射して光硬化性樹脂組成物
を硬化させ、表面硬度が高く、光沢に優れ、印刷絵柄を
有して意匠性に優れる成形品を得た。
【0152】実施例9〜12 実施例1〜4で使用した光硬化性樹脂溶液をそれぞれプ
ロペラ型ミキサーで撹拌し、基材シートとして架橋ゴム
成分を含む、厚さ200μmで幅640mmの透明軟質
アクリルシートB上に塗工幅600mmに塗布した。
【0153】引き続き、上記表4の条件にて乾燥させ、
厚さ20μmの光硬化性樹脂層を形成した。続いて、幅
550mmにスリットして20mの長さにABS製コア
にロール状に巻き取った。なお、透明軟質アクリルシー
トBのみの破断伸度をテンシロンにより測定すると、1
00℃加熱時の破断伸度は400%であった。
【0154】次いで、黒、茶、黄の各色の顔料から成る
インキを用い、透明軟質アクリルシート面に絵柄をグラ
ビア印刷法によって印刷した。これらのシートは表面粘
着性がないので、印刷適性は良好であった。
【0155】さらに、塩素化ポリプロピレン樹脂(塩素
化度15%)からなる接着層を、印刷面にグラビア印刷
法によって形成させた後、光硬化性加飾シートを得た。
シートの厚みは255μmであった。
【0156】これらの光硬化性加飾シートを、光硬化性
樹脂組成物が金型の内壁面に向き合うように金型内に配
置し、次いで赤外線ヒーター(温度300℃)で15秒
間シートを予備加熱した後、さらに加熱を行いながら真
空吸引することにより金型形状にシートを追従させた。
【0157】次に、成形温度200〜240℃、金型温
度30〜60℃の条件において、ポリプロピレン系樹脂
(タルクを20質量%含有、エチレン−プロピレン系ゴ
ムを10質量%含有)を成形樹脂として用いてインモー
ルド成形を行い、光硬化性加飾シートが成形品表面に密
着した成形品を得た。その際のシートの金型追従性およ
び金型離型性は共に良好であった。
【0158】次いで、紫外線照射装置を用いて、約70
0mJ/cm2 の紫外線を照射して光硬化性樹脂組成物
を硬化させ、表面硬度や耐磨耗性が高く、光沢に優れ、
印刷絵柄を有して意匠性に優れる成形品を得た。
【0159】
【発明の効果】以上に説明したように、本発明の製造方
法により、色もしくはデザインの印刷が可能な表面非粘
着性の光硬化性の印刷シートが容易に得られ、それを用
いて射出成形時に同時成形することにより、樹脂成形品
の上に、色もしくはデザイン等の意匠をもち、良好な外
観、耐磨耗性、耐候性および耐薬品性を有する表面が形
成でき、インストルメントパネル、コンソールボック
ス、メーターカバー、ドアロックベゼル、ステアリング
ホイール、パワーウィンドウスイッチベース、センター
クラスター、ダッシュボード等の自動車内装材用途、ウ
ェザーストリップ、バンパー、バンパーガード、サイド
マッドガード、ボディーパネル、スポイラー、フロント
グリル、ストラットマウント、ホイールキャップ、セン
ターピラー、ドアミラー、センターオーナメント、サイ
ドモール、ドアモール、ウインドモール等、窓、ヘッド
ランプカバー、テールランプカバー、風防部品等の自動
車外装材用途、AV機器や家電製品のフロントパネル、
ボタン、エンブレム、表面化粧材等の用途、携帯電話等
のハウジング、表示窓、ボタン等の用途、さらには家具
用外装材用途、壁面、天井、床等の建築用内装材用途、
サイディング等の外壁、塀、屋根、門扉、破風板等の建
築用外装材用途、窓枠、扉、手摺、敷居、鴨居等の建具
類の表面化粧材用途、各種ディスプレイ、レンズ、ミラ
ー、ゴーグル、窓ガラス等の光学部材用途、或いは、電
車、航空機、船舶等の自動車以外の各種乗物の内/外装
材用途、瓶、化粧品容器、小物入れ等の各種包装容器お
よび材料、景品や小物等の雑貨等のその他各種用途に好
適に使用することができる。また、透明樹脂の上におい
てはその透明性を活かしたまま良好な耐磨耗性、耐候性
および耐薬品性を有する表面が形成でき、自動車や鉄道
車両、飛行機等の窓やヘッドランプカバー、風防部品等
に好適に使用することができる。また、成形品の表面を
塗装する場合に比べて工程数を省略することができて生
産性もよく、環境に対する影響も少ない。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) B29L 9:00 B29L 9:00 C08L 33:06 C08L 33:06 (72)発明者 末村 賢二 広島県大竹市御幸町20番1号 三菱レイヨ ン株式会社中央技術研究所内 Fターム(参考) 4F006 AA22 AB24 AB67 BA02 BA03 BA12 BA15 BA16 EA03 4F206 AD05 AD08 AD20 AG03 JA07 JB13 JF05 JF23 JW34 4J027 AA01 AA08 BA05 BA07 BA13 BA17 CC05 4J036 AK08 GA01 GA03 HA02 JA15

Claims (14)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 側鎖に光重合性官能基を有する熱可塑性
    樹脂(a−1)、光重合開始剤(a−2)および光重合
    性単量体(a−3)を含み、(a−1)成分と(a−
    3)成分の総量に対して(a−3)成分が10質量%未
    満である光硬化性樹脂組成物。
  2. 【請求項2】 熱可塑性樹脂(a−1)の側鎖の光重合
    性官能基がラジカル重合性不飽和基である、請求項1記
    載の光硬化性樹脂組成物。
  3. 【請求項3】 熱可塑性樹脂(a−1)の側鎖の光重合
    性官能基が脂環式エポキシ基である、請求項1記載の光
    硬化性樹脂組成物。
  4. 【請求項4】 さらに無機微粒子(a−4)を含む、請
    求項1〜3のいずれかに記載の光硬化性樹脂組成物。
  5. 【請求項5】 無機微粒子(a−4)がコロイダルシリ
    カである、請求項4記載の光硬化性樹脂組成物。
  6. 【請求項6】 基材シート(B)と、およびその上に積
    層された、請求項1〜5のいずれかに記載した光硬化性
    樹脂組成物(A)の層を含む光硬化性シート。
  7. 【請求項7】 基材シート(B)が、架橋ゴム成分を有
    する熱可塑性アクリル樹脂シートである、請求項6記載
    の光硬化性シート。
  8. 【請求項8】 請求項6または7に記載した光硬化性シ
    ートの基材シート側に形成された印刷層および/または
    蒸着層を含む光硬化性加飾シート。
  9. 【請求項9】 請求項6または7に記載した光硬化性シ
    ートの基材シート側に形成された印刷層および/または
    蒸着層、および接着層を含む光硬化性加飾シート。
  10. 【請求項10】 請求項6または7に記載した光硬化性
    シートの基材シート側に形成された印刷層及び/または
    蒸着層、および接着層およびプライマーシートを含む光
    硬化性加飾シート。
  11. 【請求項11】 請求項6〜10のいずれかに記載した
    光硬化性シートまたは光硬化性加飾シートを、光硬化性
    樹脂組成物(A)側が金型の内壁面に向かい合うように
    挿入配置する工程、金型を閉じて、溶融樹脂を金型内に
    射出し、樹脂を固化させることにより光硬化性シートま
    たは光硬化性加飾シートが表面に配置された樹脂成形品
    を形成する工程、および光照射することにより成形品表
    面の光硬化性樹脂組成物を光硬化させる工程を含む成形
    品の製造方法。
  12. 【請求項12】 請求項6〜10のいずれかに記載した
    光硬化性シートまたは光硬化性加飾シートを、光硬化性
    樹脂組成物(A)側が金型の内壁面に向かい合うように
    挿入配置する工程、光硬化性シートまたは光硬化性加飾
    シートを予備成形してシートを金型形状に追従させる工
    程、金型を閉じて、溶融樹脂を金型内に射出し、樹脂を
    固化させることにより光硬化性シートまたは光硬化性加
    飾シートが表面に配置された樹脂成形品を形成する工
    程、および光照射することにより成形品表面の光硬化性
    樹脂組成物を光硬化させる工程を含む成形品の製造方
    法。
  13. 【請求項13】 請求項6〜10のいずれかに記載した
    光硬化性シートまたは光硬化性加飾シートを、光硬化性
    樹脂組成物(A)側が金型の内壁面に向かい合うように
    予備成形用金型に挿入配置する工程、光硬化性シートま
    たは光硬化性加飾シートを予備成形してシートを金型形
    状に追従させる工程、予備成形した光硬化性シートまた
    は光硬化性加飾シートを、光硬化性樹脂組成物(A)側
    が金型の内壁面に向かい合うように成形用金型に挿入配
    置する工程、成形用金型を閉じて、溶融樹脂を金型内に
    射出し、樹脂を固化させることにより光硬化性シートま
    たは光硬化性加飾シートが表面に配置された樹脂成形品
    を形成する工程、および光照射することにより成形品表
    面の光硬化性樹脂組成物を光硬化させる工程を含む成形
    品の製造方法。
  14. 【請求項14】 請求項11〜13のいずれかに記載し
    た製造方法により得られた成形品。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2005059655A2 (en) * 2003-12-16 2005-06-30 Koninklijke Philips Electronics N.V. A process for the fabrication of optical microstructures

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* Cited by examiner, † Cited by third party
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WO2005059655A2 (en) * 2003-12-16 2005-06-30 Koninklijke Philips Electronics N.V. A process for the fabrication of optical microstructures
WO2005059655A3 (en) * 2003-12-16 2006-05-18 Koninkl Philips Electronics Nv A process for the fabrication of optical microstructures

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