JP2003311379A - 冷却ロール、薄帯状磁石材料、磁石粉末およびボンド磁石 - Google Patents

冷却ロール、薄帯状磁石材料、磁石粉末およびボンド磁石

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JP2003311379A
JP2003311379A JP2002126850A JP2002126850A JP2003311379A JP 2003311379 A JP2003311379 A JP 2003311379A JP 2002126850 A JP2002126850 A JP 2002126850A JP 2002126850 A JP2002126850 A JP 2002126850A JP 2003311379 A JP2003311379 A JP 2003311379A
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聖 新井
Hiroshi Kato
洋 加藤
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Abstract

(57)【要約】 【課題】磁気特性が優れ、信頼性に優れた磁石を提供す
ることができる冷却ロール、薄帯状磁石材料、磁石粉末
およびボンド磁石を提供すること。 【解決手段】急冷薄帯製造装置1は、筒体2と、加熱用
のコイル4と、冷却ロール5とを備えている。冷却ロー
ル5は、ロール基材51と、溶射により形成された表面
層52とを有している。表面層52の構成材料の室温付
近における熱伝導率は、80W・m−1・K−1以下で
あり、ロール基材51の構成材料の熱伝導率より低い。
また、冷却ロール5の周面53には、ガス抜き手段が設
けられている。不活性ガス中、筒体2の下端に設けられ
たノズル3から磁石合金の溶湯6を射出し、周面53に
衝突させ、冷却固化することにより、急冷薄帯8は製造
される。この場合、冷却ロール5の周面53とパドル7
との間にガスが侵入するが、ガス抜き手段により、この
ガスは、周面53とパドル7との間から排出される。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、冷却ロール、薄帯
状磁石材料、磁石粉末およびボンド磁石に関するもので
ある。
【0002】
【従来の技術】磁石材料として、希土類元素を含む合金
で構成される希土類磁石材料は、高い磁気特性を有する
ため、モータ等に用いられた場合に、高性能を発揮す
る。
【0003】このような磁石材料は、例えば急冷薄帯製
造装置を用いた急冷法により製造される。以下、この製
造方法を説明する。
【0004】図21は、従来の磁石材料を単ロール法に
より製造する装置(急冷薄帯製造装置)における溶湯の
冷却ロールへの衝突部位付近の状態を示す断面側面図で
ある。
【0005】同図に示すように、所定の合金組成の磁石
材料(以下「合金」と言う)を溶融し、その溶湯60を
図示しないノズルから射出し、ノズルに対して図21中
矢印A方向に回転している冷却ロール500の周面53
0に衝突させ、この周面530と接触させることにより
合金溶湯を急冷、凝固し、薄帯状(リボン状)の磁石材
料、すなわち急冷薄帯80を連続的に形成する。なお、
図21中、溶湯60の凝固界面710を点線で示す。
【0006】ここで、希土類元素は、酸化され易く、酸
化されると磁気特性が低下するため、前記急冷薄帯80
の製造は、主として不活性ガス中で行われていた。
【0007】そのため、周面530と溶湯60のパドル
(湯溜り)70との間にガスが侵入し、急冷薄帯80の
ロール面(冷却ロール500の周面530と接触する
面)810にディンプル(凹部)9を生じることがあっ
た。この傾向は、冷却ロール500の周速度が大きくな
るほど顕著となり、生じるディンプルの面積も大きくな
る。
【0008】このディンプル9(特に、巨大ディンプ
ル)が生じると、ディンプル部分においては、ガスの介
在により冷却ロール500の周面530との接触不良が
生じ、冷却速度が低下して、急速な凝固が妨げられる。
そのため、ディンプル9が生じた部位では、合金の結晶
粒径が粗大化し、磁気特性が低下する。
【0009】このような低磁気特性の部分を含む急冷薄
帯を粉砕して得られる磁石粉末は、磁気特性のバラツキ
が大きくなる。したがって、このような磁石粉末を用い
て製造されたボンド磁石は、低い磁気特性しか得られ
ず、また、耐食性も低下する。
【0010】また、従来、急冷薄帯製造装置を構成する
冷却ロールとしては、銅合金、鉄合金等で構成されたも
のが使用されてきた。また、耐久性向上のために、冷却
ロールの周面に、Crめっき等の金属または合金の表面
層を設けたものも知られている。しかし、このような冷
却ロールは、いずれも、その周面が熱伝導性の高い金属
で構成されているため、得られる急冷薄帯は、冷却速度
の差から、そのロール面810とフリー面(ロール面8
10と反対側の面)とにおける組織差(結晶粒径等の
差)が大きくなり、そのため、これを粉砕して磁石粉末
としたときに、各磁石粉末ごとの磁気特性にバラツキが
生じる。したがって、このような磁石粉末からボンド磁
石を製造した場合に、満足な磁気特性が得られない。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、磁気
特性が優れ、信頼性に優れた磁石を提供することができ
る冷却ロール、薄帯状磁石材料、磁石粉末およびボンド
磁石を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】このような目的は、下記
(1)〜(34)の本発明により達成される。
【0013】(1) 磁石合金の溶湯をその周面に衝突
させ、冷却固化して、薄帯状磁石材料を製造するための
冷却ロールであって、ロール基材と、溶射により前記ロ
ール基材の外周面上に形成された表面層とを有し、前記
表面層の構成材料の室温付近における熱伝導率が、前記
ロール基材の構成材料の室温付近における熱伝導率より
低く、かつ80W・m-1・K-1以下であり、前記周面上
に、前記周面と前記溶湯のパドルとの間に侵入したガス
を排出するガス抜き手段を設けたことを特徴とする冷却
ロール。
【0014】(2) 前記表面層は、主として、Nb、
Mo、Zr、W、Si、Bのうち少なくとも1種の元素
を含む材料で構成される上記(1)に記載の冷却ロー
ル。
【0015】(3) 前記表面層は、セラミックスを主
とする材料で構成される上記(1)または(2)に記載
の冷却ロール。
【0016】(4) 前記表面層の平均厚さは、5〜1
00μmである上記(1)ないし(3)のいずれかに記
載の冷却ロール。
【0017】(5) 前記表面層は、伝熱調整層を介し
て前記ロール基材の外周面上に設けられたものであり、
前記ロール基材の構成材料の室温付近における熱伝導率
をC[W・m−1・K−1]、前記伝熱調整層の構成
材料の室温付近における熱伝導率をC[W・m−1
−1]、前記表面層の構成材料の室温付近における熱
伝導率をC[W・m−1・K ]としたとき、C
>C>Cの関係を満足する上記(1)ないし(4)
のいずれかに記載の冷却ロール。
【0018】(6) 前記伝熱調整層の平均厚さは、
0.05〜50μmである上記(5)に記載の冷却ロー
ル。
【0019】(7) 前記伝熱調整層は、金属めっき層
である上記(5)または(6)に記載の冷却ロール。
【0020】(8) 前記伝熱調整層は、無電解めっき
により形成されたものである上記(5)ないし(7)の
いずれかに記載の冷却ロール。
【0021】(9) 前記伝熱調整層は、Niおよび/
またはCoを主とする材料で構成されたものである上記
(5)ないし(8)のいずれかに記載の冷却ロール。
【0022】(10) 前記伝熱調整層は、Pおよび/
またはBを含む材料で構成されたものである上記(5)
ないし(9)のいずれかに記載の冷却ロール。
【0023】(11) 前記表面層は、前記伝熱調整層
の表面に対する清浄化処理を行った後に、形成されたも
のである上記(5)ないし(10)のいずれかに記載の
冷却ロール。
【0024】(12) 前記周面の前記ガス抜き手段を
除く部分の表面粗さRaは、0.05〜5μmである上
記(1)ないし(11)のいずれかに記載の冷却ロー
ル。
【0025】(13) 前記ガス抜き手段は、少なくと
も1本の溝である上記(1)ないし(12)のいずれか
に記載の冷却ロール。
【0026】(14) 前記溝の平均幅は、0.5〜9
0μmである上記(13)に記載の冷却ロール。
【0027】(15) 前記溝の平均深さは、0.5〜
20μmである上記(13)または(14)に記載の冷
却ロール。
【0028】(16) 前記溝の平均幅をL1、平均深
さをL2としたとき、0.5≦L1/L2≦15の関係を
満足する上記(13)ないし(15)のいずれかに記載
の冷却ロール。
【0029】(17) 前記溝の長手方向と、冷却ロー
ルの回転方向とのなす角は、30°以下である上記(1
3)ないし(16)のいずれかに記載の冷却ロール。
【0030】(18) 前記溝は、前記冷却ロールの回
転軸を中心とする螺旋状に形成されたものである上記
(13)ないし(17)のいずれかに記載の冷却ロー
ル。
【0031】(19) 前記溝が並設されており、その
平均ピッチは、3〜100μmである上記(13)ない
し(18)のいずれかに記載の冷却ロール。
【0032】(20) 前記溝は、前記周面の縁部に開
口しているものである上記(13)ないし(19)のい
ずれかに記載の冷却ロール。
【0033】(21) 前記周面上における前記溝の占
める投影面積の割合が10〜99.5%である上記(1
3)ないし(20)のいずれかに記載の冷却ロール。
【0034】(22) 上記(1)ないし(21)のい
ずれかに記載の冷却ロールを用いて製造されたことを特
徴とする薄帯状磁石材料。
【0035】(23) 平均厚さが8〜50μmである
上記(22)に記載の薄帯状磁石材料。
【0036】(24) 薄帯状磁石材料は、製造後少な
くとも1回熱処理が施されたものである上記(22)ま
たは(23)に記載の薄帯状磁石材料。
【0037】(25) 薄帯状磁石材料は、ソフト磁性
相とハード磁性相とを有する複合組織で構成されるもの
である上記(22)ないし(24)のいずれかに記載の
薄帯状磁石材料。
【0038】(26) 前記ハード磁性相および前記ソ
フト磁性相の平均結晶粒径は、いずれも1〜100nm
である上記(25)に記載の薄帯状磁石材料。
【0039】(27) 上記(22)ないし(26)の
いずれかに記載の薄帯状磁石材料を粉砕して得られたこ
とを特徴とする磁石粉末。
【0040】(28) 磁石粉末は、その製造過程また
は製造後少なくとも1回熱処理が施されたものである上
記(27)に記載の磁石粉末。
【0041】(29) 平均粒径が1〜300μmであ
る上記(27)または(28)に記載の磁石粉末。
【0042】(30) 磁石粉末は、ソフト磁性相とハ
ード磁性相とを有する複合組織で構成されるものである
上記(27)ないし(29)のいずれかに記載の磁石粉
末。
【0043】(31) 前記ハード磁性相および前記ソ
フト磁性相の平均結晶粒径は、いずれも1〜100nm
である上記(30)に記載の磁石粉末。
【0044】(32) 上記(27)ないし(31)の
いずれかに記載の磁石粉末を結合樹脂で結合してなるこ
とを特徴とするボンド磁石。
【0045】(33) 室温での固有保磁力HcJが32
0〜1200kA/mである上記(32)に記載のボン
ド磁石。
【0046】(34) 最大磁気エネルギー積(BH)
maxが40kJ/m3以上である上記(32)または(3
3)に記載のボンド磁石。
【0047】
【発明の実施の形態】以下、本発明の冷却ロール、薄帯
状磁石材料、磁石粉末およびボンド磁石の実施の形態に
ついて、詳細に説明する。
【0048】[冷却ロールの構造]図1は、本発明の冷
却ロールの第1実施形態と、その冷却ロールを用い、単
ロール法により薄帯状磁石材料を製造する装置(急冷薄
帯製造装置)の構成例とを示す斜視図、図2は、図1に
示す冷却ロールの正面図、図3は、図1に示す冷却ロー
ルの拡大断面図である。
【0049】図1に示すように、冷却ロール5は、ロー
ル基材51と、冷却ロール5の周面53を形成する表面
層52とを有している。
【0050】ロール基材51は、表面層52の構成材料
の室温付近における熱伝導率(以下、単に「熱伝導率」
とも言う)より高い熱伝導率を有する材料で構成されて
いる。ロール基材51の構成材料としては、例えば、銅
または銅系合金、鉄または鉄系合金等が挙げられる。
【0051】ロール基材51の構成材料の熱伝導率は、
例えば、60W・m-1・K-1以上であるのが好ましく、
100W・m-1・K-1以上であるのがより好ましく、2
00W・m-1・K-1以上であるのがさらに好ましい。こ
のような熱伝導率を有する材料としては、例えば、銅ま
たは銅系合金、鉄または鉄系合金等が挙げられる。
【0052】表面層52の構成材料の熱伝導率は、80
W・m-1・K-1以下とされる。冷却ロール5が、このよ
うな熱伝導率を有する表面層52とロール基材51とを
有するものであることにより、適度な冷却速度で溶湯6
を急冷することが可能となる。また、ロール面81(冷
却ロールの周面と接触する側の面)とフリー面82(ロ
ール面と反対側の面)とでの冷却速度の差が小さくな
る。したがって、得られる急冷薄帯8は、各部位におけ
る結晶粒径のバラツキが小さく、磁気特性に優れたもの
となる。
【0053】このような熱伝導率を有する材料として
は、例えば、Nb、Mo、Zr、W、Sb、Ti、T
a、Pd、Pt等、またはこれらを含む合金等の金属薄
層や金属酸化物層、セラミックス等が挙げられる。セラ
ミックスとしては、例えば、Al 23、SiO2、Ti
2、Ti23、ZrO2、Y23、チタン酸バリウム、
チタン酸ストロンチウム等の酸化物系セラミックス、A
lN、Si34、TiN、BN、ZrN、HfN、V
N、TaN、NbN、CrN、Cr2N等の窒化物系セ
ラミックス、グラファイト、SiC、ZrC、Al
43、CaC2、WC、TiC、HfC、VC、Ta
C、NbC等の炭化物系のセラミックス、ZrB、M
oB、TiB等のホウ化物系のセラミックス、あるい
は、これらのうちの2以上を任意に組合せた複合セラミ
ックスが挙げられる。このようなセラミックスは、従
来、冷却ロールの周面を構成する材料として用いられて
きたもの(Cu、Crなど)に比べ、高い硬度を有し、
耐久性(耐摩耗性)に優れている。このため、冷却ロー
ル5を繰り返し使用しても、周面53の形状が維持さ
れ、後述するガス抜き手段の効果も劣化しにくい。
【0054】上述した材料の中でも、表面層52の構成
材料としては、Nb、Mo、Zr、W、Si、Bのうち
少なくとも1種の元素を含むものが、特に好ましい。こ
のような材料で表面層52が構成されることにより、磁
気特性に優れる磁石材料が得られるとともに、加熱−急
冷を繰り返しても熱衝撃性に優れるため冷却ロールの寿
命が伸び、生産性が向上する。
【0055】上述したように、本発明において、表面層
52の構成材料の熱伝導率は、80W・m-1・K-1以下
とされるが、特に、3〜60W・m-1・K-1であるのが
好ましく、5〜40W・m-1・K-1であるのがより好ま
しい。これにより、上述した効果はより顕著なものとな
る。
【0056】ところで、前述したロール基材51の構成
材料は、通常、比較的高い熱膨張率を有している。その
ため、表面層52の構成材料の熱膨張率は、ロール基材
51の熱膨張率に近い値であるのが好ましい。表面層5
2の構成材料の室温付近での熱膨張率(線膨張率α)
は、例えば、3.5〜18[×10−6−1]程度で
あるのが好ましく、6〜12[×10−6−1]程度
であるのがより好ましい。表面層52の構成材料の室温
付近における熱膨張率(以下、単に「熱膨張率」とも言
う)がこのような範囲の値であると、ロール基材51と
表面層52との高い密着性を維持することができ、表面
層52の剥離をより効果的に防止することができる。
【0057】また、表面層52は、図示のような単層の
みならず、例えば組成の異なる複数の層の積層体であっ
てもよい。この場合、隣接する層同士は、密着性の高い
ものが好ましく、その例としては、隣接する層同士に同
一の元素が含まれているものが挙げられる。
【0058】また、表面層52が単層で構成されている
場合でも、その組成は、厚さ方向に均一なものに限ら
ず、例えば、含有成分が厚さ方向に順次変化するもの
(傾斜材料)であってもよい。
【0059】表面層52が、上記のような積層体、傾斜
材料である場合、その熱伝導率は、表面層52全体の平
均値として求めることができる。
【0060】表面層52の平均厚さ(前記積層体の場合
はその合計厚さ)は、特に限定されないが、5〜100
μmであるのが好ましく、10〜80μmであるのがよ
り好ましい。
【0061】表面層52の平均厚さが下限値未満である
と、次のような問題が生じる。すなわち、表面層52の
材質によっては、冷却能が大きすぎて、厚さがかなり大
きい急冷薄帯8でもロール面81付近では冷却速度が大
きく、非晶質になり易くなる。一方、フリー面82付近
では、急冷薄帯8の厚さが大きいほど冷却速度が小さく
なり、その結果、結晶粒径の粗大化が起こり易くなる。
すなわち、フリー面82付近では粗大粒、ロール面81
付近では非晶質といった急冷薄帯となり易くなり、その
後に熱処理を施したとしても、満足な磁気特性が得られ
ない場合がある。また、フリー面82付近での結晶粒径
を小さくするために、例えば、冷却ロール5の周速度を
大きくして、急冷薄帯8の厚さを小さくしたとしても、
ロール面81付近での非晶質がよりランダムなものとな
り、急冷薄帯8の作成後に、熱処理を施したとしても、
十分な磁気特性が得られない場合がある。
【0062】また、表面層52の平均厚さが上限値を超
えると、冷却速度が遅く、結晶粒径の粗大化が起こり、
結果として磁気特性が低下する場合がある。
【0063】本発明では、表面層52は、溶射により形
成されたものである。表面層52を溶射で形成すること
により、ロール基材51と表面層52との密着性(接着
強度)は、特に優れたものとなる。
【0064】また、表面層52の形成方法として溶射を
用いることにより、形成される表面層52の空孔率を、
比較的高いものとすることができる。その結果、前述し
たような熱伝導率を有する表面層52を比較的容易に形
成することができる。また、表面層52が、比較的高い
空孔率を有するものであると、表面層52の加工性が向
上し、後述するガス抜き手段を、所望の形状を有するも
のとして、容易に形成することができる。
【0065】また、冷却ロール5の周面53には、周面
53と溶湯6のパドル(湯溜り)7との間に侵入したガ
スを排出するガス抜き手段が設けられている。
【0066】ガス抜き手段により、周面53とパドル7
との間からガスが排出されると、周面53とパドル7と
の密着性が向上する(巨大ディンプルの発生が防止され
る)。これにより、パドル7の各部位における冷却速度
の差は小さくなる。このため、得られる急冷薄帯8にお
ける結晶粒径のバラツキが小さくなり、結果として、磁
気特性のバラツキが小さい急冷薄帯8が得られる。
【0067】このようなガス抜き手段が設けられること
による効果は、前述した表面層52の効果と相乗的に作
用する。その結果、得られる急冷薄帯8は、磁気特性に
優れ、部位による磁気特性のバラツキが特に小さいもの
となる。したがって、この急冷薄帯8を用いることによ
り、特に優れた磁気特性の磁石を得ることができる。
【0068】図示の構成では、ガス抜き手段として、溝
54が形成されている。溝54は、冷却ロールの回転方
向に対し、ほぼ平行に形成されている。ガス抜き手段が
このような溝であると、周面53とパドル7との間から
溝54に送り込まれたガスが溝54の長手方向に沿って
移動するため、周面53とパドル7との間に侵入したガ
スの排出効率は、特に高く、周面53に対するパドル7
の密着性が向上する。
【0069】図示の構成では、溝54は複数本形成され
ているが、少なくとも1本形成されていればよい。
【0070】溝54の幅(周面53へ開口している部分
での幅)L1の平均値は、0.5〜90μmであるのが
好ましく、1〜50μmであるのがより好ましく、3〜
25μmであるのがさらに好ましい。溝54の幅L1
平均値が下限値未満であると、周面53とパドル7との
間に侵入したガスを十分に排出できない場合がある。一
方、溝54の幅L1の平均値が上限値を超えると、溶湯
6が溝54に入り込み、溝54がガス抜き手段として機
能しない場合がある。
【0071】溝54の深さ(最大深さ)L2の平均値
は、0.5〜20μmであるのが好ましく、1〜10μ
mであるのがより好ましい。溝54の深さL2の平均値
が下限値未満であると、周面53とパドル7との間に侵
入したガスを十分に排出できない場合がある。一方、溝
54の深さL2の平均値が上限値を超えると、溝部分を
流れるガス流の流速が増大するとともに、渦を伴う乱流
となり易くなり、急冷薄帯8の表面に巨大ディンプルが
発生し易くなる。
【0072】溝54の幅L1および溝54の深さL2は、
下記式(I)を満足するのが好ましい。 0.5≦L1/L2≦15・・・(I)
【0073】また、式(I)に代わり、式(II)を満足
するのがより好ましく、式(III)を満足するのがさら
に好ましい。 0.8≦L1/L2≦10・・・(II) 1≦L1/L2≦8・・・(III)
【0074】L1/L2の値が前記下限値未満であると、
ガス抜きのための十分な開口幅を得るのが困難となり、
周面53とパドル7との間に侵入したガスを十分に排出
できない場合がある。また、溝54の深さL2の値が相
対的に大きくなるため、溝部分を流れるガス流の流速が
増大するとともに、渦を伴う乱流となり易くなり、急冷
薄帯8の表面に巨大ディンプルが発生し易くなる。
【0075】一方、L1/L2の値が前記上限値を超える
と、溶湯6が溝54に入り込み、溝54がガス抜き手段
として十分に機能しない場合がある。また、溝54の深
さL 2の値が相対的に小さくなるため、周面53とパド
ル7との間に侵入したガスを十分に排出できない場合が
ある。
【0076】並設されている溝54のピッチL3の平均
値は、特に限定されないが、3μm以上100μm未満
であるのが好ましく、5〜50μmであるのがより好ま
しい。溝54の平均ピッチがこのような範囲の値である
と、溝54がガス抜き手段として十分に機能し、かつパ
ドル7との接触部分−非接触部分の間隔が十分小さくな
る。その結果、パドル7において、周面53と接触して
いる部分と接触していない部分との冷却速度の差は、十
分小さくなり、得られる急冷薄帯8の結晶粒径、磁気特
性のバラツキは小さくなる。特に、表面層52が前述し
たようなセラミックスで構成されている場合、表面層5
2上にこのような十分に細かいピッチの溝54が形成さ
れていても、表面層52の摩耗や欠けによる表面形状の
劣化が起こりにくい。したがって、冷却ロール5を繰り
返し使用しても、ガス抜き手段としての効果が維持され
る。
【0077】周面53上における溝54の占める投影面
積(周面に投影したときの面積)の割合は、10〜9
9.5%であるのが好ましく、30〜95%であるのが
より好ましい。周面53上における溝54の占める投影
面積の割合が下限値未満であると、急冷薄帯8のロール
面81付近では、冷却速度が大きくなり非晶質化しやす
くなるのに対し、フリー面82付近ではロール面81付
近に比べて冷却速度が遅いため結晶粒径の粗大化を招
き、結果として磁気特性が低下する場合がある。一方、
周面53上における溝54の占める投影面積の割合が上
限値を超えると、冷却速度が小さくなり、結晶粒径の粗
大化を招き、結果として磁気特性が低下する場合があ
る。
【0078】また、このような溝が形成されていること
により、ロール基材51の熱膨張率と表面層52の熱膨
張率との差が比較的大きい場合であっても、ロール基材
51と表面層52との高い密着性を維持することがで
き、ロール基材51からの表面層52の剥離をより効果
的に防止することができる。これは、以下のような理由
によるものであると考えられる。
【0079】図4は、図1に示す急冷薄帯製造装置にお
ける溶湯の冷却ロールへの接触部位付近の状態を模式的
に示す断面図である。図中、冷却ロール5付近での熱伝
導の主な経路を矢印で示す。
【0080】このような溝54が形成された冷却ロール
5の周面53に溶湯6を接触させた場合、周面53上の
溝54以外の部位では溶湯6との接触が起こるのに対
し、溝54内では実質的に溶湯6との接触が起こらな
い。このため、部位521付近の温度上昇が比較的大き
いのに対し、部位522付近では比較的低温の状態が維
持される。
【0081】このようにして表面層52に吸収された熱
は、ロール基材51に伝導される。前述したように、部
位521付近に比べ、部位522付近の温度が低くなっ
ているため、ロール基材51への熱伝導は、主として部
位521付近からのものとなる。
【0082】本発明では、ロール基材51の構成材料
は、表面層52の構成材料に比べ高い熱伝導率を有して
いる。このため、部位521から部位511に伝導され
た熱は、十分に速い速度で部位512に伝導される。こ
れにより、ロール基材51の部位による温度のバラツキ
が小さなものとなるとともに、ロール基材51全体とし
ての温度上昇も緩和される。
【0083】さらに、溶湯6から部位521に伝導され
た熱の一部は、溝54の内面から溝54内を流れるガス
に伝導(放散)される。このため、部位521から部位
511に伝導される熱量が少なくなり、結果として、ロ
ール基材51に伝導される総熱量も少なくなり、ロール
基材51全体の温度上昇も緩和される。
【0084】したがって、ロール基材51の熱膨張は小
さなものとなり、表面層52とロール基材51との熱膨
張の差も小さくなる。その結果、表面層52とロール基
材51との高い密着性が維持される。
【0085】周面53の溝54を除く部分の表面粗さR
aは、特に限定されないが、0.05〜5μmであるの
が好ましく、0.07〜2μmであるのがより好まし
い。表面粗さRaが下限値未満であると、冷却ロール5
とパドル7との密着性が低下し、巨大ディンプルの発生
を十分に抑制できない可能性がある。一方、表面粗さR
aが上限値を超えると、急冷薄帯8の厚さのバラツキが
顕著となり、結晶粒径のバラツキ、磁気特性のバラツキ
が大きくなる可能性がある。
【0086】なお、図3は、冷却ロールの周面付近の断
面形状を説明するための図であり、ロール基材と表面層
との境界は、省略して示した。
【0087】次に、上述した冷却ロール5の製造方法の
一例について説明する。まず、略円筒状のロール基材5
1を用意し、このロール基材51の外周面上に表面層5
2を溶射により形成する。
【0088】溶射の方法としては、フレーム溶射、爆発
溶射等のガス式溶射、アーク溶射、プラズマ溶射、線爆
溶射等の電気式溶射等が挙げられる。
【0089】以下、溶射による表面層52の形成方法の
一例について説明する。図5は、プラズマ溶射により、
表面層52を形成する方法を示す模式図である。
【0090】プラズマ溶射は、図5に示すような溶射ガ
ン13を備えたプラズマ溶射装置を用いて行うことがで
きる。
【0091】溶射ガン13は、陽極ノズル131と、陰
極132と、これらの間に作動ガスを供給するための作
動ガス流路133とを有している。作動ガスとしては、
例えば、アルゴンガス、ヘリウムガス、窒素ガス、水素
ガス、酸素ガス等のうちの、1種または2種以上を組み
合わせて用いることができる。
【0092】陽極ノズル131と陰極132との間にア
ークを発生させることにより、作動ガス流路133から
供給された作動ガスは、ジェットプラズマとなり、開口
部134から噴出する。
【0093】このとき、陽極ノズル131の開口部13
4付近に設けられた原料通路135から、原料12がジ
ェットプラズマ中に供給される。
【0094】原料12としては、通常、前述した表面層
52の構成材料が用いられるが、溶射時における化学反
応等により、最終的に前述した表面層52の構成材料を
生成するものを用いてもよい。
【0095】また、原料12は、粉末であるのが好まし
い。原料12が粉末であると、原料12が、原料通路1
35からジェットプラズマ中へ移動し易くなる。また、
原料12が粉末であると、得られる表面層52の空孔率
を比較的容易に高くすることができ、表面層52の熱伝
導度を、容易に、前述した範囲の値とすることができ
る。その結果、得られる急冷薄帯8は、各部位での結晶
粒径のバラツキが小さく、磁気特性が特に優れたものと
なる。
【0096】原料12が粉末である場合、その平均粒径
は、例えば、10〜500μmであるのが好ましく、3
0〜300μmであるのがより好ましい。原料12であ
る粉末の平均粒径がこのような範囲の値であると、適度
な空孔率を有し、かつ十分な機械的強度を有する表面層
52を容易に形成することができる。
【0097】原料12は、通常、原料供給ガス(キャリ
アガス)とともに、ジェットプラズマ中に供給される。
原料供給ガスとしては、例えば、アルゴンガス、ヘリウ
ムガス、窒素ガス、水素ガス、酸素ガス等のうちの、1
種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0098】ジェットプラズマ中に供給された原料12
は、加熱され、少なくともその外表面付近が溶融または
活性化した状態となる。その後、この原料12は、ロー
ル基材51の外周面に衝突、付着して、表面層52を形
成する。
【0099】また、このような溶射は、減圧下で行われ
るのが好ましい。特に、雰囲気の圧力が0.01〜10
0Torrであるのが好ましく、0.01〜10Torrである
のが好ましい。雰囲気の圧力がこのような範囲の値であ
ると、形成される表面層52の純度が特に優れたものと
なり、熱伝導率のコントロールがし易くなる。
【0100】また、このような溶射は、形成される表面
層52の厚さのバラツキが小さくなるように、ロール基
材51と溶射ガン13とを相対的に移動させつつ行うの
が好ましい。
【0101】ロール基材51と溶射ガン13との相対的
な移動方向は、ロール基材51の外周方向(回転方向)
とほぼ同じ方向にするのが好ましい。これにより、形成
される表面層52の周方向に沿っての厚さのバラツキ
が、特に小さいものとなる。これにより、この冷却ロー
ル5を用いて製造される急冷薄帯8は、各部位での冷却
速度のバラツキが特に小さいものとなり、結果として、
全体としての磁気特性に優れたものとなる。
【0102】このように、ロール基材51と溶射ガン1
3との相対的な移動方向が、ロール基材51の外周方向
(回転方向)とほぼ同じ方向となるように溶射する方法
としては、図5に示すように、ロール基材51を回転軸
51を中心に回転させた状態で、ロール基材51の外周
面に向けて、原料12を溶射する方法が挙げられる。こ
れにより、形成される表面層52の周方向に沿っての厚
さのバラツキを、さらに小さいものとすることができ
る。このため、この冷却ロール5を用いて製造される急
冷薄帯8は、各部位での冷却速度のバラツキが特に小さ
いものとなり、結果として、全体としての磁気特性が特
に優れたものとなる。
【0103】なお、表面層52の形成に先立ち、ロール
基材51の外周面に対して、前処理を施してもよい。前
処理としては、例えば、洗浄化処理等が挙げられる。ロ
ール基材51の外表面に対して、清浄化処理を施すこと
により、ロール基材51と表面層52との密着性が特に
優れたものとなる。前記清浄化処理としては、例えば、
水洗、アルカリ洗浄、酸洗浄、有機溶剤洗浄等の洗浄処
理や、ボンバード処理等が挙げられる。
【0104】また、以上のようにして形成された表面層
52には、必要に応じて、後処理を施すことができる。
【0105】後処理としては、例えば、表面層52の外
周面の表面粗さを調整するための、研削、研磨等のよう
な機械加工(後加工)や、水洗、アルカリ洗浄、酸洗
浄、有機溶剤洗浄等の洗浄処理等が挙げられる。
【0106】次に、表面層52の外周面に、ガス抜き手
段としての溝54を形成する。これにより、図6に示す
ような断面形状を有する冷却ロール5が得られる。
【0107】溝54の形成方法は、特に限定されない
が、例えば、切削、転写(圧転)、研削、ブラスト処理
等の各種機械加工、レーザー加工、放電加工、化学エッ
チング等が挙げられる。その中でも、溝の幅、深さ、並
設された溝のピッチ等の精度を高くすることが比較的容
易である点で、機械加工、特に、切削であるのが好まし
い。
【0108】ところで、本発明においては、表面層52
は、溶射により形成されたものであり、比較的高い空孔
率を有する。このため、表面層52の構成材料が前述し
たセラミックスのような硬質の材料であっても、表面層
52に対して、比較的容易に機械加工を施すことがで
き、所望の形状の溝54を得ることができる。
【0109】以上のようにして溝54を形成した後、必
要に応じて、表面層52に後処理を施すことができる。
【0110】後処理としては、例えば、周面53の溝5
4以外の部位の表面粗さを調整するための、研削、研磨
等のような機械加工(後加工)や、水洗、アルカリ洗
浄、酸洗浄、有機溶剤洗浄等の洗浄処理等が挙げられ
る。
【0111】なお、以上の説明では、ロール基材51の
外周面上に表面層52を形成した後に、ガス抜き手段を
形成する方法について説明したが、冷却ロール5の製造
方法はこれに限定されず、例えば、ロール基材51の外
周面上に、前述した方法により溝を形成した後、溶射に
より表面層52を形成する方法であってもよい。これに
より、図7に示すような断面形状を有する冷却ロール5
を得ることができる。この場合、表面層52の表面に機
械加工を施すことなく、周面53上にガス抜き手段であ
る溝54が形成される。
【0112】[磁石材料の合金組成]本発明における薄
帯状磁石材料や磁石粉末としては、優れた磁気特性を有
するものが好ましく、このようなものとしては、R(た
だし、Rは、Yを含む希土類元素のうちの少なくとも1
種)を含む合金、特にR(ただし、Rは、Yを含む希土
類元素のうちの少なくとも1種)とTM(ただし、TM
は、遷移金属のうちの少なくとも1種)とB(ボロン)
とを含む合金が挙げられ、次の[1]〜[5]の組成の
ものが好ましい。
【0113】[1] Smを主とする希土類元素と、C
oを主とする遷移金属とを基本成分とするもの(以下、
Sm−Co系合金と言う)。
【0114】[2] R(ただし、Rは、Yを含む希土
類元素のうちの少なくとも1種)と、Feを主とする遷
移金属(TM)と、Bとを基本成分とするもの(以下、
R−TM−B系合金と言う)。
【0115】[3] Smを主とする希土類元素と、F
eを主とする遷移金属と、Nを主とする格子間元素とを
基本成分とするもの(以下、Sm−TM−N系合金と言
う)。
【0116】[4] R(ただし、Rは、Yを含む希土
類元素のうち少なくとも1種)とFe等の遷移金属とを
基本成分とし、ソフト磁性相とハード磁性相とが相隣接
して(粒界相を介して隣接する場合も含む)存在する複
合組織(特に、ナノコンポジット組織と呼ばれるものが
ある)を有するもの。
【0117】[5] 前記[1]〜[4]の組成のもの
のうち、少なくとも2種を混合したもの。この場合、混
合する各磁石粉末の利点を併有することができ、より優
れた磁気特性を容易に得ることができる。
【0118】Sm−Co系合金の代表的なものとして
は、SmCo5、Sm2TM17(ただしTMは、遷移金
属)が挙げられる。
【0119】R−TM−B系合金の代表的なものとして
は、Nd−Fe−B系合金、Pr−Fe−B系合金、N
d−Pr−Fe−B系合金、Nd−Dy−Fe−B系合
金、Ce−Nd−Fe−B系合金、Ce−Pr−Nd−
Fe−B系合金、これらにおけるFeの一部をCo、N
i等の他の遷移金属で置換したもの等が挙げられる。
【0120】Sm−TM−N系合金の代表的なものとし
ては、Sm2Fe17合金を窒化して作製したSm2Fe17
3、TbCu7型相を主相とするSm−Zr−Fe−C
o−N系合金等が挙げられる。ただし、これらSm−T
M−N系合金の場合、Nは、急冷薄帯を作製した後、得
られた急冷薄帯に適切な熱処理を施し、窒化することに
より格子間原子として導入されるのが一般的である。
【0121】前記希土類元素としては、Y、La、C
e、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、D
y、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、ミッシュメタルが
挙げられ、これらを1種または2種以上含むことができ
る。また、前記遷移金属としては、Fe、Co、Ni等
が挙げられ、これらを1種または2種以上含むことがで
きる。
【0122】また、保磁力、最大磁気エネルギー積等の
磁気特性を向上させるため、あるいは、耐熱性、耐食性
を向上させるために、磁石材料中には、必要に応じ、A
l、Cu、Ga、Si、Ti、V、Ta、Zr、Nb、
Mo、Hf、Ag、Zn、P、Ge、Cr、W、C等を
含有することもできる。
【0123】前記複合組織(ナノコンポジット組織)
は、ソフト磁性相10とハード磁性相11とが、例え
ば、図8、図9または図10に示すようなパターン(モ
デル)で存在しており、各相の厚さや粒径がナノメータ
ーレベルで存在している。そして、ソフト磁性相10と
ハード磁性相11とが相隣接し(粒界相を介して隣接す
る場合も含む)、磁気的な交換相互作用を生じる。
【0124】ソフト磁性相の磁化は、外部磁界の作用に
より容易にその向きを変えるので、ハード磁性相に混在
すると、系全体の磁化曲線はB−H図(J−H図)の第
二象現で段のある「へび型曲線」となる。しかし、ソフ
ト磁性相のサイズが数10nm以下と十分小さい場合に
は、ソフト磁性体の磁化が周囲のハード磁性体の磁化と
の結合によって十分強く拘束され、系全体がハード磁性
体として振舞うようになる。
【0125】このような複合組織(ナノコンポジット組
織)を持つ磁石は、主に、以下に挙げる特徴1)〜5)
を有している。
【0126】1)B−H図(J−H図)の第二象現で、
磁化が可逆的にスプリングバックする(この意味で「ス
プリング磁石」とも言う)。 2)着磁性が良く、比較的低い磁場で着磁できる。 3)磁気特性の温度依存性がハード磁性相単独の場合に
比べて小さい。 4)磁気特性の経時変化が小さい。 5)微粉砕しても磁気特性が劣化しない。
【0127】このように、複合組織で構成される磁石
は、優れた磁気特性を有する。したがって、磁石粉末
は、このような複合組織を有するものであるのが特に好
ましい。
【0128】なお、図8〜図10に示すパターンは、一
例であって、これらに限られるものではない。
【0129】[薄帯状磁石材料の製造]次に、前述した
冷却ロール5を用いた薄帯状磁石材料の製造について説
明する。
【0130】薄帯状磁石材料は、磁石合金の溶湯を冷却
ロールの周面に衝突させ、冷却固化することにより製造
される。以下、その一例について説明する。
【0131】図1に示すように、急冷薄帯製造装置1
は、磁石材料を収納し得る筒体2と、該筒体2に対し図
中矢印A方向に回転する冷却ロール5とを備えている。
筒体2の下端には、磁石材料(合金)の溶湯6を射出す
るノズル(オリフィス)3が形成されている。
【0132】筒体2のノズル3近傍の外周には、筒体2
内の磁石材料を加熱(誘導加熱)するための加熱用のコ
イル4が配置されている。
【0133】このような急冷薄帯製造装置1は、チャン
バー(図示せず)内に設置され、該チャンバー内に不活
性ガスやその他の雰囲気ガスが充填された状態で作動す
る。特に、急冷薄帯8の酸化を防止するために、雰囲気
ガスは、不活性ガスであるのが好ましい。不活性ガスと
しては、例えばアルゴンガス、ヘリウムガス、窒素ガス
等が挙げられる。
【0134】雰囲気ガスの圧力は、特に限定されない
が、1〜760Torrであるのが好ましい。
【0135】筒体2内の溶湯6の液面には、チャンバー
の内圧より高い所定の圧力がかけられている。溶湯6
は、この筒体2内の溶湯6の液面に作用する圧力と筒体
2内における液面の高さに比例してかかる圧力の和と、
チャンバー内の雰囲気ガスの圧力との差圧により、ノズ
ル3から射出する。
【0136】溶湯噴射圧(筒体2内の溶湯6の液面に作
用する圧力と筒体2内における液面の高さに比例してか
かる圧力の和と、チャンバー内の雰囲気ガスの圧力との
差圧)は、特に限定されないが、10〜100kPaで
あるのが好ましい。
【0137】急冷薄帯製造装置1では、筒体2内に磁石
材料を入れ、コイル4により加熱して溶融し、その溶湯
6をノズル3から射出すると、図1に示すように、溶湯
6は、冷却ロール5の周面53に衝突し、パドル(湯溜
り)7を形成した後、回転する冷却ロール5の周面53
に引きずられつつ急速に冷却されて凝固し、急冷薄帯8
が連続的または断続的に形成される。このとき、パドル
7と周面53との間に侵入したガスは、溝54(ガス抜
き手段)を介して外部に排出される。このようにして形
成された急冷薄帯8は、やがて、そのロール面81が周
面53から離れ、図1中の矢印B方向に進行する。
【0138】このように、周面53上にガス抜き手段が
設けられることにより、周面53とパドル7との密着性
が向上し(巨大ディンプルの発生が防止され)、パドル
7の不均一な冷却が防止される。また、表面層52が8
0W・m-1・K-1以下という適度な熱伝導率を有してい
るため、ロール面81付近とフリー面82付近とでの冷
却速度の差も小さくなる。その結果、各部位における結
晶粒径のバラツキが小さく、高い磁気特性を有する急冷
薄帯8が得られる。
【0139】また、急冷薄帯8を実際に製造するに際し
ては、必ずしもノズル3を冷却ロール5の回転軸50の
真上に設置しなくてもよい。
【0140】冷却ロール5の周速度は、合金溶湯の組
成、表面層52の構成材料(組成)、周面53の表面性
状(特に、周面53の溶湯6に対する濡れ性)等により
その好適な範囲が異なるが、磁気特性向上のために、通
常、5〜60m/秒であるのが好ましく、10〜40m
/秒であるのがより好ましい。冷却ロール5の周速度が
下限値未満であると、溶湯6の冷却速度が低下し、結晶
粒径が増大する傾向を示し、磁気特性が低下する場合が
ある。一方、冷却ロール5の周速度が上限値を超える
と、逆に冷却速度が大きくなり、非晶質組織が占める割
合が大きくなり、その後に、後述する熱処理を施したと
しても、磁気特性が十分に向上しない場合がある。
【0141】以上のようにして得られた急冷薄帯8は、
その幅wおよび厚さができるだけ均一であるものが好ま
しい。この場合、急冷薄帯8の平均厚さtは、8〜50
μm程度であるのが好ましく、10〜40μm程度であ
るのがより好ましい。平均厚さtが下限値未満である
と、非晶質組織が占める割合が大きくなり、その後に、
後述する熱処理を施したとしても磁気特性が十分に向上
しない場合がある。単位時間当たりの生産性も低下す
る。一方、平均厚さtが上限値を超えると、フリー面8
2側の結晶粒径が粗大化する傾向を示すため、磁気特性
が低下する場合がある。
【0142】なお、得られた急冷薄帯8に対しては、例
えば、非晶質組織(アモルファス組織)の再結晶化の促
進、組織の均質化等を目的として、熱処理を施すことも
できる。この熱処理の条件としては、例えば、400〜
900℃で、0.5〜300分程度とすることができ
る。
【0143】また、この熱処理は、酸化を防止するため
に、真空または減圧状態下(例えば1×10-1〜1×1
-6Torr)、あるいは窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウ
ムガス等の不活性ガス中のような、非酸化性雰囲気中で
行うのが好ましい。
【0144】以上のようにして得られた急冷薄帯(薄帯
状磁石材料)8は、微細結晶組織、もしくは微細結晶が
非晶質組織中に含まれるような組織となり、優れた磁気
特性が得られる。
【0145】以上のような急冷薄帯8は、平均結晶粒径
が500nm以下であるのが好ましく、200nm以下
であるのがより好ましく、10〜120nm程度がさら
に好ましい。平均結晶粒径が500nmを超えると、磁
気特性、特に保磁力および角型性の向上が十分に図れな
い場合がある。
【0146】特に、磁石材料が前記[4]のような複合
組織を有するものである場合、ソフト磁性相10、ハー
ド磁性相11の平均結晶粒径は、いずれも1〜100n
mであるのが好ましく、5〜50nmであるのがより好
ましい。平均結晶粒径がこのような範囲の大きさである
と、ソフト磁性相10とハード磁性相11との間で、よ
り効果的に磁気的な交換相互作用を生じることとなり、
顕著な磁気特性の向上が認められる。
【0147】また、ロール面81付近におけるハード磁
性相11の平均結晶粒径をD1h、ロール面81付近に
おけるソフト磁性相10の平均結晶粒径をD1s、フリ
ー面82付近におけるハード磁性相11の平均結晶粒径
をD2h、フリー面82付近におけるソフト磁性相10
の平均結晶粒径をD2sとしたとき、下記式(IV)、
(V)のうちの少なくとも一方を満足するのが好まし
く、双方を満足するのがより好ましい。 0.5≦D1h/D2h≦1.5 ・・・(IV) 0.5≦D1s/D2s≦1.5 ・・・(V)
【0148】D1h/D2hまたはD1s/D2sがこ
のような範囲の値であると、ハード磁性相11、ソフト
磁性相10のそれぞれについて、ロール面81付近とフ
リー面82付近とでの結晶粒径の差が少なく、その結
果、磁気特性が均一となり、全体として優れた磁気特性
が得られる。より詳しく述べると、急冷薄帯8から磁石
粉末を製造し、さらには該磁石粉末を用いてボンド磁石
を製造したとき、高い磁気エネルギー積(BH)max
得られると共に、ヒステリシスループにおける角型性が
良好となり、その結果、不可逆減磁率の絶対値が小さく
なるので、磁石の信頼性も向上する。
【0149】なお、以上では、急冷法として、単ロール
法を例に説明したが、双ロール法を採用してもよい。こ
のような急冷法は、金属組織(結晶粒)を微細化するこ
とができるので、ボンド磁石の磁石特性、特に保磁力等
を向上させるのに有効である。
【0150】[磁石粉末の製造]以上のようにして製造
された急冷薄帯8を粉砕することにより、本発明の磁石
粉末が得られる。
【0151】粉砕の方法は、特に限定されず、例えばボ
ールミル、振動ミル、ジェットミル、ピンミル等の各種
粉砕装置、破砕装置を用いて行うことができる。この場
合、粉砕は、酸化を防止するために、真空または減圧状
態下(例えば1×10-1〜1×10-6Torr)、あるいは
窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガス等の不活性ガス
中のような、非酸化性雰囲気中で行うこともできる。
【0152】磁石粉末の平均粒径は、特に限定されない
が、後述するボンド磁石(希土類ボンド磁石)を製造す
るためのものの場合、磁石粉末の酸化防止と、粉砕によ
る磁気特性劣化の防止とを考慮して、1〜300μmで
あるのが好ましく、5〜150μmであるのがより好ま
しい。
【0153】また、ボンド磁石の成形時のより良好な成
形性を得るために、磁石粉末の粒径分布は、ある程度分
散されている(バラツキがある)のが好ましい。これに
より、得られたボンド磁石の空孔率を低減することがで
き、その結果、ボンド磁石中の磁石粉末の含有量を同じ
としたときに、ボンド磁石の密度や機械的強度をより高
めることができ、磁気特性をさらに向上することができ
る。
【0154】なお、得られた磁石粉末に対しては、例え
ば、粉砕により導入されたひずみの影響の除去、結晶粒
径の制御を目的として、熱処理を施すこともできる。こ
の熱処理の条件としては、例えば、350〜850℃
で、0.5〜300分程度とすることができる。
【0155】また、この熱処理は、酸化を防止するため
に、真空または減圧状態下(例えば1×10-1〜1×1
-6Torr)、あるいは窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウ
ムガス等の不活性ガス中のような、非酸化性雰囲気中で
行うのが好ましい。
【0156】このような磁石粉末を用いてボンド磁石を
製造した場合、該磁石粉末は、結合樹脂との結合性(結
合樹脂の濡れ性)が良く、そのため、このボンド磁石
は、機械的強度が高く、熱安定性(耐熱性)、耐食性が
優れたものとなる。従って、当該磁石粉末は、ボンド磁
石の製造に適しており、製造されたボンド磁石は、信頼
性の高いものとなる。
【0157】以上のような磁石粉末は、平均結晶粒径が
500nm以下であるのが好ましく、200nm以下で
あるのがより好ましく、10〜120nm程度がさらに
好ましい。平均結晶粒径が500nmを超えると、磁気
特性、特に保磁力および角型性の向上が十分に図れない
場合がある。
【0158】特に、磁石材料が前記[4]のような複合
組織を有するものである場合、平均結晶粒径は、1〜1
00nmであるのが好ましく、5〜50nmであるのが
より好ましい。平均結晶粒径がこのような範囲の大きさ
であると、ソフト磁性相10とハード磁性相11との間
で、より効果的に磁気的な交換相互作用を生じることと
なり、顕著な磁気特性の向上が認められる。
【0159】[ボンド磁石およびその製造]次に、本発
明のボンド磁石について説明する。
【0160】本発明のボンド磁石は、好ましくは、前述
の磁石粉末を結合樹脂で結合してなるものである。
【0161】結合樹脂(バインダー)としては、熱可塑
性樹脂、熱硬化性樹脂のいずれでもよい。
【0162】熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリアミ
ド(例:ナイロン6、ナイロン46、ナイロン66、ナ
イロン610、ナイロン612、ナイロン11、ナイロ
ン12、ナイロン6−12、ナイロン6−66)、熱可
塑性ポリイミド、芳香族ポリエステル等の液晶ポリマ
ー、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンサルファ
イド、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸
ビニル共重合体等のポリオレフィン、変性ポリオレフィ
ン、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポ
リエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレー
ト等のポリエステル、ポリエーテル、ポリエーテルエー
テルケトン、ポリエーテルイミド、ポリアセタール等、
またはこれらを主とする共重合体、ブレンド体、ポリマ
ーアロイ等が挙げられ、これらのうちの1種または2種
以上を混合して用いることができる。
【0163】これらのうちでも、成形性が特に優れてお
り、機械的強度が高いことから、ポリアミド、耐熱性向
上の点から、液晶ポリマー、ポリフェニレンサルファイ
ドを主とするものが好ましい。また、これらの熱可塑性
樹脂は、磁石粉末との混練性にも優れている。
【0164】このような熱可塑性樹脂は、その種類、共
重合化等により、例えば成形性を重視したものや、耐熱
性、機械的強度を重視したものというように、広範囲の
選択が可能となるという利点がある。
【0165】一方、熱硬化性樹脂としては、例えば、ビ
スフェノール型、ノボラック型、ナフタレン系等の各種
エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン
樹脂、ポリエステル(不飽和ポリエステル)樹脂、ポリ
イミド樹脂、シリコーン樹脂、ポリウレタン樹脂等が挙
げられ、これらのうちの1種または2種以上を混合して
用いることができる。
【0166】これらのうちでも、成形性が特に優れてお
り、機械的強度が高く、耐熱性に優れるという点から、
エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、シリ
コーン樹脂が好ましく、エポキシ樹脂が特に好ましい。
また、これらの熱硬化性樹脂は、磁石粉末との混練性、
混練の均一性にも優れている。
【0167】なお、使用される熱硬化性樹脂(未硬化)
は、室温で液状のものでも、固形(粉末状)のものでも
よい。
【0168】このような本発明のボンド磁石は、例えば
次のようにして製造される。磁石粉末と、結合樹脂と、
必要に応じ添加剤(酸化防止剤、潤滑剤等)とを混合、
混練(例えば、温間混練)してボンド磁石用組成物(コ
ンパウンド)を製造し、このボンド磁石用組成物を用い
て、圧縮成形(プレス成形)、押出成形、射出成形等の
成形方法により、無磁場中で所望の磁石形状に成形す
る。結合樹脂が熱硬化性樹脂の場合には、成形後、加熱
等によりそれを硬化する。
【0169】ここで、前記3種の成形方法のうち、押出
成形および射出成形(特に、射出成形)は、形状選択の
自由度が広く、生産性が高い等の利点があるが、これら
の成形方法では、良好な成形性を得るために、成形機内
におけるコンパウンドの十分な流動性を確保しなければ
ならないため、圧縮成形に比べて、磁石粉末の含有量を
多くすること、すなわちボンド磁石を高密度化すること
ができない。しかしながら、本発明では、後述するよう
に、高い磁束密度が得られ、そのため、ボンド磁石を高
密度化しなくても優れた磁気特性が得られるので、押出
成形、射出成形により製造されるボンド磁石にもその利
点を享受することができる。
【0170】ボンド磁石中の磁石粉末の含有量(含有
率)は、特に限定されず、通常は、成形方法や、成形性
と高磁気特性との両立を考慮して決定される。具体的に
は、75〜99.5wt%程度であるのが好ましく、8
5〜97.5wt%程度であるのがより好ましい。
【0171】特に、ボンド磁石が圧縮成形により製造さ
れたものの場合には、磁石粉末の含有量は、90〜9
9.5wt%程度であるのが好ましく、93〜98.5
wt%程度であるのがより好ましい。
【0172】また、ボンド磁石が押出成形または射出成
形により製造されたものの場合には、磁石粉末の含有量
は、75〜98wt%程度であるのが好ましく、85〜
97wt%程度であるのがより好ましい。
【0173】ボンド磁石の密度ρは、それに含まれる磁
石粉末の比重、磁石粉末の含有量、空孔率等の要因によ
り決定される。本発明のボンド磁石において、その密度
ρは特に限定されないが、4.5〜6.6Mg/m3
度であるのが好ましく、5.5〜6.4Mg/m3程度
であるのがより好ましい。
【0174】本発明では、磁石粉末の磁束密度、保磁力
が大きいので、ボンド磁石に成形した場合に、磁石粉末
の含有量が多い場合はもちろんのこと、含有量が比較的
少ない場合でも、優れた磁気特性(特に、高い最大磁気
エネルギー積(BH)max)が得られる。
【0175】本発明のボンド磁石の形状、寸法等は特に
限定されず、例えば、形状に関しては、例えば、円柱
状、角柱状、円筒状(リング状)、円弧状、平板状、湾
曲板状等のあらゆる形状のものが可能であり、その大き
さも、大型のものから超小型のものまであらゆる大きさ
のものが可能である。特に、小型化、超小型化された磁
石に有利であることは、本明細書中で度々述べている通
りである。
【0176】本発明のボンド磁石は、保磁力(室温での
固有保磁力)HcJが320〜1200kA/mであるの
が好ましく、400〜800kA/mがより好ましい。
保磁力が前記下限値未満では、逆磁場がかかったときの
減磁が顕著になり、また、高温における耐熱性が劣る。
また、保磁力が前記上限値を超えると、着磁性が低下す
る。従って、保磁力HcJを上記範囲とすることにより、
ボンド磁石(特に、円筒状磁石)に多極着磁等をするよ
うな場合に、十分な着磁磁場が得られないときでも、良
好な着磁が可能となり、十分な磁束密度が得られ、高性
能なボンド磁石を提供することができる。
【0177】本発明のボンド磁石は、最大磁気エネルギ
ー積(BH)maxが40kJ/m3以上であるのが好まし
く、50kJ/m3以上であるのがより好ましく、70
〜130kJ/m3であるのがさらに好ましい。最大磁
気エネルギー積(BH)maxが40kJ/m3未満である
と、モータ用に用いた場合、その種類、構造によって
は、十分なトルクが得られない。
【0178】以上説明したように、本実施形態の冷却ロ
ール5は、ガス抜き手段として溝54が設けられている
ため、周面53とパドル7との間に侵入したガスを排出
することができる。これにより、パドル7の浮き上がり
が防止され、周面53とパドル7との密着性が向上す
る。また、表面層52が80W・m-1・K-1以下という
適度な熱伝導率を有しているため、ロール面81付近と
フリー面82付近とでの冷却速度の差も小さくなる。こ
れらの相乗効果により、各部位における結晶粒径のバラ
ツキが小さく、高い磁気特性を有する急冷薄帯8が得ら
れる。
【0179】したがって、前記急冷薄帯8から得られる
ボンド磁石は、優れた磁気特性を有している。また、ボ
ンド磁石の製造に際し、高密度化を追求しなくても高い
磁気特性を得ることができるため、成形性、寸法精度、
機械的強度、耐食性、耐熱性等の向上を図ることができ
る。
【0180】次に、本発明の冷却ロール5の第2実施形
態について、説明する。図11は、本発明の第2実施形
態の冷却ロールの拡大断面図である。以下、第2実施形
態の冷却ロールについて、前記第1実施形態との相違点
を中心に説明し、同様の事項の説明は省略する。
【0181】図11に示すように、本実施形態の冷却ロ
ール5は、ロール基材51と表面層52との間に、伝熱
調整層57を有している。
【0182】伝熱調整層57は、ロール基材51の構成
材料の熱伝導率より低く、かつ、表面層52の構成材料
の熱伝導率より高い熱伝導率を有する材料で構成されて
いる。すなわち、ロール基材51の構成材料の熱伝導率
をC[W・m−1・K−1]、伝熱調整層57の構成
材料の熱伝導率をC[W・m−1・K−1]、表面層
52の構成材料の熱伝導率をC[W・m−1
−1]としたとき、C>C>Cの関係を満足す
る。
【0183】このような伝熱調整層57を有することに
より、以下のような効果が得られる。
【0184】合金溶湯(急冷薄帯)は、冷却ロールと表
面層にて接触し、その熱がロール基材方向に抜熱・冷却
される。
【0185】ここで、表面層が比較的熱伝導率の低い材
料で構成されることにより、冷却ロールと急冷薄帯のロ
ール面との接触部分における実効的な熱伝達率を下げる
ことができる。これにより、急冷薄帯のロール面(冷却
ロールの周面と接触する側の面)付近と、フリー面(ロ
ール面と反対側の面)付近とでの冷却速度の差異を小さ
くすることができ、結果として、ロール面付近とフリー
面付近とでの組織差(例えば、結晶組織のバラツキ等)
を小さくすることが可能となる。
【0186】一方、ロール基材は、急冷薄帯からの熱を
効率的に抜熱するために、比較的高い熱伝導率を持つこ
とが好ましい。
【0187】このようなことから、冷却ロールは、低熱
伝導率の材料で構成された表面層と、高熱伝導率の材料
で構成されたロール基材とを有するものであるのが望ま
しい。
【0188】しかしながら、ロール基材の周面に、直
接、表面層を形成した場合、以下のような問題を生じ
る。
【0189】すなわち、表面層は、低熱伝導率の材料で
構成されているため、高温の合金溶湯を急冷する場合等
において、蓄熱し易いが、ロール基材との界面付近にお
いては、高熱伝導率を有するロール基材により、急激に
冷却されることになる。このため、表面層は、ロール基
材との界面付近と、それ以外の部分とで、大きな温度差
を生じることとなり、内部熱膨張あるいは熱衝撃による
表面層の破壊を生じ易くなる。
【0190】これに対し、ロール基材と表面層との間
に、後に詳述する伝熱調整層を設けた本発明の冷却ロー
ルでは、上述したような急激な温度勾配を解消すること
ができる。これにより、前述した表面層の効果と、ロー
ル基材の効果とを併有することができる。
【0191】また、ロール基材の周面に、直接、表面層
を形成した従来の冷却ロールでは、以下のような問題点
も有していた。
【0192】すなわち、所望の冷却速度を得るために比
較的厚い表面層を設けた場合、初期には適切な冷却速度
が得られていても回転数を重ねていく(操業時間を長く
していく)につれて表面層からロール基材への抜熱が表
面層の低熱伝導率のために妨げられて表面層の温度上昇
が顕著となり、冷却速度の低下が顕著となる。このため
操業を重ねるほど急冷薄帯の結晶粒径の粗大化が起こ
り、結果的に磁気特性の低下を招く。この様な事態を防
ぐために表面層のみを薄くしても冷却速度が大きくなり
過ぎて適切な結晶組織が得られなかったり、ロール基材
が高温にさらされることで基材が再結晶化するなど変質
してしまうという問題が生じる。
【0193】これに対して、本発明の冷却ロールは、ロ
ール基材と表面層との間に伝熱調整層を有しているた
め、繰り返し急冷薄帯を製造することによる(特に、連
続操業による)表面層の温度上昇を防ぐことができると
共に、冷却速度を適正な範囲に維持できる。このため、
均一微細な結晶組織の形成がなされ、結果として磁気特
性が向上する。
【0194】以下、伝熱調整層57について詳細に説明
する。伝熱調整層57は、ロール基材51の構成材料の
熱伝導率より小さく、かつ表面層52の構成材料の熱伝
導率より大きい材料で構成されたものであれば、いかな
るものであってもよい。
【0195】ロール基材51の構成材料および表面層5
2の構成材料が、それぞれ、前述した範囲内の熱伝導率
を有するものである場合、伝熱調整層57の構成材料と
しては、例えば、Ni、Co、Cr、Zn等が挙げら
れ、この中でも特に、Niおよび/またはCoを主とす
るものが好ましい。これにより、伝熱調整層57の伝熱
調整効果がより顕著なものとなるとともに、ロール基材
51および表面層52との密着性も特に優れたものとな
る。
【0196】また、伝熱調整層57の構成材料は、Pお
よび/またはBを含むものであるのが好ましい。これに
より、伝熱調整層57の伝熱調整効果がさらに顕著なも
のとなるとともに、ロール基材51および表面層52と
の密着性も向上する。
【0197】また、伝熱調整層57は、図示のような単
層のみならず、例えば組成の異なる複数の層の積層体で
あってもよい。この場合、隣接する層同士は、密着性の
高いものが好ましく、その例としては、隣接する層同士
に同一の元素が含まれているものが挙げられる。
【0198】また、伝熱調整層57が単層で構成されて
いる場合でも、その組成は、厚さ方向に均一なものに限
らず、例えば、含有成分が厚さ方向に順次変化するもの
(傾斜材料)であってもよい。
【0199】伝熱調整層57が、上記のような積層体、
傾斜材料である場合、その熱伝導率は、伝熱調整層57
全体の平均値として求めることができる。
【0200】伝熱調整層57の平均厚さ(前記積層体の
場合はその合計厚さ)は、特に限定されないが、0.0
5〜50μmであるのが好ましく、0.5〜10μmで
あるのがより好ましい。
【0201】伝熱調整層57の平均厚さが下限値未満で
あると、構成材料の熱伝導率等によっては、前述した伝
熱調整効果が十分に得られない可能性がある。
【0202】一方、伝熱調整層57の平均厚さが上限値
を超えると、伝熱調整層57自体の熱抵抗が大きくなっ
て冷却が不十分となり、薄帯状磁石材料の結晶粒粗大化
を生じさせて磁気特性の劣化を招く可能性がある。また
伝熱調整層とロール基材の界面と伝熱調整層と表層との
界面での温度差が大きくなり、調整層の剥離を招く可能
性がある。
【0203】伝熱調整層57は、いかなる方法で形成さ
れたものであっても良いが、金属めっきにより形成され
たものであるのが好ましい。これにより、その厚さが比
較的薄く、かつ厚さのバラツキが小さい伝熱調整層57
を、容易に形成することができる。
【0204】金属めっき法としては、例えば、電解めっ
き、無電解めっき、イオンプレーティング、CVD、P
VD等が挙げられるが、この中でも特に、無電解めっき
が好ましい。
【0205】伝熱調整層57の形成方法として無電解め
っきを用いることにより、形成される伝熱調整層57
は、ロール基材51との密着性が特に優れたものとなる
とともに、各部位での厚さのバラツキの小さいものとな
る。また、伝熱調整層57を形成時におけるロール基材
51の温度上昇を効果的に防止、抑制することができる
ため、伝熱調整層57の形成時等におけるロール基材5
1の構成材料の酸化等を効果的に防止することができる
とともに、伝熱調整層57の形成後においても、ロール
基材51の表面形状を劣化させることなく、維持するこ
とができる。
【0206】また、伝熱調整層57の形成前に、ロール
基材51の外表面に対して、清浄化処理を施してもよ
い。これにより、ロール基材51と伝熱調整層57との
密着性が特に優れたものとなる。前記清浄化処理として
は、例えば、アルカリ洗浄、酸洗浄、有機溶剤洗浄等の
洗浄処理や、ボンバード処理等が挙げられる。
【0207】次に、本発明の冷却ロール5の第3実施形
態について、説明する。図12は、本発明の冷却ロール
の第3実施形態を示す正面図、図13は、図12に示す
冷却ロールの拡大断面図である。なお、図13(後述す
る図15、図17、図19、図20も同様)は、冷却ロ
ールの周面付近の断面形状を説明するための図であり、
ロール基材と表面層との境界(ロール基材と伝熱調整層
との境界、伝熱調整層と表面層との境界)は、省略して
示した。以下、第3実施形態の冷却ロールについて、前
記第1実施形態、第2実施形態との相違点を中心に説明
し、同様の事項の説明は省略する。
【0208】図12に示すように、溝54は、冷却ロー
ル5の回転軸50を中心とする螺旋状に形成されてい
る。溝54がこのような形状であると、比較的容易に、
周面53全体にわたり溝54を形成することができる。
例えば、冷却ロール5を一定速度で回転させておき、旋
盤等の切削工具を回転軸50に対して平行に、一定速度
で移動させながら、冷却ロール5の外周部を切削するこ
とによりこのような溝54を形成することができる。
【0209】なお、螺旋状の溝54は、1条(1本)で
あっても、2条(2本)以上であってもよい。
【0210】溝54の長手方向と、冷却ロール5の回転
方向とのなす角θ(絶対値)は、30°以下であるのが
好ましく、20°以下であるのがより好ましい。θが3
0°以下であると、冷却ロール5のあらゆる周速度にお
いて、周面53とパドル7との間に侵入したガスを効率
よく排出することができる。
【0211】周面53上の各部位において、θの値は、
一定であっても、一定でなくてもよい。また、溝54を
2条以上有する場合、それぞれの溝54について、θ
は、同一であっても、異なっていてもよい。
【0212】溝54は、周面53の縁部55において、
開口部56で開口している。これにより、周面53とパ
ドル7との間から溝54に排出されたガスがこの開口部
56から冷却ロール5の側方へ排出されるため、排出さ
れたガスが再び周面53とパドル7との間に侵入するの
を効果的に防止することができる。図示の構成では、溝
54は、両縁部に開口しているが、一方の縁部にのみ開
口していてもよい。
【0213】次に、本発明の冷却ロール5の第4実施形
態について、説明する。図14は、本発明の冷却ロール
の第4実施形態を示す正面図、図15は、図14に示す
冷却ロールの拡大断面図である。以下、第4実施形態の
冷却ロールについて、前記第1実施形態〜第3実施形態
との相違点を中心に説明し、同様の事項の説明は省略す
る。
【0214】図14に示すように、周面53上には、螺
旋の回転方向が互いに逆向きである少なくとも2本の溝
54が形成されている。これらの溝54は、多点で交差
している。
【0215】このように、螺旋の回転方向が逆向きであ
る溝54が形成されることにより、製造された急冷薄帯
8が右巻きの溝から受ける横方向の力と左巻きの溝から
受ける横方向の力とが相殺され、急冷薄帯8の図14中
の横方向の移動が抑制され、進行方向が安定する。
【0216】また、図14中、θ1、θ2で示すそれぞれ
の回転方向の溝54の長手方向と冷却ロール5の回転方
向とのなす角(絶対値)は、前述したθと同様な範囲の
値であるのが好ましい。
【0217】次に、本発明の冷却ロール5の第5実施形
態について、説明する。図16は、本発明の冷却ロール
の第5実施形態を示す正面図、図17は、図16に示す
冷却ロールの拡大断面図である。以下、第5実施形態の
冷却ロールについて、前記第1実施形態〜第4実施形態
との相違点を中心に説明し、同様の事項の説明は省略す
る。
【0218】図16に示すように、複数の溝54が、冷
却ロール5の周面53の幅方向のほぼ中央から両縁部5
5方向に、ハの字状に形成されている。
【0219】このような溝54が形成された冷却ロール
5を用いた場合、その回転方向との組み合わせにより、
周面53とパドル7との間に侵入したガスをより一層高
い効率で排出することができる。
【0220】また、このようなパターンの溝が形成され
た場合、冷却ロール5の回転に伴って生じる、図16
中、左右の両溝54からの力がつりあうことにより、冷
却ロール5の幅方向のほぼ中央に急冷薄帯8がよせられ
るため、急冷薄帯8の進行方向が安定する。
【0221】なお、本発明では、ガス抜き手段の形状等
の諸条件は、前述した第1実施形態〜第5実施形態に限
定されるものではない。
【0222】例えば、溝54は、図18に示すように間
欠的に形成されたものであってもよい。また、溝54の
断面形状は、特に限定されず、例えば、図19、図20
に示すようなものであってもよい。
【0223】これらの図に示す冷却ロール5でも、前述
した第1実施形態〜第5実施形態の冷却ロール5と同様
の効果が得られる。
【0224】
【実施例】以下、本発明の具体的実施例について説明す
る。
【0225】(実施例1) [冷却ロールの製造]まず、以下に示すような方法で冷
却ロールA、B、C、D、E、F、G、H、I、J、K
の11種の冷却ロールを製造した。
【0226】<冷却ロールA>まず、銅製のロール基材
(直径:200mm、幅:30mm、20℃における熱
伝導率:395W・m-1・K-1、20℃における熱膨張
率(線膨張率α):16.5×10-6-1)を用意し、
その周面に切削加工を施し、ほぼ鏡面(表面粗さRa:
0.07μm)とした。
【0227】次いで、このロール基材の外周面に、酸洗
浄処理およびアルカリ洗浄処理(脱脂処理)を施した。
【0228】このロール基材の外周面に、セラミックス
であるWCの表面層(20℃における熱伝導率:29.
0W・m-1・K-1、20℃における熱膨張率(線膨張率
α):6.2×10−6-1)を溶射により形成した。
【0229】この溶射は、図5に示すような溶射ガンを
備えたプラズマ溶射装置を用いて、次のようにして行っ
た。
【0230】まず、プラズマ溶射装置が設置されたチャ
ンバー内を1×10−3Torrまで減圧した後、アルゴン
ガスを導入した。さらに、その後、1×10−5Torrま
で減圧した後、アルゴンガスを導入し、雰囲気圧を5To
rrとした。
【0231】次に、作動ガス流路から作動ガスを供給し
つつ、陽極ノズルと陰極との間にアークを発生させるこ
とにより、ジェットプラズマを発生させた。さらに、こ
のジェットプラズマ中に、原料を原料供給ガスととも
に、原料通路から供給し、一定速度で回転するロール基
材の外周面上に堆積されることにより、表面層を形成し
た。
【0232】この溶射は、チャンバー内の雰囲気圧が1
0Torr程度に維持された状態で行った。
【0233】なお、原料としては、平均粒径60μmの
WC粉末を用いた。また、作動ガス、原料供給ガスとし
ては、いずれも、アルゴンガスを用いた。プラズマアー
クの温度は約4000℃であった。
【0234】その後、得られた表面層の周面に研磨加工
を施し、その表面粗さRaを0.07μmとした。
【0235】さらに、表面層の外周面に切削加工を施す
ことにより、ロール基材の回転方向に対し、ほぼ平行な
溝を形成し、図1〜図3に示すような冷却ロールAを得
た。
【0236】<冷却ロールB>まず、銅製のロール基材
(直径:200mm、幅:30mm、20℃における熱
伝導率:395W・m-1・K-1)を用意し、その周面に
切削加工を施し、ほぼ鏡面(表面粗さRa:0.07μ
m)とした。
【0237】このロール基材の外周面に、酸洗浄処理お
よびアルカリ洗浄処理(脱脂処理)を施した後、Ni−
Pで構成された伝熱調整層(平均厚さ:2.5μm)を
形成した。
【0238】伝熱調整層の形成は無電解めっきにより行
い、P含有量が8%のめっき浴を用いた。まためっきに
先立ってアルカリ脱脂と酸洗浄を行い、めっき膜を形成
した。
【0239】次に、この伝熱調整層の外周面に、アルゴ
ンイオンボンバードメントによる清浄化処理を10分間
施した後、セラミックスであるWCの表面層(20℃に
おける熱伝導率:29.0W・m-1・K-1、20℃にお
ける熱膨張率(線膨張率α):6.2×10−6-1
を溶射により形成した。
【0240】この溶射は、図5に示すような溶射ガンを
備えたプラズマ溶射装置を用いて、次のようにして行っ
た。
【0241】まず、プラズマ溶射装置が設置されたチャ
ンバー内を1×10−3Torrまで減圧した後、アルゴン
ガスを導入した。さらに、その後、1×10−5Torrま
で減圧した後、アルゴンガスを導入し、雰囲気圧を5To
rrとした。
【0242】次に、作動ガス流路から作動ガスを供給し
つつ、陽極ノズルと陰極との間にアークを発生させるこ
とにより、ジェットプラズマを発生させた。さらに、こ
のジェットプラズマ中に、原料を原料供給ガスととも
に、原料通路から供給し、一定速度で回転するロール基
材の外周面上に堆積されることにより、表面層を形成し
た。
【0243】この溶射は、チャンバー内の雰囲気圧が1
0Torr程度に維持された状態で行った。
【0244】なお、原料としては、平均粒径60μmの
WC粉末を用いた。また、作動ガス、原料供給ガスとし
ては、いずれも、アルゴンガスを用いた。プラズマアー
クの温度は約4000℃であった。
【0245】その後、得られた表面層の周面に研磨加工
を施し、その表面粗さRaを0.20μmとした。
【0246】さらに、表面層の外周面に切削加工を施す
ことにより、ロール基材の回転方向に対し、ほぼ平行な
溝を形成し、図11に示すような冷却ロールBを得た。
【0247】<冷却ロールC>溝の形状を図12、図1
3に示すようなものとした以外は冷却ロールBと同様に
して冷却ロールCを製造した。なお、溝の形成は、以下
のようにして行った。すなわち、3本の切削工具を等間
隔に設置した旋盤を用いて、併設された溝のピッチが周
面上の各部位において、ほぼ一定となるように3条の溝
を形成した。
【0248】<冷却ロールD>溝の形状を図14、図1
5に示すようなものとした以外は冷却ロールCと同様に
して冷却ロールDを製造した。
【0249】<冷却ロールE>溝の形状を図16、図1
7に示すようなものとした以外は冷却ロールCと同様に
して冷却ロールEを製造した。
【0250】<冷却ロールF>表面層の構成材料をNb
C(20℃における熱伝導率:14.7W・m-1
-1、20℃における熱膨張率(線膨張率α):6.8
×10−6-1)とした以外は冷却ロールCと同様にし
て冷却ロールFを製造した。
【0251】なお、原料としては、平均粒径100μm
のNbC粉末を用いた。また、作動ガス、原料供給ガス
としては、いずれも、アルゴンガスを用いた。プラズマ
アークの温度は約4000℃であった。
【0252】<冷却ロールG>表面層の構成材料をSi
(20℃における熱伝導率:15.0W・m-1
-1、20℃における熱膨張率(線膨張率α):4.8
×10−6-1)とした以外は冷却ロールCと同様にし
て冷却ロールGを製造した。
【0253】なお、原料としては、平均粒径80μmの
Si粉末を用いた。また、作動ガス、原料供給ガ
スとしては、いずれも、アルゴンガスを用いた。プラズ
マアークの温度は約3500℃であった。
【0254】<冷却ロールH>表面層の構成材料をTi
N(20℃における熱伝導率:29.4W・m-1
-1、20℃における熱膨張率(線膨張率α):9.4
×10−6-1)とした以外は冷却ロールCと同様にし
て冷却ロールHを製造した。
【0255】なお、原料としては、平均粒径50μmの
TiN粉末を用いた。また、作動ガス、原料供給ガスと
しては、いずれも、アルゴンガスを用いた。プラズマア
ークの温度は約3000℃であった。
【0256】<冷却ロールI>伝熱調整層の構成材料を
Co−Bとした以外は冷却ロールCと同様にして冷却ロ
ールIを製造した。
【0257】伝熱調整層の形成は、無電解めっきにより
行い、B含有量が5%のめっき浴を用いた。まためっき
に先立ってアルカリ脱脂と酸洗浄を行い、めっき膜を形
成した。
【0258】<冷却ロールJ>銅製のロール基材(直
径:200mm、幅:30mm、20℃における熱伝導
率:395W・m-1・K-1、20℃における熱膨張率
(線膨張率α):16.5×10-6-1)を用意し、そ
の周面に切削加工を施し、ほぼ鏡面(表面粗さRa:
0.07μm)とした。
【0259】その後、さらに切削加工を施し、ロール基
材の回転方向に対し、ほぼ平行な溝を形成し、冷却ロー
ルJを得た。
【0260】<冷却ロールK>銅製のロール基材(直
径:200mm、幅:30mm、20℃における熱伝導
率:395W・m-1・K-1)を用意し、その周面に切削
加工を施し、ほぼ鏡面(表面粗さRa:0.07μm)
とした。
【0261】その後、ロール基材の外周面に、WCで構
成された表面層をイオンプレーティングにより形成し、
冷却ロールKを製造した。
【0262】各冷却ロールについて、伝熱調整層の平均
厚さ、表面層の平均厚さ、溝の幅L 1(平均値)、深さ
2(平均値)、並設された溝のピッチL3(平均値)、
溝の長手方向と冷却ロールの回転方向とのなす角θ、冷
却ロールの周面上における溝の占める投影面積の割合、
周面の溝を除く部分の表面粗さRaの測定値を表1に示
す。
【0263】
【表1】
【0264】[急冷薄帯の製造および評価]このように
して得られた各冷却ロールを用いて、急冷薄帯を製造
し、磁気特性等の各種評価を行った。
【0265】まず、冷却ロールAを用いた急冷薄帯の製
造、および各種評価について説明する。
【0266】図1に示すような構成の急冷薄帯製造装置
1を用いて、以下に述べるような方法で合金組成が(N
0.77Pr0.2Dy0.038.8Febal.Co5.56.2で表
される急冷薄帯を製造した。
【0267】まず、Nd、Pr、Dy、Fe、Co、B
の各原料を秤量して母合金インゴットを鋳造した。
【0268】急冷薄帯製造装置1において、底部にノズ
ル(円孔オリフィス)3を設けた石英管内に前記母合金
インゴットを入れた。急冷薄帯製造装置1が収納されて
いるチャンバー内を脱気した後、不活性ガス(ヘリウム
ガス)を導入し、所望の温度および圧力の雰囲気とし
た。
【0269】その後、石英管内の母合金インゴットを高
周波誘導加熱により溶解し、さらに、冷却ロールの周速
度を所望の値とし、溶湯6の噴射圧(石英管の内圧と筒
体2内における液面の高さに比例してかかる圧力の和
と、雰囲気圧との差圧)を40kPa、雰囲気ガスの圧
力を60kPaとしたうえで、溶湯6を冷却ロール5の
回転軸50のほぼ真上から冷却ロール5の頂部の周面5
3に向けて噴射し、急冷薄帯8を連続的に作製した。こ
のとき、冷却ロールの周速度を種々変化させて数ロット
の急冷薄帯を製造した。
【0270】得られた各急冷薄帯について、アルゴンガ
ス雰囲気中で、700℃×5分間の熱処理を施した。そ
の後、振動試料型磁力計(VSM)により、各急冷薄帯
の磁気特性を測定した。測定に際しては、急冷薄帯の長
軸方向を印加磁界方向とした。なお、反磁界補正は行わ
なかった。このような測定で最も高い磁気特性を有して
いた急冷薄帯について、以下の各種評価を行った。
【0271】まず、長さ約5cmの急冷薄帯をそれぞれ
取り出し、さらにそこから長さ約7mmのサンプルを5
サンプル連続して作製した。
【0272】次に、これらの5サンプルについて、振動
試料型磁力計(VSM)を用いた磁気特性(保磁力
cJ、最大磁気エネルギー積(BH)max)の測定を改
めて行った。測定に際しては、急冷薄帯の長軸方向を印
加磁界方向とした。なお、反磁界補正は行わなかった。
【0273】次に、これらの5サンプルの平均厚さtお
よび磁気特性を測定した。平均厚さtは、レーザー顕微
鏡により1サンプルにつき20箇所の測定点で測定し、
これを平均した値とした。
【0274】さらに、これらの5サンプルのロール面お
よびフリー面について、相構成を分析するため、Cu−
Kαを用い回折角(2θ)が20°〜60°にてX線回
折を行った。回折パターンからハード磁性相であるR2
(Fe・Co)14B型相と、ソフト磁性相であるα−
(Fe,Co)型相の回折ピークが確認でき、透過型電
子顕微鏡(TEM)による観察結果から、いずれのサン
プルも、複合組織(ナノコンポジット組織)を形成して
いることが確認された。また、ロール面およびフリー面
における各相の平均結晶粒径を測定した。
【0275】上記の熱処理を施した急冷薄帯を粉砕し、
平均粒径70μmの磁石粉末を得た。
【0276】次に、磁石粉末とエポキシ樹脂とを混合
し、ボンド磁石用組成物(コンパウンド)を作製した。
このとき、コンパウンド中の磁石粉末の含有量(含有
率)は、約97.5wt%であった。
【0277】次いで、このコンパウンドを粉砕して粒状
とし、この粒状物を秤量してプレス装置の金型内に充填
し、室温において、圧力700MPaで圧縮成形(無磁
場中)して、成形体を得た。離型後、175℃で加熱硬
化させて、直径10mm×高さ8mmの円柱状のボンド
磁石を得た。
【0278】このボンド磁石について、磁場強度3.2
MA/mのパルス着磁を施した後、直流自記磁束計(東
英工業(株)製、TRF−5BH)にて最大印加磁場
2.0MA/mで磁気特性(磁束密度Br、保磁力HcJ
および最大磁気エネルギー積(BH)max)を測定し
た。測定時の温度は、23℃(室温)であった。
【0279】その後、冷却ロールAを冷却ロールB、
C、D、E、F、G、H、I、J、Kに順次交換し、同
様にして急冷薄帯の製造および各種評価を行った。
【0280】これらの評価の結果を表2、表3、表4、
表5に示す。ただし、冷却ロールJを用いて製造した急
冷薄帯のサンプルのロール面では、非晶質相が主相であ
り、結晶粒径の測定は行えなかった。
【0281】また、冷却ロールB〜Kを用いた急冷薄帯
の製造において、最も高い磁気特性を有する急冷薄帯が
得られたときの冷却ロールの周速度も表2〜表4に併せ
て示す。
【0282】
【表2】
【0283】
【表3】
【0284】
【表4】
【0285】
【表5】
【0286】表2〜表4から明らかなように、冷却ロー
ルA〜I(いずれも本発明)を用いて製造された急冷薄
帯では、ロール面とフリー面とでの各相の結晶粒径の差
が小さい。また、各急冷薄帯について、サンプル間での
磁気特性のバラツキが小さく、全体として磁気特性が高
い。これは、以下のような理由によるものであると推定
される。
【0287】冷却ロールA〜Iは、その周面上に、ガス
抜き手段を有している。そのため、周面とパドルとの間
に侵入したガスが効率よく排出され、周面とパドルとの
密着性が向上し、急冷薄帯のロール面への巨大ディンプ
ルの発生が防止または抑制され、各部位における冷却速
度のバラツキが小さくなる。さらに、表面層が熱伝導率
80W・m-1・K-1以下の材料で構成され、かつ溶射に
より形成されたものであることにより、ロール面付近と
フリー面付近とでの冷却速度の差も小さくなる。これら
の相乗効果により、得られる急冷薄帯における結晶粒径
のバラツキが小さくなり、その結果、磁気特性のバラツ
キも小さくなるものであると考えられる。
【0288】これに対し、冷却ロールJ(比較例)を用
いて製造された急冷薄帯は、サンプル間での磁気特性の
バラツキは比較的小さいが、全体的にその値が低くなっ
ている。また、冷却ロールK(比較例)を用いて製造さ
れた急冷薄帯は、ロール面とフリー面とでの平均結晶粒
径の差は比較的小さいが、サンプル間での磁気特性のバ
ラツキが大きい。これは、以下のような理由によるもの
であると推定される。
【0289】冷却ロールJにはガス抜き手段が設けられ
ているため、この冷却ロールを用いて製造された急冷薄
帯は、冷却ロールの周面と、溶湯のパドルとの密着性に
は優れている。しかし、周面が銅で構成されているた
め、溶湯の冷却速度が大きすぎて、ロール面では非晶質
相が主相となる。これに対し、フリー面ではロール面に
比べ冷却速度が小さいため、非晶質相が減少し、多くの
結晶粒が形成される。このように、ロール面とフリー面
とでの組織差が大きいため、全体としての磁気特性が低
下すると考えられる。
【0290】冷却ロールKにはWCで構成された表面層
が設けられているため、ロール面付近とフリー面付近と
での冷却速度の差は比較的小さい。しかし、周面上にガ
ス抜き手段が設けられていないため、周面と溶湯のパド
ルとの密着性が低下することにより、周面とパドルとの
間にガスが侵入する。周面とパドルとの間に侵入したガ
スは、そのまま残留し、急冷薄帯のロール面に巨大なデ
ィンプルが形成される。このため、周面に密着した部位
に比べ、ディンプルが形成された部位では冷却速度は低
下し、結晶粒径の粗大化が起こる。その結果、得られる
急冷薄帯の磁気特性のバラツキは大きくなると考えられ
る。
【0291】また、表5から明らかなように、冷却ロー
ルA〜Iによるボンド磁石では、優れた磁気特性が得ら
れているのに対し、冷却ロールJ、Kによるボンド磁石
は、低い磁気特性しか有していない。
【0292】これは、冷却ロールA〜Iによるボンド磁
石が、磁気特性が高くかつ磁気特性のバラツキの小さい
急冷薄帯から得られる磁石粉末を用いて製造されたもの
であるのに対し、冷却ロールJ、Kによるボンド磁石
は、磁気特性の低い急冷薄帯から得られる磁石粉末を用
いて製造されたものであるため、ボンド磁石としての磁
気特性も低くなっていると考えられる。
【0293】(実施例2)溝の平均幅、平均深さ、並設
された溝の平均ピッチを種々変化させた以外は、冷却ロ
ールCと同様にして、6種の冷却ロール(冷却ロール
L、M、N、O、P、Q)を得た。
【0294】各冷却ロールについて、溝の幅L1(平均
値)、深さL2(平均値)、並設された溝のピッチL
3(平均値)の測定値を表6に示す。
【0295】
【表6】
【0296】まず、冷却ロールLを使用し、実施例1と
同様にして、それぞれ数ロットの急冷薄帯を製造した。
これらの急冷薄帯について、アルゴンガス雰囲気中で、
660℃×7分間の熱処理を施した後、振動試料型磁力
計(VSM)により、各急冷薄帯の磁気特性を測定し
た。測定に際しては、急冷薄帯の長軸方向を印加磁界方
向とした。なお、反磁界補正は行わなかった。
【0297】このような測定で最も高い磁気特性を有し
ていた急冷薄帯を、アルゴンガス雰囲気中で粉砕し、平
均粒径70μmの磁石粉末を得た。
【0298】その後、冷却ロールKを冷却ロールM、
N、O、P、Qに順次交換し、同様にして磁石粉末を製
造した。
【0299】このようにして得られた6種の磁石粉末に
ついて、その相構成を分析するため、Cu−Kαを用い
回折角20°〜60°にてX線回折を行った。回折パタ
ーンからハード磁性相であるR2(Fe・Co)14B型
相と、ソフト磁性相であるα−(Fe,Co)型相の回
折ピークが確認でき、透過型電子顕微鏡(TEM)によ
る観察結果から、いずれも、複合組織(ナノコンポジッ
ト組織)を形成していることが確認された。また、各磁
石粉末について、各相の平均結晶粒径を測定した。
【0300】次に、各磁石粉末とエポキシ樹脂とを混合
し、ボンド磁石用組成物(コンパウンド)を作製した。
このとき、磁石粉末とエポキシ樹脂との配合比率(重量
比)は、各サンプルについてほぼ等しい値とした。すな
わち、各サンプル中の磁石粉末の含有量(含有率)は、
約97.5wt%であった。
【0301】次いで、このコンパウンドを粉砕して粒状
とし、この粒状物を秤量してプレス装置の金型内に充填
し、室温において、圧力700MPaで圧縮成形(無磁
場中)して、成形体を得た。離型後、175℃で加熱硬
化させて、直径10mm×高さ8mmの円柱状のボンド
磁石を得た。
【0302】これらのボンド磁石について、磁場強度
3.2MA/mのパルス着磁を施した後、直流自記磁束
計(東英工業(株)製、TRF−5BH)にて最大印加
磁場2.0MA/mで磁気特性(磁束密度Br、保磁力
cJおよび最大磁気エネルギー積(BH)max)を測定
した。測定時の温度は、23℃(室温)であった。これ
らの結果を表7に示す。
【0303】
【表7】
【0304】表7から明らかなように、溝の幅L1と溝
の深さL2との比L1/L2が最適の範囲の値である冷却
ロールによる急冷薄帯を用いて製造されたボンド磁石
は、特に優れた磁気特性を有している。
【0305】
【発明の効果】以上述べたように、本発明によれば、次
のような効果が得られる。
【0306】・冷却ロールの周面にガス抜き手段が設け
られているため、周面と溶湯のパドルとの密着性が向上
し、高い磁気特性が安定して得られる。
【0307】・冷却ロールの周面を形成する表面層が溶
射により形成され、かつ熱伝導率が80W・m-1・K-1
以下の材料で構成されたものであるため、得られる急冷
薄帯のロール面側とフリー面側の組織差、特に冷却速度
の違いによる結晶粒径の差を小さくすることができ、そ
の結果、優れた磁気特性を持つ磁石材料、磁石粉末が得
られる。また、それより製造されたボンド磁石も優れた
磁気特性を発揮する。
【0308】・特に、表面層の形成材料、厚さ、ガス抜
き手段の形状等を好適な範囲に設定することにより、さ
らに優れた磁気特性が得られる。
【0309】・磁石粉末がソフト磁性相とハード磁性相
とを有する複合組織で構成されることにより、磁化が高
く、優れた磁気特性を発揮する。特に本発明により、固
有保磁力と角型性が改善される。
【0310】・高い磁束密度が得られるので、等方性で
あっても、高磁気特性を持つボンド磁石が得られる。特
に、従来の等方性ボンド磁石に比べ、より小さい体積の
ボンド磁石で同等以上の磁気性能を発揮することができ
るので、より小型で高性能のモータを得ることが可能と
なる。
【0311】・また、高い磁束密度が得られることか
ら、ボンド磁石の製造に際し、高密度化を追求しなくて
も十分に高い磁気特性を得ることができ、その結果、成
形性の向上と共に、寸法精度、機械的強度、耐食性、耐
熱性(熱的安定性)等のさらなる向上が図れ、信頼性の
高いボンド磁石を容易に製造することが可能となる。
【0312】・着磁性が良好なので、より低い着磁磁場
で着磁することができ、特に多極着磁等を容易かつ確実
に行うことができ、かつ高い磁束密度を得ることができ
る。
【0313】・高密度化を要求されないことから、圧縮
成形法に比べて高密度の成形がしにくい押出成形法や射
出成形法によるボンド磁石の製造にも適し、このような
成形方法で成形されたボンド磁石でも、前述したような
効果が得られる。よって、ボンド磁石の成形方法の選択
の幅、さらには、それによる形状選択の自由度が広が
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の冷却ロールの第1実施形態と、その
冷却ロールを用いて薄帯状磁石材料を製造する装置(急
冷薄帯製造装置)の構成例とを模式的に示す斜視図であ
る。
【図2】 図1に示す冷却ロールの正面図である。
【図3】 図1に示す冷却ロールの周面付近の断面形状
を模式的に示す図である。
【図4】 図1に示す急冷薄帯製造装置における溶湯の
冷却ロールへの接触部位付近の状態を模式的に示す断面
図である。
【図5】 プラズマ溶射により、表面層を形成する方法
を示す模式図である。
【図6】 ガス抜き手段の形成方法を説明するための図
である。
【図7】 ガス抜き手段の形成方法を説明するための図
である。
【図8】 本発明の磁石粉末における複合組織(ナノコ
ンポジット組織)の一例を模式的に示す図である。
【図9】 本発明の磁石粉末における複合組織(ナノコ
ンポジット組織)の一例を模式的に示す図である。
【図10】 本発明の磁石粉末における複合組織(ナノ
コンポジット組織)の一例を模式的に示す図である。
【図11】 本発明の第2実施形態の冷却ロールの周面
付近の断面形状を模式的に示す図である。
【図12】 本発明の冷却ロールの第3実施形態を模式
的に示す正面図である。
【図13】 図12に示す冷却ロールの周面付近の断面
形状を模式的に示す図である。
【図14】 本発明の冷却ロールの第4実施形態を模式
的に示す正面図である。
【図15】 図14に示す冷却ロールの周面付近の断面
形状を模式的に示す図である。
【図16】 本発明の冷却ロールの第5実施形態を模式
的に示す正面図である。
【図17】 図16に示す冷却ロールの周面付近の断面
形状を模式的に示す図である。
【図18】 本発明の冷却ロールの他の実施形態を模式
的に示す正面図である。
【図19】 本発明の冷却ロールの他の実施形態の周面
付近の断面形状を模式的に示す図である。
【図20】 本発明の冷却ロールの他の実施形態の周面
付近の断面形状を模式的に示す図である。
【図21】 従来の薄帯状磁石材料を単ロール法により
製造する装置(急冷薄帯製造装置)における溶湯の冷却
ロールへの衝突部位付近の状態を示す断面側面図であ
る。
【符号の説明】
1……急冷薄帯製造装置 2……筒体 3……ノズル
4……イル 5、500……冷却ロール 50……回転
軸 51……ロール基材 511……部位 512……
部位 52……表面層 521……部位 522……部
位 53、530……周面 54……溝 55……縁部
56……開口部 57……伝熱調整層 6、60……溶湯 7、70……パドル 710……凝
固界面 8、80……急冷薄帯 81、810……ロー
ル面 82……フリー面 9……ディンプル 10……ソフト磁性相 11……ハード磁性相 12…
…原料 13……溶射ガン 131……陽極ノズル 1
32……陰極 133……作動ガス流路 134……開
口部 135……原料通路
フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) B22F 3/02 B22F 3/02 M 5E062 C22C 1/04 C22C 1/04 G H01F 1/06 H01F 41/02 G 41/02 B22F 9/04 E // B22F 9/04 C23C 4/04 C23C 4/04 H01F 1/06 A Fターム(参考) 4E004 DB02 DB16 NA05 NB07 NC09 QA01 QA03 SB01 SD01 TA03 4K017 AA06 BA08 BB06 CA07 DA04 EA03 EC02 4K018 AA11 BA05 BB04 BC01 BD01 CA08 KA46 4K031 AA08 AB02 CB42 CB43 CB44 CB45 CB46 5E040 AA04 AA19 CA01 HB05 HB11 HB17 NN01 NN12 5E062 CC05 CD04 CE01 CG01

Claims (34)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 磁石合金の溶湯をその周面に衝突させ、
    冷却固化して、薄帯状磁石材料を製造するための冷却ロ
    ールであって、 ロール基材と、溶射により前記ロール基材の外周面上に
    形成された表面層とを有し、 前記表面層の構成材料の室温付近における熱伝導率が、
    前記ロール基材の構成材料の室温付近における熱伝導率
    より低く、かつ80W・m-1・K-1以下であり、 前記周面上に、前記周面と前記溶湯のパドルとの間に侵
    入したガスを排出するガス抜き手段を設けたことを特徴
    とする冷却ロール。
  2. 【請求項2】 前記表面層は、主として、Nb、Mo、
    Zr、W、Si、Bのうち少なくとも1種の元素を含む
    材料で構成される請求項1に記載の冷却ロール。
  3. 【請求項3】 前記表面層は、セラミックスを主とする
    材料で構成される請求項1または2に記載の冷却ロー
    ル。
  4. 【請求項4】 前記表面層の平均厚さは、5〜100μ
    mである請求項1ないし3のいずれかに記載の冷却ロー
    ル。
  5. 【請求項5】 前記表面層は、伝熱調整層を介して前記
    ロール基材の外周面上に設けられたものであり、 前記ロール基材の構成材料の室温付近における熱伝導率
    をC[W・m−1・K−1]、 前記伝熱調整層の構成材料の室温付近における熱伝導率
    をC[W・m−1・K−1]、 前記表面層の構成材料の室温付近における熱伝導率をC
    [W・m−1・K ]としたとき、C>C>C
    の関係を満足する請求項1ないし4のいずれかに記載
    の冷却ロール。
  6. 【請求項6】 前記伝熱調整層の平均厚さは、0.05
    〜50μmである請求項5に記載の冷却ロール。
  7. 【請求項7】 前記伝熱調整層は、金属めっき層である
    請求項5または6に記載の冷却ロール。
  8. 【請求項8】 前記伝熱調整層は、無電解めっきにより
    形成されたものである請求項5ないし7のいずれかに記
    載の冷却ロール。
  9. 【請求項9】 前記伝熱調整層は、Niおよび/または
    Coを主とする材料で構成されたものである請求項5な
    いし8のいずれかに記載の冷却ロール。
  10. 【請求項10】 前記伝熱調整層は、Pおよび/または
    Bを含む材料で構成されたものである請求項5ないし9
    のいずれかに記載の冷却ロール。
  11. 【請求項11】 前記表面層は、前記伝熱調整層の表面
    に対する清浄化処理を行った後に、形成されたものであ
    る請求項5ないし10のいずれかに記載の冷却ロール。
  12. 【請求項12】 前記周面の前記ガス抜き手段を除く部
    分の表面粗さRaは、0.05〜5μmである請求項1
    ないし11のいずれかに記載の冷却ロール。
  13. 【請求項13】 前記ガス抜き手段は、少なくとも1本
    の溝である請求項1ないし12のいずれかに記載の冷却
    ロール。
  14. 【請求項14】 前記溝の平均幅は、0.5〜90μm
    である請求項13に記載の冷却ロール。
  15. 【請求項15】 前記溝の平均深さは、0.5〜20μ
    mである請求項13または14に記載の冷却ロール。
  16. 【請求項16】 前記溝の平均幅をL1、平均深さをL2
    としたとき、0.5≦L1/L2≦15の関係を満足する
    請求項13ないし15のいずれかに記載の冷却ロール。
  17. 【請求項17】 前記溝の長手方向と、冷却ロールの回
    転方向とのなす角は、30°以下である請求項13ない
    し16のいずれかに記載の冷却ロール。
  18. 【請求項18】 前記溝は、前記冷却ロールの回転軸を
    中心とする螺旋状に形成されたものである請求項13な
    いし17のいずれかに記載の冷却ロール。
  19. 【請求項19】 前記溝が並設されており、その平均ピ
    ッチは、3〜100μmである請求項13ないし18の
    いずれかに記載の冷却ロール。
  20. 【請求項20】 前記溝は、前記周面の縁部に開口して
    いるものである請求項13ないし19のいずれかに記載
    の冷却ロール。
  21. 【請求項21】 前記周面上における前記溝の占める投
    影面積の割合が10〜99.5%である請求項13ない
    し20のいずれかに記載の冷却ロール。
  22. 【請求項22】 請求項1ないし21のいずれかに記載
    の冷却ロールを用いて製造されたことを特徴とする薄帯
    状磁石材料。
  23. 【請求項23】 平均厚さが8〜50μmである請求項
    22に記載の薄帯状磁石材料。
  24. 【請求項24】 薄帯状磁石材料は、製造後少なくとも
    1回熱処理が施されたものである請求項22または23
    に記載の薄帯状磁石材料。
  25. 【請求項25】 薄帯状磁石材料は、ソフト磁性相とハ
    ード磁性相とを有する複合組織で構成されるものである
    請求項22ないし24のいずれかに記載の薄帯状磁石材
    料。
  26. 【請求項26】 前記ハード磁性相および前記ソフト磁
    性相の平均結晶粒径は、いずれも1〜100nmである
    請求項25に記載の薄帯状磁石材料。
  27. 【請求項27】 請求項22ないし26のいずれかに記
    載の薄帯状磁石材料を粉砕して得られたことを特徴とす
    る磁石粉末。
  28. 【請求項28】 磁石粉末は、その製造過程または製造
    後少なくとも1回熱処理が施されたものである請求項2
    7に記載の磁石粉末。
  29. 【請求項29】 平均粒径が1〜300μmである請求
    項27または28に記載の磁石粉末。
  30. 【請求項30】 磁石粉末は、ソフト磁性相とハード磁
    性相とを有する複合組織で構成されるものである請求項
    27ないし29のいずれかに記載の磁石粉末。
  31. 【請求項31】 前記ハード磁性相および前記ソフト磁
    性相の平均結晶粒径は、いずれも1〜100nmである
    請求項30に記載の磁石粉末。
  32. 【請求項32】 請求項27ないし31のいずれかに記
    載の磁石粉末を結合樹脂で結合してなることを特徴とす
    るボンド磁石。
  33. 【請求項33】 室温での固有保磁力HcJが320〜1
    200kA/mである請求項32に記載のボンド磁石。
  34. 【請求項34】 最大磁気エネルギー積(BH)max
    40kJ/m3以上である請求項32または33に記載
    のボンド磁石。
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