JP2003306741A - 高張力鋳鋼およびその製造方法 - Google Patents
高張力鋳鋼およびその製造方法Info
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Abstract
開発。 【構成】 重量%で、C;0.3〜0.7、Si;1.
0〜2.0、Mn;0.8〜2.0、Mo;0.3〜
1.5、Cu;0.3〜1.5、P≦0.1、S≦0.
07、 Ni≦1.0,Cr≦1.0、V≦1.0を含
有し、残部がFeおよび不純物元素からなり、オーステ
ンパ処理による残留オーステナイトを2〜30体積%含
んだベイナイト組織であり、引張強度が1100〜19
00MPaで、動的破壊靱性が80〜110MPa・m
1/2 であることを特徴とする高張力・高靱性鋳鋼。
溶湯を鋳造して鋳物素材とし、該鋳物素材を850℃〜
1000℃で、30分から3時間オーステナイト化処理
し、250℃〜450℃で、10分から2時間恒温変態
処理する。
Description
れた高張力・高靱性鋳鋼およびその製造方法に関する。
2218号)公報には、重量比で、C;0.3〜0.7%、Si;
1.8〜3.0%、Mn;0.8%以下、P;0.1%以下、S;0.07%以
下、さらにMo;0.7%以下、Cu;1%以下、V;1%以下、Ni;
1%以下、Al;0.1%以下のうち1種または2種以上を含
有し、残部がFeおよび不純物元素からなる溶湯を、4℃
/sec以上の冷却速度で鋳造した後、オーステンパー処理
し均一微細なベイナイトと安定な残留オーステナイトの
混合組織とすることを特徴とする高靭性鋳鋼の製造方法
の発明が開示されている。
明は、銅水冷鋳型を使用して鋳造し、未変態オーステナ
イト量が0.6%以下と少なく、引張強度852〜13
14MPa、衝撃値51〜96MPaの特性を示すもの
である。
術として、カナダ特許第1130617号明細書(特開昭55
−94461号公報)に開示されている高炭素、高シリ
コン鋳鋼が紹介されているが、この鋳鋼は、重量比でC;
0.8〜1.2%、Si;2.0〜2.6%、Mn;0.3〜1.0%、Crおよび
Ni;1%以下、その他にNb、Al、Mo等を少量含有する鋼を
オーステンパー処理することにより、ベイナイト−オー
ステナイト(30〜40体積%)組織とし、高強度で高
靭性の鋼を得ている。この鋳鋼においては、高Si含有量
とすることにより、オーステンパー処理におけるセメン
タイトの析出を防止し、生成するベイナイトのC含有量
を低めるとともに、結果として残留オーステナイトのC
含有量を増加し、残留オーステナイトが安定化して、高
強度および高靭性が得られている。
状のものが得られ、強度にも優れ、種々の機械部品など
に使用されるが、より高張力化(薄肉、軽量化)が求め
られている。
オーステンパ処理により機械的性質が大幅に改善してお
り、優れた強度と靱性を有している。しかしながら、1
0容積%程度の黒鉛が含まれているため、ヤング率が一
般的な鋼より約20%も低く、薄肉化には不向きであ
る。
靱性は低下する傾向がある。高強度材料において脆性破
壊を起こした事故が問題となっている。疲労により高強
度材料に多数の微細亀裂が生じ、亀裂を起点として急速
な破断が起こる。高強度材料については、こういった衝
撃破壊に対する優れた特性が求められる。
31号公報記載の方法は、合金成分のSi量が高くMn
量が低いので、鋳造時の黒鉛晶出を抑えるために、金型
鋳造により鋳造時の冷却速度を4℃/秒以上にしなけれ
ばならないという制限がある。
において、C、Si、Mn、Cu、Moの含有量を調整
し、オーステンパ処理をすることによって、従来の最高
レベルの鋳鋼の性能を上回る動的破壊靱性に優れた高張
力・高靱性鋳鋼が得られることを見出した。すなわち、
本発明は、重量%で、C;0.3〜0.7、Si;1.
0〜2.0、Mn;0.8〜2.0、Mo;0.3〜
1.5、Cu;0.3〜1.5、P≦0.1、S≦0.
07、Ni≦1.0、Cr≦1.0、V≦1.0を含有
し、残部がFeおよび不純物元素からなる組成を有し、
オーステンパ処理による残留オーステナイトを2〜30
%含んだベイナイト組織であり、引張強度が1100〜
1900MPaで、動的破壊靱性が80〜110MPa
・m1/2 であることを特徴とする高張力・高靱性鋳
鋼である。
0.7、Si;1.0〜2.0、Mn;0.8〜2.
0、Mo;0.3〜1.5、Cu;0.3〜1.5、P
≦0.1、S≦0.07、Ni≦1.0、Cr≦1.
0、V≦1.0を含有し、残部がFeおよび不純物元素
からなる溶湯を鋳造して鋳物素材とし、該鋳物素材を8
50℃〜1000℃で、30分から3時間オーステナイ
ト化処理し、250℃〜450℃で、10分から2時間
恒温変態処理することを特徴とする上記の高張力・高靱
性鋳鋼の製造方法である。
留オーステナイトを約2〜30%、好ましくは約10〜
25%含んだベイナイト組織からなる。残留オーステナ
イトの量はSi量が多くなれば増える。
す伸び(ε/%)と引張強度(σT S/MPa)の相関
図において、伸び12%で引張強度1100MPaの点
と伸び2%で引張強度1700MPaの点とを結ぶ直線
より右斜め上の領域の伸びおよび引張強度を有し、伸び
3〜20%で1100〜1900MPaの高張力を有し
ており、さらに、動的破壊靱性値は80〜110MPa
・m1/2 の範囲にある。このように優れた引張強
度、伸び特性と動的破壊靱性値と有する本発明の鋳鋼は
自動車部品などの精密機械部品の薄肉・軽量化に特に好
適なものである。
で、C;0.3〜0.7、Si;1.0〜2.0、M
n;0.8〜2.0、Mo;0.3〜1.5、Cu;
0.3〜1.5を基本成分とする。
イトを残留させるために必要な元素である。0.3%未
満であると、安定なオーステナイトが残留せず、靱性が
低下する。黒鉛が生成すると靱性が低下するので、黒鉛
の析出を防止するためには炭素量は0.7%以下に低く
する必要がある。
ナイト量を増加させる傾向が最も大きい合金元素であ
り、1.0%より少なすぎるとオーステナイトの安定化
を損なう。Siが2.0%を超えて多すぎると、黒鉛の
晶出、析出を招くと同時に恒温変態性を損ない、強度の
低下を招く。好ましくは、1.2〜1.8%とする。
調整することにより、残留オーステナイトを安定化して
靱性を付与する成分である。Mnは、多くなると偏析に
より靱性を劣化させるとして従来の鋳鋼では約0.8%
程度以下に抑えられているが、本発明の鋳鋼において
は、MoとCuをある程度含有させることに関係して、
0.8〜2.0%含有させる。Mnが2.0%を超えて
多すぎると、凝固時に粗大な炭化物を晶出し、延性を著
しく損ない、0.8%より少なすぎると黒鉛の晶出、析
出を招くと同時に恒温変態性を損なう。好ましくは、
1.0〜1.5%とする。このように、Mn量を高くす
ることにより実用的な冷却速度で凝固時の黒鉛化が起こ
ることはないし、恒温変態時の黒鉛化も抑えられる。
調整することにより、残留オーステナイトを安定化する
元素であるが、多量に含有されると脆化するので1.5
%以下、好ましくは、0.3〜0.6とする。Moは、
Mnと同様に、1.5%を超えて多すぎると、凝固時に
粗大な炭化物を晶出し、延性を著しく損ない、0.3%
より少なすぎると黒鉛の晶出、析出を招くと同時に恒温
変態性を損なう。
調整することにより、残留オーステナイトを安定化する
元素である。Cuが1.5%を超えて多すぎると、一部
が溶解炉に蓄積し、結果的に安定した溶解操業に困難を
きたし、0.3%より少なすぎると恒温変態性を損な
う。好ましくは、0.7〜1.0%とする。
脆化を防止するためにはPは0.1%以下、Sは0.0
7%以下に抑制する。
使用され得るその他の合金元素が必要に応じ、少量添加
されてもよいが、多量に含有されると脆化するので1.
0%以下とする。Alは合金元素として特別に添加する
ことはなく、不可避的に随伴されても0.1%以下であ
る。
材を850℃〜1000℃で、30分から3時間オース
テナイト化処理し、250℃〜450℃で、10分から
2時間恒温変態処理することにより、残留オーステナイ
トを2〜30%含んだベイナイト組織が得られる。本発
明の鋳鋼を得るための鋳造法は、通常のアルカリ・フェ
ノール自硬性鋳型や砂型を用いる方法でよく、特に限定
されない。
公知の方法であるが、本発明の方法においては、オース
テナイト化処理は850℃〜1000℃で、30分から
3時間鋳物素材を保持した後、恒温変態処理温度に保っ
たソルト浴などに浸漬して行う。オーステナイト化処理
の温度と時間に関しては、オーステナイト化温度が高い
場合は時間を短くし、オーステナイト化温度が低い場合
には時間は長くとる必要がある。オーステナイト化処理
温度が850℃未満では、均一、安定なオーステナイト
化が達成されないため、所望の強度靱性を得ることがで
きず、1000℃を超えると結晶粒が粗大化し、靱性お
よび延性が低下する。オーステナイト化処理時間が30
分未満では、所望のオーステナイト化が実現できず、他
方3時間であれば十分である。
材をソルト浴などに浸漬して250℃〜450℃で、1
0分から2時間恒温保持する。保持温度が高いと高靱性
に、低いと高強度低靱性となるが、250℃未満ではマ
ルテンサイトを多量に形成してしまい、所望の基地組織
を得ることができず、450℃を超えるとパーライト組
織が生じ、靱性が低下する。
s、0.3ksにおいて最も高く、他方時間が長くなる
につれて引張強度が減少する。伸びは、60分付近まで
増加し、さらに長くなると減少する。また、オーステン
パ時間が10分未満では、多量の不安定なオーステナイ
トが残留し、空冷の過程でマルテンサイとが生成し、靱
性が低下する。60分までは動的破壊靱性値が増加する
が、さらに長くなると動的破壊靱性値は低下し、漸減す
る傾向となる。したがって、これらの特性を考慮してオ
ーステンパ時間は10分から2時間とする。より好まし
くは30分から1.5時間とする。
た。Si添加量は1.48%とした。原料をアーク炉に
より溶解させ、アルカリ・フェノール自硬性鋳型によっ
て鋳造し、焼鈍後に粗加工を施し鋳物素材とした。
173Kで3.6ks保持をした後、さらに、ベイナイ
ト変態温度域に設定した塩浴炉中に素早く投入し、一定
時間保持した後、空冷することによりオーステンパ処理
を行行った。塩浴での保持温度は523K、573K、
623K、673Kの4種類とし、その時の保持時間は
0.03ks、0.3ks、0.9ks、1.8ks、
3.6ks、7.2ks、10.8ksの7条件を設定
した。なお、本鋳鋼の合金元素添加量から計算したMs
点は約630Kである。図1は、実施例1により得られ
た鋳鋼のオーステンパ処理時間と残留オーステナイト量
との関係を示すグラフである。
た。Si添加量は0.59%とした。鋳造、熱処理条件
は実施例1と同じとした。
行部をもつ丸棒試験片を作成した。いずれの試験も室
温、大気中において、初期ひずみ速度が5.0×10
-4S-1の条件で行った。
機を用いて試験した。計装化により荷重−変位曲線が得
られ、これらの積分値から衝撃エネルギーが求められ
る。本実施例では、10mm×10mmの断面をもつ角
材に熱処理後、まず、深さ2mm、幅約0.3mmの切
欠きを導入した。その後、クラックメーカーを用いて、
さらに切欠き底部に疲労き裂を発生させたものを試験片
とした。得られた最大荷重から動的破壊靭性値の値を得
た。
する引張強度、伸び、動的破壊靭性の値を表2に示す。
較のために高強度・高靭性材料として知られるADIに
ついても、文献から参照し、記した。図2中に記入した
数値は計装化シャルピー試験の結果から計算された合金
IIの573Kと673Kにおける動的破壊靭性値であ
り、単位は(MPa・m1/2 )である。合金IIの動的
破壊靭性値は80〜110MPa・m1/2 の間の大
きな値であった。
Paの範囲で合金Iでは2〜10%の伸びであるのに対
して、合金IIでは4〜18%もの大きな伸びを示す。オ
ーステンパ処理温度が高いほど伸びが大きく引張強度は
小さくなる。合金Iの最高の引張強度は合金IIの最高値
より高い値を示すが、最も良好な伸びでも、8%程度で
あり、全体的に十分な伸びが得られなかった。図2にお
いて、伸びおよび引張強度が高くなる右斜め上の矢印の
方向に向かうほど、強靭であるということができる。合
金IIは、ADIと同程度の伸びの得られるところで、引
張強度は約200MPa高い値となっている。合金Iと
比べても、強靭化がされていることが分かる。
度523Kでオーステンパ時間3.6ksの条件におい
て熱処理した鋳鋼の顕微鏡写真を示す。この条件により
得られた鋳鋼は、引張強度が1600MPa、伸びが1
0%および動的破壊靱性は110MPa・m1/2 の
値であった。このように合金IIの優れた機械的特性の発
現は、主にSi添加量の増加により、安定な残留オース
テナイトの生成が促されたためと推測される。
壊靱性に優れ、かつ高張力・高靱性のものであり、機械
部品の薄肉化、軽量化に有用であり、特に、自動車部品
のような、精密、小型鋳造部品などに好適である。
理時間と残留オーステナイト量との関係を示すグラフで
ある。
の関係を示すグラフである。
でオーステンパ時間3.6ksの条件において得られた
鋳鋼の組織を示す図面代用顕微鏡写真である。
Claims (2)
- 【請求項1】 重量%で、C;0.3〜0.7、Si;
1.0〜2.0、Mn;0.8〜2.0、Mo;0.3
〜1.5、Cu;0.3〜1.5、P≦0.1、S≦
0.07、Ni≦1.0、Cr≦1.0、V≦1.0を
含有し、残部がFeおよび不純物元素からなる組成を有
し、オーステンパ処理による残留オーステナイトを2〜
30体積%含んだベイナイト組織であり、引張強度が1
100〜1900MPaで、動的破壊靱性が80〜11
0MPa・m1/2 であることを特徴とする高張力・
高靱性鋳鋼。 - 【請求項2】 重量%で、C;0.3〜0.7、Si;
1.0〜2.0、Mn;0.8〜2.0、Mo;0.3
〜1.5、Cu;0.3〜1.5、P≦0.1、S≦
0.07、Ni≦1.0、Cr≦1.0、V≦1.0を
含有し、残部がFeおよび不純物元素からなる溶湯を鋳
造して鋳物素材とし、該鋳物素材を850℃〜1000
℃で、30分から3時間オーステナイト化処理し、25
0℃〜450℃で、10分から2時間恒温変態処理する
ことを特徴とする請求項1記載の高張力・高靱性鋳鋼の
製造方法。
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