JP2003283004A - スイッチング素子およびその製造方法 - Google Patents

スイッチング素子およびその製造方法

Info

Publication number
JP2003283004A
JP2003283004A JP2002086400A JP2002086400A JP2003283004A JP 2003283004 A JP2003283004 A JP 2003283004A JP 2002086400 A JP2002086400 A JP 2002086400A JP 2002086400 A JP2002086400 A JP 2002086400A JP 2003283004 A JP2003283004 A JP 2003283004A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
layer
switching
switching element
electrode layer
element according
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Withdrawn
Application number
JP2002086400A
Other languages
English (en)
Inventor
Haruo Tanaka
治夫 田中
Chihaya Adachi
千波矢 安達
Takahito Oyamada
崇人 小山田
Hiroyuki Sasabe
博之 雀部
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Rohm Co Ltd
Original Assignee
Rohm Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Rohm Co Ltd filed Critical Rohm Co Ltd
Priority to JP2002086400A priority Critical patent/JP2003283004A/ja
Priority to US10/392,278 priority patent/US6815733B2/en
Publication of JP2003283004A publication Critical patent/JP2003283004A/ja
Withdrawn legal-status Critical Current

Links

Classifications

    • HELECTRICITY
    • H10SEMICONDUCTOR DEVICES; ELECTRIC SOLID-STATE DEVICES NOT OTHERWISE PROVIDED FOR
    • H10KORGANIC ELECTRIC SOLID-STATE DEVICES
    • H10K85/00Organic materials used in the body or electrodes of devices covered by this subclass
    • H10K85/60Organic compounds having low molecular weight
    • H10K85/611Charge transfer complexes
    • HELECTRICITY
    • H10SEMICONDUCTOR DEVICES; ELECTRIC SOLID-STATE DEVICES NOT OTHERWISE PROVIDED FOR
    • H10KORGANIC ELECTRIC SOLID-STATE DEVICES
    • H10K10/00Organic devices specially adapted for rectifying, amplifying, oscillating or switching; Organic capacitors or resistors having potential barriers
    • H10K10/50Bistable switching devices
    • HELECTRICITY
    • H10SEMICONDUCTOR DEVICES; ELECTRIC SOLID-STATE DEVICES NOT OTHERWISE PROVIDED FOR
    • H10KORGANIC ELECTRIC SOLID-STATE DEVICES
    • H10K85/00Organic materials used in the body or electrodes of devices covered by this subclass
    • H10K85/30Coordination compounds
    • H10K85/341Transition metal complexes, e.g. Ru(II)polypyridine complexes
    • HELECTRICITY
    • H10SEMICONDUCTOR DEVICES; ELECTRIC SOLID-STATE DEVICES NOT OTHERWISE PROVIDED FOR
    • H10KORGANIC ELECTRIC SOLID-STATE DEVICES
    • H10K19/00Integrated devices, or assemblies of multiple devices, comprising at least one organic element specially adapted for rectifying, amplifying, oscillating or switching, covered by group H10K10/00

Landscapes

  • Chemical & Material Sciences (AREA)
  • Engineering & Computer Science (AREA)
  • Materials Engineering (AREA)
  • Crystallography & Structural Chemistry (AREA)
  • Inorganic Chemistry (AREA)
  • Physics & Mathematics (AREA)
  • Spectroscopy & Molecular Physics (AREA)
  • Physical Vapour Deposition (AREA)
  • Liquid Crystal (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】 従来よりも薄く構成することが可能であっ
て、再現性のあるスイッチング特性を示し得るスイッチ
ング素子、および、その製造方法を提供すること。 【解決手段】 第1電極層11および第2電極層12
と、両極層間に設けられているスイッチング層13と、
第1電極層11およびスイッチング層13の間にてスイ
ッチング層13に接している絶縁層14とを備え、スイ
ッチング層13は、第1および第2電極層11,12の
間において第1閾値以上の電圧が第1バイアス方向に印
加されることによって高抵抗状態から低抵抗状態へと変
化し、当該変化の後に印加電圧が第1閾値未満に低下す
る場合に低抵抗状態を維持可能であって、且つ、第1バ
イアス方向とは反対の第2バイアス方向に第2閾値以上
の電圧が印加されることによって低抵抗状態から高抵抗
状態へと変化し、当該変化の後に印加電圧が第2閾値未
満に低下する場合に高抵抗状態を維持可能である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、印加電圧の変化に
よるオン・オフ制御に用いることが可能なスイッチング
素子に関する。
【0002】
【従来の技術】印加電圧の変化によって電気伝導率の急
激な変化を生じ得る物質の一つとして、7,7,8,8−
テトラシアノキノンジメタン(以下、「TCNQ」と略
記する)の銅錯体、すなわちCu−TCNQが知られて
いる。Cu−TCNQは、電子供与体(電子ドナー)で
ある銅と、電子受容体(電子アクセプタ)であるTCN
Qとからなる電荷移動錯体であって、結晶として単離す
ることができる。Cu−TCNQに対して直流電圧を印
加し、印加電圧を低電圧側から高電圧側へと掃引する
と、所定の閾値電圧において電流値の急激な上昇が観測
される場合がある。すなわち、Cu−TCNQは、所定
の閾値電圧にて高抵抗状態から低抵抗状態へと変化する
場合がある。Cu−TCNQのこのようなスイッチング
特性は、例えば、“Electrical switching and memory
phenomena in Cu-TCNQ thin films"(R. S. Potember e
t al., Applied Physics Letter 34(6) p405-407, 15 M
arch 1979)に記載されている。
【0003】Cu−TCNQなどのスイッチング性電荷
移動錯体については、多様な電子デバイスへの応用が期
待されている。高密度化が進む電子デバイスへの応用を
図るためには、そのようなスイッチング性電荷移動錯体
について、薄膜形成可能であることが強く望まれる。
【0004】従来、例えばCu−TCNQは、上記論文
にも記載されているように、いわゆる溶液拡散法によっ
て薄膜形成されてきた。溶液拡散法においては、例え
ば、アセトンとアセトニトリルを1:1の体積比で混合
した溶媒を用意し、これをTCNQで飽和した後、そこ
へCu基板を浸漬する。すると、Cu基板の表面におい
てCuからTCNQへの電荷移動が生じてCu−TCN
Q錯体が生成し、これが成長することによって、Cu基
板上にCu−TCNQが膜状に形成される。当該Cu−
TCNQ膜は、複数の結晶体からなる多結晶膜である。
【0005】このようにして成膜されたCu−TCNQ
の上にAlを薄膜形成することにより、上部電極として
の当該Al膜と、下部電極としてのCu基板と、これら
に挟まれたCu−TCNQ膜とからなる素子が構成され
る。この素子の電極間に印加する電圧を掃引すると、所
定の閾値電圧にてCu−TCNQ膜が高抵抗状態から低
抵抗状態に変化することが知られている。また、低抵抗
状態にあるCu−TCNQ膜に対して所定の閾値以上の
逆バイアス電圧を印加すると、Cu−TCNQ膜は高抵
抗状態に復帰することも知られている。上記論文に記載
されているように、このスイッチング現象においては、
CuがカチオンラジカルであるとともにTCNQがアニ
オンラジカルであるときに高抵抗の状態をとり、Cuが
中性原子であってTCNQが中性分子であるときに低抵
抗の状態をとると考えられている。しかしながら、スイ
ッチング機構は未だ解明されていない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】溶液拡散法により形成
されるCu−TCNQ膜は、比較的大きな結晶が凝集し
ている多結晶膜であるため、膜質の均一性が低い。この
ような膜質不均一性に起因して、当該Cu−TCNQ膜
を組み込んだ例えば上述のような素子では、そのスイッ
チング特性について再現性が得られない。上述のよう
に、溶液拡散法により形成されるCu−TCNQ膜は、
印加電圧の変化に従って高抵抗状態から低抵抗状態を経
て高抵抗状態に復帰可能であるが、このようなスイッチ
ング特性を一旦発現したCu−TCNQ膜に対して印加
電圧を再び掃引しても、スイッチング現象は繰り返され
ない。すなわち、従来のCu−TCNQは、スイッチン
グ特性を一度発現すると、そのスイッチング機能を消失
してしまうのである。また、溶液拡散法により形成され
るCu−TCNQ膜は、安定性にも問題を有し、これに
ついても膜質不均一性に起因すると考えられる。このよ
うに、スイッチング機能において再現性および安定性に
問題を抱えるため、溶液拡散法により形成される従来の
Cu−TCNQ膜は、電子デバイスに組み込むためのス
イッチング素子として未だ実用化されていない。
【0007】また、溶液拡散法によると、堆積成長する
膜について膜厚を制御するのが困難である。具体的に
は、例えばCu−TCNQを成膜する場合、TCNQ飽
和溶媒に浸漬されているCu基板を、所定の時間経過後
に当該溶媒から引き上げることによって、Cu基板の表
面でのCu−TCNQの成長を停止し、膜厚を制御して
いる。このような制御方法では、膜厚制御の精密性に欠
ける。加えて、溶液拡散法では、例えばCu−TCNQ
膜は、比較的大きな結晶の多結晶膜として形成され、そ
の結果、マイクロメートルのオーダーの膜厚で形成され
てしまう。多様な電子デバイスへの実用化を図るという
観点からは、Cu−TCNQの更なる薄膜化が必要とさ
れる。
【0008】本発明は、このような事情のもとで考え出
されたものであって、上述の従来の問題を解消または軽
減することを課題とし、電子デバイスにおいて適切に実
用可能な程度に薄く構成することが可能であって、再現
性のあるスイッチング特性を示し得るスイッチング素
子、および、その製造方法を提供することを目的とす
る。
【0009】
【発明の開示】本発明の第1の側面によるとスイッチン
グ素子が提供される。このスイッチング素子は、第1電
極層および第2電極層と、電子ドナーおよび電子アクセ
プタからなる電荷移動錯体を含んで第1電極層および第
2電極層の間に設けられているスイッチング層と、第1
電極層およびスイッチング層の間にてスイッチング層に
接している絶縁層とを備える。スイッチング層は、第1
電極層および第2電極層の間において第1閾値以上の電
圧が第1バイアス方向に印加されることによって高抵抗
状態から低抵抗状態へと変化し、当該変化の後に印加電
圧が第1閾値未満に低下する場合に低抵抗状態を維持可
能であって、且つ、第1バイアス方向とは反対の第2バ
イアス方向に第2閾値以上の電圧が印加されることによ
って低抵抗状態から高抵抗状態へと変化し、当該変化の
後に印加電圧が第2閾値未満に低下する場合に高抵抗状
態を維持可能である。
【0010】このような構成のスイッチング素子は、電
子デバイスにおいて適切に実用可能な程度にまで薄く構
成することが可能である。具体的には、本発明に係るス
イッチング素子は、真空蒸着法やスパッタリング法など
の薄膜形成技術を利用して製造することができる。本発
明におけるスイッチング層は、特に真空蒸着法によって
良好に形成することができ、従来の溶液拡散法によるC
u−TCNQ膜よりも極めて薄く形成することが可能で
ある。したがって、素子全体においても、溶液拡散法を
利用してスイッチング層が形成されている従来の素子よ
りも、薄く構成することが可能なのである。
【0011】また、本発明に係るスイッチング素子は、
再現性のあるスイッチング特性を示し得る。本発明者ら
は、スイッチング特性を示す電荷移動錯体を含むスイッ
チング層と一方の電極層との間に、当該スイッチング層
と面接触する絶縁層を介在させることによって、当該ス
イッチング層のスイッチング特性について再現性を付与
することに成功した。したがって、そのようなスイッチ
ング層と絶縁層との積層構造を一対の電極で挟んでなる
本発明のスイッチング素子は、再現性のあるスイッチン
グ特性を示し得るのである。
【0012】以上のように、本発明に係るスイッチング
素子は、電子デバイスにおいて適切に実用可能な程度に
薄く構成することができるとともに、再現性のあるスイ
ッチング特性を示し得る。したがって、本発明のスイッ
チング素子は、良好なスイッチング素子として、多様な
電子デバイスにおいて利用することが可能である。
【0013】好ましくは、本発明に係るスイッチング素
子は、更に、スイッチング層および第2電極層の間に追
加絶縁層を有する。
【0014】好ましい実施の形態においては、第1バイ
アス方向は、第1電極層から第2電極層にかけて電圧が
降下する方向である。この場合、第2バイアス方向は、
第2電極層から第1電極層にかけて電圧が降下する方向
である。他の好ましい実施の形態においては、第1バイ
アス方向は、第2電極層から第1電極層にかけて電圧が
降下する方向である。この場合、第2バイアス方向は、
第1電極層から第2電極層にかけて電圧が降下する方向
である。
【0015】好ましくは、電子アクセプタは、π電子系
を有する有機化合物である。より好ましくは、電子アク
セプタは、TCNQまたはTCNQ誘導体である。一
方、電子ドナーは、好ましくは金属である。そのような
金属としては、例えば、Cu、AgおよびKが挙げられ
る。
【0016】スイッチング層における電子ドナーおよび
電子アクセプタの存在比は、1:2〜3:2であるのが
好ましい。また、そのような電子ドナーおよび電子アク
セプタからなる電荷移動錯体を含んでなるスイッチング
層は、アモルファス組織を有するのが好ましい。また、
本発明におけるスイッチング層については、例えば真空
蒸着法により形成する場合には、電子ドナー材料および
電子アクセプタ材料を所定の層表面に対して共蒸着させ
ることによって所望の組成が達成される。
【0017】好ましくは、絶縁層は酸化物を含む。その
ような酸化物としては、例えばAl 23またはSiO2
が挙げられる。好ましくは、第2電極層は、スイッチン
グ層に接しており、Al、もしくは、Mgおよび/また
はAgを含んでいる。
【0018】本発明の第2の側面によるとスイッチング
素子の製造方法が提供される。この製造方法は、第1バ
イアス方向に第1閾値以上の電圧が印加されることによ
って高抵抗状態から低抵抗状態へと変化し、当該変化の
後に印加電圧が第1閾値未満に低下する場合に低抵抗状
態を維持可能であって、且つ、第1バイアス方向とは反
対の第2バイアス方向に第2閾値以上の電圧が印加され
ることによって低抵抗状態から高抵抗状態へと変化し、
当該変化の後に印加電圧が第2閾値未満に低下する場合
に高抵抗状態を維持可能であるスイッチング層を有する
スイッチング素子を製造するための方法であって、基材
の上に第1電極層を形成するための第1電極層形成工程
と、第1電極層の上に絶縁層を形成するための絶縁層形
成工程と、電子ドナー材料とともに電子アクセプタ材料
を絶縁層の上に堆積させることによってスイッチング層
を形成するためのスイッチング層形成工程と、第2電極
層を形成するための第2電極層形成工程とを含んでい
る。
【0019】このような方法により、本発明の第1の側
面に係るスイッチング素子を製造することができる。し
たがって、本発明の第2の側面によっても、製造された
スイッチング素子において、第1の側面に関して上述し
たのと同様の効果が奏される。
【0020】好ましくは、本発明に係るスイッチング素
子製造方法は、更に、スイッチング層形成工程の後に、
スイッチング層の上に追加絶縁層を形成する工程を含
む。スイッチング層上に追加絶縁層が形成される場合、
第2電極層は、当該追加絶縁層上に形成されることとな
る。
【0021】好ましくは、第1電極層形成工程では、真
空蒸着法またはスパッタリング法により第1電極材料を
基材の上に堆積させ、これに続く絶縁層形成工程では、
第1電極層形成工程にて堆積された電極材料が大気下に
さらされる。このような手法と共に又はこのような手法
に代えて、絶縁層形成工程では、第1電極層形成工程に
て形成された第1電極層の表面に対してUVオゾン処理
が施される。これらの手法によると、第1電極層および
これに連続する絶縁層を適切に形成することができる。
【0022】好ましくは、スイッチング層形成工程にお
いて、電子ドナー材料および電子アクセプタ材料を絶縁
層の上へ堆積させるためには、真空蒸着法が採用され
る。スイッチング層形成工程における電子ドナー材料の
蒸着速度と電子アクセプタの蒸着速度との比について
は、0.3:1.9〜0.7:1.5の範囲であるのが
好ましい。このような蒸着比率によると、絶縁層上にお
いて良好なスイッチング層を形成することができる。
【0023】好ましくは、第2電極層形成工程では、真
空蒸着法またはスパッタリング法により、第2電極材料
をスイッチング層または追加絶縁層の上に堆積させ、当
該第2電極層形成工程の後に、更に、真空下に当該素子
を放置する待機工程を行う。この待機工程を行うことに
より、製造された素子の表面が不当に酸化されるのを適
切に回避することができる。
【0024】好ましくは、第2電極層形成工程または待
機工程の後に、更に、第1電極層および第2電極層の間
において電圧を印加するためのエージング工程を行う。
エージング工程によって、素子のスイッチング特性を良
好に発現することができる。
【0025】
【発明の実施の形態】図1は、本発明の第1の実施形態
に係るスイッチング素子10の模式図である。スイッチ
ング素子10は、第1電極層11と、第2電極層12
と、スイッチング層13と、絶縁層14とからなる積層
構造を有し、基板40の上に構成されている。
【0026】第1電極層11は、例えば、Cu、Al、
ITO(Indium Tin Oxide)などの金属または酸化物半
導体により構成されており、1〜1000nmの厚さを
有する。第2電極層12は、例えば、Al、Mg、A
g、Mg−Ag合金などにより構成されており、1〜1
000nmの厚さを有する。スイッチング層13は、電
子ドナーおよび電子アクセプタからなる電荷移動錯体を
含んでなり、例えば1〜1000nmの厚さを有する。
スイッチング層13を構成するための電荷移動錯体とし
ては、例えば、π電子系を有するTCNQやTCNQ誘
導体のCu錯体、Ag錯体、またはK錯体などが挙げら
れる。絶縁層14は、例えば、Al23、SiO2、S
iOなどの絶縁体により構成されており、0.1〜10
0nmの厚さを有する。スイッチング素子10を積層形
成するうえでの基材となる基板40としては、例えばガ
ラス基板や石英基板などを用いることができる。このよ
うな構成において、例えば第1電極層11および第2電
極層12の各々に対してワイヤ41を接続すると、一対
のワイヤ41を介して、第1電極層11および第2電極
層12の間に所定のバイアスで電圧を印加することがで
きる。
【0027】図2は、スイッチング素子10の製造方法
のフローチャートである。スイッチング素子10の製造
においては、まず、第1電極層形成工程S1にて、基板
40の上に第1電極層11を形成する。具体的には、必
要に応じて所定のマスクを介して、電子線蒸着や抵抗加
熱蒸着などの真空蒸着またはスパッタリングなどによ
り、基板40に対して、第1電極層用の上述の材料を成
膜する。
【0028】次に、絶縁層形成工程S2において、第1
電極層11の上に絶縁層14を形成する。具体的には、
必要に応じて所定のマスクを介して、Al23、SiO
2、SiOなどの絶縁材料の真空蒸着やスパッタリング
などにより、第1電極層11上に絶縁層14を成膜す
る。本発明では、このような手法に代えて、前工程で形
成された第1電極層11の表面を酸化させることによっ
て絶縁層14を形成してもよい。酸化手法としては、第
1電極層11を大気下にさらしたり、例えばUVオゾン
クリーナーを用いて第1電極層11の表面に対してUV
オゾン処理を施すことが挙げられる。ここでUVオゾン
処理とは、紫外線照射により発生する酸素ラジカルない
しオゾンによって、部材表面を酸化させることをいう。
これら酸化手法は、第1電極層11の構成材料に応じて
適宜選択される。
【0029】次に、スイッチング層形成工程S3におい
て、絶縁層14の上にスイッチング層13を形成する。
具体的には、真空蒸着やスパッタリングなどにより、電
子ドナー材料とともに電子アクセプタ材料を、必要に応
じて所定のマスクを介して絶縁層14上に堆積させる。
電子ドナー材料としては、Cu,AgまたはKを用いる
ことができる。また、電子アクセプタ材料としては、T
CNQまたはその誘導体などを用いることができる。
【0030】次に、第2電極層形成工程S4において、
スイッチング層13の上に第2電極層12を形成する。
具体的には、第2電極層用の上述の材料の真空蒸着やス
パッタリングなどにより、必要に応じて所定のマスクを
介して、スイッチング層13上に第2電極層12を成膜
する。真空蒸着やスパッタリングにより所定の真空度下
において第2電極層12を形成した場合、スイッチング
素子10は、装置のチャンバから取り出す前に、チャン
バ内の真空下において10分以上待機させておくのが望
ましい。このような待機工程を経ることによって、製造
されたスイッチング素子10の表面が不当に酸化される
のを抑制することができる。
【0031】このようにして製造されるスイッチング素
子10における第1電極層11および第2電極層12の
間に電圧を印加し、当該印加電圧を掃引すると、所定の
閾値電圧において電気伝導率は急激に変化する。図3
は、本発明に係るスイッチング素子のスイッチング特性
を模式的に表すJ−V特性曲線である。図3(a)のヒ
ステリシス曲線は、逆バイアスから正バイアスへと印加
電圧を掃引すると(矢印1から矢印5)正バイアスにお
ける第1の閾値電圧にて電気伝導率が急激に低下し(矢
印4)、且つ、正バイアスから逆バイアスへと印加電圧
を掃引すると(矢印6から矢印10)逆バイアスにおける
第2の閾値電圧にて電気伝導率が急激に上昇する(矢印
9)場合を表す。一方、図3(b)のヒステリシス曲線
は、逆バイアスから正バイアスへと印加電圧を掃引する
と(矢印1から矢印5)正バイアスにおける第1の閾値
電圧にて電気伝導率が急激に上昇し(矢印4)、且つ、
正バイアスから逆バイアスへと印加電圧を掃引すると
(矢印5から矢印10)逆バイアスにおける第2の閾値電
圧にて電気伝導率が急激に低下する(矢印9)場合を表
す。ここで正バイアスとは、スイッチング素子10にお
いては、第2電極層12に対して第1電極層11が高電
位にある電位状態をいい、逆バイアスとは、その反対を
いうものとする。
【0032】スイッチング素子10によると、図3
(a)または図3(b)のようなヒステリシス曲線で表
されるスイッチング特性が、印加電圧を掃引するごとに
再現される。スイッチング層13、これに面接触する絶
縁層14などの構成材料を適宜選択することによって、
図3(a)および図3(b)のいずれかのスイッチング
特性が発現される。このようなスイッチング素子10
は、高抵抗状態および低抵抗状態の2つの状態を利用し
て再現性よくオン・オフ制御することができ、多様な電
子デバイスにおいて応用可能である。例えば、有機EL
ディスプレイや液晶ディスプレイなどにおけるスイッチ
ング素子として応用可能である。
【0033】図4は、本発明の第2の実施形態に係るス
イッチング素子20の模式図である。スイッチング素子
20は、第1電極層21と、第2電極層22と、スイッ
チング層23と、絶縁層24とからなる積層構造を有
し、基板40の上に構成されている。第1電極層21
は、下層21aおよび上層21bからなる2層構造を有
する。
【0034】2層構造の第1電極層21は、その設計に
ついて、第1の実施形態における第1電極層11よりも
自由度が高い。例えば、電気伝導率の高い材料により、
上層21bよりも分厚い下層21aを第1電極層21の
主要部として設けるとともに、絶縁層24の形成に適し
た材料、すなわち、酸化されることによって絶縁層24
を適切に形成可能な材料により、薄い上層21bを設け
ることができる。下層21aは、例えば、CuやITO
などにより構成されており、1〜1000nmの厚さを
有する。上層21bは、例えば、Alなどにより構成さ
れており、1〜1000nmの厚さを有する。第2電極
層22、スイッチング層23、および絶縁層24の構成
材料および膜厚については、第1の実施形態に係るスイ
ッチング素子10に関して上述したのと同様である。
【0035】図5は、スイッチング素子20の製造方法
のフローチャートである。スイッチング素子20の製造
においては、まず、第1電極下層形成工程S1’におい
て、基板40の上に下層21aを形成する。具体的に
は、必要に応じて所定のマスクを介して、電子線蒸着や
抵抗加熱蒸着などの真空蒸着またはスパッタリングなど
により、基板40に対して、下層用の上述の材料を成膜
する。
【0036】次に、第1電極上層形成工程S2’におい
て、下層21aの上に上層21bを形成する。具体的に
は、真空蒸着やスパッタリングにより、必要に応じて所
定のマスクを介して、下層21aの上に例えばAlを成
膜する。
【0037】次に、絶縁層形成工程S3’において、上
層21bの上表面を酸化することによって、絶縁層24
を形成する。酸化手法については、第1の実施形態に関
して上述したのと同様である。
【0038】次に、第1の実施形態に関して上述したの
と同様に、スイッチング層形成工程S4’において絶縁
層24の上にスイッチング層23を形成し、続いて、第
2電極層形成工程S5’においてスイッチング層23の
上に第2電極層22を形成する。
【0039】第1および第2の実施形態においては、図
1および図4に示すように、第2電極層12,22はス
イッチング層13,23に対して直接積層されている。
本発明ではこのような構成に代えて、スイッチング層1
3,23と第2電極層12,22との間に更に絶縁層を
設けてもよい。このような構成を採用する場合、当該絶
縁層は、必要に応じて所定のマスクを介して、絶縁材料
の真空蒸着やスパッタリングにより、スイッチング層1
3,23上に成膜される。第1電極層11,21とスイ
ッチング層13,23の間の絶縁層14,24に加え
て、第2電極層12,22とスイッチング層13,23
の間に更にこのような絶縁層を設けることによって、ス
イッチング特性について、図3(a)の態様から図3
(b)の態様へと変えることができる場合がある。
【0040】
【実施例】次に、本発明の実施例について、比較例とと
もに説明する。まず、実施例および比較例に係る電荷移
動錯体薄膜の膜構造解析について記述する。
【0041】<膜構造解析用サンプルの作製方法>本発
明に係るスイッチング素子におけるスイッチング層は、
薄膜状の電荷移動錯体により構成されており、この電荷
移動錯体薄膜の構造解析に供するための薄膜サンプル
は、次のように作製される。まず、予め洗浄した基板
を、真空蒸着機(商品名:有機EL研究用蒸着装置E1
00、ALSテクノロジー社製)専用の銅基板に取りつ
けた後、当該蒸着機のチャンバ内の基板ホルダにセット
する。チャンバ内の電極には、5mmのCu線(Nilaco
製)を2本載置したタングステンボートと、約1gのT
CNQ(東京化成工業製)を入れたステンレスボートと
を取り付ける。次に、チャンバ内を減圧し、チャンバ内
の真空度が3×10-3Pa以下に到達した後、Cuおよ
びTCNQを蒸発させて基板に共蒸着させる。このと
き、蒸着時間を調節することによって膜厚を制御する。
蒸着終了後、基板を真空下で10分間放置してからチャ
ンバ内を大気下に戻し、基板を取り出す。
【0042】このような方法によって、以下の各測定に
応じて選択した基板上において、CuおよびTCNQの
蒸着比率が1:2、1:1、3:2、2:1または4:
1であるCu−TCNQ薄膜を個別に形成した。また、
当該選択した基板上にTCNQのみを成膜したサンプル
も用意した。図6には、薄膜サンプルにおけるCuおよ
びTCNQの存在比、これに対応するCu含量(mol
%)、そのようなサンプルを作製するためのCuおよび
TCNQの蒸着速度を示す。
【0043】<UV/VIS測定>本測定にあたりサン
プル1〜6を用意した。各サンプルは、CuおよびTC
NQを所定の蒸着比率で石英基板(20×20×1m
m、松浪硝子工業社製)上に蒸着させたものであって、
50nmの膜厚を有する。CuおよびTCNQの蒸着比
率について、サンプル1は0:1、サンプル2は1:
2、サンプル3は1:1、サンプル4は3:2、サンプ
ル5は2:1、サンプル6は4:1である。各サンプル
について、吸光度測定器(UV−3100、島津製)を
用いて、紫外可視吸収スペクトルを測定した。図7は、
その測定結果を表す。
【0044】図7に表れているように、サンプル2〜5
については、600〜1200nmの領域に吸収が観測
された。この吸収はCuからTCNQへの電荷移動(C
T)に起因する吸収であることが、知られている。これ
に対し、サンプル1,6についてはそのような吸収は観
測されなかった。これらより、CuおよびTCNQの蒸
着比率を制御することによって、電荷移動錯体であるC
u−TCNQを薄膜状に形成できるとことが理解できよ
う。
【0045】<UV/VIS角度依存性>上述のサンプ
ル1〜6について、吸光度測定器(UV−3100、島
津製)を用いて紫外可視領域における吸光度の角度依存
性を調べた。具体的には、入射角が0°、15°または
30°となるように測定器の光軸に対して薄膜サンプル
の表面を配設可能なサンプルホルダを作製し、このホル
ダを使用して、吸光度の角度依存性を調べた。サンプル
1〜6と同様に、リファレンスとして、石英基板上にお
いてアモルファス状に薄膜形成されているTPDについ
ても角度依存性を調べた。図8は、その測定結果を表
す。
【0046】図8に表れているように、サンプル3〜5
において、入射角の増加に伴い吸光度の減少が観測され
た。サンプル1,2,6およびリファレンスについて
は、入射角の変化にかかわらず吸光度は一定であった。
これらより、CuとTCNQの存在比が1:1(サンプ
ル3)、3:2(サンプル4)、2:1(サンプル5)
であるときには、薄膜に含まれるTCNQの大部分は基
板に対して平行に配列していると考えられる。
【0047】<FT−IR測定>本測定にあたりサンプ
ル7〜12を用意した。各サンプルは、CuおよびTC
NQを所定の蒸着比率でNaCl基板(30×30×5
mm、日本分光社製)上に蒸着させたものであって、5
0nmの膜厚を有する。CuおよびTCNQの蒸着比率
について、サンプル7は0:1、サンプル8は1:2、
サンプル9は1:1、サンプル10は3:2、サンプル
11は2:1、サンプル12は4:1である。各サンプ
ルについて、フーリエ変換赤外分光計(商品名:FTI
R−8700、島津製)を用いて、赤外吸収スペクトル
を測定した。図9〜11は、その測定結果を表す。
【0048】図9に表れているように、サンプル7(T
CNQのみからなる薄膜)において2226cm-1に観
測される吸収は、相対的にCu含量の小さなサンプル8
〜10では、2197cm-1および2168cm-1へと
低波数側にシフトしている。また、相対的にCu含量の
大きなサンプル11,12では、2197cm-1および
2129cm-1へと低波数側にシフトしている。一部に
おいてシフトの程度が相違するのは、薄膜内のCu含量
の増加に伴ってCuとTCNQの相互作用が大きくな
り、その結果、CuからTCNQへの電荷移動量が増大
しているためであると考えられる。このようなCuとの
相互作用は、図10および図11に表れているように、
TCNQにおけるC=Cの伸縮振動、CHの変角振動、
および芳香環の振動にも影響を与えており、TCNQの
分子構造に歪みを生じさせていることが理解できよう。
【0049】<偏光特性>偏光特性を測定するにあたり
サンプル13〜18を用意した。各サンプルは、Cuお
よびTCNQを所定の蒸着比率でガラス基板(20×2
0×1mm、松浪硝子工業製)上に蒸着させたものであ
って、50nmの膜厚を有する。CuおよびTCNQの
蒸着比率について、サンプル13は0:1、サンプル1
4は1:2、サンプル15は1:1、サンプル16は
3:2、サンプル17は2:1、サンプル18は4:1
である。各サンプルについて、偏光顕微鏡(商品名:E
400、ニコン製)を用いて、基板に平行な面について
偏光特性を測定した。その結果、サンプル13〜18の
全てにおいて、基板に対する平行な面について偏光性は
観測されなかった。したがって、Cu含量にかかわら
ず、TCNQは、ガラス基板表面に平行な面において、
相互にランダムな配向をとっていることが判った。
【0050】<SEMによる表面分析>本分析にあたり
サンプル19〜24を用意した。各サンプルは、Cuお
よびTCNQを所定の蒸着比率で基板上に蒸着させたも
のであって、100nmの膜厚を有する。基板として
は、真空蒸着によってガラス基板(10×10×1m
m、松浪硝子工業製)上に300nmのITO層が形成
され、更に真空蒸着によって当該ITO層上に20nm
のAl層が形成されたものを用いた。このような基板の
Al層上にCu−TCNQ薄膜またはTCNQ薄膜を成
膜することによって、各サンプルを作製した。Cuおよ
びTCNQの蒸着比率について、サンプル19は0:
1、サンプル20は1:2、サンプル21は1:1、サ
ンプル22は3:2、サンプル23は2:1、サンプル
24は4:1である。各サンプルの薄膜表面、および、
薄膜形成前の基板におけるAl層表面について、走査型
電子顕微鏡(商品名:S−3500、日立製)を用いて
観察した。薄膜の表面観察は、真空下かつ加速電圧25
kVにて、5μmオーダーまで行った。
【0051】その結果、サンプル19では、〜50nm
サイズの微結晶からなる組織が観測された。サンプル2
0では、〜2μmサイズの微結晶からなる組織が観測さ
れた。サンプル21では、アモルファス状の表面上に〜
2μmサイズの微結晶が点在していた。サンプル22〜
24では、アモルファス状の組織が観測された。また、
薄膜形成前の基板におけるAl層表面には、アモルファ
ス状の組織が形成されていた。
【0052】<AFMによる表面分析>サンプル19〜
24の薄膜表面、および、薄膜形成前の基板におけるA
l層表面について、原子間力顕微鏡(商品名:JSTM
−4200、JEOL製)を用いて、観察した。薄膜の
表面観察は500nmオーダーまで行った。
【0053】その結果、サンプル19では、〜50nm
サイズの微結晶からなる組織が観測された。サンプル2
0では、〜50nmサイズの微結晶が集合してなる〜1
50nmサイズの微結晶体からなる組織が観測された。
サンプル21では、〜20nmサイズの微結晶からなる
アモルファス状の表面上に〜50nmサイズの微結晶が
点在していた。サンプル22〜24では、アモルファス
状の組織が観測された。また、薄膜形成前の基板におけ
るAl層表面には、アモルファス状の組織が形成されて
いた。
【0054】<膜構造の評価>以上のように、UV/V
IS測定からは、CuおよびTCNQの蒸着比率を制御
することによって、電荷移動錯体であるCu−TCNQ
を薄膜状に形成し得るとことが判った。UV/VIS角
度依存性の測定からは、CuとTCNQの存在比が1:
1、3:2、2:1であるときには、薄膜に含まれるT
CNQの大部分は基板に対して平行に配列していると推
定される。FT−IR測定からは、Cuとの相互作用に
よってTCNQの構造が歪むこと、および、その程度が
Cu含量に依存することが判った。偏光特性の測定から
は、Cu含量にかかわらず、TCNQは、ガラス基板表
面に平行な面において、相互にランダムな配向をとって
いることが判った。SEM観察およびAFM観察から
は、Cuの含量が50%以上において、薄膜がアモルフ
ァス組織を有して形成されることが判った。
【0055】
【実施例1】<スイッチング素子の作製>ガラス基板
(10×10×1mm、松浪硝子工業製)上にITO層
(300nm)が予め形成されている基板を、真空蒸着
機(商品名:有機EL研究用蒸着装置E100、ALS
テクノロジー社製)専用の銅基板に取りつけた後、当該
蒸着機のチャンバ内の基板ホルダにセットした。チャン
バ内の電極には、約1gのAl(Nilaco製)を入れたタ
ングステンスパイラルボートを取り付けた。次に、チャ
ンバ内を減圧し、チャンバ内の真空度が3〜4×10-3
Paの範囲にて、Alを蒸発させて基板に蒸着させた。
蒸着速度は1〜1.5Å/secとし、膜厚20nmまで
蒸着させた。次に、チャンバ内を大気下に戻し、UVオ
ゾンクリーナー(日本レーザー電子(株)製)を用い
て、ITO/Al基板のAl表面に対して酸化処理を施
した。この酸化処理において、酸素処理を1分間、UV
処理を12.5分間、窒素処理を1分間とした。これに
よって、Al膜表面に、絶縁膜であるAl23薄膜が
0.5〜10nm程度の厚さで形成された。
【0056】次に、上述のようにしてITO/Al/A
23構造が形成された基板をチャンバ内にセットし、
チャンバ内の電極には、5mmのCu線(Nilaco製)を
2本載置したタングステンボートと、約1gのTCNQ
(東京化成工業製)を入れたステンレスボートとを取り
付けた。その後、チャンバ内を減圧し、チャンバ内の真
空度が3×10-3Pa以下に到達した後、CuおよびT
CNQを蒸発させて基板のAl23膜上に共蒸着させ
た。このとき、CuおよびTCNQの蒸着比を1:1と
し、膜厚100nmとなるまでCu−TCNQを成長さ
せた。蒸着終了後、基板を真空下で10分間放置してか
らチャンバ内を大気下に戻し、基板を取り出した。
【0057】次に、直径1mmの開口部を有するマスク
をCu−TCNQ薄膜上に貼りつけた後、蒸着機のチャ
ンバ内の基板ホルダに当該基板をセットし、チャンバ内
の電極には、約1gのAl(Nilaco製)を入れたタング
ステンスパイラルボートを取り付けた。次に、チャンバ
内を減圧し、チャンバ内の真空度が3〜4×10-3Pa
の範囲にて、Alを蒸発させて基板に蒸着させた。蒸着
速度は1〜1.5Å/secとし、膜厚100nmまで蒸
着させた。蒸着終了後、基板を真空下で10分間放置し
てからチャンバ内を大気下に戻し、基板を取り出した。
このようにして、ガラス基板上に、ITO(300n
m)/Al(20nm)/Al23(0.5〜10n
m)/Cu−TCNQ(100nm)/Al(100n
m)の積層構造を有するスイッチング素子が作製され
た。本実施例においては、ITO層(300nm)は第
1電極層の下層に相当し、次のAl層(20nm)は第
1電極層の上層に、Al23層(0.5〜10nm)は
絶縁層に、Cu−TCNQ層(100nm)はスイッチ
ング層に、Al層(100nm)は第2電極層に相当す
る。本実施例の素子構造は図12に掲げる。
【0058】<J−V測定>上述のようにして作製され
たスイッチング素子について、SPA(Semiconductor
Parameter Analyzer HP4155C、アジレント製)
を用いて、電流−電圧(J−V)測定を行った。図13
は、本測定におけるシステムの概略図である。図13で
は、スイッチング素子30は、その平面視形態が模式的
に表されている。図13に示すように、一方のプローブ
電極41a(商品名:マイクロプローブ、alessi製)に対
して銀ペースト42により0.1mmの金線43(Nila
co製)を固定し、当該金線43をスイッチング素子にお
ける直径1mmの第2電極層32(本実施例ではAl
層)に接触させた。他方のプローブ電極41bは、第1
電極層31(本実施例ではITO層)に接触させた。
【0059】このような構成において、実際の測定の前
に、スイッチング素子に対してエージング操作を行っ
た。エージング操作では、第1電極層および第2電極層
の間に電圧を印加し、逆バイアス電圧から正バイアス電
圧にかけて、続いて正バイアス電圧から逆バイアス電圧
にかけて、印加電圧が対称的に変化するような往復掃引
を繰り返し行った。具体的には、まず、掃引電圧域−1
〜+1にて、素子が安定するまで往復掃引を繰り返し、
その後、掃引電圧域を正バイアスおよび逆バイアスにお
いて1Vづつ上昇させて、−8〜+8までの各掃引電圧
域において、素子が安定するまで往復掃引を繰り返し
た。このようなエージング操作を行うことにより、10
V前後の電圧の印加によって素子を流れる電流の密度が
1.4×10 4mA/cm2以上に達して素子が破壊され
るのを適切に抑制することができる。
【0060】上述のエージング操作の後、本実施例のス
イッチング素子について、J−V測定を行った。具体的
には、素子の電極層間に印加される電圧を、逆バイアス
電圧(図14において負の印加電圧)から正バイアス電
圧(図14において正の印加電圧)にかけて掃引し(矢
印1から矢印5)、続いて、正バイアス電圧から逆バイ
アス電圧にかけて掃引し(矢印6から矢印10)、この間
に素子に流れる電流の密度を測定した。すると、図14
に示すJ−V特性曲線が得られた。図14に示すスイッ
チング特性は、100サイクル以上の再現性があった。
逆バイアス電圧印加時に電流が流れる方向は、正バイア
ス電圧印加時に電流が流れる方向とは逆方向であるが、
図14では、いずれの電流についても、その電流密度の
絶対値で表されている。
【0061】
【実施例2,3】CuおよびTCNQの蒸着比率を1:
1に代えて1:2(実施例2)または3:2(実施例
3)とした以外は、実施例1と同様にしてスイッチング
素子を作製した。実施例2,3の素子構造は図12に掲
げる。これらスイッチング素子について、実施例1と同
様にして、エージング操作の後にJ−V測定を行ったと
ころ、実施例1と同様のスイッチング特性を示すJ−V
特性曲線が得られた。これらのスイッチング特性は、1
00サイクル以上の再現性があった。
【0062】
【比較例1】CuおよびTCNQの蒸着比率を1:1に
代えて0:1とした以外は、実施例1と同様にして素子
を作製した。本比較例の素子構造は図12に掲げる。本
比較例の素子について、実施例1と同様にして、エージ
ング操作の後にJ−V測定を行ったところ、スイッチン
グ特性は観測されなかった。本比較例の素子について得
られたJ−V特性曲線を図15に示す。
【0063】
【比較例2,3】CuおよびTCNQの蒸着比率を1:
1に代えて2:1(比較例2)または4:1(比較例
3)とした以外は、実施例1と同様にして素子を作製し
た。これら比較例の素子構造は図12に掲げる。これら
の素子について、実施例1と同様にして、エージング操
作の後にJ−V測定を行ったところ、スイッチング特性
は観測されなかった。
【0064】
【実施例4〜6】真空蒸着により成膜されるスイッチン
グ層としてのCu−TCNQ薄膜の膜厚を100nmに
代えて50nm(実施例4)、200nm(実施例
5)、または300nm(実施例6)とした以外は、実
施例1と同様にしてスイッチング素子を作製した。実施
例4〜6の素子構造は図12に掲げる。これらスイッチ
ング素子について、実施例1と同様にしてエージング操
作の後にJ−V測定を行ったところ、実施例1と同様の
J−V特性曲線が得られ、スイッチング特性が観測され
た。これらのスイッチング特性は、100サイクル以上
の再現性があった。
【0065】
【実施例7,8】第2電極層として、膜厚100nmの
Al層に代えて、膜厚100nmのAg層(実施例
7)、または、膜厚100nmのMgAg(10:1)
共蒸着層とその上の膜厚10nmのAg層とからなる複
合第2電極層(実施例8)を形成した以外は、実施例1
と同様にしてスイッチング素子を作製した。実施例7,
8の素子構造は図12に掲げる。これらスイッチング素
子について、実施例1と同様にしてエージング操作の後
にJ−V測定を行ったところ、スイッチング特性が観測
された。各スイッチング素子について得られたJ−V特
性曲線を図16に示す。
【0066】
【実施例9】ガラス(松浪硝子工業製)基板上にITO
層(300nm)が予め形成されている基板(10×1
0mm)を用意し、スパッタリング装置(商品名:VU
LH100、ULVAC社製)によるAl23のスパッ
タリングにより、当該基板のITO層上に膜厚5nmの
Al23層を形成した。このとき、チャンバ内の真空度
は1.0×10-5Torrとし、堆積速度は0.7Å/sec
とし、Arガス雰囲気下にて成膜した。
【0067】次に、上述のようにしてITO/Al23
構造が形成された基板を、真空蒸着機(商品名:有機E
L研究用蒸着装置E100、ALSテクノロジー社製)
専用の銅基板に取りつけた後、当該蒸着機のチャンバ内
の基板ホルダにセットした。チャンバ内の電極には、5
mmのCu線(Nilaco製)を2本載置したタングステン
ボートと、約1gのTCNQ(東京化成工業製)を入れ
たステンレスボートとを取り付けた。その後、実施例1
と同様にして、膜厚100nmのCu−TCNQ層を形
成し、チャンバから基板を取り出した。Cu−TCNQ
層形成の後、実施例1と同様にして、膜厚100nmの
Al層を形成し、チャンバから取り出した。このように
して、ガラス基板上に、ITO(300nm)/Al2
3(5nm)/Cu−TCNQ(100nm)/Al
(100nm)の積層構造を有するスイッチング素子が
作製された。本実施例においては、ITO層(300n
m)は第1電極層に相当し、Al23層(5nm)は絶
縁層に、Cu−TCNQ層(100nm)はスイッチン
グ層に、Al層(100nm)は第2電極層に相当す
る。本実施例の素子構造は図12に掲げる。
【0068】本実施例のスイッチング素子について、実
施例1と同様にして、エージング操作の後にJ−V測定
を行ったところ、スイッチング特性が観測された。この
測定によって得られたJ−V特性曲線を図17に示す。
このスイッチング特性は、100サイクル以上の再現性
があった。
【0069】
【実施例10】スパッタリングにより形成されるAl2
3層の膜厚を5nmに代えて7.5nmとした以外
は、実施例9と同様にして、スイッチング素子を作製し
た。本実施例の素子構造は図12に掲げる。そして、本
実施例のスイッチング素子について、実施例1と同様に
して、エージング操作の後にJ−V測定を行ったとこ
ろ、スイッチング特性が観測された。この測定によって
得られたJ−V特性曲線を図17に示す。このスイッチ
ング特性は、100サイクル以上の再現性があった。
【0070】
【実施例11,12】絶縁層の形成に際して、膜厚5n
mのAl23層に代えて、SiO2のスパッタリングに
より膜厚5nmのSiO2層(実施例11)、または、
膜厚10nmのSiO2層(実施例12)を形成した以
外は、実施例9と同様にして、スイッチング素子を作製
した。実施例11,12の素子構造は図12に掲げる。
そして、これらのスイッチング素子について、実施例1
と同様にしてエージング操作の後にJ−V測定を行った
ところ、スイッチング特性が観測された。これらの実施
例について得られたJ−V特性曲線を図18に示す。
【0071】
【比較例4】スパッタリングにより絶縁層としてのAl
23層を形成しない以外は、実施例9と同様にして、素
子を作製した。本比較例の素子構造は図12に掲げる。
そして、本比較例の素子について、実施例1と同様にし
てエージング操作の後にJ−V測定を行ったところ、ス
イッチング特性は観測されなかった。
【0072】
【比較例5】<素子の作製>ガラス(松浪硝子工業製)
基板上にITO層(300nm)が予め形成されている
基板(10×10mm)を、スパッタリング装置(商品
名:VULH100、ULVAC社製)のチャンバ内の
基板ホルダにセットした。次に、チャンバ内を減圧し、
チャンバ内の真空度が1.0×10-5Torrに達した後
に、Arガスを15ml/minの流速で送流した。す
ると、真空度は7.0×10-3Torrに変化した。真空度
が約7.0×10-3Torrで安定した後、蒸着速度11Å
/secで4分30秒間、Cuを成膜した。当該Cu膜の
膜厚は300nmであった。成膜後、真空下で10分間
放置してからチャンバ内を大気下に戻し、基板を取り出
した。アセトンとアセトニトリルを1:1で混合した溶
液をTCNQで飽和することによってCu−TCNQ析
出用の溶液を調製し、この溶液に、上述のようにしてC
u層(300nm)が形成された基板を30分間浸漬し
た。すると、Cu層上にCu−TCNQ錯体が析出し
た。このときCu−TCNQの膜厚は制御できなかっ
た。次に、昇華精製装置を用いて、真空下にて室温で、
Cu−TCNQ膜を6時間乾燥させた。
【0073】次に、上述のように乾燥した基板を、真空
蒸着機(商品名:有機EL研究用蒸着装置E100、A
LSテクノロジー社製)専用の銅基板に取りつけた後、
当該蒸着機のチャンバ内の基板ホルダにセットした。チ
ャンバ内の電極には、約1gのAl(Nilaco製)を入れ
たタングステンスパイラルボートを取り付けた。次に、
チャンバ内を減圧し、チャンバ内の真空度が4×10-3
Paに達した後、Alを蒸発させて基板に蒸着させた。
蒸着速度は0.5〜1.5Å/secとし、膜厚30nm
まで蒸着させた。蒸着終了後、基板を真空下で10分間
放置してからチャンバ内を大気下に戻し、基板を取り出
した。このようにして、ガラス基板上に、ITO(30
0nm)/Cu(300nm)/Cu−TCNQ/Al
(30nm)の積層構造を有する素子が作製された。本
比較例の素子構造を図12に掲げるとともに、素子構造
の模式図を図19に示す。
【0074】<J−V測定>本比較例の素子について、
実施例1と略同様にして、エージング操作の後にJ−V
測定を行った。印加電圧±2V付近でスイッチング現象
が観測され、スイッチング波形を有するヒステリシス波
形は1回観測された。しかし、その後印加電圧の往復掃
引を繰り返しても、スイッチング現象は観測されなかっ
た。
【0075】<膜構造の分析>本比較例のように溶液拡
散法により形成されるCu−TCNQ膜について、UV
/VIS測定およびSEM測定を行い、膜構造を分析し
た。UV/VIS測定にあたっては、マグネトロンスパ
ッタリングにより石英基板上に膜厚300nmのCuを
成膜し、当該基板を上述のCu−TCNQ析出用溶液に
1時間ほど浸漬することによってCu膜上にCu−TC
NQ膜を形成したサンプルを用意した。このサンプルに
ついて紫外可視吸収スペクトルを測定したところ、Cu
からTCNQへの電荷移動に基づく600〜1200n
mの吸収が観測された。
【0076】SEM測定にあたっては、スパッタリング
によりガラス基板上に膜厚300nmのCuを成膜した
基板を5枚用意し、当該基板を上述のCu−TCNQ析
出用溶液に5分(サンプル25),10分(サンプル2
6),20分(サンプル27),25分(サンプル2
8)、または30分(サンプル29)浸漬した。各々に
おいて、Cu膜上にCu−TCNQ膜が形成された。各
サンプルの薄膜表面について、走査型電子顕微鏡(商品
名:S−3500、日立製)を用いて、観察した。薄膜
の表面観察は、真空下かつ加速電圧25kVにて、5μ
mオーダーまで行った。その結果、サンプル25,26
では、〜10μmの結晶サイズにおいて浸漬時間の増加
に伴い結晶サイズが大きくなくなる傾向にあった。ま
た、これらの結晶はCu膜上においてランダムな方向を
向いていた。サンプル27では、〜2μm程度の微結晶
が形成されていた。また、結晶の長軸方向は基板に対し
て平行な配置をとり、層状の凝集体を形成していた。サ
ンプル28,29では、サンプル27で観測された結晶
組織の上に、長軸方向が基板に対して略垂直となって結
晶が凝集していた。このように、溶液拡散法によりCu
−TCNQ膜を形成すると、浸漬時間の増加に伴い、C
u膜上に結晶体の多様な層が形成されていくことが判っ
た。しかし、均一な界面は形成されていなかった。すな
わち、図19に示すように、本比較例におけるCu―T
CNQ膜は多結晶膜であった。
【0077】
【評価】実施例1〜12のスイッチング素子は、良好な
スイッチング特性を有する。例えば実施例1のスイッチ
ング素子においては、図14に示すように、約±10V
の印加電圧にて抵抗状態が急激に変化した。具体的に
は、実施例1のスイッチング素子に対して逆バイアスか
ら正バイアスへと印加電圧を掃引すると(矢印1から矢
印5)、約+10V(正バイアスにおける第1の閾値電
圧)にて電気伝導率が急激に低下し(矢印4)、その
後、正バイアスから逆バイアスへと印加電圧を掃引する
と(矢印6から矢印10)、約−10V(逆バイアスにお
ける第2の閾値電圧)にて電気伝導率が急激に上昇し
た。すなわち、実施例1の素子は、約+10Vにて高抵
抗状態から低抵抗状態に変化し、約−10Vにて、低抵
抗状態から高抵抗状態へ復帰した。実施例1のスイッチ
ング素子は、このようなスイッチング特性を100回以
上の繰り返すことが可能であり、例えば印加電圧5Vで
の高抵抗状態および低抵抗状態の電流密度差は、2桁以
上である。したがって、実施例1のスイッチング素子
は、多様な電子デバイスにおいて良好なスイッチング素
子として機能することができる。実施例2〜7,9〜1
2のスイッチング素子も、実施例1と同方向のスイッチ
ング特性を有する。
【0078】これに対して、実施例8のスイッチング素
子は、実施例1とは逆方向のスイッチング特性を有す
る。具体的には、図16に示すように、実施例8のスイ
ッチング素子に対して逆バイアスから正バイアスへと印
加電圧を掃引すると(矢印1から矢印5)、約+2V
(正バイアスにおける第1の閾値電圧)にて電気伝導率
が急激に上昇し(矢印4)、その後、正バイアスから逆
バイアスへと印加電圧を掃引すると(矢印6から矢印1
0)、約−1.5V(逆バイアスにおける第2の閾値電
圧)にて電気伝導率が急激に低下した。すなわち、実施
例8の素子は、約+2Vにて低抵抗状態から高抵抗状態
に変化し、約−1.5Vにて、高抵抗状態から低抵抗状
態へ復帰した。
【0079】実施例1および実施例4〜6のスイッチン
グ素子は、スイッチング層の膜厚のみが互いに相違する
が、いずれの素子においても略同様のスイッチング特性
が発現された。また、スイッチング層に接する絶縁層が
設けられていない比較例4では、スイッチング特性は発
現しなかった。これらの事実により、本発明に係るスイ
ッチング現象は、膜厚には依存せず、スイッチング層−
絶縁層間の界面現象であると考えられる。
【0080】以上に述べた実施例1〜12および比較例
1〜5の素子の特性、ならびに電荷移動錯体薄膜サンプ
ルについての膜構造解析に基づき、本発明者らは、Cu
およびTCNQからなるスイッチング素子におけるスイ
ッチングメカニズムについて、以下のように考えてい
る。
【0081】スイッチング層において、Cuは、成膜時
の堆積方向にカラムを形成しており、TCNQはCuカ
ラムを取り囲んでいる。UV/VIS角度依存性測定か
ら推定されるように、高抵抗状態のスイッチング層を構
成するTCNQの大部分は、基板表面に対して平行に配
向している。しかし、スイッチング層と絶縁層との界面
付近に存在するTCNQは、高抵抗状態においても、絶
縁層表面からの影響を受けて、図20(a)に示すよう
に絶縁層ないし基板に対して起立する配向、垂直な配向
をとる。TCNQが起立していることによって、当該起
立領域におけるCuカラムを構成するCu原子間の距離
は延びている(d1)。すなわち、絶縁層付近のCu原
子間の距離(d1)は、絶縁層から離れた領域に存在す
るCu原子間の距離よりも長い。その分だけ、電子がC
uカラムを通過しにくくなる。すなわち、スイッチング
層が高抵抗状態をとる。このような状態において、所定
のバイアス方向で閾値以上の電圧を印加すると、絶縁層
付近で起立していたTCNQが、図20(b)に示すよ
うに、絶縁層表面ないし基板表面に対して水平な配向を
とる。すると、配向の変化が生じた領域におけるCuカ
ラムを構成するCuの原子間距離は短くなる(d2)。
すなわち、絶縁層付近のCu原子間の距離(d2)は、
絶縁層から離れた領域に存在するCu原子間の距離と同
一となる。その分だけ、電子がCuカラムを通過し易く
なる。すなわち、スイッチング層が低抵抗状態をとる。
スイッチング層と絶縁層との界面におけるTCNQの配
向の変化に基づくこのようなCu原子間距離の変化によ
り、スイッチング現象が生じると考えている。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るスイッチング素
子の模式図である。
【図2】図1に示すスイッチング素子の製造方法のフロ
ーチャートである。
【図3】本発明に係るスイッチング素子のスイッチング
特性を模式的に表すJ−V特性曲線である。
【図4】本発明の第2の実施形態に係るスイッチング素
子の模式図である。
【図5】図4に示すスイッチング素子の製造方法のフロ
ーチャートである。
【図6】Cu−TCNQ薄膜におけるCuとTCNQの
存在比、それに対応するCu含量、および、そのような
Cu−TCNQ薄膜を形成する際のCuとTCNQの蒸
着速度を示す表である。
【図7】サンプル1〜6の紫外可視吸収スペクトルを表
す。
【図8】サンプル1〜6について、吸光度の角度依存性
を表す。
【図9】サンプル7〜12の赤外吸収スペクトルを表
す。
【図10】サンプル7〜12の他の波数領域における赤
外吸収スペクトルを表す。
【図11】サンプル7〜12の他の波数領域における赤
外吸収スペクトルを表す。
【図12】実施例1〜12および比較例1〜5の素子構
造を示す。
【図13】J−V測定におけるシステム概略図である。
【図14】実施例1におけるJ−V特性曲線を表す。
【図15】比較例1におけるJ−V特性曲線を表す。
【図16】実施例7および実施例8におけるJ−V特性
曲線を表す。
【図17】実施例9および実施例10におけるJ−V特
性曲線を表す。
【図18】実施例11および実施例12におけるJ−V
特性曲線を表す。
【図19】比較例5に係る素子の模式図である。
【図20】本発明におけるスイッチングメカニズムの説
明図である。
【符号の説明】
10,20 スイッチング素子 11,21 第1電極層 21a 下層 21b 上層 12,22 第2電極層 13,23 スイッチング層 14,24 絶縁層
フロントページの続き (72)発明者 小山田 崇人 北海道札幌市清田区清田6条1丁目8番18 号 (72)発明者 雀部 博之 北海道千歳市末広8−9−3−106

Claims (21)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 第1電極層および第2電極層と、 電子ドナーおよび電子アクセプタからなる電荷移動錯体
    を含んで、前記第1電極層および前記第2電極層の間に
    設けられているスイッチング層と、 前記第1電極層および前記スイッチング層の間にて前記
    スイッチング層に接している絶縁層と、を備え、 前記スイッチング層は、前記第1電極層および前記第2
    電極層の間において第1閾値以上の電圧が第1バイアス
    方向に印加されることによって高抵抗状態から低抵抗状
    態へと変化し、当該変化の後に印加電圧が前記第1閾値
    未満に低下する場合に低抵抗状態を維持可能であって、
    且つ、前記第1バイアス方向とは反対の第2バイアス方
    向に第2閾値以上の電圧が印加されることによって低抵
    抗状態から高抵抗状態へと変化し、当該変化の後に印加
    電圧が前記第2閾値未満に低下する場合に高抵抗状態を
    維持可能であることを特徴とする、スイッチング素子。
  2. 【請求項2】 更に、前記スイッチング層および前記第
    2電極層の間に追加絶縁層を有する、請求項1に記載の
    スイッチング素子。
  3. 【請求項3】 前記第1バイアス方向は、前記第1電極
    層から前記第2電極層にかけて電圧が降下する方向であ
    る、請求項1または2に記載のスイッチング素子。
  4. 【請求項4】 前記第1バイアス方向は、前記第2電極
    層から前記第1電極層にかけて電圧が降下する方向であ
    る、請求項1または2に記載のスイッチング素子。
  5. 【請求項5】 前記電子アクセプタは、π電子系を有す
    る有機化合物である、請求項1から4のいずれか1つに
    記載のスイッチング素子。
  6. 【請求項6】 前記電子アクセプタは、TCNQまたは
    TCNQ誘導体である、請求項5に記載のスイッチング
    素子。
  7. 【請求項7】 前記電子ドナーは金属である、請求項1
    から6のいずれか1つに記載のスイッチング素子。
  8. 【請求項8】 前記金属は、Cu、AgおよびKからな
    る群より選択される、請求項7に記載のスイッチング素
    子。
  9. 【請求項9】 前記スイッチング層における前記電子ド
    ナーおよび前記電子アクセプタの存在比は、1:2〜
    3:2である、請求項1から8のいずれか1つに記載の
    スイッチング素子。
  10. 【請求項10】 前記スイッチング層はアモルファス組
    織を有する、請求項1から9のいずれか1つに記載のス
    イッチング素子。
  11. 【請求項11】 前記絶縁層および/または前記追加絶
    縁層は酸化物を含む、請求項1から10のいずれか1つ
    に記載のスイッチング素子。
  12. 【請求項12】 前記酸化物はAl23またはSiO2
    である、請求項11に記載のスイッチング素子。
  13. 【請求項13】 前記第2電極層は、前記スイッチング
    層に接しており、Al、もしくは、Mgおよび/または
    Agを含む、請求項1から12のいずれか1つに記載の
    スイッチング素子。
  14. 【請求項14】 第1バイアス方向に第1閾値以上の電
    圧が印加されることによって高抵抗状態から低抵抗状態
    へと変化し、当該変化の後に印加電圧が前記第1閾値未
    満に低下する場合に低抵抗状態を維持可能であって、且
    つ、前記第1バイアス方向とは反対の第2バイアス方向
    に第2閾値以上の電圧が印加されることによって低抵抗
    状態から高抵抗状態へと変化し、当該変化の後に印加電
    圧が前記第2閾値未満に低下する場合に高抵抗状態を維
    持可能であるスイッチング層を有するスイッチング素子
    を製造するための方法であって、 基材の上に第1電極層を形成するための第1電極層形成
    工程と、 前記第1電極層の上に絶縁層を形成するための絶縁層形
    成工程と、 電子ドナー材料とともに電子アクセプタ材料を前記絶縁
    層の上に堆積させることによってスイッチング層を形成
    するためのスイッチング層形成工程と、 第2電極層を形成するための第2電極層形成工程と、を
    含むことを特徴とする、スイッチング素子製造方法。
  15. 【請求項15】 更に、前記スイッチング層形成工程の
    後に、前記スイッチング層の上に追加絶縁層を形成する
    工程を含む、請求項14に記載のスイッチング素子製造
    方法。
  16. 【請求項16】 前記第1電極層形成工程では、真空蒸
    着法またはスパッタリング法により第1電極材料を前記
    基材の上に堆積させ、前記絶縁層形成工程では、前記第
    1電極層形成工程にて堆積された電極材料が大気下にさ
    らされる、請求項14または15に記載のスイッチング
    素子製造方法。
  17. 【請求項17】 前記絶縁層形成工程では、前記第1電
    極層形成工程にて形成された第1電極層の表面に対して
    UVオゾン処理が施される、請求項14から16のいず
    れか1つに記載のスイッチング素子製造方法。
  18. 【請求項18】 前記スイッチング層形成工程では、真
    空蒸着法により、前記電子ドナー材料および前記電子ア
    クセプタ材料を前記絶縁層の上へ堆積させる、請求項1
    4から17のいずれか1つに記載のスイッチング素子製
    造方法。
  19. 【請求項19】 前記スイッチング層形成工程における
    前記電子ドナー材料の蒸着速度と前記電子アクセプタの
    蒸着速度との比は、0.3:1.9〜0.7:1.5で
    ある、請求項14から18のいずれか1つに記載のスイ
    ッチング素子製造方法。
  20. 【請求項20】 前記第2電極層形成工程では、真空蒸
    着法またはスパッタリング法により、第2電極材料を前
    記スイッチング層または前記追加絶縁層の上に堆積さ
    せ、当該第2電極層形成工程の後に、更に、真空下に当
    該素子を放置する待機工程を含む、請求項14から19
    のいずれか1つに記載のスイッチング素子製造方法。
  21. 【請求項21】 更に、前記第1電極層および前記第2
    電極層の間において電圧を印加するためのエージング工
    程を含む、請求項14から20のいずれか1つに記載の
    スイッチング素子製造方法。
JP2002086400A 2002-03-26 2002-03-26 スイッチング素子およびその製造方法 Withdrawn JP2003283004A (ja)

Priority Applications (2)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2002086400A JP2003283004A (ja) 2002-03-26 2002-03-26 スイッチング素子およびその製造方法
US10/392,278 US6815733B2 (en) 2002-03-26 2003-03-19 Switching element and method of making the same

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2002086400A JP2003283004A (ja) 2002-03-26 2002-03-26 スイッチング素子およびその製造方法

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2003283004A true JP2003283004A (ja) 2003-10-03

Family

ID=29233015

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2002086400A Withdrawn JP2003283004A (ja) 2002-03-26 2002-03-26 スイッチング素子およびその製造方法

Country Status (2)

Country Link
US (1) US6815733B2 (ja)
JP (1) JP2003283004A (ja)

Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2005053049A1 (ja) * 2003-11-28 2005-06-09 Fuji Electric Holdings Co., Ltd. スイッチング素子
WO2005053027A1 (de) * 2003-11-28 2005-06-09 Infineon Technologies Ag Halbleiteranordnung mit nichtflüchtigen speichern
JP2006012947A (ja) * 2004-06-23 2006-01-12 Sony Corp 機能性分子装置

Families Citing this family (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2004119342A (ja) * 2002-09-30 2004-04-15 Pioneer Electronic Corp 有機el積層型有機スイッチング素子及び有機elディスプレイ
DE102004037151A1 (de) * 2004-07-30 2006-03-23 Infineon Technologies Ag Verfahren zur Bildung von Speicherschichten
EP2062307B1 (en) * 2006-08-31 2015-08-19 Imec Method for controlled formation of the resistive switching material in a resistive switching device and devices obtained thereof
WO2008026081A2 (en) * 2006-08-31 2008-03-06 Interuniversitair Microelektronica Centrum (Imec) Method for manufacturing a resistive switching device and devices obtained thereof

Family Cites Families (6)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US4652894A (en) * 1980-03-14 1987-03-24 The Johns Hopkins University Electrical organic thin film switching device switching between detectably different oxidation states
JPH0766989B2 (ja) 1987-05-14 1995-07-19 松下電器産業株式会社 機能素子
US5009958A (en) 1987-03-06 1991-04-23 Matsushita Electric Industrial Co., Ltd. Functional devices comprising a charge transfer complex layer
US5185208A (en) 1987-03-06 1993-02-09 Matsushita Electric Industrial Co., Ltd. Functional devices comprising a charge transfer complex layer
US5272359A (en) 1988-04-07 1993-12-21 California Institute Of Technology Reversible non-volatile switch based on a TCNQ charge transfer complex
US7067850B2 (en) * 2001-10-16 2006-06-27 Midwest Research Institute Stacked switchable element and diode combination

Cited By (8)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2005053049A1 (ja) * 2003-11-28 2005-06-09 Fuji Electric Holdings Co., Ltd. スイッチング素子
WO2005053027A1 (de) * 2003-11-28 2005-06-09 Infineon Technologies Ag Halbleiteranordnung mit nichtflüchtigen speichern
GB2423869A (en) * 2003-11-28 2006-09-06 Fuji Electric Holdings Co Switching element
JPWO2005053049A1 (ja) * 2003-11-28 2007-06-21 富士電機ホールディングス株式会社 スイッチング素子
GB2423869B (en) * 2003-11-28 2007-06-27 Fuji Electric Holdings Co Switching element
US7623213B2 (en) 2003-11-28 2009-11-24 Fuji Electric Holdings Co., Ltd. Switching device
JP4618131B2 (ja) * 2003-11-28 2011-01-26 富士電機ホールディングス株式会社 スイッチング素子
JP2006012947A (ja) * 2004-06-23 2006-01-12 Sony Corp 機能性分子装置

Also Published As

Publication number Publication date
US20040108514A1 (en) 2004-06-10
US6815733B2 (en) 2004-11-09

Similar Documents

Publication Publication Date Title
US6207472B1 (en) Low temperature thin film transistor fabrication
JPH0658966B2 (ja) 半導体素子
US8381587B2 (en) Gas sensor, gas measuring system using the gas sensor, and gas detection module for the gas sensor
US20050026427A1 (en) Custom electrodes for molecular memory and logic devices
JPH02308226A (ja) 液晶表示装置
Kukli et al. Properties of (Nb1− xTax) 2O5 solid solutions and (Nb1− xTax) 2O5-ZrO2 nanolaminates grown by Atomic Layer Epitaxy
JP2003283004A (ja) スイッチング素子およびその製造方法
Hah et al. Impact of oxygen concentration at the HfO x/Ti interface on the behavior of HfO x filamentary memristors
Hudec et al. High-permittivity metal-insulator-metal capacitors with TiO2 rutile dielectric and RuO2 bottom electrode
Zhitenev et al. Molecular nano-junctions formed with different metallic electrodes
KR100678771B1 (ko) 유기 박막 트랜지스터 및 그의 제조방법
JPS58123772A (ja) 半導体素子
Gao et al. Ionized cluster beam deposition of, Ag-TCNQ thin films and electrical switching phenomena
KR101721162B1 (ko) 수소 이온 확산을 이용한 저항변화메모리 및 그 제조방법
CN113964221B (zh) 一种电子突触器件及其制作方法
KR102582684B1 (ko) 저항변화소자 및 이의 제조방법
JPH09196879A (ja) 水素感知用酸化スズ薄膜センサおよびその製造方法
KR100627633B1 (ko) 원자층 침착법을 이용한 비휘발성 rram 소자용 니켈산화물 박막의 제조 방법
WO2005060005A1 (ja) スイッチング素子
Omura Potential of Silicon Oxide Films for Low-Cost and High-Performance Resistive Switching Devices
JP2005332977A (ja) スイッチング素子
KR100798696B1 (ko) 은이 포화된 Ge-Te 박막으로 이루어진 고체 전해질을갖는 PMCM 소자 및 그의 제조 방법
Tans et al. Electronic transport in monolayers of phthalocyanine polymers
Kalugasalam et al. DIELECTRIC AND AC CONDUCTION STUDIES OF LEAD PHTHALOCYANINE THIN FILM.
JP2022014560A (ja) トンネル接合、トンネル接合素子およびトンネル接合の作製方法

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20040604

A761 Written withdrawal of application

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A761

Effective date: 20070404