JP2003277894A - 摺動特性に優れる鉄系焼結合金および摺動部材 - Google Patents

摺動特性に優れる鉄系焼結合金および摺動部材

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JP2003277894A
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Yoji Awano
洋司 粟野
Mikio Kondo
幹夫 近藤
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Abstract

(57)【要約】 【課題】摺動特性に優れた鉛フリーの鉄系焼結合金を提
供する。 【解決手段】Tiおよび/またはSiとFeとを主成分
とし、摺動特性に優れることを特徴とする鉄系焼結合
金。この鉄系焼結合金は、耐摩耗性に優れ、相手攻撃性
が少なく、摩擦係数が低いという、摺動材料に要求され
る各種特性をバランス良く備える。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、摺動特性に優れる
鉄系焼結合金とそれを用いた摺動部材に関するものであ
る。
【0002】
【従来の技術】往復、回転運動等を行う各種機械には、
一般的に軸受等の摺動部材が不可欠である。例えば、エ
ンジンのクランクピンやジャーナル等の軸受部分には、
半円状のメタル軸受が2枚1セットで嵌装されている。
このような軸受材料として、これまでは摺動特性を良好
にする効果の大きい鉛(Pb)を含む焼結合金が使用さ
れてきた。例えば、ケルメット(Cu−Sn−Pb合
金)等がその代表的なものである。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかし、これらの摺動
用材料に含まれるPbは環境負荷元素である。このた
め、環境保護の点から、その使用は可能な限り避けるべ
きである。また、Pbを含んだ環境負荷物質の存在は軸
受等のリサイクル性を妨げるため、Pbを含まない軸受
等に使用できる摺動部材の開発が望まれていた。本発明
は、このような事情に鑑みて為されたものである。つま
り、鉛フリーの摺動材料であって、優れた摺動特性を発
揮する鉄系焼結合金およびそれを用いた摺動部材を提供
することを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】そこで、本発明者はこの
課題を解決すべく鋭意研究し、試行錯誤を重ねた結果、
Tiおよび/またはSiを含有する鉄系焼結合金が、優
れた摺動特性を発現することを発見し、本発明を完成さ
せるに至った。 (鉄系焼結合金)先ず、本発明の鉄系焼結合金は、Ti
および/またはSiとFeとを主成分とし、摺動特性に
優れることを特徴とする。
【0005】本発明の鉄系焼結合金は、低摩擦係数、耐
摩耗性、低相手攻撃性等の摺動部材に適した特性をバラ
ンスよく兼ね備える。そして、鉛フリーであるにもかか
わらず、従来の鉛含有材料と同等以上の特性を発現す
る。もっとも、その理由については明らかではないが、
現状では次のように考えることができる。本発明の鉄系
焼結合金の場合、母材となる鉄中およびその表面に、潤
滑性の高い黒鉛と同じ結晶形、つまり六方晶をしたチタ
ン化合物(例えば、TiS、Ti 422 、Ti酸化物
等)の形成や鉄粉粒子の表面に存在するかまたは焼結中
にケイ素と酸素の富化した層が形成されるためではない
かと考えられる。つまり、これらの化合物や層が、摩擦
係数低減等、摺動特性の向上に大きく寄与していると考
えられる。
【0006】(摺動部材)本発明は鉄系焼結合金に限ら
ずそれを利用した摺動部材としても把握できる。すなわ
ち、本発明は、Tiおよび/またはSiとFeとを主成
分とする摺動特性に優れた鉄系焼結合金を、少なくとも
一部に有することを特徴とする摺動部材と把握しても良
い。
【0007】なお、詳細は後述するが、本発明に係る鉄
系焼結合金は、かなりの組成範囲で、優れた摺動特性を
発現する。つまり、Pbを除いて、添加できる元素の種
類も豊富であり、また、その含有量も広範囲に選択する
ことができる。さらに、その鉄系焼結合金は、Fe中に
形成される化合物の形態(球状、針状、塊状等)、分散
量、粒径等、Fe中の固溶元素やその固溶量等、いずれ
も特に限定されるものではない。それほどの広範囲で、
本発明の鉄系焼結合金等は優れた摺動特性を発現する。
【0008】本発明の鉄系焼結合金は、焼結法によって
製造されるものであることは当然であるが、その方法
は、例えば、必須元素の素粉末を混合(成形)、焼結さ
せた素粉末焼結法でも、必須元素を含む合金の粉末(合
金粉末)を焼結させた合金粉末焼結法でも良い。また、
本発明の摺動部材は、その全体が鉄系焼結合金で形成さ
れている場合に限らず、例えば、鉄系焼結合金以外の基
部と、この基部の少なくとも一面側に設けられた前記鉄
系焼結合金からなる摺動部とで構成された摺動部材であ
っても良い。例えば、アルミニウム合金等の金属基板
(基部)上に、その鉄系焼結合金を溶着させたもの(摺
動部)や、鋼板(基部)上に鉄系焼結合金を接合したも
の等でも良い。
【0009】
【発明の実施の形態】実施形態を挙げ、以下に本発明を
より詳しく説明する。なお、以下に説明する内容は、鉄
系焼結合金は勿論、本発明に係る摺動部材にも適宜当て
はまることである。 (1)鉄系焼結合金の組成 本発明の鉄系焼結合金は、TiとSiとの少なくとも一
方とFeとを必須元素とする。従って、本発明の鉄系焼
結合金の組成として、先ず、Tiおよび/またはSiと
残部がFeおよび不可避不純物とからなるものを挙げる
ことができる。次に、これ以外に、その用途に応じて、
その摺動特性を阻害せず、またはその摺動特性を向上さ
せる元素(補強元素)を含有していても良い。そのよう
な補強元素として、S、O等の6B族元素、C等の4B
族元素が有効である。中でも特に、本発明者は、Sが有
効であることを確認している。さらに、Cu、Sn、N
i、Mo等を適宜含有していても良い。
【0010】これらの各元素の含有量は、上述したよう
に、広範囲で考えることができるが、例えば、次のよう
な範囲とするとより好ましい。すなわち、鉄系焼結合金
全体を100質量%としたときに、Tiが0.5〜6.
5質量%、Siが0.5〜7質量%またはSが0.05
〜2.5質量%である。勿論、それらを適宜組み合わせ
ても良い。いずれも、その下限値未満であれば、摺動特
性の向上効果が薄い。一方、Tiがその上限値を越えて
含有された場合、上記摺動特性以上の向上は望めず、ま
た経済的でもない。Siがその上限値を越えて含有され
た場合、鉄系焼結合金が硬くかつ脆くなり、焼結工程前
に一般的に必要とされる粉末成形(成形工程)が困難と
なる。Sがその上限値を越えて含有された場合、粉末成
形体の強度が低くなり取扱いが難しくなること、FeS
化合物が多量に形成されるので摩擦係数が高くなるこ
と、焼結中にFeSの関与する液相が多量に出現し焼結
体の形状が崩れてしまうこと等の観点から好ましくな
い。そして、それらの各元素は、Tiが1〜6質量%さ
らには1.5〜4.5質量%、Siが1〜7質量%さら
には1.5〜5質量%、Sが0.1〜2質量%さらには
0.2〜1.5質量%であれば、より好適である。
【0011】さらに、本発明者は、S等を添加しないF
e−Si焼結合金(例えば、Fe−3%Si)を調査し
たところ、その表面には10〜40nm(約30nm)
のSiとOとが富化した層が存在していることを確認し
ている。また、S等を添加しないFe−Ti焼結合金
(例えば、Fe−3%Ti)も同様に優れた摺動特性を
発現するのは、表面に形成された酸化物の影響であると
考えられる。そこで、本発明の鉄系焼結合金は、摺動特
性向上の観点から、その存在形態はともかくとして、O
を有していると好適である。もっとも、製造時からこの
Oが鉄系焼結合金に含有されている必要は必ずしもな
い。大気中に放置した鉄系焼結合金の表面に酸化物等が
形成されるものでも良い。また、その鉄系焼結合金を摺
動部材として実際に使用しているときに、メカノケミカ
ル反応等によって酸化物等がその表面に形成されても良
い。そこで、本発明の摺動部材は、その鉄系焼結合金か
らなる摺動表面の少なくとも一部にTiおよび/または
Siの酸化物からなる摺動生成物が形成されていると好
適である。
【0012】本発明の鉄系焼結合金中に存在するTi、
Si、Sやその他の補強元素は、母材となるFe中に種
々の形態で存在し得る。例えば、それらの元素がFeに
固溶していても良いし、Feや他の元素と化合物を形成
していても良い。このような化合物は、焼結時に形成さ
れても良いが、その後に適宜施される熱処理や熱間加工
中で形成されても良い。このような化合物の一例を挙げ
ると、例えば、チタン化合物または硫化物なら、Ti
S、Fe2Ti、Fe1.2Ti0.8S、Ti422、Ti
2CS等がある。また、析出する化合物は、針状、球
状、塊状等、様々な形態をとり得ると考えられ、その組
成等によっても変化すると思われる。いずれにしても、
微細にほぼ均一的に分散している方が好ましい。
【0013】(2)鉄系焼結合金の製造方法 本発明の鉄系焼結合金は、焼結材であるから、一般的に
は、原料粉末の成形工程、焼結工程を経て製造される。
原料粉末が複数種の粉末からなる場合は、成形工程前
に、それらを均一に混合する混合工程を行う。成形工程
は、金型成形の他、CIP(冷間静水圧成形法)を用い
ても良い。また、HIP(熱間静水圧成形法)を用いて
焼結させても良い。さらに、焼結工程後に、再圧縮等の
熱間加工を施しても良い。
【0014】使用する原料粉末の粒径は、20〜300
μm、さらには20〜180μm程度が金型への充填性
および成形性の点から好ましい。また、成形用金型に原
料粉末を充填して加圧成形する場合、その加圧力は、原
料粉末の組成にも依るが、400〜2000MPa程度
である。また、焼結温度や焼結時間も、原料粉末の組成
に依るが900〜1400℃、0.5〜3時間程度であ
る。
【0015】原料粉末が硬質で成形性が悪い場合には、
本発明者が開発し、本願出願人が既に出願している(W
O01/43900A1)金型潤滑温間加圧成形法を用
いると良い。この金型潤滑温間加圧成形法を用いると、
成形用金型と原料粉末との間のかじりを防止して金型寿
命の低下を招かずに、非常に高圧で成形できる。従っ
て、例えば、Siを7質量%以上含有する硬質のFe−
Si粉末を原料粉末とするような場合でも、十分に高密
度な粉末成形体を容易に製造できる。この金型潤滑温間
加圧成形法は、高級脂肪酸系潤滑剤を内面に塗布した成
形用金型へ原料粉末を充填する充填工程と、その原料粉
末と成形用金型との間に金属石鹸皮膜が生成されるよう
に温間加圧成形する成形工程とから基本的になる。
【0016】例えば、高級脂肪酸系潤滑剤をステアリン
酸リチウムとした場合、成形用金型の内面に接する原料
粉末の外表面には、潤滑性に優れたステアリン酸鉄から
なる金属石鹸皮膜が形成される。このステアリン酸鉄皮
膜の存在によって、かじり等が生じず、また、非常に低
い抜圧で粉末成形体を成形用金型から取出すことができ
る。そして、高圧成形にも拘わらず、金型寿命を短くす
ることもなくなる。
【0017】なお、高級脂肪酸系潤滑剤は、高級脂肪酸
自体でも良いが、その金属塩(ステアリン酸リチウム、
ステアリン酸亜鉛等)が好ましい。高級脂肪酸系潤滑剤
の塗布は、加熱された成形用金型内に水または水溶液に
分散させた高級脂肪酸系潤滑剤を噴霧することで行え
る。このときの成形用金型の加熱は、高級脂肪酸系潤滑
剤の種類にも依るが、ステアリン酸リチウムを用いた場
合なら100〜220℃内である。高級脂肪酸系潤滑剤
を水等に分散させる際、その水溶液全体の質量を100
質量%としたときに、高級脂肪酸系潤滑剤が0.1〜5
質量%の割合で含まれるようにすると、均一な潤滑膜が
成形用金型の内面に形成されて好ましい。
【0018】成形工程における「温間」とは、各状況に
応じた適切な加熱条件の下で成形工程を行うことを意味
するが、例えば、成形温度を120〜180℃とすると
好適である。成形工程における「加圧」の程度も、所望
する鉄系焼結合金の特性、原料粉末の種類等に応じて適
宜決定されるものであるが、この製造方法を用いると、
従来の成形圧力を超越した高圧力下で成形可能である。
例えば、成形圧力を700MPa以上、785MPa以
上、1000MPa以上、さらには、2000MPaと
することもできる。もっとも、成形用金型の寿命や生産
性を考慮して、その成形圧力を2000MPa以下、よ
り望ましくは1500MPa以下とするのが良い。
【0019】(3)摺動特性と摺動部材 本発明の鉄系焼結合金は、無潤滑状態下で使用されても
潤滑状態下で使用されても良く、荷重、摺動速度等に応
じた環境下で使用されれば良い。例えば、エンジンオイ
ルによる潤滑環境下で本発明の鉄系焼結合金を使用した
場合、後述するように、摩擦係数を0.15以下、0.
1以下、0.08以下、さらには0.07以下にまで低
下させ得る。また、そのとき、耐摩耗性を指標する摩耗
痕深さも、低摩擦荷重(1.41N)下では0.2μm
以下となって殆ど摩耗せず、高摩擦荷重(25.6N)
下でも3.5μm以下、3μm以下、さらには2μm以
下と非常に小さく、優れた耐摩耗性を発揮する。
【0020】さらに、相手攻撃性の指標となるボール摩
耗痕径についても、低摩擦荷重では0.3mm以下、
0.2mm以下、さらには0.17mm以下と小さく、
高摩擦荷重でも0.6mm以下、0.5mm以下、0.
4mm以下、さらには0.35mm以下と小さい。よっ
て、本発明の鉄系焼結合金は、十分に低い相手攻撃性を
有していることが分かる。これらの特性は、軸受材料と
して代表的なケルメットと同等以上である。従って、本
発明の鉄系焼結合金は、十分にその代替材となり得る。
【0021】本発明の摺動部材は、このような鉄系焼結
合金を少なくとも摺動面に有するものであれば良い。従
って、摺動部材の全体が鉄系焼結合金で形成されていて
も良いし、鋼、軽金属(アルミニウム合金、マグネシウ
ム合金等)、樹脂等からなる基部上にその鉄系焼結合金
からなる摺動部を設けたものでも良い。このような摺動
部材の具体例を挙げると、軸受メタル等がある。特に、
本発明の鉄系焼結合金は、焼結材からなるため、原料粉
末を相当な高圧で成形してから焼結しない限り、通常
は、多孔質体である。このため、潤滑環境下で使用され
る摺動部材に本発明の鉄系焼結合金を用いると、その摺
動部材はその空孔に潤滑油を蓄え、優れた潤滑油の保持
能力を発揮する。従って、本発明の鉄系焼結合金や摺動
部材を用いると、このような観点からもより安定した摺
動特性が得られる。
【0022】
【実施例】実施例を挙げて、本発明をより具体的に説明
する。 (試験片の製造方法)原料粉末として、粉末冶金用の純
鉄粉(へガネス社製ASCl00・29)、水アトマイ
ズ合金粉(大同特殊鋼製、Fe−3%Si合金粉末、粒
径150μm以下)、チタン粉末(東邦チタニウム製、
45μm以下)、和光純薬製化学用の硫化鉄(FeS)
を粉砕してふるい分けた250メッシュ以下の粉末と、
を用意した。なお、単位はすべて質量%である(以下、
同様)。これらの粉末を適宜組み合わせ、表1または表
2の配合組成となるように、各種粉末を混合した(混合
工程)。但し、後述の試験片No.11はFe−3%S
i合金粉末のみを使用した。
【0023】得られた混合粉末を成形用金型(超硬製、
φ40mm)のキャビティに充填し(充填工程)、成形
圧力785MPa、室温大気中で圧粉成形した(成形工
程)。得られた粉末成形体を真空雰囲気で1250℃、
30分間加熱し(焼結工程)、各種組成を有する焼結体
を製造した。なお、この焼結工程での最終到達真空度
は、10-2Pa(10-4torr)台であった。得られ
た焼結体からφ30×8.5〜9.5mmの円盤状の摩
耗試験片をそれぞれ切削加工して製作した。また、それ
らの試験片の摩擦面を1200番のエメリー紙で研摩
し、その後、さらに0.3μmのアルミナ粉でバフ仕上
げした。こうして、表1および表2に示す各種試験結果
を得た。
【0024】(摩耗試験)各試験片を用いて、ボールオ
ンディスク法で摩耗試験を行った。この試験で使用した
ボールは、直径6.35mmの軸受鋼(JIS SUJ
2)製ボールである。各試験片の摩擦面には潤滑油とし
て、トヨタ自動車純正キャッスルモーターオイルSHII
を塗布した。ここで、Fe−Ti−S系焼結合金からな
る試験片No.1〜10および試験片No.16の表面
には、その潤滑油を0.24〜2.0mg/cm2塗布
した。
【0025】また、Fe−Ti−S系焼結合金からなる
試験片No.11〜15は、純鉄粉よりも硬いFe−3
%Si合金粉末を用いて製作したものであるので、密度
が相対的に低く、潤滑油が焼結体内に浸透し易かった。
そこで、摩擦面での潤滑油の欠乏を防止するために、試
験前には、潤滑油量を規定せず、各試験片の表面に多め
に潤滑油を塗布した。そして、試験終了後に、改めてそ
の潤滑油量を各試験片毎に測定した。その測定した潤滑
油量は、表2に併せて示した。なお、試験片No.16
についても、多目に潤滑油を塗布して試験を行った。ま
た、表2に示した潤滑油量は、潤滑油が付着した状態の
試験片の重量から、その潤滑油をヘキサンで洗浄した後
の試験片の重量を差引いて求めたものである。
【0026】そして、摩擦速度:0.21m/s、時
間:10分間、摩擦荷重:1.41Nまたは25.6N
という試験条件の下で、上記摩耗試験を行った。摩擦荷
重を25.6Nとした試験は、耐凝着性の評価のためで
ある。この試験後の各試験片について、摩擦係数、表面
粗さ計で測定した各試験片の摩擦面(摺動面)の摩耗
(痕)深さ、SUJ2ボール(相手材)の摩耗痕径を測
定した。この結果を表1および表2に併せて示した。な
お、摩擦係数は、歪みゲージを介してトルク検出するこ
とにより測定し、安定したところの数値を採用した。ま
た、試験片の摩耗痕深さは耐摩耗性の指標となるもので
あり、周囲の平坦面から凹部の最深位置までの距離を摩
耗痕深さとした。また、SUJ2ボールの摩耗痕径は相
手攻撃性の指標となるものであり、試験終了後のSUJ
2ボールについた摩耗痕をスケール付対物レンズを取付
けた光学顕微鏡で測定して求めた。
【0027】(比較例)比較試験片として、代表的な軸
受材料であるケルメット(JIS LBC3相当材:焼
結Cu−10%Sn−10%Pb焼結合金)を用意し
た。この試験片には、前記潤滑油を0.24〜0.27
mg/cm2塗布した。但し、試験片No.11〜15
の試験と比較する場合の潤滑油量は、1.86mg/c
2であった。そして、この試験片にも、上記実施例と
同様の評価試験をそれぞれ行った。その結果も、表1お
よび表2に併せて示した。
【0028】(評価) (1)Fe−Ti−S系焼結合金 摩擦係数は、いずれの試験片も、摩擦荷重の大小を問わ
ず、比較材であるケルメットと同等以下であった。特
に、試験片No.8を除けば、いずれの摩擦係数もケル
メットより小さかった。摩耗痕は、摩擦荷重が小さいと
き、いずれの試験片についても、ほとんど観察されない
か、観察されても表面粗さ計による測定が困難な程小さ
なものであった。これに対し、ケルメットの場合は、同
じ摩擦荷重でも、目視確認でき、深さ0.2mmの条痕
(摩耗痕)が測定された。なお、本実施例のように、試
験片が焼結材からなる場合、微妙な摩耗痕深さを粗さ計
で正確に測定することは困難である。焼結材には多数の
空孔が存在し、その空孔と摩耗痕との厳密な区別が困難
だからである。
【0029】一方、摩擦荷重が大きいとき、各試験片に
できた摩耗痕深さは、ケルメットにできた摩耗痕深さと
比較して、同等かそれよりも少し大きい程度であった。
ボール摩耗痕径は、摩擦荷重が小さいとき、いずれの試
験片のものも、ケルメットのものよりも小さかった。一
方、摩擦荷重が大きいとき、いずれの試験片のものも、
ケルメットと同程度か少し大きい程度であった。
【0030】(2)Fe−Si−Ti−S系焼結合金 摩擦係数は、摩擦荷重が小さいとき、いずれの試験片
も、ケルメットと同等以下であった。特に、試験片N
o.15を除けば、いずれの試験片の摩擦係数もケルメ
ットより小さかった。一方、摩擦荷重が大きいとき、い
ずれの試験片の摩擦係数も、ケルメットの摩擦係数より
も少し大きくなっていた。しかし、塗布した潤滑油量が
それぞれ異なるため、各試験片とケルメットとの摩擦係
数を単純に比較することは困難である。とはいえ、いず
れの試験片の摩擦係数も0.08〜0.09であり、実
用的にみて十分に低い値であった。
【0031】摩耗痕は、摩擦荷重が小さいとき、いずれ
の試験片にもほとんど観察されなかった。一方、摩擦荷
重が大きいとき、各試験片の摩耗痕は、ケルメットの摩
耗痕と比較して、多少ばらつきはあるものの、両者は同
等程度であった。ボール摩耗痕径は、摩擦荷重の大小を
問わず、いずれの試験片のものも、ケルメットのものと
同等以下であった。なお、Fe−Ti−S系焼結合金お
よびFe−Si−S系焼結合金からなるいずれの試験片
も、摩擦荷重の大小に拘らず、ボールと凝着等を生じる
ことはなかった。
【0032】(3)硬さと、摩耗痕深さまたはボール摩
耗痕径との関係 各試験片についてビッカース硬さ(HV5)を測定し
た。そして、それらの硬さと摩擦荷重25.6Nのとき
にできる摩耗痕深さとの相関を調べた。その結果を図1
に示す。同図中、●はケルメットであり、○は各試験片
である。なお、○中の数字は、試験片No.に対応す
る。また、同様に、各試験片の硬さと摩擦荷重25.6
Nのときにできるボール摩耗痕径との相関を調べた結果
を図2に示す。図1および図2から明らかなように、試
験片の硬さが高いほど、摩耗痕深さおよびボール摩耗痕
径は小さくなるという明確な関係が、両者の間に認めら
れた。このことから、先ず、試験片の摩耗痕深さが大き
くなる主な原因は、摩耗よりも焼結体の塑性変形、つま
り凹みにあると思われる。なお、この凹みは、多くの空
孔を有する焼結体が、高荷重で押圧された鋼球によって
押し潰されてできる。
【0033】また、相手材であるボールの摩耗痕径が大
きくなるのは、各試験片の焼結体にできた凹み(摩耗痕
深さ)が大きくなる程、その焼結体とボールとの摺動面
積が広くなって、結果的に、ボールの摩耗痕が大きく測
定されたと思われる。このような結果から考えると、F
e中にSiが固溶等してより硬質となったFe−Si系
焼結合金の方が、Fe−Ti系焼結合金よりも、耐摩耗
性、相手攻撃性に優れたものといえる。
【0034】(4)その他 試験片No.11は、Fe−3%Si合金粉末のみか
ら製造した焼結体であったが、表2に示すように、優れ
た摺動特性を示した。これは、Fe−3%Si合金粉末
の表面に、結晶質の酸化物でないが、厚さ約30nmの
SiとOとの富化層(摺動生成物)が存在していたため
と考えられる。試験片No.3は、純鉄粉とチタン粉末
とから製造した焼結体であるが、この場合も、表1に示
すように、優れた摺動特性を示した。これは、粉末中に
含まれていたか、焼結中に生成したチタン酸化物(摺動
生成物)のためと考えられる。
【0035】使用形態にもよるが、例えば、軸受メタ
ルの代替材として本発明の鉄系焼結合金を使用する場
合、異物等の埋没性も重要な特性の一つとなる。異物等
による摺動面の傷つき等を抑制、防止するためである。
この点、本発明の鉄系焼結合金のように焼結体から軸受
材は、多数の空孔を摺動表面に有するため、その分、微
細な異物をその空孔に取り込み易い、つまり異物の埋没
性に優れるといえる。さらに、Fe−Si系焼結合金よ
りも、Fe−Ti系焼結合金の方が埋没性という観点か
らすると優れていると考える。Si量にも依るが、Fe
−Ti系焼結合金はFe−Si系焼結合金よりも一般的
に軟質であり、摺動面の塑性流動によって異物を取り込
み易いからである。従って、このような観点からも、本
発明の鉄系焼結合金は、従来の軸受材であるケルメット
の代替材として、十分に機能し得ると考えられる。
【0036】本発明の鉄系焼結合金の製造に際して、
上記した原料粉末の配合方法に拘わらず、例えば、次の
ように配合しても良い。Tiの配合は、純Ti粉末だけ
でなく高濃度のFe−Ti合金粉末で行っても良い。S
iの配合は所定の濃度のFe−Si合金粉末を用いるだ
けでなく、高濃度のFe−Si合金粉末で行っても良
い。原料粉末中のSi量は、粉末成形が可能かどうかで
主に規定されるが、前述した金型潤滑温間加圧成形法を
利用すれば、例えば、Si量が7%以上の粉末でも使用
可能である。原料粉末中のTi量は、どのような原料粉
末を使用するかにも依るが、粉末成形後の抜き出しに際
して型とのかじりが発生しなければ高くして良い。但
し、Ti量が増えても、鉄系焼結合金の摺動特性はあま
り変化しないことおよびコスト増加を考えれば、Ti量
を6%以下とするのが好ましい。
【0037】また、Tiは活性な金属であるから、Ti
粉末等を原料粉末とする場合は、真空またはアルゴン雰
囲気中で焼結することが好ましい。一方、Tiを含まな
い合金粉末を原料粉末とする場合は、浸炭や窒化が起ら
ない雰囲気で焼結を行えば良い。例えば、焼結雰囲気ガ
スとしてコストの安い窒素や水素を使用して焼結を行え
ば良い。
【0038】さらに、本発明の鉄系焼結合金のように、
焼結材は、種々の組成をもつ粉末を均一に混合した状態
で成形、焼結させて製造できる。このため、種々の元素
を、広範囲の組成域で含有させることができる。従っ
て、溶製材では製造困難な組成の摺動合金を製造するこ
とも可能である。例えば、溶製材ではSを1質量%以上
含有させると偏析を生じ易いが、焼結材では、上記各試
験片の用に、Sを2.5質量%まで含有させることもで
きる。
【0039】
【表1】
【0040】
【表2】
【0041】
【発明の効果】本発明によれば、鉛フリーを達成しつ
つ、優れた摺動特性を発現する鉄系焼結合金およびそれ
を用いた摺動部材が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例に係る各試験片について、硬さ
と摩耗痕深さとの関係を示す分布図である。
【図2】本発明の実施例に係る各試験片について、硬さ
とボール摩耗痕径との関係を示す分布図である。

Claims (11)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】チタン(Ti)および/またはケイ素(S
    i)と鉄(Fe)とを主成分とし、摺動特性に優れるこ
    とを特徴とする鉄系焼結合金。
  2. 【請求項2】Tiおよび/またはSiと残部がFeおよ
    び不可避不純物とからなり、摺動特性に優れることを特
    徴とする鉄系焼結合金。
  3. 【請求項3】さらに、硫黄(S)を含有する請求項1ま
    たは2記載の鉄系焼結合金。
  4. 【請求項4】前記Tiは、全体を100質量%としたと
    きに0.5〜6.5質量%である請求項1または2記載
    の鉄系焼結合金。
  5. 【請求項5】前記Siは、全体を100質量%としたと
    きに0.5〜7質量%である請求項1または2記載の鉄
    系焼結合金。
  6. 【請求項6】前記Sは、全体を100質量%としたとき
    に0.05〜2.5質量%である請求項3記載の鉄系焼
    結合金。
  7. 【請求項7】さらに、酸素(O)を含有する請求項1ま
    たは2記載の鉄系焼結合金。
  8. 【請求項8】Tiおよび/またはSiとFeとを主成分
    とする摺動特性に優れた鉄系焼結合金を、少なくとも一
    部に有することを特徴とする摺動部材。
  9. 【請求項9】基部と、 該基部の少なくとも一面側に設けられた前記鉄系焼結合
    金からなる摺動部と、 を有する請求項8記載の摺動部材。ことを特徴とする摺
    動部材。
  10. 【請求項10】前記鉄系焼結合金は、さらにSを含有す
    る請求項8または9記載の摺動部材。
  11. 【請求項11】前記鉄系焼結合金からなる摺動表面の少
    なくとも一部にTiおよび/またはSiの酸化物からな
    る摺動生成物が形成されている請求項8または9記載の
    摺動部材。
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