JP2003269320A - 風力発電装置のブレード及び補助部材 - Google Patents

風力発電装置のブレード及び補助部材

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JP2003269320A
JP2003269320A JP2002068599A JP2002068599A JP2003269320A JP 2003269320 A JP2003269320 A JP 2003269320A JP 2002068599 A JP2002068599 A JP 2002068599A JP 2002068599 A JP2002068599 A JP 2002068599A JP 2003269320 A JP2003269320 A JP 2003269320A
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晴幸 西田
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 低速の風速での発電効率を向上できるととも
に、高速の風速での発電効率を確保して風車の過回転を
防止する。 【解決手段】 風力発電装置11のブレード21は、風車20
の回転方向側を前、風車20の回転方向と反対側を後ろと
し、風を受ける側を表、風を受ける側と反対側を裏とし
ている。ブレード21は、プロペラ翼であるブレード本体
22の後端部に補助部材23が取り付けられて構成されてい
る。ブレード本体22は、そのキャンバーが裏側に凸にな
るように風車20に取り付けられている。ブレード本体22
の形状は、風車のサイズ、ストール風速、発電量等から
決まる適切な形状に形成されている。補助部材23は平板
状であって、ブレード本体22の裏面22aに沿ってブレー
ド本体22の後方に延出されている。補助部材23は可撓性
を有するように繊維強化プラスチックによって形成され
ている。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、風力発電装置のブ
レードに関するものである。
【0002】
【従来の技術】風力発電装置のブレードは種々研究され
ており、プロペラ形風車のいわゆる厚翼型のブレードが
よく使用されている。ブレードの形状は、目的の発電
量、ストール風速、風車のサイズ等から適切な形状を計
算により求めることができるようになっている。ストー
ル風速とは、風速がそれ以上になるとブレードの形状が
もたらす空気特性により失速現象が起こり、回転速度が
低下して風車の過回転を防止する風速のことである。
【0003】ブレードは、そのキャンバーがある範囲で
大きいほど揚力が増加し、回転速度が増加して発電効率
が向上する。また、ブレードは風車の回転面への投影面
積が大きいほど、より低速の風速で風車を起動(カット
イン)できる。ここで揚力とは、ブレードが風から受け
る力のうち、ブレードの進行方向及び進行速度と、風を
受ける方向及び風速とにより決まるブレードに対する相
対的な風の方向に対して直交し、ブレードにおいて風を
受ける側(表側)からその反対側(裏側)へ向かう力の
ことである。しかし、風速が高速になると、ブレードの
キャンバーが大きいほど風車が過回転になりやすく、発
電機の能力を超えて回転したり、ブレードが破損する虞
がある。そこで、機械的構成によって、ブレードの取付
角(ピッチ角)をアクティブに制御(ピッチ制御)する
ものがある。
【0004】ところが、機械的にブレードのピッチ角を
変化させるものは構成が複雑になるという問題がある。
また、風力によりブレードを変形可能とした風力発電装
置として、例えば実用新案登録第3071880号公報
に示されるものがある。この公報の風力発電装置は、図
7に示すように、風車90の回転軸91から、回転軸9
1と直交する方向に延びるウインドシャフト92にブレ
ード板93が取り付けられているいわゆるオランダ形風
車になっている。ブレード板93は、ウインドシャフト
92との境界付近が、超弾性合金材料からなる弾性変形
部93aとして形成されている。風速が高速になると、
増加した風力によって弾性変形部93aが変形して風車
90の過回転が防止されることが示されている。また、
この公報には、ブレード板93全体を超弾性合金材料で
変形可能に形成したものも示されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】ところが、実用新案登
録第3071880号公報のブレードは、弾性変形部9
3aがウインドシャフト92との境界付近に位置してい
るため、弾性変形部93aが変形すると、風に対するブ
レード板93の角度がブレード板93全体で変化し、風
速が高速の場合の発電効率が著しく低下する。また、弾
性変形部93aがブレード板93と一体に形成されて分
離できないため、風車のサイズ、ストール風速、発電量
等から決まる適切な形状に形成されている既存のブレー
ドには適用できず、ブレード板93は既存のブレードと
別に新たに形成する必要があるという問題がある。
【0006】また、ブレード板93全体を超弾性合金材
料で変化可能に形成にしたものも、風速が高速の場合に
はブレード板93全体が変形して発電効率が著しく低下
するという問題がある。また、既存のブレードには適用
できず、ブレード板93は既存のブレードと別に新たに
形成する必要がある。また、ブレード板93全体が超弾
性合金材料で形成されているため、コストが高くなると
ともに、重くて回転しにくいという問題がある。
【0007】本発明は上記の問題点に鑑みてなされたも
のであって、その目的は、低速の風速での発電効率を向
上できるとともに、高速の風速での発電効率を確保して
風車の過回転を防止できる風力発電装置のブレード及び
補助部材を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】前記の目的を達成するた
めに、請求項1に記載の発明では、ブレード本体の後端
部に、ブレード本体より後方に延出する補助部材を、ブ
レード全体としてのキャンバーが低速の風速において増
加するように、また、風車の回転面へのブレードの投影
面積が増加するように備え、前記補助部材は、風速が高
速になると、その風力によりブレード全体としてのキャ
ンバーが前記ブレード本体だけの場合と同程度まで減少
するように変形し、風力が下がると、再びブレード全体
としてのキャンバーを増加する位置に戻ることを要旨と
する。
【0009】この発明では、補助部材を備えるブレード
を新しく形成したり、また、既存のブレードに補助部材
を取り付けることにより、ブレード全体としてのキャン
バーを低速の風速において増やして発電効率を向上でき
る。また、ブレードは、補助部材によって風車の回転面
への投影面積が増加されているため、ブレード本体だけ
の場合より低速の風速で風車を起動できる。また、風速
が高速になると、補助部材は、風力によりキャンバーが
低下するように変形するため、風車の過回転が防止され
る。補助部材が変形するものの、ブレード本体自体は変
形しないため、ブレード本体自体が変形する場合と異な
り、発電効率の著しい低下を防止して発電効率を確保で
きる。ここで、ブレード本体の後端部とは、ブレード本
体を風車に取り付けた状態で、風車の回転方向に対して
後ろ側の端部をいう。
【0010】請求項2に記載の発明では、請求項1に記
載の発明において、前記ブレード本体は風車のサイズ、
ストール風速、発電量等から決まる適切な形状に形成さ
れており、前記補助部材は、前記ブレード本体と分離可
能なことを要旨とする。この発明では、既存のブレード
に補助部材を取り付けるだけで簡単に発電効率を向上で
きる。
【0011】請求項3に記載の発明では、請求項1に記
載の発明において、前記ブレード本体は、その後端部が
取り外し可能に形成されていることを要旨とする。この
発明では、長期間の使用により変形したり破損した補助
部材を交換するとき、ブレード本体を風力発電装置に取
り付けたままでは交換しにくい場合、ブレード全体を風
力発電装置から取り外さなくても、後端部を取り外して
補助部材を交換できるため、補助部材を交換しやすい。
【0012】請求項4に記載の発明では、請求項3に記
載の発明において、前記ブレード本体の後端部及び補助
部材が一体成型されていることを要旨とする。この発明
では、請求項3の発明の効果に加えて、補助部材の交換
の際にかかる時間を短くできる。
【0013】請求項5に記載の発明では、請求項1〜請
求項4のいずれか一項に記載の発明において、前記補助
部材の裏面が、前記ブレード本体の裏面に沿って滑らか
に備えられていることを要旨とする。この発明では、空
気流れを滑らかにして、余計な揚力低下を防止できる。
ここで、補助部材及びブレード本体の裏面とは、発電時
に風を受ける面と反対側の面をいう。
【0014】請求項6に記載の発明では、請求項1〜請
求項5のいずれか一項に記載の発明において、前記補助
部材が、前記ブレード本体の長手方向に複数取り付けら
れていることを要旨とする。この発明では、回転半径の
違いによる相対的な風速の違いに対応して、ブレードの
径方向内側の回転半径が小さい補助部材の変形を遅らせ
て発電効率を向上できる。
【0015】請求項7に記載の発明では、請求項1〜請
求項6のいずれか一項に記載の発明において、前記補助
部材が、前記ブレード本体の長手方向全体に渡って取り
付けられていることを要旨とする。この発明では、ブレ
ード本体の長手方向全体に渡ってキャンバーを増加でき
る。
【0016】請求項8に記載の発明では、請求項1〜請
求項6のいずれか一項に記載の発明において、前記補助
部材の長さが前記ブレード本体の長さより短く、前記補
助部材は、前記ブレード本体が風車に取り付けられた状
態における少なくとも径方向外側端部に備えられている
ことを要旨とする。この発明では、ブレードにおいて回
転半径が最も大きくて相対的な風速が最も大きく、揚力
の発生に最も寄与する径方向外側端部でキャンバーを増
加でき、径方向外側端部に補助部材を取り付けない場合
に比べて、効果的に発電効率を向上できる。
【0017】請求項9に記載の発明では、請求項1〜請
求項8のいずれか一項に記載の発明において、前記補助
部材に、熱膨張率の異なる複数の材料が通電可能に取り
付けられていることを要旨とする。この発明では、熱膨
張率の異なる複数の材料を通電によって熱膨張させるこ
とにより、熱膨張率の違いから補助部材の延出方向を調
整して、発電効率を調整できる。
【0018】請求項10に記載の発明では、ブレード本
体より後方に延出して、ブレード全体としてのキャンバ
ーが低速の風速において増加するように、また、風車の
回転面へのブレードの投影面積が増加するようにブレー
ド本体の後端部に取り付けて使用され、風速が高速にな
ると、その風力によりブレード全体としてのキャンバー
が前記ブレード本体だけの場合と同程度まで減少するよ
うに変形し、風力が下がると、再びブレード全体として
のキャンバーを増加する位置に戻ることを要旨とする。
この発明の補助部材をブレード本体に取り付けることに
より、低速の風速でのブレード全体としてのキャンバー
を増加して発電効率を向上できるとともに、高速の風速
での発電効率を確保して風車の過回転を防止できる。
【0019】
【発明の実施の形態】以下、本発明をプロペラ形風車を
備える風力発電装置に具体化した一実施の形態を図1〜
図4に従って説明する。
【0020】図1は風力発電装置の模式斜視図を示し、
図2はブレードの模式側面図を示す。図1に示すよう
に、風力発電装置11は、地面に固定された固定部12
から、金属製パイプからなる支柱13が立設されてい
る。支柱13の上端には、支柱13に対して回動可能な
支持ケース14が配置されている。支持ケース14の上
部には発電機16が取り付けられている。発電機16に
はロータ軸18が水平に延設され、ロータ軸18には、
風車20がロータ軸18と一体回転可能に取り付けられ
ている。支持ケース14には、風を受けることにより支
持ケース14を回動して風車20を常に風上方向に向け
るテールフィン14aが延設されている。
【0021】風車20には、ブレード21が3個、12
0°間隔で取り付けられている。風車20は、この実施
の形態では、図1において反時計方向(回転方向R)に
回転するように形成されている。ブレード21は、風車
20の回転方向側を前とし、風車20の回転方向と反対
側を後ろとする。また、ブレード21は、風を受ける側
を表とし、風を受ける側と反対側を裏とする。ブレード
21は、プロペラ翼であるブレード本体22の後端部に
補助部材23が取り付けられて構成されている。ブレー
ド本体22は、その長手方向に渡って一定断面に形成さ
れている。ブレード本体22は、そのキャンバーが裏側
に凸になるように風車20に取り付けられている。ブレ
ード本体22の形状は、風車のサイズ、ストール風速、
発電量等から決まる適切な形状に形成されている。ブレ
ード本体22は、この実施の形態では繊維強化プラスチ
ックで形成されている。
【0022】補助部材23は平板状であって、ブレード
本体22の裏面22aに沿ってブレード本体22の後方
に延出するようにブレード本体22に取り付けられてい
る。補助部材23は、ボルト24(図2に図示)が、ブ
レード本体22内の空洞に配置された図示しないナット
に螺合されてブレード本体22に取り付けられている。
補助部材23は、その裏面23aがブレード本体22の
裏面22aと滑らかに続くように、裏面23aの前端部
が斜面状に形成されている。
【0023】補助部材23は可撓性を有するように形成
されている。補助部材23は、この実施の形態では繊維
強化プラスチックによって形成されている。繊維強化プ
ラスチックは、例えばカーボン繊維強化プラスチックや
ボロン繊維強化プラスチック等が使用される。
【0024】次に、上記のように構成された風力発電装
置の作用について説明する。風が吹いている状態では、
テールフィン14aによって支持ケース14が回動さ
れ、風車20は風上方向に向けられる。補助部材23に
よりブレード21は、ロータ軸18を中心とする風車2
0の回転面S(図2参照)への投影面積がブレード本体
22だけの場合より増加されている。よって、風車20
は、補助部材23なしの場合より低速の風速で起動され
る。
【0025】図1に示すように、ブレード21において
ロータ軸18の回転中心からrの部分、即ち回転半径r
の部分は、回転半径rに比例する速度で、風車20の回
転面S内を回転する。図2に示すように、ブレード21
の回転速度の、回転半径rでの断面内の速度成分を移動
速度Urで示す。風速Wと移動速度Urとにより、ブレ
ード21の回転半径rの部分には、見かけ上、相対的な
風速Vrの風が吹いていることになる。この相対的な風
速Vrにより、ブレード21の回転半径rの部分には、
相対的な風速Vrに対して直交し、ブレード21におい
て表面22bから裏面22a側へ向かう力(揚力)Lr
が発生する。ブレード21全体の揚力は、揚力Lrの総
和である。揚力の回転方向成分により、ブレード21が
移動して風車20が回転する。
【0026】ブレード21全体としてのキャンバーは、
補助部材23がブレード21の裏面22aに沿って後方
に延出していることにより、補助部材23をつけていな
いブレード本体22だけの場合より大きくなっている。
キャンバーが大きくなったことにより、ブレード21の
揚力は、補助部材23がないブレード本体22だけの場
合に比べて増加される。揚力の増加により、風車20の
回転速度が増加し、発電機16の発電効率が向上され
る。
【0027】また、風速が高速になると相対的な風速V
rも高速になり、補助部材23は、その可撓性により撓
み、図2に二点鎖線で図示するように、相対的な風速V
rの方向に延びるような状態になる。補助部材23が撓
んでも、風車20の回転面Sへのブレード21の投影面
積はほとんど変化しない。しかし、補助部材23の撓み
により、ブレード21のキャンバーは、補助部材23を
つけていないブレード本体22だけの状態と同程度にま
で小さくなる。キャンバーの減少によって、ブレード2
1による揚力はブレード本体22だけの場合と同程度に
まで低減され、風車20の過回転が防止される。そし
て、ブレード本体22自体が変形する場合と異なり、発
電機16の発電効率が確保され、発電効率の著しい低下
が防止される。
【0028】また、高速の風速により撓んだ状態の補助
部材23は、風速が下がると再び裏面22aに沿って後
方に延びる状態に戻るため、ブレード21のキャンバー
が再び増加されて揚力が増加され、発電機16の発電効
率が向上される。
【0029】次に、本実施の形態の実験例について説明
するが、本発明はこれに限定されるものではない。図3
に示すように、風力発電装置11の前方に風洞装置31
を配置する。風洞装置31は、円筒形の風洞32を備
え、その上流側の開口部には送風機33が配設されてい
る。送風機33は、1秒当たりの回転数を駆動電流の周
波数に同期させることが可能になっており、インバータ
を備えた電源装置34により周波数を変化させることで
回転数を変化させて駆動できる。送風機33は、インバ
ータの周波数が60Hzのときに風速が11.0m/s
の風を出力するようになっており、例えば周波数が30
Hzのときの風速は、11.0×30/60=5.50
m/sである。風洞32の下流側の開口部には、整流板
35が備えられ、送り出す空気の流れを整流する。発電
機16には、その発電電圧を計測する電圧計36が接続
されている。
【0030】ブレード本体22は、その翼型がNACA
2412で、長さが150mm、幅(翼弦)が42m
m、厚みの最大値が5mmに形成されている。ブレード
本体22の径方向内側端部は、ロータ軸18から20m
mの位置に取り付けられている。補助部材23は真鍮製
で、厚みが0.01mmに形成され、その長さがブレー
ド21の長さとほぼ同じ長さに形成されている。補助部
材23は、ブレード21より後方に延出する延出量を以
下のように変化させて実験を行った。 (例1) 0mm(補助部材なし) (例2) 4mm (例3) 5mm (例4) 6mm (例5) 7mm (例6) 8mm (例7)10mm 例1〜例7のそれぞれで、停止状態の風車20に、風洞
装置31により送風して風車を起動(カットイン)させ
て、電源装置34の周波数を1Hzずつ上昇させて風速
を上げ、各風速に対する発電機16の発電電圧(V)を
電圧計36で計測した。表1に実験結果を示し、図4に
実験結果のグラフを示す。
【0031】なお、(例5)7mmと(例6)8mmの
場合はグラフの形が似ていたため、(例5)7mmの場
合だけグラフに図示した。また、表2には、(例1)補
助部材23なしの場合に対して補助部材23を取り付け
た場合の発電電圧の向上率(%)を表1に対応させて示
し、風速3.85m/s以下では、(例1)ではまだ風
車が起動されていないため、(例2)〜(例7)の発電
電圧(V)をそのまま示した。
【0032】
【表1】
【0033】
【表2】 表1、表2及び図4に示すように、補助部材23を取り
付けることにより、(例1)補助部材23なしの場合よ
り発電電圧を向上できた。(例2)4mmでは、発電電
圧を向上できたものの、延出量がより大きな他の場合よ
り発電電圧の向上率が小さかった。また、(例7)10
mmでは、(例4)6mm〜(例6)8mmより2m/
s程度低い風速で補助部材23が撓んだ。発電電圧の向
上率は、(例5)7mm及び(例6)8mmの場合に最
も大きかった。
【0034】また、カットイン風速(起動風速)は、
(例1)補助部材23なしの場合より、補助部材23を
設けた場合の方がより低速になり、(例5)7mmの場
合、3.30m/sで起動した。
【0035】この実験により、可撓性を備える適切な延
出量の補助部材23を取り付けることによって発電効率
を向上できるとともに、高速の風速で補助部材23が撓
み、発電効率を確保した状態で風車20の過回転を防止
できることがわかった。
【0036】この実施の形態によれば、以下のような効
果を有する。 (1) ブレード本体22の後端部に補助部材23を取
り付けることにより、ブレード21全体のキャンバーを
低速の風速において増加して発電効率を向上できる。ま
た、補助部材23により、ブレード21は風車20の回
転面Sへの投影面積が増加されているため、ブレード本
体22だけの場合より低速の風速で風車20を起動(カ
ットイン)できる。また、風速が高速になると、補助部
材23が風力によって撓むことにより、ブレード21の
キャンバーがブレード本体22だけの場合と同程度まで
減る。補助部材23が撓むものの、ブレード本体22は
変形しないため、ブレード本体22自体が変形する場合
と異なり、発電効率を確保して、風速が高速の時の風車
20の過回転を防止できる。よって、ストール風速をそ
のままにして、ストール風速以下の風速での発電性能を
向上できる。
【0037】(2) 補助部材23はブレード本体22
と分離可能になっている。よって、風車のサイズ、スト
ール風速、発電量などによって形状が予め決まっている
既存のブレードに補助部材23を後付けすることによ
り、既存のブレード自体は変化させずに、ブレード全体
としてのキャンバーを低速の風速において増加させて揚
力を向上し、発電効率を向上できる。従って、例えばヨ
ーロッパ等の比較的高速の風が常時吹く場所に対応する
ように設計されたブレードを日本等の比較的低速の風が
吹く場所で使用する場合でも、補助部材23を取り付け
ることにより充分な揚力を得て、発電効率を確保でき
る。
【0038】(3) 補助部材23は、ボルト24によ
ってブレード本体22に取り付けられているため、簡単
に取り付けできる。また、長期間の使用によって補助部
材23が変形した場合等には、簡単に取り外して交換で
きる。
【0039】(4) 補助部材23は、その裏面23a
の前端部が斜面状に形成されて、ブレード本体22の裏
面22aに沿って滑らかに取り付けられている。よっ
て、空気流れを滑らかにして、余計な揚力低下を防止で
きる。
【0040】(5) 補助部材23は、ブレード本体2
2の長手方向全体に渡って取り付けられている。よっ
て、ブレード本体22の長手方向全体に渡ってキャンバ
ーを増加できる。
【0041】なお、実施の形態は上記実施の形態に限定
されるものではなく、例えば以下のように変更してもよ
い。 ○ 図5(a)に示すように、ブレード本体22の後端
部に段部41を形成し、その段部41に補助部材23の
前端部を収容することにより、ブレード本体22の裏面
22aと、補助部材23の裏面23aとを面一にしても
よい。
【0042】○ 上記のように段部41を形成する場
合、図5(b)に示すように、補助部材23の側面に係
合凸部42を形成するとともに、ブレード本体22に対
応する係合溝43を形成し、係合凸部42を係合溝43
に係合し、ねじ44やボルト24で補助部材23をブレ
ード本体22に固定してもよい。
【0043】○ 図6(a)に示すように、ブレード本
体の後端部52を取り外し可能に形成し、後端部52
と、補助部材23とを一体成型してもよい。この一体成
型部54は、ボルト等でブレード本体の一体成型部54
より前の部分に取り付ける。例えば、補助部材23が長
期間の使用により変形したり破損して交換する際に、ブ
レード21を風力発電装置11に取り付けたままでは補
助部材23を交換しにくい場合には、ブレード21全体
を風力発電装置11から取り外して補助部材23を交換
する。しかし、この構成では、一体成型部54だけを交
換することにより、風力発電装置11からブレード21
全体を取り外さずに補助部材23を交換できるため、補
助部材23を交換しやすい。また、補助部材23が後端
部52と一体であるため、補助部材23の交換の際にか
かる時間を短くできる。
【0044】○ 上記のようにブレード本体の後端部5
2を取り外し可能に形成する場合、後端部52と補助部
材23とを一体成型せずに別々に形成し、補助部材23
をボルト24等で後端部52に取り付けてもよい。この
場合でも、後端部52を風力発電装置11から取り外し
て補助部材23を交換することにより、風力発電装置1
1からブレード21全体を取り外さすことなく補助部材
23を交換できるため、補助部材23を交換しやすい。
【0045】○ 補助部材は、例えば図6(b)に示す
補助部材55のように、ブレード本体22の長手方向に
複数取り付けてもよい。風車20に取り付けられた状態
におけるブレード本体22の径方向外側端部22cは、
ブレード本体22の径方向内側端部22dより、回転半
径が大きいため移動速度が速くなり、相対的な風速Vr
も速くなる。よって、径方向外側端部22c側の補助部
材55の方が、径方向内側端部22d側の補助部材55
より先に撓む。よって、回転半径の違いによる相対的な
風速の違いに対応して、回転半径が小さい径方向内側端
部22d側の補助部材55の変形を遅らせて、その分、
発電効率を向上できる。
【0046】○ 隣り合う補助部材55間の間隔は、径
方向外側の補助部材55が先に変形した場合でも、その
変形による空気流れの変化等が径方向内側の補助部材5
5に干渉しないような間隔を確保してあれば、なるべく
狭くするのが好ましい。
【0047】○ 補助部材55は、ブレード本体22の
長手方向に対して部分的に取り付けてもよい。この場
合、補助部材55は、少なくともブレード本体22の径
方向外側端部22cに取り付けるのが好ましい。径方向
外側端部22cは、ブレード21において回転半径が最
も大きくて相対的な風速が最も大きく、揚力の発生に最
も寄与する。よって、少なくとも径方向外側端部22c
に補助部材55を取り付けることにより、補助部材55
を径方向外側端部22cに取り付けずにブレード本体2
2の他の部分に取り付ける場合に比べて、効果的に発電
効率を向上できる。しかしながら、径方向外側端部22
cに補助部材55を取り付けず、ブレード本体22の他
の部分に補助部材55を取り付けても構わない。
【0048】○ 図6(b)に示すように、補助部材5
5には、熱膨張率の異なる複数の材料、例えばバイメタ
ル56を通電可能に取り付けてもよい。バイメタル56
に熱を与える電線57はブレード本体22内に配線す
る。この場合、電線57による通電によってバイメタル
56を熱膨張させることにより補助部材55の延出方向
を調整して、発電効率を調整できる。
【0049】○ 補助部材23は、その後端部を風上側
に曲げて、ブレード21全体のキャンバーをより大きく
してもよい。 ○ 補助部材23の後端部は、ブレード本体22だけの
場合よりブレード21全体のキャンバーを大きくする範
囲内で、風下側に多少曲げてもよい。
【0050】○ 補助部材23の裏面23aの前端部を
斜面状にせず、ブレード本体22の裏面22aと、補助
部材23の裏面23aとの接続部に多少の段があっても
構わない。しかし、空気流れを滑らかにして、余計な揚
力低下を防止するように、接続部は滑らかにするのが望
ましい。
【0051】○ ブレード本体22は、その径方向外側
端部22cが径方向内側より幅が狭くなるように形成
し、補助部材23もブレード本体22の形状に合うよう
に形成してもよい。
【0052】○ ブレード本体22は、繊維強化プラス
チックで形成されることに限られず、金属や木材等で形
成してもよいが、金属より軽量化でき強度を金属と同等
にできる繊維強化プラスチックで形成するのが望まし
い。
【0053】○ 補助部材23やブレード本体22を形
成する繊維強化プラスチックは、繊維をガラス繊維やポ
リアミド繊維とし、樹脂をナイロンやポリエステルとし
たものでもよい。また、補助部材23は、ゴムを雨等で
も劣化しないように処理したもので形成したり、超弾性
合金やアモルファス金属等で形成してもよい。
【0054】○ 補助部材は、可撓性を有するように形
成されることに限られない。例えば、撓まないように形
成した板を、ばね等の弾性部材でブレード21の後端部
に取り付け、低速の風速におけるキャンバーを大きくす
るように、また、風車の回転面Sへのブレードの投影面
積が増加するように、その板を後方に延出させてもよ
い。この場合でも、風車の回転面Sへの投影面積の増加
によりカットイン風速が低くなり、キャンバーの増加に
よって揚力が増加され、発電効率が低速の風速において
向上される。また、風速が高速になると、弾性部材が撓
んで板全体が相対的な風速の方向に延びてキャンバーが
ブレード本体22と同程度まで小さくなるため、発電効
率を確保した状態で、風車の過回転を防止できる。
【0055】○ ブレード本体22は、プロペラ翼に限
られず、例えばオランダ形風車等の平板状であってもよ
く、この平板状のブレード本体の後端部に補助部材を取
り付けてもよい。
【0056】○ 補助部材23はブレード本体22と一
体に形成してもよい。 ○ 風車のブレード数は3枚に限られない。 上記各実施の形態から把握できる技術的思想について、
以下に追記する。
【0057】(1) 請求項5に記載の発明において、
前記ブレード本体の後端部には、前記補助部材を取り付
けるための段部が形成され、前記補助部材は、その裏面
が前記ブレード本体の裏面と面一になるように、前記段
部に取り付けられている。
【0058】(2) 請求項6に記載の発明において、
隣り合う前記補助部材間は所定の間隔で配置されてい
る。 (3) 技術的思想(2)に記載の発明において、前記
所定の間隔は、径方向外側の補助部材の変形による空気
流れの変化等が径方向内側の補助部材に干渉しない間隔
である。
【0059】(4) 請求項1〜請求項9及び技術的思
想(1)〜(3)のいずれか一項に記載の発明におい
て、前記補助部材が前記ブレード本体に取り付けられた
状態で、前記ブレード本体より後方に延出する延出量
は、前記ブレード本体の幅の20%以下である。
【0060】(5) 請求項1〜請求項9及び技術的思
想(1)〜(4)のいずれか一項に記載のブレードを備
える風力発電装置。
【0061】
【発明の効果】以上詳述したように、請求項1〜請求項
10に記載の発明によれば、低速の風速での発電効率を
向上できるとともに、高速の風速での発電効率を確保し
て風車の過回転を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 風力発電装置の模式斜視図。
【図2】 ブレードの模式側面図。
【図3】 実験装置の模式図。
【図4】 実験結果を示すグラフ。
【図5】 (a)は別例の模式斜視図、(b)は他の別
例の模式分解斜視図。
【図6】 (a)は他の別例の模式断面図、(b)は他
の別例の模式斜視図。
【図7】 従来の風力発電装置の斜視図。
【符号の説明】
11…風力発電装置、20…風車、21…ブレード、2
2…ブレード本体、22a…裏面、22c…ブレード本
体の径方向外側端部、23,55…補助部材、23a…
裏面、52…後端部、54…一体成型部。

Claims (10)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ブレード本体の後端部に、ブレード本体
    より後方に延出する補助部材を、ブレード全体としての
    キャンバーが低速の風速において増加するように、ま
    た、風車の回転面へのブレードの投影面積が増加するよ
    うに備え、前記補助部材は、風速が高速になると、その
    風力によりブレード全体としてのキャンバーが前記ブレ
    ード本体だけの場合と同程度まで減少するように変形
    し、風力が下がると、再びブレード全体としてのキャン
    バーを増加する位置に戻ることを特徴とする風力発電装
    置のブレード。
  2. 【請求項2】 前記ブレード本体は、風車のサイズ、ス
    トール風速、発電量等から決まる適切な形状に形成され
    ており、前記補助部材は、前記ブレード本体と分離可能
    なことを特徴とする請求項1に記載の風力発電装置のブ
    レード。
  3. 【請求項3】 前記ブレード本体は、その後端部が取り
    外し可能に形成されていることを特徴とする請求項1に
    記載の風力発電装置のブレード。
  4. 【請求項4】 前記ブレード本体の後端部及び補助部材
    が一体成型されていることを特徴とする請求項3に記載
    の風力発電装置のブレード。
  5. 【請求項5】 前記補助部材の裏面が、前記ブレード本
    体の裏面に沿って滑らかに備えられていることを特徴と
    する請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の風力発
    電装置のブレード。
  6. 【請求項6】 前記補助部材が、前記ブレード本体の長
    手方向に複数取り付けられていることを特徴とする請求
    項1〜請求項5のいずれか一項に記載の風力発電装置の
    ブレード。
  7. 【請求項7】 前記補助部材が、前記ブレード本体の長
    手方向全体に渡って取り付けられていることを特徴とす
    る請求項1〜請求項6のいずれか一項に記載の風力発電
    装置のブレード。
  8. 【請求項8】 前記補助部材の長さが前記ブレード本体
    の長さより短く、前記補助部材は、前記ブレード本体が
    風車に取り付けられた状態における少なくとも径方向外
    側端部に備えられていることを特徴とする請求項1〜請
    求項6のいずれか一項に記載の風力発電装置のブレー
    ド。
  9. 【請求項9】 前記補助部材に、熱膨張率の異なる複数
    の材料が通電可能に取り付けられていることを特徴とす
    る請求項1〜請求項8のいずれか一項に記載の風力発電
    装置のブレード。
  10. 【請求項10】 ブレード本体より後方に延出して、ブ
    レード全体としてのキャンバーが低速の風速において増
    加するように、また、風車の回転面へのブレードの投影
    面積が増加するようにブレード本体の後端部に取り付け
    て使用され、風速が高速になると、その風力によりブレ
    ード全体としてのキャンバーが前記ブレード本体だけの
    場合と同程度まで減少するように変形し、風力が下がる
    と、再びブレード全体としてのキャンバーを増加する位
    置に戻ることを特徴とする補助部材。
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