JP5479388B2 - 風車翼およびこれを備えた風力発電装置 - Google Patents

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Description

本発明は、風車翼およびこれを備えた風力発電装置に関するものである。
近年、発電時に温室効果ガスを排出しないクリーンエネルギーとして、風力発電装置が注目されている。風力発電装置は、風力によって風車翼を軸周りに回転させ、この回転力を電力に変換して発電出力を得る。
風力発電装置の発電出力は、軸端出力(翼が発生する出力)と、変換効率(軸受や発電機などの効率)との積で表される。また、軸端出力は次式で表され、翼効率が高く、翼直径が大きい翼であれば、発電量が向上する。
軸端出力=1/2×空気密度×風速^3×翼効率×π×(翼直径/2)^2
翼効率は、理論上の上限値(ベッツ限界=0.593)が存在し、実際上は風車後流の影響と翼の空気抵抗の存在で上限値は0.5程度となる。したがって、翼効率のこれ以上の大幅な改善は難しい。
一方、翼直径はその自乗で出力に影響を持つため、発電量向上のためには翼直径の拡大が効果的である。しかし、翼直径の拡大は、空力荷重(流入方向に作用するスラスト力および翼根に伝わるモーメント)の増大に繋がるため、ロータヘッド、ナセル、タワーなどの機器の大型化や重量増大、ひいてはコスト増に繋がる懸念・傾向がある。さらに、翼直径の拡大は、翼先端における周速の増大によって空力騒音の増加に繋がる。したがって、翼直径を拡大せずに、性能向上および騒音低下を実現する空力技術が求められる。
一般に、風車翼は、所定の周速比に対して所定の最適コード長を持ち、次式の関係がある(Wind Energy Handbook, John Wiley & Sons, p378)。
Copt/R×λ×CLdesign×r/R≒16/9×π/n ・・・(1)
ここで、Coptは最適コード長,R(翼半径)は翼直径の2分の1,λは設計周速比,CLdesignは設計揚力係数,rは翼断面の半径位置,nは翼枚数である。
設計周速比は、翼端周速/無限上流風速である。設計揚力係数は、翼型(翼断面)の揚抗比(揚力/抗力)が最大となる迎角における揚力係数であり、翼型(翼断面)の(空力)形状と流入条件(レイノルズ数)によって決まる。
図13には、本明細書にて用いるレイノルズ数の定義が示されている。同図に示されているように、風車におけるレイノルズ数は、所定の回転数で回転する翼の所定断面A−Aにおける相対風速度を考慮したものであり、下式にて表される。
レイノルズ数=空気密度×翼断面への相対風速度×翼断面のコード長/空気の粘性係数
下記特許文献1には、風車出力向上のための翼型が開示されている。具体的には、翼厚比が14%から45%の範囲で設計揚力係数が1.10〜1.25の範囲とされた翼型が開示されている(請求項1参照)。
欧州特許出願公開第1152148号明細書
図14には、上式(1)の関係が示されている。同図において、横軸は無次元半径、縦軸は無次元コード長を示す。無次元半径は、回転中心からの翼断面の半径位置rを翼半径Rで除した値(r/R)である。無次元コード長は、翼断面のコード長cを翼半径Rで除した値(c/R)である。
同図には、上式(1)から得られる設計揚力係数CLdesignが一定とされた曲線が複数示されている。設計揚力係数CLdesignが一定の曲線は、上式(1)を満たすので、空力特性の観点から、その設計周速比における最適コード長(縦軸)を与える。なお、同図では、設計周速比が8.0以上8.5以下、レイノルズ数が300万以上1000万以下とされている。
このように、「半径位置と設計周速比が定まれば性能最適となる最適コード長(無次元)が式(1)によって与えられる。」、または、「半径位置と設計コード長を定めれば、翼型(翼断面)の性能最適となる設計揚力係数が式(1)によって与えられる。」ということが導かれる。例えば、無次元半径r/R=0.6となる位置では、無次元コード長c/R=0.04が性能最適となる設計揚力係数は1.15である。
図15には、上式(1)によって導かれる最適なコード長分布と実際のコード長分布(太線)を示す。翼先端領域では、実際のコード長は0(ゼロ)に漸近するため、最適なコード長と実際のコード長の乖離が大きくならざるを得ず、効率損失が発生することになる。
そこで、翼先端領域において空力性能を向上させ、かつ、空力騒音を低減するための空力設計技術が求められる。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、翼先端領域における空力性能を向上させるとともに空力騒音を低減することができる風車翼およびこれを備えた風力発電装置を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明の風車翼およびこれを備えた風力発電装置は以下の手段を採用する。
すなわち、本発明にかかる風車翼は、翼根側から翼先端側にかけてコード長が減少する翼本体部を備え、該翼本体部は、半径位置を翼半径(翼直径の1/2)で除した無次元半径位置が0.6以上1.0以下とされた翼先端領域と、無次元半径位置が0.6未満とされた翼本体側領域とを有し、該翼先端領域の翼断面における最大翼厚位置が、前記翼本体側領域の翼断面における最大翼厚位置よりも翼前縁側に位置されていることを特徴とする。
本発明者は、数値シミュレーションにより、翼断面における最大翼厚位置を種々変化させて性能を検討した。その結果、最大翼厚位置が翼前縁側に位置するほど、設計揚力係数および最大揚抗比が増大することによって空力性能が向上し、境界層厚さ(排除厚さ)が減少することによって騒音が減少することが分かった。
一方、最大翼厚位置を前方に配置すると、相対的に翼後縁の厚さが薄くなり、風車翼に加わる荷重によって生じるエッジモーメントに対して、翼後縁強度が低下してしまう。
これに対して、本発明では、翼根側を中心として回転する風車翼の場合には、翼先端側では翼根側に比べてエッジモーメントが小さく、最大翼厚位置が前方に配置されていても翼後縁付近の強度は大きな問題にならないことに着目した。
そこで、無次元半径位置が0.6以上1.0以下とされた翼先端領域の最大翼厚位置を、無次元半径位置が0.6未満とされた翼本体側領域の最大翼厚位置よりも翼前縁側に位置することとした。これにより、翼先端領域の空力性能を向上させるとともに、最も周速が大きく騒音の主要因となる翼先端領域の空力騒音を効果的に低減することができる。
さらに、本発明の風車翼では、前記翼先端領域にて、最大翼厚位置が翼先端に向かって翼前縁側に変位されていることを特徴とする。
コード長が小さくなり翼本体側領域と同一の翼断面を維持できずに設計揚力係数を低下させざるを得ない翼先端付近であっても、最大翼厚位置を翼先端側ほど翼前縁側に変位(シフト)させることによって、設計揚力係数および最大揚抗比を増大させて空力性能を向上させることができる。同時に、周速が大きくなり騒音が大きくなる翼先端側ほど効果的に空力騒音を低下させることができる。
さらに、先端領域では、無次元半径位置が0.6以上0.9以下の領域で、最大翼厚位置が25%コード長以上40%コード長以下とされ、無次元半径位置が1.0とされた位置で、最大翼厚位置が10%コード長以上30%コード長以下とされていることが好ましい。
さらに、無次元半径位置が0.7以上0.85以下の領域で、最大翼厚位置が26%コード長以上36%コード長以下とされ、無次元半径位置が1.0とされた位置で、最大翼厚位置が20%コード長以上30%コード長以下とされていることが好ましい。
さらに、本発明の風車翼では、前記翼先端領域は、各半径位置の翼断面における最大翼厚位置を半径方向に接続して形成される最大翼厚線が略直線状となるように、翼前縁が翼後縁側に変位していることを特徴とする。
最大翼厚位置には、風車翼の強度を主として負担する桁が半径方向に延在して設けられる。したがって、各半径位置の翼断面における最大翼厚位置を半径方向に接続して形成される最大翼厚線は半径方向に略直線状となるように位置していることが好ましい。
本発明では、翼先端領域において翼本体側領域よりも最大翼厚位置を翼前縁側に位置させる場合であっても、翼前縁を翼後縁側に変位させることによって、最大翼厚線を半径方向に略直線状に維持することができる。
本発明の風車翼の翼前縁形状は、例えば、風車翼を背側または腹側から平面視した場合、翼本体部側領域から翼先端領域に遷移する領域で翼後縁側に大きく変位し、その後、翼先端側に向かって緩やかに翼後縁側に変位し、最終的に翼先端に接続されるように翼後縁側に変位するような、いわゆるS字形状となる。
また、本発明のように翼前縁を翼後縁側に変位させると(特にS字形状とすると)、翼後縁が丸みを帯びてより大きな曲率を有する形状とすることができる。これにより、翼先端領域の翼後縁から発生する空力騒音の位相を翼半径方向にずらすことができ、さらに騒音低減を図ることができる。
さらに、本発明の風車翼では、翼先端における断面形状が対称翼型とされていることを特徴とする。
翼先端における断面形状を対称翼型とし、すなわちキャンバーが0とされた翼型とすることとした。これにより、翼厚が薄く複雑な形状の製造が困難な翼先端側であっても製造が容易となる。
好ましくは、翼先端領域の翼先端側では、翼先端でキャンバーが0になるように、翼先端に向かってキャンバーが0に漸近する翼型とされている。
また、本発明の風力発電装置は、上記のいずれかに記載された風車翼と、該風車翼の翼根側に接続され、該風車翼によって回転させられるロータと、該ロータによって得られた回転力を電気出力に変換する発電機とを備えていることを特徴とする。
上述した風車翼を備えているので、空力性能向上によって出力が増大し、空力騒音が低減された風力発電装置を提供することができる。
本発明によれば、翼先端領域の最大翼厚位置を、翼本体側領域の最大翼厚位置よりも翼前縁側に位置することとしたので、翼先端領域の空力性能を向上させるとともに、翼先端領域の空力騒音を効果的に低減することができる。
風車翼の代表的形状を示した斜視図である。 図1の各翼厚比における断面を示した図である。 図1の各翼厚比における翼型を示した図である。 本発明の一実施形態にかかる翼形状を示した平面図である。 各半径位置における最大翼厚位置を示した翼断面図である。 最大翼厚位置に対する設計揚力係数を示したグラフである。 最大翼厚位置に対する最大揚抗比を示したグラフである。 最大翼厚位置に対する境界層厚さ(排除厚さ)を示したグラフである。 本発明の第2実施形態にかかる風車翼の各半径位置における最大翼厚位置を示した翼断面図である。 本発明の第2実施形態にかかる風車翼の先端領域を示した平面図である。 従来の風車翼を示した平面図である。 比較例としての風車翼の先端領域を示した平面図である。 レイノルズ数の定義を示した説明図である。 設計揚力係数の分布を無次元半径に対して示した図である。 図13に実際のコード長分布を示した図である。
以下に、本発明の風車翼およびこれを備えた風力発電装置にかかる実施形態について、図面を参照して説明する。
[第1実施形態]
第1実施形態にかかる風車翼は、風力発電装置の翼として好適に用いられる。風車翼は、例えば3枚設けられ、それぞれが約120°の間隔を有してロータに接続されている。好ましくは、風車翼の回転直径(翼直径)は60m以上とされ、ソリディティ(全翼投影面積/翼掃過面積)が0.2以上0.6以下の細長翼とされる。風車翼は、可変ピッチとされていても良いし、固定ピッチとされていても良い。
図1に示すように、風車翼1は三次元翼とされており、回転中心側である翼根側1aから翼先端側1bに向かって延在している。
翼形状を定義する場合、同図に示されているように、各翼厚比(翼厚の最大値をコード長で除した値の百分率)の半径位置(翼の回転中心からの距離に相当する位置)においてZ(翼の長手軸方向)=一定の断面で切断した翼素断面を用いて表される。図1では、翼厚比が18%,21%,24%,30%,36%,42%の各半径位置にて切断した翼素断面が風車翼の形状の定義として用いられることが示されている。なお、風車翼1の半径位置を示す場合に、翼厚比に代えて、翼の回転中心からの距離に相当する半径位置r(あるいは半径位置を翼半径で除した無次元半径位置r/R)が用いられることもある。
図2には、図1の翼素断面をXY平面(Z軸に直交する平面)へ投影したものである。同図のように風車翼1の長手方向先端から見た場合、右側が翼前縁、左側が翼後縁となる。同図に示されているように、風車翼は、翼根側から翼先端側にかけてコード長が減少する形状となっている。
図3は、風車翼1の各翼厚比における翼素断面に対して、その翼前縁をX=0,Y=0、翼後縁をX=1,Y=0で正規化したものである。同図のように表された形状を翼型という。
図4に示すように、本実施形態の風車翼1は、半径位置rを翼半径R(翼直径の1/2)で除した無次元半径位置r/Rが0.6以上1.0以下とされた翼先端領域3と、無次元半径位置が0.6未満とされた翼本体側領域5とを有している。そして、翼先端領域5の翼断面における最大翼厚位置が、前記翼本体側領域7の翼断面における最大翼厚位置よりも翼前縁9側に位置されている。
具体的には、図5に示した各翼断面に示すように、翼前縁のコード長位置を0%コード長および翼後縁のコード長位置を100%コード長とした場合、翼根側から翼先端側に向かって、最大翼厚位置が例えば40%コード長から、36%コード長、30%コード長、24%コード長、20%コード長といったように翼前縁側に変位(シフト)している。なお、同図において線分L1が最大翼厚位置を示している。同図に示した風車翼の場合には、翼本体側領域5における最大翼厚位置は40%コード長以上とされる。
同図に示したように、最大翼厚位置が翼先端7(図4参照)に向かって翼前縁9側に漸次変位されていることが好ましい。
好ましくは、翼先端領域3における最大翼厚位置は、無次元半径位置が0.6以上0.9以下の領域で、25%コード長以上40%コード長以下とされ、無次元半径位置が1.0とされた位置(すなわち翼先端7の位置)で、10%コード長以上30%コード長以下とされている。
さらに好ましくは、翼先端領域3における最大翼厚位置は、無次元半径位置が0.7以上0.85以下の領域で、26%コード長以上36%コード長以下とされ、無次元半径位置が1.0とされた位置で、20%コード長以上30%コード長以下とされている。
また、翼先端7では、対称翼型が採用されている。すなわちキャンバーが0とされた翼型とされている。これにより、翼厚が薄く複雑な形状の製造が困難な翼先端側であっても製造が容易となる。
好ましくは、翼先端領域3の翼先端7側では、翼先端7でキャンバーが0になるように、翼先端7に向かってキャンバーが0に漸近する翼型とされている。
次に、本実施形態のように、翼先端領域3の最大翼厚位置を、翼本体部側領域5の最大翼厚位置よりも翼前縁9側に位置させることとした理由について説明する。
図6乃至図8には、最大翼厚位置を24%コード長から36%コード長まで変化させた場合の翼型について数値シミュレーションを行った結果が示されている。数値シミュレーションの条件としては、設計周速比を8.0以上8.5以下、レイノルズ数を300万以上1000万以下とした。
これらの図から分かるように、翼先端領域3の最大翼厚位置を、翼本体部側領域5の最大翼厚位置よりも翼前縁9側に位置させると、設計揚力係数および最大揚抗比が増大することによって空力性能が向上し、境界層厚さ(排除厚さ)が減少することによって騒音が減少することが分かる。
以上の通り、本実施形態によれば以下の作用効果を奏する。
数値シミュレーションにより、翼断面における最大翼厚位置を種々変化させて性能を検討した結果、最大翼厚位置が翼前縁9側に位置するほど、設計揚力係数および最大揚抗比が増大することによって空力性能が向上し、境界層厚さ(排除厚さ)が減少することによって騒音が減少することが分かった。
一方、最大翼厚位置を翼前縁9側に配置すると、相対的に翼後縁11の厚さが薄くなり、風車翼1に加わる荷重によって生じるエッジモーメントに対して、翼後縁11の強度が低下してしまうおそれがある。
これに対して、本実施形態では、翼先端7側では翼根側に比べてエッジモーメントが小さく、最大翼厚位置が翼前縁9側に配置されていても翼後縁11付近の強度は大きな問題にならないことに着目した。
そこで、本実施形態では、翼先端領域3の最大翼厚位置を、翼本体側領域5の最大翼厚位置よりも翼前縁9側に位置することとした。これにより、翼先端領域3の空力性能を向上させるとともに、最も周速が大きく騒音の主要因となる翼先端領域の空力騒音を効果的に低減することができる。
また、コード長が小さくなり翼本体側領域5と同一の翼断面を維持できずに設計揚力係数を低下させざるを得ない翼先端7付近であっても、最大翼厚位置を翼先端7側ほど翼前縁9側に変位(シフト)させることによって、設計揚力係数および最大揚抗比を増大させて空力性能を向上させることができる。同時に、周速が大きくなり騒音が大きくなる翼先端7側ほど効果的に空力騒音を低下させることができる。
また、風車翼の翼根側に接続され、風車翼によって回転させられるロータと、ロータによって得られた回転力を電気出力に変換する発電機とを備えた風力発電装置に対して、本実施形態にかかる風車翼1を適用することにより、空力性能向上によって出力が増大し、空力騒音が低減された風力発電装置を実現することができる。
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態について説明する。本実施形態は、第1実施形態に対して、各半径位置の翼断面における最大翼厚位置を翼半径方向に接続して形成される最大翼厚線を、翼先端領域3の翼前縁9の形状によって適正化する点が異なり、その他の点、すなわち翼先端領域の最大翼厚位置を翼本体部側領域の最大翼厚位置よりも翼前縁側に位置させる点等については同様である。したがって、以下では相違点について説明し、同様の点については説明を省略する。
図9には、本実施形態に係る風車翼の各半径位置における最大翼厚位置が示されている。同図における線分L2は、最大翼厚位置を示す。この最大翼厚位置は、各半径位置において、翼回転中心からみて同じ角度位置となるように配置されている。これは、同図に示されているように、翼先端側に行くにつれて翼前縁9を翼後縁11側に変位させることによって実現されている。これにより、各半径位置の翼断面における最大翼厚位置を半径方向に接続して形成される最大翼厚線が風車翼の半径方向に略直線状となるように配置されている。
図10には、図9のように翼前縁9を翼後縁11側に変位させることによって、略直線状となった最大翼厚線13が示されている。翼先端領域3における翼前縁9は、同図に示されているように、翼本体部側領域5から翼先端領域3に遷移する遷移領域15で翼後縁11側に大きく変位し、遷移領域15に接続された接続領域16で翼先端7側に向かって緩やかに翼後縁側に変位し、接続領域16に接続された終端領域17で最終的に翼先端7に接続されるように翼後縁11側に変位するような、いわゆるS字形状とされている。
このように、最大翼厚線13を半径方向に略直線状に延在させることによって、以下の作用効果を奏する。
一般に、最大翼厚位置には、風車翼の強度を主として負担する桁が半径方向に延在して設けられる。例えば、図11に示すように、従来の風車翼では、最大翼厚線13’は半径方向に直線状に形成されている。直線状の桁とすることによって、製造が容易となるからである。同図では、翼先端領域においても翼本体部側領域と同じ最大翼厚位置となっている。
しかし、第1実施形態で説明したように、翼先端領域3の最大翼厚位置を、翼本体部側領域5の最大翼厚位置よりも翼前縁9側に位置させた場合、図11と同様の翼前縁形状および翼後縁形状を採用しようとすると、図12に示すように、翼先端領域3において最大翼厚線13”が直線形状を維持することができず曲線状となってしまう。
そこで、本実施形態では、翼前縁9を翼後縁11側に変位させることによって最大翼厚線13を略直線状とすることとした(図10参照)。これにより、略直線状の桁を採用することができ、製造が容易となる。また、着雷点となるレセプタを最大翼厚位置に配置する場合にも、略直線状にレセプタを配置すればよいので、製造が容易となる。
また、図10に示されているように、本実施形態のように翼先端領域3における翼前縁9を翼後縁11側に変位させると(特に翼前縁9をS字形状とすると)、翼後縁11が丸みを帯びてより大きな曲率を有する形状とすることができる(同図の領域19参照)。これにより、翼先端領域3の翼後縁11から発生する空力騒音の位相を翼半径方向にずらすことができ、さらに騒音低減を図ることができる。
なお、本実施形態では、設計周速比を8.0以上8.5以下としたが、本発明はこれに限定されず、例えば設計周速比が6.0以上9.0以下であっても適用することができる。
1 風車翼
1a 翼根側
1b 翼先端側
3 翼先端領域
5 翼本体側領域
7 翼先端
9 翼前縁
11 翼後縁
13 最大翼厚線

Claims (7)

  1. 翼根側から翼先端側にかけてコード長が減少する翼本体部を備え、
    該翼本体部は、半径位置を翼半径(翼直径の1/2)で除した無次元半径位置が0.6以上1.0以下とされた翼先端領域と、無次元半径位置が0.6未満とされた翼本体側領域とを有し、
    該翼先端領域の翼断面における最大翼厚位置が、前記翼本体側領域の翼断面における最大翼厚位置よりも翼前縁側に位置されていることを特徴とする風車翼。
  2. 前記翼先端領域にて、最大翼厚位置が翼先端に向かって翼前縁側に変位されていることを特徴とする請求項1に記載の風車翼。
  3. 翼前縁のコード長位置を0%コード長および翼後縁のコード長位置を100%コード長とした場合、
    無次元半径位置が0.6以上0.9以下の領域で、最大翼厚位置が25%コード長以上40%コード長以下とされ、
    無次元半径位置が1.0とされた位置で、最大翼厚位置が10%コード長以上30%コード長以下とされていることを特徴とする請求項2に記載の風車翼。
  4. 無次元半径位置が0.7以上0.85以下の領域で、最大翼厚位置が26%コード長以上36%コード長以下とされ、
    無次元半径位置が1.0とされた位置で、最大翼厚位置が20%コード長以上30%コード長以下とされていることを特徴とする請求項3に記載の風車翼。
  5. 前記翼先端領域は、各半径位置の翼断面における最大翼厚位置を半径方向に接続して形成される最大翼厚線が略直線状となるように、翼前縁が翼後縁側に変位していることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の風車翼。
  6. 翼先端における断面形状が対称翼型とされていることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の風車翼。
  7. 請求項1から6のいずれかに記載された風車翼と、
    該風車翼の翼根側に接続され、該風車翼によって回転させられるロータと、
    該ロータによって得られた回転力を電気出力に変換する発電機と、
    を備えていることを特徴とする風力発電装置。
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