JP2003268483A - ばね用鋼線材およびその製造方法 - Google Patents

ばね用鋼線材およびその製造方法

Info

Publication number
JP2003268483A
JP2003268483A JP2002064248A JP2002064248A JP2003268483A JP 2003268483 A JP2003268483 A JP 2003268483A JP 2002064248 A JP2002064248 A JP 2002064248A JP 2002064248 A JP2002064248 A JP 2002064248A JP 2003268483 A JP2003268483 A JP 2003268483A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
decarburized layer
steel wire
heating
steel
depth
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP2002064248A
Other languages
English (en)
Other versions
JP4031267B2 (ja
Inventor
Masahiro Nomura
正裕 野村
Hiroshi Kako
浩 家口
Masao Toyama
雅雄 外山
Hiroyuki Tomiyama
浩行 富山
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Kobe Steel Ltd
Original Assignee
Kobe Steel Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Kobe Steel Ltd filed Critical Kobe Steel Ltd
Priority to JP2002064248A priority Critical patent/JP4031267B2/ja
Publication of JP2003268483A publication Critical patent/JP2003268483A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP4031267B2 publication Critical patent/JP4031267B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Fee Related legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Heat Treatment Of Strip Materials And Filament Materials (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】 フェライト脱炭層および全脱炭層の発生を併
せて十分に抑制することのできたばね用鋼線材を提供す
る。 【解決手段】 熱間圧延に際して1170℃以上で少な
くとも2分間鋼材を加熱し、かつ圧延後の750〜60
0℃温度域を平均冷却速度5〜300℃/分で冷却する
工程および脱スケーリング工程を製造工程に含むように
する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ばね用鋼線材およ
びその製造方法に関し、特に、熱処理および熱間圧延等
の加熱時に生ずるフェライト脱炭層と全脱炭層を併せて
著しく低減し、疲労特性等の改善されたばね用鋼線材
と、該鋼線材を製造するのに有用な方法に関するもので
ある。
【0002】
【従来の技術】熱処理工程や熱間加工工程で鋼材を加熱
すると、鋼材中の炭素が二酸化炭素等のガスとなって鋼
材表面から抜ける脱炭現象が生じる。この脱炭層には、
炭素をほとんど含まないフェライト組織のみの領域を指
す「フェライト脱炭層」と、鋼材中心よりもフェライト
の占める割合の多い領域を指す「全脱炭層」がある(以
下では、前記フェライト脱炭層および全脱炭層を併せて
単に「脱炭層」ということがある)。
【0003】ばね用鋼は、フェライトを形成し易い高S
i量の鋼材であるため脱炭層が生じ易く、脱炭層が形成
された場合には、炭素が低減した分強度が低下して、ば
ねに要求される疲労強度等の特性が著しく劣化すること
が一般に知られている。従って、ばねの製造に用いる鋼
線材として、前記脱炭層の発生が極力抑制されたものが
求められる。
【0004】前記脱炭層のうち、疲労特性等のばねの特
性に著しい悪影響を及ぼすフェライト脱炭層の発生防止
については、従来より検討がなされており、特公昭60
−37853号では、熱間圧延の際に脱炭層が形成され
易い600〜750℃温度域を、急速加熱することが提
案されている。また、特公昭58−14875号や特開
平57−82428号には、圧延後の冷却速度を制御、
具体的には冷却速度を速めることによってフェライト脱
炭層を抑制する技術が開示されている。更に特公昭63
−37164号には、熱間圧延に先立って1050℃超
〜1250℃で予備加熱することによりフェライト脱炭
層の発生を防止することが提案されている。
【0005】しかしながら、最近では更に過酷な条件に
も耐えるばねが求められ、該ばねの原料素材となる鋼線
材には、より一層優れた疲労特性等の特性が要求される
ことから、フェライト脱炭層のみならず全脱炭層も対象
に含めて、脱炭層の発生を抑制することが望まれる。前
掲の従来技術は、いずれもフェライト脱炭層の発生を抑
制または防止するには有効であるものの、全脱炭層を抑
制するまでには至っておらず更なる改善が求められる。
【0006】また、前記特公昭60−37853号公報
に開示された方法では、熱延時の加熱速度が速すぎるた
め、大量の鋼材を工業規模の連続炉で加熱処理する場合
に、全ての鋼材が規定要件を満たすように操業すること
は容易でなく、実用にそぐわない。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、この様な事
情に鑑みてなされたものであって、その目的は、加熱工
程で発生するフェライト脱炭層は勿論のこと、全脱炭層
も可及的に抑制されたばね用鋼線材を提供すると共に、
その様な鋼線材を製造するのに有用な方法を提供するこ
とにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明にかかるばね用鋼
線材とは、Si:1質量%以上を含み、かつ鋼線材表面
から20μm深さまでの平均炭素濃度が該鋼線材全体の
平均炭素濃度の30%以上で、フェライト脱炭層が実質
的に存在せず、全脱炭層深さが40μm未満であるとこ
ろに特徴を有する。また本発明の製造方法は、上記特性
を備えた鋼線材を効率よく製造することのできる方法と
して位置付けられるもので、熱間圧延前の加熱工程で、
酸化性雰囲気下にて1170℃以上で少なくとも2分間
加熱し、かつ圧延後750〜600℃の温度域を平均冷
却速度5〜300℃/分で冷却する工程、および加熱工
程後であって熱間圧延前に行う脱スケーリング工程を一
連の製造工程に含むものである。
【0009】尚、前記「鋼線材表面から20μm深さ」
および「全脱炭層深さ」は、スケール除去後の鋼線材表
面からの深さをいい、前記「フェライト脱炭層が実質的
に存在せず」とは、JIS G 0558に規定された顕
微鏡による測定法でDM−Fが10μm以下となること
をいうものとする。
【0010】
【発明の実施の形態】本発明者らは、前述した様な状況
の下で、加熱工程でばね用鋼線材表面に生じるフェライ
ト脱炭層はもとより全脱炭層についても十分に抑制すべ
く、様々な角度から検討を行った。その結果、熱間圧延
前の加熱条件と圧延後の冷却条件を適切に制御し、加熱
後であって熱間圧延前に表面のスケールを除去すればよ
いことを見出し、前記本発明に想到した。以下、本発明
に係るばね用鋼線材とその製造方法について詳細の説明
していく。
【0011】まず、ばね用鋼線材表面のフェライト脱炭
層のみならず、全脱炭層も可及的に低減するための製法
上の要件について述べる。
【0012】<熱間圧延時の加熱条件>熱間圧延に際し
酸化性雰囲気下にて1170℃以上で少なくとも2分間
の加熱を必要とする。一般に鋼材を加熱すると、鋼材表
面には、鋼材中の炭素が二酸化炭素等のガスとなって抜
けることにより脱炭層が形成されると共に、鉄素地のF
eが酸化されてスケールが形成される。特に、Si含有
量が1質量%以上であるばね用鋼材では、後述する実施
例でも明らかにする様に大気中で1170℃以上に加熱
すると、前記鉄素地の酸化が急速に進行する。そしてこ
の酸化が、脱炭層を侵食してより深部まで進行するの
で、その後にスケールを除去することで、脱炭層域を著
しく低減もしくは実質的にゼロにできるのである。本発
明では、製造時の加熱工程で脱炭層よりも深部側まで酸
化を進めてスケールを形成させ、その後に該スケールを
除去することで、脱スケール後の鋼線材表面の脱炭層を
著しく低減または実質的にゼロとする。尚、本発明でい
う「酸化性雰囲気」は大気中であればよいが、その他、
例えば不活性ガス中に酸素を一部導入した状態等を含む
ものとする。
【0013】図1は、ばね用線材(SUP7鋼、線径1
5mm)を図2に示す工程で熱処理を行った後の表層部
分を含む鋼材断面写真(倍率は2写真ともに50倍)で
あり、図1(a)は図2中のT2温度を1150℃と
し、図1(b)は図2中のT2温度を1200℃にして
熱処理を施したものである。
【0014】図1(a)からも明らかな様に、加熱時の
最高温度が1170℃に満たない場合には、鋼材の最表
層に薄くスケール層が形成されるのみで、該スケール層
の直下には厚い脱炭層(白地)が形成される。従って、
その後の脱スケール処理工程で当該スケール層を除去し
たとしても、その下層側に相当厚さの脱炭層が残存した
ままである。これに対し図1(b)は、加熱時の最高温
度を1170℃以上とした場合であるが、スケールの成
長が速く、結果として鋼材の脱炭部を侵食するので鋼材
中に脱炭層はみられない。尚、図1(a)および(b)
に示されるスケールと鋼材の間に形成された隙間(試料
作成時に樹脂で充填)は、観察用試料作成時にできたも
のであって、製造条件によるものではない。
【0015】前記加熱は、スケールを形成させて脱炭層
領域を減少させる観点からは、より高温で行うのがよく
1200℃以上で加熱することが好ましいが、脱スケー
ルによる鋼材歩留まりの低下を抑える観点からは、加熱
温度の上限を1250℃とすることが望ましい。
【0016】この様に、線材表面の酸化スケール生成領
域を脱炭層よりも深部側にまで進めるには、熱延時に1
170℃以上の加熱温度で少なくとも2分間加熱する必
要がある。該加熱時間が短い場合には酸化が十分に進ま
ず、脱スケール後も相当厚さの脱炭層が残存するからで
ある。少なくとも2分間の加熱は、1170℃以上で行
えばよく、1170℃以上の一定温度で保持したり昇温
させる他、加熱温度保持および昇温を組み合わせて行っ
てもよい。
【0017】尚、前記加熱は、スケールを形成させて脱
炭層領域を減少させる観点からは長時間行うことが望ま
しく、3分間以上の加熱を好ましい実施形態とするが、
脱スケールによる鋼材歩留まりの低下を抑える観点から
は、前記加熱時間の上限を20分間とすることが望まし
い。
【0018】熱間圧延に際して行う加熱は、室温からの
加熱時間として30〜300分間行うことが望ましい。
前記時間が短すぎると十分に鋼材が加熱されないので、
前記鋼材表面の酸化が十分に進まず、脱炭層の形成が優
先して進行するだけでなく、鋼材が低温ままとなり次に
行う圧延加工に支障をきたすからである。より好ましく
は40分間以上とする。一方、長すぎると、脱炭層およ
びスケール層がいずれも深くなりすぎて、脱スケール量
が過度に多くなるばかりでなく、燃料消費量が増加して
コストがかかるので好ましくない。前記加熱時間は12
0分間以下に留めておくことがより好ましい。
【0019】<熱間圧延後の冷却条件>更に、上記熱間
圧延の後は750〜600℃温度域を、平均冷却速度5
〜300℃/分で冷却する必要がある。750〜600
℃の温度域を制御するのは、該温度域でも脱炭が進行し
易いからである。600℃未満では、炭素の拡散が遅く
なり脱炭がほとんど進行しないので、特に温度制御の必
要がない。
【0020】また、上記該温度域の平均冷却速度が5℃
/分未満の低速では、熱間圧延終了までの脱炭層の形成
が抑制されたとしても、冷却過程で脱炭が進行するおそ
れがあるので好ましくない。前記温度域での脱炭層の形
成をより有効に阻止するには、該冷却速度を10℃/分
以上とすることが好ましい。
【0021】この様に、脱炭層の形成を抑制する観点か
らは該温度域の冷却速度はより速い方が好ましいが、冷
却速度が速すぎると鋼線材が焼入れ組織となって硬質化
し、その後の加工に支障をきたすので、加工性の観点か
ら該温度域の冷却速度の上限を300℃/分とした。よ
り好ましくは200℃/分以下である。
【0022】熱間圧延前の加熱工程で形成させたスケー
ルは、圧延直前に除去するが、この場合の脱スケール処
理は一般的な方法で行えばよく、例えば、高圧水による
デスケール、メカニカルデスケール、酸洗等が挙げられ
る。
【0023】本発明にかかる製造方法は、上述した工程
を製造工程中に含めばよく、前記以外の製造条件を規定
するものでない。従って、線材に供する鋼材の溶製や熱
間圧延等は一般的な条件で行えばよい。更に本発明の製
造方法は、種々の直径のばね用鋼線材に適用可能であ
る。
【0024】本発明の製法は、上記の様に、熱間圧延時
の加熱温度と時間を制御してスケールを形成させ、その
後に脱スケール処理を行うことによって脱炭層を実質的
に除去することができた点に特徴を有しているが、この
方法によって得られるばね用鋼線材は下記の様な特徴を
有している点で、従来のばね用線材とは明確に区別され
る新規なものであり、本発明は、該ばね用線材自体も本
発明範囲に包含される。
【0025】本発明のばね用鋼線材は、鋼線材表面か
ら20μm深さまでの平均炭素濃度が鋼線材全体の平均
炭素濃度の30%以上であり、鋼線材の表層部に必要十
分量の炭素が確保されている。
【0026】炭素量の制御領域を鋼線材表面から20μ
mまでの深さとしたのは、更に深い領域ではほとんど脱
炭が起こらず、鋼線材表面から20μm深さまでの脱炭
層深さを制御することで疲労強度等のばね特性を十分確
保できるからである。
【0027】鋼線材表面から20μm深さまでの平均炭
素濃度が、鋼線材全体の平均炭素濃度の30%未満であ
るものでは、フェライト脱炭層および/または全脱炭層
が、鋼材表面の広範囲に渡って鋼線材内部にまで形成さ
れている可能性が高く、ばね用鋼線材に求められる疲労
強度等の特性が著しく劣化するので好ましくない。より
過酷な状況下で優れた特性を発揮するばねを得るには、
鋼線材表面から20μm深さまでの平均炭素濃度が、鋼
線材全体の平均炭素濃度の30%以上となるようにする
のがよい。
【0028】更に本発明のばね用鋼線材は、フェライ
ト脱炭層が実質的に存在せず、かつ、全脱炭層深さが4
0μm未満に抑えられている。
【0029】上述の通り、疲労特性に優れたばねを得る
には、ばねの製造に用いる鋼線材表面のフェライト脱炭
および全脱炭がいずれも十分に抑制されていることが必
要である。本発明では、上記方法を採用することにより
脱炭層をスケール層に変えて脱スケール処理により除去
することで、全脱炭深さを40μm未満と極めて薄い状
態にまで抑制することができ、この様に全脱炭層深さを
低減することにより、従来材に比べて卓越した疲労特性
等を示すものとなる。
【0030】より過酷な状況下で優れた疲労特性を発揮
させるには、ばね用鋼線材の全脱炭深さが35μm以下
であるものが望ましく、より好ましくは30μm以下で
ある。
【0031】本発明にかかるばね用鋼線材では、必須成
分としてSiの含有量を定めているが、これは、Siが
本来有している焼き入れ性を高めて強度を向上させ、か
つ加工性も同時に向上させるという効果を有効に発揮さ
せるためであり、1質量%以上のSiを含む鋼材が対象
となる。しかし、Si含有量が過剰になると却って加工
性が劣化するので、Si含有量は5質量%以下、好まし
くは3質量%以下とするのがよい。
【0032】尚、本発明で用いる鋼材には、前記Si以
外の成分として、C,Mn,Al,P,S等の基本成分
の他、必要によってCr,Ti,Nb,Mo,V,Z
r,N,B等の各種元素が含まれるが、これらの含有量
については特に限定するものではなく、ばね用線材とし
て通常含有される程度であれば良い。また、本発明で用
いる鋼材は、これらの元素以外にその特性に影響を与え
ない程度の微量成分も含み得るものであり、こうした鋼
材も本発明の製造方法で用いる鋼材に含まれる。
【0033】
【実施例】以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に
説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限
を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範
囲で適当に変更を加えて実施することも可能であり、そ
れらはいずれも本発明の技術的範囲に含まれる。
【0034】<実施例>鋼材としてJISのSUP7鋼
(化学組成;炭素 0.6質量%、Si 2.0質量%、Mn:0.9
質量%、P:0.015質量%、S:0.011質量%、Ni:0.01
質量%、Cr:0.15質量%、Ti:0.002質量%)を用いて
熱間圧延を行った。熱間圧延に際しての加熱、および圧
延後の750〜600℃域の冷却は表1に示す条件で行
い、圧延前で加熱後に高圧水によりスケール層を除去
し、その後、熱間圧延を行って鋼線材を得た。
【0035】得られた鋼線材から試料を採取し、EPM
A(X線回折マイクロアナライザー)を用いて、鋼線材
表面から20μm深さまでの平均炭素濃度を求めた。
尚、ここでいう「平均炭素濃度」とは、鋼線材表面から
20μmまでの定量炭素濃度を線分析したときの鋼線材
表面から20μm深さまでの炭素濃度の平均値をさす。
【0036】また、フェライト脱炭層の深さ(DM−
F)および全脱炭層の深さ(DM−T)は、日本工業規
格(JIS G 0558)に規定された「顕微鏡による
測定方法」で測定し、前記全脱炭層は、前記JIS G
0558に規定されている通り、線材中心部の金属組織
とわずかに異なる金属組織(炭素濃度が加熱前の初期濃
度よりも若干量減少したことに起因して生ずる)の、表
面からの深さを測定して求めたものである。また、前記
フェライト脱炭層深さについて、DM−Fが10μmを
超える場合を「フェライト脱炭層あり」とし、DM−F
が10μm以下の場合を「フェライト脱炭層なし」と評
価した。これらの結果を表1に併記する。
【0037】
【表1】
【0038】表1から次のように考察することができ
る。尚、以下のNo.は表1における実験No.を示
す。
【0039】No.4,5,7,9及び11は、本発明
の規定要件を全て満たす方法で製造したもので、得られ
たばね用鋼線材は、フェライト脱炭層および全脱炭層の
どちらも十分に浅く抑えられており、ばね用線材表面層
の炭素量が十分高位に保たれていることがわかる。
【0040】これに対しNo.1〜3,6,8,10,
12〜18は、本発明で規定する製法上の要件の一部を
欠くもので、得られる各ばね用鋼線材は、フェライト脱
炭層および/または全脱炭層が著しく厚肉となってい
る。即ち、No.1〜3,8,13〜16は、熱間圧延
に際して行う加熱時の最高到達温度が低く、脱炭層の形
成のみが進行してスケールの成長が進まなかったため、
線材表面の炭素を十分に確保することができず、フェラ
イト脱炭層および全脱炭層のどちらも、または全脱炭層
のみが厚く形成される結果となった。No.6は、加熱
時の最高到達温度が1170℃を超えているが、117
0℃以上での加熱時間が短すぎて十分にスケールが形成
されなかったため、全脱炭層の形成が進行し、線材表面
の炭素が十分に確保されている。No.10は、圧延後
の冷却速度が遅いため、冷却時に脱炭層の形成が進んで
フェライト脱炭層が生じる結果となった。一方、No.
12は、圧延後の冷却速度が速すぎたため、線材が硬質
化し、その後の加工等に支障をきたす。
【0041】No.13〜18は、前記従来技術に開示
された条件を採用したもので、No.13〜16は、熱
間圧延後の750〜600℃間を冷却速度30℃/分で
冷却したもので、No.17および18は、熱間圧延に
際して行う600〜750℃間の加熱を、加熱速度:4
0℃/分および60℃/分で行ったもので、その他の条
件は、従来技術の実施例と同様とした。
【0042】これらNo.13〜18で得た鋼線材は、
フェライト脱炭層は抑制されているものの、全脱炭層は
十分に抑制されておらず、線材表面の炭素量が十分に確
保できていない。尚、前記従来技術では、全脱炭層の深
さが同条件で行った本実験結果よりも低値となっている
が、これは、従来技術における全脱炭層の測定方法が、
本発明のJIS規格に基づく方法と異なるためと考えら
れる。
【0043】これらの実施例によっても確認できるよう
に、前記従来技術による方法では、フェライト脱炭層の
発生は抑制することはできるが、全脱炭層の発生まで抑
制することができない理由は次の様に考えられる。
【0044】鋼中炭素の拡散による低減は、鋼材の加熱
がその第一要因であり、形成される全脱炭層の深さは一
般に加熱条件に依存し、理論的には{(炭素の拡散係数
×加熱時間)1/2}に比例することが知られている。
【0045】そこで前記実施例データを用いて、{(炭
素の拡散係数×加熱時間)1/2}と全脱炭層深さの関係
について調べた。前記炭素の拡散係数(D)には、一般
式:D=4.7×10−5exp(−155000/8.314/T)(Dの
単位:[m/s2]、Tの単位[K])に最高加熱温度T
を代入して得た拡散係数D1を用い、炭素の拡散係数D1
と加熱時間t1から{(炭素の拡散係数×加熱時
間)1/2}を示すパラメータX1{=(D1×t11/2
を求め、X1と全脱炭層深さの実測値との関係を調べ
た。その結果を図3に示す。
【0046】図3より、従来技術を追試したものでは、
全脱炭層深さが前記パラメータX1、即ち(炭素の拡散
係数×加熱時間)1/2に比例しており、前掲の理論に合
致した結果となっている。しかしこの従来技術では、た
とえパラメータを制御したとしても、全脱炭層深さの最
低値は150μmまでであり、全脱炭層深さの低減には
限界があることがわかる。これに対し、本発明の要件を
満たす例では、全脱炭層深さと前記パラメータX1の間
に比例関係はみられないが、全てのデータにおいて全脱
炭層深さ50μm未満と、従来法からは予期できない全
脱炭層深さの極めて薄い鋼線材が得られていることがわ
かる。
【0047】そしてこの様な顕著な違いが生じたのは、
従来法では、脱炭層深さの抑制手段が加熱温度・時間の
制御にとどまっているのに対し、本発明では、鋼材表面
の脱炭層形成位置を積極的に酸化してスケール層に変
え、これを脱スケール処理することで、全脱炭層を実質
的に全て除去できたためと考えられる。
【0048】
【発明の効果】本発明は前記のように構成されており、
鋼線材表面に発生するフェライト脱炭層のみならず全脱
炭層も十分に抑制できることとなった。そして、この様
なばね用鋼線材を使用することにより、脱炭層が極めて
少なく、自動車、建築、電機、機械分野等の過酷な状況
下で使用された場合でも優れた疲労特性等を発揮するば
ねを提供できることとなった。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)最高加熱温度:1150℃および(b)
最高加熱温度:1200℃で加熱後の鋼板断面の顕微鏡
観察結果(倍率:50倍)を示した図面代用顕微鏡写真
である。
【図2】前記図1にかかる実験の加熱工程を示す概略説
明図である。
【図3】パラメータX1と全脱炭層深さの関係を実施例
のデータを用いて示したグラフである。
フロントページの続き (72)発明者 外山 雅雄 神戸市灘区灘浜東町2番地 株式会社神戸 製鋼所神戸製鉄所内 (72)発明者 富山 浩行 神戸市灘区灘浜東町2番地 株式会社神戸 製鋼所神戸製鉄所内 Fターム(参考) 4K043 AA02 AB04 AB05 AB10 AB15 AB22 AB25 AB26 AB28 AB29 BA01 BA04 HA02

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 Si:1質量%以上を含み、かつ鋼線材
    表面から20μm深さまでの平均炭素濃度が該鋼線材全
    体の平均炭素濃度の30%以上で、フェライト脱炭層が
    実質的に存在せず、全脱炭層深さが40μm未満である
    ことを特徴とするばね用鋼線材。
  2. 【請求項2】 熱間圧延に際し酸化性雰囲気下にて11
    70℃以上で少なくとも2分間加熱し、かつ圧延後の7
    50〜600℃の温度域を平均冷却速度5〜300℃/
    分で冷却する工程および脱スケーリング工程を含むこと
    を特徴とする請求項1に記載のばね用鋼線材の製造方
    法。
JP2002064248A 2002-03-08 2002-03-08 ばね用鋼線材およびその製造方法 Expired - Fee Related JP4031267B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2002064248A JP4031267B2 (ja) 2002-03-08 2002-03-08 ばね用鋼線材およびその製造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2002064248A JP4031267B2 (ja) 2002-03-08 2002-03-08 ばね用鋼線材およびその製造方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2003268483A true JP2003268483A (ja) 2003-09-25
JP4031267B2 JP4031267B2 (ja) 2008-01-09

Family

ID=29197140

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2002064248A Expired - Fee Related JP4031267B2 (ja) 2002-03-08 2002-03-08 ばね用鋼線材およびその製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP4031267B2 (ja)

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US20110303327A1 (en) * 2007-07-20 2011-12-15 Kabushiki Kaisha Kobe Seiko Sho (Kobe Steel, Ltd.) Steel wire material for spring and its producing method
KR20150108043A (ko) 2011-08-18 2015-09-24 신닛테츠스미킨 카부시키카이샤 스프링 강 및 스프링

Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US20110303327A1 (en) * 2007-07-20 2011-12-15 Kabushiki Kaisha Kobe Seiko Sho (Kobe Steel, Ltd.) Steel wire material for spring and its producing method
US8382918B2 (en) * 2007-07-20 2013-02-26 Kobe Steel, Ltd. Steel wire material for spring and its producing method
KR20150108043A (ko) 2011-08-18 2015-09-24 신닛테츠스미킨 카부시키카이샤 스프링 강 및 스프링
US9523404B2 (en) 2011-08-18 2016-12-20 Nippon Steel & Sumitomo Metal Corporation Spring steel and spring

Also Published As

Publication number Publication date
JP4031267B2 (ja) 2008-01-09

Similar Documents

Publication Publication Date Title
TWI609091B (zh) Hot-rolled steel plate and its manufacturing method
KR101925735B1 (ko) 신선 가공용 강선
JP5182067B2 (ja) 真空浸炭または真空浸炭窒化用の鋼材
JP6801712B2 (ja) フェライト系耐熱鋼及びフェライト系伝熱部材
JP6157132B2 (ja) 条鋼の製造方法
JP5332517B2 (ja) 浸炭用鋼の製造方法
JP5452253B2 (ja) 鍛鋼品及びクランク軸
JPH11131176A (ja) 高周波焼入部品およびその製造方法
CN108138288A (zh) 热锻造用钢及热锻造品
JP2009275285A (ja) デスケーリング性のよい高Cr含有鋼材の製法
JP2003268483A (ja) ばね用鋼線材およびその製造方法
JP2008069436A (ja) 減圧浸炭部品およびその製造方法
KR20160022258A (ko) 이음매 없는 관 제조용 피어서 플러그
JP5867308B2 (ja) 端面性状に優れた鋼材
JP2005163176A (ja) ピンホールの欠陥のないマルテンサイト系ステンレス鋼及びその製造方法
JP5491968B2 (ja) 条鋼の製造方法
JP2010184294A (ja) 酸洗性に優れたソリッドワイヤ用鋼線材およびその製造方法
JP5144390B2 (ja) スケール剥離性に優れるCr含有鋼の製造方法
JP3644217B2 (ja) 高周波焼入部品およびその製造方法
JP4739653B2 (ja) 高強度冷延鋼板
JP2003321711A (ja) 結晶粒度特性に優れた浸炭用鋼を素材としたギアの製造方法
JP5324964B2 (ja) Cr含有条鋼材の製造方法
JP3487234B2 (ja) 継目無鋼管用高炭素鋼片の製造方法
JP4197364B2 (ja) 継目無鋼管製造用プラグミルプラグ
JP2006002237A (ja) シボ加工性と被削性に優れたプラスチック金型用鋼

Legal Events

Date Code Title Description
A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20040809

A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20041022

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20060120

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20060214

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20071016

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20071018

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 4031267

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20101026

Year of fee payment: 3

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20111026

Year of fee payment: 4

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20111026

Year of fee payment: 4

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20121026

Year of fee payment: 5

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20131026

Year of fee payment: 6

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees