JP2003261781A - 複合物質の製造方法および複合物質 - Google Patents

複合物質の製造方法および複合物質

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JP2003261781A
JP2003261781A JP2002065208A JP2002065208A JP2003261781A JP 2003261781 A JP2003261781 A JP 2003261781A JP 2002065208 A JP2002065208 A JP 2002065208A JP 2002065208 A JP2002065208 A JP 2002065208A JP 2003261781 A JP2003261781 A JP 2003261781A
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Shiyouji Murai
彰児 村井
Yoshinobu Kubota
吉信 窪田
Akihiko Kitano
彰彦 北野
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Toray Industries Inc
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Abstract

(57)【要約】 【課題】本発明は、高分子中に無機フィラーが均一分散
し、高分子中で粘土鉱物が剥離し、均一に分散している
複合物質の製造方法および複合物質を提供せんとするも
のである。 【解決手段】本発明の複合物質の製造方法は、無機フィ
ラーと有機高分子材料からなる混合物を、該混合物の表
面積を増加させながら硬化させることを特徴とするもの
である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、自動車用材料を
はじめとする、過酷な条件下でも使用可能な、有機高分
子と無機フィラーを複合化させた、フィラー強化高分子
からなる複合物質の製造方法および複合物質に関するも
のである。
【0002】
【従来の技術】近年、ポリプロピレンやウレタン樹脂な
どの有機高分子材料の物性改善を目的として、高分子材
料に炭酸カルシウム、タルク、シラス、粘土鉱物などの
無機フィラーを分子のサイズ(ナノメートルレベル)で
分散させて、複合化(以下ナノコンポジットと略す)す
る試みが盛んになっている。改善される物性は、強度、
剛性、ガスバリア性、耐熱性、難燃性など様々である
が、無機フィラーを高分子材料中にいかに均一に分散さ
せるかが複合化の鍵であり、分散が不均一であると、物
性にバラツキがでたり、目的とする物性向上が達成でき
ないという課題がある。このため、無機フィラーを有機
高分子材料中に均一に分散させる技術が検討されてい
る。
【0003】例えば、特開平10−168305号に
は、層状粘土鉱物を有機オニウムイオンで有機化させた
後、これをポリウレタンモノマーとしての性質を有する
官能基含有オリゴマーで膨潤させ、次いでこの複合体を
イソシアネート化合物と混合/混練して、前記オリゴマ
ーの官能基とイソシアネート化合物の間でポリウレタン
反応を起こさせるポリウレタン複合材料の製造方法が開
示されている。該公報によると、層状の粘土鉱物等の無
機フィラーを単純にポリウレタン材料に添加しても、な
じみの悪さのためにフィラーが分散し難いし、そのため
に、かえって物性が劣化する可能性があるため、上記し
た無機フィラーである層状粘土鉱物を有機化させること
でフィラーの分散性を向上させて、ポリウレタンのガス
バリア性能を向上させている。さらに、同公報によれ
ば、混練方法あるいは混練手段や混練条件は必要に応じ
て適宜設定すれば足りるということで、無機フィラーの
分散性は、単に無機フィラーとポリウレタン材料のなじ
みに依存し、混練条件には大きく依存しないとされてい
る。
【0004】特開平10−259274には、熱可塑樹
脂等の有機高分子中に微細に分散させることのできる無
機複合材料を得る技術が開示されている。該公報には、
層状無機化合物と、比重が2.5以上、モース硬度4.
0以上の無機化合物をブレンダー等の混合機を用いて混
合し、乾式粉砕器または湿式粉砕器を用いて粉砕し、し
てなる複合材料を、水分散性の樹脂に混合することで、
樹脂中に微細に分散した層状無機化合物が凝集した巨大
凝集体が混在するという不均質分散の問題を解決するも
のである。本公報においても、均一分散は無機フィラー
の状態のみに依存するものとされており、無機フィラー
は高分子材料を製造する工程中に添加したり、高分子材
料中に混練りする方法など特に限定されない記載となっ
ている。
【0005】一方、無機フィラーが粘土鉱物の場合、有
機高分子材料中の粘土鉱物の均一分散の課題とは別に、
ミクロンオーダーの粘土鉱物をナノスケールまで層間剥
離させるという技術課題がある。モンモリロナイトなど
の粘土鉱物をはじめとする無機フィラーは、構成単位で
あるケイ酸塩層の厚みが1nmの板状構造であることか
ら、高分子中でケイ酸塩層をナノメートルのオーダーで
均一に分散することが出来れば、その比表面積が飛躍的
に向上するため材料の力学的性質が飛躍的に向上するこ
とが分かっているが、粘土鉱物の層間剥離を進めるため
には、大きな剥離エネルギーを必要とする。
【0006】例えば、ケイ酸塩層の層間を有機アンモニ
ウムイオンでイオン交換することで、有機分子との親和
性を向上し、高分子化合物の重合時にその有機アンモニ
ウムと高分子が重合することによってケイ酸塩層の剥離
を進行させる方法などもあるが、ケイ酸塩層を高分子中
で剥離させることは出来ないため、満足できる強度およ
び弾性率を有した高分子化合物は出来ていない。また、
このイオン交換する有機アンモニウムの極性など種類を
変えることにより、ケイ酸塩層の親和性および面間隔を
変える試みがなされているが、この方法によってもケイ
酸塩層を高分子中で剥離させ、剥離した小片が高分子中
に均一に分散している樹脂硬化物が得られるには至って
いない。
【0007】また、重合時の原液温度を高くし、ケイ酸
塩層に熱エネルギーを加えることによってケイ酸塩層の
面間隔をさらに大きくし、層間を剥離するエネルギーを
小さくする試みもあるが、原液の温度を高くしすぎると
急激な反応を起こしてしまったり、反応を制御すること
が出来ず、また、このような急激な反応が起きない温度
範囲では、ケイ酸塩層を高分子中で剥離させるには至っ
ておらず、層間剥離を簡単に起こさせる技術が求められ
ている。
【0008】以上のように、有機高分子中に無機フィラ
ーを均一に分散させると同時に、粘土鉱物等の無機フィ
ラーを層間剥離させる製造方法が求められている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、かかる従来
技術の背景に鑑み、高分子中に無機フィラーが均一分散
し、高分子中で粘土鉱物が剥離し、均一に分散している
複合物質の製造方法および複合物質を提供せんとするも
のである。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明は、かかる課題を
解決するために、つぎのような手段を採用するものであ
る。すなわち、本発明の複合物質の製造方法は、無機フ
ィラーと有機高分子材料からなる混合物を、該混合物の
表面積を増加させながら硬化させることを特徴とするも
のである。また、本発明の複合物質は、かかる製造方法
によって製造されたものであることを特徴とするもので
ある。
【0011】
【発明の実施の形態】本発明は、前記課題、つまり高分
子中に無機フィラーが均一分散し、高分子中で粘土鉱物
が剥離し、均一に分散している複合物質の製造方法につ
いて、鋭意検討し、無機フィラーと有機高分子材料から
なる特定な混合物を、発泡または延伸などの、その表面
積を増加させる手段を採用しながら硬化させてみたとこ
ろ、かかる課題を一挙に解決することを究明したもので
ある。
【0012】すなわち、本発明は、粘土鉱物やタルクな
どのナノスケールの無機フィラーと、硬化あるいは、重
合により高分子化する有機高分子材料(モノマー、オリ
ゴマー、硬化剤等を含む)の混合物を準備し、該混合物
に、気泡を吹き込んだり、発泡剤を添加するなどして発
泡させたり、テンターやロール、紡糸により高延伸させ
る等して、該混合物の表面積を増加させる手段を採用し
ながら、該高分子材料を硬化(重合)させて、複合物質
を製造する方法である。
【0013】発泡や延伸など、表面積が増大するダイナ
ミックな工程において、有機高分子材料中の無機フィラ
ーは、表面積の増大に伴う膨張力/引き延ばし力の作用
を受けてナノスケールの分離、剥離を起こし、かつ、表
面積の増大に伴う物質移動の力により、無機フィラーは
高分子材料中に均一分散することが可能となる。さら
に、表面積の増大と同時に起こる、高分子材料の硬化あ
るいは重合工程により、無機フィラーは、微細、かつ、
均一な分散状態で高分子材料中にインターロック(固
定)されることになり、極めて優れた物性を有する複合
物質(ナノコンポジット)を安定して製造することが可
能となる。
【0014】すなわち、表面積の増大エネルギー、物質
移動のエネルギーを利用して、無機フィラーを高分子材
料中に、より微細、かつ、より均一に分散させる製造方
法である。
【0015】以下、本発明を、一実施例を基に詳述す
る。
【0016】まず、本発明の無機フィラーとしては、分
子レベル(数ナノメートルから数百ナノメートル)の大
きさである粘土鉱物、タルク、炭酸カルシウムなどが用
いられる。具体的な粘土鉱物としては、スメクタイト族
のモンモリロナイト、サポナイト、ヘクトライト、ハイ
デライト、ノントロライト等、カオリン族のカオリナイ
ト等、バーミキュライト族のバーミキュライト等、その
他マガディアイト、カネマイト、ハイドロタルサイト、
マイカフロライド、オクタシリケート、膨潤マイカ等が
使用されるが、その中でも、カチオン交換容量の大き
い、モンモリロナイト、ヘクトライト、ノントロライ
ト、サポナイト、バーミキュライト、マガディアイト、
カネマイト等は、粘土鉱物と有機高分子材料との親和性
が強く好ましく使用される。勿論、無機フィラーは一種
類に限定されることはなく、上記無機フィラーの混合物
であっても差し支えない。
【0017】また、粘土鉱物は、有機アミンや、前述し
た引用例に記載されている有機オニウムでイオン交換さ
れた粘土鉱物であると、後述する有機高分子材料との親
和性が向上し、分散性が向上するのでより好ましく使用
される。より具体的には、サザンクレー社(Southern c
lay Products, Inc.)製の登録商標である「クロサイト
(Cloisite)」、クニミネ工業(株)製の高純度ソジウ
ム・モンモリロナイトである「クニピアーF」などを使
用することができる。
【0018】かかる粘土鉱物は、有機化することによっ
て、凝集したケイ酸塩層の層間引力を最小限にする作用
があるため、ケイ酸塩層の面間隔を大きくすることがで
きることが知られている。好ましくは、有機化されたケ
イ酸塩層の面間隔が16オングストローム以上の距離が
あると、発泡時気泡壁が引き伸ばされることによって生
じる剪断力が、ケイ酸塩層が1層1層剥離するのに十分
なものとなる。
【0019】さらに、かかる粘土鉱物は、剥離しやすい
ように、有機溶剤で膨潤させることも好ましい。かかる
溶剤としては、具体的には、たとえばトルエン、キシレ
ンなどの芳香族系溶剤、エタノール、イソプロピルアル
コールなどのアルコール系溶剤、アゼトン、メチルエチ
ルケトンなどのケトン系溶剤、酢酸エチルなどのエステ
ル系溶剤を使用することができる。
【0020】一方、本発明の有機高分子材料としては、
ウレタン樹脂、エチレン樹脂、フェノール樹脂、ユリア
樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、
セルロース樹脂、ピラニル樹脂、フッ素樹脂等の熱硬化
系樹脂、およびアクリル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカ
ーボネート樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリブチレンテ
レフタレート樹脂、スチレン樹脂、塩化ビニル樹脂、酢
酸ビニル樹脂等の熱可塑性樹脂などを使用することがで
きる。
【0021】これら有機高分子材料に対し、0.1〜1
5重量%程度の範囲内で、上記したナノスケールの無機
フィラーを複合化させると、これら有機高分子材料を高
性能化することができる。かかる無機フィラーの量が1
5重量%を越えると、本発明の表面積の増大に伴う無機
フィラーを移動させる力が不足して、無機フィラーの分
散が不均一になる可能性があり、反対に0.1重量%未
満では、物性向上が不十分となる可能性がある。
【0022】かかる有機高分子材料が熱硬化樹脂である
場合においては、モノマーあるいはオリゴマーと硬化剤
のいずれかに、上記したナノスケールの無機フィラーを
添加、混合し、続いて、モノマーあるいはオリゴマーと
硬化剤を混合した混合物を、加熱するなどして、硬化
(架橋も含む)反応させる。この際、該混合物の表面積
が増大するように、化学的発泡剤あるいは物理的発泡剤
を添加する。
【0023】より具体的な発泡方法としては、スラブ発
泡、モールド発泡、注入発泡、スプレー発泡、ラミネー
ト発泡などの成形技術を用いることができる。中でもス
ラブ発泡は、自由発泡とも呼ばれるように長尺の発泡剤
を連続成形するものであり、表面積の増大を大きく取れ
るので好ましい成形法である。また、スプレーガンによ
り混合物を微粒子化して吹き付けるスプレー発泡成形
も、表面積の増大が大きく取れて好ましい成形法であ
る。
【0024】かかる熱硬化樹脂として、ウレタン樹脂を
例にとれば、ポリオール中にモンモリロナイト無機フィ
ラー、発泡剤、整泡剤、触媒を予め混入し、これにイソ
シアネートを添加して、硬化反応を開始させる。
【0025】かかるポリオールとしては、ポリプロピレ
ングリコール、ポリマーポリオール、ポリテトラメチレ
ングリコールなどのポリエーテル系ポリオール、アジペ
テート系ポリオール、フタレート系ポリオールなどのポ
リエステル系ポリオール、ポリブタジエンポリオール、
アクリルポリオール等で、2つ以上の活性水素を有する
化合物を使用することができる。
【0026】また、発泡剤としては、水、フロン、メチ
レンクロライドなどを添加する。水は化学的発泡剤と呼
ばれ、イソシアネートとの反応で発生する二酸化炭素が
発泡剤として作用し、フロンは物理的発泡剤と呼ばれ、
反応熱で気化して物理的に発泡する。トリクロロフルオ
ロメタン、ジクロロジフルオロメタン、モノクロロジフ
ルオロメタン、炭化水素(HC)なども使用可能であ
る。かかる発泡剤も複数種のものを併用できるが、環境
上は非フロンガスとすることが好ましい。
【0027】次に、触媒としては、スタナスオクトエー
ト等のスズ系触媒、あるいはトリエチレンジアミン等の
アミン系触媒を使用することができる。かかるイソシア
ネートは、イソシアネート基を持つ化合物の総称で、イ
ソシアネート基を2個以上持ったポリイソシアネートが
好ましい。具体的には、トリレンジイソシアネート、ジ
フェニルメタンジイソシアネート、ポリメチレンポリフ
ェニルイソシアネートなどの芳香族系ポリイソシアネー
ト、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイ
ソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、ジシ
クロヘキシルメタンジイソシアネートなどの脂肪族系ポ
リイソシアネートを使用することができる。
【0028】次に、本発明の該混合物の表面積を増加さ
せる場合の該表面積の増大の程度は、発泡倍率により定
量化することができ、発泡倍率が大きければ大きいほ
ど、表面積の増加が大きく、無機フィラーを剥離させた
り、移動させたりする力が大きくすることができて好ま
しい。好ましい発泡倍率は、5倍以上、100倍以下の
範囲内である。かかる発泡倍率が5倍未満であると、無
機フィラーの量が多い場合などにおいて、無機フィラー
を剥離させるための十分な力が得られない可能性があ
り、逆に100倍を越えると、体積が大きくなりすぎ
て、製造装置が巨大となり高コストとなる。
【0029】かかる発泡倍率は、発泡前の(液状樹脂
の)密度を、JIS K7222で測定される発泡後の
複合物質(ナノコンポジット)の密度で除して(発泡前
密度÷発泡後密度)求めることができる。
【0030】本発明で表面積の増加に伴う力とは、薄肉
化に伴う面内の剪断変形力が主要な力と考えられる。す
なわち、有機高分子材料が面状に拡がりながら、つま
り、表面積が増加しながら、硬化、重合していくが、こ
の過程で、無機フィラーは、面内に広がる有機高分子材
料と接触しながら、有機高分子材料の動きに合わせて、
面内に薄く広がり、剥離、分散する。この場合、表面積
の増加に伴い、厚みは減少するので、モンモリロナイト
などの一層の厚さが1nm(ナノメートル)、幅が10
0nm程度の無機フィラーは、面内に平行に整列するこ
とになる。特に、発泡の倍率が大きく、発泡に伴い形成
される発泡構造の気泡壁の厚みが、数百ナノメートル
(100nm)から数十ミクロン(20μm)の範囲内
となると、無機フィラーは、気泡壁に平行に規則的に配
列せざるを得ず、結果として、物性の向上効果が著しい
複合物質(ナノコンポジット)が得られることになる。
【0031】かかる発泡時の気泡形状は、有機高分子材
料の粘度、気泡内の気体の内圧、重力の方向を組み合わ
せることにより、様々な形状を得ることができるが、好
ましくはアスペクト比(縦横比率)が0.3〜3の範囲
内であるのがよい。アスペクト比が0.3より小さい
と、発泡により気泡壁に生じる剪断力が小さいため、ケ
イ酸塩層が凝集して剥離しにくくなり、また、アスペク
ト比が3より大きいと、気泡壁が薄くなりすぎて、気泡
壁が座屈し易くなるなど、圧縮強度などの機械物性が低
下する可能性がある。なお、かかるアスペクト比の測定
は、発泡した複合物質を切断した断面を顕微鏡観察して
測定することができる。
【0032】次に、有機高分子材料が熱可塑性樹脂であ
る場合においては、該熱可塑性樹脂を融点以上に加熱溶
融させて、無機フィラーを分散させ、これに、上記した
化学的あるいは物理的発泡剤を添加、混合して、発泡さ
せることにより、表面積を増大させながら、該熱可塑性
樹脂を融点以下に冷却して、硬化(固化)させて複合物
質を製造することが可能である。
【0033】この際、該熱可塑性樹脂の粘度が、無機フ
ィラーの剥離や分散移動に影響し、温度は、粘度が10
00cps(センチポイズ)以下となるように調整する
ことが好ましい。また、かかる粘度の調整法として、ア
セトンやMEK(メチルエチルケトン)などの有機溶剤
を使用することも差し支えない。また、同じく熱可塑性
樹脂であって、重合を伴う有機高分子材料の場合には、
重合させるモノマーに無機フィラーを添加混合し、上記
した化学的発泡剤あるいは物理的発泡剤を用いる等して
表面積を増大させながら、重合反応させる。ナイロン6
樹脂を例にとると、カプロラクタムとモンモリロナイト
を混合して開環重合させる。この際、モンモリロナイト
は12−アミノデカン酸と塩酸で処理して有機化した1
2−モンモリロナイトとすることで、より均一分散した
複合物質を製造することができる。
【0034】さらに、かかる熱可塑性樹脂の場合、一
旦、発泡して、硬化(固化)、あるいは重合させた複合
物質をプレスなどで再加熱・加圧するなどして、非発泡
体とすることが可能である。すなわち、発泡壁を加熱・
加圧して潰すことで、発泡していない板状や棒状のソリ
ッドの複合物質を製造することができる。
【0035】次に、かかる熱可塑性樹脂の場合での表面
積の増大を伴う硬化(固化)方法として、延伸法があ
る。上記発泡法と同じ、粘土鉱物などの無機フィラーと
熱可塑樹脂や熱硬化樹脂などの有機高分子材料の混合物
を、テンターやロールによりフィルム状に、好ましくは
5〜100倍延伸して、表面積を増大させながら、硬
化、架橋、重合させることで、無機フィラーを剥離さ
せ、かつ、均一に分散させて製造する方法等である。
【0036】かかるフィルム延伸の場合、表面積の増大
の程度は、フィルムの厚みと幅の変化から定量すること
ができる。かかる延伸法の場合も、発泡の場合と同様、
形成されるフィルムの厚みは、数十ミクロンメートル
(100nm)から数十ミクロン(20μm)の範囲内
とすることによって、無機フィラーはフィルム面内に均
一分散せざるを得ず、結果として物性の向上効果が著し
い複合物質を製造することができる。
【0037】また、紡糸も延伸法の一つであり、本発明
のコンセプトに含まれる表面積を増加させる手段であ
る。紡糸の場合の表面積の増大量は、断面積と長さの変
化から定量することができる。好ましい、紡糸の延伸倍
率は20〜500倍である。また、断面の直径は数ミク
ロン(3〜50μm)の範囲内が好ましい。また、気体
を吹き込んで熱可塑樹脂を膨張、賦形するブロー成形な
ども高延伸の手段の一つである。
【0038】以上のように、粘土鉱物などの無機フィラ
ーと、熱硬化樹脂や熱可塑樹脂などの有機高分子材料か
らなる混合物を、該混合物の表面積を増加させながら硬
化、架橋あるいは、重合させることで、無機フィラーが
剥離して、均一に分散した複合物質を製造することがで
きるが、層状の無機フィラーが剥離して均一分散したか
どうかの判断は、広角X線分析により行うことが有効で
ある。すなわち、粘土鉱物等の層状無機フィラーの広角
X線回折のプロファイルをあらかじめ測定しておいて、
複合物質の広角X線分析のプロファイルと比較し、層状
無機フィラーの層面間隔に対応するピークが、剥離によ
り、その結晶性や周期性がなくなり、消失するので、フ
ィラーの剥離、分散状態を確認することができる。ピー
クが消失していない場合には、発泡倍率を増大させた
り、発泡速度を大きくして、フィラーを剥離させるエネ
ルギーを大きくしたり、有機化するなどの対策を講ず
る。本発明においては、回折角が2〜20度の範囲内に
ピークを持つ層状ケイ酸塩等が、ピーク判定しやすく好
ましく使用される。回折角が2度未満では、層間剥離し
にくく、逆に20度を越えては、ピークの形状がブロー
ドとなり判定が難しくなる。
【0039】図1〜3は、それぞれ実施例1の樹脂硬化
物(図1)、層状ケイ酸塩層(図2)、比較例1のウレ
タン樹脂硬化物(図3)の広角X線分析のプロファイル
である。
【0040】本発明により製造される複合物質(無機有
機ナノコンポジット)は、軽量で機械物性などの各種物
性に優れることから、自動車や航空機などの輸送機器、
壁、床材などの建築材料、および各種産業機械の外板に
適している。すなわち、ナノスケールに剥離した無機フ
ィラーが均一に分散しているため、強度や剛性、難燃
性、ガスバリア性能などの物性が極めて高く、かつ、物
性バラツキが小さいため、自動車、高速車両、高速船
艇、単車、自転車など輸送機器の補強部材、電化製品の
断熱部材、低温倉庫、冷蔵倉庫、低温試験室畜舎、サイ
ロ、ビル、住宅や工場など建築材料の断熱部材、梱包材
として使用することができる。
【0041】具体的には、かかる輸送機器の補強部材と
しては、ドア、ボンネット、フェンダー、トランクリッ
ド、ハードトップ、サイドミラーカバー、プラットホー
ム等の自動車部材、先頭車両ノーズ、ルーフ、サイドパ
ネル、ドアなどの車両用部材、ウイングトラックにおけ
るウイングのイナーパネル、アウターパネル、ルーフ、
フロアー等、自動車や単車に装着するエアースポイラー
やサイドスカートなどのエアロパーツ等に使用すること
ができる。電化製品としては、冷蔵庫、温調機などの断
熱、防音部材、建築材料としては、住宅用断熱ボード、
外壁材、内装材、タンク、配管などの断熱部材に使用す
ることができる。
【0042】
【実施例】以下、本発明を実施例に基づき具体的に説明
する。なお、実施例、比較例において、各種サンプルの
作成、物性値の測定は次に示すような条件で行った。 (樹脂硬化物の作成)主剤と硬化剤とを混合して得た樹
脂組成物に無機フィラーを混入した後、幅300mm、
長さ300mm、高さ300mmの蓋のない木型の中に
注入し、室温下で硬化した後、脱型し上記寸法の樹脂硬
化物を作成した。 (樹脂硬化物の密度測定)上記の方法で得た樹脂硬化物
から、JIS K 7222に準拠して、幅50mm、
長さ50mm、厚み20mmの試験片を切り出し、密度
を測定した。 (樹脂硬化物の圧縮強度)上記の方法で得た樹脂硬化物
から、JIS K 7220に準拠して、幅50mm、
長さ50mm、厚み10mmの試験片を切り出し、圧縮
強さを測定した。
【0043】(実施例1)ポリオールとしてポリプロピ
レングリコール100重量部と、架橋剤としてグリセリ
ン1.3重量部、触媒としてトリエチレンジアミン(グ
リコール溶液)を0.3重量部、発泡剤として水を3重
量部、無機フィラーとして粘土鉱物(モンモリロナイ
ト)である層状ケイ酸塩層(「Cloisite R
30B」Southern Clay Product
s, Inc.製)4重量部を、23℃雰囲気下で10
分攪拌混合した液状混合物を作成した。次いで、本液状
混合物104重量部に、イソシアネートとして、4−
4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)1
00重量部とを攪拌混合して(無機フィラーである層状
ケイ酸塩層の重量含有率は1.9%となる)、発泡倍率
20倍のウレタン樹脂硬化物を製造した。
【0044】本樹脂硬化物と本実施例に用いた層状ケイ
酸塩層を広角X線測定したところ、樹脂硬化物は図1に
示すように、回折角が2〜20度の範囲内でピークは見
られなかったが、層状ケイ酸塩層は図2に示すように回
折角が5度付近で顕著なピークが認められた。すなわ
ち、本実施例で得られたウレタン樹脂硬化物は、ナノ複
合物質(ナノコンポジット)であることが確認できた。
【0045】次いで、本樹脂硬化物の圧縮強度を前述の
方法により測定したところ、圧縮強度は0.25MPa
であった。
【0046】さらに、本樹脂硬化物を切断し、断面を顕
微鏡観察したところ、気泡壁の厚みは0.5〜18μ
m、気泡のアスペクト比(立てと横の差し渡し長さ比)
は0.5〜2.1の範囲内であった。
【0047】(比較例1)実施例1において、発泡剤を
添加しなかった以外は実施例1と同じにして、ウレタン
樹脂硬化物を製造し、実施例1と同様に広角X線分析し
た結果、図3に示すように回折角5度で小さなピークが
見られた。
【0048】(比較例2)実施例1において、粘土鉱物
を添加しなかった以外は実施例1と同じにして、発泡倍
率20倍のウレタン樹脂硬化物を製造し、実施例1と同
様に圧縮強度を測定した結果、強度は0.15MPaで
あった。また、広角X線分析の結果は、図1同様、2〜
20度の範囲内でピークは認められなかった。
【0049】(実施例2、3)実施例1において、無機
フィラーである層状ケイ酸塩層の重量含有率を、0.2
%(実施例2)、10%(実施例3)とした他は、実施
例1と全く同様にして、ウレタン樹脂硬化物を製造し
た。いずれも、広角X線解析の結果、回折角が2〜20
度の範囲内でピークは見られず、ナノ複合物質(ナノコ
ンポジット)であることが確認できた。
【0050】これら、樹脂硬化物の圧縮強度は、表1に
示す通りであり、極めて優れた機械物性を有することが
確認できた。
【0051】
【表1】
【0052】
【発明の効果】本発明によれば、無機フィラーがナノス
ケールで均一分散しているため、機械物性に優れ、輸送
機器、電化製品、建築材料などに実用可能な硬化複合物
質を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この図は、本発明の樹脂硬化物の一例である実
施例1の樹脂硬化物の広角X線分析のプロファイルであ
る。
【図2】この図は、本発明の樹脂硬化物の一例である実
施例1の樹脂硬化物の層状ケイ酸塩層の広角X線分析の
プロファイルである。
【図3】この図は、比較例1のウレタン樹脂硬化物の広
角X線分析のプロファイルである。
【符号の説明】
なし
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) C08J 9/04 CEZ C08J 9/04 CEZ C08K 3/00 C08K 3/00 //(C08G 18/00 C08G 101:00 101:00) B29K 105:04 B29K 105:04 105:16 105:16 Fターム(参考) 4F074 AA78 AA97 AC36 BA34 CC02 DA02 DA32 DA47 DA59 4F204 AA42 AB11 AG20 AH17 EA01 EF01 EF02 EK17 4F210 AA36 AB03 AB11 AB16 AH18 AH25 AH42 AH47 AH48 QA02 QA03 QG01 4J002 AA001 CK021 DE236 DJ006 DJ046 FB086 FD016 GL00 GN00 GQ00 GR00 4J034 CC01 KA01 KB04 MA04 NA01 NA03 NA05 RA10 RA12 RA14 RA15

Claims (12)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】無機フィラーと有機高分子材料からなる混
    合物を、該混合物の表面積を増加させながら硬化させる
    ことを特徴とする複合物質の製造方法。
  2. 【請求項2】該無機フィラーが、粘土鉱物であることを
    特徴とする請求項1に記載の複合物質の製造方法
  3. 【請求項3】該無機フィラーが、有機化された粘土鉱物
    であることを特徴とする請求項1または2に記載の複合
    物質の製造方法。
  4. 【請求項4】該混合物中の無機フィラーの含有量が、該
    有機高分子材料の0.1〜15重量%の範囲内であるこ
    とを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の複合物
    質の製造方法。
  5. 【請求項5】該有機高分子材料が、熱硬化樹脂であるこ
    とを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の複合物
    質の製造方法。
  6. 【請求項6】該有機高分子材料が、熱可塑樹脂であるこ
    とを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の複合物
    質の製造方法。
  7. 【請求項7】該硬化させる手段が、5〜100倍の発泡
    を伴う硬化法であることを特徴とする請求項1〜6のい
    ずれかに記載の複合物質の製造方法。
  8. 【請求項8】該発泡複合物質の気泡壁の厚みが100n
    m〜20μmの範囲内であることを特徴とする請求項7
    に記載の複合物質の製造方法。
  9. 【請求項9】該硬化させる手段が、5〜100倍の延伸
    を伴う硬化法であることを特徴とする請求項1〜6のい
    ずれかに記載の複合物質の製造方法。
  10. 【請求項10】該延伸複合物質の厚みが、100nm〜
    20μmの範囲内であることを特徴とする請求項9に記
    載の複合物質の製造方法。
  11. 【請求項11】該無機フィラーが、広角X線回折のプロ
    ファイルにおいて、回折角が2〜20度の範囲内にピー
    クを持つことを特徴とする請求項1〜10のいずれかに
    記載の複合物質の製造方法。
  12. 【請求項12】請求項1〜11のいずれかにより製造さ
    れたものであることを特徴とする複合物質。
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