JP2003257016A - 磁気記録媒体の製造方法及び製造装置 - Google Patents

磁気記録媒体の製造方法及び製造装置

Info

Publication number
JP2003257016A
JP2003257016A JP2002056090A JP2002056090A JP2003257016A JP 2003257016 A JP2003257016 A JP 2003257016A JP 2002056090 A JP2002056090 A JP 2002056090A JP 2002056090 A JP2002056090 A JP 2002056090A JP 2003257016 A JP2003257016 A JP 2003257016A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
magnetic
substrate
layer
recording medium
forming
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Withdrawn
Application number
JP2002056090A
Other languages
English (en)
Inventor
Masaki Ando
正樹 安藤
Ryuichi Yoshiyama
龍一 芳山
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Mitsubishi Chemical Corp
Original Assignee
Mitsubishi Chemical Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Mitsubishi Chemical Corp filed Critical Mitsubishi Chemical Corp
Priority to JP2002056090A priority Critical patent/JP2003257016A/ja
Publication of JP2003257016A publication Critical patent/JP2003257016A/ja
Withdrawn legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Manufacturing Of Magnetic Record Carriers (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】 耐衝撃性及び耐久性が高く、かつ電気特性に
優れ欠陥の少ない磁気記録媒体が得られ、かつ連続製造
を行っても信号出力の低下が起こることがない磁気記録
媒体の製造方法及び製造装置を提案する。 【解決手段】 第一の両面型磁気記録媒体及び第二の両
面型磁気記録媒体を連続して製造する磁気記録媒体の製
造方法において、各基板の両面に少なくとも磁性層を成
膜する成膜工程と、各基板の少なくとも一面側の磁性層
上に潤滑層を塗布形成する潤滑層形成工程と、該潤滑層
が形成された磁性層に磁気ヘッドによりサーティファイ
検査を行うサーティファイ検査工程と、該サーティファ
イ検査を行うに先だち第一の基板及び第二の基板のいず
れかを反転させる基板反転工程とを含み、該サーティフ
ァイ検査工程が、各基板の所定の一面側の磁性層にのみ
サーティファイ検査を行う片面サーティファイ検査工程
である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、磁気記録媒体の製
造方法及び製造装置に関する。
【0002】
【従来の技術】磁気ディスク装置(ハードディスクドラ
イブ)に代表される磁気記録装置はコンピュータなどの
情報処理装置の外部記憶装置として 広く用いられ、近
年は動画像の録画装置やセットトップボックスのための
記録装置としても使用されつつある。
【0003】磁気ディスク装置は、通常、磁気ディスク
を1枚或いは複数枚を串刺し状に固定するシャフトと、
該シャフトにベアリングを介して接合された磁気ディス
クを回転させるモータと、記録及び/又は再生に用いる
磁気ヘッドと、該ヘッドが取り付けられたアームと、ヘ
ッドアームを介してヘッドを磁気記録媒体上の任意の位
置に移動させることのできるアクチュエータとからな
る。記録再生用ヘッドは通常浮上型ヘッドで、磁気記録
媒体上を一定の浮上量で移動している。
【0004】また、浮上型ヘッドの他に媒体との距離を
より縮めるために、コンタクトヘッド(接触型ヘッド)
の使用も提案されている。磁気ディスク装置に搭載され
る磁気記録媒体は、一般にアルミニウム合金などからな
る基板の表面にNiP層を形成し、所要の平滑化処理、
テキスチャリング処理などを施した後、その上に、金属
下地層、磁性層(情報記録層)、保護層、潤滑層などを
順次形成して作製されている。あるいは、ガラスなどか
らなる基板の表面に金属下地層、磁性層(情報記録
層)、保護層、潤滑層などを順次形成して作製されてい
る。磁気記録媒体には面内磁気記録媒体と垂直磁気記録
媒体とがある。面内磁気記録媒体は、通常、長手記録が
行われる。
【0005】磁気記録媒体の高密度化は年々その速度を
増しており、これを実現する技術には様々なものがあ
る。例えば磁気ヘッドの浮上量をより小さくしたり磁気
ヘッドとしてGMRヘッドを採用したり、また磁気ディ
スクの記録層に用いる磁性材料を保磁力の高いものにす
るなどの改良や、磁気ディスクの情報記録トラックの間
隔を狭くするなどが試みられている。例えば100Gb
it/inch2を実現するには、トラック密度は10
0ktpi以上が必要とされる。
【0006】各トラックには、磁気ヘッドを制御するた
めの制御用磁化パターンが形成されている。例えば磁気
ヘッドの位置制御に用いる信号や同期制御に用いる信号
である。情報記録トラックの間隔を狭めてトラック数を
増加させると、データ記録/再生用ヘッドの位置制御に
用いる信号(以下、「サーボ信号」と言うことがあ
る。)もそれに合わせてディスクの半径方向に対して密
に、すなわちより多く設けて精密な制御を行えるように
しなければならない。
【0007】また、データ記録に用いる以外の領域、即
ちサーボ信号に用いる領域や該サーボ領域とデータ記録
領域の間のギャップ部を小さくしてデータ記録領域を広
くし、データ記録容量を上げたいとの要請も大きい。こ
のためにはサーボ信号の出力を上げたり同期信号の精度
を上げる必要がある。従来広く製造に用いられている方
法は、ドライブ(磁気記録装置)のヘッドアクチュエー
タ近傍に穴を開け、その部分にエンコーダ付きのピンを
挿入し、該ピンでアクチュエータを係合し、ヘッドを正
確な位置に駆動してサーボ信号を記録するものである。
しかしながら、位置決め機構とアクチュエータの重心が
異なる位置にあるため、高精度のトラック位置制御がで
きず、サーボ信号を正確に記録するのが困難であった。
【0008】一方、レーザビームを磁気ディスクに照射
してディスク表面を局所的に変形させ物理的な凹凸を形
成することで、凹凸サーボ信号を形成する技術も提案さ
れている。しかし、凹凸により浮上ヘッドが不安定とな
り記録再生に悪影響を及ぼす、凹凸を形成するために大
きなパワーをもつレーザビームを用いる必要がありコス
トがかかる、凹凸を1ずつ形成するために時間がかか
る、といった問題があった。
【0009】このため新しいサーボ信号形成法が提案さ
れている。一例は、高保磁力の磁性層を持つマスターデ
ィスクにサーボパターンを形成し、マスターディスクを
磁気記録媒体に密着させるとともに、外部から補助磁界
をかけて磁化パターンを転写する方法である(USP
5,991,104号)。他の例は、媒体を予め一方向
に磁化しておき、マスターディスクに高透磁率で低保磁
力の軟磁性層などをパターニングし、マスターディスク
を媒体に密着させるとともに外部磁界をかける方法であ
る。軟磁性層がシールドとして働き、シールドされてい
ない領域に磁化パターンが転写される(特開昭50−6
0212号公報(USP3、869、711号)、特開
平10−40544号公報(EP915456号)、"R
eadback Properties of Novel Magnetic Contact Dupli
cation Signals with High Recording Density FD"(Sug
ita,R et.al, Digest of InterMag 2000, GP-06, IEEE
発行)参照)。
【0010】本技術はマスターディスクを用い、強力な
磁界によって磁化パターンを媒体に形成している。一般
に磁界の強度は距離に依存するので、磁界によって磁化
パターンを記録する際には、漏れ磁界によってパターン
境界が不明瞭になりやすい。そこで、漏れ磁界を最小に
するためにマスターディスクと媒体を密着させることが
不可欠である。そしてパターンが微細になるほど、隙間
なく完全に密着させる必要があり、通常、両者は真空吸
着などにより圧着される。
【0011】また、媒体の保磁力が高くなるほど転写に
用いる磁界も大きくなり、漏れ磁界も大きくなるため、
更に完全に密着させる必要がある。従って上記技術は、
保磁力の低い磁気ディスクや圧着しやすい可撓性のフレ
キシブルディスクには適用しやすいが、硬質基板を用い
た、高密度記録用の保磁力が3000Oe以上もあるよ
うな磁気ディスクへの適用が非常に難しい。
【0012】即ち、硬質基板の磁気ディスクは、密着の
際に微小なゴミ等を挟み込み媒体に欠陥が生じたり、或
いは高価なマスターディスクを痛めてしまう恐れがあっ
た。特にガラス基板の場合、ゴミの挟み込みで密着が不
十分になり磁気転写できなかったり、磁気記録媒体にク
ラックが発生したりするという問題があった。また、特
開昭50−60212号(USP3、869、711
号)に記載されたような技術では、ディスクのトラック
方向に対して斜めの角度を有したパターンは、記録は可
能であるが信号強度の弱いパターンしか作れないという
問題があった。保磁力が2000〜2500Oe以上の
高保磁力の磁気記録媒体に対しては、転写の磁界強度を
確保するために、マスターディスクのパターン用強磁性
体(シールド材)は、パーマロイあるいはセンダスト等
の飽和磁束密度の大きい軟磁性体を使わざるを得ない。
【0013】しかし、斜めのパターンでは、磁化反転の
磁界はマスターディスクの強磁性層が作るギャップに垂
直方向となってしまい所望の方向に磁化を傾けることが
できない。その結果、磁界の一部が強磁性層に逃げてし
まい磁気転写の際に所望の部位に十分な磁界がかかりに
くく、十分な磁化反転パターンを形成できず高い信号強
度が得にくくなってしまう。こうした斜めの磁化パター
ンは、再生出力が、トラックに垂直のパターンに対して
アジマスロス以上に大きく減ってしまう。
【0014】これに対して、特願2000−13460
8号及び特願2000−134611号の明細書に記載
された技術は、局所加熱と外部磁界印加を組み合わせて
磁気記録媒体に磁化パターンを形成する。例えば、媒体
を予め一方向に磁化しておき、パターニングされたマス
クを介してエネルギー線等を照射し局所的に加熱し、該
加熱領域の保磁力を下げつつ外部磁界を印加し、加熱領
域に外部磁界による記録を行い、磁化パターンを形成す
る。
【0015】本技術によれば、加熱により保磁力を下げ
て外部磁界を印加するので、外部磁界が媒体の保磁力よ
り高い必要はなく、弱い磁界で記録できる。そして、記
録される領域が加熱領域に限定され、加熱領域以外には
磁界が印加されても記録されないので、媒体にマスク等
を密着させなくても明瞭な磁化パターンが記録できる。
このため圧着によって媒体やマスクを傷つけることな
く、媒体の欠陥を増加させることもない。
【0016】また、本技術では斜めの磁化パターンも良
好に形成できる。従来のようにマスターディスクの軟磁
性体によって外部磁界をシールドする必要がないためで
ある。
【0017】
【発明が解決しようとする課題】このように、上述の磁
化パターン形成技術は、各種の微細な磁化パターンを効
率よく精度よく形成でき、しかも媒体やマスクを傷つけ
ることなく媒体の欠陥を増加させることもない優れた技
術である。しかし、さらなる検討により、潤滑層を有す
る磁気記録媒体に本技術を適用すると潤滑剤が局所加熱
によって蒸発・減量してしまい、媒体の磁気ヘッドに対
する耐衝撃性が低下し、耐久性が不足する可能性がある
ことが分かった。
【0018】また、磁化パターン形成を連続して行う
と、蒸発した潤滑剤がマスクに徐々に付着することが分
かった。付着した潤滑剤は、加熱に用いるエネルギー線
を回折させ、形成される磁化パターンの明瞭性を損な
い、信号出力を低下させてしまう可能性がある。さら
に、潤滑剤はフッ素系化合物を含有する場合が多く、高
パワーのエネルギー線の照射によってこの潤滑剤が蒸発
し、中に含まれるフッ素系化合物により、マスク上のク
ロムなど金属層などを腐食する虞があることが分かっ
た。
【0019】以上のような理由から、潤滑層を設ける前
の磁気記録媒体に磁化パターンを形成し、その後に潤滑
層を設ける方法が提案されている。ところで、通常、磁
気記録媒体の製造工程の最後には、媒体の全面に対して
磁気ヘッドを用いたサーティファイ検査が行われる。こ
れは磁気記録媒体に対し、通常の記録再生のように磁気
ヘッドで所定の信号を記録したのち再生し、得られた再
生信号から、電気特性や欠陥の有無など媒体の品質を確
かめるものである。
【0020】サーティファイ検査は磁気ヘッドで記録再
生を行うため、媒体に潤滑層が設けられていることが必
須である。従って、磁化パターン形成後に潤滑層を設け
るとすれば、サーティファイ検査は磁化パターンを形成
し、潤滑層を塗布した後に行わざるを得ない。しかし一
方、磁化パターン形成後にサーティファイを行うと、磁
気ヘッドで媒体に信号を記録するため、折角形成したサ
ーボパターンなどの磁化パターンが上書きされ消去され
てしまうといった問題があった。
【0021】そこで、本発明は、局所加熱と外部磁界印
加を組み合わせて磁気記録媒体に磁化パターンを形成す
る技術において、耐衝撃性及び耐久性が高く、かつ電気
特性に優れ欠陥の少ない磁気記録媒体が得られ、かつ連
続製造を行っても信号出力の低下が起こることがない磁
気記録媒体の製造方法及び製造装置を提案することを目
的とする。ひいては高密度記録が可能で耐久性が高く、
かつ電気特性に優れ欠陥の少ない磁気記録媒体及び磁気
記録装置を短時間かつ安価に提供することを目的とす
る。
【0022】
【課題を解決するための手段】本発明の要旨は、第一の
基板及び第二の基板の両面に少なくとも磁性層を成膜
し、該磁性層上に潤滑層を塗布形成したのち、該磁性層
に磁気ヘッドによるサーティファイ検査を行うことによ
って、第一の両面型磁気記録媒体及び第二の両面型磁気
記録媒体を連続して製造する磁気記録媒体の製造方法に
おいて、各基板の両面に少なくとも磁性層を成膜する成
膜工程と、各基板の少なくとも一面側の磁性層上に潤滑
層を塗布形成する潤滑層形成工程と、該潤滑層が形成さ
れた磁性層に磁気ヘッドによりサーティファイ検査を行
うサーティファイ検査工程と、該サーティファイ検査を
行うに先だち第一の基板及び第二の基板のいずれかを反
転させる基板反転工程とを含み、該サーティファイ検査
工程が、各基板の所定の一面側の磁性層にのみサーティ
ファイ検査を行う片面サーティファイ検査工程であるこ
とを特徴とする、磁気記録媒体の製造方法に存する。
【0023】本発明の別の要旨は、第一の基板及び第二
の基板の両面に少なくとも磁性層を成膜し、該磁性層上
に潤滑層を塗布形成したのち、該磁性層に磁気ヘッドに
よるサーティファイ検査を行うことによって、第一の両
面型磁気記録媒体及び第二の両面型磁気記録媒体を連続
して製造する磁気記録媒体の製造装置において、各基板
の両面に少なくとも磁性層を成膜する成膜手段と、各基
板の少なくとも一面側の磁性層上に潤滑層を塗布形成す
る潤滑層形成手段と、該潤滑層が形成された磁性層に磁
気ヘッドによりサーティファイ検査を行うサーティファ
イ検査手段と、該サーティファイ検査を行う位置よりも
製造ライン上の上流側で、第一の基板及び第二の基板の
いずれかを反転させる基板反転手段とを備えてなり、該
サーティファイ検査手段が、各基板の所定の一面側の磁
性層にのみサーティファイ検査を行う片面サーティファ
イ検査手段であることを特徴とする、磁気記録媒体の製
造装置に存する。
【0024】
【発明の実施の形態】以下、本発明について詳細に説明
する。本発明は、両面型磁気記録媒体を連続製造する方
法において、媒体(磁性層が設けられた基板)の所定の
一面側の磁性層のみにサーティファイ検査を行うことを
特徴とする。このとき他の一面側の磁性層についてはサ
ーティファイ検査が行われず、品質検査が十分でない虞
がある。そこで、媒体の連続製造方法において、サーテ
ィファイ検査を行うに先だって一部の媒体の基板の向き
を反転させることを特徴とする。
【0025】一般に、両面型磁気ディスクに代表される
両面型磁気記録媒体の製造において、電気特性の顕著な
悪化や大きな欠陥が見られる場合、それらは特定の一面
側のみに集中し、しかも連続して発生する傾向がある。
通常、両面型磁気ディスクを製造するにあたっては、タ
クト短縮の観点から両面同時処理が行われ、各基板面に
対して2台の装置でそれぞれ処理が行われ、途中で任意
に反転するようなことはない。媒体にA面、B面がある
とすると、例えばある工程のA面側の装置で問題が発生
すると、それは媒体のA面側に、集中し連続して電気特
性が悪化したり欠陥が多くなったりする状態として検出
されるのである。
【0026】従って、必ずしも全ての媒体について両面
サーティファイ検査を行わなくても、連続して製造され
る媒体のA面及びB面が適当な頻度でサーティファイ検
査されていれば、相当な割合で工程上の不具合、問題点
が検出できるのである。このため、本発明においては、
媒体の連続製造方法において、媒体の特定の一面側のみ
にサーティファイ検査を行うものとし、なおかつサーテ
ィファイ検査を行うに先だって一部の媒体の基板の向き
を反転させること、最も好ましくは一枚毎に交互に基板
の向きを反転させる。これにより両面サーティファイ検
査を行った場合に比べてもかなりの程度で品質検査が行
えるので、電気特性に優れ欠陥の少ない磁気記録媒体を
得ることができる。なお、本発明において反転とは基板
の表裏を反転させることを言う。また、基板の反転工程
はサーティファイ検査の前であればどの工程の間に入れ
ても良いが、製造工程中の不具合を発見しやすくすると
の本発明の目的を達成するためには、磁性層の成膜工程
のあとに行うのが好ましい。
【0027】本発明の思想はまた、加熱と磁界印加によ
り磁化パターンを形成する工程を含まない磁気記録媒体
の製造方法にも適用できる。図面を用いて本発明の磁気
記録媒体の構成及び製造方法を説明する。図1は本発明
の磁気記録媒体の製造方法の一例を示すフローチャート
である。この例においては、磁気記録媒体の製造方法は
順に、a)基板洗浄工程、b)テキスチャー工程、c)
成膜工程、d)磁化パターン形成工程、e)潤滑層形成
工程、f)グライド検査工程、g)サーティファイ検査
工程、h)光検査工程からなる。
【0028】本発明の磁気記録媒体の基板としては、高
速記録再生時に高速回転させても振動しないものが良
く、通常、硬質基板が用いられる。振動しない十分な剛
性を得るため、基板厚みは一般に0.3mm以上が好ま
しい。但し厚いと磁気記録装置の薄型化に不利なため、
3mm以下が好ましい。例えば、Alを主成分とした例
えばAl−Mg合金等のAl合金基板や、Mgを主成分
とした例えばMg−Zn合金等のMg合金基板、通常の
ソーダガラス、アルミノシリケート系ガラス、非結晶ガ
ラス類、シリコン、チタン、セラミックス、各種樹脂の
いずれかからなる基板やそれらを組み合わせた基板など
を用いることができる。中でもAl合金基板や強度の点
では結晶化ガラス等のガラス製基板、コストの点では樹
脂製基板を用いることが好ましい。
【0029】これら基板は、ゴミや塵埃の付着を防止
し、形成する層との密着性を確保するために、通常、
a)基板洗浄工程が行われる。洗浄に続いては通常、乾
燥が行われる。本工程で起こりうる不具合としては、洗
浄時の乾きじみが挙げられる。次に、基板表面にNi
P、NiAl等の金属層を形成してもよい。金属層を形
成する場合に、その手法としては、無電解めっき法、ス
パッタリング法、真空蒸着法、CVD法など薄膜形成に
用いられる方法を利用することができる。導電性の材料
からなる基板の場合であれば電解めっきを使用すること
が可能である。金属層の膜厚は50nm以上が好まし
い。ただし、磁気記録媒体の生産性などを考慮すると2
0μm以下であることが好ましい。さらに好ましくは1
0μm以下である。
【0030】次に、通常、b)テキスチャー工程が行わ
れる。例えば、基板表面、又は基板に金属層が形成され
た表面に同心状テキスチャリングを施す。同心状テキス
チャリングとは、例えば遊離砥粒とテキスチャーテープ
を使用した機械式テキスチャリングやレーザ光線などを
利用したテキスチャリング、又はこれらを併用すること
によって、円周方向に研磨することによって基板円周方
向に微小溝を多数形成した状態を指す。
【0031】機械的テキスチャリングに用いられる砥粒
としてはアルミナ砥粒が広く用いられているが、特にテ
キスチャリング溝に沿って磁化容易軸を配向させるとい
う面内配向媒体の観点から考えるとダイアモンド砥粒が
極めて良い性能を発揮する。中でも表面がグラファイト
化処理されているものが最も好ましい。本工程で起こり
うる不具合としては、研磨剤の砥粒が基板面のテキスチ
ャリング溝にひっかかって残留することが挙げられる。
また、テキスチャーが不十分な場合に基板そのものが持
っていた欠陥やキズ等が表面化してしまうことも挙げら
れる。
【0032】一般に、機械式テキスチャリングは磁性層
の面内異方性を出すために行われる。面内等方性の磁性
層としたい場合は施す必要はない。また一般に、レーザ
光線などを利用したテキスチャリングは、CSS(コン
タクト・スタート・アンド・ストップ)特性を良好にす
るために行われる。磁気記録装置が、非駆動時にヘッド
を磁気記録媒体の外に待避させる方式(ロード・アンロ
ード方式)などの場合は施す必要はない。
【0033】ヘッド浮上量ができるだけ小さいことが高
密度磁気記録の実現には有効であり、またこれら基板の
特長のひとつが優れた表面平滑性にあることから、基板
表面の粗度Raは2nm以下が好ましく、より好ましく
は1nm以下である。特に0.5nm以下が好ましい。
なお、基板表面粗度Raは、触針式表面粗さ計を用いて
測定長400μmで測定後、JIS B0601に則っ
て算出した値である。このとき測定用の針の先端は半径
0.2μm程度の大きさのものが使用される。
【0034】次いでc)成膜工程において、基板上に磁
性層を含む複数の層がスパッタリング法、CVD法など
により成膜される。層構成は任意であるが、例えば、下
地層、中間層、軟磁性層、記録層(磁性層)、保護層、
などが形成されうる。各層を形成する成膜方法としては
各種の方法が採りうるが、例えば直流(マグネトロン)
スパッタリング法、高周波(マグネトロン)スパッタリ
ング法、ECRスパッタリング法、真空蒸着法、CVD
法などが挙げられる。
【0035】また、成膜時の条件としては、得るべき媒
体の特性に応じて、到達真空度、基板加熱の方式と基板
温度、スパッタリングガス圧、バイアス電圧等を適宜決
定する。例えば、スパッタリング成膜では、通常の場
合、到達真空度は5×10-6Torr以下、基板温度は
室温〜400℃、スパッタリングガス圧は1×10-3
20×10-3Torr、バイアス電圧は0〜−500V
が好ましい。
【0036】基板を加熱する場合は下地層形成前から加
熱しても良い。或いは、熱吸収率が低い透明な基板を使
用する場合には、熱吸収率を高くするため、Crを主成
分とする種子層又はB2結晶構造を有する下地層を形成
してから基板を加熱し、しかる後に記録層等を形成して
も良い。記録層が、希土類系の磁性層の場合には、腐食
・酸化防止の見地から、ディスク状磁気記録媒体の最内
周部及び最外周部を最初マスクして、記録層まで成膜、
続く保護層の成膜の際にマスクを外し、記録層を保護層
で完全に覆う方法や、保護層が2層の場合には、記録層
と第1の保護層までをマスクしたまま成膜し、第2の保
護層を成膜する際にマスクを外し、やはり記録層を第2
の保護層で完全に覆うようにすると希土類系磁性層の腐
食、酸化が防げて好適である。
【0037】以上の工程により、例えば、ガラス基板や
アルミニウム合金などの基板に、スパッタリング法によ
ってNiAl下地層、CrMo下地層、Co系合金磁性
薄膜、ダイヤモンドライクカーボン保護層等を設けた磁
気記録媒体が作製される。本工程において起こりうる不
具合としては、成膜工程前或いは成膜工程中に塵埃や異
物が基板面に付着することがある。例えば、スパッタリ
ング装置やCVD装置のチャンバー内に付着した膜等
が、成膜前に剥離し異物となって基板に付着することが
ある。これらは、成膜が行われた後に膜とともに剥離
し、その跡が欠陥となる。各装置は通常、チャンバー内
に媒体の各面に対応したターゲットを2つ有しそれぞれ
成膜が行われるので、このような欠陥は媒体の片面側に
集中する傾向がある。
【0038】また以上述べたような工程、又は工程間に
おいて、ロボットなどによる取扱中に、意図せぬ接触に
よって基板に連続的にキズが発生する場合もある。この
ようにして得られた磁気記録媒体に、d)サーボパター
ンなどの磁化パターンが形成される。サーボパターン形
成工程の前に洗浄工程を経ることもある。磁化パターン
の形成方法は特に限定されず、例えば磁気転写用マスタ
を磁気記録媒体に密着させ、外部磁界を印加することに
より磁化パターンを形成してもよいが、好ましくは、第
1の外部磁界を印加し磁性層を所望の方向に均一に磁化
したのち、磁性層を局所的に加熱すると同時に第2の外
部磁界を印加し加熱部を該所望の方向とは逆向きに磁化
することにより磁化パターンを形成する。
【0039】本技術によれば、加熱により保磁力を下げ
て外部磁界を印加するので、外部磁界が媒体の保磁力よ
り高い必要はなく、弱い磁界で記録できる。そして、記
録される領域が加熱領域に限定され、加熱領域以外には
磁界が印加されても記録されないので、媒体にマスク等
を密着させなくても明瞭な磁化パターンが記録できる。
このため圧着によって媒体やマスクを傷つけることな
く、媒体の欠陥を増加させることもない。
【0040】また、本技術では斜めの磁化パターンも良
好に形成できる。従来のようにマスターディスクの軟磁
性体によって外部磁界をシールドする必要がないためで
ある。しかしながら本技術では、局所加熱により潤滑層
が蒸発、減量、或いは劣化してしまうため、好ましくは
磁気記録媒体への磁化パターン形成後に潤滑層を形成す
る。
【0041】磁化パターンとしては、代表的には、サー
ボパターンなどの磁気ヘッド制御用パターンを形成す
る。制御用情報を含む制御用パターンは、その情報を用
いて磁気ヘッドなどの記録再生手段を制御するものであ
るが、例えば、磁気ヘッドをデータトラックに位置決め
するためのサーボ情報や、媒体上での磁気ヘッドの位置
を示すアドレス情報、磁気ヘッドによる記録再生速度を
制御するための同期情報などが含まれる。或いは、サー
ボ情報を後で書込むための、基準情報も含まれる。
【0042】通常、両面型磁気記録媒体であっても制御
用パターンは両面に形成する必要はなく、片面でよい。
磁気記録媒体を磁気記録装置に組みこんだ後、上記磁化
パターンを磁気ヘッドにより再生し信号を得、該信号を
基準として磁気記録媒体の両面にサーボバースト信号を
該磁気ヘッドにより記録することができるからである。
これにより簡易に精密なサーボ信号を得ることができ
る。従って、一面側にのみ磁化パターンを形成すれば、
他の一面側にサーティファイ検査を施すことができ、好
ましい。
【0043】更には、磁気記録装置1台につき複数の磁
気記録媒体が組み込まれている場合には、それらのうち
1枚の媒体の片面に制御用パターンが形成されていれば
よい。従って本発明においては、サーティファイを行わ
ない、媒体の他の一面にのみ磁化パターンが形成され
る。
【0044】続いてe)潤滑層形成工程が行われる。潤
滑層の形成は一般に潤滑剤の塗布により行われ、例えば
スピンコート法、引き上げ塗布法、スプレー塗布法等、
任意の塗布工程が用いられる。大量の媒体に短時間で均
一に潤滑層を形成するには引き上げ塗布法が適してい
る。潤滑層の形成は、通常、媒体の両面に同時に行われ
る。潤滑層塗布形成ののち、通常、焼成が行われる。
【0045】潤滑剤としては、エステル結合を有するパ
ーフルオロポリエーテル、ジアルキルアミドカルボン
酸、パークロロポリエーテル、ステアリン酸、ステアリ
ン酸ナトリウム、リン酸エステル等が好ましい。エステ
ル結合は分子内のどこにあってもよいが、末端にエステ
ル結合の官能基を有すると分子中の可動部が長くなり潤
滑性が得られ易いためより好ましい。
【0046】次いで、f)グライド検査が行われる。磁
気ヘッドで記録再生する際に媒体面に媒体と磁気ヘッド
の間隔以上の高さの突起があるとヘッドが突起にぶつか
り、ヘッドを損傷したり媒体に欠陥が発生する原因とな
る。本工程ではそのような高い突起の有無を検査する。
本工程は、信号の記録再生を行わないので、磁気記録媒
体の両面に施すことができる。
【0047】続いてg)サーティファイ検査が行われ
る。前述の通り、磁気記録媒体に対し、通常の記録再生
のように磁気ヘッドで所定の信号を記録したのち再生
し、得られた再生信号から、電気特性や欠陥の有無など
媒体の品質を確かめるものである。本発明においては、
サーティファイ検査を、媒体の所定の一面側にのみ行
う。これによれば他の一面側には信号の記録再生を行わ
ないので、他の一面側に制御用パターンなどの磁化パタ
ーンを自由に形成することができる。
【0048】最後にh)光検査が行われる。これは媒体
面に光を照射してその明暗により欠陥を検出する工程で
ある。本工程は、信号の記録再生を行わないので、磁気
記録媒体の両面に施すことができる。また、より精度の
高い検査を行うために、光検査は2回行われる場合もあ
る。以上説明した製造方法は一例であり、必要に応じ
て、順序の入れ替えや削除、或いは任意の工程の追加を
行って良い。
【0049】本発明においては、基板の反転は磁性層等
の成膜を反転させるサーティファイ検査に先立って所定
枚数毎に基板を反転させる。例えば、1枚目は反転させ
ず、2枚目は反転させ、3枚目は反転させず、4枚目は
反転させ、5枚目は反転させず・・・とする。基板反転
の頻度は、高いほど製造工程の不具合が検出しやすく、
最も好ましくは1枚毎に行うが、あまり頻度が高いとタ
クトが長くなる可能性があるので、通常、1枚〜10枚
毎に反転させる。
【0050】基板反転工程は任意の工程間に入れること
ができる。基板反転工程はできるだけ製造工程のできる
だけ後ろに入れることで、製造工程の不具合が最も検出
しやすく好ましい。特にはd)磁化パターン形成工程の
直前に入れると良く、例えばc)成膜工程とd)磁化パ
ターン形成工程の間である。ただしそれ以外の工程間に
基板反転工程を入れることで、どの工程のどの装置に不
具合が生じているかの原因特定が行えるという利点もあ
る。
【0051】本発明によれば、基板反転しながら片面サ
ーティファイ検査を行うので、製造工程のどこかで片面
のみに連続的にキズや欠陥が発生した場合にも、早期に
確実に発見でき、キズや欠陥の発生を防止するような対
策が素早く取れる。従って、基板反転することなく片面
サーティファイ検査を行う場合にはキズや欠陥の連続発
生が長い間発見できず、対処が遅れるといったことがな
い。
【0052】また、本発明において、片面サーティファ
イ検査工程で不合格となる媒体があった場合、以下のよ
うな対処も考えられる。仮に、基板反転を1枚毎に行
い、A面サーティファイ媒体、B面サーティファイ媒
体、A面サーティファイ媒体、B面サーティファイ媒
体、A面サーティファイ媒体、B面サーティファイ媒
体、・・・となるようにする。このときB面サーティフ
ァイ媒体に連続して不合格品が発生したときには、その
前後や間にあるA面サーティファイ媒体も不合格とす
る。
【0053】このとき、不具合が発生している工程を具
体的に特定したい場合には、基板反転工程を入れる位置
を変えることで、不具合発生工程を特定できる可能性が
ある。磁気記録媒体の製造工程は通常、所定以上の清浄
な環境下で一貫した製造ラインとして組み立てられてお
り、以上のような工程は、いずれも製造ラインに組み込
まれている。
【0054】さて、本発明者らは、例として磁気ディス
ク100枚の実際の検査データをもとに、本発明の方法
を適用した場合の、欠陥による不良品の検出率について
シミュレーションを行った。その結果、基板反転を行わ
ずに片面サーティファイを行った場合は最大20%の不
良品混入率が生じるのに対し、1枚毎に基板反転を行い
つつ片面サーティファイを行った場合は最大13%の不
良品混入率にとどまった。更に、上述のように連続して
不合格品が発生したときに間の媒体も不合格とするよう
な処置をすると、最大8%となった。
【0055】次に、磁化パターン形成方法について詳細
に説明する。本発明において好ましくは、局所加熱と外
部磁界印加を組み合わせて磁気記録媒体に磁化パターン
を形成する。本磁化パターン形成方法においては、第1
の外部磁界を印加し磁性層を予め所望の方向に均一に磁
化したのち、磁性層を局所的に加熱すると同時に第2の
外部磁界を印加し加熱部を該所望の方向とは逆方向に磁
化して磁化パターンを形成する。これにより、互いに逆
向きの磁区が明りょうに形成されるので、信号強度が強
くC/N及びS/Nが良好な磁化パターンが得られる。
【0056】まず、磁気記録媒体に強い第1外部磁界を
印加して、磁性層全体を所望の磁化方向に均一に磁化す
る。第1外部磁界を印加する手段は、磁気ヘッドを用い
てもよいし、電磁石または永久磁石を、所望の磁化方向
に磁界が生じるよう配置して用いてもよい。更にそれら
手段を組み合わせて使用してもよい。なお、所望の磁化
方向とは、磁化容易軸が面内方向にある媒体の場合に
は、データの記録/再生ヘッドの走行方向(媒体とヘッ
ドの相対移動方向)と同一又は逆方向であり、磁化容易
軸が面内方向に垂直にある場合には、垂直方向のいずれ
か(上向き、下向き)である。従ってそのように磁化さ
れるように、第1外部磁界を印加する。媒体が円板形状
である場合、第1外部磁界の印加方向は、周方向、半径
方向、板面に垂直方向のいずれかをとるのが好ましい。
【0057】また、磁性層全体を所望の方向に均一に磁
化するとは、磁性層の全部をほぼ同一方向に磁化するこ
とを言うが、厳密に全部ではなく、少なくとも磁化パタ
ーンを形成すべき領域が同一方向に磁化されていればよ
い。第1外部磁界の強さは磁性層の保磁力に合わせて設
定すればよいが、磁性層の室温での保磁力(静的保磁
力)の2倍以上の磁界によって磁化することが好まし
い。これより弱いと磁化が不十分となる可能性がある。
ただし、通常、磁界印加に用いる着磁装置の能力上、磁
性層の室温での保磁力の5倍以下程度である。室温とは
例えば25℃である。また磁気記録媒体の保磁力は、磁
性層(記録層)の保磁力とほぼ同じである。
【0058】磁性層は一般に静的保磁力(単に保磁力と
称することもある。)と動的保磁力を有するが、局所加
熱については、少なくとも磁性層の動的保磁力がある程
度低下する温度まで加熱できればよい。勿論、静的保磁
力が低下する温度まで加熱してもよい。好ましくは10
0℃以上に加熱する。加熱温度が100℃未満で外部磁
界の影響を受ける磁性層は、室温での磁区の安定性が低
い傾向がある。
【0059】ただし、加熱温度は所望の保磁力の低下が
得られる範囲で低いことが望ましい。例えば磁性層の磁
化消失温度やキュリー温度の近傍までである。加熱温度
が高すぎると加熱したい領域以外への熱拡散が起こりや
すく、パターンがぼやけてしまう虞がある。また、磁性
層が変形してしまう可能性がある。更に、通常、磁気記
録媒体の表面には潤滑剤からなる潤滑層が形成されてお
り、加熱による潤滑剤の劣化等の悪影響を防止するため
にも、加熱温度は低いほど好ましい。加熱により潤滑剤
が分解などの劣化を起こしたり気化して減少したりする
虞があるほか、特に近接露光の場合には気化した潤滑剤
がマスク等に付着する虞もある。従って本発明の磁化パ
ターン形成法を、潤滑層を備えた磁気記録媒体に工業的
に適用可能にするためにも、加熱温度はできるだけ低い
ことが望ましい。
【0060】このため加熱温度は磁性層のキュリー温度
以下とするのが好ましい。例えば300℃以下とするの
が好ましく、より好ましくは250℃以下であり、更に
好ましくは200℃以下である。次に、加熱と同時に印
加する第2の外部磁界の方向は、一般に、第1外部磁界
と逆方向である。媒体が円板形状である場合、第2の外
部磁界の印加方向は、周方向、半径方向、板面に垂直方
向のいずれかをとるのが好ましい。
【0061】なお、加熱のためにパルス状エネルギー線
を使用する際には、第2外部磁界は連続的に印加しても
パルス状に印加しても良い。また第2外部磁界がパルス
状磁界である場合は、パルス状磁界成分のみであっても
よいし、パルス状磁界成分と静磁界成分の組合せであっ
てもよい。このとき、パルス状磁界成分と静磁界成分の
合計を第2外部磁界の強度とする。
【0062】第2外部磁界の最大強度は、強いほど磁化
パターンが形成しやすい。磁気記録媒体の磁性層の特性
によって最適強度は異なるが、第2外部磁界が静磁界の
場合は、室温の保磁力(静的保磁力)の1/8以上であ
ることが好ましい。これより弱いと、加熱部が、冷却時
に周囲の磁区からの磁界の影響をうけて再び周囲と同じ
方向に磁化されてしまう可能性がある。ただし、磁性層
の室温での保磁力の2/3以下とするのが好ましく、1
/2倍以下とするのがより好ましい。これより大きい
と、加熱部の周囲の磁区も影響を受けてしまう可能性が
ある。
【0063】第2外部磁界がパルス状磁界の場合は、室
温の保磁力(静的保磁力)の2/3以上であることが好
ましい。あまり弱いと加熱領域が良好に磁化されない虞
がある。さらに好ましくは室温の静的保磁力の3/4以
上である。室温での静的保磁力より強い磁界をかけても
よい。ただし、磁性層の室温での動的保磁力より小さい
磁界とする。第2外部磁界がこれより大きいと、非加熱
領域の磁化に影響を与えてしまうからである。
【0064】なお本発明において、磁界強度の値H(O
e)は磁束密度の値B(Gauss)でそのまま代用で
きる。一般にB=μH(ただし、μは透磁率を表す)の
関係があるが、通常磁化パターンの形成は空気中で行わ
れるため、透磁率は1であって、B=Hの関係が成り立
つからである。第2外部磁界を印加する手段は、磁気ヘ
ッドを用いてもよいし、電磁石または、永久磁石を所望
の磁化方向に磁界が生じるよう複数個配置して用いても
よい、更にそれらの異なる手段を組み合わせて使用して
もよい。高密度記録に適した高保磁力媒体を効率よく磁
化するためには、フェライト磁石、ネオジム系希土類磁
石、サマリウムコバルト系希土類磁石などの永久磁石が
好適である。
【0065】第2外部磁界がパルス状磁界である場合
は、パルス状磁界印加手段のみであってもよいし、パル
ス状磁界印加手段と静磁界印加手段の組合せであっても
よい。例えば前者では、電磁石などでパルス状磁界のみ
を発生する。例えば後者では、永久磁石または電磁石に
よってある程度の大きさの静磁界を与えておき、それ以
上の磁界を電磁石でパルス状に印加する。インダクタン
スの小さな空芯コイルを用いると、パルス幅を狭くでき
磁界印加時間を短くできるため好ましい。また、永久磁
石のかわりに他のヨーク型などの電磁石を用いてもよ
い。
【0066】静磁界とパルス状磁界を組み合わせると、
パルス状に印加する磁界を小さくすることができる。一
般に電磁石は磁界が大きくなるほどパルス幅を短くする
ことが困難になるので、それだけパルス幅を短くしやす
い。或いはパルス状磁界は、常時磁界を発生する磁石を
短時間のみ磁気記録媒体に接近させる方式によって印加
することもできる。例えば、磁気記録媒体の一部に永久
磁石によって磁界を印加しつつ、媒体を所定以上の速度
で回転させればよい。
【0067】また、第2外部磁界が静磁界とパルス状磁
界の組み合わせの場合は、静磁界の磁界強度を磁性層の
室温での静的保磁力より小さくする。好ましくは静的保
磁力の2/3以下とし、より好ましくは1/2倍以下と
する。あまり大きいと、形成した磁化パターンに影響を
与えてしまい出力が落ちるだけでなく、モジュレーショ
ンが悪化する。下限は特にないが、あまり弱いと静磁界
を用いる意味が小さくなるので、例えば磁性層の室温で
の静的保磁力の1/8以上とする。
【0068】次に、第2外部磁界がパルス状磁界である
場合のパルス幅について説明する。本発明では第2外部
磁界のパルス状磁界成分のパルス幅を、単に第2外部磁
界のパルス幅と称する。ここで、磁界のパルス幅とは半
値幅を指す。第2外部磁界のパルス幅は通常100ms
ec以下とする。好ましくは10msec以下とする。
第2外部磁界のパルス幅を短くするほど印加できる磁界
の上限値が大きくなる。動的保磁力の値は磁界の印加時
間によって変化し、第2外部磁界のパルス幅を短くする
ほど磁性層の室温での動的保磁力が大きくなるからであ
る。より好ましくは1msec以下とする。
【0069】ただし好ましくは10nsec以上とす
る。あまり短いとそれだけ動的保磁力が大きくなるた
め、加熱領域を磁化するために必要な第2外部磁界が大
きくなってしまう。また、磁界の大きさにもよるが、電
磁石の特性上磁界の立上がり、立下がりには時間を要す
るので、パルス幅を短くするのには限界がある。より好
ましくは100nsec以上とする。ここで、磁界のパ
ルス幅は半値幅を指す。
【0070】局所加熱にパルス状エネルギー線を使用す
る場合は、第2外部磁界のパルス幅はパルス状エネルギ
ー線のパルス幅以上とする。これ以下であると、局所加
熱中に磁界が変化してしまうので磁化パターンが良好に
形成されないためである。またパルス状エネルギー線と
パルス状の第2外部磁界を同期させ、同時に印加するの
が好ましい。通常、エネルギー線のパルス幅より磁界の
パルス幅のほうが長いと考えられるが、このときは第2
外部磁界のパルスを印加し、磁界が最大になるところで
エネルギー線のパルスが印加されるよう制御するのが好
ましい。
【0071】動的保磁力を高めた磁気記録媒体やAFC
媒体には、第2外部磁界としてパルス状磁界を適用する
と特に効果が高い。例えば、記録用の磁性層とともに熱
的に安定性を保つための安定化磁性層を有する、2層の
磁性層を備えた磁気記録媒体が挙げられる。安定化磁性
層が記録用磁性層の瞬時の磁化反転を抑えるように働く
ため、動的保磁力が高く、従来法では磁化パターンが形
成しにくい。このような媒体に静的保磁力近傍或いはそ
れ以上の外部磁界を、パルス状に与えると良好な磁化パ
ターンが形成できる。
【0072】第2の外部磁界は、外部磁界も該加熱され
た広い領域に亘って印加することで、複数の磁化パター
ンを一度に形成することができる。局所加熱が磁気記録
媒体全面に一度に行える場合は、加熱と同時に第2の外
部磁界も媒体全面に印加し磁化パターンを形成すること
が望ましい。これにより、より短時間での磁化パターン
形成が可能となり大きくコストを削減できる。また、磁
界を媒体の一部分にのみ印加するには、それ以外の領域
への磁界が及ばないよう磁石配置を工夫したり特定の手
段を講じることが多いが、全面に印加する場合はその必
要がない。なおかつ、回転機構或いは移動機構が不要と
なるので、装置構成も簡単になり磁気記録媒体が安価に
得られる。
【0073】例えば、媒体が直径が2.5インチ以下の
小径のディスク状磁気記録媒体であると、簡単な配置や
手段によってディスク全面へのエネルギー線照射、磁界
印加が行え好ましい。より好ましくは直径1インチ以下
である。また、ディスク状磁気記録媒体に対し、円周方
向に磁界を印加したい場合は、媒体の中心に垂直方向の
大きなパルス電流を流すことによって、簡便に円周方向
の磁界を発生させることができる。これは特に、直径1
インチ以下の小径のディスク状磁気記録媒体に適用する
と好ましい。
【0074】次に、本技術における加熱手段は、磁性層
表面を部分的に加熱できる機能を備えていればよいが、
不要な部分への熱拡散防止やコントロール性を考える
と、パワーコントロール、加熱する部位の大きさが制御
しやすいレーザ等のエネルギー線を利用する。マスクを
併用することで、エネルギー線をマスクを介して照射し
複数の磁化パターンを一度に形成することができるた
め、磁化パターン形成工程が短時間となりかつ簡便であ
る。
【0075】エネルギー線は連続照射よりもパルス状に
して加熱部位の制御や加熱温度の制御を行うのが好まし
い。特にパルスレーザ光源の使用が好適である。パルス
レーザ光源はレーザをパルス状に断続的に発振するもの
であり、連続レーザを音響光学素子(AO)や電気光学
素子(EO)などの光学部品で断続させパルス化するの
に比して、パワー尖頭値の高いレーザをごく短時間に照
射することができ熱の蓄積が起こりにくく非常に好まし
い。
【0076】連続レーザを光学部品によりパルス化した
場合、パルス内ではそのパルス幅に亘ってほぼ同じパワ
ーを持つ。一方パルスレーザ光源は、例えば光源内で共
振によりエネルギーをためて、パルスとしてレーザを一
度に放出するため、パルス内では尖頭のパワーが非常に
大きく、その後小さくなっていく。本発明では、コント
ラストが高く精度の高い磁化パターンを形成するため
に、ごく短時間に急激に加熱しその後急冷させるのが好
ましいため、パルスレーザ光源の使用が適している。
【0077】磁化パターンが形成される媒体面は、パル
ス状エネルギー線の照射時と非照射時で温度差が大きい
方が、パターンのコントラストを上げ、或いは記録密度
を上げるために好ましい。従ってパルス状エネルギー線
の非照射時には室温以下程度になっているのが好まし
い。室温とは25℃程度である。なお、パルス状エネル
ギー線を使用する際に、外部磁界は連続的に印加しても
パルス状に印加しても良い。
【0078】エネルギー線の波長は、1100nm以下
であることが好ましい。これより波長が短いと回折作用
が小さく分解能が上がるため、微細な磁化パターンを形
成しやすい。更に好ましくは、600nm以下の波長で
ある。高分解能であるだけでなく、回折が小さいため間
隙によるマスクと磁気記録媒体のスペーシングも広くと
れハンドリングがしやすく、磁化パターン形成装置が構
成しやすくなるという利点が生まれる。また、波長は1
50nm以上であるのが好ましい。150nm未満で
は、マスクに用いる合成石英の吸収が大きくなり、加熱
が不十分となりやすい。波長を350nm以上とすれ
ば、光学ガラスをマスクとして使用することもできる。
【0079】具体的には、エキシマレーザ(157,1
93,248,308,351nm)、YAGのQスイ
ッチレーザ(1064nm)の2倍波(532nm)、
3倍波(355nm)、或いは4倍波(266nm)、
Arレーザ(488nm、514nm)、ルビーレーザ
(694nm)などである。エネルギー線のパワーは、
外部磁界の大きさによって最適な値を選べばよいが、パ
ルス状エネルギー線の1パルス当たりのパワーは100
0mJ/cm2以下とすることが好ましい。これより大
きなパワーをかけると、パルス状エネルギー線によって
該磁気記録媒体表面が損傷を受け変形を起こす可能性が
ある。変形により媒体の粗度Raが3nm以上やうねり
Waが5nm以上に大きくなると、浮上型/接触型ヘッ
ドの走行に支障を来すおそれがある。
【0080】より好ましくは500mJ/cm2以下で
あり、更に好ましくは200mJ/cm2以下である。
この領域であると比較的熱拡散の大きな基板を用いた場
合でも分解能の高い磁化パターンが形成しやすい。ま
た、パワーは10mJ/cm2以上とするのが好まし
い。これより小さいと、磁性層の温度が上がりにくく磁
気転写が起こりにくい。なお、エネルギー線のディフラ
クションの影響がパターン幅により変わるので、パター
ン幅に応じて最適なパワーも変化する。また、エネルギ
ー線の波長が短いほど、印加可能なパワーの上限値は低
下する傾向にある。
【0081】また、エネルギー線による磁性層、保護層
の損傷が心配される場合は、パルス状エネルギー線のパ
ワーを小さくして、該パルス状エネルギー線と同時に印
加される磁界強度を上げるといった手段を取ることもで
きる。本発明においては、磁化パターン形成時に磁気記
録媒体に潤滑層を設ける必要がないので、エネルギー線
による潤滑層の分解、劣化、昇華等を考慮しなくてよ
く、例えばエネルギー線の強度を従来より上げられると
いう利点がある。
【0082】パルス状エネルギー線のパルス幅は、1μ
sec以下であることが望ましい。これよりパルス幅が
広いと磁気記録媒体に与えたエネルギーによる発熱が分
散して、分解能が低下しやすい。1パルス当たりのパワ
ーが同じ場合、パルス幅を短くし一度に強いエネルギー
を照射した方が、熱拡散が小さく磁化パターンの分解能
が高くなる傾向にある。より好ましくは100nsec
以下である。この領域であるとAlなど金属の比較的熱
拡散の大きな基板を用いた場合でも分解能の高い磁化パ
ターンが形成しやすい。最小幅が2μm以下のパターン
を形成する際には、パルス幅を25nsec以下とする
のがよい。即ち、分解能を重視すれば、パルス幅は短い
ほど良い。また、パルス幅は1nsec以上であるのが
好ましい。磁性層の磁化反転が完了するまでの時間、加
熱を保持しておくのが好ましいからである。
【0083】なお、本願においてパターンの最小幅と
は、パターン中の最も狭い長さを言う。四角形のパター
ンであれば短辺、円形ならば直径、楕円形ならば短径で
ある。なお、パルス状レーザの一種として、モードロッ
クレーザのようにピコ秒、フェムト秒レベルの超短パル
スを高周波で発生できるレーザがある。超短パルスを高
周波で照射している期間においては、各々の超短パルス
間のごく短い時間はレーザが照射されないが非常に短い
時間であるため加熱部はほとんど冷却されない。すなわ
ち、一旦キュリー温度以上に昇温された領域はキュリー
温度以上に保たれる。
【0084】従ってこのような場合、連続照射期間(超
短パルス間のレーザが照射されない時間も含めた連続照
射期間)を1パルスとする。また連続照射期間の照射エ
ネルギー量の積分値を1パルス当たりのパワー(mJ/
cm2)とする。本技術においては、形成すべき磁化パ
ターンに応じたパターンを有するマスクを介して磁気記
録媒体にエネルギー線を照射するのが好ましい。マスク
は、エネルギー線の透過部と非透過部を有するいわゆる
フォトマスクであり、エネルギー線の強度分布を形成す
べき磁化パターンに対応して変化させ、磁気ディスク面
上にエネルギー線の濃淡(強度分布)を形成する。これ
により、複数又は広い面積の磁化パターンを一度に形成
することができるため、磁化パターン形成工程が短時間
かつ簡便なものとなる。フォトマスクは簡単かつ安価に
作成できる点で好ましい。
【0085】マスクは磁気ディスク全面を覆うものでな
くてもよい。磁化パターンの繰り返し単位を含む大きさ
があれば、それを移動させて使用することができる。ま
た、マスクの材質は限定されないが、本発明においてマ
スクを非磁性材料で構成すると、どのようなパターン形
状でも均一な明瞭さで磁化パターンが形成でき、均一で
強い再生信号が得られる。
【0086】強磁性体を含むマスクを使用した場合は、
磁化で磁界分布が乱される虞がある。強磁性の性質上、
磁気ディスクの半径方向或いは、半径方向に延びた円弧
状のパターンから斜傾したパターン形状の場合は、磁化
遷移部分で磁区が互いに十分対抗しないので良質の信号
が得にくい。マスクはエネルギー線の光源と磁気記録媒
体の間に配置する。磁化パターンの精度を重視するなら
ば、マスクの全部又は一部を媒体に接触させるのが好ま
しい。レーザ光の回折の影響を極力少なくでき、高い分
解能を持った磁化パターンを形成できる。例えばマスク
を媒体上に静置した場合は、媒体表面の数μm程度のう
ねりにより、媒体と接触する部分としない部分ができ
る。ただし、媒体に圧痕を形成したり損傷することのな
いよう、マスクと媒体に対する加圧は100g/cm2
以下とする。
【0087】ただし、欠陥や傷を少なくするためには、
少なくとも媒体の磁化パターンを形成する領域では、マ
スクと媒体とのあいだに間隙を設けるのが好ましい。ゴ
ミ等の挟み込みによる媒体やマスクの傷つき、欠陥発生
を抑えることができる。本発明においては、磁化パター
ン形成前に潤滑層を設ける必要がないので、特に、マス
クへの潤滑層の付着とそれによるマスクやパターンの劣
化を防ぐことができる。
【0088】従来、潤滑層が設けられたディスクとマス
クを接触させた状態で大パワーのエネルギー線を照射す
ると潤滑剤の急激な気化により爆発状態となり、潤滑剤
が飛散したり、更にはマスクが破損したりする虞があっ
たが、そのような心配もない。磁気記録媒体の磁化パタ
ーン形成領域とマスクの間隙を保つ方法としては、両者
を一定距離に保てる方法であればよい。例えばマスクと
媒体とを特定の装置により保持して一定距離を保っても
良い。また、両者のあいだの、磁化パターン形成領域以
外の場所にスペーサを挿入してもよい。マスク自体に、
スペーサを一体形成しても良い。
【0089】マスクと磁気記録媒体とのあいだに、媒体
の磁化パターン形成領域の外周部又は/及び内周部にス
ペーサを設けると磁気記録媒体表面のうねりを矯正する
効果が生まれるので磁化パターン形成の精度が上がるの
でよい。マスクを介して照射するレーザビームは、ビー
ム径を大径又は横に細長い楕円形等として、複数トラッ
ク分又は複数セクター分の磁化パターンを一括して照射
すれば、記録効率が一段と上がり、これからの容量の伸
びに伴いサーボ記録時間が増大するといった問題も改善
され非常に好ましい。
【0090】フォトマスクは、所望の磁化パターンに相
当する透過部と非透過部を備えているマスクであればよ
いが、石英ガラス、ソーダライムガラス等の透明原盤上
にCr等の金属をスパッタリング形成し、その上にフォ
トレジストを塗布し、エッチング等によって、所望の透
過部と非透過部を作成することができる。この場合は原
盤上にCr層を有する部分がエネルギー線非透過部、原
盤のみの部分が透過部となる。
【0091】このように形成したマスクは通常凹凸を有
しており、凸部がエネルギー線に対して非透過で、凸部
を媒体に近接させ、或いは略接触させる。或いはまた、
このようなマスクを形成した後に凹部にエネルギー線に
透明である材料を埋め込み、媒体との略接触面を平坦に
して使用することもできる。スペーサの材質は硬質のも
のが良い。また、パターン形成に外部磁界を用いるので
磁化されないものが良い。好ましくは、ステンレス、銅
などの金属や、ポリイミドなどの樹脂である。高さは任
意だが、通常、数μm〜数百μmである。
【0092】フォトマスクは、前述の如く透明基材にエ
ネルギー線の非透過層を形成することにより、透過部と
非透過部とを設けたものが用いられる。透明基材として
は、エネルギー線を十分透過するものであれば良いが、
石英を主とする材料で構成されているのが好ましい。石
英ガラスは比較的高価ではあるが、紫外域のエネルギー
線に対して透過性が高いため、特に微細加工がしやすい
300nm以下の短波長のエネルギー線を使用すること
ができるという利点がある。これより長い波長のエネル
ギー線を使用する場合は、コストの点から光学ガラスを
使うのがよい。透明基材の厚さは制限されないが基材の
たわみが生じず、安定的に平坦度をだすためには、通常
1〜10mm程度が好ましい。
【0093】また、フォトマスクの非透過層は、クロム
層と酸化クロム層との積層膜であることが好ましく、石
英ガラス基材上に、クロム層と酸化クロム層を形成して
非透過層を形成したフォトマスクとするのが好ましい。
即ち、透過部の石英ガラスは反射率は概ね5%程度であ
り、一方でクロムは非常に反射率が高いので、その表面
を反射率の低い他の層で覆うのが好ましい。例えば、非
透過部表面を反射率約16%の酸化クロムで覆う。媒体
面で反射したエネルギー線が再度マスク面で反射して媒
体に戻ることを防止することができ好ましい。酸化クロ
ム層は反射率が低い上にクロムを酸化させるのみで形成
することができ、また、クロム層への密着性にも優れる
点においても好ましい。
【0094】このようなフォトマスクの製造法の一例と
しては、石英などのマスク基材の上に、まずクロムを成
膜し、その上に酸化クロムを成膜する。クロムの成膜方
法としては、スパッター、蒸着、塗布などの方法があ
る。ただし、緻密な膜を形成するという観点からは、ス
パッター法が好ましい。また、酸化クロムの成膜方法も
同様の手法が用いられるが、クロムを酸化させるために
酸素と反応させながら成膜する方法も好ましく採用する
ことができる。
【0095】次いで、クロム、酸化クロムの積層膜上
に、フォトレジストをスピンコート等により塗布し、所
望のパターンに露光する。露光後、そのパターンに従
い、クロム、酸化クロムをエッチングして除去すること
により、マスク基板上に非透過層を形成してフォトマス
クを得ることができる。なお、クロムと酸化クロムとの
積層膜で形成される非透過層の各膜の膜厚は、十分な非
透過性(エネルギー線の遮光性)と所望の反射率、エネ
ルギー線耐久性が得られる程度であれば良く、膜の緻密
性、即ち成膜方法によっても異なるが、概ね40nm以
上が好ましい。エネルギー線耐久性を重視すれば厚いほ
ど好ましく、例えば160nm以上が好ましく、より好
ましくは200nm以上である。但しあまり厚いと成膜
時間が長くなりすぎるため、500nm以下が好まし
い。クロム膜と酸化クロム膜の両方を付ける場合には、
クロム膜の膜厚が20〜200nm、酸化クロム膜の膜
厚が20〜200nmの範囲であることが好ましい。
【0096】このようにして非透過層を形成したフォト
マスクは、この非透過層による凸部が形成されたものと
なる。このフォトマスクは一般に非透過層の形成面が磁
気ディスクに対面するように配置する。なお、非透過層
間の凹部に、エネルギー線を透過する材料を埋め込み、
フォトマスクの非透過層の形成面を平坦にして使用して
も良い。
【0097】本発明に係る磁気記録媒体の好ましい層構
成について説明する。基板と磁性層との間には下地層等
を形成してもよい。下地層は、結晶を微細化し、かつそ
の結晶面の配向を制御することを目的とし、Crを主成
分とするものが好ましく用いられる。Crを主成分とす
る下地層の材料としては、純Crのほか、記録層との結
晶マッチングなどの目的で、CrにV、Ti、Mo、Z
r、Hf、Ta、W、Ge、Nb、Si、Cu、Bから
選ばれる1又は2以上の元素を添加した合金や酸化Cr
なども含む。
【0098】中でも純Cr、又はCrにTi、Mo、
W、V、Ta、Si、Nb、Zr及びHfから選ばれる
1又は2以上の元素を添加した合金が好ましい。これら
第二、第三元素の含有量はそれぞれの元素によって最適
な量が異なるが、一般には1原子%〜50原子%が好ま
しく、より好ましくは5原子%〜30原子%、さらに好
ましくは5原子%〜20原子%の範囲である。
【0099】下地層の膜厚はこの異方性を発現させ得る
に十分なものであればよいが、好ましくは0.1〜50
nmであり、より好ましくは0.3〜30nm、さらに
好ましくは0.5〜10nmである。Crを主成分とす
る下地層の成膜時は基板加熱を行っても行わなくてもよ
い。下地層の上には、記録層(磁性層)との間に、場合
により軟磁性層を設けても良い。特に磁化遷移ノイズの
少ないキーパー媒体、或いは磁区が媒体の面内に対して
垂直方向にある垂直記録媒体には、効果が大きく、好適
に用いられる。
【0100】軟磁性層は透磁率が比較的高く損失の少な
いものであればよいが、NiFeや、それに第3元素と
してMo等を添加した合金が好適に用いられる。最適な
透磁率は、データの記録に利用されるヘッドや記録層の
特性によっても大きく変わるが、概して、最大透磁率が
10〜1000000(H/m)程度であることが好ま
しい。
【0101】或いはまた、Crを主成分とする下地層上
に必要に応じ中間層を設けてもよい。例えばCoCr系
中間層を設けると、磁性層の結晶配向が制御しやすく好
ましい。次に記録層(磁性層)を形成する。記録層と軟
磁性層の間には下地層と同一材料の層又は他の非磁性材
料が挿入されていてもよい。記録層の成膜時は、基板加
熱を行っても行わなくてもよい。
【0102】記録層としては、Co合金磁性層、TbF
eCoを代表とする希土類系磁性層、CoとPdの積層
膜を代表とする遷移金属と貴金属系の積層膜等が好まし
く用いられる。Co合金磁性層としては、通常、純Co
やCoNi、CoSm、CoCrTa、CoNiCr、
CoCrPtなどの磁性材料として一般に用いられるC
o合金磁性材料を用いうる。これらのCo合金に更にN
i、Cr、Pt、Ta、W、Bなどの元素やSiO2
の化合物を加えたものでも良い。例えばCoCrPtT
a、CoCrPtB、CoNiPt、CoNiCrPt
B等が挙げられる。Co合金磁性層の膜厚は任意である
が、好ましくは5nm以上、より好ましくは10nm以
上である。また、好ましくは50nm以下、より好まし
くは30nm以下である。また、本記録層は、適当な非
磁性の中間層を介して、或いは直接2層以上積層しても
よい。その時、積層される磁性材料の組成は、同じであ
っても異なっていてもよい。
【0103】希土類系磁性層としては、磁性材料として
一般的なものを用いうるが、例えばTbFeCo、Gd
FeCo、DyFeCo、TbFeなどが挙げられる。
これらの希土類合金にTb、Dy、Hoなどを添加して
もよい。酸化劣化防止の目的からTi、Al、Ptが添
加されていてもよい。希土類系磁性層の膜厚は、任意で
あるが、通常5〜100nm程度である。また、本記録
層は、適当な非磁性の中間層を介して、或いは直接2層
以上積層してもよい。その時、積層される磁性材料の組
成は、同じであっても異なっていてもよい。特に希土類
系磁性層は、アモルファス構造膜であり、かつメディア
面内に対して垂直方向に磁化を持つため高記録密度記録
に適し、高密度かつ高精度に磁化パターンを形成できる
本発明の方法がより効果的に適用できる。
【0104】同様に垂直磁気記録が行える、遷移金属と
貴金属系の積層膜としては、磁性材料として一般的なも
のを用いうるが、例えばCo/Pd、Co/Pt、Fe
/Pt、Fe/Au、Fe/Agなどが挙げられる。こ
れらの積層膜材料の遷移金属、貴金属は、特に純粋なも
のでなくてもよく、それらを主とする合金であってもよ
い。積層膜の膜厚は、任意であるが、通常5〜1000
nm程度である。また、必要に応じて3種以上の材料の
積層であってもよい。
【0105】また最近、磁区の熱安定性を高めるために
AFC(Anti-Ferromagnetic coupled)媒体が提案されて
いる。数オングストロームのRu層等を介して2層以上
の磁性層(主磁性層と下引き磁性層)を積層し、Ru層
の上下で磁気的にカップリングさせて主磁性層の熱的安
定性を高めた媒体である。この媒体は見かけ上の保磁力
が大きくなり、磁化の反転には大きな磁界が必要とな
る。
【0106】本発明においては、記録層は薄い方が好ま
しい。記録層が厚いと、記録層を加熱したときの膜厚方
向の熱の伝わりが悪く、良好に磁化されないおそれがあ
るためである。このため記録層膜厚は200nm以下が
好ましい。ただし、磁化を保持するために、記録層膜厚
は5nm以上が好ましい。本発明において、記録層とし
ての磁性層は、室温において磁化を保持し、加熱と同時
に外部磁界を印加されて消磁されるか逆方向に磁化され
る。
【0107】磁性層の室温での保磁力(静的保磁力)
は、室温において磁化を保持し、かつ適当な外部磁界に
より均一に磁化されるものである必要がある。磁性層の
室温での保磁力を2000Oe以上とすることで、小さ
な磁区が保持でき高密度記録に適した媒体が得られる。
より好ましくは3000Oe以上である。加熱と外部磁
界による転写方式によれば、磁性層を加熱し保磁力を十
分に下げて磁化パターンを形成するため、保磁力の大き
い媒体にも十分に磁化パターンが形成できる。
【0108】ただし、好ましくは20kOe以下とす
る。20kOeを超えると、一括磁化のために大きな外
部磁界が必要となり、また通常の磁気記録が困難となる
可能性がある。より好ましくは15kOe以下とし、更
に好ましくは10kOe以下とする。磁性層の保磁力と
局所加熱温度、第2外部磁界強度について説明すると、
例えば室温において保磁力が3500〜4000Oeの
媒体は、通常、温度上昇に伴い、10〜15Oe/℃の
割合で保磁力が線形に減少し、例えば150℃で200
0Oe程度になる。3000Oe程度であれば外部磁界
印加手段で容易に発生させることができるので、150
℃程度の加熱でも十分に磁化パターンが形成できる。
【0109】さて、磁性層の動的な保磁力は、高密度に
記録した情報を安定に保持するためには大きいものとな
る。動的保磁力は通常、磁界強度を1sec以下の短時
間で変化させたときに測定される保磁力、つまりパルス
幅が1sec以下の磁界に対する保磁力である。但しそ
の値は磁界や熱の印加時間によって変わる。好ましく
は、1secでの動的保磁力が静的保磁力の2倍以上で
ある。但し、あまり大きいと第2外部磁界による磁化の
ために大きな磁界強度が必要になるので20kOe以下
が好ましい。
【0110】以下に、磁気記録媒体の動的保磁力(記録
層としての磁性層の保磁力)の測定手順の一例を示す。 1.印加時間t=10secにおける媒体の保磁力を求
める。 1.1 最大磁界強度(20kOe)まで磁界を印加
し,媒体を飽和させる。
【0111】1.2 負の方向(飽和方向と反対向き)
に所定強度の磁界H1を印加する。 1.3 その磁界下で10sec保持する。 1.4 磁界をゼロに戻す。 1.5 1.4の時の磁化値を読みとると、残留磁化値
M1が得られる。
【0112】1.6 1.2とは少し印加磁界強度を変
えて同じ測定(1.1〜1.5)を繰り返す。合計4点
の磁界強度H1,H2,H3,H4での残留磁化値M
1、M2、M3,M4が得られる。 1.7 この4点から残留磁化Mが0となる印加磁界強
度Hを求める。これが印加時間t=10secにおける
媒体の保磁力となる。
【0113】2.印加時間tを60sec、100se
c、600secについて同じ測定を行い、それぞれの
印加時間での保磁力を求める。 3.以上で得られた10sec、60sec、100s
ec、600secでの保磁力の値から外挿して、より
短い印加時間での保磁力を求めることができる。
【0114】例えば印加時間1nsecでの動的保磁力
も求められる。磁性層は、室温において磁化を保持しつ
つ、適当な加熱温度では弱い外部磁界で磁化されるもの
である必要がある。また室温と磁化消失温度との差が大
きい方が磁化パターンの磁区が明瞭に形成しやすい。こ
のため磁化消失温度は高いほうが好ましく、100℃以
上が好ましくより好ましくは150℃以上である。例え
ば、キュリー温度近傍(キュリー温度のやや下)や補償
温度近傍に磁化消失温度がある。
【0115】キュリー温度は、好ましくは100℃以上
である。100℃未満では、室温での磁区の安定性が低
い傾向がある。より好ましくは150℃以上である。ま
た好ましくは700℃以下である。磁性層をあまり高温
に加熱すると、変形してしまう可能性があるためであ
る。なお、本発明においては、AFC(Anti-Ferromagne
tic coupled)媒体のキュリー温度とは、主磁性層のキュ
リー温度ではなく媒体全体の見かけ上のキュリー温度を
言う。
【0116】磁気記録媒体が面内磁気記録媒体である場
合、高密度用の高い保磁力を持った磁気記録媒体に対し
ては従来の磁気転写法では飽和記録が難しく、磁界強度
の高い磁化パターン生成が困難となり、半値幅も広がっ
てしまう。このような高記録密度に適した面内記録媒体
でも、本方法によれば良好な磁化パターン形成が可能と
なる。特に、該磁性層の飽和磁化が50emu/cc以
上である場合は、反磁界の影響が大きいので本発明を適
用する効果が大きい。
【0117】100emu/cc以上だとより効果が高
い。ただしあまり大きいと磁化パターンの形成がしにく
いため、500emu/cc以下が好ましい。磁気記録
媒体が垂直磁気記録媒体であり、磁化パターンが比較的
大きく1磁区の単位体積が大きい場合は、飽和磁化が大
きくなり、磁気的な減磁作用で磁化反転が起こりやすい
ためそれがノイズとなり半値幅を悪化させる。しかし、
本発明では、軟磁性を使用した下地層の併用で、これら
の媒体にも良好な記録が可能となる。
【0118】これら記録層は、記録容量増大などのため
に、二層以上設けてもよい。このとき、間には他の層を
介するのが好ましい。本発明においては、磁性層上に保
護層を形成するのが好ましい。すなわち、媒体の最表面
を硬質の保護層により覆う。保護層はヘッドや衝突や塵
埃・ゴミ等のマスクとの挟み込みによる磁性層の損傷を
防ぐ働きをする。本発明のようにマスクを用いた磁化パ
ターン形成法を適用する際には、マスクとの接触から媒
体を保護する働きもある。
【0119】また、本発明において保護層は、加熱され
た磁性層の酸化を防止する効果もある。磁性層は一般に
酸化されやすく、加熱されると更に酸化されやすい。本
発明では磁性層をエネルギー線などで局所的に加熱する
ため、酸化を防ぐための保護層を磁性層上に予め形成し
ておくのが望ましい。磁性層が複数層ある場合には、最
表面に近い磁性層の上に保護層を設ければよい。保護層
は磁性層上に直接設けても良いし、必要に応じて間に他
の働きをする層をはさんでも良い。
【0120】エネルギー線の一部は保護層でも吸収さ
れ、熱伝導によって磁性層を局所的に加熱する働きをす
る。このため保護層が厚すぎると横方向への熱伝導によ
り磁化パターンがぼやけてしまう可能性があるので、膜
厚は薄い方が好ましい。また記録再生時の磁性層とヘッ
ドとの距離を小さくするためにも薄い方が好ましい。従
って50nm以下が好ましく、より好ましくは30nm
以下、さらに好ましくは20nm以下である。ただし、
充分な耐久性を得るためには0.1nm以上が好まし
く、より好ましくは1nm以上である。
【0121】保護層としては、硬質で酸化に強い性質を
有していればよい。一般にカーボン、水素化カーボン、
窒素化カーボン、アモルファスカーボン、SiC等の炭
素質層やSiO2、Zr23、SiN、TiNなどが用
いられる。保護層が磁性を有する材料であっても良い。
特にヘッドと磁性層の距離を極限まで近づけるために
は、非常に硬質の保護層を薄く設けることが好ましい。
従って耐衝撃性及び潤滑性の点で炭素質保護膜が好まし
く、特にダイヤモンドライクカーボンが好ましい。エネ
ルギー線による磁性層の損傷防止の役割を果たすだけで
なく、ヘッドによる磁性層の損傷にも極めて強くなる。
本発明の磁化パターン形成法は、炭素質保護層のような
不透明な保護層に対しても適用できる。
【0122】また、保護層が2層以上の層から構成され
ていてもよい。磁性層の直上の保護層としてCrを主成
分とする層を設けると、磁性層への酸素透過を防ぐ効果
が高く好ましい。更に保護層上には潤滑層を形成するの
が好ましい。媒体のマスク及び磁気ヘッドによる損傷を
防ぐ機能を持つ。
【0123】潤滑層の形成は一般に潤滑剤の塗布により
行われ、例えばスピンコート法、引き上げ塗布法、スプ
レー塗布法等、任意の塗布工程が用いられる。蒸着法で
成膜してもよい。大量の媒体に短時間で均一に潤滑層を
形成するには引き上げ塗布法が適している。潤滑層に用
いる潤滑剤としては、フッ素系潤滑剤、炭化水素系潤滑
剤及びこれらの混合物等が挙げられる。特にエステル結
合を有するパーフルオロポリエーテル、ジアルキルアミ
ドカルボン酸、パークロロポリエーテル、ステアリン
酸、ステアリン酸ナトリウム、リン酸エステル等が好ま
しい。エステル結合は分子内のどこにあってもよいが、
末端にエステル結合の官能基を有すると分子中の可動部
が長くなり潤滑性が得られ易いためより好ましい。
【0124】中でも主鎖に−Ca2aO−単位(但し、
aは1〜4の整数)を有し、末端にエステル結合の官能
基を有するパーフルオロポリエーテルが好ましい。より
好ましくは、下記の一般式(I)で示されるパーフルオ
ロエーテルである。 R−O−(A1−O−A2−O)x−R (I) (ただし、A1、A2はそれぞれCF2および/またはC2
4で構成され、A1とA 2を構成するCF2とC24の割
合(CF2/C24)が5/1〜1/5であり、Xは1
0〜500、Rはヘテロ原子を含む炭素数1〜20のア
ルキル基もしくはフッ素置換アルキル基を示す。) 例えば、アウジモント社製Fomblin−Z−DOL
はCF2CF2OとCF 2Oの重合体で直鎖構造を有し、
両末端にエステル基−COOR(但し、Rはフッ素で置
換されていてもよいアルキル基を表す。)を有する。ま
た、ダイキン工業社製Demnumタイプ(SPやS
Y)はヘキサフルオロプロピレンオキシドのホモポリマ
ーで、片方の末端にエステル基−COOR(但し、Rは
フッ素で置換されていてもよいアルキル基を表す。)を
有する。
【0125】潤滑剤の数平均分子量は100〜1000
0の範囲内が好ましい。より好ましくは数平均分子量が
2000〜6000である。分子量が低いと一般的に蒸
気圧が高く、塗布した後にわずかずつ蒸発し、時間と共
に所望の膜厚から遠ざかってしまう。逆に分子量が高い
場合は、一般的に粘性が高く、所望の潤滑性が得られな
い時がある。
【0126】好ましくは、アウジモント社製Fombl
in−Z−DOL(商品名)、Fomblin−Z−T
etraol(商品名)等が用いられる。また、これら
を溶解させる溶媒としては例えばフロン系、アルコール
系、炭化水素系、ケトン系、エーテル系、フッ素系、芳
香族系等が用いられる。また、潤滑剤と媒体との化学結
合を高めるため、潤滑層形成後に加熱処理を施すのが好
ましい。加熱温度は50℃以上であるが、潤滑剤の分解
温度よりも低い温度の範囲で適宜選択すればよい。通常
100℃以下である。
【0127】潤滑剤の塗布膜厚としては、10nm以下
が好ましい。あまり厚くしても一定以上の潤滑性は得ら
れず余分な潤滑剤がディスクの回転に伴って外周側へ移
動し、内外周での膜厚分布が発生しやすくなる。ただし
薄すぎると所望の潤滑性が得られないので、0.5nm
以上が好ましい。より好ましくは1nm以上、特に好ま
しくは1.5nm以上である。
【0128】また、以上の層構成には他の層を必要に応
じて加えても良い。浮上型/接触型ヘッドの走行安定性
を損なわないよう、磁化パターン形成後の該媒体の表面
粗度Raは3nm以下に保つのが好ましい。なお、媒体
表面粗度Raとは潤滑層を含まない媒体表面の粗度であ
って、触針式表面粗さ計(機種名:Tencor P-12 disk p
rofiler(KLA Tencor社製))を用いて測定長400μ
mで測定後、JIS B0601に則って算出した値で
ある。より好ましくは1.5nm以下とする。
【0129】望ましくは磁化パターン形成後の該媒体の
表面うねりWaを5nm以下に保つ。Waは潤滑層を含
まない媒体表面のうねりであって、触針式表面粗さ計
(機種名:Tencor P-12 disk profiler(KLA Tencor社
製))を用いて測定長2mmで測定後、Ra算出に準じ
て算出した値である。より好ましくは3nm以下とす
る。
【0130】ところで、このように構成される磁気記録
媒体への磁化パターンの形成は、記録層(磁性層)に対
して行う。記録層上に保護層などを形成した後に記述の
いずれかの方法で行うのが好ましいが、記録層の酸化の
おそれが無い場合は記録層の成膜直後に行っても良い。
次に、本発明に係る磁気記録装置について説明する。
【0131】本発明に係る磁気記録装置は、上述の方法
で製造した磁気記録媒体と、磁気記録媒体を記録方向に
駆動する駆動部と、記録部と再生部からなる磁気ヘッド
と、磁気ヘッドを磁気記録媒体に対して相対移動させる
手段と、磁気ヘッドへの記録信号入力と磁気ヘッドから
の再生信号出力を行うための記録再生信号処理手段を有
する。磁気ヘッドとしては、高密度記録を行うため、通
常は浮上型/接触型磁気ヘッドを用いる。
【0132】本発明の方法により微細かつ高精度なサー
ボパターン等の磁化パターンが形成されサーティファイ
がなされた磁気記録媒体を用いることで、上記磁気記録
装置は高密度記録が可能となる。また、媒体に傷がなく
欠陥も少ないため、エラーの少ない記録を行うことがで
きる。また、磁気記録媒体を装置に組みこんだ後、上記
磁化パターンを磁気ヘッドにより再生し信号を得、該信
号を基準としてサーボバースト信号を該磁気ヘッドによ
り記録してなる磁気記録装置に用いることで、簡易に精
密なサーボ信号を得ることができる。
【0133】また、磁気ヘッドでのサーボバースト信号
記録後にも、ユーザデータ領域として用いられない領域
には本発明により磁化パターンとして記録した信号が残
っていると何らかの外乱により磁気ヘッドの位置ずれが
起きたときにも所望の位置に復帰させやすいので、両者
の書き込み方法による信号が存在する磁気記録装置は、
信頼性が高い。
【0134】
【発明の効果】本発明によれば、局所加熱と外部磁界印
加を組み合わせて磁気記録媒体に磁化パターンを形成す
る技術において、耐衝撃性及び耐久性が高く、かつ電気
特性に優れ欠陥の少ない磁気記録媒体が得られ、かつ連
続製造を行っても信号出力の低下が起こることがない磁
気記録媒体の製造方法及び製造装置が得られる。ひいて
は高密度記録が可能で耐久性が高く、かつ電気特性に優
れ欠陥の少ない磁気記録媒体及び磁気記録装置を短時間
かつ安価に提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の磁気記録媒体の製造方法の一例を示
すフローチャートである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 芳山 龍一 神奈川県横浜市青葉区鴨志田町1000番地 三菱化学株式会社内 Fターム(参考) 5D112 AA05 AA07 JJ10

Claims (10)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 第一の基板及び第二の基板の両面に少な
    くとも磁性層を成膜し、該磁性層上に潤滑層を塗布形成
    したのち、該磁性層に磁気ヘッドによるサーティファイ
    検査を行うことによって、第一の両面型磁気記録媒体及
    び第二の両面型磁気記録媒体を連続して製造する磁気記
    録媒体の製造方法において、 各基板の両面に少なくとも磁性層を成膜する成膜工程
    と、 各基板の少なくとも一面側の磁性層上に潤滑層を塗布形
    成する潤滑層形成工程と、 該潤滑層が形成された磁性層に磁気ヘッドによりサーテ
    ィファイ検査を行うサーティファイ検査工程と、 該サーティファイ検査を行うに先だち第一の基板及び第
    二の基板のいずれかを反転させる基板反転工程とを含
    み、 該サーティファイ検査工程が、各基板の所定の一面側の
    磁性層にのみサーティファイ検査を行う片面サーティフ
    ァイ検査工程であることを特徴とする、磁気記録媒体の
    製造方法。
  2. 【請求項2】 該成膜工程と該潤滑層形成工程とのあい
    だに該基板反転工程を有する、請求項1に記載の磁気記
    録媒体の製造方法。
  3. 【請求項3】 該基板反転工程と該潤滑層形成工程との
    あいだに、各基板の他の一面側の磁性層にのみ磁化パタ
    ーンを形成する磁化パターン形成工程を有する、請求項
    1又は2に記載の磁気記録媒体の製造方法。
  4. 【請求項4】 各基板の両面に少なくとも磁性層を成膜
    する成膜工程と、 第一の基板及び第二の基板のいずれかを反転させる基板
    反転工程と、 各基板の該他の一面側の磁性層にのみ磁化パターンを形
    成する磁化パターン形成工程と、 各基板の両面の磁性層上に潤滑層を塗布形成する潤滑層
    形成工程と、 各基板の該所定の一面側の磁性層にのみサーティファイ
    検査を行う片面サーティファイ検査工程とをこの順に有
    してなる、請求項3に記載の磁気記録媒体の製造方法。
  5. 【請求項5】 該磁化パターン形成工程が、第1の外部
    磁界を印加し該磁性層を所望の方向に均一に磁化したの
    ち、該磁性層を局所的に加熱すると同時に第2の外部磁
    界を印加し加熱部を該所望の方向とは逆向きに磁化する
    ことにより磁化パターンを形成する工程である、請求項
    3又は4に記載の磁気記録媒体の製造方法。
  6. 【請求項6】 第一の基板及び第二の基板の両面に少な
    くとも磁性層を成膜し、該磁性層上に潤滑層を塗布形成
    したのち、該磁性層に磁気ヘッドによるサーティファイ
    検査を行うことによって、第一の両面型磁気記録媒体及
    び第二の両面型磁気記録媒体を連続して製造する磁気記
    録媒体の製造装置において、 各基板の両面に少なくとも磁性層を成膜する成膜手段
    と、 各基板の少なくとも一面側の磁性層上に潤滑層を塗布形
    成する潤滑層形成手段と、 該潤滑層が形成された磁性層に磁気ヘッドによりサーテ
    ィファイ検査を行うサーティファイ検査手段と、 該サーティファイ検査を行う位置よりも製造ライン上の
    上流側で、第一の基板及び第二の基板のいずれかを反転
    させる基板反転手段とを備えてなり、 該サーティファイ検査手段が、各基板の所定の一面側の
    磁性層にのみサーティファイ検査を行う片面サーティフ
    ァイ検査手段であることを特徴とする、磁気記録媒体の
    製造装置。
  7. 【請求項7】 該基板反転手段が、該成膜手段と該潤滑
    層形成手段とのあいだに設けられてなる、請求項6に記
    載の磁気記録媒体の製造装置。
  8. 【請求項8】 該基板反転手段と該潤滑層形成手段との
    あいだに、各基板の他の一面側の磁性層にのみ磁化パタ
    ーンを形成する磁化パターン形成手段を備えてなる、請
    求項6又は7に記載の磁気記録媒体の製造装置。
  9. 【請求項9】 各基板の両面に少なくとも磁性層を成膜
    する成膜手段と、 第一の基板及び第二の基板のいずれかを反転させる基板
    反転手段と、 各基板の該他の一面側の磁性層にのみ磁化パターンを形
    成する磁化パターン形成手段と、 各基板の両面の磁性層上に潤滑層を塗布形成する潤滑層
    形成手段と、 各基板の該所定の一面側の磁性層にのみサーティファイ
    検査を行う片面サーティファイ検査手段とをこの順に備
    えてなる、請求項8に記載の磁気記録媒体の製造装置。
  10. 【請求項10】 該磁化パターン形成手段が、第1の
    外部磁界を印加し該磁性層を所望の方向に均一に磁化す
    る第1外部磁界印加手段と、該磁性層を局所的に加熱す
    る加熱手段と、加熱と同時に第2の外部磁界を印加し加
    熱部を該所望の方向とは逆向きに磁化する第2外部磁界
    印加手段とからなる、請求項8又は9に記載の磁気記録
    媒体の製造装置。
JP2002056090A 2002-03-01 2002-03-01 磁気記録媒体の製造方法及び製造装置 Withdrawn JP2003257016A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2002056090A JP2003257016A (ja) 2002-03-01 2002-03-01 磁気記録媒体の製造方法及び製造装置

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2002056090A JP2003257016A (ja) 2002-03-01 2002-03-01 磁気記録媒体の製造方法及び製造装置

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2003257016A true JP2003257016A (ja) 2003-09-12

Family

ID=28666756

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2002056090A Withdrawn JP2003257016A (ja) 2002-03-01 2002-03-01 磁気記録媒体の製造方法及び製造装置

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2003257016A (ja)

Cited By (6)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US7876518B2 (en) 2007-02-16 2011-01-25 Showa Denko K.K. Certify testing apparatus and certify testing method
US7936529B2 (en) 2007-02-02 2011-05-03 Showa Denko K.K. Testing apparatus for magnetic recording medium and testing method for magnetic recording medium
WO2011090158A1 (ja) * 2010-01-25 2011-07-28 昭和電工株式会社 磁気記録媒体の製造方法
US8004783B2 (en) 2008-06-20 2011-08-23 Showa Denko K.K. Method for testing magnetic recording medium and method for producing magnetic recording medium
US8305850B2 (en) 2008-05-21 2012-11-06 Showa Denko K.K. Method of evaluating magnetic recording medium and method of manufacturing magnetic recording medium
US9466323B2 (en) 2010-06-09 2016-10-11 Showa Denko K.K. Method of inspecting magnetic recording medium, and method of controlling movement of magnetic head in magnetic recording/reproducing apparatus by utilizing inspecting method

Cited By (6)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US7936529B2 (en) 2007-02-02 2011-05-03 Showa Denko K.K. Testing apparatus for magnetic recording medium and testing method for magnetic recording medium
US7876518B2 (en) 2007-02-16 2011-01-25 Showa Denko K.K. Certify testing apparatus and certify testing method
US8305850B2 (en) 2008-05-21 2012-11-06 Showa Denko K.K. Method of evaluating magnetic recording medium and method of manufacturing magnetic recording medium
US8004783B2 (en) 2008-06-20 2011-08-23 Showa Denko K.K. Method for testing magnetic recording medium and method for producing magnetic recording medium
WO2011090158A1 (ja) * 2010-01-25 2011-07-28 昭和電工株式会社 磁気記録媒体の製造方法
US9466323B2 (en) 2010-06-09 2016-10-11 Showa Denko K.K. Method of inspecting magnetic recording medium, and method of controlling movement of magnetic head in magnetic recording/reproducing apparatus by utilizing inspecting method

Similar Documents

Publication Publication Date Title
KR100809760B1 (ko) 자기기록매체의 자화패턴 형성방법과 그 형성장치,자기기록매체와 그 제조방법, 및 자기기록장치
US20050083598A1 (en) Magnetic pattern forming method, magnetic pattern forming apparatus, magnetic disk, and magnetic recording apparatus
JP2003257016A (ja) 磁気記録媒体の製造方法及び製造装置
EP1122718A2 (en) Method for forming a magnetic pattern in a magnetic recording medium, method for producing a magnetic recording medium, magnetic pattern forming device, magnetic recording medium and magnetic recording device
JP3597450B2 (ja) 磁気記録媒体の製造方法及び磁気記録媒体、並びに磁気記録装置
JP2004053955A (ja) 磁化パターン形状規定用マスクに対する薄膜形成方法及び磁化パターン形状規定用マスク、並びに磁化パターン形状規定用マスクの余剰薄膜除去方法
JP2002358634A (ja) 磁気記録媒体の磁化パターン形成装置及び形成方法
JP3712998B2 (ja) 磁気記録媒体の磁化パターン形成方法、並びにマスク
JP3908778B2 (ja) マスク
JP4004883B2 (ja) 磁化パターン形成方法
JP3859198B2 (ja) 磁気記録媒体の製造方法
JP3886388B2 (ja) 磁気記録媒体の磁化パターン形成方法、及び磁化パターン形成に使用するマスク
JP3712987B2 (ja) 磁気記録媒体の磁化パターン形成方法、並びにマスク
JP2002319126A (ja) 磁気記録媒体の製造方法
JP3996799B2 (ja) 磁気記録媒体の磁化パターン形成装置及び形成方法
JP2003045023A (ja) 磁気記録媒体の磁化パターン形成方法、磁気記録媒体、及び磁気記録装置
JP3886377B2 (ja) 磁気記録媒体の磁化パターン形成方法
KR100931763B1 (ko) 자기 패턴 형성 장치
JP2003272137A (ja) 磁気記録媒体の磁化パターン形成方法、磁気記録媒体及び磁気記録装置、並びにマスク
JP2002074601A (ja) 磁気記録装置、磁気ディスク、その検査方法及び製造方法
JP2002050036A (ja) 磁気記録媒体の磁化パターン形成方法、磁気記録媒体及び磁気記録装置、並びに磁化パターン形成装置
JP2001312808A (ja) 磁気ディスク及びその磁化パターン形成方法並びに磁気ディスク装置
JP2004021160A (ja) 磁気記録媒体の磁化パターン形成用マスク、磁化パターン形成方法、及び磁気記録媒体、並びに磁気記録装置
JP2001297431A (ja) 磁気記録媒体の磁化パターン形成方法、磁化パターン形成装置及び磁気記録媒体、並びに磁気記録装置
JP2003272136A (ja) 磁気記録媒体の磁化パターン形成方法、磁気記録媒体及び磁気記録装置、並びにマスク

Legal Events

Date Code Title Description
A711 Notification of change in applicant

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A711

Effective date: 20040210

A300 Withdrawal of application because of no request for examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A300

Effective date: 20050510