JP2003255519A - 平版印刷版原版 - Google Patents
平版印刷版原版Info
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Abstract
応のネガ型平版印刷版原版を提供する。 【解決手段】 支持体上に、赤外線レーザの露光により
露光部が疎水性領域となる記録層を設けてなる平版印刷
版原版の少なくとも対向する二つの側面が、水溶性の保
護膜により覆われていることを特徴とする。
Description
関し、詳しくは印刷時のエッジ汚れ防止効果に優れた赤
外線レーザ対応のネガ型平版印刷版原版に関する。 【0002】 【従来の技術】平版印刷は、インキを受容する親油性領
域と、インキを受容せず湿し水を受容する撥インク領域
(親水性領域)を有する版材を利用する印刷方法であ
り、現在では広く感光性の平版印刷版原版(PS版)が
用いられている。このPS版を製造する方法としては、
一般にシート状あるいはコイル状のアルミニウム版に、
例えば、砂目立て、陽極酸化、化成処理などの表面処理
を単独または適宜組み合わせて施し、ついで記録層塗布
液の塗布、乾燥を行って記録層を形成した後に所望のサ
イズに裁断する方法が取られている。 【0003】一方、このようなPS版に画像露光及び現
像等の処理を施して得られた印刷版を用いた印刷には、
一般商業印刷機を用いて印刷版の巾サイズよりも小さな
紙に印刷を施す場合と、例えば、新聞印刷のように印刷
版の巾サイズより大きい印刷紙に印刷する場合がある。
後者においては、印刷版の全面が印刷面として扱われ
る。このため、印刷版の裁断面(エッジ部)に付着した
インクが印刷紙面に印刷されて汚れとなり(通称「エッ
ジ汚れ」と呼んでいる)、印刷物の商品価値を損なうこ
とがある。特に赤外線対応の画像記録層を有する印刷版
の場合には、印刷版の裁断時に瞬間的に発生した熱によ
り、裁断面が硬膜または融着を起こすことがある。この
ように硬膜または融着した部分が現像によっても除去さ
れずに残るため、印刷時にインクが付着し、エッジ汚れ
を引き起こすことがあった。また、赤外線吸収効率を高
める目的で含有されている赤外線吸収剤は感度の点から
イオン性の化合物である場合が多いが、これが印刷版の
側面付近に静電的に吸着してしまうことも汚れ発生の原
因の一つであった。 【0004】このようなエッジ汚れを防止する方法とし
て、例えば、特公昭57−46754号公報に記載され
ているように、アルミニウムからなる支持体のエッジ部
の角をヤスリやナイフで削り取る方法、あるいは、特公
昭62−61946号公報に記載されているように裁断
面に不感脂化液を塗布する方法が知られている。 【0005】しかし、支持体の裁断面の角をヤスリやナ
イフで削り取る方法では、印刷版を1枚ずつ取り出して
削り取らなければならず、大量処理には不適である。ま
た、バリやキズなどインクの付着を引き起こす欠陥があ
ると、削り取った部分にインクが絡んでしまい、結局こ
のインクで印刷紙面が汚れてしまうこともある。また、
裁断面に不感脂液を塗布する方法も、印刷版同士がくっ
ついて取扱いが悪くなったり、現像不良を引き起こす場
合がある。これらの問題に対し、より一層の改善が望ま
れていた。 【0006】 【発明が解決しようとする課題】上記従来の技術の欠点
を考慮してなされた本発明の目的は、エッジ汚れ防止効
果に優れた赤外線レーザ対応のネガ型平版印刷版原版を
提供することにある。 【0007】 【課題を解決するための手段】本発明者等は、鋭意検討
の結果、印刷版原版の側面を水溶性の保護膜で覆うこと
により、上記目的が達成されることを見出し、本発明を
完成するに至った。即ち、支持体上に、赤外線レーザの
露光により露光部が疎水性領域となる記録層を設けてな
る平版印刷版原版の少なくとも対向する二つの側面が、
水溶性の保護膜により覆われていることを特徴とする。
なお、本発明に用いられる保護膜の水溶性成分として
は、水溶性ポリマー、水溶性酸または水溶性塩(好まし
くは水溶性無機塩)、水溶性アルカリ(好ましくは金属
水酸化物)、界面活性剤、の中から選ばれる。また、本
発明に用いられるネガ型の記録層としては、以下のもの
が挙げられる。 (1:重合硬化層)赤外線吸収剤と、ラジカル発生剤
(ラジカル重合開始剤)と、発生したラジカルにより重
合反応を引き起こすラジカル重合性化合物と、を含有す
るもの。 (2:酸架橋層)赤外線吸収剤と、光又は熱により酸を
発生する化合物(以下、適宜、酸発生剤と称する)と、
発生した酸により架橋する化合物(以下、適宜、架橋剤
と称する)と、を含有するもの。 (3:熱溶融型無処理系)親水性高分子化合物を含むマ
トリックス中に分散された疎水性熱溶融性樹脂微粒子を
含有することを特徴とするもの。 【0008】本発明の平版印刷版原版は、少なくとも対
向する一組の側面(エッジ部)に水溶性高分子からなる
保護膜を備え、エッジ部が親水性を有するため、印刷時
のエッジ部へのインクの付着や、赤外線吸収剤の静電的
な吸着を効果的に抑制することができる。特に赤外線対
応の画層形成層においては、裁断時に発生した熱によっ
て側面(裁断面)が硬膜または融着を起こしたり、赤外
線吸収剤が静電的に側面に吸着した場合においても、該
保護膜により側面を被覆することが可能となり、その結
果エッジ汚れを防止することができるものと考えられ
る。また、平版印刷版原版は、印刷前の取り扱い時に非
画像部となるべき端部が汚染され、この汚れ(一般的に
親油性である)にインクが付着することがあるが、ここ
で、側面にあらかじめ保護膜を設けることにより、この
取り扱いにおける端部の汚染も防止できるものと考えら
れる。この保護膜は、印刷方向に平行する少なくとも対
向する二つの側面に設けられるが、印刷方向に垂直な側
面にも設けられていてもよい。 【0009】 【発明の実施の形態】〔記録層〕本発明の平版印刷版原
版は、赤外線レーザの露光により露光部が疎水性領域と
なる記録層を設けてなる。該記録層は、赤外線レーザ照
射部が硬化、あるいは表面性状の変化により画像部(親
油性領域)を形成するネガ型の記録層であれば、いずれ
のものも適用することができる。 【0010】(1:重合硬化層)このようなネガ型記録
層の1つとして、重合硬化層が挙げられる。重合硬化層
には、(A)赤外線吸収剤と、(B)ラジカル発生剤
(ラジカル重合開始剤)と、発生したラジカルにより重
合反応を起こして硬化する(C)ラジカル重合性化合物
と、を含有し、好ましくは(D)バインダーポリマーを
含有する。赤外線吸収剤が吸収した赤外線を熱に変換
し、この際発生した熱により、オニウム塩等のラジカル
重合開始剤が分解し、ラジカルを発生する。ラジカル重
合性化合物は、少なくとも一個のエチレン性不飽和二重
結合を有し、末端エチレン性不飽和結合を少なくとも1
個、好ましくは2個以上有する化合物から選ばれ、発生
したラジカルにより連鎖的に重合反応が生起し、硬化す
る。以下、この重合硬化層に含有される各化合物につい
て詳細に述べる。 【0011】(A)赤外線吸収剤 本発明に係る重合硬化層には、赤外線を発するレーザで
画像記録可能な構成を有する。このような記録層には、
赤外線吸収剤を用いることが好ましい。赤外線吸収剤
は、吸収した赤外線を熱に変換する機能を有している。
この際発生した熱により、ラジカル発生剤や酸発生剤が
分解し、ラジカルや酸を発生する。本発明において使用
される赤外線吸収剤は、波長760nmから1200n
mに吸収極大を有する染料又は顔料である。 【0012】染料としては、市販の染料及び例えば「染
料便覧」(有機合成化学協会編集、昭和45年刊)等の
文献に記載されている公知のものが利用できる。具体的
には、例えば、特開平10−39509号公報の段落番
号[0050]〜[0051]に記載のものを挙げるこ
とができる。これらの染料のうち特に好ましいものとし
ては、シアニン色素、スクワリリウム色素、ピリリウム
塩、ニッケルチオレート錯体が挙げられる。さらに、シ
アニン色素が好ましく、特に下記一般式(I)で示され
るシアニン色素が最も好ましい。 【0013】 【化1】 【0014】一般式(I)中、X1は、ハロゲン原子、
またはX2−L1を示す。ここで、X2は酸素原子また
は、硫黄原子を示し、L1は、炭素原子数1〜12の炭
化水素基を示す。R1およびR2は、それぞれ独立に、炭
素原子数1〜12の炭化水素基を示す。記録層塗布液の
保存安定性から、R1およびR2は、炭素原子数2個以上
の炭化水素基であることが好ましく、さらに、R1とR2
とは互いに結合し、5員環または6員環を形成している
ことが特に好ましい。Ar1、Ar2は、それぞれ同じで
も異なっていても良く、置換基を有していても良い芳香
族炭化水素基を示す。Y1、Y2は、それぞれ同じでも異
なっていても良く、硫黄原子または炭素原子数12個以
下のジアルキルメチレン基を示す。R 3、R4は、それぞ
れ同じでも異なっていても良く、置換基を有していても
良い炭素原子数20個以下の炭化水素基を示す。好まし
い置換基としては、炭素原子数12個以下のアルコキシ
基、カルボキシル基、スルホ基が挙げられる。R5、
R6、R7およびR8は、それぞれ同じでも異なっていて
も良く、水素原子または炭素原子数12個以下の炭化水
素基を示す。原料の入手性から、好ましくは水素原子で
ある。また、(Z1)-は、対アニオンを示す。ただし、
R1〜R8のいずれかにスルホ基が置換されている場合
は、(Z1)-は必要ない。好ましい(Z1)-は、記録層
塗布液の保存安定性から、ハロゲンイオン、過塩素酸イ
オン、テトラフルオロボレートイオン、ヘキサフルオロ
ホスフェートイオン、およびスルホン酸イオンであり、
特に好ましくは、過塩素酸イオン、ヘキサフルオロフォ
スフェートイオン、およびアリールスルホン酸イオンで
ある。 【0015】本発明において、好適に用いることのでき
る一般式(I)で示されるシアニン色素の具体例として
は、特開2001−133969明細書の段落番号[0
017]〜[0019]に記載されたものを挙げること
ができる。 【0016】本発明において使用される顔料としては、
市販の顔料及びカラーインデックス(C.I.)便覧、
「最新顔料便覧」(日本顔料技術協会編、1977年
刊)、「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986年
刊)、「印刷インキ技術」CMC出版、1984年刊)
に記載されている顔料が利用できる。 【0017】顔料の種類としては、黒色顔料、黄色顔
料、オレンジ色顔料、褐色顔料、赤色顔料、紫色顔料、
青色顔料、緑色顔料、蛍光顔料、金属粉顔料、その他、
ポリマー結合色素が挙げられる。これらの顔料の詳細
は、特開平10−39509号公報の段落番号[005
2]〜[0054]に詳細に記載されており、これらを
本発明にも適用することができる。これらの顔料のうち
好ましいものはカーボンブラックである。 【0018】記録層中における、上述の染料又は顔料の
含有量としては、記録層の全固形分質量に対し、0.0
1〜50質量%が好ましく、0.1〜10質量%がより
好ましく、さらに染料の場合には、0.5〜10質量%
が最も好ましく、顔料の場合には、1.0〜10質量%
が最も好ましい。前記含有量が、0.01質量%未満で
あると、感度が低くなることがあり、50質量%を超え
ると、平版印刷用原版とした場合の非画像部に汚れが発
生することがある。 【0019】(B)ラジカル発生剤 本発明に係る重合硬化層に好適に用いられるラジカル発
生剤(ラジカルを発生する化合物)としては、オニウム
塩が挙げられ、具体的には、ヨードニウム塩、ジアゾニ
ウム塩、スルホニウム塩である。これらのオニウム塩は
酸発生剤としての機能も有するが、後述するラジカル重
合性化合物と併用する際には、ラジカル重合の開始剤と
して機能する。本発明において好適に用いられるオニウ
ム塩は、下記一般式(II)〜(IV)で表されるオニウム
塩である。 【0020】 【化2】 【0021】式(II)中、Ar3とAr4は、それぞれ独
立に、置換基を有していても良い炭素原子数20個以下
のアリール基を示す。このアリール基が置換基を有する
場合の好ましい置換基としては、ハロゲン原子、ニトロ
基、炭素原子数12個以下のアルキル基、炭素原子数1
2個以下のアルコキシ基、または炭素原子数12個以下
のアリールオキシ基が挙げられる。(Z2)-はハロゲン
イオン、カルボン酸イオン、過塩素酸イオン、テトラフ
ルオロボレートイオン、ヘキサフルオロホスフェートイ
オン、およびスルホン酸イオンからなる群より選択され
る対イオンを表し、好ましくは、カルボン酸イオン、過
塩素酸イオン、ヘキサフルオロフォスフェートイオン、
およびアリールスルホン酸イオンである。 【0022】式(III)中、Ar5は、置換基を有してい
ても良い炭素原子数20個以下のアリール基を示す。好
ましい置換基としては、ハロゲン原子、ニトロ基、炭素
原子数12個以下のアルキル基、炭素原子数12個以下
のアルコキシ基、炭素原子数12個以下のアリールオキ
シ基、炭素原子数12個以下のアルキルアミノ基、炭素
原子数12個以下のジアルキルアミノ基、炭素原子数1
2個以下のアリールアミノ基または、炭素原子数12個
以下のジアリールアミノ基が挙げられる。(Z 3)-は
(Z2)-と同義の対イオンを表す。 【0023】式(IV)中、R9、R10及びR11は、それ
ぞれ同じでも異なっていても良く、置換基を有していて
も良い炭素原子数20個以下の炭化水素基を示す。好ま
しい置換基としては、ハロゲン原子、ニトロ基、炭素原
子数12個以下のアルキル基、炭素原子数12個以下の
アルコキシ基、または炭素原子数12個以下のアリール
オキシ基が挙げられる。(Z4)-は(Z2)-と同義の対
イオンを表す。 【0024】本発明において、好適に用いることのでき
るオニウム塩の具体例としては、特開2001−133
969明細書の段落番号[0030]〜[0033]に
記載されたものを挙げることができる。 【0025】本発明において用いられるオニウム塩は、
極大吸収波長が400nm以下であることが好ましく、
さらに360nm以下であることが好ましい。このよう
に吸収波長を紫外線領域にすることにより、平版印刷版
原版の取り扱いを白灯下で実施することができる。 【0026】これらのオニウム塩は、記録層塗布液の全
固形分に対し0.1〜50質量%、好ましくは0.5〜
30質量%、特に好ましくは1〜20質量%の割合で記
録層塗布液中に添加することができる。添加量が0.1
質量%未満であると感度が低くなり、また50質量%を
越えると印刷時非画像部に汚れが発生する。これらのオ
ニウム塩は、1種のみを用いても良いし、2種以上を併
用しても良い。また、これらのオニウム塩は他の成分と
同一の層に添加してもよいし、別の層を設けそこへ添加
してもよい。 【0027】(C)ラジカル重合性化合物 本発明に係る重合硬化層に使用されるラジカル重合性化
合物は、少なくとも一個のエチレン性不飽和二重結合を
有するラジカル重合性化合物であり、末端エチレン性不
飽和結合を少なくとも1個、好ましくは2個以上有する
化合物から選ばれる。この様な化合物群は当該産業分野
において広く知られるものであり、本発明においてはこ
れらを特に限定無く用いる事ができる。これらは、例え
ばモノマー、プレポリマー、すなわち2量体、3量体お
よびオリゴマー、またはそれらの混合物ならびにそれら
の共重合体などの化学的形態をもつ。モノマーおよびそ
の共重合体の例としては、不飽和カルボン酸(例えば、
アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、
イソクロトン酸、マレイン酸など)や、そのエステル
類、アミド類があげられ、好ましくは、不飽和カルボン
酸と脂肪族多価アルコール化合物とのエステル、不飽和
カルボン酸と脂肪族多価アミン化合物とのアミド類が用
いられる。また、ヒドロキシル基や、アミノ基、メルカ
プト基等の求核性置換基を有する不飽和カルボン酸エス
テル、アミド類と単官能もしくは多官能イソシアネート
類、エポキシ類との付加反応物、単官能もしくは、多官
能のカルボン酸との脱水縮合反応物等も好適に使用され
る。また、イソシアナート基やエポキシ基等の親電子性
置換基を有する不飽和カルボン酸エステルまたはアミド
類と、単官能もしくは多官能のアルコール類、アミン類
およびチオール類との付加反応物、さらに、ハロゲン基
やトシルオキシ基等の脱離性置換基を有する不飽和カル
ボン酸エステルまたはアミド類と、単官能もしくは多官
能のアルコール類、アミン類およびチオール類との置換
反応物も好適である。また、別の例として、上記の不飽
和カルボン酸の代わりに、不飽和ホスホン酸、スチレン
等に置き換えた化合物群を使用する事も可能である。 【0028】脂肪族多価アルコール化合物と不飽和カル
ボン酸とのエステルであるラジカル重合性化合物である
アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、イタコン
酸エステル、クロトン酸エステル、イソクロトン酸エス
テル、マレイン酸エステルの具体例は、特開2001−
133969明細書の段落番号[0037]〜[004
2]に記載されており、これらを本発明にも適用するこ
とができる。 【0029】その他のエステルの例として、例えば、特
公昭46−27926、特公昭51−47334、特開
昭57−196231記載の脂肪族アルコール系エステ
ル類や、特開昭59−5240、特開昭59−524
1、特開平2−226149記載の芳香族系骨格を有す
るもの、特開平1−165613記載のアミノ基を含有
するもの等も好適に用いられる。 【0030】また、イソシアネートと水酸基の付加反応
を用いて製造されるウレタン系付加重合性化合物も好適
であり、そのような具体例としては、例えば、特公昭4
8−41708号公報中に記載されている1分子に2個
以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化
合物に、下記一般式(V)で示される水酸基を含有する
ビニルモノマーを付加させた1分子中に2個以上の重合
性ビニル基を含有するビニルウレタン化合物等が挙げら
れる。 【0031】一般式(V) CH2=C(R12)COOCH2CH(R13)OH (ただし、R12およびR13は、HまたはCH3を示
す。) 【0032】これらのラジカル重合性化合物について、
どの様な構造を用いるか、単独で使用するか併用する
か、添加量はどうかといった、使用方法の詳細は、最終
的な記録材料の性能設計にあわせて、任意に設定でき
る。例えば、次のような観点から選択される。感度の点
では1分子あたりの不飽和基含量が多い構造が好まし
く、多くの場合、2官能以上がこのましい。また、画像
部すなわち硬化膜の強度を高くするためには、3官能以
上のものが良く、さらに、異なる官能数・異なる重合性
基を有する化合物(例えば、アクリル酸エステル系化合
物、メタクリル酸エステル系化合物、スチレン系化合物
等)を組み合わせて用いることで、感光性と強度の両方
を調節する方法も有効である。大きな分子量の化合物
や、疎水性の高い化合物は感度や膜強度に優れる反面、
現像スピードや現像液中での析出といった点で好ましく
無い場合がある。また、記録層中の他の成分(例えばバ
インダーポリマー、開始剤、着色剤等)との相溶性、分
散性に対しても、ラジカル重合化合物の選択・使用法は
重要な要因であり、例えば、低純度化合物の使用や、2
種以上化合物の併用によって、相溶性を向上させうるこ
とがある。また、支持体、オーバーコート層等の密着性
を向上せしめる目的で特定の構造を選択することもあり
得る。画像記録層中のラジカル重合性化合物の配合比に
関しては、多い方が感度的に有利であるが、多すぎる場
合には、好ましくない相分離が生じたり、画像記録層の
粘着性による製造工程上の問題(例えば、記録層成分の
転写、粘着に由来する製造不良)や、現像液からの析出
が生じる等の問題を生じうる。これらの観点から、ラジ
カル重合性化合物の好ましい配合比は、多くの場合、組
成物全成分に対して5〜80質量%、好ましくは20〜
75質量%である。また、これらは単独で用いても2種
以上併用してもよい。そのほか、ラジカル重合性化合物
の使用法は、酸素に対する重合阻害の大小、解像度、か
ぶり性、屈折率変化、表面粘着性等の観点から適切な構
造、配合、添加量を任意に選択でき、さらに場合によっ
ては下塗り、上塗りといった層構成・塗布方法も実施し
うる。 【0033】(D)バインダーポリマー 重合硬化型の記録層には、さらにバインダーポリマーを
使用することが親水性向上の観点から好ましい。バイン
ダーとしては線状有機ポリマーを用いることが好まし
い。このような「線状有機ポリマー」としては、どれを
使用しても構わない。好ましくは水現像あるいは弱アル
カリ水現像を可能とするために、水あるいは弱アルカリ
水可溶性または膨潤性である線状有機ポリマーが選択さ
れる。線状有機ポリマーは、記録層を形成するための皮
膜形成剤としてだけでなく、水、弱アルカリ水あるいは
有機溶剤現像剤としての用途に応じて選択使用される。
例えば、水可溶性有機ポリマーを用いると水現像が可能
になる。このような線状有機ポリマーとしては、側鎖に
カルボン酸基を有するラジカル重合体、例えば特開昭5
9−44615号、特公昭54−34327号、特公昭
58−12577号、特公昭54−25957号、特開
昭54−92723号、特開昭59−53836号、特
開昭59−71048号に記載されているもの、すなわ
ち、メタクリル酸共重合体、アクリル酸共重合体、イタ
コン酸共重合体、クロトン酸共重合体、マレイン酸共重
合体、部分エステル化マレイン酸共重合体等がある。ま
た同様に側鎖にカルボン酸基を有する酸性セルロース誘
導体がある。この他に水酸基を有する重合体に環状酸無
水物を付加させたものなどが有用である。 【0034】特にこれらの中で、ベンジル基またはアリ
ル基と、カルボキシル基を側鎖に有する(メタ)アクリ
ル樹脂が、膜強度、感度、現像性のバランスに優れてお
り、好適である。 【0035】また、特公平7−12004号、特公平7
−120041号、特公平7−120042号、特公平
8−12424号、特開昭63−287944号、特開
昭63−287947号、特開平1−271741号、
特願平10−116232号等に記載される酸基を含有
するウレタン系バインダーポリマーは、非常に、強度に
優れるので、耐刷性・低露光適性の点で有利である。 【0036】さらにこの他に水溶性線状有機ポリマーと
して、ポリビニルピロリドンやポリエチレンオキサイド
等が有用である。また硬化皮膜の強度を上げるためにア
ルコール可溶性ナイロンや2,2−ビス−(4−ヒドロ
キシフェニル)−プロパンとエピクロロヒドリンのポリ
エーテル等も有用である。 【0037】本発明で使用されるポリマーの質量平均分
子量については好ましくは5000以上であり、さらに
好ましくは1万〜30万の範囲であり、数平均分子量に
ついては好ましくは1000以上であり、さらに好まし
くは2000〜25万の範囲である。多分散度(質量平
均分子量/数平均分子量)は1以上が好ましく、さらに
好ましくは1.1〜10の範囲である。 【0038】これらのポリマーは、ランダムポリマー、
ブロックポリマー、グラフトポリマー等いずれでもよい
が、ランダムポリマーであることが好ましい。 【0039】本発明で使用されるバインダーポリマーは
単独で用いても混合して用いてもよい。これらポリマー
は、記録層塗布液の全固形分に対し20〜95質量%、
好ましくは30〜90質量%の割合で記録層中に添加さ
れる。添加量が20質量%未満の場合は、画像形成した
際、画像部の強度が不足する。また添加量が95質量%
を越える場合は、画像形成されない。またラジカル重合
可能なエチレン性不飽和二重結合を有する化合物と線状
有機ポリマーは、質量比で1/9〜7/3の範囲とする
のが好ましい。 【0040】(2:酸架橋層)次に、酸架橋層について
詳細に説明する。酸架橋層には、(E)光又は熱により
酸を発生する化合物(酸発生剤)と、(F)発生した酸
により架橋する化合物(架橋剤)とを含有し、さらに、
これらを含有する層を形成するための、酸の存在下で架
橋剤と反応しうる(G)アルカリ可溶性ポリマーを含
む。この酸架橋層においては、光照射又は加熱により、
酸発生剤が分解して発生した酸が、架橋剤の働きを促進
し、架橋剤同士あるいは架橋剤とバインダーポリマーと
の間で強固な架橋構造が形成され、これにより、アルカ
リ可溶性が低下して、現像剤に不溶となる。このとき、
赤外線レーザのエネルギーを効率よく使用するため、記
録層中には前記(A)赤外線吸収剤が配合される。以
下、この酸架橋層に含有される各化合物について詳細に
述べる。 【0041】(E)酸発生剤 本実施の形態において、熱により分解して酸を発生する
酸発生剤は、200〜500nmの波長領域の光を照射
する又は100℃以上に加熱することにより、酸を発生
する化合物をいう。前記酸発生剤としては、光カチオン
重合の光開始剤、光ラジカル重合の光開始剤、色素類の
光消色剤、光変色剤、或いは、マイクロレジスト等に使
用されている公知の酸発生剤等、熱分解して酸を発生し
うる、公知の化合物及びそれらの混合物、酸を発生する
基又は化合物をポリマーの主鎖若しくは側鎖に導入した
化合物等が挙げられる。酸発生剤としては、下記一般式
(1)〜(5)で表される化合物が好ましい。 【0042】 【化3】 【0043】前記一般式(1)〜(5)中、R1、R2、
R4及びR5は、同一でも異なっていてもよく、置換基を
有していてもよい炭素数20以下の炭化水素基を表す。
R3は、ハロゲン原子、置換基を有していてもよい炭素
数10以下の炭化水素基又は炭素数10以下のアルコキ
シ基を表す。Ar1、Ar2は、同一でも異なっていても
よく、置換基を有していてもよい炭素数20以下のアリ
ール基を表す。R6は、置換基を有していてもよい炭素
数20以下の2価の炭化水素基を表す。nは、0〜4の
整数を表す。前記式中、R1、R2、R4及びR5は、炭素
数1〜14の炭化水素基が好ましい。 【0044】前記一般式(1)〜(5)で表される酸発
生剤の好ましい態様は、本発明者らが先に提案した特開
2001−142230明細書段落番号[0197]〜
[0222]に詳細に記載されている。これらの化合物
は、例えば、特開平2−100054号、特開平2−1
00055号に記載の方法により合成することができ
る。 【0045】また、(E)酸発生剤として、ハロゲン化
物やスルホン酸等を対イオンとするオニウム塩も挙げる
ことができ、中でも、下記一般式(6)〜(8)で表さ
れるヨードニウム塩、スルホニウム塩、ジアゾニウム塩
のいずれかの構造式を有するものを好適に挙げることが
できる。 【0046】 【化4】 【0047】前記一般式(6)〜(8)中、X-は、ハ
ロゲン化物イオン、ClO4 -、PF6 -、SbF6 -、BF
4 -又はR7SO3 -を表し、ここで、R7は、置換基を有し
ていてもよい炭素数20以下の炭化水素基を表す。Ar
3、Ar4は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよ
い炭素数20以下のアリール基を表す。R8、R9、R 10
は、置換基を有していてもよい炭素数18以下の炭化水
素基を表す。このようなオニウム塩は、特開平10−3
9509号公報段落番号[0010]〜[0035]に
一般式(I)〜(III)の化合物として記載されてい
る。 【0048】酸発生剤の添加量としては、記録層の全固
形分質量に対し0.01〜50質量%が好ましく、0.
1〜25質量%がより好ましく、0.5〜20質量%が
最も好ましい。前記添加量が、0.01質量%未満であ
ると、画像が得られないことがあり、50質量%を超え
ると、平版印刷用原版とした時の印刷時において非画像
部に汚れが発生することがある。上述の酸発生剤は単独
で使用してもよいし、2種以上を組合わせて使用しても
よい。 【0049】(F)架橋剤 次に、架橋剤について説明する。架橋剤としては、以下
のものが挙げられる。 (i)ヒドロキシメチル基若しくはアルコキシメチル基
で置換された芳香族化合物 (ii)N−ヒドロキシメチル基、N−アルコキシメチル
基若しくはN−アシルオキシメチル基を有する化合物 (iii)エポキシ化合物 【0050】以下、前記(i)〜(iii)の化合物につ
いて詳述する。前記(i)ヒドロキシメチル基若しくは
アルコキシメチル基で置換された芳香族化合物として
は、例えば、ヒドロキシメチル基、アセトキシメチル基
若しくはアルコキシメチル基でポリ置換されている芳香
族化合物又は複素環化合物が挙げられる。但し、レゾー
ル樹脂として知られるフェノール類とアルデヒド類とを
塩基性条件下で縮重合させた樹脂状の化合物も含まれ
る。ヒドロキシメチル基又はアルコキシメチル基でポリ
置換された芳香族化合物又は複素環化合物のうち、中で
も、ヒドロキシ基に隣接する位置にヒドロキシメチル基
又はアルコキシメチル基を有する化合物が好ましい。ま
た、アルコキシメチル基でポリ置換された芳香族化合物
又は複素環化合物では、中でも、アルコキシメチル基が
炭素数18以下の化合物が好ましく、下記一般式(9)
〜(12)で表される化合物がより好ましい。 【0051】 【化5】【0052】 【化6】 【0053】前記一般式(9)〜(12)中、L1〜L8
は、それぞれ独立に、メトキシメチル、エトキシメチル
等の、炭素数18以下のアルコキシ基で置換されたヒド
ロキシメチル基又はアルコキシメチル基を表す。これら
の架橋剤は、架橋効率が高く、耐刷性を向上できる点で
好ましい。 【0054】(ii)N−ヒドロキシメチル基、N−アル
コキシメチル基若しくはN−アシルオキシメチル基を有
する化合物としては、欧州特許公開(以下、「EP−
A」と示す。)第0,133,216号、西独特許第
3,634,671号、同第3,711,264号に記
載の、単量体及びオリゴマー−メラミン−ホルムアルデ
ヒド縮合物並びに尿素−ホルムアルデヒド縮合物、EP
−A第0,212,482号明細書に記載のアルコキシ
置換化合物等が挙げられる。なかでも、例えば、少なく
とも2個の遊離N−ヒドロキシメチル基、N−アルコキ
シメチル基若しくはN−アシルオキシメチル基を有する
メラミン−ホルムアルデヒド誘導体が好ましく、N−ア
ルコキシメチル誘導体が最も好ましい。 【0055】(iii)エポキシ化合物としては、1以上
のエポキシ基を有する、モノマー、ダイマー、オリゴマ
ー、ポリマー状のエポキシ化合物が挙げられ、例えば、
ビスフェノールAとエピクロルヒドリンとの反応生成
物、低分子量フェノール−ホルムアルデヒド樹脂とエピ
クロルヒドリンとの反応生成物等が挙げられる。その
他、米国特許第4,026,705号、英国特許第1,
539,192号の各明細書に記載され、使用されてい
るエポキシ樹脂を挙げることができる。 【0056】架橋剤として、前記(i)〜(iii)の化
合物を用いる場合の添加量としては、記録層の全固形分
質量に対し5〜80質量%が好ましく、10〜75質量
%がより好ましく、20〜70質量%が最も好ましい。
前記添加量が、5質量%未満であると、得られる画像記
録材料の記録層の耐久性が低下することがあり、80質
量%を超えると、保存時の安定性が低下することがあ
る。 【0057】本発明においては、架橋剤として、(iv)
下記一般式(13)で表されるフェノール誘導体も好適
に使用することができる。 【0058】 【化7】 【0059】前記一般式(13)中、Ar5は、置換基
を有していてもよい芳香族炭化水素環を表し、R11、R
12およびR13は水素原子または炭素数12個以下の炭化
水素基を表す。mは2〜4の整数を表し、nは1〜3の
整数を表す。原料の入手性の点で、前記芳香族炭化水素
環としては、ベンゼン環、ナフタレン環又はアントラセ
ン環が好ましい。また、その置換基としては、ハロゲン
原子、炭素数12以下の炭化水素基、炭素数12以下の
アルコキシ基、炭素数12以下のアルキルチオ基、シア
ノ基、ニトロ基、トリフルオロメチル基等が好ましい。
上記のうち、高感度化が可能である点で、Ar5として
は、置換基を有していないベンゼン環、ナフタレン環、
或いは、ハロゲン原子、炭素数6以下の炭化水素基、炭
素数6以下のアルコキシ基、炭素数6以下のアルキルチ
オ基、炭素数12以下のアルキルカルバモイル基、又は
ニトロ基等を置換基として有するベンゼン環、又はナフ
タレン環がより好ましい。 【0060】上記R11、R12で表される炭化水素基とし
ては、合成が容易であるという理由から、メチル基が好
ましい。R13で表される炭化水素基としては、感度が高
いという理由から、メチル基、ベンジル基等の炭素数7
以下の炭化水素基であることが好ましい。さらに、合成
の容易さから、mは、2又は3であることが好ましく、
nは1又は2であることが好ましい。 【0061】架橋剤として、前記(iv)の化合物を用い
る場合の添加量としては、記録層の全固形分質量に対し
3〜70質量%が好ましく、10〜60質量%がより好
ましく、15〜50質量%が最も好ましい。 【0062】(G)アルカリ水可溶性高分子化合物 本発明に係る架橋層に使用可能なアルカリ水可溶性高分
子化合物としては、ノボラック樹脂や側鎖にヒドロキシ
アリール基を有するポリマー等が挙げられる。前記ノボ
ラック樹脂としては、フェノール類とアルデヒド類を酸
性条件下で縮合させた樹脂が挙げられる。 【0063】中でも、例えば、フェノールとホルムアル
デヒドから得られるノボラック樹脂、m−クレゾールと
ホルムアルデヒドから得られるノボラック樹脂、p−ク
レゾールとホルムアルデヒドから得られるノボラック樹
脂、o−クレゾールとホルムアルデヒドから得られるノ
ボラック樹脂、オクチルフェノールとホルムアルデヒド
から得られるノボラック樹脂、m−/p−混合クレゾー
ルとホルムアルデヒドから得られるノボラック樹脂、フ
ェノール/クレゾール(m−,p−,o−又はm−/p
−,m−/o−,o−/p−混合のいずれでもよい)の
混合物とホルムアルデヒドから得られるノボラック樹脂
や、フェノールとパラホルムアルデヒドとを原料とし、
触媒を使用せず密閉状態で高圧下、反応させて得られる
オルソ結合率の高い高分子量ノボラック樹脂等が好まし
い。前記ノボラック樹脂は、質量平均分子量が800〜
300,000で、数平均分子量が400〜60,00
0のものの中から、目的に応じて好適なものを選択して
用いればよい。 【0064】また、前記側鎖にヒドロキシアリール基を
有するポリマーも好ましく、該ポリマー中のヒドロキシ
アリール基としては、OH基が1以上結合したアリール
基が挙げられる。前記アリール基としては、例えば、フ
ェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、フェナント
レニル基等が挙げられ、中でも、入手の容易性及び物性
の観点から、フェニル基又はナフチル基が好ましい。本
実施の形態に使用可能な、側鎖にヒドロキシアリール基
を有するポリマーとしては、例えば、下記一般式(1
4)〜(17)で表される構成単位のうちのいずれか1
種を含むポリマーを挙げることができる。但し、本発明
においては、これらに限定されるものではない。 【0065】 【化8】【0066】一般式(14)〜(17)中、R14は、水
素原子又はメチル基を表す。R15及びR16は、同じでも
異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭素数
10以下の炭化水素基、炭素数10以下のアルコキシ基
又は炭素数10以下のアリールオキシ基を表す。また、
R15とR16が結合、縮環してベンゼン環やシクロヘキサ
ン環を形成していてもよい。R17は、単結合又は炭素数
20以下の2価の炭化水素基を表す。R18は、単結合又
は炭素数20以下の2価の炭化水素基を表す。R19は、
単結合又は炭素数10以下の2価の炭化水素基を表す。
Yは、単結合、エーテル結合、チオエーテル結合、エス
テル結合又はアミド結合を表す。pは、1〜4の整数を
表す。q及びrは、それぞれ独立に0〜3の整数を表
す。 【0067】これらのアルカリ可溶性高分子としては、
本願出願人らが先に提案した特開2001−14223
0明細書段落番号[0130]〜[0163]に詳細に
記載されている。本実施の形態に使用可能なアルカリ水
可溶性高分子化合物は、1種類のみで使用してもよい
し、2種類以上を組合わせて使用してもよい。 【0068】アルカリ水可溶性高分子化合物の添加量と
しては、記録層の全固形分に対し5〜95質量%が好ま
しく、10〜95質量%がより好ましく、20〜90質
量%が最も好ましい。アルカリ水可溶性樹脂の添加量
が、5質量%未満であると、記録層の耐久性が劣化する
ことがあり、95質量%を超えると、画像形成されない
ことがある。 【0069】また、本発明の方法が適用できる公知の記
録材料としては、特開平8−276558号公報に記載
のフェノール誘導体を含有するネガ型画像記録材料、特
開平7−306528号公報に記載のジアゾニウム化合
物を含有するネガ型記録材料、特開平10−20303
7号公報に記載されている環内に不飽和結合を有する複
素環基を有するポリマーを用いた、酸触媒による架橋反
応を利用したネガ型画像形成材料などが挙げられ、これ
らに記載の記録層を本発明に係るネガ型記録層としての
酸架橋層に適用することができる。 【0070】このような態様の記録層に、先に述べた
(A)赤外線吸収剤を含有させることにより、赤外線レ
ーザ照射等による画像形成が可能となる。ここで用いら
れる赤外線吸収剤とは、前記重合硬化層において説明し
た(A)赤外線吸収剤と同様のものを用いることができ
る。好ましい含有量は、記録層の全固形分質量に対し、
0.01〜50質量%が好ましく、0.1〜10質量%
がより好ましく、さらに染料の場合には、0.5〜10
質量%が最も好ましく、顔料の場合には、1.0〜10
質量%が最も好ましい。前記含有量が、0.01質量%
未満であると、感度が低くなることがあり、50質量%
を超えると、平版印刷用原版とした場合の非画像部に汚
れが発生することがある。 【0071】(3:熱溶融型無処理系)次に、(H)疎
水性熱溶融性ポリマーが(J)親水性高分子マトリック
ス中に分散され、露光部の熱により疎水性のポリマーが
溶融し、互いに融着してポリマーによる疎水性(親イン
ク性)領域、即ち、画像部を形成する記録層について詳
細に述べる。 【0072】(H)疎水性熱溶融性樹脂微粒子 本発明に係る熱溶融型無処理系記録層に使用できる微粒
子ポリマーは、微粒子ポリマー同志が熱により溶融合体
するものが好ましく、その表面は親水性で、湿し水等の
親水性成分に分散するものが好ましい。微粒子を形成す
る樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリスチレ
ン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ(メ
タ)アクリル酸メチル、ポリ(メタ)アクリル酸エチ
ル、ポリ(メタ)アクリル酸ブチル、ポリアクリロニト
リル、ポリ酢酸ビニルや、それらの共重合体のラテック
ス等が好ましいものとして挙げられる。このような親水
性表面を有する微粒子ポリマーとしては、微粒子を構成
するポリマー自体が親水性であるもの、ポリマーの主鎖
或いは側鎖に親水性基を導入して親水性を付与したもの
など、ポリマー自体が表面親水性であるものや、ポリビ
ニルアルコール、ポリエチレングリコールなどの親水性
ポリマーまたはオリゴマー、または親水性低分子化合物
を微粒子ポリマー表面に吸着させて表面を親水化したも
のを包含するが、これらに限定されるものではない。 【0073】本発明に係る記録層中の微粒子ポリマーの
他の好ましい特性として、画像部の膜強度を向上させる
という観点から、微粒子ポリマーが熱反応性官能基を有
するポリマーにより構成されることが挙げられる。上記
の熱反応性官能基としては、重合反応を行うエチレン性
不飽和基(例えば、アクリロイル基、メタクリロイル
基、ビニル基、アリル基など)、付加反応を行うイソシ
アナート基又はそのブロック体、その反応相手である活
性水素原子を有する官能基(例えば、アミノ基、ヒドロ
キシル基、カルボキシル基など)、同じく付加反応を行
うエポキシ基、その反応相手であるアミノ基、カルボキ
シル基又はヒドロキシル基、縮合反応を行うカルボキシ
ル基とヒドロキシル基もしくはアミノ基、開環付加反応
を行う酸無水物とアミノ基もしくはヒドロキシル基など
を挙げることができる。しかし、加熱により化学結合が
形成される機能を有するものであれば、どのような反応
を行う官能基でも良い。これらの官能基のポリマー微粒
子への導入は、重合時に行ってもよいし、重合後に高分
子反応を利用して行ってもよい。 【0074】また、微粒子ポリマーの添加量は、記録層
固形分の50質量%〜99質量%が好ましく、60質量
%〜95質量%の範囲であることがさらに好ましい。 【0075】本発明の記録層に、上記のような熱反応性
官能基を有する微粒子ポリマーを用いる場合、必要に応
じてこれらの反応を開始又は促進する化合物を添加して
もよい。反応を開始又は促進する化合物としては、熱に
よりラジカル又はカチオンを発生するような化合物を挙
げることができ、例えば、ロフィンダイマー、トリハロ
メチル化合物、過酸化物、アゾ化合物、ジアゾニウム塩
又はジフェニルヨードニウム塩などを含んだオニウム
塩、アシルホスフィン、イミドスルホナートなどが挙げ
られる。これらの化合物は、記録層固形分の1〜20質
量%の範囲で添加することができる。好ましくは3〜1
0質量%の範囲である。この範囲内で、機上現像性を損
なわず、良好な反応開始又は促進効果が得られる。 【0076】(J)親水性高分子マトリックス 上記疎水性樹脂微粒子は親水性樹脂からなるマトリック
ス中に分散させることで、機上現像性が良好となり、さ
らに記録層自体の皮膜強度も向上する。親水性樹脂とし
ては、例えばヒドロキシル、カルボキシル、ヒドロキシ
エチル、ヒドロキシプロピル、アミノ、アミノエチル、
アミノプロピル、カルボキシメチルなどの親水基を有す
るものが好ましい。 【0077】親水性樹脂の具体例として、アラビアゴ
ム、カゼイン、ゼラチン、澱粉誘導体、カルボキシメチ
ルセルロースおよびそのナトリウム塩、セルロースアセ
テート、アルギン酸ナトリウム、酢酸ビニル−マレイン
酸コポリマー類、スチレン−マレイン酸コポリマー類、
ポリアクリル酸類およびそれらの塩、ポリメタクリル酸
類およびそれらの塩、ヒドロキシエチルメタクリレート
のホモポリマーおよびコポリマー、ヒドロキシエチルア
クリレートのホモポリマーおよびコポリマー、ヒドロキ
シプロピルメタクリレートのホモポリマーおよびコポリ
マー、ヒドロキシプロピルアクリレートのホモポリマー
およびコポリマー、ヒドロキシブチルメタクリレートの
ホモポリマーおよびコポリマー、ヒドロキシブチルアク
リレートのホモポリマーおよびコポリマー、ポリエチレ
ングリコール類、ヒドロキシプロピレンポリマー類、ポ
リビニルアルコール類、ならびに加水分解度が少なくと
も60質量%、好ましくは少なくとも80質量%の加水
分解ポリビニルアセテート、ポリビニルホルマール、ポ
リビニルブチラール、ポリビニルピロリドン、アクリル
アミドのホモポリマーおよびコポリマー、メタクリルア
ミドのホモポリマーおよびポリマー、N−メチロールア
クリルアミドのホモポリマーおよびコポリマー等を挙げ
ることができる。 【0078】親水性樹脂の記録層への添加量は、記録層
固形分の5〜40質量%が好ましく、10〜30質量%
がさらに好ましい。この範囲内で、良好な機上現像性と
皮膜強度が得られる。このような態様の記録層に、先に
述べた(A)赤外線吸収剤を含有させることにより、赤
外線レーザ照射等による画像記録が可能となる。用いる
赤外線吸収剤は先に例示したものと同様であり、赤外線
吸収剤は、本態様では、記録層中に30質量%まで添加
することができる。好ましくは5〜25質量%であり、
特に好ましくは7〜20質量%である。この範囲内で、
良好な感度が得られる。 【0079】〔その他の成分〕本発明では、さらに必要
に応じてこれら以外に種々の化合物を添加してもよい。
例えば、可視光域に大きな吸収を持つ染料を画像の着色
剤として使用することができる。また、フタロシアニン
系顔料、アゾ系顔料、カーボンブラック、酸化チタンな
どの顔料も好適に用いることができる。これらの着色剤
は、画像形成後、画像部と非画像部の区別がつきやすい
ので、添加する方が好ましい。なお、添加量は、記録層
塗布液全固形分に対し、0.01〜10質量%の割合で
ある。 【0080】また、本発明においては、記録層が重合硬
化層である場合、塗布液の調製中あるいは保存中におい
てラジカル重合可能なエチレン性不飽和二重結合を有す
る化合物の不要な熱重合を阻止するために少量の熱重合
防止剤を添加することが望ましい。適当な熱重合防止剤
としてはハイドロキノン、p−メトキシフェノール、ジ
−t−ブチル−p−クレゾール、ピロガロール、t−ブ
チルカテコール、ベンゾキノン、4,4′−チオビス
(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2′
−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノー
ル)、N−ニトロソ−N−フェニルヒドロキシルアミン
アルミニウム塩等が挙げられる。熱重合防止剤の添加量
は、全組成物の質量に対して約0.01質量%〜約5質
量%が好ましい。また必要に応じて、酸素による重合阻
害を防止するためにベヘン酸やベヘン酸アミドのような
高級脂肪酸誘導体等を添加して、塗布後の乾燥の過程で
記録層の表面に偏在させてもよい。高級脂肪酸誘導体の
添加量は、全組成物の約0.1質量%〜約10質量%が
好ましい。 【0081】また、本発明における記録層塗布液中に
は、現像条件に対する処理の安定性を広げるため、特開
昭62−251740号や特開平3−208514号に
記載されているような非イオン界面活性剤、特開昭59
−121044号、特開平4−13149号に記載され
ているような両性界面活性剤を添加することができる。 【0082】非イオン界面活性剤の具体例としては、ソ
ルビタントリステアレート、ソルビタンモノパルミテー
ト、ソルビタントリオレート、ステアリン酸モノグリセ
リド、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等が
挙げられる。 【0083】両性界面活性剤の具体例としては、アルキ
ルジ(アミノエチル)グリシン、アルキルポリアミノエ
チルグリシン塩酸塩、2−アルキル−N−カルボキシエ
チル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイ
ン、N−テトラデシル−N,N−ベタイン型(例えば、
商品名アモーゲンK、第一工業(株)製)等が挙げられ
る。 【0084】上記非イオン界面活性剤及び両性界面活性
剤の記録層塗布液中に占める割合は、0.05〜15質
量%が好ましく、より好ましくは0.1〜5質量%であ
る。 【0085】さらに、本発明に係る記録層塗布液中に
は、必要に応じ、塗膜の柔軟性等を付与するために可塑
剤が加えられる。例えば、ポリエチレングリコール、ク
エン酸トリブチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチ
ル、フタル酸ジヘキシル、フタル酸ジオクチル、リン酸
トリクレジル、リン酸トリブチル、リン酸トリオクチ
ル、オレイン酸テトラヒドロフルフリル等が用いられ
る。 【0086】本発明の平版印刷版原版を製造するには、
通常、記録層塗布液に必要な上記各成分を溶媒に溶かし
て、適当な支持体上に塗布すればよい。ここで使用する
溶媒としては、エチレンジクロライド、シクロヘキサノ
ン、メチルエチルケトン、メタノール、エタノール、プ
ロパノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、
1−メトキシ−2−プロパノール、2−メトキシエチル
アセテート、1−メトキシ−2−プロピルアセテート、
ジメトキシエタン、乳酸メチル、乳酸エチル、N,N−
ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミ
ド、テトラメチルウレア、N−メチルピロリドン、ジメ
チルスルホキシド、スルホラン、γ−ブチルラクトン、
トルエン、水等を挙げることができるがこれに限定され
るものではない。これらの溶媒は単独又は混合して使用
される。溶媒中の上記成分(添加剤を含む全固形分)の
濃度は、好ましくは1〜50質量%である。 【0087】また塗布、乾燥後に得られる支持体上の記
録層塗布量(固形分)は、用途によって異なるが、平版
印刷版原版についていえば一般的に0.5〜5.0g/
m2が好ましい。塗布する方法としては、種々の方法を
用いることができるが、例えば、バーコーター塗布、回
転塗布、スプレー塗布、カーテン塗布、ディップ塗布、
エアーナイフ塗布、ブレード塗布、ロール塗布等を挙げ
ることができる。塗布量が少なくなるにつれて、見かけ
の感度は大になるが、画像記録の機能を果たす記録層の
皮膜特性は低下する。 【0088】〔保護膜〕本発明の平版印刷版原版は、対
向する少なくとも一組の側面が水溶性の保護膜により覆
われていることを特徴とする。この保護膜は、親水性成
分を含むことが好ましく、水溶性成分を含むことがさら
に好ましい。本明細書において、「水溶性」とは、25
℃の水に1質量%以上溶解することを意味する。水溶性
成分としては、水溶性ポリマー、水溶性酸、水溶性塩
(好ましくは、水溶性無機塩)、水溶性アルカリ(好ま
しくは、金属水酸化物のような無機アルカリ)、および
界面活性剤(好ましくは、アニオン界面活性剤)等が好
ましい。 【0089】(水溶性ポリマー)水溶性ポリマーとして
は、天然ポリマー、半合成(半天然)ポリマーおよび合
成ポリマーのいずれも使用できる。天然ポリマーの例に
は、多糖類(例、澱粉、カラギーナン、ラミナラン、マ
ンナン、アルギン酸ナトリウム、ペクチン、デキストラ
ン、レバン、スクシノグルカン、セルロース)およびタ
ンパク質(例、にかわ、ゼラチン、コラーゲン)が含ま
れる。澱粉は、様々な植物(例、さつまいも、じゃがい
も、キャッサバ、小麦、とうもろこし)から採取したも
のが使用できる。植物分泌物のような未精製の天然多糖
類(例、ふのり、アイリシュモス、寒天、とろろあお
い、クインスシード、トラガカントガム、カラヤガム、
キサンチンガム、グアービンガム、ローカストビンガ
ム、アラビアガム、キャロップガム、ベンゾインガム、
キサンタンガム)を使用してもよい。また、再生セルロ
ース(ビスコース)を使用することもできる。 【0090】半合成(半天然)ポリマーは、セルロース
誘導体または澱粉誘導体が好ましい。その他の半合性ポ
リマーとしては、アルギン酸のプロピレングリコールエ
ステルも使用できる。セルロース誘導体の例には、セル
ロースエーテル(例、メチルセルロース、エチルセルロ
ース、メチルエチルセルロース、カルボキシメチルセル
ロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプ
ロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルエチルセ
ルロース)およびセルロースエステル(例、ヒドロキシ
プロピルメチルセルロースフタレート)が含まれる。澱
粉誘導体には、焙焼澱粉(例、白色デキストリン、黄色
デキストリン、ブリテッシュガム)、発酵澱粉(例、発
酵デキストリン、シャーディンガーデキストリン)、酸
分解澱粉、酸化澱粉(例、ジアルデヒドスターチ)、酸
(例、リン酸、脂肪酸、硫酸、硝酸、キサントゲン酸、
カルバミン酸)とのエステル化澱粉、エーテル化澱粉
(例、カルボキシアルキル澱粉、ヒドロキシアルキル澱
粉、スルホアルキル澱粉、シアノエチル澱粉、アリル澱
粉、ベンジル澱粉、カルバミルエチル澱粉)、アミノ化
澱粉(例、ジアルキルアミノ澱粉)、架橋澱粉(例、メ
チロール架橋澱粉、ヒドロキシアルキル架橋澱粉、リン
酸架橋澱粉、ジカルボン酸架橋澱粉)、澱粉と合成ポリ
マー(例、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸、ポリ
酢酸ビニル、ポリアクリロニトリル)とのグラフトコポ
リマー、カチオン性澱粉と合成ポリマー(例、ポリアク
リル酸エステル、ポリビニル、スチレン/マレイン酸コ
ポリマー、ポリエチレンオキサイド)とのグラフトコポ
リマーが含まれる。 【0091】合成ポリマーの例には、ポリビニルアルコ
ール、変性ポリビニルアルコール(例、部分アセタール
化ポリビニルアルコール、アリル変性ポリビニルアルコ
ール、ポリビニルメチルエーテル、ポリビニルエチルエ
ーテル、ポリビニルイソブチルエーテル)、ポリ(メ
タ)アクリル酸およびその塩(例、ポリアクリル酸ナト
リウム)、ポリ(メタ)アクリル酸エステルおよびその
部分ケン化物、ポリ(メタ)アクリルアミド、ポリエチ
レンオキシド、ポリビニルピロリドン、スルホン酸ポリ
マー(特公昭39−23982号公報記載)およびホス
ホン酸ポリマー(特公昭38−8907号公報記載)が
含まれる。二種類以上の繰り返し単位からなるコポリマ
ー(例、ビニルピロリドン/酢酸ビニルコポリマー、ス
チレン/マレイン酸コポリマー、スチレン/クロトン酸
コポリマー)を用いてもよい。このような水溶性ポリマ
ーは、二種類以上のポリマーを併用してもよく、天然ポ
リマー(アルギン酸)と合成ポリマー(ポリビニルアル
コール)との混合物については、特開昭47−1750
4号公報に記載がある。なお、特に好ましい水溶性ポリ
マーの例としては、アラビアガム、デキストリン、ヒド
ロキシアルキル架橋澱粉、ポリアクリル酸ナトリウム、
ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルエ
ーテル澱粉およびカルボキシメチルセルロースが挙げら
れる。このような、上記水溶性ポリマーは、保護膜の塗
布液中に、1〜90質量%の濃度で含まれることが好ま
しく、3〜50質量%含まれることがさらに好ましい。 【0092】(水溶性酸及び水溶性塩)水溶性酸の例に
は、ヘキサメタリン酸およびフイチン酸が挙げられる。
水溶性塩としては、ヘキサメタリン酸およびフイチン酸
に加えて他の酸(例、他のリン酸、硝酸、クロム酸、フ
ッ化水素酸、フッ化ジルコン酸、タングステン酸、ケイ
酸、アリルスルホン酸、トリヒドロキシベンザルスルホ
ン酸)の塩を用いることができる。ヘキサメタリン酸と
塩を形成する塩基の例には、アルカリ金属(例、ナトリ
ウム、カリウム、リチウム)およびアンモニウムが含ま
れる。フイチン酸と塩を形成する塩基の例には、アルカ
リ金属、アンモニウムおよびアミン(例、ジエチルアミ
ン、トリエチルアミン、n−プロピルアミン、ジ−n−
プロピルアミン、トリ−n−プロピルアミン、n−ブチ
ルアミン、n−アミルアミン、n−ヘキシルアミン、ラ
ウリルアミン、エチレンジアミン、トリメチレンジアミ
ン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミ
ン、ヘキサメチレンジアミン、エタノールアミン、ジエ
タノールアミン、トリエタノールアミン、アリルアミ
ン、アニリン)。ヘキサメタリン酸塩およびフイチン酸
塩は、水素塩(酸性塩)であってもよい。ヘキサメタリ
ン酸塩およびフイチン酸塩は、二種類以上の塩基を含む
複塩であってもよい。 【0093】他の酸(他のリン酸、硝酸、クロム酸、フ
ッ化水素酸、フッ化ジルコン酸、タングステン酸、ケイ
酸、アリルスルホン酸、トリヒドロキシベンザルスルホ
ン酸)と塩を形成する塩基の例には、アルカリ金属
(例、ナトリウム、カリウム)、アルカリ土類金属
(例、カルシウム、マグネシウム)、遷移金属(例、亜
鉛)およびアミン(例、テトラメチレンジアミン)が含
まれる。フッ化ジルコン酸については、特公昭36−2
2063号公報に記載がある。リン/タングステン酸混
合物については、特公昭39−7663号公報に記載が
ある。リン酸/テトラメチレンジアミン混合物について
は、フランス特許217033号明細書に記載がある。
リン/モリブデン酸化合物については、OLS2100
217号明細書に記載がある。非晶質リン酸化合物/シ
リケート/ポラン化合物の混合物およびリン酸/フッ素
混合物については、Bp882856号明細書に記載が
ある。アリルスルホン酸ナトリウムいついては、英国特
許2098627号明細書に記載がある。トリヒドロキ
シベンザルスルホン酸については、特公昭44−641
0号公報に記載がある。 【0094】これらの塩としては、無機酸の塩が好まし
く、無機塩がより好ましく、ケイ酸塩がさらに好まし
く、ケイ酸のアルカリ金属塩(例、ケイ酸ナトリウム、
ケイ酸カリウム、ケイ酸リチウム)が最も好ましい。ケ
イ酸のアルカリ金属塩は、mSiO2/nM2O(Mはア
ルカリ金属原子、m/n=0.5〜8.5)で定義され
ることが好ましい。 【0095】このような、上記水溶性酸及び水溶性塩
は、保護膜の塗布液中に、0.01〜10質量%の濃度
で含まれることが好ましく、0.1〜5質量%含まれる
ことがさらに好ましい。なお、本態様において、特に好
ましいケイ酸塩は、保護膜の塗布液中に、0.4〜40
質量%の濃度で含まれることが好ましく、0.8〜25
質量%の濃度で含まれることがさらに好ましい。ケイ酸
塩を含む保護膜の塗布液は、pHが8〜14であること
が好ましく、9〜13であることがさらに好ましい。 【0096】(水溶性アルカリ)水溶性アルカリとして
は、アルカリ金属の水酸化物または炭酸塩(例、水酸化
ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム、炭酸水素
カリウム)、アルカリ土類金属の水酸化物(例、水酸化
カルシウム)が好ましく、アルカリ金属の水酸化物また
は炭酸塩が特に好ましい。このような水溶性アルカリ
は、保護膜の塗布液中に、0.01〜10質量%の濃度
で含まれることが好ましく、0.1〜5質量%の濃度で
含まれることがさらに好ましい。 【0097】(界面活性剤)界面活性剤としては、ノニ
オン界面活性剤(例、ポリオキシエチレンアルキルフェ
ニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレ
ンブロックコポリマー)、アニオン界面活性剤(例、脂
肪酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンス
ルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ジアル
キルスルホこはく酸エステル塩、アルキル燐酸エステル
塩、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物)および両
性界面活性剤(例えばベタイン型、グリシン型、アラニ
ン型、スルホベタイン型)が好ましく、アニオン界面活
性剤が特に好ましい。界面活性剤は、保護膜全体量の
0.5〜10質量%の範囲で用いることが好ましく、1
〜5質量%の範囲で用いることがさらに好ましい。 【0098】以上、本発明における保護膜の水溶性成分
について述べたが、これらの水溶性成分のうち、保護膜
としての機能が大きいという理由から、水溶性ポリマー
を用いることが特に好ましい。また、これらの水溶性成
分は、本発明の効果を損なわない範囲で、2種以上を併
用して用いることができる。好ましい組み合わせとして
は、水溶性ポリマーと水溶性塩、または水溶性ポリマー
と水溶性アルカリ等が挙げられる。 【0099】保護膜の塗布液には、以上の成分に加え
て、有機溶剤、湿潤剤、防腐剤、充填剤、染料あるいは
顔料を添加することもできる。湿潤剤としては、低級多
価アルコール(例、エチレングリコール、ジエチレング
リコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコ
ール、ブチレングリコール、ペンタンジオール、ヘキシ
レングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチ
レングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピ
レングリコール、グリセリン、ソルビトール、ペンタエ
リスリトール)が好ましく、グリセリンが特に好まし
い。湿潤剤の使用量は、上記界面活性剤の使用量と同様
である。充填剤の例には、二酸化珪素、タルクよび粘土
が含まれる。充填剤の使用量は、保護膜の2質量未満と
することが好ましい。染料および顔料の使用量は、保護
膜の1質量%未満とすることが好ましい。 【0100】以上の各成分の水溶液を保護膜の塗布液と
して使用できる。水溶液に代えて、水性乳化液(米国特
許4253999号、同4268613号、同4348
954号の各明細書に記載)も保護膜の塗布液として使
用できる。 【0101】保護膜の形成は、支持体上に、前述の記録
層の形成が終了してから、実施することが好ましい。シ
ート状の平版印刷原版を多数枚(例えば1000枚)積
み重ねた状態で、その端面(側面)に保護膜の塗布液を
塗布することもできる。積み重ねた印刷原版の間に合紙
を挟んでもよい(特公昭57−23259号、特開昭5
7−99647号の各公報に記載)。また、印刷原版を
スリッターで連続して裁断した後、直ちに、保護膜の塗
布液を含ませたモルトンロールにより塗布することもで
きる。保護膜の側面への塗布量は、乾燥質量で0.00
1〜50g/m 2であることが好ましく、0.01〜1
0g/m2であることがさらに好ましく、0.05〜5
g/m2であることが最も好ましい。 【0102】〔支持体〕本発明の平版印刷版原版におい
て前記記録層及び保護膜を塗布可能な支持体としては、
寸度的に安定な板状物であり、例えば、紙、プラスチッ
ク(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチ
レン等)がラミネートされた紙、金属板(例えば、アル
ミニウム、亜鉛、銅等)、プラスチックフィルム(例え
ば、二酢酸セルロース、三酢酸セルロース、プロピオン
酸セルロース、酪酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、
硝酸セルロース、ポリエチレンテレフタレート、ポリエ
チレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネ
ート、ポリビニルアセタール等)、上記の如き金属がラ
ミネート若しくは蒸着された紙又はプラスチックフィル
ム等が挙げられる。好ましい支持体としては、ポリエス
テルフィルム又はアルミニウム板が挙げられる。 【0103】本発明の平版印刷版原版に使用する支持体
としては、軽量で表面処理性、加工性、耐食性に優れた
アルミニウム板を使用することが好ましい。この目的に
供されるアルミニウム材質としては、JIS 1050
材、JIS 1100材、JIS 1070材、Al−
Mg系合金、Al−Mn系合金、Al−Mn−Mg系合
金、Al−Zr系合金。Al−Mg−Si系合金などが
挙げられる。 【0104】アルミニウム板は表面に粗面化処理等の表
面処理を行い、記録層を塗布して平版印刷版原版とする
ことが出来る。粗面化処理には、機械的粗面化、化学的
粗面化、電気化学的粗面化が単独又は組み合わせて行わ
れる。また、表面のキズ付き難さを確保するための陽極
酸化処理を行ったり、親水性を増すための処理を行うこ
とも好ましい。 【0105】以下に支持体の表面処理について説明す
る。アルミニウム板を粗面化するに先立ち、必要に応
じ、表面の圧延油を除去するための例えば界面活性剤、
有機溶剤またはアルカリ性水溶液などによる脱脂処理が
行われてもよい。アルカリの場合、次いで酸性溶液で中
和、スマット除去などの処理を行ってもよい。 【0106】次いで支持体と記録層の密着性を良好に
し、かつ非画像部に保水性を与えるため、支持体の表面
を粗面化する、いわゆる、砂目立て処理がなされてい
る。この砂目立て処理法の具体的手段としては、サンド
ブラスト等の機械的砂目立て方法があり、またアルカリ
または酸あるいはそれらの混合物からなるエッチング剤
で表面を粗面化処理する化学的砂目立て方法がある。ま
た、電気化学的砂目立て方法、支持体材料に、粒状体を
接着剤またはその効果を有する方法で接着させて表面を
粗面化する方法や、微細な凹凸を有する連続帯やロール
を支持体材料に圧着させて凹凸を転写する粗面化方法等
公知の方法を適用できる。 【0107】これらのような粗面化方法は複数を組み合
わせて行ってもよく、その順序、繰り返し数などは任意
に選択することができる。前述のような粗面化処理すな
わち砂目立て処理して得られた支持体の表面には、スマ
ットが生成しているので、このスマットを除去するため
に適宜水洗あるいはアルカリエッチング等の処理を行う
ことが一般的に好ましい。 【0108】本発明に用いられるアルミニウム支持体の
場合には、前述のような前処理を施した後、通常、耐摩
耗性、耐薬品性、保水性を向上させるために、陽極酸化
によって支持体に酸化皮膜を形成させる。 【0109】アルミニウム板の陽極酸化処理に用いられ
る電解質としては多孔質酸化皮膜を形成するものならば
いかなるものでも使用することができ、一般には硫酸、
リン酸、蓚酸、クロム酸あるいはこれらの混酸が用いら
れる。それらの電解質の濃度は電解質の種類によって適
宜決められる。陽極酸化の処理条件は用いる電解質によ
り種々変わるので一概に特定し得ないが、一般的には電
解質の濃度が1〜80%溶液、液温は5〜70℃、電流
密度5〜60A/dm2、電圧1〜100V、電解時間
10秒〜5分の範囲にあれば適当である。陽極酸化皮膜
の量は1.0g/m2以上が好適であるが、より好まし
くは2.0〜6.0g/m2の範囲である。陽極酸化皮
膜が1.0g/m2未満であると耐刷性が不十分であっ
たり、平版印刷版の非画像部に傷が付き易くなって、印
刷時に傷の部分にインキが付着するいわゆる「傷汚れ」
が生じ易くなる。 【0110】このようなアルミニウム支持体は陽極酸化
処理後に有機酸またはその塩による処理または、記録層
塗布の下塗り層を適用して用いることができる。 【0111】なお支持体と記録層との密着性を高めるた
めの中間層を設けてもよい。密着性の向上のためには、
一般に中間層は、ジアゾ樹脂や、例えばアルミニウムに
吸着するリン酸化合物等からなっている。中間層の厚さ
は任意であり、露光した時に、上層の記録層と均一な結
合形成反応を行い得る厚みでなければならない。通常、
乾燥固体で約1〜100mg/m2の塗布割合がよく、
5〜40mg/m2が特に良好である。中間層中におけ
るジアゾ樹脂の使用割合は、30〜100%、好ましく
は60〜100%である。 【0112】平版印刷版用支持体として好ましい特性と
しては、中心線平均粗さで0.10〜1.2μmであ
る。0.10μmより低いと記録層と密着性が低下し、
著しい耐刷の低下を生じてしまう。1.2μmより大き
い場合、印刷時の汚れ性が悪化してしまう。さらに支持
体の色濃度としては、反射濃度値として0.15〜0.
65であり、0.15より白い場合、画像露光時のハレ
ーションが強すぎ画像形成に支障をきたしてしまい、
0.65より黒い場合、現像後の検版作業において画像
が見難くく、著しく検版性が悪いものとなってしまう。 【0113】以上のようにして、本発明の平版印刷版原
版を作成することができる。この平版印刷版原版は、赤
外線レーザで記録できる。また、紫外線ランプやサーマ
ルヘッドによる熱的な記録も可能である。本発明におい
ては、波長760nmから1200nmの赤外線を放射
する固体レーザ及び半導体レーザにより画像露光される
ことが好ましい。レーザの出力は100mW以上が好ま
しく、露光時間を短縮するため、マルチビームレーザデ
バイスを用いることが好ましい。また、1画素あたりの
露光時間は20μ秒以内であることが好ましい。記録材
料に照射されるエネルギーは10〜300mJ/cm2
であることが好ましい。 【0114】赤外線レーザにより露光した後、本発明の
画像記録材料は、好ましくは、水又はアルカリ性水溶液
にて現像される。また、(H)熱溶融性微粒子と(J)
親水性高分子マトリックスを含む記録層の場合には、印
刷に使用する湿し水により容易に未露光部が除去される
ため、このような現像工程を経ずに直接印刷機に装着し
て印刷を行なうこともできる。現像液として、アルカリ
性水溶液を用いる場合、本発明の画像記録材料の現像液
及び補充液としては、従来公知のアルカリ水溶液が使用
できる。例えば、ケイ酸ナトリウム、同カリウム、第3
リン酸ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、第2
リン酸ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、炭酸
ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、炭酸水素ナ
トリウム、同カリウム、同アンモニウム、ほう酸ナトリ
ウム、同カリウム、同アンモニウム、水酸化ナトリウ
ム、同アンモニウム、同カリウム及び同リチウム等の無
機アルカリ塩が挙げられる。また、モノメチルアミン、
ジメチルアミン、トリメチルアミン、モノエチルアミ
ン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モノイソプロ
ピルアミン、ジイソプロピルアミン、トリイソプロピル
アミン、n−ブチルアミン、モノエタノールアミン、ジ
エタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプ
ロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、エチレ
ンイミン、エチレンジアミン、ピリジン等の有機アルカ
リ剤も用いられる。これらのアルカリ剤は単独又は2種
以上を組み合わせて用いられる。 【0115】さらに、自動現像機を用いて現像する場合
には、現像液と同じものまたは、現像液よりもアルカリ
強度の高い水溶液(補充液)を現像液に加えることによ
って、長時間現像タンク中の現像液を交換することな
く、多量の平版印刷版原版を処理できることが知られて
いる。本発明においてもこの補充方式が好ましく適用さ
れる。 【0116】現像液及び補充液には現像性の促進や抑
制、現像カスの分散及び印刷版画像部の親インキ性を高
める目的で必要に応じて種々の界面活性剤や有機溶剤等
を添加できる。好ましい界面活性剤としては、アニオン
系、カチオン系、ノニオン系及び両性界面活性剤が挙げ
られる。好ましい有機溶剤としてはベンジルアルコール
等が挙げられる。また、ポリエチレングリコール若しく
はその誘導体、又はポリプロピレングリコール若しくは
その誘導体等の添加も好ましい。また、アラビット、ソ
ルビット、マンニット等の非還元糖を添加することもで
きる。 【0117】さらに、現像液及び補充液には必要に応じ
て、ハイドロキノン、レゾルシン、亜硫酸または亜硫酸
水素酸のナトリウム塩およびカリウム塩等の無機塩系還
元剤、さらに有機カルボン酸、消泡剤、硬水軟化剤を加
えることもできる。 【0118】以上記述した現像液及び補充液を用いて現
像処理された印刷版は、水洗水、界面活性剤等を含有す
るリンス液、アラビアガムや澱粉誘導体を含む不感脂化
液で後処理されたのち、本発明の平版印刷版原版に特有
の工程である後加熱工程に付される。また、このような
現像処理を行っても、本発明に係る保護膜に起因する、
印刷版側面の親水性は、効果を損なうことがない。 【0119】近年、製版・印刷業界では製版作業の合理
化及び標準化のため、印刷用版材用の自動現像機が広く
用いられている。この自動現像機は、一般に現像部と後
処理部からなり、印刷用版材を搬送する装置と各処理液
槽とスプレー装置とからなり、露光済みの印刷版を水平
に搬送しながら、ポンプで汲み上げた各処理液をスプレ
ーノズルから吹き付けて現像処理するものである。ま
た、最近は処理液が満たされた処理液槽中に液中ガイド
ロール等によって印刷用版材を浸漬搬送させて処理する
方法も知られている。このような自動処理においては、
各処理液に処理量や稼働時間等に応じて補充液を補充し
ながら処理することができる。また、電気伝導度をセン
サーにて感知し、自動的に補充することもできる。ま
た、実質的に未使用の処理液で処理するいわゆる使い捨
て処理方式も適用できる。 【0120】以上のようにして得られた平版印刷版は、
所望により不感脂化ガムを塗布したのち、印刷工程に供
することができる。本発明の方法により、所定の工程を
経て画像形成された平版印刷版はオフセット印刷機等に
かけられ、多数枚の印刷に用いられる。本発明の平版印
刷版原版より得られる印刷版は、新聞紙のようなロール
紙を使用して連続的に印刷する場合においても、側面が
高い親水性を有するため、エッジ汚れを効果的に防止で
きる。 【0121】 【実施例】以下、実施例により本発明を詳細に説明する
が、本発明はこれらに限定されるものではない。 〔実施例1〕 (架橋剤A−1の合成)p−アミノフェノール(1mo
l)、酢酸ナトリウム(1mol)をアセトン(1リッ
トル)と共にフラスコに入れ、ギ酸クロリド(1mo
l)を氷冷下、滴下する。5時間後、氷水中に投入して
結晶析出させ、結晶をろ取し、A−1−xを収率75%
で得た。このA−1−x(0.75mol)とKOH
(0.75mol)、水500ml、37%ホルマリン
水溶液(4.0mol)をフラスコに入れ、50℃で5
時間加熱後、アセトン5リットル中に投入し、結晶析出
させ、結晶をろ取し、水100mlにこの結晶を溶解
後、硫酸水素カリウムで中和すると結晶化する。これを
ろ取し、目的物A−1を全収率60%で得た。架橋剤A
−1の構造は以下の通りである。 【0122】 【化9】 【0123】(支持体の作成)厚さ0.30mmのアル
ミニウム板(材質1050)をトリクロロエチレン洗浄
して脱脂した後、ナイロンブラシと400メッシュのパ
ミストン−水懸濁液を用いその表面を砂目立てし、よく
水で洗浄した。この板を45℃の25%水酸化ナトリウ
ム水溶液に9秒間浸漬してエッチングを行い水洗後、さ
らに2%HNO 3に20秒間浸漬して水洗した。この時
の砂目立て表面のエッチング量は約3g/m2であっ
た。次にこの板を7%H2SO4を電解液として電流密度
15A/dm2で3g/m2の直流陽極酸化皮膜を設けた
後、水洗乾燥した。次にこのアルミニウム板に下記下塗
り液を塗布し、80℃で30秒間乾燥した。乾燥後の被
覆量は10mg/m2であった。 <下塗り液> ・β−アラニン 0.1g ・フェニルホスホン酸 0.05g ・メタノール 40g ・純水 60g 【0124】(記録層の形成)次に、下記感光層塗布液
1を調整し、上記の下塗り済みのアルミニウム板にワイ
ヤーバーを用いて塗布し、温風式乾燥装置にて100℃
で1分間乾燥して記録層を形成した。乾燥後の被覆量は
1.4g/m2であった。 【0125】 <感光層塗布液1> ・架橋剤(A−1/A−2の質量比50/50の混合物) 0.6g ・バインダーポリマー(BX−1) 1.4g ・酸発生剤(SX−1) 0.2g ・赤外線吸収剤(IR−1) 0.2g ・着色剤(VPB−Naps:保土ヶ谷化学(株)製) 0.04g ・ケイ素系界面活性剤 0.03g (TEGO GLIDE100(商品名) テゴケミーサービス社(Tego Chemie Service GmbH)製) ・メチルエチルケトン 1.2g ・メタノール 15.8g ・1−メトキシ−2−プロパノール 10.0g 【0126】なお、バインダーポリマー(BX−1)
は、ポリ−p−ヒドロキシスチレン(商品名:マルカリ
ンカーMH2P、丸善石油化学(株)製)を示す。上記
感光層塗布液1に使用した架橋剤(A−2)、酸発生剤
(SX−1)及び赤外線吸収剤(IR−1)の構造は以
下に示す通りである。 【0127】 【化10】 【0128】(保護膜の形成)上記記録層を形成したア
ルミニウム支持体を幅398mm、長さ560mmにカ
ットした。次に、それらの側面に、下記組成からなる保
護膜塗布液をモルトンローラを用いて乾燥質量が0.1
g/m2となるように塗布し、実施例1の平版印刷版原
版1を得た。 【0129】 <保護膜塗布液> ・珪酸カリウム(52Be:20℃) 25g ・水酸化カリウムの48.5質量%水溶液 15g ・ブチルナフタレンスルホン酸ナトリウム 5g ・純水 925g 【0130】(露光)得られた型平版印刷版原版1を、
波長830〜850nm程度の赤外線を発する半導体レ
ーザで版面エネルギーが10mJ/cm2〜220mJ
/cm2の範囲で、10mJ/cm2づつ変化するよう
に、走査露光した。露光後、パネルヒーターにて、11
0℃で15秒間加熱処理した。 【0131】(現像処理)露光後、富士写真フイルム
(株)製自動現像機スタブロン900Nを用い現像処理
し、実施例1の平版印刷版1を得た。現像液は、仕込み
液に富士写真フイルム(株)製現像液、DP−4(1:
8の水希釈液)、補充液に富士写真フイルム(株)製、
DP−4RW(1:4の水希釈液)を用いた。現像浴の
温度は30℃とした。また、フィニッシャーは、富士写
真フイルム(株)製FN−6の1:1水希釈液を用い
た。 【0132】〔実施例2〕上記実施例1で用いたのと同
様のアルミニウム支持体上に、下記下塗り液を塗布し、
80℃で30秒間乾燥した。乾燥後の被覆量は10mg
/m2であった。 <下塗り液> ・2−アミノエチルホスホン酸 0.5g ・メタノール 40g ・純水 60g 【0133】(ポリマーの合成)2−ヒドロキシエチル
メタクリレート、N−(p−スルフアモイルフェニル)
メタクリルアミド及びメタクリル酸を、通常の方法によ
りラジカル重合しポリマーとした。さらに、得られたポ
リマーを2−メタクリロイルオキシエチルイソシアナー
トと反応させ、下式に示すポリマー(RB−1)を得
た。組成比はモル比でx:y:z=50:30:20で
ある。質量平均分子量は12万(ポリスチレン標準)で
あった。 【0134】(記録層の形成)下記感光層塗布液2を前
記下塗り層を形成した支持体上に、ワイヤーバーで塗布
し、温風式乾燥装置にて120℃で45秒間乾燥して記
録層を形成し、実施例2の平版印刷版原版2を得た。乾
燥後の塗布量は1.4g/m2であった。なお、感光層
塗布液2の調製に用いた赤外線吸収剤などの構造は以下
に示す通りである。 【0135】 <感光層塗布液2> ・赤外線吸収剤(IR−2) 0.08g ・開始剤[オニウム塩](KO−1) 0.20g ・開始剤[オニウム塩](KO−2) 0.10g ・ジベンタエリスリトールヘキサアクリレート 0.50g ・モノマー(TM−1) 0.50g ・ポリマー(RB−1) 1.00g ・ビクトリアピュアブルーのナフタレンスルホン酸塩 0.04g ・p−メトキシフェノール 0.001g ・フッ素系界面活性剤 0.03g (メガファックF−176、大日本インキ化学工業(株)製) ・メチルエチルケトン 10g ・γ−ブチロラクトン 5g ・メタノール 7g ・1−メトキシ−2−プロパノール 5g 【0136】 【化11】【0137】(保護膜の形成)上記記録層を形成したア
ルミニウム支持体を幅398mm、長さ560mmにカ
ットした。次に、実施例1で用いたものと同様の保護膜
塗布液をモルトンローラを用いて乾燥質量が0.1g/
m2となるように塗布し、実施例2の平版印刷版原版2
を得た。 【0138】(露光及び現像)得られた平版印刷版原版
2をCreo社(株)製Trendsetter324
4VFSにて、版面エネルギー量80mJ/cm2にて
露光した。露光後、露光後、富士写真フイルム(株)製
スタブロン900NPを自動現像機に用いて、実施例2
の平版印刷版2を得た。現像液には、下記現像液[D−
1]を仕込み液として投入し、下記現像液[D−2]を
補充液とし、さらに、富士写真フイルム(株)製FP−
2Wの1:1水希釈液をフィニッシャーとして用い、現
像温度を30℃、現像時間を12秒で処理した。 【0139】 <現像液[D−1]> ・水酸化カリウム 3g ・炭酸水素カリウム 1g ・炭酸カリウム 2g ・亜硫酸ナトリウム 1g ・ポリエチレングリコールモノナフチルエーテル 150g ・ジブチルナフタレンスルホン酸ナトリウム塩 50g ・エチレンジアミン4酢酸4ナトリウム塩 8g ・水 785g 【0140】 <現像液[D−2]> ・水酸化カリウム 6g ・炭酸カリウム 2g ・亜硫酸ナトリウム 1g ・ポリエチレングリコールモノナフテルエーテル 150g ・ジブチルナフタレンスルホン酸ナトリウム塩 50g ・ヒドロキシエタンジホスホン酸カリウム塩 4g ・シリコンTSA−731(東芝シリコーン社(株)製) 0.1g ・水 786.9g 【0141】〔実施例3〕 (支持体の作製)厚さ0.30mmのアルミニウムウエ
ッブ(材質1050)を、表面の圧延油を除去するため
10%アルミン酸ソーダ水溶液で50℃30秒間脱脂処
理を行い、30%硫酸水溶液で50℃30秒間中和、ス
マット除去処理を行った。 【0142】次いで支持体と記録層の密着性を良好に
し、砂目立て処理を行った。1%の塩酸と0.5%の硝
酸アルミを含有する水溶液を45℃に保ち、アルミウェ
ブを水溶液中に流しながら、間接給電セルにより電流密
度20A/dm2、デューティー比1:1の交番波形で
アノード側電気量240C/dm2を与えることで電解
砂目立てを行った。その後10%アルミン酸ソーダ水溶
液で50℃30秒間エッチング処理を行い、30%硫酸
水溶液で50℃30秒間中和、スマット除去処理を行っ
た。 【0143】さらに、電解質として硫酸20%水溶液を
35℃で用い、アルミウェブを電解質中に通搬しなが
ら、間接給電セルにより14A/dm2の直流で電解処
理を行うことで2.5g/m2の陽極酸化皮膜を作成し
た。作成したアルミニウム支持体に下記下塗り液をワイ
ヤーバーにて塗布し、温風式乾燥装置を用いて90℃で
30秒間乾燥した。乾燥後の被服量は20mg/m2で
あった。 【0144】 <下塗り液> ・2−メタクリロイルオキシエチルリン酸 0.4g ・メタノール 20g ・イオン交換水 80g 【0145】(記録層の形成)次に、下記感光層塗布液
3を、前記下塗り層を形成した支持体上に、ワイヤーバ
ーで塗布し、温風式乾燥装置にて120℃で45秒間乾
燥して記録層を形成し、さらに、下記オーバーコート層
塗布液をスライドホッパーを用いて塗布し、温風式乾燥
装置にて120℃で75秒間乾燥た。尚、画像記録層の
塗布量は2.0g/m2であり、オーバーコート層の塗
布量は2.3g/m2であった。用いた赤外線吸収剤
(IR−3)と開始剤(KO−3)を以下に示す。 【0146】 <感光層塗布液3> ・赤外線吸収剤(IR−3) 0.10g ・開始剤(KO−3) 0.15g ・ジペンタエリスリトールテトラアクリレート 0.20g ・イソホロンジイソシナネートと 0.60g 2−ヒドロキシエチルアクリレートの付加物 ・ジフェニルメタンジイソシアネートと 1.20g ヘキサメチレンジイソシアネートと ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸と テトラエチレングリコールから得られるポリウレタン (組成モル比=30:20:20:30、質量平均分子量=12万) ・クリスタルバイオレット染料 0.06g ・重合禁止剤(クペロンAl、和光純薬(株)製) 0.005g ・フッ素系界面活性剤 0.03g (メガファックKF309、大日本インキ化学工業(株)製) ・メチルエチルケトン 10g ・γ−ブチロラクトン 5g ・メタノール 7g ・1−メトキシ−2−プロパノール 5g 【0147】 <オーバーコート層用塗布液> ・ポリビニルアルコール 2.5g (ケン化度98.5モル%、重合度500) ・ポリビニルピロリドン 0.5g (K30、東京化成工業(株)製 分子量4万) ・非イオン性界面活性剤 0.05g (EMAREX NP−10 日本エマルジョン社(株)製) ・イオン交換水 96.95g 【0148】 【化12】 【0149】(保護膜の形成)上記記録層を形成したア
ルミニウム支持体を幅398mm、長さ560mmにカ
ットした。次に、実施例1で用いたものと同様の保護膜
塗布液をモルトンローラを用いて乾燥質量が0.1g/
m2となるように塗布し、実施例3の平版印刷版原版3
を得た。 【0150】(露光及び現像)版材供給装置(SA−L
8000)、露光装置(Luxel T−9000CT
P)、コンベア(T−9000 Conveyor)、
プレ加熱とプレ水洗機構付き自動現像機(FLP−12
5NFS)、ストッカー(ST−1160)より成る冨
士写真フイルム(株)CTP出力システムを用いて、画
像形成を行い、実施例3の平版印刷版3を得た。プレ加
熱は、版面温度が120℃になるように設定し、プレ水
洗は水道水を用いた。また、自動現像機の現像部に、下
記組成の現像液組成物(V−1)を仕込み、30℃に保
温した。水洗部には、水道水を仕込み、フィニッシャー
部には、FP−2W(富士写真フイルム(株)製):水
=1:1希釈したフィニッシングガム液を仕込んで用い
た。 【0151】 <現像液(V−1)> ・ケイ酸カリウム 0.2質量% ・炭酸カリウム 0.2質量% ・エチレングリコールモノナフチルエーテル 3.8質量% ・ブチルナフタレンスルホン酸ナトリウム 1.0質量% ・EDTAの4Na塩 0.1質量% ・水 94.7質量% 【0152】〔印刷及び評価〕上記で得られた平版印刷
版1〜3をオフセット輪転印刷機にて、新聞用インキ
(阪田インキ(株))と湿し水(東洋アルキー、東洋イ
ンキ(株))とを用いて、10万枚/時のスピードで2
万枚印刷した。その結果、いずれの実施例においても、
印刷版のエッジ部に対応する印刷紙面に汚れが発生して
いないことが確認された。 【0153】〔実施例4〕 (支持体の作成)厚さが0.30mmのアルミニウム板
を、50℃において5g/lの水酸化ナトリウムを含有
する水溶液に浸漬し、脱イオン水で濯ぐことにより脱脂
処理を行なった。次いで、35℃の温度及び1200A
/m2の電流密度において交流を用い、4g/lの塩
酸、4g/lの硼酸及び5g/lのアルミニウムイオン
を含有する水溶液中でアルミニウム板を電気化学的に粗
面化し、0.5mmの平均中心線粗さ(Ra)を有する
表面性状とした。粗面化したアルミニウム板を脱イオン
水で洗浄した後、300g/lの硫酸を含有する水溶液
を用い、60℃において180秒間、エッチング処理
し、25℃において30秒間、脱イオン水で洗浄した。 【0154】次に、200g/lの硫酸を含有する水溶
液中で、45℃の温度、約10Vの電圧及び150A/
m2の電流密度において約300秒間、陽極酸化処理し
て、表面に3.00g/m2のAl2O3陽極酸化層を形
成し、脱イオン水で洗浄した後、ポリビニルホスホン酸
を含有する溶液を用いて後処理し、脱イオン水を用いて
20℃で120秒間洗浄し、乾燥してアルミニウム支持
体を得た。 【0155】(記録層の形成)下記感光層塗布液4を調
製し、支持体表面に30g/m2(湿潤コーティング
量)の量でコーティングし、35℃でそれを乾燥するこ
とにより平版印刷版原版4を製造した。 <感光層塗布液4> ・ポリスチレン(粒径60nm)の20質量%分散液 7.5g (ポリスチレン微粒子に対して1.5質量%の界面活性剤を加え、 脱イオン水中に分散安定化した分散液) ・赤外線吸収剤(下記シアニン染料(I)の1質量%溶液) 20g ・ポリアクリル酸 6g (CARBOPOL WS801(商品名)、 Goodrich社製の5質量%水溶液) ・脱イオン水 66.5g 【0156】 【化13】 【0157】(保護膜の形成)上記記録層を形成したア
ルミニウム支持体を幅398mm、長さ560mmにカ
ットした。次に、実施例1で用いたものと同様の保護膜
塗布液をモルトンローラを用いて乾燥質量が0.1g/
m2となるように塗布し、実施例4の平版印刷版原版4
を得た。 【0158】(露光)得られたネガ型平版印刷版原版4
を830nmで発光する走査ダイオードレーザーで、走
査速度 1m/秒、解像度2540dpi、版表面上の
出力44mWの条件で露光して、画像形成を行った。 【0159】〔印刷及び評価〕上記画像形成された平版
印刷版原版4を、現像処理することなく、印刷機Hei
delberg GTO46に装着し、ゴムベース(r
ubberbase)VS2329インキ(Van S
on社製)及び湿し液(Rotamatic)を供給し
てそのまま印刷を行ったところ、印刷の初期に未露光部
が除去された。さらに、10万枚/時のスピードで2万
枚印刷したところ、印刷版のエッジ部に対応する印刷紙
面に汚れが発生していないことが確認された。以上、こ
れらの実施例によれば、本発明に係る保護膜は、種々の
ネガ型記録層を有する平版印刷版において、優れたエッ
ジ汚れ防止効果を得ることが確認された。 【0160】 【発明の効果】本発明によれば、エッジ汚れ防止効果に
優れる、赤外線レーザ対応のネガ型平版印刷版原版を提
供することが分かった。
Claims (1)
- 【特許請求の範囲】 【請求項1】 支持体上に、赤外線レーザの露光により
露光部が疎水性領域となる記録層を設けてなる平版印刷
版原版の少なくとも対向する二つの側面が、水溶性の保
護膜により覆われていることを特徴とするネガ型平版印
刷版原版。
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JP2002054259A JP3903085B2 (ja) | 2002-02-28 | 2002-02-28 | 平版印刷版原版 |
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JP2003255519A true JP2003255519A (ja) | 2003-09-10 |
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2011177983A (ja) * | 2010-02-26 | 2011-09-15 | Fujifilm Corp | 新聞印刷用平版印刷版原版及びその製造方法 |
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-
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- 2002-02-28 JP JP2002054259A patent/JP3903085B2/ja not_active Expired - Fee Related
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