JP2003254157A - ピストンリング - Google Patents

ピストンリング

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JP2003254157A
JP2003254157A JP2002058927A JP2002058927A JP2003254157A JP 2003254157 A JP2003254157 A JP 2003254157A JP 2002058927 A JP2002058927 A JP 2002058927A JP 2002058927 A JP2002058927 A JP 2002058927A JP 2003254157 A JP2003254157 A JP 2003254157A
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piston ring
abutment
notch
thickness
surface pressure
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Eiji Hitosugi
英司 一杉
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Nippon Piston Ring Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 ピストンリングの量産性と所定の性能維持
の観点から、削り代面積を減少させて生産性の向上が可
能になると共に、削り代面積が減少しても合口部付近に
おける一定の面圧低減効果と、実働時の合口部周辺にお
ける当たり抜け防止効果が発揮でき、合口部付近におけ
る摩耗の少ない高Pmaxディーゼルエンジン用ピスト
ンリングを提供すること。 【解決手段】 ピストンリング内周面4側において、合
口部2の端面を始端とする所定の周長部分に亘り、内周
面の一部をなす切欠部4aが形成される。合口部2端面
における半径方向厚さは、切欠部以外の半径方向厚さの
0.4乃至0.58倍であり、かつ所定周長部分は外周
摺動面3の中心軸O1で規定される中心角5°乃至13
°の範囲に亘り形成されている。

Description

【発明の詳細な説明】 【0001】 【産業上の利用分野】本発明はピストンリングに関し、
特にローポイントピストンリングに関する。 【0002】 【従来の技術】従来の等面圧分布等のピストンリングで
は、シリンダとピストンリングの温度差による熱膨張量
の差や、ピストンリングの内周側と外周側の温度差によ
る熱応力等により、ピストンリングのリングカーブの曲
率が小さくなり、合口部付近が高面圧となる。特に、高
Pmaxディーゼルエンジンのトップリングとして用い
た場合では、極めて過酷な運転条件にあるため、合口部
のブローバイガスの吹き抜けによって合口部付近が極端
に加熱される。このため、ピストンリングの内周側と外
周側の温度差による熱応力が極端に大きくなると共に、
合口部付近の周方向への熱膨張が大きくなるため、合口
部付近での曲率が極端に小さくなり、筒内圧力作用時以
外の行程では、図6に示すように、ピストンリング40
の合口部42の周辺位置であるα部とβ部の中間位置に
おいてシリンダボア45に対する当たり抜けが発生す
る。このような不連続な接触状態では、合口部先端は接
触するが、そのすぐとなりの位置の5°乃至30°付近
までは非接触になるような状態である。一方で、このよ
うな状態で筒内圧力が作用した場合は、ピストンリング
背部に作用する筒内圧力によってピストンリングがシリ
ンダボア45に押しつけられ、ピストンリングの摺動面
がシリンダボア45に追従する。これにより、図6に示
すα部とβ部付近の面圧が高くなる。ここで、α部は特
に、点接触状態でシリンダボアに押しつけられるため、
非常に高い接触圧力となる。 【0003】また、こうして、合口部におけるピストン
リング外周部の面圧が高くなり、摩耗が増大することに
より、ピストンリングの耐摩耗性を向上させる目的でピ
ストンリング外周面に被覆したPVD被膜のクラック・
剥離の原因となり、合口端部に向かって極端に摩耗が増
加していく摩耗形状となる。また、外周面にクロムめっ
きを施したピストンリングの場合は、摩耗量が極端に多
くなり、シリンダ呼び径の治具に耐久運転後のピストン
リングを挿入した場合、合口部が当たり抜けして漏光し
てしまう程になる。 【0004】従って、高Pmaxディーゼルエンジンに
対しては、耐摩耗性の高いCr−N系のPVDコーティ
ングを施したピストンリングを使用することになる。し
かしPVDコーティングを施したトップリングについて
は、合口部近傍のPVD被膜のクラック・剥離等の問題
が数多く発生しているという問題がある。 【0005】このような問題を解決するため、特開20
01−271928号公報では、ピストンリングの内周
面側において、合口部の端面を始端とする所定の周長部
分に亘り、内周面の一部をなす切欠部が形成されたピス
トンリングについて記載している。このピストンリング
では、切欠部の形成により、所定周長部分における半径
方向の厚さが、所定周長部分以外の部分の半径方向の厚
さに比較して小さくなっており、切欠部は合口部端面に
向かって徐々に外周摺動面に近づく円弧面状をなしてい
る。そして、合口部端面における半径方向厚さが、所定
周長部分以外の部分における半径方向の厚さの0.6乃
至0.8倍であり、所定周長部分は外周摺動面の中心軸
で規定される中心角30°乃至50°の範囲に亘り形成
されている。中心角が30°未満では半径方向曲げ剛性
低減幅が十分でなく、機関運転時に面圧上昇が発生す
る。一方、中心角が40°を越えると、合口端部の面圧
が機関運転時であっても十分に上昇しないので潤滑油消
費量に対し問題となる。 【0006】このように合口部近傍のピストンリング半
径方向の厚さ寸法を小さくして、曲げ剛性を減少させて
いる。これにより、合口端部の面圧を均一断面形状のピ
ストンリングよりも低減することができる。従って、実
動時において合口部における極端な面圧の上昇を抑える
ことができ、合口部の極端な摩耗を防止すると同時に特
にピストンリング外周面にPVD被膜を施した場合に
は、膜のクラック、剥離等の障害を阻止することができ
る。更に、ピストンリングの半径方向厚さが緩やかに減
少しているので、曲げ剛性の変化も緩やかな減少とな
り、応力集中を回避することができる。 【0007】 【発明が解決しようとする課題】上記公報記載のピスト
ンリングによれば、実働時における合口端部の高面圧を
抑制でき、高Pmaxディーゼルエンジンのトップリン
グとして用いれば特に優れた効果を発揮できるが、ピス
トンリングの量産性の観点からは、切欠部の形成のため
の削り代面積をより小さくする必要がある。しかし、公
報記載のピストンリングでは、切欠部が合口部端面から
中心角30°乃至50°の範囲で形成する必要があり、
削り代を減少させると所望の性能が得られなくなる。 【0008】そこで本発明は、ピストンリングの量産性
と所定の性能維持の観点から、削り代面積を減少させて
生産性の向上が可能になると共に、削り代面積が減少し
ても合口部付近における一定の面圧低減効果と、実働時
の合口部周辺における当たり抜け防止効果が発揮でき、
合口部付近における摩耗の少ない高Pmaxディーゼル
エンジン用ピストンリングを提供することを目的とす
る。特に本発明は、温間時に高面圧カーブになりやすい
合口端部からあたり抜けを発生させやすい合口部端面か
らの中心角30°付近までの面圧分布の起伏を緩やかに
させ、リング曲げ剛性分布を適正化させてガス圧作用時
の合口部面圧を低減させることが可能で、且つ量産が可
能なピストンリングを提供することを目的とする。 【0009】 【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、本発明は、略円形状をなし、シリンダに対し摺動す
る外周摺動面と、ピストンに対向する内周面と、該略円
形状を半径方向に分断する1つの合口部とを備え、該合
口部の端面を始端とする所定の周長部分に亘り切欠部が
形成されており、該所定周長部分における半径方向の厚
さが、該所定周長部分以外の部分の半径方向の厚さに比
較して小さくなっているピストンリングであって、該合
口部端面における半径方向厚さが、該所定周長部分以外
の部分における半径方向の厚さの0.45乃至0.58
倍であり、かつ該所定周長部分は該外周摺動面の中心軸
で規定される中心角5°乃至13°の範囲に亘り形成さ
れているピストンリングを提供している。 【0010】 【発明の実施の形態】本発明の第1の実施の形態による
ピストンリングについて図1に基づき説明する。図1に
示すピストンリング1は、略円形状をなし、図示せぬシ
リンダに対し摺動する外周面(外周摺動面)3と、図示
せぬピストンに対向する内周面4と、略円形状を半径方
向に分断する1つの合口部2とを有し、呼び径の半分は
1である。 【0011】外周面3と内周面4との距離(ピストンリ
ング半径方向の厚さ寸法)がa1であり、内周面4側に
おいて、合口部2の端面を始端とする所定の周長部分に
亘り内周面4の一部をなす円弧状の切欠部4aが形成さ
れており、該所定周長部分における半径方向の厚さが、
所定周長部分以外の部分の半径方向の厚さに比較して小
さく形成されている。 【0012】具体的には、切欠部4aは合口部2の端面
に向かって徐々に外周面3に近づく半径R2の円弧面A
Bをなしている。ここでR2の中心O2は、ピストンリ
ング1の半径R1の起点O1と合口部2端面とを結ぶ線
上にある。Bにおけるリング半径方向の厚さはa1であ
るが、合口部2の端面上に存在するAに向かってリング
半径方向の厚さが徐々に減少しAでは0.45a乃至
0.58a1となる。0.45a1未満では合口端部の面
圧が機関運転時に低下し過ぎるので、潤滑油消費量に対
して問題となる。またリング下面部のガスシール性が低
下する。一方0.58a1を越えると、曲げ剛性低下が
十分でなく、機関運転時に面圧上昇が発生する。 【0013】円弧面ABは合口面を始点とし、中心軸O
1で規定される中心角θが5°乃至13°の範囲に亘り
形成されている。切欠部の領域を中心角5°未満とする
と、合口端部でのリング半径方向厚さが0.45a
あっても半径方向曲げ剛性低下が十分でなく、機関運転
時に面圧上昇が発生する。一方切欠部の領域が中心角1
3°を越えるとすると、合口端部でのリング半径方向厚
さが0.58aであっても合口端部の面圧が機関運転
時に低下し過ぎるので、潤滑油消費量に対して問題とな
る。更に、切欠部4a形成のための削り代面積も増加す
ることになり、生産性の低下を招く。具体的な寸法例と
しては、ピストンリングの外径が120mmから150
mm、ピストンリングの幅が4.35mm〜5mm、合
口端面の幅が2.0mm〜2.5mm、R2が20mm
〜30mmである。 【0014】このピストンリング1によると、合口部2
付近の曲げ剛性を減少させることができ、合口端部の面
圧が均一断面形状のピストンリングよりも小さくなるこ
とから、機関運転時には局所的摩耗、PVD皮膜のクラ
ック、剥離等に対して優位となる。尚、図面には示さな
いが、図に示された合口面に対向するもう一方の合口面
からも、同様の切欠部4aが形成される。 【0015】本発明の第2の実施の形態によるピストン
リングについて図2に基づき説明する。図2に示すピス
トンリング10は、略円形状をなし、図示せぬシリンダ
に対し摺動する外周面(外周摺動面)13と、図示せぬ
ピストンに対向する内周面14と、略円形状を半径方向
に分断する1つの合口部12とを有する。 【0016】内周面14側において、合口部12の端面
を始端とする中心角θが5°乃至10°の周長部分に亘
り、内周面14の一部をなす切欠部14aが形成されて
おり、切欠部形成部分における半径方向の厚さは、0.
45a乃至058a1である。ここで切欠部14a
は、外周面13に略平行であり、切欠部の内端は、内周
面14に対して小径の円弧面14bで接続される。この
実施の形態の場合、切欠部の領域を中心角5°未満とす
ると、合口近傍の曲率変化が小さく曲げ剛性低減幅が小
さいので、実機運転による温度上昇時は合口端部の面圧
が高くなってしまう。13°を超えると、合口近傍の曲
率変化が大きく、曲げ剛性低減の幅も大きくなり過ぎる
ので、温度上昇時に十分な面圧が発生しにくくなる。ま
た、切欠部14a形成のための削り代面積も増加するこ
とになり、生産性の低下を招く。なお、第1の実施の形
態によるピストンリング1の切欠部形成領域の上限が中
心角13°であるのに対して、第2の実施の形態による
ピストンリング10の切欠部形成領域の上限が中心角1
0°と小さくなっているが、これは、第2の実施の形態
の切欠部14aが合口部12先端から内端円弧面14b
まで、厚さを一様に小さくしているため、第1の実施の
形態と比較して曲げ剛性を小さくできるからである。 【0017】第2の実施の形態の具体的な寸法として
は、外径が120mm〜150mm、ピストンリング幅
が4.35mm〜5mm、合口端面の幅が2.0mm〜
2.5mm、切欠部内端の円弧14bの半径が2mm〜
2.5mmである。 【0018】図3に示す面圧分布測定装置によって本発
明の第1の実施の形態によるピストンリングの面圧分布
と切欠部のない従来例のピストンリングの面圧分布とを
測定し比較した。尚測定に際しては、各リングの軸方向
厚さや外周面形状、半径方向厚さa1が同一のものを用
いた。具体的には次のとおりである。 R1: 122mm a: 4.35mm R2: 20mm 切欠部形成領域:中心角13° 合口部端面厚さ:2.3mm(本発明品の場合) ピストンリング母材:スチール 【0019】図3は、測定装置の左半分を示しており、
シリンダ102、103は、シリンダホルダ101に支
持され、シリンダ103の外周面の一部に凹部103a
が形成されて最薄部となる。テストピースであるピスト
ンリングを、ピストン105のリング溝105aに装着
し、ピストンリングの外周面をシリンダ103の内周面
に当接させる。すると、シリンダ103の最薄部にはピ
ストンリングからの面圧が作用し、歪みが生じることと
なる。よって、凹部103aの底部に歪みゲージ104
を貼りつけ、歪みゲージ104をストレインアンプ10
7に接続し、ペンレコーダ108に歪みの値を記録する
ことによって、歪み値を面圧として測定した。また、ピ
ストンリング溝105a付近と、ピストンリングに対向
する位置にあるシリンダ103の内周面付近に、J型熱
電対109を備え、高速打点計110に接続すること
で、温度を計測した。更に、ピストンリングを保持する
ピストン105の上側に、ヒーター106を取付けて、
ピストンリングを加熱する一方で、シリンダ103の外
周側には冷却水を接触させてシリンダ103の冷却を行
い、ピストン105からシリンダ103まで実機運転時
に近い温度勾配を分布させた。 【0020】ピストンリング母材には、必要に応じて窒
化層が形成され、そのために窒化処理が行われる。ここ
で合口部2付近の内周側に切欠部4aを形成する工程
は、窒化処理後に行う場合と、窒化処理前に行う場合が
ある。前者の場合のデータを図4に、後者の場合のデー
タを図5に示す。 【0021】図4、図5は、縦軸が面圧、横軸が合口部
からの周方向角度を示す。図4において、白三角は切欠
部が形成されない従来のピストンリングの常温時(リン
グ・ライナともに20℃)、黒三角は実働時(ピストン
250℃、ライナ120℃)の実験結果を示す。従来の
ピストンリングでは、図4の黒三角で示すように熱負荷
の作用が働くと、合口端部付近の面圧が極端に上昇し
た。そして、合口端部付近においてピストンリングがシ
リンダに強く押しつけられるのに伴い10°乃至25°
の範囲において、当たり抜けが生じる程度に面圧が低下
した。 【0022】これに対して本発明の第1の実施の形態に
よるピストンリング(本発明品1)では、図4から明ら
かなように、白丸で示す常温時の外周面3のシリンダ1
03に対する面圧の分布は、合口部2からその近傍に亘
ってゼロであり、合口部2端面を始点として中心角5°
の範囲に亘り当たり抜けが生じている。また、中心角が
大きくなる方向へ向かって、ゼロから急激に上昇した後
に最大値を取り、その後なだらかに減少した後に略一定
値となり、面圧が略一定値となり始める位置は、合口部
2端面を始点として中心角が略50°の位置である。 【0023】また、実働時とほぼ同様の熱負荷を与えた
時には、黒丸に示されるように、合口端部近傍における
面圧が上昇し、合口端部近傍における当たり抜けは見ら
れなくなった。また従来のピストンリングと比して、合
口端部の急激な面圧上昇が見られない。従って、これに
伴い、合口端部2の周辺における当たり抜けが生じなく
なっている。なお、この実験結果より、実働時の合口部
におけるブローバイガスの吹き抜けによる加熱を考慮し
ても、合口部における面圧の極端な上昇は見られないこ
とがわかる。 【0024】次に図5において、白三角は切欠部が形成
されない従来のピストンリングの常温時(リング・ライ
ナともに20℃)、黒三角は実働時(ピストン250
℃、ライナ120℃)の実験結果を示す。従来のピスト
ンリングでは、図5の黒三角で示すように熱負荷の作用
が働くと、図4の場合と同様に合口端部付近の面圧が
1.75MPa付近に極端に上昇した。そして、合口端
部付近においてピストンリングがシリンダに強く押しつ
けられるのに伴い10°乃至25°の範囲において、当
たり抜けが生じる程度に面圧が低下した。 【0025】これに対して本発明の第1の実施の形態に
よるピストンリング(本発明品2)では、図5から明ら
かなように、白丸で示す常温時の外周面3のシリンダ1
03に対する面圧の分布は、合口部2から遠ざかるに従
って次第に上昇し、25°付近で最大となり、その後徐
々に減少する。また、実働時とほぼ同様の熱負荷を与え
た時には、黒丸に示されるように、合口端部近傍におけ
る面圧が1.3MPa付近に上昇するが、その程度は、
従来のピストンリングほどは大きくならず、しかも当た
り抜けが生じる箇所もない。なお、図5に示される実働
時のデータ(黒丸)は、図4に示される実働時のデータ
(黒丸)よりも面圧が高くなっているが、これは、切欠
部形成のための内周面切削加工が窒化処理の後に行われ
た場合には(図4の場合)、窒化膜の持つ圧縮応力が切
削加工により変化して、リング母材の応力分布を変化さ
せたために、合口付近のリング曲率をより大きくするこ
とができたためである。そのために、機関作動前の常温
時においては、合口部において積極的に当たり抜けを生
じさせることができる。よって機関作動後の温間時にお
いては、合口端部近傍における面圧が上昇するものの合
口端部の急激な面圧上昇を防止でき、合口端部近傍にお
ける当たり抜けがなくなって、より均一な面圧分布を提
供することができたためである。 【0026】一方切欠部形成のための内周面切削加工を
窒化処理前に行った場合には(図5の場合)、常温時に
おいて切削加工による合口付近のリング曲率の変化を生
じさせない。これは図5の白三角と白丸のデータがほと
んど重なっていることからも理解できる。また内周面切
削加工後に窒化処理を行わない場合であっても、同様に
常温時において切削加工に起因した合口付近のリング曲
率の変化を生じさせることはない。しかし、内周面切削
加工を窒化処理前に行った場合であっても、切欠部を形
成したピストンリングは切欠部が形成されないピストン
リングと比較して、実働時における優れた面圧低減効果
を発揮していることが図5のグラフから明確に理解でき
る。 【0027】本発明によるピストンリングは上述した実
施の形態に限定されず、特許請求の範囲に記載した範囲
で種々の変形や改良が可能である。例えば、ピストンリ
ング母材はスチール製のみならず、鋳鉄製であってもよ
い。 【0028】また本実施の形態によるピストンリング
は、リング母材に窒化処理が施されたもののみならず、
窒化処理が施されていないものであってもよい。また母
材に窒化処理を施してその後摺動面にPVD被膜を形成
したピストンリングに対して、最後に切欠部形成のため
の内周面切削加工を行ってもよい。その場合にはPVD
被膜と窒化膜の持つ大きな圧縮応力を利用して合口付近
のリング曲率をより大きくすることができ、機関作動前
の常温時においては、合口部においてより積極的に当た
り抜けを生じさせることができる。よって機関作動後の
温間時においては、合口端部近傍における面圧が上昇す
るものの合口端部の急激な面圧上昇を防止でき、合口端
部近傍における当たり抜けがなくなって、より均一な面
圧分布を提供することができる。 【0029】また上述した実施の形態では、切欠部はピ
ストンリングの内周面側で曲面状又は外周摺動面に略平
行な直線状をなしているが、切欠部の形状はこれらに限
定されず、内周面側において合口端部に向かって徐々に
半径方向の厚さが減少するような直線状形状や、凹凸形
状であってもよい。また、切欠部は内周面に限定され
ず、ピストンリング外周摺動面と内周面との間に位置し
合口端面に開口する略円弧状のスリット形状としてもよ
い。 【0030】 【発明の効果】本発明の半径方向幅a1のピストンリン
グによれば、合口端部の高面圧を抑制するために、合口
部端面のピストンリング半径方向の厚さ寸法を0.45
〜9.58aと極めて薄くすると共に、合口端面
から中心角で5°乃至13°の極めて小範囲に切欠部が
形成されることにより、実動時において合口部における
極端な面圧の上昇を抑えることができ、合口部の極端な
摩耗を防止することができる。特にピストンリング外周
面にPVD被膜を施した場合には、膜のクラック、剥離
等の障害を阻止することができる。更に、請求項1記載
のピストンリングによると、切欠部自体の面積が小さい
ために、切欠部形成のための削り代面積が小さくなり、
エンドミル等により簡単に切削加工ができ、ひいては加
工性に優れたピストンリングを提供することができる。
【図面の簡単な説明】 【図1】本発明の第1の実施の形態によるピストンリン
グの合口部近傍の形状を示す平面図。 【図2】本発明の第2の実施の形態によるピストンリン
グの合口部近傍の形状を示す平面図。 【図3】本発明の実施の形態によるピストンリングの面
圧分布と従来例のピストンリングの面圧分布との測定に
用いた面圧分布測定装置を示す断面図。 【図4】従来のピストンリング及び本発明の第1の実施
の形態によるピストンリングの面圧分布を示す折線図で
あって、窒化処理後に内周面切削加工を行った場合のデ
ータを示す。 【図5】従来のピストンリング及び本発明の第1の実施
の形態によるピストンリングの面圧分布を示す折線図で
あって、窒化処理前に内周面切削加工を行った場合のデ
ータを示す。 【図6】従来のピストンリングの機関動作中の合口部付
近の形状を示す図。 【符号の説明】 1、10 ピストンリング 2、12 合口部 3、13 外周面 4、14 内周面 4a、14a 切欠部

Claims (1)

  1. 【特許請求の範囲】 【請求項1】 略円形状をなし、シリンダに対し摺動す
    る外周摺動面と、ピストンに対向する内周面と、該略円
    形状を半径方向に分断する1つの合口部とを備え、 該合口部の端面を始端とする所定の周長部分に亘り切欠
    部が形成されており、該所定周長部分における半径方向
    の厚さが、該所定周長部分以外の部分の半径方向の厚さ
    に比較して小さくなっているピストンリングであって、 該合口部端面における半径方向厚さが、該所定周長部分
    以外の部分における半径方向の厚さの0.45乃至0.
    58倍であり、かつ該所定周長部分は該外周摺動面の中
    心軸で規定される中心角5°乃至13°の範囲に亘り形
    成されていることを特徴とするピストンリング。
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Cited By (12)

* Cited by examiner, † Cited by third party
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