JP2003254153A - 内燃機関の圧縮比可変装置 - Google Patents

内燃機関の圧縮比可変装置

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JP2003254153A JP2002048607A JP2002048607A JP2003254153A JP 2003254153 A JP2003254153 A JP 2003254153A JP 2002048607 A JP2002048607 A JP 2002048607A JP 2002048607 A JP2002048607 A JP 2002048607A JP 2003254153 A JP2003254153 A JP 2003254153A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 内燃機関の圧縮比可変装置において,ピスト
ンアウタを回転させることなく,簡単,的確に低圧縮比
位置及び高圧縮比位置に作動させると共に,アクチュエ
ータの小型化を図る。 【解決手段】 ピストンインナ5aと,その外周に軸方
向にのみ摺動可能に嵌合して低圧縮比位置L及び高圧縮
比位置H間を移動し得るピストンアウタ5bと,ピスト
ンインナ及びアウタ5a,5bの軸線周りで非嵩上げ位
置A及び嵩上げ位置B間を回動し得る嵩上げ部材14
と,この嵩上げ部材14に連結されて,これを非嵩上げ
位置A及び嵩上げ位置Bに回動するアクチュエータ20
とを備え,そのアクチュエータ20を嵩上げ部材14の
周方向に複数組,等間隔に配設した。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は内燃機関の圧縮比可
変装置に関し,特に,ピストンを,コンロッドにピスト
ンピンを介して連結されるピストンインナと,このピス
トンインナに連結されて外端面を燃焼室に臨ませなが
ら,ピストンインナ寄りの低圧縮比位置及び燃焼室寄り
の高圧縮比位置間を移動し得るピストンアウタとで構成
し,ピストンアウタを低圧縮比位置に作動して機関の圧
縮比を下げ,高圧縮比位置に作動して同圧縮比を高める
ようにしたものゝ改良に関する。
【0002】
【従来の技術】従来,かゝる内燃機関の圧縮比可変装置
として,(1)ピストンアウタをピストンインナの外周
に螺合して,ピストンアウタを正,逆転させることによ
りピストンインナに対して進退させ,低圧縮比位置及び
高圧縮比位置に作動するようにしたもの(例えば特開平
11−117779号公報参照)と,(2)ピストンア
ウタをピストンインナの外周に軸方向摺動可能に嵌合
し,これらピストンインナ及びアウタ間に,上部油圧室
及び下部油圧室を形成し,これら油圧室に交互に油圧を
供給することにより,ピストンアウタを低圧縮比位置及
び高圧縮比位置に作動するようにしたもの(例えば特公
平7−113330号公報参照)とが知られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】ところで,上記(1)
の装置では,ピストンアウタを低圧縮比位置及び高圧縮
比位置に作動するために,ピストンアウタを回転させる
必要があるので,ピストンアウタの頂面の形状を,燃焼
室の天井面形状や吸気及び排気弁の配置に対応して自由
に設定することができず,高圧縮比位置で機関の圧縮比
を充分に高めることが困難である。また上記(2)の装
置では,特にピストンアウタが高圧縮比位置にあると
き,機関の膨張行程でピストンアウタが受ける大なるス
ラスト荷重を上部油圧室の油圧で支えるので,上部油圧
室には高圧に耐えるシールが必要となり,その上,上部
油圧室に気泡が発生するとピストンアウタの高圧縮比位
置が不安定になるから,そのような気泡の除去手段を施
す必要もあり,全体としてコスト高となるを免れない。
【0004】本発明は,かゝる事情に鑑みてなされたも
ので,ピストンアウタを回転させることなく簡単,的確
に低圧縮比位置及び高圧縮比位置に作動し得る,内燃機
関の圧縮比可変装置を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に,本発明の内燃機関の圧縮比可変装置は,コンロッド
にピストンピンを介して連結されるピストンインナと,
このピストンインナの外周に軸方向にのみ摺動可能に嵌
合して外端面を燃焼室に臨ませながら,前記ピストンイ
ンナ寄りの低圧縮比位置及び燃焼室寄りの高圧縮比位置
間を移動し得るピストンアウタと,これらピストンイン
ナ及びアウタ間に介裝されてピストンアウタの低圧縮比
位置への移動を許容する非嵩上げ位置及び,ピストンア
ウタを高圧縮比位置に保持する嵩上げ位置間をピストン
インナ及びアウタの軸線周りに回動する嵩上げ部材と,
この嵩上げ部材を非嵩上げ位置及び嵩上げ位置に交互に
作動するアクチュエータとを備え,このアクチュエータ
を前記嵩上げ部材の周方向に沿って複数組配設したこと
を第1の特徴とする。
【0006】この第1の特徴によれば,アクチュエータ
により嵩上げ部材を非嵩上げ位置に回動すると,嵩上げ
部材が,ピストンアウタの低圧縮比位置への移動を許容
するので,ピストンアウタが燃焼室側からの高圧により
低圧縮比位置に移動達することができる。またアクチュ
エータにより嵩上げ部材を非嵩上げ位置から嵩上げ位置
へと回動すると,ピストンアウタを高圧縮比位置に保持
することができる。
【0007】この間,ピストンアウタは,ピストンイン
ナに対して回転することがないから,燃焼室に臨むピス
トンアウタの頂面形状を燃焼室の形状に対応させて,ピ
ストンアウタの高圧縮比位置での圧縮比を効果的に高め
ることができる。しかもピストンアウタの高圧縮比位置
では,機関の膨張行程時,ピストンアウタが燃焼室から
受ける大なる推力は嵩上げ部材で受け止められる。した
がって,上記推力のアクチュエータへの作用も回避され
ることになるから,アクチュエータの小出力化,延いて
はコンパクト化が可能となる。またアクチュエータを油
圧式に構成する場合でも,これに前記推力が作用しない
ことから高圧シールは不要であり,また油圧室に多少の
気泡が発生してもピストンアウタの高圧縮比位置を不安
定にさせることもない。
【0008】またアクチュエータが嵩上げ部材の周方向
に沿って複数組配設されることから,嵩上げ部材の周方
向複数箇所にアクチュエータの作動力を付与して,嵩上
げ部材を非嵩上げ位置から嵩上げ位置へ,或いは嵩上げ
位置から非嵩上げ位置へ確実に回動することができ,し
かも各アクチュエータの小型化が可能となり,ピストン
の狭小な内部へのアクチュエータの配設が容易となる。
【0009】また本発明は,第1の特徴に加えて,前記
アクチュエータを,嵩上げ部材の周方向に沿って複数
組,等間隔に配設したことを第2の特徴とする。
【0010】この第2の特徴によれば,複数組のアクチ
ュエータの作動時,嵩上げ部材に偏荷重を加えることが
なく,該部材をスムーズに回動することができる。
【0011】さらに本発明は,第1又は第2の特徴に加
えて,前記アクチュエータを,前記ピストンピンを挟ん
で2組配設したことを第3の特徴とする。
【0012】この第3の特徴によれば,ピストンピンに
干渉されることなく,2組のアクチュエータを嵩上げ部
材の周方向等間隔に配設することができ,ピストンの狭
小な内部へのアクチュエータの配設をより簡単に行うこ
とができる。
【0013】
【発明の実施の形態】本発明の実施の形態を,添付図面
に示す本発明の一実施例に基づいて以下に説明する。
【0014】図1は本発明の第1実施例に係る圧縮比可
変装置を備えた内燃機関の要部縦断正面図,図2は図1
の2−2線拡大断面図で低圧縮比状態を示す。図3は図
2の3−3線断面図,図4は図2の4−4線断面図,図
5は図2の5−5線断面図,図6は図2の6−6線断面
図,図7は図2の7−7線断面図,図8は高圧縮比状態
を示す,図2との対応図,図9は図8の9−9線断面
図,図10は図8の10−10線断面図,図11は嵩上
げ部材の作用説明図,図12は本発明の第2実施例を示
す,図10との対応図である。
【0015】先ず,図1〜図11に示す本発明の第1実
施例の説明より始める。
【0016】図1及び図2において,内燃機関Eの機関
本体1は,シリンダボア2aを有するシリンダブロック
2と,このシリンダブロック2の下端に結合されるクラ
ンクケース3と,シリンダボア2aに連なる燃焼室4a
を有してシリンダブロック2の上端に結合されるシリン
ダヘッド4とからなり,シリンダボア2aに摺動可能に
嵌装されるピストン5にはコンロッド7の小端部7aが
ピストンピン6を介して連結され,コンロッド7の大端
部7bは,左右一対のベアリング8,8′を介してクラ
ンクケース3に回転自在に支承されるクランク軸9のク
ランクピン9aに連結される。
【0017】前記ピストン5は,ピストンピン6を介し
てコンロッド7の小端部7aに連結されるピストンイン
ナ5aと,このピストンインナ5aの外周面及びシリン
ダボア2aの内周面に摺動自在に嵌合し,頂面を燃焼室
4aに臨ませるピストンアウタ5bとからなっており,
ピストンアウタ5bの外周に,シリンダボア2aの内周
面に摺動自在に密接する複数のピストンリング10a〜
10cが装着される。
【0018】図2及び図3に示すように,ピストンイン
ナ及びアウタ5a,5bの摺動嵌合面には,ピストン5
の軸方向に延びて互いに係合する複数のスプライン歯1
1a及びスプライン溝11bがそれぞれ形成され,ピス
トンインナ及びアウタ5a,5bは,それらの軸線周り
に相対回転できないようになっている。
【0019】図2及び図6において,ピストンインナ5
aの上面には,その上面に一体に突設された枢軸部12
に回動可能に嵌合する円環状の嵩上げ部材14が載置さ
れる。枢軸部12は,コンロッド7の小端部7aを受容
すべく,複数(図では4個)のブロック12a,12a
…に分割される。
【0020】嵩上げ部材14は,その軸線周りに設定さ
れる第1及び嵩上げ位置A,B間を回動し得るもので,
その往復回動に伴いピストンアウタ5bをピストンイン
ナ5a寄りの低圧縮比位置L(図2参照)と,燃焼室4
a寄りの高圧縮比位置H(図7参照)とに交互に保持す
るカム機構15が嵩上げ部材14及びピストンアウタ5
b間に設けられる。
【0021】図7及び図10に明示するように,カム機
構15は,嵩上げ部材14の上面に形成される複数の凸
状第1カム16と,ピストンアウタ5bの頂壁下面に形
成される複数の凸状第2カム17とからなっており,こ
れら第1及び第2カム16,17は,嵩上げ部材14が
非嵩上げ位置Aにあるときは,周方向に交互に並んでピ
ストンアウタ5bの低圧縮比位置L又は高圧縮比位置H
への移行を許容するようになっている。
【0022】これら第1カム16及び第2カム17の,
嵩上げ部材14の周方向に並ぶ両側面は,各カム16,
17の根元から略垂直に起立する絶壁面16a,17a
となっており,両絶壁面16a,17aの上縁間を接続
する平坦な頂面16b,17bは,嵩上げ部材14が嵩
上げ位置Bに到達したとき互いに当接してピストンアウ
タ5bを高圧縮比位置Hに保持するようになっている。
このように,第1及び第2カム16,17の両側面を絶
壁面16a,17aとしたことで,周方向に並ぶ各カム
16,17の隣接間隔を狭くすることが可能となり,ま
た各カム16,17の頂面16b,17bの総合面積を
大きく設定することができる。
【0023】ピストンアウタ5bが高圧縮比位置Hに達
したときは,ピストンアウタ5bが高圧縮比位置Hを越
えて燃焼室4a側へ移動することを阻止するための規制
手段として,ピストンインナ5aの下端面に当接する止
環18がピストンアウタ5bの下端部内周面に係止され
る。
【0024】ピストンインナ5a及び嵩上げ部材14間
には,嵩上げ部材14を非嵩上げ位置A又は嵩上げ位置
Bへ回動させるアクチュエータ20が設けられる。この
アクチュエータ20について図2,図5及び図6を参照
しながら説明する。
【0025】ピストンインナ5aには,ピストンピン6
を挟んでそれと平行に延びる一対の有底のシリンダ孔2
1,21と,各シリンダ孔21,21の中間部の上壁を
貫通する長孔54,54とが設けられ,嵩上げ部材14
の下面に一体的に突設されて,その直径線上に並ぶ一対
の受圧ピン14a,14aがこれら長孔54,54を通
してシリンダ孔21,21に臨ませてある。長孔54,
54は,受圧ピン14a,14aが嵩上げ部材14と共
に非嵩上げ位置A及び嵩上げ位置B間を移動することを
妨げないようになっている。
【0026】シリンダ孔21,21には,対応する受圧
ピン14a,14aを挟んで作動プランジャ23,23
及び有底円筒状の戻しプランジャ24,24が摺動可能
に嵌装される。その際,作動プランジャ23,23同士
及び戻しプランジャ24,24同士は,それぞれピスト
ン5の軸線に関して点対称に配置される。
【0027】各シリンダ孔21内には,作動プランジャ
23の内端が臨む第1油圧室25が画成され,該室25
に油圧を供給すると,その油圧を受けて作動プランジャ
23が受圧ピン14aを介して嵩上げ部材14を嵩上げ
位置Bへ回動するようになっている。
【0028】嵩上げ部材14の非嵩上げ位置Aは,各シ
リンダ孔21,21の底面に当接する作動プランジャ2
3,23の先端に受圧ピン片14a,14aが当接する
ことにより規定され(図5参照),嵩上げ部材14の嵩
上げ位置Bは,ばね保持環52のスカート部52aに当
接する戻しプランジャ24の先端に受圧ピン14aが当
接することにより規定される(図10参照)。こうする
ことにより,嵩上げ部材14の非嵩上げ位置Aでは,隣
接する第1及び第2カム16,17の側面接触を回避し
て(図11(a)参照),ピストンアウタ5bの高圧縮
比位置Hへのスムーズな移動が可能となる。
【0029】而して,嵩上げ部材14及びアクチュエー
タ20は,ピストンアウタ5bの慣性力や,ピストンア
ウタ5bがシリンダボア2aの内面から受ける摩擦抵
抗,ピストンアウタ5bに作用する吸気負圧等,ピスト
ンインナ及びアウタ5a,5bにそれらを互いに軸方向
に離間させたり近接させようと作用する自然外力によ
り,ピストンアウタ5bが低圧縮比位置L及び高圧縮比
位置H間で移動することを許容する。
【0030】またピストンインナ5a及びピストンアウ
タ5b間には,ピストンアウタ5bが低圧縮比位置Lに
来たとき,このピストンアウタ5bをピストンインナ5
aに対して係止するピストンアウタ係止手段30が設け
られる。このピストンアウタ係止手段30について,図
2及び図4を参照しながら説明する。
【0031】ピストンインナ5aの内周面には,周方向
に延びる複数の係止溝31が等間隔置きに形成され,ピ
ストンアウタ5bが低圧縮比位置Lに来たとき,これら
係止溝31に係合,離脱し得るように複数の係止レバー
32がピストンインナ5aにピボット軸33を介して揺
動自在に取り付けられる。即ち,係止レバー32は,係
止溝31に係合する作動位置C(図4参照)と,係止溝
31から離脱する後退位置D(図9参照)との間を揺動
することができる。
【0032】各係止レバー32は,係止溝31に係合,
離脱する長腕部32aと,ピボット軸33を挟んで長腕
部32aと反対側に延びる短腕部32bとからなってお
り,長腕部32aを係止溝31との係合方向へ付勢する
作動ばね34が長腕部32a及びピストンインナ5a間
に縮設される。その際,長腕部32aには,作動ばね3
4の内周に嵌合してそれを定位置に保持する位置決め突
起35が形成される。一方,ピストンインナ5aには,
各短腕部32bに対応して複数のシリンダ孔36が形成
され,これらシリンダ孔36の摺動自在に嵌装される複
数のピストン38の先端が短腕部32bの先端に当接配
置される。各シリンダ孔36には,対応するピストン3
8の内端が臨む第2油圧室37が画成され,この第2油
圧室37に油圧を供給すると,その油圧を受けてピスト
ン38が係止レバー32を作動ばね34の力に抗して係
止溝31から離脱させるようになっている。
【0033】図4及び図5に示すように,前記ピストン
ピン6と,その中空部に圧入されたスリーブ40との間
に筒状の油室41が画成され,この油室41を前記第1
及び第2油圧室25,37に接続する第1及び第2分配
油路42,43がピストンピン6及びピストンインナ5
aに渡り設けられる。また油室41は,図1に示すよう
に,ピストンピン6,コンロッド7及びクランク軸9に
渡り設けられる油路44に接続され,この油路44は,
電磁切換弁45を介して油圧源たるオイルポンプ46
と,油溜め47とに切換可能に接続される。
【0034】次に,この第1実施例の作用について説明
する。
【0035】例えば内燃機関Eの急加速運転に際して,
ノッキングを回避すべく低圧縮比状態を得るには,電磁
切換弁45を図1に示すように非通電状態にして,油路
44を油溜め47に連通する。こうすれば,第1油圧室
25及び第2油圧室37は,何れも油室41及び油路4
4を通して油溜め47に開放されるので,アクチュエー
タ20では,図5に示すように,戻しプランジャ24が
戻しばね27の付勢力で受圧ピン14aを押圧して,嵩
上げ部材14を非嵩上げ位置Aまで回動する。その結
果,図10(a)に示すように,カム機構15の第1カ
ム16及び第2カム17は互いに頂部をずらした配置と
なるから,機関の膨張行程又は圧縮行程で燃焼室4a側
の圧力でピストンアウタ5bがピストンインナ5aに対
して押圧されたときや,ピストン5の上昇行程でピスト
ンリング10a〜10c及びシリンダボア2a内面間に
生ずる摩擦抵抗によりピストンアウタ5bがピストンイ
ンナ5aに対して押圧されたときや,ピストン5の下降
行程の後半でピストンインナ5aの減速に伴いピストン
アウタ5bがその慣性力によりピストンインナ5aに対
して押圧されたときに,ピストンアウタ5bは第1カム
16及び第2カム17を相互に噛み合せながら,ピスト
ンインナ5aに対して下降し,低圧縮比位置Lに下がる
ことができる。このとき,ピストンアウタ係止手段30
では,ピストンインナ5aに軸支される係止レバー32
と,ピストンアウタ5bの係止溝31とが互いに対向す
るため,係止レバー32は作動ばね34の付勢力をもっ
て長腕部32aを係止溝31に係合させるように揺動
し,それら長腕部32a及び係止溝31の係合により,
ピストンアウタ5bの低圧縮比位置Lは保持される。か
くして,カム機構15での遊びは無くなり,ピストンイ
ンナ及びアウタ5a,5bは,圧縮比を下げながら一体
となってシリンダボア2a内を昇降することができる。
【0036】また例えば内燃機関Eの高速運転時,出力
向上を図るべく高圧縮比状態を得るには,電磁切換弁4
5に通電して,油路44をオイルポンプ46に接続す
る。こうすると,オイルポンプ46の吐出油圧が油路4
4及び油室41を通して第1油圧室25及び第2油圧室
37に供給されるので,先ず,ピストンアウタ係止手段
30において,図9に示すように,ピストン38が第2
油圧室37の油圧を受けて係止レバー32を作動ばね3
4の付勢力に抗して後退位置Dへと揺動させ,長腕部3
2aをピストンアウタ5bの係止溝31から離脱させ
る。係止レバー32が係止溝31から離脱すると,ピス
トンアウタ5bの高圧縮比位置Hへの移動が可能とな
る。
【0037】そこで,ピストンアウタ5bは,次のよう
な自然外力の作用で高圧縮比位置Hへの移動する。即
ち,機関の吸気行程で吸気負圧によりピストンアウタ5
bが燃焼室4a側に引き寄せられたときや,ピストン5
の下降行程でピストンリング10a〜10c及びシリン
ダボア2a内面間に生ずる摩擦抵抗によりピストンアウ
タ5bがピストンインナ5aから置き去りにされようと
したときや,ピストン5の上昇行程の後半でピストンイ
ンナ5aの減速に伴いピストンアウタ5bがその慣性力
によりピストンインナ5aから浮き上がろうとしたとき
に,ピストンアウタ5bはピストンインナ5aから上昇
し,高圧縮比位置Hに容易に到達することになる(図1
0(b)参照)。
【0038】こうしてピストンアウタ5bが高圧縮比位
置Hに到達すると,既に,アクチュエータ20では,作
動プランジャ23が第1油圧室25の油圧を受けて受圧
ピン14aを嵩上げ位置Bに向かって押圧しているの
で,その押圧力により嵩上げ部材14を図10に示すよ
うに非嵩上げ位置Aから嵩上げ位置Bへと回動するの
で,図10(c)に示すように,嵩上げ部材14のカム
16とピストンアウタ5bのカム17とは互いに平坦の
頂面16b,17bを当接させることになり(図10
(c)参照),ピストンアウタ5bを高圧縮比位置Hに
保持することができる。
【0039】このとき,ピストンアウタ5bの止環18
がピストンインナ5aの下端面に当接して,ピストンア
ウタ5bの燃焼室4a側へのそれ以上の移動が阻止され
る。したがって,ピストンアウタ5bの高圧縮比位置H
は,両カム16,17の頂面16b,17bの当接と,
止環18のピストンインナ5a下端面への当接とにより
保持される。かくして,カム機構15での遊びは無くな
り,ピストンインナ及びアウタ5a,5bは,圧縮比を
高めながら一体となってシリンダボア2a内を昇降する
ことができる。
【0040】而して,ピストンアウタ5bは,低圧縮比
位置L及び高圧縮比位置H間を移動する際,ピストンイ
ンナ5a及びピストンアウタ5bの嵌合面に形成されて
互いに摺動自在に係合するスプライン歯11a及びスプ
ライン溝11bにより,ピストンインナ5aに対する回
転が拘束されているから,燃焼室4aに臨むピストンア
ウタ5bの頂面形状を燃焼室4aの形状に対応させて,
ピストンアウタ5bの高圧縮比位置Hでの圧縮比を効果
的に高めることができる。しかもピストンアウタ5bの
高圧縮比位置Hでは,機関の膨張行程時,ピストンアウ
タ5bが燃焼室4aから受ける大なる推力は,第1カム
16及び第2カム17の互いに当接する平坦な頂面16
b,17bに垂直に作用するので,該推力により嵩上げ
部材14が回動されることはなく,したがって第1油圧
室25に供給する油圧は,前記推力に抗する程の高圧を
必要とせず,また第1油圧室25に多少の気泡が存在し
ても,ピストンアウタ5bを高圧縮比位置Hに安定的に
保持し得るから,支障はない。
【0041】しかもピストンアウタ5bの低圧縮比位置
L及び高圧縮比位置H間での回動は,ピストン5の往復
動中,ピストンインナ及びアウタ5a,5bに,それら
を軸方向に離間させたり近接させようと作用する自然外
力を利用するものであるから,アクチュエータ20は嵩
上げ部材14を,単に非嵩上げ位置A及び嵩上げ位置B
間で移動させるだけの出力を発揮すれば足りることにな
り,アクチュエータ20の小容量化及び小型化を図るこ
とができる。
【0042】ところで,上記自然外力のうち,ピストン
リング10a〜10c及びシリンダボア2a内面間の摩
擦抵抗と,ピストンアウタ5bの慣性力が特に効果的で
ある。また上記摩擦抵抗は機関回転数の変化に対して変
化が比較的少ないのに対して,ピストンアウタ5bの慣
性力は機関回転数の上昇に応じて2次曲線的に増大する
ものであるから,ピストンアウタ5bの位置切り換えに
対して,機関の低回転域では上記摩擦抵抗が支配的であ
り,機関の高回転域ではピストンアウタ5bの慣性力が
支配的である。
【0043】また各アクチュエータ20は,第1油圧室
25の油圧で作動して嵩上げ部材14を非嵩上げ位置A
から嵩上げ位置Bへ回動し得る作動プランジャ23と,
第1油圧室25の油圧解放時,戻しばね27の付勢力で
作動して嵩上げ部材14を嵩上げ位置Bから非嵩上げ位
置Aへ戻し得る戻しプランジャ24とで構成されるの
で,1組のアクチュエータ20につき油圧室25が1室
で足り,その構成の簡素化を図ることができる。
【0044】またピストンアウタ係止手段30は,ピス
トンインナ5aに軸支されてピストンアウタ5bの係止
溝31に係合する作動位置C及び係止溝31から離脱す
る後退位置D間を移動する係止レバー32と,この係止
レバー32を作動位置Cへ付勢する作動ばね34と,第
2油圧室37の油圧で作動して係止レバー32を後退位
置Dへ作動するピストン38とで構成されるので,この
係止手段30においても油圧室37が1室で足り,その
構成の簡素化を図ることができる。
【0045】さらに第1及び第2油圧室25,37に
は,共通の電磁切換弁45を介してオイルポンプ46及
び油溜め47に切換可能に接続されるので,共通の油圧
をもってアクチュエータ20及びピストンアウタ係止手
段30を合理的に作動することができ,油圧回路の簡素
化をも図ることができ,圧縮比可変装置を安価に提供し
得る。
【0046】またアクチュエータ20は,嵩上げ部材1
4の周方向に複数組等間隔に配設されるので,嵩上げ部
材14に偏荷重を与えることなく,これを枢軸12周り
にスムーズに回動することができ,しかも複数組のアク
チュエータ20の総合出力は大きいことから,各組のア
クチュエータ20の小容量化,延いては小型化を図るこ
とができる。
【0047】また各組のアクチュエータ20の構成要素
である作動プランジャ23及び戻しプランジャ24は,
ピストンインナ5aに形成された共通のシリンダ孔21
に嵌装されるので,構造が簡単であると共に,孔加工が
単純でコストの低減に寄与し得る。
【0048】またアクチュエータ20を2組,配設する
場合には,それぞれのシリンダ孔21,21がピストン
インナ5aにピストンピン6と平行に形成されるので,
ピストンピン6に干渉されることなく,ピストンインナ
5aの狭小な内部において2組のアクチュエータ20,
20を嵩上げ部材14の周方向等間隔に配設することが
できる。
【0049】また作動及び戻しプランジャ23,24の
軸線は,各受圧ピン14aの軸線を横切る,枢軸12の
半径線に対して略直角に交差するように配置されるの
で,作動及び戻しプランジャ23,24の押圧力を受圧
ピン14を介して嵩上げ部材14に効率良く伝達するこ
とができ,アクチュエータ20のコンパクト化に寄与し
得る。
【0050】また作動及び戻しプランジャ23,24の
各端面と,受圧ピン14aの円筒状外周面とは線接触で
接触するので,その接触面積は比較的広く,面圧の低減
を図り,耐久性の向上に寄与し得る。
【0051】次に図12に示す本発明の第2実施例につ
いて説明する。
【0052】この第2実施例は,嵩上げ部材114及び
ピストンアウタ105bにそれぞれ形成される第1カム
116及び第2カム117に,嵩上げ部材114が非嵩
上げ位置Aから嵩上げ位置Bへ回動するとき互いに軸方
向に離反するように滑る斜面116a,117aを形成
した点を除けば,前実施例と同様の構成であり,図12
中,前実施例と対応する部分には,前実施例の参照符号
の数字に100を加算した参照符号を付して,その説明
を省略する。
【0053】この第2実施例では,各カム116,11
7の一側面を斜面116a,117aとしたたことで,
前実施例に比して,各カム116,117の隣接間隔が
広がり,嵩上げ部材114の作動ストローク角度が増加
し,また各カム116,117の頂面116b,117
bの面積が減少することになるが,ピストンアウタ10
5bを高圧縮比位置Hに移動させる自然外力が弱い場合
でも,図示しないアクチュエータにより嵩上げ部材11
4に嵩上げ位置Bへの回動力を付与すれば,斜面116
a,117a相互のリフト作用によりピストンアウタ1
05bを高圧縮比位置Hへ押し上げることができる。
【0054】本発明は上記実施例に限定されるものでは
なく,その要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更が可
能である。例えば,電磁切換弁45の作動態様は,上記
実施例の場合と逆であっても差し支えはない。即ち,該
切換弁45の非通電状態で油路44をオイルポンプ46
に接続し,通電状態で油路44を油溜め47に接続する
こともできる。
【0055】
【発明の効果】以上のように本発明の第1の特徴によれ
ば,アクチュエータにより嵩上げ部材を非嵩上げ位置に
回動することにより,ピストンアウタを低圧縮比位置に
移動することができ,またアクチュエータにより嵩上げ
部材を非嵩上げ位置から嵩上げ位置へ回動することによ
りピストンアウタを高圧縮比位置に保持することがで
き,この間,ピストンアウタは,ピストンインナに対し
て回転することがないから,燃焼室に臨むピストンアウ
タの頂面形状を燃焼室の形状に対応させて,ピストンア
ウタの高圧縮比位置での圧縮比を効果的に高めることが
できる。しかもピストンアウタの高圧縮比位置では,機
関の膨張行程時,ピストンアウタが燃焼室から受ける大
なる推力は嵩上げ部材で受け止められる。したがって,
上記推力のアクチュエータへの作用も回避されることに
なるから,アクチュエータの小出力化,延いてはコンパ
クト化が可能となる。またアクチュエータを油圧式に構
成する場合でも,これに前記推力が作用しないことから
高圧シールは不要であり,また油圧室に多少の気泡が発
生してもピストンアウタの高圧縮比位置を不安定にさせ
ることもない。
【0056】またアクチュエータが嵩上げ部材の周方向
に沿って複数組配設されることから,嵩上げ部材の周方
向複数箇所にアクチュエータの作動力を付与して,嵩上
げ部材を非嵩上げ位置から嵩上げ位置へ,或いは嵩上げ
位置から非嵩上げ位置へ確実に回動することができ,し
かも各アクチュエータの小型化が可能となり,ピストン
の狭小な内部へのアクチュエータの配設が容易となる。
【0057】また本発明の第2の特徴によれば,複数組
のアクチュエータの作動時,嵩上げ部材に偏荷重を加え
ることがなく,該部材をスムーズに回動することができ
る。
【0058】さらに本発明の第3の特徴によれば,ピス
トンピンに干渉されることなく,2組のアクチュエータ
を嵩上げ部材の周方向等間隔に配設することができ,ピ
ストンの狭小な内部へのアクチュエータの配設をより簡
単に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施例に係る圧縮比可変装置を備
えた内燃機関の要部縦断正面図。
【図2】図1の2−2線拡大断面図で低圧縮比状態を示
す。
【図3】図2の3−3線断面図。
【図4】図2の4−4線断面図。
【図5】図2の5−5線断面図。
【図6】図2の6−6線断面図。
【図7】図2の7−7線断面図。
【図8】高圧縮比状態を示す,図2との対応図。
【図9】図8の9−9線断面図。
【図10】図8の10−10線断面図。
【図11】嵩上げ部材の作用説明図。
【図12】本発明の第2実施例を示す,図10との対応
図。
【符号の説明】
A・・・・・・・嵩上げ部材の非嵩上げ位置 B・・・・・・・嵩上げ部材の嵩上げ位置 H・・・・・・・ピストンアウタの高圧縮比位置 L・・・・・・・ピストンアウタの低圧縮比位置 5・・・・・・・ピストン 5a・・・・・・ピストンインナ 5b・・・・・・ピストンアウタ 6・・・・・・・ピストンピン 7・・・・・・・コンロッド 14・・・・・・嵩上げ部材 20・・・・・・アクチュエータ 105b・・・・ピストンアウタ 114・・・・・嵩上げ部材

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 コンロッド(7)にピストンピン(6)
    を介して連結されるピストンインナ(5a)と,このピ
    ストンインナ(5a)の外周に軸方向にのみ摺動可能に
    嵌合して外端面を燃焼室(4a)に臨ませながら,前記
    ピストンインナ(5a)寄りの低圧縮比位置(L)及び
    燃焼室(4a)寄りの高圧縮比位置(H)間を移動し得
    るピストンアウタ(5b,105b)と,これらピスト
    ンインナ及びアウタ(5a,5b,105b)間に介裝
    されてピストンアウタ(5b,105b)の低圧縮比位
    置(L)への移動を許容する非嵩上げ位置(A)及び,
    ピストンアウタ(5b,105b)を高圧縮比位置
    (H)に保持する嵩上げ位置(B)間をピストンインナ
    及びアウタ(5a,5b,105b)の軸線周りに回動
    する嵩上げ部材(14,114)と,この嵩上げ部材
    (14,114)を非嵩上げ位置(A)及び嵩上げ位置
    (B)に交互に作動するアクチュエータ(20)とを備
    え,このアクチュエータ(20)を前記嵩上げ部材(1
    4,114)の周方向に沿って複数組配設したことを特
    徴とする,内燃機関の圧縮比可変装置。
  2. 【請求項2】 請求項1記載の内燃機関の圧縮比可変装
    置において,前記アクチュエータ(20)を,嵩上げ部
    材(14,114)の周方向に沿って複数組,等間隔に
    配設したことを特徴とする,内燃機関の圧縮比可変装
    置。
  3. 【請求項3】 請求項1又は2記載の内燃機関の圧縮比
    可変装置において,前記アクチュエータ(20)を,前
    記ピストンピン(6)を挟んで2組配設したことを特徴
    とする,内燃機関の圧縮比可変装置。
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