JP2003252792A - 肝再生促進剤 - Google Patents

肝再生促進剤

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JP2003252792A
JP2003252792A JP2002057253A JP2002057253A JP2003252792A JP 2003252792 A JP2003252792 A JP 2003252792A JP 2002057253 A JP2002057253 A JP 2002057253A JP 2002057253 A JP2002057253 A JP 2002057253A JP 2003252792 A JP2003252792 A JP 2003252792A
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JP2002057253A
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Soichi Kojima
聡一 小嶋
Kuniharu Akita
國治 秋田
Masataka Okuno
正隆 奥野
Hisataka Moriwaki
久隆 森脇
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Gifu University NUC
RIKEN Institute of Physical and Chemical Research
Original Assignee
Gifu University NUC
RIKEN Institute of Physical and Chemical Research
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 肝硬変の患者の肝癌切除手術後に起こる肝再
生不全や広く肝炎の際に見られる肝再生不全の特異的改
善薬を開発すること。 【解決手段】 抗カリクレイン抗体を有効成分として含
む、肝再生促進剤。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、血漿カリクレイン
(PLK)に対する中和抗体を有効成分として含む、肝再
生促進剤、並びに肝疾患の治療及び/又は予防のための
薬剤に関する。
【0002】
【従来の技術】肝再生は、毒物、ウイルス感染、または
手術等によって肝組織が損傷を受けた後に起こる肝臓の
修復過程である(Michalopoulos GK他、Science 1997;2
76:60-66)。肝硬変患者が肝癌を併発した際に行う腫瘍
組織の外科的切除後には、しばしば肝再生障害が起こ
り、それが原因で肝不全や予後不良に陥ることが重大な
問題となっている。肝硬変患者は常に低濃度の内毒素に
晒されている(Tarao K他、Gastroenterology 1977;73:
539-542)。肝切除手術を行うと、肝臓によるリポ多糖
(LPS;内毒素の主成分)の除去機能が低下するのに加
えて、小腸から門脈を通って肝臓に流入するLPS量が増
加し、このことが、手術後の肝再生障害の原因ではない
かと考えられている。
【0003】本発明者らは、肝再生におけるLPSの影響
とその分子機構について、部分肝切除モデル(Michalop
oulos GK他、Science 1997;276:60-66, Fausto N他、FA
SEBJ 1995;9:1527-1536, Taub R. FASEB J 1996;10:413
-427, Columbano A他、FASEB J 1996;10:1118-1128)を
用いて研究を行った。肝再生は、静止期にあった肝実質
細胞(HPCs)が複製に向けた準備をする段階、次に肝臓
の細胞が協調して増殖する段階、最後に肝臓が適切な大
きさに到達した際に細胞増殖が停止する段階の多段階か
らなり、統制のとれた制御を受けている(Michalopoulo
s GK他、Science 1997;276:60-66、Yamada Y他、Proc N
atl Acad Sci USA 1997;94:1441-1446)。各段階ごとに
多数の増殖因子やサイトカインが働いている。腫瘍壊死
因子-α(TNF-α)(Michalopoulos GK他、Science 199
7;276:60-66, Cornell RP他、Hepatology 1990;11:916-
922)およびインターロイキン6 (Cressman DE他、Scie
nce 1996;274:1379-1383)は最初の準備段階で働く。肝
実質細胞が複製可能な状態になると、肝細胞増殖因子
(HGF)や形質転換増殖因子-α(TGF-α)に対して100%
応答するようになる(Michalopoulos GK他、Science 19
97;276:60-66, Fausto N他、FASEB J 1995;9:1527-153
6, Taub R. FASEB J 1996;10:413-427)。その後、再生
が進むと、形質転換増殖因子-β(TGF-β)およびアク
チビンによる負の制御を受けるようになり、元の大きさ
に達するまで再生すると再生過程は終了する(Michalop
oulos GK他、Science 1997;276:60-66)。
【0004】哺乳類で発現されるTGF-βには、生物学的
性質がほぼ同一の3つのサブタイプ(TGF-β1,-β2およ
び-β3)が存在する(Massague J他、Genes Dev 2000;1
4:627-644)。この多機能サイトカインの生物学的活性
を調節する1つの大事なステップが、潜在型不活性型分
子から活性型分子への変換反応(潜在型TGF-βの活性化
反応)であり、その調節機構は、組織や細胞の種類およ
び実験条件により異なる(Khalil N. Microbes Infect
1999;1:1255-1263, Crawford SE他、Cell 1998;93:1159
-1170, Munger JS他、Cell 1999;96:319-328, Okuno M
他、Gastroenterology 2001;120:1784-1800)。トロン
ボスポンジン-1は、特に肺と膵臓における潜在型TGF-β
の主要なアクチベーターであり、潜在性関連ペプチド
(LAP)の所定の部位に結合し、潜在型TGF-β複合体に
構造変化を引き起こす(Crawford SE他、Cell 1998;93:
1159-1170)。インテグリンのαvβ6も潜在型TGF-βに
結合して潜在型TGF-βを活性化することを通して、肺の
炎症および線維症の制御に働いている(Munger JS他、C
ell 1999;96:319-328)。正常な肝臓では、少量のTGF-
βが、類洞内皮細胞およびクッパー細胞(KCs, 肝臓の
常在性マクロファージ)から生産・分泌される。部分肝
切除を行うと肝臓におけるTGF-βの生産は高まる。TGF-
βの生産上昇は、最初肝臓を構成する全ての細胞で見ら
れ、その後、主として肝実質細胞および肝星細胞(HSC
s)で認められるようになる。これに対して、炎症や線
維症の後では肝星細胞だけでTGF-βの生産上昇が認めら
れる。肝実質細胞から分泌されるTGF-βは全て潜在型で
あるが、肝星細胞から分泌されるTGF-βは50〜90%が活
性型である(Bissell DM他、J Clin Invest 1995;96:44
7-455)。このことから、肝星細胞は特に障害肝におい
て活性型TGF-βの主要な供給源と考えられている(Biss
ell DM他、J Clin Invest 1995;96:447-455, FriedmanS
L. N Engl J Med 1993;328:1828-1835)。
【0005】プロテアーゼによる潜在型TGF-βの活性化
反応の一例として、肝線維症形成過程においては、肝星
細胞表面に存在するプラスミンによって潜在型TGF-βが
活性化される可能性が提唱されている(Okuno M他、Gas
troenterology 2001;120:1784-1800, Okuno M他、J Hep
atol 1999;30:1073-1080, Okuno M他、Hepatology 199
7;26:913-921, Imai S他、FEBS Lett 1997;411:102-10
6)。プラスミンは細胞外マトリックスから潜在型TGF-
βを放出させるとともに、肝星細胞表面において、潜在
型TGF-β分子中のLAPを限定分解することによって潜在
型TGF-βの構造を変化させ、活性型TGF-βを放出、すな
わち潜在型TGF-βを活性化する。
【0006】LPSはグラム陰性細菌の細胞壁成分である
(El Samaloutii VT他、Methods. Mol Biol 2000;145:2
87-309)。LPSは濃度に応じて肝再生を誘発または抑制
する(Cornell RP他、Hepatology 1990;11:916-922, Ma
eda T他、J Gastroenterol 1996;11:471-477, Masuhara
M. J Gastroenterol 1995;30:48-54)。部分肝切除を
施す前にマウスを100ng/g体重のLPSで前処理すると、肝
臓のDNA合成が刺激されるが、500ng/g体重のLPSで前処
理すると、肝臓のDNA合成は逆に減衰し、肝再生が抑制
される(Cornell RP他、Hepatology 1990;11:916-92
2)。さらに、LPSの活性成分であるリピドAの類似体を
高用量マウスに前投与すると、部分肝切除後の肝再生は
抑制される(Maeda T他、J Gastroenterol 1996;11:471
-477)。高用量のLPSはラットの肝臓においてTGF-βmRN
A量を増加させるとの報告(MasuharaM. J Gastroentero
l 1995;30:48-54)から、LPSの肝再生抑制効果における
TGF-βの関与が示唆される。
【0007】TGF-βは、肝線維症、肝硬変、肝炎、又は
肝再生不全などの肝疾患に共通する病態形成因子である
ことから、その活性を抑えることにより当該疾患を治療
又は予防する試みがなされている。例えば、TGF-βの変
異受容体を用いた遺伝子治療の有効性が動物レベルで示
されている(Qi et al. Proc Natl Acad Sci USA 96:23
45-2349, 1999)。プロテアーゼによるTGF-β活性化を
低分子プロテアーゼ阻害剤を用いて抑制することにより
肝線維化や肝硬変を予防及び治療するという薬剤も開発
されつつあるが、プロテアーゼ阻害剤の作用特異性の点
で問題が残っていた(Okuno et al. Gastroenterology
120:1784-1800, 2001)。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】年間患者数30万人で
我が国の死亡原因の8位である肝硬変は肝癌へと続く不
治の病であるが、今のところ有効な予防・治療法はな
く、対処療法のみが行われている。肝硬変の患者が肝癌
を併発した際には癌組織を切除して取り除くが、術後に
死亡するケースも多く、その主原因が肝再生不全であ
る。本発明の目的は、肝硬変の患者の肝癌切除手術後に
起こる肝再生不全や広く肝炎の際に見られる肝再生不全
の特異的改善薬を開発することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、先ず、高
用量のLPSによる刺激を受けたクッパー細胞が部分肝切
除後にTNF-αを分泌し、それが肝星細胞における血漿カ
リクレイン依存性のタンパク質分解反応による潜在型TG
F-βの活性化とそれに続く活性型TGF-βによる自己誘導
を引き起こし、TGF-βを介した肝再生の抑制を導くこと
を見いだした。さらに、血漿カリクレインによるTGF-β
活性化反応を、血漿カリクレインに対する中和抗体によ
って特異的に抑えることによって肝再生不全を有効に改
善できることを今回初めて実証した。TGF-βは肝硬変の
原因因子としても働いており、本発明の抗血漿カリクレ
イン中和抗体を用いた治療は、肝硬変に対しても予防・
治療効果が期待できる。
【0010】即ち、本発明によれば、抗カリクレイン抗
体を有効成分として含む、肝再生促進剤が提供される。
本発明の別の側面によれば、抗カリクレイン抗体を有効
成分として含む、肝疾患の治療及び/又は予防のための
薬剤が提供される。本発明の薬剤は、TGF−βの作用に
起因する肝疾患の治療及び/又は予防のために使用する
ことができ、特に好ましくは、肝線維症、肝硬変、肝
炎、又は肝再生不全の治療及び/又は予防のために使用
することができる。
【0011】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態につい
て詳細に説明する。本発明の肝再生促進剤は、抗カリク
レイン抗体を有効成分として含むものである。本発明で
使用する抗カリクレイン抗体はポリクローナル抗体でも
モノクローナル抗体でもよい。
【0012】本発明で使用することができるポリクロー
ナル抗カリクレイン抗体は、例えば、カリクレインを抗
原として哺乳動物を免疫感作し、該哺乳動物から血液を
採取し、採取した血液から抗体を分離・精製することに
より得ることができる。例えば、マウス、ハムスター、
モルモット、ニワトリ、ラット、ウサギ、イヌ、ヤギ、
ヒツジ、ウシ等の哺乳動物を免疫することができる。免
疫感作の方法としては、当業者に公知の通常の免疫感作
の方法を用いて、例えば抗原を1回以上投与することに
より行うことができる。
【0013】抗原投与は、例えば、7から30日、特に
12から16日間隔で2または3回投与することが好ま
しい。投与量は1回につき、例えば抗原約0.05から
2mg程度を目安とすることができる。投与経路も特に
限定されず、皮下投与、皮内投与、腹膜腔内投与、静脈
内投与、筋肉内投与等を適宜選択することができるが、
静脈内、腹膜腔内もしくは皮下に注射することにより投
与することが好ましい。また、抗原は適当な緩衝液、例
えば完全フロイントアジュバント、不完全フロイントア
ジュバント、水酸化アルミニウム等の通常用いられるア
ジュバントを含有する適当な緩衝液に溶解して用いるこ
とができるが、投与経路や条件等によっては、上記した
アジュバントは使用しない場合もある。ここでアジュバ
ントとは抗原と一緒に投与した場合、非特異的にその抗
原に対する免疫反応を増強する物質を意味する。
【0014】免疫感作した哺乳動物を0.5から4ケ月
間飼育した後、該哺乳動物の血清を耳静脈等から少量サ
ンプリングし、抗体価を測定する。抗体価が上昇してき
たら、状況に応じて抗原の投与を適当回数実施する。例
えば100μg〜1000μgの抗原を用いて追加免疫
を行う。最後の投与から1〜2ケ月後に免疫感作した哺
乳動物から通常の方法により血液を採取して、該血液
を、例えば遠心分離、硫酸アンモニウムまたはポリエチ
レングリコールを用いた沈澱、ゲルろ過クロマトグラフ
ィー、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティク
ロマトグラフィー等のクロマトグラフィー等の通常の方
法によって分離・精製することにより、ポリクローナル
抗血清として、カリクレインを認識するポリクローナル
抗体を得ることができる。
【0015】本発明で使用することができるモノクロー
ナル抗体としては、ハイブリドーマが産生するモノクロ
ーナル抗体が挙げられる。ハイブリドーマとは哺乳動物
に抗原を免疫して取得されたB細胞と、マウス等に由来
するミエローマ細胞とを細胞融合させて得られる、所望
の抗原特異性を有したモノクローナル抗体を産生するこ
とができる細胞である。以下、ハイブリドーマを用いた
モノクローナル抗カリクレイン抗体の製造方法について
説明する。
【0016】先ず、哺乳動物を血漿カリクレインで免疫
することによって、動物体内で抗体産生細胞を調製す
る。哺乳動物の種類は特に限定されないが、一般的には
マウス、ラット、ハムスター、ウシ、ウサギ、ヤギ、ヒ
ツジ等が挙げられ、好ましくはマウス、ラット、ハムス
ター、ウサギ等のげっ歯類であり、より好ましくはマウ
スである。マウスの例として、A/J系統、BALB/
C系統、DBA/2系統、C57BL/6系統、C3H
/He系統、SJL系統、NZB系統、CBA/JNC
rj系統のマウスが挙げられる。BALB/C系統のマ
ウスは、ハイブリドーマ作製時に同系統の骨髄腫由来細
胞株が確立しているので好ましい。
【0017】免疫に用いる血漿カリクレインは、天然の
血漿カリクレインでも組換え体のカリクレインでもよ
く、また中和活性のある抗体を産生させる免疫原性を維
持する限りそれらの断片でもよい。免疫前に、カリクレ
インは、免疫応答を増強させるためにアジュバントと混
合してもよい。アジュバントとしては、本明細書中上記
したものが使用できる。これらのアジュバントは、投与
経路、投与量、投与時期などに依存して免疫応答の増強
または抑制に効果を示すので、目的とする免疫応答に応
じて、アジュバントを適切に選択することが好ましい。
【0018】哺乳動物の免疫は、当該分野で公知の方法
に従って行われる。例えば、抗原であるカリクレイン
は、哺乳動物の皮下、皮内、静脈、または腹腔内に注射
する。免疫応答は、免疫される哺乳動物の種類および系
統によって異なるので、免疫スケジュールは、使用され
る動物に合わせて適宜設定する。抗原投与は、最初の免
疫後に、何回か繰り返し行う。追加免疫は、例えば、最
初の免疫から4週間後、6週間後、および半年後に行う
ことができる。
【0019】免疫後、哺乳動物から採血し、得られた血
液をカリクレイン結合活性の存在についてアッセイする
ことにより、哺乳動物の体内でカリクレインに対する抗
体が産生されていることを確認する。アッセイ法として
は、酵素免疫測定法(ELISA法)、放射免疫アッセ
イ法(RIA)、蛍光抗体法等の公知の方法が挙げられ
る。
【0020】カリクレイン結合性抗体の産生を確認後、
特異抗体産生能のある免疫細胞を細胞融合に適した状態
にするために、ブースト(免疫原の追加注射)を行うこ
とができる。ブーストで投与するカリクレインの量は特
には限定されないが、最初に免疫したカリクレインの量
の約4〜5倍程度が好ましい。ブーストは、一般的に
は、カリクレインと不完全フロイントアジュバントとの
エマルジョンを用いて行うことができる。投与経路は、
皮下、皮内、静脈、または腹腔内等から適宜選択され
る。
【0021】最終免疫後、免疫した哺乳動物から脾臓細
胞を摘出し、骨髄腫由来の細胞株と細胞融合する。細胞
融合には、増殖能力の高い細胞株を用いることが好まし
く、また骨髄腫由来の細胞株は、融合する脾臓細胞の由
来する哺乳動物と適合性があることが好ましい。マウス
の骨髄腫由来の細胞株としては、P3X63−Ag8.
653、Sp2/O−Ag14、FO・1、S194/
5.XX0 BU.l、P3/NS1/1−Ag4−1な
どが挙げられる。細胞融合は、当該分野で公知の方法に
従って行われる。細胞融合法の例として、例えば、ポリ
エチレングリコール法、センダイウイルスを用いた方
法、電流を利用する方法などが挙げられる。得られた融
合細胞は、当該分野で公知の条件に従って増殖させるこ
とができる。産生される抗体の結合能に基づいて、所望
の融合細胞を選択する。
【0022】融合細胞から産生される抗体の結合能は、
当該分野で公知の方法に基づいてアッセイすることがで
きる。カリクレインに特異的に結合できる抗体を産生す
る融合細胞を得るためには、カリクレインに対する結合
能に基づく選別を利用して、目的の細胞株をクローニン
グする。抗体の結合能は、抗体産生の確認に関して上述
したのと同様に、ELISA法、RIA法、蛍光抗体法
などの方法を用いてアッセイすることができる。
【0023】融合細胞のクローニングは、当該分野で公
知の方法を用いて行うことができる。クローニング法と
しては、限界希釈法、軟寒天法などが挙げられ、操作が
容易で再現性が高いことから、限界希釈法が好ましい。
細胞融合により得られた多くの融合細胞の中から、効率
よく有用な細胞を選択するために、細胞選別は、クロー
ニングの初期の段階から行うことが好ましい。このよう
にして、望ましい結合能を有する抗体を産生する融合細
胞株を最終的に選別することができる。
【0024】上記のようにして選別されたモノクローナ
ル抗体産生細胞株を大量培養することにより、カリクレ
インに対して特異的なモノクローナル抗体を大量に産生
することができる。モノクローナル抗体産生細胞株の大
量培養方法として、インビボおよびインビトロでの培養
が挙げられる。インビボでの大量培養の例としては、哺
乳動物の腹腔内に融合細胞を注射して増殖させ、腹水中
に抗体を産生させる方法が挙げられる。インビトロでの
培養では、融合細胞を培地中で培養し、抗体を培地中に
産生させる。
【0025】大量培養により得られた腹水または培養上
清から、当該分野で公知の方法を用いて、本発明のモノ
クローナル抗カリクレイン抗体を精製することができ
る。精製のためには、例えば、DEAE陰イオン交換ク
ロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィ
ー、硫安分画法、PEG分画法、エタノール分画法など
が適宜組み合わせて用いることができる。
【0026】また、本発明で使用する抗カリクレイン抗
体は、ヒト化抗体やヒト抗体でもよい。ヒト化抗体とし
ては、ヒト型キメラ抗体、ヒト型相同性決定領域(CD
R)移植抗体などがあげられる。ヒト型キメラ抗体は、
ヒト以外の動物の抗体重鎖可変領域(VH)および抗体軽
鎖可変領域(VL)とヒト抗体の重鎖定常領域(CH)およ
びヒト抗体の軽鎖定常領域(CL)とからなる抗体を意味
する。
【0027】ヒト型キメラ抗体は、カリクレインに特異
的に反応するモノクローナル抗体を生産するハイブリド
ーマより、VHおよびVLをコードするcDNAを取得し、ヒト
抗体CHおよびヒト抗体CLをコードする遺伝子を有する動
物細胞用発現ベクターに挿入してヒト型キメラ抗体発現
ベクターを構築し、動物細胞へ導入し、発現させること
により製造することができる。
【0028】ヒト型CDR移植抗体は、ヒト以外の動物の
抗体のVHおよびVLのCDRのアミノ酸配列をヒト抗体のVH
およびVLの適切な位置に移植した抗体を意味する。本発
明で用いることができるヒト型CDR移植抗体は、カリク
レインに特異的に反応するヒト以外の動物の抗体のVHお
よびVLのCDR配列を任意のヒト抗体のVHおよびVLのCDR配
列に移植したV領域をコードするcDNAを構築し、ヒト抗
体のCHおよびヒト抗体のCLをコードする遺伝子を有する
動物細胞用発現ベクターにそれぞれ挿入してヒト型CDR
移植抗体発現ベクターを構築し、該発現ベクターを動物
細胞へ導入して、ヒト型CDR移植抗体を発現させること
により製造することができる。
【0029】ヒト抗体としては、ヒトの体内に天然に存
在する抗体以外に、ヒト抗体ファージライブラリーおよ
びヒト抗体産生トランスジェニック動物から得られる抗
体を使用することができる。ヒト体内に存在する抗体
は、例えば、ヒト末梢血リンパ球を単離し、EBウイルス
等を感染させ不死化、クローニングすることにより、該
抗体を産生するリンパ球を培養でき、培養物中より該抗
体を精製することができる。
【0030】ヒト抗体ファージライブラリーは、ヒトB
細胞から調製した抗体遺伝子をファージ遺伝子に挿入す
ることによりFab、一本鎖抗体等の抗体断片をファージ
表面に発現させたライブラリーである。該ライブラリー
より、抗原に対する結合活性を指標として所望の抗原結
合活性を有する抗体断片を発現しているファージを回収
することができる。
【0031】ヒト抗体産生トランスジェニック動物は、
ヒト抗体遺伝子が細胞内に組込まれた動物である。具体
的には、マウスES細胞へヒト抗体遺伝子を導入し、該ES
細胞を他のマウスの初期胚へ移植後、発生させることに
よりヒト抗体産生トランスジェニック動物を作製するこ
とができる。ヒト抗体産生トランスジェニック動物から
のヒト抗体の作製方法としては、上記したハイブリドー
マの作製方法によりヒト抗体産生ハイブリドーマを得、
培養することで培養物中にヒト抗体を産生蓄積させるこ
とができる。
【0032】また、本発明で使用する抗カリクレイン抗
体は、上記抗体の一部、即ち、抗体の断片でもよい。こ
のような抗体の断片としては、Fab、Fab’、F(ab’)2、
一本鎖抗体(scFv)、ジスルフィド安定化抗体(dsF
v)、CDRを含むペプチドなどが挙げられる。Fabは、I
gGを蛋白質分解酵素パパインで処理して得られる断片
のうち、H鎖のN末端側約半分のアミノ酸とL鎖全体が
ジスルフィド結合で結合した分子量約5万の抗原結合活
性を有する抗体断片である。
【0033】Fabは、カリクレインに特異的に反応する
抗体をパパインで処理して得ることができる。または、
該抗体のFabをコードするDNAを原核生物用発現ベクター
あるいは真核生物用発現ベクターに挿入し、該ベクター
を原核生物あるいは真核生物へ導入して発現させること
によってもFabを製造することができる。
【0034】F(ab’)2は、IgGを蛋白質分解酵素ペプ
シンで処理して得られる断片のうち、Fabがヒンジ領域
のジスルフィド結合を介して結合されたものよりやや大
きい、分子量約10万の抗原結合活性を有する抗体断片で
ある。F(ab’)2は、カリクレインに特異的に反応する抗
体をペプシンで処理して得ることができる。または、下
記のFab’をチオエーテル結合あるいはジスルフィド結
合させることによっても作製することができる。
【0035】Fab’は、上記F(ab’)2のヒンジ領域のジ
スルフィド結合を切断した分子量約5万の抗原結合活性
を有する抗体断片である。本発明のFab’は、カリクレ
インに特異的に反応するF(ab’)2を還元剤であるジチオ
スレイトールで処理することにより得ることができる。
または、該抗体のFab’断片をコードするDNAを原核生物
用発現ベクターあるいは真核生物用発現ベクターに挿入
し、該ベクターを原核生物あるいは真核生物へ導入して
Fab’を発現させることによって製造することができ
る。
【0036】scFvは、一本のVHと一本のVLとを適当なペ
プチドリンカー(P)を用いて連結した、VH−P−VLない
しはVL−P−VHポリペプチドを示す。scFvに含まれるVH
およびVLは、ハイブリドーマが産生する抗体、ヒト化抗
体、ヒト抗体のいずれでもよい。scFvは、カリクレイン
に特異的に反応する抗体のVHおよびVLをコードするcDNA
を取得し、scFvをコードするDNAを構築し、該DNAを原核
生物用発現ベクターあるいは真核生物用発現ベクターに
挿入し、該発現ベクターを原核生物あるいは真核生物へ
導入して発現させることにより製造することができる。
【0037】dsFvは、VHおよびVL中のそれぞれ1アミノ
酸残基をシステイン残基に置換したポリペプチドを該シ
ステイン残基間のジスルフィド結合を介して結合させた
ものである。システイン残基に置換するアミノ酸残基
は、抗体の立体構造予測に基づいて選択することができ
る。本発明のdsFvに含まれるVHおよびVLは本発明のハイ
ブリドーマが産生する抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体のい
ずれをも用いることができる。
【0038】dsFvは、カリクレインに特異的に反応する
抗体のVHおよびVLをコードするcDNAを取得し、dsFvをコ
ードするDNAを構築し、該DNAを原核生物用発現ベクター
あるいは真核生物用発現ベクターに挿入し、該発現ベク
ターを原核生物あるいは真核生物へ導入して発現させる
ことにより製造することができる。
【0039】CDRを含むペプチドは、H鎖またはL鎖CDRの
少なくとも1領域以上を含んで構成される。複数のCDR
は、直接または適当なペプチドリンカーを介して結合さ
せることができる。本発明のCDRを含むペプチドは、カ
リクレインに特異的に反応する抗体のVHおよびVLをコー
ドするcDNAを取得した後、CDRをコードするDNAを構築
し、該DNAを原核生物用発現ベクターあるいは真核生物
用発現ベクターに挿入し、該発現ベクターを原核生物あ
るいは真核生物へ導入することにより発現させ、CDRを
含むペプチドを製造することができる。
【0040】また、CDRを含むペプチドは、Fmoc法(フ
ルオレニルメチルオキシカルボニル法)、tBoc法(t-ブ
チルオキシカルボニル法)等の化学合成法によって製造
することもできる。
【0041】さらに本発明では、上記した何れかの抗体
の誘導体を使用することもできる。抗体の誘導体として
は、抗カリクレイン抗体またはその抗体断片のH鎖或い
はL鎖のN末端側或いはC末端側、抗体または抗体断片中
の適当な置換基あるいは側鎖、さらには抗体または抗体
断片中の糖鎖に蛋白質あるいは低分子の化合物などを化
学的手法により結合させることにより製造することがで
きる。このような抗体の誘導体の合成方法としては、例
えば、抗体工学入門(金光修著 1994年 (株)地人
書館)などに記載の方法が挙げられる。
【0042】本発明の肝再生促進剤は、肝再生不良又は
その危険を伴う患者に対し、肝疾患の予防剤または治療
剤として使用することができる。即ち、本発明によれ
ば、抗カリクレイン抗体を有効成分として含む、肝疾患
の治療及び/又は予防のための薬剤が提供される。
【0043】本発明の薬剤は、有効成分としての抗カリ
クレイン抗体と薬学的に許容される担体とから成る医薬
組成物として供給することができる。本明細書で言う薬
学的に許容される担体としては、賦形剤、希釈剤、増量
剤、崩壊剤、安定剤、保存剤、緩衝剤、乳化剤、芳香
剤、着色剤、甘味剤、粘稠剤、矯味剤、溶解補助剤ある
いはその他の添加剤等が挙げられる。そのような担体の
一つ以上を用いることにより、錠剤、丸剤、散剤、顆粒
剤、注射剤、液剤、座剤、カプセル剤、トロー剤、エリ
キシル剤、懸濁剤、乳剤あるいはシロップ剤等の形態の
医薬組成物を調製することができる。これらの医薬組成
物は、経口あるいは非経口的に投与することができる。
【0044】投与量は、患者の年齢、性別、体重及び症
状、治療効果、投与方法、処理時間、あるいは有効成分
(即ち、抗カリクレイン抗体)の種類などにより変動す
るが、通常成人一人当たり、一回につき10μgから1
000mg、好ましくは10μgから500mgの範囲
で投与することができる。しかしながら、投与量は種々
の条件により変動するため、上記投与量より少ない量で
投与される場合も、あるいは上記範囲を越える量で投与
される場合もある。
【0045】投与の形態としては、静脈内注射、皮下注
射、皮内注射、筋肉内注射あるいは腹腔内注射などの種
々の投与形態を例示することができる。好ましくは静脈
内注射である。また、注射剤は、場合により、非水性の
希釈剤(例えばプロピレングリコール、ポリエチレング
リコール、オリーブ油のような植物油、エタノールのよ
うなアルコール類など)、懸濁剤あるいは乳濁剤として
調製することもできる。そのような注射剤の無菌化は、
バクテリア保留フィルターを通す濾過滅菌、殺菌剤の配
合または照射により行うことができる。注射剤は、用時
調製の形態として製造することができる。即ち、凍結乾
燥法などによって無菌の固体組成物とし、使用前に無菌
の注射用蒸留水または他の溶媒に溶解して使用すること
も可能である。
【0046】本発明の薬剤は、肝疾患の治療及び/又は
予防のために使用することができ、好ましくは、病態形
成因子がTGF−βである肝疾患の治療及び/又は予防の
ために使用することができ、具体的には、肝臓組織線維
症、肝硬変、肝炎、又は肝再生不全のために使用するこ
とができる。本明細書で言う肝疾患の治療及び/又は予
防とは、肝疾患の発症及び/または進行を抑制又は阻止
することを含む広い意味で解釈される。
【0047】また、本発明の薬剤の肝疾患の症状に対す
る治療効果については、常法に従って疾患モデル動物に
投与することにより試験、検討することができる。例え
ば、肝炎(例えば、ウイルス性肝炎(A型、B型、C
型、E型など)など)、肝硬変あるいは薬物肝障害など
の肝疾患ついても、既報のモデル動物を用いることがで
きる(例えば、「疾患別モデル動物の作製と新薬開発の
ための試験・実験法」、p.119-129及びp.349-358、199
3、技術情報協会などを参照)。以下の実施例により本
発明をさらに具体的に説明するが、本発明は実施例によ
って限定されることはない。
【0048】
【実施例】材料 LPS(Escherichia coli 0111:B4)、ウシ血清アルブミ
ン(BSA)、およびヒト血漿カリクレインはSigma Chemi
cal Co.(St. Louis, MO)から入手した。組換えヒトTG
F-β1(rTGF-β1)、並びにTGF-β1、-β2および-β3を
中和するモノクローナル抗体は各々Roche Molecular Bi
ochemicals(Mannheim, Germany)およびGenzyme(Camb
ridge, MA)から購入した。組換えヒト潜在型TGF-β1お
よびLAPはR&D Systems(Minneapolis, MN)から入手し
た。組換えマウスTNF-α(rTNF-α)およびその中和モ
ノクローナル抗体はGenzymeから購入した。不活性型プ
レ血漿カリクレインおよび活性型血漿カリクレインの両
方を認識し、その活性を特異的に阻害するヒツジ抗ヒト
血漿カリクレイン抗体は、Enzyme Research Laboratori
es(South Bend, IN)から入手した。選択的血漿カリク
レイン阻害剤であるトランス-4-アミノメチルシクロヘ
キサンカルボニル-L及びD-フェニルアラニン-4-カルボ
キシメチルアニリド(APAA)および膜結合型プラスミン
の阻害剤であるε-アミノカプロン酸(EACA)は小野薬
品(大阪, 日本)から入手した。セリンプロテアーゼ阻
害剤であるアプロチニンは、和光純薬工業(大阪, 日
本)から購入した。
【0049】動物実験のプロトコル C3H/HeNマウス(5週齢、日本クレア, 東京, 日本)を
1週間隔離し、無作為に実験群に分けた。実験1では、
各25匹のマウスに、偽手術の24時間前に、50μlの生理
食塩水(500ng/g体重のLPSを含むもの、又は含まないも
の)を腹腔内注射し、5匹ずつを偽手術の0, 24, 48, 72
および168時間後に、エーテル麻酔下で下大静脈から失
血させて屠殺した。同様に、各35匹のマウスに、Higgin
sおよびAndersonの方法(Higgins GM他、Arch Pathol 1
931;12:186-202)に従って行った67%部分肝切除の24時
間前に、生理食塩水またはLPSを腹腔内注射し、部分肝
切除の0, 24, 36, 48,72, 120および168時間後に5匹ず
つ屠殺した。さらに、各5匹のマウスに、12.5μg/g体重
の抗TGF-βまたは非免疫抗体のいずれかを含む50μlの
生理食塩水を2度(LPS投与の2時間前と部分肝切除の2
時間前)注射し、部分肝切除の48時間後に屠殺した。
【0050】実験2では、各群5匹ずつのマウス(全20
匹)に、生理食塩水またはLPSを注射し、実験1と同様に
偽手術もしくは部分肝切除を施した。また、5匹には、1
5μg/g体重のAPAAを含む50μlの生理食塩水を2度(LP
S投与の2時間前と部分肝切除の2時間前)静脈注射し
た。偽手術または部分肝切除の0, 2, 24, および48時間
後と24および22時間前に、尾静脈から採血した。
【0051】実験3では、各5匹のマウスに、部分肝切除
の24時間前に0, 50および500ng/g体重のLPSを含む50μ
lの生理食塩水を注射した。部分肝切除の24時間後に尾
静脈から採血し、部分肝切除の48時間後に全マウスを屠
殺した。また、部分肝切除の24時間前に、50ng/g体重の
LPSで前処理した5匹のマウスと前処理なしの5匹のマウ
スとに、50μlの生理食塩水(5ng/g体重のrTNF-αを含
むものと、含まないもの)を、部分肝切除の2時間後と2
4時間後に腹腔内注射し、部分肝切除の48時間後に屠殺
した。
【0052】実験4では、各5匹のマウスに、50μlの生
理食塩水、或いは、12.5μg/g体重の非免疫抗体、抗TNF
-α抗体もしくは抗血漿カリクレイン抗体、または15μg
/g体重のAPAAを含む50μlの生理食塩水を、LPSでの腹
腔内処理の2時間前と部分肝切除の2時間前に静脈注射し
た。全マウスを部分肝切除の48時間後に屠殺した。
【0053】増殖細胞核抗原(PCNA)標識 PCNA (Proliferating Cell Nuclear Antigen: 増殖して
いる細胞のマーカー)染色は、全肝葉から調製した肝組
織切片を用いて既報(Greenwell A他、CancerLett 199
1;59:251-256)の通り行った。
【0054】免疫組織化学的解析 パラフィンを除去した肝組織切片(薄さ5μm)を、マウ
ス抗TGF-βモノクローナル抗体(1%BSAを含むリン酸
緩衝生理食塩水(PBS)中に最終濃度1μg/ml)、ヒトシ
ナプトフィシンに対するウサギ抗体(Dako Denmark; 最
終1:50希釈、肝星細胞の指標)、マウスCD14に対するヤ
ギ抗体(Santa Cruz Biochemistry, CA,最終1:50希釈、
クッパー細胞の指標)、またはマウスCD31に対するヤギ
抗体(Santa Cruz, 最終1:50希釈、内皮細胞の指標)と
一緒に加湿チャンバー内で4℃で一晩インキュベートし
た。非免疫マウス抗体を対照として用いた。PBSで洗浄
後、Vectastain ABC elite kit(Vector Laboratories,
Burlingame, CA)を用い、その使用説明書に従って切
片を染色した。ジアミノベンジジンテトラヒドロクロラ
イドを用いて発色させ、ヘマトキシリンを用いて核の対
比染色を行った。定量のために、画像解析装置(Carl Z
eiss, Oberkohen, Germany)を用いて40倍で、各標本の
4mm2の領域をTGF-β陽性領域の百分率について評価し
た。
【0055】細胞培養 既報の方法に従って(Okuno M他、Gastroenterology 20
01;120:1784-1800)、雄のウィスターラット(体重350
〜400g; Japan Clea)またはC3H/HeNマウスの肝臓から
肝星細胞を単離し、12穴プレートの各ウェルにて1.5×1
05個の細胞を実験に先だって7日間前培養した。既報の
方法に従って(Knook DL他、Exp Cell Res1976;99:444-
449)、別のラットの肝臓からクッパー細胞を単離し、1
2穴プレートの各ウェルで1.5×105個の細胞を2日間前培
養した。調製したクッパー細胞の95%以上が、内在性ペ
ルオキシダーゼと貪食されたラテックスビーズ(LB 11
ポリスチレンビーズ; Sigma)(Knook DL他、Exp Cell
Res 1976;99:444-449)との両方で染色された。肝星細
胞およびクッパー細胞は、10%ウシ胎児血清(FCS; GIBC
O BRL)を含むダルベッコ改変イーグル培地(DMEM; GIB
CO BRL, Life Technologies, Inc., Rockville, MD)で
維持した。既報の方法に従って(Kreamer BL他、In Vit
ro Cell Dev Biol 1986;22:201-211)、ラットの肝臓か
ら肝実質細胞を単離し、6穴プレートで、5×105個の細
胞を3日間前培養した。肝実質細胞は10%FCSを含むウィ
リアムE培地(GIBCO BRL)で維持した。肝星細胞、クッ
パー細胞および肝実質細胞の生存率は、トリパンブルー
色素除去による測定で90%以上であった。肝星細胞/クッ
パー細胞の混合培養では、12穴プレートで5日間前培養
した単層の肝星細胞(1ウェル当たり1.5×105細胞)上
に、クッパー細胞(1ウェル当たり1.5×105細胞)を播
き、更に2日間培養した。
【0056】サイトカイン量の測定 抽出液または培養液中のTGF-β含量は、既報の通り(Ok
uno M他、Gastroenterology 2001;120:1784-1800)、CC
L-64ミンク肺上皮細胞による[3H]チミジン取り込みの阻
害によってアッセイした。TGF-β量は、pmol/mgタンパ
ク質(組織)またはfmol/105細胞(培養細胞)として表
示した。培養液及び血清中のTNF-α濃度は、Genzymeよ
り入手したELISAキットを用い、添付のプロトコルに従
って測定した。
【0057】逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)ア
ッセイ 肝組織および培養細胞からの全RNAの分離は既報の方法
で行った(Okuno M他、Gastroenterology 2001;120:178
4-1800)。RT-PCRでは、M-MLV逆転写酵素(GIBCO BRL)
を用いて、その使用説明書に従って、RNA(1μg)をcDN
Aに逆転写し、このcDNAを以下のセンスおよびアンチセ
ンスプライマーを用いてPCRで増幅した。
【0058】ラット血漿カリクレイン 5'-AACCTGGTGTCTGGATTCTC-3' (配列番号1) 5'-TTTACACCCCTCTGCCTTGC-3' (配列番号2) ラットuPAレセプター(uPAR) 5'-GAAGGACGAACCCTACACCA-3' (配列番号3) 5'-CAGGGAGGCAATGAGGATAA-3' (配列番号4) ラットTGF-β1 5'-GGACTCTCCACCTGCAAGAC-3' (配列番号5) 5'-CTCTGCAGGCGCAGCTCTG-3' (配列番号6) マウスTGF-β1 5'-CTGTCCAAACTAAGGCTCGC-3' (配列番号7) 5'-CGTCAAAAGACAGCCACTCA-3' (配列番号8)
【0059】ラットTGF-β2 5'-TTCGCAGGTATCGATGGCAC-3' (配列番号9) 5'-GGCGAAGGCAGGAATTATGC-3' (配列番号10) マウスTGF-β2 5'-GACCCCACATCTCCTGCTAA-3' (配列番号11) 5'-TTCGATCTTGGGCGTATTTC-3' (配列番号12) ラットTGF-β3 5'-CCAGCTCCAAGCGCACAG-3' (配列番号13) 5'-CAACAGCCACTCGCGCAC-3' (配列番号14) マウスTGF-β3 5'-GTAGAGCACATAGCAAGCA-3' (配列番号15) 5'-CTCTGGGTTCAGGGTGTTGT-3' (配列番号16)
【0060】 マウスCD14 5'-CTGATCTCAGCCCTCTGTCC-3' (配列番号17) 5'-GCAAAAGCCAGAGTTCCTGAC-3' (配列番号18) ラットグリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH) 5'-GCTGAGAATGGGAAGCTGGT-3' (配列番号19) 5'-CCTTGGCAGCACCAGTGGAT-3' (配列番号20) マウスグリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH) 5'-CCCACTAACATCAAATGGGG-3' (配列番号21) 5'-ACACATTGGGGGTAGGAACA-3' (配列番号22)
【0061】温度サイクル条件は、94℃で30秒(変
性)、54℃で30秒(アニーリング)、72℃で90秒(伸
長)とし、これを30回繰り返した。PCR産物は2.0%アガ
ロースゲルで電気泳動し、エチジウムブロマイドで染色
した。
【0062】ウェスタンブロット解析 ウェスタンブロット解析は、ペルオキシダーゼ結合ウサ
ギ抗ラットアルブミン抗体(Nordic Immunological Lab
oratories, Tilburg, Netherlands; 最終1:2,000希
釈)、ペルオキシダーゼ結合マウス抗ヒトα-平滑筋ア
クチン(SMA)モノクローナル抗体(DAKO Japan; 最終
1:500希釈)、ヒツジ抗ヒト血漿カリクレイン抗体(最
終1:1,000希釈)とホースラディッシュペルオキシダー
ゼ結合ウサギ抗ヒツジIgG抗体(Southern Biotechnolog
y Associates Inc., Birmingham, Alabama; 最終1:2,00
0希釈)の組み合わせ、またはウサギ抗ラットuPAR抗体
(American Diagnostica Inc., Greenwich, CT; 最終1:
50)とホースラディッシュペルオキシダーゼ結合ヤギ抗
ウサギIgG抗体(最終1:1,500希釈)の組み合わせを用い
て、既報の方法に従って行った(Okuno M他、Gastroent
erology 2001;120:1784-1800)。1度反応させて膜は、
抗体の洗浄後、マウス抗ウサギGAPDHモノクローナル抗
体(Chemicon Int., Temecula, CA, 最終1:200希釈)及
びペルオキシダーゼ結合ヤギ抗マウスIgG抗体(Jackson
ImmunoResearch Laboratories, West Grove, PA)と再
び反応させた。バンドはAmersham-Pharmacia(Buckingh
amshire, UK)ECL systemで検出した。
【0063】血漿カリクレイン活性のアッセイ 培養細胞および組織抽出液の血漿カリクレイン活性量
は、蛍光基質であるカルボベンゾキシ−L−フェニルア
ラニル−L−アルギニン4−メチル−クマリル−7−ア
ミド(Z-Phe-Arg-MCA; Peptide Inc., Osaka, Japan)
を用いて測定した。生細胞の細胞表面に結合した血漿カ
リクレインを測定するために、6穴プレートの肝星細胞
単独培養をPBSで2回洗浄し、250μmol/Lの基質を含む7
00μlのPBSを加えて37℃で1時間インキュベートした。
インキュベートの前後で上清の一部(200μl)を回収
し、それらの蛍光強度をSpectra Fluorマイクロプレー
ト蛍光光度計(Tecan Austria GmbH, Austria)を用い
て、励起波長380nm及び放射波長460nmで測定した。血漿
カリクレイン活性は、精製ヒト血漿カリクレインを用い
て作成した標準曲線を用い、1時間のインキュベート中
の蛍光強度増加の比較によって計算し、U(1U=4.1nmo
l)/g試料中タンパク質で表した。肝星細胞表面に存在
するuPAR-血漿カリクレイン複合体量を測定するため
に、肝星細胞単独培養をPBSで2回洗浄し、ホスファチ
ジルイノシトールを介して結合しているuPARとその結合
タンパク質を細胞表面から遊離させために、0.5 U/mlの
ホスファチジルイノシトール特異的ホスホリパーゼC(S
igma)を含む500μlの無血清培地を加えて37℃に2時間
インキュベートした。その抽出液中の血漿カリクレイン
量を上記方法で測定し、pmol/106細胞で表した。肝臓組
織中の血漿カリクレイン活性を測定するために、ホモジ
ネートを既報の方法に従って調製し(Okuno M他、Gastr
oenterology 2001;120:1784-1800)、4℃で105,000×g
で1時間遠心し、上清を回収した。上清の一部(10μ
l)を、同じ抽出緩衝液(最終容量200μl)中で500μM
の基質と一緒に37℃でインキュベートした。5分毎に蛍
光強度の変化を測定し、ヒト血漿カリクレインを用いて
作成した標準曲線を用いて、5分〜10分の蛍光強度増
加を比較することによって血漿カリクレイン活性量を計
算し、mU/g試料中タンパク質で表した。
【0064】アフィニティー標識 精製したヒト血漿カリクレイン(60μg)を、Iodogen−
pre−coated tubes(PIERCE, Rockford, I)を用いてそ
の使用説明書に従って放射ヨウ素標識した。放射ヨウ素
標識した血漿カリクレインは、PD-10ゲル濾過カラム(A
mersham-Pharmacia)を用いて、遊離放射ヨウ素と分離
した。アフィニティー標識は既報の通り行った(Yoshiz
awa M他、J Cell Physiol 1998;176:565-573)。
【0065】統計 群間平均は、ANOVAを用い、Dunnettのt検定を行って比
較した。
【0066】実施例1:LPSによるTGF-βを介する部分
肝切除後の肝再生抑制 (方法)図1の(A)の実験では、マウスに生理食塩水
または500ng/g体重のLPSを偽手術または67% 部分肝切除
の24時間前に投与した。マウスを図に示した時間に屠殺
し、各肝葉で少なくとも500個の肝実質細胞を数えるこ
とによってPCNA標識率を測定し、数えた全肝実質細胞数
の%として表した。 直線1:生理食塩水+偽手術; 直線2:LPS+偽手術; 曲線3;生理食塩水+部分肝切除; 曲線4;LPS+部分肝切除 平均値は各実験マウスの1試料当たり5視野から計算
し、群平均は各実験群の5匹のマウスから計算して、平
均±標準誤差(n=5)として表した。星印と短剣符はそ
れぞれ、各時点での直線1と2との、および曲線4との
有意差(P<0.01)を表す。
【0067】図1の(B)〜(E)の実験では、全動物
を偽手術または部分肝切除の48時間後に屠殺した。
(B)の実験では、肝組織試料を、活性型TGF-β、シナ
プトフィシン、CD31、およびCD14の抗体で染色した(縮
尺は20μm)。 パネルa〜d:生理食塩水+部分肝切除; パネルe〜h:LPS + 部分肝切除; パネルaおよびe:活性型TGF-β; パネルbおよびf:シナプトフィシン; パネルcおよびg:CD31; パネルdおよびh:CD14:
【0068】(C)の実験では、全組織試料を抗活性型
TGF-β抗体で免疫染色した後、TGF-β陽性の領域を画像
解析装置で定量し、全観察視野の%として表した。平均
値は各実験マウスの1試料当たり5視野から計算し、正常
マウスの肝臓(n=5)から得たバックグラウンドの平均
値を差し引いた。群の平均は各実験群の5匹のマウスか
ら計算し、平均±標準誤差(n=5)として表した。
【0069】(D)の実験では、各肝臓抽出物のTGF-β
含量を生物学的アッセイによって測定し、pmol/mgタン
パク質として表した。数値は平均±標準偏差(n=5)で
表した。(C)および(D)の実験では、第1列は生理
食塩水+偽手術;第2列はLPS+偽手術;第3列は生理食塩
水+ 部分肝切除;第4列はLPS + 部分肝切除を示す。パ
ネル(C)の星印は、第1列及び第2列との比較によっ
て得た有意差(P<0.01)を示す。パネル(C)の短剣符
は、第3列との比較によって得た有意差(P<0.01)を示
す。パネル(D)の星印は、他の群との比較によって得
た有意差(P<0.01)を示す。
【0070】(E)の実験では、全RNAを肝組織から
抽出し、マウスのTGF-β1(上段のバンド)、-β2(2
段目のバンド)、-β3(3段目のバンド)、およびGAPD
H(下段のバンド)のmRNA量をRT−PCRで評価
した。 レーン1:生理食塩水+偽手術; レーン2:生理食塩水+ 部分肝切除; レーン3:LPS + 部分肝切除
【0071】(F)の実験では、マウスに、LPS投与お
よび部分肝切除の2時間前に12.5μg/g体重の抗TGF-β
抗体または非免疫抗体(NI Ab)を注射した。部分肝切
除の48時間後にマウスを屠殺し、肝臓のPCNA標識率を上
記と同様に測定した。 第1列:生理食塩水+ 部分肝切除; 第2列:LPS + 部分肝切除; 第3列:抗TGF-β抗体(Ab)投与を併用した LPS + 部分
肝切除; 第4列:NI Ab投与を併用したLPS + 部分肝切除:数値
は平均±標準誤差(n=5)で表した。星印は、第2列お
よび第4列との比較によって得た有意差(P<0.01)を示
す。
【0072】(結果)部分肝切除後の肝再生におけるLP
Sの影響を、肝臓のPCNA標識率の測定によって、マウス
で評価した(図1A)。偽手術の24時間前の生理食塩
水またはLPSの前投与は肝実質細胞の増殖を誘導しなか
った(直線1および2)。一方、生理食塩水を前投与し
たマウスでは、標識率は部分肝切除後24〜36時間で
増加し始め、48時間でピークに達し、168時間まで
徐々に減少した(曲線3)。マウスにLPSを前投与した
場合、部分肝切除後の増加は、生理食塩水で前処理した
マウスの40%のピーク値に有意に(p<0.01)抑制され
るが、168時間後の値には影響しなかった(曲線
4)。これらの条件下では、重篤な肝臓の壊死または炎
症はいずれの群にも見られなかった。血清のALT活性
は、部分肝切除の24時間後に一時的に上昇したが、生理
食塩水+部分肝切除群(284±35 IU/L, 平均±標準偏
差、n=5)とLPS+部分肝切除群(259±40 IU/L, 平均±
標準偏差、n=5)で、ピーク値に有意差はなかった。
【0073】活性型TGF-βは、偽手術群の肝臓ではLPS
の前処理の有無に関わらず、ほとんど発現していなかっ
たが(図1C、第1列および第2列)、生理食塩水で前
処理したマウス(図1B、パネルa;図1C、第3列)で
は、部分肝切除後に活性型TGF-βの発現が見られ、LPS
による前処理により、肝切除後の肝臓(図1B、パネル
e;図1C、第4列)での発現が増加した。TGF-β陽性
細胞は、抗シナプトフィシン抗体(肝星細胞のマーカ
ー、図1B、パネルbおよびf)によって共染色される
が、抗CD31抗体(類洞内皮細胞のマーカー、パネルcお
よびg)または抗CD14抗体(クッパー細胞のマーカー、
パネルdおよびh)では共染色されなかった。これは主と
して肝星細胞によってTGF-βが生産されることを示唆す
る。肝臓の全TGF-β量を生物学的アッセイによって測定
した場合も同様の結果が得られた(図1D)。TGF-βの
各サブタイプに特異的なプライマーを用いたRT−PC
R解析によって、生理食塩水で前処理した肝臓と比較し
て、TGF-β1およびTGF-β2 mRNAの量は、LPSで前処理し
たマウスにおいて部分肝切除後24〜48時間で、それぞれ
1.5および3倍に増加する(図1E、レーン2と3)こと
が示された。TGF-β3 mRNA量は少量のため(De Bleser
PJ他、J Hepatol 1997;26:886-893)ほとんど検出され
ず、部分肝切除後48時間でわずかに増加した。LPS投与
と部分肝切除両方の2時間前に抗TGF-β中和抗体を注射
すると、PCNA標識率の増加から示される通り、LPSで誘
導される肝再生の抑制は妨げられるが(図1F、第3
列)、非免疫抗体は影響を与えなかった(図1F、第4
列)。
【0074】実施例2:肝星細胞/クッパー細胞の混合
培養における、LPSにより刺激されたクッパー細胞から
放出されたTNF-αを介する活性型TGF-βの生成 (方法)図2の(A)の実験では、ラット由来肝星細胞
およびクッパー細胞の単独培養および混合培養を、無添
加(対照)、或いは、45 pmol/L rTNF-α、500 ng/ml L
PS、45 pmol/L rTNF-αと50μg/ml抗TGF-β抗体、また
は500 ng/ml LPSと50μg/ml抗TNF-α抗体もしくは50μg
/ml抗TGF-β抗体のいずれかを加えた0.05% BSAを含む無
血清DMEM(DMEM-BSA)を用いて24および48時間インキュ
ベートした。各培養細胞から細胞溶解物を調製し、全RN
Aを抽出した。TGF-β1(上段のバンド)、TGF-β2(2
段目のバンド)、TGF-β3(3段目のバンド)、およびG
APDH(下段のバンド)の発現を、RT−PCRによって
評価した。 レーン1〜5および16〜20, 肝星細胞単独培養; レーン6〜10および21〜25, クッパー細胞単独培
養; レーン11〜15および26〜30, 肝星細胞/クッパ
ー細胞混合培養。 レーン1, 6, 11, 16, 21および26, 対照; レーン2, 7, 12, 17, 22および27, rTNF-α; レーン3, 8, 13, 18, 23および28, LPS; レーン4, 9, 14, 19, 24および29, LPS +抗TNF-α抗体; レーン5および20, TNF-α+抗TGF-β抗体; レーン10, 15, 25および30, LPS +抗TGF-β抗体。 レーン1〜15, 24時間培養; レーン16〜30, 48時間培養:
【0075】図2の(B)では、肝星細胞およびクッパ
ー細胞の単独培養および混合培養を、無添加(対照)、
或いは500 ng/ml LPSを加えたDMEM-BSAで、24時間イン
キュベートしたのち、培地を回収し、各培地中の活性型
(斜線のボックス)および全(白抜きのボックス+斜線
のボックス)TGF-β濃度を測定した(第1, 2, 4, 5,7お
よび8列)。DMEM-BSAに10 U/mlのプラスミンを加え、各
細胞を30分間インキュベートすることによって、細胞表
面抽出物を調製した。α2-プラスミン阻害剤を加えるこ
とによって、プラスミン活性を阻害した後、各抽出物中
の活性型および全TGF-β濃度を測定した(第3, 6および
9列)。 第1〜3列, 肝星細胞単独培養; 第4〜6列, クッパー細胞単独培養; 第7〜9列, 肝星細胞/クッパー細胞混合培養; 第1, 4および7列, LPSを加えない培地(対照); 第2, 5および8列, LPSを加えた培地; 第3, 6および9列, プラスミンで処理した細胞表面抽出
物:
【0076】図2の(C)では、クッパー細胞(1×107
細胞)を、15 mlのDMEM-BSA(500 ng/ml LPSを含むもの
と含まないもの)を入れた10 cmディッシュ中で24時間
インキュベートしクッパー細胞馴化培地を得た。クッパ
ー細胞馴化培地中に存在するLPSは大量の新しいDMEMで
透析を行って除去した。LPS存在下で調製したクッパー
細胞馴化培地の一部を50μg/ml抗TNF-α抗体とともに2
時間インキュベートした。その後、肝星細胞単独培養を
新しいDMEM-BSAまたはクッパー細胞馴化培地で24時間行
ない、各培地中の活性型(斜線のボックス)および全
(白抜きのボックス+斜線のボックス)TGF-β濃度を測
定した。 第1列, 新しいDMEM-BSA; 第2列, LPSを含まないクッパー細胞馴化培地; 第3列, LPSを含むクッパー細胞馴化培地; 第4列, 抗TNF-α抗体(Ab)で予めインキュベートした
LPSを含むクッパー細胞馴化培地:
【0077】図2の(D)では、肝星細胞またはクッパ
ー細胞の単独培養を、図に示した濃度のrTNF-αを含むD
MEM-BSA中で24時間インキュベートした。培地を回収
し、全TGF-β(曲線1および3)および活性型TGF-β
(曲線2)濃度を測定した。 曲線1および2, 肝星細胞単独培養; 曲線3, クッパー細胞単独培養。
【0078】図2の(B)〜(D)における数値は平均
±標準偏差(n=6)を表す。星印は、各培養細胞の対照
(BおよびD)または第1列および第2列(C)との比
較によって得た有意差(P<0.01)を示す。(C)での短
剣符は、第3列との比較によって得た有意差(P<0.01)
を示す。(D)での短剣符は、曲線3との比較によって
得た有意差(P<0.01)を示す。
【0079】(結果)活性型TGF-βが肝星細胞において
局在的に発現されることがラット肝臓(Bissell DM他、
J Clin Invest 1995;96:447-455, De Bleser PJ他、J H
epatol 1997;26:886-893)で実証されているように、肝
星細胞は、LPS処理+部分肝切除を受けたマウス肝臓に
おける活性型TGF-βの主要な産生細胞であると考えられ
る。一方、クッパー細胞はLPSの主要な標的細胞である
ことが実証されている(DeckerK.、Eur J Biochem 199
0;192:245-261)。そこで、部分肝切除を受けた肝臓に
おいてLPSがTGF-βを誘導する分子機構を解明すること
を目的として、in vitroでの肝星細胞およびクッパー細
胞におけるTGF-βの産生に対するLPSの影響を調べた
(図2)。
【0080】ラットの肝星細胞およびクッパー細胞の単
独培養および混合培養をTNF-αまたはLPSで24〜48時間
処理し、TGF-β mRNA量およびそれぞれの培養培地中の
全TGF-βと活性型TGF-βの濃度を測定した(図2Aおよ
び2B)。刺激を受けていない肝星細胞はTGF-β1, -β
2, および-β3 mRNAを発現するが(図2A, レーン1お
よび16)、刺激を受けていないクッパー細胞は低量のTG
F-βs mRNAしか発現せず(図2A, レーン6および2
1)、肝星細胞、クッパー細胞ともに培地中に極微量の
潜在型および活性型TGF-βしか分泌しなかった(図2
B, 第1列および第4列)。48時間までのLPS処理で
は、TGF-βs mRNA量は増加せず(肝星細胞については、
図2A, レーン3および18, クッパー細胞については、
図2A, レーン8および23)、また培地中の全TGF-βと
活性型TGF-βの量は、いずれの細胞においても影響を受
けなかった(図2B, 第2列および第5列)。
【0081】肝星細胞とクッパー細胞の混合培養では、
TGF-β1, -β2, および-β3 mRNA量が、肝星細胞対照細
胞と比較して1.2〜1.5倍に増加した(図2A, レーン11
および26)。しかし、培地中の全TGF-βと活性型TGF-β
の量にはほとんど影響が見られなかった(図2B, 第7
列)。対照的に、48時間までの混合培養のLPS処理で
は、TGF-β1, -β2, および-β3 mRNAの発現は、LPS処
理しなかった対照培養細胞と比較して2〜3倍に増加し
(図2A, レーン13および28)、培地中に228 pmol/L
(38 fmol/105細胞)の全TGF-βの放出が誘導された。
そのうち172 pmol/L(28.6 fmol/105細胞)(75%)は活
性型であった(図2B,第8列)。細胞外マトリックス
内にプールされた潜在型TGF-βを放出し活性化させるプ
ラスミン(OkunoM他、Gastroenterology 2001; 120: 17
84-1800)で細胞表面抽出物を処理すると、肝星細胞お
よび肝星細胞/クッパー細胞の混合培養で、高レベルのT
GF-βが検出されるが、クッパー細胞では検出されなか
った(図2B, 第3,6および9列を比較)。
【0082】次に、肝星細胞単独培養における活性型TG
F-βの誘導に対するクッパー細胞馴化培地の影響を調べ
た。LPS処理なしのクッパー細胞から調製したクッパー
細胞馴化培地は、ほとんど効果を示さないが(図2C,
第2列)、LPS処理したクッパー細胞から調製したクッ
パー細胞馴化培地は、肝星細胞の単独培養を刺激し、活
性型TGF-βを産生した。従って、クッパー細胞馴化培地
中にメディエーターが存在することが示唆される。
【0083】TNF-αはLPS処理したクッパー細胞から分
泌される主要なサイトカインであることから(Decker
K.他、Eur J Biochem 1990;192:245-261)、その作用に
注目した。肝星細胞/クッパー細胞混合培養にLPSとTNF-
αの中和抗体を同時に添加すると、TGF-β1, -β2およ
び-β3 mRNA発現のLPSによる増加が弱くなり(図2A,
レーン14および29)、クッパー細胞馴化培地を同抗体と
一緒に予めインキュベートすると、クッパー細胞馴化培
地によって誘導されるTGF-β活性の70〜80%が失われた
(p<0.01)(図2C, 第4列)。また、非免疫の対照抗体
は効果を示さなかった。
【0084】さらに、肝星細胞の単独培養および肝星細
胞/クッパー細胞混合培養をrTNF-αで48時間処理する
と、肝星細胞/クッパー細胞混合培養のLPS処理と同様の
効果を示した。肝星細胞の単独培養では、TGF-β1, -β
2および-β3 mRNA発現が1.2〜2倍上昇し(図2A, レー
ン2および17)、肝星細胞/クッパー細胞混合培養では2
〜3倍上昇した(図2A, レーン12および27)。肝星細
胞の単独培養では、rTNF-αは、全TGF-βおよび活性型T
GF-βは、それぞれ312 pmol/L(104 fmol/105細胞)
(図2D, 曲線1)および174 pmol/L(58 fmol/105
胞)(図2D,曲線2)まで、約85pmol/LのED50値で用量
依存的に増加した。一方、クッパー細胞の単独培養で
は、rTNF-αを投与してもTGF-βs mRNA発現は増加せず
(図2A, レーン7および22)、培地中へのTGF-βの分
泌も誘導されなかった(6 fmol/105細胞まで)(図2
D, 曲線3)。LPS処理したクッパー細胞から調製した
クッパー細胞馴化培地中のTNF-α濃度は、ELISAで測定
した結果、45±3 pmol/L(平均±標準偏差、n=6)であ
った。TNF-α処理した肝星細胞の単独培養およびLPS処
理した肝星細胞/クッパー細胞混合培養における、TGF-
β1, -β2および-β3 mRNA発現の増加は抗TGF-β抗体の
添加により弱められた(図2A, 肝星細胞についてはレ
ーン5および20, 混合培養についてはレーン15および3
0)。同様の結果がマウスの肝星細胞で得られた。45 pm
ol/LのrTNF-αで24時間処理すると、252 pmol/L(42 fm
ol/105細胞)の全TGF-βが放出され、そのうち135 pmol
/L(23 fmol/105細胞)が活性型であった。
【0085】実施例3:TNF-αによる血漿カリクレイン
依存潜在型TGF-βの活性化誘導 (方法)図3の(A)では、肝星細胞の単独培養を、無
添加(対照, 第1列)または45pmol/L rTNF-α存在下
で、無添加(第2列)または1μmol/Lアプロチニン(第
3列)、1μmol/L EACA(第4列)、1μmol/L APAA(第
5列)、25μg/ml抗血漿カリクレイン(第6列)もしく
は非免疫(NI)抗体(Ab)(第7列)を含むDMEM-BSAと
一緒に24時間インキュベートした。培地を回収し、各培
地中の活性型TGF-β濃度を測定した。数値は平均±標準
偏差(n=5)で表す。星印は、対照(第1列)との比較
によって得た有意差(P<0.01)を示す。短剣符は、第2
列との比較によって得た有意差(P<0.01)を示す。
【0086】図3の(B)では、試験管内でPBS-BSA中
において、0.1 U/mlの精製血漿カリクレインと組換え潜
在型TGF-β1(5μmol/L)を1μmol/LのAPAA存在下また
は非存在下で37℃1時間インキュベートしたのち、溶液
中の活性型TGF-β濃度を測定した。 第1列, 潜在型TGF-β1 (LTGF-β1 )のみ; 第2列, 血漿カリクレインと一緒にインキュベートした
潜在型TGF-β1; 第3列, 血漿カリクレインおよびAPAAと一緒にインキュ
ベートした潜在型TGF-β1:数値は平均±標準偏差(n=
3)で表す。星印は、第1列および第3列との比較によ
って得た有意差(P<0.01)を示す。
【0087】図3の(C)では、組換えLAP(70kDa: 3
μmol/L)を、0.05 U/mlの血漿カリクレインを含むPBS-
BSAと一緒に37℃で試験管内で0, 15, 30分間インキュベ
ートした。8%分離ゲルを用いた非還元条件下でドデシル
硫酸ナトリウム-PAGE後、銀染色によって、LAPの分解を
観察した。
【0088】図3の(D)では、肝星細胞の単独培養
を、DMEM-BSA中0.05 U/mlの血漿カリクレインの存在
下、非存在下(対照)で24時間インキュベートした。そ
の後、細胞をPBSで洗浄し、培地を新しいDMEM-BSAに交
換して更に24時間インキュベートした。馴化培地を回収
し、各培地中の活性型TGF-β濃度を測定した。馴化培地
を調製する間に更に1μmol/LのAPAAまたは25μg/mlの抗
血漿カリクレイン抗体を加えた場合も測定した。 第1列, 対照; 第2列, 血漿カリクレイン; 第3列, 血漿カリクレイン + APAA; 第4列, 血漿カリクレイン + 抗血漿カリクレイン抗体
(Ab): 星印は、他の列との比較によって得られた有意差(P<0.
01)を示す。
【0089】(結果)肝線維形成過程における潜在型TG
F-βの活性化はプラスミンによることが知られているの
で(Okuno M他、Gastroenterology 2001;120:1784-1800,
Okuno M他、J Hepatol 1999;30:1073-1080, Okuno M
他、Hepatology 1997;26:913-921)、TNF-αで誘導され
る活性化におけるプラスミンの関与を調べた。図3Aに
示す通り、組換えTNF-αによって誘導される潜在型TGF-
βの活性化は、アプロチニンによって抑制されたが(第
3列)、EACAでは抑制されなかった(第4列)。この結
果より、プラスミン以外の他のセリンプロテアーゼの関
与が示唆された。アプロチニンは血漿カリクレインに対
する有効な阻害剤として既知であるので(MannucciPM.
New Engl J Med 1998;23:245-253)、血漿カリクレイン
選択的阻害剤であるAPAA(Wanaka K他、Chem Pharm Bul
l 1992;40:1814-1817, Okada Y他、Biopolymers 1999;5
1:41-50, Okada Y他、Bioorg Med Chem Lett 2000;10:2
217-2221)を用いて、血漿カリクレインが関与する可能
性を調べた結果、TGF-βの活性化が84%抑制された(第
5列)。また、抗血漿カリクレイン抗体を含む場合(第
6列)、TGF-βの形成は妨げられたが、非免疫抗体(第
7列)では妨げられなかった。LPSを加えても細胞表面u
PAおよびプラスミンの量が検出限界以下である、LPS処
理した肝星細胞/クッパー細胞混合培養でも、同様の結
果が得られた。この結果から、プラスミンではなく血漿
カリクレインが、潜在型TGF-βのアクチベーターとして
作用している可能性が示唆される。
【0090】次に、試験管内(図3Bおよび3C)並び
に肝星細胞単独培養(図3D)において、血漿カリクレ
インが直接潜在型TGF-βを活性化するかどうかを調べ
た。組換え潜在型TGF-β1(5μmol/L)を、PBS-BSA中に
おいて精製血漿カリクレイン(終濃度0.41μmol/L)の
存在下、非存在下で37℃で1時間インキュベートし、生
成した活性型TGF-βを定量した(図3B)。血漿カリク
レインなしでインキュベーションした後の組換え分子の
回収率は15%で、そのうち25%は活性化されていた(第1
列)。これに対して、血漿カリクレインとのインキュベ
ーションしたサンプルでは、回収された潜在型分子の65
%が活性化型に変換されており(第2列)、この変換反
応はAPAAによって抑えられた(第3列)。更に、ドデシ
ル硫酸ナトリウム-PAGE後の銀染色法によって、組換えT
GF-β1 LAP(潜在型TGF-βのプロテアーゼによる活性化
反応の過程でプロテアーゼによる限定分解を受ける部
分)は、時間依存的に血漿カリクレインによって分解さ
れて検出されなくなることがわかった(図3C)。この
結果は、潜在型TGF-βが血漿カリクレインの基質である
ことを強く示唆している。図3Dに示すように、肝星細
胞を精製血漿カリクレインと一緒にインキュベートし、
PBSで洗浄後、新しい培地でインキュベートすると、培
地中に活性型TGF-βが生成され(第2列)、その生成は
APAAまたは抗血漿カリクレイン中和抗体によって阻害さ
れた(第3列および第4列)。
【0091】実施例4:TNF-α処理による肝星細胞表面
血漿カリクレイン活性の増加 (方法)肝星細胞の単独培養を、DMEM-BSA中において45
pmol/L rTNF-αの存在下、非存在下で24時間インキュ
ベートした。図4の(A)では、細胞に結合した血漿カ
リクレイン活性を、蛍光合成基質Z-Phe-Arg-MCAを用い
て定量した。数値は平均±標準偏差(n=5)で表す。星
印は、対照(左列)との比較によって得た有意差(P<0.
01)を示す。
【0092】図4の(B)では、細胞抽出液を0.5% Tri
ton X-100、0.1 mol/L Tris, pH 8.0で調製した。各抽
出液中のタンパク質(20μg)を、8%分離ゲルを用いた
非還元条件下でドデシル硫酸ナトリウム-PAGEで分離
し、ニトロセルロース膜に転写して、ウエスタンブロッ
トによりプレ血漿カリクレイン/血漿カリクレイン、uPA
R、α-SMA、アルブミンおよびGAPDHのタンパク量を評価
した。
【0093】図4の(C)では、各肝星細胞単独培養か
ら全RNAを抽出し、プレ血漿カリクレイン、uPARおよびG
APDHのmRNA量をRT-PCRで評価した。図4の(D)では、
肝星細胞単独培養を、50倍モル過剰の非放射標識血漿カ
リクレインの非存在下(第1列および第3列)または存
在下(第2列および第4列)で、放射ヨウ素標識した血
漿カリクレイン(終濃度1μg/ml(=11.4 nmol/L))と
一緒に8時間インキュベートし、次いで、放射ヨウ素標
識血漿カリクレインと細胞表面結合タンパク質とを化学
的に架橋した。各培養皿からタンパク質を抽出し、前記
同様にドデシル硫酸ナトリウム-PAGEで分離した後に、
放射ヨウ素標識血漿カリクレインと結合したタンパク質
複合体をオートラジオグラフィーで検出した。 矢印, uPARに結合していると考えられる血漿カリクレイ
ン; 矢頭, uPARに結合していると考えられる血漿カリクレ
イン 断片:
【0094】図4の(E)では、細胞表面においてuPAR
と会合していると推定される血漿カリクレインの量を、
uPARをホスファチジルイノシトール(PI)特異的ホスホ
リパーゼC (PLC)で切断、抽出後に定量した。数値は
平均±標準偏差(n=5)で表す。星印は、対照(左列)
との比較によって得た有意差(P<0.01)を示す。図4の
(A)〜(E)の左列のサンプルは TNF-α未処理の対
照細胞を示し、右列のサンプルはTNF-α処理細胞を示
す。
【0095】(結果)肝星細胞はその細胞表面に血漿カ
リクレイン活性を発現しており(図4A)、プレ血漿カ
リクレインを自ら合成している(図4BおよびC)こと
が判明した。実験に用いた肝星細胞は肝星細胞のマーカ
ーであるα-SMAは発現したが、肝実質細胞のマーカーで
あるアルブミンの発現は検出できなかったので、血漿カ
リクレインの主要産生細胞であることが知られていた肝
実質細胞の混入がないことが保証される(図4B)。肝
星細胞単独培養を45 pmol/L の組換えTNF-αで処理する
と、細胞表面血漿カリクレイン活性は3倍に増加するが
(図4A)、プレ血漿カリクレインの新規合成量は変化
しなかった(図4BおよびC)。この違いの少なくとも
一つの理由は、TNF-αによる細胞表面への血漿カリクレ
インの結合量の増加によるものと予想される。プレ血漿
カリクレイン-高分子量(HMW)キニノーゲン複合体に結
合することが知られているuPAR(Colman RW他、J Clin
Invest 1997;100:1481 -1487)の発現量が増加するの
に並行して表面血漿カリクレイン活性が増加すること
が、そのことを裏付けている(図4BおよびC)。図4D
に示す通り、TNF-α処理は肝星細胞表面への放射ヨウ素
標識血漿カリクレインの結合量を上昇させた(レーン1
と3の比較;uPARに結合したと考えられる血漿カリクレ
イン(矢印)と血漿カリクレイン断片(矢頭))。これ
らの放射活性バンドは、過剰量の非標識血漿カリクレイ
ンの添加により消失する(図4D, レーン2および4)こ
とから、細胞表面への特異的血漿カリクレインの結合を
示す。さらに、ホスファチジルイノシトール特異的ホス
ホリパーゼCの作用によって放出される細胞表面血漿カ
リクレイン量は、組換えTNF-α処理した肝星細胞で3倍
に増加した(図4E)。このホスホリパーゼCは、細胞
表面にプレ血漿カリクレイン/血漿カリクレインをを保
持していると考えられるuPAR分子中のホスファチジルイ
ノシトールを特異的に切断する(May AE他、Blood 200
0; 15: 506-513)。
【0096】実施例5:マウスへのLPS注射および部分
肝切除後における血清中TNF-α量の二相性の増加 (方法)図5の(A)では、実施例1と同様にマウスを
処理した。さらに、別の群のマウスには、LPS注射と部
分肝切除のそれぞれ2時間前の2回、15μg/g体重のAPAA
を注射した。図に示した時間に採血し、ELISAキットを
用いて血清TNF-α量を測定した。 パネルa, 生理食塩水+偽手術; パネルb, LPS +偽手術; パネルc, 生理食塩水+ 部分肝切除; パネルd, LPS + 部分肝切除; パネルe, APAAおよびLPS + 部分肝切除:数値は平均±
標準偏差(n=5)で表す。星印及び短剣符は、パネルaお
よびc、またはそれぞれ対応する時間でのパネルaからc
との比較によって得た有意差(P<0.01)を示す。
【0097】図5の(B)では、500 ng/g体重のLPS処
理24時間後のマウス肝臓の CD14 mRNA量をRT−PCR
によって評価し、LPS処理しない対象群と比較した。各
群(n=5)のうちの2匹のマウスの結果を示した。 レーン1および2, 非処理の対照; レーン3および4, LPS処理:
【0098】図5の(C)では、マウスを、偽手術また
は部分肝切除の24時間前に、無処理または50もしくは50
0ng/g体重のLPSで処理し、その後何もせずにおくか、ま
たは部分肝切除の2および24時間後に5ng/g体重のTNF-α
を注射した。マウスを偽手術または部分肝切除の48時間
後に屠殺した。肝臓のPCNA標識率は前記の通り測定し
た。 第1列, 生理食塩水+ 部分肝切除; 第2列, LPS(50 ng/g体重)+ 部分肝切除; 第3列, LPS (500 ng/g体重)+ 部分肝切除; 第4列, 部分肝切除 + rTNF-α(5 ng/g 体重); 第5列, LPS (50 ng/g体重)+ 部分肝切除 + rTNF-α
(5 ng/g体重):数値は平均±標準誤差(n=5)で表
す。星印は、第1, 2および4列との比較によって得た有
意差(P<0.01)を示す。
【0099】(結果)実施例5では上記したTGF-β生成
経路が、実施例1で述べた肝再生障害のin vivoモデル
に関与するかかどうかを調べた。先ず、血清TNF-α量の
変化を測定した(図5A)。生理食塩水で前処理したマ
ウスでは、偽手術を施した群(パネルa)および部分肝
切除を施した群(パネルc)ともに生理食塩水の注射後
に、わずかな増加しか観察されなかった。LPS(500 ng/
g体重)での前処理+偽手術したマウスでは、LPS注射2
時間後に顕著な一時的血清TNF-α量の増加が観察された
が、偽手術後には変化は見られなかった(パネルb)。
一方、LPSでの前処理+部分肝切除を行ったマウスで
は、二相性の増加が観察された。即ち、LPS前投与2時
間後にみられる顕著な一時的な増加と、部分肝切除2時
間後からみられる中程度で持続的な増加である(パネル
d)。 同時にAPAAを注射しても、これらの血清TNF-α量
の増加には影響を与えなかった(パネルe)。LPSで前処
理したマウスでは、部分肝切除時に、肝臓のCD14 (LPS
受容体の1つ)mRNA量が7倍にまで上昇し、クッパー細
胞が活性化されていたことが推測される(図5B)。
【0100】図5Cに示した通り、高用量(500ng/g体
重)のLPS前投与+部分肝切除群(第3列)と、低用量
(50ng/g体重)のLPS前投与+部分肝切除後のTNF-α投
与群(第5列)とでは、同程度のPCNA標識率の抑制が観
察された。血清TNF-αの二相性の増加を誘導しない低用
量のLPS (LPS前投与の2時間後の血清TNF-α量は35±5
pmol/L、部分肝切除24時間後の血清TNF-α量は2.5±0.5
pmol/L)+部分肝切除、または、部分肝切除+TNF-α
の後投与では、いずれもPCNA標識率に影響を与えなかっ
た(第2列および第4列)。
【0101】実施例6:TNF-αまたは血漿カリクレイン
活性の阻害によるLPS前投与+部分肝切除マウスにおけ
る肝再生不全の改善 (方法)各群5匹のC3H/HeNマウス(5週齢、日本クレ
ア社製)に対して、部分肝切除24時間前に体重量グラ
ムあたり500ngの大腸菌0111:B4由来LPS(シグマ社製)
を50μlの生理的食塩水に溶かして腹腔内投与した。LPS
投与2時間前と部分肝切除2時間前に第1群では50μlの生
理的食塩水、第2群では50μlの生理的食塩水に溶かした
体重量グラムあたり12.5μgの抗ヒトTNF−α中和抗
体(ジェンザイム社製)、第3群では50μlの生理的食塩
水に溶かした体重量グラムあたり12.5μgの抗ヒト血漿
カリクレイン中和抗体(エンザイムリサーチラボラトリ
ー社製)、第4群では50μlの生理的食塩水に溶かした体
重量グラムあたり15μgのAPAA(小野薬品;選択的血漿
カリクレイン阻害剤)を尾静脈より投与する。67%部分
肝切除はHiggins & Andersonの方法に従って行った。部
分肝切除48時間後に全ての群のマウスをエーテル麻酔下
において下大静脈より採血することにより屠殺し、肝臓
を摘出した。肝臓の一部は摘出後すぐに液体窒素にて凍
結し、残りは10%ホルマリン液に一晩浸して固定した後
パラフィンに包埋後、厚さ5μmの切片を作製した。
【0102】図6の(A)では、液体窒素に凍らせた組
織の一部を肝組織中の血漿カリクレインの定量に用い
た。肝組織1gを氷水で冷やしながら1mlの0.5%トライト
ンX-100含有トリスバッファー、pH8(抽出バッファ
ー)中でホモジナイズした後、105,000×g、1時間、4℃
で超遠心し、上澄みを肝抽出液として回収した。抽出バ
ッファーに肝抽出液10μlと血漿カリクレインの蛍光合
成基質 Z-Phe-Arg-MCA(ペプチド研究所社製)を終濃度
500μMになるように加え、最終液量をバッファーで200
μlとし37℃でインキュベーションした。5分毎に反応液
の蛍光強度を測定し、反応時間5分から10分の間に得ら
れる蛍光強度の増加をヒト血漿カリクレイン精製標品
(シグマ社製)と比較することにより活性値を決定し、
肝抽出液の総タンパク量1グラムあたりの活性値(ミリ
単位mU)として表記した。タンパク定量にはピアス社の
BCA測定法を用いた。5匹のマウスについて得られた平均
値±SDをプロットした。
【0103】図6の(B)では、液体窒素で凍結した組
織の一部を肝組織中のTGF−β含有量の測定に用いた。
肝組織1gを1mlの95%エタノール−0.2M塩酸溶液中で4℃
で36時間攪拌した後、4℃で10,000×gで10分間遠心し、
上澄みを回収して凍結乾燥した。これを1mlの0.1%ウシ
血清アルブミン含有4mM塩酸に軽く超音波をかけながら
溶解した後、フィルター減菌し、酸エタノール肝抽出液
を調製した。抽出液中のTGF−β濃度は、TGF−βがミン
ク肺上皮細胞のチミジン取り込みを抑制する性質を利用
して測定した。酸エタノール肝抽出液を中和後、96穴に
播いたミンク肺上皮細胞とダルベッコ改変倍地中で22時
間インキュベーションした。その後、[3H]標識チミジン
と4時間インキュベーションした後、メタノール酢酸で
固定した細胞をトリプシン処理して1%SDS溶液に溶解
し、溶液中の放射活性を液体シンチレーションカウンタ
ー(パッカード社製)で計測することにより細胞に取り
込まれたチミジンの量を測定した。ヒト組み換えTGF−
β1(R&D社製)を用いたチミジン取り込み抑制の標準曲
線との比較から酸エタノール肝抽出液中のTGF−β量を
決定した。各サンプルに抗TGF−β中和抗体(R&D社製)
を添加し、中和抗体±の差をTGF−β量とした。TGF−β
量は肝組織タンパク質ミリグラム当たりのピコモルで表
示した。肝組織タンパク定量用の抽出液は、肝組織1gを
0.8%塩化ナトリウム-1.0%トライトンX-100含有50mMイミ
ダゾールバッファー、pH7.4、1mlでホモジナイズした
後、細胞破砕断片除去剤(シグマ社製)を加え、4℃で1
0,000×gで10分間遠心して得た上澄みを用いた。タンパ
ク定量にはピアス社のBCA測定法を用いた。5匹のマウス
について得られた値の平均値±SDをプロットした。
【0104】図6の(C)では、肝組織切片をGreenwel
らの方法に従いPCNAで染色した後、PCNA陽性肝細胞を数
え、総肝細胞数に対する%で表した。マウス1匹につい
て1切片につき5つの異なる領域について得られた値の平
均を計算し、各群あたりマウス5匹の群平均を計算して
平均値±SEMをプロットした。
【0105】(結果)肝組織血漿カリクレイン活性量の
変化を図6のA、肝組織TGF−β含有量の変化を図6の
B、PCNA陽性肝細胞数の変化を図6のCに示す。星印
は、生理的食塩水を投与した第1群、並びに無免疫抗体
と投与した第4群と比べた場合の統計的有意差(p<0.0
1)を表す。また、点線は、LPSを含まない生理的食塩水
を部分肝切除2時間前に投与したマウスの結果(n=5)
を示す。
【0106】無処理正常マウスの肝組織血漿カリクレイ
ン活性値は20±3mU/gタンパク、肝組織TGF−β含有量は
0.9±0.1pmol/mg タンパク、PCNA陽性肝細胞数は0.7±
0.6%(いずれもn=5)である。部分肝切除を行うと、点
線に示すように部分肝切除2時間前に生理的食塩水を投
与した対照群においては部分肝切除48時間後の肝組織血
漿カリクレイン活性値は16±2mU/gタンパク、肝組織TGF
−β含有量は1.3±0.2pmol/mgタンパク、PCNA陽性肝細
胞数は50±5%(いずれもn=5)となり、部分肝切除で残
った細胞が活発に増殖をしていること、すなわち肝再生
が進んでいることが分かる。これに対して、部分肝切除
2時間前にLPSを投与した群(第1群)では肝組織血漿カ
リクレイン活性値並びに肝組織TGF−β含有量が顕著に
増加し、肝再生が抑えられていることが分かる。この肝
組織血漿カリクレイン活性値並びに肝組織TGF−β含有
量の増加は、抗TNF−α中和抗体により、LPSによって活
性化された肝クッパー細胞から放出されたTNF−αが肝
星細胞に作用して、その細胞表面血漿カリクレイン活性
が亢進するのを抑えたり(第2群)、直接、血漿カリク
レインの活性を中和抗体(第3群)や低分子阻害剤(第5
群)で抑えてやると見られなくなり、肝組織血漿カリク
レイン活性値並びに肝組織TGF−β含有量は対照群とほ
ぼ同じ値にまで落ち、肝再生が80%まで復活した。無免
疫抗体にはこのような効果は見られなかった(第4
群)。これらの結果から、内毒素の刺激で肝クッパー細
胞から放出されたTNF−αの刺激を受けた肝星細胞で
は、細胞表面において血漿カリクレインが潜在型TGF−
βを限定分解し活性化し、生成した活性型TGF−βが肝
細胞の再生を抑制しており、血漿カリクレインの中和抗
体によって血漿カリクレインによるTGF−β活性化反応
を抑制してやると、肝再生不全を防ぐことができること
がわかった。
【0107】(実施例のまとめ)実施例1〜6の結果よ
り、LPSを前投与すると、部分肝切除後の肝臓においてT
GF-βが誘導される結果、マウスの肝再生が阻害される
というモデルが提唱される(図7)。図7は、LPSがク
ッパー細胞を刺激してTNF-αを分泌させ(1)、TNF-α
が肝星細胞の細胞表面の血漿カリクレイン活性を増加さ
せ(2)、血漿カリクレインが肝星細胞表面において潜
在型TGF-βの限定分解による活性化を引き起こし
(3)、その結果生じた活性型TGF-βが肝実質細胞の増
殖を抑制し、肝再生障害を起こす(4)というモデルを
示す。
【0108】
【発明の効果】内毒素投与によって引き起こされるマウ
ス肝再生不全モデルにおいて、肝再生不全は肝星細胞が
産生するTGF−βが原因であることを見出し、肝星細胞
におけるTGF−β産生の分子機構を調べた。その結果、
内毒素の刺激で肝クッパ−細胞から放出されたTNF−α
の刺激を受けた肝星細胞では、細胞表面において血漿カ
リクレインが潜在型TGF−βを限定分解し活性化する結
果、活性型TGF−βが生成し、肝細胞の再生が抑制され
ることが本発明により判明した。
【0109】この知見に基づき肝産生不全の原因因子で
あるTGF−βの産生を止める方法として、血漿カリクレ
インの中和抗体をマウスに投与し血漿カリクレインによ
るTGF−β活性化反応を抑制することにより、内毒素投
与で誘導されるTGF−βの産生をブロックし、肝再生不
全を防げることを本発明により実証した。
【0110】本発明の抗体医薬は、低分子プロテアーゼ
阻害剤に比べて標的特異性の点で格段に優れており、副
作用が少ないことが期待できる。また、本発明の抗体医
薬は、遺伝子治療に比べて、汎用性、経済性、安全性と
いう観点で優れている。
【0111】
【配列表】 SEQUENCE LISTING <110> RIKEN et al. <120> An agent for promoting liver generation <130> A21066A <160> 22
【0112】 <210> 1 <211> 20 <212> DNA <213> Artificial Sequence <220> <223> Description of Artificial Sequence: Synthetic DNA <400> 1 aacctggtgt ctggattctc 20
【0113】 <210> 2 <211> 20 <212> DNA <213> Artificial Sequence <220> <223> Description of Artificial Sequence: Synthetic DNA <400> 2 tttacacccc tctgccttgc 20
【0114】 <210> 3 <211> 20 <212> DNA <213> Artificial Sequence <220> <223> Description of Artificial Sequence: Synthetic DNA <400> 3 gaaggacgaa ccctacacca 20
【0115】 <210> 4 <211> 20 <212> DNA <213> Artificial Sequence <220> <223> Description of Artificial Sequence: Synthetic DNA <400> 4 cagggaggca atgaggataa 20
【0116】 <210> 5 <211> 20 <212> DNA <213> Artificial Sequence <220> <223> Description of Artificial Sequence: Synthetic DNA <400> 5 ggactctcca cctgcaagac 20
【0117】 <210> 6 <211> 20 <212> DNA <213> Artificial Sequence <220> <223> Description of Artificial Sequence: Synthetic DNA <400> 6 ctctgcaggc gcagctctg 19
【0118】 <210> 7 <211> 20 <212> DNA <213> Artificial Sequence <220> <223> Description of Artificial Sequence: Synthetic DNA <400> 7 ctgtccaaac taaggctcgc 20
【0119】 <210> 8 <211> 20 <212> DNA <213> Artificial Sequence <220> <223> Description of Artificial Sequence: Synthetic DNA <400> 8 cgtcaaaaga cagccactca 20
【0120】 <210> 9 <211> 20 <212> DNA <213> Artificial Sequence <220> <223> Description of Artificial Sequence: Synthetic DNA <400> 9 ttcgcaggta tcgatggcac 20
【0121】 <210> 10 <211> 20 <212> DNA <213> Artificial Sequence <220> <223> Description of Artificial Sequence: Synthetic DNA <400> 10 ggcgaaggca ggaattatgc 20
【0122】 <210> 11 <211> 20 <212> DNA <213> Artificial Sequence <220> <223> Description of Artificial Sequence: Synthetic DNA <400> 11 gaccccacat ctcctgctaa 20
【0123】 <210> 12 <211> 20 <212> DNA <213> Artificial Sequence <220> <223> Description of Artificial Sequence: Synthetic DNA <400> 12 ttcgatcttg ggcgtatttc 20
【0124】 <210> 13 <211> 18 <212> DNA <213> Artificial Sequence <220> <223> Description of Artificial Sequence: Synthetic DNA <400> 13 ccagctccaa gcgcacag 18
【0125】 <210> 14 <211> 18 <212> DNA <213> Artificial Sequence <220> <223> Description of Artificial Sequence: Synthetic DNA <400> 14 caacagccac tcgcgcac 18
【0126】 <210> 15 <211> 19 <212> DNA <213> Artificial Sequence <220> <223> Description of Artificial Sequence: Synthetic DNA <400> 15 gtagagcaca tagcaagca 19
【0127】 <210> 16 <211> 20 <212> DNA <213> Artificial Sequence <220> <223> Description of Artificial Sequence: Synthetic DNA <400> 16 ctctgggttc agggtgttgt 20
【0128】 <210> 17 <211> 20 <212> DNA <213> Artificial Sequence <220> <223> Description of Artificial Sequence: Synthetic DNA <400> 17 ctgatctcag ccctctgtcc 20
【0129】 <210> 18 <211> 21 <212> DNA <213> Artificial Sequence <220> <223> Description of Artificial Sequence: Synthetic DNA <400> 18 gcaaaagcca gagttcctga c 21
【0130】 <210> 19 <211> 20 <212> DNA <213> Artificial Sequence <220> <223> Description of Artificial Sequence: Synthetic DNA <400> 19 gctgagaatg ggaagctggt 20
【0131】 <210> 20 <211> 20 <212> DNA <213> Artificial Sequence <220> <223> Description of Artificial Sequence: Synthetic DNA <400> 20 ccttggcagc accagtggat 20
【0132】 <210> 21 <211> 20 <212> DNA <213> Artificial Sequence <220> <223> Description of Artificial Sequence: Synthetic DNA <400> 21 cccactaaca tcaaatgggg 20
【0133】 <210> 22 <211> 20 <212> DNA <213> Artificial Sequence <220> <223> Description of Artificial Sequence: Synthetic DNA <400> 22 acacattggg ggtaggaaca 20
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、LPS前投与によるマウスにおけるTGF-β
を介した部分肝切除後の肝再生抑制の誘導を示す。
【図2】図2は、LPSによる肝星細胞/クッパー細胞混合
培養におけるTNF-αを介した潜在型TGF-βの産生および
活性化の誘導を示す。
【図3】図3は、TNF-αによる血漿カリクレインを介し
た潜在型TGF-βの活性化の誘導を示す。
【図4】図4は、TNF-αによる肝星細胞表面血漿カリク
レイン活性の増加を示す。
【図5】図5は、LPS前投与+部分肝切除後の、マウス
血清中のTNF-α量の二相性の増加、ならびに低濃度LPS
前投与+部分肝切除後のTNF-α投与による肝再生抑制の
誘導を示す。
【図6】図6は、TNF-αまたは血漿カリクレイン活性の
阻害によるLPS前投与+部分肝切除モデルマウスにおけ
る肝再生の回復を示す。
【図7】図7は、肝臓におけるLPSによるクッパー細胞
刺激から始まる潜在型TGF-βの血漿カリクレイン依存的
活性化の概略図を示す。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 秋田 國治 岐阜県岐阜市平和通1の10 シャルマン平 和1001号 (72)発明者 奥野 正隆 岐阜県各務原市那加不動丘2の19 (72)発明者 森脇 久隆 岐阜県岐阜市神楽町11 Fターム(参考) 4C085 AA13 AA14 BB41 BB43 BB44 CC32 DD33 DD34 DD35 DD86 EE01 FF02 FF03 FF20 GG01

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 抗カリクレイン抗体を有効成分として含
    む、肝再生促進剤。
  2. 【請求項2】 抗カリクレイン抗体を有効成分として含
    む、肝疾患の治療及び/又は予防のための薬剤。
  3. 【請求項3】 TGF−βの作用に起因する肝疾患の治療
    及び/又は予防のために使用する、請求項2に記載の薬
    剤。
  4. 【請求項4】 肝線維症、肝硬変、肝炎、又は肝再生不
    全の治療及び/又は予防のために使用する、請求項2又
    は3に記載の薬剤。
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