JP2003245672A - ナトリウム溶液の電解装置及びそれを用いたナトリウム回収システム - Google Patents

ナトリウム溶液の電解装置及びそれを用いたナトリウム回収システム

Info

Publication number
JP2003245672A
JP2003245672A JP2002047996A JP2002047996A JP2003245672A JP 2003245672 A JP2003245672 A JP 2003245672A JP 2002047996 A JP2002047996 A JP 2002047996A JP 2002047996 A JP2002047996 A JP 2002047996A JP 2003245672 A JP2003245672 A JP 2003245672A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
sodium
solid electrolyte
sodium solution
waste liquid
ceramic diaphragm
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP2002047996A
Other languages
English (en)
Other versions
JP3702234B2 (ja
Inventor
Tatsuro Harada
達朗 原田
Kobo Sugino
弘法 杉野
Tomoyuki Koyanagi
智之 小柳
Yoichi Shimizu
陽一 清水
Satoko Takase
聡子 高瀬
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Nishinippon Environmental Energy Co Inc
Original Assignee
Nishinippon Environmental Energy Co Inc
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Nishinippon Environmental Energy Co Inc filed Critical Nishinippon Environmental Energy Co Inc
Priority to JP2002047996A priority Critical patent/JP3702234B2/ja
Publication of JP2003245672A publication Critical patent/JP2003245672A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP3702234B2 publication Critical patent/JP3702234B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Fee Related legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Separation Using Semi-Permeable Membranes (AREA)
  • Water Treatment By Electricity Or Magnetism (AREA)
  • Compositions Of Oxide Ceramics (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】 化学プラントで発生したNa含有廃液をニ次
廃棄物を発生することなく、ナトリウムイオンのみを効
率的に回収処理することができ省資源性に優れると共
に、酸液中等における化学安定性と耐久性に優れ、水質
汚染を防止し低公害性に優れたナトリウム回収システム
の提供。 【解決手段】 ナトリウム回収システムは、ナトリウム
イオン伝導性の固体電解質で形成されたセラミック隔膜
12と、セラミック隔膜12の両側にそれぞれ配置され
た陽極13及び多孔質陰極14と、セラミック隔膜12
を介して陽極室と陰極室とに区画された電解セルとを有
した電解装置10とで構成されている。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は化学プラント等で発
生する廃液中のNaイオンを選択的に回収して、再利用
することのできるナトリウム溶液の電解装置及びそれを
用いたナトリウム回収システムに関する。
【0002】
【従来の技術】石炭火力発電所で用いられる燃焼灰回収
処理装置や廃液処理設備、メッキ工場等の化学プラント
ではその化学反応に伴って大量のNaイオン含有廃液が
発生する。このような廃液中のナトリウム等の有用成分
を回収するための方法には、薬品や加熱手段を用いて沈
殿除去させる沈殿方法や、イオン交換樹脂等を用いてイ
オン成分を除去する電解法等がある。例えば、特開平1
1−99391号公報(以下イ号公報という)には、電
解槽内に陽極と陰極を設け、この両極間に強酸性陽イオ
ン交換膜からなる固体電解質を配置した陽極室と陰極室
を有する電気分解装置を用い、前記陽極室に塩化物イオ
ンを含む原液を流入し、電気分解処理により前記塩化物
イオンを塩素ガスとし、前記電気分解処理された水を前
記陰極室を通過して流出させるようにした廃液中の塩化
物イオンの除去方法が開示されている。一方、Naイオ
ン伝導性の固体電解質として、NASICON系化合物
(Na 1+xZr2Six3-x12系)や、ベータアルミナ
系化合物が開発され、このような固体電解質に関連し
て、例えば以下のような技術が知られている。特開20
01−281205号公報(以下ロ号公報という)に
は、検知極と対極とがそれぞれ固体電解質に接して設け
られた二酸化炭素センサにおいて、固体電解質がNa
1+xZr2Six3-x12であるセンサが記載されてい
る。特開平6−293554号公報(以下ハ号公報とい
う)には、酸化ナトリウムと酸化アルミニウムを含有す
るベ−タアルミナの原料粉を焼成してなり、原料粉に粒
径制御剤と種結晶を分散混合して焼結させたβ"−アル
ミナ焼結体の製法が記載されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記従
来の技術は以下のような課題を有していた。 (1)沈殿法では薬品を用いるためにニ次廃棄物を発生
して新たな処理が必要となるという課題があった。 (2)従来のイオン交換樹脂を用いる方法では樹脂自体
の耐久性が乏しいために固形分を含む大量の廃液処理の
場合には適用が難しいという課題があった。 (3)イ号公報に記載の強酸性陽イオン交換膜からなる
固体電解質を配置した電気分解装置の場合は、塩素イオ
ンの除去を目的としたもので、このイオン交換膜がナト
リウム等の特定イオン種のみを選択的に膜内を通過させ
る能力に乏しいために、Naイオンに適用した場合にこ
れを効率的に除去することが困難であるという課題があ
った。 (4)従来のイオン交換膜等の隔膜は酸液中等における
化学安定性に乏しいため、このような環境では安定して
用いることができないという課題があった。 (5)ロ号公報に記載のNASICON系化合物は、酸
液中等においてはナトリウムが溶出し易く化学安定性に
乏しいため、イオン伝導性が低下し電解装置の隔膜とし
て安定して用いることができないという課題があった。 (6)NASICON系化合物が、Na1+xZr2Six
3-x12で表されるパラメータxで規定される不定比
性の化合物であるため、多種の固相が共存してイオン伝
導性等の特性を規定値に維持させることが困難であり、
固体電解質を安定して製造するのが困難であるという課
題があった。 (7)ハ号公報に記載のベータアルミナ系化合物は、酸
化アルミニウムをベースとして原料粉の焼結処理を行う
ので、焼結温度を1500℃程度の高温に設定しなけれ
ばならず、面積が大きく均一性が要求される隔膜の製造
が困難であるために、省エネルギー性や経済性に乏しい
という課題があった。 (8)酸化アルミニウム等の原料粉に粒径制御剤や種結
晶を分散混合させるので、混合の際のばらつきが大き
く、所定の導電特性や強度等の特性を備えた固体電解質
の製造が困難であるという課題があった。 (9)ベータアルミナ系化合物では、水に対する安定性
に乏しいためガスセンサ等に用いる場合、使用条件が限
定され、耐久性に欠けるという課題があった。
【0004】本発明は上記課題を解決するためになされ
たもので、ニ次廃棄物を発生することなく、Naイオン
のみを効率的に除去することができ、酸液中等における
化学安定性と耐久性に優れたナトリウム溶液の電解装置
を提供し、固形分を含む大量の廃液から有用なナトリウ
ムを効率的に回収処理することができるナトリウム溶液
の電解装置を用いたナトリウム回収システムを提供する
ことを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】請求項1に記載のナトリ
ウム溶液の電解装置は、Naイオン伝導性の固体電解質
で形成されたセラミック隔膜と、前記セラミック隔膜の
両側にそれぞれ配置された陽極及び多孔質陰極と、前記
セラミック隔膜を介して陽極室と陰極室とに区画された
電解セルとを有して構成されている。この構成によって
以下の作用が得られる。 (a)電解セルの陽極室と陰極室を仕切るセラミック隔
壁がNaイオン伝導性の固体電解質で形成されているの
で、両極間に所定の電圧を印加することによって陽極室
内の処理液中のNaイオンを選択的に陽極室側から陰極
室側に移動させることができ、二次廃棄物を発生するこ
となく効率的に陰極室におけるナトリウム濃度を高める
ことができる。 (b)機械的強度と化学的安定性に優れたセラミック隔
壁を用いるので、化学プラント等で発生する廃液等を大
量に処理することができ、この電解装置で回収されたナ
トリウム分を化学プラントで再利用することで、全体の
原料歩留まりを著しく向上させることができる。 (c)透液性に優れた多孔質電極を用いことができるの
で、電解セルに入れられた処理液が多孔質電極内を透過
して固体電解質の表面に容易に到達でき、電解処理を効
率的に行うことができる。 (d)セラミック隔膜をゾルゲル法や電気泳動法等の他
に乾式プロセスを用いて作製することもできるので、広
い面積の隔膜でも安価に一体成形により形成でき、経済
性に優れる。 (e)制御性の高い材料を用いるので、メンテナンス費
用の軽減が図られる。
【0006】ここで、電解装置は、水酸化ナトリウム等
の化学製品を製造する化学プラントから発生するナトリ
ウム分を含む中間生成物や廃液を電解処理する装置であ
る。Naイオン伝導性の固体電解質としては、NASI
CON系酸化物や、ベータアルミナ系酸化物の他に、一
般式Na5XSi412で表される希土類元素(X)含有
系酸化物等のセラミック質のものが適用できる。固体電
解質からなるセラミック隔膜は、電解セル内を仕切るよ
うに全体が板状等に形成されその厚み方向に所定の電圧
をかけることにより、Naイオンのみを厚み方向に移動
させることができる。多孔質陰極は、セラミック隔膜の
表面に当接して配置され、陰極室内の液が透液性の多孔
質陰極を介してセラミック隔膜に接触できるようになっ
ている。また、陽極を同様に透液性の多孔質電極とし
て、これをセラミック隔膜の表面に当接して配置するこ
ともできる。多孔質電極としては、陽極の場合はメッシ
ュ状白金被覆チタン電極や貴金属の他、酸化物電極等
を、また、陰極の場合はメッシュ状SUS電極やカーボ
ン、酸化物電極等のものを用いることができる。
【0007】請求項2に記載のナトリウム溶液の電解装
置は、請求項1に記載の発明において、前記固体電解質
がDy、Gd、Y、Sm等の希土類元素(X)を含みそ
の結晶相がNa5XSi412で表される酸化物焼結体か
らなるように構成されている。この構成によって、請求
項1の作用の他、以下の作用が得られる。 (a)固体電解質がNa5XSi412で表される結晶相
を有するので、その相中にNaイオンを効果的に拡散さ
せるための網目状構造と高い分極率とを有した骨格を形
成させることができ、Naイオンの輸送効率を高めるこ
とができ、処理の生産性に優れている。 (b)固体電解質がその界面においてイオン分離再生反
応に対する高い触媒活性を有するので、処理液が接する
セラミック隔膜面でのNaイオンの還元反応を迅速に行
うことができる。 (c)Dy、Gd、Y、Sm等の希土類元素(X)を含
有させているので、Naイオンが占有できる空位置を多
数存在させ、その位置が占有、非占有のいずれのときも
ほぼ同程度の平坦なポテンシャルを維持させることがで
き、イオン伝導性が高く、電解効率や生産性に優れる。 (d)固体電解質が全体に強固なイオン結合を形成し
て、結晶相内にNaイオンを保持できるので、酸処理等
に際してナトリウムが外部に溶出するのを抑制して化学
的安定性を高めることができ、耐久性に優れている。
【0008】ここで、希土類元素(X)としては、ジス
プロシウム(Dy)、ガドリウム(Gd)、イットリウ
ム(Y)、サマリウム(Sm)の他に、スカンジウム
(Sc)、ランタン(La)、セリウム(Ce)、プラ
セオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、プロメチウム
(Pm)、ユウロピウム(Eu)、テルビウム(T
b)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリ
ウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、ルテチウム
(Lu)等が含まれる。これら希土類元素(X)を保持
し、Na5XSi412で表される酸化物焼結体の結晶相
とすることによって、Naイオンが占有できる空位置を
多数効果的に配置することができる。また、製造の際の
焼結性等や組織制御性を高めて、構造強度や電気特性を
所定のレベルに保持できる。Na5XSi412は、各原
子がNASICONのように配列した六方晶の結晶系に
属し、このような結晶相をとることによって、Naイオ
ンが移動し易い平坦なポテンシャルを有したトンネル構
造を形成させることができ、また、Na-βアルミナの
ようにイオン種による異方性がすくない点で有利であ
る。
【0009】請求項3に記載のナトリウム溶液の電解装
置は、請求項2に記載の発明において、前記希土類元素
(X)がDyであるように構成されている。この構成に
よって、請求項2の作用の他、以下の作用が得られる。 (a)結晶相がNa5DySi412の三次元網目構造と
なるので、特に低温でのイオン伝導性を高めることがで
きる。 (b)ジスプロシウムを用いるので、強固なイオン性化
合物を形成させ、Naイオンをその結晶相中に保持させ
て高い化学的安定性を維持でき、電解セル用隔壁に安定
して適用でき、汎用性をさらに高めることができる。 ここで、ジスプロシウムは酸化数が3の希土類元素であ
って、ホルミウム化合物と共に希土類元素化合物中で最
も大きな常磁性を示す元素であり、これをNa 5DyS
412の形で用いることにより高導電性、高安定性と
なる特長を有している。
【0010】請求項4に記載のナトリウム溶液の電解装
置は、請求項1乃至3の内いずれか1項に記載の発明に
おいて、前記固体電解質の室温における電気伝導度が1
-3〜10-2S・cm-1であるように構成されている。
この構成によって、請求項1乃至3の内いずれか1項の
作用の他、以下の作用が得られる。 (a)電気伝導度が特定範囲に規定されるので、電解セ
ルのセラミック隔膜としの稼動効率を高めて、工場廃液
等の大量処理が可能になる。 (b)ガスセンサ等の化学センサへの応用が期待でき
る。
【0011】電気伝導度(イオン伝導度)は、例えば円
盤状に作製された固体電解質を室温(15〜30℃)下
に保持して、交流インピーダンス法(50Hz〜5MH
z)を適用して測定することができる。固体電解質の電
気伝導度は、適用される電解セルの種類や大きさの使用
条件等にもより変動するが、3×10-3S・cm-1より
小さくなるにつれ、イオン透過性が不足して実使用が困
難になる傾向が現れ、逆に電気伝導度が7×10-3S・
cm-1を超えるにつれ、焼結体の強度等が劣化したり、
電気伝導度のばらつきが大きくなったりするような傾向
が現れ、これらの傾向は10-3S・cm-1より小さくな
るか、10-2S・cm-1を超えるとさらに顕著になり好
ましくない。
【0012】請求項5に記載のナトリウム溶液の電解装
置は、請求項1乃至4の内いずれか1項に記載の発明に
おいて、前記固体電解質の酸溶出試験において、前記固
体電解質の0.0l規定塩酸中30分浸漬後におけるナ
トリウム濃度の増分が0.05mol・dm-3以下であ
るように構成されている。この構成によって、請求項1
乃至4の内いずれか1項の作用の他、以下の作用が得ら
れる。 (a)酸化物焼結体の酸中におけるナトリウム濃度の増
分が特定値以下に設定されているので、腐蝕性の水溶液
や酸液等にさられされる電解セルにおけるイオンスプリ
ッティング用隔膜としての耐久性や安定性を高めて長期
に渡って用いることができる。 (b)耐酸性が強いので、NOx、SOx、CO2や、H
Cl等の酸性ガスセンサへの応用が期待できる。
【0013】ここで、酸溶出試験は、例えば直径が約1
0mm、厚さが約1mmの円盤状等に形成した固体電解
質の測定用試料を、温度20℃で0.01規定の塩酸
0.1リットル中に浸漬させた状態に30分保持して、
浸漬処理前後のNaイオンの増分を測定することにより
行われる。ナトリウム濃度の増分が0.05mol・d
-3よりも大きくなると、温度や酸液濃度等の環境条件
にもより変動するが、Na5DySi412としての結晶
相を維持させるのが困難となり、セラミック隔膜として
必要なイオン伝導性や強度等が著しく低下するので好ま
しくない。
【0014】請求項6に記載のナトリウム溶液の電解装
置は、請求項1乃至5の内いずれか1項に記載の発明に
おいて、前記固体電解質の密度が、その理論密度に対し
て90%以上であるように構成されている。この構成に
よって、請求項1乃至5の内いずれか1項の作用の他、
以下の作用が得られる。 (a)酸化物焼結体の密度を理論密度に対して90%以
上にしているので、機械的強度が高められ廃水処理装置
等のイオンスプリッティング用隔膜としての耐久性をさ
らに向上させることができる。 (b)高密度化しているので、イオン伝導性のばらつき
やが少なく固体電解質を用いた電解装置を効率的に作動
させることができる。
【0015】ここで、酸化物焼結体の理論密度は、Na
5XSi412で表される各結晶相の単位格子の大きさよ
り計算される値である。酸化物焼結体の密度は、試料の
見掛け容積とその質量から計算する方法や、比重が既知
の液中に試料を浮沈させる重液法等を適用して求めるこ
とができる。酸化物焼結体の密度が理論密度に対して9
0%よりも小さくなると、機械的強度が不足して、イオ
ンスプリッティング用隔膜等として必要な耐久性が低下
して処理効率やメンテナンス性を悪化させるので好まし
くない。
【0016】請求項7に記載のナトリウム溶液の電解装
置を用いたナトリウム回収システムは、請求項1乃至6
の内いずれか1項に記載のナトリウム溶液の電解装置
と、前記電解装置の前記陽極室に供給され化学プラント
から排出されたNaイオンを含むNa含有廃液を貯留す
るNa含有廃液タンクと、前記電解装置の前記陰極室か
らナトリウム濃度が高められた処理液を回収して前記化
学プラントに供給する配管系と、を備えて構成されてい
る。この構成によって、以下の作用が得られる。 (a)化学プラントで発生したNa含有廃液を廃液タン
クに貯留してから、薬品を用いることなく電解装置を用
いてNaイオンのみを効率的に回収して、配管系を介し
て化学プラントに供給できる。 (b)二次廃棄物の発生を抑制でき、プラント全体の生
産性や省エネルギー性、プラント周辺への環境保持性に
優れている。 (c)Naイオン伝導性の固体電解質からなるセラミッ
ク隔膜が、処理液中等における化学安定性と耐久性に優
れるので、固形分を含む大量の廃液からナトリウムを効
率的に回収処理することができる。 ここで、ナトリウム回収システムが適用される化学プラ
ントとしては、各種化学工場、メッキ工場、発電所等が
あげられる。ナトリウム回収システムにおいては、プラ
ント、廃液タンク、電解装置及び配管系からなるシステ
ムをポンプ等の駆動制御系を用いて連続運転させたり、
あるいは廃液タンクに所定量の廃液が溜まった時点で所
定量づつ電解装置で回分処理したりすることもできる。
なお、廃液の処理量が大量になる場合には、複数の電解
セルを並列に配置した電解装置とすることもできる。
【0017】
【発明の実施の形態】(実施の形態1)本発明の実施の
形態1に係るナトリウム溶液の電解装置について説明す
る。図1は実施の形態1のナトリウム溶液の電解装置の
説明図である。図1において、10は化学プラント等の
Naイオンを含むNa含有廃水の処理を行うための電解
装置、11は電解装置10の電解セル、12は電解セル
11の中央部に陽極室11aと陰極室11bとを区画し
配設されその結晶相がNa5XSi412(XがPr、N
d、Sm、Gd、Dyのいずれか1種以上からなる)で
表されるNaイオン伝導性の固体電解質で平板状に形成
されたセラミック隔膜、13はセラミック隔膜12の陽
極室11a内に配置された白金被覆チタン電極やカーボ
ン等で形成された陽極、14はセラミック隔膜12の陰
極室11b側の面に当接して配置されたメッシュ状のス
テンレス鋼(SUS)やセラミックス等からなる多孔質
陰極、15は陽極13及び多孔質陰極間に電圧を印加す
るための電源部である。
【0018】化学プラントは、石炭火力発電所で用いら
れる燃焼灰回収処理装置や廃液処理設備、化学工場やメ
ッキ工場等のナトリウム含有廃液を発生するプラントで
ある。電解セル11は、Na含有廃液の発生量に応じ
て、複数並列又は直列に配置することができる。なお、
複数の電解セル11は、それぞれの陽極室11aに流す
供給処理液及び陰極室11bから取り出す電解処理液の
流量や、電極間の電圧、液温、化学プラントから供給さ
れる廃液処理量等の運転条件を制御装置を用いて個別に
制御され、連続的または断続的に運転されるようになっ
ている。多孔質陰極14は網目状の空隙を有して形成さ
れ、多孔質陰極14を通って処理液が流入して、当接さ
れたセラミック隔膜12に処理液が触れるようになって
いる。こうして、セラミック隔膜12の表面で電気化学
反応を生起させると共に、Na5XSi412の結晶表面
を有効な反応サイトとして触媒活性を高めて、大量の廃
液処理を行うことができる。
【0019】Naイオン伝導性の固体電解質は、その結
晶相が一般式Na5XSi412で表される希土類元素
(X)を含有した酸化物焼結体からなり、室温における
電気伝導度が10-3〜10-2S・cm-1になるように形
成されている。以下、希土類元素(X)がPr、Nd、
Sm、Gd、Dyのいずれか1種以上からなるNa5
Si412系の固体電解質からなるセラミック隔膜12
の製造方法について説明する。まず、(イ)有機珪酸化
合物の一例である(C254SiO4、(ロ)珪酸ナト
リウムの水和物Na2SiO3・9H2O、及び(ハ)希
土類元素の硝酸塩の水和物X(NO33・6H2Oをそ
れぞれ(イ)30モル%、(ロ)50モル%、(ハ)2
0モル%づつ秤量した。添加する希土類元素(X)の形
態としては、硝酸塩の他に硫酸塩や塩化物、酸化物など
のものを用いることもできる。次に、この混合物を入れ
た容器に必要に応じて水やエタノール等の溶媒を5〜7
重量%加えてゾル状の溶液状にする。次に、このゾル状
物をスターラー等の撹拌装置を用いて、室温下で約1時
間撹拌した後、撹拌しながら70〜80℃の温度に2〜
4時間加熱して保持した。
【0020】続いて、このゾル状物を約100〜130
℃の乾燥室に約10時間〜20時間保持して乾燥させ、
網目状に形成された空隙を有するキセロゲル粉末が得ら
れた。このキセロゲル粉末はNaNO3の結晶相とアモ
ルファス相とを有していた。
【0021】次に空気雰囲気中又は不活性雰囲気中に保
持した電気炉にキセロゲル粉末を入れ、600℃〜80
0℃で約2〜4時間保持して仮焼粉末を得た。このよう
な仮焼を行うことにより、焼成時の重量減少がなくなる
効果が得られた。
【0022】続く成形工程では、仮焼粉末に、その全体
の3〜10重量%の酸化珪素粉末を添加して、ボールミ
ル等の混合破砕器を用いて約3〜5時間混合しながら
0.1〜1.0μmの粒度に破砕した。このように酸化
珪素粉末を添加することでNa 5XSi412(X=P
r、Nd、Sm、Gd、Dy、Yのいずれか1種以上)
を形成させるのに必要な成分の調整や、所定の焼結密度
を得るのに必要な焼結性の調整を行うことができる他、
粒界抵抗を小さくすることができる。次に、この混合粉
末を成形型に入れ、プレス装置を用いて520Paの圧
力で加圧して、質量が0.3g、直径10mm、厚み1
mmの円盤状に成形した。なお、このような成形体を成
形する際に、合成樹脂等の結合剤や微量の焼結助剤等を
添加して、セラミック隔膜12となる所定形状にするの
に必要な成形性を付与することもできる。最後に、この
成形体を酸化雰囲気中又は不活性雰囲気中850〜12
00℃の焼結温度に6〜10時間保持させて焼結させ、
その結晶相がNa5XSi412で表される酸化物焼結体
からなるセラミック隔膜12が得られた。このようなセ
ラミック隔膜12の面の陰極室11b側に多孔質陰極1
4を導電性樹脂接着剤や熱融着、嵌合圧着などの手段を
用いて接合させ、これを電解セル11内の中央部等の所
定部に配置し、陽極室11a内に陽極13を取り付けて
電源部15でNa含有廃液等の電解を行うナトリウム溶
液の電解装置10を構成した。
【0023】次に、以上のように構成されたナトリウム
溶液の電解装置10を用いて、化学プラント等の廃液を
電解処理してナトリウム濃度の高められた回収液を得る
方法について説明する。まず、電解セル11のセラミッ
ク隔膜12で区画された陽極室11a及び陰極室11b
にそれぞれNaイオンを含む廃液、回収原液を入れる。
なお、電解セル11の陽極室11a及び陰極室11bに
は図示しない流量調整弁やポンプ等を備えた配管系が設
けられており、連続的又は断続的に所定流量の処理液を
流して連続運転させたり、あるいは、処理液を電解セル
11に貯留させた状態に保持して回分運転させたりする
ことができるようになっている。次に、電極13、14
間に電源部15を用いて所定の電圧を付加して、供給さ
れた廃液等の電解処理を行う。即ち、両極間に所定の電
圧を付加することによって、陽極室11a内のNaイオ
ンは、陰極室11b側に配置された多孔室陰極14に引
きつけられて泳動し、Naイオン伝導性の結晶相(Na
5XSi412)を有した固体電解質からなるセラミック
隔膜12内を透過して陽極室11a側に輸送されて、そ
の多孔質陰極14との界面で還元され、透液性の多孔室
陰極14内を通過して、陰極室11b側に輸送され、陰
極室11bから高濃度化された処理液を回収することが
できる。
【0024】
【実施例】次に、前記固体電解質の製造方法で作製され
た酸化物焼結体について、密度やイオン伝導性、イオン
伝導度の温度依存性、化学的安定性について検討を行っ
た。(表1)は、添加される希土類元素(X)がDy、
Gd、Sm、Yのいずれか1種以上のNa5XSi412
で表される結晶相を有した固体電解質についてそれぞれ
測定された、密度(g・cm-3、理論密度%)、イオン
伝導度(S・cm-1)のデータを示している。最下段の
(5)NASICON(Na1+xZr2Six3-x12
は比較例として測定されたデータを示している。なお、
(1)Na5DySi412の焼結温度は950℃であ
り、(2)〜(4)における焼結温度は1000℃で行
った。(表1)から明らかなように(1)〜(3)は比
較例(5)のNASICONに相当する高いイオン伝導
度を示し、特に(1)Na5DySi412においては、
その理論密度に対する密度が従来のNASICONより
高く、これにより機械的強度や化学的安定性等の性能の
向上が図ることができることが分かった。
【0025】
【表1】
【0026】図2はNa5DySi412の結晶相を有す
る固体電解質におけるイオン伝導度σの自然対数(ln
σ)と温度Tの逆数(1/T)との関係を片対数図表上
にプロットしたグラフである。図2上にプロットされた
Na5DySi412(○印)の直線の傾きから活性化エ
ネルギーEaとして0.25eVが求められ、この値は
従来のNASICONにおける活性化エネルギーが0.
24eVであることからほぼ理論値に等しいことが分か
る。
【0027】図3はNa5DySi412の結晶相を有す
る固体電解質の円盤状の試料を酸液(0.01規定塩
酸)中に浸漬させ、所定時間毎に酸液中のナトリウム濃
度を測定してプロット(○)したグラフである。なお、
図中には比較例として、NASICON系であるNaZ
2312(□印)、Na3Zr2Si2PO12(▲
印)、Na4Zr2Si312(●印)のデータを併記し
ている。図3から明らかなようにNa5DySi412
結晶相を有する固体電解質(○印)は、浸漬時間が長く
なってもナトリウム濃度の増分が80時間後でも0.0
3mol・dm-3以下と最小であり、化学的安定性に著
しく優れていることが分かる。
【0028】実施の形態1のナトリウム溶液の電解装置
10は以上のように構成されているので、以下の作用を
有する。 (a)電解セル11の陽極室11aと陰極室11bを仕
切るセラミック隔壁12がNaイオン伝導性の固体電解
質で形成されているので、両極間に所定の電圧を印加す
ることによって陽極室11a内の処理液中のNaイオン
を選択的に陽極室側から陰極室側に移動させることがで
き、二次廃棄物を発生することなく効率的に陰極室11
bにおける溶液中のナトリウム濃度を高めることがで
き、高濃度化された処理液を効率的に得ることができ
る。 (b)機械的強度と化学的安定性に優れたセラミック隔
壁12を用いるので、化学プラント等で発生する廃液等
を大量に処理することができ、この電解装置10で回収
されたナトリウム分を化学プラントで再利用すること
で、全体の原料歩留まりを著しく向上させることができ
る。 (c)透液性に優れた多孔質陰極14を用いるので、電
解セル11に入れられた処理液が多孔質電極14内を透
過して一般式Na5XSi412(X=Pr、Nd、S
m、Gd、Dy、Y)で表される固体電解質の表面に容
易に到達でき、この固有の結晶相の界面を電解反応の反
応サイトとして触媒活性を高め電解処理を効率的に行う
ことができる。 (d)固体電解質がNa5XSi412で表される結晶相
を有するので、その相中にNaイオンを効果的に拡散さ
せるためのトンネル状構造と高い分極率とを有した骨格
を形成させることができ、Naイオンの輸送効率を高め
ることができ、廃液処理における生産性に優れている。 (e)固体電解質がその界面においてイオン分離再生反
応に対する高い触媒活性を有するので、処理液が接する
セラミック隔膜面でのNaイオンの還元反応を迅速に行
うことができる。 (f)Dy、Gd、Y、Sm等の希土類元素(X)を含
有させているので、Naイオンが占有できる空位置を多
数存在させ、その位置が占有、非占有のいずれのときも
ほぼ同程度の平坦なポテンシャルを維持させることがで
き、イオン伝導性が高く、電解効率や生産性に優れる。 (g)固体電解質が全体に強固なイオン結合を形成し
て、結晶相内にNaイオンを保持できるので、酸処理等
に際してナトリウムが外部に溶出するのを抑制して化学
的安定性を高めることができ、耐久性に優れている。 (h)希土類元素(X)としてジスプロシウムを用いた
場合には、これによって強固なイオン性化合物を形成さ
せ、Naイオンをその結晶相中に保持させて高い化学的
安定性を維持でき、セラミック隔膜12を安定して適用
でき、汎用性をさらに高めることができる。 (i)電気伝導度が特定範囲に規定されるので、Naイ
オンを選択的に透過させる機能を有したセラミック隔膜
12の稼動効率を高めて、工場廃液等の大量処理が可能
になる。 (j)酸化物焼結体の酸中におけるナトリウム濃度の増
分が特定値以下に設定されるので、腐蝕性の水溶液や酸
液等にさられされる電解セルにおけるイオンスプリッテ
ィング用隔膜としての耐久性や安定性を高めて長期に渡
って用いることができる。 (k)酸化物焼結体の焼結に際して、その焼結温度や保
持時間、添加成分の量、原料の粒径サイズなどの条件を
選択調整することにより、酸化物焼結体の密度を理論密
度に対して90%以上に高密度しているので、機械的強
度が高められ廃水処理装置等のイオンスプリッティング
用のセラミック隔膜12としての耐久性をさらに向上さ
せることができる。
【0029】(実施の形態2)本発明の実施の形態2に
係るナトリウム溶液の電解装置について説明する。図4
は実施の形態2のナトリウム溶液の電解装置の説明図で
ある。図4において、20は実施の形態2のナトリウム
溶液の電解装置、21は電解セル11の中央に配置され
たセラミック隔膜12の陰極室11b側の面に当接して
配置され、メッシュ状等に形成された白金被覆チタンや
カーボン等からなる多孔質電極材からなる陽極である。
なお、実施の形態2のナトリウム溶液の電解装置20
は、実施の形態1と陽極の形態及び配置が相違してお
り、他の構成は略同様なので、同一の構成を有するもの
については、同一の符号を付してその説明を省略する。
以下この図4を参照しながらナトリウム溶液の電解装置
20の動作原理について説明する。まず、電解セル11
のセラミック隔膜12で区画された陽極室11a及び陰
極室11bにそれぞれNaイオンを含む廃液、出発回収
原液を入れる。次に、両極間に所定の電圧を付加するこ
とによって、陽極室11a内のNaイオンは、透液性の
多孔質状に形成された陽極21内及びセラミック隔壁1
2を透過して、陰極14に到達する。このNaイオン
は、Naイオン伝導性のセラミック隔膜12内を透過し
て陰極室11b側に輸送される。次に、多孔質陰極14
内を通過して、陰極室11b側に輸送され、陰極室11
bから高濃度化された処理液を回収することができる。
【0030】実施の形態2のナトリウム溶液の電解装置
20は以上のように構成されているので、実施の形態1
の作用に加えて以下の作用を有する。 (a)セラミック隔膜12の両側に多孔質性の陽極21
及び多孔質陰極14が配接されているので、電解セル1
1の隔壁部の強度が保持され、さらに優れた耐久性を発
揮させることができる。 (b)電解セル11内の装置構成が単純化されるので、
セラミック隔膜12を含む隔壁部の交換や取り付けが極
めて容易にでき、メンテナンス性に優れる。
【0031】本発明の実施の形態3のナトリウム溶液の
電解装置を用いたナトリウム回収システムについて説明
する。図5は実施の形態3のナトリウム溶液の電解装置
を用いたナトリウム回収システムの説明図である。図5
において、30は実施の形態3のナトリウム回収システ
ム、31は石炭火力発電所や化成品工場や製油所等の化
学プラント、32は化学プラント31に設けられた複数
のナトリウム溶液の電解装置10で処理された廃液やプ
ラント31から排出されたNaイオンを含むNa含有廃
液を貯留するためのNa含有廃液タンク、33は電解装
置10の陰極室からナトリウム濃度が高められた処理液
を回収して前記化学プラントに供給する配管系、34は
Na含有廃液タンク32内の廃液を各電解装置10に分
配して供給するための配管系、35は電解装置10の陽
極室11aで処理されたNaイオンがストリップされた
処理液をNa含有廃液タンク36に送るための配管系、
36はNaイオンがストリップされた廃液タンクであ
る。なお、前記実施の形態1と同様の機能を有するもの
については同一の符号を付してその説明を省略する。ナ
トリウム回収システム30を構成する電解装置10は、
化学プラント31で発生する廃液量や、化学プラント3
1で必要とされるナトリウム分の量に応じて所定数が複
数並列に配置されている。それぞれの電解装置10は、
陽極室11aに流す供給処理液及び陰極室11bから取
り出す電解済み処理液の流量や、電極間電圧、液温の運
転条件を図示しない制御装置を用いて個別に制御されて
いる。化学プラント31や電解装置10で発生する薬品
溶液や廃液は、Na含有廃液タンク32に供給されて貯
留される。この薬品溶液等が配管系34を介して並列配
置された各電解装置10に輸送され、Naイオンは電解
セル11内のセラミック隔膜12を透過して陽極室11
aから陰極室11bに選択的に移動され、陰極室11b
側のナトリウム濃度が高められる。この濃縮されたナト
リウム溶液がポンプ等を含む配管系33を介して化学プ
ラント31に回収される。こうしてナトリウム回収シス
テム30が連続的または断続的に運転され、二次廃棄物
等としてシステムの外部に排出されるナトリウム分が最
小になるように保持される。このように化学プラント3
1でナトリウム分が再利用できるので、回収時に投入さ
れるエネルギー分だけで済み、従来のようにナトリウム
源の製造時に投入されるエネルギーを大幅に削減でき
る。例えば、濃度が約25%の水酸化ナトリウム溶液
(廃液)を電解装置で濃縮して35%水酸化ナトリウム
溶液とする場合、海水を原料として35%水酸化ナトリ
ウム溶液とする場合の約70〜90%の省エネルギー効
果が見込まれる。
【0032】実施の形態3のナトリウム溶液の電解装置
を用いたナトリウム回収システム30は以上のように構
成されているので、実施の形態1又は2の作用に加えて
以下の作用を有する。 (a)化学プラント31で従来廃棄されていた薬品溶液
から工場現場でナトリウム分を効率よく回収精製して、
繰り返し再利用することができる。 (b)化学プラント31で発生した廃液をNa含有廃液
タンク32に貯留して平均化し、薬品を用いることなく
電解装置を用いてNaイオンのみを効率的に回収して、
配管系を介して化学プラントに供給できる。 (c)二次廃棄物の発生を抑制でき廃水処理設備の負荷
の大幅な低減化を図り、プラント全体の生産性や省エネ
ルギー性、プラント周辺への環境保持性に優れている。 (d)Naイオン伝導性のセラミック隔膜12が、処理
液中等における化学安定性と耐久性に優れるので、固形
分を含む大量の廃液からナトリウムを効率的に回収処理
することができる。 (e)セラミック隔膜12をゾルゲル法や電気泳動法等
の他に乾式プロセスを用いて作製することもできるの
で、広い面積の隔膜でも安価に一体成形により形成し
て、ナトリウム回収システム30を構成でき、経済性に
優れる。
【0033】
【発明の効果】請求項1に記載のナトリウム溶液の電解
装置によれば、以下の効果が得られる。 (a)電解セルの陽極室と陰極室を仕切るセラミック隔
壁がNaイオン伝導性の固体電解質で形成されているの
で、両極間に所定の電圧を印加することによって陽極室
内の処理液中のNaイオンを選択的に陽極室側から陰極
室側に移動させることができ、二次廃棄物を発生するこ
となく効率的に陰極室におけるナトリウム濃度を高める
ことができる。 (b)機械的強度と化学的安定性に優れたセラミック隔
壁を用いるので、化学プラント等で発生する廃液等を大
量に処理することができ、この電解装置で回収されたナ
トリウム分を化学プラントで再利用することで、全体の
原料歩留まりを著しく向上させることができる。 (c)透液性に優れた多孔質電極を用いことができるの
で、電解セルに入れられた処理液が多孔質電極内を透過
して固体電解質の表面に容易に到達でき、電解処理を効
率的に行うことができる。 (d)セラミック隔膜をゾルゲル法や電気泳動法等の他
に乾式プロセスを用いて作製することもできるので、広
い面積の隔膜でも安価に一体成形により形成でき、経済
性に優れる。
【0034】請求項2に記載のナトリウム溶液の電解装
置によれば、請求項1の効果の他、以下の効果が得られ
る。 (a)固体電解質がNa5XSi412で表される結晶相
を有するので、その相中にNaイオンを効果的に拡散さ
せるためのトンネル状構造と高い分極率とを有した骨格
を形成させることができ、Naイオンの輸送効率を高め
ることができ、処理の生産性に優れている。 (b)固体電解質がその界面においてイオン分離再生反
応に対する高い触媒活性を有するので、処理液が接する
セラミック隔膜面でのNaイオンの還元反応を迅速に行
うことができる。 (c)Dy、Gd、Y、Sm等の希土類元素(X)を含
有させているので、Naイオンが占有できる空位置を多
数存在させ、その位置が占有、非占有のいずれのときも
ほぼ同程度の平坦なポテンシャルを維持させることがで
き、イオン伝導性が高く、電解効率や生産性に優れる。 (d)固体電解質が全体に強固なイオン結合を形成し
て、結晶相内にNaイオンを保持できるので、酸処理等
に際してナトリウムが外部に溶出するのを抑制して化学
的安定性を高めることができ、耐久性に優れている。
【0035】請求項3に記載のナトリウム溶液の電解装
置によれば、請求項2の効果の他、以下の効果が得られ
る。 (a)結晶相がNa5DySi412に限定されるので、
特に低温でのイオン伝導性を高めることができる。 (b)ジスプロシウムを用いるので、強固なイオン性化
合物を形成させ、Naイオンをその結晶相中に保持させ
て高い化学的安定性を維持でき、電解セル用隔壁に安定
して適用でき、汎用性をさらに高めることができる。
【0036】請求項4に記載のナトリウム溶液の電解装
置によれば、請求項1乃至3の内いずれか1項の効果の
他、以下の効果が得られる。 (a)電気伝導度が特定範囲に規定されるので、電解セ
ルのセラミック隔膜としの稼動効率を高めて、工場廃液
等の大量処理が可能になる。
【0037】請求項5に記載のナトリウム溶液の電解装
置によれば、請求項1乃至4の内いずれか1項の効果の
他、以下の効果が得られる。 (a)酸化物焼結体の酸中におけるナトリウム濃度の増
分が特定値以下に設定されているので、腐蝕性の水溶液
や酸液等にさられされる電解セルにおけるイオンスプリ
ッティング用隔膜としての耐久性や安定性を高めて長期
に渡って用いることができる。
【0038】請求項6に記載のナトリウム溶液の電解装
置によれば、請求項1乃至5の内いずれか1項の効果の
他、以下の効果が得られる。 (a)酸化物焼結体の密度を理論密度に対して90%以
上にしているので、機械的強度が高められ廃水処理装置
等のイオンスプリッティング用隔膜としての耐久性をさ
らに向上させることができる。 (b)高密度化しているので、イオン伝導性のばらつき
やが少なく固体電解質を用いた電解装置を効率的に作動
させることができる。
【0039】請求項7に記載のナトリウム溶液の電解装
置を用いたナトリウム回収システムによれば、以下の効
果が得られる。 (a)化学プラントで発生したNa含有廃液をNa含有廃
液タンクに貯留してから、薬品を用いることなく電解装
置を用いてNaイオンのみを効率的に回収でき省資源性
に優れる。 (b)二次廃棄物の発生を抑制でき、プラント全体の生
産性や省エネルギー性、プラント周辺への環境保持性に
優れるとともに、水質汚染を防止し低公害性に優れる。 (c)Naイオン伝導性の固体電解質からなるセラミッ
ク隔膜が、処理液中等における化学安定性と耐久性に優
れるので、固形分を含む大量の廃液からナトリウムを効
率的に回収処理することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施の形態1のナトリウム溶液の電解装置の説
明図
【図2】固体電解質のイオン伝導度と温度との関係を示
したグラフ
【図3】固体電解質の酸液浸漬中のナトリウム濃度の変
化を示したグラフ
【図4】実施の形態2のナトリウム溶液の電解装置の説
明図
【図5】実施の形態3のナトリウム回収システムの説明
【符号の説明】
10 実施の形態1のナトリウム溶液の電解装置 11 電解セル 11a 陽極室 11b 陰極室 12 セラミック隔膜 13 陽極 14 多孔質陰極 15 電源部 20 実施の形態2のナトリウム溶液の電解装置 21 陽極 30 実施の形態3のナトリウム回収システム 31 化学プラント 32 Na含有廃液タンク 33 配管系 34 配管系 35 配管系 36 廃液タンク
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 小柳 智之 福岡県福岡市中央区白金一丁目17番8号 西日本環境エネルギー株式会社内 (72)発明者 清水 陽一 福岡県北九州市戸畑区仙水町3−27−204 (72)発明者 高瀬 聡子 福岡県北九州市戸畑区夜宮3−6−10− 1002 Fターム(参考) 4D006 GA17 MA02 MA12 MC03 PA04 PB08 PB27 PC22 4D061 DA08 DB18 DC19 EA09 EB13 EB28 EB29 EB30 EB35 4G030 AA03 AA11 AA12 AA37 BA03 CA01 GA01 GA03 GA04 GA08 GA10 GA14 GA22 GA24

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】Naイオン伝導性の固体電解質で形成され
    たセラミック隔膜と、前記セラミック隔膜の両側にそれ
    ぞれ配置された陽極及び多孔質陰極と、前記セラミック
    隔膜を介して陽極室と陰極室とに区画された電解セルと
    を有することを特徴とするナトリウム溶液の電解装置。
  2. 【請求項2】前記固体電解質がDy、Gd、Y、Sm等
    の希土類元素(X)を含みその結晶相がNa5XSi4
    12で表される酸化物焼結体からなることを特徴とする請
    求項1に記載のナトリウム溶液の電解装置。
  3. 【請求項3】前記希土類元素(X)がDyであることを
    特徴とする請求項2に記載のナトリウム溶液の電解装
    置。
  4. 【請求項4】前記固体電解質の室温における電気伝導度
    が10-3〜10-2S・cm-1であることを特徴とする請
    求項1乃至3の内いずれか1項に記載のナトリウム溶液
    の電解装置。
  5. 【請求項5】前記固体電解質の酸溶出試験において、前
    記固体電解質の0.0l規定塩酸中30分浸漬後におけ
    るナトリウム濃度の増分が0.05mol・dm-3以下
    であることを特徴とする請求項1乃至4の内いずれか1
    項に記載のナトリウム溶液の電解装置。
  6. 【請求項6】前記固体電解質の密度が、その理論密度に
    対して90%以上であることを特徴とする請求項1乃至
    5の内いずれか1項に記載のナトリウム溶液の電解装
    置。
  7. 【請求項7】請求項1乃至6の内いずれか1項に記載の
    ナトリウム溶液の電解装置と、前記電解装置の前記陽極
    室に供給され化学プラントから排出されたNaイオンを
    含むNa含有廃液を貯留するNa含有廃液タンクと、前記
    電解装置の前記陰極室からナトリウム濃度が高められた
    処理液を回収して前記化学プラントに供給する配管系
    と、を備えたことを特徴とするナトリウム溶液の電解装
    置を用いたナトリウム回収システム。
JP2002047996A 2002-02-25 2002-02-25 ナトリウム溶液の電解装置及びそれを用いたナトリウム回収システム Expired - Fee Related JP3702234B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2002047996A JP3702234B2 (ja) 2002-02-25 2002-02-25 ナトリウム溶液の電解装置及びそれを用いたナトリウム回収システム

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2002047996A JP3702234B2 (ja) 2002-02-25 2002-02-25 ナトリウム溶液の電解装置及びそれを用いたナトリウム回収システム

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2003245672A true JP2003245672A (ja) 2003-09-02
JP3702234B2 JP3702234B2 (ja) 2005-10-05

Family

ID=28660911

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2002047996A Expired - Fee Related JP3702234B2 (ja) 2002-02-25 2002-02-25 ナトリウム溶液の電解装置及びそれを用いたナトリウム回収システム

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP3702234B2 (ja)

Cited By (6)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2013539404A (ja) * 2010-07-23 2013-10-24 ユニベルシテ ポール ヴェルレーヌ メッツ 電解質分離壁
CN103990390A (zh) * 2014-06-09 2014-08-20 景德镇陶瓷学院 一种离子导电性高分子基分离膜元件及其膜分离组件
WO2015020121A1 (ja) * 2013-08-08 2015-02-12 独立行政法人日本原子力研究開発機構 金属イオン回収装置、金属イオン回収方法
JP2019141807A (ja) * 2018-02-22 2019-08-29 国立大学法人弘前大学 リチウム回収装置およびリチウム回収方法
CN113292143A (zh) * 2021-05-10 2021-08-24 昆明理工大学 电场耦合复合电滤膜选择分离含盐废水中阴阳离子的方法
CN115403358A (zh) * 2022-09-13 2022-11-29 景德镇陶瓷大学 一种过渡金属离子与Eu3+共掺杂型固体电解质陶瓷材料及其制备方法

Cited By (11)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2013539404A (ja) * 2010-07-23 2013-10-24 ユニベルシテ ポール ヴェルレーヌ メッツ 電解質分離壁
WO2015020121A1 (ja) * 2013-08-08 2015-02-12 独立行政法人日本原子力研究開発機構 金属イオン回収装置、金属イオン回収方法
JP2015034315A (ja) * 2013-08-08 2015-02-19 独立行政法人日本原子力研究開発機構 金属イオン回収装置、金属イオン回収方法
KR20160040572A (ko) * 2013-08-08 2016-04-14 고쿠리츠겐큐가이하츠호징 니혼겐시료쿠겐큐가이하츠기코 금속 이온 회수 장치, 금속 이온 회수 방법
US9932653B2 (en) 2013-08-08 2018-04-03 National Institutes For Quantum And Radiological Science And Technology Metal ion recovery device and metal ion recovery method
KR102071358B1 (ko) * 2013-08-08 2020-01-30 국립연구개발법인 양자과학기술연구개발기구 금속 이온 회수 장치, 금속 이온 회수 방법
CN103990390A (zh) * 2014-06-09 2014-08-20 景德镇陶瓷学院 一种离子导电性高分子基分离膜元件及其膜分离组件
JP2019141807A (ja) * 2018-02-22 2019-08-29 国立大学法人弘前大学 リチウム回収装置およびリチウム回収方法
JP7103626B2 (ja) 2018-02-22 2022-07-20 国立大学法人弘前大学 リチウム回収装置およびリチウム回収方法
CN113292143A (zh) * 2021-05-10 2021-08-24 昆明理工大学 电场耦合复合电滤膜选择分离含盐废水中阴阳离子的方法
CN115403358A (zh) * 2022-09-13 2022-11-29 景德镇陶瓷大学 一种过渡金属离子与Eu3+共掺杂型固体电解质陶瓷材料及其制备方法

Also Published As

Publication number Publication date
JP3702234B2 (ja) 2005-10-05

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP5314246B2 (ja) イオン伝導性セラミックの固体膜を用いたアルカリアルコラートを生成するための電気分解による方法
US20080245671A1 (en) Electrochemical Process to Recycle Aqueous Alkali Chemicals Using Ceramic Ion Conducting Solid Membranes
EP1966413B1 (en) Electrolytic process to produce sodium hypochlorite using sodium ion conductive ceramic membranes
Hao et al. Preparation and characterization of PbO 2 electrodes from electro-deposition solutions with different copper concentration
JP2001192874A (ja) 過硫酸溶解水の製造方法
EP2776607B1 (en) Manufacturing method for an electrode for electrochemistry
US20130048509A1 (en) Electrochemical process to recycle aqueous alkali chemicals using ceramic ion conducting solid membranes
CN108439553B (zh) 一种用于去除水中氯离子的电化学氧化装置
CN107034483B (zh) 一种次氯酸钠发生器电极的制备方法
JP4157615B2 (ja) 不溶性金属電極の製造方法及び該電極を使用する電解槽
CN113165916A (zh) 用于净化流体特别是废水的装置
JPH10137763A (ja) 電解イオン水生成装置及び半導体製造装置
Liu et al. Efficient and green water softening by integrating electrochemically accelerated precipitation and microfiltration with membrane cleaning by periodically anodic polarization
Park et al. Three-dimensionally interconnected titanium foam anode for an energy-efficient zero gap-type chlor-alkali electrolyzer
JP3702234B2 (ja) ナトリウム溶液の電解装置及びそれを用いたナトリウム回収システム
TW200306284A (en) Functional water, method and apparatus of producing the same, and method and apparatus of rinsing electronic parts therewith
JP2000140819A (ja) 重金属汚染土壌の浄化方法
CN101165215A (zh) 从任何含金属的材料中获得金属粉末、金属板或金属阴极的方法和设备
JP4071980B2 (ja) 電子部品の洗浄方法及び装置
JP3673000B2 (ja) 電解水製造用電解槽
JP2016011458A (ja) 酸素を発生させる方法、水の電気分解装置および陽極
JP2004099914A (ja) ペルオキソ二硫酸塩の製造方法
JP3310115B2 (ja) 電気化学的処理を利用したコンクリートの処理方法
WO2018157259A1 (en) Electrochemical adsorbtion with graphene nanocomposites
Kim et al. Electrochemical de-chlorination/transformation of metal chloride for the preparation of NZP structure product

Legal Events

Date Code Title Description
A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20041101

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20050404

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20050531

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20050621

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20050715

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees