JP2003221672A - 酸化チタン薄膜とその製造方法及び酸化チタン薄膜の積層体 - Google Patents

酸化チタン薄膜とその製造方法及び酸化チタン薄膜の積層体

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JP2003221672A
JP2003221672A JP2002019482A JP2002019482A JP2003221672A JP 2003221672 A JP2003221672 A JP 2003221672A JP 2002019482 A JP2002019482 A JP 2002019482A JP 2002019482 A JP2002019482 A JP 2002019482A JP 2003221672 A JP2003221672 A JP 2003221672A
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oxide thin
thin film
film
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Osamu Sakakura
治 坂倉
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 優れた光触媒作用と光透過性を有し、しか
も、特に透明性が要請される種々の構造物を構成する部
材に光触媒作用を兼ね備えさせることを可能にした酸化
チタン薄膜とその製造方法、さらに酸化チタン薄膜を最
表面に有する積層体を提供することを目的とする。 【解決手段】 酸化チタン薄膜は、CVD法による出発
原料がチタンアルコキシド[Ti(OR)4、R;アル
キル基]であり、そのチタンアルコキシドをガス化し
て、反応室内に導入し、アルコキシドがプラズマ中で部
分酸化され、炭素がエステル結合して、チタンを含むガ
スとプラズマにより成膜した酸化チタン薄膜において、
チタンに対する炭素の相対原子比が0.3〜0.8であ
る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、CVD法を用いた
酸化チタン薄膜とその製造方法、さらにプラスチックフ
ィルム基材に、直接或いは酸化物薄膜を介して酸化チタ
ン薄膜を有する構造の酸化チタン薄膜の積層体に関す
る。
【0002】
【従来の技術】従来から光を照射すると、物質の分解や
酸化を促進する活性を示す光触媒が知られているが、最
近この光触媒を利用して、硫黄酸化物や窒素酸化物等の
大気汚染物質を除去する試み等がなされており、その光
触媒として酸化チタンを用いる試みもなされている。
(例えば、特開平6−385号公報、特開平6−496
77号公報、特開平6−39285号公報等参照)
【0003】ところで、近年、地球環境汚染に対する関
心が高まっている中で、大気中のCO2、NOX及びSO
Xなどの物質を除去する要請が高まり、また、これら有
害物質を除去して、アメニティー空間を創出する構想も
みられているように、居住空間の脱臭・抗菌・防汚・防
かび等への要請がますます強くなってきている。
【0004】そこで、このような汚染物質等を除去する
ために、上述の酸化チタン光触媒を利用することが考え
られる。しかし、従来の酸化チタン光触媒は、一般に、
処理すべき気体や液体等の被処理物を光触媒が収納され
た容器内に導入して、光触媒に接触させ、同時に、外部
から光を導入して光触媒に照射させるものであった。ま
た、この場合、光触媒に対する被処理物の接触面積の増
大や光触媒に対する効率のよい光照射を行なうために、
光触媒を微粒子状にしたり、あるいは、光触媒を透明基
材に保持するようにした試み等もなされている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上述の
従来の酸化チタン光触媒においては、例えば、微粒子状
に形成することによって被処理物との接触面積は増やせ
ても、光を受ける実質面積については、これをそれ程増
大させることはできないので、結局トータルの触媒効果
を大きく向上させることは困難であった。また、従来の
酸化チタン光触媒は、これを例えばガラス基板等の上に
薄膜状に形成する場合でも、酸化チタン光触媒自体は透
明性の低いものであった。これは、従来は、薄膜状に形
成して実用レベルの光触媒作用を得るためには、酸化チ
タンゾルを基板上に焼結形成するか、あるいは、酸化チ
タンを微粉末にして、これをバインダーで溶いて、基板
に塗布する以外に適当な方法がないと考えられていたた
めである。
【0006】しかし、前者では高い活性を有し、ある程
度の光透過性を有するものが得られるが、実用に耐える
膜強度を得るためには、焼結温度をガラス軟化点以上の
温度に設定する必要がある為に、少なくともガラス基板
に形成するのは困難であった。しかも、光透過性につい
ては、白濁傾向を示すもので、透明性が得られる程に可
視光を通過させることは困難であり、この意味では不透
明に近いものであった。また、後者の場合には、高温で
の焼結等の工程は不要であるが、微粉末化した酸化チタ
ンを塗布するために白濁化して不透明なものであった。
さらに、この種の分野で従来からよく知られているゾル
ゲル法や、CVD法等によって、薄膜状にした酸化チタ
ンでは透明性は確保できるが、実用レベルの光触媒活性
が得られていない。
【0007】このように、従来の酸化チタン光触媒は、
実用レベルの光触媒活性を示すものは、いずれも実質的
には不透明なものであったので、例えば、この従来の光
触媒を透明ガラス基板等の表面に形成しても、このガラ
ス基板の裏面側から照射した光を光触媒の表面部に有効
に到達させることができないので、結局、利用できる光
は、光触媒が形成された表面側から照射されたものだけ
となる。したがって、この光触媒を、例えば、窓ガラス
の表面に形成して、室内の清浄化を行う場合には、当
然、光触媒をガラスの室内に面した表面に形成すること
になる。そうすると、光触媒活性に利用できるのは室内
側から照射される光だけとなり、太陽光は利用できない
という重大な欠点が生じてしまう。このように、従来の
酸化チタン光触媒では、光触媒作用を行なう酸化チタン
自体が実質的に不透明なものであることから、その触媒
作用の向上に一定の限界が生じていたと共に、その応用
範囲も著しく限定されたものであった。
【0008】本発明は、上述の背景のもとでなされたも
のであり、優れた光触媒作用と光透過性を有し、しか
も、特に透明性が要請される種々の構造物を構成する部
材に光触媒作用を兼ね備えさせることを可能にした酸化
チタン薄膜とその製造方法、さらに酸化チタン薄膜を最
表面に有する積層体を提供することを目的としたもので
ある。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明の酸化チタン薄膜
は、上記の課題を解決するために、請求項1において、
CVD法による出発原料がチタンアルコキシド[Ti
(OR)4、R;アルキル基]であり、そのチタンアル
コキシドをガス化して、反応室内に導入し、アルコキシ
ドがプラズマ中で部分酸化され、炭素がエステル結合し
て、チタンを含むガスとプラズマにより成膜した酸化チ
タン薄膜において、チタンに対する炭素の相対原子比が
0.3〜0.8であることを特徴とする。このプラズマ
CVD法により製造された酸化チタン薄膜は、その酸化
チタン化合物における炭素がエステル結合しているもの
を含有し、チタンに対する炭素の相対原子比が0.3〜
0.8に調整されているため、優れた光触媒効果をも
ち、また透明性の高いものとなる。
【0010】本発明の酸化チタン薄膜の積層体は、請求
項2において、プラスチックフィルムからなる基材上に
透明な酸化チタン薄膜を有する構造、或いはプラスチッ
クフィルム基材と該基材の表面粗さを制御する為に酸化
物薄膜を積層した構造上に透明な酸化チタン薄膜を有す
る構造において、該酸化チタン薄膜が屈折率1.8〜
2.1(波長λ=550nm)、且つ膜厚10〜300
nmであることを特徴とする。上記の積層体は、酸化チ
タン薄膜を膜厚で10〜300nmとし、且つ波長λが
550nmにおける屈折率を1.8〜2.1に調整する
ことにより、非常に高い透明性と、優れた光触媒効果を
有するものとなる。請求項3において、上記の酸化チタ
ン薄膜の積層体は、請求項1に記載する酸化チタン薄膜
を用いたことを特徴とする。
【0011】また、前記請求項2または3に記載する酸
化チタン薄膜の積層体において、請求項4として、透明
な酸化チタン薄膜の下地層であるプラスチックフィルム
基材の表面粗さが1〜10nmであることを特徴とす
る。基材であるプラスチックフィルムの表面粗さを1〜
10nmの範囲にあるものを使用することにより、その
基材上に、直接或いは酸化物薄膜を介して酸化チタン薄
膜を有する構造の酸化チタン薄膜の積層体において、酸
化チタン薄膜の表面形状において微細な凹凸形状を有す
るものが得られる。また、前記請求項2、3、4のいず
れか一つに記載する酸化チタン薄膜の積層体において、
請求項5として、プラスチックフィルム基材の表面粗さ
を制御する為に酸化物薄膜を積層した構造の表面粗さが
0.1〜30nmであることを特徴とする。プラスチッ
クフィルム基材上に酸化物薄膜を積層した構造におい
て、その酸化物薄膜の表面粗さが0.1〜30nmの範
囲にすることにより、酸化物薄膜上に設ける酸化チタン
薄膜の表面形状を微細な凹凸形状とすることができる。
【0012】請求項6において、本発明の酸化チタン薄
膜の製造方法は、プラズマCVD法により、反応室内に
チタンアルコキシド[Ti(OR)4、R;アルキル
基]をガス化した原料ガスを導入して、プラズマ中でア
ルコキシドが部分酸化され、炭素がエステル結合し、チ
タンを含むガスとプラズマにより成膜させて酸化チタン
薄膜を製造するもので、その得られる酸化チタン薄膜に
おけるチタンに対する炭素の相対原子比が0.3〜0.
8であることを特徴とする。この製造方法により得られ
る酸化チタン薄膜は、その酸化チタン化合物における炭
素がエステル結合しているものを含有し、チタンに対す
る炭素の相対原子比が0.3〜0.8に調整されている
ため、優れた光触媒効果をもち、また透明性の高いもの
となり、様々な用途に利用することが可能となった。ま
た、この製造方法によれば、実用レベルの光触媒活性を
示し、かつ透明性の高い酸化チタン薄膜を効率良く、製
造することができる。
【0013】
【発明の実施の形態】以下、本発明について、詳細に説
明する。まず、本発明の酸化チタン薄膜と、その酸化チ
タン薄膜を最表面に有する積層体の各層について、説明
する。 (基材)本発明の酸化チタン薄膜の積層体を構成する基
材は、プラスチックフィルムが用いられ、透明性が必要
であるが、ある程度の耐熱性と強度を有していれば良
く、例えば、トリアセチルセルロースフィルム、ジアセ
チルセルロースフィルム、アセテートブチレートセルロ
ースフィルム、ポリエーテルサルホンフィルム、ポリア
クリル系フィルム、ポリウレタン系フィルム、ポリエス
テルフィルム、ポリカーボネイトフィルム、ポリスルホ
ンフィルム、ポリエーテルフィルム、トリメチルペンテ
ンフィルム、ポリエーテルケトンフィルム、アクリロニ
トリルフィルム、メタクリロニトリルフィルム等が挙げ
られる。さらには、無色透明のフィルムがより好ましく
使用できる。中でも、一軸または二軸延伸ポリエステル
フィルムが透明性、耐熱性に優れ、好適に用いられ、光
学異方性のない点でトリアセチルセルロースも好適に用
いられる。プラスチックフィルムの厚みは、通常は6μ
m〜188μm程度のものが好適に用いられる。
【0014】また、本発明で使用するプラスチックフィ
ルム基材の表面粗さは、1〜10nmであることが望ま
しく、これにより、その上に設ける酸化チタン薄膜の表
面形状及び表面エネルギーを制御することができる。上
記の表面粗さが1nm未満であると、平滑性が高すぎ、
適度な粒径と空隙を有する酸化チタン薄膜の表面形状が
得られにくい。また表面粗さが10nmを越えると、表
面が荒れすぎて、この場合も適度な粒径と空隙を有する
酸化チタン薄膜の表面形状が得られにくい。
【0015】(酸化チタン薄膜)本発明の酸化チタン薄
膜は、CVD法による出発原料がチタンアルコキシド
[Ti(OR)4、R;アルキル基]であり、そのチタ
ンアルコキシドをガス化して、反応室内に導入し、アル
コキシドがプラズマ中で部分酸化され、炭素がエステル
結合し、チタンを含むガスとプラズマにより成膜したも
のであり、酸化チタン薄膜の状態で、チタンに対する炭
素の相対原子比が0.3〜0.8である。この酸化チタ
ン薄膜は、チタンに対する炭素の相対原子比が0.3〜
0.8に調整されているため、優れた光触媒効果をも
ち、また透明性の高いものとなる。上記のチタンに対す
る炭素の相対原子比が0.3を下回ると、透明性は確保
できるが、実用レベルの光触媒活性が得られにくい。ま
た、チタンに対する炭素の相対原子比が0.8を上回る
と、透明性が低下してくる。
【0016】酸化チタン薄膜の原料となるチタンアルコ
キシド[Ti(OR)4、R;アルキル基]は、Ti
(i−OC374(チタンテトラi−プロポキシ
ド)、Ti(OCH34(チタンテトラメトキシド)、
Ti(OC254(チタンテトラエトキシド)、Ti
(n−OC374(チタンテトラn−プロポキシ
ド)、Ti(n−OC494(チタンテトラn−ブト
キシド)、Ti(t−OC494(チタンテトラt−
ブトキシド)等のチタンアルコキシドが挙げられる。上
記のチタンアルコキシドを構成するアルキル基(R)
は、炭素数1〜10のアルキル基が使用可能である。そ
のなかでも、Ti(i−OC374(チタンテトラi
−プロポキシド)、Ti(t−OC494(チタンテ
トラt−ブトキシド)は蒸気圧が高いという理由で好適
である。
【0017】また、酸化チタン薄膜をプラスチックフィ
ルム基材上に形成した積層体構造をとる場合、その基材
上に直接、酸化チタン薄膜を設けたり、酸化物薄膜を介
して、酸化チタン薄膜を設けることができる。この酸化
チタン薄膜の積層体において、酸化チタン薄膜が最上層
の構成であり、該酸化チタン薄膜の波長光550nmに
おける屈折率が1.8〜2.1であり、且つ膜厚が10
〜300nmである。これにより、積層体の酸化チタン
薄膜以外の層(プラススチックフィルム基材、酸化物薄
膜)の屈折率との違いにより、光の反射を効率良く、防
止することができる。したがって、酸化チタン薄膜の波
長光550nmにおける屈折率が1.8〜2.1から外
れ、屈折率が低い場合、光触媒活性が不足してくる。ま
た、屈折率が2.1より大きくなると、透明性が低下し
てくる。屈折率が1.8〜2.1の範囲は、比較的高い
屈折率の範囲であり、酸化チタンにより膜厚を10〜3
00nmに収めて薄膜を形成すれば、容易にその屈折率
に調整することができる。酸化チタン薄膜の膜厚が10
nmよりも薄いと、光触媒効果がほとんど期待できなく
なり、また層厚が300nmより厚いと、層の圧力によ
り基材変形や層剥がれの発生する場合がある。
【0018】酸化チタン薄膜の積層体における酸化チタ
ン薄膜は、プラスチックフィルム基材上に、上記のよう
に屈折率と膜厚を所定の範囲に収めるように、形成でき
れば、その薄膜の形成方法は特に限定するものではな
い。例えば、真空蒸着法やスパッタリング法、プラズマ
CVD法、熱CVD法、光CVD法等の化学気相蒸着法
(Chemical Vapor Depositio
n法、CVD法)や、ゾルゲル法等のウェットコーティ
ング等の方法を用いることができる。
【0019】(酸化物薄膜)本発明の酸化チタン薄膜の
積層体において、プラスチックフィルム基材上に酸化物
薄膜を介して、酸化チタン薄膜を形成できる。この酸化
物薄膜は、プラスチックフィルム基材の表面粗さを制御
する機能を有する。またプラスチックフィルム基材に酸
化チタン薄膜をプラズマCVD法で形成する際に、その
基材にプラズマが直接当たると基材中の水分が熱により
揮発して、プラズマの反応系に混入し、チタンアルコキ
シドと水が反応し、酸化チタンが微粒子化して、膜が形
成しにくくなるため、基材からの水蒸気透過防止の機能
も有する。さらに、プラスチックフィルム基材上に直
接、酸化チタン薄膜をプラズマCVD法で形成する際
に、光触媒反応により、基材が部分的に分解しやすいた
め、その分解反応を抑制する機能も有すると考えられ
る。酸化物薄膜は、具体的には、酸化ケイ素(シリ
カ)、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム等の金属酸
化物により構成することができ、またこの金属酸化物に
よる薄膜は、上記金属酸化物の単体に限定されず、例え
ば炭素を含有するケイ素化合物(炭化ケイ素化合物)、
炭素を含有する酸化アルミニウム化合物等を用いること
ができる。
【0020】酸化物薄膜の形成方法は、特に限定される
ものではなく、例えば真空蒸着法やスパッタリング法、
プラズマCVD法、熱CVD法、光CVD法等の化学気
相蒸着法や、ゾルゲル法等のウェットコーティング等の
方法を用いることができる。この酸化物薄膜の層厚は特
に限定されないが、5〜300nm程度であり、10〜
150nmが好ましい。5nmよりも薄いと、プラスチ
ックフィルム基材の表面粗さを制御する効果がほとんど
期待できなくなり、また層厚が300nmより厚いと、
層の圧力により基材変形や層剥がれの発生する場合があ
り好ましくない。上記の酸化物薄膜を積層した構造の積
層体において、その酸化物薄膜の表面粗さが0.1〜3
0nmであることが望ましく、これにより、その上に設
ける酸化チタン薄膜の表面形状及び表面エネルギーを制
御することができる。酸化チタン薄膜は平滑性の高いも
のではなく、数十nm〜数百nm程度の粒径で微粒子化
していると、表面積が大きくなり、優れた光触媒作用と
光透過性を有するものとなる。
【0021】(酸化チタン薄膜の製造方法)本発明にお
ける酸化チタン薄膜をプラズマCVD法により、形成す
る製造方法は、反応室内にチタンアルコキシド[Ti
(OR)4、R;アルキル基]をガス化した原料ガスを
導入して、プラズマ中でアルコキシドが部分酸化され、
炭素がエステル結合し、チタンを含むガスとプラズマに
より成膜させて酸化チタン薄膜を製造するもので、その
得られる酸化チタン薄膜におけるチタンに対する炭素の
相対原子比を0.3〜0.8の範囲に調整した。
【0022】この酸化チタン薄膜の製造方法の一つの実
施形態として、図1を用いて、説明する。まず、ウエッ
ブ状の被転写体(基材)1が巻き出し部2より巻き出さ
れて、真空容器3中のプラズマCVDの反応室4に導入
される。この反応容器3の全体は、真空ポンプ5により
排気される。また、同時に反応室4には、原料ガス導入
口6より規定流量のチタンアルコキシド[Ti(OR)
4、R;アルキル基]をガス化したガスと酸素ガスが供
給され、反応室4の内部は、常に一定圧力のこれらのガ
スで満たされている。
【0023】次に、基材巻き出し部2より巻き出され、
反応室4に導入された被転写体1は、反転ロール7を経
て、成膜用ドラム8に巻き付き、成膜用ドラム8の回転
と同期しながら反転ロール7′の方向に送られていく。
この時、成膜用ドラム8は、温度コントロールが可能で
あり、この時、被転写体1の表面温度と成膜用ドラム8
の表面温度はほぼ等しい。したがって、プラズマCVD
時に酸化チタンが堆積する被転写体1の表面温度、すな
わちプラズマCVDの成膜温度を任意にコントロールで
きる。この例においては、プラズマCVDにより酸化チ
タン膜12を被転写体1上に成膜する場合の成膜温度
を、その時の成膜用ドラム8の表面温度により表示す
る。上記被転写体1の表面温度、つまりプラズマCVD
の成膜温度は、−10〜150℃の範囲内の温度に制御
することが望ましい。
【0024】電極9と成膜用ドラム8との間には、電源
10によりRF電圧が印加される。このとき、電源の周
波数は、ラジオ波に限らず、直流からマイクロ波まで適
当な周波数を使用することも可能である。そして、電極
9と成膜用ドラム8の間にRF電圧を印加することによ
り、この両電極の周辺にプラズマ11が発生する。そし
て、このプラズマ11中でチタンアルコキシド[Ti
(OR)4、R;アルキル基]のガスと酸素ガスが反応
し、チタンアルコキシドの炭素がエステル化したチタン
化合物を含む酸化チタン(以下酸化チタンと略す)を生
成して、成膜用ドラム8に巻き付いた被転写体1上に堆
積して、酸化チタン膜12が形成される。その後、酸化
チタン膜12が表面に形成された被転写体1は、反転ロ
ール7′を経て、基材巻き取り部2′で巻き取られる。
【0025】上記のように、プラズマ11によりチタン
化合物ガスと酸素ガスが化学反応して生成した酸化チタ
ンが、成膜用ドラム8により適切な温度に冷却された被
転写体1上に堆積して、酸化チタン膜を形成するので、
被転写体1が高温にさらされ、伸び、変形、カール等す
ることなく、酸化チタン膜12の形成が可能である。さ
らに、上記のプラズマCVD法においては、材料ガス流
量・圧力、放電条件、被転写体1の送りスピートのコン
トロールにより、形成される酸化チタン膜12の屈折
率、膜厚等を広範囲でコントロールしうるため、材料を
変更することなく、所望の光学特性の膜を得ることがで
きる。本発明に用いられるプラズマCVD装置として
は、被転写体の温度制御が可能なものであれば特に限定
されるものでなく、電源周波数やプラズマ生成方式にお
いても特に制限はない。
【0026】チタンアルコキシド[Ti(OR)4
R;アルキル基]の有機チタン化合物は、液体気化器で
蒸発されて有機チタン化合物ガスの状態で反応室に導入
される。反応室内には、酸素ガスも導入される。この酸
素ガスは、有機チタン化合物ガスと反応して酸化チタン
を生成するための反応ガスとしての役割を担っている。
また、希ガスを有機チタン化合物ガスのキャリアガスと
して使用する場合もある。酸素ガスと有機チタン化合物
ガスの流量比(酸素ガス/有機チタン化合物ガス)は、
5以上であることが望ましい。この範囲より小さいと、
膜中に混入する炭素量が増加し形成された酸化チタン薄
膜の屈折率が減少する。反応室内の好適な圧力は、1T
orr以下である。圧力が1Torrより大きくなる
と、形成された酸化チタン薄膜の屈折率、機械的強度の
低下という問題が生じるからである。また、有機チタン
化合物ガスの分圧は、10-1Torr以下であることが
好ましい。有機チタン化合物ガスの分圧が10-1Tor
rより大きくなると、反応室内で有機チタン化合物が液
化するという問題が生じる。
【0027】成膜用ドラムは、温度コントロールが可能
なので、プラズマCVD時に酸化チタンが堆積する被転
写体の表面温度、すなわちプラズマCVDの成膜温度を
任意にコントロールできる。この成膜温度は、−10〜
150℃の温度で行うことが好ましい。この温度が−1
0℃より低くなると、形成される酸化チタン膜の屈折率
が低下するので好ましくない。また、成膜温度が150
℃を超えると、本発明で使用可能な基材のプラスチック
フィルムの熱変形温度より高くなってしまうための成膜
時の伸び、変形、カール等の問題を生じ好ましくない。
【0028】さらに反射防止フィルムとしてもわずかな
うねり、変形、伸びも許されない高品質を要求される場
合や、基材のプラスチックフィルムが10μm未満と薄
く熱による伸び変形を受け易い場合は、−10℃からプ
ラスチックフィルムのTg以下の温度で酸化チタン薄膜
のプラズマCVD成膜を行うことが特に望ましい。
【0029】上記図1に示す例では、成膜用ドラムに被
転写体を密着させ、この成膜用ドラムの温度を制御する
ことにより、被転写体の温度制御を行っていたが、これ
に限定されるものでなく、プラズマCVDによる膜が形
成される際の被転写体の温度が制御できる方法であれ
ば、例えば、反応室内の雰囲気温度を制御することによ
り被転写体の温度制御を行う方法や、予め被転写体を所
定の温度とした後反応室内に送入する方法等、特に限定
されるものではない。
【0030】次に、酸化チタン薄膜を最上層に有した、
プラスチックフィルム基材上にシリカによる酸化物薄膜
と酸化チタン薄膜を順に設けた積層体の製造方法の一つ
の実施形態として、図2を用いて、説明する。図示した
プラズマCVD装置は容量結合型のプラズマCVD装置
であり、その基本的構造及び原理は図1で示した装置と
同様である。したがって、図2に示した装置において
も、ウエッブ状のプラスチックフィルム基材21は基材
巻き出し部22より巻き出されて、真空容器23中の反
応室(a,b)に導入される。そして、当該反応室内の
成膜用ドラム24上で所定の膜が形成され、基材巻き取
り部26により巻き取られる。
【0031】図2に示す装置と図1に示す装置との差
は、図1に示す装置においては、フィルム上に酸化チタ
ン膜を形成するための反応室は一つしか設置されていな
いが、図2に示すプラズマCVD装置は、複数(2つ)
の反応室を有している点にある。夫々の反応室(a,
b)は隔離壁25で隔離されることで形成されている。
ここで、以下の説明の便宜上、当該2つの反応室を右側
から反応室a、反応室bとする。そして、各反応室に
は、夫々電極板a1、b1及び原料ガス導入口a2、b
2が設置されている。
【0032】各反応室(a,b)、成膜用ドラム24の
外周に沿って設置されている。これは、積層膜が形成さ
れるプラスチックフィルム(被転写体)は、図1に示す
例で説明したように成膜用ドラム24と同期しながら反
応室内に挿入され、かつ成膜用ドラム上において積層膜
を形成するものであることから、このように配置するこ
とにより連続して各膜を積層することができるからであ
る。なお、図2に示す装置では反応室の数を2室とした
が、酸化チタン薄膜の積層体の製造方法に用いるプラズ
マCVD装置としては、これに限定されるものではな
く、必要に応じて変更することができる。
【0033】上述したようなプラズマCVD装置によれ
ば、各反応室へ導入する原料ガスを変化させることによ
り、夫々の反応室内で独立して膜を形成することが可能
であることから、例えば、酸化チタン薄膜とシリカ薄膜
との積層膜をプラスチックフィルム上に形成する場合
は、反応室aにチタンアルコキシド[Ti(OR)4
R;アルキル基]の有機チタン化合物を含むガスを導入
し、反応室bにはケイ素を含むガスを導入することによ
り、プラスチックフィルム21が成膜用ドラム25を経
て基材巻き取り部26へ巻き取られるまでに当該プラス
チックフィルム21上に酸化チタン薄膜(チタンアルコ
キシドの炭素がエステル化したチタン化合物を含む酸化
チタン薄膜)とシリカ薄膜(酸化物薄膜)とが形成され
た積層体を形成することが可能となる。
【0034】さらに、上記の場合において反応室bに導
入されたガスは、ケイ素を含むガスであるが、反応室内
の条件、例えばガスの流量や圧力、放電条件等を変化さ
せることにより、反応室bで形成されるシリカ薄膜の特
性を変化させることも可能である。当該装置により酸化
チタン薄膜、シリカ薄膜、またこれらの膜の厚さや屈折
率等を自在に組み合わせることが可能となる。尚、上記
のシリカ薄膜を形成するための原料としては、シラン、
ジシラン、ヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)、
テトラメチルジシロキサン(TMDSO)、メチルトリ
メトキシシラン(MTMOS)、メチルシラン、ジメチ
ルシラン、トリメチルシラン、ジエチルシラン、プロピ
ルシラン、フェニルシラン、テトラメトキシシラン、オ
クタメチルシクロテトラシロキサン、テトラエトキシシ
ラン等のSi系化合物を用いることが可能である。
【0035】また、必ずしも夫々の反応室に異なる原料
ガスを導入する必要もなく、例えば図2に示す反応室
a,b全てにケイ素を含むガスを導入することでシリカ
薄膜を形成し、その後に一旦反応室a,bに導入された
ガスを全て抜き、改めて有機化合物を含むガスを反応室
a,bに導入して上記シリカ薄膜の上に酸化チタン薄膜
を形成することも可能である。
【0036】本発明においては、上述した図1に示すよ
うな装置で複数回プラスチックフィルム基材を処理する
ことにより、プラスチックフィルム上に酸化チタン薄膜
とシリカ薄膜(酸化物薄膜)とが形成された積層体を形
成するようにしてもよいし、上述したように図2に示す
装置を用いて一回でプラスチックフィルムを処理するこ
とにより、プラスチックフィルム上に酸化チタン薄膜と
シリカ薄膜(酸化物薄膜)とが形成された積層体フィル
ムを形成するようにしてもよい。また、図2に示す装置
を用いて、複数回プラスチックフィルム基材を処理する
ことにより、酸化チタン薄膜とシリカ薄膜(酸化物薄
膜)とが交互に複数層積層された積層体を得ることも可
能である。
【0037】以上、説明してきた本発明の酸化チタン薄
膜及び酸化チタン薄膜を最上層とした積層体は、透明性
を有する各種の製品、部品等、様々な用途に利用するこ
とができる。例えば、車両用ミラー、道路鏡、歯科用
鏡、浴室用鏡、洗面所用鏡等の鏡、光学レンズ、写真機
レンズ、内視鏡レンズ、照明用レンズ、半導体用レン
ズ、複写機用レンズ、眼鏡レンズ等のレンズ、プリズ
ム、建造物用窓ガラス、自動車用窓ガラス、鉄道車両用
窓ガラス、航空機用窓ガラス、船舶用窓ガラス、潜水艇
用窓ガラス等の乗物用窓ガラス、オートバイの風防ガラ
ス、ヘルメットシールド、ゴーグル、防護用マスクのシ
ールド、スポーツ用マスクのシールド、冷凍食品陳列ケ
ース、保温ショーケース、加熱食品用透明蓋、計器盤カ
バー、車両用照明灯カバー等の透明部材や、建材、タイ
ル、建物外装、建物内装、窓枠、構造部材、自動車外
装、鉄道車両外装、航空機外装、船舶外装等の乗物外装
の一部品として、浴室用窓、浴室照明器具、浴室用壁
材、浴室用床材、浴槽、浴室用グレ−チング、浴室用天
井、シャワ−フック、浴槽ハンドグリップ、浴槽エプロ
ン部、浴槽排水栓、浴室用窓、浴室用窓枠、浴室窓の床
板、浴室照明器具、排水目皿、排水ピット、浴室扉、浴
室扉枠、浴室窓の桟、浴室扉の桟、すのこ、マット、石
鹸置き、手桶、風呂椅子、トランスファ−ボ−ド、給湯
機、浴室用収納棚、浴室用手すり、風呂蓋、浴室用タオ
ル掛け、シャワ−チェア、洗面器置き台等の浴室用部材
の一部品として、台所用品、食器、流し、調理レンジ、
キッチンフード、台所用キッチンバック、台所用床材、
シンク、キッチンカウンタ、排水籠、食器乾燥機、食器
洗浄器、コンロ、レンジフ−ド、換気扇、コンロ着火
部、コンロのつまみ等の台所用部材の一部として、便器
タンク、手洗器、便器サナ、小便器、大便器、便器用ト
ラップ、便器用配管、トイレ用床材、トイレ用壁材、ト
イレ用天井、ボ−ルタップ、止水栓、紙巻き器、便座、
昇降便座、トイレ用扉、トイレブ−ス用鍵、トイレ用タ
オル掛け、便蓋、トイレ用手すり、トイレ用カウンタ、
フラッシュバルブ、タンク、洗浄機能付き便座の吐水ノ
ズル等のトイレ用部材の一部品として、洗面ボウル、洗
面トラップ、洗面用収納棚、排水栓、歯ブラシ立て、洗
面鏡用照明器具、洗面カウンタ、水石鹸供給器、洗面
器、口腔洗浄器、手指乾燥機、回転タオル等の洗面用部
材の一部品として、洗濯槽、洗濯機蓋、洗濯機パン、脱
水槽、空調機フィルタ、タッチパネル、水栓金具、人体
検知センサ−のカバ−、シャワ−ホ−ス、シャワ−ヘッ
ド、シャワ−吐水部、シ−ラント、目地、さらには塗装
物、機械装置、物品外装、防塵カバー、交通標識、各種
表示装置、広告塔、道路用防音壁、道路用遮音壁、鉄道
用遮音壁、橋梁、ガードレール外装、トンネル内装、碍
子、太陽電池カバー、太陽熱温水器集熱カバー、ビニー
ルハウス、住宅設備、照明器具、照明カバー、傘、墓石
等の一部品として、好適に利用できる。
【0038】
【実施例】本発明を実施例により更に詳細に説明する。 (実施例1)基材のプラスチックフィルムである厚さ7
5μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィル
ム上にプラズマCVD法を用いて、シリカ層を25nm
の膜厚で形成し、プラズマCVD法により酸化チタン薄
膜を形成した。有機チタン化合物ガスとしては、液体気
化器を用いて150℃で気化させたチタンテトライソプ
ロポキシドTi(i−OC374(TTIP)を用
い、酸素ガスと混合して原料ガス導入口より反応室内に
導入した。また、連続成膜時の基材となるプラスチック
フィルムの送り速度は、1m/minである。その他の
条件は、以下の通りである。
【0039】<成膜条件:CVD酸化チタン> 印加電力 1.0kW TTIP 30sccm 酸素 3.0slm 前記ガス流量単位sccmは、standard cu
bic cm perminuteのことである。
【0040】以上の条件でポリエチレンテレフタレート
フィルム上に形成した酸化チタン薄膜の表面粗さ、膜厚
等の測定結果を以下に示す。 <酸化チタン薄膜測定結果> 膜厚 20nm 成膜速度 20nm・m/min 屈折率(λ=550nm) 1.9 表面粗さRa 14.33nm
【0041】 <酸化チタン膜測定に使用した装置> 膜厚測定 エリプソメーター 型番 UVISELTM メーカー JOBIN YVON 屈折率測定 エリプソメーター 型番 UVISELTM メーカー JOBIN YVON 表面粗さ測定 ナノピクス メーカー セイコーインスツルメンツ
【0042】実施例1で作製したプラスチックフィルム
基材上に、シリカ層(酸化物薄膜)と酸化チタン薄膜を
形成した積層体において、その酸化チタン薄膜はプラズ
マCVD法による出発原料がチタンアルコキシド[Ti
(OR)4、R;アルキル基]であり、そのチタンアル
コキシドをガス化して、反応室内に導入し、アルコキシ
ドがプラズマ中で部分酸化され、炭素がエステル結合し
て、チタンを含むガスとプラズマにより成膜したもの
で、成膜した酸化チタン薄膜において、チタンに対する
炭素の相対原子比が0.3〜0.8であり、優れた光触
媒効果をもち、また透明性の高いものである。
【0043】(比較例1)基材のプラスチックフィルム
である厚さ75μmのポリエチレンテレフタレート(P
ET)フィルム上にプラズマCVD法を用いてシリカ層
を240nmの膜厚で形成し、プラズマCVD法により
酸化チタン薄膜を形成した。有機チタン化合物ガスとし
ては、液体気化器を用いて150℃で気化させたチタン
テトライソプロポキシドTi(i−OC374(TT
IP)を用い、酸素ガスと混合して原料ガス導入口より
反応室内に導入した。また、連続成膜時の基材となるプ
ラスチックフィルムの送り速度は、1m/minであ
る。その他の条件は、以下に記す。
【0044】<成膜条件:CVDシリカ> 印加電力 1.0kW HMDSO 1.0slm 酸素 3.0slm <成膜条件:CVD酸化チタン> 印加電力 1.0kW TTIP 30sccm 酸素 3.0slm
【0045】前記ガス流量単位sccmは、stand
ard cubic cm perminuteのこと
である。以上の条件でポリエチレンテレフタレートフィ
ルム上に形成した酸化チタン膜の測定結果を以下に示
す。
【0046】<成膜条件:CVDシリカ> 表面粗さRa 0.45nm <酸化チタン膜測定結果> 膜厚 100nm 成膜速度 100nm・m/min 屈折率(λ=550nm) 1.7 表面粗さRa 25.8nm
【0047】 <酸化チタン膜測定に使用した装置> 膜厚測定 エリプソメーター 型番 UVISELTM メーカー JOBIN YVON 屈折率測定 エリプソメーター 型番 UVISELTM メーカー JOBIN YVON 表面粗さ測定 ナノピクス メーカー セイコーインスツルメンツ
【0048】上記の比較例1で得られた酸化チタン薄膜
の積層体は、その酸化チタン薄膜はプラズマCVD法に
よる出発原料が(酸化チタン等、チタンに対する炭素の
相対原子比が0.3〜0.8から外れた範囲であり、そ
のチタン化合物をガス化して、反応室内に導入し、チタ
ンを含むガスとプラズマにより成膜したもので、成膜し
た酸化チタン薄膜において、チタンに対する炭素の相対
原子比が0.3〜0.8から外れた範囲であり、酸化チ
タン薄膜がもろく、且つ光触媒効果が乏しく、また透明
性も劣るものである。
【0049】上記の実施例1及び比較例1で得られた酸
化チタン薄膜を最上層に有する積層体において、夫々の
SEM画像(走査型電子顕微鏡による表面拡大画像)を
撮影し、その実施例1のSEM画像を図3に、また比較
例1のSEM画像を図4に示す。比較例1のSEM画像
を見てわかるように、1〜40nm程度の粒径の非常に
緻密な酸化チタン薄膜が認められる。それに対し、実施
例1のSEM画像を観察すると、30〜400nm程度
の粒径で、比較例1と比べ、表面積が大きく、空隙が大
きな酸化チタン薄膜が認められる。
【0050】
【発明の効果】本発明の酸化チタン薄膜は、CVD法に
よる出発原料がチタンアルコキシド[Ti(OR)4
R;アルキル基]であり、そのチタンアルコキシドをガ
ス化して、反応室内に導入し、アルコキシドがプラズマ
中で部分酸化され、炭素がエステル結合して、チタンを
含むガスとプラズマにより成膜したもので、チタンに対
する炭素の相対原子比が0.3〜0.8である。このプ
ラズマCVD法により製造された酸化チタン薄膜は、そ
の酸化チタン化合物における炭素がエステル結合してい
るものを含有し、チタンに対する炭素の相対原子比が
0.3〜0.8に調整されているため、優れた光触媒効
果をもち、また透明性の高いものとなる。
【0051】本発明の酸化チタン薄膜の積層体は、プラ
スチックフィルムからなる基材上に透明な酸化チタン薄
膜を有する構造、或いはプラスチックフィルム基材と該
基材の表面粗さを制御する為に酸化物薄膜を積層した構
造上に透明な酸化チタン薄膜を有する構造において、該
酸化チタン薄膜が屈折率1.8〜2.1(波長λ=55
0nm)、且つ膜厚10〜300nmである。このよう
に上記の積層体は、酸化チタン薄膜を膜厚で10〜30
0nmとし、且つ波長λが550nmにおける屈折率を
1.8〜2.1に調整することにより、非常に高い透明
性と、優れた光触媒効果を有するものとなる。また、酸
化チタン薄膜の積層体において、透明な酸化チタン薄膜
の下地層であるプラスチックフィルム基材の表面粗さを
1〜10nmに収め、あるいはプラスチックフィルム基
材の表面粗さを制御する為の酸化物薄膜を積層した構造
の表面粗さを0.1〜30nmにして調整することによ
り、酸化チタン薄膜の表面形状及び表面エネルギーを制
御することができた。またこれによって、プラスチック
フィルム基材と酸化チタン薄膜との密着性が高いものが
得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の酸化チタン薄膜の製造方法である一つ
の実施形態を示す概略説明図である。
【図2】本発明のプラスチックフィルム基材上にシリカ
による酸化物薄膜と酸化チタン薄膜を順に設けた積層体
の製造方法である一つの実施形態を示す概略説明図であ
る。
【図3】実施例1における酸化チタン薄膜の積層体のS
EM画像である。
【図4】比較例1における酸化チタン薄膜の積層体のS
EM画像である
【符号の説明】
1、21 プラスチックフィルム基材(被転写
体) 2、22 基材巻き出し部 2′、26 基材巻き取り部 3、23 真空容器 4、a、b 反応室 5 真空ポンプ 6、a2、b2 原料ガス導入口 7 反転ロール 7′ 反転ロール 8、24 成膜用ドラム 9、a1、b1 電極 10 電源 11 プラズマ 12 酸化チタン薄膜 25 隔離壁
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) C01G 23/04 C01G 23/04 C Fターム(参考) 4F100 AA21B AK01A AT00A BA02 EH66B JL08 JM02B JN01B JN18B YY00B 4G047 CA02 CB04 CC03 CD02 4G069 AA03 AA08 BA02B BA04A BA04B BA08A BA08B BA22A BA22B BA27C BA48A CA10 CA11 CA17 DA06 EA08 FA02 FB03 4K030 AA11 BA27 BA46 CA07 CA11 CA12 FA01 JA01 JA06 LA11 LA24

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 CVD法による出発原料がチタンアルコ
    キシド[Ti(OR)4、R;アルキル基]であり、そ
    のチタンアルコキシドをガス化して、反応室内に導入
    し、アルコキシドがプラズマ中で部分酸化され、炭素が
    エステル結合し、チタンを含むガスとプラズマにより成
    膜した酸化チタン薄膜において、チタンに対する炭素の
    相対原子比が0.3〜0.8であることを特徴とする酸
    化チタン薄膜。
  2. 【請求項2】 プラスチックフィルムからなる基材上に
    透明な酸化チタン薄膜を有する構造、或いはプラスチッ
    クフィルム基材と該基材の表面粗さを制御する為に酸化
    物薄膜を積層した構造上に透明な酸化チタン薄膜を有す
    る構造において、該酸化チタン薄膜が屈折率1.8〜
    2.1(波長λ=550nm)、且つ膜厚10〜300
    nmであることを特徴とする酸化チタン薄膜の積層体。
  3. 【請求項3】 請求項1に記載する酸化チタン薄膜を用
    いたことを特徴とする請求項2に記載する酸化チタン薄
    膜の積層体。
  4. 【請求項4】 透明な酸化チタン薄膜の下地層であるプ
    ラスチックフィルム基材の表面粗さが1〜10nmであ
    ることを特徴とする請求項2または3に記載する酸化チ
    タン薄膜の積層体。
  5. 【請求項5】 プラスチックフィルム基材の表面粗さを
    制御する為に酸化物薄膜を積層した構造の表面粗さが
    0.1〜30nmであることを特徴とする請求項2、
    3、4のいずれか一つに記載する酸化チタン薄膜の積層
    体。
  6. 【請求項6】 プラズマCVD法により、反応室内にチ
    タンアルコキシド[Ti(OR)4、R;アルキル基]
    をガス化した原料ガスを導入して、プラズマ中でアルコ
    キシドが部分酸化され、炭素がエステル結合し、チタン
    を含むガスとプラズマにより成膜させて酸化チタン薄膜
    を製造する方法で、その得られる酸化チタン薄膜におけ
    るチタンに対する炭素の相対原子比が0.3〜0.8で
    あることを特徴とする酸化チタン薄膜の製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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