JP2003215302A - 着色されたプラスチックレンズおよびその製造方法 - Google Patents

着色されたプラスチックレンズおよびその製造方法

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JP2003215302A
JP2003215302A JP2002011039A JP2002011039A JP2003215302A JP 2003215302 A JP2003215302 A JP 2003215302A JP 2002011039 A JP2002011039 A JP 2002011039A JP 2002011039 A JP2002011039 A JP 2002011039A JP 2003215302 A JP2003215302 A JP 2003215302A
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plastic lens
lens
dye
refractive index
heating
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JP2002011039A
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Hiroko Kawamura
川村裕子
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Nikon Essilor Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 (修正有) 【課題】 1分子中に2個以上のエピチオ基を有する化
合物を主成分とするモノマーを重合硬化して得られる高
屈折率プラスチックレンズ用材料を素材とする、着色さ
れた高屈折率プラスチックレンズの製造方法、及び該高
屈折率プラスチックレンズ用材料を素材とする、着色さ
れた高屈折率プラスチックレンズの提供。 【解決手段】 1分子中に2個以上のエピチオ基を有す
る化合物を主成分とするモノマーを注型重合してなる高
屈折率プラスチックレンズ基材の表面に、染料およびバ
インダー樹脂を溶解させたコーティング液をコートし、
次いで、コーティング液面を均一に加熱又は不均等加熱
し、レンズ基材内部に染料を浸透・拡散させる、着色さ
れた高屈折率プラスチックレンズの製造方法、及び該製
造方法により製造された着色された高屈折率プラスチッ
クレンズ。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、着色されたプラス
チックレンズの製造方法及び着色されたプラスチックレ
ンズに関し、さらに詳しくは、1分子中に2個以上のエ
ピチオ基を有する化合物を主成分とするモノマーを重合
硬化して得られる高屈折率プラスチックレンズ用材料を
素材とする、着色された高屈折率プラスチックレンズの
製造方法、及び該高屈折率プラスチックレンズ用材料を
素材とする着色された高屈折率プラスチックレンズに関
する。
【0002】
【従来の技術】近年、プラスチックレンズは成形が容易
なこと、軽くて割れにくいこと、着色が容易であること
などの特徴を有することから、ファッション性が重視さ
れる眼鏡用レンズとして広く用いられるようになってい
る。この様な眼鏡プラスチックレンズ用樹脂としてはポ
リジエチレングリコールビスアリルカーボネート(以
下、「CR−39」と略称する。)が最も一般的なもの
である。ただし、このCR−39樹脂は屈折率が1.5
0とガラスレンズに比べて低いために、ガラスレンズと
同等の光学性を得るには、レンズのコバ厚及び曲率を大
きくする必要があり、全体的に肉厚になることは避けら
れない。このため強度の矯正レンズでは、プラスチック
の特徴である軽量性が生かせないのみならず、見かけが
悪くなるため、より屈折率が高く、より軽いレンズ用樹
脂が数多く開発され、実用化されている。
【0003】このような、高屈折率のプラスチックレン
ズも、低屈折率プラスチックレンズと同様に好みの色に
着色される事が要求される。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記に鑑
み、1分子中に2個以上のエピチオ基を有する化合物を
主成分とするモノマーを重合硬化して得られる高屈折率
プラスチックレンズ用材料を素材とする、着色された高
屈折率プラスチックレンズの製造方法、及び上記高屈折
率プラスチック材料を素材とする、着色された高屈折率
プラスチックレンズを提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】上記問題点を解決するた
めに、請求項1のプラスチックレンズの製造方法は、均
一に着色された高屈折率プラスチックレンズの製造方法
であって、1分子中に2個以上のエピチオ基を有する化
合物を主成分とするモノマーを注型重合して得られた高
屈折率プラスチックレンズ基材の少なくとも一方の表面
に、染料およびバインダー樹脂を溶解させたコーティン
グ液をコートし、次いでコーティング液面を均一に加熱
し、レンズ基材内部に染料を浸透、拡散させることを特
徴とする。
【0006】請求項2のプラスチックレンズの製造方法
は、請求項1に記載の発明において、上記コーティング
液面を均一に加熱するための加熱を、放射線熱源からの
放射線の照射によって行うことを特徴とする。
【0007】請求項3のプラスチックレンズの製造方法
は、なだらかな濃度勾配を有する着色された高屈折率プ
ラスチックレンズの製造方法であって、1分子中に2個
以上のエピチオ基を有する化合物を主成分とするモノマ
ーを注型重合して得られた高屈折率プラスチックレンズ
基材の少なくとも一方の表面に、染料およびバインダー
樹脂を溶解させたコーティング液をコートし、次いでコ
ーティング液面を加熱領域が徐々に変化するようにしな
がら加熱し、レンズ基材内部に染料を浸透、拡散させる
ことを特徴とする。
【0008】請求項4のプラスチックレンズの製造方法
は、請求項3に記載の発明において、上記コーティング
液面を、加熱領域が徐々に変化するようにして加熱する
ための加熱を、放射線熱源からの放射線の照射によって
行い、かつ照射時間又は照射距離を制御することを特徴
とする。
【0009】請求項5のプラスチックレンズの製造方法
は、請求項3又は4項に記載の発明において、上記熱源
とレンズ基材の間に揺動可能な遮蔽板を設置することを
特徴とする。
【0010】請求項6のプラスチックレンズの製造方法
は、請求項1〜5項のいずれか1項に記載の発明におい
て、1分子中に2個以上のエピチオ基を有する化合物
が、一般式(I)
【0011】
【化2】 (式中、mは0〜6の整数、nは0〜4の整数であ
る。)で表される化合物であることを特徴する。
【0012】請求項7のプラスチックレンズは、請求項
1〜6項のいずれか1項に記載のプラスチックレンズの
製造方法により製造されたことを特徴とする。
【0013】
【発明の実施の形態】以下、本発明の構成について以下
に詳細に説明する。
【0014】本発明におけるプラスチックレンズ基材と
しては、1分子中に2個以上のエピチオ基を有する化合
物を主成分とするモノマーを注型重合して成形したもの
が用いられる。1分子中に2個以上のエピチオ基を有す
る化合物としては、一般式(I)
【0015】
【化3】 (式中、mは0〜6の整数、nは0〜4の整数であ
る。)で表される化合物が好適に用いられる。これらの
中でも特に、ビス(2,3−エピチオプロピル)スルフ
ィドもしくは、ビス(2,3−エピチオプロピル)ジス
ルフィドが好適に用いられる。
【0016】本発明で用いられるプラスチックレンズ基
材は、上記一般式(I)で表される化合物1種類以上の
モノマーに重合開始剤を混合し、ガラス製モールドに注
入した後、重合硬化させることにより成形することがで
きる。モノマー中には、一般式(I)で表される化合物
と共重合可能な改質剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤など
を加えることも可能である。
【0017】重合開始剤としては、アミン類、ホスフィ
ン類、有機酸、ルイス酸などの酸類が用いられるが、こ
の中で特にアミン類が好適に用いられる。
【0018】本発明で使用されるコーティング液は、染
料及びバインダー樹脂を溶媒に溶解させることにより調
整される。
【0019】また、本発明におけるコーティング液の調
整に使用されるバインダー樹脂としては、塩化ビニル樹
脂、酢酸ビニル樹脂、ポリアミド、ポリエチレン、ポリ
カーボネート、ポリスチレン、フェノール樹脂、ポリプ
ロピレン、フッ素樹脂、ブチラール樹脂、メラミン樹
脂、ポリビニルアルコール、セルロース樹脂、アルキド
樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ポ
リエステル樹脂、シリコン樹脂などがあげられる。これ
らの樹脂は一種でも使用可能であるが、数種を混合した
り、さらに共重合体を使用することも可能である。
【0020】本発明におけるコーティング液の調整に使
用される染料としては、分散染料、反応染料、直接染
料、複合染料、酸性染料、金属錯塩染料、建染染料、硫
化染料、アゾ染料、蛍光染料、樹脂着色用染料、その他
機能性染料などが挙げられるが、これ以外にも染料であ
れば特に制限されるものではない。これらの染料は一種
でも数種混合しても使用することが可能である。コーテ
ィング液に溶解する量としては、0.1wt%〜99.
9wt%まで可能であるが、好ましくは1wt%〜50
wt%である。この範囲よりも少ないと充分な着色レン
ズが得にくく、この範囲よりも多いと、染料によっては
凝集などを生じて使用困難となる。コーティング液には
必要に応じて、pH調整剤、粘度調整剤、レベリング
剤、つや消し剤、安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤等
の各種添加剤を併用してもよい。
【0021】本発明におけるコーティング液の調整に使
用される溶剤としては、例えばメタノール、エタノー
ル、メチルエチルケトン、エチレングリコールモノエチ
ルエーテル、アセトン、イソブチルアルコール、エチル
エーテル、クロロベンゼン、酢酸イソブチル、酢酸イソ
プロピル、酢酸イソペンチル、酢酸エチル、酢酸ブチ
ル、酢酸ペンチル、酢酸メチル、シクロヘキサノール、
1,4−ジオキサン、N,N−ジメチルホルムアミド、
テトラヒドロフラン、1,1,1−トリクロロエタン
(メチルクロロホルム)、トルエン、1−ブタノール、
2−ブタノール、メチルイソブチルケトン、メチルシク
ロヘキサノン、メチルブチルケトン、アセトフェノン、
安息香酸エステル、メチルシクロヘキサン等であり、染
料が十分溶解されるのもであればどのようなものでもよ
く、単独もしくは2種類以上の混合物を用いてもよい。
【0022】コーティング液の塗布方法としては、刷毛
塗り、浸漬、スピンコート、ロール塗り、スプレー塗
装、流し塗り、インクジェット型塗布など通常の塗布方
法を用いることができる。塗布面に関しては、レンズ片
面にコートしてもよいし、染色濃度をさらに上げるため
に両面にコートしてもよい。
【0023】レンズ全面に均一な染色濃度で着色加工を
行う場合には、コーティング液をレンズにコートした
後、染料をレンズ全面に加熱浸透させるが、その条件と
して加熱温度は70℃〜180℃がよい。また加熱方法
としては、エアオーブン加熱以外にも遠赤外照射加熱、
UV照射加熱なども用いることができる。
【0024】レンズ基材になだらかな濃度勾配をもった
着色加工を行う場合には、コーティング液をレンズにコ
ートした後、コーティング液面を加熱領域が徐々に変化
するようにしながら加熱(以下、「不均等加熱」と呼称
することもある。)し、それによりレンズ基材内部に前
記濃度勾配に対応した量の染料を浸透させることができ
る。
【0025】不均等加熱の手段としては、加熱を遠赤外
照射加熱あるいはUV照射加熱などの放射加熱によって
行い、不均等加熱の制御を (1)熱源とレンズ基材の間に設置した揺動可能な遮蔽
板の位置および動作制御。 (2)加熱照射時間の制御。 (3)加熱照射距離の制御。 のいずれかによって行うことができる。
【0026】本発明の製造方法および従来の製造方法に
よって、プラスチックレンズの着色実験を行い、結果を
比較する。
【0027】
【実施例】(実施例1)モノマーとして、ビス(2,3
−エピチオプロピル)ジスルフィドを100gと、樹脂
改質剤として、4,8−ジメルカプトメチル−1,11
−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカンを1
0gと、重合開始剤として、N,N−ジメチルシクロヘ
キシルアミン、0.5gを準備し、これらを混合し、減
圧下において10分間脱泡しモノマー溶液を得た。この
モノマー溶液を、4μmテフロン(登録商標)フィルタ
ーによりろ過した後、ガラスモールドとガスケットから
なる成形型に注入した。このモールドを30℃で10時
間保持させた後、30℃から80℃まで24時間かけて
徐々に昇温し、重合を行った。重合終了後、モールドを
徐々に冷却した後、成形型から離型しレンズ基材を得
た。このレンズ基材を120℃で3時間、アニール処理
を行った。このレンズ基材の屈折率は1.74、アッベ
数は33であった。次に染料及びバインダー樹脂から染
料液を調製する。イエロー染料としてミケトン(登録商
標)ポリエステルイエローHLSを7wt%、レッド染
料としてミケトン(登録商標)ポリエステルレッドFB
を8wt%、ブルー染料としてミケトン(登録商標)ポ
リエステルブルーFBLを15wt%、ポリビニルアル
コール20wt%、メチルエチルケトン50wt%を混
合し、一昼夜撹拌することにより染料液を調整した。調
製した染料液を、成形した屈折率1.74のプラスチッ
クレンズの全面にスピンコートし、それを熱風オーブン
で180℃、1時間加熱を行い、レンズ表面に染料を浸
透、拡散させた。その後レンズを冷却し、洗浄すること
によって表面の樹脂層を取り除いた。
【0028】次にγ−グリシドキシプロピルトリメトキ
シシラン、エポキシ樹脂、アルミニウムアセチルアセト
ネートを主成分とする耐衝撃性向上コートを形成し、γ
−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、酸化チタ
ンと酸化ジルコニウムの複合ゾルを主成分とする耐擦傷
性向上ハードコートを形成した。さらに、真空蒸着法に
より多層膜反射防止コートを成膜した。低屈折率膜の蒸
着材料として、酸化ケイ素を用い、高屈折率の蒸着材料
として酸化チタンを用いた。この様にして全面が染色さ
れたプラスチックレンズを得た。このプラスチックレン
ズについて視感透過率を測定し、染色のムラの有無を観
察し○×で評価した。視感度透過率は23%でり、全面
にムラは見られなかった。評価結果は他の実施例及び比
較例の評価結果と共に表1に記載した。なお、表1では
全面に染色したものを「F」と表記した。
【0029】(実施例2)実施例2は、本発明の方法を
用いてグラデーション染色をした例である。実施例2の
プラスチックレンズは実施例1と同じ基材(屈折率1.
74)を用いた。モノマーの調整から、染料液の調整ま
では実施例1と同じである。実施例1と同じ染料液をプ
ラスチックレンズの凹面にスピンコートした。その後、
図1に示すような方法によりグラデーション状の染色レ
ンズを製造した。図1は、染料液をスピンコートしたプ
ラスチックレンズを加熱する装置を用いて、染色する工
程を説明するための概念図である。図1の上側は装置を
側面から見た状態を、図1の下側は装置を上から見た状
態を示している。図1の装置は、レンズ置台2、遠赤外
線熱源3、遠赤外線熱源3とレンズ置台2との間に設置
された遮蔽板4を主な構成要素としている。図1を用い
てグラデーション状の染色を説明する。まず、染料液が
スピンコートされたレンズ基材1の凹面を上にした状態
でレンズ置台2上に載せる。遠赤外線熱源3は前記レン
ズ基材1の上方に、前記レンズ基材と略平行となるよう
に設置されている。遮蔽板4は前記レンズ基材1と遠赤
外線熱源3との間に設置され、前記熱源3からの加熱を
遮断し、図示しないモーターによって水平方向に移動可
能となっている。
【0030】最初に加熱する際には図1に示すように、
遮蔽板4はレンズ表面の約2/3(図の左側2/3)が
隠れるように設置する。この状態で遠赤外線熱源3によ
ってレンズ基材1を加熱するとレンズ基材1の表面の遮
蔽されていない約1/3の領域(図の右側部分)が加熱
されることになり、遮蔽された残りの領域は加熱されて
いないことになる。次に、遮蔽板4をモーターにより、
図の左側に徐々に移動させる。遮蔽板4の移動は予め所
望のパターンに従って作成されたプログラムによってモ
ーターを駆動することによって行われる。そして、時間
とともにレンズ基材1の表面の約1/3の領域から表面
全体を加熱するように遮蔽板4をモーターで移動させ
る。このように遮蔽板4を移動させながらレンズ表面を
加熱することにより、最初に遮蔽されていた領域も徐々
に加熱され、レンズ表面の被加熱量に勾配が生じること
になる。レンズの表面に塗布された染料は、この加熱量
の勾配に比例してレンズ基材の表面内部に浸透すること
になる。従って、レンズ基材の表面内部に浸透する染料
量にも勾配が生じ、グラデーション状に染色されたプラ
スチックレンズが得られるのである。その後、実施例1
と同じ方法でレンズ基材表面上に残った余分な染料と樹
脂層を取り除き、さらに耐衝撃性向上コート、耐擦傷性
向上ハードコート、反射防止コートを成膜した。この様
にして作られた染色されたプラスチックレンズの視感度
透過率は48%であった。また、染色状態は所望のグラ
デーションとなっており、局所的な染色等のムラは見ら
れなかった。なお、表1ではグラデーション状に染色し
たものを「G」と表記した。
【0031】(実施例3)実施例3も、本発明の方法を
用いてグラデーション染色をした例である。実施例3の
プラスチックレンズは実施例1と同じ基材(屈折率1.
74)を用いた。モノマーの調整から、染料液の調整ま
では実施例1と同じである。実施例1と同じ染料液をプ
ラスチックレンズの凹面にスピンコートした。その後、
図2に示すような方法によりグラデーション状の染色レ
ンズを製造した。図2は、染料液をスピンコートしたプ
ラスチックレンズを加熱する装置を用いて、染色する工
程を説明するための概念図である。図2上側は装置を側
面から見た状態を、図2の下側は装置を上から見た状態
を示している。図2の装置は、レンズ置台2、遠赤外線
熱源3、レンズ置台2を設置するコンベア6、遠赤外線
熱源3とレンズ置台との間に設置された遮蔽板5を主な
構成要素としている。遠赤外線熱源3は、レンズ基材1
の上方に、レンズ基材と略平行となるように設置されて
いる。まず、レンズ基材1を、染料液がスピンコートさ
れた凹面を上にした状態でコンベア6上に設置されたレ
ンズ置台2の上に載せた。レンズ置台2の最初の位置
は、図2のようにコンベア6の右端であり、コンベア6
はレンズ置台2及びレンズ基材1を載せた状態で右から
左へと矢印の方向に動くようになっている。また、遮蔽
板5は上側から見たときに台形となっており、レンズ基
材1がコンベアに載って右から左へと移動すると、遮蔽
板5によって遮蔽される面積が大きくなるようになって
いる。
【0032】即ち、レンズ基材1を右から左へコンベア
6によって移動させながら、遠赤外線熱源3によって加
熱することにより、加熱の初期段階ではレンズ基材表面
の約2/3が遮蔽板5により遮蔽されることなく加熱さ
れ、徐々にレンズを遮蔽する部分が変化し、遮蔽領域が
徐々に増加していく。従って、加熱が終了した時点にお
いては、レンズ基材への被加熱量に勾配が生じて、その
被加熱量の勾配に比例して、染料のレンズ基材への内部
浸透量にも勾配が生じ、グラデーション状の染色レンズ
が得られる。その後、実施例1と同じ方法でレンズ基材
表面上に残った余分な染料と樹脂層を取り除き、さらに
耐衝撃性向上コート、耐擦傷性向上ハードコート、反射
防止コートを成膜した。この様にして作られた染色され
たプラスチックレンズの視感度透過率は45%であっ
た。また、染色状態は所望のグラデーションとなってお
り、局所的な染色等のムラは見られなかった。
【0033】(実施例4)実施例4も、本発明の方法を
用いてグラデーション染色をした例である。実施例4の
プラスチックレンズは実施例1と同じ基材(屈折率1.
74)を用いた。モノマーの調整から、染料液の調整ま
では実施例1と同じである。実施例1と同じ染料液をプ
ラスチックレンズの凹面にスピンコートした。その後、
図3に示すような方法によりグラデーション状の染色レ
ンズを製造した。図3は、染料液をスピンコートしたプ
ラスチックレンズを加熱する装置を用いて染色する工程
を説明するための概念図である。図3の上側は装置を側
面から見た状態を、図3の下側は装置を上から見た状態
を示している。図3の装置は、レンズ置台2、遠赤外線
熱源3、レンズ置台2を設置するコンベア6、遠赤外線
熱源3とレンズ置台との間に設置された4枚の遮蔽板7
を主な構成要素としている。遠赤外線熱源3は、レンズ
基材1の上方に、レンズ基材と略平行となるように設置
されている。また、4枚の遮蔽板7はそれぞれ、図示し
ないモーターによって水平方向に駆動され、レンズ基材
1を遮蔽する領域を可変とすることができる。
【0034】まず、レンズ基材1を、染料液がスピンコ
ートされた凹面を上にした状態でコンベア6上に設置さ
れたレンズ置台2の上に載せた。レンズ置台2の最初の
位置は、図2のようにコンベア6の右端であり、コンベ
ア6はレンズ置台2及びレンズ基材1を載せた状態で右
から左へと矢印の方向に動くようになっている。4枚の
遮蔽板7の移動パターンは、予めプログラムによってそ
れぞれの移動パターンを決められており、レンズ基材1
を右から左へコンベア6によって移動させながら、遠赤
外線熱源3によって加熱することにより、徐々にレンズ
を遮蔽する部分が変化する。従って、加熱が終了した時
点においては、レンズ基材1への被加熱量に勾配が生じ
て、その被加熱量の勾配に比例して、染料のレンズ基材
への内部浸透量にも勾配が生じ、グラデーション状の染
色レンズが得られる。その後、実施例1と同じ方法でレ
ンズ基材表面上に残った余分な染料と樹脂層を取り除
き、さらに耐衝撃性向上コート、耐擦傷性向上ハードコ
ート、反射防止コートを成膜した。この様にして作られ
た染色されたプラスチックレンズの視感度透過率は39
%であった。また、染色状態は所望のグラデーションと
なっており、局所的な染色等のムラは見られなかった。
【0035】
【比較例】(比較例1)比較例は、実施例と同じレンズ
基材を従来の方法を用いて全面染色した例である。実施
例4のプラスチックレンズは実施例1と同じ基材(屈折
率1.74)を用いた。モノマーの調整までは実施例1
と同じである。分散染料としてミケトン(登録商標)ポ
リエステルイエローHLSを1.8g、ミケトン(登録
商標)ポリエステルレッドFLを0.3g、ミケトン
(登録商標)ポリエステルブルー2RFを0.7gを、
界面活性剤2.0gと共に1リットルの水に分散させ染
色液を調整した。この染色液を加熱し、温度を93℃に
保った。実施例1と同じレンズ基材を2時間浸漬した。
その後、レンズを冷却し、レンズ基材の表面に残った余
分な染料を取り除き、実施例1と同じ方法で耐衝撃性向
上コート、耐擦傷性向上ハードコート、反射防止コート
を成膜しプラスチックレンズを得た。得られたプラスチ
ックレンズの視感透過率を測定したところ84%であ
り、外観上もほとんど染色できないものであった。
【0036】(比較例2)比較例2は、屈折率が1.6
0のレンズ基材(モノマーは三井化学製、商品名MR−
90を使用)に、比較例2と同じ方法で染色を行った例
である。レンズ基材を市販のポリウレタン系プラスチッ
クレンズ(屈折率1.60)とした他は、染色液の調整
から、反射防止コートの成膜まで、比較例1と同じであ
った。得られたプラスチックレンズの視感透過率を測定
したところ45%であり、レンズ全面が均一に染色され
ており染色ムラは見られなかった。
【0037】(比較例3)比較例3は、比較例2と同じ
屈折率1.60のレンズ基材を比較例2と類似した方法
によってグラデーション状に染色した例である。染色液
の調整までは比較例2と同じである。この染色液を加熱
し、温度を93℃に保ちながら、まず、レンズ表面の1
/3を染色液に30分間浸漬し、その後にレンズ表面の
2/3を30分浸漬し、さらにレンズ基材全体を染色液
に30分浸漬した。その後、レンズを冷却し、レンズ基
材の表面に残った余分な染料を取り除き、実施例1と同
じ方法で耐衝撃性向上コート、耐擦傷性向上ハードコー
ト、反射防止コートを成膜しプラスチックレンズを得
た。得られたプラスチックレンズの視感透過率を測定し
たところ52%であり、また、染色状態は所望のグラデ
ーションとなっており、局所的な染色等のムラは見られ
なかった。比較例1〜3の結果より、比較例1〜3の染
色方法は従来の屈折率1.60以下のプラスチックレン
ズの染色には適しているものの、エピチオ基を有する高
屈折率のプラスチックレンズを染色することができない
ということが明らかになった。
【0038】(比較例4)比較例4は、実施例1のレン
ズ基材の全面を従来の方法で染色した例である。発明者
は、比較例1の方法を改善するために、染色を促進する
助剤を添加する方法を試した例である。染色液の調整
は、分散染料ミケトン(登録商標)ポリエステルイエロ
ーHLSを1.8g、ミケトン(登録商標)ポリエステ
ルレッドFLを0.3g、ミケトン(登録商標)ポリエ
ステルブルー2RFを0.7g、界面活性剤2.0g、
染色助剤としてクロロベンゼン5mlと共に水中に分散
させることによって染色液1リットルを調整した。この
染色液1を93℃に加熱し、実施例1と同じ方法で染色
液に2時間浸漬し、その後、レンズを冷却し、レンズ基
材の表面に残った余分な染料を取り除き、実施例1と同
じ方法で耐衝撃性向上コート、耐擦傷性向上ハードコー
ト、反射防止コートを成膜しプラスチックレンズを得
た。得られたプラスチックレンズの視感透過率を測定し
たところ、82%となり、ほとんど染色できないもので
あった。
【0039】(比較例5)比較例5は、屈折率が1.6
0のレンズ基材(モノマーは三井化学製、商品名MR−
90)に、比較例4と同じ方法で染色を行った例であ
る。レンズ基材を市販のポリウレタン系プラスチックレ
ンズ(屈折率1.60)とした他は、染色液の調整か
ら、反射防止コートの成膜まで、比較例4と同じであっ
た。得られたプラスチックレンズの視感透過率を測定し
たところ53%であり、レンズ全面が均一に染色されて
おり染色ムラは見られなかった。
【0040】(比較例6)比較例6は、比較例5と同じ
屈折率1.60のレンズ基材を比較例5と類似した方法
によってグラデーション状に染色した例である。染色液
の調整までは比較例5と同じである。この染色液を加熱
し、温度を93℃に保ち、レンズ表面の2/3の部分を
染色液に揺動させながら15分浸漬した。その後、レン
ズを冷却し、レンズ基材の表面に残った余分な染料を取
り除き、実施例1と同じ方法で耐衝撃性向上コート、耐
擦傷性向上ハードコート、反射防止コートを成膜しプラ
スチックレンズを得た。得られたプラスチックレンズの
視感透過率を測定したところ66%であり、また、染色
状態は所望のグラデーションとなっており、局所的な染
色等のムラは見られなかった。比較例4〜6の結果よ
り、比較例4〜6の染色方法は従来の屈折率1.60以
下のプラスチックレンズの染色には適しているものの、
エピチオ基を有する高屈折率のプラスチックレンズを染
色することができないということが明らかになった。
【0041】(比較例7)比較例7は、比較例4に、染
色を促進する助剤をさらに添加した例である。発明者
は、比較例4では染色液に添加した助剤の量が不足した
ために染色できなかったと考え、比較例7の実験を行っ
た。染色液の調整は、分散染料ミケトン(登録商標)ポ
リエステルイエローHLSを1.8g、ミケトン(登録
商標)ポリエステルレッドFLを0.3g、ミケトン
(登録商標)ポリエステルブルー2RFを0.7g、界
面活性剤2.0g、染色助剤としてクロロベンゼン30
mlと共に水中に分散させ染色液1リットルを調整し
た。この染色液を93℃に加熱し、実施例1と同じ方法
で染色液に2時間浸漬し、その後、レンズを冷却し、レ
ンズ基材の表面に残った余分な染料を取り除き、実施例
1と同じ方法で耐衝撃性向上コート、耐擦傷性向上ハー
ドコート、反射防止コートを成膜しプラスチックレンズ
を得た。得られたプラスチックレンズの視感透過率を測
定したところ79%であり、比較例4よりいくらか改善
が見られた。しかし、プラスチックレンズの表面に染色
の濃淡のムラができ、外観が悪くなると共に、使用した
染色液は、分散していた染料が凝集したため、次回以降
の染色に使用出来なくなった。
【0042】(比較例8)比較例8は、屈折率が1.6
0のレンズ基材(モノマーは三井化学製、商品名MR−
90)に、比較例7と同じ方法で染色を行った例であ
る。レンズ基材を市販のポリウレタン系プラスチックレ
ンズ(屈折率1.60)とした他は、染色液の調整か
ら、反射防止コートの成膜まで、比較例7と同じであっ
た。得られたプラスチックレンズの視感透過率を測定し
たところ25%であったが、プラスチックレンズの表面
に染色の濃淡のムラができ、外観が悪くなると共に、使
用した染色液は、分散していた染料が凝集したため、次
回以降の染色に使用出来なくなった。比較例7と8の結
果より、染色のために助剤を多く添加する方法では、実
施例1のレンズ基材を染色することが出来ないことが明
らかになった。
【0043】(比較例9)比較例9は、高温高圧状態で
染料をレンズ基材に浸透させる方法である。レンズ基材
の準備までは実施例1と同じである。染料液の調整は、
分散染料ダイアニクス(登録商標)レッドAC−E01
を0.5g、ダイアニクス(登録商標)イエローAC−
Eを2.5g、ダイアニクス(登録商標)ブルーAC−
Eを2.0g、界面活性剤を2.0g準備し、これらを
温水280mlに分散させて調整した。ステンレス製耐
圧容器に染料液を入れ、レンズ基材が染料液に接触する
領域を調節できるようにレンズ基材をステンレス製耐圧
容器中に取り付け、容器を密封した。染色液が130℃
となるように加熱し、グラデーション状に染色されるよ
うに、レンズ基材が染色液に浸る領域を10分ごとに変
更し、1時間加熱し続けた。ステンレス製耐圧容器を冷
却後、レンズ基材を取り出し、レンズ基材の表面に残っ
た余分な染料を取り除き、実施例1と同じ方法で耐衝撃
性向上コート、耐擦傷性向上ハードコート、反射防止コ
ートを成膜しプラスチックレンズを得た。得られたプラ
スチックレンズの視感透過率を測定したところ視感透過
率は38%となり、かなり濃く染色することができた。
しかし、グラデーション状の均一な勾配には染まらず、
くっきりとした模様になってしまった。このことから、
比較例9の方法では、エピチオ基を有する高屈折率のプ
ラスチックレンズをグラデーション状に染色することが
できないということが明らかになった。これらの比較例
の結果が示すように、従来のいずれの方法でも、エピチ
オ基を有する高屈折率のプラスチックレンズをグラデー
ション状に染色することができず、本発明の方法のみが
グラデーション状に染色する唯一の方法であることが明
瞭となった。
【0044】
【表1】
【0045】
【発明の効果】本発明によれば、1分子中に2個以上の
エピチオ基を有する化合物を主成分とするモノマーを重
合硬化して得られる高屈折率プラスチックレンズ用材料
を素材とする、視感透過率が低い(実施例では48%以
下。)の着色された高屈折率プラスチックレンズを提供
することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】不均等加熱手段の例を示す概念図である。
【図2】不均等加熱手段の他の例を示す概念図である。
【図3】不均等加熱手段の他の例を示す概念図である。
【符号の説明】
1.レンズ基材 2.レンズ置台 3.遠赤外線熱源 4.遮蔽版 5.遮蔽版 6.コンベア 7.遮蔽版
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) G02B 3/00 G02B 5/22 4J030 5/22 G02C 7/10 G02C 7/10 B29K 81:00 // B29K 81:00 B29L 11:00 B29L 11:00 C08L 81:02 C08L 81:02 G02B 1/10 Z Fターム(参考) 2H006 BA01 BA03 BA06 BE05 2H048 CA04 CA09 CA14 CA20 CA29 2K009 BB11 CC21 CC34 DD02 DD06 DD09 EE01 4F006 AA40 AB20 AB55 BA00 CA05 EA05 4F204 AA34 AB04 AG01 AH74 EA03 EA04 EB01 EK13 EK15 EK17 EW06 EW34 EW37 4J030 BA04 BB03 BF19 BG25

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 着色された高屈折率プラスチックレンズ
    の製造方法であって、1分子中に2個以上のエピチオ基
    を有する化合物を主成分とするモノマーを注型重合して
    得られたプラスチックレンズ基材の少なくとも一方の表
    面に、染料およびバインダー樹脂を溶解させたコーティ
    ング液をコートし、次いでコーティング液面を均一に加
    熱し、レンズ基材内部に染料を浸透、拡散させることを
    特徴とする着色されたプラスチックレンズの製造方法。
  2. 【請求項2】 コーティング液面を均一に加熱するため
    の加熱を、放射線熱源からの放射線の照射によって行う
    ことを特徴とする請求項1に記載の着色されたプラスチ
    ックレンズの製造方法。
  3. 【請求項3】 なだらかな濃度勾配を有する着色された
    高屈折率プラスチックレンズの製造方法であって、1分
    子中に2個以上のエピチオ基を有する化合物を主成分と
    するモノマーを注型重合して得られたプラスチックレン
    ズ基材の少なくとも一方の表面に、染料およびバインダ
    ー樹脂を溶解させたコーティング液をコートし、次いで
    コーティング液面を加熱領域が徐々に変化するようにし
    ながら加熱し、レンズ基材内部に染料を浸透、拡散させ
    ることを特徴とする着色されたプラスチックレンズの製
    造方法。
  4. 【請求項4】 上記コーティング液面を、加熱領域が徐
    々に変化するようにして加熱するための加熱を、放射線
    熱源からの放射線の照射によって行い、かつ照射時間又
    は照射距離を制御することを特徴とする請求項3に記載
    の着色されたプラスチックレンズの製造方法。
  5. 【請求項5】 上記熱源とレンズ基材の間に揺動可能な
    遮蔽板を設置する請求項3又は4項に記載の着色された
    プラスチックレンズの製造方法。
  6. 【請求項6】 1分子中に2個以上のエピチオ基を有す
    る化合物が、一般式(I) 【化1】 (式中、mは0〜6の整数、nは0〜4の整数であ
    る。)で表される化合物である請求項1〜5のいずれか
    1項に記載の着色されたプラスチックレンズの製造方
    法。
  7. 【請求項7】 請求項1〜6のいずれか1項に記載のプ
    ラスチックレンズの製造方法により製造された着色され
    たプラスチックレンズ。
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