JP2003192730A - マレイン酸無水物重合体、その製造方法及び有機エレクトロルミネッセンス素子 - Google Patents

マレイン酸無水物重合体、その製造方法及び有機エレクトロルミネッセンス素子

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JP2003192730A
JP2003192730A JP2001393867A JP2001393867A JP2003192730A JP 2003192730 A JP2003192730 A JP 2003192730A JP 2001393867 A JP2001393867 A JP 2001393867A JP 2001393867 A JP2001393867 A JP 2001393867A JP 2003192730 A JP2003192730 A JP 2003192730A
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Abstract

(57)【要約】 (修正有) 【課題】 陽極との密着性が高く、低い印加電圧で輝度
の高い発光を得ることができ、かつ、ウェット方式での
正孔輸送層の重合体の製膜に際し溶剤の選択に制限の少
ない正孔輸送層用の重合体、並びに、正孔輸送層と陽極
との密着性が高く、低い印加電圧で輝度の高い発光を得
ることができる有機EL素子を提供する。 【解決手段】 トリフェニルアミノ基又はカルバゾリル
基を有するビニル化合物とマレイン酸無水物とを共重合
させる下記の一般式(I) (式中、Aはトリフェニルアミノ基又はカルバゾリル
基)で示されるマレイン酸無水物重合体、並びに基材上
に陽極、正孔輸送層、発光層及び陰極とを有し、該正孔
輸送層が前記マレイン酸無水物重合体から成る、又は前
記マレイン酸無水物重合体とアミノ基を2つ以上有する
化合物とがアミド結合又はイミド結合を形成して成る有
機エレクトロルミネッセンス素子。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、マレイン酸無水物
重合体とその製造方法、及び該重合体を構成要素とする
有機エレクトロルミネッセンス素子に関する。更に詳し
くは、陽極との密着性が高く、且つ、ウェット方式によ
る正孔輸送層の製膜に適したマレイン酸無水物重合体、
それらの製造方法、及び該重合体を構成要素とする有機
エレクトロルミネッセンス素子、例えば、光標識、照明
装置、固体画像増幅器、及び高情報量表示装置の分野に
利用できる発光素子に関するものである。
【0002】
【従来の技術】有機エレクトロルミネッセンス素子(以
下、有機EL素子ということがある)は、陽極、陰極の
それぞれから注入された正孔と電子が有機層内を移動
し、有機蛍光体内で再結合した際に得られる励起エネル
ギーを発光エネルギーに変換することを特徴としてい
る。この種の自発光型素子は、低電圧駆動の大面積表示
素子を実現するものとして注目されている。
【0003】有機EL素子の高効率化にはキャリア輸送
性の異なる有機層を積層する素子構造が有効であり、コ
ダック社より、正孔輸送層に低分子芳香族アミン、電子
輸送性発光層にアルミニウムキレート錯体を真空蒸着法
により積層した素子〔「アプライド・フィジックス・レ
ターズ(Applied Physics Lette
rs)」(51巻、913頁、1987年)、又は米国
特許4,356,429〕が、10V以下の印加電圧で
1000cd/mの実用化に十分な高輝度を有してい
ることが報告されて以来、この種の積層型有機EL素子
が活発に研究されている。
【0004】しかしながら、研究の経過とともに、積層
型有機EL素子における種々の問題点も露見されてき
た。特に、EL素子特性に及ぼす正孔輸送層の効果につ
いて数多くの研究がなされてきたが、低分子正孔輸送材
料を用いたEL素子においては、電流注入にともない発
生する熱や時間経過等による有機層の結晶化や凝集が素
子劣化を引き起こすと言った問題や、正孔輸送層と発光
層との界面で相互拡散が起こり、エキシプレックス等の
形成により発光効率が低下すると言った問題が指摘され
ていた。そしてこれらの問題点は高分子型の正孔輸送層
を用いることによって改善されることが知られていた。
【0005】しかしながら、従来のコート法による正孔
輸送層の製膜は、陽極表面との密着性が低くそのため輝
度の高い発光を得るには印加電圧を高くする必要があっ
た。また、該コート法は正孔輸送性化合物を溶剤に溶解
させ塗布してコートする、いわゆるウェット方式である
ため、例え優れた正孔輸送性化合物が得られたとしても
該化合物の溶剤に対する溶解性と、他の有機層の製膜に
用いる溶剤に対する溶解性とが同じ場合には使用できな
いといった問題があった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明が解決しようと
する課題は、陽極との密着性が高く、低い印加電圧で輝
度の高い発光を得ることができ、かつ、ウェット方式で
の正孔輸送層の重合体の製膜に際し溶剤の選択に制限の
少ない正孔輸送層用の重合体及びその製造方法、並び
に、正孔輸送層と陽極との密着性が高く、低い印加電圧
で輝度の高い発光を得ることができる有機EL素子を提
供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記課題
を解決する為に、鋭意研究した結果、トリフェニルアミ
ノ基又はカルバゾリル基といった正孔輸送性基を分子中
に結合させたマレイン酸無水物重合体を正孔輸送層用の
重合体として用いることによって、正孔輸送層を化学結
合で陽極上に積層することができるため、陽極との密着
性が高く、かつ、低い印加電圧で輝度の高い発光をうる
ことができることを見出し本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、一般式(I)
【0008】
【化11】
【0009】(式中、Aは
【0010】
【化12】
【0011】のいずれかで示されるトリフェニルアミノ
基又は
【0012】
【化13】
【0013】で示されるカルバゾリル基であり、X、Y
及びZは、各々水素、ハロゲン、アルキル基、アルキル
チオ基、ジアルキルアミノ基、アルコキシ基、フェニル
基及びジフェニルアミノ基からなる群から独立して選ば
れる1〜5個の基を表し、nとmは独立に1以上の整数
を表す)で示されるマレイン酸無水物重合体を提供す
る。また、本発明は一般式(II)
【0014】
【化14】
【0015】(式中、Aは
【0016】
【化15】
【0017】のいずれかで示されるトリフェニルアミノ
基又は
【0018】
【化16】
【0019】で示されるカルバゾリル基であり、X、Y
及びZは、各々水素、ハロゲン、アルキル基、アルキル
チオ基、ジアルキルアミノ基、アルコキシ基、フェニル
基及びジフェニルアミノ基からなる群から独立して選ば
れる1〜5個の基を表す)で示されるビニル化合物と、
マレイン酸無水物とを付加重合させることを特徴とす
る、一般式(I)
【0020】
【化17】
【0021】(式中、Aは前記と同じ基、nとmは独立
に1以上の整数を表す)で示されるマレイン酸無水物重
合体の製造方法を提供する。
【0022】また、本発明は、基材上に、陽極、正孔輸
送層、発光層及び陰極とを有し、前記正孔輸送層が、一
般式(I)
【0023】
【化18】
【0024】(式中、Aは
【0025】
【化19】
【0026】のいずれかで示されるトリフェニルアミノ
基又は
【0027】
【化20】
【0028】で示されるカルバゾリル基であり、X、Y
及びZは、各々水素、ハロゲン、アルキル基、アルキル
チオ基、ジアルキルアミノ基、アルコキシ基、フェニル
基及びジフェニルアミノ基からなる群から独立して選ば
れる1〜5個の基を表し、nとmは独立に1以上の整数
を表す)で示されるマレイン酸無水物重合体からなるこ
とを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子を提
供する。
【0029】また、本発明は、基材上に、陽極、正孔輸
送層、発光層及び陰極とを有する有機エレクトロルミネ
ッセンス素子の製造方法であって、(1)陽極表面をア
ミノ基含有カップリング剤と接触させ、アミノ基含有カ
ップリング剤を陽極表面に結合させる工程、(2)前記
陽極を前記マレイン酸無水物重合体の溶液に接触させ、
陽極表面に結合したアミノ基含有カップリング剤とマレ
イン酸無水物重合体とをアミド結合させる工程、(3)
陽極表面に結合しなかった過剰のマレイン酸無水物重合
体を洗浄除去する工程、(4)前記陽極を100℃以上
の温度で加熱する工程により前記正孔輸送層を製造する
ことを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子の
製造方法を提供する。
【0030】また、本発明は、基材上に、陽極、正孔輸
送層、発光層及び陰極とを有する有機エレクトロルミネ
ッセンス素子の製造方法であって、(1)陽極表面をア
ミノ基含有カップリング剤と接触させ、アミノ基含有カ
ップリング剤を陽極表面に結合させる工程、(2)前記
陽極を前記マレイン酸無水物重合体の溶液に接触させ、
陽極表面に結合したアミノ基含有カップリング剤とマレ
イン酸無水物重合体をアミド結合させる工程、(3)陽
極表面に結合しなかった過剰のマレイン酸無水物重合体
を洗浄除去する工程、
【0031】(4)マレイン酸無水物重合体が結合した
前記陽極に、アミノ基を2つ以上有する化合物を接触さ
せ、アミド結合させる工程、(5)前記陽極から過剰の
アミノ基を2個以上有する化合物を除去する工程、
(6)前記陽極を100℃以上の温度で加熱する工程、
及び(7)工程(6)で得た陽極に工程(2)から工程
(6)までの工程を更に1回以上施す工程により前記正
孔輸送層を製造することを特徴とする有機エレクトロル
ミネッセンス素子の製造方法を提供する。
【0032】
【発明の実施の形態】本発明の実施の形態について以下
に詳細に説明する。本発明のマレイン酸無水物重合体は
下記一般式(I)
【0033】
【化21】
【0034】(式中、Aは正孔輸送性基であって
【0035】
【化22】
【0036】のいずれかで示されるトリフェニルアミノ
基、又は
【0037】
【化23】
【0038】で示されるカルバゾリル基であり、X、Y
及びZは独立に水素、ハロゲン、アルキル基、アルキル
チオ基、ジアルキルアミノ基、アルコキシ基、フェニル
基、及びジフェニルアミノ基からなる群から独立して選
ばれる1個〜5個の基を表す)で表される。
【0039】式中、X、Y及びZのハロゲンとしては、
フッ素、塩素、臭素又はヨウ素が挙げられる。また、
X、Y及びZのアルキル基としては、メチル基、エチル
基、プロピル基、sec−プロピル基、ブチル基、se
c−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキ
シル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル
基、ウンデシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ヘキ
サデシル基、オクタデシル基又は2−エチルヘキシル基
等が挙げられる。
【0040】また、X、Y及びZのアルキルチオ基とし
ては、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、
ブチルチオ基、sec−ブチルチオ基、tert−ブチ
ルチオ基、ヘキシルチオ基、オクチルチオ基、デシルチ
オ基、ドデシルチオ基、オクタデシルチオ基等がある。
また、X、Y及びZのジアルキルアミノ基としては、ジ
メチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジプロピルアミノ
基、ジブチルアミノ基又はジヘキシルアミノ基等が挙げ
られる。
【0041】また、X、Y及びZのアルコキシ基として
は、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、sec−
プロポキシ基、ブトキシ基、sec−ブトキシ基、te
rt−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ
基、オクチルオキシ基、デシルオキシ基、ドデシルオキ
シ基、オクタデシルオキシ基、トリフルオロメトキシ基
又はトリクロロメトキシ基等が挙げられる。
【0042】また、X、Y及びZのフェニル基及びジフ
ェニルアミノ基は、前記のハロゲン、アルキル基又はア
ルコキシ基等を置換基として有していても良い。上記
X、Y及びZの具体例について、その選択に特に制限は
ないが、それぞれ独立に水素、フッ素、メチル基又はメ
トキシ基が特に好ましい。X、Y及びZは、それぞれ独
立に、且つ、任意に1〜5個の基であってよく、合成が
容易である点でメタ位の場合は1個、またオルト位、パ
ラ位の場合は2個の基が好ましい。また、その結合位置
に特に制限はない。
【0043】また、式中、nは1以上の整数であれば特
に制限はないが、製膜性に優れる点で1〜3の範囲が好
ましく、特に1である場合、即ち交互共重合体である場
合が特に好ましい。mは1以上の整数であれば特に制限
はないが、作業性に優れる点で3〜500の範囲が好ま
しく、5〜100の範囲が特に好ましい。
【0044】本発明における一般式(I)で示されるマ
レイン酸無水物重合体は、例えば、文献等〔「ケミスト
リー・オブ・マテリアルズ(Chemistry of
Materials)」(11巻、399頁、199
9年)に記載の方法で製造でき、具体的には一般式(I
I)
【0045】
【化24】
【0046】(式中、Aは既に定義したとおりである)
で示されるトリフェニルアミノ基又はカルバゾリル基を
有するビニル化合物を、マレイン酸無水物とともに、付
加重合することにより製造することができる。
【0047】例えば、トルエン溶媒中、一般式(II)で
示されるビニル化合物を、2〜10倍モルのマレイン酸
無水物、及びアゾビスブチロニトリル等の重合開始剤と
ともに70℃にて24時間反応させることにより、一般
式(I)で示されるマレイン酸無水物重合体を製造する
ことができる。但し、本発明における一般式(I)で示
されるマレイン酸無水物重合体の製造方法は上記に限ら
れるものではなく、熱重合法、光重合法、及び酸化重合
法等、幅広く重合法を選択することが可能である。
【0048】本発明の有機EL素子は、一般式(I)で
示されるマレイン酸無水物重合体から成る重合体薄膜を
必須の構成要素とする。特に、一般式(I)で示される
マレイン酸無水物重合体は、正孔輸送層の重合体材料と
して有用である。
【0049】本発明の有機EL素子の最も簡単な構造
は、図1に示すように、一般式(I)で示されるマレイ
ン酸無水物重合体の形成する正孔輸送層(3)を、発光
層(4)とともに、基材(1)上に形成した陽極(2)
と陰極(5)との間に挟んだ構造である。また、図2に
示すように、一般式(I)で示されるマレイン酸無水物
重合体を含む正孔輸送層(3)を、他の材質から成る正
孔輸送層(6)、電子輸送層(7)(又は電子輸送層
(7)に換えて電子注入層(8)であってもよい)と共
に陽極(2)と陰極(5)の間に挟み、有機EL素子を
形成することもできる。
【0050】さらにまた、図3に示すように、一般式
(I)で示されるマレイン酸無水物重合体を含む正孔輸
送層(3)を、他の材質から成る正孔輸送層(6)、電
子輸送層(7)及び電子注入層(8)と共に陽極(2)
と陰極(5)の間に挟み、有機EL素子を形成すること
もできる。但し、本発明の有機EL素子は、図1乃至図
3に示される構造に限定されるものではない。
【0051】一般式(I)で示されるマレイン酸無水物
重合体の薄膜からなる正孔輸送層の作製は、陽極となる
基材表面をアミノ基含有カップリング剤と接触させ、ア
ミノ基含有カップリング剤を陽極表面に結合させ、次い
で前記陽極をマレイン酸無水物重合体の溶液に接触さ
せ、陽極表面に結合したアミノ基含有カップリング剤と
マレイン酸無水物重合体とをアミド結合させ、陽極表面
に結合しなかった過剰のマレイン酸無水物重合体を有機
溶媒で洗浄除去し、さらに前記陽極を100℃以上の温
度で加熱することにより得られる。
【0052】また、一般式(I)で表されるマレイン酸
無水物重合体とアミノ基を2つ以上有する化合物とがア
ミド結合又はイミド結合を形成してなる重合体薄膜から
なる正孔輸送層の作製は、次に示す2種類の方法(方法
1及び方法2)により行うことができる。すなわち、方
法1は、陽極となる基材表面をアミノ基含有カップリン
グ剤と接触させアミノ基含有カップリング剤を陽極表面
に結合させ、続いて前記陽極を一般式(I)で表される
マレイン酸無水物重合体の溶液に接触させ陽極表面に結
合したアミノ基含有カップリング剤とマレイン酸無水物
重合体をアミド結合させ、その後陽極表面に結合しなか
った過剰のマレイン酸無水物重合体を有機溶剤で洗浄除
去し、続いて、マレイン酸無水物重合体が結合した前記
陽極にアミノ基を2つ以上有する化合物を接触させてア
ミド結合させ、その後前記陽極から過剰のアミノ基を2
個以上有する化合物を除去し、続いて前記陽極を100
℃以上の温度で加熱し、これらの工程を更に1回以上施
す工程により正孔輸送層を作製するものである。この作
製工程の模式図を図4に示す。
【0053】また、方法2は、陽極となる基材表面をア
ミノ基含有カップリング剤と接触させアミノ基含有カッ
プリング剤を陽極表面に結合させ、続いて前記陽極をマ
レイン酸無水物重合体の溶液に接触させ陽極表面に結合
したアミノ基含有カップリング剤と前記マレイン酸無水
物重合体をアミド結合により結合させ、その後陽極表面
に結合しなかった過剰のマレイン酸無水物重合体を有機
溶剤で洗浄除去し、続いてマレイン酸無水物重合体が結
合した前記陽極にアミノ基を2つ以上有する化合物を接
触させアミド結合させ、その後前記陽極から過剰のアミ
ノ基を2個以上有する化合物を有機溶剤で洗浄除去す
る。これらの工程を更に1回以上施したのち、前記陽極
を100℃以上の温度で加熱することにより方法1と同
様に正孔輸送層を作製することができる。この作製工程
の模式図を図5に示す。
【0054】図4及び図5において、iは陽極、iiは陽
極表面に結合したアミノ基含有カップリング剤、iiiは
一般式(I)で示されるマレイン酸無水物重合体、ivは
アミノ基を2個以上有する化合物、Sはアミノ基含有カ
ップリング剤と陽極表面との結合単位、Xはアミノ基含
有カップリング剤又はアミノ基を2個以上有する化合物
中に含まれるアミノ基、X’はマレイン酸無水物重合体
中に含まれるカルボン酸無水物部分、YはX’とXとの
付加反応により生じたアミド結合、Zは加熱によりYか
ら変換されたイミド結合を表す。
【0055】以下、本発明のマレイン酸無水物重合体か
らなる正孔輸送層、それを含む有機EL素子の製造方法
についてさらに詳しく説明する。本発明の有機EL素子
において、基材は、機械的強度及び耐熱性を有し、透明
なものであれば特に限定はないが、いくつかを例示すれ
ば、ソーダライムガラス、無アルカリガラス等のガラス
基板、又はポリエチレン基板、ポリエーテルサルフォン
基板、ポリプロピレン基板等の透明性樹脂が挙げられ
る。
【0056】陽極に用いる素材としては、アミノ基を有
するカップリング剤と接触させ、アミノ基を有するカッ
プリング剤を表面に結合することができる導電性金属酸
化物、金属、又は合金等が挙げられる。例えば、酸化錫
インジウム(ITO)、酸化インジウム、酸化錫、酸化
亜鉛、酸化チタン等の導電性金属酸化物、金、銀、白金
等の金属及びそれらの合金等が挙げられる。但し、仕事
関数が4eVより小さいと正孔輸送層への正孔注入が効
率よく行われないことから4eVより大きな仕事関数を
持つものが好ましく、特に、価格、作製の容易さから、
真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング
法等の手法により基材上に形成されたITO薄膜を用い
ることが好ましい。
【0057】陽極は、素子の発光に十分な電流が供給で
きればよいので特に限定されないが、素子の消費電力の
観点からは低抵抗であることが望ましい。例えば、30
0Ω/□以下のITO薄膜であれば陽極として機能する
が、20Ω/□以下の低抵抗電極を使用することが特に
望ましい。ITO薄膜の厚みは、抵抗値に合わせて任意
に選ぶことができるが、100〜300nmの間で選択
されることが適当である。
【0058】正孔輸送層の作製において、導電性金属酸
化物からなる陽極に使用されるアミノ基含有カップリン
グ剤としては、例えば、アミノ基含有ケイ素化合物が挙
げられるが、これに限定されるものではない。
【0059】用いられるアミノ基含有ケイ素化合物は、
末端にアミノ基を有し、且つ、側鎖にハロゲン又はアル
コキシ基と結合したケイ素原子を有する化合物が好まし
く、そのような化合物としては、例えば、3−アミノプ
ロピルトリクロロシラン、3−アミノプロピルメチルジ
クロロシラン、3−アミノプロピルジメチルクロロシラ
ン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミ
ノプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピ
ルジメチルメトキシシラン、
【0060】3−アミノプロピルトリエトキシシラン、
3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、3−アミ
ノプロピルジメチルエトキシシラン、6−アミノへキシ
ルトリクロロシラン、6−アミノへキシルトリメトキシ
シラン、6−アミノへキシルトリエトキシシラン、11
−アミノウンデシルトリクロロシラン、11−アミノウ
ンデシルトリメトキシシラン又は11−アミノウンデシ
ルトリエトキシシラン等が挙げられるが、これらに限定
されるものではない。
【0061】陽極表面をこれらのアミノ基含有ケイ素化
合物と接触させ、アミノ基含有ケイ素化合物を陽極表面
に結合させる方法としては、例えば、これらの化合物の
いずれか1種以上を溶媒に溶解させ、その溶液に陽極を
接触させた後、陽極を分離し、該化合物が溶解する溶媒
で洗浄し、さらに、洗浄後に乾燥又は加熱する方法が挙
げられる。
【0062】アミノ基含有ケイ素化合物を溶解させる溶
媒としては、例えば、ヘキサン、デカン、ヘキサデカン
の如き脂肪族炭化水素が挙げられ、またベンゼン、トル
エン、キシレンの如き芳香族炭化水素が挙げられ、また
四塩化炭素、クロロホルム、塩化メチレン、1,1,2
−トリクロロエタンの如きハロゲン化炭化水素が挙げら
れ、またジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,
4−ジオキサン又は1,2−ジメトキシエタンの如きエ
ーテル系化合物などが挙げられる。
【0063】しかし、これらの溶媒に限定されるもので
はなく、アミノ基含有ケイ素化合物を溶解させ、水酸基
あるいはカルボニル基を有しない溶媒、及び、アミノ基
と反応しない溶媒であれば使用できる。但し、アルコキ
シ基と結合したケイ素原子を有する化合物を用いる場合
は、メタノール、エタノール又は2−プロパノールの如
きアルコール系溶媒、アセトン又は2−ブタノンの如き
ケトン系溶媒及びこれらを含む混合溶媒を用いることが
できる。
【0064】アミノ基含有ケイ素化合物の溶液中の濃度
は、特に制限がなく、0.001ミリモル/リットル〜
5モル/リットルの範囲が好ましく、0.1〜100ミ
リモル/リットルの範囲が特に好ましい。アミノ基含有
ケイ素化合物の溶液中の濃度が、0.001ミリモル/
リットルよりも薄いと、反応の進行に長時間を要する傾
向にある。
【0065】アミノ基含有ケイ素化合物の溶液を用いて
該化合物を陽極表面に結合させる際の反応温度及び反応
時間も特に制限はないが、反応温度は10〜120℃の
範囲が好ましく、15〜80℃の範囲が特に好ましい。
また、反応時間は、一般に、反応温度が低いと長時間を
要し、反応温度が高いと短時間で反応が終了する傾向に
あるが、反応時間は1分間〜24時間の範囲が好まし
く、1時間〜3時間の範囲が特に好ましい。
【0066】アミノ基含有ケイ素化合物の溶液から陽極
を分離した後の洗浄操作は、未反応のアミノ基含有ケイ
素化合物を除去するために重要である。このとき、溶媒
としては、アミノ基含有ケイ素化合物を溶解することが
できる上記の溶媒を用いることができる。洗浄操作後の
乾燥方法は、特に制限はなく、10〜100℃の範囲で
減圧条件にて行ってもよいし、また、空気、窒素又はア
ルゴン等のガスブローにて行っても良い。また、洗浄操
作後の陽極の加熱は、アミノ基含有ケイ素化合物での反
応を完全にするために有効である。この加熱温度には、
特に制限はないが、50〜200℃の範囲が好ましく、
50〜120℃の範囲が特に好ましい。
【0067】次に、金、銀、白金等の金属及び合金から
なる陽極に使用できるアミノ基含有カップリング剤とし
ては、例えば、アミノ基含有硫黄化合物が挙げられる
が、それらに限定されない。
【0068】アミノ基含有硫黄化合物としては、例え
ば、2−アミノエチルメルカプタン、3−アミノプロピ
ルメルカプタン、4−アミノブチルメルカプタン、6−
アミノヘキシルメルカプタン、12−アミノドデシルメ
ルカプタン、シスタミン、4−アミノチオフェノール、
2,2’−ジアミノエチルスルフィド等の末端にアミノ
基を有するメルカプタン、スルフィド又はジスルフィド
化合物などが挙げられるが、これらに限定されるもので
はない。
【0069】陽極表面をこれらのアミノ基含有硫黄化合
物と接触させ、アミノ基含有硫黄化合物を陽極表面に結
合させる方法としては、例えば、当該化合物のいずれか
1つを溶媒に溶解させ、その溶液に陽極を接触させた
後、陽極を分離し、該化合物が溶解する溶媒で洗浄し、
さらに乾燥する方法が挙げられる。
【0070】アミノ基含有硫黄化合物を溶解させる溶媒
としては、例えば、メタノール、エタノール、2−プロ
パノールの如きアルコール系溶媒が挙げられ、また、上
述のアミノ基含有ケイ素化合物を溶解させる溶媒と同様
のものが挙げられるが、これらの溶媒に限定されるもの
ではなく、アミノ基含有硫黄化合物を溶解させ、硫黄含
有基、及びアミノ基と反応しない溶媒であれば使用でき
る。
【0071】用いるアミノ基含有硫黄化合物の溶液中の
濃度も、上記アミノ基含有ケイ素化合物の場合と同様で
ある。アミノ基含有硫黄化合物の溶液を用いて該化合物
を陽極表面に結合させる際の反応温度及び反応時間も上
記アミノ基含有ケイ素化合物の場合と同様である。アミ
ノ基含有硫黄化合物の溶液から陽極を分離した後の洗浄
操作は上記アミノ基含有ケイ素化合物の場合と同様であ
る。
【0072】上記の方法によりアミノ基含有カップリン
グ剤を表面に結合させた陽極に、一般式(I)で示され
るマレイン酸無水物重合体の薄膜を形成させる方法とし
ては、一般式(I)に示されるマレイン酸無水物重合体
のうちの1つを溶媒に溶解させ、その溶液にアミノ基含
有カップリング剤が結合された陽極を接触させた後、該
陽極を分離し、重合体が溶解する溶媒で洗浄し、次い
で、乾燥させる方法が挙げられる。
【0073】このような操作によって、マレイン酸無水
物重合体を、重合体中のカルボン酸無水物部分とカップ
リング剤のアミノ基とのアミド結合により、陽極表面に
結合させることができる。
【0074】マレイン酸無水物重合体を溶解させる溶媒
は、該重合体を溶解でき、且つ、該重合体及びアミノ基
含有カップリング剤が結合された陽極の表面と反応しな
い有機溶媒及びその混合物を特に制限なく用いることが
できる。
【0075】マレイン酸無水物重合体を溶解させる有機
溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、プロ
パノール、2−プロパノールの如きアルコール系溶媒が
挙げられ、またアセトン、2−ブタノンの如きケトン系
溶媒が挙げられ、またジエチルエーテル、テトラヒドロ
フラン、1,4−ジオキサン、1,2−ジメトキシエタ
ンの如きエーテル系溶媒が挙げられ、また
【0076】ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、
N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセ
トアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホ
リックトリアミドの如き非プロトン性極性溶媒が挙げら
れ、またヘキサン、デカン、ヘキサデカンの如き脂肪族
炭化水素が挙げられ、またベンゼン、トルエン、キシレ
ンの如き芳香族炭化水素が挙げられ、また四塩化炭素、
クロロホルム、塩化メチレン、1,1,2−トリクロロ
エタンの如きハロゲン化炭化水素などが挙げられるが、
これらに限定されるものではない。
【0077】マレイン酸無水物重合体を含む溶液にアミ
ノ基含有カップリング剤を表面に結合させた陽極を接触
させ、アミド結合を形成させる際、反応温度及び反応時
間は、特に制限がないが、反応温度は0〜150℃の範
囲が好ましく、15〜100℃の範囲が特に好ましい。
また、反応時間は、一般に、反応温度が低いと長時間を
要し、反応温度が高いと短時間で反応が終了するので、
1分間〜24時間の範囲が好ましく、1時間〜3時間の
範囲が特に好ましい。
【0078】重合体が結合した陽極を、重合体溶液から
分離した後の洗浄操作は、結合していない重合体を陽極
表面から除去するために有効である。洗浄に用いる溶媒
としては、重合体を溶解することができる上記の溶媒が
挙げられる。また、重合体が結合した陽極の乾燥方法に
も、特に制限がなく、10〜100℃の範囲で減圧条件
にて行ってもよいし、また、空気、窒素又はアルゴン等
のガスブローにて行ってもよい。
【0079】さらに、上記の方法に従って得られるマレ
イン酸無水物重合体が結合した陽極に、アミノ基を2個
以上有する化合物を接触させることにより、陽極表面に
結合したマレイン酸無水物重合体中に残存する未反応の
カルボン酸無水物部分と該化合物中のアミノ基との反応
により、該化合物をアミド結合を介して、陽極表面に結
合させることができる。
【0080】そのようなアミノ基を2個以上有する化合
物としては、1分子中にアミノ基を2個以上有していれ
ば、特に制限なく用いることができる。これらの化合物
を例示すれば、脂肪族アミン類では、アミノ基を2個有
する化合物として、エチレンジアミン、1,3−ジアミ
ノプロパン、1,2−ジアミノプロパン、1,4−ジア
ミノブタン、1,5−ジアミノペンタン、2,2−ジメ
チル−1,3−プロパンジアミン、1,6−ジアミノヘ
キサン、1,7−ジアミノヘプタン、1,8−ジアミノ
オクタン、1,9−ジアミノノナン、
【0081】1,10−ジアミノデカン、1,12−ジ
アミノドデカン、N−メチルエチレンジアミン、N−エ
チルエチレンジアミン、N−プロピルエチレンジアミ
ン、N−イソプロピルエチレンジアミン、N,N’−ジ
メチルエチレンジアミン、N,N’−ジエチルエチレン
ジアミン、N−メチル−1,3−プロパンジアミン、
N,N’−ジメチル−1,3−プロパンジアミン、N,
N’−ジメチル−1,6−ヘキサンジアミン、4,4’
−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)、4,4’−
メチレンビス(2−メチルシクロヘキシルアミン)、ト
ランス−1,4−ジアミノシクロヘキサン、1,3−シ
クロヘキサンビス(メチルアミン)、N−シクロヘキシ
ル−1,3−プロパンジアミン、2,2’−(エチレン
ジオキシ)−ビス(エチルアミン)、1,3−ジアミノ
−2−ヒドロキシプロパン、
【0082】シスタミン、4−(アミノメチル)ピペリ
ジン、ピペラジン、2−メチルピペラジン、2,6−ジ
メチルピペラジン、トランス−2,5−ジメチルピペラ
ジン又はホモピペラジンが挙げられる。
【0083】アミノ基を3個有する化合物として、ジエ
チレントリアミン、N−(2−アミノエチル)−1,3
−プロパンジアミン、3,3’−ジアミノ−N−メチル
ジプロピルアミン、N−(3−アミノプロピル)−1,
3−プロパンジアミン、トリエチレンテトラミン、トリ
ス(2−アミノエチル)アミン、1−(2−アミノエチ
ル)ピペラジン、1,4−ビス(3−アミノプロピル)
ピペラジン、1,4,7−トリアザシクロノナン又は
1,5,9−トリアザシクロドデカンが挙げられる。
【0084】アミノ基を4個以上有する化合物として、
テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミ
ン、サイクレン、テトラアザシクロテトラデカン又はテ
トラアザシクロペンタデカンが挙げられる。また、芳香
族アミン類では、アミノ基を2個有する化合物として、
4,4’−エチレンジアニリン、4,4’−メチレンジ
アニリン、3,3’−メチレンジアニリン、4,4’−
オキシジアニリン、4’’,4’’’−(ヘキサフルオ
ロイソプロピリデン)−ビス(4−フェノキシアニリ
ン)、4,4’−チオジアニリン、4−アミノフェニル
ジスルフィド、O−トリジン、4,4’−エチレンジ−
m−トルイジン、3,3’−ジアミノベンジジン、1,
3−フェニレンジアミン、1,4−フェニレンジアミ
ン、2,5−ジメチル−1,4−フェニレンジアミン、
4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)−ジア
ニリン、3,5−ジアミノ安息香酸、
【0085】3,3’−ジメトキシベンジジン、1,5
−ジアミノナフタレン、2,7−ジアミノフルオレン、
2−アミノベンジルアミン、m−キシリレンジアミン又
はp−キシリレンジアミンが挙げられる。また、アミノ
基を2個以上有する重合体としては、ポリエチレンイミ
ン、ポリアリルアミン又はポリ(4−ビニルアニリン)
が挙げられる。
【0086】以上、例示した、アミノ基を2個以上有す
る化合物の中で、マレイン酸無水物重合体が結合した陽
極表面への結合効率の観点から、エチレンジアミン、ト
ランス−1,4−ジアミノシクロヘキサン、ポリエチレ
ンイミン又はポリアリルアミンが特に好ましい。
【0087】アミノ基を2個以上有する化合物を溶解さ
せる溶媒は、該化合物を溶解でき、且つ、該化合物、及
び、マレイン酸無水物重合体が結合した陽極2表面の官
能基と反応しない有機溶媒及びその混合物を特に限定な
く用いることができる。
【0088】アミノ基を2個以上有する化合物を溶解さ
せる有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノー
ル、プロパノール又は2−プロパノールの如きアルコー
ル系溶媒が挙げられ、またアセトン又は2−ブタノンの
如きケトン系溶媒が挙げられ、またジエチルエーテル、
テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン又は1,2−
ジメトキシエタンの如きエーテル系溶媒が挙げられ、ま
たホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N,N−ジ
メチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、
ジメチルスルホキシド又はヘキサメチルホスホリックト
リアミドの如き非プロトン性極性溶媒が挙げられ、
【0089】またヘキサン、デカン又はヘキサデカンの
如き脂肪族炭化水素が挙げられ、またベンゼン、トルエ
ン又はキシレンの如き芳香族炭化水素が挙げられ、また
四塩化炭素、クロロホルム、塩化メチレン又は1,1,
2−トリクロロエタンの如きハロゲン化炭化水素などが
挙げられるが、これらの溶媒に限定されるものではな
い。
【0090】アミノ基を2個以上有する化合物を含む溶
液に、マレイン酸無水物重合体が結合した陽極を接触さ
せ、アミド結合を形成させる反応温度及び反応時間は特
に制限がないが、反応温度は0〜150℃の範囲が好ま
しく、15〜100℃の範囲が特に好ましい。また、反
応時間は、一般に、反応温度が低いと長時間を要し、反
応温度が高いと短時間で反応が終了するので、1分間〜
24時間の範囲が好ましく、1時間〜3時間の範囲が特
に好ましい。
【0091】アミノ基を2個以上有する化合物が結合し
た陽極を該化合物の溶液から分離した後の洗浄操作は、
結合していない該化合物を陽極表面から除去するために
有効である。洗浄に用いる溶媒としては、該化合物を溶
解することができる上記の溶媒が挙げられる。また、ア
ミノ基を2個以上有する化合物が結合した陽極の乾燥方
法にも、特に制限がなく、10〜100℃の範囲で減圧
条件にて行ってもよいし、また、空気、窒素又はアルゴ
ン等のガスブローにて行ってもよい。
【0092】次いでアミノ基を2個以上有する化合物を
含む溶液に、マレイン酸無水物重合体が結合した陽極を
接触させ、アミド結合を形成させる処理を行った後、該
陽極をさらに加熱することにより、アミノ基含有カップ
リング剤とマレイン酸無水物重合体、及びマレイン酸無
水物重合体とアミノ基を2個以上有する化合物との間の
アミド結合をイミド結合に変換させる。
【0093】加熱温度は、100〜500℃の範囲が好
ましく、120〜250℃の範囲が特に好ましい。ま
た、この加熱は、減圧条件にて行ってもよい。マレイン
酸無水物重合体が多重に積層された薄膜の作製は、図4
に示すように、アミノ基含有カップリング剤を結合させ
た陽極に対して、上記、マレイン酸無水物重合体の陽極
表面への結合、アミノ基を2個以上有する化合物の結
合、及び加熱を繰り返し施すことにより行うことができ
る。各単位操作に関しては、上記の方法に準じて行うこ
とができる。繰り返し操作の回数は、特に制限なく行う
ことができる。
【0094】また、図5に示すように、アミノ基含有カ
ップリング剤を結合させた陽極に対して、上記、マレイ
ン酸無水物重合体の陽極表面への結合、及びアミノ基を
2個以上有する化合物の結合を繰り返し施した後に、加
熱を行うことにより、同様にマレイン酸無水物重合体が
アミノ基を2つ以上有する化合物とイミド結合を形成し
て成るマレイン酸無水物重合体が多重に積層された重合
体薄膜を作製することができる。各単位操作に関して
は、上記の方法に準じて行うことができ、繰り返し操作
の回数は、特に制限なく行うことができる。
【0095】このとき、マレイン酸無水物重合体の陽極
表面への結合、及びアミノ基を2個以上有する化合物の
結合の繰り返しにおいて、加熱は、アミノ基を2個以上
有する化合物の結合を行った直後に適宜行うことができ
るが、全ての結合操作の後に、加熱を1回行うだけでも
よい。また、繰り返し回ごとに同一又は異なるマレイン
酸無水物重合体、又はアミノ基を2個以上有する化合物
の種類を任意に選択して用いることができる。
【0096】以上説明した、一般式(I)で示されるマ
レイン酸無水物重合体がアミノ基を2つ以上有する化合
物とアミド結合又はイミド結合を形成して多重に積層さ
れた重合体薄膜の膜厚は、特に制限はないが1nm〜1
00nmの範囲の膜厚を有する重合体薄膜を簡便に形成
できる。該重合体薄膜は、エリプソメトリーにより求め
た膜厚値、及び走査型プローブ顕微鏡による表面プロフ
ァイルの測定から、標準偏差±2.0nm以内の良好な
厚み精度、及びRms値(自乗平均面粗さ)2.0nm
以内の高い表面平坦性を有する。
【0097】また、該重合体薄膜において、マレイン酸
無水物重合体とアミノ基含有カップリング剤又はアミノ
基を2個以上有する化合物との結合は、イミド結合の共
有結合によるため、該重合体薄膜は陽極との密着性が高
く、且つ、これらの結合が形成された後は、重合体薄膜
は溶剤に溶解しない為に、耐溶剤性に優れ、ウェット方
式による積層型の有機EL素子の作製に適している。
【0098】本発明の有機EL素子において、上記のア
ミノ基を2つ以上有する化合物とアミド結合又はイミド
結合を形成して多重に積層された重合体薄膜から成る正
孔輸送層以外の有機層各層の形成は、真空蒸着、スパッ
タリング等の乾式製膜法やスピンコーティングやディッ
ピング等の湿式製膜法のいずれの方法も適用することが
できる。膜厚は適切な膜厚に設定する必要がある。
【0099】陽極と陰極間の有機層全体の膜厚は5nm
〜10μmの範囲が好適であるが、10〜200nmの
範囲が特に好ましい。膜厚が厚すぎると、一定の光出力
を得るために大きな印加電圧が必要になり発光効率が悪
くなる。膜厚が薄すぎるとピンホール等が発生して、電
界を印加しても十分な発光輝度が得られない。
【0100】湿式製膜法の場合、各層を形成する材料
を、クロロホルム、テトラヒドロフラン又はジオキサン
等の適切な溶媒に溶解又は分散して薄膜を形成するが、
使用できる溶媒に特に限定はない。
【0101】本発明の有機EL素子は、一般式(I)で
示されるマレイン酸無水物重合体がアミノ基を2つ以上
有する化合物とイミド結合を形成して多重に積層された
重合体薄膜からなる正孔輸送層の発光層側に、他の正孔
輸送材料の形成する正孔輸送層を有する多層系であって
もよい。
【0102】この場合、他の正孔輸送材料の形成する正
孔輸送層の層数に、特に制限はないが、陽極と陰極間の
有機層全体の膜厚の増加が素子の駆動電圧の上昇を引き
起こすことが考えられるため、2層以下が好ましく、特
に1層の場合が好ましい。
【0103】具体的に他の正孔輸送材料としては、例え
ば、公知慣用の低分子化合物系としてベンジジン型、フ
ェニレンジアミン型又はスチリルアミン型のトリフェニ
ルアミン誘導体や、カルバゾール等の3級アミン誘導
体、ピラゾリン誘導体、スチルベン誘導体、ヒドラゾン
誘導体、オキサジアゾール誘導体、フタロシアニン誘導
体、ナフタロシアニン誘導体、ポルフィリン誘導体、又
はC60誘導体が挙げられ、また、公知慣用の共役系高
分子として、ポリフェニレンビニレン誘導体、ポリパラ
フェニレン誘導体、ポリチオフェン誘導体又はポリフル
オレン誘導体等が挙げられる。
【0104】本発明の有機EL素子の発光層において
は、発光材料のみから成る層、又は発光材料の他に発光
補助材料を含む層であってもよい。発光層において、使
用できる発光材料又は発光補助材料としては、公知慣用
のアントラセン、ナフタレン、フェナントレン、ピレ
ン、テトラセン、コロネン、クリセン、フルオレセイン
又はペリレン等の縮合系芳香族化合物やビススチリルア
ントラセン誘導体、テトラフェニルブタジエン誘導体、
クマリン誘導体、オキサジアゾール誘導体、ジスチリル
ベンゼン誘導体、ピロロピリジン誘導体、
【0105】ペノリン誘導体、シクロペンタジエン誘導
体、チアジアゾロピリジン誘導体、キノリノール系金属
錯体誘導体、アゾメチン系金属錯体誘導体、希土類金属
錯体誘導体、オキサジアゾール系金属錯体誘導体、チア
ジアゾール系金属錯体誘導体、ポルフィリン誘導体、ピ
リジン系金属錯体誘導体、又、共役系高分子としては、
ポリフェニレンビニレン誘導体、ポリパラフェニレン誘
導体、ポリチオフェン誘導体又はポリフルオレン誘導体
等が挙げられる。
【0106】有機EL素子の電子輸送層において、電子
輸送材料としては、電界中において陰極から効率よく電
子が注入され、又、注入された電子を発光層へ効率よく
輸送することが必要である。従って、電子輸送材料に
は、電子親和力が大きく、且つ、電子移動度が大きく、
更に安定性に優れ、トラップとなる不純物が発生しにく
い物質であることが要求される。
【0107】このような条件を満たす物質として、キノ
リノールアルミニウム錯体(Alq3)やベンゾキノリ
ノールベリリウム錯体(Bebq2)等のキノリノール
系金属錯体誘導体やオキサジアゾール誘導体又はトリア
ゾール誘導体等が挙げられる。
【0108】本発明の有機EL素子において、陽極と陰
極の間に、電子輸送層と電子注入層を挿入してもよい。
電子注入層の挿入は、電界中において、陰極から電子輸
送層への電子注入を促進するために有効である。
【0109】電子注入材料としては、一般的に用いられ
ている酸化リチウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニ
ウム等の金属酸化物、フッ化リチウム、フッ化マグネシ
ウム、フッ化ストロンチウム等の金属フッ化物、キノリ
ノールリチウム錯体、アセチルアセトナトリチウム錯
体、ジ−tert−ブチロイルメタナトリチウム錯体又
はベンゾイルリチウム塩等の有機化合物の金属錯体又は
金属塩が挙げられる。
【0110】本発明の有機EL素子の陰極としては、
金、銀、白金、銅、鉄、錫、鉛、チタニウム、アルミニ
ウム、インジウム、イットリウム、ルテニウム、マンガ
ン、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム又は
マグネシウム等の金属及びそれらの合金が用いられる。
これらの選択に特に制限はないが、4eVより小さな仕
事関数を持つものが好ましく、特に、電子注入効率を上
げて素子特性を向上させるためには、リチウム、ナトリ
ウム、カリウム、カルシウム又はマグネシウム等の低仕
事関数金属及びそれらの合金が有効である。
【0111】しかし、これらの低仕事関数金属は、一般
に大気中で不安定であることが多く、電極保護のため
に、金、銀、白金、銅、鉄、錫、アルミニウム又はイン
ジウム等の金属及びそれらの合金、シリカ又はチタニア
等の無機物、ポリビニルアルコール又は塩化ビニル等の
有機高分子化合物を積層することが望ましい。これらの
電極の作製法は、電子ビーム蒸着法、スパッタリング
法、イオンプレーティング法、コーティング法等が挙げ
られるが、導通がとれれば、特に制限はない。
【0112】有機EL素子において、効率よく発光させ
るためには、陽極又は陰極のうち、少なくとも一方は、
有機EL素子の発光波長領域において十分透明にするこ
とが望ましい。透明電極は、上記した導電性材料を使用
して、蒸着やスパッタリング等の方法で、所定の透過性
が確保できるように設定できる。
【0113】このようにして得られた有機EL素子に、
陽極を+、陰極を−として、電圧5〜40V程度の電圧
を印加することにより、発光が透明または半透明の電極
側より観測することができる。電圧は主に直流電圧を指
すが、パルス電圧や交流電圧を用いることも可能であ
る。交流電圧を印加する場合には、陽極が+、陰極が−
の状態になった時のみ発光を観察することができる。な
お、印加する交流の波形は任意でよい。
【0114】
【実施例】以下、実施例を用いて、本発明を更に詳細に
説明する。しかしながら、本発明は、これらの実施例の
範囲に限定されるものではない。
【0115】(実施例1)マレイン酸無水物重合体(P
1)の合成 油浴、撹拌機、及び還流冷却器を備えたガラスフラスコ
中、1,4−ジブロモベンゼン27g(0.12モ
ル)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム
(0)0.52g(0.00057モル)、及び1,
1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン0.4
8g(0.00086モル)をトルエン50mlに加
え、アルゴンガス雰囲気下、室温にて、15分間撹拌し
た。
【0116】続いて、この反応混合物に、ナトリウム−
tert−ブトキシド5.5g(0.057モル)及び
m−トリルフェニルアミン7.0g(0.038モル)
を加え、油浴温度95℃に加熱、その後、20時間撹拌
を続けた。放冷後、この混合物に水120ml及びジエ
チルエーテル60mlを加え、分離した有機相を水60
mlを用いて2回洗浄し、その後、水相からジエチルエ
ーテル60mlを用いて2回抽出し、すべての有機相を
硫酸マグネシウムを用いて乾燥した。溶媒を留去した
後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:
ヘキサン)により精製して、m−トリル(p−ブロモフ
ェニル)フェニルアミン11gを得た。性状は白色固体
で、収率は84%であった。
【0117】油浴、撹拌機、及び還流冷却器を備えたガ
ラスフラスコ中、m−トリル(p−ブロモフェニル)フ
ェニルアミン2.0g(0.0059モル)、テトラキ
ストリフェニルホスフィンパラジウム(0)0.18g
(0.00015モル)、及び2,6−ジブチルヒドロ
キシトルエン0.005gをトルエン20mlに溶解さ
せ、この反応混合物に、アルゴンガス雰囲気下、室温に
て、トリブチル(ビニル)錫2.1ml(0.0071
モル)を加えた。この反応混合物を100℃に加熱、そ
の後、76時間撹拌を続けた。放冷後、溶媒を留去し、
シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘキ
サン)により精製して、m−トリル(p−ビニルフェニ
ル)フェニルアミン1.4gを得た。性状は無色液体
で、収率は81%であった。
【0118】油浴及び撹拌機を備えたガラスフラスコ
中、m−トリル(p−ビニルフェニル)フェニルアミン
0.36g(0.0013モル)、マレイン酸モノメチ
ルエステル0.34g(0.0035モル)、及びアゾ
ビス(イソブチロニトリル)0.0021g(0.00
0013モル)をトルエン5mlに溶解させ、この溶液
にアルゴンガスを30分間バブリングさせ、その後、密
封し、70℃にて24時間撹拌した。反応混合物をメタ
ノール30mlに加えて、再沈殿精製を行い、マレイン
酸無水物重合体(P1)0.45gを得た。性状は白色
固体であった。
【0119】
【化25】
【0120】得られたマレイン酸無水物重合体(P1)
の元素分析、分子量測定、及び紫外可視吸収スペクトル
分析を行った。 (A)元素分析:交互共重合体(n=1.0)としてC
2521NO、計算値=C;78.3%,H;5.
5%,N;3.6%、実測値=C;78.5%,H;
5.6%,N;3.6%
【0121】(B)分子量測定:ゲル浸透クロマトグラ
フィー分析(RI,ポリスチレン換算)、重量平均分子
量(M)=3.2×10;多分散度(M/M
=2.55 (C)紫外可視吸収スペクトル測定(ジクロロメタ
ン):ピーク302nm (D)IR特性吸収スペクトル測定により、1781c
−1、1860cm (KBr、vc=0)に吸収スペク
トルを有し、カルボン酸無水物部分(-CO-O-CO-)
を有することを確認した。
【0122】(実施例2)マレイン酸無水物重合体(P
2)の合成 油浴、撹拌機、及び還流冷却器を備えたガラスフラスコ
中、4,4’−ジブロモビフェニル26g(0.082
モル)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウ
ム(0)0.38g(0.00041モル)、及び1,
1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン0.3
4g(0.00061モル)をトルエン150mlに加
え、アルゴンガス雰囲気下、室温にて、15分間撹拌し
た。
【0123】続いて、この反応混合物に、ナトリウム−
tert−ブトキシド3.9g(0.041モル)及び
m−トリルフェニルアミン5.0g(0.027モル)
を加え、油浴温度95℃に加熱、その後、24時間撹拌
を続けた。放冷後、この混合物に水150ml及びジエ
チルエーテル100mlを加え、分離した有機相を水1
00mlを用いて2回洗浄し、その後、水相からジエチ
ルエーテル100mlを用いて2回抽出し、すべての有
機相を硫酸マグネシウムを用いて乾燥した。溶媒を留去
した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶
媒:ヘキサン)により精製して、4−ブロモ−4’−
(m−トリルフェニルアミノ)ビフェニル9.3gを得
た。性状は白色固体で、収率は68%であった。
【0124】油浴、撹拌機、及び還流冷却器を備えたガ
ラスフラスコ中、4−ブロモ−4’−(m−トリルフェ
ニルアミノ)ビフェニル8.5g(0.021モル)、
トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)
0.29g(0.00031モル)、及び1,1’−ビ
ス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン0.26g
(0.00047モル)をトルエン120mlに加え、
アルゴンガス雰囲気下、室温にて、15分間撹拌した。
この反応混合物に、ナトリウム−tert−ブトキシド
2.4g(0.025モル)及び3−メチルアニリン
2.3g(0.021モル)を加え、油浴温度95℃に
加熱、その後、3時間撹拌を続けた。
【0125】続いて、この反応混合物に、ナトリウム−
tert−ブトキシド2.4g(0.025モル)及び
1,4−ジブロモベンゼン15g(0.063モル)を
加え、油浴温度95℃にて24時間撹拌を続けた。放冷
後、この混合物に水120ml及びジエチルエーテル1
00mlを加え、分離した有機相を水100mlを用い
て2回洗浄し、その後、水相からジエチルエーテル10
0mlを用いて2回抽出し、すべての有機相を硫酸マグ
ネシウムを用いて乾燥した。溶媒を留去した後、シリカ
ゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘキサン/
トルエン=4/1)により精製して、4−(m−トリル
フェニルアミノ)−4’−(m−トリル−p−ブロモフ
ェニルアミノ)ビフェニル8.1gを得た。性状は白色
固体で、収率は65%であった。
【0126】油浴、撹拌機、及び還流冷却器を備えたガ
ラスフラスコ中、4−(m−トリルフェニルアミノ)−
4’−(m−トリル−p−ブロモフェニルアミノ)ビフ
ェニル3.0g(0.0050モル)、テトラキストリ
フェニルホスフィンパラジウム(0)0.15g(0.
00013モル)、及び2,6−ジブチルヒドロキシト
ルエン0.004gをトルエン30mlに溶解させ、こ
の反応混合物に、アルゴンガス雰囲気下、室温にて、ト
リブチル(ビニル)錫1.8ml(0.0060モル)
を加えた。
【0127】この反応混合物を100℃に加熱、その
後、48時間撹拌を続けた。放冷後、溶媒を留去し、シ
リカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘキサ
ン/酢酸エチル=19/1)により精製して、4−(m
−トリルフェニルアミノ)−4’−(m−トリル−p−
ビニルフェニルアミノ)ビフェニル2.2gを得た。性
状は無色液体で、収率は80%であった。
【0128】油浴及び撹拌機を備えたガラスフラスコ
中、4−(m−トリルフェニルアミノ)−4’−(m−
トリル−p−ビニルフェニルアミノ)ビフェニル0.7
0g(0.0013モル)、マレイン酸モノメチルエス
テル0.49g(0.0038モル)、及びアゾビス
(イソブチロニトリル)0.0021g(0.0000
13モル)をトルエン12mlに溶解させ、この溶液に
アルゴンガスを30分間バブリングさせ、その後、密封
し、70℃にて24時間撹拌した。反応混合物をメタノ
ール40mlに加えて、再沈殿精製を行い、マレイン酸
無水物重合体(P2)0.61gを得た。性状は白色固
体であった。
【0129】
【化26】
【0130】得られたマレイン酸無水物重合体(P2)
の、元素分析、分子量測定、及び紫外可視吸収スペクト
ル分析を行った。
【0131】(A)元素分析:交互共重合体(n=1.
0)としてC4436、計算値=C;82.
5%,H;5.7%,N;4.4%、実測値=C;8
2.3%,H;5.9%,N;4.3% (B)分子量測定:ゲル浸透クロマトグラフィー分析
(RI,ポリスチレン換算)、重量平均分子量(M
=2.7×10;多分散度(M/M)=2.44 (C)紫外可視吸収スペクトル測定(ジクロロメタ
ン):ピーク355nm;ピーク310nm (D)IR特性吸収スペクトル測定により、1780c
−1、1858cm (KBr、vc=0)に吸収スペク
トルを有し、カルボン酸無水物部分(-CO-O-CO-)
を有することを確認した。
【0132】(実施例3)マレイン酸無水物重合体(P
3)の合成 油浴、撹拌機、及び還流冷却器を備えたガラスフラスコ
中、3−ブロモトルエン3.8g(0.022モル)、
トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)
0.31g(0.00033モル)、及び1,1’−ビ
ス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン0.28g
(0.00049モル)をトルエン200mlに加え、
アルゴンガス雰囲気下、室温にて、15分間撹拌した。
【0133】この反応混合物に、ナトリウム−tert
−ブトキシド2.6g(0.028モル)及びp−メト
キシアニリン2.7g(0.022モル)を加え、油浴
温度95℃に加熱、その後、3時間撹拌を続けた。その
後、ナトリウム−tert−ブトキシド2.6g(0.
028モル)及び4,4’−ジブロモビフェニル21g
(0.071モル)を加え、油浴温度95℃にて20時
間撹拌を続けた。
【0134】放冷後、この混合物に水150ml及びジ
エチルエーテル100mlを加え、分離した有機相を水
100mlを用いて2回洗浄し、その後、水相からジエ
チルエーテル100mlを用いて2回抽出し、すべての
有機相を硫酸マグネシウムを用いて乾燥した。溶媒を留
去した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開
溶媒:ヘキサン)により精製して、4−ブロモ−4’−
(m−トリル−p−メトキシフェニルアミノ)ビフェニ
ル9.0gを得た。性状は白色固体で、収率は79%で
あった。
【0135】油浴、撹拌機、及び還流冷却器を備えたガ
ラスフラスコ中、4−ブロモ−4’−(m−トリル−p
−メトキシフェニルアミノ)ビフェニル8.0g(0.
018モル)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパ
ラジウム(0)0.25g(0.00026モル)、及
び1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン
0.22g(0.00040モル)をトルエン120m
lに加え、アルゴンガス雰囲気下、室温にて、15分間
撹拌した。
【0136】この反応混合物に、ナトリウム−tert
−ブトキシド2.1g(0.022モル)及びp−メト
キシアニリン2.5g(0.018モル)を加え、油浴
温度95℃に加熱、その後、3時間撹拌を続けた。続い
て、この反応混合物に、ナトリウム−tert−ブトキ
シド2.1g(0.022モル)及び1,4−ジブロモ
ベンゼン13g(0.054モル)を加え、油浴温度9
5℃にて22時間撹拌を続けた。
【0137】放冷後、この混合物に水120ml及びジ
エチルエーテル100mlを加え、分離した有機相を水
100mlを用いて2回洗浄し、その後、水相からジエ
チルエーテル100mlを用いて2回抽出し、すべての
有機相を硫酸マグネシウムを用いて乾燥した。溶媒を留
去した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開
溶媒:ヘキサン/トルエン=4/1)により精製して、
4−(m−トリル−p−メトキシフェニルアミノ)−
4’−(p−メトキシフェニル−p−ブロモフェニルア
ミノ)ビフェニル7.2gを得た。性状は白色固体で、
収率は67%であった。
【0138】油浴、撹拌機、及び還流冷却器を備えたガ
ラスフラスコ中、4−(m−トリル−p−メトキシフェ
ニルアミノ)−4’−(p−メトキシフェニル−p−ブ
ロモフェニルアミノ)ビフェニル3.0g(0.004
5モル)、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウ
ム(0)0.14g(0.00012モル)、及び2,
6−ジブチルヒドロキシトルエン0.004gをトルエ
ン30mlに溶解させ、この反応混合物に、アルゴンガ
ス雰囲気下、室温にて、トリブチル(ビニル)錫1.6
ml(0.0054モル)を加えた。
【0139】この反応混合物を100℃に加熱、その
後、48時間撹拌を続けた。放冷後、溶媒を留去し、シ
リカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘキサ
ン/酢酸エチル=9/1)により精製して、4−(m−
トリル−p−メトキシフェニルアミノ)−4’−(p−
メトキシフェニル−p−ビニルフェニルアミノ)ビフェ
ニル2.2gを得た。性状は無色液体で、収率は81%
であった。
【0140】油浴及び撹拌機を備えたガラスフラスコ
中、4−(m−トリル−p−メトキシフェニルアミノ)
−4’−(p−メトキシフェニル−p−ビニルフェニル
アミノ)ビフェニル0.75g(0.0012モル)、
マレイン酸モノメチルエステル1.1g(0.0083
モル)、及びアゾビス(イソブチロニトリル)0.00
24g(0.000015モル)をトルエン15mlに
溶解させ、この溶液にアルゴンガスを30分間バブリン
グさせ、その後、密封し、70℃にて24時間撹拌し
た。反応混合物をメタノール50mlに加えて、再沈殿
精製を行い、マレイン酸無水物重合体(P3)0.73
gを得た。性状は白色固体であった。
【0141】
【化27】
【0142】得られたマレイン酸無水物重合体(P3)
の元素分析、分子量測定、及び紫外可視吸収スペクトル
測定を行った。
【0143】(A)元素分析:共重合体(n(数平均)
=2.1)としてC90.177. 4.2
7.2、計算値=C;81.1%,H;5.9%,N;
4.4%、実測値=C;80.8%,H;6.0%,
N;4.3% (B)分子量測定:ゲル浸透クロマトグラフィー分析
(RI,ポリスチレン換算)、重量平均分子量(M
=3.1×10;多分散度(M/M)=2.58 (C)紫外可視吸収スペクトル測定(ジクロロメタ
ン):ピーク362nm;ピーク310nm (D)IR特性吸収スペクトル測定により、1781c
−1、1861cm (KBr、vc=0)に吸収スペク
トルを有し、カルボン酸無水物部分(-CO-O-CO-)
を有することを確認した。
【0144】(実施例4)マレイン酸無水物重合体(P
4)の合成 油浴、撹拌機、及び還流冷却器を備えたガラスフラスコ
中、3−ブロモトルエン4.0g(0.023モル)、
トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)
0.33g(0.00035モル)、及び1,1’−ビ
ス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン0.29g
(0.00051モル)をトルエン200mlに加え、
アルゴンガス雰囲気下、室温にて、15分間撹拌した。
【0145】この反応混合物に、ナトリウム−tert
−ブトキシド2.7g(0.030モル)及びm−フル
オロアニリン2.5g(0.023モル)を加え、油浴
温度95℃に加熱、その後、3時間撹拌を続けた。その
後、ナトリウム−tert−ブトキシド2.7g(0.
030モル)及び4,4’−ジブロモビフェニル22g
(0.075モル)を加え、油浴温度95℃にて21時
間撹拌を続けた。
【0146】放冷後、この混合物に水150ml及びジ
エチルエーテル100mlを加え、分離した有機相を水
100mlを用いて2回洗浄し、その後、水相からジエ
チルエーテル100mlを用いて2回抽出し、すべての
有機相を硫酸マグネシウムを用いて乾燥した。溶媒を留
去した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開
溶媒:ヘキサン)により精製して、4−ブロモ−4’−
(m−トリル−m−フルオロフェニルアミノ)ビフェニ
ル8.1gを得た。性状は白色固体で、収率は83%で
あった。
【0147】油浴、撹拌機、及び還流冷却器を備えたガ
ラスフラスコ中、4−ブロモ−4’−(m−トリル−m
−フルオロフェニルアミノ)ビフェニル7.5g(0.
018モル)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパ
ラジウム(0)0.25g(0.00026モル)、及
び1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン
0.22g(0.00040モル)をトルエン120m
lに加え、アルゴンガス雰囲気下、室温にて、15分間
撹拌した。
【0148】続いて、この反応混合物に、ナトリウム−
tert−ブトキシド2.1g(0.022モル)及び
m−フルオロアニリン2.0g(0.018モル)を加
え、油浴温度95℃に加熱、その後、3時間撹拌を続け
た。続いて、この反応混合物に、ナトリウム−tert
−ブトキシド2.1g(0.022モル)及び1,4−
ジブロモベンゼン13g(0.054モル)を加え、油
浴温度95℃にて22時間撹拌を続けた。
【0149】放冷後、この混合物に水120ml及びジ
エチルエーテル100mlを加え、分離した有機相を水
100mlを用いて2回洗浄し、その後、水相からジエ
チルエーテル100mlを用いて2回抽出し、すべての
有機相を硫酸マグネシウムを用いて乾燥した。溶媒を留
去した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開
溶媒:ヘキサン→ヘキサン/酢酸エチル=9/1)によ
り精製して、4−(m−トリル−m−フルオロフェニル
アミノ)−4’−(m−フルオロフェニル−p−ブロモ
フェニルアミノ)ビフェニル8.0gを得た。性状は白
色固体で、収率は70%であった。
【0150】油浴、撹拌機、及び還流冷却器を備えたガ
ラスフラスコ中、4−(m−トリル−m−フルオロフェ
ニルアミノ)−4’−(m−フルオロフェニル−p−ブ
ロモフェニルアミノ)ビフェニル3.0g(0.004
7モル)、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウ
ム(0)0.15g(0.00013モル)、及び2,
6−ジブチルヒドロキシトルエン0.004gをトルエ
ン30mlに溶解させ、この反応混合物に、アルゴンガ
ス雰囲気下、室温にて、トリブチル(ビニル)錫1.7
ml(0.0056モル)を加えた。
【0151】この反応混合物を100℃に加熱、その
後、48時間撹拌を続けた。放冷後、溶媒を留去し、シ
リカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘキサ
ン/トルエン=4/1)により精製して、4−(m−ト
リル−m−フルオロフェニルアミノ)−4’−(m−フ
ルオロフェニル−p−ビニルフェニルアミノ)ビフェニ
ル2.1gを得た。性状は無色液体で、収率は78%で
あった。
【0152】油浴及び撹拌機を備えたガラスフラスコ
中、4−(m−トリル−m−フルオロフェニルアミノ)
−4’−(m−フルオロフェニル−p−ビニルフェニル
アミノ)ビフェニル0.72g(0.0012モル)、
マレイン酸モノメチルエステル1.6g(0.012モ
ル)、及びアゾビス(イソブチロニトリル)0.003
0g(0.000019モル)をトルエン20mlに溶
解させ、この溶液にアルゴンガスを30分間バブリング
させ、その後、密封し、70℃にて24時間撹拌した。
反応混合物をメタノール50mlに加えて、再沈殿精製
を行い、マレイン酸無水物重合体(P4)0.91gを
得た。性状は白色固体であった。
【0153】
【化28】
【0154】得られたマレイン酸無水物重合体(P4)
の元素分析、分子量測定、及び紫外可視吸収スペクトル
測定を行った。 (A)元素分析:共重合体(n(数平均)=2.9)と
してC11789 .85.8、計算値=
C;81.0%,H;5.2%,N;4.7%、実測値
=C;80.6%,H;5.3%,N;4.5% (B)分子量測定:ゲル浸透クロマトグラフィー分析
(RI,ポリスチレン換算)、重量平均分子量(M
=2.3×10;多分散度(M/M)=2.57
【0155】(C)紫外可視吸収スペクトル測定(ジク
ロロメタン):ピーク351nm;ピーク312nm (D)IR特性吸収スペクトル測定により、1778c
−1、1856cm (KBr、vc=0)に吸収スペク
トルを有し、カルボン酸無水物部分(-CO-O-CO-)
を有することを確認した。
【0156】(実施例5)マレイン酸無水物重合体(P
5)の合成 油浴及び撹拌機を備えたガラスフラスコ中、9−ビニル
カルバゾール2.0g(0.010モル)、マレイン酸
モノメチルエステル4.0g(0.031モル)、及び
アゾビス(イソブチロニトリル)0.017g(0.0
0010モル)をトルエン14mlに溶解させ、この溶
液にアルゴンガスを30分間バブリングさせ、その後、
密封し、70℃にて24時間撹拌した。反応混合物をメ
タノール150mlに加えて、再沈殿精製を行い、マレ
イン酸無水物重合体(P5)2.9gを得た。性状は白
色固体であった。
【0157】
【化29】
【0158】得られたマレイン酸無水物重合体(P5)
の元素分析、分子量測定、及び紫外可視吸収スペクトル
測定を行った。 (A)元素分析:交互共重合体(n=1.0)としてC
1813NO、計算値=C;74.2%,H;4.
5%,N;4.8%、実測値=C;73.9%,H;
4.6%,N;4.7% (B)分子量測定:ゲル浸透クロマトグラフィー分析
(RI,ポリスチレン換算)、重量平均分子量(M
=2.6×10;多分散度(M/M)=2.84 (C)紫外可視吸収スペクトル測定(エタノール):ピ
ーク343nmピーク326nm。 (D)IR特性吸収スペクトル測定により、1780c
−1、1859cm に吸収スペクトルを有し、カ
ルボン酸無水物部分(-CO-O-CO-)を有することを
確認した。
【0159】(実施例6)表面にシート抵抗10Ω/□
の酸化錫インジウム(ITO)層を成膜したガラス基材
を、3−アミノプロピルトリメトキシシランの5ミリモ
ル/リットルのメタノール溶液中に50℃で3時間浸漬
した後、取り出し、メタノール中で超音波洗浄し、更
に、100℃の恒温槽で減圧下(0.01Pa以下)1
時間加熱した(工程(I))。
【0160】次いで、該基材を、実施例1で得たマレイ
ン酸無水物重合体(P1)の1ミリモル(繰り返し単
位)/リットルの2−ブタノン溶液に室温にて30分間
浸漬した後、取り出し、2−ブタノン中に繰り返し浸漬
することにより洗浄し、更に窒素ガスによりブロー乾燥
させた(工程(II))。
【0161】続いて、該基材を、エチレンジアミンの2
5ミリモル/リットルのトルエン溶液に室温で30分間
浸漬した後、取り出し、トルエン中に繰り返し浸漬する
ことにより洗浄し、更に、窒素ガスによりブロー乾燥さ
せた。更に、該基材を180℃の恒温槽で減圧下(0.
01Pa以下)6時間加熱した(工程(III))。
【0162】さらに工程(II)及び工程(III)の操作
を15回繰り返して、マレイン酸無水物重合体(P1)
を構成要素とした多層薄膜を作製した。得られた多層薄
膜はIR特性吸収スペクトル測定により1701cm
−1(vc=0)に吸収スペクトルを有しておりイミド結合
を有することを確認した。さらに、得られた多層薄膜を
自動エリプソメーター(フォトデバイス社製MARY−
102)で用いて膜厚を測定したところ37.8nmで
あった。また、走査型プローブ顕微鏡(セイコー電子社
製SPI3700;コンタクトモード)による表面プロ
ファイルの測定から求めたRms値(自乗平均面粗さ)
は0.95nmであった。
【0163】続いて、該基材に、キノリノールアルミニ
ウム錯体(Alq3)を製膜速度0.1〜0.3nm/
秒にて真空蒸着して厚さ60nmの層を形成した。次い
で、マグネシウムと銀を10:1の割合で200nm共
蒸着して製膜し(Mg:Ag層)、有機EL素子を作製
した。
【0164】このようにして作製した素子のITO層を
陽極、Mg:Ag層を陰極とし、6Vを印加した結果、
6.3mA/cmの電流が流れると共に、輝度95c
d/mの緑色発光を確認することができた。更に、印
加電圧を8Vまで昇圧したところ、25mA/cm
電流が流れると共に、輝度480cd/mの緑色発光
を確認できた。
【0165】(実施例7)表面にシート抵抗10Ω/□
のITO層を成膜したガラス基材を3−アミノプロピル
トリメトキシシランの5ミリモル/リットルのメタノー
ル溶液中に50℃で3時間浸漬した後、取り出し、メタ
ノール中で超音波洗浄し、更に、100℃の恒温槽で減
圧下(0.01Pa以下)1時間加熱した(工程
(I))。
【0166】次いで、該基材を、実施例2で得たマレイ
ン酸無水物重合体(P2)の1ミリモル(繰り返し単
位)/リットルの2−ブタノン溶液に室温にて30分間
浸漬した後、取り出し、2−ブタノン中に繰り返し浸漬
することにより洗浄し、更に、窒素ガスによりブロー乾
燥させた(工程(II))。
【0167】続いて、該基材を、エチレンジアミンの2
5ミリモル/リットルのトルエン溶液に室温で30分間
浸漬した後、取り出し、トルエン中に繰り返し浸漬する
ことにより洗浄し、更に、窒素ガスによりブロー乾燥さ
せた(工程(III))。
【0168】さらに工程(II)及び工程(III)の操作
を15回繰り返した後、該基材を180℃の恒温槽で減
圧下(0.01Pa以下)6時間加熱し、マレイン酸無
水物重合体(P2)を構成要素とした多層薄膜を作製し
た。得られた多層薄膜を実施例6と同様にして測定した
膜厚は44.5nmであり、Rms値(自乗平均面粗
さ)は1.6nmであった。
【0169】続いて、該基材に、キノリノールアルミニ
ウム錯体(Alq3)を製膜速度0.1〜0.3nm/
秒にて真空蒸着して厚さ60nmの層を形成した。次い
で、マグネシウムと銀を10:1の割合で200nm共
蒸着して製膜し(Mg:Ag層)、有機EL素子を作製
した。このようにして作製した素子のITO層を陽極、
Mg:Ag層を陰極とし、6Vを印加した結果、7.2
mA/cmの電流が流れると共に、輝度120cd/
の緑色発光を確認できた。更に、印加電圧を8Vま
で昇圧したところ、28mA/cmの電流が流れると
共に、輝度550cd/mの緑色発光を確認できた。
【0170】(実施例8)表面にシート抵抗10Ω/□
のITO層を成膜したガラス基材を、3−アミノプロピ
ルトリメトキシシランの5ミリモル/リットルのメタノ
ール溶液中に50℃で3時間浸漬した後、取り出し、メ
タノール中で超音波洗浄し、更に、100℃の恒温槽で
減圧下(0.01Pa以下)1時間加熱した(工程
(I))。
【0171】次いで、該基材を、実施例5で得たマレイ
ン酸無水物重合体(P5)の1ミリモル(繰り返し単
位)/リットルの2−ブタノン溶液に室温にて30分間
浸漬した後、取り出し、2−ブタノン中に繰り返し浸漬
することにより洗浄し、更に、窒素ガスによりブロー乾
燥させた(工程(II))。
【0172】続いて、該基材を、エチレンジアミンの2
5ミリモル/リットルのトルエン溶液に室温で30分間
浸漬した後、取り出し、トルエン中に繰り返し浸漬する
ことにより洗浄し、更に、窒素ガスによりブロー乾燥さ
せた。更に、該基材を180℃の恒温槽で減圧下(〜
0.01Pa)6時間加熱した(工程(III))。
【0173】さらに工程(II)及び工程(III)の操作
を15回繰り返して、マレイン酸無水物重合体(P5)
を構成要素とした多層薄膜を作製した。得られた多層薄
膜を実施例6と同様にして測定した膜厚は44.5nm
であり、Rms値(自乗平均面粗さ)は1.6nmであ
った。
【0174】続いて、該基材に、キノリノールアルミニ
ウム錯体(Alq3)を製膜速度0.1〜0.3nm/
秒にて真空蒸着して厚さ60nmの層を形成した。次い
で、マグネシウムと銀を10:1の割合で200nm共
蒸着して製膜し(Mg:Ag層)、有機EL素子を作製
した。このようにして作製した素子のITO層を陽極、
Mg:Ag層を陰極とし、6Vを印加した結果、6.0
mA/cmの電流が流れると共に、輝度75cd/m
の緑色発光を確認できた。更に、印加電圧を8Vまで
昇圧したところ、25mA/cmの電流が流れると共
に、輝度470cd/mの緑色発光を確認できた。
【0175】(比較例1)文献〔「ケミストリー・オブ
・マテリアルズ(Chemistry of Materials)」11巻、
399頁、1999年〕に記載の方法に従って、m−ト
リル(p−ビニルフェニル)フェニルアミンのホモポリ
マーを合成した;分子量測定:ゲル浸透クロマトグラフ
ィー分析(RI,ポリスチレン換算)、重量平均分子量
(M)=1.0×10;多分散度(M/M)=
1.20。
【0176】
【化30】
【0177】シート抵抗10Ω/□の酸化錫インジウム
ITO層を成膜したガラス基材に対して、3−アミノプ
ロピルトリメトキシシランを接触させ、その後、マレイ
ン酸無水物重合体(P1)の多層薄膜を作製する代わり
に、本比較例で合成した重合体のスピンコート薄膜(膜
厚,60nm)を作製した以外は、実施例6と同様にし
て有機EL素子を作製した。
【0178】このようにして作製した素子のITO層を
陽極、Mg:Ag層を陰極とし、6Vを印加した結果、
4.5mA/cmの電流が流れると共に、輝度60c
d/mの緑色発光を確認した。更に、印加電圧を8V
まで昇圧したところ、20mA/cmの電流が流れる
と共に、輝度400cd/mの緑色発光を確認した。
本比較例で得た発光特性に比べて、実施例6で得た発光
特性は明らかに優れていた。
【0179】(比較例2)「ケミストリー・オブ・マテ
リアルズ(Chemistry of Materia
ls)」11巻、399頁、1999年〕に記載の方法
に従って、4−(m−トリルフェニルアミノ)−4’−
(m−トリル−p−ビニルフェニルアミノ)ビフェニル
のホモポリマーを合成した;分子量測定:ゲル浸透クロ
マトグラフィー分析(RI,ポリスチレン換算)、重量
平均分子量(M)=1.2×10 ;多分散度(M
/M)=1.15。
【0180】
【化31】
【0181】シート抵抗10Ω/□の酸化錫インジウム
ITO層を成膜したガラス基材に対して、3−アミノプ
ロピルトリメトキシシランと接触させ、その後、マレイ
ン酸無水物重合体(P2)の多層薄膜を作製する代わり
に、本比較例で合成した重合体のスピンコート薄膜(膜
厚,60nm)を作製した以外は、実施例7と同様にし
て有機EL素子を作製した。
【0182】このようにして作製した素子のITO層を
陽極、Mg:Ag層を陰極とし、6Vを印加した結果、
5.0mA/cmの電流が流れると共に、輝度70c
d/mの緑色発光を確認した。更に、印加電圧を8V
まで昇圧したところ、20mA/cmの電流が流れる
と共に、輝度400cd/mの緑色発光を確認した。
本比較例で得た発光特性に比べて、実施例7で得た発光
特性は明らかに優れていた。
【0183】
【発明の効果】本発明は、陽極との密着性が高く、且
つ、ウェット方式による正孔輸送層の製膜に適したマレ
イン酸無水物重合体を提供することができる。また、本
発明のマレイン酸無水物重合体を用いた有機EL素子
は、低い印加電圧で、輝度の高い発光を得ることができ
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の有機EL素子の積層構造の一形態を
示す模式図である。
【図2】 本発明の有機EL素子の積層構造の一形態を
示す模式図である。
【図3】 本発明の有機EL素子の積層構造の一形態を
示す模式図である。
【図4】 本発明のマレイン酸無水物重合体を用いた正
孔輸送層の作製方法の一形態を示す模式図である。
【図5】 本発明のマレイン酸無水物重合体を用いた正
孔輸送層の作製方法の一形態を示す模式図である。
【符号の説明】
1:基材 2:陽極 3:本発明のマレイン酸無水物重合体を用いた正孔輸送
層 4:本発明のマレイン酸無水物重合体以外の正孔輸送性
化合物を用いた正孔輸送層 5:発光層 6:電子輸送層 7:電子注入層 8:陰極 i:陽極 ii:陽極表面に結合したアミノ基含有カップリング剤 iii:本発明のマレイン酸無水物重合体 iv:アミノ基を2個以上有する化合物 S:アミノ基含有カップリング剤と陽極表面との結合単
位 X:アミノ基含有カップリング剤又はアミノ基を2個以
上有する化合物中に含まれるアミノ基 X’:本発明のマレイン酸無水物重合体中に含まれるカ
ルボン酸無水物部分 Y:X’とXとの付加反応により生じたアミド結合 Z:加熱によりYから変換されたイミド結合
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) H05B 33/22 H05B 33/22 D 33/28 33/28

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 一般式(I) 【化1】 (式中、Aは 【化2】 のいずれかで示されるトリフェニルアミノ基又は 【化3】 で示されるカルバゾリル基であり、X、Y及びZは、各
    々水素、ハロゲン、アルキル基、アルキルチオ基、ジア
    ルキルアミノ基、アルコキシ基、フェニル基及びジフェ
    ニルアミノ基からなる群から独立して選ばれる1〜5個
    の基を表し、nとmは独立に1以上の整数を表す)で示
    されるマレイン酸無水物重合体。
  2. 【請求項2】 一般式(I)においてnが1〜3であ
    り、mが3〜500である請求項1に記載のマレイン酸
    無水物重合体。
  3. 【請求項3】 一般式(II) 【化4】 (式中、Aは 【化5】 のいずれかで示されるトリフェニルアミノ基又は 【化6】 で示されるカルバゾリル基であり、X、Y及びZは、各
    々水素、ハロゲン、アルキル基、アルキルチオ基、ジア
    ルキルアミノ基、アルコキシ基、フェニル基及びジフェ
    ニルアミノ基からなる群から独立して選ばれる1〜5個
    の基を表す)で示されるビニル化合物と、マレイン酸無
    水物とを付加重合させることを特徴とする、一般式
    (I) 【化7】 (式中、Aは前記と同じ基、nとmは独立に1以上の整
    数を表す)で示されるマレイン酸無水物重合体の製造方
    法。
  4. 【請求項4】 基材上に、陽極、正孔輸送層、発光層及
    び陰極とを有し、前記正孔輸送層が、一般式(I) 【化8】 (式中、Aは 【化9】 のいずれかで示されるトリフェニルアミノ基又は 【化10】 で示されるカルバゾリル基であり、X、Y及びZは、各
    々水素、ハロゲン、アルキル基、アルキルチオ基、ジア
    ルキルアミノ基、アルコキシ基、フェニル基及びジフェ
    ニルアミノ基からなる群から独立して選ばれる1〜5個
    の基を表し、nとmは独立に1以上の整数を表す)で示
    されるマレイン酸無水物重合体からなることを特徴とす
    る有機エレクトロルミネッセンス素子。
  5. 【請求項5】 正孔輸送層がマレイン酸無水物重合体か
    らなる層とアミノ基を2つ以上有する化合物からなる層
    とがイミド結合又はアミド結合を介し、各々1層以上交
    互に積層してなるものである請求項4に記載の有機エレ
    クトロルミネッセンス素子。
  6. 【請求項6】 基材上に、陽極、正孔輸送層、発光層及
    び陰極とを有する有機エレクトロルミネッセンス素子の
    製造方法であって、(1)陽極表面をアミノ基含有カッ
    プリング剤と接触させ、アミノ基含有カップリング剤を
    陽極表面に結合させる工程、(2)前記陽極を請求項1
    に記載のマレイン酸無水物重合体の溶液に接触させ、陽
    極表面に結合したアミノ基含有カップリング剤とマレイ
    ン酸無水物重合体とをアミド結合させる工程、(3)陽
    極表面に結合しなかった過剰のマレイン酸無水物重合体
    を洗浄除去する工程、及び(4)前記陽極を100℃以
    上の温度で加熱する工程により前記正孔輸送層を製造す
    ることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子
    の製造方法。
  7. 【請求項7】 基材上に、陽極、正孔輸送層、発光層及
    び陰極とを有する有機エレクトロルミネッセンス素子の
    製造方法であって、(1)陽極表面をアミノ基含有カッ
    プリング剤と接触させ、アミノ基含有カップリング剤を
    陽極表面に結合させる工程、(2)前記陽極を請求項1
    に記載のマレイン酸無水物重合体の溶液に接触させ、陽
    極表面に結合したアミノ基含有カップリング剤とマレイ
    ン酸無水物重合体をアミド結合させる工程、(3)陽極
    表面に結合しなかった過剰のマレイン酸無水物重合体を
    洗浄除去する工程、(4)マレイン酸無水物重合体が結
    合した前記陽極に、アミノ基を2つ以上有する化合物を
    接触させ、アミド結合させる工程、(5)前記陽極から
    過剰のアミノ基を2個以上有する化合物を除去する工
    程、(6)前記陽極を100℃以上の温度で加熱する工
    程、及び(7)工程(6)で得た陽極に工程(2)から
    工程(6)までの工程を更に1回以上施す工程により前
    記正孔輸送層を製造することを特徴とする有機エレクト
    ロルミネッセンス素子の製造方法。
  8. 【請求項8】 請求項7に記載の、工程(1)〜工程
    (5)で得た陽極に、工程(2)から工程(5)までの
    工程を更に1回以上施した後、前記陽極を100℃以上
    の温度で加熱する工程により正孔輸送層を製造する有機
    エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
  9. 【請求項9】 工程(2)において、サイクルごとに同
    一又は異なるマレイン酸無水物重合体の溶液を用いる請
    求項7又は8に記載の有機エレクトロルミネッセンス素
    子の製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2005097589A (ja) * 2003-08-29 2005-04-14 Showa Denko Kk 燐光発光性高分子化合物およびこれを用いた有機発光素子
JP2007520858A (ja) * 2003-12-19 2007-07-26 ケンブリッジ ディスプレイ テクノロジー リミテッド 光学装置

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