JP2003192594A - 創傷治癒時の障害の治療剤または予防剤 - Google Patents

創傷治癒時の障害の治療剤または予防剤

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JP2003192594A JP2001396902A JP2001396902A JP2003192594A JP 2003192594 A JP2003192594 A JP 2003192594A JP 2001396902 A JP2001396902 A JP 2001396902A JP 2001396902 A JP2001396902 A JP 2001396902A JP 2003192594 A JP2003192594 A JP 2003192594A
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Mizuo Miyazaki
瑞夫 宮▲崎▼
Keiichi Kamoshita
恵一 鴨下
Yoshikazu Sukenaga
義和 助永
Ryoichi Suzuki
良一 鈴木
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Nippon Kayaku Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】経口投与可能な創傷治癒時の障害の治療剤また
は予防剤の開発。 【解決手段】下記式(II) で表される骨格構造を有し且つ選択性の高いキマーゼ阻
害活性を有する化合物、またはその薬理学上許容される
塩を有効成分とする創傷治癒時の障害の治療剤または予
防剤、特に癒着の治療剤または予防剤並びに瘢痕予防剤
を提供する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、経口投与等によ
り、生体内で有効にキマーゼ活性を阻害する化合物を用
いた創傷治癒時の障害の治療剤または予防剤、特に癒着
の防止または治療剤並びに瘢痕防止剤に関する。
【0002】
【従来の技術】生体組織が創傷を受けた場合、生体は不
足した組織を補い、損傷部を修復して創傷を治癒させる
よう反応する。損傷部では血漿性蛋白質が漏出し凝固反
応が進み、線維素性物質が形成される。これらは欠損領
域を塞ぐと共に炎症性細胞を浸潤させ、その足場とな
る。こうして形成された塊状物は通常一過性であり、そ
の後分解・吸収され、損傷部の再生・修復が行われる。
しかし、この塊状物が患部に滞留し線維に富んだ領域と
して創傷部に残ることがある(森田ら,臨床消化器内
科,10,1395〜1400(1995))。この塊
状物が同一組織内の創傷跡として存在するものが瘢痕で
あり、周辺組織にまで及んで形成された場合に癒着と呼
ばれている。瘢痕や癒着は、しばしば本来の組織の機能
を障害し、日常生活に障害をもたらすことも多い。こう
した瘢痕や癒着が創傷治癒過程の細胞増殖・炎症反応・
線維化反応といった共通の機序によりもたらされると考
えられている。
【0003】更に、こうした瘢痕や癒着の原因となる損
傷や、その起こる部位は特に限定されるものではなく、
日常生体が受けるあらゆる損傷、例えば手術、事故、疾
患等の後に生じることはよく知られている。特に外科手
術後に発生する癒着について、Ellisら(Br.
J.Surg.,69,241〜243(1982))
およびMajnoら(Am.J.Surg.,126,
345〜353(1973))の報告によれば、全ての
手術の約90%に癒着が発生し、そのうちの約10%の
患者で術後の癒着が問題になっている。
【0004】癒着では本来独立した各組織が接着するた
め、それら組織の機能が障害され、また、それに起因す
る痛みをもたらし、それらを除くための手術が必要とな
る場合もある。また、原疾患の治療について、その手術
の妨げとなることもある。
【0005】例えば、腸イレウスの大半は腹部の手術後
に生じた癒着により腸道が屈曲し腸腔が塞がって起こ
る。また、胸部外科手術においても組織と肋膜や体壁と
の間に癒着が生じることがあり、特に心臓外科手術の後
には癒着が生じ易い。ペースメーカー等の植え込みを行
なった場合に、癒着によりしばしば再手術が困難となる
ケースも多い。婦人科で行なわれてる顕微鏡手術、卵管
再形成手術、開腹手術、腹腔鏡検査等の不妊症手術によ
っても癒着が生じ、それに起因した不妊が治療の失敗を
もたらすこともある(Gomelら、Current
Opinion in Obstetrics and G
ynecology.4,390〜399(199
2))。また、婦人科領域で起こる癒着では、子宮の癒
着、小腸の閉塞や慢性骨盤痛をもたらし、術後の合併症
の発症確率も高くする。腱が断裂した場合に行われる整
形外科手術によっても癒着は生じる。通常、断裂部を縫
合しギブス固定により断裂部を接着させるが、腱の回復
には強固な縫合と早期からのリハビリが必用とされてい
る。しかし、患部に癒着が生じて早期リハビリ導入が不
可能となり、患部の運動障害を来すことがある。特にそ
れが手指の屈曲を担う腱の場合に大きな問題となってい
る。その他、白内障治療のため行われる視力回復手術後
の後発白内障、口腔外科で行われる歯根膜手術後の周辺
の軟組織と堅組織との癒着、脳外科治療の際に生じるく
も膜の癒着等、癒着は様々な部位に生じるものである。
【0006】瘢痕自体は直接生命を脅かすものではない
が、手指等の関節を頻繁に屈曲させる部位においては、
通常の皮膚よりも硬い瘢痕により運動が妨げられること
がある。また、現代社会において特に美容上の観点から
瘢痕は重要な問題となる。第三者の眼に触れる部分の瘢
痕は、時に本人にとって精神的な苦痛を与えることとな
るため、瘢痕を生じさせない創傷治癒は現代社会におい
て重要な課題である。
【0007】癒着は様々な刺激により発生するものであ
り、特に手術後の癒着を防ぐため様々な方法が試みられ
ているが、何れも充分な癒着防止効果が得られておら
ず、また、安全性、供給量、製造方法、製剤コスト、生
体内での安定性や吸収性、等に問題を持っている。
【0008】一般に創傷部に施される治療としては、創
傷部を滅菌ガーゼで覆い抗生物質や抗菌剤により感染を
防ぐことであるが、これらに瘢痕を抑制する効果はな
い。これまでに瘢痕組織の形成を減少させるような全身
性薬剤はない。よって、現代社会において創傷部を瘢痕
等の痕跡なく治癒させる薬剤の要望は高い。
【0009】ところで、本発明者らは肥満細胞が癒着形
成に関係していることを明らかにし、癒着とキマーゼに
何らかの関係があることを推量した(J.Surgic
alRes.(2000)92:40〜44)が、キマ
ーゼと癒着形成との直接的な因果関係は不明であった。
また、皮膚修復とキマーゼについては、Algermi
ssenらの試験管内の実験(Exp.Dermato
l.,8,193〜198(1999))やNishi
koriらの動物実験(Arch.Dermatol.
Res.,290,553〜560(1998))に記
載があり、また、Algermissenらの報告(E
xp.Dermatol.,8,193〜198(19
99)およびJ.Invest.Dermatol.,
114,51〜55(2000))では、実際の瘢痕組
織におけるキマーゼの発現量は減少していることが示さ
れており、これらからも癒着および瘢痕とキマーゼとの
関係については不明であった。即ち、キマーゼを阻害す
ることによる癒着・瘢痕の治療または予防については知
られていなかった。まして、キマーゼを阻害することに
よるイレウスの治療または予防についても知られていな
かった。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】従来行われている創傷
治癒時の傷害の治療または予防方法、特に癒着防止方法
は満足できるものではなく、優れた癒着防止剤が望まれ
ているが、これまでに安全で有効な薬剤、特に経口剤は
見出されていない。よって、副作用が少なく、癒着を治
療または防止する有用な薬剤の提供が求められている。
【0011】一方、現在の創傷部の治療は、一般的に感
染防止や創傷治癒を目的としたものであり、こうした治
療は創傷治癒時の傷害、特に瘢痕阻止作用を有しない。
現代社会において創傷部を瘢痕等の痕跡なく治癒させる
薬剤の要望は依然として高く、創傷治癒時における瘢痕
防止剤の提供も求められている。
【0012】
【課題を解決するための手段】本発明者らは自らの動物
実験の中で、ピリミドン骨格を有し且つキマーゼ阻害活
性を有する化合物を投与した動物では、投与していない
動物に比べて明らかに組織リモデリングが抑制され、創
傷治癒時の障害、特に癒着が抑えられていることに気づ
き、更に動物実験を行なうことで癒着の治療または予防
作用を見出し、上記課題である創傷治癒時の障害を解決
するための治療剤または予防剤である本発明に至った。
【0013】即ち、本発明は、次の(1)〜(15)に
関するものである。 (1)ピリミドン骨格を有し且つキマーゼ阻害活性を有
する化合物、またはその薬理学上許容される塩を含有す
る創傷治癒時の障害の治療剤または予防剤。 (2)ピリミドン骨格が、下記式(II)
【化3】 で表される骨格である上記(1)に記載の創傷治癒時の
障害の治療剤または予防剤。
【0014】(3)一般式(I)
【化4】 [式中、R0はアリール基を示し、R1は水素原子、C
1〜C6のアルキル基、C1〜C6のアシル基、単環芳
香族基で置換されていてもよい(C1〜C6)アルキル
オキシカルボニル基、アリール基で置換されていてもよ
い(C1〜C6)アルキルスルホニル基、アリール基で
置換されていてもよい(C1〜C6)アルキルアミノス
ルホニル基または飽和複素環カルボニル基を示し、Dは
酸素原子または−NH−を示し、mは0乃至3のいずれ
かの整数を示す。R2は置換基を有していてもよい(C
1〜C6)アルキル基または(C1〜C6)アルキルオ
キシ基を示す。]で表される化合物またはその薬理学上
許容される塩を有効成分とする創傷治癒時の障害の治療
剤または予防剤。 (4)R0におけるアリール基が(C1〜C6)アルキ
ル基またはハロゲン原子で置換されていてもよいフェニ
ル基であり、R1における単環芳香族基で置換されてい
てもよい(C1〜C6)アルキルオキシカルボニル基が
(C1〜C6)アルキルオキシカルボニル基またはピリ
ジル(C1〜C6)アルキルオキシカルボニル基であ
り、アリール基で置換されていてもよい(C1〜C6)
アルキルスルホニル基がフェニル基で置換された(C1
〜C6)アルキルスルホニル基であり、アリール基で置
換されていてもよい(C1〜C6)アルキルアミノスル
ホニル基がフェニル基で置換された(C1〜C6)アル
キルアミノスルホニル基であり、飽和複素環カルボニル
基が酸素原子を有する飽和複素環カルボニル基であり、
R2における置換基を有していてもよい(C1〜C6)
アルキル基が(C1〜C6)アルキル基、(C1〜C
6)アルキルオキシ(C1〜C6)アルキル基、アリー
ル基で置換された(C1〜C6)アルキル基、窒素原子
を有する複素環オキシ基で置換された(C1〜C6)ア
ルキル基または窒素原子を有する複素環基で置換された
(C1〜C6)アルキル基である上記(3)に記載の創
傷治癒時の障害の治療剤または予防剤。
【0015】(5)R1の飽和複素環カルボニル基にお
ける酸素原子を有する飽和複素環カルボニル基がテトラ
ヒドロフロイル基であり、R2の置換基を有していても
よい(C1〜C6)アルキル基におけるアリール基で置
換された(C1〜C6)アルキル基がフェニル基で置換
された(C1〜C6)アルキル基であり、窒素原子を有
する複素環オキシ基で置換された(C1〜C6)アルキ
ル基が窒素原子を有する6員複素環オキシ基で置換され
た(C1〜C6)アルキル基であり、窒素原子を有する
複素環基で置換された(C1〜C6)アルキル基が窒素
原子を有する6員複素環基で置換された(C1〜C6)
アルキル基である上記(4)に記載の創傷治癒時の障害
の治療剤または予防剤。 (6)R0がフェニル基または(C1〜C6)アルキル
フェニル基であり、R1が水素原子、(C1〜C6)ア
ルキルオキシカルボニル基、(C1〜C6)アシル基、
フェニル(C1〜C6)アルキルスルホニル基、ピリジ
ル(C1〜C6)アルキルオキシカルボニル基、フェニ
ル(C1〜C6)アルキルアミノスルホニル基または
(C1〜C6)アルキル基であり、mが0または1であ
り、R2がピリジルオキシ(C1〜C6)アルキル基で
ある上記(3)に記載の創傷治癒時の障害の治療剤また
は予防剤。
【0016】(7)R0がフェニル基であり、R1が水
素原子、(C1〜C6)アシル基またはフェニル(C1
〜C6)アルキルアミノスルホニル基であり、Dが−N
H−であり、mが0であり、R2がピリジルオキシ(C
1〜C6)アルキル基である上記(3)に記載の創傷治
癒時の障害の治療剤または予防剤。 (8)R1がホルミル基、アセチル基またはベンジルア
ミノスルホニル基であり、R2が2−ピリジルオキシプ
ロピル基である上記(7)に記載の創傷治癒時の障害の
治療剤または予防剤。
【0017】(9)一般式(I)で表される化合物が、
2−(5−ホルミルアミノ−6−オキソ−2−フェニル
−1,6−ジヒドロピリミジン−1−イル)−N−
[2,3−ジオキソ−1−フェニルメチル−6−(2−
ピリジルオキシ)]ヘキシルアセタミド、2−(5−ア
セチルアミノ−6−オキソ−2−フェニル−1,6−ジ
ヒドロピリミジン−1−イル)−N−[2,3−ジオキ
ソ−1−フェニルメチル−6−(2−ピリジルオキ
シ)]ヘキシルアセタミド、2−(5−ベンジルアミノ
スルホニルアミノ−6−オキソ−2−フェニル−1,6
−ジヒドロピリミジン−1−イル)−N−[2,3−ジ
オキソ−1−フェニルメチル−6−(2−ピリジルオキ
シ)]ヘキシルアセタミドまたは2−(5−ヒドロキシ
メチル−6−オキソ−2−フェニル−1,6−ジヒドロ
ピリミジン−1−イル)−N−[2,3−ジオキソ−1
−フェニルメチル−6−(2−ピリジルオキシ)]ヘキ
シルアセタミドである上記(3)に記載の創傷治癒時の
障害の治療剤または予防剤。 (10)ピリミドン骨格を有し且つキマーゼ阻害活性を
有する化合物が、2−(5−ホルミルアミノ−6−オキ
ソ−2−フェニル−1,6−ジヒドロピリミジン−1−
イル)−N−[2,3−ジオキソ−1−フェニルメチル
−6−(2−ピリジルオキシ)]ヘキシルアセタミド、
またはその薬理学上許容される塩である上記(1)記載
の創傷治癒時の障害の治療剤または予防剤。
【0018】(11)創傷治癒時の障害が創傷部の細胞
増殖に起因する障害である上記(1)乃至(10)のい
ずれか1項に記載の治療剤または予防剤 (12)創傷治癒時の障害が癒着または瘢痕である上記
(1)乃至(10)のいずれか1項に記載の治療剤また
は予防剤 (13)ピリミドン骨格を有し且つキマーゼ阻害活性を
有する化合物を含有する創傷治癒時の障害の治療用また
は予防用経口医薬製剤。 (14)ピリミドン骨格を有し且つキマーゼ阻害活性を
有する化合物が、上記(3)記載の化合物またはその薬
理学上許容される塩である上記(13)に記載の創傷治
癒時の障害の治療用または予防用経口医薬製剤。 (15)創傷治癒時の障害が癒着または瘢痕である上記
(13)または(14)に記載の経口医薬製剤。
【0019】
【発明の実施の形態】本発明はキマーゼ阻害活性を有す
る化合物、より具体的には一般式(II)で表される骨
格を有する化合物、更に具体的には一般式(I)で表さ
れる化合物、またはその薬理学上許容される塩を含有す
る創傷治癒時の障害の治療剤または予防剤、特に癒着の
治療剤または防止剤、瘢痕防止剤である。本発明でいう
創傷治癒時の障害としては、創傷部の細胞増殖による障
害が挙げられ、特に創傷部に起こる癒着または瘢痕が挙
げられる。
【0020】本発明における癒着には、通常知られてい
る、日常生体が受けるあらゆる損傷の後に生じる癒着は
全て含まれ、上記した様な癒着もすべて含まれるが、特
に外科的手術の後に生じる癒着が挙げられる。外科的手
術の後に生じる癒着は、腹部や胸部を始めあらゆる生体
部位において生じることが知られており、具体的には例
えば、小腸、大腸、子宮、肺、心臓、腱等が挙げられ
る。また、本発明でいう瘢痕には、手術創や火傷等の創
傷が治癒する過程で生じる、通常知られている瘢痕、ケ
ロイド(盛り上がった瘢痕)等は全て含まれる。本発明
でいう癒着の治療剤とは、進行する癒着のその進展を阻
止することも含む。また、瘢痕や癒着は通常の創傷治癒
過程で発生することが予想されるものであり、外科的手
術を始めとする創傷の後に生じる瘢痕および癒着の防止
を目的として上記一般式(I)を含むピリミドン骨格を
有し且つキマーゼ阻害活性を有する化合物を予防的に投
与することも本発明に含まれる。
【0021】本発明でいうキマーゼとは、セリンプロテ
アーゼの中のキモトリプシンタイプのプロテアーゼに属
し、肥満細胞中の分泌顆粒に蓄積され、刺激によって放
出される細胞障害性の酵素(蛋白質)である。キマーゼ
の阻害活性は公知の方法で測定可能であるが、例えば国
際公開WO98/09949号公報や国際公開WO99
/41277号公報において開示した方法で測定でき
る。キマーゼ阻害活性を有するとは、該公報の測定方法
においてIC50が100nM以下のものであり、好ま
しくは50nM以下であり、特に好ましくは20nM以
下である。
【0022】また、本発明は、上記一般式(I)で表さ
れる化合物またはその薬理学上許容される塩を含有する
創傷治癒時の障害の治療剤または予防剤である。上記一
般式(I)において、R0はアリール基を示す。アリー
ル基としては、例えば置換基を有していてもよいフェニ
ル基があげられ、より好ましくは(C1〜C6)アルキ
ル基またはハロゲン原子で置換されていてもよいフェニ
ル基であり、更に好ましくはフェニル基である。
【0023】置換基としての(C1〜C6)アルキル基
としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル
基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、s
ec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル
基、sec−ペンチル基、tert−アミル基、n−ヘ
キシル基、1,2−ジメチル−ブチル基等が挙げられ,
メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、
tert−ブチル基等の(C1〜C4)アルキル基が好
ましい。ハロゲン原子としては例えばフッ素、塩素、臭
素、ヨウ素等があげられる。(C1〜C6)アルキル基
で置換されたフェニル基としては、例えばトリル基、キ
シリル基等があげられ、具体的には例えば3,4−ジメ
チルフェニル基が挙げられ、ハロゲン原子で置換された
フェニル基としては例えばフルオロフェニル基、好まし
くは2−フルオロフェニル基等があげられる。
【0024】R1は水素原子、C1〜C6のアルキル
基、C1〜C6のアシル基、単環芳香族基で置換されて
いてもよい(C1〜C6)アルキルオキシカルボニル
基、アリール基で置換されていてもよい(C1〜C6)
アルキルスルホニル基、アリール基で置換されていても
よい(C1〜C6)アルキルアミノスルホニル基または
飽和複素環カルボニル基である。
【0025】C1〜C6のアルキル基としては、例えば
上記置換基としての(C1〜C6)アルキル基と同様の
基があげられ、上記置換基としての(C1〜C4)アル
キル基と同様の基が好ましい。C1〜C6のアシル基と
しては、例えばホルミル基、アセチル基、プロピオニル
基、ブチリル基、イソブチリル基、バレリル基等が挙げ
られ、ホルミル基、アセチル基が特に好ましい。
【0026】(C1〜C6)アルキルオキシカルボニル
基に置換する単環芳香族基としては、例えばフェニル
基、ピリジル基、ピリミジル基、ピラジル基、ピリダジ
ル基、フリル基、ピロリル基等があげられ、ピリジル基
が好ましい。また、(C1〜C6)アルキルオキシカル
ボニル基における(C1〜C6)アルキルとしては、例
えば上記置換基としての(C1〜C6)アルキル基と同
様の基があげられ、上記置換基としての(C1〜C4)
アルキル基と同様の基が好ましい。
【0027】単環芳香族基で置換されていてもよい(C
1〜C6)アルキルオキシカルボニル基としては、例え
ばメトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n−
プロポキシカルボニル基、n−ブトキシカルボニル基、
tert−ブトキシカルボニル基、n−ペンチルオキシ
カルボニル基、sec−ペンチルオキシカルボニル基、
2,2−ジメチル−プロポキシカルボニル基、n−ヘキ
シルオキシカルボニル基、1,2−ジメチル−ブチルオ
キシカルボニル基、ピリジルメトキシカルボニル基、ピ
リジルエトキシカルボニル基、ピリジルプロポキシカル
ボニル基、ピリジルブトキシカルボニル基、ピリミジル
メトキシカルボニル基、ピリミジルプロポキシカルボニ
ル基、ピラジルメトキシカルボニル基、ピラジルブトキ
シカルボニル基、ピリダジルメトキシカルボニル基、フ
リルメトキシカルボニル基、ピロリルエトキシカルボニ
ル基等が挙げられ、好ましくはメトキシカルボニル基、
エトキシカルボニル基、tert−ブトキシカルボニル
基等の(C1〜C4)アルキルオキシカルボニル基,ピ
リジルメトキシカルボニル基等のピリジル(C1〜C
4)アルキルオキシカルボニル基が挙げられる。単環芳
香族基で置換されていてもよい(C1〜C6)アルキル
オキシカルボニル基としては、具体的には例えば4−ピ
リジルメトキシカルボニル基等が挙げられる。
【0028】(C1〜C6)アルキルスルホニル基に置
換するアリール基としては、例えばR0のアリール基と
同様の基があげられ、フェニル基が好ましい。また、
(C1〜C6)アルキルスルホニル基における(C1〜
C6)アルキル基としては、例えば上記置換基としての
(C1〜C6)アルキル基と同様の基があげられ、上記
置換基としての(C1〜C4)アルキル基と同様の基が
好ましい。
【0029】アリール基で置換されていてもよい(C1
〜C6)アルキルスルホニル基としては、例えばベンジ
ルスルホニル基、フェネチルスルホニル基、フェニルブ
チルスルホニル基等が挙げられ、ベンジルスルホニル基
が好ましい。(C1〜C6)アルキルアミノスルホニル
基に置換するアリール基としては、例えばR0のアリー
ル基と同様の基があげられ、フェニル基が好ましい。ま
た、(C1〜C6)アルキルスルホニル基における(C
1〜C6)アルキル基としては、例えば上記置換基とし
ての(C1〜C6)アルキル基と同様の基があげられ、
上記置換基としての(C1〜C4)アルキル基と同様の
基が好ましい。
【0030】アリール基で置換されていてもよい(C1
〜C6)アルキルアミノスルホニル基としては、例えば
フェニル基で置換された(C1〜C6)アルキルアミノ
スルホニル基が挙げられ、ベンジルアミノスルホニル
基、フェネチルアミノスルホニル基、フェニルプロピル
アミノスルホニル基等のフェニル基で置換された(C1
〜C4)アルキルアミノスルホニル基が好ましく、ベン
ジルアミノスルホニル基がより好ましい。
【0031】飽和複素環カルボニル基としては、例えば
酸素、窒素および硫黄からなるグループから選択される
1から4個の複素原子を含む5または6員環の飽和複素
環カルボニル基が好ましく、例えばチオリルカルボニル
基、ジオキサニルカルボニル基、オキソチアニルカルボ
ニル基、ジチアジニルカルボニル基、オキサチオリルカ
ルボニル基、ピロリジノカルボニル基、ピペリジルカル
ボニル基、4−アルキル−ピペラジニルカルボニル基、
モルホリルカルボニル基、テトラヒドロフロイル基等が
挙げられ、酸素原子を有する飽和複素環カルボニル基が
好ましく、テトラヒドロフロイル基等の酸素原子を含む
飽和5員複素環カルボニル基がより好ましく、特に、3
−テトラヒドロフロイル基が好ましい。
【0032】Dは酸素原子または−NH−、mは0乃至
3のいずれかの整数であり、mは0乃至2が好ましく、
より好ましくはDが酸素原子でmが1、またはDが−N
H−でmが0である。
【0033】R2は置換基を有していてもよい(C1〜
C6)アルキル基または(C1〜C6)アルキルオキシ
基である。(C1〜C6)アルキル基としては、例えば
メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル
基、n−ブチル基、i−ブチル基、sec−ブチル基、
tert−ブチル基、n−ペンチル基、sec−ペンチ
ル基、tert−アミル基、n−ヘキシル基、1,2−
ジメチル−ブチル基等が挙げられ,メチル基、エチル
基、n−プロピル基、n−ブチル基、tert−ブチル
基等の(C1〜C4)アルキル基が好ましい。
【0034】R2における置換基を有する(C1〜C
6)アルキル基としては、例えば(C1〜C6)アルキ
ルオキシ(C1〜C6)アルキル基、アリール基で置換
された(C1〜C6)アルキル基、窒素原子を有する複
素環オキシ基で置換された(C1〜C6)アルキル基、
窒素原子を有する複素環基で置換された(C1〜C6)
アルキル基等があげられる。
【0035】(C1〜C6)アルキルオキシ基および置
換基としての(C1〜C6)アルキルオキシ基として
は、例えば上記(C1〜C6)アルキル基と同様の基が
結合した(C1〜C6)アルキルオキシ基があげられ、
上記置換基としての(C1〜C6)アルキル基と同様の
基が結合した(C1〜C6)アルキルオキシ基が好まし
い。好ましいアルキルオキシ基としては、例えばメトキ
シ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ
ル基、n−ブチルオキシ基、tert−ブチルオキシ基
等の(C1〜C4)アルキルオキシ基があげられる。
【0036】アリール基で置換された(C1〜C6)ア
ルキル基におけるアリール基としては、例えば置換基を
有していてもよいフェニル基があげられ、より好ましく
は無置換のフェニル基である。好ましいアリール(C1
〜C6)アルキル基としては、例えばベンジル基、フェ
ネチル基、フェニルプロピル基、フェニルブチル基、フ
ェニルペンチル基、フェニルヘキシル基等があげられ、
フェニル置換(C1〜C4)アルキル基がより好まし
い。特に好ましくは、フェネチル基やフェニルプロピル
基が挙げられる。
【0037】複素環オキシ基で置換された(C1〜C
6)アルキル基における複素環オキシ基としてはヘテロ
アリールオキシ基が好ましく、例えばピリジルオキシ
基、ピリミジルオキシ基、ピラジルオキシ基、ピリダジ
ルオキシ基、フリルオキシ基、ピロリルオキシ基等があ
げられ、窒素原子を有する複素環オキシ基が好ましく、
ピリジルオキシ基等の窒素原子を有する6員複素環オキ
シ基が好ましい。
【0038】複素環オキシ基で置換された(C1〜C
6)アルキル基としては、例えばピリジルオキシメチル
基、ピリジルオキシプロピル基、ピリミジルオキシメチ
ル基、ピリミジルオキシプロピル基、ピラジルオキシメ
チル基、ピラジルオキシブチル基、ピリダジルオキシエ
チル基、フリルオキシメチル基、ピロリルオキシエチル
基等のヘテロアリールオキシ(C1〜C6)アルキル基
があげられ、窒素原子を有する6員複素環オキシ(C1
〜C6)アルキル基が好ましく、ピリジルオキシプロピ
ル基等のピリジルオキシ(C1〜C6)アルキル基が特
に好ましい。具体的には例えば、2−ピリジルオキシプ
ロピル基が好ましい。
【0039】複素環基で置換された(C1〜C6)アル
キル基における複素環基としては、例えばモルホリニル
基、オキソジヒドロピリジニル基、ピペリジニル基、ピ
ペラジニル基、ジオキサニル基等が挙げられ、4−モル
ホリニル基、2−オキソ−1,2−ジヒドロピリジン−
1−イル基が好ましく、2−オキソ−1,2−ジヒドロ
ピリジン−1−イル基等のヘテロ原子として窒素原子を
有する6員複素環基がより好ましい。
【0040】複素環基で置換された(C1〜C6)アル
キル基としては、例えば、ピリジルメチル基、ピリジル
プロピル基、ピリミジルメチル基、ピリミジルプロピル
基、ピラジルメチル基、ピラジルブチル基、ピリダジル
エチル基、フリルメチル基、ピロリルエチル基、2−オ
キソ−1,2−ジヒドロピリジン−1−イル−メチル基
等が挙げられ、2−オキソ−1,2−ジヒドロピリジン
−1−イル−メチル基が好ましい。
【0041】R0、R1、D、m、R2の好ましい組み
合わせとしては、作用の強さ等を考慮すると、例えばR
0がフェニル基または(C1〜C6)アルキルフェニル
基であり、R1が水素原子、(C1〜C4)アルキルオ
キシカルボニル基、(C1〜C6)アシル基、フェニル
(C1〜C6)アルキルスルホニル基、ピリジル(C1
〜C4)アルキルオキシカルボニル基、フェニル(C1
〜C6)アルキルアミノスルホニル基または(C1〜C
6)アルキル基であり、Dが酸素原子または−NH−で
あり、mが0または1であり、R2がピリジルオキシ
(C1〜C6)アルキル基である。
【0042】R0、R1、D、m、R2のより好ましい
組み合わせとしては、ヒトでの作用等を考慮すると、R
0がフェニル基であり、R1が(C1〜C6)アシル基
またはフェニル(C1〜C6)アルキルアミノスルホニ
ル基であり、Dが−NH−であり、mが0であり、R2
がピリジルオキシ(C1〜C6)アルキル基である。
【0043】R0、R1、D、m、R2の更により好ま
しい組み合わせとしては、経口吸収性等を考慮すると、
R0がフェニル基であり、R1がホルミル基、アセチル
基またはベンジルアミノスルホニル基であり、Dが−N
H−であり、mが0であり、R2が2−ピリジルオキシ
プロピル基である。
【0044】以下に、本発明で使用される一般式(I)
で表せる化合物の代表例を表1に具体的に示すが、本発
明はこれらの化合物に限定されない。なお、表1中Ph
はフェニル基を、Bocはtert−ブトキシカルボニ
ル基を、Acはアセチル基を、Meはメチル基を意味す
る。
【0045】表1
【0046】これらの化合物のうち、より好ましいもの
としては、例えばNo.3、4、8、9、10、11、15、16、1
7、18、19があげられ、更に好ましいものとしては、例
えばNo.10(2−(5−ホルミルアミノ−6−オキソ−
2−フェニル−1,6−ジヒドロピリミジン−1−イ
ル)−N−[2,3−ジオキソ−1−フェニルメチル−
6−(2−ピリジルオキシ)]ヘキシルアセタミド)、N
o.11(2−(5−アセチルアミノ−6−オキソ−2−フ
ェニル−1,6−ジヒドロピリミジン−1−イル)−N
−[2,3−ジオキソ−1−フェニルメチル−6−(2
−ピリジルオキシ)]ヘキシルアセタミド)、No.15(2
−(5−ベンジルアミノスルホニルアミノ−6−オキソ
−2−フェニル−1,6−ジヒドロピリミジン−1−イ
ル)−N−[2,3−ジオキソ−1−フェニルメチル−
6−(2−ピリジルオキシ)]ヘキシルアセタミド)、N
o.18(2−(5−ヒドロキシメチル−6−オキソ−2−
フェニル−1,6−ジヒドロピリミジン−1−イル)−
N−[2,3−ジオキソ−1−フェニルメチル−6−
(2−ピリジルオキシ)]ヘキシルアセタミド)が挙げ
られ、特にNo.10、11があげられる。
【0047】上記から明らかなように、ピリミドン骨
格、特に上記式(II)で表される骨格構造を有し且つ
キマーゼ阻害活性を有する化合物を創傷治癒時の障害の
治療剤または予防剤、特に癒着の治療または防止並びに
瘢痕防止に使用する点に本発明の特徴がある。
【0048】本発明で使用される化合物は、その薬理学
上許容される塩であってもよく、塩基性化合物の場合は
例えばカルボン酸、スルホン酸、鉱酸等との塩が、酸性
化合物の場合は例えばアルカリ金属、アルカリ土類金
属、有機塩基等との塩が挙げられる。カルボン酸、スル
ホン酸、鉱酸等としては、例えば酢酸、アジピン酸、安
息香酸、クエン酸、フマール酸、アスパラギン酸、乳
酸、リンゴ酸、パルミチン酸、サリチル酸、酒石酸、ベ
ンゼンスルホン酸、カンファースルホン酸、トルエンス
ルホン酸、塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸等が挙げら
れる。アルカリ金属、アルカリ土類金属、有機塩基等と
しては、例えばリチウム、ナトリウム、カリウム、カル
シウム、マグネシウム、バリウム、テトラメチルアンモ
ニウム、テトラブチルアンモニウム等が挙げられる。
【0049】本発明で使用される化合物は光学活性体、
あるいはラセミ体、ジアステレオマー、あるいはジアス
テレオマーの混合物、個々のエナンチオマーからエナン
チオマーの混合物までを全て包含するものである。ま
た、置換基の結合位置等は特に限定しない限り、結合可
能な位置異性体すべてを含む。更に、水和物等の溶媒和
物、溶媒和物の互変異性体等のように様々な多型も本発
明で使用される化合物に含まれる。
【0050】本発明における一般式(I)で表される一
連の化合物群は、国際公開WO98/09949号公報
や国際公開WO99/41277号公報において開示さ
れた製造法によって製造されるが、それらの方法に限定
されるものではない。
【0051】また、本発明は、ピリミドン骨格を有し且
つキマーゼ阻害活性を有する化合物、特に上記一般式
(I)で表される化合物を含有する創傷治癒時の障害の
治療剤または予防用経口医薬製剤、特に癒着または瘢痕
の治療または予防用経口医薬製剤である。
【0052】本発明においてピリミドン骨格を有し且つ
キマーゼ阻害活性を有する化合物を用いる場合は、単独
または賦形剤あるいは担体と混合して注射剤、錠剤、顆
粒剤、細粒剤、散剤、カプセル剤、貼付剤、軟膏剤、ス
プレ−剤、溶液剤、徐放剤等の製剤とし投与される。賦
形剤または担体等の添加剤としては薬剤学的に許容され
るものが選ばれ、その種類および組成は投与経路や投与
方法によって決まる。例えば注射剤の場合、一般に食
塩、グルコ−スやマンニト−ル等の糖類が望ましい。経
口剤の場合、でんぷん、乳糖、結晶セルロース、ステア
リン酸マグネシウム等が望ましい。
【0053】投与は経口的に若しくは非経口的に全身性
に投与される他、直接臓器に塗布する、軟膏やスプレー
剤により患部表面に投与する、手術時に直接塗布する等
患部に有効に化合物が到達し作用する方法が選ばれる
が、特に経口投与が好ましい。
【0054】製剤中における本化合物の含量は製剤によ
り種々異なるが、通常0.1〜100重量%、好ましく
は1〜98重量%である。例えば注射剤の場合には、通
常0.1〜30重量%、好ましくは1〜10重量%の有
効成分を含む注射液になるようにすることがよい。経口
剤の場合には、添加剤とともに錠剤、カプセル剤、散
剤、顆粒剤、液剤、ドライシロップ剤等の形態で用いら
れる。カプセル剤、錠剤、顆粒、散剤は一般に5〜10
0重量%、好ましくは25〜98重量%の有効成分を含
む。投与量は、患者の年令、体重、症状等により決定さ
れるが、治療量は一般に、非経口投与で1〜100mg
/kg・日、経口投与で5〜500mg/kg・日であ
る。溶液で用いる場合は、10〜1000nMの濃度で
用いる。
【0055】本発明で使用する化合物は低毒性であり、
また、いずれの化合物も連続投与による毒性の蓄積性が
小さいことが特徴的である。例えば、本化合物をラット
に1mg/kgの投与量で1日1回、4週間経口投与し
ても何ら毒性の徴候はみられず、また、2−(5−ホル
ミルアミノ−6−オキソ−2−フェニル−1,6−ジヒ
ドロピリミジン−1−イル)−N−[2,3−ジオキソ
−1−フェニルメチル−6−(2−ピリジルオキシ)]
ヘキシルアセタミド(化合物No.10)の化合物をラット
に100mg/kgの投与量で1日1回、2週間経口投
与しても何ら毒性の徴候はみられなかった。更に、癒着
の治療または防止並びに瘢痕防止に用いる経口製剤が可
能な製剤である点も特徴的である。
【0056】
【実施例】以下に本発明を実施例にて更に詳しく説明す
るが、本発明はこれらに限定されるものではない.
【0057】実施例1 イヌバイパスグラフトモデルに
よる縫合部癒着防止試験 (A)方法 日本SLCより購入した雄ビーグル成犬(体重8〜10
kg)をペントバルビタール35mg/kgの静脈内投
与により麻酔を施した後に、右頚動脈を摘出した。摘出
した血管を右頚静脈へバイパスグラフトし、グラフトモ
デルを作成した(J.Hum.Hypertens.,
12(suppl.1),S21(1999))。化合
物投与群は手術5日前よりグラフト血管摘出前日まで2
−(5−ホルミルアミノ−6−オキソ−2−フェニル−
1−6−ジヒドロピリミジン−1−イル)−N−[2,
3−ジオキソ−1−フェニルメチル−6−(2−ピリジ
ルオキシ)]ヘキシルアセタミド(化合物No.10)5mg
/kgをカプセルにて1日1回毎日経口投与した。対照
群には薬剤を含まないカプセルのみを化合物投与群と同
様に経口投与した。手術後28日の時点で頚部のグラフ
ト近傍の癒着を以下の方法でスコアー化した。
【0058】癒着度(癒着スコアー) 癒着度0(0);グラフト血管が容易に取り出せ、通常
の血管と同様に周囲から独立して存在している。 癒着度1(1);グラフト血管の一部と周囲組織との薄
膜性の癒着が認められるが簡易に癒着部位が剥離でき
る。 癒着度2(2);グラフト血管が確認できるが周囲の組
織と強固に癒着し、血管の摘出が行いにくい。 癒着度3(3);グラフト血管を中心とした極度の細胞
増殖、線維化が起こり周囲の組織との癒合が認められ
る。グラフト血管が周囲組織と癒着しているため、グラ
フト血管の確認ができず、摘出が非常に困難である。 (B)結果 対照群は癒着度2が1例、癒着度3が4例であったのに
対し、化合物No.10投与群は癒着度0が1例、癒着度1
が3例、癒着度2が1例であった。癒着スコアーは対照
群が3.6±0.40であり、化合物No.10投与群は
1.0±0.32であり、有意に癒着スコアーを低下さ
せていた(スチューデントt−検定によりP<0.0
5)。
【0059】実施例2 ハムスター子宮擦過モデルによ
る縫合部癒着防止試験 (A)方法 6週齢の雌ハムスター30匹をペントバルビタール50
mg/kg腹腔内投与により麻酔を施した後に、開腹し
綿棒にて子宮を擦過した。開腹部位を縫合し、1週間通
常飼育した後に、腹部の癒着の程度を観察した。化合物
投与群15匹は手術3日前より評価日まで11日間、
0.5%カルボキシメチルセルロースナトリウム溶液に
懸濁した2−(5−ホルミルアミノ−6−オキソ−2−
フェニル−1−6−ジヒドロピリミジン−1−イル)−
N−[2,3−ジオキソ−1−フェニルメチル−6−
(2−ピリジルオキシ)]ヘキシルアセタミド(化合物N
o.10)を投与量30mg/kgで毎日一回経口投与し
た。対照群15匹には化合物投与群と同量の0.5%カ
ルボキシメチルセルロース溶液を経口投与した。腹部の
癒着は以下の方法でスコアー化した。
【0060】癒着度(癒着スコアー) 癒着度0(0);子宮が容易に取り出せ、通常の子宮と
同様に周囲から独立して存在している。 癒着度1(1);子宮の一部と周囲組織との間に薄膜性
の癒着が認められるが、簡易に癒着部位が剥離できる。 癒着度2(2);子宮は確認できるものの一部の組織と
強固に癒着している。しかし摘出は可能である。 癒着度3(3);子宮を中心とした複数の部位で周囲の
組織と強固な癒着が認められ、摘出が非常に困難であ
る。 (B)結果 対照群は癒着度2が1例、癒着度3が14例であったの
に対し、化合物No.10投与群は癒着度0が2例、癒着度
1が3例、癒着度2が3例、癒着度3が7例であった。
癒着スコアーは対照群が2.93±0.07であり、化
合物No.10投与群は2.00±0.29であり、有意に
癒着スコアーを低下させていた(スチューデントt−検
定によりP<0.01)。
【0061】実施例3 製剤例 50.0mgの2−(5−ホルミルアミノ−6−オキソ
−2−フェニル−1,6−ジヒドロピリミジン−1−イ
ル)−N−[2,3−ジオキソ−1−フェニルメチル−
6−(2−ピリジルオキシ)]ヘキシルアセタミド(化
合物No.10)に対して、低置換度ヒドロキシプロピルセ
ルロース80.0mg、乳糖57.0mg、ヒドロキシ
プロピルセルロース2.0mg、およびステアリン酸マ
グネシウム1.0mgの割合で混合し、3号カプセルに
封入して経口カプセル剤を得た。
【0062】
【発明の効果】本発明は、一般式(I)で表される化合
物で且つ選択性の高いキマーゼ阻害活性化合物またはそ
の薬理学上許容される塩を、特に経口投与等により生体
に作用させることによる創傷治癒時の障害、特に癒着に
対する治療または防止剤または瘢痕に対する防止剤を提
供した。今回示した通り、キマーゼ阻害剤は経口投与に
より、手術等で問題となる癒着を直接抑制することが見
出された。これは手術時に癒着や瘢痕の懸念される場合
にその治療または予防のために投与する等の医療への応
用が期待される。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き Fターム(参考) 4C086 AA01 AA02 BC42 GA02 GA07 GA08 MA01 MA04 NA14 ZA89 ZC20

Claims (15)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】ピリミドン骨格を有し且つキマーゼ阻害活
    性を有する化合物、またはその薬理学上許容される塩を
    含有する創傷治癒時の障害の治療剤または予防剤。
  2. 【請求項2】ピリミドン骨格が、下記式(II) 【化1】 で表される骨格である請求項1に記載の創傷治癒時の障
    害の治療剤または予防剤。
  3. 【請求項3】一般式(I) 【化2】 [式中、R0はアリール基を示し、R1は水素原子、C
    1〜C6のアルキル基、C1〜C6のアシル基、単環芳
    香族基で置換されていてもよい(C1〜C6)アルキル
    オキシカルボニル基、アリール基で置換されていてもよ
    い(C1〜C6)アルキルスルホニル基、アリール基で
    置換されていてもよい(C1〜C6)アルキルアミノス
    ルホニル基または飽和複素環カルボニル基を示し、Dは
    酸素原子または−NH−を示し、mは0乃至3のいずれ
    かの整数を示す。R2は置換基を有していてもよい(C
    1〜C6)アルキル基または(C1〜C6)アルキルオ
    キシ基を示す。]で表される化合物またはその薬理学上
    許容される塩を有効成分とする創傷治癒時の障害の治療
    剤または予防剤。
  4. 【請求項4】R0におけるアリール基が(C1〜C6)
    アルキル基またはハロゲン原子で置換されていてもよい
    フェニル基であり、R1における単環芳香族基で置換さ
    れていてもよい(C1〜C6)アルキルオキシカルボニ
    ル基が(C1〜C6)アルキルオキシカルボニル基また
    はピリジル(C1〜C6)アルキルオキシカルボニル基
    であり、アリール基で置換されていてもよい(C1〜C
    6)アルキルスルホニル基がフェニル基で置換された
    (C1〜C6)アルキルスルホニル基であり、アリール
    基で置換されていてもよい(C1〜C6)アルキルアミ
    ノスルホニル基がフェニル基で置換された(C1〜C
    6)アルキルアミノスルホニル基であり、飽和複素環カ
    ルボニル基が酸素原子を有する飽和複素環カルボニル基
    であり、R2における置換基を有していてもよい(C1
    〜C6)アルキル基が(C1〜C6)アルキル基、(C
    1〜C6)アルキルオキシ(C1〜C6)アルキル基、
    アリール基で置換された(C1〜C6)アルキル基、窒
    素原子を有する複素環オキシ基で置換された(C1〜C
    6)アルキル基または窒素原子を有する複素環基で置換
    された(C1〜C6)アルキル基である請求項3に記載
    の創傷治癒時の障害の治療剤または予防剤。
  5. 【請求項5】R1の飽和複素環カルボニル基における酸
    素原子を有する飽和複素環カルボニル基がテトラヒドロ
    フロイル基であり、R2の置換基を有していてもよい
    (C1〜C6)アルキル基におけるアリール基で置換さ
    れた(C1〜C6)アルキル基がフェニル基で置換され
    た(C1〜C6)アルキル基であり、窒素原子を有する
    複素環オキシ基で置換された(C1〜C6)アルキル基
    が窒素原子を有する6員複素環オキシ基で置換された
    (C1〜C6)アルキル基であり、窒素原子を有する複
    素環基で置換された(C1〜C6)アルキル基が窒素原
    子を有する6員複素環基で置換された(C1〜C6)ア
    ルキル基である請求項4に記載の創傷治癒時の障害の治
    療剤または予防剤。
  6. 【請求項6】R0がフェニル基または(C1〜C6)ア
    ルキルフェニル基であり、R1が水素原子、(C1〜C
    6)アルキルオキシカルボニル基、(C1〜C6)アシ
    ル基、フェニル(C1〜C6)アルキルスルホニル基、
    ピリジル(C1〜C6)アルキルオキシカルボニル基、
    フェニル(C1〜C6)アルキルアミノスルホニル基ま
    たは(C1〜C6)アルキル基であり、mが0または1
    であり、R2がピリジルオキシ(C1〜C6)アルキル
    基である請求項3に記載の創傷治癒時の障害の治療剤ま
    たは予防剤。
  7. 【請求項7】R0がフェニル基であり、R1が水素原
    子、(C1〜C6)アシル基またはフェニル(C1〜C
    6)アルキルアミノスルホニル基であり、Dが−NH−
    であり、mが0であり、R2がピリジルオキシ(C1〜
    C6)アルキル基である請求項3に記載の創傷治癒時の
    障害の治療剤または予防剤。
  8. 【請求項8】R1がホルミル基、アセチル基またはベン
    ジルアミノスルホニル基であり、R2が2−ピリジルオ
    キシプロピル基である請求項7に記載の創傷治癒時の障
    害の治療剤または予防剤。
  9. 【請求項9】一般式(I)で表される化合物が、2−
    (5−ホルミルアミノ−6−オキソ−2−フェニル−
    1,6−ジヒドロピリミジン−1−イル)−N−[2,
    3−ジオキソ−1−フェニルメチル−6−(2−ピリジ
    ルオキシ)]ヘキシルアセタミド、2−(5−アセチル
    アミノ−6−オキソ−2−フェニル−1,6−ジヒドロ
    ピリミジン−1−イル)−N−[2,3−ジオキソ−1
    −フェニルメチル−6−(2−ピリジルオキシ)]ヘキ
    シルアセタミド、2−(5−ベンジルアミノスルホニル
    アミノ−6−オキソ−2−フェニル−1,6−ジヒドロ
    ピリミジン−1−イル)−N−[2,3−ジオキソ−1
    −フェニルメチル−6−(2−ピリジルオキシ)]ヘキ
    シルアセタミドまたは2−(5−ヒドロキシメチル−6
    −オキソ−2−フェニル−1,6−ジヒドロピリミジン
    −1−イル)−N−[2,3−ジオキソ−1−フェニル
    メチル−6−(2−ピリジルオキシ)]ヘキシルアセタ
    ミドである請求項3に記載の創傷治癒時の障害の治療剤
    または予防剤。
  10. 【請求項10】ピリミドン骨格を有し且つキマーゼ阻害
    活性を有する化合物が、2−(5−ホルミルアミノ−6
    −オキソ−2−フェニル−1,6−ジヒドロピリミジン
    −1−イル)−N−[2,3−ジオキソ−1−フェニル
    メチル−6−(2−ピリジルオキシ)]ヘキシルアセタ
    ミド、またはその薬理学上許容される塩である請求項1
    記載の創傷治癒時の障害の治療剤または予防剤。
  11. 【請求項11】創傷治癒時の障害が創傷部の細胞増殖に
    起因する障害である請求項1乃至10のいずれか1項に
    記載の治療剤または予防剤
  12. 【請求項12】創傷治癒時の障害が癒着または瘢痕であ
    る請求項1乃至10のいずれか1項に記載の治療剤また
    は予防剤
  13. 【請求項13】ピリミドン骨格を有し且つキマーゼ阻害
    活性を有する化合物を含有する創傷治癒時の障害の治療
    用または予防用経口医薬製剤。
  14. 【請求項14】ピリミドン骨格を有し且つキマーゼ阻害
    活性を有する化合物が、請求項3記載の化合物またはそ
    の薬理学上許容される塩である請求項13に記載の創傷
    治癒時の障害の治療用または予防用経口医薬製剤。
  15. 【請求項15】創傷治癒時の障害が癒着または瘢痕であ
    る請求項13または14に記載の経口医薬製剤。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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WO2009101684A1 (ja) * 2008-02-14 2009-08-20 Kemphys Ltd. 内臓癒着の予防及び/又は治療のための医薬

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