JP2003190994A - 有機性廃棄物消化用微生物担体とその製造方法 - Google Patents

有機性廃棄物消化用微生物担体とその製造方法

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 メタン発酵効率を高めることができ、しかも
鉄、コバルト、ニッケルといった微量金属を用いた場合
の、微量金属の流出に伴う不都合を解消して経済的に有
利にすることができる、有機性廃棄物消化用微生物担体
とその製造方法を提供する。 【解決手段】 鉄、コバルト、ニッケルのうちの少なく
とも一種を担持してなる有機性廃棄物消化用微生物担
体。鉄塩、コバルト塩、ニッケル塩の少なくとも一種を
溶解した水溶液に担体を接触させ、この担体に鉄、コバ
ルト、ニッケルのうちの少なくとも一種を担持させる有
機性廃棄物消化用微生物担体の製造方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、主にメタン発酵用
微生物を付着させるための有機性廃棄物消化用微生物担
体と、その製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、有機性廃棄物の処理方法として
は、主に埋め立てや焼却などの方法が採用されてきた。
ところが、近年では埋め立て地の不足や焼却によるダイ
オキシンの発生、CO2 の排出といった環境汚染の問題
により、これらの処理方法に代わる方法への転換が図ら
れている。
【0003】このような背景から、厨房などから出る生
ゴミや畜産廃棄物などの有機性固形廃棄物の処理方法と
して、メタン発酵が再認識されつつある。メタン発酵
は、メタン発酵槽内でのメタン菌による嫌気性処理であ
り、有用な資源であるメタンを回収することができるこ
とから、その利用が期待されているのである。
【0004】ところで、前記の有機性固形廃棄物の処理
においては、低濃度の有機性排水を処理する場合に比
べ、特にメタン菌によるメタン発酵処理の高効率化が要
求されている。また、特にメタン発酵の立ち上げ時に
は、メタン発酵の効率が悪く、メタンガスの発生が不安
定でメタンガスの回収効率も低いといった問題がある。
前記要求に応え、しかもメタン発酵の立ち上げ時の問題
に対しても有効である方法として、従来、ニッケル、
鉄、コバルトといった微量金属を反応槽に添加し、メタ
ン菌の増殖と活性向上とを図ることにより、メタン発酵
処理の高効率化を図った方法が知られている(特開平3
−165895号公報)。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、前記の
方法では、反応槽中の反応液に前記の微量金属を直接添
加するので、嫌気性処理(メタン発酵処理)を、被処理
物を反応槽中へ連続的に供給しつつ連続的に取り出す連
続運転で行った場合に、反応槽から流出される被処理液
中に前記微量金属が多量に含まれてしまい、経済的に不
利となってしまう。また、流出した微量金属を補うた
め、被処理物中または反応槽中に微量金属を添加する必
要があるが、その操作が煩雑になってしまい、反応槽の
装置構成や制御装置などが複雑になって設備に要するコ
ストが高くなってしまう。また、被メタン発酵処理物中
に蛋白質系のものが多い場合、この蛋白質が嫌気性処理
されることで生成するアンモニアにより、メタン発酵が
阻害されてしまうが、その対策としては反応液を希釈す
る方法しかないのが現状である。
【0006】本発明は前記事情に鑑みてなされたもの
で、その目的とするところは、メタン発酵効率を高める
ことができ、しかも鉄、コバルト、ニッケルといった微
量金属を用いた場合の、微量金属の流出に伴う不都合を
解消して経済的に有利にすることができる、有機性廃棄
物消化用微生物担体とその製造方法を提供することにあ
る。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明の有機性廃棄物消
化用微生物担体では、鉄、コバルト、ニッケルのうちの
少なくとも一種を担持してなることを前記課題の解決手
段とした。この有機性廃棄物消化用微生物担体によれ
ば、鉄、コバルト、ニッケルの微量金属のうちの少なく
とも一種を担体に直接担持しているので、これとは別に
メタン菌(メタン発酵菌)等の消化用微生物が該担体に
付着し定着することにより、定着した微生物と微量金属
との接触性が高まり、これにより前記微生物の活性度が
高まる。また、微量金属が被処理物とともに流出してし
まうことがほとんどないので、従来のような経済的な不
都合が回避される。
【0008】また、特に担体が多孔質体からなっている
のが好ましく、その場合に、孔内が酸素のない高い嫌気
性を有したものとなっているので、ここでメタン菌が増
殖し易くなり、したがってこの担体を用いることによ
り、メタン発酵効率を高めることが可能になる。
【0009】本発明の有機性廃棄物消化用微生物担体の
製造方法では、鉄塩、コバルト塩、ニッケル塩の少なく
とも一種を溶解した水溶液に担体を接触させ、該担体に
鉄、コバルト、ニッケルのうちの少なくとも一種を担持
させることを前記課題の解決手段とした。この製造方法
によれば、鉄、コバルト、ニッケルのうちの少なくとも
一種を担持してなる前記の有機性廃棄物消化用微生物担
体を製造することができる。
【0010】また、特に担体が多孔質体であるのが好ま
しく、その場合に、比表面積が大きいことなどによって
前記微量金属を付着し担持し易くなり、同時に、得られ
た有機性廃棄物消化用微生物担体が前述したように微生
物の活性度および増殖性を高め、メタン発酵効率を高め
るものとなる。
【0011】本発明の別の有機性廃棄物消化用微生物担
体の製造方法では、担体表面にリン酸カルシウムまたは
アパタイトを付着させ、次いでこの担体を、鉄塩、コバ
ルト塩、ニッケル塩の少なくとも一種を溶解した水溶液
に接触させ、該担体に鉄、コバルト、ニッケルのうちの
少なくとも一種を担持させることを前記課題の解決手段
とした。この製造方法によれば、特に担体が前記微量金
属を保持しにくい材質のもの、例えばシート状通水性基
材である場合に、予めその表面にリン酸カルシウムまた
はアパタイトを付着させておくことで、微量金属を付着
し担持し易くすることが可能になる。
【0012】また、これらの製造方法においては、鉄
塩、コバルト塩またはニッケル塩として炭酸塩を用い、
これら炭酸塩を担体に付着させた後、加熱して炭酸塩か
ら炭酸ガスを脱離させるようにしてもよい。このように
すれば、特に担体が焼成可能である場合に有効な方法と
なり、この焼成により微量金属を担体に強固に付着させ
ることが可能になる。
【0013】
【発明の実施の形態】以下、本発明を詳しく説明する。
本発明の有機性廃棄物消化用微生物担体は、鉄、コバル
ト、ニッケルのうちの少なくとも一種を担持してなるも
のである。鉄、コバルト、ニッケルといった微量金属
は、例えばFe2+、Co2+、Ni2+のイオンとして存在
する場合に、メタン発酵に有効である。これは、これら
微量金属が、メタン発酵の際補酵素の形成に寄与し、メ
タン菌等の微生物の活性度を高めると同時に、増殖性も
高める役目を果たすからであると考えられる。
【0014】微量金属を担持する担体としては、特に限
定されることなく、例えばカルシウムシリケートや木質
炭化物などの多孔質体、さらには不織布や織布、網目状
シートなどのシート状通水性基材が用いられる。ここ
で、多孔質体としては特にカルシウムシリケートを用い
るのが好ましい。すなわち、これをメタン発酵槽中に設
置して発酵処理に用いた場合、そのアルカリ性成分を僅
かずつ溶出し、これにより弱アルカリ性から中性の範囲
の環境を好むメタン菌に対し、担体に付着し易く増殖し
易い環境を作るものとなるからである。なお、担体とし
て多孔質体を用いた場合、その形状については、円柱状
や円筒状、円錐台状、球状、塊状、直方体状等の各種の
ものが用いられるが、特に固定床としてメタン発酵槽等
の反応槽内に設置された際、反応槽内での被処理物の流
動を妨げないような形状、例えば円筒状などの形状が好
適とされる。
【0015】また、シート状通水性基材を形成する材質
としては、特に限定されることなく、化学繊維やガラス
繊維、活性炭素繊維、金属繊維等が使用される。すなわ
ち、これらの繊維等によって不織布または織布が形成さ
れ、あるいは網目状に編まれることにより、シート状通
水性基材となっているのである。このような多孔質体や
シート状通水性基材からなる担体にあっては、その孔内
や繊維間あるいは網目部分を有することによって比表面
積が大きくなっており、したがって微量金属を付着し担
持し易くなっている。また、同様に、メタン菌等の微生
物に対してもこれを付着し定着させ易くなっている。特
に、多孔質体からなっている場合には、孔内が酸素のな
い高い嫌気性を有したものとなるので、ここでメタン菌
が増殖し易くなり、したがってメタン発酵効率を高める
うえで有利になる。
【0016】担持する前記の微量金属については、いず
れか一種を担持していれば十分に微生物の高活性化を図
れるものの、いずれか二種、好ましくは三種を担持させ
れば、より高活性化を図ることができる。これら三種を
全て担持させた場合、その担持量の比率については、重
量比で、鉄:ニッケル:コバルト=10〜100:1:
1、特に40:1:1とするのが好ましい。また、二種
を用いる場合には、鉄:ニッケル=10〜100:1、
鉄:コバルト=10〜100:1、ニッケル:コバルト
1:1とするのが好ましい。また、微量金属の総担持量
としては、特に限定されないものの、担体1kgあたり
1g〜100g程度とされる。1g未満では、担持量が
少なすぎて担持することによる効果が十分に得られず、
100gを越えると、微量金属の担持効果が横這いにな
ってしまい、経済的に不利になるからである。
【0017】次に、このような有機性廃棄物消化用微生
物担体の製造方法を説明する。担体としてカルシウムシ
リケートや木質炭化物などの多孔質体を用いる場合に
は、鉄塩、コバルト塩、ニッケル塩の少なくとも一種を
溶解した水溶液に担体を接触させ、その後乾燥すること
により、該担体に微量金属を担持させる。微量金属の塩
については、水溶性のものであれば特に限定されないも
のの、鉄塩としては硫酸第一鉄(FeSO4 )、コバル
ト塩としては塩化第一コバルト(CoCl2 )、ニッケ
ル塩としては塩化第一ニッケル(NiCl2 )を用いる
のが好ましい。これらの水溶液は、いずれもその陰イオ
ンが、メタン発酵処理等の嫌気性消化処理に悪影響を与
えないからである。
【0018】これら水溶液の濃度としては、特に限定さ
れることなく適宜な範囲とされるが、薄すぎると担持処
理に時間がかかってしまうため、0.1重量%以上とす
るのが好ましい。なお、微量金属を複数種担持させる場
合、複数種の微量金属を溶解させて混合水溶液を形成
し、これを担体に接触させるようにすればよい。その場
合に、微量金属毎に濃度を変えておくことにより、微量
金属間の担持比率を変えることができる。例えば、Fe
SO4 :CoCl2 :NiCl2 =4重量%:0.4重
量%:0.4重量%となるように混合水溶液を調整して
おくことにより、概略、鉄:コバルト:ニッケルが1
0:1:1の重量比で担持された微生物担体を形成する
ことができる。
【0019】担体への水溶液の接触方法としては、微量
金属の塩を溶解させた水溶液(例えば常温の水溶液)中
に担体を所定時間(例えば10分間)浸漬する方法や、
前記の水溶液を担体表面に吹き付けるといった方法が採
用される。なお、このようにして担体に水溶液を接触さ
せた後、担体を適宜な温度、例えば60〜110℃程度
の温度で加熱乾燥することにより、水分を蒸発させて微
量金属を担体に担持させる。
【0020】また、担体としてシート状通水性基材を用
いる場合には、まず、この担体表面に不溶性のリン酸カ
ルシウムまたはアパタイトを付着させる。次いで、この
リン酸カルシウムまたはアパタイトを付着させた担体
を、前記した場合と同様にして鉄塩、コバルト塩、ニッ
ケル塩の少なくとも一種を溶解した水溶液に接触させ、
その後乾燥することにより、該担体に微量金属を担持さ
せる。
【0021】担体にリン酸カルシウムまたはアパタイト
を付着させるには、まず、リン酸カルシウム[Ca3
(PO42 ]またはアパタイト(カルシウムのリン酸
塩)をpH9程度のアルカリ性液に分散させ、続いてこ
の液中に担体を浸漬させる。次いで、この担体を引き上
げて乾燥させる。このような液への浸漬・乾燥を適宜回
数繰り返し、所望量のリン酸カルシウムまたはアパタイ
トを担体に付着させたら、必要に応じ、この担体表面に
リン酸二水素ナトリウム(NaH2 PO4 )またはリン
酸水素二ナトリウム(Na2 HPO4 )の水溶液を吹き
付け、乾燥し、担体表面を親水性にするとともに微量金
属の保持性を高める。その後、前述したようにこの担体
を、鉄塩、コバルト塩、ニッケル塩の少なくとも一種を
溶解した水溶液に接触させ、乾燥することにより、該担
体に微量金属を担持させる。
【0022】また、必要に応じ、担持させた微量金属が
脱離するのを防止するため、この担体表面に再度リン酸
カルシウムを付着させ、不溶性の被膜を形成するように
してもよい。このようにすれば、メタン菌等の微生物の
高い活性度を維持することができるとともに、微量金属
の脱離が防止されていることで、担体自体の寿命も長く
なる。
【0023】また、特に担体として例えば650℃程度
で焼成可能な材料製のもの、すなわちセラミックス製の
多孔質体やガラス繊維、金属繊維などからなるシート状
通水性基材を用いた場合、前記微量金属の塩として炭酸
塩を用い、これら炭酸塩を担体に付着させた後、加熱焼
成して炭酸塩から炭酸ガスを脱離させるようにしてもよ
い。このようにすれば、焼成を行うことにより、微量金
属を担体に強固に付着させてここに定着させることがで
きる。
【0024】このような有機性廃棄物消化用微生物担体
は、嫌気性反応槽、特にメタン発酵槽で固定床として用
いられる。メタン発酵槽は、炭水化物、脂肪、タンパク
質といった高分子有機物から酸発酵により分解されて生
成したアルコールや酸を、嫌気性条件(暗黒で溶存酸素
の存在しない状態)下でメタン菌(メタン発酵菌)によ
り炭酸ガスとメタンとに分解生成するものである。
【0025】ここで、この有機性廃棄物消化用微生物担
体を使用するにあたっては、この微生物担体を直接メタ
ン発酵槽に浸漬させ、槽内のメタン菌を微生物担体に付
着させ、増殖させるようにしてもよいが、このようなメ
タン発酵槽での前処理を省くため、以下の前処理を行う
のが好ましい。メタン発酵液をフィルター濾過して得た
種液、あるいはこの種液を濃縮してなる濃縮菌液を用意
し、これの中に前記微生物担体を浸漬するとともに、必
要に応じ種液あるいは濃縮菌液を流動させて微生物担体
とメタン菌との接触効率を高める。このような前処理に
より、微生物担体にメタン菌を付着・定着させ、さらに
これを増殖させることができる。
【0026】すなわち、前記の種液あるいは濃縮菌液
中、またはメタン発酵槽内に微生物担体を浸漬しておく
と、これらの液中に生息するメタン菌が微生物担体の表
面に付着し、特に担体が多孔質体である場合にはその孔
内の深部にまで浸入してここに定着する。つまり、多孔
質体である場合、その細孔内が酸素のない高い嫌気性を
有したものとなっている。したがって、この細孔内でメ
タン菌が付着し定着し易くなっており、しかも細孔内で
あることにより流動等の影響を受けにくいことから、メ
タン菌が増殖し易い環境となっている。
【0027】また、細孔がその孔径や深度にバラツキを
有していることなどにより、特に径の大きい細孔と小さ
い細孔、孔の深部と浅部などで嫌気度が異なり、また多
孔質体がカルシウムシリケートである場合アルカリ度も
異なるようになる。したがって、例えばメタン菌は小さ
い細孔や孔の深部に定着し、酸生成菌等は大きい細孔や
孔の浅部に定着するといったように棲み分けが可能にな
り、これによりメタン菌の活性度が高まるとともに、酸
発酵を経てなされるメタン発酵の高効率化も可能にな
る。
【0028】また、前記の種液あるいは濃縮菌液中での
前処理を行った微生物担体をメタン発酵槽内に浸漬し、
これを固定床として用いると、該担体の表面上などで増
殖したメタン菌の作用により、メタン発酵槽内に投入さ
れた被処理物をより効率的にメタン発酵し、炭酸ガスと
メタンとに分解生成するようになる。このとき、この微
生物担体には、メタン菌等の微生物に加えて前記の微量
金属が直接担持されているので、定着している微生物と
微量金属との接触性が高まっており、これによって微生
物の活性度および増殖性が高まり、メタン発酵効率が高
められる。
【0029】また、前述したように微生物担体を種液あ
るいは濃縮菌液中で前処理しておくことにより、該担体
の表面上などにメタン菌を十分に増殖させておくことが
でき、しかも、この担体をメタン発酵槽内に設置した
際、微量金属の作用で微生物の活性度および増殖性を高
めることができることから、特にメタン発酵運転の立ち
上げ時においても、メタン発酵を高い効率で行うことが
でき、これによりメタンガスを安定して発生させ、十分
な回収効率を達成することができるようになる。なお、
種液あるいは濃縮菌液中での前処理を行わない場合であ
っても、前述したように担体表面などに微量金属を担持
しているので、本発明の微生物担体は従来に比べ運転の
立ち上げ時におけるメタン発酵の処理効率を十分に高め
ることができる。
【0030】また、本発明の有機性廃棄物消化用微生物
担体にあっては、微量金属を直接担持していることから
この微量金属が被処理物とともにメタン発酵槽から流出
してしまうことがほとんどなく、したがって従来のよう
な経済的な不都合を回避してコストダウンを図ることが
できる。
【0031】(実験例)担体として、多孔質性のカルシ
ウムシリケートを用意した。なお、この担体の寸法・形
状は、5cm×1.8cm×0.8mmの板状のものと
した。この担体を、FeSO4 :CoCl2 :NiCl
2 =4重量%:0.4重量%:0.4重量%に調整した
常温の水溶液中に10分間浸漬し、引き上げて105℃
に乾燥した。この処理を3回繰り返し、担体への微量金
属の担持を行い、本発明の実施例品1を得た。また、こ
の実施例品1をリン酸酸性下(pH4〜5)にてリン酸
カルシウムを分散した液中に浸漬し、引き上げて乾燥す
ることにより、担体表面にリン酸カルシウムの被膜を形
成してこれを実施例品2とした。
【0032】また、比較のため、微量金属の担持を行わ
ずにリン酸カルシウムのみを付着させたものを作製し、
これを比較例品1とした。さらに、微量金属の担持もリ
ン酸カルシウムの付着も行わないものを作製し、これを
比較例品2とした。これら4種の微生物担体に対し、メ
タン発酵後期の培養液に接触させ、その表面や細孔内に
メタン菌を付着させた。
【0033】被メタン発酵処理物として、厨房から廃出
された生ゴミをミンチにかけて均一に混合した被処理物
を用意した。この被処理物は、90%程度が水分であっ
た。また、固形分中での成分としては、油脂分が20
%、炭水化物が50%、蛋白質が約6%であった。用意
した被処理物を、メタン発酵槽に投入する前に、アルカ
リ下(pH8)で好気的に2日間可溶化処理した。
【0034】ガラス製の円筒リアクター(径80mm×
高さ180mm)に、前記被メタン発酵処理物を所定量
とカルキ抜き水道水400mlとを入れ、さらに前記の
メタン菌を付着させた微生物担体(実施例品1)を入
れ、55℃に保持して撹拌を行い、発酵処理を行った。
また、実施例品2、比較例品1、2の各微生物担体につ
いても、同様に発酵処理を行った。それぞれの発酵処理
において、発生したガス全量とこの発生したガス中のメ
タンガス量とを調べた。得られた結果を図1(a)、
(b)に示す。なお、メタンガス量については、発生ガ
スをガスクロマトグラフィーで分析することによって測
定した。
【0035】なお、測定は、発酵処理を20日間経過さ
せた後、被メタン発酵処理物を交換してさらに20日間
経過する迄の間(20日から40日までの間)と、続い
て被メタン発酵処理物を交換して15日間経過した後
(55日)からさらに被メタン発酵処理物を交換して2
5日間経過する迄の間(55日から80日までの間)の
二回行った。ただし、二回目の測定(55日から80日
までの間の測定)については、実施例品1、実施例品
2、比較例品2だけを行った。また、この二回目では、
実施例品2と比較例品2に対しては、被メタン発酵処理
物の交換時に塩化アンモニウムを4000mg/lの分
量で添加し、アンモニア(アンモニウムイオン)による
メタン発酵への影響を調べた。得られた結果を図1
(a)、(b)および図2(a)〜(d)に示す。
【0036】図1(a)、(b)および図2(a)〜
(d)に示した結果より、実施例品1、2は比較例品
1、2に比べてメタンガスの発生量が多く、これにより
実施例品1、2はメタン発酵処理の高効率化に有効であ
ることが確認された。また、アンモニウムを添加したと
きの結果より、実施例品2は比較例品2よりメタンガス
の発生量が多いことから、本発明の微生物担体は高濃度
のアンモニア液にも有効であることが確認された。
【0037】
【発明の効果】以上説明したように本発明の有機性廃棄
物消化用微生物担体は、鉄、コバルト、ニッケルの微量
金属のうちの少なくとも一種を担体に直接担持したもの
であるから、これとは別にメタン菌(メタン発酵菌)等
の消化用微生物を該担体に付着し定着させることによ
り、定着した微生物と微量金属との接触性を高め、これ
により前記微生物の活性度を高め、さらにはその増殖性
を高めることができる。また、微量金属が被処理物とと
もに流出してしまうことがほとんどないので、従来のよ
うな経済的な不都合を回避して嫌気性処理に要するコス
トの低減化を図ることができる。さらに、アンモニアに
よりメタン発酵が阻害されてしまうことに対して、これ
を抑制してよりメタン発酵処理の高効率化を可能にする
ことができる。
【0038】本発明の有機性廃棄物消化用微生物担体の
製造方法は、鉄塩、コバルト塩、ニッケル塩の少なくと
も一種を溶解した水溶液に担体を接触させ、該担体に
鉄、コバルト、ニッケルのうちの少なくとも一種を担持
させるようにした方法であるから、前記の、鉄、コバル
ト、ニッケルのうちの少なくとも一種を担持してなる有
機性廃棄物消化用微生物担体を確実に製造することがで
き、また、特に担体が多孔質体である場合などに好適な
方法となる。
【0039】本発明の別の有機性廃棄物消化用微生物担
体の製造方法では、担体表面にリン酸カルシウムまたは
アパタイトを付着させ、次いでこの担体を、鉄塩、コバ
ルト塩、ニッケル塩の少なくとも一種を溶解した水溶液
に接触させ、該担体に鉄、コバルト、ニッケルのうちの
少なくとも一種を担持させるようにした方法であるか
ら、特に担体が前記の鉄、コバルト、ニッケルを保持し
にくい材質のもの、例えばシート状通水性基材である場
合に、予めその表面にリン酸カルシウムまたはアパタイ
トを付着させておくことで、微量金属を付着し担持し易
くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 (a)、(b)は、メタン発酵の実験を行っ
たときの結果を示すグラフである。
【図2】 (a)〜(d)は、メタン発酵の実験を行っ
たときの結果を示すグラフである。
フロントページの続き (72)発明者 福永 栄 神奈川県横浜市磯子区新中原町1番地 石 川島播磨重工業株式会社機械・プラント開 発センター内 (72)発明者 栗山 豊 東京都江東区豊洲三丁目2番16号 石川島 播磨重工業株式会社東京エンジニアリング センター内 (72)発明者 北野 誠 東京都江東区豊洲三丁目2番16号 石川島 播磨重工業株式会社東京エンジニアリング センター内 (72)発明者 中山 衛 神奈川県横浜市磯子区新中原町1番地 石 川島播磨重工業株式会社機械・プラント開 発センター内 Fターム(参考) 4D004 AA03 BA03 CA04 CA15 CA18 CA22 CB04 CB13 CB21 CB31 CC08 4D059 AA07 BA12 BA27 BA28 BA41 BK11 BK12

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 鉄、コバルト、ニッケルのうちの少なく
    とも一種を担持してなる有機性廃棄物消化用微生物担
    体。
  2. 【請求項2】 多孔質体からなる担体に鉄、コバルト、
    ニッケルのうちの少なくとも一種を担持してなる請求項
    1記載の有機性廃棄物消化用微生物担体。
  3. 【請求項3】 鉄塩、コバルト塩、ニッケル塩の少なく
    とも一種を溶解した水溶液に担体を接触させ、該担体に
    鉄、コバルト、ニッケルのうちの少なくとも一種を担持
    させることを特徴とする有機性廃棄物消化用微生物担体
    の製造方法。
  4. 【請求項4】 前記担体が多孔質体である請求項3記載
    の有機性廃棄物消化用微生物担体の製造方法。
  5. 【請求項5】 担体表面にリン酸カルシウムまたはアパ
    タイトを付着させ、次いでこの担体を、鉄塩、コバルト
    塩、ニッケル塩の少なくとも一種を溶解した水溶液に接
    触させ、該担体に鉄、コバルト、ニッケルのうちの少な
    くとも一種を担持させることを特徴とする有機性廃棄物
    消化用微生物担体の製造方法。
  6. 【請求項6】 前記担体がシート状通水性基材である請
    求項5記載の有機性廃棄物消化用微生物担体の製造方
    法。
  7. 【請求項7】 鉄塩、コバルト塩またはニッケル塩とし
    て炭酸塩を用い、これら炭酸塩を担体に付着させた後、
    加熱して炭酸塩から炭酸ガスを脱離させる請求項3〜6
    のいずれかに記載の有機性廃棄物消化用微生物担体の製
    造方法。
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