JP2003173584A - 情報記録媒体用シート及びその製造方法ならびに情報記録媒体 - Google Patents

情報記録媒体用シート及びその製造方法ならびに情報記録媒体

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JP2003173584A
JP2003173584A JP2001373772A JP2001373772A JP2003173584A JP 2003173584 A JP2003173584 A JP 2003173584A JP 2001373772 A JP2001373772 A JP 2001373772A JP 2001373772 A JP2001373772 A JP 2001373772A JP 2003173584 A JP2003173584 A JP 2003173584A
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JP2001373772A
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English (en)
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Kazutomi Suzuki
和富 鈴木
Nobuaki Kido
伸明 城戸
Shunichi Matsumura
俊一 松村
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Teijin Ltd
Original Assignee
Teijin Ltd
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  • Shaping Of Tube Ends By Bending Or Straightening (AREA)
  • Optical Record Carriers And Manufacture Thereof (AREA)
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 スタンパからのグルーブ、ピット形状の転写
性に優れ、電気特性がよく、高密度情報記録に好適な情
報記録媒体用シート及びその製造方法を提供する。 【解決手段】 水素化ポリスチレン系重合体単位80〜
100重量%からなる重量平均分子量50,000〜4
00,000g/molの水素化スチレン系重合体から
なり、厚さ0.01〜0.3mm、入射角が垂直及び3
0°方向で測定した複屈折レターデーションが10nm
以下であるシートに、凹凸及び/又は溝を有するスタン
パを、30kPa以下の減圧下で接触させて、該重合体
のガラス転移温度以上の温度で加熱プレスする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、情報記録媒体用シ
ート及びその製造方法ならびに前記シートを用いた情報
記録媒体に関する。更に詳しくは、光ヘッドの高開口数
化、短波長化に対応可能な情報記録媒体用シート及びそ
の製造方法ならびに前記シートを使用した高密度記録が
可能な情報記録媒体に関する。
【0002】
【従来の技術】光ディスクや光カードなどの光記録用の
基板としては、従来、ポリカーボネート樹脂やポリメチ
ルメタクリレート樹脂などが光学材料として優れるた
め、広く利用されてきた。中でもポリカーボネート樹脂
は、透明性、耐熱安定性、靭性などに優れるため、広く
光ディスク用基板材料として、使用されている。
【0003】近年、光(光磁気)記録ディスクの大容量
化、あるいはDVDの開発、ブルーレーザの開発に代表
される記録密度の高密度化はますます進展している。デ
ィスク基板の厚みは、CDの1.2mmから、DVDの
0.6mmと薄くなっており、更に光ディスクの記録容
量の高密度化には0.1mm前後の益々薄いものが必要
とされている。しかしながら0.3mm以下の薄い光デ
ィスク基板の射出成形法による製造では、樹脂の冷却が
非常に早いことから、基板の外周部までの樹脂の充填、
内外周の良好な厚さ均一性、ピット、グルーブの転写性
を満足した基板を得るのは困難であった。金型、成形条
件の工夫で、0.3mm厚さではこれらの特性を満足し
た基板を得ることは可能であるが、成形時の樹脂流動に
よる分子の配向が緩和されにくくなるため、複屈折の値
は非常に大きくなる。
【0004】射出成形法に対して、スタンパにフィルム
を接触させ、熱と圧力によって転写させる方法が従来か
ら提案されている。例えば特開平1−113224号公報で
は、熱可塑性樹脂フィルムまたはシートを熱可塑性樹脂
材料のガラス転移温度以上で直流電界を印加しながら加
圧成形することによる方法が提案されており,複屈折の
ムラが小さくなることが報告されている。特開平4-2706
33号公報では、加熱板と型板(スタンパ)との間にフィ
ルム状ヒータを挟んで上下から加熱する方法、型板と熱
可塑性樹脂を重ね合わせて加熱加圧ロールの間を通過さ
せる方法が提案されており、複屈折のムラが改善されて
いることが示されている。確かにこれらの方法により、
昇温、冷却時間が短縮され、生産性が改善されるが、部
分的に転写されていない部分が発生する。例え肉眼では
この欠陥が観察できなくても、数nmから数μmの微少
な欠陥が顕微鏡、AFM(原子間力顕微鏡)などで観察
され、これが媒体の欠陥となる。これらの枚葉式プレス
機とは異なり、ロールを用いた連続式の転写法もいくつ
か提案されている。例えば特開平5-269845号公報では表
面にプリフォーマットパターンを有するロールスタンパ
と鏡面ロール間に、溶融樹脂シートを挟んで転写する方
法が提案されている。この方式では、樹脂シートも連続
的に供給されるため生産性も良く、前述した部分的な転
写欠陥は比較的少ない。しかし樹脂シートに加わってい
る力は長さ方向と幅方向では異なり、寸法上の均一性を
保持することが非常に難しい。特開平11-345436号公報
ではこれに対し、変形を見越してスタンパでの配置形状
を修正する方法を提案しているが、シートの寸法、形状
は巻き取り条件、プレス条件などで微妙に変化し、これ
を完全に制御するのは困難であった。
【0005】更に材料物性の観点からは、ヘッドと媒体
間の距離が小さくなるため、寸法安定性が優れているこ
とや、表面硬度が高く傷がつきにくいことが要求されて
いる。
【0006】しかし、従来主として用いられてきたポリ
カーボネートでは、吸水率が高く環境変化によって反り
が発生したり、表面がやわらかく傷がつきやすいという
問題があった。アモルファスポリオレフィンの中には、
これらの条件をある程度満足する物もあるが、充分では
なく、また価格も高いという問題があった。
【0007】光記録の高密度化は今後もますます進展す
ることが予想され、レーザ光源の短波長化、光ヘッドの
高開口数化に対応可能な光記録基板の出現が望まれてい
る。中でも、アクセススピードが速く、高密度記録が可
能な光ディスクの分野での短波長化による高密度化が急
がれている。その有力な候補が厚さ0.30mm以下、
特に0.1mm前後で、かつグルーブ、ピット形状が転
写されているシートからなる基板である。しかし、従来
の技術では射出成形、プレス成形とも要求特性を満足す
ることができなかった。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、こう
した課題を解決した情報記録媒体用シート、とりわけ光
ディスク用シートの製造方法を提供することにある。
【0009】本発明の他の目的は、加熱プレス法によ
り、薄いシートにスタンパ模様を転写もれなく容易に転
写しうる情報記録媒体用シートの製造方法を提供するこ
とにある。
【0010】本発明のさらに他の目的は、上記の如き方
法で製造される情報記録媒体用シートを用いて、高密度
記録が可能な情報記録媒体を製造する方法を提供するこ
とにある。
【0011】本発明のさらに他の目的は、前記製造方法
で得られる情報記録媒体用シートおよび情報記録媒体を
提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】本発明の上記目的は、第
1に、水素化ポリスチレン系重合体単位80重量%以上
100重量%以下からなる重量平均分子量が50,00
0g/mol〜400,000g/molの水素化スチ
レン系重合体からなり、厚さが0.01mm以上、0.
3mm以下、入射角が垂直及び30°方向で測定した複
屈折レターデーションが10nm以下である水素化スチ
レン系重合体シートに、凹凸及び/又は溝を有するスタ
ンパを、30kPa以下の減圧下で接触させて、該重合
体のガラス転移温度以上の温度で加熱プレスする事を特
徴とする情報記録媒体用シートの製造方法により達成さ
れる。
【0013】本発明の上記目的は、第2に、本発明の前
記製造方法により得られた情報記録媒体用シートにより
達成される。
【0014】第3に、本発明の前記情報記録媒体用シー
トの凹凸及び/又は溝を有する面上に反射膜及び/又は
記録膜が形成されたことを特徴とする情報記録媒体、前
記情報記録媒体を厚さ0.3mm以上1.5mm以下の
基板に積層してなる情報記録媒体により達成される。
【0015】
【発明の実施の形態】本発明で使用する水素化スチレン
系重合体は、水素化ポリスチレン系重合体単位80重量
%以上100重量%以下からなる。水素化スチレン系重
合体は、スチレン系重合体の水素添加により製造するこ
とが可能である。水素添加に使用するスチレン系重合体
は、スチレン、α−メチルスチレン、4−メチルスチレ
ン、2−メチルスチレン等の単独あるいは2種類以上か
らなる重合体である。中でもスチレンを使用し、水素添
加後の水素化スチレン重合体単位の含有率が80重量%
以上からなるものが好ましい。水素化スチレン重合体単
位の含有率が80重量%未満の場合には耐熱性が不足す
る上、0.3mm以下の厚さのディスク用シートでリタ
ーデーションが10nm以下のものを製造することが困
難である。また、充分な靭性を有するシートとするため
には、後述する共役ジエンなどを共重合することによ
り、水素化スチレン重合体単位の含有率が80重量%以
上とすることが好ましい。こうした水素化スチレン重合
体単位の含有率の下限は、85重量%以上であることが
より好ましく、88重量%以上がさらに好ましく、上限
としては95重量%以下であることがより好ましく、9
3重量%以下であることがさらに好ましい。
【0016】本発明で使用する水素化スチレン系重合体
を構成する他の成分としては、共役ジエン重合体の水素
化物、例えば、イソプレン、1,3−ブタジエン、2,
3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジ
エン、1,3−ヘキサジエン等の重合体の水素化物が挙
げられる。これらは単独でも良いし、2種類以上併用し
ていても良い。共役ジエンの水素化物のなかではジエン
の重合時の活性、経済性の面からイソプレン、1,3−
ブタジエンの水素化物が好ましい。さらに、水素化物が
結晶化して融点近傍での特性変化することを抑制し、適
度の相分離を起こして、耐熱性を向上させる点からイソ
プレンを使用することがさらに好ましい。これらは状況
により、単独で用いても良いし、2種類以上併用してい
ても良い。こうした水素化ジエン成分の含有率の下限と
しては、水素添加後の重量分率が1重量%以上であり、
好ましくは5重量%以上、さらに好ましくは7重量%以
上である。また上限としては20重量%以下であり、よ
り好ましくは15重量%以下、さらに好ましくは12重
量%以下である。
【0017】水素化スチレン系重合体において、水素化
スチレン系重合体単位および共役ジエン重合体水素化物
単位は、それぞれブロック構造を有していることが好ま
しい。それぞれのブロックにおいて他方の成分のブロッ
ク内への共重合量は後述のように限定された範囲内であ
ることが好ましい。
【0018】ブロック構造としては、水素化スチレン系
重合体(A)−共役ジエン重合体水素化物(B)といっ
た2元ブロック共重合体、A−B−A構造を有する3元
ブロック共重合体更にそれ以上のブロックを有する構造
が考えられるが、透明性、物性や、製造上の観点から
は、A−B−A構造を有する3元ブロック共重合体が好
ましい。
【0019】こうしたブロック構造を有する2元および
3元ブロック水素化スチレン系共重合体は、対応する構
造のスチレン系重合体(a)と共役ジエン重合体(b)
の共重合体を水素添加することによって製造可能であ
る。こうしたスチレン系共重合体は、従来公知の製造方
法が適用可能である。例えば、有機リチウムを開始剤と
して、スチレン系重合体(a)、共役ジエン重合体
(b)を所望の順でリビングアニオン重合を行った後、
アルコール類によって反応を停止させることにより、製
造可能である。この際、それぞれのブロックの製造条件
により、多少の未反応成分が2段階目以降のブロックの
製造時に共重合されていてもよい。
【0020】得られたスチレン系共重合体は、従来公知
の方法により、水素添加反応を行うことができる。水素
添加率としては95モル%以上のものが好ましい。水素
添加率が95モル%未満であると、耐熱性の低下や光学
特性、特に複屈折率の増大等の問題があり好ましくな
い。水素添加率は出来る限り高いことが望ましい。水素
添加率はより好ましくは98モル%以上、さらに好まし
くは99モル%以上であり、実質的に100%であるこ
とが最も好ましい。
【0021】こうした水素添加反応は、従来公知の水素
化反応により製造可能である。水素添加に使用する水素
化触媒は特に限定されず、芳香族環及び2重結合を水添
することが可能な公知の触媒で、例えば、ニッケル、パ
ラジウム、白金、コバルト、ルテニウム、ロジウム等の
貴金属またはその酸化物、塩、錯体等の化合物をカーボ
ン、アルミナ、シリカ、シリカ・アルミナ珪藻土等の多
孔性担体に担持した固体触媒を概略0.5〜40重量%
の範囲で使用する。反応条件としては、水素圧30〜2
50kgf/cm2、反応温度70〜250℃程度であ
る。また、水素添加反応の際に用いられる溶媒として
は、例えば、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等
の飽和脂肪族炭化水素を好適に挙げることができる。そ
の他に反応の活性を高める、あるいは分子鎖の切断によ
る分子量の低下を抑制する目的で、テトラヒドロフラ
ン、ジオキサン、メチル−t−ブチルエーテル等のエー
テル類、エステル類、アルコール類等の極性溶媒を、共
重合体の溶解性を妨げない範囲内で上記溶媒に加えても
良い。
【0022】水素化反応終了後は、遠心、濾過などの公
知の後処理方法により触媒の除去を行うことができる。
光学材料用途に用いる本発明では、樹脂内の残留触媒金
属成分はできる限り少なくする必要があり、かかる残留
触媒金属量は10ppm以下が好ましく、より好ましく
は1ppm以下である。水素化触媒を除去した重合体溶
液から、溶媒の蒸発留去、ストリッピングあるいは再沈
殿等の方法により目的の水素化共重合体を得ることがで
きる。
【0023】本発明における水素化スチレン系重合体は
重量平均分子量が50,000g/mol以上の水素化
スチレン系重合体からなる。ここで重量平均分子量Mw
とはテトラヒドロフラン(THF)を溶媒としたゲルパ
ーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定し
たポリスチレン換算の重量平均分子量のことを表す。重
量平均分子量が50,000g/mol未満の場合に
は、上述の水素化スチレン系重合体単位の含有量では靭
性が不足するため好ましくない。これは、水素化スチレ
ン系重合体成分とそれ以外の成分の相分離が起こりにく
くなるために共役ジエン由来の成分の相分離による靭性
向上の効果が現れにくいためであると予想される。ま
た、相分離が起こらない場合には、ガラス転移温度も低
下し、耐熱性の点からも好ましくない。
【0024】さらに、水素化スチレン系重合体の重量平
均分子量としては400,000g/mol以下である
ことが好ましい。分子量が400,000g/molを
超えると重合体の流動性が低下するために、成形時の転
写性が低下するからである。重量平均分子量の範囲とし
ては、下限は70,000g/mol以上であることが
より好ましく、90,000g/mol以上であること
がさらに好ましい。上限としては、300,000g/
mol以下であることがより好ましく、200,000
g/mol以下であることがさらに好ましい。
【0025】本発明の情報記録媒体用シートは130℃
以上のガラス転移温度を有することが好ましい。例え
ば、光ディスクは高温度の車中で使用されることも多い
からである。また、ガラス転移温度が130℃未満の場
合には、記録時や再生時のレーザの熱、又は/及び、相
変化型光記録媒体では初期化(初期結晶化)の時の高パ
ワーレーザの照射で、ピットやランド・グルーブといっ
たフォーマットパターンが変形するため、好ましくな
い。こうした130℃以上のガラス転移温度を有する水
素化スチレン系重合体は上述の境界の明確なブロック構
造を有することにより達成することができる。
【0026】本発明における水素化スチレン系共重合体
には、熱安定性を向上させるため、イルガノックス10
10、1076(チバガイギー社製)等のヒンダードフ
ェノール系、スミライザーGS、GM(住友化学社製)
のような一部ヒンダードフェノール基を含有するアクリ
レート系化合物、HP136(チバガイギー社製)等の
ベンゾフラノン系安定剤、イルガフォス168(チバガ
イギー社製)等のホスファイト系等に代表される安定剤
を含有していることが好ましい。また、シートの透明性
を損なわない程度で、長鎖脂肪族アルコール、長鎖脂肪
族エステル等の離型剤、その他滑剤、可塑剤、紫外線吸
収剤、帯電防止剤等の添加剤を含有することも可能であ
る。
【0027】次に本発明のシートの作成法について述べ
る。
【0028】一般にプラスチックシートやフィルムは、
主として、樹脂温度を上げて溶融状態になった樹脂を
T型ダイスから押し出したり(Tダイ法)、空気を用
いたインフレーション法などの溶融成膜法と、有機溶
剤や水に溶かした溶液を支持体上に流延していく溶液流
延成膜法(キャスティング法)、ロール間で圧延して
いくカレンダー法、によって製造可能である。本発明で
用いられる水素化スチレン系重合体シートは、これらの
どの方法によって作成してもかまわない。しかし、溶融
成膜法は生産性に優れる反面、ダイラインと呼ばれるT
ダイに起因する微小な厚み斑の問題や、異物やゲルによ
る外観品質の問題をおこすことがある。また、カレンダ
ー法も厚み斑がでやすい。光記録媒体用シートの場合、
厚さ斑は電気特性に大きな影響を与え、数μm以下であ
ることが必要であるとも言われており、これらの方法で
は難しい。
【0029】一方、溶液流延成膜法は生産性に劣る反
面、厚み斑及び表面粗さが小さく、異物やゲルの少ない
フィルムを容易に得ることができる。この方法の欠点は
厚いシートを得るのが困難なことであるが、将来の光記
録基板は0.3mm、更には0.1mm前後と薄くなる方
向であり、この点でも本発明の水素化スチレン系重合体
シートの製造方法としてより望ましい。
【0030】溶液流延成膜法について更に説明する。水
素化ポリスチレン系重合体を溶解する溶剤としては、水
素化ポリスチレン系重合体との適当な親和性を有する物
が使用される。親和性が高すぎると、溶解性は高くなる
が、シート成形時の乾燥工程で溶剤が抜けにくくなるた
め、生産性が悪くなるだけでなく、シートに気泡が発生
しやすくなるため、透明で表面性の良好なシートを得る
ことが極めて困難になる。親和性が低いと、シート成形
時の乾燥工程で溶剤が抜けやすいため、生産性があが
る。好ましい溶媒としては、ベンゼン、トルエン、キシ
レンなどの芳香族炭化水素類、塩化メチレン、クロロホ
ルムなどのハロゲン化炭化水素類が挙げられる。これら
は単独で用いても良いし、2種類以上併用して用いても
良い。
【0031】本発明において、該重合体溶液は必要な性
能のフィルターで濾過することによって異物を除去する
ことが好ましい。用いるフィルターのポアサイズは適宜
選択されるが、光記録媒体用シート成形に使用する場合
のフィルターのポアサイズとしては5μm以下が好まし
く、3μm以下が更に好ましい。
【0032】本発明における水素化スチレン系重合体シ
ートの製造において、該重合体溶液の濃度は、製造され
るシートの厚みに応じて適宜選択されるが、通常、1〜
50重量%、好ましくは5〜40重量%、更に好ましく
は10〜35重量%の範囲である。本発明における重合
体溶液には、シートの透明性を損なわない範囲で必要に
応じレベリング剤、耐熱安定剤、滑剤、可塑剤、帯電防
止剤等の各種添加剤を添加することができる。
【0033】本発明における上記シートは、上記重合体
溶液を適当な支持体の上に流延し、次いで、溶剤を乾
燥、除去することにより得ることができる。支持体とし
ては、溶剤に侵されず、かつ表面の平滑性に優れるもの
であれば特に制限はなく、ガラス板、フェロタイプ板、
ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレー
ト等のプラスチックフィルム、ステンレス製ドラムやエ
ンドレスベルト等が用いられる。重合体溶液を支持体上
に流延する方法としては、特に制限はなく、一般的な溶
液流延法を用いることができる。例えば、ドクターナイ
フ、バーコーター、ダイコート、リバースロールコータ
ー、グラビアロールコーター等が挙げられる。支持体上
に流延され、レベリングにより平滑になった液膜は、次
いで加熱乾燥され溶剤が除去される。この際の乾燥の方
法としては、使用する溶剤、シートの厚み等に合わせて
加熱温度、加熱時間、風量等を適宜設定すればよい。残
留溶媒濃度はシートの耐熱性に影響を与えるため、なる
べく低くすることが好ましく、3重量%以下、好ましく
は1重量%以下、更に好ましくは0.5重量%以下とな
るまで溶剤の乾燥、除去が行われる。
【0034】本発明で用いる水素化スチレン系重合体シ
ートは400nmでの光線透過率が85%以上のものが
好ましい。透過率は高い方が好ましく、87%以上であ
ることがより好ましく、89%以上が更に好ましく、9
0%以上が最も好ましい。
【0035】本発明の一つの大きな特徴は、シートのレ
ターデーションが10nm以下であることにある。ここ
でいうレターデーションとは、波長633nmの光がシ
ート面に垂直方向及び斜め30度方向(法線方向に対し
て)に入射した時のシングルパスでの複屈折レターデー
ションを意味し、これら両方の値が10nm以下であ
る。この値は、本質的にばらつきと思われる所では平均
値を求めるが、位置依存性がある場合には光記録媒体記
録領域の全ての測定点でこれを満足する必要がある。例
えば120mm直径の光ディスクを射出成形で得た場合
には、円周方向では平均を求めるが、半径方向では全て
の半径位置で10nm以下であることが必要である。溶
液流延製膜法では適切な条件を選べば幅方向、長さ方向
の分布は小さく、平均値を求めれば良い。
【0036】また、レターデーションが10nm以下と
は絶対値での値であり、+10nm〜−10nmの範囲
を意味する。絶対値が10nm以下であれば良好な電気
特性が得られる。
【0037】本発明で用いられるシートの厚さは0.0
1mm以上、0.3mm以下である。これは、前述した
ように将来必要とされる記録媒体用シートの厚さはこれ
以下であり、かつその好ましい製造方法がなかったこと
による。
【0038】本発明の情報記録媒体用シートとは、光カ
ードや光ディスクのように、光を用いて記録や再生を行
う光記録媒体に用いられるシートである。特に、円形状
の光ディスクに好適に用いられる。例えば書き換え可能
なディスクとして、光磁気記録媒体、相変化を利用した
記録媒体、染料などを用いた1度だけ書き込み可能な媒
体(−Rと言われる)、ピットの形で最初から信号が記
録されている媒体(−ROMと言われる)などに用いら
れる。これらには、目的に応じて、各種の記録層、反射
層、保護層、保護樹脂層などが形成され、また、必要で
あれば2枚が貼り合わされ、各種光ディスクとして使用
される。ブルー対応記録メディアといわれる波長420
nm以下のレーザを用いて情報再生する、又は記録再生
する光ディスクでは、薄いシートの要求が強く、かつ複
屈折の影響がより重要になるため本発明の効果が大き
い。
【0039】本発明の情報記録媒体用シートには、情報
を記録再生するために用いられる光ビームの案内溝(グ
ルーブ)や、位置情報、ドライブでのディスク回転情
報、信号の記録再生条件などが凹凸の形(ピット)で存
在する。また再生専用のROM媒体では、記録信号その
物がピットで存在する。これらグルーブ、ピットは、情
報記録用シートとはその形状がネガ、ポジの関係につく
られたスタンパ表面から、何らかの方法で転写されて形
成される。転写する方法はどのようなものでも良い。厚
さが1.2mmや0.6mm前後のシートでは、射出成
形法が通常用いられるが、本発明の0.01mmから
0.3mmの薄い場合には、前述したように射出成形法
では条件がかなり制約される。そのために、シートを減
圧下でスタンパに接触させ、加熱プレスする方法によ
る。加熱プレスとは、被プレス物の温度を上昇させた状
態で、圧力をかけることを意味する。ここで使用される
温度は、水素化スチレン系重合体のガラス転移温度以
上、好ましくはガラス転移温度より5℃〜50℃程度高
い条件が用いられる。これより低いと、充分な転写を得
ることが難しく、高すぎるとシートの変形などの問題が
おきやすく、また設備費用も高くなる。例えばガラス転
移温度が140℃の樹脂の場合には160℃から180
℃の範囲が好適に用いられる。また加える圧力は、用い
る樹脂、温度、その他の条件により変化し、適宜選択さ
れるが、本発明で用いるシートにおいては、数十から数
百kg/cm2が採用される。これより低いと充分な転
写を得るのが困難であり、逆に高いと加熱プレス成形後
のシート取り出し時の離型が問題になる場合がある。
【0040】加熱プレスする際に、圧力をシート/スタ
ンパ面に均一に加えることは、未転写部分の発生防止に
重要である。プレス装置(上下プレス台間)の平行度、
接触面の平滑性に少しでも問題があると、均一に圧力が
かからない。またシート/スタンパを何らかの金属板で
挟んで加熱プレスすることが多いが、この平滑性も必ず
しも良好とは限らず、この場合には圧力が均一に伝わり
にくく、転写不良の領域ができることがある。この影響
を少なくするためには、クッション材の利用が好まし
い。クッション材の使用は、数十回加熱プレスを続ける
とシート/スタンパを挟む金属板の一部が変形すること
があるが、この一部変形した金属板の使用を可能にす
る。クッション材としては、弾性、耐熱性の観点から、
シリコーンゴム、フッ素樹脂系のゴムが好適に用いられ
る。クッション材は、厚さが厚すぎると熱伝導が小さく
なり、薄すぎると圧力均一化の効果が減少する。この観
点から、0.5mm〜2mm程度の厚さのものが好まし
い。このクッション材は、プレス台とスタンパ又は、プ
レス台とシートとの間どちらかに用いれば効果的である
が、両方に用いても良い。
【0041】プレス時に減圧にしないで加熱プレスする
と、転写されていない領域が存在する。これには肉眼で
観察できる1mm〜数cmの大きいものだけでなく、顕
微鏡やAFM(原子間力顕微鏡)で検出される微少な未転
写の物もある。これはスタンパとシート間に空気が残存
してしまうことによる。これを防止するため、空気を取
り除いて30KPa以下の減圧にする必要がある。これ
より圧力が高い状態では、残留空気が転写に影響を及ぼ
す。圧力は低い方が好ましいが、そうすると装置が複雑
になって設備が高くなったり、あるいは減圧に時間がか
かり生産性が悪くなるので、適宜選択される。実際には
10KPa程度の圧力下で行なわれることが多い。
【0042】また、シートのガラス転移温度以上にプレ
ス温度を設定すると、両者の接触部で部分的な融着が発
生し、そのような場所に取り囲まれた領域ではその後ど
れだけ長く真空引きを行っても空気の除去が行われなく
なることがある。これを完全に解決するためには、シー
トとスタンパー表面に存在する空気を、両者が接触する
前に完全に除去してから積層するか、あるいは加熱温度
を室温かもしくは少なくともガラス転移温度以下にして
積層し、真空引きを充分に行ってからプレス温度を昇温
することが必要である。しかし、前者では設備的に複雑
になり、後者では生産速度が遅くなる。
【0043】これを改善する対策として、シートのスタ
ンパとの接触面をあらかじめ粗面化し、プレス前に減圧
した際、そこに残存する空気を逃げやすくすることが有
効である。この面の反対側についてもそこに空気が残っ
ていると、スタンパに対する実質的な接圧が変化し、転
写性に影響を及ぼすことがあるので、この面も粗面化し
たほうが好ましい。粗面化の形状はどんな形であっても
良いが、スタンパと接触した際、空気層が連続している
形が好ましい。この意味で、シート面にへこみがあると
いうものより、逆に突起が存在する形状が好ましい。例
えば断面が正方形、長方形、円形、三角形である突起が
あるものや、それらの先端部が平らになっている台形状
のものが挙げられる。これらの突起の高さは適宜選択さ
れるが、あまり低すぎると空気逃げ改善の効果が小さ
い。一方大きすぎると、加熱プレス後にその形状の一部
が残ってしまう。プレス前はスタンパに完全に接触せず
に、プレス後はその粗面形状が完全に消えてしまう形状
が好ましい。この点から、突起の高さとしては1μm〜
1mm、好ましくは数十μmが好適に用いられる。これ
を作製する方法は特に限定されないが、例えば織物、編
物状のものをシートと接触させ、その表面形状を加熱プ
レスによって転写する方法が用いられる。シートの突起
の先端形状をシンプルにするためには、織物、編物の繊
維間にはあまりシートの樹脂が入っていかない方が好ま
しく、適当な樹脂を織物、編物中に少し含浸させ、繊維
間には樹脂が入り込むが表面は凹凸形状を保持している
ものが好ましい。加熱プレスに使用するため、耐熱性を
有する方が好ましく、シートとの離型も良い方が好まし
いので、例えばテフロン(登録商標)を含浸したガラス
繊維シートが好適に用いられる。
【0044】本発明の情報記録媒体用シートのサイズは
特に制限はないが、該光記録媒体が光ディスクの場合、
一般には、直径25mmから300mm程度で、約15
mm直径のセンターホールが開いたドーナツ形状のもの
がよく使用される。
【0045】本発明の情報記録媒体用シートは、従来公
知の加熱プレス成形設備を改良して製造することが可能
である。減圧にするには、例えばシリコーンゴムのよう
な弾力性のある耐熱材料で周囲を囲み囲んだ範囲を真空
ポンプで排気するような方法で良い。また従来の枚葉式
加熱プレス装置で指摘されていた、冷却、加熱に時間が
かかるという問題は、例えば実施例で示すように、4個
の工程を自動的に連続して行う作業ステージが有って、
各々取り出し及びセット→予熱→加熱プレス→徐冷、と
いうプロセスをたどる設備を用いれば、生産性も良好で
ある。
【0046】本発明で得られた情報記録媒体用シート
は、その凹凸及び/または溝が転写された面に、反射膜
及び/または記録膜を形成すれば情報記録媒体となる。
情報記録媒体の径が小さい場合は、シート厚さが薄くて
も小さな反り、良好な機械特性のものが得られ、これら
の上に保護膜を設ければ耐久性も向上する。また、一層
の機械特性の優れた情報記録媒体、あるいは径の大きい
情報記録媒体の場合には他の基板に貼り合せて用いる。
貼り合せる基板は、目的、要求特性によって材料、厚さ
など適宜選択される。材料は情報記録媒体用シートと同
じ物でも良いし、機械的強度、熱安定性の優れた物でも
良い。基板の厚さは、情報記録媒体の規格に合わせて選
択されるが、通常は機械的強度を得るために0.3mm
以上、1.5mm以下の範囲である。貼り合せる方法は
紫外線硬化樹脂、ホットメルト樹脂、粘着シートなど公
知の方法が用いられる。
【0047】
【発明の効果】本発明の情報記録媒体用シートは、薄い
シートにピット、グルーブなどが存在しているものであ
り、今後の高密度記録化に必要な記録や読み取り波長の
短波長化、光ヘッドの高開口数化に有利な、高密度情報
記録用のシートである。特に、高密度記録に用いられる
光ディスク用に有効である。
【0048】
【実施例】以下に実施例により本発明を詳述する。但
し、本発明はこれら実施例に何ら限定されるものではな
い。
【0049】本実施例、比較例で用いた材料、設備、測
定法について説明する。 1)シート材料 ・触媒:Ni/シリカ・アルミナ触媒(Ni担持率65
重量%)、Pd/アルミナ触媒(Pd担持率1重量%)
はAldrichより購入し、そのまま用いた。・ガラ
ス転移温度(Tg):TAInstruments製
2920型DSCを使用し、昇温速度は20℃/分で測
定した。 ・分子量:ゲルパーミエーションクロマトグラフィー
(昭和電工(株)製GPC、Shodex Syste
m−11)により、THFを溶媒として測定し、ポリス
チレン換算の分子量を求めた。 ・水添率: JEOL JNM−A−400型核磁気共
鳴吸収装置を用い、1H−NMR測定により定量した。 2)シート成形機 日精樹脂工業(株)製NIC200型成形機を用いて成
形を行った。本設備は図1に示すように、試料(シー
ト)セット、シート取り出し(プレス0)、予熱プレス
(プレス1)、加熱プレス(プレス2)、冷却プレス
(プレス3)の4つのステージから成っており、所定時間
毎にスタンパとシートとの積層体がその接触面を減圧に
保ちながら、回転移動出来るようになっている。プレス
0では、スタンパ及びシートなどの被プレス材料を積層
する。積層した後、蓋を閉め、真空引きを開始し、次工
程へ回転移動する。被プレス材料は、プレス1で予熱さ
れた後、プレス2で所定温度まで加熱されスタンパ表面
形状が転写される。その後プレス3で冷却固定され、プ
レス0でシートが取り出されるというプロセスが可能な
設備である。 3)スタンパ スタンパはブルーレーザ記録用である、グルーブ深さ4
5nm、トラックピッチ0.3μm(ランド・グルーブ
記録)で外径138mm(記録ゾーンの外径:116m
m)のものを使用した。 4)シート評価 ・レターデーション: オーク製作所(株)複屈折自動
測定装置ADR200Bを使用して、シート面の法線方
向から0°と30°の角度で測定し、シングルパスで示
した。測定点としては、半径方向は記録領域の最内周
(中心から23mm)から最外周(中心から58mm)
の範囲で5mmピッチ8点、円周方向は90度ピッチで
4点の測定を行い、各半径毎に平均値を求めた。本実施
例、比較例で示したレターデーションの値は、その中の
最大値である。 ・転写性、外観評価 得られた光ディスク用シートを、肉眼検査、強力光
源であるハロゲンランプ光照射による観察、及びAF
M(原子間力顕微鏡、セイコー電子工業製SFA−30
0)によるグルーブ転写状況観察及び微細欠陥観察を行
った。AFMによるグルーブの転写状況は、スタンパの
AFMによるグルーブ観察結果と比較して評価した。こ
れらは、同一条件で作製したシート5枚の観察を行い、
判断した。
【0050】[実施例1]n−ブチルリチウムを開始剤
としてシクロヘキサン中でアニオン重合を行うことによ
り、重量平均分子量は165,000g/mol、イソ
プレンの共重合量10重量%のスチレン−イソプレン−
スチレン共重合体を製造した。得られた共重合体溶液
を、Ni/シリカ・アルミナ触媒(Ni担持量65重量
%)を使用して、水素添加反応を行った。水素添加反応
は、シクロヘキサン/メチル−t−ブチルエーテルの混
合溶媒(重量比 9/2)中で、ポリマー濃度11重量
%で実施した。
【0051】得られた水素化スチレン共重合体溶液に対
して、スミライザーGS(住友化学社製)を重合体に対
して0.5重量%となるように加えてから、減圧濃縮、
フラッシングを行い、溶媒を留去して塊状の無色透明な
水素化スチレン−イソプレン−スチレン共重合体を得
た。かかる重合体の重量平均分子量は130,000g
/molであった。1H−NMR測定で水添率を調べた
ところほぼ99.9%であった。DSCにより測定した
ガラス転移温度は142℃であった。
【0052】該ポリマー33gをトルエン67gに溶解
し、濃度33重量%の重合体溶液を得た。この重合体溶
液を1.0μmのメンブレンフィルターでろ過し、クリ
アランスが300μmのドクターブレードを用いてガラ
ス板上に流延した。これを25℃で10分間放置した
後、熱風乾燥機中で60℃から150℃まで徐々に昇温
させて乾燥した。乾燥後、フィルムをガラス基板から剥
離し、平均膜厚70μmの透明なシートを得た。このシ
ートの400nmにおける透過率は、90.2%であっ
た。また、複屈折を測定した結果、レターデーションは
入射角が垂直で0.5nm、30°入射で1.2nmで
あった。また、20cm角のシートの厚さを1cm間隔
でマイクロメーターにより縦横測定したところ、全ての
測定点で70±1μmを満足していた。また、吸水率は
0.01%以下、鉛筆硬度はHから2Hであった。
【0053】得られたシートをスタンパの情報面と接触
させ、これらの両側を1.0mm厚さのステンレス板
(フィルム接触面は鏡面)ではさみ、シート成形機のプ
レス0位置にセットした。これらの周囲を断面が円形の
紐状シリコーンゴムで囲み、真空引きを開始し、10分
後予熱工程に移動させた。この時真空引き開始後20秒
後には10kPaの圧力になり、その後はほとんど変化
がなかった。プレスは、予熱温度150℃、加熱温度1
70℃、プレス圧力20トン、プレス時間1分の条件で
行った。
【0054】冷却工程は、温度は20℃、時間1分の条
件とした。同条件で5枚のシートを作製したが、いずれ
もAFM観察で得られたランド、グルーブの形状とグル
ーブ深さから判断した転写性は問題なく、また、肉眼観
察での表面異常(転写異常による部分的曇り、など)も
ない良好なシートが得られた。また、ハロゲンランプ観
察でも問題のない情報記録媒体用シートが得られた。な
お、転写後のシートの垂直入射でのレターデーションは
0.6nmであり、シート成形前とほとんど変化がなか
った。
【0055】[実施例2]実施例1において、水素化ス
チレン重合体シートをラミネートに先立って、上記シー
ト成形機を用いてテフロン含浸ガラス繊維織物と接触さ
せ、片面を粗面化した。この粗面化した面をスタンパ−
の情報面と接触させ、実施例1での真空引き時間のみを
他の工程と同じ1分にして、成形、評価を行った。5枚
のサンプル全てにおいて、全ての評価で良好な結果を得
た。
【0056】[比較例1]実施例2において粗面化する
ことなく、実施例2と同様にして真空引き時間を1分に
して成形評価を行ったところ、5枚中3枚に転写不良部
が発生した。実施例1、2と比較例1により、表面粗面
化は真空引き時間の短縮に有効である事がわかる。
【0057】[実施例3]実施例2を数十回実施したと
ころ、水素化スチレン系重合体シートとプレス台の間に
用いたステンレス板の一部に変形が見られた。この一部
変形したステンレス板とプレス台の間に、厚さ1.2m
mのシリコーンゴムシートを用いて実施例2と同様にし
てシート成形を行った(構成:シリコーンゴム/ステン
レス板/片面粗面化水素化スチレン系重合体シート/ス
タンパ−/ステンレス板)。そして、実施例2と同様に
5枚の光ディスク用シートの成形、評価を行った。その
結果、全てのシートで、転写性、外観評価〜の全て
について良好な結果が得られた。ステンレス板に多少の
変形があっても、シリコーンゴムがクッション材として
働き、水素化スチレン系重合体シート/スタンパ間全面
に均一な力が働いたものと思われる。
【0058】[比較例2]実施例3で用いたと同じ一部
変形したステンレス板を用いて、クッション材を用いる
ことなく、実施例3と同様に成形、評価を行った。その
結果、5枚のシート全てに未転写の領域が発生した。
【0059】[実施例4]実施例1で用いた溶液流延製
膜法による水素化スチレン系重合体シートの代わりに、
同じポリマーを用いて溶融押し出し法で約70μm厚さ
のシートを成形した。実施例1と同じ方法で、厚さ分布
を測定したところ、71±4μmであった。このシート
のレターデーションは、垂直入射で1.0nm、斜め3
0°入射では1.5nmであった。光記録基板の成形条
件は実施例2と同じで行った。この場合も5枚の評価を
同様に行った。その結果、転写性、外観評価〜の全
ての評価で良好な結果が得られた。
【0060】[比較例3]実施例2において、水素化ポ
リスチレン系重合体から用いて作製したシートの代わり
に、ポリカーボネート樹脂の溶融製膜フィルム(厚さ7
0μm)を用いて同様の成形、評価を行った。このシー
トのレターデーションは、垂直入射で15.6nm、斜
め30°入射では32.4nmであった。その結果、転
写性、外観評価〜の全ての評価で良好な結果が得ら
れた。またこのシートの吸水率は0.25%、鉛筆硬度
はBであった。
【0061】[実施例1、4と比較例3で得られたシー
トを用いた媒体の電気特性評価]実施例1,4、比較例
3で得られたシートを内径15mm、外径120mmの
ドーナツ状に打抜いて、そのグルーブ面にスパッタリン
グ法で無機薄膜の積層体である相変化記録膜構造を形成
し、さらに該無機薄膜の積層体上に1.2mm厚さ、内
径15mm、外径120mmのポリカーボネート円板を
貼りあわせて光ディスクを作製した。表1に媒体構成を
示した。
【0062】
【表1】
【0063】スパッタリング法による無機薄膜の積層体
の作製方法は以下である。
【0064】誘電体膜としてZnS-SiO2膜( ZnS:SiO2=
80:20mol%のターゲットをスパッタリングして得られ
る膜)とSiO2膜を用いた。記録層は、GeSbTe合金膜(G
e:Sb:Te=2:2:5 at%)である。反射層は、AlCr
合金膜(Al:Cr=97:3 at%)である。これらの無機
薄膜は透明シート上にマグネトロンスパッタリングによ
って形成した。使用したスパッタ装置はANELVA Corp.製
のインラインスパッタ装置(ILC3102型)であ
り、ターゲットは8インチ直径で、シートは自公転しな
がら製膜される。膜厚はスパッタ時間で調節した。膜面
から410nmの光を照射した時の反射率が約25%に
なるように、誘電体の膜厚を調節した。なお、ZnS-SiO2
膜の屈折率(波長633nmの値)は2.18、SiO
2膜の屈折率(波長633nmの値)は1.53、記録
膜を結晶化(初期化)した後の反射率(波長410nm
の値)は7.2%であった。
【0065】これらの光ディスクの記録再生特性を以下
のように評価した。用いた評価機はパルステック工業株
式会社製の型式:DDU−1000評価機であり、レー
ザ波長400nm、NA=0.85の光ヘッドを用い
た。そして、絶対的な性能とスタンパ形状の転写の一様
性を調べる目的で、再生信号の大きさと再生信号のディ
スク一周内の変動(再生信号エンベロープ変動)を評価
項目とした。
【0066】[評価条件]測定半径=28mm(内周)と
58mm(外周)で、それぞれランドとグルーブを測定
した。 記録再生の線速度=4.0m/sec 線記録密度=0.115μm/bit(1−7RLL変
調記録) 記録レーザパワー=3.0mW 消去レーザパワー=1.5mW 再生レーザパワー=0.4mW
【0067】[評価結果]1−7変調の3T再生信号のC
NR(dB)と再生信号振幅の一周内変動(%)を表2
に示した。表2のとおり、実施例1の光ディスク媒体に
対し、溶融製膜法で作製したシートを用いた実施例4で
は、CNRが若干低めで、かつエンベロープ変動が若干
大きい。ポリカーボネートからなる比較例3は特性が落
ちており、この原因は、複屈折の影響と考えられる。
【0068】
【表2】
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は実施例で用いたシート成形機の平面概念
図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 松村 俊一 山口県岩国市日の出町2番1号 帝人株式 会社岩国研究センター内 Fターム(参考) 4F209 AA13 AC03 AG01 AG05 AH73 AH79 AJ05 PA02 PB01 PC01 PG11 PH02 PN03 PN06 PN07 5B035 BA03 BB03 5D029 KA13 KB20 KC05 KC09 5D121 AA02 DD01

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 水素化ポリスチレン系重合体単位80重
    量%以上100重量%以下からなる重量平均分子量が5
    0,000g/mol〜400,000g/molの水素
    化スチレン系重合体からなり、厚さが0.01mm以
    上、0.3mm以下、入射角が垂直及び30°方向で測
    定した複屈折レターデーションが10nm以下である水
    素化スチレン系重合体シートに、凹凸及び/又は溝を有
    するスタンパを、30kPa以下の減圧下で接触させ
    て、該重合体のガラス転移温度以上の温度で加熱プレス
    する事を特徴とする情報記録媒体用シートの製造方法。
  2. 【請求項2】 水素化スチレン系重合体シートの少なく
    ともそのスタンパに接触する面が、粗面化されているこ
    とを特徴とする請求項第1記載の情報記録媒体用シート
    の製造方法。
  3. 【請求項3】 加熱プレスを、水素化スチレン系重合体
    シートとスタンパをプレス台でプレスすることにより実
    施し、その際該シートとプレス台の間及び/又はスタン
    パとプレス台の間に、クッション材を挿入する請求項1
    または2記載の情報記録媒体用シートの製造方法。
  4. 【請求項4】 水素化ポリスチレン系重合体単位80重
    量%以上100重量%以下からなる重量平均分子量が5
    0,000g/mol〜400,000g/molの水素
    化スチレン系重合体からなり、厚さが0.01mm以
    上、0.3mm以下、入射角が垂直及び30°方向で測
    定した複屈折レターデーションが10nm以下である水
    素化スチレン系重合体シートに凹凸及び/又は溝が形成
    されてなる事を特徴とする情報記録媒体用シート。
  5. 【請求項5】 請求項4記載の情報記録媒体用シート
    の、凹凸及び/または溝が形成された面上に、反射膜及
    び/または記録膜を形成されてなる事を特徴とする情報
    記録媒体。
  6. 【請求項6】 請求項5記載の情報記録媒体を、厚さ
    0.3mm以上、1.5mm以下の基板に積層してなる
    ことを特徴とする情報記録媒体。
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