JP2003171683A - 生分解性グリース組成物及び転動装置 - Google Patents

生分解性グリース組成物及び転動装置

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JP2003171683A
JP2003171683A JP2001374889A JP2001374889A JP2003171683A JP 2003171683 A JP2003171683 A JP 2003171683A JP 2001374889 A JP2001374889 A JP 2001374889A JP 2001374889 A JP2001374889 A JP 2001374889A JP 2003171683 A JP2003171683 A JP 2003171683A
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oil
base oil
biodegradable
mass
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JP2001374889A
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Koutetsu Denpo
功哲 傳寳
Masahiko Yamazaki
雅彦 山崎
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NSK Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 生分解性と高温における耐久性とに優れるグ
リース組成物、及び該グリース組成物を備える転動装置
を提供する。 【解決手段】 100℃における動粘度が4mm2 /s
以下の合成炭化水素油と、100℃における動粘度が5
0mm2 /s以上のエステル油と、を含有するととも
に、100℃における動粘度が5〜100mm2 /sで
ある基油を用いて生分解性グリース組成物を製造した。
また、このような生分解性グリース組成物を、深溝玉軸
受等の転動装置に封入した。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、自然環境下におい
て微生物等によって分解されやすく(以降は、「生分解
性に優れる」と記す)、水質,土壌等の自然環境に悪影
響を及ぼすおそれの小さいグリース組成物に関する。ま
た、このようなグリース組成物を備える転動装置に関す
る。
【0002】
【従来の技術】回転部分,摺動部分,摩擦部分などを有
する機械や器具等には、通常、該部分の潤滑や防錆を行
うためにグリース組成物が使用されている。このような
機械や器具等の中でも屋外で使用されるものからは、グ
リース組成物が漏出して自然環境に放出されることがあ
った。一方、従来のグリース組成物の基油としては、そ
の汎用性から鉱油が使用されることが多いが、鉱油は生
分解性が乏しい。また、ポリα−オレフィンをはじめと
する合成炭化水素油も生分解性が乏しい。
【0003】したがって、このようなグリース組成物が
自然環境に放出されると、微生物等によって分解される
ことがほとんどなくそのまま残留することとなるので、
水質,土壌等の汚染を引き起こすおそれがあるという問
題があった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】このような問題を解決
するために、生分解性を有するグリース組成物が提案さ
れている。例えば、特開平6−1989号公報にはポリ
オールエステル油を主成分とする基油を用いたグリース
組成物が開示されており、また、特開平8−20789
号公報にはペンタエリスリトールの直鎖脂肪酸エステル
を主成分とする基油を用いたグリース組成物が開示され
ている。
【0005】しかしながら、これらのグリース組成物
は、エステル油を主成分とする基油を使用しているた
め、高温における耐久性が不十分であるという問題点を
有していた。そこで、本発明は上記のような従来技術が
有する問題点を解決し、生分解性と高温における耐久性
とに優れるグリース組成物、及び該グリース組成物を備
える転動装置を提供することを課題とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】前記課題を解決するた
め、本発明は次のような構成からなる。すなわち、本発
明に係る請求項1の生分解性グリース組成物は、増ちょ
う剤と生分解性を有する基油とを含有する生分解性グリ
ース組成物において、前記基油は、100℃における動
粘度が4mm2 /s以下の合成炭化水素油と、100℃
における動粘度が50mm2 /s以上のエステル油と、
を含有するとともに、前記基油の100℃における動粘
度は5〜100mm2 /sであることを特徴とする。
【0007】合成炭化水素油は生分解性が乏しいとされ
ていたが、100℃における動粘度が4mm2 /s以下
の合成炭化水素油であれば生分解性が優れている。ただ
し、グリース組成物の基油として用いるには粘度が低い
ので、生分解性が優れ高粘度であるエステル油と混合す
ることによって粘度を最適化して、グリース組成物の基
油として用いた。このようなグリース組成物は、生分解
性に優れるとともに、基油に合成炭化水素油が含まれて
いるため高温における耐久性が優れている。また、基油
に高粘度のエステル油が含まれているため、軸受等の転
動装置に用いた際に転動装置の耐衝撃性や耐フレッチン
グ性を向上させることができる。
【0008】本発明において使用される合成炭化水素油
の種類は特に限定されるものではなく、例えばポリα−
オレフィン等があげられる。ただし、その動粘度は10
0℃において4mm2 /s以下である必要がある。10
0℃における動粘度が4mm 2 /sを超える合成炭化水
素油を使用すると、グリース組成物の生分解性が不十分
となるおそれがある。また、使用されるエステル油の種
類は特に限定されるものではなく、例えばコンプレック
スポリオールエステル(多価アルコールと二塩基酸及び
一塩基酸の混合脂肪酸とのエステル化合物)に代表され
るコンプレックスエステルや、高粘度のエステル系ポリ
マーがあげられる。
【0009】エステル系ポリマーとしては例えば、下記
式(1)に示すような平均分子量2万〜150万の非分
散型ポリメタクリル酸アルキルエステル(RはC1 〜C
18のアルキル基)や、下記式(2)に示すような分散型
メタクリル酸アルキルエステルコポリマー(RはC1
18のアルキル基、R’はH又はCH3 、Xは−COO
R基等の極性基)があげられる。
【0010】
【化1】
【0011】
【化2】
【0012】ただし、エステル油の動粘度は、100℃
において50mm2 /s以上である必要がある。100
℃における動粘度が50mm2 /s未満であると、低粘
度な合成炭化水素油と混合して適正な粘度の基油を得る
ことが困難となる。合成炭化水素油とエステル油とを含
有する基油の動粘度は、100℃において5〜100m
2 /s(40℃においては25〜1200mm2
s)である必要がある。5mm2 /s未満では、高温に
おいて蒸発しやすく、また、グリース組成物の製造が困
難となる。一方、100mm2 /s超過では、グリース
組成物を充填した転動装置のトルクが上昇しすぎるため
好ましくない。
【0013】また、本発明に係る請求項2の生分解性グ
リース組成物は、請求項1に記載のグリース組成物にお
いて、前記エステル油の含有量を前記基油全体の10〜
80質量%としたことを特徴とする。このような構成で
あれば、基油の粘度を適正なものとすることができ、そ
して、グリース組成物の諸性質を好適なものとすること
ができる。エステル油の含有量が基油全体の10質量%
未満であると、基油の粘度が低くなりすぎるとともに高
温における耐久性が低下する。一方、80質量%超過で
あると、基油の粘度が高くなりすぎる。
【0014】さらに、本発明に係る請求項3の生分解性
グリース組成物は、請求項1又は請求項2に記載の生分
解性グリース組成物において、前記増ちょう剤を金属石
けんとし、その含有量を生分解性グリース組成物全体の
5〜35質量%としたことを特徴とする。本発明の生分
解性グリース組成物においては、脂肪酸の金属塩である
金属石けんが増ちょう剤として使用される。
【0015】脂肪酸としては、ひまし油系脂肪酸である
12−ヒドロキシステアリン酸や牛脂系脂肪酸であるス
テアリン酸などがあげられる。また、金属としては、カ
ルシウム,バリウム等のアルカリ土類金属、リチウム,
ナトリウム等のアルカリ金属、又はアルミニウムなどが
あげられる。これらの金属石けんのなかでは、12−ヒ
ドロキシステアリン酸リチウム石けん,リチウムコンプ
レックス石けん等のリチウム石けんが好ましく、特に、
ステアリン酸リチウム石けんは、転動装置の耐フレッチ
ング性や耐摩耗性の向上を促進する効果を有するので好
ましい。
【0016】生分解性グリース組成物における増ちょう
剤の含有量は、生分解性グリース組成物に適度な柔軟性
を付与するために、生分解性グリース組成物全体の5〜
35質量%が適当である。5質量%未満であるとグリー
ス構造を維持することが困難となり、35質量%超過で
あると、グリース組成物が硬化しすぎて十分な潤滑性を
発揮することが困難となる。本発明の生分解性グリース
組成物における基油と増ちょう剤との配合比率は、その
使用用途に適した混和ちょう度又は使用温度に合った組
合せとなるならば特に限定されるものではないが、通常
はNLGI混和ちょう度のちょう度番号がNo.1〜N
o.3の範囲となるような比率が選択される。
【0017】さらに、本発明に係る請求項4の生分解性
グリース組成物は、請求項1〜3のいずれかに記載の生
分解性グリース組成物において、油性剤,極圧剤,及び
酸化防止剤のうちの少なくとも1種からなる添加剤を、
生分解性グリース組成物全体の0.5〜15質量%含有
することを特徴とする。本発明の生分解性グリース組成
物には、各種性能をさらに向上させるため、所望により
油性剤,極圧剤,酸化防止剤等の種々の添加剤を混合し
てもよい。
【0018】まず、油性剤としては、界面活性剤,有機
脂肪酸化合物,有機脂肪酸誘導体等を使用することがで
きる。界面活性剤としては、ソルビダンモノオレートな
どのソルビタン脂肪酸エステル,グリセリン脂肪酸エス
テル,ポリグリセリン脂肪酸エステル,ポリオキシエチ
レンアルキルフェニルエーテル,ポリオキシエチレンア
ルキルアミン・脂肪酸アミド等のノニオン系界面活性
剤、N−アシルアミノ酸又はその塩,ポリオキシエチレ
ンアルキルエーテル酢酸塩,ポリオキシエチレンアルキ
ルエーテルリン酸塩,アルキルスルホカルボン酸塩,ア
ルキルリン酸又はその塩,ポリオキシアルキレンアルキ
ルエーテルリン酸又はその塩,芳香族リン酸エステル等
のアニオン系界面活性剤、アルキルアンモニウム塩,ア
ルキルベンジルアンモニウム塩等のカチオン系界面活性
剤、酢酸ベタイン,イミダゾリニウムベタイン等の両性
界面活性剤があげられる。
【0019】有機脂肪酸化合物としては、オレイン酸,
アジピン酸,ナフテン酸,コハク酸,アルケニルコハク
酸等があげられる。有機脂肪酸誘導体としては、アルキ
ルコハク酸エステル,アルケニルコハク酸エステル等が
あげられる。また、転動装置の耐フレッチング性を向上
させる添加剤として、有機リン化合物やイオウ−リン系
極圧剤(分子中にイオウとリンを含有する化合物)を添
加してもよい。
【0020】有機リン化合物としては、リン酸エステル
類,亜リン酸エステル類,正リン酸エステル類,酸性リ
ン酸エステル類等があり、具体例としてはトリクレジル
フォスフェイト等があげられる。また、イオウ−リン系
極圧剤としては、例えば、日本ルブリゾール株式会社製
のアングラモル99があげられる。そして、酸化防止剤
としては、脂肪族アミン系化合物,芳香族アミン系化合
物,フェノール系化合物等があり、具体例としてはジオ
クチルジフェニルアミン等があげられる。
【0021】これらの添加剤は単独又は2種以上混合し
て用いることができ、生分解性グリース組成物全体に対
する全添加剤の総含有量は0.5〜15質量%とするこ
とが好ましい。0.5質量%未満では各添加剤の効果が
不十分となり、15質量%超過では、各添加剤の効果は
向上するものの、グリース組成物の生分解性が不十分と
なったり自然環境中に放出された際に自然環境に悪影響
を及ぼすおそれがある。なお、鉛等の重金属を含む化合
物は、自然環境中に放出された際に自然環境に悪影響を
及ぼすおそれがあるので、添加剤として好ましくない。
【0022】さらに、本発明に係る請求項5の転動装置
は、内方部材と、外方部材と、前記内方部材と前記外方
部材との間に転動自在に配設された複数の転動体と、を
備える転動装置において、前記内方部材と前記外方部材
との間に形成され前記転動体が内設された空隙部内に、
請求項1〜4のいずれかに記載の生分解性グリース組成
物を充填したことを特徴とする。このような構成であれ
ば、転動装置が長寿命であり、また、グリース組成物が
漏出するなどして自然環境中に放出されたとしても、自
然環境に悪影響を及ぼしにくい。
【0023】本発明は、種々の転動装置に適用すること
ができる。例えば、転がり軸受,ボールねじ,リニアガ
イド装置,直動ベアリング等である。なお、本発明にお
ける前記内方部材とは、転動装置が転がり軸受の場合に
は内輪、同じくボールねじの場合にはねじ軸、同じくリ
ニアガイド装置の場合には案内レール、同じく直動ベア
リングの場合には軸をそれぞれ意味する。また、前記外
方部材とは、転動装置が転がり軸受の場合には外輪、同
じくボールねじの場合にはナット、同じくリニアガイド
装置の場合にはスライダ、同じく直動ベアリングの場合
には外筒をそれぞれ意味する。
【0024】
【発明の実施の形態】本発明に係る生分解性グリース組
成物及び転動装置の実施の形態を、図面を参照しながら
詳細に説明する。基油,増ちょう剤,各種添加剤等の組
成が異なる数種のグリース組成物(実施例1〜6及び比
較例1〜3)について、生分解性等の諸性質を評価し
た。これらのグリース組成物の組成と物性(生分解性,
蒸発減量,及びNLGI混和ちょう度)を表1〜3に示
す。
【0025】
【表1】
【0026】
【表2】
【0027】
【表3】
【0028】なお、表1〜3中の生分解性の数値は、C
EC規格(欧州規格諮問委員会規格)のL−33−A−
93に規定された生分解率(%)である。転がり軸受等
の転動装置に使用されるグリース組成物は、自然環境に
放出された際の分解の速さから生分解率が70%以上で
あることが好ましいので、今回の評価では70%以上を
合格とした。また、蒸発減量(単位は質量%)は、直径
30mm,高さ10mmの円筒状のガラス容器にグリー
ス組成物を満たし、130℃で90時間保持した後の重
量減少量を測定することにより評価した。そして、蒸発
減量が10質量%以下である場合を合格とした。
【0029】まず、表1〜3を参照しながら生分解性の
評価結果について考察する。実施例1〜6のグリース組
成物は、生分解性に優れるエステル油と低粘度(100
℃における動粘度が4mm2 /s以下)のポリα−オレ
フィン(PAO)との混合油を基油として使用している
ので、いずれも生分解性が70%以上であり生分解性に
優れていた。それに対して、比較例1のグリース組成物
は生分解性に劣る鉱油を基油として使用し、比較例3の
グリース組成物は100℃における動粘度が4mm2
s超過のPAOを基油として使用しているので、いずれ
も生分解性が劣っていた。また、比較例2のグリース組
成物は、基油がエステル油を含有していないので、実施
例1〜6のグリース組成物と比較して生分解性が若干劣
っていた。
【0030】次に、表1〜3を参照しながら蒸発減量の
評価結果について考察する。実施例1〜6のグリース組
成物は、蒸発減量が10質量%以下であり高温における
耐久性が優れていたのに対し、比較例2のグリース組成
物は高粘度のエステル油を含有していないので、蒸発減
量が10質量%を超えた。次に、実施例1のグリース組
成物において、基油におけるエステル油の量比や増ちょ
う剤,添加剤の含有量を変化させて、生分解性,蒸発減
量等の諸性質を前述と同様の方法で評価した。さらに、
該グリース組成物を封入した玉軸受の回転トルク及び音
響特性も、併せて評価した。
【0031】ここで、玉軸受の回転トルク及び音響特性
の評価方法について説明する。使用した玉軸受は呼び番
号608の単列深溝玉軸受(内径8mm,外径22m
m,幅7mm)で、図1の部分縦断面図に示すように、
内輪1と、外輪2と、内輪1と外輪2との間に転動自在
に配設された複数の玉3と、内輪1と外輪2との間に複
数の玉3を保持する保持器4と、外輪2のシールみぞ2
aに取り付けられ内輪1の外周面と外輪2の内周面との
間の開口部分をほぼ覆う非接触形のゴムシール(V形)
5,5と、で構成されている。
【0032】そして、内輪1と外輪2との間に形成され
玉3が内設された空隙部内には、該空隙部の体積の20
vol%のグリース組成物Gが充填され、ゴムシール
5,5により軸受内部に密封されている。なお、ゴムシ
ール5は接触形でもよく、また金属製のシールドでもよ
い。このような玉軸受を図2に示す回転試験装置に装着
し、回転トルクを測定した。この回転試験装置において
は、玉軸受21は、内輪がエアスピンドル24にアーバ
25を介して固定され、外輪がエアベアリング27を備
えたアルミキャップ26に固定される。そして、エアス
ピンドル24を回転させて玉軸受21の内輪を回転さ
せ、そのときのトルク値をアルミキャップ26に接続す
るストレインゲージ23で測定し、その測定値をストレ
インアンプで増幅し、ローパスフィルタを通した後にレ
コーダにて記録する。回転試験は下記の条件で行い、ト
ルク値が安定した回転開始5分後の値で評価した。
【0033】・回転速度 :4800rpm ・アキシアル荷重:9.8N ・雰囲気温度 :室温(約25℃) 一方、音響特性の評価は、以下のようにして行った。ま
ず、玉軸受を図3に示すフレッチング試験装置に装着し
た。すなわち、4個の玉軸受30は、それぞれの内輪が
垂直に支持されたシャフト31に固定され、それぞれの
外輪がACサーボモータ32に接続する外筒33に固定
される。そして、ACサーボモータ32を駆動して玉軸
受30の外輪を揺動させた後、玉軸受30をフレッチン
グ試験装置から取り外しアンデロンメータにてアンデロ
ン値を測定した。なお、前記揺動は下記の条件で行っ
た。
【0034】・揺動周波数:9Hz ・揺動角度 :4° ・揺動回数 :10000回 まず、実施例1のグリース組成物において、基油におけ
るエステル油の量比を変化させた際の蒸発減量を評価し
た。その結果を図4のグラフに示す。このグラフにおけ
る横軸は基油中のエステル油の含有比、すなわち(エス
テル油の含有量)/{(エステル油の含有量)+(合成
炭化水素油の含有量)}を示し、左側の縦軸は蒸発減量
を示す。
【0035】また、これらのグリース組成物を封入した
玉軸受について、上記のような方法により回転トルク及
びアンデロン値を測定した結果を、図4のグラフに併せ
て示す。なお、右側の縦軸は玉軸受の回転トルクを示し
ているが、その数値は、実施例1のグリース組成物を封
入した玉軸受の回転トルクを1とした場合の相対値で示
してある。
【0036】また、アンデロン値の大きさは、プロット
に用いた記号の種類により表している。すなわち、エス
テル油を含有しない基油(エステル油の含有比が0)を
用いたグリース組成物を封入した玉軸受のアンデロン値
を1として(この場合は×印で示した)、アンデロン値
が0.75未満の場合は○印、0.50未満の場合は◎
印で示した。図4のグラフから、エステル油の含有比が
多いほど蒸発減量が少い傾向があり、蒸発減量を10質
量%以下とするためにはエステル油の含有比を0.1以
上(基油全体の10質量%以上)とする必要があること
が分かる。また、アンデロン値(音響特性)からも、エ
ステル油の含有比は0.1以上が好ましいことが分か
る。
【0037】一方、回転トルクは、上記とは逆にエステ
ル油の含有比が多いほど大きくなる傾向があり、エステ
ル油の含有比は0.8以下が好ましいことが分かる。こ
れらの結果から、基油におけるエステル油の含有比は
0.1〜0.8(基油全体の10〜80質量%)が好ま
しいと言える。次に、実施例1のグリース組成物におい
て、増ちょう剤の含有量を変化させた際の生分解性及び
混和ちょう度を評価した。その結果を図5のグラフに示
す。このグラフにおいては、○印は生分解率を示し、□
印はNLGI混和ちょう度を示している。
【0038】このグラフから分かるように、増ちょう剤
の含有量が5質量%以上であれば生分解率が70%以上
と良好な値となり、増ちょう剤の含有量が5〜35質量
%であればNLGI混和ちょう度がNo.1〜No.3
と適切な値となる。したがって、グリース組成物におけ
る増ちょう剤の含有量は、5〜35質量%が好ましいと
言える。さらに、実施例1のグリース組成物において、
全添加剤の総含有量を変化させた際の生分解性を評価し
た。その結果を図6のグラフに示す。
【0039】また、これらのグリース組成物を封入した
玉軸受について、前述のような方法でアンデロン値を測
定した結果を図6のグラフに併せて示す。なお、アンデ
ロン値の大きさを表す記号の種類は、前述の場合と同様
である。グラフから分かるように、添加剤の含有量が1
5質量%以下であれば、生分解率が70%以上と良好な
値となる。一方、アンデロン値は、添加剤の含有量が少
ないほど悪化する傾向があり、添加剤の含有量は0.5
質量%以上とすることが好ましい。また、添加剤の含有
量が15質量%を超えると、アンデロン値が急激に上昇
する。これは、余剰な添加剤が結晶化することや、リン
酸エステル等の表面反応性の極圧剤の過剰な添加により
表面腐食が生じることが原因と考えられる。
【0040】これらの結果から、グリース組成物におけ
る全添加剤の総含有量は、0.5〜15質量%が好まし
いと言える。なお、本実施形態は本発明の一例を示した
ものであって、本発明は本実施形態に限定されるもので
はない。例えば、本実施形態においては、転動装置の例
として深溝玉軸受をあげて説明したが、本発明は、他の
種類の様々な転がり軸受に対して適用することができ
る。例えば、アンギュラ玉軸受,自動調心玉軸受,円筒
ころ軸受,円すいころ軸受,針状ころ軸受,自動調心こ
ろ軸受等のラジアル形の転がり軸受や、スラスト玉軸
受,スラストころ軸受等のスラスト形の転がり軸受であ
る。
【0041】また、本発明は、転がり軸受に限らず、他
の種類の様々な転動装置に対して適用することができ
る。例えば、ボールねじ,リニアガイド装置,直動ベア
リング等である。
【0042】
【発明の効果】以上のように、本発明に係る請求項1〜
4の生分解性グリース組成物は、生分解性に優れるとと
もに高温における耐久性が優れている。また、本発明に
係る請求項5の転動装置は長寿命であることに加えて、
グリース組成物が漏出するなどして自然環境中に放出さ
れたとしても、自然環境に悪影響を及ぼしにくい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る転動装置の一実施形態である深溝
玉軸受の構成を示す部分縦断面図である。
【図2】深溝玉軸受の回転トルクを測定する回転試験装
置の構成を示す図である。
【図3】深溝玉軸受のフレッチング試験装置の構成を示
す図である。
【図4】グリース組成物の基油におけるエステル油の量
比と蒸発減量,回転トルク,及びアンデロン値との相関
を示すグラフである。
【図5】グリース組成物における増ちょう剤の含有量と
生分解率及びNLGI混和ちょう度との相関を示すグラ
フである。
【図6】グリース組成物における添加剤の総含有量と生
分解率及びアンデロン値との相関を示すグラフである。
【符号の説明】
1 内輪 2 外輪 3 玉 G グリース組成物
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) // C10N 10:02 C10N 10:02 10:04 10:04 20:02 20:02 Fターム(参考) 3J101 AA02 AA32 AA42 AA52 AA62 BA80 CA32 EA63 FA32 FA60 4H104 BA07A BB17B BB36A EA02A EB08 EB09 FA01 FA02 LA20 QA18

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 増ちょう剤と生分解性を有する基油とを
    含有する生分解性グリース組成物において、 前記基油は、100℃における動粘度が4mm2 /s以
    下の合成炭化水素油と、100℃における動粘度が50
    mm2 /s以上のエステル油と、を含有するとともに、 前記基油の100℃における動粘度は5〜100mm2
    /sであることを特徴とする生分解性グリース組成物。
  2. 【請求項2】 前記エステル油の含有量を前記基油全体
    の10〜80質量%としたことを特徴とする請求項1に
    記載の生分解性グリース組成物。
  3. 【請求項3】 前記増ちょう剤を金属石けんとし、その
    含有量を生分解性グリース組成物全体の5〜35質量%
    としたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の
    生分解性グリース組成物。
  4. 【請求項4】 油性剤,極圧剤,及び酸化防止剤のうち
    の少なくとも1種からなる添加剤を、生分解性グリース
    組成物全体の0.5〜15質量%含有することを特徴と
    する請求項1〜3のいずれかに記載の生分解性グリース
    組成物。
  5. 【請求項5】 内方部材と、外方部材と、前記内方部材
    と前記外方部材との間に転動自在に配設された複数の転
    動体と、を備える転動装置において、前記内方部材と前
    記外方部材との間に形成され前記転動体が内設された空
    隙部内に、請求項1〜4のいずれかに記載の生分解性グ
    リース組成物を充填したことを特徴とする転動装置。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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WO2017047347A1 (ja) * 2015-09-15 2017-03-23 富士フイルム株式会社 グリース組成物
JP2018505281A (ja) * 2015-02-11 2018-02-22 シエル・インターナシヨネイル・リサーチ・マーチヤツピイ・ベー・ウイShell Internationale Research Maatschappij Besloten Vennootshap グリース組成物
WO2023286384A1 (ja) * 2021-07-12 2023-01-19 日本精工株式会社 転動装置
WO2024188995A1 (en) 2023-03-16 2024-09-19 Shell Internationale Research Maatschappij B.V. Biodegradable grease composition

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