JP2003148488A - 転動装置及びその製造方法 - Google Patents

転動装置及びその製造方法

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JP2003148488A
JP2003148488A JP2001343664A JP2001343664A JP2003148488A JP 2003148488 A JP2003148488 A JP 2003148488A JP 2001343664 A JP2001343664 A JP 2001343664A JP 2001343664 A JP2001343664 A JP 2001343664A JP 2003148488 A JP2003148488 A JP 2003148488A
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alloy steel
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Hiroyasu Yoshioka
宏泰 吉岡
Kenji Yamamura
賢二 山村
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NSK Ltd
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NSK Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 耐摩耗性・耐焼付性に優れた転動装置及びそ
の製造方法を提供することを課題としている。 【解決手段】 転がり軸受の転動部品である外輪1、内
輪2、転動体3を、いずれも重量%でCr:2.0%以
上7.0%以下、C:0.15%以上1.50%以下、
残部:Fe及び不可避不純物を含む合金鋼からなる母材
で形成するとともに、この合金鋼から構成された外輪
1、内輪2、転動体3におけるそれぞれ他部材との接触
面(外輪軌道面1a、内輪軌道面2a、転動体3の外周
面3a)を、ビッカース硬さをHv900以上、窒素濃
度を重量%で1.0%以上6.0%以下の拡散層からな
る窒化層4で被覆する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、自動車、建設機
械、農業機械、及びその他産業機械等に使用される転が
り軸受、ボールねじ装置、リニアガイド装置等の転動装
置及びその製造方法に関し、特に、耐摩耗性及び耐焼付
き性を向上させるために有効な技術に関する。
【0002】
【従来の技術】例えば、転動装置の一例として、転がり
軸受は、高面圧下で繰り返しせん断応力を受けるため、
そのせん断応力に耐える硬度を有し、転がり疲労寿命
(以下、寿命という)を確保する必要がある。このた
め、転がり軸受の転動部品である外輪、内輪、転動体の
形成材料として、例えば、SUJ2(日本工業規格)等
の軸受鋼や、SUS440C(日本工業規格)或いは1
3Crに代表されるマルテンサイト系等のステンレス鋼
や、SCR420(日本工業規格)或いはSCM420
(日本工業規格)等の肌焼鋼に相当する鋼材が使用され
ている。そして、軸受鋼には焼入れ・焼き戻しなどの熱
処理を、ステンレス鋼には焼入れ・サブゼロ・焼き戻し
などの熱処理を、肌焼鋼には浸炭又は浸炭窒化後に焼入
れ・焼き戻しなどの熱処理をそれぞれ施すことによっ
て、転動部品のロックウェル硬さをHRC58〜64と
し、寿命の確保を図っている。
【0003】しかしながら、近年、転がり軸受の支持す
る回転機械の高速化・高負荷化が進むにつれて、より過
酷な条件下で転がり軸受が使用される傾向が顕著になっ
てきている。この高負荷化・高速化によって、転がり軸
受を構成する転動部品の温度を著しく上昇させ、転動部
品の硬度を低下させてしまうため、転がり疲労特性及び
摩耗特性の劣化を引き起こしてしまうという不具合があ
った。
【0004】そこで、上述の鋼材から構成される転動部
品の表面に、硬度を確保するための改質層を形成する様
々な手段が提案されている。この改質層を形成する表面
改質法として、例えば、浸炭、浸炭窒化、ショットピー
ニング法、PVD(Physical Vapor D
eposition)法、 CVD(Chemical
Vapor Deposition)法などがある。
【0005】ここで、浸炭窒化や窒化などの表面改質法
は、過酷な潤滑条件下で使用される摺動部材の表面層
に、耐摩耗性や硬度が要求される場合に用いられている
が、その処理後に焼入れなどの熱処理が必要であるた
め、例えば、ビッカース硬度Hv900〜1000以上
の非常に高い硬度を有する改質層を形成することが困難
であるという不具合があった。
【0006】また、ショットピーニング法などの表面改
質法も、同様に、上述のような非常に高い硬度を有する
改質層を形成することは困難であるという不具合があっ
た。さらに、PVD法やCVD法などの表面改質法は、
摺動性に優れるものの、高いせん断応力がかかる転動部
品としては、母材と改質層との界面強度が不足するた
め、改質層の脱落・剥離などが生じてしまう恐れがあ
り、信頼性に欠けるという不具合があった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】このような不具合を解
消するために、耐摩耗性・耐焼付き性の向上及び母材と
改質層との剥離防止に有効な技術として、拡散性改質処
理である窒化処理の適用が検討されている。この窒化処
理によると、転動部品の表面には、二層構造を有する窒
化層が形成され、最表面にはζ相−Fe2 N、ε相−F
2-3 N、γ' 相−Fe4 N、CrN、Cr2 Nなどの
窒化物のみからなる化合物層が形成され、それよりも深
い部分には基地である窒素拡散層に上述の化合物層を構
成する窒化物が分散した拡散層が形成されるようにな
る。
【0008】ところが、表面に形成される化合物層は、
摺動性に優れている反面、拡散層と比較すると脆く、特
に過酷な条件下で使用される場合にはこの化合物層の剥
離等が懸念されている。そこで、特開平11−1246
53号公報において、二段階窒化を利用して、化合物層
の生成を抑制することで、硬化深度を大きくする手段が
開示されている。しかしながら、上記手段においては、
窒化層の表面硬さに関する考慮がなされておらず、耐摩
耗性や耐焼付き性が要求される転動部品として適用する
ことは困難であった。
【0009】本発明は、転動部品の構成材料と、その表
面に施す表面改質法とを検討することによって、耐摩耗
性・耐焼付性に優れた転動装置及びその製造方法を提供
することを課題としている。
【0010】
【課題を解決するための手段】このような課題を解決す
るために、請求項1に記載の発明は、外方部材と、内方
部材との間に、転動体が転動自在に具備されてなる転動
装置において、前記外方部材、前記内方部材、前記転動
体の少なくともいずれか一つが、重量%で、Cr:2.
0%以上7.0%以下、C:0.15%以上1.50%
以下、残部:Fe及び不可避不純物を含む合金鋼からな
る母材で形成されているとともに、前記合金鋼から形成
された前記外方部材、前記内方部材、或いは前記転動体
の表面が、ビッカース硬さがHv900以上、窒素濃度
が重量%で1.0%以上6.0%以下の窒化層で被覆さ
れているものとしている。
【0011】請求項2に記載の発明は、外方部材と、内
方部材と、転動体との少なくともいずれか一つを、重量
%で、Cr:2.0%以上7.0%以下、C:0.15
%以上1.50%以下、残部:Fe及び不可避不純物を
含む合金鋼からなる母材で形成するとともに、前記合金
鋼から形成された前記外方部材、前記内方部材、或いは
前記転動体の表面を、窒素濃度が重量%で1.0%以上
6.0%以下である窒化層で被覆するものとしている。
【0012】本発明における転動装置によれば、外方部
材と、内方部材と、転動体との少なくともいずれか一つ
を、Cr:2.0〜7.0重量%、C:0.15〜1.
50重量%、残部:Fe及び不可避不純物を含む合金鋼
を母材として形成されているとともに、合金鋼から形成
された外方部材、内方部材、或いは転動体の表面が、窒
素濃度が重量%で1.0%以上6.0%以下である窒化
層で被覆されていることによって、耐摩耗性、耐焼付き
性を向上させることが可能となる。
【0013】ここで、外方部材、内方部材、転動体の少
なくともいずれか一つが上述の合金鋼を母材として形成
されているのであれば、上記全てが合金鋼から形成され
ていても、いずれか二つが合金鋼から形成されていても
構わない。また、合金鋼から形成された外方部材、 内方
部材、 或いは転動体において、他部材との接触面のみを
窒化層で被覆するようにしても、全表面を被覆するよう
にしても構わない。
【0014】以下、本発明における各数値限定の臨界的
意義について説明する。 〔母材として使用する合金鋼中のCr含有率:2.0%
以上7.0%以下〕Cr (クロム)は、焼入れ性及び焼
き戻し軟化抵抗性を高めるとともに、炭化物を形成して
熱処理時の結晶粒粗大化を抑制し、耐摩耗性を向上させ
る作用を有する。また、窒化処理を行うと、Cr窒化物
が生成し表面硬度を向上させる効果が得られるが、Cr
が2.0%未満の場合、上記効果が十分に得られない。
一方、Crを7.0%を超えて多量に添加すると、窒化
処理を行う際にCr窒化物が優先的に生成され、芯部に
拡散する窒素量が減少してしまい、窒化層の厚さが減少
してしまう。以上の理由より、Crは、重量%で2.0
%以上7.0%以下とし、さらに安定した窒化層の厚み
を確保するために、4.0%以上7.0%以下とするの
が好ましい。 〔母材として使用する合金鋼中の中のC含有率:0.1
5%以上1.50%〕C(炭素)は、基地をマルテンサ
イト化し、焼入れ・焼き戻し後の硬さを向上させるとと
もに、例えばCr、V、Mo等の炭化物を形成するた
め、耐摩耗性・耐焼付き性を向上させることが可能とな
る。ここで、このCが0.15重量%未満となると、窒
化層の硬度が確保できていても、転動部品芯部の硬度が
不足して塑性変形を起こし、寿命の低下を引き起こして
しまう。一方、Cが1.50重量%を超えても、加工性
・靭性に乏しく、鋼中に巨大共晶炭化物が生成しやすく
なり、寿命の低下を引き起こしてしまう。以上の理由よ
り、Cは重量%で0.15%以上1.50%以下とする
ことが好ましく、さらに鋼中に巨大共晶炭化物が生成す
るのを抑制するために、完成品の炭化物長径を5μm以
下とすることが好ましい。 〔母材として使用する合金鋼中の不可避不純物〕不可避
不純物としては、例えば、酸化物系介在物が挙げられ
る。ここで、鋼中の酸素含有量が多くなると、疲労破壊
の起点になる粗大な酸化物系介在物の存在量が多くな
り、寿命の低下を引き起こしてしまう。また、この粗大
な酸化物系介在物が窒化層に存在してしまうと、窒化層
の早期剥離を引き起こしてしまう恐れもある。以上の理
由より、鋼中の酸素含有量は、15ppm以下とし、さ
らに好ましくは10ppm以下とする。 〔窒化層のビッカース硬さ:Hv900以上〕上述の合
金鋼から構成された外方部材、内方部材、或いは転動体
の表面における耐摩耗性及び耐焼付き性を向上させるた
めには、それらの表面を被覆する窒化層のビッカース硬
さをHv900以上、好ましくは、Hv1000以上と
する必要がある。 〔窒化層の窒素濃度:1.0%以上6.0%以下〕転動
部品を形成する合金鋼にCrが2.0重量%以上含まれ
ている場合、窒化層の窒素濃度を6.0重量%以下とす
ることで、窒化層の最表面に、非常に脆く、 剥離しやす
い窒化物のみの化合物層が析出しなくなる。このため、
転動部品の表面に被覆される窒化層の最表面には、基地
である窒素拡散相に窒化物が拡散した拡散層が析出する
ようになるが、この拡散層における最表面の窒素濃度が
6.0重量%を超える部分が存在すると、基地の窒素拡
散相の割合が減少してしまうため、靭性が低下してしま
う。一方、窒素濃度が低いと、窒化層表面が十分に硬化
せず、耐摩耗性及び耐焼付き性を向上させることができ
なくなってしまう。以上の理由より、窒素濃度を重量%
で1.0%以上6.0%以下、さらに好ましくは、3.
0%以上6.0%以下とする。なお、窒化処理により表
面に窒素濃度6.0重量%を超える化合物層や拡散層が
形成された場合には、例えば、研削或いはラップ加工の
取り代などで調整して除去加工するようにすればよい。
【0015】本発明における転動装置の製造方法によれ
ば、本発明の転動装置を容易に実現することが可能とな
る。なお、転動装置とは、例えば、転がり軸受、ボール
ねじ装置、リニアガイド装置等を指し、転動部品の相対
運動によって、回転或いは直線運動をする軸を支持する
ものである。
【0016】また、外方部材とは、例えば、転がり軸受
であれば外輪を、ボールねじ装置であればナットを、リ
ニアガイド装置であればスライダをそれぞれ指す。ま
た、内方部材とは、例えば、転がり軸受であれば内輪
を、ボールねじ装置であればねじ軸を、リニアガイド装
置であれば案内レールをそれぞれ指す。さらに、転動体
とは、例えば、転がり軸受であればころ・玉などを、ボ
ールねじ装置であればボールを、リニアガイド装置であ
ればころ・玉などをそれぞれ指す。
【0017】
【発明の実施の形態】以下、本発明の一実施の形態につ
いて、図面を参照して説明する。図1は、本発明におけ
る転動装置の一例として、転がり軸受を示す断面図であ
る。本実施形態における転がり軸受10は、図1に示す
ように、外輪1と、内輪2と、外輪1の内周に形成され
る外輪軌道面1a及び内輪2の外周に形成された内輪軌
道面2aとの間に転動自在に配置された転動体3と、か
ら構成されている。
【0018】この外輪1、内輪2、転動体3は、いずれ
も重量%でCrを2.0%以上7.0%以下、Cを0.
15%以上1.50%以下、残部をFe及び不可避不純
物を含む合金鋼からなる母材で形成されているととも
に、この合金鋼から形成された外輪1、内輪2、転動体
3における他部材との接触面(外輪軌道面1a、内輪軌
道面2a、転動体3の外周面3a)は、ビッカース硬さ
Hv900以上、窒素濃度が重量%で1.0%以上6.
0%以下の拡散層からなる窒化層4で被覆されている。
ここで、合金鋼からなる母材で形成された外輪1、内輪
2、転動体3は、それぞれ芯部及び表面硬さがHv58
0以上、含有される炭化物の長径が5μm以下、鋼中酸
素量が15ppm、好ましくは10ppm以下となるよ
うに調整されている。
【0019】ここで、合金鋼にCrを含むことによっ
て、焼入れ性及び焼き戻し軟化抵抗性を高めるととも
に、炭化物を形成して熱処理時の結晶粒粗大化を抑制
し、耐摩耗性を向上させることが可能となる。このCr
を、重量%で2.0%以上7.0%以下、さらに好まし
くは4.0%以上7.0%以下とすることによって、外
輪1、内輪2、転動体3における表面硬度を向上させる
とともに、外輪1、内輪2、転動体3のそれぞれ他部材
との接触面を被覆する窒化層4の厚さを確保することが
可能となる。
【0020】また、合金鋼にCを含むことによって、基
地をマルテンサイト化し、焼入れ・焼き戻し後の硬さを
向上させるとともに、例えばCr、V、Mo等の炭化物
を形成するため、耐摩耗性・耐焼付き性を向上させるこ
とが可能となる。このCを、重量%で0.15%以上
1.50%以下とすることによって、外輪1、内輪2、
転動体3における芯部硬度を確保することができるとと
もに、寿命の低下を抑制することが可能となる。
【0021】さらに、不可避不純物として、疲労破壊の
起点となる酸化物系介在物が挙げられる。鋼中の酸素含
有量を15ppm以下、好ましくは、10ppm以下と
することで、転動寿命の低下及び窒化層4の早期剥離を
抑制することが可能となる。さらに、合金鋼には、通常
製鋼上不可欠な元素として、例えば、製鋼時の脱酸材と
して作用するSi、Mnなどが含まれていてもよい。ま
た、鋼中の酸化物を除去する作用を有するAlなどが含
まれていてもよい。このAlを0.3重量%以下添加す
ることで、表面硬度を高くするため耐摩耗性を向上させ
るとともに、靭性や転動寿命を確保することが可能とな
る。また、コストや加工性に支障がない限り、窒化層4
の硬度を向上させる機能を有するMoやVなどを添加す
るようにしてもよい。
【0022】次に、本実施形態における転がり軸受10
の製造方法について説明する。まず、転がり軸受10の
転動部品である外輪1、内輪2、転動体3を、いずれも
重量%でCrを2.0%以上7.0%以下、Cを0.1
5%以上1.50%以下、残部をFe及び不可避不純物
を含む合金鋼からなる母材で形成しておく。ここで、上
述の合金鋼から形成された外輪1、内輪2には、棒材又
は管材に熱間鍛造及び旋削を行った後、それぞれ所望形
状に加工する。同様に上述の合金鋼から形成された転動
体3には、冷間引き抜きした線材をヘッダーで冷間加工
後バリ取りを行い、それぞれ所望形状に加工する。
【0023】次いで、外輪1、内輪2、転動体3に、焼
入れ・焼戻し等の熱処理を施す。なお、焼戻しの前に、
サブゼロを行うようにしてもよい。次いで、熱処理を施
した外輪1、 内輪2、転動体3に、芯部硬さがHV58
0以上となる条件を満たすように、窒化処理を施す。こ
の窒化処理はいずれの方法を適用してもよく、例えば、
ガス窒化、塩浴窒化、イオン窒化等が挙げられる。
【0024】なお、本実施形態においては、窒化処理の
一例として、比較的低温で処理が可能なNv窒化プロセ
ス(エア・ウォータ株式会社製)を適用した。このNv
窒化プロセスは、まず、例えばNF3 などのフッ素系ガ
スを用いて、250〜400℃で外輪軌道面1a、内輪
軌道面2a、転動体3の外周面3aにフッ化処理を施し
た後、50%N2 −50%NH3 の混合ガス雰囲気中、
400〜480℃に加熱することで、それぞれ外輪軌道
面1a、 内輪軌道面2a、転動体3の外周面3aに窒素
濃度が重量%で1.0%以上6.0%以下の窒化層4が
形成されるように、窒化処理を行う。
【0025】ここで、フッ化処理を行うことで、外輪軌
道面1a、内輪軌道面2a、転動体3の外周面3aから
窒化反応を阻害するCr酸化物を除去し、転動体3表面
を活性化するフッ化層を形成するため、その後の窒化処
理が400℃程度の低温で行われても、非常に均一な窒
化層4を形成することが可能となる。また、このフッ化
処理が比較的低温で行われるため、窒化処理による精度
劣化が抑制され、仕上げ加工を容易に行うことが可能と
なる。
【0026】このとき、上記窒化処理を窒素濃度が6.
0重量%以下となるように行ったことによって、外輪軌
道面1a、内輪軌道面2a、転動体3の外周面3aに
は、基地である窒素拡散層に、ζ相−Fe2 N、ε相−
Fe2-3 N、γ' 相−Fe4 N、CrN、Cr2 Nなど
の窒化物が分散した拡散層からなる窒化層4が形成され
る。ここで、この窒化層4の最表面には、図2に示すよ
うに、6.0重量%を超える窒素濃度を有する過剰窒化
層4aが析出する場合がある。
【0027】この過剰窒化層4aが存在すると、基地の
窒素拡散相の割合が減少するため、靭性が低下する。そ
こで、この過剰窒化層4aが析出した場合には、その過
剰窒化層4a部分を研削或いはラップ加工によって除去
することで、ビッカース硬さHv900以上、窒素濃度
を重量%で1.0%以上6.0%以下の拡散層からなる
窒化層4で被覆された転がり軸受10を完成させる。
【0028】このような構成を有する転がり軸受10に
おいて、外輪1、内輪2、転動体3を、いずれも重量%
でCrを2.0%以上7.0%以下、Cを0.15%以
上1.50%以下、残部をFe及び不可避不純物を含む
合金鋼からなる母材で形成するとともに、この合金鋼か
ら構成された外輪1、内輪2、転動体3におけるそれぞ
れ他部材との接触面(外輪軌道面1a、内輪軌道面2
a、転動体3の外周面3a)を、ビッカース硬さをHv
900以上、窒素濃度を重量%で1.0%以上6.0%
以下の拡散層からなる窒化層4で被覆することによっ
て、耐摩耗性及び耐焼付き性に優れ、特に、高面圧や油
膜切れが発生する過酷な潤滑条件下で使用可能な転がり
軸受10を提供することが可能となる。
【0029】特に、外輪1、内輪2、転動体3を2.0
重量%以上のCrを含んで構成するとともに、重量%で
1.0%以上6.0%以下の窒素濃度を有する窒化層4
を形成することによって、窒化層4の最表面に窒化物の
みからなる化合物層が析出しなくなる。このため、過酷
な条件下における化合物層の剥離を懸念する必要がなく
なり、窒化層4の靭性を確保することが可能となる。ま
た、最表面に析出する拡散層からなる窒化層4から、
6.0重量%以上の窒素濃度を有する過剰窒化層4aを
除去することによって、さらなる窒化層4の靭性を向上
させることが可能となる。
【0030】さらに、上述の合金鋼から形成された外輪
1、内輪2、転動体3におけるそれぞれ他部材との接触
面に形成される窒化層4を、ビッカース硬さHv900
以上、好ましくは、Hv1000以上とすることによっ
て、耐摩耗性及び耐焼付き性を向上させることが可能と
なる。ここで、図3に示すように、予め所定の窒化条件
において、窒化層4の表面からの距離と含まれる窒素濃
度を把握しておくようにすると、窒化層4の表面におけ
る窒素濃度を重量%で1.0%以上6.0%以下となる
ように容易且つ確実に調整することが可能となる。
【0031】次に、本実施形態における転がり軸受10
における耐摩耗性及び耐焼付き性の評価に付いて説明す
る。表1は、それぞれの試験に使用した転がり軸受構成
部材NO.A〜M及びこの構成部材に施した熱処理条件
(焼入れ温度)について示す。なお、サブゼロは、いず
れも−80℃×1hrであり、焼戻しは、いずれも60
℃の焼入れ油中において160〜500℃で行った。ま
た、全ての構成部材における他の部材との接触面には、
上述の実施例と同様に、窒化処理が施された後、表面粗
さが0.1μmRa以下となるように仕上げ加工がなさ
れている。
【0032】
【表1】
【0033】次いで、表1に示した転がり軸受構成部材
について、耐摩耗性の評価を表2に示す。ここで、耐摩
耗性の評価は、図4に示す2円筒摩耗試験機20を用
い、上下に対向する一対の円筒に試験軸21を装着し、
上から荷重Pを負荷させ互いに接触状態で低温回転させ
ることで、上下の試験軸21の摩耗量を測定した。ここ
で、高面圧下における耐摩耗性を評価するために、潤滑
油を鉱油とし、荷重100Kgf、回転数10rpm、
すべり率10%、室温の条件で試験を行った。
【0034】なお、表2中の表面硬度Hvは、マイクロ
ビッカース試験機(図示しない)で荷重100gの条件
下で測定した。また、表面窒素濃度wt%は、この耐摩
耗性の評価を行った試験軸11と同一ロットの他の試験
片を用い、その試験片断面図をEPMA(electr
on probe microanalyser)で分
析した最表面の測定値である。さらに、摩耗量は、上下
の円筒の平均値を求め、それぞれの試験結果はSUJ2
ずぶ焼きを1とした場合の比で示した。
【0035】
【表2】
【0036】表2における実施例1〜9は、その構成部
材の表面窒素濃度が重量%で1.0%以上6.0%以下
の範囲内となるように仕上げ加工が施されている。ま
た、比較例1〜3は、実施例と比較して、Cr量が7.
0重量%を超えるものとしている。さらに、比較例4及
び5は、実施例と比較して、表面窒素濃度が6.0重量
%を超えるものとしている。さらに、比較例6は、実施
例と比較して、表面窒素濃度が1.0重量%未満となる
ようにしたものである。さらに、比較例7は、実施例と
比較して、表面窒素濃度が1.0重量%未満となるよう
にするとともに、Cr含有量が2.0重量%未満となる
ようにしたものである。
【0037】表2に示すように、実施例1〜9は、転が
り軸受転動部品のCr含有量が重量%で2.0%以上
7.0%以下とするとともに、表面硬度Hv900以
上、表面窒素濃度が重量%で1.0%以上6.0%以下
であるため、優れた耐摩耗性を確認することができた。
ところが、比較例1〜3は、いずれもCr含有量が7.
0重量%を超えているが、Cr含有量が重量%で1.0
%以上7.0%以下の範囲内である実施例1〜9と略同
様の値であり、Crを必要以上に添加しても耐摩耗性は
飽和していることが分かる。
【0038】また、比較例4〜7は、表面窒素濃度が重
量%で1.0%以上6.0%以下の範囲外であるため、
優れた耐摩耗性を確認することができなかった。特に、
比較例6は、実施例6と比較して表面窒素濃度が1.0
重量%未満になっているため、表面硬度がHv900以
上に達しておらず、優れた耐摩耗性を確認することがで
きなかった。同様に、比較例7は、Cr含有量が2.0
重量%未満の構成材料に窒化処理を施しているため、窒
化処理を施さないSUJ2ずぶ焼と比べて耐摩耗性がや
や向上するものの、表面硬度がHv900以上に達して
おらず、優れた耐摩耗性を確認することができなかっ
た。
【0039】次いで、表1に示した転がり軸受構成部材
について、耐焼き付き性の評価を表3に示す。ここで、
耐焼付き性の評価は、図5に示す4球式焼き付き限界試
験機30を用い、固定側としたSUJ2ボール31の上
面に、回転側として試験軸32を設置し、上から荷重P
を負荷させ互いに接触状態で低温回転させることで、焼
付き荷重を測定した。ここで、油膜が形成されにくい条
件下における耐焼付き性を評価するために、油浴潤滑下
(スピンドル油#10)、回転数4000rpm、室温
の条件下で試験を行った。
【0040】
【表3】
【0041】表3における実施例1〜9は、その構成部
材の表面窒素濃度が重量%で1.0%以上6.0%以下
の範囲内となるように仕上げ加工が施されている。ま
た、比較例1及び2は、実施例と比較して、Cr含有量
が7.0重量%を超えるものとしている。さらに、比較
例3は、実施例と比較して、表面窒素濃度が1.0重量
%未満となるようにしたものである。さらに、比較例4
は、Cr含有量が2.0重量%未満となるようにしたも
のである。
【0042】表3に示すように、実施例1〜9は、転が
り軸受転動部品のCr含有量が重量%で2.0%以上
7.0%以下とするとともに、表面硬度Hv900以
上、表面窒素濃度が重量%で1.0以上6.0%以下で
あるため、優れた耐焼付き性を確認することができた。
ところが、比較例1〜2は、いずれもCr含有量が7.
0重量%を超えているとともに、表面硬度がHv900
以上の値となっているが、Cr含有量が重量%で1.0
%以上6.0%以下の範囲内である実施例1〜9と略同
様の値であり、Crを必要以上に添加しても耐焼付き性
は飽和していることが分かる。
【0043】また、比較例3は、Cr含有量が2.0重
量%以上であるが、表面窒素濃度が1.0重量%未満と
なっているため、表面硬度がHv900以上に達してお
らず、優れた耐焼付き性を確認することができなかっ
た。同様に、比較例4は、Cr含有量が2.0重量%未
満であるため、表面硬度がHv900以上に達しておら
ず、優れた耐焼付き性を確認することができなかった。
【0044】表2及び表3に示す結果より、転がり軸受
転動部品は、Cr含有量を重量%で2.0%以上7.0
%以下、C含有量を重量%で0.15%以上1.50%
以下とするとともに、その転動部品の表面をビッカース
硬さHv900以上、窒素濃度を重量%で1.0%以上
6.0%以下の拡散層からなる窒化層4で被覆すること
によって、優れた耐摩耗性・耐焼付き性を有するように
なることが判明した。
【0045】ここで、本実施形態において、転動装置の
一実施例として転がり軸受10について説明したが、こ
れに限らず、例えば、ボールねじ装置やリニアガイド装
置などいずれの転動装置に適用することが可能である。
また、本実施形態において、外輪1、内輪2、転動体3
を全て上述の合金鋼から構成したが、少なくともいずれ
か一つを上述の合金鋼を母材として形成するのであれば
これに限らず、例えば、いずれか二つを合金鋼から形成
するようにしてもよい。
【0046】さらに、本実施形態において、合金鋼から
構成した外輪1、内輪2、転動体3におけるそれぞれ他
部材との接触面(外輪軌道面1a、内輪軌道面2a、転
動体3の外周面3a)のみを、窒化層4で被覆するよう
にしたが、これに限らず、合金鋼から構成された転動部
品の全表面を窒化層4で被覆するようにしても構わな
い。
【0047】なお、本実施形態における転がり軸受10
は、請求項における転動装置に対応し、同様に、外輪1
は外方部材に、内輪2は内方部材にそれぞれ対応してい
る。
【0048】
【発明の効果】以上説明したように、本発明における転
動装置によれば、外方部材、内方部材、転動体の少なく
ともいずれか一つを、Cr:2.0〜7.0重量%、
C:0.15〜1.50重量%、残部:Fe及び不可避
不純物並びに製鋼上不可欠元素からなる合金鋼を母材と
して構成するとともに、この合金鋼から構成された外方
部材、内方部材、転動体の表面を、ビッカース硬さHv
900以上、窒素濃度1.0〜6.0重量%の拡散層か
らなる窒化層で被覆したことによって、耐摩耗性及び耐
焼付き性に優れ、特に、高面圧や油膜切れが発生する過
酷な潤滑条件下で使用可能な転がり軸受を提供すること
が可能となる。
【0049】本発明における転動装置の製造方法によれ
ば、本発明における転動装置を容易に実現することが可
能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明における転動装置の一例として、転がり
軸受を示す断面図である。
【図2】図1における転がり軸受の転動部品のうち、転
がり軸受を組み立てる前工程の外輪と内輪を示す断面図
である。
【図3】窒化層を構成する化合物層と拡散層とにおける
窒素濃度分布を説明する図である。
【図4】2円筒摩耗試験機を示し、(a)は平面図、
(b)は側面図である。
【図5】4球式焼付き限界試験機を示す説明図である。
【符号の説明】
1 外輪(外方部材) 1a 外輪軌道 2 内輪(内方部材) 2a 内輪軌道 3 転動体 4 窒化層 4a 過剰窒化層 10 転がり軸受(転動装置) 20 2円筒摩耗試験機 21 試験軸 30 4球式焼付き限界試験機 31 SUJ2ボール 32 試験軸 P 荷重
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) C22C 38/18 C22C 38/18 F16C 33/34 F16C 33/34 33/64 33/64 Fターム(参考) 3J101 AA02 AA42 AA52 AA62 BA01 BA10 BA51 BA53 BA54 BA70 DA02 EA03 EA78 FA31 FA33 GA01 GA31 GA51 4K042 AA22 BA03 CA06 CA07 DA06

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 外方部材と、内方部材との間に、転動体
    が転動自在に具備されてなる転動装置において、 前記外方部材、前記内方部材、前記転動体の少なくとも
    いずれか一つが、重量%で、Cr:2.0%以上7.0
    %以下、C:0.15%以上1.50%以下、残部:F
    e及び不可避不純物を含む合金鋼からなる母材で形成さ
    れているとともに、 前記合金鋼から形成された前記外方部材、前記内方部
    材、或いは前記転動体の表面が、ビッカース硬さがHv
    900以上、窒素濃度が重量%で1.0%以上6.0%
    以下の窒化層で被覆されていることを特徴とする転動装
    置。
  2. 【請求項2】 外方部材と、内方部材と、転動体との少
    なくともいずれか一つを、重量%で、Cr:2.0%以
    上7.0%以下、C:0.15%以上1.50%以下、
    残部:Fe及び不可避不純物を含む合金鋼からなる母材
    で形成するとともに、 前記合金鋼から形成された前記外方部材、前記内方部
    材、或いは前記転動体の表面を、窒素濃度が重量%で
    1.0%以上6.0%以下である窒化層で被覆すること
    を特徴とする転動装置の製造方法。
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