JP2003145306A - 耐クレータ摩耗性に優れる物理蒸着硬質皮膜被覆工具 - Google Patents
耐クレータ摩耗性に優れる物理蒸着硬質皮膜被覆工具Info
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Abstract
酸化性に優れた硬質皮膜と、潤滑性を有し被削材との化
学反応を抑制し、耐クレーター摩耗性に優れた硬質層と
複合化した耐クレータ摩耗性に優れる多層硬質皮膜被覆
工具を提供する。 【構成】基体表面に硬質皮膜を多層に被覆した多層硬質
皮膜被覆工具において、耐酸化性に優れるTiAl系硬
質皮膜と皮膜中に硼素の微細窒化物粒子が分散された、
高硬度でありかつ潤滑性を有し加工物との化学反応を抑
制し耐クレーター摩耗性が優れるTi系硬質皮膜を夫々
1層以上多層に被覆された多層硬質皮膜被覆工具。
Description
削加工に使用される硬質皮膜被覆工具において、特に高
速切削、乾式切削に適用される耐クレーター摩耗性に優
れる物理蒸着硬質皮膜被覆工具に関する。
の切削においては、特開昭62−56565号公報、特
開平2−194159号公報に代表されるTiAlN皮
膜が開発され切削工具に適用されている。TiAlN皮
膜は、TiN、TiCNに比べ耐酸化性が優れるため、
刃先が高温に達する調質鋼の切削においては、切削工具
の性能を著しく向上させるものである。
率、高精度化の要求を満たす為、切削速度の高速化に加
え、環境問題及び加工コスト低減の観点から乾式での切
削加工が重要視されている。こうような切削環境下にお
いては、切削工具表面に被覆される耐摩耗皮膜と切削さ
れる材料との間に化学反応が発生し、工具寿命が逃げ面
のこすり摩耗だけではなく、すくい面のクレーター摩耗
により強く支配される傾向が強くなってきた。従来まで
の前記TiN、TiCN及びTiAlN皮膜はこのよう
な苛酷な切削環境下においては、切削温度の上昇に伴い
被加工物との化学反応に起因したクレーター摩耗の増加
により、十分な切削寿命を得られないのが実状である。
特に比較的連続切削である旋盤加工や高速高送りのフラ
イス加工においてPVD被覆を適用する場合は、このク
レーター摩耗を抑制することが、極めて重要なことであ
る。
1−502775号公報に示される二硫化モリブデン
や、特開平7−164211号公報に示される炭化タン
グステン及びダイヤモンドライクカーボンからなる潤滑
性皮膜を耐摩耗性を有する硬質皮膜を最表面に積層し、
切削温度上昇抑制に基づく、皮膜と被加工物間の拡散現
象を抑制しようとする切削工具が開発されているが、い
ずれも下地硬質皮膜との密着性が悪い上に皮膜そのもの
が非常に脆い為、これら潤滑皮膜は切削時に容易に剥離
または破壊などを発生し、上記切削環境下においては何
ら効果を発揮するには至っていない。また特開平11−
156992号公報に示される、Cr系潤滑皮膜を被覆
した工具が提案されているが、Cr系皮膜は硬度そのも
のが低く耐摩耗性が極めて悪く、耐クレーター摩耗性を
改善するには至っていない。
に鑑み、切削加工の乾式化、高速化に対応可能な、即
ち、従来の耐酸化性及び耐摩耗性を損なわないために、
これら特性に優れるTiAlを主成分とする硬質皮膜
と、被削材との化学反応が少なく、しかも耐クレーター
摩耗性が著しく改善されたTiを主成分とする被削材と
皮膜との拡散を抑制する層とを複合化し、耐クレーター
摩耗性に優れる物理蒸着硬質皮膜被覆工具を提供するこ
とを課題とする。
を主成分とする硬質皮膜とTiを主成分とする硬質層を
組み合わせた硬質皮膜被覆工具において、Tiを主成分
とする硬質層中にBN相を介在させることにより、Ti
を主成分とする硬質層の硬度を上昇せしめるとともに、
BN相が有する潤滑性によりTiを主成分とする硬質層
の潤滑性を改善し、結果耐クレーター摩耗性を著しく改
善させる事に成功した。乾式、高速切削加工において拡
散現象が少なく、耐クレーター摩耗性に優れ切削工具と
しての寿命が極めて良好となることを確認し本発明に到
達した。
添加成分の効果を鋭意研究した結果、硼素の添加と被覆
条件の最適化により、TiNの耐クレーター摩耗性を著
しく改善できる知見を得るに至った。原因を調査した結
果、TiN皮膜内部に硼素の窒化物が極めて微細に分散
しており、TiN皮膜の硬度がビッカースで2200か
ら2800に著しく上昇していること及び本来潤滑性が
優れる硼素の窒化物の効果によりTiNの摩擦係数が
0.8から0.4に激減していることが確認された。す
なわち、セラミック系の硬質皮膜を分散強化せしめると
同時に分散相のもつ潤滑性をも硬質皮膜に付与すること
が可能であるという驚くべき事実とその方法を発見し
た。
体バイアス300V、反応圧0.5PaでTiBN皮膜
を被覆した時の皮膜のESCA解析結果である。図1の
TiとNとの結合エネルギ回折ピークと、図2のBとN
との結合エネルギー回折ピークが確認され、皮膜はTi
N相とBN相から構成されることが確認された。この場
合、BN相はTEM観察結果によれば数ナノから数十ナ
ノの大きさを有するナノ結晶であり、格子歪の発生に起
因するTiN層の大幅な硬度上昇が確認された。耐クレ
ータ摩耗性はTiNに比べ著しく改善される結果であっ
た。これはBN相自体が優れた潤滑性を有していること
に起因すると考えられる。また硼素添加においては被覆
条件においてイオンエネルギーが小さい場合にはナノB
N相の出現は認められなかった。従ってナノ結晶を介在
させ、高硬度化を達成するためには、被覆条件の最適化
も重要であるといえる。
TiN層単層では所望の結果を得ることは出来ない。そ
の理由は、高速切削や乾式切削においては、皮膜はクレ
ーター摩耗による摩滅だけではなく、酸化による摩滅が
発生する。TiNは450℃を超えると酸化し、粉状の
TiOに変態してしまい、耐摩耗性を維持することがで
きない。従って上記微細粒子を分散したTiN層単層で
は酸化発生により摩滅を伴う工具境界摩耗が発生してし
まう場合がある。従って、この現象を抑制するために、
耐酸化性の優れるTiAl系硬質皮膜との多層構造等の
併用が必要不可欠である。TiAlN系の有する高耐酸
化性により、皮膜は酸化から保護され工具として、極め
て長寿命を達成する。
性の優れる皮膜を被覆する方がより好ましく、母材側に
耐酸化性皮膜、表面側にTiB(C、N、O)を被覆す
ることが望ましいが必ずしも限定されるものではない。
また層数そのものも特に限定されるものではない。
に改善した結果、本発明による多層硬質皮膜被覆工具
は、高速、高送りミーリング切削加工に使用される工具
に対しても効果的であるが、更に、従来アルミナ皮膜を
有するCVD被覆工具が使用されていた旋盤加工分野へ
も適用が可能となった。旋削加工は比較的連続切削であ
るため特にクレーター摩耗に工具寿命が支配される場合
が多い。本発明においても皮膜の膜厚が薄いとCVD皮
膜に耐クレーター摩耗性が劣る結果になるが、クレータ
ー摩耗が発生するスクイ面において、3ミクロン以上被
覆することにより、CVD皮膜に匹敵する耐クレーター
摩耗性を持たせることが可能であることを確認した。更
に、工具の耐欠損性においては、本発明はPVD法によ
るものであり、皮膜には圧縮の応力が残留し、クラック
の発生が少なく、皮膜に引っ張りの残留応力が存在する
CVD被覆工具に比べ10倍以上の圧倒的に優れる耐欠
損性を有する結果となった。皮膜の膜厚は15μを越え
ると剥離が発生する場合もあり、皮膜の厚さは3μから
15μであることがより好ましいといえる。
AlN系皮膜に第3成分を添加することが有効であるこ
とを見出した。これは第3成分がTiAlN皮膜を固溶
強化することに起因するものである。
ードはM種もしくはP種超硬合金が使用されるのが一般
的であった。その理由は皮膜が摩耗し、母材が露出した
場合にクレーター摩耗がK種では進行し易いからであ
る。本発明によれば、皮膜が十分に耐クレーター摩耗性
を有するため、母材にK種もしくは微粒超硬合金を使用
しても十分に満足する結果となる。そのため、K種の利
点である耐熱クラック性が要求されるような切削条件化
においては、本発明によりK種を使用した場合のほう
が、長寿命である場合がある。また微粒種の利点として
耐チッピング性に優れることが挙げられるが、シャープ
エッジを有するエンドミルやインサートにおいて、クレ
ーター摩耗を心配することなく微粒超硬合金を用いるこ
とも本発明によれば可能である。
硼素含有量はTiに対し0.5原子%未満では潤滑性改
善効果が少なく、また10原子%を超えて含有すると、
皮膜の靭性が劣化するため、0.5%以上10%以下と
した。
法については、特に限定されるものではないが、被覆母
材への熱影響、工具の疲労強度、皮膜の密着性等を考慮
した場合、アーク放電方式イオンプレーティング物理蒸
着法であることが望ましい。以下、本発明を実施例に基
づいて説明する。
属成分の蒸発源である各種合金製ターゲット、ならびに
反応ガスである窒素ガス、酸素ガス、メタンガスから目
的の皮膜が得られるものを選択し、TiAlN系皮膜に
おいては、被覆基体温度400℃、反応ガス圧力1.0
Pa、基体印可バイアス電圧150Vの条件下にて、被
覆基体であるミーリング用超硬インサートに表1に示す
各皮膜を被覆した工具を作成した。比較例においてはT
iAl系以外の皮膜も同一条件で被覆した。本発明例に
おけるTi系硬質層の被覆条件は同一温度において、バ
イアス電位300V反応ガス圧力0.5Paとし、BN
結合を有する相を介在させた。硼素はTiターゲットに
必要量添加することにより皮膜に含有させた。インサー
トに使用した超硬合金はJIS−P40グレード超硬合
金である
削試験を行った。工具寿命は本切削条件下ではクレータ
ー摩耗が支配するため、クレーター摩耗により工具が切
削不能となった時の切削長とした。切削諸元を次に示
す。一刃あたりの送りが1mmを越えるようなフライス
加工では切削温度が局部的に上昇し、クレーター摩耗が
発生する傾向にある。
1604MOTNである丸駒インサート、巾100mm
×長さ250mmの面取り加工、被削材SKD61(硬
さHRC45)、切り込み1.0mm、切削速度200
m/min、送り1.5mm/刃、乾式切削とした。欠
損に至る切削時間を表1に併記する。尚、表1に記載の
膜厚はスクイ面の膜厚を示す。
い寿命改善が認められる。これらは比較例が全て、クレ
ーター摩耗により短寿命であったことより、耐クレータ
ー摩耗性の改善によるところが大きい。
1記載の本発明例及び比較例の皮膜を旋削用サーメット
インサートに被覆し、旋削加工を実施した。用いたサー
メット合金の組成は重量%で60TiCN−10WC−
10TaC−5Mo2C―5Ni−10Coである。
切削速度220m/分、切り込み1mm、送り0.15
mm/rev、水溶性である。いずれもクレーター摩耗
の進行から発熱が大きくなり、逃げ面摩耗が増大する傾
向にある。逃げ面摩耗値が0.1mmになった時点を寿
命と判定した。寿命までの切削時間を表2に記載する。
インサート形状はTNGG110302Rである。
lの一部を他成分で置換したターゲットを用い実施例1
と同一条件にて本発明例を作成した。実施例1と同一切
削評価を実施し、その結果を表3に併記する。
系硬質皮膜に第3の成分を添加することにより、より一
層の寿命向上が可能である。これは第3成分の添加によ
りTiAlN系皮膜が更に固溶強化されたり、耐酸化性
が向上することに起因するものである。
て、母材をK30相当のK種母材を用い、本発明例を試
作し、次に示す切削条件において切削評価を実施した。
本条件は切削の衝撃が強く、熱クラックが発生し易い条
件である。被削材は50mmx250mm、切削速度2
50m/分、切り込み2mm、送り0.3mm/刃、乾
式である。工具寿命はクレーター摩耗進行に伴う発熱と
切削衝撃による熱クラックからの欠損である。得られた
結果を表4に示す。
例はいずれも比較例に対し長寿命であり、また本発明例
の中においては、K種母材がこのような用途においては
より好ましいことが明らかである。
工具は、従来の被覆工具に比べ耐クレータ摩耗性に優
れ、乾式高速切削加工において格段に長い工具寿命が得
られ、切削加工における生産性の向上、コスト低減、環
境改善に極めて有効である。
析結果で、TiとNとの結合エネルギ回折ピークを示
す。
で、BとNとの結合エネルギー回折ピークを示す。
Claims (5)
- 【請求項1】基体表面に(Ti1−xBx)からなる金
属成分と、C、N、Oから選択される1種以上の元素と
から構成される硬質層とTiAlを主成分とし、C、
N、Oから選択される1種以上の元素とから構成される
硬質層を2種以上多層に被覆した物理蒸着被覆工具にお
いて、該(Ti1−xBx)のxは0.005≦x≦
0.1であり、且つ、該硬質層内に硼素の窒化物相を介
在させたことを特徴とする耐クレーター摩耗性に優れる
物理蒸着硬質皮膜被覆工具。 - 【請求項2】請求項1記載の物理蒸着硬質皮膜被覆工具
において、該TiとAlを主成分とする層が基体直上に
被覆されていることを特徴とする耐クレーター摩耗性に
優れる物理蒸着硬質皮膜被覆工具。 - 【請求項3】請求項1乃至2記載の物理蒸着硬質皮膜被
覆工具において、該TiAlを主成分とする層のAlの
一部を4a、5a、6a族金属及びSiの一種以上の成
分で置換したことを特徴とする耐クレーター摩耗性に優
れる物理蒸着硬質皮膜被覆工具。 - 【請求項4】請求項1乃至3記載の物理蒸着硬質皮膜被
覆工具において、該基体が超硬合金もしくはサーメット
合金インサートであり、皮膜の総厚さがスクイ面におい
て3μから15μであることを特徴とする耐クレーター
摩耗性に優れる物理蒸着硬質皮膜被覆工具。 - 【請求項5】請求項1乃至3記載の物理蒸着硬質皮膜被
覆工具において、基体がK種超硬合金もしくは平均WC
粒径が0.8μ以下である微粒超硬合金であることを特
徴とする耐クレーター摩耗性に優れる物理蒸着硬質皮膜
被覆工具。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2001342095A JP3616049B2 (ja) | 2001-11-07 | 2001-11-07 | 耐クレータ摩耗性に優れる物理蒸着硬質皮膜被覆工具 |
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JP2003145306A true JP2003145306A (ja) | 2003-05-20 |
JP3616049B2 JP3616049B2 (ja) | 2005-02-02 |
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Country Status (1)
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JP (1) | JP3616049B2 (ja) |
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2010228032A (ja) * | 2009-03-26 | 2010-10-14 | Mitsubishi Materials Corp | 表面被覆立方晶窒化ほう素基超高圧焼結材料製切削工具 |
JP2010284788A (ja) * | 2009-06-15 | 2010-12-24 | Hitachi Tool Engineering Ltd | 硬質皮膜被覆工具 |
-
2001
- 2001-11-07 JP JP2001342095A patent/JP3616049B2/ja not_active Expired - Lifetime
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP2010228032A (ja) * | 2009-03-26 | 2010-10-14 | Mitsubishi Materials Corp | 表面被覆立方晶窒化ほう素基超高圧焼結材料製切削工具 |
JP2010284788A (ja) * | 2009-06-15 | 2010-12-24 | Hitachi Tool Engineering Ltd | 硬質皮膜被覆工具 |
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