JP2003144867A - 膜表面に触媒層を有する混合伝導性酸素分離膜およびそれを用いた酸素製造方法 - Google Patents

膜表面に触媒層を有する混合伝導性酸素分離膜およびそれを用いた酸素製造方法

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Kazuya Yabuta
和哉 藪田
Yasutake Teraoka
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 酸素透過速度が向上された混合伝導性酸素分
離膜を提供する。 【解決手段】 酸素を含有する原料ガスから酸素を分離
する混合伝導性酸素分離膜であって、混合伝導性膜1
と、前記混合伝導性膜の原料ガス側の膜表面に設けられ
た酸素解離性触媒含有層2とを備える。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、膜分離法による空
気からの高純度酸素の大量製造に際し、酸素透過速度を
大幅に改善した酸素分離膜およびそれを用いた酸素製造
方法に関する。
【0002】
【従来の技術】これまで、空気等の酸素混合気体から酸
素を分離精製するシステムとしては、主に深冷分離法、
PSA法、膜分離法に基づくシステムが用いられてき
た。特に深冷分離法とPSA法においては、高純度酸素
を大量に製造することが可能であり、大型の酸素精製プ
ラントをはじめとして工業的に広く用いられている。し
かしながら、深冷分離法は空気を液化するために大量の
電力を必要とし、またPSA法は吸着・脱着工程を繰り
返すため複雑な装置機構と耐圧容器が必要であり、その
ため、両方法とも酸素製造コストが比較的高価であっ
た。
【0003】一方、膜分離法は、他の方法と比べて安価
に酸素を分離できるという特徴を持つが、精製される酸
素濃度が低く、現在最も一般的な高分子膜による膜分離
法においては酸素濃度はたかだか40%程度である。そ
のため膜分離法は、医療用酸素富化空気製造装置など、
限定された一部の用途で利用されるに留まっている。
【0004】近年、新たな膜分離技術として、混合伝導
性酸素分離膜を用いた酸素分離法の研究開発が進められ
ている。混合伝導性酸素分離膜は、酸素イオンと電子の
双方が伝導可能な複合金属酸化物から成る。原料ガス
(酸素混合ガス)が膜表面において解離吸着したのち膜
内でイオン化して膜内を伝導し、透過ガス側表面付近で
再結合することによって、酸素が生成される。混合伝導
性酸素分離膜は複合金属酸化物の構造欠陥によって酸素
イオンのみを運搬するため、生成される酸素の純度は理
論的には100%となる。酸素イオン再結合の際放出さ
れる電子は、酸素イオンと反対方向に膜中を伝導して原
料ガス側表面へ移動するため、電子を原料ガス側表面へ
送るための外部電流回路が不要となる。
【0005】このような酸素分離膜を実現する混合伝導
性複合金属酸化物として、特開昭56−092103号
公報においてLaxSr(1-x)CoO3(ただしX=0.
1〜0.9)が示されている。この金属酸化物はペロブ
スカイト型の構造を示し、この金属酸化物に酸素構造欠
陥を故意に与えることにより、酸素イオン伝導性と電子
伝導性とが実現されている。しかしながら、酸素透過速
度が低く、また空気を原料ガスとした酸素分離に用いる
場合、空気中の二酸化炭素や水分の影響によって膜成分
が変質し易いため、酸素透過性能が低下するといった問
題点があった。そのため、ペロブスカイト構造を保ちな
がら、含有金属成分を変更した様々な混合伝導性酸素分
離膜が研究・開発されている。
【0006】このように、従来の混合伝導性酸素分離膜
は、生成される酸素の純度は非常に高いが、酸素透過速
度が小さく、工業的に大量の高純度酸素を分離製造する
用途に用いる場合には広大な膜面積を必要とするため、
実用化が困難であった。このため、酸素分離膜の酸素透
過速度向上が重要な課題となっている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明はかかる事情に
鑑みてなされたものであって、酸素透過速度が向上され
た混合伝導性酸素分離膜およびそれを用いた酸素製造方
法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため
に、本発明者らは酸素分離膜として用いる混合伝導性膜
における酸素透過速度を詳細に調査した。混合伝導性膜
における酸素透過速度は、酸素解離速度、膜中酸素イオ
ン伝導速度、酸素再結合速度、境膜拡散速度(再結合し
た直後の濃度の高い酸素が気相中へ拡散する速度)など
の複数の速度因子によって構成されると考えられる。こ
れらの各速度因子を調査した結果、酸素解離速度と酸素
再結合速度とが比較的低速度であり、これらの速度が全
体としての酸素透過速度に与える影響は非常に大きいと
いう知見を得るに至った。すなわち、酸素透過速度の向
上を達成するためには、酸素解離速度と酸素再結合速度
との向上が重要であることを見出した。
【0009】上記の課題を解決するための第1の方法
は、混合伝導性膜の原料ガス側の膜表面に酸素解離性触
媒たとえば白金族元素を含む層を形成することである。
酸素解離性触媒により酸素解離の活性化エネルギーが低
減されるため、原料ガス中の酸素が膜表面において解離
吸着してイオン化する際、酸素解離速度が向上し、結果
として酸素透過速度も大幅に向上する。
【0010】第2の方法は、混合伝導性膜の透過ガス側
の膜表面に酸素再結合性触媒を含む層を形成することで
ある。酸素再結合性触媒により酸素再結合の活性化エネ
ルギーが低減されるため、混合伝導性膜を通過した酸素
イオンが再結合して酸素を生成する際、酸素再結合速度
が向上し、酸素透過速度が大幅に向上する。
【0011】また、これらの方法をそれぞれ単独で用い
るほか、第3の方法として、両方法を組み合わせて用い
ることにより酸素透過速度を最大限向上させることが可
能である。
【0012】すなわち、本発明の第1の観点では、酸素
を含有する原料ガスから酸素を分離する混合伝導性酸素
分離膜であって、混合伝導性膜と、前記混合伝導性膜の
原料ガス側の膜表面に設けられた酸素解離性触媒含有層
とを備えることを特徴とする混合伝導性酸素分離膜を提
供する。
【0013】本発明の第2の観点では、酸素を含有する
原料ガスから酸素を分離する混合伝導性酸素分離膜であ
って、混合伝導性膜と、前記混合伝導性膜の透過ガス側
の膜表面に設けられた酸素再結合性触媒含有層とを備え
ることを特徴とする混合伝導性酸素分離膜を提供する。
【0014】本発明の第3の観点では、酸素を含有する
原料ガスから酸素を分離する混合伝導性酸素分離膜であ
って、混合伝導性膜と、前記混合伝導性膜の原料ガス側
の膜表面に設けられた酸素解離性触媒含有層と、前記混
合伝導性膜の透過ガス側の膜表面に設けられた酸素再結
合性触媒含有層とを備えることを特徴とする混合伝導性
酸素分離膜を提供する。
【0015】上記本発明の混合伝導性酸素分離膜におい
て、前記酸素解離性触媒および前記酸素再結合性触媒が
それぞれ、少なくとも1種の白金族元素および/または
一般式ABO3(Aは、希土類元素、Ca、Sr、Ba
から選択される少なくとも1種の元素、Bは、Co、F
e、Ni、Cuから選択される少なくとも1種の元素)
で示される化合物からなることが好ましい。
【0016】ところで、上記のような混合伝導性酸素分
離膜を工業用の大型酸素製造装置に適用する場合、所望
の酸素透過速度を実現するためには大量の触媒が必要で
ある。上記白金族元素からなる触媒は高価であるため、
大型酸素製造装置にこのような触媒を用いると、酸素製
造コストが大幅に上昇してしまう可能性がある。
【0017】そこで、本発明者らは、触媒として安価に
製造可能な上記ABO3型化合物を用いることを前提
に、触媒含有層を有する混合伝導性酸素分離膜の最適な
構造について調査した。すなわち、上記酸素解離性触媒
と酸素再結合性触媒は、どちらも酸素イオンの移動を促
進する働きを持ち、これらを同じ触媒で構成することが
できることから、上記ABO3型化合物を上記酸素解離
性触媒または酸素再結合性触媒として用い、混合伝導性
膜の原料ガス側に触媒含有層を配したもの、酸素透過側
表面に触媒含有層を配したもの、混合伝導性膜の両面に
触媒含有層を配したものの3種類の酸素分離膜を作製
し、それぞれの酸素分離膜の酸素透過速度について詳細
に調査した。その結果、上記ABO3型化合物を触媒と
して含有した触媒含有層を酸素透過側表面のみに配した
酸素分離膜において、他の酸素分離膜に比べて特に良好
な酸素透過速度が得られることを知見した。
【0018】そのため、本発明の第4の観点では、酸素
を含有する原料ガスから酸素を分離する混合伝導性酸素
分離膜であって、混合伝導性膜と、前記混合伝導性膜の
透過ガス側の膜表面に設けられた酸素再結合性触媒含有
層とを備え、前記酸素再結合性触媒が、一般式ABO3
(Aは、希土類元素、Ca、Sr、Baから選択される
少なくとも1種の元素、Bは、Co、Fe、Ni、Cu
から選択される少なくとも1種の元素)で示される化合
物からなり、前記混合伝導性膜の透過ガス側の膜表面に
は触媒含有層を設けないことを特徴とする混合伝導性酸
素分離膜を提供する。
【0019】さらに、本発明の第5の観点では、以上の
ような混合伝導性酸素分離膜を用いて酸素を製造するこ
とを特徴とする酸素製造方法を提供する。
【0020】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施形態を図面を
参照して説明する。図1は、本発明に係る混合伝導性酸
素分離膜の第1の実施形態を示す概略図であり、混合伝
導性膜1と、その原料ガス供給側の膜表面に設けられた
酸素解離性触媒含有層2とを備える。図2は、混合伝導
性酸素分離膜の第2の実施形態を示す概略図であり、混
合伝導性膜1と、その透過ガス側の膜表面に設けられた
酸素再結合性触媒含有層3とを備える。図3は、混合伝
導性酸素分離膜の第3の実施形態を示す概略図であり、
混合伝導性膜1と、原料ガス供給側の膜表面に設けられ
た酸素解離性触媒含有層2と、透過ガス側の膜表面に設
けられた酸素再結合性触媒含有層3とを備える。
【0021】図1〜図3において用いられる混合伝導性
膜1の材質としては、ペロブスカイト型金属酸化物、ま
たは酸化金属安定化ジルコニア、カルシウム安定化ジル
コニアなどが挙げられる。膜厚は、数十μmから数百μ
mが望ましい。これは、膜厚がこの範囲を下回ると膜の
両面にかかる圧力差に耐えうる強度が得られないからで
あり、膜厚がこの範囲を上回ると酸素透過速度が大幅に
低下するからである。
【0022】混合伝導性膜1の作製は、所望の金属酸化
物を焼成し粉砕した粉末を、通常の手段に従って所望の
形状に圧縮するなどして行う。なお、後述するように多
孔質支持体上へ混合伝導性膜1を形成する場合には、真
空蒸着、イオンプレーティング、スパッタリング等の薄
膜形成方法を用いることができる。
【0023】酸素解離性触媒含有層2に含まれる酸素解
離性触媒、および酸素再結合性触媒含有層3に含まれる
酸素再結合性触媒としては、白金族元素(Pt、Ir、
Os、Pd、Rh、Ru)のうち少なくとも1種および
/またはABO3で示されるペロブスカイト型金属酸化
物を用いることができる。ここで、Aは、LaおよびS
mなどの希土類元素、Ca、Sr、Baの中から選択さ
れる少なくとも1種の元素であり、Bは、Co、Fe、
Ni、Cuの中から選択される少なくとも1種の元素で
ある。触媒含有層2、3の厚みは、それぞれ数μm〜数
十μmが望ましく、例えば20〜50μmである。
【0024】混合伝導性膜1上へ触媒含有層2、3を形
成する方法としては、触媒粉末を膜1上に塗布する方法
のほか、真空蒸着、イオンプレーティング、スパッタリ
ング等の薄膜形成方法を使用することができる。
【0025】膜強度を補強するために、図4に示すよう
に、前述したような連続貫通孔を有する多孔質支持体4
上に、混合伝導性膜1ならびに触媒含有層2および/ま
たは触媒含有層3を形成しても良い(図4は混合伝導性
膜1および触媒含有層3を形成した例を示す)。この場
合には、多孔質支持体4上に、混合伝導性膜1とともに
触媒含有層2、3を、前述したイオンプレーティングな
どの薄膜形成方法等を用いて形成する。多孔質支持体4
の材質としては、混合伝導性膜1、酸素解離性触媒、酸
素再結合性触媒などと反応して複合金属酸化物たとえば
スピネルを形成するようなことがなく、かつ、これらの
材料と熱膨張係数が等しいものが好ましい。例として
は、ペロブスカイト型金属酸化物、マグネシア等が挙げ
られる。
【0026】以上のように作製した触媒含有層2、3を
有する混合伝導性膜1の形態としては、平面膜、または
チューブ状多孔質支持体の外表面に混合伝導性膜1を形
成させたシェルチューブ構造などがあり、使用目的に応
じて選択できる。
【0027】図1に示す第1実施形態においては、原料
ガス10(酸素含有ガス:空気など)を500〜130
0℃に加熱する。そして、混合伝導性膜1の原料ガス側
を加圧するか、または透過ガス側を減圧するかもしくは
窒素パージなどを行うことによって、混合伝導性膜1の
両面間に酸素分圧差を与える。この酸素分圧差が駆動力
となって、原料ガス10中の酸素が混合伝導性膜1表面
で解離し、電子40を得て酸素イオン20として混合伝
導性膜1中を伝導する。この際、原料ガス側膜表面に形
成された酸素解離性触媒含有層2中に存在する酸素解離
性触媒の効果によって酸素解離の活性化エネルギーが低
減されるため、酸素の解離・イオン化速度が向上し、そ
の結果、酸素透過速度が向上する。混合伝導性膜1中を
伝導した酸素イオン20は、透過ガス側膜表面付近で再
結合して、酸素30を生成する。酸素イオンから放出さ
れた電子40は、混合伝導性膜1中を伝導して、前述し
たように原料ガス側表面付近で解離した酸素をイオン化
する。
【0028】図2に示す第2実施形態においては、原料
ガス10中の酸素が原料ガス側膜表面で解離し、電子4
0を得て酸素イオン20として混合伝導性膜1中を伝導
する。酸素イオン20は透過ガス側膜表面付近で再結合
して、酸素30を生成する。この際、透過ガス側膜表面
に形成された酸素再結合性触媒含有層3中に存在する酸
素再結合性触媒によって、酸素再結合の活性化エネルギ
ーが低減されるため、酸素再結合速度が向上し、結果と
して酸素透過速度ひいては酸素30の生成速度が向上す
る。
【0029】図3に示す第3実施形態においては、両触
媒含有層2、3を有することにより、酸素透過速度をよ
り向上させることが可能となる。
【0030】次に、本発明の第4の実施形態について説
明する。この第4の実施形態においては、触媒として安
価に製造可能な上記ABO3型化合物(ABO3型金属酸
化物触媒)を用いることを前提に、図2に示す第2の実
施形態と同様、混合伝導性膜1と、その透過ガス側の膜
表面に設けられた酸素再結合性触媒含有層3とを備え
る。触媒を、安価に製造可能な上記ABO3型金属酸化
物触媒に限定した場合には、図1に示す酸素解離性触媒
含有層2を設けた構造や、図3に示す酸素解離性触媒含
有層2および酸素再結合性触媒含有層3の両方を設けた
構造よりも、酸素透過速度が大きくなる。つまり、酸素
再結合性触媒含有層3のみを設けることにより、良好な
酸素透過速度を得ることができる。
【0031】この場合にも、酸素再結合触媒含有層3の
厚さは数μm〜数十μmが望ましい。厚みが数十μmよ
りも厚くなると、酸素イオンが触媒含有層を通過するの
に時間がかかり、酸素透過速度を低下を招くおそれがあ
り、一方、数μmより薄いと十分な触媒担持量を確保で
きず、触媒効果が発揮できない。
【0032】なお、本発明においては、排ガス燃焼など
で発生する高温排ガスを原料ガスとして用いても良い。
排ガスは二酸化炭素を含んでいるが、本発明の混合伝導
性膜を用いた酸素生成方法では例えば800℃以上の高
温が必要であるため、高温排ガス中の廃熱を有効利用し
て効率的に酸素を生成することができる。
【0033】次に、上記混合伝導性酸素分離膜を利用し
て酸素を製造する酸素製造装置を備えた電力併産型のシ
ステムについて説明する。図5はそのシステムの概要を
示す系統図である。
【0034】原料空気51は前処理装置52に送られ、
除塵、除水などされた後、空気圧縮機53により昇圧さ
れ、昇圧された圧縮空気54は熱交換器55により昇温
され、酸素製造装置57に送り込まれる。酸素製造装置
57に送り込まれた昇温された空気56は、酸素製造装
置57の内部に設置された上記構造を有する混合伝導性
酸素分離膜により高濃度酸素58と高濃度窒素(排ガ
ス)61とに分離される。分離された高濃度酸素58
は、熱交換器59に送り込まれ、酸素圧縮機60により
圧縮され、昇圧機62を通過後、溶融還元炉、酸素高
炉、スクラップ溶解炉などの酸素消費設備63に送ら
れ、消費される。また、昇圧機62および熱交換器59
を通過した高濃度酸素65は、上述の混合伝導性酸素分
離膜と同様の膜構造を有する隔膜リアクターを有するガ
ス改質装置73に送り込まれ、メタンなどの改質ガス用
原料72の改質用ガスとして使用される。ガス改質装置
73では、改質ガス用原料72が高濃度酸素65により
改質されて改質ガス74となり、その際の排ガス75は
ガス改質装置73外へ排出される。酸素消費設備63で
発生する一酸化炭素、水素などの副生ガス64は、ガス
タービン69に送り込まれ、そこで昇圧された排ガス7
6は高圧燃焼機66に送られ、圧縮空気54の一部によ
って燃焼させガスタービン67を駆動する。ガスタービ
ン67および69の駆動力は空気圧縮機53および酸素
圧縮機60に伝えられるとともに、ガス圧縮機70にも
伝えられ、ガス圧縮機70で生じた電気71は発電プラ
ントに送られる。
【0035】次に、酸素製造装置57に用いられる混合
伝導性酸素分離膜の膜形状の例を示す。図6は、酸素製
造装置57内において混合伝導性酸素分離膜を用いた空
気分離ユニットを示す模式図である。ここでは、チュー
ブ状多孔質支持体の外表面に混合伝導性酸素分離膜を形
成させたシェルチューブ構造の例を示す。なお、ここで
示すのはあくまで例示であり、膜形状はこれに限定され
るものではない。
【0036】空気分離ボックス79にはタンマン型チュ
ーブ80が設置されており、空気分離ボックス79に設
けられた原料空気取り入れ口78から、昇圧された高温
原料空気77が空気分離ボックス79内に送り込まれ、
酸素85のみがタンマン型チューブ80の外表面から内
部に透過し、酸素回収ボックス83を通り、酸素取り出
し口84から回収される。一方、酸素貧化空気82は排
ガス排出口81から系外に排出される。
【0037】タンマン型チューブ80は、その断面図で
ある図7に示すように、連続貫通孔を有する多孔質支持
体87の外表面に混合伝導性酸素分離膜86を有する一
端が閉じた円筒状のものであり、空気分離ボックス79
内のタンマン型チューブ80の数、長さは目的用途に応
じて変わり得るものである。また、空気分離ボックス7
9内には、タンマン型チューブ80の補強のために、支
持板等を設けることができ、高温原料空気77を効率良
くタンマン型チューブ80の表面に送り込むためにガス
流れを制御するための整流板を設けることもできる。ま
た、整流板が支持板を兼ねることもできる。
【0038】図6に示した空気分離ユニットは、製造酸
素量により複数個組み合わせることができ、酸素製造装
置内の空気分離ユニットの数は任意であり、また、空気
分離ボックス79内のタンマン型チューブ80の数も任
意である。
【0039】次に、ガス改質装置73に用いられる混合
伝導性膜の膜形状の例を示す。図8は、ガス改質装置7
3内において隔膜リアクターとして上述の混合伝導性膜
を用いたガス改質ユニットを示す模式図である。ここで
は、チューブ状多孔質支持体の外表面に混合伝導性膜を
形成させたシェルチューブ構造の例を示す。なお、ここ
で示すのはあくまで例示であり、膜形状はこれに限定さ
れるものではない。
【0040】ガス改質ボックス93にはストレート型チ
ューブ94が設置されており、ガス改質ボックス93に
設けられた改質用原料ガス取り入れ口89から昇圧され
た改質原料ガス88が改質用原料ガスボックス90を経
てガス改質ボックス93内に送り込まれ、かつ酸素取り
入れ口91から酸素92がガス改質ボックス93内に送
り込まれる。そして、酸素92のみがストレート型チュ
ーブ94の外表面から内部に透過し、ストレート型チュ
ーブ94の内部に送り込まれた改質原料ガス88を酸化
する。酸化された改質ガス97は改質ガス回収ボックス
95で集約され、改質ガス取り出し口96から回収され
る。一方、余剰の酸素99は、酸素排出口98から系外
に排出される。
【0041】ストレート型チューブ94は、その断面図
である図9に示すように、連続貫通孔を有する多孔質支
持体101の外表面に混合伝導性膜100を有する両端
が開口した円筒状のものであり、ガス改質ボックス93
内のストレート型チューブ94の数、長さは目的用途に
応じて変わり得るものである。また、ガス改質ボックス
93内には、ストレート型チューブ94の補強のため
に、支持板等を設けることができ、酸素92をストレー
ト型チューブ94の表面に送り込むためにガス流れを制
御するための整流板を設けることもできる。また、整流
板が支持板を兼ねることもできる。
【0042】図8に示したガス改質ユニットは、改質ガ
ス量により複数個組み合わせることができ、ガス改質装
置内のガス改質ユニットの数は任意であり、また、ガス
改質ボックス93内のストレート型チューブ94の数も
任意である。
【0043】
【実施例】(比較例1)La、Sr、Co、Feの各金
属の硝酸塩もしくは酢酸塩を秤量したものを、イオン交
換水中にて溶解し、これを蒸発乾固させて、乳鉢で粉砕
した後、乾燥させた。これを350℃で予備焼成した
後、850℃で5時間焼成して、粉末試料を得た。次に
この粉末を圧縮成形機によってディスク状圧粉体に成形
した後、1250℃で焼成して、La0.2Sr0.8Co
0.8Fe0.23で表わされる混合伝導性酸素分離膜(膜
厚約0.5mm)を得た。
【0044】この混合伝導性酸素分離膜を用いて、原料
ガス側に空気,透過ガス側にスイープガスとしてHeガ
スを供給して、900℃における酸素透過速度を求め
た。
【0045】(実施例1)比較例1と同様にして作製し
た混合伝導性膜の原料ガス側膜表面にPt粉末(酸素解
離性触媒)を塗布した後、比較例1と同様にして酸素透
過速度を求めた。
【0046】(実施例2)比較例1と同様にして作製し
た混合伝導性膜の透過ガス側膜表面に、La0.8Sr0.2
CoO3粉末(酸素再結合性触媒)を塗布した後、比較
例1と同様にして酸素透過速度を求めた。
【0047】(実施例3)比較例1と同様にして作製し
た混合伝導性膜の原料ガス側膜表面にPt粉末を塗布
し、透過ガス側膜表面にLa0.8Sr0.2CoO3粉末を
塗布した後、比較例1と同様にして酸素透過速度を求め
た。
【0048】上述の比較例、実施例1〜3の酸素透過速
度の測定結果を下表1に示す。
【0049】
【表1】
【0050】上表1からわかるように、実施例1〜3に
おいて酸素透過速度が向上しており、本発明の効果が確
認された。特に実施例3においては、比較例と比べて、
酸素透過速度は約1.9倍にまで増加することが確認さ
れた。
【0051】次に、触媒を、安価に製造可能な上記AB
3型金属酸化物触媒に限定した場合について実験を行
った。まず、La、Sr、Coの各金属の硝酸塩もしく
は酢酸塩を秤量したものを、イオン交換水中にて溶解
し、これを蒸発乾固させて、乳鉢で微粉砕し、よく混合
した後、350℃で予備焼成し、さらに850℃で5時
間焼成して、黒色の粉末試料を得た。次にこの粉末を圧
縮成形機によってディスク状圧粉体に成形した後、12
50℃で焼成して、La0.8Sr0.2CoO3で表わされ
る混合伝導性膜を得た。得られた混合伝導性膜の形状
は、直径約10mm、厚さ約1.2mmのディスク状で
あった。
【0052】この混合伝導性膜の原料ガス側表面に、イ
オン交換水中に溶いて分散させたSrCo0.8Fe0.2
3(ABO3型金属酸化物触媒)を塗布し、乾燥させて酸
素解離性触媒含有層を形成した酸素分離膜試料(試料
A)、上記混合伝導性膜の原料ガス側表面および透過ガ
ス側表面に、イオン交換水中に溶いて分散させたSrC
0.8Fe0.23(ABO3型金属酸化物触媒)を塗布
し、乾燥させて酸素解離性触媒含有層および酸素再結合
性触媒含有層の両方を形成した酸素分離膜試料(試料
B)、および上記混合伝導性膜の透過ガス側表面に、イ
オン交換水中に溶いて分散させたSrCo0.8Fe0.2
3(ABO3型金属酸化物触媒)を塗布し、乾燥させて酸
素再結合性触媒含有層を形成した酸素分離膜試料(試料
C)を製造した。
【0053】これら酸素分離膜試料について、原料ガス
側に空気(0.02L/min)を供給し、また透過ガ
ス側にスイープガスとしてHe(0.02L/min)
を供給して、600℃から900℃における酸素透過速
度を50℃おきに求め、触媒含有層塗布なしの場合(比
較材)と比較した。その結果を図10に示す。図10に
示すように、触媒含有層を設けた酸素分離膜試料は、触
媒含有層無しの比較材と比較していずれも酸素透過速度
の向上が見られたが、透過ガス側のみにABO 3型金属
酸化物からなる触媒含有層を設けた試料Cの酸素等加速
度が最も大きくなり、両側に触媒含有層を設けた試料B
の酸素透過速度も同程度であった。また、原料ガス側に
のみにABO3型金属酸化物からなる触媒含有層を設け
た試料Aは、酸素透過速度が比較材よりも若干向上する
に留まった。これらの結果より、触媒としてABO3
金属酸化物触媒を用いた場合には、透過ガス側の酸素再
結合触媒含有層を形成した場合にのみ酸素透過速度を向
上させる効果が非常に大きくなることが確認された。
【0054】
【発明の効果】本発明によれば、酸素透過速度が著しく
向上した混合伝導性酸素分離膜が得られるので、混合伝
導性酸素分離膜を用いた酸素の分離精製法において、酸
素精製能力が各段に向上する。その結果、本発明による
酸素分離膜を酸素製造プラント内で用いることにより、
大量の高純度酸素を安価に製造することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施形態の一例を示す概略図。
【図2】本発明の第2の実施形態の一例を示す概略図。
【図3】本発明の第3の実施形態の一例を示す概略図。
【図4】多孔質支持体上に混合伝導性酸素分離膜を設け
た構造を示す概略図。
【図5】本発明に係る酸素製造方法を実施可能な酸素製
造装置を備えた電力併産型のシステムの概要を示す系統
図。
【図6】図5の酸素製造装置内において混合伝導性酸素
分離膜を用いた空気分離ユニットを示す模式図。
【図7】図6の空気分離ユニットに用いられるタンマン
型チューブを示す断面図。
【図8】図5のガス改質装置内において隔膜リアクター
として混合伝導性膜を用いたガス改質ユニットを示す模
式図。
【図9】図8のガス改質ユニットに用いられるストレー
ト型チューブを示す断面図。
【図10】触媒としてABO3型金属酸化物を用いた場
合における酸素分離膜の構造と酸素透過速度との関係を
触媒を用いない酸素分離膜と比較して示すグラフ。
【符号の説明】
1;混合伝導性膜 2;酸素解離性触媒含有層 3;酸素再結合性触媒含有層 4;多孔質支持体 10;原料ガス(酸素含有ガス) 20;酸素イオン 30;透過ガス(純酸素) 40;電子 57;酸素製造装置 79;空気分離ボックス 80;タンマン型チューブ 86;混合伝導性酸素分離膜 87;多孔質支持体
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) C01B 13/02 C01B 13/02 Z (72)発明者 岡田 敏彦 東京都千代田区丸の内一丁目1番2号 日 本鋼管株式会社内 (72)発明者 有山 達郎 東京都千代田区丸の内一丁目1番2号 日 本鋼管株式会社内 (72)発明者 福嶋 信一郎 東京都千代田区丸の内一丁目1番2号 日 本鋼管株式会社内 (72)発明者 藪田 和哉 東京都千代田区丸の内一丁目1番2号 日 本鋼管株式会社内 (72)発明者 寺岡 靖剛 長崎県長崎市文教町1−14 長崎大学工学 部内 Fターム(参考) 4D006 GA41 HA28 MA06 MA31 MB03 MB04 MB19 MC03X MC90 NA31 NA32 NA39 NA42 NA46 PB17 PB62 4G042 BA08 BA13 BA28 BB02 4G069 AA03 AA08 BB06A BB06B BC09A BC12B BC13A BC31A BC42B BC66A BC67B BC68A BC75B CB81 DA06 EA08 FB23

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 酸素を含有する原料ガスから酸素を分離
    する混合伝導性酸素分離膜であって、混合伝導性膜と、
    前記混合伝導性膜の原料ガス側の膜表面に設けられた酸
    素解離性触媒含有層とを備えることを特徴とする混合伝
    導性酸素分離膜。
  2. 【請求項2】 酸素を含有する原料ガスから酸素を分離
    する混合伝導性酸素分離膜であって、混合伝導性膜と、
    前記混合伝導性膜の透過ガス側の膜表面に設けられた酸
    素再結合性触媒含有層とを備えることを特徴とする混合
    伝導性酸素分離膜。
  3. 【請求項3】 酸素を含有する原料ガスから酸素を分離
    する混合伝導性酸素分離膜であって、混合伝導性膜と、
    前記混合伝導性膜の原料ガス側の膜表面に設けられた酸
    素解離性触媒含有層と、前記混合伝導性膜の透過ガス側
    の膜表面に設けられた酸素再結合性触媒含有層とを備え
    ることを特徴とする混合伝導性酸素分離膜。
  4. 【請求項4】 前記酸素解離性触媒が、少なくとも1種
    の白金族元素および/または一般式ABO3(Aは、希
    土類元素、Ca、Sr、Baから選択される少なくとも
    1種の元素、Bは、Co、Fe、Ni、Cuから選択さ
    れる少なくとも1種の元素)で示される化合物からなる
    ことを特徴とする請求項1または請求項3に記載の混合
    伝導性酸素分離膜。
  5. 【請求項5】 前記酸素再結合性触媒が、少なくとも1
    種の白金族元素および/または一般式ABO3(Aは、
    希土類元素、Ca、Sr、Baから選択される少なくと
    も1種の元素、Bは、Co、Fe、Ni、Cuから選択
    される少なくとも1種の元素)で示される化合物からな
    ることを特徴とする請求項2または請求項3に記載の混
    合伝導性酸素分離膜。
  6. 【請求項6】 酸素を含有する原料ガスから酸素を分離
    する混合伝導性酸素分離膜であって、混合伝導性膜と、
    前記混合伝導性膜の透過ガス側の膜表面に設けられた酸
    素再結合性触媒含有層とを備え、前記酸素再結合性触媒
    が、一般式ABO3(Aは、希土類元素、Ca、Sr、
    Baから選択される少なくとも1種の元素、Bは、C
    o、Fe、Ni、Cuから選択される少なくとも1種の
    元素)で示される化合物からなり、前記混合伝導性膜の
    透過ガス側の膜表面には触媒含有層を設けないことを特
    徴とする混合伝導性酸素分離膜。
  7. 【請求項7】 請求項1から請求項6のいずれかの混合
    伝導性酸素分離膜を用いて酸素を製造することを特徴と
    する酸素製造方法。
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JP2013503027A (ja) * 2009-08-31 2013-01-31 ティッセンクルップ ウーデ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング 膜材料の触媒被膜
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