JP2003130053A - 流体軸受の製造方法 - Google Patents

流体軸受の製造方法

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JP2003130053A
JP2003130053A JP2001322480A JP2001322480A JP2003130053A JP 2003130053 A JP2003130053 A JP 2003130053A JP 2001322480 A JP2001322480 A JP 2001322480A JP 2001322480 A JP2001322480 A JP 2001322480A JP 2003130053 A JP2003130053 A JP 2003130053A
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impregnated
lubricating fluid
pressure
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Soichi Murakami
荘一 村上
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 軸受本体に十分な量の潤滑流体を含浸させる
ことができる流体軸受の製造方法を提供すること。 【解決手段】 少なくとも開口部21を真空雰囲気25
中に置き、前記開口部21から包囲手段17の内部の空
気を除く除去ステップと、前記真空雰囲気25中で、前
記包囲手段17によって包囲された前記軸受本体15に
前記潤滑流体26を含浸させる含浸ステップと、γ:前
記潤滑流体の表面張力[10-3×N/m]及びt:前記
隙間[cm]とした場合に、前記軸受本体15に前記潤
滑流体26を含浸させたままの状態にて前記包囲手段1
7の内部を、1.1×105[Pa]又は4×10-1×
γ/t[Pa]のいずれか高い方の圧力以上7×105
[Pa]以下の圧力で加圧する加圧ステップと、前記包
囲手段17の内部を大気圧にする大気圧化ステップとを
有する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、潤滑流体が染み出
すことで回転軸を回転自在に支持する流体軸受の製造方
法に関し、特に潤滑流体としての例えばオイルの注油法
の改善に関するものである。
【0002】
【従来の技術】以下にハードディスク用の回転駆動装置
を例にとり、その製造方法の内の動圧軸受へのオイルの
注油法について説明する。動圧軸受にオイルを注油する
際の従来の注油法は、次の通りであった。
【0003】図8(A)、図8(B)及び図9は、それ
ぞれ従来のオイルの注油法の一例を示す部分断面図であ
る。従来のオイルの注油法では、大気に通じる軸受の開
口部21を1つ以上有するオイル動圧軸受である軸受ユ
ニット12全体(又は少なくとも開口部21)を、 ステップST11:図8(A)に示すように真空雰囲気
25中に置いて軸受ユニット12の内部の空気抜きを行
い、 ステップST12:引き続いて、図8(B)に示すよう
に真空雰囲気25中でオイル26に浸漬し、 ステップST13:引き続いて、図9に示すようにオイ
ル26に浸漬したままの状態にて大気圧に加圧してい
た。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】ところが、この従来の
注油方法では、ステップST13においては大気圧によ
って加圧しているため、軸受ユニット12の内部にあり
本来オイル26が含浸されるべき燒結含油軸受メタル1
5に形成された隙間は、例えば毛細管状であり、十分に
オイル26が十分に充填されずに、一部は真空のまま残
ることがあるのが分かった。以下、毛細管状の隙間を
「毛細管隙間」と呼ぶ。そして、注油後に時間が経過し
たり温度が上がったりすると、この真空部分は始めてオ
イル26が充填されるようになる。
【0005】このように注油後に軸受ユニット12の内
部の真空部分が無くなるために、真空部分を埋めるよう
に外部から空気が燒結含油軸受メタル15の毛細管隙間
に侵入する。この時、空気の侵入と入れ替えにオイル2
6がわずかに軸受ユニット12の外に流出するという問
題が起きた。
【0006】燒結含油軸受メタル15の上記空隙に含浸
しているオイル26が軸受ユニット12の外に流出する
と、軸受ユニット12の内部のオイルが減少するため、
軸受ユニット12の内部にこれを補うために空気が入
る。また同時に、燒結含油軸受メタル15の毛細管隙間
のオイル26が減少するので、燒結含油軸受メタル15
の毛細管隙間がオイル26で完全に満たされた状態で無
くなる。これによって、軸受ユニット12は、正常な油
膜圧力を発生しなくなり、その結果として、軸受性能が
低下し回転精度が不安定となるばかりでなく、時には軸
2と燒結含油軸受メタル15が焼き付いて燒結含油軸受
メタル15がロックするおそれがあった。
【0007】軸受ハウジング17と蓋20とで軸2を包
囲した場合における蓋20と軸2との隙間である開口部
21には、オイル26によってメニスカスが形成されて
いる。以下、オイル26によってメニスカスが形成され
ている部分を「シール部」という。このシール部21に
形成されるメニスカスは、注油直後には軸2の周りに全
周に渡って360℃存在し当初は正常であったものが、
注油後に軸受ユニット12の内部に空気が侵入するの
で、軸2の周りのメニスカスが切れ、メニスカスは0℃
〜260℃程度と少なくなった。このようにシール部2
1のメニスカスが切れると、軸受ユニット12の内部が
空気と接触している状態になる。
【0008】軸2が回転するとシール部21のメニスカ
スは360℃形成される場合があり、この時、内部に空
気が閉じ込められたままの状態になるので、例えば温度
が上がったり気圧が低下したりすると、内部に閉じ込め
られた空気が膨張して空気が軸受ユニット12の内部か
ら噴出する。
【0009】この結果として、軸受ユニット12の内部
には空気が更に進入し、オイル26が燒結含油軸受メタ
ル15の外に流出する。このようにして、燒結含油軸受
メタル15の内部はオイルが不足し、かつ空気が侵入し
た状態となり、動圧軸受の本来の性能が発揮されず、異
常をきたすおそれがあった。
【0010】すなわち、オイル26の不足によって毛細
管隙間に含浸されるオイル26が減少し、代わりに空気
が入った所謂油膜破断の状態になるために、毛細管隙間
が完全にオイル26で満たされた状態とは明らかに異な
っている。具体的には、回転精度の低下やモータ電流の
不安定性、場合によっては軸2と燒結含油軸受メタル1
5の接触現象が観察されるようになった。このような状
態では、高精度かつ安定した回転を要求されるハードデ
ィスク駆動装置にあっては、不具合を生ずるおそれがあ
るという問題点がある。
【0011】また、軸受ユニット12から流出したオイ
ル26が軸2に付着すると、オイルは回転中に遠心力で
吹き飛ばされてミスト状になって、細かなオイル粒子と
なって飛散し、ディスク面に付着する。すると、ディス
ク面とヘッド間のフライングハイトが壊れ、やはりディ
スクとヘッドが直接接触するようになって、先に述べた
問題点と同様の問題が存在している。このように、従来
の注油法では、 1)軸受ユニット12の内部への空気の侵入 2)軸受ユニット12の内部からオイルの流出 3)シール部21のメニスカス切れ を引き起こし、これが元となって軸受回転精度の悪化と
不安定さを生じさせたり、回転機器に不具合を生じさせ
るという問題点があった。
【0012】そこで本発明は上記課題を解決し、軸受本
体に十分な量の潤滑流体を含浸させることができる流体
軸受の製造方法を提供することを目的としている。
【0013】
【課題を解決するための手段】上記目的は、請求項1の
発明にあっては、大気に通じる開口部が設けられた包囲
手段によって包囲されており、潤滑流体を含浸する隙間
が形成された軸受本体を備え、前記隙間から前記潤滑流
体が染み出すことで前記軸受本体が回転軸を回転自在に
支持する流体軸受の製造方法であって、少なくとも前記
開口部を真空雰囲気中に置き、前記開口部から前記包囲
手段の内部の空気を除く除去ステップと、前記真空雰囲
気中で、前記包囲手段によって包囲された前記軸受本体
に前記潤滑流体を含浸させる含浸ステップと、γ:前記
潤滑流体の表面張力[10-3×N/m]及びt:前記隙
間[cm]とした場合に、前記軸受本体に前記潤滑流体
を含浸させたままの状態にて前記包囲手段の内部を、
1.1×105[Pa]又は4×10-1×γ/t[P
a]のいずれか高い方の圧力以上7×105以下の圧力
で加圧する加圧ステップと、前記包囲手段の内部を大気
圧にする大気圧化ステップとを有することを特徴とする
流体軸受の製造方法により、達成される。請求項1の構
成によれば、大気に通じる開口部が真空雰囲気中に置か
れ、この状態でその開口部から包囲手段の内部の空気が
除去される。次に軸受本体は、その真空雰囲気中で潤滑
流体に含浸させられ、そのままの状態で、包囲手段の内
部は、大気圧よりも高い上述の圧力で加圧される。次
に、その包囲手段の内部がさらに大気圧にされる。この
ようにすると、真空状態におかれた軸受本体の隙間に潤
滑流体が含浸された状態で、上述のような大気圧より高
い圧力で加圧されるので、軸受本体の隙間の隅々に十分
な量の潤滑流体が充填されるようになる。
【0014】請求項2の発明は、請求項1の構成におい
て、前記含浸ステップでは、前記軸受本体に対して、ほ
ぼ30℃以上80℃以下の温度に加熱した前記潤滑流体
を含浸させることを特徴とする。請求項2の構成によれ
ば、請求項1の作用に加えて、潤滑流体の表面張力は、
温度が高いほど小さな値を示す傾向があるので、潤滑流
体を軸受本体に含浸させる際に潤滑流体が漏れなくさら
に浸透し含浸されるようになるためである。
【0015】請求項3の発明は、請求項1の構成におい
て、前記含浸ステップでは、ほぼ30℃以上80℃以下
の温度に加熱した前記軸受本体に対して、前記潤滑流体
を含浸させることを特徴とする。請求項3の構成によれ
ば、請求項1の作用に加えて、潤滑流体の表面張力は、
温度が高いほど小さな値を示す傾向があるので、潤滑流
体を軸受本体に含浸させる際に潤滑流体が漏れなくさら
に浸透し含浸されるようになるためである。
【0016】請求項4の発明は、請求項1の構成におい
て、前記含浸ステップでは、前記軸受本体及び前記潤滑
流体の双方をほぼ30℃以上80℃以下の温度に加熱
し、加熱した前記軸受本体に対して、加熱した前記潤滑
流体を含浸させることを特徴とする。請求項4の構成に
よれば、請求項1の作用に加えて、潤滑流体の表面張力
は、温度が高いほど小さな値を示す傾向があるので、潤
滑流体を軸受本体に含浸させる際に潤滑流体が漏れなく
さらに浸透し含浸されるようになるためである。
【0017】請求項5の発明は、請求項1の構成におい
て、前記流体軸受は、動圧効果を利用するラジアル軸受
又はスラスト軸受であり、前記軸受本体の材質は、燒結
含油軸受メタル材、セラミックス、プラスチック又は溶
製材の金属のいずれかで構成されていることを特徴とす
る。
【0018】
【発明の実施の形態】以下、本発明の好適な実施の形態
を添付図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下に述
べる実施の形態は、本発明の好適な具体例であるから、
技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明
の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨
の記載がない限り、これらの形態に限られるものではな
い。
【0019】図1は、本発明の好ましい実施形態として
の流体軸受が適用された軸受ユニット12を備える回転
駆動装置の構成例を示す断面図であり、図2は、図1の
軸受ユニット12の構成例を示す断面図である。以下の
説明では、回転駆動装置としてハードディスク用の駆動
装置(以下「ディスク駆動装置」という)を例示する。
【0020】図1のディスク駆動装置1は、年々の記録
密度の飛踵的な向上に伴い、ディスク3や磁気ドラム、
ミラー面のアキシャル方向の回転振れ精度は益々高精度
が必要となってきている。このディスク駆動装置1にお
いては、回転する軸2に直角なディスクチャッキング面
4の回転振れはサブミクロン以下に、及びラジアル振れ
は0.1×10-6[m]以下にと高精度に維持する必要
があり、これらのディスクチャッキング面4の回転精度
は軸受ユニット12の回転精度に依存している。
【0021】ディスク駆動装置1では、軸2にディスク
3の装着用に軸2と、この軸2に直角なディスクチャッ
キング面4を有する回転体5が固定され、回転体5の内
面に永久磁石6が固定され、これらが一体となりロータ
7を形成する。
【0022】一方、ハウジング8にはフレキシブル基板
9が固定され、さらにハウジング8の外径側に鉄心10
とコイル11が固定され、内径側に軸受ユニット12が
固定されて、これらが一体となり全体としてステータ1
3を形成する。軸受ユニット12からは、軸2が回転自
在に装着されている。また、ディスク3は、回転体5の
上面に設けられたチャッキングマグネット14によっ
て、ロータ7に一体に装着されている。軸受ユニット1
2は次のように構成されている。
【0023】すなわち、側面から見ると図2に示すよう
に例えば断面が逆T字型の軸2が、燒結含油軸受メタル
15にラジアルすきま16を保持して嵌通して配置さ
れ、軸受ハウジング17に接着固定されている。この燒
結含油軸受メタル15の材質としては、銅、錫、鉄など
を微粉状にしてこれをプレスし燒結した燒結含油軸受メ
タル材を採用することができる。また、この燒結含油軸
受メタル15の材質としては、セラミックス、プラスチ
ック、青銅、真ちゅう、アルミなどの金属のいずれかで
構成することもできる。
【0024】この焼結合油軸受メタル15の内面には、
ヘリングボーン溝が形成されており、ラジアル軸受が構
成されている。また、軸受ハウジング17の上面18と
焼結合油軸受メタル15の下面19にはヘリングボーン
溝が形成されており、スラスト軸受が構成されている。
【0025】焼結合油軸受メタル15の上方において
は、蓋20が、軸2と環状のすきまである開口部21を
もって嵌通し、軸受ハウジング17に接着固定されてい
る。開口部21の内部に満たしたオイル26(潤滑流
体)と、軸2とで、オイル26のシールが構成されてい
る。以下、このオイル26で構成されたシールの部分の
開口部21を「シール部」と呼ぶ。このシール部21に
は、オイル26によってメニスカスが形成されている。
ここで、このオイル26としては、例えばポリオレフィ
ン油を用いている。
【0026】また、この燒結含油軸受メタル15の内部
には、空孔だけが存在しているのではなく、図2に示す
ように燒結含油軸受メタル15と軸受ハウジング17と
の接着すきまや、燒結含油軸受メタル15と蓋20との
間の隙間がある。これらの隙間は、サブミクロンレベル
から大きくは数十ミクロンレベルまでと小さく、例えば
毛細管隙間形状を構成している隙間である。以下の説明
では、これらの隙間を総称して「毛細管隙間」と呼ぶ。
【0027】このように構成されたディスク駆動装置1
は、ステータ13のコイル11に通電されると、ロータ
7に回転力を発生させる。そして、ロータ7に固定され
た軸2が回転し、軸2は装着されたディスク3と一体に
回転する。
【0028】ディスク駆動装置1の構成例及び動作例は
以上のようであり、次に図1及び図2を参照しつつディ
スク駆動装置1の製造方法の一例について説明する。こ
のディスク駆動装置1において特徴的なことは、軸受ユ
ニット12へのオイル26の注油法を次のようにした点
である。尚、製造方法において注油法以外については、
従来と同様であるので説明を省略する。
【0029】図3〜図6は、それぞれ軸受ユニット12
へのオイル26の第1の注油法の一例を示す部分断面図
である。すなわち、この第1の注油法における特徴的な
ことは、図3においては軸受ユニット12の全体又は少
なくとも開口部21を、 ステップST1:真空雰囲気中25に置き、例えば開口
部21から軸受ユニット12の内部の空気抜きを行い、 ステップST2:引き続いて、真空雰囲気中25で燒結
含油軸受メタル15にオイル26を浸漬させ、 ステップST3:引き続いて、燒結含油軸受メタル15
にオイル26を浸漬させたままの状態にて、軸受ハウジ
ング17の内部を、例えば1.1×105[Pa]又は
次式(1)を満足する圧力Pのいずれか高い方の圧力以
上7×105[Pa]以下の圧力で加圧し、 ステップST4:その後に軸受ハウジング17の内部を
大気圧にする。
【0030】上記圧力Pは、次式(1)で与えられる。 P=4×10-1×γ/t[Pa]・・・(1) ただし、軸受ユニット12の内部に存在する毛細管隙間
をt[cm]、オイル26の表面張力をγ[10-3×N
/m]とする。
【0031】ここで、上記圧力を7×105[Pa]以
下としたのは、空気圧縮機を用いて得られかつ、工場内
の配管設備上での圧力の上限として、この値にしたとい
う理由によるものである。
【0032】尚、上記ステップST3での圧力の変更で
は、例えば真空から大気圧を越えた圧力ヘの急激な変更
又は、例えば真空から大気圧を越えた圧力ヘの漸増によ
って行い、ステップST4での圧力の変更では、例えば
大気圧を越えた圧力Pから大気圧への急激な変更又は、
例えば大気圧を越えた圧力Pから大気圧への漸減によっ
て行っても良い。
【0033】本発明の実施形態では、2〜5[Pa]程
度の真空雰囲気中25に軸受ユニット12を置いて軸受
ユニット12の内部の空気抜きを行なった。次に、オイ
ル26の表面張力γ=27×10-3[N/m]、毛細管
隙間21が幅t=1ミクロン=10-6[m]まで注油す
るので、式(1)から算出される圧力PはP=1.08
×105[Pa]であるが、好ましくは余裕をみてこれ
よりも大きな1.52×105[Pa]で加圧した。
【0034】従来は、注油する際に大気圧(1.01×
105[Pa])の加圧をしていたが、このように、オ
イル26の表面張力と、軸受ユニット12の内部に設け
られた毛細管隙間の大きさによっては、必ずしも大気圧
の加圧で注油が十分には行われない場合があることが分
かている。そのため、本実施形態では、注油時に大気圧
を越えた圧力に加圧する第1の注油法を採用している。
【0035】この第1の注油法では、好ましくは注油の
際に浸漬するオイル26及び燒結含油軸受メタル15の
双方を例えばほぼ30℃以上80℃以下の温度に加熱し
て、燒結含油軸受メタル15にオイル26を注油して含
浸させるようにしても良いし、燒結含油軸受メタル15
に対して、例えばほぼ30℃以上80℃以下の温度に加
熱したオイル26を注油して含浸させるようにしてもよ
いし、例えばほぼ30℃以上80℃以下の温度に加熱し
た燒結含油軸受メタル15に対して、オイル26を注油
して含浸させるようにしても良い。
【0036】ここで、ほぼ30℃以上80℃以下とした
のは、オイルの表面張力は、温度が高いほど小さな値を
示す傾向があるので、注油の際にオイル26が漏れなく
さらに浸透し含浸されるためである。ここで、このオイ
ルの成分としては、例えばポリオレフィン油を挙げるこ
とができる。
【0037】また、具体的に30℃以上としたのは、常
温以上の温度に加熱してオイルの粘度を低下させ、空孔
へのオイルの流入を促進させることができるためであ
り、同様に具体的に80℃以下としたのは、オイルの耐
熱性限界以下の温度までしか加熱できないからである。
【0038】ここで本実施形態において、真空雰囲気中
25でオイル26に浸漬した後、オイル26に浸漬した
ままの状態で、従来の方法によって大気圧まで加圧する
代わりに、大気圧を越えた圧力まで加圧したのは次の理
由による。
【0039】すなわち、この軸受ユニット12は、軸受
部材として上記焼結合油軸受メタル15を用いている。
この焼結含油軸受メタル15は、一般に知られているよ
うに、微細な金属粒子をプレスによって、押し固めた後
で、約1000℃の温度で焼結して製造されている。こ
のため、金属粒子の粒界は、微細な空孔が互いに連通し
ているか独立して存在している。
【0040】注油の際には、微細な空孔にオイルを満遍
なく充填させる必要があるが、従来のように真空雰囲気
中25でオイル26に浸漬した後、オイル26に浸漬し
たままの状態で大気圧(=1.01×105[Pa])
まで加圧するのでは、微細な空孔の隅々にまで満遍なく
充填させることができなかった。従って、本実施形態で
は、例えば1.52×105[Pa]以上の加圧を要し
てこれを解決している。
【0041】これは、次のように理論的に説明される。
すなわち、図7に示すように、毛細管30は、毛細管隙
間をt[cm]、毛細管隙間の半径をR[cm]、オイ
ル26の表面張力をγ×10-2[N/m]、オイル26
と毛細管壁28との接触角をθ[℃]とすると、毛細管
隙間圧力Pは次式(2)で与えられる。
【0042】 P=2γcosθ/R=4×10-1×γcosβ/t [Pa]・・・(2)
【0043】ここで、オイル26と毛細管隙間壁との接
触角βは測定しがたいが0℃に近く、かつ安全側に見る
ならば最悪時はcosθ=1と考えることができるか
ら、上記式(1)のように表現できる。
【0044】ここで、例えば毛細管隙間t=1×10-6
[m](例えば毛細管隙間の半径R=0.5×10
-6[m]とする)とすれば、オイルの表面張力γ=27
×10-3[N/m]より、P=1.08×105[P
a]であり、毛細管隙間の中にオイル26を加圧によっ
て押し込むには最低限で例えば1.08×105[P
a]以上の加圧が必要である。
【0045】そして、実際にこの圧力Pを加えたことに
より、従来起きた注油後のオイル26が軸受ハウジング
17から流出することは防止できた。しかし、焼結合油
軸受メタル15の微細な気孔は、直径で1×10
-6[m]以下も十分に有りうるので、好ましくは上記
1.08×105[Pa]より高い圧力までさらに加圧
することが望ましい。
【0046】さらにオイル26の表面張力は、2×10
-3〜3×10-3[N/m]のバラツキを持つので、1.
1×105[Pa]より高い圧力まで加圧することが望
ましく、また1.52×105[Pa]以上の加圧がよ
り望ましい。
【0047】従って、軸受ユニット12にオイル26を
注油する際には、これらの毛細管隙間へのオイル26の
充填を毛細管隙間圧力を越える圧力を加圧して、オイル
26を毛細管隙間の中に押し込む必要があった。そのた
めには、従来のように大気圧による加圧ではなく、大気
圧を越える圧力での加圧が必要であることが分かった。
【0048】また、注油するオイル26の種類によって
は表面張力γが小さい場合があり、そのため式(3)で
計算される圧力Pが1.01×105[Pa]に満たな
い場合がある。しかし、軸受ユニット22の内部に存在
する毛細管隙間の様子は、十分には把握できないこと及
び、大気圧を越えたできる限り大きな圧力でオイル26
を毛細管隙間に充填させようとする本実施形態の目的か
ら、注油するオイル26の表面張力γが小さくて式
(3)で計算される圧力Pが1.01×105[Pa]
に満たない場合でも、本実施形態では加圧すべき圧力を
1.1×105[Pa]以上とした。
【0049】本発明の第1実施形態によれば、以下のよ
うな効果を挙げることができる。 1)軸受ユニット12は、その内部に存在する毛細管隙
間の内部までオイル26を充填することが可能となり、
注油をより完全なものにすることができる。 2)軸受ユニット12は、注油を完全なものにしたの
で、従来のような注油後に軸受ユニット12のシール部
21のオイル26のメニスカス切れや、シール部21か
らのオイル漏れを防止することができる。 3)従来は注油後のオイル滴れによって軸2に付着した
オイルを拭き取る作業を必要としたが、軸受ユニット1
2には、オイル滴れがないので拭き取る作業をしないで
済むようになる。 4)軸受ユニット12からのオイル漏れが無くなったこ
とにより、ディスク駆動装置1は、回転中のオイル飛散
の問題が無くなる。 5)オイル26の飛散の無いクリーンなディスク駆動装
置1が実現できる。 6)軸受ユニット12はオイル26の飛散がないことか
ら、ディスク駆動装置1の信頼性が向上する。
【0050】オイルの注油法の変形例 図5(A)及び図5(B)並びに図6(A)及び図6
(B)は、それぞれ軸受ユニット12へのオイル26の
注油法の変形例としての第2の注油法の手順の一例を示
す断面図である。上記第1の注油法では、図3(B)に
示すように軸受ユニット12全体をオイル26に浸漬さ
せていたが、第2の注油法では、図5(B)に示すよう
に軸受ユニット12のシール部21の部分のみをオイル
26に浸漬させている。
【0051】このようにすると、第1の注油法では、軸
受ユニット12の全表面にオイルが付着するためにこの
オイルを全て拭き取られなければならず、多くの工数を
要したりオイルの拭き残しのような不良を発生させるお
それがあるかもしれないのに対して、第2の注油法で
は、シール部21以外の部位はオイルに触れないので、
軸受ユニット12に付着したオイルを容易に除去するこ
とができる。
【0052】ところで本発明は上述した実施形態に限定
されるものではない。ディスク駆動装置1の注油法の一
例は、原理的に図3及び図4並びに図5及び図6によっ
て示したが、これらの注油法を設備化した場合にも、本
実施形態は適用される。
【0053】本発明の実施形態における焼結含油軸受メ
タル15は、その軸受部材に用いた動圧軸受のみなら
ず、ラジアル軸受またはスラスト軸受の軸受部材がセラ
ミックスなどの多孔質体であっても、また例えば青銅、
真鍮、ステンレス鋼、またはアルミなどの溶製材の金
属であっても、また例えばプラスチックであっても、こ
れらの単体または複合体であっても同様に適用すること
ができるも。
【0054】上記実施形態は、ハードディスクの回転駆
動装置のみならず、例えばCD−ROM(Compac
t Disc−Read Only Memory)、
DVD(Digital Versatile Dis
c:商標名)、DVD−ROM、DVD−RAM(Di
gital Versatile Disc−Rand
om Access Memory)或いはミニディス
ク(商標名)等のディスク回転装置の他、磁気テープ記
録用の回転磁気ドラム等の磁気テープ記録再生用回転装
置、又はポリゴンミラー回転駆動装置にも適用が可能で
ある。また、本実施形態は、ハードディスクの回転駆動
装置のみならず、例えば磁気テープ記録再生用回転装
置、ポリゴンミラー回転駆動装置等に使用する動圧軸受
に使用することができる。
【0055】上記実施形態の各構成は、その一部を省略
したり、上記とは異なるように任意に組み合わせること
ができる。
【0056】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、
軸受本体に十分な量の潤滑流体を含浸させることができ
る流体軸受の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の好ましい実施形態としての流体軸受が
適用された軸受ユニットを備える回転駆動装置の構成例
を示す断面図。
【図2】図1の軸受ユニットの構成例を示す断面図。
【図3】軸受ユニットへのオイルの第1の注油法の一例
を示す部分断面図。
【図4】軸受ユニットへのオイルの第1の注油法の一例
を示す部分断面図。
【図5】軸受ユニットへのオイルの第2の注油法の一例
を示す部分断面図。
【図6】軸受ユニットへのオイルの第2の注油法の一例
を示す部分断面図。
【図7】毛細管の構成例を示す断面図。
【図8】従来のオイルの注油法の一例を示す部分断面
図。
【図9】従来のオイルの注油法の一例を示す部分断面
図。
【符号の説明】
1・・・ディスク駆動装置(回転駆動装置)、12・・
・軸受ユニット(流体軸受)、15・・・燒結含油軸受
メタル(軸受本体)、17・・・軸受ハウジング(包囲
手段)、21・・・シール部(開口部)、26・・・オ
イル(潤滑流体)、ST1・・・ステップ(除去ステッ
プ)、ST2・・・ステップ(含浸ステップ)、ST3
・・・ステップ(加圧ステップ)、ST4・・・ステッ
プ(大気圧化ステップ)
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き Fターム(参考) 3J011 AA07 BA02 BA04 CA02 DA01 DA02 JA02 KA02 KA03 LA01 LA05 MA21 PA10 QA20 RA03 SB19 SB20 SC20 SD10 5H605 BB05 BB14 BB19 CC04 EB06 GG21 5H607 BB01 BB07 BB09 BB14 BB17 CC01 DD03 DD16 GG01 GG02 GG12 GG15 KK10

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 大気に通じる開口部が設けられた包囲手
    段によって包囲されており、潤滑流体を含浸する隙間が
    形成された軸受本体を備え、 前記隙間から前記潤滑流体が染み出すことで前記軸受本
    体が回転軸を回転自在に支持する流体軸受の製造方法で
    あって、 少なくとも前記開口部を真空雰囲気中に置き、前記開口
    部から前記包囲手段の内部の空気を除く除去ステップ
    と、 前記真空雰囲気中で、前記包囲手段によって包囲された
    前記軸受本体に前記潤滑流体を含浸させる含浸ステップ
    と、 γ:前記潤滑流体の表面張力[10-3×N/m]及び
    t:前記隙間[cm]とした場合に、前記軸受本体に前
    記潤滑流体を含浸させたままの状態にて前記包囲手段の
    内部を、1.1×105[Pa]又は4×10-1×γ/
    t[Pa]のいずれか高い方の圧力以上7×105[P
    a]以下の圧力で加圧する加圧ステップと、 前記包囲手段の内部を大気圧にする大気圧化ステップと
    を有することを特徴とする流体軸受の製造方法。
  2. 【請求項2】 前記含浸ステップでは、前記軸受本体に
    対して、ほぼ30℃以上80℃以下の温度に加熱した前
    記潤滑流体を含浸させることを特徴とする請求項1に記
    載の流体軸受の製造方法。
  3. 【請求項3】 前記含浸ステップでは、ほぼ30℃以上
    80℃以下の温度に加熱した前記軸受本体に対して、前
    記潤滑流体を含浸させることを特徴とする請求項1に記
    載の流体軸受の製造方法。
  4. 【請求項4】 前記含浸ステップでは、前記軸受本体及
    び前記潤滑流体の双方をほぼ30℃以上80℃以下の温
    度に加熱し、加熱した前記軸受本体に対して、加熱した
    前記潤滑流体を含浸させることを特徴とする請求項1に
    記載の流体軸受の製造方法。
  5. 【請求項5】 前記流体軸受は、動圧効果を利用するラ
    ジアル軸受又はスラスト軸受であり、 前記軸受本体の材質は、燒結含油軸受メタル材、セラミ
    ックス、プラスチック又は溶製材の金属のいずれかで構
    成されていることを特徴とする請求項1に記載の流体軸
    受の製造方法。
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