JP2003129858A - ２サイクルエンジン - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】構造が簡単で、振動が小さく、より大きい出力
の得られる２サイクルエンジンを提供することを目的と
する。 【解決手段】１本のシリンダ１の両端に第一クランクケ
ース１２及び第二クランクケース２２が固定され、１シ
リンダ内に第一ピストン１１及び第二ピストン２１が摺
動可能に嵌挿される。第一クランク機構が第一ピストン
に連結し第一クランクケース内に収容され、第二クラン
ク機構が第二ピストンに連結し第二クランクケース内に
収容される。第一出力軸が第一クランク機構のクランク
軸に連結され第一クランクケースから突出して設けら
れ、第二出力軸が第二クランク機構のクランク軸に連結
され第二クランクケースから突出して設けられる。連係
手段が第一出力軸と第二出力軸を連係して同一方向に回
転させるように設けられる。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、対向ピストン式の
２サイクルエンジン（２サイクル内燃機関）に関する。

【０００２】

【従来の技術】クランク軸の１回転、つまりピストンの
２行程で１サイクルの動作を行う２サイクルエンジン
は、４サイクルエンジンのような吸排気バルブが不要な
ど、構造が簡単で、比較的高い出力が得られることか
ら、小形エンジンとして各種の分野で使用されている。

【０００３】

【発明が解決しようとする課題】しかし、一般に使用さ
れる２サイクルエンジンは、クランク軸の１回転で１回
の爆発を行うために振動が大きくなる問題があり、ま
た、小形でより出力を大きく取り出すことができる２サ
イクルエンジンが要望されていた。

【０００４】本発明は、上述の課題を解決するものであ
り、構造が簡単で、振動が小さく、より大きい出力の得
られる２サイクルエンジンを提供することを目的とす
る。

【０００５】

【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するた
めに、本発明の２サイクルエンジンは、１本のシリンダ
と、該シリンダの両端に固定された第一クランクケース
及び第二クランクケースと、該シリンダ内に摺動可能に
嵌挿された第一ピストン及び第二ピストンと、該第一ピ
ストンに連結し該第一クランクケース内に収容された第
一クランク機構と、該第二ピストンに連結し該第二クラ
ンクケース内に収容された第二クランク機構と、該第一
クランク機構のクランク軸に連結され該第一クランクケ
ースから突出して設けられた第一出力軸と、該第二クラ
ンク機構のクランク軸に連結され該第二クランクケース
から突出して設けられた第二出力軸と、該第一出力軸と
該第二出力軸を連係して同一方向に回転させる連係手段
と、を備え、該シリンダに空気と燃料を供給するための
掃気口と該シリンダから排気を行うための排気口が設け
られ、該シリンダの略中央に点火プラグが取り付けられ
たことを特徴とする。

【０００６】ここで、掃気口には空気を供給するための
空気通路と燃料を供給するための燃料供給手段を設け、
外気を吸引すると共に第一ピストン及び第二ピストンの
移動により空気を圧縮する吸気室を第一クランクケース
及び第二クランクケースに設け、吸気室から圧縮された
空気を空気通路に供給する空気管を接続することができ
る。また、連係手段としては、第一出力軸と第二出力軸
に軸着されたプーリに連係ベルトを掛け渡して構成する
ことができる。

【０００７】

【作用】このような構成の対向ピストン式の２サイクル
エンジンは、圧縮行程において、第一ピストンと第二ピ
ストンが中央つまり上死点に向かって移動し、上死点付
近での点火により爆発行程に入ると、第一・第二ピスト
ンが下死点に向かって移動し、下死点付近において排気
口と掃気口が開き、排気と掃気が行われ、シリンダ内に
新気と燃料が供給されて再び圧縮行程に入る。このよう
なピストンの２サイクルで第一・第二出力軸が１回転
し、この動作が繰り返される。

【０００８】

【発明の実施の形態】以下、本発明の一実施形態を図面
に基づいて説明する。図１は対向ピストン式の２サイク
ルエンジンの正面図を示し、図２はその背面図を、図３
はその左側面図を示している。１は1本のシリンダであ
り、シリンダ１の円筒形のシリンダ室内には第一ピスト
ン１１と第二ピストン２１がその先端面を対向させて摺
動可能に嵌挿されている。また、シリンダ１の両端に
は、第一クランクケース１２と第二クランクケース２２
が連通して接続・固定されている。第一クランクケース
１２には第一クランク機構が収容され、第二クランクケ
ース２２には第二クランク機構が収容される。

【０００９】図５の断面図に示すように、第一クランク
ケース１２には第一出力軸１６が軸受１６ａを介して装
着され、第二クランクケース２２には第二出力軸２６が
軸受２６ａを介して装着される。第一出力軸１６は第一
クランク機構としての第一クランク円板１５の第一クラ
ンク軸１４と一体に形成され、第二出力軸２６は第二ク
ランク機構としての第二クランク円板２５の第二クラン
ク軸２４と一体に形成される。第一クランク円板１５に
は第一クランクピン１４ａが偏心位置に設けられ、第二
クランク円板２５には第二クランクピン２４ａが偏心位
置に設けられている。そして、第一クランクロッド１３
が第一クランクピン１４ａと第一ピストン１１の軸１１
ａ間に連結され、第二クランクロッド２３がこの第二ク
ランクピン２４ａと第二ピストン２１の軸２１ａ間に連
結される。

【００１０】また、第一出力軸１６には第一プーリ１７
が軸着され、第二出力軸２６には第二プーリ２７が軸着
され、この第一プーリ１７と第二プーリ２７間に連係ベ
ルト（例えばタイミングベルト）８がかけられる。この
連係ベルト８により、第一出力軸１６と第二出力軸２６
は同じ方向に回転するように連係されると共に、シリン
ダ１内の第一ピストン１１と第二ピストン２１が全く同
じ行程で動作するように連係される。つまり、両ピスト
ン１１，２１が、その圧縮行程で中央に接近するように
移動し、爆発行程で両側に離間するように移動し、この
とき、両側のクランク機構つまり第一クランクロッド１
３と第二クランクロッド２３は、正面側から見た場合、
シリンダ１の中央線Ｃ（図７）上の中心点を対称点とす
る点対称の関係で動作することになる。

【００１１】図７の断面図に示すように、シリンダ１の
中央から第二クランクケース寄りに排気口３が穿設さ
れ、第二クランク機構の第二クランクロッド２３と第二
ピストン２１が下死点に達したとき、この排気口３が開
口するようにその位置が設定される。また、シリンダ１
の中央から第一クランクケース寄りに掃気口２が穿設さ
れ、第一クランク機構の第一クランクロッド１３と第一
ピストン２１が下死点に達したとき、この掃気口２が開
口するようにその位置が設定される。２サイクルエンジ
ンでは、吸気行程と排気行程とを略同時に行うため、吸
気がそのまま排気されないように、排気口３は掃気口２
より大径に形成され、タイミング的には排気口３は掃気
口２より少し早く開くように形成される。

【００１２】すなわち、図７に示すように、シリンダ１
の中心線Ｃから掃気口２の外側縁部までの距離Ｄ１と中
心線Ｃから排気口３の外側縁部までの距離Ｄ２とは等し
く設定され、中心線Ｃから掃気口２の中央側縁部までの
距離Ｄ３と中心線Ｃから排気口３の中央側縁部までの距
離Ｄ４とは距離Ｄ４が距離Ｄ３より短く設定される。こ
れにより、第一ピストン１１と第二ピストン２１が爆発
行程の終わりに下死点付近に達したとき、排気口３が掃
気口２より早いタイミングで開き、排気を開始し、排気
（掃気）を促進するようにしている。

【００１３】排気口３には排気管７が接続され、掃気口
２には空気通路６が接続されると共に、インジェクタ
（燃料噴射弁）５が空気通路を通して燃料を掃気口２に
噴射するように装着される。空気通路６には２系統の空
気管３０，３１が接続される。この２サイクルエンジン
の吸気系はクランク室内圧縮式を採用しており、第一ク
ランクケース１２と第二クランクケース２２内の背面側
から上面側にかけて、図５に示すように、クランク室内
と連通して吸気室１８，２８が各々設けられる。各吸気
室１８，２８には背面側にリードバルブ１９，２９が各
々設けられ、リードバルブ１９，２９の外側に吸気口１
９ａ，２９ａが設けられる。

【００１４】両側の吸気室１８と吸気室２８間は、連通
管３２により連通・接続され、また、吸気室１８は空気
管３０を介して空気通路６に接続され、吸気室２８は空
気管３１を介して空気通路６に接続される。両側の吸気
室１８，２８は各々第一クランクケース１２と第二クラ
ンクケース２２内に連通し、第一ピストン１１と第二ピ
ストン２１がクランクケース側に移動する際、クランク
ケース１２，２２内から吸気室１８，２８内の空気を加
圧し、空気管３０，３１を通して加圧した空気を空気通
路６に送る。また、第一ピストン１１と第二ピストン２
１がシリンダ１の中央側（上死点側）に移動する際、ク
ランクケース１２，２２内から吸気室３０，３１内を負
圧にして、リードバルブ１９，２９を開き、そこから吸
気を行うように動作する。

【００１５】空気通路６にはインジェクタ（燃料噴射
弁）５が燃料を空気通路６から掃気口２へ噴出するよう
に装着される。インジェクタ５に接続された燃料パイプ
は図示しない燃料ポンプに接続され、燃料を加圧して供
給する。インジェクタ５は例えば電磁開閉駆動されるニ
ードル弁を有し、図示しない制御回路等により制御され
た掃気（吸気）のタイミングで燃料を噴射する。また、
シリンダ１の中央に点火プラグ４が装着され、図示しな
い点火回路に接続され、所定の圧縮行程の終わりに点火
動作する。また、図示は省略されているが、点火回路用
のマグネット、スタータ機構などが第一出力軸１６或い
は第二出力軸２６に設けられる。

【００１６】次に、上記構成の２サイクルエンジンの動
作を説明する。連係された第一出力軸１６及び第二出力
軸２６をスタータ機構により一方向に回転させてエンジ
ンを起動すると、２サイクルエンジンであるから、出力
軸の１回転つまりピストンの２行程で圧縮行程、爆発行
程、排気行程、掃気（吸気）行程を行いながら回転す
る。このとき、第一ピストン１１と第二ピストン２１が
略上死点に達したとき、点火プラグ４が点火して爆発行
程が開始され、両ピストン１１，２１がシリンダ１内を
両端に向かって移動する。

【００１７】そして、図７に示すように、両ピストン１
１，２１の下死点付近で、先ず第二ピストン２１の移動
に伴って、排気口３が開き始め、次に第一ピストン１１
の移動に伴って、掃気口２が開き始め、排気が行われる
と共に、空気通路６を通して新気と燃料が供給され、こ
れにより、シリンダ１内が掃気される。

【００１８】そして、両ピストン１１，２１が下死点を
通過して、上昇移動（中央への移動）に入ると、圧縮行
程に入り、排気口３と掃気口２が閉じて、シリンダ１内
の燃料と空気の混合気体が圧縮されていく。そして、上
記と同様に、第一ピストン１１と第二ピストン２１が略
上死点に達したとき、点火プラグ４が点火して爆発行程
に入り、両ピストン１１，２１が再び下死点に向かって
移動する。

【００１９】なお、吸気系では、第一ピストン１１と第
二ピストン２１が下死点に向かって移動する際、第一ク
ランクケース１２と第二クランクケース２２内が圧縮さ
れ、これに伴い第一吸気室１８と第二吸気室２８内が圧
縮され、両吸気室１８，２８内の空気が空気通路６に送
られる。空気通路６の圧力空気は、掃気口２が開いたと
き、インジェクタ５から噴射された燃料と共に、掃気口
２からシリンダ１内に供給される。また、吸気系では、
第一ピストン１１と第二ピストン２１が上死点に向かっ
て移動する際、第一クランクケース１２と第二クランク
ケース２２内が負圧となり、これに伴い第一吸気室１８
と第二吸気室２８内も負圧となって、リードバルブ１
９，２９が開き、吸気口１９ａ，２９ａから空気が両吸
気室１８，２８内に吸気される。

【００２０】このように、両側のピストン１１，２１が
上記のようなサイクルを繰り返す間、両側のクランク機
構のクランク軸１４，２４つまり第一出力軸１６と第二
出力軸２６は、同一方向に回転し、２本の出力軸１６，
２６が連係されて出力軸となり、回転出力が取り出され
る。１シリンダで対向ピストン式の２サイクルエンジン
は、通常の２サイクルエンジンに比べ熱効率、機械効率
共に効率が良く、構造的には、２つのピストン１１，２
１が１本のシリンダ１内を相反方向に移動して運転され
るから、ピストン１１と２１の移動による振動が相殺さ
れ、低振動の２サイクルエンジンとすることができる。
また、単純に２気筒のエンジンを並設した構造のものに
比べ、シリンダを共用して１本とすることができると共
に、点火系、排気系及び吸気系も各々１個にすることが
でき、構造を簡単化して、小型化、軽量化を図ることが
できる。

【００２１】なお、上記実施例では、吸気系として、シ
リンダ室圧縮式の構造のものを使用したが、これに代え
て過給機を設け、過給機で加圧した空気を空気通路６か
ら掃気口２に供給する構造とすることもできる。また、
上記実施例の連係ベルト８は歯車を使用して、第一・第
二出力軸を同一方向に回転させるようにしてもよい。ま
た、上記実施例では、燃料供給のためのインジェクタを
使用したが、他の燃料供給手段を使用することもでき
る。

【００２２】

【発明の効果】以上説明したように、本発明の２サイク
ルエンジンによれば、通常の２サイクルエンジンに比
べ、熱効率、機械効率が改善され、構造的には、２つの
第一・第二ピストンが１本のシリンダ内を相反方向に移
動して運転されるから、ピストンの移動による振動が相
殺され、低振動の２サイクルエンジンとすることができ
る。また、単純に２気筒のエンジンを並設した構造のも
のに比べ、シリンダを共用して１本とすることができる
と共に、点火系、排気系及び吸気系も各々１個に共用す
ることができ、構造を簡単化して、小型化、軽量化を図
ることができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の一実施形態を示す２サイクルエンジン
の正面図である。

【図２】同エンジンの背面図である。

【図３】同エンジンの左側面図である。

【図４】同エンジンの部分平面図である。

【図５】同エンジンの平面に沿った断面図である。

【図６】ピストンが上死点付近の同エンジンの縦断面図
である。

【図７】ピストンが下死点付近の同エンジンの縦断面図
である。

【符号の説明】

１−シリンダ ２−掃気口 ３−排気口 ４−点火プラグ ５−インジェクタ ６−空気通路 ８−連係ベルト １１−第一ピストン １２−第一クランクケース １３−第一クランクロッド １４−第一クランク軸 １６−第一出力軸 ２１−第二ピストン ２２−第二クランクケース ２３−第二クランクロッド ２４−第二クランク軸 ２６−第二出力軸

Claims (3)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 １本のシリンダと、該シリンダの両端に
   固定された第一クランクケース及び第二クランクケース
   と、該シリンダ内に摺動可能に嵌挿された第一ピストン
   及び第二ピストンと、該第一ピストンに連結し該第一ク
   ランクケース内に収容された第一クランク機構と、該第
   二ピストンに連結し該第二クランクケース内に収容され
   た第二クランク機構と、該第一クランク機構のクランク
   軸に連結され該第一クランクケースから突出して設けら
   れた第一出力軸と、該第二クランク機構のクランク軸に
   連結され該第二クランクケースから突出して設けられた
   第二出力軸と、該第一出力軸と該第二出力軸を連係して
   同一方向に回転させる連係手段と、を備え、 該シリンダに空気と燃料を供給するための掃気口と該シ
   リンダから排気を行うための排気口が設けられ、該シリ
   ンダの略中央に点火プラグが取り付けられたことを特徴
   とする２サイクルエンジン。
2. 【請求項２】 前記掃気口には空気を供給するための空
   気通路と燃料を供給するための燃料供給手段が設けら
   れ、外気を吸引すると共に前記第一ピストン及び第二ピ
   ストンの移動により空気を圧縮する吸気室が第一クラン
   クケース及び第二クランクケースに設けられ、該吸気室
   から圧縮された空気を前記空気通路に供給する空気管が
   接続された請求項１記載の２サイクルエンジン。
3. 【請求項３】 前記連係手段として、前記第一出力軸と
   第二出力軸に軸着されたプーリに連係ベルトが掛け渡さ
   れている請求項１記載の２サイクルエンジン。