JP2003128708A - ポリマーの製造銘柄切り替え方法及び装置 - Google Patents

ポリマーの製造銘柄切り替え方法及び装置

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JP2003128708A
JP2003128708A JP2001326081A JP2001326081A JP2003128708A JP 2003128708 A JP2003128708 A JP 2003128708A JP 2001326081 A JP2001326081 A JP 2001326081A JP 2001326081 A JP2001326081 A JP 2001326081A JP 2003128708 A JP2003128708 A JP 2003128708A
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Hiroto Mukoyama
弘人 向山
Yoshinori Kutsuwa
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Sumitomo Chemical Co Ltd
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  • Polymerisation Methods In General (AREA)
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 銘柄変更に伴う格外品の発生を最少に抑え、
効率的に製造銘柄の切り替えを行う方法を提供する。 【解決手段】 連続重合法による重合工程(A)及び重
合されたポリマーを均一に混合する工程(B)を有する
ポリマーの製造プロセスにおける製造銘柄の切り替え方
法であって、工程(B)で均一化された製品の品質値が
銘柄変更前後の各銘柄の製造目標を満足する条件の下で
最適な、工程(A)出口における品質値軌道を銘柄切り
替えの実行前に作成し、銘柄切り替え実行時に、該品質
値軌道を目標として運転条件を制御することを特徴とす
るポリマーの製造銘柄切り替え方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、連続重合プロセス
において多品種のポリマーの生産を行っているポリマー
の製造工場、より詳細には、連続重合法による重合工程
及び重合されたポリマーを均一に混合する工程を有する
ポリマーの製造プロセスにおける製造銘柄の切り替え方
法であって、規格外の製品(以下、格外品という)の発生
を最少に抑え、効率的に製造銘柄の切り替えを行う方法
に関するものである。
【0002】連続重合による重合工程とは、重合反応器
に原料のモノマーや重合開始剤等を連続的に供給し、生
成したポリマーを未反応のモノマー等とともに連続的に
重合反応器から抜き出す工程である。複数の反応器が直
列あるいは並列に設置されていることもある。また一般
に、重合反応器の後に未反応モノマー分離装置を有して
いる。
【0003】ポリマーを均一に混合する工程としては種
々のタイプのものがある。例えば、重合反応器から抜き
出された溶液もしくはスラリー状態のポリマーをタンク
に受け、タンク内を攪拌機で均一に攪拌することによっ
て均一化することができる。あるいは、重合反応器から
抜き出されたポリマーから未反応モノマー等を分離し、
造粒機でペレット化した後、ブレンディングサイロにお
いて、均一化することができる。いずれのタイプも、重
合工程からでてくるポリマーの受け込みと、均一化操
作、排出操作がバッチ処理方式で行われる。本発明を利
用できるのは、以上の2工程を含み、その他に例えば、
造粒工程等を含んで構成された製造プロセスであり、一
例を図1に示す。
【0004】以上のような製造プロセスは、ポリエチレ
ン、ポリプロピレン、ポリスチレン等、多くのポリマー
製造プラントで採用されている。
【0005】
【従来の技術】このようなポリマーの製造プロセスにお
いて、従来一般に行われている製造銘柄の切り替え方法
は、図2に模式的に示すように前銘柄の定常状態から後
銘柄の定常状態へ銘柄切り替え操作を行うものである。
定常状態とは、重合工程からでてくるポリマーの品質値
が、実質的に変化せず時間的に一定に保たれている状態
である。すなわち定常状態では、重合工程から出てくる
ポリマーの品質値が製造目標範囲内で一定に保たれるよ
うに運転条件が調整されている。
【0006】品質値とは、製品ポリマーの品質の指標と
なる数値又は数値の組み合わせであり、メルトフローレ
ート(MFR),ビカット軟化点(VSP),密度等の物性値,数
平均分子量,重量平均分子量,分散指数(重量平均分子
量/数平均分子量),共重合組成比等の分子構造値,添
加剤やフィラーの添加量等の組成値で表される。製造目
標としては、これらの特性の中からポリマーの種類や製
品の用途等に応じて選ばれた特性について、特定の値又
は範囲が決められている。一般的には、物性値について
決められた品質規格が製造目標とされる。製品の品質値
を所望の値に保つために調整する運転条件には、重合工
程へのモノマー、コモノマー、重合開始剤、分子量調整
剤等のフィード量、重合反応器内の温度や液面高さ、圧
力等がある。
【0007】定常状態において前銘柄の生産数量が所定
数量に達した時点で、運転条件の変更操作を開始し、銘
柄切り替えが始まる。このとき、運転条件の変更操作
は、事前に設定された運転条件の変更パターンに従って
行われる。変更パターンの設定には、過去の経験に基づ
き過去に最も結果がよかったパターンを設定する方法
や、ダイナミックシミュレータを用いて、種々の変更パ
ターンで銘柄切り替えを模擬的に行い、もっともよい変
更パターンを設定する方法等がある。
【0008】変更操作を開始した後、重合工程出口のポ
リマーの品質値が変化し始める。これが前銘柄の許容範
囲を外れると、これ以降取り出されるポリマーは最終的
に格外品となる。以下、このタイミングを第1仕切りと
呼ぶ。また、運転条件が後銘柄の定常状態に対応する条
件になった後、その条件のままで保持される。その後、
重合工程出口のポリマーの品質値が後銘柄の許容範囲に
入れば、それ以降に取り出されるポリマーが均一化工程
を経て後銘柄の正規の製品(正規品)となる。以下、この
タイミングを第2仕切りと呼ぶ。これで銘柄切り替えが
終了する。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】従来技術においては、
格外品の発生量を最小に抑えるためには、前銘柄の定常
状態から後銘柄の定常状態に最短時間で到達するような
運転条件の変更パターンが選ばれる。つまり、定常状態
から定常状態に最短時間で到達することを目的とした最
適化が行われる。
【0010】しかしながら、製造プロセスには種々の制
約条件、例えば運転条件の上限値や下限値、あるいは運
転条件の変化速度の上限値や下限値等があり、これらの
うちのいくつかの制約条件によって、後銘柄の定常状態
に到達するまでの最短時間が決まってしまい、それ以上
短縮することができない。そのため、最短時間で切り替
えを終わらせたとしても、切り替え途中で多くの格外品
が発生してしまう。
【0011】本発明は係る問題点を解決するために考案
されたものであり、格外品の発生を最少に抑え、効率的
に製造銘柄の切り替えを行う方法に関するものである。
【0012】
【課題を解決するための手段】本発明のうち第一の発明
は、連続重合法による重合工程(A)及び重合されたポ
リマーを均一に混合する工程(B)を有するポリマーの
製造プロセスにおける製造銘柄の切り替え方法であっ
て、工程(B)で均一化された製品の品質値が銘柄変更
前後の各銘柄の製造目標を満足する条件の下で最適な、
工程(A)出口における品質値軌道を銘柄切り替えの実
行前に作成し、銘柄切り替え実行時に、該品質値軌道を
目標として運転条件を制御することを特徴とするポリマ
ーの製造銘柄切り替え方法に係るものである。本発明の
うち第二の発明は、前記工程(A)及び工程(B)を有
するポリマーの製造プロセスにおける製造銘柄の切り替
え装置であって、工程(B)において均一化された製品
の品質値が銘柄変更前後の各銘柄の製造目標を満足する
条件の下で最適な、工程(A)出口における品質値軌道
を作成する手段をコンピュータで実行する最適品質値軌
道作成システムと、該品質値軌道を目標として運転条件
を制御する手段をコンピュータで実行する品質制御シス
テムとを備えたことを特徴とするポリマーの製造銘柄切
り替え装置に係るものである。
【0013】
【発明の実施の形態】上記課題を解決するため、請求項
1に記載の銘柄切り替え方法は、連続重合法による重合
工程(A)及び重合されたポリマーを均一に混合する工
程(B)を有するポリマーの製造プロセスにおける製造
銘柄の切り替え方法であって、工程(B)で均一化され
た製品の品質値が銘柄変更前後の各銘柄の製造目標を満
足する条件の下で最適な、工程(A)出口における品質
値軌道を銘柄切り替えの実行前に作成し、銘柄切り替え
実行時に、該品質値軌道を目標として運転条件を制御す
ることを特徴とするポリマーの製造銘柄切り替え方法で
ある。
【0014】すなわち本発明の特徴は、定常状態から定
常状態に最短時間で到達することを目的とせず、図3に
示すように常に非定常状態のまま、格外品発生量が最小
の非定常な軌道に沿って銘柄を切り替えることを目的と
して最適化を行う点にある。
【0015】品質値軌道とは、重合工程から出てくるポ
リマーの品質値の時間的な推移を表すものであり、図4
に書き表し方の例を示す。例えば、(a)のように一定
間隔に決められた各時刻における品質値を書き並べるこ
とによって表すことができる。あるいは、(b)のよう
に特定の関数形を定めておき、その係数を指定すること
によって表すことができる。なお、図4では品質値軌道
を時間の関数として表しているが、その代わりに累積生
産量の関数として表すこともできる。
【0016】製造目標は、MFR,VS,P,密度等の物性に
対して決められていることが多いが、分子量,共重合組
成比等の分子構造や添加剤やフィラーの添加量等の組成
と物性との関係が分かっている場合には、分子構造及び
組成の軌道を作成することが望ましい。物性値の軌道を
作成する場合より、品質値の制御が容易である。
【0017】また、品質値軌道上には、第1仕切り及び
第2仕切りの時刻が指定される。第1仕切りの時刻は、
品質値軌道の起点から前銘柄の最後のロットの所定生産
量に達するまでの時間で計算され、第2仕切りから軌道
の終点までの時間は、後銘柄の最初のロットの所定生産
量で計算される。第1仕切り及び第2仕切りの時刻は、
後で説明するように最適軌道を算出した結果として決ま
る。ここで、ロットとは均一化工程において1回の均一
化操作で処理する単位であり、その数量は生産計画で決
められる。
【0018】最適な品質値の軌道を作成するために種々
の方法を利用することができる。好ましい方法として、
非線形計画法,遺伝的アルゴリズム,シミュレーテッド
アニーリング等を例示することができる。以下、非線形
計画法を例に取って、作成法を具体的に説明する。
【0019】非線形計画法は、決定変数、目的関数、制
約条件の3要素から構成され、すべての制約条件を満た
す範囲内で目的関数が最小又は最大となる決定変数を算
出する方法である。ここで決定変数とは最適解として得
たい値又はベクトルである。
【0020】目的関数とは最適化の目的を決定変数によ
って表した関数であるが、必ずしも決定変数とパラメー
タのみで書かれた式でなくても、決定変数を与えれば値
を計算できるような関数であればよい。制約条件は、決
定変数が取り得る範囲を規定する等式又は不等式からな
る。なお、目的関数や制約条件の中に非線形な式が含ま
れていても構わない。
【0021】ここでは、最適な品質値軌道を求めるため
に、図4(b)のように関数の係数を指定した品質値軌
道ベクトルを決定変数とする。なお、このベクトルには
第1仕切り時刻と第2仕切り時刻も要素として含んでい
る。
【0022】目的関数は、格外品の発生量もしくは銘柄
切り替えの所要時間とする。格外品の発生量は第1仕切
りと第2仕切りの間の生産量で計算でき、銘柄切り替え
の所要時間は、軌道の起点から終点までの時間で計算で
きる。さらに、必要に応じて、他の目的を加えた多目的
の目的関数を設定してもよい。
【0023】制約条件の第1は、均一化された製品の品
質値が銘柄切り替え前後の各銘柄の製造目標を満足する
ことである。すなわち、正規品区間での品質値の積分値
が、製造目標の範囲内になくてはならないという制約条
件である。満足させなければならない製造目標には多く
の項目があるが、すべての項目を満足させるためには分
子量分布や共重合組成分布等の広がりが特定の範囲にな
ければならない。均一化の対象になるポリマーの品質値
が広い範囲にまたがっている場合には、分子量分布や共
重合組成分布等は広くなる。このことから、第1仕切り
及び第2仕切りのタイミングは制限される。
【0024】第2に、品質値軌道上の各点の値やその勾
配の制限がある。まず品質値軌道は連続でなければなら
ない。つぎに、重合開始剤や分子量調整剤のフィード
量、重合温度や圧力等の運転条件に関する上下限やそれ
らの変更速度に関する上下限のような条件から最大値や
最小値及び勾配に制限を生じる。あるいは、製品の品質
面で、分子量分布や組成分布等の許容範囲の条件から品
質値軌道上の各点の値、勾配に制限を生じることもあ
る。例えば、平均分子量の勾配が大きいと、そのときの
分子量分布は広いものになり、分子量分布の許容範囲に
より平均分子量の軌道の勾配が制限されることがある。
【0025】その他、工場毎に固有の制約条件を定式化
するが、計算量を少なくするために近似的あるいは便宜
的な制約条件を付加してもよい。
【0026】以上のように決定変数、目的関数、制約条
件を定式化すれば、公知の非線形計画法のアルゴリズム
(パウエル法、逐次2次計画法など)を用いることによ
って最適な決定変数、すなわち最適な品質値軌道が得ら
れる。
【0027】銘柄切り替え実行時に、品質値軌道を目標
として、運転条件を制御する手段としては、種々の公知
の方法を利用することができる。好ましい方法としてモ
デルベースト制御を例示することができる。モデルベー
スト制御とは、重合温度、重合開始剤のフィード量等、
運転条件に関する操作量と重合工程出口におけるポリマ
ーの品質値との関係を、数理モデルとして持っており、
その数理モデルに基づいて目標の品質値が得られる状態
を実現するために最適な操作量を計算する制御方法であ
る。使用する数理モデルのタイプによって種々の方式が
あり、例えば物理モデル(ダイナミックシミュレーショ
ンモデル)を用いる方式、線形のステップ応答モデルあ
るいはインパルス応答モデルを用いる方式(モデル予測
制御)、ファジィモデルを用いる方式(ファジィ制御)
等がある。
【0028】本発明の銘柄切り替え方法は、コンピュー
タを利用した銘柄切り替え装置を用いることにより、容
易に実行することができる。すなわち、工程(B)にお
いて均一化された製品の品質値が銘柄変更前後の各銘柄
の製造目標を満足する条件の下で最適な、工程(A)出
口における品質値軌道を作成する手段をコンピュータで
実行する最適品質値軌道作成システムと、該品質値軌道
を目標として運転条件を制御する手段をコンピュータで
実行する品質制御システムとを備えたことを特徴とする
ポリマーの製造銘柄切り替え装置を使用して実行するこ
とができる。このような銘柄切り替え装置を用いること
により、煩雑な作業が省力化され、間違いがなく、また
担当者によるばらつきもない銘柄切り替えを自動的に行
うことができる。
【0029】
【実施例】以下に実施例を示し、本発明を更に詳細に説
明する。ここでは、図1に示したプロセスで製造される
汎用ポリスチレン(GPPS)の製造を例に取って説明する。
実際のプロセスは多くの装置で構成され、モノマー、重
合開始剤、ミネラルオイル、その他種々の原料がそれぞ
れ所定の装置に投入されているが、説明の煩雑を避ける
ため、以下のような簡単なプロセスであるものとして説
明する。すなわち、重合反応装置と未反応モノマー回収
装置で構成された重合反応工程にモノマーと重合開始剤
が連続的に投入され、生成したポリマーは、造粒装置で
ペレット化した後、チェックサイロに送られる。チェッ
クサイロでは、所定量のペレットが受け込まれると、受
け込み先が別のチェックサイロに切り替えられ、異なる
銘柄のペレットが混入することを避ける一方、受け込み
の終わったペレットは一括してブレンディングサイロに
移送し、ブレンディングサイロにおいて均一化処理され
た後、製品となる。製品の品質値を制御するための運転
条件は、モノマー投入量、重合開始剤投入量及び重合温
度の3項目であるものとして説明する。なお、造粒装置
出口では、2時間毎にペレットのMFRが実測されている。
また、均一化処理の終了した製品はロット毎に、MFR及
びその他の物性が実測され、製造目標を満足しているか
どうか確認される。
【0030】図5に、この実施例で用いた銘柄切り替え
装置の構成を示す。この装置は、実際にプラントを制御
する分散型制御システム(DCS)、銘柄切り替え時の品質
制御等の高度な制御やプロセスデータの収集解析などの
機能を有するプロセスコンピュータ、生産スケジュール
や銘柄毎の製造目標を管理する機能をもった操業管理コ
ンピュータで構成されている。DCSとプロセスコンピュ
ータはゲートウェイを介して接続されており、プロセス
コンピュータと操業管理コンピュータとはLAN(ローカル
エリアネットワーク)を介して接続されている。
【0031】操業管理コンピュータには、生産計画デー
タベース、銘柄データベースと最適品質値軌道算出プロ
グラムで構成された最適品質値軌道作成システムが備え
られている。生産計画データベースには生産する順番を
表す生産番号をインデックスとして、銘柄名,所定生産
量、ロット毎の所定生産量等のデータが格納されてお
り、銘柄データベースには銘柄名をインデックスとし
て、銘柄毎の製造目標値及び品質規格範囲のデータが格
納されている。図6に生産計画データベースに格納され
ているデータの一例を、図7に銘柄データベースに格納
されているデータの一例を示す。
【0032】最適品質値軌道作成システムは、操業管理
コンピュータの入力端末から生産番号と起動命令を入力
することにより起動し、入力された生産番号にあたる銘
柄からその次の銘柄への切り替えに関して最適品質値軌
道を算出する。そのため、起動すると指定された生産番
号とその次の番号の銘柄名及び所定生産量のデータを生
産計画データベースから読み込み、次に読み込まれた銘
柄に対応する製造目標のデータを銘柄データベースから
読み込み、これらの読み込まれたデータを基にして非線
形計画法(パウエル法)を用いた最適化計算により、最
適品質値軌道を算出するようプログラムされている。
【0033】ここで、製造目標は、MFRのような物性値
で表されているが、それらはポリマーの分子量で決まる
ので、分子量の軌道ベクトルを最適化計算における決定
変数としている。分子量は分布をもっているが、平均分
子量の軌道が決まれば、分子量分布の軌道は従属的に決
まってしまうので、分子量の代表として重量平均分子量
を採用し、重量平均分子量の軌道を作成している。すな
わち、決定変数は重量平均分子量の軌道ベクトルであ
る。但し、図8に示すように、重量平均分子量の軌道は
3つの三次関数を連続に接続したものとして表現し、こ
れらの関数の係数を要素とするベクトルを決定変数とし
ている。
【0034】最適化における目的関数は図8に示すよう
に、前銘柄の最終ロットの生産開始時から、後銘柄の第
1ロットの生産終了までの所要時間とし、この時間が最
少となるような軌道を算出している。これによって、格
外品の発生量が最少である品質値軌道を求めることがで
きるが、格外品の発生量がゼロである品質値軌道が複数
ある場合には、それらのうちで生産性の最も高いものを
選択することができる。
【0035】制約条件には、種々のものがあるが主要な
ものを図9に示す。図9の(1)式は均一化された製品
の物性値が銘柄切り替え前後の各銘柄の製造目標を満足
しなければならないことを表している。ここで、重量平
均分子量が同じでも分子量分布が異なれば物性バランス
が異なる製品、例えばMFRが同じでも衝撃強度が異なる
製品になる。したがって、すべての物性値に関する製造
目標を満足させるためには、分子量分布の広がりが特定
の範囲内に収まっていなくてはならない。そこで、図9
の(2)式のように、均一化後の製品ポリマーの分子量
分布の広がり(分散指数)に上下限を設定した。この制
限によって、物性値は特定の平均分子量、例えばMFRで
は重量平均分子量を使って精度よく計算でき、分子量分
布を考慮する必要がなくなるため、少ない計算量で済
む。
【0036】図9の(3)式は、前銘柄と後銘柄それぞ
れの生産量は、生産計画データベースから読み込まれた
所定値でなければならないことを表している。図9の
(4)式は、重合速度は最大許容重合速度とすることを
表している。最大許容重合速度は、攪拌機や移送ポンプ
等の処理能力で制限され、重合反応装置で生成されるポ
リマーの分子量に応じて決まり、重量平均分子量の関数
として表されている。
【0037】図9の(5)式は、重量平均分子量の軌道
は連続でなければならないことを表しており、図9
(6)式はその勾配が連続でなければならないことを表
している。特に時刻ゼロの状態は、その前の運転履歴で
決まり、変えることはできない。また、後銘柄の第1ロ
ット終了後に定常状態になる場合には、軌道の終点での
勾配をゼロとし、そのときの物性が後銘柄の製造目標を
満足することを制約条件に設定する。図9の(7)式
は、重量平均分子量の軌道の勾配に上下限があることを
表している。これは運転条件を急激に操作できないこと
及び暴走反応を避ける観点から運転条件の変化速度に制
限があることによって生じている制約条件である。上下
限値は、実際にはプロセスの状態に応じて複雑に変化す
る関数であるが、計算に要する時間を短くするため便宜
的に定数とし、起こり得る種々の条件でダイナミックシ
ミュレーションを行い、その結果から常に実行可能な最
大値及び最小値を求めて設定されている。なお、重量平
均分子量の勾配は、品質値の製造目標を満足させるため
に、分子量分布の広がりを抑える必要があるという点か
らも制限を受けるが、これは図9の(1)式で表現され
ている。
【0038】以上のように定式化された最適化問題を非
線形計画法(パウエル法)を用いて解くことにより、最適
品質値軌道が算出される。算出された最適品質軌道は、
図10のような品質値軌道データファイルに書き込ま
れ、プロセスコンピュータに転送されるとともに端末に
も表示され、担当者が確認することができる。
【0039】品質制御システムは、図11に示すように
構成されており、生成するポリマーの分子量及び重合速
度を制御している。モデルベースト制御器はプロセスコ
ンピュータ上にあり、12分周期で目標値と品質のフィ
ードバック値を参照して、運転条件、すなわちモノマー
投入量、重合開始剤投入量、重合温度を決定し、DCS上
の各制御器の設定値としている。DCS上にはモノマー投
入量、重合開始剤投入量、重合温度のそれぞれにPID制
御器があり、設定された運転条件になるようにプラント
のバルブの開度やポンプのストローク等を調整してい
る。
【0040】モデルベースト制御器の目標値は、DCSか
ら生産実績数量を読み込み、品質値軌道データファイル
を対比することによって算出される。生産実績数量は、
造粒装置出口で計量されており、DCSにおいて積算され
ているが、積算値は第1仕切り時及び第2仕切り時にリセ
ットされゼロに戻るように設定されている。
【0041】品質のフィードバック値は、運転条件を入
力し重合工程出口でのポリマーの分子量、さらには造粒
装置出口でのポリマーのMFRを推定するダイナミックシ
ミュレータにより算出される。このダイナミックシミュ
レータに組み込まれている重合反応モデル上のパラメー
タは、造粒装置出口で2時間毎に実測されるMFR値と推定
値との誤差を小さくするように逐次修正されており、図
12(3)に示すようにプラントの挙動を十分よく表現
できているため、分子量を実測する代わりにダイナミッ
クシミュレータの推定値をフィードバック値として使う
ことができる。
【0042】モデルベースト制御器において運転条件の
設定値は、上記のダイナミックシミュレータに用いられ
ているモデルにおいて、入力変数を12分後の重合工程
出口でのポリマーの重量平均分子量の目標値、及び現在
のフィードバック値とし、出力変数を運転条件として解
くことによって決定している。但し、モデル式の自由度
が大きく解が1つに決まらないため、条件の変化が小さ
いこと、及び原単位を最少にすることを目標にした経験
的なルールを追加することによって、一意の解を得てい
る。
【0043】この銘柄切り替え装置を使用して、図6に
示す生産計画に従って銘柄切り替えを行った。ここで
は、銘柄Aから銘柄Bへの銘柄切り替えについて説明す
る。銘柄毎の製造目標には図7を用いた。
【0044】生産計画が確定した後、品質値軌道作成シ
ステムにより品質値軌道の作成を行った。銘柄Aの所定
生産量は第1ロットの所定生産量と同じであるから、第1
ロットは最終ロットでもある。したがって、銘柄Xから
銘柄Aへの切り替えの軌道上の第2仕切り時刻が、この
銘柄切り替えの時刻ゼロに当たる。すでに銘柄Xから銘
柄Aへの切り替えの軌道は確定しているが、その軌道上
の第2仕切り時刻以降は無視され銘柄AからBへの切り
替えの軌道として再計算される。そのとき、この第2仕
切り時刻での品質値とその勾配が銘柄AからBへの切り
替えの軌道の起点での制約条件として設定される。
【0045】また、銘柄Bの所定生産量は、第1ロット
の所定生産量と最終ロットの所定生産量の合計より多い
ので、その中間のロットは定常状態で生産する。したが
って、銘柄AからBへの切り替えの軌道の終点での勾配
はゼロであり、そのときの物性は銘柄Bの製造目標を満
足するように計算される。
【0046】品質値軌道作成システムにより作成された
最適品質値軌道を図12に示す。図12において(1)
図はパウエル法で算出された重量平均分子量の最適軌道
である。(2)図は重量平均分子量の軌道から算出され
た分子量分布の軌道である。(3)図には上記の(1)
及び(2)の分子量の軌道から計算されたMFRの軌道
(計画)と銘柄切り替えの実施結果を合わせて表示し
た。銘柄A,Bの均一化後の物性値はすべて製造目標を
満足するものであり、銘柄Aの生産開始から第1仕切り
までの時間は21.2時間、第1仕切りと第2仕切りの間の
時間は0、第2仕切りから銘柄Bの第1ロットの生産終
了までの時間は22.8時間であった。すなわち格外品は発
生しない軌道が得られた。
【0047】以上のように算出された品質値軌道に沿っ
て銘柄切り替えを実施した結果、格外品が発生すること
なく銘柄切り替えを完了し、図13に示すように銘柄
A,Bともに品質規格を満足する製品であった。なお、
図13には、MFRのみを掲げているが、VSP、IZOD衝撃強
度、曲げ弾性率を始めとする他の諸物性はいずれも品質
規格を満足していた。
【0048】
【発明の効果】上記の説明のように、本発明により銘柄
変更に伴う格外品の発生を最少に抑え、効率的に製造銘
柄の切り替えを行う方法を提供できた。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明が対象とするポリマーの製造プロセスの
一例を示した図である。
【図2】従来技術による銘柄切り替え方法の例を模式的
に説明した図である。
【図3】本発明における品質値軌道の例を模式的に説明
した図である。
【図4】本発明における品質値軌道の表し方の例を示し
た図である。
【図5】本発明による銘柄切り替え装置のシステム構成
例を説明した図である。
【図6】実施例1における生産計画データベースのデー
タ構造を模式的に説明した図である。
【図7】実施例1における銘柄データベースのデータ構
造を模式的に説明した図である。
【図8】実施例1において、パウエル法により最適品質
値軌道を算出するための決定変数と目的関数を説明した
ものである。
【図9】実施例1において、パウエル法により最適品質
値軌道を算出するための制約条件として定式化された式
を説明したものである。
【図10】実施例1における最適品質値軌道ファイル品質
値軌道データファイルの構造を模式的に説明した図であ
る。
【図11】実施例1の品質制御システムの構成を説明した
図である。
【図12】実施例1の銘柄切り替えにおいて、事前に作成
された最適品質値軌道と銘柄切り替えの実施結果を表す
グラフである。
【図13】実施例1の銘柄切り替えを実施した結果を示す
表である。

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 連続重合法による重合工程(A)及び重
    合されたポリマーを均一に混合する工程(B)を有する
    ポリマーの製造プロセスにおける製造銘柄の切り替え方
    法であって、工程(B)で均一化された製品の品質値が
    銘柄変更前後の各銘柄の製造目標を満足する条件の下で
    最適な、工程(A)出口における品質値軌道を銘柄切り
    替えの実行前に作成し、銘柄切り替え実行時に、該品質
    値軌道を目標として運転条件を制御することを特徴とす
    るポリマーの製造銘柄切り替え方法。
  2. 【請求項2】 前記工程(A)及び工程(B)を有する
    ポリマーの製造プロセスにおける製造銘柄の切り替え装
    置であって、工程(B)において均一化された製品の品
    質値が銘柄変更前後の各銘柄の製造目標を満足する条件
    の下で最適な、工程(A)出口における品質値軌道を作
    成する手段をコンピュータで実行する最適品質値軌道作
    成システムと、該品質値軌道を目標として運転条件を制
    御する手段をコンピュータで実行する品質制御システム
    とを備えたことを特徴とするポリマーの製造銘柄切り替
    え装置。
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Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2008542497A (ja) * 2005-06-03 2008-11-27 ユニベーション・テクノロジーズ・エルエルシー 反応移行の間のオフグレード製品の生産を減らす方法
JP2010023417A (ja) * 2008-07-23 2010-02-04 Sumitomo Chemical Co Ltd 熱可塑性樹脂のペレットの製造方法
JP2014111740A (ja) * 2012-11-02 2014-06-19 Asahi Kasei Chemicals Corp 熱可塑性樹脂の製造方法

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