JP2003119594A - アルミニウム合金からなる加工材およびその表面処理方法 - Google Patents

アルミニウム合金からなる加工材およびその表面処理方法

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JP2003119594A
JP2003119594A JP2001312423A JP2001312423A JP2003119594A JP 2003119594 A JP2003119594 A JP 2003119594A JP 2001312423 A JP2001312423 A JP 2001312423A JP 2001312423 A JP2001312423 A JP 2001312423A JP 2003119594 A JP2003119594 A JP 2003119594A
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treatment
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electrolytic
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Masatoshi Hirai
正敏 平井
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Shokosha KK
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Shokosha KK
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 表面に錆などが発生することなく耐食性に優
れ、しかも光沢のある透明な美しい鏡面を表出させて、
自動車用ホイールなどとして最適に使用できるアルミ合
金からなる加工材とその表面処理方法を提供する。 【解決手段】 アルミニウム合金からなる加工材に機械
的研磨処理を施して化学研磨処理を行った後、交流で電
解処理する。加工材は、表面に9.6以上の耐食度があ
り、かつ光沢度が55%以上の鏡面が形成されている。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、例えば自動車用
ホイールや自転車の部品などとして用いられるアルミニ
ウム合金(以下、これを単にアルミ合金と略称する)から
なる加工材とその表面処理方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術および発明が解決しようとする課題】近
年、自動車物品などの加工材は、軽量化のためアルミ合
金で形成されることが多い。アルミ合金(特に、Mgや
MgとSiを含む合金)は、鉄材と比較して軽量であ
り、しかも強度も遜色ない程度に大きいことから、鉄材
に代えて多く使用されている。しかし、上記アルミ合金
は、表面に梨地状の生地面が表出していて外観が悪いの
で、そのままでは外面に露出する例えば自動車用ホイー
ルなどの加工材としては使用できない。そこで、塗料を
塗布することが行われているが、塗料を塗布した場合は
加工材自身が具有する独特の金属感は表出されない。し
かも、最近自動車用ホイールなどにおいては、耐食性に
優れているだけではなく、表面に光沢のある鏡面を表出
させたり、これの表面を着色したりして意匠性を高める
ことが要求されている。
【0003】本発明者らは、既存の設備を用いながら、
アルミ合金からなる加工材の意匠性を高めるために、次
のことを試みた。アルミニウムやその合金の表面処理方
法として通常行われている公知の直流電解法を用いて、
アルミ合金からなる加工材の表面に多数の孔隙を有する
酸化皮膜を形成し、これに染色処理を施し、つまり孔隙
に染料を沈積させてから、封孔処理することにより、加
工材の表面を着色して外観を高めることを試みた。
【0004】しかし、この方法のように染料を用いる場
合、染料は紫外線の影響を受けて分解し易いので、自動
車用ホイールなどとして使用するとき、経時的に色落ち
が起こり、これにより外観の悪化を招くことになる。ま
た、以上の直流電解法による場合は、アルミ加工材の表
面に直線状の単純構造の孔隙が形成されるので、これに
封孔処理を施しても経時的に耐食性が低下するのは避け
られず、表面に錆などが発生し易くなる。しかも、上記
の方法によっては、加工材の表面に光沢のある鏡面は表
出させることができない。
【0005】本発明者らは、以上のことを考慮してさら
に研究を続けた結果、次のことに着目した。先ず、アル
ミ合金からなる加工材に羽布研磨などの機械的研磨処理
を施した後に、リン酸浴などで化学研磨処理を施せば、
つまり二段階にわたる研磨処理を施せば、加工材の表面
に光沢に富む美しい鏡面を表出させられる。なお、加工
材を機械的研磨処理しただけでは、表面に凹凸が残るの
で光沢に富む鏡面は得られず、二段階にわたる研磨処理
によって始めて光沢に富む美しい鏡面が獲られる。ま
た、以上のように処理された加工材を交流で電解処理す
れば、より光沢に富む透明な美しい鏡面が得られると同
時に、電解時に極性が変動することによって、縦横に絡
み合ったような複雑な構造の孔隙を有する酸化皮膜が表
面に形成され、この孔隙を封孔処理することによって耐
食性を向上させられる。さらに、電解処理時に硫酸浴を
用いて交流により電解処理すれば、後の工程で行う封孔
処理浴として各種の金属が添加された浴を使用すること
により、これらの金属と酸化皮膜に生成された硫黄成分
とで金属硫化物が形成されて、酸化皮膜の孔隙内に沈積
する。これにより得られる酸化皮膜が金属硫化物の色に
発色して意匠的外観が高められ、また、この金属硫化物
は紫外線によって分解し難いので、色落ちによる外観の
悪化を阻止できることを見出した。
【0006】そして、以上のような知見のもとに本発明
を完成するに至った。しかして、本発明の目的は、表面
に錆などが発生することなく耐食性に優れ、しかも光沢
のある透明な美しい鏡面を表出させて、自動車用ホイー
ルなどとして最適に使用できるアルミ合金からなる加工
材とその表面処理方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するた
め、本発明のアルミ合金からなる加工材は、9.6以上
の耐食度があり、かつ光沢度が55%以上の鏡面が表面
に形成されている。ここで、耐食度は、JIS H 8
681に基づきキャス試験8時間を行った結果得られた
レイティングナンバ(RM)の値である。このとき、耐
食度が9.6よりも低い場合は、目視可能な多数の腐食
傷が発生して商品価値の低下を招くので、外観を高める
ためには、耐食度を9.6以上にする必要がある。ま
た、光沢度は、光度計(グロスチェッカ16−330
株式会社堀場製作所製)を用い、入射角60度で測定し
たときの値である。このとき、光沢度が55%よりも低
い場合は、やや曇ったような浅い感じの反射面となって
深みのある透明な美しい鏡面とはならないので、光沢度
は55%以上にする必要がある。
【0008】このように、9.6以上の耐食度があり、
かつ光沢度が55%以上の鏡面が表面に形成された加工
材は、耐食性に優れ、しかも光沢のある美しい透明な鏡
面が表出されて、外観が意匠的に優れたものとなる。こ
のため、特に自動車用ホイールとして好適に用いること
ができる。
【0009】また、本発明のアルミ合金からなる加工材
は、9.6以上の耐食度があり、かつ光沢度55%以上
の着色された鏡面が表面に形成されている。
【0010】このように、表面に耐食性があって着色さ
れた光沢のある美しい透明な鏡面を有する加工材は、特
に外観が意匠的に優れたものとなる。このため、特に自
動車用ホイールとして最適に用いることができる。
【0011】本発明の加工材の表面処理方法は、アルミ
ニウム合金からなる加工材に機械的研磨処理を施して化
学研磨処理を行った後、交流により電解処理して封孔処
理を行う。
【0012】この方法により、目的とする加工材が既存
の設備を利用して確実かつ容易に、しかも既存の設備を
用いて低コストで得られる。しかも、加工材には、機械
的研磨と化学研磨の二段階にわたる研磨処理が施される
ので、加工材の表面に光沢に富む透明な美しい鏡面が表
出する。また、以上のように処理された加工材は、交流
で電解処理されるので、より光沢に富む美しい鏡面が得
られると同時に、電解時に生じる極性の変動により縦横
に絡み合ったような複雑な構造の孔隙を有する酸化皮膜
が表面に形成される。このため、酸化皮膜の孔隙を封孔
処理することにより耐食性が向上する。
【0013】上記方法においては、封孔処理に際して、
着色処理を行う方法を採用することも可能であり、たと
えば、電解処理によって形成された孔隙内に残存した電
解浴の成分と結合する成分をもって封孔処理を行い、着
色処理を行うことが可能である。具体的には、電解処理
に硫酸浴を用い、かつ封孔処理に酢酸ニッケル浴を用い
て表面を着色するようにしてもよい。これによれば、封
孔処理時に酢酸ニッケルと酸化皮膜に生成された硫黄成
分とで硫化ニッケル(NiS)が形成されて酸化皮膜の
孔隙内に沈積し、この酸化皮膜が硫化ニッケルにより黒
色に発色する。そして、酸化皮膜が鏡面処理されている
ので、全体が、光沢があって深みのあるクロムメッキ色
のような黒色に発色する。また、この硫化ニッケルは紫
外線によって分解し難いので、色落ちによる外観の悪化
はなくなる。
【0014】また、上記方法においては、電解処理に硫
酸浴を用い、かつ封孔処理に酢酸コバルト浴を用いて、
表面を着色するようにしてもよい。これによれば、封孔
処理時に酢酸コバルトと酸化皮膜に生成された硫黄成分
とで硫化コバルト(CoS)が形成されて酸化皮膜の孔
隙内に沈積し、この酸化皮膜が硫化コバルトにより黒色
に発色する。そして、酸化皮膜が鏡面処理されているの
で、前記場合と同様に、全体が、光沢があって深みのあ
るクロムメッキ色のような黒色に発色する。また、この
硫化コバルトは紫外線によって分解し難いので、色落ち
による外観の悪化はなくなる。
【0015】また、上記方法においては、電解処理に際
して、着色処理を行う方法を採用することも可能であ
り、たとえば、電解処理によって形成される孔隙内に、
電解浴の成分によって形成された塩を沈積させることに
より、着色処理を行うことが可能である。具体的には、
交流による電解処理時に銅を含む電解浴を用いて、表面
を着色するようにしてもよい。これによれば、電解処理
時に酸化皮膜の孔隙内に銅と硫黄成分とによりグリーン
系色の硫化銅(CuS)が形成されて沈積する。そし
て、酸化皮膜が鏡面処理されているので、全体が、光沢
があって深みのあるグリーン系色に発色する。また、こ
の硫化銅は紫外線によって分解し難いので、色落ちによ
る外観の悪化はなくなる。
【0016】さらに、本発明の加工材の表面処理方法
は、アルミニウム合金からなる加工材に機械的研磨処理
を施して化学研磨処理を行った後、交流で電解処理し、
この後二次電解着色処理を施して封孔処理を行う。
【0017】この方法によっても、目的とする加工材が
確実かつ容易に低コストで得られる。つまり、交流で電
解処理された酸化皮膜を二次電解着色処理することによ
り、酸化皮膜の孔隙内に二次電解着色処理浴中に添加し
た金属の塩が沈積されて、光沢があって深みのある金属
塩の色が表出する。また、このように処理された加工材
も、交流で電解処理されるので、より光沢に富む美しい
鏡面が得られると同時に、電解時に生じる極性の変動に
より縦横に絡み合ったような複雑な構造の孔隙を有する
酸化皮膜が表面に形成され、耐食性が向上する。また、
この金属の塩は紫外線によって分解し難いので、色落ち
による外観の悪化はなくなる。
【0018】上記方法においては、電解処理に硫酸浴を
用い、かつ二次電解着色処理を行うとき、ニッケルとホ
ウ酸を含む電解浴を用いて、表面を着色するようにして
もよい。これによれば、二次電解着色処理時に酸化皮膜
の孔隙内に硫化ニッケル(NiS)及び硫化ホウ素む
(BS)が沈積する。そして、酸化皮膜が鏡面処理され
ているので、光沢があって深みのある若者好みのアンバ
ー色のような褐色に発色する。また、これらの硫化物は
紫外線によって分解し難いので、色落ちによる外観の悪
化はなくなる。
【0019】また、本発明の加工材の表面処理方法は、
アルミニウム合金からなる加工材に機械的研磨処理を施
して化学研磨処理を行った後、交流により電解処理し、
この後金属を添加した水溶液中に浸漬して、封孔処理を
行う。
【0020】この方法によっても、目的とする加工材が
確実かつ容易に低コストで得られる。つまり、交流で電
解処理された酸化皮膜を金属が添加された水溶液中に浸
漬することにより、酸化皮膜の孔隙内に金属の塩が沈積
されて、光沢があって深みのある金属色が表出する。ま
た、このように処理された加工材も、交流で電解処理さ
れるので、より光沢に富む美しい鏡面が得られると同時
に、電解時に生じる極性の変動により縦横に絡み合った
ような複雑な構造の孔隙を有する酸化皮膜が表面に形成
され、耐食性が向上する。この場合も、酸化皮膜の孔隙
に沈積された金属の塩は紫外線によって分解し難いの
で、色落ちによる外観の悪化はなくなる。
【0021】上記方法においては、電解処理に硫酸浴を
用い、かつ水溶液に添加する金属として酢酸ニッケル又
は酢酸コバルトを用いるようにしてもよい。これによれ
ば、酸化皮膜を水溶液中に浸漬するとき、酸化皮膜の孔
隙内に硫化ニッケル(NiS)及び硫化コバルト(Co
S)が沈積して、これらの硫化物により酸化皮膜が黒色
に発色する。そして、酸化皮膜が鏡面処理されているの
で、前記場合と同様に、全体が、光沢があって深みのあ
るクロムメッキ色のような黒色に発色する。また、ニッ
ケル又はコバルトの硫化物は紫外線によって分解し難い
ので、色落ちによる外観の悪化はなくなる。
【0022】
【発明の実施の形態】以下、本発明の一実施形態を図面
に基づいて説明する。図1は、本発明にかかるアルミ合
金からなる加工材を表面処理するときの1つの工程を示
している。先ず、アルミ合金からなる加工材に機械的研
磨処理を施し、この後加工材の脱脂処理を行う。このと
き、機械的研磨処理には、ロールやプレスなどによる研
磨処理手段を用いることもできるが、より好適には羽布
研磨処理手段が用いられる。また、脱脂処理には、公知
の手段が用いられ、例えば苛性ソーダ溶液が好適に用い
られる。
【0023】そして、脱脂処理後に、加工材に化学研磨
処理を施してから、水洗する。この化学研磨処理には、
例えばリン酸(H3PO4)と硝酸(HNO3)の混合液が好
適に用いられる。
【0024】次に、化学研磨処理した後にディスマット
処理を行う。つまり、化学研磨処理したとき、加工材の
表面にはマット(表面層)が形成され、これが後述する電
解処理時に悪影響を与えるので、例えば硝酸液(HNO
3)などでマットを除去する。そして、水洗した後に、
交流で電解処理する。
【0025】この交流による電解処理時には、その電解
浴として、好適には硫酸浴(H2SO4)が使用される。
また、電解処理時の電解条件としては、浴温15〜40
℃、電圧5〜30V、電流密度2〜10A/dm2、電
解時間1〜10分が好適に採用される。このとき、加工
材に印加される電圧が高くなると、得られる酸化皮膜の
光沢が低下する傾向にあるので、できるだけ低くする方
が良い。また、酸化皮膜の膜厚は、良好な耐食性を得る
上では厚くすることが好ましいが、厚くすると酸化皮膜
の光沢が損なわれ易くなる。このことから、自動車用ホ
イールなどとしての使用に耐え得る耐食性を具備したま
まで光沢のある美しい鏡面を得るためには、酸化皮膜の
膜厚を1〜5μm程度とする。そして、以上の処理条件
で加工材を表面処理することにより、表面に耐食度9.
6以上で、かつ光沢度55%以上の鏡面を表出させる。
【0026】また、以上の交流による電解処理時には、
銅を含む電解浴、例えば硫酸浴に硫酸銅(CuSO4)
を添加したものを用いてもよい。この電解浴を用いれ
ば、電解処理時に酸化皮膜の孔隙内に銅と硫黄成分とに
よりグリーン系色の硫化銅が形成されて沈積する。この
とき、酸化皮膜は鏡面処理されているので、光沢があっ
て深みのあるグリーン系色に発色する。
【0027】そして、交流による電解処理後に、水洗し
てから封孔処理を行う。この封孔処理には、熱水(沸騰
水)を用いる場合と、発色剤として各種の金属が添加さ
れた水溶液を用いる場合とがある。つまり、加工材の表
面を発色させる場合には、封孔処理に各種の金属が添加
された水溶液を用い、また加工材の表面を着色すること
なく、その生地色を表出させる場合には、熱水を用い
る。このとき、酸化皮膜は交流で電解処理されるので、
光沢に富む美しい鏡面が得られると同時に、電解時に生
じる極性の変動により縦横に絡み合ったような複雑な構
造の孔隙を有する酸化皮膜が表面に形成される。このた
め、酸化皮膜の孔隙を封孔処理することにより耐食性が
向上する。
【0028】このような封孔処理を行った後に、加工材
が水洗されて商品化される。
【0029】次に、本発明にかかるアルミ合金からなる
加工材を表面処理するときの別の工程を図2に基づいて
説明する。同図においては、図1に示す工程の交流によ
る電解処理後に二次電解着色処理を追加しており、その
他の処理工程は図1と同様である。
【0030】この二次電解処理時の電解条件としては、
浴温15〜40℃、電圧5〜30V、電解時間1〜10
分が好適に採用される。また、電解浴としては、硫酸ニ
ッケル (NiSO4)とホウ酸(H3BO4)の混合液が好
適に用いられる。これを用いることにより、加工材の表
面に光沢があって深みのある若者好みのアンバー色のよ
うな褐色を表出させることができる。
【0031】さらに、本発明にかかるアルミ合金からな
る加工材を表面処理するときの別の工程を図3に基づい
て説明する。同図においては、図1に示す工程の交流に
よる電解処理後に、金属を添加した水溶液中に加工材を
浸漬する工程を追加しており、その他の処理工程は図1
と同様である。ただし、封孔処理は熱水を用いて行われ
る。
【0032】このとき、水溶液に添加する金属として
は、酢酸ニッケル又酢酸コバルトが好適に用いられ、こ
れら金属化合物の0.3〜5%程度が添加されて水溶液
とされる。また、水溶液への浸漬条件は、常温〜50℃
で5〜10分間が好適である。これにより、光沢があっ
て深みのあるクロムメッキ色のような黒色を表出させる
ことができる。
【0033】以下、本発明の表面処理方法を、実施例を
挙げて説明する。 <実施例1>先ず、アルミ合金 (JIS A 505
2)からなる自動車用ホイールを用い、これの表面に羽
布研磨機により機械的研磨処理を施した。そして、10
%苛性ソーダ溶液で脱脂処理し、化学研磨処理を施し
た。この化学研磨処理に際しては、75%リン酸(H3
PO4)と60%硝酸(HNO3)を9:1の割合で混合
した混合液を用い、この混合液を105℃に加熱保温し
てホイールを2分間浸漬した。
【0034】この後、硝酸液(HNO3)によりディス
マット処理を行い、水洗してから、交流による電解処理
を施した。この電解処理に際しては、15%硫酸浴(H
2SO4)を調製し、浴温20℃、電圧15V、電流密度
3A/dm2、電解時間7分、交流で電解処理して、膜
厚3μmの酸化皮膜を得た。次いで、水洗してから、熱
水による封孔処理を10分間行い、この後さらに水洗し
た。
【0035】この結果、ホイールの表面には、耐食度が
10(腐食傷は目視で確認することができない)で、か
つ光沢度が60%の美しい透明な鏡面を有する酸化皮膜
が得られた。ここで、耐食度は、JIS H 8681
に基づきキャス試験8時間を行った結果得られたレイ
ティングナンバ(RM)の値である。また、光沢度は、
光度計(グロスチェッカ16−330 株式会社堀場製
作所製)を用い、入射角60度で測定したときの値であ
る。
【0036】<比較例1>自動車用ホイールを直流で電
解処理した以外は、実施例1と同様の条件で酸化皮膜
(膜厚3μm)を形成した。ここで、直流による電解処
理条件は、15%硫酸浴(H2SO4)を調製し、浴温2
0℃、電圧15V、電流密度1A/dm2、電解時間1
0分とした。これにより得られた酸化皮膜は、耐食度が
9.5(目視できる多数の腐食傷が表出されていて外観
が悪い)であり、かつ光沢度は50%で、やや曇ったよ
うな反射面となって美しい透明な鏡面とはならない。
【0037】この結果、実施例1のような表面処理方法
を採用することにより、耐食性に優れ、しかも光沢のあ
る美しい透明な鏡面が表出されて、意匠的外観に優れた
ホイールが得られることが理解できる。
【0038】<実施例2>酢酸ニッケル(AcNi)浴
を用いて10分間封孔処理を行った以外は、実施例1と
同様に処理した。この結果、光沢があって深みのあるク
ロムメッキ色のような黒色に発色した鏡面を有する酸化
皮膜が得られた。この酸化皮膜も、耐食度が10で、光
沢度が60%である。
【0039】<実施例3>酢酸コバルト(AcCo)浴
を用いて10分間封孔処理を行った以外は、実施例1と
同様に処理した。この結果、実施例2の場合と同様に、
光沢があって深みのあるクロムメッキ色のような黒色に
発色した鏡面を有する酸化皮膜が得られた。この酸化皮
膜も、耐食度が10で、光沢度が60%である。
【0040】<実施例4>交流による電解処理時に、1
5%硫酸浴(H2SO4)と1%硫酸銅(CuSO4) を
用いた以外は、実施例1と同様に処理した。この結果、
ホイールの表面に光沢があって深みのあるグリーン系色
に発色した鏡面を有する酸化皮膜が得られた。この酸化
皮膜も、耐食度が10で、光沢度が60%である。
【0041】<実施例5>実施例1と同様に交流で電解
処理して水洗した後に、二次電解着色処理を行った。こ
のとき、電解浴としては、100g/lの硫酸ニッケル
(NiSO4)と50g/lのホウ酸(H3BO4)の混合
液を用いた。また、電解条件は、浴温20℃、電圧10
V、電解時間3分、直流で電解処理を行った。この後、
熱水による封孔処理を10分間行った。
【0042】この結果、ホイールの表面に光沢があって
深みのある若者好みのアンバー色のような褐色に発色し
た鏡面を有する酸化皮膜が得られた。この酸化皮膜は、
耐食度が10で、光沢度が59%である。
【0043】<実施例6>実施例1と同様に交流で電解
処理して水洗した後、25℃の1%酢酸ニッケル溶液中
にホイールを7分間浸漬した。この後、熱水による封孔
処理を行った。
【0044】<実施例7>実施例1と同様に交流で電解
処理して水洗した後、25℃の1%酢酸コバルト溶液中
にホイールを10分間浸漬した。この後、熱水による封
孔処理を行った。
【0045】以上の実施例6.7によれば、ホイールの
表面に光沢があって深みのあるクロムメッキ色のような
黒色に発色した鏡面を有する酸化皮膜が得られた。この
酸化皮膜も、耐食度が10で、光沢度が60%である。
【0046】なお、本発明は、上記実施形態および実施
例の構成に限定されるものではなく、本発明の意図する
範囲内において適宜設計変更可能である。
【0047】
【発明の効果】以上のように、本発明によれば、表面に
錆などが発生することなく耐食性に優れ、しかも光沢の
ある美しい鏡面を表出させて、自動車用ホイールなどと
して最適なアルミ合金からなる加工材を得ることができ
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明にかかるアルミ合金からなる加工材を表
面処理するときの1つの工程を示す工程図である。
【図2】本発明にかかるアルミ合金からなる加工材を表
面処理するときの別の工程を示す工程図である。
【図3】本発明にかかるアルミ合金からなる加工材を表
面処理するときのさらに別の工程を示す工程図である。
フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) C25D 11/16 C25D 11/16 11/20 301 11/20 301 303 303

Claims (16)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 9.6以上の耐食度があり、かつ光沢度
    が55%以上の鏡面が表面に形成されているアルミニウ
    ム合金からなる加工材。
  2. 【請求項2】 請求項1において、加工材が自動車用ホ
    イールであるアルミニウム合金からなる加工材。
  3. 【請求項3】 9.6以上の耐食度があり、かつ光沢度
    が55%以上の着色された鏡面が表面に形成されている
    アルミニウム合金からなる加工材。
  4. 【請求項4】 請求項3において、加工材が自動車用ホ
    イールであるアルミニウム合金からなる加工材。
  5. 【請求項5】 アルミニウム合金からなる加工材に機械
    的研磨処理を施して化学研磨処理を行った後、交流によ
    り電解処理して封孔処理を行うアルミニウム合金からな
    る加工材の表面処理方法。
  6. 【請求項6】 請求項5において、電解処理に硫酸浴を
    用い、かつ封孔処理に酢酸ニッケル浴を用いて、表面を
    着色するアルミニウム合金からなる加工材の表面処理方
    法。
  7. 【請求項7】 請求項5において、電解処理に硫酸浴を
    用い、かつ封孔処理に酢酸コバルト浴を用いて、表面を
    着色するアルミニウム合金からなる加工材の表面処理方
    法。
  8. 【請求項8】 請求項5において、電解処理に銅を含む
    電解浴を用いて、表面を着色するアルミニウム合金から
    なる加工材の表面処理方法。
  9. 【請求項9】 アルミニウム合金からなる加工材に機械
    的研磨処理を施して化学研磨処理を行った後、交流によ
    り電解処理し、この後二次電解着色処理を施して封孔処
    理を行うアルミニウム合金からなる加工材の表面処理方
    法。
  10. 【請求項10】 請求項9において、電解処理に硫酸浴
    を用い、かつ二次電解着色処理にニッケルとホウ酸を含
    む電解浴を用いて、表面を着色するアルミニウム合金か
    らなる加工材の表面処理方法。
  11. 【請求項11】 アルミニウム合金からなる加工材に機
    械的研磨処理を施して化学研磨処理を行った後、交流に
    より電解処理し、この後金属を添加した水溶液中に浸漬
    して、封孔処理を行うアルミニウム合金からなる加工材
    の表面処理方法。
  12. 【請求項12】 請求項11において、電解処理に硫酸
    浴を用い、かつ水溶液に添加する金属として酢酸ニッケ
    ルを用いるアルミニウム合金からなる加工材の表面処理
    方法。
  13. 【請求項13】 請求項11において、電解処理に硫酸
    浴を用い、かつ水溶液に添加する金属として酢酸コバル
    トを用いるアルミニウム合金からなる加工材の表面処理
    方法。
  14. 【請求項14】 アルミニウム合金からなる加工材であ
    って、機械的研磨処理を施して化学研磨処理を行った
    後、交流により電解処理して封孔処理を行う表面処理が
    施されたアルミニウム合金からなる加工材。
  15. 【請求項15】アルミニウム合金からなる加工材であっ
    て、機械的研磨処理を施して化学研磨処理を行った後、
    交流により電解処理し、この後二次電解着色処理を施し
    て封孔処理を行う表面処理が施されたアルミニウム合金
    からなる加工材。
  16. 【請求項16】 アルミニウム合金からなる加工材であ
    って、機械的研磨処理を施して化学研磨処理を行った
    後、交流により電解処理し、この後金属を添加した水溶
    液中に浸漬して、封孔処理を行う表面処理が施されたア
    ルミニウム合金からなる加工材。
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