JP2003119541A - 水素吸蔵合金 - Google Patents

水素吸蔵合金

Info

Publication number
JP2003119541A
JP2003119541A JP2002287087A JP2002287087A JP2003119541A JP 2003119541 A JP2003119541 A JP 2003119541A JP 2002287087 A JP2002287087 A JP 2002287087A JP 2002287087 A JP2002287087 A JP 2002287087A JP 2003119541 A JP2003119541 A JP 2003119541A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
alloy
phase
hydrogen
hydrogen storage
periodic structure
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2002287087A
Other languages
English (en)
Inventor
Hidenori Iba
英紀 射場
Etsuo Akiba
悦男 秋葉
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
National Institute of Advanced Industrial Science and Technology AIST
Toyota Motor Corp
Original Assignee
National Institute of Advanced Industrial Science and Technology AIST
Toyota Motor Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by National Institute of Advanced Industrial Science and Technology AIST, Toyota Motor Corp filed Critical National Institute of Advanced Industrial Science and Technology AIST
Priority to JP2002287087A priority Critical patent/JP2003119541A/ja
Publication of JP2003119541A publication Critical patent/JP2003119541A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Classifications

    • Y02E60/327

Landscapes

  • Hydrogen, Water And Hydrids (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】 本発明は、水素吸蔵合金に関し、特にスピノ
ーダル分解によって形成する周期構造を有し水素吸蔵量
が大きく、水素放出特性に優れ、かつ活性化条件の緩和
を可能とする体心立方構造の水素吸蔵合金を提供する。 【解決手段】 少なくとも二種以上の合金成分からな
り、前記合金成分の状態図における固相線以下の温度
で、合金固溶体の化学的自由エネルギーと合金組成の関
係曲線が上に凸なる形状を有し、即ちd2 G/dXB 2
<0(但し、Gは化学的自由エネルギー、XB は溶質合
金濃度)を満足する領域におけるスピノーダル分解によ
り形成された規則的な周期構造の二固溶体を主相とす
る。また、前記主相を構成する二固溶体は冷却過程で特
定の結晶方位に成長し、相間隔が1.0〜100nmのナ
ノオーダの周期構造を有することを特徴とする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、水素吸蔵合金に関
し、特にスピノーダル分解によって形成する周期構造を
有し水素吸蔵量が大きく、水素放出特性に優れ、かつ活
性化条件の緩和を可能とする体心立方構造の水素吸蔵合
金に関する。
【0002】
【従来の技術】地球環境問題の観点から、化石燃料に替
わる新しいエネルギーとして、太陽熱、原子力、水力、
風力、地熱、廃熱の再利用などが、提案されている。し
かし、いずれの場合も、そのエネルギーをどのように貯
蔵し、輸送するかが共通の問題となっている。太陽熱や
水力を使って水を電気分解し、これによって得られた水
素をエネルギー媒体として用いるシステムは、原料が水
であり、エネルギーを消費してできる生成物がまた水で
あるという点では、究極のクリーンエネルギーであると
いえる。
【0003】この水素の貯蔵・輸送手段として、水素吸
蔵合金は、合金自身の体積の約1000倍以上の水素ガ
スを吸蔵し貯蔵することが可能であり、その体積密度
は、液体あるいは固体水素とほぼ同等かあるいはそれ以
上である。この水素吸蔵材料として、V,Nb,Taや
Ti−V合金などの体心立方構造(以下BCC構造と呼
称する)の金属は、すでに実用化されているLaNi5
などのAB5 型合金やTiMn2 などのAB2 型合金に
比べ、大量の水素を吸蔵することは古くから知られてい
た。これは、BCC構造では、その結晶格子中の水素吸
蔵サイトが多く、計算による水素吸蔵量がH/M=2.
0(原子量50程度のTiやVなど合金では約4.0wt
%)と極めて大きいためである。
【0004】純バナジウム合金においては、結晶構造か
ら計算された値とほぼ同じ約4.0wt%を吸蔵し、その
約半分を常温常圧下で放出する。同じ周期表の5A族の
元素のNbやTaにおいても同様に大きな水素吸蔵量と
良好な水素放出特性を示すことが知られている。V,N
b,Taなどの純金属では、非常にコストが高いため、
水素タンクやNi−MH電池などある程度の合金量を必
要とする工業的な応用においては現実的でない。そこ
で、Ti−VなどのBCC構造を有する成分範囲の合金
において、その特性が調べられてきた。しかし、これら
のBCC合金では、V,Nb,Taにおいても問題とさ
れている反応速度が遅い、活性化が困難という点に加え
て、実用的な温度・圧力では吸蔵するのみで放出量は少
ない等の新しい問題点も生じている。この結果としてB
CC相を主たる構成相とする合金は、未だ実用には至っ
ていない。
【0005】これまでの合金化による特性制御の試み
は、AB5 型、AB2 型あるいはBCC型のいずれにお
いても成分設計により行われてきた。しかし成分の設定
範囲はいずれの例においても金属間化合物単相やBCC
固溶体単相の範疇を越えるものではなかった。この分野
の公知技術として、例えば特開昭59−78908号公
報に、チタンを基礎とする体心立方晶系合金組成物およ
び室温におけるその水素化物の製造方法として、体心立
方晶系構造をもち、かつ(a)チタンと、モリブデン、
バナジウムおよびニオブよりなる群から選ばれる第2の
金属とを含む体心立方晶系構造物、ならびに(b)第2
の金属がバナジウムもしくはニオブである場合に、また
第2の金属がモリブデンである場合は所望により、上記
の体心立方晶系構造物に溶解した状態で、アルミニウ
ム、コバルト、クロム、銅、マンガン、ニッケル、鉄、
ガリウム、ゲルマニウム、ケイ素、およびこれらの混合
物よりなる群から選ばれる第3の金属少なくとも約1原
子%を含む固溶体合金と水素ガスを約0〜約100℃の
温度で反応させ、その際この温度における固溶体と水素
の反応速度が上記の温度および等しい水素圧における非
合金チタンと水素との反応速度の少なくとも約10倍で
ある、金属水素化物の製造方法が開示されている。
【0006】しかし、この従来技術においては、BCC
構造の合金の場合としてTi−VやTi−V−Feにお
いては二相領域があるにも関わらず、固溶体単相以外に
ついては全く記載されていない。また、その効果は、反
応速度や活性化条件などは緩和するものの、放出特性自
体の改善つまり放出の温度や圧力条件の緩和には至って
いない。
【0007】最近になって多相化の試みがいくつか行わ
れている。例えば、合金相の結晶構造は特定せず、単相
・多相を含む非常に広い概念を開示したものとして、特
公平4−80512号公報(米国特許No.462359
7号)がある。従来、水素吸蔵合金の特許や研究が単相
の金属間化合物の範疇に限られていたが、本公報では、
明確な効果のある相の組み合わせ、構造、成分は定義さ
れていないが、水素吸蔵合金としての効果を充分に発揮
しうる、多相の組み合わせや構造など最適の組織を制御
する技術が開示されている。また、前記公報の実施例と
して、急冷膜についてのアモルファスを起源とした結晶
学的にランダムな構造を含む多相合金が開示されてい
る。
【0008】さらに、他の公知技術として、研究論文
(Science,第260巻(1993)第176
頁,電気製鋼、第66巻(1995)第123頁等)が
ある。これらは、AB2 合金において金属間化合物であ
るラーベス相の化学量論組成からの成分の偏差、および
第3および第4元素の添加によって出現する第2相を開
示している。しかし、前記論文では、主相であるラーベ
ス相が、水素吸蔵合金としての基本的な効果、つまり水
素吸蔵量や水素吸放出の温度・平衡圧等への効果を発揮
するものとして、一方、第2相は量的にも少なく、活性
化条件の緩和や耐久性の改善など付随的な効果に限定さ
れている。以上のように、従来の多相化技術によって
も、容量の大幅な増大や吸放出条件の緩和は実現されて
いない。そのため、これら特性をさらに改善可能なる水
素吸蔵合金の技術開発が望まれていた。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、水素
吸蔵合金を下記の点から検討し、エネルギキャリアとし
て有効に利用できる画期的な高容量合金を提供する。
【0010】(1)相界面や相間の相互作用を最大限に
活用し、構成相の複合則以上の水素吸蔵量を得る。 (2)多相の構成相の中から、単相では見つからなかっ
た新規の成分および構造を達成する。
【0011】さらに、本発明の他の目的は、前記水素吸
蔵合金の成分と結晶構造の最適化を検討し、高機能構成
相を備えた合金を提供する。また、本発明の別の目的
は、前記水素吸蔵合金の構造評価法を検討し、新規な評
価方法に基づく合金を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】上記の目的は、少なくと
も二種以上の合金成分からなり、前記合金成分の状態図
における固相線以下の温度で、合金固溶体の化学的自由
エネルギーと合金組成の関係曲線が上に凸なる形状を有
し、即ちd2 G/dXB 2 <0(但し、Gは化学的自由
エネルギー、XB は溶質合金濃度)を満足する領域にお
けるスピノーダル分解により形成された規則的な周期構
造の二固溶体を主相として有することを特徴とする水素
吸蔵合金によって達成される。
【0013】また、上記の目的は、前記主相が、溶解−
凝固あるいは溶体化−時効の過程で特定の結晶方位に成
長し、1.0〜100nmのナノオーダの相間隔で二固溶
体が、規則的に配列する周期構造を有し、前記二固溶体
がいずれも体心立方格子の結晶構造を有することを特徴
とする水素吸蔵合金によっても達成される。
【0014】
【発明の実施の形態】発明者等は、多数の実験を行いそ
の結果から、BCC合金のなかでも、その内部でスピノ
ーダル分解により、ナノオーダの微細な二相に規則的に
分解した合金において、水素放出特性が著しく改善され
るとの知見を得た。すなわち、TiおよびVを主成分と
し、結晶構造がBCCで、スピノーダル分解により形成
し特定の結晶方位に成長した格子定数の異なる二相が、
1.0nmから100nmの間隔で周期的構造を有する合金
では、この規則的なナノオーダ周期構造により、BCC
金属が構造的に持つ大きな水素吸蔵量を、実用的な温度
と圧力域で放出させ、かつ活性化条件を緩和し、反応速
度を改善する。前記知見によって達成された本発明の第
1の特徴点であるナノオーダの二相の界面は、高速拡散
路として金属内部での水素原子の移動を速め、反応速度
の改善、活性化の容易さが達成される。また、界面近傍
では、二相間の整合歪により水素化物の安定性が下がっ
ており、このことが水素放出特性の改善につながってい
ると推測される。
【0015】本発明では、スピノーダル分解相が主な相
として存在し、この規則的な周期構造を有する二相が主
として水素吸蔵作用を行うものであれば、異なる構造の
第3の相が混在したり、あるいは、異なる構造のマトリ
ックス中にコロニー状に存在する相がスピノーダル分解
相であっても構わない。従来のラーベス相型合金には、
BCC相を含むものの報告がいくつかあるが、水素の吸
放出は、主相のラーベス相部が機能しているだけで、B
CC相部は、微粉化防止による耐久性向上程度の作用し
か行っていない。
【0016】第2の特徴は、前記スピノーダル分解によ
り形成する周期構造の具体的要件を規定するものであ
る。特定結晶方位に成長する相間隔が、本発明の1.0
nm未満および100 nm超の場合では、目的とする水素
吸蔵合金としての吸放出特性が得られないため、本発明
の範囲に限定する。ここで、「スピノーダル分解」と
は、濃度ゆらぎから濃度振幅が一定の二相に分かれるま
での過程であり、これによって形成した構造を「変調構
造」という。この状態までが二相は「整合」である。
「成長」とは、一定となった濃度振幅の二相が、オスト
ワルド成長で波長を増大させる過程である。成長がおこ
ると次第に整合性は失われ、界面転位を生ずる。「規則
化」とは、二相が特定の結晶方位に一定の波長で分解・
成長していることを、ここでは「配列が規則的」である
という。化学量論組成の金属間化合物などのように、結
晶格子中の原子の配列が規則的であるという場合に使わ
れる「規則構造」の「規則」に限定されない。
【0017】以下に、本発明合金における化学組成の好
適範囲についてさらに詳述する。本発明のスピノーダル
分解は、核生成−成長型の二相分離とは異なり、固溶体
内部での溶質濃度ゆらぎから始まるため、極めて均一に
かつ急速に分解が進行する。スピノーダル分解により形
成した二相は、一般的には変調構造とよばれ、成分や熱
処理などの製造条件により数nmから数十nmまで制御
することが可能である。また相互の二相は整合関係にあ
り、格子定数のミスフィット分だけ界面に整合歪を生ず
る。本発明はこの整合歪を、水素化物の不安定性に寄与
するものとして利用するものである。
【0018】スピノーダル分解する合金系としては、C
u−Ni−FeやAl−Znなどがよく知られている。
本願発明等は水素吸蔵合金の金属組織学的研究から、T
i−V,Ti−V−MnおよびTi−V−Mn−Cr系
の合金成分においてスピノーダル分解により形成した変
調構造として、観察される代表的なスピノーダル組織
と、電子線回折図形に整合界面の格子歪によってサテラ
イトが観察されることを確認した。図5はその代表例と
して、Ti1.0 Mn0.91.1 相の透過電子顕微鏡写真
を示す。その他合金では、本発明者等は同様の組織写真
を報告している。(例えば、日本金属学会誌、第59巻
(1995)第91頁)
【0019】さらに、本発明におけるスピノーダル分解
により形成した周期構造とは、(1)スピノーダル分解
により形成中の濃度ゆらぎの状態、(2)スピノーダル
分解は完了し、濃度振幅が一定になった状態、(3)凝
集反応によりその波長が増大する状態までを意味する。
本発明の組織は、二相を含む制限視野から得られた透過
電子顕微鏡の回折図形が、一種類のBCC構造のパター
ンと各スポットに現れたサテライトのみであることから
もわかるように、特定の結晶方位にナノスケールで規則
的に配列し、一定量の格子歪みを伴う周期構造である。
そのため前記特公平4−80512号公報(米国特許N
o.4623597号)が請求項で述べているような無秩
序構造とは異なる。
【0020】Ti−V系においては、その二元系状態図
において、低温域では六方晶のα相が形成してしまうた
めスピノーダル分解域は狭く、分解域から急冷するよう
な特定の製造条件でしか反応は起こらない。Ti1.0
1.0合金の鋳造まま材における微細組織においては、二
相の分離は確認できるものの、特定の結晶方位への周期
構造は確認されなかった。一方、このような組織を規則
化するためには、凝集反応を促進するための熱的な駆動
力が必要である。具体的には、二相分離領域内での熱処
理が必要である。
【0021】これに対して、MnおよびCrなどとの合
金化により、スピノーダル分解範囲は広がり、鋳造まま
材においても、より規則化された変調構造を形成させる
ことができる。前記図5は、成分設計により、C14ラ
ーベス相のマトリックス中にコロニー状に晶出したBC
C相の微細組織をもつ相を約95%以上に制御したもの
である。このことから、多成分の固溶体合金において
は、単相を得ることが難しいため、若干の第3相を含む
場合および別のマトリックス中に本構造が分布している
場合について、主相がスピノーダル分解で生ずることを
請求項に規定した。
【0022】特定の結晶方位に成長した規則的な周期構
造は、熱処理によってそのサイズや規則度は制御可能で
あるが、スピノーダル分解により二相分離が起こってい
ることが必要条件である。そこで、これらの知見を総合
して、好適な成分範囲は、これらのスピノーダル分解が
起こる範囲により決定した。以下に、本発明について実
施例の添付図を参照してさらに詳述する。
【0023】
【実施例】実施例1 本発明の実施例として水素吸蔵合金の試料を次のように
作成した。本実施例の試料は、全て水冷銅ハースを用い
たアルゴン中アーク溶解で約20gのインゴットで行っ
た。本実施例のデータはすべて鋳造したままのインゴッ
トを空気中で粉砕し、活性化処理として、500℃、1
0〜4torr真空引き+50atm 水素加圧を4サイクル繰
返し行った後、合金の水素吸蔵量と水素吸放出特性は、
容積法による圧力組成等温線測定法(JIS H720
1)に規定されている真空原点法で行ったものである。
また透過電子顕微鏡観察はバルクの試料からイオンミリ
ングで薄膜を作製した。
【0024】また、合金の構造解析は、透過電子顕微鏡
と付属のEDX(エネルギー分散型X線回折)を用いて
行った。さらに透過電子顕微鏡で得られた情報をもとに
結晶構造モデルを作成し、粉末X線回折データのリート
ベルト解析を行った。リートベルト解析は通常のX線回
折法とは異なり、回折強度を用いて結晶構造パラメータ
を精密化できるとともに、各相の重量分率を計算により
求めることが可能である。リートベルト解析には、無機
材質研究所泉博士の開発した解析ソフトRIETAN9
4を用いた。リートベルト解析では、平均としての相分
率や結晶構造パラメータが精度よく得られるが、その解
析のためには相当に確からしい結晶構造モデルが必要で
ある。この二つの手法の組み合わせは、互いの短所を補
いあって、水素吸蔵合金の研究に限らず、新しいナノス
ケールでの構造制御による材料開発の有力な手掛かりと
なると考えられる。
【0025】本実施例の合金は、前記製造方法でTi−
V系合金を作成し、前記測定方法によって測定したもの
である。図7は本合金系の状態図を示す。この状態図よ
り、βTi,V固溶体の範囲が全率型に広がっており、
850℃以下で、V:18.75at%から80at%の範
囲に、固溶限が存在し850〜675℃の範囲ではβT
i+βVである。この領域周辺においてスピノーダル分
解が生ずる。なお、状態図は平衡時のものであるため、
急冷時には形成範囲は若干拡大する。すなわち、この条
件が、本発明の請求項1にあるように、状態図における
固相線以下の温度で、固溶体の自由エネルギー対組成曲
線が上に凸な領域、すなわちd2 G/dXB 2 <0(但
し、Gは自由エネルギー、XB は溶質濃度で、ここでは
Vである。)と一致するものである。本合金系が代表的
にスピノーダル分解を有するものである。
【0026】図6に、本合金系の従来材のTiVおよび
TiV2 についての圧力−組成等温線を示す。各曲線は
40℃における水素吸蔵放出過程を示す。図6から、本
合金のTi1.01.0 合金およびTi1.02.0 合金で
は、水素吸蔵量は大きいもののほとんど水素放出しな
い。また、透過電子顕微鏡による観察では約10nm程度
の間隔で二相分離は確認できるが、まだ変調構造として
あまり成長していない。しかし熱処理による組織制御を
おこなえば、その水素放出特性を著しく改善できると考
えられる。すなわち、本合金については、スピノーダル
組織は観察されるものの、規則化はされておらず、結果
として、水素吸蔵するのみで水素放出はほとんどない。
しかしもともとスピノーダル分解により形成した微細組
織を有するため、これらの合金成分で、熱処理により組
織を成長させ規則化させることにより、良好な水素放出
特性を得ることができる。
【0027】この熱処理は、500〜1500℃で1分
〜50時間保持した後、冷却する溶体化処理と、250
〜1000℃で1分〜100時間保持する時効処理によ
って行われることになる。
【0028】実施例2 本実施例のTi−V−Mn系合金について説明する。本
実施例では、合金の製造法および測定方法は実施例1と
同様の方法によって行った。この合金系では、ほぼBC
C単相成分の二成分について、PCT(圧力組成等温
線)測定を実施した。前記図5にTi1.0 Mn0.9
1.1 合金の透過電子顕微鏡写真を示す。この図より、変
調構造が成長しており、約20nm間隔の明瞭な層状組織
が観察される。この組織のモデル化したものを図4に示
す。この図で、βTi固溶体とβV固溶体がほぼ等間隔
で層状に、規則的な周期構造を呈し、その相間隔は例と
して、10nmで示している。図1は本合金系のTi
1.0 Mn1.01.0 合金の水素放出過程を、0、40、
100および200℃について示す図である。
【0029】図2は、同様にTi0.9 Mn1.01.1
金の水素放出過程を示す図である。さらに、図3に、T
1.0 Mn0.91.1 合金の40℃での水素吸蔵および
水素放出過程を示す。これらの図から、内部に規則化さ
れた変調構造をもつ発明材(Ti1.0 Mn0. 91.1
金)においては、その水素放出量が大きい。この常温域
での水素放出量の向上が本発明の最も大きな効果であ
る。また本合金では100℃まで温度を上げることによ
り放出の平衡圧のプラト領域を1atm 以上まで上げるこ
とができる。またこのプラト領域も極めて平坦であり実
用上有用である。
【0030】逆にTi−V同様2相分離のみで規則化の
程度が低い合金(Ti0.9 Mn1.01.1 )では、水素
吸蔵および水素放出量とも半減した。しかしこれもTi
−V合金に比らべると、大きな改善を示している。上記
二合金の成分は、Ti1.01.0 Mn1.0 合金の組織観
察において、マトリックスのBCC相(Ti0.9 Mn
1.01.1 )とコロニー状に晶出したC14相の界面近
傍において、成分がTi1.0 Mn0.91.1 で、成長し
た変調構造を認められたことに基づき決定された。すな
わち、Ti1.0 Mn1.01.0 合金の鋳造したままの試
料には、コロニー状の晶出物が観察され、透過電子顕微
鏡観察の結果から、マトリックスはBCC構造、コロニ
ーはC14(ラーベス相)構造であり、その重量分率
は、X線リートベルト解析の結果、78wt%と22wt%
であった。さらにEDXで各相の組成を分析した結果、
いずれの相もTi,MnおよびVの3元素すべてを含
み、わずかの成分の違いが結晶構造を大きく変化させて
いることを知見した。この事実から、Ti1.0 Mn1.0
1.0 合金の構成相界面近傍に、ナノオーダの微細組織
を持つ本実施例のような新しい相が存在することがわか
った。
【0031】実施例3 本実施例のTi−V−Mn−Cr系合金について説明す
る。本実施例の合金製造方法および測定方法は実施例1
と同様である。本実施例の合金の設計は、実施例2のM
nの一部をCrに置き換えた成分であり、その組成はT
1.01.1 Mn0.5 Cr0.4 である。この合金におい
ても、図3に示すように良好な放出特性を示した。本合
金の内部組織はほぼTi1.0 Mn0.91.1 と同様であ
るが、各相の格子定数が若干変化しているために、水素
化物の不安定性の程度がやや大きくなっていることがわ
かる。
【0032】実施例4 本実施例のZr−Ti−Mn−V系合金について説明す
る。本実施例の合金製造方法および測定方法は実施例1
と同様である。本実施例の4元系では、比較的吸蔵放出
特性のよいAB2 (C14ラーベス相、C15〔MgC
2 型〕ラーベス相)相と容量の大きいBCC相が混在
する領域のものである。この多相領域のZrx Ti1-x
MnV線上で、各単相の水素化物の構造をもとに仮定し
た容量とX線回折測定で求めた重量分率との複合則で、
合金の容量をシュミレーションすることが可能となる。
その結果から、容量の計算値は、Tiの量の増大ととも
にBCC相の分率が増加することにより増大した。その
結果から、前記実施例1〜3のようにTiを主体とした
合金設計へと移っていく基本的根拠となったのが本合金
系である。
【0033】以下に、前記本実施例に共通する技術項目
としての活性化について説明する。前記図1〜3および
6のような圧力−組成等温線測定は、通常3〜5回程度
の水素の吸蔵放出を繰り返す活性化処理の後行うもので
ある。VやTi−V合金においては、これらの活性化処
理は、50atm 程度の高圧での水素吸蔵と10〜4Torr
の真空度で500℃程度の高温での放出、さらに場合に
よってはドライボックスなど清浄雰囲気での機械的粉砕
の組み合わせが必要など極めて厳しい条件が必要であっ
た。これに対して本発明のTi−V−Mn合金やTi−
V−Mn−Cr合金およびTi−V合金の熱処理材など
スピノーダル組織を規則化した合金においては、表1に
示すようにあまり厳しくない条件での活性化が可能とな
る。
【0034】
【表1】
【0035】また、従来のBCC合金では、水素吸蔵−
水素放出のいずれの過程においても反応速度が極めて遅
いということが共通の問題点であった。これに対して、
内部組織が規則化された発明材においては、従来材のV
やTi−Vに比べて10倍から500倍の反応速度を示
した。
【0036】以上の実施例からも明らかなように、従
来、BCC合金において、反応速度が遅く、活性化が困
難で、かつ実用的な条件での放出特性が劣っている理由
は、(1)BCC格子内部での水素原子の拡散が遅い、
(2)AB5 型やAB2 型のように水素化により微粉化
していかない、(3)形成した水素化物が安定すること
等が考えられる。しかし、本実施例に示したように、ナ
ノオーダに形成した二相により生じた界面は、高速拡散
路として金属内部での水素原子の移動を速め、このこと
が反応速度の改善や活性化の容易さにつながる。また界
面近傍では2相間の整合歪により、水素化物の安定性が
下がっていると考えられ、このことが水素放出特性の改
善につながっていると考えられる。本発明は、これらの
相乗効果により、BCC合金の水素放出特性を著しく改
善できた。
【0037】本発明の場合、その内部に形成する二相の
微細さが最も重要である。先に述べたように、多相によ
り水素の吸蔵特性を改良しようとする試みはいくつか行
われてきたが、これらはいずれもミクロンオーダでの二
相混合である。ミクロンオーダで分散する第2相は、微
粉化時の亀裂の起点にはなり得るため、この結果として
特に吸蔵過程の反応速度や活性化条件の緩和に対する効
果は考えられる。また、これとは逆に延性のある第2相
を存在させることにより微粉化を防止させ耐久性を向上
させるなどの試みもなされている。しかし、ミクロンオ
ーダの二相混合では、先に述べた拡散のパスとしての効
果や界面近傍での格子歪の効果は、その界面の密度が小
さいため、バルク全体としては期待できない。しかし、
本発明のようにナノオーダで二相が分散しており、さら
に二相界面が整合で特定の結晶方位に配列している場
合、その界面と整合歪の影響領域の密度は、特性に効果
を期待するに十分であると考えられる。
【0038】最近の研究では、スパッタや蒸着などの薄
膜技術によりナノオーダの組織を形成させ、この水素吸
蔵特性が報告されている。しかし、これらの製造法で
は、本発明のような相変態を用いる場合と異なり、界面
密度を高めることはできても、界面近傍での整合歪や方
位関係を安定化するための別の熱処理等が必要である。
つまり、このように人工的につくられた構造は、その安
定度の点で鋳造−凝固という単純なプロセスで自然に形
成する構造に比べ劣るため、形成する水素化物は安定な
ものができ易く、たとえ大きな吸蔵量が得られたとして
も、良好な水素放出特性を期待することは難しい。ま
た、何よりもこのようなプロセスは製造条件や設備が複
雑で大量生産が必要な工業用材料には不向きである。
【0039】さらに、微粉化防止効果については、AB
5 型合金やAB2 型合金においては、水素の吸放出を繰
り返すことにより、性能が劣化する場合がありこれが応
用上での耐久性の低下につながっている。これの原因の
ひとつとして合金の微粉化に伴う表面積の増大と水素以
外の不純物ガスによる被毒が考えられる。金属間化合物
は、もともと水素の侵入による歪みが緩和しにくい構造
のものが多い上に、ミクロンオーダで多相が混在してい
る場合、この非整合界面が歪みの蓄積による亀裂の起点
となり微粉化を促進している場合もある。
【0040】これに対し本発明で示した構造は、均一に
二相を分散させているため、歪みを局所化することもな
いし、その界面は整合であるため、亀裂の起点にもなり
にくい。結果として、微粉化はしにくく、10サイクル
の吸放出の後のTi1.01. 1 Mn0.9 合金の粒径は、
類似組成のAB2 単相合金Ti1.20.8 Mn1.0 合金
の20倍以上であった。このことは耐久性を著しく向上
すると考えられる。
【0041】
【発明の効果】本発明の水素吸蔵合金のナノオーダの二
相の界面によって、水素の高速拡散路として機能し、金
属内部での水素原子の易動度を向上し、かつ水素化物の
反応速度を促進し、また事前処理としての活性化工程の
簡略化が可能となる。これは、二相間の整合歪により水
素化物の安定性が低下し、特にこのことが水素放出特性
の改善につながっていると推測される。また、本発明で
は、スピノーダル分解相が主な相として存在することを
前提とするものであって、今後の水素吸蔵合金の分野で
の発展へ寄与するものと考えられる。さらに、本発明の
測定方法はその効率を向上し、合金評価方法としてもそ
の意義は大きい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例2に係るTi1.0 Mn1.0
1.0 合金の各温度における水素放出特性を示す図であ
る。
【図2】本発明の実施例2に係るTi0.9 Mn1.0
1.1 合金の各温度における水素放出特性を示す図であ
る。
【図3】本発明の実施例2および3に係るTi−Mn−
V系およびTi−Mn−V−Cr系の40℃における水
素吸蔵および水素放出特性を示す図である。
【図4】本発明の実施例2に係るTi−Mn−V系の微
細構造のモデルを示す図である。
【図5】本発明の実施例2に係るTi1.0 Mn1.0
1.0 合金の金属組織を示す透過電子顕微鏡写真である。
【図6】本発明の実施例1に係るTi−V合金の40℃
における水素吸蔵および水素放出特性を示す図である。
【図7】本発明の実施例1に係るTi−V合金の状態図
である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 秋葉 悦男 茨城県つくば市東1−1−1 独立行政法 人産業技術総合研究所 つくばセンター内

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 少なくとも二種以上の合金成分からな
    り、該合金成分の状態図における固相線以下の温度で、
    合金固溶体の化学的自由エネルギーと合金組成の関係曲
    線が上に凸なる形状を有し、即ちd2 G/dXB 2 <0
    (但し、Gは化学的自由エネルギー、XB は溶質合金濃
    度)を満足する領域におけるスピノーダル分解により形
    成された規則的な周期構造の二固溶体を主相として有す
    ることを特徴とする水素吸蔵合金。
  2. 【請求項2】 主相が、溶解−凝固あるいは溶体化−時
    効の過程で特定の結晶方位に成長し、1.0〜100nm
    のナノオーダの相間隔で二固溶体が、規則的に配列する
    周期構造からなることを特徴とする水素吸蔵合金。
  3. 【請求項3】 請求項1または2の水素吸蔵合金であっ
    て、主相を構成する二固溶体がいずれも体心立方格子の
    結晶構造を有することを特徴とする水素吸蔵合金。
JP2002287087A 2002-09-30 2002-09-30 水素吸蔵合金 Pending JP2003119541A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2002287087A JP2003119541A (ja) 2002-09-30 2002-09-30 水素吸蔵合金

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2002287087A JP2003119541A (ja) 2002-09-30 2002-09-30 水素吸蔵合金

Related Parent Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP19925095A Division JP3415333B2 (ja) 1995-07-13 1995-07-13 水素吸蔵合金

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2003119541A true JP2003119541A (ja) 2003-04-23

Family

ID=19197121

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2002287087A Pending JP2003119541A (ja) 2002-09-30 2002-09-30 水素吸蔵合金

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2003119541A (ja)

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP3415333B2 (ja) 水素吸蔵合金
Lin et al. Recent advances in metastable alloys for hydrogen storage: a review
Ouyang et al. Magnesium-based hydrogen storage compounds: A review
Sakintuna et al. Metal hydride materials for solid hydrogen storage: a review
Raman et al. Investigations on the synthesis, structural and microstructural characterizations of Mg-based K2PtCl6 type (Mg2FeH6) hydrogen storage material prepared by mechanical alloying
JP3626298B2 (ja) 水素吸蔵合金およびその製造方法
JP3528599B2 (ja) 水素吸蔵合金
EP1129027B1 (en) Lithium-based hydrogen storage compositions
Semboshi et al. Degradation of hydrogen absorbing capacity in cyclically hydrogenated TiMn2
Denys et al. Phase equilibria in the Mg–Ti–Ni system at 500° C and hydrogenation properties of selected alloys
JP2955662B1 (ja) 三元系水素吸蔵合金およびその製造方法
Srivastava et al. On the synthesis and characterization of some new AB5 type MmNi4. 3Al0. 3Mn0. 4, LaNi5-xSix (x= 0.1, 0.3, 0.5) and Mg− x wt% CFMmNi5− y wt% Si hydrogen storage materials
Jurczyk et al. The synthesis and properties of nanocrystalline electrode materials by mechanical alloying
JP2003119541A (ja) 水素吸蔵合金
Vojtěch et al. Electrochemical hydriding as method for hydrogen storage?
Jurczyk Hydrogen storage properties of amorphous and nanocrystalline MmNi4. 2Al0. 8 alloys
Han et al. Enhancement of the hydrogen storage properties of Mg/C nanocomposites prepared by reactive milling with molybdenum
JP3520461B2 (ja) マグネシウム系水素吸蔵複合材料
JPH1180865A (ja) 耐久性に優れる水素吸蔵合金とその製造方法
JP3953138B2 (ja) 水素吸蔵合金
KR101583297B1 (ko) 티타늄-지르코늄계 수소저장합금 및 그 제조방법
JP2000239703A (ja) 耐酸化性に優れる水素吸蔵合金粉末の製造方法
Basaraba et al. Influence of High-Energy Milling in Hydrogen on the Structural-Phase State of Alloys Based on the Laves Phases
Wang et al. Composition design for Laves phase-related BCC-V solid solution alloys with large hydrogen storage capacities
Shi Microstructural characterization of a Zr-Ti-Ni-Mn-V-Cr based AB2-type battery alloy

Legal Events

Date Code Title Description
A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20060207

A02 Decision of refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02

Effective date: 20060704