JP2003119532A - 低温での耐スカッフ性に優れた急冷アルミニウム合金製スリーブ - Google Patents

低温での耐スカッフ性に優れた急冷アルミニウム合金製スリーブ

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JP2003119532A
JP2003119532A JP2001316744A JP2001316744A JP2003119532A JP 2003119532 A JP2003119532 A JP 2003119532A JP 2001316744 A JP2001316744 A JP 2001316744A JP 2001316744 A JP2001316744 A JP 2001316744A JP 2003119532 A JP2003119532 A JP 2003119532A
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quenched
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Toshihiko Kaji
俊彦 鍛冶
Koji Yamada
浩司 山田
Riyouji Kameda
諒二 亀田
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Sumitomo Electric Industries Ltd
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Sumitomo Electric Industries Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 低温での耐スカッフ性および被削性に優れた
急冷アルミニウム合金製スリーブを提供する。 【解決手段】 本発明の急冷アルミニウム合金製スリー
ブ1は、アルミニウム合金と、硬質粒子と、固体潤滑剤
とから形成される。アルミニウム合金は、12質量%以
上29質量%以下のシリコンと、0.5質量%以上6質
量%以下の鉄(0.6質量%以上7質量%以下のニッケ
ルおよび0.3質量%以上3.5質量%以下のマンガン
のいずれかと代替可能)と、0.3質量%以上5質量%
以下の銅と、0.3質量%以上2質量%以下のマグネシ
ウムと、残部に含まれるアルミニウムとを含む。硬質粒
子は、粒径5μm以下のアルミナを5質量%以上12質
量%以下または粒径15μm以下のムライトを3質量%
以上15質量%以下含んでいる。固体潤滑剤は黒鉛を
0.1質量%以上2質量%以下含んでいる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、エンジンブロック
に鋳込んで使用される急冷アルミニウム(Al)合金製
スリーブに関するものであり、特に低温での耐スカッフ
性に優れたものに関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、急冷アルミニウム合金粉末を用い
て作製されたスリーブやシリンダライナーなどは、たと
えば特公平1−18983号公報、特公平1−1898
4号公報、特許2893658号公報、特許29322
48号公報、特開平9−217138号公報などに開示
されている。
【0003】特公平1−18983号公報には、重量比
でシリコン(Si)10.0〜30.0%とニッケル
(Ni)5.0〜15.0%と、銅(Cu)0.5〜
5.0%およびマグネシウム(Mg)0.2〜3.0%
を含み、黒鉛、二硫化モリブデン、窒化ホウ素のうちか
ら選ばれた固体潤滑剤0.2〜5.0%を必須成分と
し、残部が不可避的不純物を含むアルミニウムからなる
アルミニウム合金粉末成形体が開示されている。
【0004】また特公平1−18984号公報には、重
量比でシリコン10.0〜30.0%と鉄(Fe)3.
0〜15.0%またはマンガン(Mn)5.0〜15.
0%のうち1種または2種(2種の場合は合計で3.0
〜15.0%)と、黒鉛、二硫化モリブデン、窒化ホウ
素のうちから選ばれた固体潤滑剤を0.2%以上5.0
%未満必須成分として含み、残部が不可避的不純物を含
むアルミニウムからなるアルミニウム合金粉末成形体が
開示されている。
【0005】また特許2893658号公報には、シリ
コン11〜30%、銅0.8〜5%、マグネシウム0.
3〜3.5%、鉄2〜10%(数字はいずれも重量
%)、残部がアルミニウムおよび不可避不純物よりなる
組成のアルミニウム合金粉末に、硬質粒子としてアルミ
ナ(Al23)を1〜5重量%および固体潤滑剤として
黒鉛粉末を0.5〜5重量%を均一に混合した混合粉末
から形成された焼結アルミニウム合金製摺動部材が開示
されている。
【0006】また特許2932248号公報には、重量
%で、シリコン(ケイ素)を23.0〜28.0%、マ
グネシウムを0.80〜2.0%、銅を3.0〜4.5
%、鉄を1.0〜1.4%、ニッケルを1.0〜5.0
%、マンガンおよび亜鉛をそれぞれ最大で0.01%含
み、残部がアルミニウムよりなる合金で形成された過共
晶アルミニウム−ケイ素合金が開示されている。
【0007】また特開平9−217138号公報には、
シリコンを15〜25%、鉄を3.5〜6.5%、銅を
0.4〜1.2%、マグネシウムを0.2〜0.7%含
有し、さらにジルコニウム(Zr)、バナジウム
(V)、モリブデン(Mo)のうちの1種または2種以
上を合計量で0.6〜2.0%含有し、残部がアルミニ
ウムおよび不可避的不純物よりなるアルミニウム合金
と、0.3〜5%で分散されたビッカース硬度がHv5
00以上の硬質粒子とを有するアルミニウム合金複合材
が開示されている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、特公平
1−18983号公報および特公平1−18984号公
報に開示されたアルミニウム合金粉末成形体には硬質粒
子が含まれていないため、耐摩耗性が低く、その摩耗粉
がきっかけとなってスカッフィングを起こしやすいとい
う問題点がある。
【0009】また特許2893658号公報に開示され
た焼結アルミニウム合金製摺動部材ではアルミナの粉末
添加量が少ないために、特に潤滑剤の少ない環境下でス
カッフィングを起こしやすいという問題がある。
【0010】また特許2932248号公報に開示され
た過共晶アルミニウム−ケイ素合金では、特公平1−1
8983号公報および特公平1−18984号公報と同
様に、硬質粒子がないために耐摩耗性が低く、その摩耗
粉がきっかけとなってスカッフィングを起こしやすいと
いう問題点がある。
【0011】また特開平9−217138号公報に開示
されたアルミニウム合金複合材では、硬質粒子の添加量
が少ないために、耐摩耗特性に劣り、摩耗粉がきっかけ
となってスカッフィングを起こしやすいという問題点が
ある。
【0012】このように各公報に記載の材質では、低温
におけるスカッフィングの特性(以下、「低温スカッ
フ」と称する)が良好でないという問題点がある。ここ
で低温スカッフとは、自動車エンジンにおいて、下記の
ような状態で発生する焼き付き現象をいう。
【0013】自動車が数日間から数週間使われずに放置
されると、エンジンスリーブの表面にあって薄い皮膜を
形成していたエンジンオイルは流れ落ちて非常に薄くな
るかまたは完全になくなってしまう。このような状態か
らエンジンをスタートすると、数秒で再びエンジンオイ
ルが供給されるが、この状況が非常に寒冷な地域(−3
0℃〜−40℃)で起こると、この温度ではエンジンオ
イルの粘度が非常に大きくなり、エンジンをスタートさ
せても数分間はオイルが回ってこずに、ほとんど乾燥し
た状態でピストンリングとエンジンスリーブとの摺動が
行なわれてしまう。このとき、材料同士の固体接触、表
面微細突起部同士の凝着が発生し、これが材料表面全体
に波及する現象が、いわゆる低温スカッフである。
【0014】それゆえ本発明の目的は、低温スカッフの
生じにくい(つまり低温で耐スカッフ性に優れた)急冷
アルミニウム合金製スリーブを提供することである。
【0015】
【課題を解決するための手段】本願発明者らは、低温で
の耐スカッフ性を向上させるべく鋭意検討した結果、低
温スカッフを起こしにくくするためには以下の(1)〜
(4)などの手法が有効であることを見出した。
【0016】(1) アルミニウム地の面積率をなるべ
く小さくする。 (2) 硬質粒子を添加して、硬質粒子の部分で応力を
受け持ち、アルミニウム地にかかる応力を低減させる。
【0017】(3) 黒鉛を添加して、固体潤滑成分被
膜を形成する。 (4) オイルピットを形成して、スリーブ表面からエ
ンジンオイルが流れにくくする。
【0018】本願発明者らは、これらの知見に基づい
て、以下の2つの局面に従う急冷アルミニウム合金製ス
リーブが低温での耐スカッフ性に優れていることを見出
した。
【0019】本発明の1の局面に従う低温での耐スカッ
フ性に優れた急冷アルミニウム合金製スリーブは、少な
くともアルミニウム合金と、硬質粒子と、固体潤滑剤と
から形成されている。
【0020】アルミニウム合金は、12質量%以上29
質量%以下のシリコンと、0.5質量%以上6質量%以
下の鉄、0.6質量%以上7質量%以下のニッケル、お
よび0.3質量%以上3.5質量%以下のマンガンのい
ずれか一つと、0.3質量%以上5質量%以下の銅と、
0.3質量%以上2質量%以下のマグネシウムと、残部
に含まれるアルミニウムとを含んでいる。
【0021】硬質粒子は、粒径5μm以下のアルミナを
5質量%以上12質量%以下、または粒径15μm以下
のムライトを3質量%以上15質量%以下含んでいる。
【0022】固体潤滑剤は、黒鉛を0.1質量%以上2
質量%以下含んでいる。本発明の他の局面に従う低温で
の耐スカッフ性に優れた急冷アルミニウム合金製スリー
ブは、少なくともアルミニウム合金と、硬質粒子と、オ
イルピット形成剤とから形成されている。
【0023】アルミニウム合金は、12質量%以上29
質量%以下のシリコンと、0.5質量%以上6質量%以
下の鉄、0.6質量%以上7質量%以下のニッケル、お
よび0.3質量%以上3.5質量%以下のマンガンのい
ずれか一つと、0.3質量%以上5質量%以下の銅と、
0.3質量%以上2質量%以下のマグネシウムと、残部
に含まれるアルミニウムとを含んでいる。
【0024】硬質粒子は、粒径5μm以下のアルミナを
5質量%以上12質量%以下、または粒径15μm以下
のムライトを3質量%以上15質量%以下含んでいる。
【0025】オイルピット形成剤は、球状アモルファス
黒鉛を1質量%以上10質量%以下、またはカーボン短
繊維を1質量%以上10質量%以下含んでいる。
【0026】上記1および他の局面に従う低温での耐ス
カッフ性に優れた急冷アルミニウム合金製スリーブで
は、適当な硬質粒子が適当量添加されているため、特公
平1−18983号公報および特公平1−18984号
公報の材質のように硬質粒子がないために起こるスカッ
フィングを解決することができる。
【0027】またアルミナの含有量が、特許28936
58号公報の材質におけるアルミナの含有量より多いた
め、アルミナの粉末が少ないために生じる潤滑剤の少な
い環境下でのスカッフィングを解決することができる。
【0028】また適当な硬質粒子が適当量添加されてい
るため、特許2932248号公報および特開平9−2
17148号公報の材質のように硬質粒子がないために
耐摩耗性が低く、その摩耗粉がきっかけとなって起こる
スカッフィングを解決することができる。
【0029】次に、上記1および他の局面に従う急冷ア
ルミニウム合金製スリーブにおける各成分について説明
する。
【0030】(1) シリコン(12質量%以上29質
量%以下) シリコンはビッカース硬度が約Hv800の硬質粒子で
あり、相手材(窒化鋼)とほぼ同じ硬度を持つ硬質粒子
である。シリコンは耐摩耗性にはそれほどの効果を発揮
しないが、耐スカッフ性に対してはアルミニウム地の面
積を少なくして、アルミニウムと相手材との接触を妨げ
てスカッフィング(焼き付き)を起きにくくする効果を
有する。シリコンの含有量が12質量%未満であると上
記効果は少なく、29質量%を超えると材料自体が脆く
なったり、被削性が悪くなったり、押出しにくくなった
りするため、生産性が低下する。
【0031】(2) 鉄、ニッケル、マンガン(鉄:
0.5質量%以上6質量%以下、ニッケル:0.6質量
%以上7質量%以下、マンガン:0.3質量%以上3.
5質量%以下) 鉄はスリーブが使用される高温度域(150℃〜200
℃)での硬度低下を防ぐ添加物であり、素材の硬度が低
い(HRB70以下)場合には、添加することによって
マトリクスの硬度を増して硬質粒子の高温での保持力を
増したり、マトリクスのへたりを防止する効果を有す
る。鉄の含有量が0.5質量%未満であると上記効果が
少ない。一方、素材の硬度が充分(HRB80)である
場合には、鉄を特に添加する必要はないが、6質量%を
超えて添加すると硬度が上昇しすぎて生産性の低下につ
ながる。
【0032】また鉄はニッケルまたはマンガンで代替が
可能であり、ニッケルならば0.6質量%以上7質量%
以下で、またマンガンならば0.3質量%以上3.5質
量%以下で鉄と同様の効果が得られる。
【0033】(3) 銅(0.3質量%以上5質量%以
下) 銅は単独で、またはマグネシウムと結びついて素材のマ
トリクスの硬度を上昇させて、やはり硬質粒子の保持力
を上昇させたり、マトリクスのへたりを防ぐ効果を有す
る。鉄の添加は素材の硬度上昇と同時に生産性低下の傾
向をもたらすが、銅の場合には生産性低下の傾向は少な
い。ただし、室温での硬度上昇に比べて、スリーブ使用
温度(150℃〜200℃)での硬度上昇が少ないた
め、鉄による硬度上昇か、銅による硬度上昇かは適宜判
断する必要がある。銅の含有量が0.3質量%未満であ
ると上記効果は少なく、5質量%を超えると上記効果は
飽和する。
【0034】(4) マグネシウム(0.3質量%以上
2質量%以下) マグネシウムは単独でまたは銅やシリコンと結びつい
て、銅と同様に室温での硬度を上昇させて硬質粒子の保
持力を増加させたり、マトリクスのへたりを防ぐ効果を
有する。銅と同様に、室温での硬度上昇に比べて、スリ
ーブ使用温度(150℃〜200℃)での硬度上昇が少
ないため、鉄や銅による硬度上昇か、マグネシウムによ
る硬度上昇かは適宜判断する必要がある。マグネシウム
の含有量が0.3質量%未満では上記効果が少なく、2
質量%を超えると上記効果は飽和する。
【0035】(5) 硬質粒子 シリコンは硬度がHv800程度であり、硬質粒子とし
ての耐摩耗性の効果が少ないため、さらに硬度の高い硬
質粒子を添加する必要がある。アルミナは硬度がHv2
500程度であり、ムライトは硬度がHv1250程度
である。硬度が高い硬質粒子は、被削性低下を招くので
小さくする必要がある。
【0036】アルミナの粒径が5μm以下であれば、被
削性を低下させることが少ない。アルミナの添加量が5
質量%未満の場合は低温での耐スカッフ性が不充分であ
り、12質量%を超えると被削性の低下はもちろん、均
一混合が困難となったり、相手攻撃性が高くなってしま
う。
【0037】ムライトの場合は、アルミナよりも硬度が
低いので15μm以下であれば被削性を低下させること
が少ない。比較的大きな粒子を使用した場合、ムライト
の添加量が3質量%未満では低温での耐スカッフ性が不
充分となり、15質量%を超えると被削性の低下はもち
ろん、均一混合が困難となったり、相手攻撃性が高くな
ってしまう。
【0038】(6) 固体潤滑剤 黒鉛粉末は潤滑剤が少なくなった環境下で、固体潤滑剤
として作用し、相手材とのスカッフィングを防止する。
さらに黒鉛は油との濡れ性がよいために油を保持する。
また、黒鉛は抜け落ちても硬質粒子ではないために摩耗
を促進することがなく、抜け落ちた後の空隙は油溜りに
なる効果もある。いずれにせよ黒鉛は低温での耐スカッ
フ性を向上させる働きを有する。
【0039】硬質粒子だけでは、低温での耐スカッフ性
が不十分な場合でも黒鉛を添加することにより低温での
耐スカッフ性を向上させることができる。黒鉛の添加量
が0.1質量%未満では、この効果が不充分となる。
【0040】ただし、黒鉛はアルミニウム合金粉末の結
合を妨げて材料を脆くしたり、押出時のびびりを誘発す
るので、添加量は2質量%を超えることはできない。
【0041】(7) オイルピット形成剤 上記黒鉛の代わりに、オイルピット形成剤として球状ア
モルファス黒鉛やカーボン短繊維を添加しても黒鉛添加
と同様の効果が得られる。
【0042】球状アモルファス黒鉛は固体潤滑性能に関
しては黒鉛に劣るものの、脱落した際のオイルピット形
成機能では黒鉛と同等の効果を有する。しかも、球状ア
モルファス黒鉛は黒鉛よりも強度が高いために黒鉛のよ
うに微細粉末になりにくく、そのためにアルミニウム合
金粉末の結合を妨げることもない。
【0043】カーボン短繊維も、球状アモルファス黒鉛
と同様の機能を有するが、これだと脱落した際に線状の
オイルピットを形成することができてより高い効果を得
ることができる。
【0044】黒鉛、球状アモルファス黒鉛およびカーボ
ン短繊維のいずれも、アルミニウム合金マトリクスとの
結合力は小さく、脱落しやすい。それが、オイルピット
形成剤としての効果をもたらす原因である。
【0045】上記1および他の局面において好ましく
は、アルミニウム合金はアトマイズ急冷凝固法によって
作成されており、硬質粒子と固体潤滑剤またはオイルピ
ット形成剤とがアルミニウム合金に混合添加されてい
る。
【0046】このようにアルミニウム合金粉末がアトマ
イズ急冷凝固法によって作製されれば、微細粉末を作製
することが容易で、後の硬質粒子や潤滑成分やオイルピ
ット形成剤の添加が容易となる。またアトマイズ前の溶
湯に硬質粒子成分や潤滑成分やオイルピット形成剤を添
加してそれをアトマイズする方法も考えられるが、技術
的に均質な混合が難しい。
【0047】上記1および他の局面において好ましく
は、相手材の表面に1μmの厚みでエンジンオイルを塗
布した状態で相手材に5MPaの荷重で押しつけたまま
0.25m/sの速度で摩擦させたとき5分間焼き付き
が発生しない特性を本発明の急冷アルミニウム合金製ス
リーブは有する。
【0048】このように、本発明の急冷アルミニウム合
金製スリーブは、従来例よりも低温での耐スカッフ性に
優れている。
【0049】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態につい
て図に基づいて説明する。
【0050】図1は、本発明の一実施の形態における急
冷アルミニウム合金製スリーブの構成を示す概略斜視図
である。図1を参照して、本実施の形態の急冷アルミニ
ウム合金製スリーブ1は、円筒形状を有している。この
スリーブ1は、少なくともアルミニウム合金と、硬質粒
子と、固体潤滑剤とから形成されている。アルミニウム
合金は、たとえば12質量%以上29質量%以下のシリ
コンと、0.5質量%以上6質量%以下の鉄と、0.3
質量%以上5質量%以下の銅と、0.3質量%以上2質
量%以下のマグネシウムと、残部に含まれるアルミニウ
ムとを含んでいる。
【0051】アルミニウム合金中の鉄は、0.6質量%
以上7質量%以下のニッケルおよび0.3質量%以上
3.5質量%以下のマンガンのいずれかで代替すること
が出来る。
【0052】硬質粒子は、粒径5μm以下のアルミナを
5質量%以上12質量%以下、または粒径15μm以下
のムライトを3質量%以上15質量%以下含んでいる。
固体潤滑剤は、黒鉛粉末を0.1質量%以上2質量%以
下含んでいる。
【0053】また、上記の固体潤滑剤はオイルピット形
成剤で代替することが出来る。このオイルピット形成剤
は、球状アモルファス黒鉛を1質量%以上10質量%以
下、またはカーボン短繊維を1質量%以上10質量%以
下含んでいる。
【0054】本実施の形態の急冷アルミニウム合金製ス
リーブ1では、アルミニウム合金はアトマイズ急冷凝固
法によって作成されており、硬質粒子と固体潤滑剤また
はオイルピット形成剤とがアルミニウム合金に混合添加
されていることが好ましい。
【0055】また本実施の形態の急冷アルミニウム合金
製スリーブ1は、相手材の表面に1μmの厚みでエンジ
ンオイルを塗布した状態で相手材に5MPaの荷重で押
しつけたまま0.25m/sの速度で摩擦させたとき5
分間焼き付きが発生しない特性を有している。
【0056】このような本実施の形態の急冷アルミニウ
ム合金製スリーブ1は、たとえば図2に示すような往復
ピストン機関のシリンダーライナーとして用いられる。
【0057】図2を参照して、本実施の形態の急冷アル
ミニウム合金製スリーブ1よりなるシリンダーライナー
1内にて、ピストン3が昇降運動可能に案内されてい
る。このシリンダーライナー1は、シリンダジャケット
2に受け入れられている。このシリンダジャケット2の
周りには、シリンダ冷却用水ジャケット4を形成する空
所が設けられている。
【0058】内部にシリンダーライナー1、ピストン3
などを内包するクランクケース5上には、シリンダヘッ
ド密封片を介して、装気交換および装気点火用の装置を
持つシリンダヘッド6が取り付けられている。
【0059】次に、本実施の形態の急冷アルミニウム合
金製スリーブ1の組織について説明する。
【0060】図3は、本発明の一実施の形態における急
冷アルミニウム合金製スリーブが固体潤滑剤を含む場合
の組織の様子を示す図である。図3を参照して、アルミ
ニウム合金マトリクス11中に、アルミナまたはムライ
トよりなる硬質粒子12と、黒鉛粉末よりなる固体潤滑
剤13aと、シリコン晶14とが分散して分布してい
る。
【0061】図4は、本発明の一実施の形態における急
冷アルミニウム合金製スリーブがオイルピット形成剤を
含む場合の組織の様子を示す図である。図4を参照し
て、アルミニウム合金マトリクス11中に、アルミナま
たはムライトよりなる硬質粒子12と、球状アモルファ
ス黒鉛またはカーボン短繊維よりなるオイルピット形成
剤13bと、シリコン晶14とが分散して分布してい
る。
【0062】なお、カーボン短繊維はアルミニウム合金
マトリクス11との結合力が弱いため脱落し易い。カー
ボン短繊維が脱落した場合には、図5の断面図に示すよ
うに、アルミニウム合金マトリクス11にオイルピット
となるくぼみ13cが生じる。
【0063】
【実施例】以下、本発明の実施例について説明する。
【0064】まず、以下の表1および表2に示す各組成
になるように調整した溶湯を約30kg/cm2の圧力
で空気アトマイズすることによりアルミニウム合金粉末
を作製した。この後、表1および表2に示した添加量で
アルミナ粒子、ムライト粒子、黒鉛粉末、球状アモルフ
ァス黒鉛粉末、カーボン短繊維をアルミニウム合金粉末
に添加した後、V型混合ミキサで混合して完粉とした。
【0065】
【表1】
【0066】
【表2】
【0067】この粉末にCIP(Cold Isostatic Press
ing)を施し、熱間で外径φ85mm、内径φ75mm
の筒状に押出をした。この筒状試料から、図6に示す形
状の摩耗試験片21を切出して、低温でのスカッフ試験
を行なった。低温でのスカッフ試験は、図7に示す原理
により行なった。
【0068】図7を参照して、相手材22には表面を窒
化した窒化鋼(φ60mm×7mm)を用いた。この相
手材22の表面には均一にエンジンオイルを塗布した。
このエンジンオイルは、厚みが非常に薄くなった状態
(1μm)になるように調整して塗布した。
【0069】相手材22を回転部材24に固定し、試験
片21を固定部材23に固定した。そして試験片21を
相手材22に対して5MPaの荷重で押しつけ、その状
態で0.25m/sの速度で回転部材24を固定部材2
3に対して回転させて試験をスタートした。その試験に
おいて、μの値が0.5以上になったときをスカッフィ
ング発生と判断して、このときの時間を記録した。5分
間以上スカッフィングが起きないものを合格とした。そ
の結果を表3および表4に示す。
【0070】
【表3】
【0071】
【表4】
【0072】また、材料の被削性に関して下記の条件で
調査を行なった。工具には焼結ダイヤモンド(住友電工
DA2200)を用い、切削速度を400m/mi
n.、送りを0.2mm/rev.、切込み深さを0.
1mmとして、湿式の条件下で10kmの切削を行な
い、そのときの工具の逃げ面摩耗量を調査した。逃げ面
摩耗量が80μm未満のものを合格とした。その結果を
表3および表4に併せて示す。
【0073】表1〜表4の結果より、アルミニウム合金
が12質量%以上29質量%以下のシリコンと、0.5
質量%以上6質量%以下の鉄(0.6質量%以上7質量
%以下のニッケルおよび0.2質量%以上3.5質量%
以下のマンガンのいずれかと代替可能)と、0.3質量
%以上5質量%以下の銅と、0.3質量%以上2質量%
以下のマグネシウムと、残部に含まれるアルミニウムと
を含み、硬質粒子が粒径5μm以下のアルミナを5質量
%以上12質量%以下または粒径15μm以下のムライ
トを3質量%以上15質量%以下含み、固体潤滑剤が黒
鉛を0.1質量%以上2質量%以下含むことにより、低
温でのスカッフ性および被削性において良好となること
が判明した。
【0074】また、アルミニウム合金が12質量%以上
29質量%以下のシリコンと、0.5質量%以上6質量
%以下の鉄(0.6質量%以上7質量%以下のニッケル
および0.2質量%以上3.5質量%以下のマンガンの
いずれかと代替可能)と、0.3質量%以上5質量%以
下の銅と、0.3質量%以上2質量%以下のマグネシウ
ムと、残部に含まれるアルミニウムとを含み、硬質粒子
が粒径5μm以下のアルミナを5質量%以上12質量%
以下または粒径15μm以下のムライトを3質量%以上
15質量%以下含み、オイルピット形成剤が球状アモル
ファス黒鉛を1質量%以上10質量%以下またはカーボ
ン短繊維を1質量%以上10質量%以下含むことによ
り、低温での耐スカッフ性および被削性において良好と
なることが判明した。
【0075】今回開示された実施の形態および実施例は
すべての点で例示であって制限的なものではないと考え
られるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではな
くて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と
均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれるこ
とが意図される。
【0076】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、
非常に潤滑オイルの少なくなった状態でも、焼き付きに
くい、つまりスカッフィングを起こしにくい軽量の急冷
アルミニウム合金製スリーブを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施の形態における急冷アルミニ
ウム合金製スリーブの構成を概略的に示す斜視図であ
る。
【図2】 本発明の一実施の形態における急冷アルミニ
ウム合金製スリーブを用いた往復ピストン機関の構成を
概略的に示す一部破断図である。
【図3】 本発明の一実施の形態における急冷アルミニ
ウム合金製スリーブが固体潤滑剤を含む場合の組織の様
子を示す図である。。
【図4】 本発明の一実施の形態における急冷アルミニ
ウム合金製スリーブがオイルピット形成剤を含む場合の
組織の様子を示す図である。
【図5】 カーボン短繊維が脱落した後のくぼみの様子
を示す断面図である。
【図6】 低温スカッフ試験に用いられる試料を示す図
である。
【図7】 低温スカッフ試験の原理を説明するための図
である。
【符号の説明】
1 急冷アルミニウム合金製スリーブ、2 シリンダジ
ャケット、3 ピストン、4 シリンダ冷却用水ジャケ
ット、5 クランクケース、6 シリンダヘッド、11
アルミニウム合金マトリクス、12 硬質粒子、13
a 固体潤滑剤、13b オイルピット形成剤、14
シリコン晶、21 試験片、22 相手材、23 固定
部材、24 回転部材。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 亀田 諒二 兵庫県伊丹市昆陽北一丁目1番1号 住友 電気工業株式会社伊丹製作所内 Fターム(参考) 4K020 AA04 AA22 AA23 AA27 AB02 AC01 BB41

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 少なくともアルミニウム合金と、硬質粒
    子と、固体潤滑剤とから形成され、 前記アルミニウム合金は、 12質量%以上29質量%以下のシリコンと、 0.5質量%以上6質量%以下の鉄、0.6質量%以上
    7質量%以下のニッケル、および0.3質量%以上3.
    5質量%以下のマンガンのいずれか一つと、 0.3質量%以上5質量%以下の銅と、 0.3質量%以上2質量%以下のマグネシウムと、 残部に含まれるアルミニウムと、を含み、 前記硬質粒子は、粒径5μm以下のアルミナを5質量%
    以上12質量%以下、または粒径15μm以下のムライ
    トを3質量%以上15質量%以下含み、 前記固体潤滑剤は、黒鉛粉末を0.1質量%以上2質量
    %以下含むことを特徴とする、低温での耐スカッフ性に
    優れた急冷アルミニウム合金製スリーブ。
  2. 【請求項2】 前記アルミニウム合金はアトマイズ急冷
    凝固法によって作成されており、前記硬質粒子と前記固
    体潤滑剤とが前記アルミニウム合金に混合添加されてい
    ることを特徴とする、請求項1に記載の低温での耐スカ
    ッフ性に優れた急冷アルミニウム合金製スリーブ。
  3. 【請求項3】 少なくともアルミニウム合金と、硬質粒
    子と、オイルピット形成剤とから形成され、 前記アルミニウム合金は、 12質量%以上29質量%以下のシリコンと、 0.5質量%以上6質量%以下の鉄、0.6質量%以上
    7質量%以下のニッケル、および0.3質量%以上3.
    5質量%以下のマンガンのいずれか一つと、 0.3質量%以上5質量%以下の銅と、 0.3質量%以上2質量%以下のマグネシウムと、 残部に含まれるアルミニウムと、を含み、 前記硬質粒子は、粒径5μm以下のアルミナを5質量%
    以上12質量%以下、または粒径15μm以下のムライ
    トを3質量%以上15質量%以下含み、 前記オイルピット形成剤は、球状アモルファス黒鉛を1
    質量%以上10質量%以下、またはカーボン短繊維を1
    質量%以上10質量%以下含むことを特徴とする、低温
    での耐スカッフ性に優れた急冷アルミニウム合金製スリ
    ーブ。
  4. 【請求項4】 前記アルミニウム合金はアトマイズ急冷
    凝固法によって作成されており、前記硬質粒子と前記オ
    イルピット形成剤とが前記アルミニウム合金に混合添加
    されていることを特徴とする、請求項3に記載の低温で
    の耐スカッフ性に優れた急冷アルミニウム合金製スリー
    ブ。
  5. 【請求項5】 相手材の表面に1μmの厚みでエンジン
    オイルを塗布した状態で前記相手材に5MPaの荷重で
    押しつけたまま0.25m/sの速度で摩擦させたとき
    5分間焼き付きが発生しない特性を有することを特徴と
    する、請求項1または3に記載の低温での耐スカッフ性
    に優れた急冷アルミニウム合金製スリーブ。
JP2001316744A 2001-10-15 2001-10-15 低温での耐スカッフ性に優れた急冷アルミニウム合金製スリーブ Withdrawn JP2003119532A (ja)

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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2012072474A (ja) * 2010-09-29 2012-04-12 Sumitomo Electric Sintered Alloy Ltd シリンダスリーブ用合金及びそれを使用したシリンダスリーブ
CN106811632A (zh) * 2017-01-11 2017-06-09 上海工程技术大学 一种细化Al‑Si‑Fe‑Cu‑Mg合金组织及其制备方法

Cited By (2)

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