JP2003116594A - 液状食品の大腸菌群推定検査方法 - Google Patents

液状食品の大腸菌群推定検査方法

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JP2003116594A
JP2003116594A JP2001310593A JP2001310593A JP2003116594A JP 2003116594 A JP2003116594 A JP 2003116594A JP 2001310593 A JP2001310593 A JP 2001310593A JP 2001310593 A JP2001310593 A JP 2001310593A JP 2003116594 A JP2003116594 A JP 2003116594A
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JP2001310593A
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Yoshito Shibauchi
好人 柴内
Takayoshi Sato
孝義 佐藤
Kuniyoshi Koyata
邦芳 小谷田
Hideo Kuwadaira
秀夫 桑平
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Snow Brand Milk Products Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 液状食品、特に牛乳中の大腸菌群を迅速に検
査する方法。 【解決手段】 液状食品を予め一定の温度、一定の時間
で増菌処理し、増菌した液状食品から一定のサンプリン
グ量でサンプリングし、得られた試料をフィルターで濾
過し、このフィルターをデソキシコーレイト培地上に載
せて、一定の温度、一定の時間で培養し、培養後のフィ
ルターを染色し、大腸菌群の形成するコロニーの有無を
検査することよりなる液状食品の大腸菌群推定検査方
法。ただし、この方法は、本発明の大腸菌の陽性率が、
DESO法の大腸菌の陽性率と比べて同等以上になるような
試験条件を設定して適用される。

Description

【発明の詳細な説明】 【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、液状食品の大腸菌
群推定検査方法に関する。 【0002】 【従来の技術】液状食品、特に牛乳その他の乳製品は、
栄養が豊かで、日本人に不足しやすい栄養源の補給に有
用な食品である。しかし、一方微生物学的な面から見る
と、この食品は、栄養が豊富なだけに微生物の発育にも
好都合である。従来、全国で行なわれた牛乳の品質保持
期限の調査からは、微生物に汚染された牛乳でも常に低
い温度に保存されていれば問題はないとの結論が出され
ているものの、夏の暑い時期に倉庫に保管したり、店頭
に陳列したりあるいは家庭に保管したりしている間に品
温が上昇し、もし製品に微生物の汚染があると微生物は
牛乳を栄養源として増繁を開始し、品質の低下を招くお
それがあった。このことから、微生物汚染の早期発見が
重要である。このようなことから乳製品、特に牛乳の微
生物を迅速かつ的確に予め推定する方法が望まれる。 【0003】現在、牛乳に対する大腸菌群の推定試験に
は、乳等省令により定められた公定法のBGLB法や、準公
定法として使用が認められている「デソキシコーレイト
寒天等による試験」等があり、これらの方法によって実
施されている。BGLB法は、発酵管を用いて35℃で24〜48
時間の培養後に、ガス発生の有無によって、また、DESO
法はデソキシコーレイト寒天培地上で35℃で約20時間培
養し、大腸菌のコロニー形成の有無によって製品中の大
腸菌群の有無を判定する方法である。そして、DESO法の
方が、BGLB法にくらべて検査時間が短く、作業が比較的
容易であるため食品業界で広く一般的に用いられてい
る。しかし、DESO法においても検査結果が得られるまで
約18〜20時間を要し、製品の迅速な衛生管理が難しいと
いう問題があり、乳業界ではより迅速な検査方法の開発
が望まれていた。 【0004】 【発明が解決しようとする課題】本発明は、液状食品、
特に乳製品、とりわけ牛乳製造におけるこのような問題
点を解決することを課題としてなされたものである。す
なわち、本発明の課題は、従来のDESO法あるいはBGLB法
の代わりに液状食品中の一定時間後の大腸菌群の汚染の
有無を迅速に推定する検査方法に関する。 【0005】 【課題を解決するための手段】本発明者らは、牛乳を専
用のフィルターで直接濾過し、そのフィルターをデソキ
シコーレイト寒天培地上で35℃で一定時間培養し、染色
処理を行なった後、顕微鏡下で大腸菌群のコロニーを計
数する方法 (牛乳の直接濾過法、以下 DMF法という) を
提案した。そして、さらにこの DMF法の検出感度を高め
るために製品を大腸菌の培養に適当な温度で一定時間増
菌処理し、これを DMF法に供する方法 (以下、増菌 DMF
法という) を開発した。本発明は、この増菌 DMF法を用
い、増菌DMF 法の陽性率(Pp)が従来、大腸菌の簡易推定
検査方法として実施されているDESO法の陽性率(Ppd) に
等しいかそれ以上であることを条件として、液状食品の
大腸菌群を迅速に推定検査する方法に関する。 【0006】すなわち、本発明は、次のとおりの液状食
品の大腸菌群推定検査方法に関する。液状食品を予め一
定の温度、一定の増菌時間(tz)で増菌処理し、増菌処理
した液状食品から一定のサンプリング量(v) でサンプリ
ングした試料をフィルターで濾過し、試料を濾過したフ
ィルターをデソキシコーレイト培地上に載せて、一定の
温度、一定の培養時間(tb)で培養し、培養後のフィルタ
ーを染色し、大腸菌群の形成するコロニーの有無を検査
することよりなる液状食品の大腸菌群推定検査方法 (以
下、増菌DMF 法という) 。ただし、この検査方法におけ
る増菌時間(tz)、サンプリング量(v) 及び培養時間(tb)
は、式(2) で表わされる本増菌DMF 法の陽性率(Pp)と、
式(3) で表わされる従来のデソキシコーレイト寒天等に
よる試験法 (以下、DESO法という) の陽性率(Ppd) とが
式(1) を満たすように定める。本発明でいう陽性率と
は、製品中に大腸菌群が存在する場合に、製品の大腸菌
群による汚染をある検査方法で検出する確率である。 【0007】 【式7】 【0008】 【式8】 【0009】 【式9】 【0010】式(1) が満たされるような、増菌時間(t
z)、サンプリング量(V) 、培養時間(tb)は以下のように
して定める。 試料1 接種菌液を所定の菌濃度になるように液状食品
へ注入して試料を調製し、この試料を一定の温度で一定
の時間培養して大腸菌を増菌させた時の大腸菌の増殖特
性に式(5) のモデルを適用し、誘導期(to)と分裂時間
(τ) を求める。 【0011】試料2 接種菌液を所定の菌濃度、好まし
くは 100個/ml 以上になるように液状食品へ注入して試
料を調製する。この試料から一定量(V) を サンプリン
グし、サンプリングした試料をフィルターで濾過し、こ
のフィルターをデソキシコーレイト培地表面に貼り付
け、一定の温度で一定の時間(tb)培養した後、このフィ
ルターを染色し、大腸菌のコロニーを計数する。この計
数値とサンプリング量から単位サンプル量に対する菌濃
度を算出し、この菌濃度と試験に供した接種菌数の菌濃
度に対する比を求め、これを回収率 r(tb)とする。この
回収率 r(tb)は、培養時間(tb)に依存するので、培養時
間(tb)を変化させて回収率を求めておく。 【0012】試料1、2により求めた誘導期(to)と分裂
時間 (τ) と回収率 r(tb)を式(2)から式(6) に代入
し、式(1) が満たされるような、増菌時間(tz)、サンプ
リング量(V) 、培養時間(t) を定める。尚、この計算に
おいて、Noは任意であるが好ましくは 0.1ないし1.0(個
/ml)程度の値を用いて計算を行う。 【0013】 【式10】 【0014】 【式11】【0015】 【式12】 【0016】 【発明の実施の形態】次に、本発明の実施態様について
説明する。本発明の検査方法の対象となる液状食品に
は、乳製品、清涼飲料(コーヒー飲料、野菜・果汁飲料
等)等があるが、特に乳製品には、牛乳、特別牛乳、殺
菌山羊乳、部分脱脂乳、脱脂乳、加工乳、クリーム、乳
飲料、濃縮乳、脱脂濃縮乳、加糖練乳、加糖脱脂練乳、
全粉乳、脱脂粉乳、クリームパウダー、ホエイパウダ
ー、バターミルクパウダー、加糖粉乳及び調製粉乳等が
例示される。これらの乳製品が液状の場合は、そのまま
または希釈して対象とする。また粉末状の場合は、それ
を溶解しまたはさらに希釈して用いる。 【0017】A. 本発明の増菌DMF 法の陽性率(Pp)の算
出を牛乳を例とすると具体的には次のようにして行われ
る。 試料の調製 (接種菌液を所定の菌濃度になるように
液状食品に注入する工程) 1) 試料 例として、無脂乳固形 8.3%、脂肪率 3.5%で UHT法(1
30℃-2秒間) で殺菌された牛乳を紙カートン(1リット
ル) に充填したもの (雪印乳業 (株) 製) を用いて説明
する。 【0018】2) 菌液の調製 平板培地 (標準寒天培地) 上で培養した E.coli を一白
金耳とり、希釈水(塩化ナトリウム0.85%、リン酸二水
素カリウム (無水)0.0425 %、水酸化ナトリウム0.0008
8 %) に懸濁させたものの菌濃度を測定し、これを所定
の菌濃度に希釈して接種菌液とする。この接種菌液の菌
濃度は、一定量の菌液をデソキシコーレイト寒天培地上
で培養し、大腸菌のコロニーを計数することにより測定
する。 3) 菌液を試料に注入 上記の牛乳カートンの一部を開封し、これに接種菌液を
所定の菌濃度になるように注入して分散させた後、再び
密封して混合し試料とした。この操作はクリーンベンチ
内で行ない、他の菌による微生物汚染が発生しないよう
に注意した。 【0019】 増菌及び期待値 (λ) の算出 1) 増菌処理 所定の菌濃度に調整した上記の試料(紙カートン入り牛
乳)の牛乳を密封したまま37℃の水槽に入れ、試料が35
℃達温後、一定時間 (0〜3時間)保持して増菌させ
た。なお、適温に達するには約30分を要したがこれは増
菌時間に加えなかった。増菌終了後の試料は、冷却しな
いで直ちにDMF 法に供した。 【0020】2) DMF法 一定量の試料 (2〜5ml)を専用の濾過器(日本ミリポ
ア (株) 製、ステリフィル 500・3 連濾過キット) を用
いて無菌的に吸引濾過した。使用したフィルターはポリ
ビニリデンクロライド製の0.65ミクロン (ミリポア
(株) 製、MSDS) で、吸引圧力は約 0.08MPaとした。濾
過を終了したフィルターは直ちにデソキシコーレイト培
地表面に気泡を入れないように貼り付け、35℃で一定時
間 (7〜9時間)培養した。培養したフィルターは、専
用の染色液(ミリポア (株) 、MS染色液) をフィルター
上に3〜4滴滴下して染色処理し、寒天培地から剥が
し、これを自然乾燥してから顕微鏡観察に供した。顕微
鏡は実体顕微鏡を用い、20倍の倍率で染色された大腸菌
群のコロニーを計数した。各試料からそれぞれ繰り返し
て10回のサンプリングを行いDMF 法に供した。この繰り
返しのなかで菌 (コロニー) が1個以上検出される確率
を大腸菌の陽性率とした。なお、デソキシコーレイト培
地は次の方法で調製された培地を用いた; デソキシコー
レイト培地粉末 (パールコア・デソキシコーレイト培
地、栄研化学 (株)製) を所定量の水に分散させ、約100
℃で加熱溶解後、50℃以下まで冷却してから混釈培地
とした。 【0021】本発明の前記増菌DMF 法においては、上記
のように主に、(1) 製品の状態での加温による増菌処
理、(2) 一定量のサンプリング、(3) サンプリングした
試料の濾過、濾過フィルターの培養、顕微鏡下での濾過
フィルター上の大腸菌群コロニーの計数から成るDMF 法
処理の3つの工程に分けられる。これらの点についてさ
らに詳述する。 【0022】(1) 増菌処理 牛乳中の大腸菌の増殖に関しては多くの研究があり、初
期菌濃度をNo、分裂時間をτ、誘導期をtoとすると、誘
導期から増殖期にある菌のある時刻tにおける菌濃度N
(t) は、次式(5) で近似させることができる。 【0023】 【式13】【0024】増殖期を過ぎると菌数は一定になり、やが
て減少していくが、本発明においては、増菌処理は菌数
を増やして検出確率を高めることを目的とするので、増
殖期までを考慮すれば十分である。 【0025】(2) サンプリング ある一定濃度の菌液から、一定量のサンプリングを行な
うとき、このサンプルに含まれる菌数を議論するために
は統計的な考察が必要である。一般的に、無限大の離散
的要素からなる母集団から、比較的小さい検出確率 pの
ある事象を、n回のサンプリングで x回見出す確率は、
p・n を期待値とするポアソン分布で与えられることが
知られている(「確率分布と統計解析」:竹内啓(日本
規格協会、1987) )。 【0026】本発明では、これと同様の考察から、菌液
の濃度がN(個/ml)の無限大の試料からV(ml) をサンプリ
ングするとき、このサンプル中にx個の菌が含まれる確
率Ps(x) は、サンプリングされる菌数の期待値をλ (=N
・V)とすると、次のポアソン分布に基づく式(7) で表さ
れる。 【0027】 【式14】 【0028】この菌のサンプリング確率は、DESO法、DM
F 法を問わず、サンプリング自体に起因する。このサン
プリング確率の検討が重要となるのは食品中の有害菌の
有無を議論する場合で、特に、菌数の期待値 (λ) が小
さい場合、すなわち菌濃度が低かったり、サンプル量が
少ない場合などに元の試料には菌が存在するにもかかわ
らず、サンプリングされた試料には菌が含まれない場合
が発生するが、式(7)を用いるとこの確率を予測するこ
とができる(春田三佐夫:乳・乳製品の衛生指標細菌−
特に大腸菌をめぐって、乳技協資料31(2)(1981))。 【0029】(3) DMF 法 DMF 法には、最終的な菌数の検出精度に影響する主な因
子が2つある。濾過作業で菌をフィルター上に捕獲でき
る捕獲確率pfと、捕獲した菌が35℃の培養下で培養時間
tの間に計数可能なコロニーを形成するコロニー形成確
率pcである。これらの因子が互いに独立であれば、DMF
法に1個の菌を供したときの検出確率 rはpfとpcの積と
なる。ここで、この検出確率rをDMF 法における菌の回
収率と定義した。実験的には、菌の回収率は既知の濃度
の菌液を一定量取ってDMF 法に供したとき、DMF 法で計
測した菌数 (コロニー数) とその予測値(菌濃度×サン
プル量)の比で求められる。 【0030】回収率が高ければ、それだけDMF 法による
大腸菌群の推定試験の菌の検出精度を高めることができ
る。回収率に影響を与える因子としてはフィルターのメ
ッシュサイズや吸引条件、あるいはコロニー発生率に影
響を与える培養時間など多くの因子が考えられる。測定
においては、これらを一定にする必要がある。本発明に
おいては、フィルターのメッシュは0.65ミクロン、吸引
圧力は0.08Mpa として測定した。 【0031】これ以外の因子としては、増菌処理の有無
やDMF 法に供するサンプル量、あるいはDMF 法の培養時
間などが考えられる。そこで予備試験を行なったとこ
ろ、増菌処理無しでは回収率の値が小さく、ばらつきも
大きくなる傾向が認められたが、増菌時間が1時間以上
では比較的安定した回収率を得た。また、DMF 法に供す
るサンプリング量は、フィルタリングがスムースに行な
える範囲では回収率への影響は少なく、牛乳の場合、1
〜10ml程度ではほとんど影響が見られなかった。DMF 法
の培養時間の影響については、培養時間を4〜8時間の
範囲で変化させた場合の回収率を測定したところ、この
範囲では回収率はほぼ直線的な変化を示した。 【0032】このような予備試験結果から、回収率は、
増菌時間を1時間以上、サンプリング量1〜10ml、培養
時間を一定にすれば近似的に一定であると見なせること
が分かった。したがって、DMF 法の実施に当たっては、
この回収率が一定となるような条件を満たす必要があ
る。 【0033】回収率が定まるとDMF 法で測定される菌数
は理論的に予測できる。すなわち、x 個の菌がサンプリ
ングされ、これが菌の回収率 rのDMF 法に供されたとき
に、DMF 法で y個が検出される確率 Pr を求めればよ
い。ここで、離散的要素からなる母集団から xを抽出す
るとき、この中に選択確率が rである要素が y個含まれ
る確率は2項分布で表される(確率分布と統計解析:竹
内啓(日本規格協会、1975))。回収率が rのDMF 法にお
いて、供給された x個の菌から y個が検出される確率を
求める問題はこれと同等であり、したがって、 Pr は式
(8) で示す2項分布で表すことができる。 【0034】 【式15】【0035】(4) 増菌DMF 法における菌の検出確率 上記の回収率を一定とするDMF 法の測定条件の下では、
上記サンプリング及びDMF 法の操作は互いに独立な操作
と見なせるので、菌液の濃度がN(個/ml)の試料から V(m
l)をサンプリングしてこの中にx個の菌が含まれ、これ
を菌の回収率がγのDMF 法に供したときにy個の菌が検
出される確率Pdは式(7) と式(8) の積となる。すなわ
ち、次式(9) で表される。 【0036】 【式16】 【0037】 大腸菌群の陽性率(Pp)の算出 (1) 現在の製品の大腸菌群推定試験は製品の全量に対
してではなく、サンプリングされた試料の分析によって
判断される。したがって、元の製品に大腸菌群が存在し
ても、サンプリングされた試料中にたまたま菌が存在し
なければ、製品は大腸菌群陰性と判断される危険性があ
る。しかし、このような場合でもサンプリングを何度も
繰り返せばある確率で大腸菌群陽性の結果が得られると
考えられる。このサンプリング回数を無限大にしたとき
の製品が陽性となる確率が陽性率Ppである。定義より陽
性率は、1から陰性となる確率を引いた値となる。試料
が陰性となるのはサンプリングでV(ml) の試料中に菌が
1個も含まれないときと、1 個以上含まれるがDMF 法に
供したときに菌が検出されない確率の和となる。したが
って、増菌DMF 法における陽性率Ppは、式(2) で与えら
れる。 【0038】 【式17】 【0039】ここで、DMF 法に供するサンプル中の期待
される菌数λは、前記式(4) で示される。 【0040】 【式18】 本発明は、この式(2) 及び式(4) より大腸菌群の陽性率
Ppを求める。 【0041】B. 本発明において使用する DESO 法の陽
性率(Ppd) を前記の牛乳を用いて算出すると次のとおり
である。式(2) は準公定法であるDESO法の陽性率の予測
にも使用することができる。それには式(2) において、
増菌時間を0とし、サンプル量を1ml×2回(実質2m
l)、回収率を1とすればよい。このサンプル量に関し
ては、一般的にDESO法では1mlづつ2枚のシャーレを取
り、どちらか1枚でも陽性になれば製品を大腸菌群陽性
として判断するので、実質2mlをとって培養操作に供し
たのと同じことになる。回収率については、DESO法の約
20時間の培養操作の中で、サンプリングされた全ての菌
がコロニーを形成すると仮定すれば回収率を1としてよ
い。 【0042】この仮定の下では、分布に従うサンプリン
グ確率だけがDESO法の陽性率に影響する。ここで、菌液
の濃度N(個/ml)の試料からVd(ml)をサンプリングされる
菌数の期待値λd は、次式(6) となる。すなわち、DESO
法の陽性率Ppd は、次の式(3) で表される。 【0043】 【式19】 【0044】C. 陽性率(Pp),(Ppd)の対比 式(2) および式(3) を用いると増菌DMF 法とDESO法の陽
性率の理論的比較が可能である。増菌DMF 法の陽性率(P
p)がDESO法の陽性率(Ppd) と式(1) の関係にあることを
確認する。この検定をパスした増菌DMF 法を用いて乳製
品中の大腸菌群を推定検査する。すなわち、この試料を
前記と同様に、一定の温度、一定の増菌時間で増菌処理
し、増菌処理した液状食品から一定のサンプリング量で
サンプリングした試料をフィルターで濾過し、試料を濾
過したフィルターをデソキシコーレイト培地上に載せ
て、一定の温度、一定の培養時間で培養し、培養後のフ
ィルターを染色し、大腸菌群のコロニーを形成しない場
合を、検査に合格したとする。 【0045】 【実施例】次に本発明における増菌DMF 法の実施条件を
検討した結果を実施例1として示す。 【実施例1】式(1) を満たす試験条件(tz,v,tb) を決め
るために次の実施を行った。 (1) 牛乳中の大腸菌の増殖特性 増菌DMF 法において陽性率を予測 (推定) するには大腸
菌の増殖速度を知る必要がある。そこで大腸菌の増殖速
度を求める試験を実施した。図1に初期菌濃度を約1〜
2個/ml としたときの大腸菌の35℃の牛乳中での増菌試
験結果 (黒丸) を示した。反復は3回実施した。このデ
ータに式(5) のモデルを適用し、最小二乗法によりto,
τを求めた結果、to=1.28時間、τ=0.378 時間を得
た。図1における直線は上記モデルによる予測値を示
す。本実施例では増菌時間は2時間に設定した。 【0046】(2) DMF 法の回収率 増菌DMF 法の陽性率を予測するのに必要なDMF 法の回収
率の試験を実施した。増菌処理の回収率への影響を考慮
し、回収率の試験は牛乳中で増菌処理した菌を用いた。
条件としては増菌時間を2時間、サンプル量を2ml、DM
F 法の培養時間を7時間とした。2時間の増菌処理後の
菌濃度は10サンプルの平均値で 362.6(個/2ml) であっ
た。DMF 法による菌数の測定は試料に対して10回行い、
得られた菌数を上述の2時間増菌後の菌濃度で割ったも
のを回収率とした。結果を表1に示した。増菌2時間で
は回収率は約80〜90%の高い値を示し、平均値は84.1%
であった。 【0047】 【表1】 ──────────────────────── 菌 数 回収率 (個/2ml) (%) ──────────────────────── 測定値 277 76.4 300 82.7 337 82.9 302 83.3 241 66.5 308 84.9 372 102.6 309 85.2 295 81.4 310 85.5 ──────────────────────── n 10 10 平 均 305.1 84.1 標準偏差 34.28 9.45 ──────────────────────── 【0048】(3) 増菌時間を2時間とし、回収率を84.1
% (培養時間7時間)、サンプル量を2ml を式(2) 、式
(3) に入れると増菌DMF 法およびDESO法を用いた場合の
試料の陽性率をそれぞれ予測することができる。図2に
製品の初期菌濃度を横軸としたときの増菌DMF 法とDESO
法の陽性率の予測値を示した。図2のように、増菌DMF
法は全領域においてDESO法より高い陽性率を示した。す
なわち、大腸菌群推定試験として、上記の条件で行う増
菌DMF 法はDESO法に対して少なくとも同等以上の陽性率
を与えることが予測された。 【0049】 【実施例2】実施例1の妥当性を確認するために次の実
施を行った。 (1) 紙カートン(1リットル入り) 牛乳 (雪印乳業 (株)
製)(無脂乳固形8.3 %、脂肪率 3.5%で UHT殺菌(130
℃、2時間))に菌濃度が約2個/ml 程度になるように大
腸菌を接種し試料とした。この試料を35℃で2時間保持
し、増菌処理を行った。 【0050】(2) この試料から2mlをサンプリングし、
以下の DMF法に供した。すなわち濾過器(日本ミリポア
(株) 製、ステリフィル 500・3 連濾過キット) を用い
て無菌的に吸引濾過した。フィルターは、ポリビニリデ
ンクロライド製 0.65 ミクロン(ミリポア (株) 製、MSD
S) を用い、圧力約 0.08MPaで吸引濾過した。濾過が終
了したフィルターを直ちにデソキシコーレイト培地表面
に貼り付け、35℃で7時間培養した。この培養したフィ
ルターは染色液(ミリポア (株) 製、MS染色液)をフィ
ルター上に3〜4滴滴下して染色処理し、培地から剥が
し、自然乾燥して顕微鏡観察した。顕微鏡には実体顕微
鏡を用い、20倍の倍率で染色された大腸菌群のコロニー
を計数した。増菌処理した同一試料からくり返して10回
サンプリングを行い、上記のDMF 法に供し、この数値を
用いた。その平均値、標準偏差、菌濃度 (個/ml)ならび
に陽性率(%)を表1に示した。尚、本試験における陽
性率はサンプル中に1個以上の菌が検出される確率とし
た。表2に示したように、本実施例では増菌DMF 法の陽
性率は 100%となった。 【0051】(3) 前記の試料(大腸菌を接種した紙カー
トン入り牛乳) を増菌処理することなく、DESO法に供
し、1対のシャーレ中のコロニーをそれぞれ計数した。
この結果を表2に示した。このデータから平均値、標準
偏差、菌濃度 (個/ml)及び陽性率(%) を算出した。DES
O法における陽性率は、1対のシャーレの少なくともど
ちらか一方に1個以上の菌が検出された場合を陽性と
し、全サンプル数に対する陽性のサンプル数の比率とし
て算出した。この結果、表2に示したように本試料のDE
SO法による陽性率は90%であった。 【0052】 【表2】 ─────────────────────────────────── 増菌条件 増菌35℃-2時間 増菌35℃-0時間 ─────────────────────────────────── 判定方法 DMF法 DESO法 サンプリング 2ml サンプリング 1ml× 2回 ─────────────────────────────────── 培養時間 (時間) 7 20 ─────────────────────────────────── シャーレ1 シャーレ2 菌 数 12 3 2 9 3 1 10 5 1 8 3 2 7 0 0 19 2 3 8 2 2 7 5 1 10 2 3 6 1 4 ─────────────────────────────────── n 10 20 平均値 9.6 2.25 標準偏差 3.7 1.41 菌濃度 (個/ml) 4.8 2.25 陽性率 (%) 100 90 ─────────────────────────────────── 【0053】このように、本実施例に供した試料の本条
件(増菌時間が2時間、サンプリング量が2ml 及び培養
時間が7時間)下での増菌DMF 法の陽性率(Pp)は 100%
であるのに対し、DESO法の陽性率(Ppd) は90%となり、
実施例1で予測したPp≧Ppdを確認した。このように本
条件下での増殖菌DMF 法は従来のDESO法の約半分の時間
(約10時間) で、DESO法と同等以上の検査精度 (陽性
率) で牛乳中の大腸菌群を推定検査できることを確認し
た。 【0054】 【実施例3】工場から搬出される牛乳の1L カートンボ
ックスを密封したまま35℃で2時間増菌処理し、サンプ
ルとして2mlを採取した。このサンプルをフィルターで
ポリビニリデンクロライド製のフィルター0.65ミクロン
(ミリボア (株) 製) を用い吸引圧力0.08MPa で濾過し
た。このフィルターをデソキシコーレイト培地表面に貼
り付け、35℃で7時間培養し、培養したフィルターに染
色液 (ミリボア (株) 製、MS染色液) を3〜4滴滴下し
て染色処理した。しかし、大腸菌コロニーは検出されな
かった。また、従来のDESO法による検査方法でも大腸菌
コロニーは検出されなかった。この牛乳は、市場に供給
された後も大腸菌による汚染は見られなかった。 【0055】 【発明の効果】本発明の増菌DMF 法は、従来のデソキシ
コーレイト寒天培地を用いる方法(DESO 法) と比べ、DE
SO法と同等以上の精度を保持しながら、DESO法より短時
間に液状食品中の大腸菌群を推定検査できる方法を提供
する。このとき、精度の保持に当たっては、増菌時間
や、サンプリング量、あるいは培養時間等を変化させた
場合の精度を理論的に予測する方法を提供するので、従
来のDESO法と同等以上の検査条件を容易に設定できる。
一例として、牛乳中の大腸菌群を迅速に推定する増菌DM
F 法として、増菌処理を35℃で2時間、サンプリング量
を2ml 、培養時間を7時間として設定した増菌DMF 法は
DESO法と同等以上の検査精度 (陽性率) を与え、DESO法
の約半分の10時間程度で大腸菌群の推定検査を行うこと
ができる。このため、この方法を用いると、乳製品、特
に牛乳中の微生物を迅速かつ適確に推定することが可能
となる。
【図面の簡単な説明】 【図1】実施例1の牛乳中の大腸菌の増殖曲線を示す。 【図2】実施例1の増菌DMF 法とDESO法との陽性率の予
測値の比較を示す。 【符号の説明】 実線:平均的な増殖率と平均的な回収率を用いた増菌DM
F 法 破線:DESO法
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 桑平 秀夫 青森県青森市西滝1丁目13−1番地 ステ ージアII202 Fターム(参考) 2G045 AA28 BA11 BA13 BA14 BB04 BB05 BB20 BB24 CB21 FA16 GC22 JA01 4B063 QA01 QQ06 QQ16 QR75 QS10 QS24 QS36 QX01

Claims (1)

  1. 【特許請求の範囲】 【請求項1】 液状食品を予め一定の温度、一定の増菌
    時間(tz)で増菌処理し、増菌処理した液状食品から一定
    のサンプリング量(v) でサンプリングした試料をフィル
    ターで濾過し、試料を濾過したフィルターをデソキシコ
    ーレイト培地上に載せて、一定の温度、一定の培養時間
    (tb)で培養し、培養後のフィルターを染色し、大腸菌群
    の形成するコロニーの有無を検査することを特徴とする
    液状食品の大腸菌群推定検査方法 (以下、増菌DMF 法と
    いう) 。ただし、この検査方法における増菌時間(tz)、
    サンプリング量(v) 及び培養時間(tb)は、式(2) で表わ
    される本増菌DMF 法の陽性率(Pp)と、式(3) で表わされ
    る従来のデソキシコーレイト寒天等による試験法 (以
    下、DESO法という) の陽性率(Ppd) とが式(1) の条件を
    満たすように定める。本発明でいう陽性率とは、製品中
    に大腸菌群が存在する場合に、製品の大腸菌群による汚
    染をある検査方法で検出する確率である。 【式1】 【式2】 【式3】 式(1) が満たされるような、増菌時間(tz)、サンプリン
    グ量(V) 、培養時間(tb)は以下のようにして定める。 試料1 接種菌液を所定の菌濃度になるように液状食品
    へ注入して試料を調製し、試料を一定の温度で一定の時
    間培養して大腸菌を増菌させた時の大腸菌の増殖特性に
    式(5) のモデルを適用し、誘導期(to)と分裂時間 (τ)
    を求める。 試料2 接種菌液を所定の菌濃度、好ましくは 100個/m
    l 以上になるように液状食品へ注入して試料を調製す
    る。この試料から一定量(V) をサンプリングし、サンプ
    リングした試料をフィルターで濾過し、このフィルター
    をデソキシコーレイト培地表面に貼り付け、一定の温度
    で一定の時間(tb)培養した後、このフィルターを染色
    し、大腸菌のコロニーを計数する。この計数値とサンプ
    ル量から単位サンプル量に対する菌濃度を算出し、この
    菌濃度と試験に供した接種菌液の菌濃度に対する比を求
    め、これを回収率 r(tb)とする。この回収率 r(tb)は、
    培養時間(tb)に依存するので、培養時間(tb)を変化させ
    て回収率を求めておく。試料1、2により求めた誘導期
    (to)と分裂時間 (τ) と回収率 r(tb)を式(2)から式(6)
    に代入し、式(1) が満たされるような、増菌時間(t
    z)、サンプリング量(V) 、培養時間(tb)を定める。尚、
    この計算において、Noは任意であるが、好ましくは 0.1
    ないし1.0(個/ml)程度の値を用いて計算を行う。 No:大腸菌の初期菌濃度 Vd:DESO法のサンプリング量 (2ml) 【式4】 【式5】 【式6】
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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
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WO2022154094A1 (ja) 2021-01-15 2022-07-21 旭化成株式会社 飲食品検体、環境検体、又は生体検体中の細菌の有無及び/又は存在量を検出するための方法及びキット
WO2022154096A1 (ja) 2021-01-15 2022-07-21 旭化成株式会社 飲食品検体、環境検体、又は生体検体中の腸内細菌科細菌の有無及び/又は存在量を検出するための方法及びキット

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