JP2003106362A - バネにより復元力を付加する油圧シリンダ型免震ダンパ - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】基礎絶縁型免震構造に復元力を持たない滑り支
承やリニア・ベアリングなどをアイソレータとして使用
するとき、別途の復元力発生装置や変位の中立位置への
復元装置を必要とする。 【解決手段】一方、基礎絶縁型免震構造のもう一つの構
成要素であるダンパとして油圧シリンダを使用する場
合、ピストンで隔てられた２室の油圧油をそれぞれ気体
を密閉した容器に導いて、気体の圧縮に対する反発力か
ら復元力を得ることができる。またこれらの容器を予圧
して、ピストンが加圧位置にあるときのみそれがピスト
ン該当面に働く機構として、中立位置における拘束力を
大きくすることができる。さらにこれらの容器の気体お
よびその予圧に代えて、プレストレスされたバネを利用
すれば保守の負担が格段に軽くなる。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は基礎絶縁型免震構造
に使用する油圧シリンダ型ダンパに復元機能を付加し
て、稼働時の最大変位および稼働後の残留変位を抑制す
ることを目的としている。

【０００２】

【従来の技術】基礎絶縁型免震構造の主要な構成要素２
つは、変位に関係する復元力を司るアイソレータと、速
度に関係する減衰力を司るダンパである。アイソレータ
としては積層ゴムが普及を見ているが、軽量な戸建て住
宅に適用するためこれに代えて滑り支承やリニア・ベア
リングが使用されることがある。

【０００３】ここで、滑り支承やリニア・ベアリングに
は本来の語源であるアイソレータの機能しかない、つま
り復元力を持たないため、地震力を受けたときの最大変
位と稼働後の残留変位が比較的大きくなる。したがって
このようなアイソレータに対しては復元力を補う目的
で、裸のコイルバネや水平方向剛性のみを利用する形の
積層ゴムが使用されている。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】しかし、これらの装置
は製品としての取り扱いにくさまたは高額な製品の機能
の限定的利用という点でそれぞれ不満と疑問があり、ま
た平凡な復元力特性から、中立時の拘束力に不安があ
る。

【０００５】

【課題を解決するための手段】いま、免震ダンパについ
ては他を決定的に凌ぐタイプがなくいくつかの種類が提
案されている。そのうちの一つ、油圧シリンダ型ダンパ
は比較的廉価で信頼性が高いなどの点で使い勝手がよ
い。ダンパとしての油圧シリンダで得られる減衰力は、
ピストンで送られて隘路を流れる流体の摩擦やピストン
とシリンダ側壁の固体摩擦等が複合して得られるものと
考えられる。いま、図１に示すようにピストンで隔てら
れた２室それぞれを、気体を密閉した別々の容器に接続
するとき、ピストンの稼働によって圧縮された気体が空
気バネの働きをする。つまり、本来減衰力を期待するダ
ンパとしての油圧シリンダに復元力の機能を追加するこ
とができる。

【０００６】復元力の大きさは密閉容器の容積によって
調整できる。容器内には不活性ガスを充填することが望
ましい。油圧シリンダに比較的高耐圧のものを使用する
とき、密閉容器として油圧回路要素であるピストン型ア
キュムレータ様装置を使うことが考えられる。このとき
２つのアキュムレータのピストンの戻りを、図２に示す
ように、油圧シリンダのピストンの中立点対応位置まで
に制限するよう改良して予圧の相殺を避ければ、中立位
置における復元力つまり拘束力を予圧の分大きくでき
る。復元力特性としては図３に示すように変位の原点に
おける立ち上がりの鋭い階段状となって、基礎絶縁型免
震構造の風による不本意な揺れを抑えることができ、ま
た稼働後の残留変位を消失する効果を持つ。

【０００７】２つの容器の気体の働きに代えて、図４に
示すようにバネを使用することもできる。このときはピ
ストン型アキュムレータ同様のピストンが欠かせない
が、特にプレストレスされたバネを予圧された気体に代
える場合、保守は格段に容易になる。

【０００８】

【実施例】油圧シリンダ型ダンパは一つの基礎絶縁型免
震構造に対して、図５に示すように、水平面内２方向各
一対ずつ最少４本を必要とする。これらの油圧シリンダ
は、押し引きに際しての油圧油の流量が等しくなる点で
両ロッド型、またロッド直交方向の変位にも対応するた
めトラニオン支持が最適である。ロッドの一端とシリン
ダ本体のどちらを、それぞれ免震される構造部分にする
か基礎側にするかによっての応答上の差異は生じない。

【０００９】

【発明の効果】前述のように基礎絶縁型免震構造の主要
な構成要素は、絶縁兼復元装置としてのアイソレータ
と、減衰装置としてのダンパで、それぞれに所要の機能
を発現できる装置を選ぶことによって、信頼性の高い構
造とすることができる。したがって、復元力を持たない
アイソレータとして使用する滑り支承やリニア・ベアリ
ングに対しては別途に復元力を発生する装置が必要とな
るが、この働きをもうひとつの構成要素であるダンパが
補う結果そのような装置を省略でき、構造の簡潔さを保
つことができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】断面で示した、空気バネによって復元力を得る
油圧シリンダの基本型

【図２】予圧された気体を利用して中立時の安定を増す
例

【図３】予圧された気体による復元力特性の概念図

【図４】気体に代えてプレストレスされたバネを使用す
る例

【図５】水平面内２方向の自由度に対応した油圧シリン
ダ型ダンパの配置例

【符号の説明】 １・・・シリンダ ２・・・ピストン ３・・・ロッド ４・・・ポート ５・・・容器 ６・・・気体 ７・・・油圧湯 ８・・・アキュムレータのピストン ９・・・プレストレスされたバネ １０・・油圧シリンダ １１・・シリンダ支持点 １２・・ロッド結合点

Claims (3)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】復元力の小さい免震アイソレータの剛性を
   空気バネで補う目的で、ピストンで隔てられた２室それ
   ぞれを、気体を密閉した容器に接続した油圧シリンダ。
2. 【請求項２】ピストン両側の２室が接続された容器の気
   体を予圧して、ピストンが加圧位置にあるときにのみそ
   れがピストン該当面に働くように形作られた、請求項１
   記載の油圧シリンダ。
3. 【請求項３】容器の気体およびその予圧に代えて、プレ
   ストレスされたバネを利用する、請求項２記載の油圧シ
   リンダ。