JP2003105001A - 部分脱アセチル化キチン又はキトサンのグラフト共重合体の製造方法及びグラフト共重合体 - Google Patents

部分脱アセチル化キチン又はキトサンのグラフト共重合体の製造方法及びグラフト共重合体

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JP2003105001A
JP2003105001A JP2001299673A JP2001299673A JP2003105001A JP 2003105001 A JP2003105001 A JP 2003105001A JP 2001299673 A JP2001299673 A JP 2001299673A JP 2001299673 A JP2001299673 A JP 2001299673A JP 2003105001 A JP2003105001 A JP 2003105001A
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Keigo Aoi
啓悟 青井
Suirinaato Deetopuromu
スィリナート デートプロム
Kanehiko Okada
鉦彦 岡田
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Nagoya Industrial Science Research Institute
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 無触媒で部分脱アセチル化キチン又はキトサ
ンのグラフト共重合体を製造する方法を提供することを
目的とする。 【解決手段】 部分脱アセチル化キチン又はキトサン
と、ラクトン、アミノ酸N−カルボキシ無水物及びN−
アルキルアミノ酸N−カルボキシ無水物からなる群から
選ばれた単量体とを水の存在下で反応させる。水の存在
によって、部分脱アセチル化キチン又はキトサンが膨潤
し、アミノ基の反応性が向上するために、無触媒でも部
分脱アセチル化キチン又はキトサンのグラフト反応が進
行する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、部分脱アセチル化
キチン又はキトサンのグラフト共重合体の製造方法及び
グラフト共重合体に関する。
【0002】
【従来の技術】部分脱アセチル化キチン又はキトサン
は、生体適合性、生分解性、創傷治癒促進効果、抗腫瘍
活性、抗菌性等の多くの優れた特性を有しているバイオ
マス資源であり、セルロースに匹敵する生産量を誇って
いる。ところが、その高い結晶性によって溶解性、加工
性等が乏しいため、ほとんど利用されていない。
【0003】そこで、部分脱アセチル化キチン又はキト
サンの優れた特性を備えるとともに、加工性等の物性を
向上させた高分子が望まれており、その一例として、部
分脱アセチル化キチン又はキトサンをグラフト反応させ
て得られるグラフト共重合体が考えられている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、このグ
ラフト反応には、オクタン酸スズ等の触媒を用いる必要
があった。よって、グラフト反応後の生成物には触媒が
残留しており、この触媒が生体適合性、生分解性等の優
れた特性に悪影響を及ぼすおそれがあった。特に医用材
料として使用する場合には非常に大きな問題であった。
【0005】もちろん反応生成物から触媒を取り除くこ
ともできるが、微量成分を完全に取り除くことは困難で
ある。
【0006】本発明は上記のような問題点を解決するた
めになされたものであり、無触媒で部分脱アセチル化キ
チン又はキトサンのグラフト共重合体を製造する方法及
びグラフト共重合体を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者等は、かかる問
題点を解決し得る部分脱アセチル化キチン又はキトサン
のグラフト共重合体の製造方法を開発すべく鋭意研究を
重ねた。その結果、部分脱アセチル化キチン又はキトサ
ンと、ラクトン、アミノ酸N−カルボキシ無水物及びN
−アルキルアミノ酸N−カルボキシ無水物からなる群か
ら選ばれた単量体とを水の存在下で反応させると、無触
媒で部分脱アセチル化キチン又はキトサンのグラフト共
重合体が製造されるという予想外の事実を見出した。本
発明はこの知見に基づいてなされたものである。
【0008】すなわち、請求項1の発明は、部分脱アセ
チル化キチン又はキトサンと、ラクトン、アミノ酸N−
カルボキシ無水物及びN−アルキルアミノ酸N−カルボ
キシ無水物からなる群から選ばれた単量体とを水の存在
下、無触媒で反応させることを特徴とする部分脱アセチ
ル化キチン又はキトサンのグラフト共重合体の製造方法
である。
【0009】請求項2の発明は、部分脱アセチル化キチ
ンと、ラクトン、アミノ酸N−カルボキシ無水物及びN
−アルキルアミノ酸N−カルボキシ無水物からなる群か
ら選ばれた単量体とを、水と非プロトン性溶媒とからな
る混合溶媒の存在下、無触媒で反応させることを特徴と
する部分脱アセチル化キチン又はキトサンのグラフト共
重合体の製造方法である。
【0010】請求項3の発明は、請求項2記載の部分脱
アセチル化キチン又はキトサンのグラフト共重合体の製
造方法において、混合溶媒が、水と非プロトン性溶媒と
の混合比3:1〜1:1(容量比)の混合溶媒であるこ
とを特徴とする。
【0011】請求項4の発明は、請求項1乃至3のいず
れかの項に記載の部分脱アセチル化キチン又はキトサン
のグラフト共重合体の製造方法において、単量体がε−
カプロラクトンであることを特徴とする。
【0012】請求項5の発明は、部分脱アセチル化キチ
ン又はキトサンと、ラクトン、アミノ酸N−カルボキシ
無水物及びN−アルキルアミノ酸N−カルボキシ無水物
からなる群から選ばれた単量体とを実質的に水のみの存
在下、反応させることを特徴とする部分脱アセチル化キ
チン又はキトサンのグラフト共重合体の製造方法であ
る。
【0013】請求項6の発明は、実質的に下記(A)、
(B)及び(C)の成分のみを反応させて得られたグラ
フト共重合体である。 (A) 部分脱アセチル化キチン又はキトサンと、
(B) ラクトン、アミノ酸N−カルボキシ無水物及び
N−アルキルアミノ酸N−カルボキシ無水物からなる群
から選ばれた単量体と、及び(C) 水。
【0014】請求項7の発明は、実質的に下記(A)、
(B)、(C)及び(D)の成分のみを反応させて得ら
れたグラフト共重合体である。 (A) 部分脱アセチル化キチン又はキトサンと、
(B) ラクトン、アミノ酸N−カルボキシ無水物及び
N−アルキルアミノ酸N−カルボキシ無水物からなる群
から選ばれた単量体と、(C) 水、及び(D)非プロ
トン性溶媒。
【0015】本発明では、水の存在によって、部分脱ア
セチル化キチン又はキトサンが膨潤し、アミノ基の反応
性が向上するために、予想に反して無触媒でも部分脱ア
セチル化キチン又はキトサンのグラフト反応が進行する
ものと考えられる。
【0016】また、水と非プロトン性溶媒とからなる混
合溶媒を用いても、同様にして、無触媒でも部分脱アセ
チル化キチン又はキトサンのグラフト反応が進行するも
のと考えられる。ここに、無触媒とは、グラフト反応を
進行させるときに従来用いられていたオクタン酸スズ等
の金属触媒若しくは金属化合物を実質的に用いないこと
をいう。グラフト反応を行うときに、意図的でなく金属
化合物が混入することがあるが、この場合も無触媒の状
態である。
【0017】ここで、本発明における部分脱アセチル化
キチン又はキトサンとは、N−アセチル−D−グルコサ
ミン(GlcNAc)とD−グルコサミン(GlcN)とを構成成分と
したものである。そして、アセチル化度、すなわちN−
アセチル−D−グルコサミン単位の含量は、特に限定さ
れないが、好ましくは0〜80%であり、さらに好まし
くは0〜60%であり、特に好ましくは、40〜60%
である。80%よりアセチル化度が大きくなると、結晶
構造が強固となり、部分脱アセチル化キチン又はキトサ
ンのアミノ基の反応性が著しく低下するためである。
【0018】ラクトンとは、環内に−C(=O)−O−
を含む環式化合物をいい、特に限定されず、例えば、L
−ラクチド、D−ラクチド、DL−ラクチド、meso
−ラクチド等のラクチド、グリコリド、ジエチルグリコ
リド等のグリコリド、ε−カプロラクトン、δ−バレロ
ラクトン、プロピオラクトン、β−ブチロラクトン等が
挙げられる。
【0019】アミノ酸N−カルボキシ無水物とは、一般
式1で示される化合物である。
【化1】
【0020】ここで、置換基Rは、水素、炭素数1〜
30のアルキル基、炭素数1〜30のアルコキシ基、ハ
ロゲン基、又は核炭素数6〜18のアリール基を表し、
炭素数1〜30のアルキル基としては、例えば、メチル
基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−
ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n
−ペンチル基、n−ヘキシル基等が好適であり、炭素数
1〜30のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ
基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ
基、n−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−
ブトキシ基、n−ペントキシ基、n−ヘキソキシ基等が
好適である。ハロゲン基は、フッ素,塩素,臭素又はヨ
ウ素であることが好適である。核炭素数6〜18のアリ
ール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、ア
ントラニル基、フェナンスリル基、ビフェニル基等が挙
げられ、これらは炭素数1〜6のアルキル基、アルコキ
シ基、ハロゲン基、ハロゲン置換アルキル基で置換され
ていてもよい。
【0021】アミノ酸N−カルボキシ無水物の一例とし
て、グリシンN−カルボキシ無水物2、アラニンN−カ
ルボキシ無水物3、フェニルアラニンN−カルボキシ無
水物4が挙げられる。
【0022】N−アルキルアミノ酸N−カルボキシ無水
物とは、一般式5で示される化合物である。
【化2】
【0023】ここで、置換基Rは、水素、炭素数1〜
30のアルキル基、炭素数1〜30のアルコキシ基、ハ
ロゲン基、又は核炭素数6〜18のアリール基を表し、
炭素数1〜30のアルキル基としては、例えば、メチル
基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−
ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n
−ペンチル基、n−ヘキシル基等が好適であり、炭素数
1〜30のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ
基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ
基、n−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−
ブトキシ基、n−ペントキシ基、n−ヘキソキシ基等が
好適である。ハロゲン基は、フッ素,塩素,臭素又はヨ
ウ素であることが好適である。核炭素数6〜18のアリ
ール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、ア
ントラニル基、フェナンスリル基、ビフェニル基等が挙
げられ、これらは炭素数1〜6のアルキル基、アルコキ
シ基、ハロゲン基、ハロゲン置換アルキル基で置換され
ていてもよい。
【0024】また、置換基Rは、炭素数1〜30のア
ルキル基、又は核炭素数6〜18のアリール基を表し、
炭素数1〜30のアルキル基としては、例えば、メチル
基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−
ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n
−ペンチル基、n−ヘキシル基等が好適である。核炭素
数6〜18のアリール基としては、例えば、フェニル
基、ナフチル基、アントラニル基、フェナンスリル基、
ビフェニル基等が挙げられ、これらは炭素数1〜6のア
ルキル基、アルコキシ基、ハロゲン基、ハロゲン置換ア
ルキル基で置換されていてもよい。また、R、R
互いに同一であっても異なっていてもよい。
【0025】N−アルキルアミノ酸N−カルボキシ無水
物の一例として、N−メチルグリシンN−カルボキシ無
水物(サルコシンNCA)6、N−メチルアラニンN−
カルボキシ無水物7、N−エチルグリシンN−カルボキ
シ無水物8が挙げられる。
【0026】また、単量体の部分脱アセチル化キチン又
はキトサンに対する量、すなわち、ラクトン、アミノ酸
N−カルボキシ無水物、又はN−アルキルアミノ酸N−
カルボキシ無水物の部分脱アセチル化キチン又はキトサ
ンに対する量は、特に限定されないが、部分脱アセチル
化キチン又はキトサン1gに対して0.1〜1000g
であることが好ましい。さらに好ましくは、1〜100
gであり、特に好ましくは3〜30gである。
【0027】本発明の製造方法に用いる水の量は、特に
制限されないが、部分脱アセチル化キチン又はキトサン
1gに対して0mlよりも多く、50ml以下であるこ
とが好ましい。さらに好ましくは、1〜20mlであ
り、特に好ましくは2〜10mlである。水が存在しな
い場合には、部分脱アセチル化キチン又はキトサンが膨
潤しないため反応が起こらないからである。一方、50
mlよりも多くなるとラクトン、アミノ酸N−カルボキ
シ無水物、又はN−アルキルアミノ酸N−カルボキシ無
水物のグラフト反応が阻害されるからである。
【0028】請求項2における混合溶媒に使用される非
プロトン性溶媒としては、特に限定されず、例えば、
N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、N−メチ
ルピロリドン(NMP)、ジメチルスルホキシド(DM
SO)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)等が
挙げられるが、N,N−ジメチルアセトアミドが好まし
い。
【0029】ここで、水と非プロトン性溶媒との混合比
(容量比)は、特に限定されない。好ましくは、水と非
プロトン性溶媒との混合比1:99〜99:1(容量
比)の混合溶媒であり、さらに好ましくは10:1〜
1:1の混合溶媒であり、特に好ましくは3:1〜1:
1の混合溶媒である。混合比1:99(容量比)の混合
溶媒よりも水が少ないと反応の進行が遅くなるからであ
る。
【0030】混合溶媒の量は、特に制限されないが、部
分脱アセチル化キチン又はキトサン1gに対して0ml
よりも多く、70ml以下であることが好ましい。さら
に好ましくは、2〜20mlであり、特に好ましくは4
〜10mlである。混合溶媒が存在しない場合には、部
分脱アセチル化キチン又はキトサンが膨潤しないため反
応が起こらないからである。一方、70mlよりも多く
なるとラクトン、アミノ酸N−カルボキシ無水物、又は
N−アルキルアミノ酸N−カルボキシ無水物のグラフト
反応が阻害されるからである。
【0031】反応温度は、部分脱アセチル化キチン又は
キトサンと単量体との仕込み比率、単量体の種類、水又
は混合溶媒の量、混合溶媒の種類、さらには、反応装置
等により異なり特に制限はない。
【0032】単量体が、ラクトンの場合には、好ましく
は0〜200℃であり、さらに好ましくは70〜160
℃であり、特に好ましくは90〜110℃である。0℃
未満では、反応性が低下し、200℃よりも高いと生成
したグラフト共重合体が分解したり、又は着色するおそ
れがあるからである。
【0033】単量体が、アミノ酸N−カルボキシ無水
物、又はN−アルキルアミノ酸N−カルボキシ無水物の
場合には、好ましくは0〜150℃であり、さらに好ま
しくは10〜50℃であり、特に好ましくは20〜40
℃である。0℃未満では、反応性が低下し、150℃よ
りも高いと生成したグラフト共重合体が分解したり、又
は着色するおそれがあるからである。
【0034】反応時間は、部分脱アセチル化キチン又は
キトサンと単量体との仕込み比率、単量体の種類、水又
は混合溶媒の量、混合溶媒の種類、反応温度、さらに
は、反応装置等により異なり特に制限はないが、例えば
単量体としてε−カプロラクトンを用いた場合では、反
応温度が100℃で約20時間である。あまりに長期間
にわたって反応させると、生成したグラフト鎖が分解し
てしまうからである。
【0035】本発明のグラフト反応は、例えば、混練
機、押出機等を用いて行うことができ、装置は特に制限
されない。
【0036】なお、部分脱アセチル化キチン又はキトサ
ン、単量体、水又は混合溶媒の仕込み順序、仕込み方法
は特に限定されない。
【0037】例えば、反応容器に、まず部分脱アセチル
化キチン又はキトサンを入れ、次に水又は混合溶媒を加
え、その後単量体を加えてもよい。または、部分脱アセ
チル化キチン又はキトサンと水又は混合溶媒とを同時に
加え、その後単量体を加えても構わず、または、部分脱
アセチル化キチン又はキトサンと、水又は混合溶媒と、
単量体とを同時に加えても構わず、または、まず水又は
混合溶媒を入れ、その後に部分脱アセチル化キチン又は
キトサンと単量体とを加えてもよい。また、混合溶媒を
用いる場合には、予め水と非プロトン性溶媒とを混合さ
せた溶媒を用いてもよいし、まず、反応系に水又は非プ
ロトン性溶媒の一方を加えておき、その後、他方を加え
ても良い。
【0038】なお、本発明の製造方法に支障のない限
り、前記原料以外に各種安定剤、充填剤等の添加剤を添
加しても構わない。
【0039】さらに、グラフト共重合体を精製する場合
には、公知の方法、例えば再沈操作が使用できる。例え
ば、アセトン等の貧溶媒に反応生成物を入れることによ
って精製することができる。
【0040】
【発明の実施の形態】
【実施例】以下、本発明の実施例を示すが、本発明はこ
れに限定されるものではない。なお、以下の実施例で
は、反応式Aに示すように部分脱アセチル化キチン又は
キトサン9にε−カプロラクトン10を反応させキチン
−ポリ(ε−カプロラクトン)グラフト共重合体11を
製造する場合を一例として説明する。
【化3】
【0041】<実施例1〜9、及び比較例1〜2>ま
ず、水がグラフト反応に与える影響について検討した。
コンデンサー付きフラスコに部分脱アセチル化キチン
(味の素株式会社製、アセチル化度51%、0.20g(ピ
ラノース単位1.1mmol))を入れ、これに表1に示す所
定量の蒸留水及びε―カプロラクトン(東京化成工業株
式会社製)を加え、表1記載の反応条件で攪拌しながら
グラフト反応を行った。そして、反応混合液を400m
Lのアセトン中に注ぎ反応生成物を得た。この反応生成
物を10mLの蒸留水(良溶媒)と300mLのメタノ
ール(非溶媒)を用いて再沈操作を3回行った。そし
て、減圧下乾燥させて生成物を得た。なお、この反応で
は触媒を使用しなかった。
【0042】
【表1】
【0043】(核磁気共鳴(NMR)スペクトルの測定)反
応生成物のH−NMRスペクトル及び13C−NMR
スペクトルは、Bruker製 ARX400 spectrometer を使用
して測定した。
【0044】(赤外スペクトルの測定)JASCO製 FT/I
R-610装置を使用して、反応生成物の赤外スペクトルを
測定した。なお、測定はKBr法を用いて行った。
【0045】(置換度の計算)置換度は、H−NMR
スペクトルの4.58〜4.62ppm及び4.89p
pmの積分値から求めた。ここで置換度とは、グルコサ
ミン単位に導入された置換基のグルコサミン単位に対す
るモル比をいう。なお、本系では、2位のアミノ基に対
する反応が選択的に起こるためグルコサミンのアミノ基
に対する側鎖の導入率とも同意となる。そして、具体的
には、次のようにして求められる。
【0046】すなわち、H−NMRスペクトルの4.
58〜4.62ppmのシグナルの積分値をA、4.8
9ppmの積分値をBとすると、置換度は、式(1)で
表される。但し、式(1)中、DAは部分脱アセチル化
キチンのアセチル化度である。 置換度={A−(A+B)×DA}/{(A+B)×(1−DA)}…(1)
【0047】(グラフトした単量体の繰り返し数、及び
グラフト共重合体中に占めるポリカプロラクトンの重量
の計算)グラフトした単量体の繰り返し数、すなわち反
応式Aのキチン−ポリ(ε−カプロラクトン)グラフト
共重合体11において、nの値は、H−NMR及び赤
外スペクトルにより計算した。
【0048】H−NMRでは、以下のようにして計算
した。すなわち、4.89ppm及び4.58〜4.6
2ppmのシグナルの積分値(ピラノース環のH−1)
と、1.62ppm、1.37ppm、及び1.55p
pm(ポリ(ε―カプロラクトン))の繰り返し単位の
メチレンプロトン)のシグナルの積分値を用いて算出し
た。
【0049】赤外スペクトルでは、以下のようにして検
量線を作成し、これを用いて算出した。すなわち、ま
ず、主鎖に用いた部分脱アセチル化キチン又はキトサン
とポリ(ε―カプロラクトン)(ホモポリマー)とを所
定の割合で混合し、この赤外吸収スペクトルを測定し
た。そして、1720cm-1のエステルカルボニル伸縮振
動の吸光度と1656cm-1のアミドカルボニル伸縮振動
の吸光度との和を求めた。そして、この和と、897cm
-1のピラノース環の非対称環伸縮振動の吸光度との比を
算出し検量線を作成した。すなわち、(A1720+A
1656)/A89 を算出し、検量線を作成した。
【0050】次に、グラフト反応の生成物の赤外スペク
トルを測定し、同様にして(A17 20+A1656
/A897を算出して、この値から上述の検量線を用い
てグラフトした単量体の繰り返し数を求めた。
【0051】そして、上記に示した置換度と単量体の繰
り返し数とを用いてグラフト共重合体中に占めるポリカ
プロラクトンの重量比を計算した。
【0052】(実験結果)実験結果を表2に示す。蒸留
水が存在しない条件である比較例1及び2では、反応生
成物が得られなかった。これに対して蒸留水が存在する
条件である実施例1〜9では、反応生成物が得られた。
【0053】
【表2】
【0054】ここで、反応生成物のH−NMRスペク
トルの一例として、実施例1の生成物のH−NMRの
測定結果を示す。また、図1に反応生成物の各プロトン
と各ピークとの対応関係を示す。 H−NMR(D2O/CD3CO2D(95:5,v/v));70℃;600 MHz;c
onc.3.0wt.-%):δ4.89 ppm(D-グルコサミン単位(GlcN)
のH-1), 4.58 ppm (N-アセチル-D-グルコサミン(GlcNAc)と2-N-
ポリ(ε-カプロラクトン)置換D-グルコサミンのH-1), 4.11 ppm (ポリ(ε-カプロラクトン)繰り返し単位のH-
ε), 3.9-3.4 ppm (D-グルコサミン(GlcN)のH-3-H-6 ,N-ア
セチル-D-グルコサミン(GlcNAc)と2-N-ポリ(ε-カプロ
ラクトン)置換D-グルコサミンのH-2-H-6), 3.58 ppm (ポリ(ε-カプロラクトン)のω-end のH-ε'
), 3.18 ppm (D-グルコサミン(GlcN)のH-2 ), 2.42 ppm (ポリ(ε-カプロラクトン)繰り返し単位のH-
α), 2.38 ppm (ポリ(ε-カプロラクトン)のω-end のH-α'
), 2.30 ppm (ポリ(ε-カプロラクトン)のα-end のH-α*
), 1.62 ppm (ポリ(ε-カプロラクトン)繰り返し単位のH-
β,H-β',及びH-δ ), 1.55 ppm (ポリ(ε-カプロラクトン)繰り返し単位のH-
δ'), 1.37 ppm (ポリ(ε-カプロラクトン)繰り返し単位のH-
γ 及びH-γ' )
【0055】以上のように各ピークは帰属され、キチン
−ポリ(ε−カプロラクトン)グラフト共重合体が生成
していることが確認された。なお、実施例2〜9におい
ても同様のスペクトルが観察され、キチン−ポリ(ε−
カプロラクトン)グラフト共重合体が生成していること
が確認された。
【0056】次に13C−NMRの測定結果を示す。13 C−NMR(D2O/CD3CO2D(95:5,v/v));70℃;150 MHz;c
onc.3.0wt.-%):δ178.71ppm (ポリ(ε-カプロラクトン)
のカルボニル炭素), 176.80 ppm (N-アセチル-D-グルコサミン(GlcNAc)のカ
ルボニル炭素), 103.71 ppm (N-アセチル-D-グルコサミン(GlcNAc)のC-
1, 2-N-ポリ(ε-カプロラクトン)置換D-グルコサミンの
C-1), 99.71 ppm (D-グルコサミン(GlcN)のC-1 ), 82.21 ppm, 81.95 ppm, 81.56 ppm (N-アセチル-D-グル
コサミン(GlcNAc)のC-4,2-N-ポリ(ε-カプロラクトン)
置換D-グルコサミンのC-4), 79.85 ppm (D-グルコサミン(GlcN)のC-4 ), 77.71 ppm, 77.19 ppm (主鎖のC-5 ), 74.75 ppm, 73.98 ppm, 73.24 ppm (主鎖のC-3 ), 67.53 ppm (ポリ(ε-カプロラクトン)繰り返し単位のC-
ε ), 64.18 ppm (ポリ(ε-カプロラクトン)のω-end のC-ε'
), 63.28 ppm, 62.78 ppm, 65.52 ppm (主鎖のC-6 ) 58.25 ppm (D-グルコサミン(GlcN)のC-2 ) 57.78 ppm (N-アセチル-D-グルコサミン(GlcNAc)のC-
2,2-N-ポリ(ε-カプロラクトン)置換D-グルコサミンの
C-2) 38.43 ppm (ポリ(ε-カプロラクトン)のα-end のC-α*
), 36.48 ppm (ポリ(ε-カプロラクトン)のω-end のC-α
), 36.25 ppm (ポリ(ε-カプロラクトン)繰り返し単位のC-
α' ), 33.54 ppm (ポリ(ε-カプロラクトン)のω-end のC-δ'
), 30.02 ppm (ポリ(ε-カプロラクトン)繰り返し単位のC-
δ ), 27.26 ppm (ポリ(ε-カプロラクトン)繰り返し単位のC-
γ 及び C-γ' ), 26.58 ppm (ポリ(ε-カプロラクトン)繰り返し単位のC-
β 及び C-β' ), 24.70 ppm (N-アセチル-D-グルコサミン(GlcNAc)のメチ
ル炭素)
【0057】以上のように各ピークは帰属され、キチン
−ポリ(ε−カプロラクトン)グラフト共重合体が生成
していることが確認された。なお、実施例2〜9におい
ても同様のスペクトルが観察され、キチン−ポリ(ε−
カプロラクトン)グラフト共重合体が生成していること
が確認された。
【0058】次に、実施例1によって得られた生成物の
赤外スペクトル、及び実施例1と同様の組成比で部分脱
アセチル化キチンとε―カプロラクトンとを混合した混
合物の赤外スペクトルを図2に示す。実施例1の生成物
では、1657cm-1に2−アミノ基とε―カプロラクト
ンとの反応により生成したアミド基のアミドI吸収帯が
確認された。また、同様に1559cm-1にアミド基のア
ミドII吸収帯が確認された。これに対して、部分脱ア
セチル化キチンとε―カプロラクトンとの混合物では、
このようなアミドI吸収帯及びアミドII吸収帯は観察
されなかった。また、実施例2〜9においても実施例1
と同様のスペクトルが観察された。このように実施例1
〜9では、赤外スペクトルからもキチン−ポリ(ε−カ
プロラクトン)グラフト共重合体が生成していることが
確認された。
【0059】なお、観察された吸収波長は以下の通りで
ある。3398(νO-H),2942,2871(νC-H),1719(νC=O(エス
テル)),1657(νC=O(アミド)),1559(δN-H(アミド)),137
6,1314,1156,1112,1069,1031(νC-O-C),897cm-1
【0060】以上のようにH−NMRスペクトル、
13C−NMRスペクトル、及び赤外スペクトルから生
成物がキチン−ポリ(ε−カプロラクトン)グラフト共
重合体であることが確認された。よって、水が存在する
と無触媒でキチン−ポリ(ε−カプロラクトン)グラフ
ト共重合体が製造されることが確認された。
【0061】<実施例10〜14、及び比較例3〜6>
次に、アセチル化度の異なる部分脱アセチル化キチン又
はキトサンのグラフト反応について検討した。なお、水
及び触媒が存在する比較例3〜6についても検討した。
コンデンサー付きフラスコにアセチル化度51%の部分
脱アセチル化キチン(味の素株式会社製、0.20g(ピラ
ノース単位1.1mmol))又はアセチル化度17%のキト
サン(生化学工業製、0.20g(ピラノース単位1.2mmo
l))を入れ、これに表3に示す所定量の蒸留水及びε
―カプロラクトン(東京化成工業株式会社製)を加え、
表3記載の反応条件で攪拌しながらグラフト反応を行っ
た。そして、反応混合液を400mLのアセトン中に注
ぎ反応生成物を得た。この反応生成物を10mLの蒸留
水(良溶媒)と300mLのメタノール(非溶媒)を用
いて再沈操作を3回行った。そして、減圧下乾燥させて
生成物を得た。なお、この反応において、比較例3〜6
では、触媒として、オクタン酸スズ(シグマ・アルドリ
ッチ株式会社製)を使用した。ここで、オクタン酸スズ
のモル%(mol%)とは、モノマー(ε―カプロラクト
ン)のモル数に対する触媒のモル数を示す。
【0062】なお、比較例3、比較例4、比較例5、比
較例6は、触媒の有無を除けば、それぞれ、実施例1
0、実施例11、実施例12、実施例14とほぼ同一の
条件である。
【0063】
【表3】
【0064】核磁気共鳴(NMR)スペクトルの測定、及び
赤外スペクトルの測定は、実施例1〜9の場合と同様に
行った。また、置換度の計算、グラフトした単量体の繰
り返し数、及びグラフト共重合体中に占めるポリカプロ
ラクトンの重量の計算も、実施例1〜9の場合と同様に
行った。
【0065】実験結果を表4に示す。核磁気共鳴(NMR)
スペクトルの測定、及び赤外スペクトルの測定から、実
施例10〜14及び比較例3〜6のいずれも実施例1と
同様のスペクトルが得られたため、キチン−ポリ(ε−
カプロラクトン)グラフト共重合体が生成していること
が確認された。
【0066】よって、実施例10〜12に示すアセチル
化度が約50%の部分脱アセチル化キチンのみならず、
実施例13〜14に示すように17%と低いキトサンに
おいても、グラフト反応が進行することが確認された。
【0067】
【表4】
【0068】また、実施例10、実施例11、実施例1
2、実施例14の生成物は、それぞれ、比較例3、比較
例4、比較例5、比較例6の生成物とほぼ同等の置換
度、グラフトした単量体の繰り返し数、及びグラフト共
重合体中に占めるポリカプロラクトンの重量比を示し
た。従って、蒸留水が存在する条件では、さらに触媒を
添加しても、触媒がグラフト反応に影響しないことが分
かった。これは、蒸留水の存在によって、部分脱アセチ
ル化キチン又はキトサンが膨潤し、アミノ基の反応性が
飛躍的に向上したために、触媒の影響を受けなかったも
のと考えられる。
【0069】<実施例15〜22、及び比較例7〜8>
次に、混合溶媒がグラフト反応に与える影響について検
討した。また、アセチル化度の異なる部分脱アセチル化
キチン又はキトサンのグラフト反応について検討した。
コンデンサー付きフラスコにアセチル化度51%の部分
脱アセチル化キチン(味の素株式会社製、0.20g(ピラ
ノース単位1.1mmol))又はアセチル化度17%のキト
サン(生化学工業製、0.20g(ピラノース単位1.2mmo
l))を入れ、表5に示すように、これに実施例15で
は所定量の蒸留水を、実施例16〜22では所定量の蒸
留水とN,N−ジメチルアセトアミド(DMAcと表5
で示す)との混合溶媒を、比較例7〜8では、所定量の
N,N−ジメチルアセトアミドを添加した。そして、所
定量のε―カプロラクトン(東京化成工業株式会社製)
を加え、表5記載の反応条件で攪拌しながらグラフト反
応を行った。そして、反応混合液を400mLのアセト
ン中に注ぎ反応生成物を得た。この反応生成物を10m
Lの蒸留水(良溶媒)と300mLのメタノール(非溶
媒)を用いて再沈操作を3回行った。そして、減圧下乾
燥させて生成物を得た。なお、実施例15〜22、及び
比較例7〜8では触媒を使用しなかった。
【0070】
【表5】
【0071】核磁気共鳴(NMR)スペクトルの測定、及び
赤外スペクトルの測定は、実施例1〜9の場合と同様に
行った。また、置換度の計算、グラフトした単量体の繰
り返し数、及びグラフト共重合体中に占めるポリカプロ
ラクトンの重量の計算も、実施例1〜9の場合と同様に
行った。
【0072】実験結果を表6示す。核磁気共鳴(NMR)ス
ペクトルの測定、及び赤外スペクトルの測定から、実施
例15〜22のいずれも実施例1と同様のスペクトルが
得られたため、キチン−ポリ(ε−カプロラクトン)が
生成していることが確認された。これに対して、N,N
−ジメチルアセトアミドのみで蒸留水が存在しない比較
例7及び8では、キチン−ポリ(ε−カプロラクトン)
グラフト共重合体が生成しなかった。このように、非プ
ロトン性溶媒のみの場合、無触媒ではグラフト反応は進
行しなかったが、水と非プロトン性溶媒との混合溶媒の
場合には、無触媒でもグラフト反応が進行することが分
かった。
【0073】
【表6】
【0074】また、実施例15と実施例16とを比較す
ると、比較例16の方がグラフトした単量体の繰り返し
数、及びグラフト共重合体中に占めるポリカプロラクト
ンの重量比が増加していることが確認された。
【0075】よって、非プロトン性溶媒と水との混合溶
媒を使用して、その混合比を調整することによって、グ
ラフト鎖を伸長できることが確認された。
【0076】このようにグラフト鎖が伸長される理由は
以下のように考えられる。すなわち、グラフト鎖を伸長
させるためには、既に形成されたグラフト鎖にさらに単
量体を重合させる必要がある。そして、一般に2種以上
の物質が関与する化学反応では、2種以上の物質のいず
れにも親和性の高い溶媒を使用すれば、反応が起きやす
いことが知られている。ここで、ラクトン等の単量体か
ら形成されるグラフト鎖は疎水性であり、また、単量体
も疎水性である。
【0077】従って、水と、水よりも疎水性を有する非
プロトン性溶媒との混合溶媒、すなわち、全体として水
に比して疎水性の溶媒を用いることによって、溶媒、グ
ラフト鎖、及び単量体の親和性が向上し、その結果グラ
フト鎖が伸長されたものと考えられる。
【0078】なお、アセチル化度が約50%付近のみな
らず、実施例19〜22に示すように17%と低いキト
サンにおいても、グラフト反応が進行することが確認さ
れた。
【0079】<実施例23〜25>次に反応式Bに示す
ように部分脱アセチル化キチン又はキトサン9にN−メ
チルグリシンN−カルボキシ無水物(サルコシンNC
A)6を反応させ、キチン−ポリ(サルコシン)グラフ
ト共重合体12を製造する場合を一例として説明する。
【0080】
【化4】
【0081】表7に示すように、コンデンサー付きフラ
スコにアセチル化度53%の部分脱アセチル化キチン
(味の素株式会社製)を所定量入れ、これに所定量の蒸
留水とN,N−ジメチルアセトアミド(DMAcと表7
で示す)との混合溶媒を添加した。そして、所定量のN
−メチルグリシンN−カルボキシ無水物(サルコシンN
CA)を加え、表7記載の反応条件で攪拌しながらグラ
フト反応を行った。そして、反応混合液を400mLの
アセトン中に注ぎ反応生成物を得た。この反応生成物を
10mLの蒸留水(良溶媒)と300mLのメタノール
(非溶媒)を用いて再沈操作を3回行った。そして、減
圧下乾燥させて生成物を得た。なお、実施例23〜25
では触媒を使用しなかった。
【0082】
【表7】
【0083】(核磁気共鳴(NMR)スペクトルの測定)反
応生成物のH−NMRスペクトルは、Bruker製 ARX40
0 spectrometer を使用して測定した。
【0084】(赤外スペクトルの測定)JASCO製 FT/I
R-610装置を使用して、反応生成物の赤外スペクトルを
測定した。なお、測定はKBr法を用いて行った。
【0085】(置換度の計算)置換度は、H−NMR
スペクトルの4.45ppm及び4.75ppmの積分
値から求めた。ここで置換度とは、グルコサミン単位に
導入された置換基のグルコサミン単位に対するモル比を
いう。なお、本系では、2位のアミノ基に対する反応が
選択的に起こるためグルコサミンのアミノ基に対する側
鎖の導入率とも同意となる。そして、具体的には、次の
ようにして求められる。
【0086】H−NMRスペクトルの4.45ppm
のシグナルの積分値をA、4.75ppmの積分値をB
とすると、置換度は、式(2)で表される。但し、式
(2)中、DAは部分脱アセチル化キチンのアセチル化
度である。 置換度={A−(A+B)×DA}/{(A+B)×(1−DA)}…(2)
【0087】(グラフトした単量体の繰り返し数、及び
グラフト共重合体中に占めるポリサルコシンの重量の計
算)グラフトした単量体の繰り返し数、すなわち反応式
Bのキチン−ポリ(サルコシン)グラフト共重合体12
において、nの値は、H−NMRにより計算した。す
なわち、2.68ppmのポリサルコシンの成長末端の
N−メチルプロトン(ポリサルコシンのω-end のN−メ
チルプロトン)の積分値をA、2.96ppm〜2.7
0ppmのポリサルコシンのN−メチルプロトンの積分
値をBとすると、グラフトした単量体の繰り返し数DP
は、以下の式(3)で表されるため、この式(3)によ
って算出した。
【0088】DP=(B+A)/A …(3)
【0089】そして、上記に示した置換度と単量体の繰
り返し数とを用いてグラフト共重合体中に占めるポリサ
ルコシンの重量比を計算した。
【0090】(実験結果)実験結果を表8に示す。実施
例23〜25の反応では、いずれも反応生成物が得ら
れ、この反応生成物のH−NMRスペクトルの一例と
して、実施例23の生成物のH−NMRの測定結果を
示す。また、図3に反応生成物の各プロトンと各ピーク
との対応関係を示す。
【0091】
【表8】
【0092】H−NMR(D2O/TFA-d(95:5,v/v));65
℃;400 MHz;conc.1.0wt.-%):δ4.75 ppm(D-グルコサミ
ン単位(GlcN)のH-1), 4.45 ppm (N-アセチル-D-グルコサミン(GlcNAc)と2-N-
ポリサルコシン置換D-グルコサミンのH-1), 4.33-4.17 ppm (ポリサルコシン繰り返し単位のメチレ
ンプロトン), 3.83-3.33 ppm (D-グルコサミン(GlcN)のH-3-H-6 ,N-
アセチル-D-グルコサミン(GlcNAc)と2-N-ポリサルコシ
ン置換D-グルコサミンのH-2-H-6), 3.05 ppm (D-グルコサミン(GlcN)のH-2 ), 2.96-2.70 ppm (ポリサルコシン繰り返し単位のN-メチ
ルプロトン), 2.68 ppm (ポリサルコシンのω-end のN-メチルプロト
ン) 1.90ppm (N-アセチル-D-グルコサミン(GlcNAc)のAc基)
【0093】以上のように各ピークは帰属され、キチン
−ポリ(サルコシン)グラフト共重合体が生成している
ことが確認された。なお、実施例24〜25においても
同様のスペクトルが観察され、キチン−ポリ(サルコシ
ン)グラフト共重合体が生成していることが確認され
た。
【0094】次に、実施例23によって得られた生成物
の赤外スペクトル及びその帰属を示す(図4参照)。 3417(νO-H),2937,2881(νC-H),1656(νC=O(アミド)),1
556(δN-H(アミド)),1379,1308,1157,1112,1069,1033
C-O-C),899cm-1
【0095】以上のようにH−NMRスペクトル、
13C−NMRスペクトル、及び赤外スペクトルから生
成物がキチン−ポリ(サルコシン)グラフト共重合体で
あることが確認された。よって、水が存在すると無触媒
でキチン−ポリ(サルコシン)グラフト共重合体が製造
されることが分かった。
【0096】本発明は上記記述及び図面によって説明し
た実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を
逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができ
る。
【0097】
【発明の効果】本発明の製造方法によれば、無触媒で部
分脱アセチル化キチン又はキトサンのグラフト共重合体
を製造することができる。そして、本発明の製造方法よ
り製造された部分脱アセチル化キチン又はキトサンのグ
ラフト共重合体は、触媒を含有しないため、生分解性等
の優れた特性に影響を及ぼすおそれはない。特に医用材
料として有望である。
【図面の簡単な説明】
【図1】キチン−ポリ(ε−カプロラクトン)グラフト
共重合体のH−NMRスペクトルを示す図
【図2】キチン−ポリ(ε−カプロラクトン)グラフト
共重合体の赤外スペクトルを示す図
【図3】キチン−ポリ(サルコシン)グラフト共重合体
H−NMRスペクトルを示す図
【図4】キチン−ポリ(サルコシン)グラフト共重合体
の赤外スペクトルを示す図
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き Fターム(参考) 4C090 AA02 AA05 BA46 BA47 BB03 BB17 BB18 BB33 BB53 BB69 BB84 BB98 CA35 DA22

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 部分脱アセチル化キチン又はキトサン
    と、ラクトン、アミノ酸N−カルボキシ無水物及びN−
    アルキルアミノ酸N−カルボキシ無水物からなる群から
    選ばれた単量体とを水の存在下、無触媒で反応させるこ
    とを特徴とする部分脱アセチル化キチン又はキトサンの
    グラフト共重合体の製造方法。
  2. 【請求項2】 部分脱アセチル化キチン又はキトサン
    と、ラクトン、アミノ酸N−カルボキシ無水物及びN−
    アルキルアミノ酸N−カルボキシ無水物からなる群から
    選ばれた単量体とを、水と非プロトン性溶媒とからなる
    混合溶媒の存在下、無触媒で反応させることを特徴とす
    る部分脱アセチル化キチン又はキトサンのグラフト共重
    合体の製造方法。
  3. 【請求項3】 混合溶媒が、水と非プロトン性溶媒との
    混合比3:1〜1:1(容量比)の混合溶媒である請求
    項2記載の部分脱アセチル化キチン又はキトサンのグラ
    フト共重合体の製造方法。
  4. 【請求項4】 単量体がε−カプロラクトンである請求
    項1乃至3のいずれかの項に記載の部分脱アセチル化キ
    チン又はキトサンのグラフト共重合体の製造方法。
  5. 【請求項5】 部分脱アセチル化キチン又はキトサン
    と、ラクトン、アミノ酸N−カルボキシ無水物及びN−
    アルキルアミノ酸N−カルボキシ無水物からなる群から
    選ばれた単量体とを実質的に水のみの存在下、反応させ
    ることを特徴とする部分脱アセチル化キチン又はキトサ
    ンのグラフト共重合体の製造方法。
  6. 【請求項6】 実質的に下記(A)、(B)及び(C)
    の成分のみを反応させて得られたグラフト共重合体; (A) 部分脱アセチル化キチン又はキトサンと、
    (B) ラクトン、アミノ酸N−カルボキシ無水物及び
    N−アルキルアミノ酸N−カルボキシ無水物からなる群
    から選ばれた単量体と、及び(C) 水。
  7. 【請求項7】 実質的に下記(A)、(B)、(C)及
    び(D)の成分のみを反応させて得られたグラフト共重
    合体; (A) 部分脱アセチル化キチン又はキトサンと、
    (B) ラクトン、アミノ酸N−カルボキシ無水物及び
    N−アルキルアミノ酸N−カルボキシ無水物からなる群
    から選ばれた単量体と、(C) 水、及び(D) 非プ
    ロトン性溶媒。
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