JP2003100506A - 電気絶縁膜を有する複合磁性部材用素材及びその製造方法、並びに電気絶縁膜を有する複合磁性部材及びその製造方法、並びに該電気絶縁膜を有する複合磁性部材を用いて成るモータ - Google Patents

電気絶縁膜を有する複合磁性部材用素材及びその製造方法、並びに電気絶縁膜を有する複合磁性部材及びその製造方法、並びに該電気絶縁膜を有する複合磁性部材を用いて成るモータ

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JP2003100506A
JP2003100506A JP2001291663A JP2001291663A JP2003100506A JP 2003100506 A JP2003100506 A JP 2003100506A JP 2001291663 A JP2001291663 A JP 2001291663A JP 2001291663 A JP2001291663 A JP 2001291663A JP 2003100506 A JP2003100506 A JP 2003100506A
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Shinichiro Yokoyama
紳一郎 横山
Kazu Sasaki
計 佐々木
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 電気絶縁膜を有する複合磁性部材用素材及び
その製造方法、並びに電気絶縁膜を有する複合磁性部材
及びその製造方法、並びに電気絶縁膜を有する複合磁性
部材を回転子として用いて成るモータを提供する。 【解決手段】 少なくとも一方の表面に電気絶縁膜が形
成されたFe基合金板であって、該Fe基合金板が加熱冷却
処理によって局部的に弱磁性化可能な強磁性合金である
電気絶縁膜を有する複合磁性部材用素材。好ましくはFe
基合金板は、Fe-Cr-C系合金板でなる電気絶縁膜を有す
る複合磁性部材用素材。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明が属する技術分野】本発明は、例えばモータ回転
子等に適用される、単一組成の金属材料で強磁性と弱磁
性を実現できる複合磁性部材の内、電気絶縁膜を有する
複合磁性部材用素材及びその製造方法、並びに電気絶縁
膜を有する複合磁性部材及びその製造方法、並びに該電
気絶縁膜を有する複合磁性部材を回転子として用いて成
るモータに関するものである。
【0002】
【従来の技術】モータの回転子やアクチュエータ等、磁
気抵抗効果や磁気回路を利用する部品においては、強磁
性体(一般には軟質磁性材料)の一部に弱磁性部(ある
いは非磁性部)を設けた構造が用いられている。強磁性
体の一部に弱磁性部分(あるいは非磁性部分)を設ける方
法としては、強磁性部品と弱磁性部品をろう付けやレー
ザ溶接によって固着、あるいは接合するか、強磁性体の
一部をプレスで打ち抜き、プレスで出来た空隙を非磁性
部とする等の手法が行われてきた。
【0003】これらの異種材を接合する手法やプレス打
ち抜きによる手法に対し、本発明者は単一材を使用し
て、この単一材に冷間加工または熱処理によって強磁性
部と弱磁性部(あるいは非磁性部)を設けた複合磁性部
材を提案している。このような単一材から成る複合磁性
部材を利用すると、気密性の確保、振動等による破損防
止等、信頼性の確保、機械的強度という点で、強磁性体
と弱磁性体を接合した部品や強磁性体の一部をプレスで
打ち抜いた部品よりも優れたものとなる。
【0004】例えば本発明者は、特開2000-36409号や特
開2000-104142号において、Fe-Cr-C系を基本成分系とす
る複合磁性部材で、材料の組成範囲や組織形態を制御す
ることによって、比最大透磁率400以上の強磁性部と比
最大透磁率2以下の弱磁性部が得られることを開示して
いる。これらの技術は、単一組成で成る合金で強磁性と
弱磁性の両特性を実現できる複合磁性部材の材料技術で
ある。また特開平9-93885号には、複合磁性部材をリラ
クタンスモータの回転子として使用することにより、高
速回転に耐え得る堅牢なモータ回転子を得る提案がなさ
れている。この提案は複合磁性部材の応用技術であり、
珪素鋼鈑をプレスで打ち抜いて作製した回転子を用いた
従来のリラクタンスモータと同等以上のモータ効率を得
た上で、更にプレス打ち抜き品の欠点である機械的強度
を大きく改善した点で優れている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】例えばリラクタンスモ
ータ回転子のように、交流磁場下で使用する用途では、
交流電力の損失が生じる。また複合磁性部材の様な金属
系材料を使用する場合には、特に渦電流損失が問題とな
る。渦電流損失は板厚の2乗に比例するので、渦電流損
失を低減するためには、回転子は薄板状の部材を、必要
枚数だけ積層した構成とすることが望ましい。但し、薄
板状の部材を積層しても、部材の金属肌同士が接触して
いては渦電流を抑制する効果は無いので、各々の部材同
士は、電気的に絶縁しておくことが必要であり、薄板部
材の少なくとも一方の表面に電気絶縁膜を有しているこ
とが必要となる。本発明の目的は、上述の観点から、電
気絶縁膜を有する複合磁性部材用素材及びその製造方
法、並びに電気絶縁膜を有する複合磁性部材及びその製
造方法、並びに電気絶縁膜を有する複合磁性部材を回転
子として用いて成るモータを提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者は、電気絶縁膜
を有する複合磁性部材と、その製造方法を検討した結
果、複合磁性部材に用いる素材の少なくとも一方の表面
に電気絶縁膜を形成することで、電気絶縁膜を有する複
合磁性部材を得ることができ、また工業的にも安価な方
法で電気絶縁膜を有する複合磁性部材を製造できること
を見いだし、本発明に到達した。
【0007】即ち本発明は、少なくとも一方の表面に電
気絶縁膜が形成されたFe基合金板であって、該Fe基合金
板が加熱冷却処理によって局部的に弱磁性化可能な強磁
性合金である電気絶縁膜を有する複合磁性部材用素材で
ある。好ましくは、上述のFe基合金板は、Fe-Cr-C系合
金板でなる電気絶縁膜を有する複合磁性部材用素材であ
り、Fe基合金板の好ましい組成は、質量%でC:0.30〜1.2
0%、Si:0.10〜4.0%、Mn:0.10〜4.0%、Ni:4.0%以下(0を
含む。)、Cr:10.0〜25.0%、Al:5.0%以下(0を含む。)、
N:0.01〜0.10%、残部が実質的にFeの組成でなる電気絶
縁膜を有する複合磁性部材用素材である。
【0008】また本発明は、上述の電気絶縁膜を有する
複合磁性材素材の製造方法であって、加熱冷却処理によ
って局部的に弱磁性化可能な強磁性のFe基合金板に浸
漬、塗布、噴霧の何れか或いはこれらの組合せによっ
て、前記Fe基合金板の少なくとも一方の表面に電気絶縁
膜を形成する電気絶縁膜を有する複合磁性材素材の製造
方法である。
【0009】また本発明は、上述の電気絶縁膜を有する
複合磁性部材用素材に、強磁性部と弱磁性部とが形成さ
れている電気絶縁膜を有する複合磁性部材である。
【0010】更に本発明は、上述の電気絶縁膜を有する
複合磁性部材用素材を用いて、少なくともプレス打ち抜
き工程、非磁性化処理工程の二工程を経て電気絶縁膜を
有する複合磁性部材とする電気絶縁膜を有する複合磁性
部材の製造方法である。
【0011】また本発明は、上述の電気絶縁膜を有する
複合磁性部材を回転子として用いて成るモータである。
【0012】
【発明の実施の形態】上述したように、本発明の重要な
特徴は、複合磁性部材の素材となる合金板の表面に電気
絶縁膜を有する構成を採用したことにある。以下、本発
明における規定理由を述べる。
【0013】電気絶縁膜を有する複合磁性部材用素材の
構成を規定した理由を述べる。まず電気絶縁膜が合金板
の少なくとも一方の表面に形成されることとしたのは、
素材を複合磁性部材に加工後、積層した際に各部材同士
を電気的に絶縁するためである。好ましくは合金板の両
面に絶縁膜が形成されていると良い。また、Fe基合金板
素材に形成された電気絶縁膜は、素材の搬送中や保管時
の素材の擦れや発錆も抑制する効果も得られる。なお、
本発明で述べる合金板とは、特に長さを規定するもので
はなく、適当な長さに切断した平板であってもよいし、
長尺の板を帯状に巻いたコイルであってもよい。
【0014】次に複合磁性部材の素材である合金板をFe
基合金板としたのは、Fe基の金属材料はオーステナイト
化温度以下の温度で焼鈍すると強磁性(軟磁性)のフェラ
イト組織となり、またオーステナイト化温度域から急冷
すると上述のフェライト組織よりも軟磁性が弱い弱磁性
のマルテンサイト組織となるか、または更に弱磁性(非
磁性)のオーステナイト組織となるからである。ここで
本発明のFe基合金とは、Fe-C系、Fe-Si系、Fe-Ni系、Fe
-Mn系、Fe-Cr系、Fe-Mo系等の2元系合金、Fe-Ni-C、Fe-
Cr-C、Fe-Cr-Ni等の3元系合金、更なるFe基多元系合金
等、上述の強磁性と弱磁性(あるいは非磁性)が両立可能
ないかなるFe基合金であっても良い。
【0015】またFe基合金板の素材状態を強磁性合金と
したのは、通常、素材を複合磁性部材に加工後、使用す
る場合には、複合磁性部材中に占める強磁性部の割合は
弱磁性部よりも大きく、強磁性体中に部分的に弱磁性箇
所を設けた方が、局部加熱の箇所が少ないので工業的な
生産がし易く、かつコストも低くなるからである。以上
の理由から、Fe基合金板の素材状態は強磁性とした。
【0016】次に複合磁性部材用素材の好ましい合金系
として、Fe-Cr-C系を選択した理由を述べる。Fe-Cr-C系
合金は、A3変態点以下で焼鈍すると(フェライト+炭化
物)組織となって強磁性(軟磁性)を示す。またA3変態点
の直上から急冷(焼入れ)すると、マルテンサイト組織主
体となって焼鈍状態よりも軟磁性の弱い弱磁性を示す。
更にA3変態点よりも高温で溶体化処理して炭化物を固溶
させると、オーステナイト組織主体となって更に弱磁性
(非磁性)となる。
【0017】複合磁性部材として弱磁性部で磁路を遮断
するためには、弱磁性部の組織はオーステナイト主体と
なっていることが望ましいが、このFe-Cr-C系で形成さ
れるオーステナイト組織は、他のFe基合金系で形成され
るオーステナイト組織よりも安定であり、環境温度の変
化や経時変化によるマルテンサイト化が少ない。このこ
とは、Fe-Cr-C系合金に局部的な加熱冷却処理を施して
形成される複合磁性部材の弱磁性部の磁気特性が安定と
なることを示唆している。以上の理由から、本発明の複
合磁性部材用素材の好ましい合金系はFe-Cr-C系とし
た。
【0018】次に好ましい範囲として、複合磁性部材用
素材の化学組成を規定した理由を述べる。 C:0.30〜1.20% Cはオーステナイト形成元素として、弱磁性部の形成に
必要な本発明の複合磁性部材用素材に必須の元素であ
る。Cが0.30%未満ではオーステナイト形成の効果が小さ
いために十分な弱磁性を得ることが難しく、また1.20%
を超える範囲では該素材の加工性が悪くなるので、Cの
好ましい範囲は0.30〜1.20%に規定した。Cのより望まし
い範囲は、0.40〜0.80%である。
【0019】Si:0.10〜4.0% Siは0.50%以下では脱酸元素として、溶鋼中の酸素を低
減する効果がある。また0.50%以上では複合磁性部材用
素材の軟磁気特性、ひいては該素材を用いて成る複合磁
性部材の強磁性部の軟磁気特性を改善する効果があるの
で、必要に応じて添加量を制御すると良い。Siが0.10%
未満の範囲では脱酸材としての効果も小さく、逆に4.0%
を超える範囲では該素材の冷間加工性が著しく悪くなる
ので、Siの好ましい範囲は0.10〜4.0%に規定した。
【0020】Mn:0.10〜4.0% Mnは脱酸元素として、Siと同様の効果があるとともに、
オーステナイト形成元素として弱磁性部の形成、及び弱
磁性部の特性安定化に効果がある元素である。0.1%未満
では脱酸材としての効果も小さく、逆に4.0%を超える範
囲では該素材の冷間加工性が悪くなるので、Mnの好まし
い範囲は0.10〜4.0%に規定した。
【0021】Ni:4.0%以下(0を含む。) Niはオーステナイト形成元素として、弱磁性部の形成、
及び弱磁性部の特性安定化に有効な元素である。但し、
Niを添加すると該素材の冷間加工性が悪くなるので、添
加の有無は用途、必要に応じて選択すると良く、無添加
(0%)でも良い。また4.0%を超える範囲では該素材の冷間
加工性が悪くなるので、Niの好ましい範囲は4.0%以下(0
を含む。)に規定した。
【0022】Cr:10.0〜25.0% Crは該素材の耐食性を確保するとともに、局部的な弱磁
性化熱処理によって形成したオーステナイト組織の安定
化に寄与する。具体的には、弱磁性部のオーステナイト
組織が環境温度の変化によってマルテンサイト化し、強
磁性化するのを防ぐ為に、オーステナイトのMs点を下げ
る効果がある。但し、10.0%未満ではMs点を下げる効果
が小さく、逆に25.0%を超える範囲では、弱磁性部は安
定化するものの、複合磁性部材用素材、ひいては該素材
を用いて成る複合磁性部材の強磁性部の飽和磁束密度が
低下するので、Crの好ましい範囲は10.0〜25.0%に規定
した。より望ましい範囲は12.0〜20.0%である。
【0023】Al:5.0%以下(0を含む。) AlはSiやMnと同様に、脱酸材として溶鋼中の酸素を除去
する効果がある他、強磁性部の結晶粒径、炭化物形態、
結晶方位等を制御し、複合磁性部材用素材、ひいては該
素材を用いて成る複合磁性部材の強磁性部の軟磁気特性
を改善する効果がある。またAlは電気抵抗を高める効果
があるので、交流磁場下での渦電流損失を低減する効果
もある。但し、Alを添加すると非金属介在物Al2O3が形
成され、複合磁性部材用素材の冷間加工性を劣化させる
ので、添加の有無は用途、必要特性に応じて判断すると
良い。Alを添加する場合の好ましい組成範囲を5.0%以下
としたのは、5.0%を超える範囲では、複合磁性部材用素
材の冷間加工性が著しく低下するためである。
【0024】N:0.01〜0.10% Nは、CやMnと同様にオーステナイト形成元素として、複
合磁性部材の弱磁性部の形成に有効な元素である。但
し、0.01%未満では効果が小さく、逆に0.10%を超える範
囲では複合磁性部材用素材の冷間加工性を低下させるの
で、Nの好ましい範囲は0.01〜0.10%に規定した。なお、
本発明の複合磁性部材用素材は、不可避不純物としてP,
S,Oを該素材を用いて成る複合磁性部材の強磁性部、弱
磁性部の各磁気特性を特に劣化させない範囲として、各
々0.1%以下ずつ含有しても良い。
【0025】次に、複合磁性部材用の素材であるFe基合
金板の表面に電気絶縁膜を形成する方法としては、浸
漬、塗布、噴霧の何れかの方法を用いるとよい。これら
の方法は、工業的な量産プロセスとして、再現性良く、
均一な膜厚の絶縁膜を形成するのに適している。この電
気絶縁膜の形成方法は複合磁性部材の素材の長さや大き
さによって適宜選択すれば良く、例えば、長さの長い帯
材には浸漬や噴霧が適している。勿論、浸漬、噴霧や塗
布を組合せても良い。また本発明で用いる絶縁膜の種類
は、有機系絶縁膜、無機系絶縁膜、有機・無機混合系絶
縁膜のいずれであってもよい。但し、本発明の複合磁性
部材用素材を用いて複合磁性部材とする工程でプレス打
ち抜き工程が入る場合には打ち抜き性の良い有機系絶縁
膜を有していることが望ましく、また局部的な弱磁性化
熱処理の際に絶縁膜を維持するためには耐熱性の良い無
機系絶縁膜を有していることが望ましい。
【0026】本発明で用いる複合磁性部材用素材の絶縁
膜には、局部的な弱磁性化熱処理の際の耐熱性が要求さ
れる。また打ち抜き性が要求される場合も多いので、耐
熱性と打ち抜き性の両方を満足できる絶縁膜として、有
機・無機混合系の絶縁膜が最も適している。本発明の電
気絶縁膜を有する複合磁性部材用素材は、素材状態で表
面に絶縁膜を有しているので、積層品として使用する用
途に適している。
【0027】上述に記載の電気絶縁膜を有する複合磁性
部材用素材から、電気絶縁膜を有する複合磁性部材を製
造する方法としては、該素材を用いて、少なくともプレ
ス打ち抜き工程、非磁性化処理工程の二工程を経るとよ
い。二工程の順序は、どちらが先でもよい。この時のプ
レス工程は、例えばモータ用途の場合では、モータ回転
子の中空円板に打抜く工程等の所望の形状に打抜く工程
を言う。また、非磁性化処理をされた複合磁性材には、
非磁性部の近傍の例えば有機系絶縁膜は焼失するが、複
合磁性材を積層した場合に電気的に絶縁が重要な個所は
主に強磁性部であるため、非磁性部上の絶縁膜の焼失は
特に問題とならない場合が多い。但し、非磁性部近傍が
過剰に焼失している場合は、再度絶縁膜を形成する処理
を行うと良い。以上、説明する本発明の電気絶縁膜を有
する複合磁性部材は、積層品として使用する用途、特に
モータ回転子に適している。
【0028】
【実施例】質量%で表1に示す組成の5tonの合金鋼を真
空溶解炉により溶製した。表1の組成は、本発明で好ま
しいとする複合磁性部材用素材の組成である。この合金
鋼に1220℃×20h炉冷の条件で鋼塊ソーキングを行った
後、1100℃に加熱して熱間加工を行い、板厚50mm、幅15
0mmのスラブを得た。このスラブを熱間圧延し、板厚2.5
mm、幅150mmの帯状コイルを得た。この帯状コイルを780
℃×4h→20℃h-1→650℃→炉冷の条件でバッチ炉焼鈍を
行った後、酸洗とグラインダ処理により、熱間加工時の
酸化スケールを連続的に除去した。次に、この帯状コイ
ルを連続的に冷間圧延し、板厚1mm、幅150mmの冷延コイ
ルを得た。この冷延コイルを700℃に設定した連続炉に
通し、軟化した。合金板が700℃に保持されている時間
は約3分間である。軟化したコイルに再度、冷間圧延と7
00℃での連続焼鈍を施し、板厚0.35mm、幅150mmの帯形
状のFe基合金板を得た。
【0029】
【表1】
【0030】この合金板から、外径45mm、内径33mm
のJISリングを採取し、4000Am-1の直流磁場を印加し
て、B-H特性を測定した。測定したB-H曲線を図1に示
す。図1から、作製したFe基合金板は比最大透磁率μm=
760、4000Am-1での磁束密度B 4000=1.24(T)、保持力Hc=6
20(Am-1)の強磁性を示すことが分かる。更に、この素材
の一部をYAGレーザで溶融・凝固処理後、透磁率計によ
り溶融・凝固部の比透磁率μrを測定したところ、μr=
1.02の弱磁性が得られた。以上の結果から、複合磁性部
材用素材として、加熱冷却処理によって局部的に弱磁性
化可能な強磁性のFe基合金板が得られたことが分かる。
【0031】この帯形状の強磁性Fe基合金板に連続的な
浸漬処理を施し、合金板の両面に電気絶縁膜を形成し
た。形成した絶縁膜は有機・無機混合系絶縁膜である。
この絶縁処理により、強磁性のFe基合金板は、本発明の
電気絶縁膜を有する複合磁性部材用素材となる。
【0032】上述の電気絶縁膜を有する複合磁性部材用
素材から、プレス打ち抜き加工により、直径100mm、
内径20mmの中空円板(1)を作製した。プレス打ち抜き
時の打ち抜き性は良好であった。また電気絶縁膜と複合
磁性部材用素材の密着性も良好であり、プレス打ち抜き
加工後も絶縁膜が剥れることは無かった。この中空円板
(1)に対し、図2(a)〜(h)部の8箇所にYAGレーザを照射
し、局部的な溶融・凝固処理を行いった。この局部的な
溶融・凝固処理により図2の(a)〜(h)部は弱磁性部(2)と
なり、残部は強磁性部(3)であり、図2の部材は電気絶
縁膜を有する複合磁性部材となる。局部的な溶融・凝固
処理後も、電気的な絶縁が必要な強磁性部の絶縁膜が剥
れることは無かった。
【0033】図2の部材は、(a)〜(h)部を弱磁性化する
ことにより磁路を形成しているので、該部材をリラクタ
ンスモータの回転子として使用した場合、回転子の磁気
抵抗効果(リラクタンス)を高めることができる。また
弱磁性部をプレスで打ち抜いた回転子と比較して、回転
子としての強度も高い。更に図2の部材は、積層時に電
気的絶縁が必要な強磁性部の表面に電気絶縁膜を有して
いるので、積層品として使用することができ、リラクタ
ンスモータの回転子として、高リラクタンス、高強度特
性に優れた部材となる。また該部材を用いて成るモータ
は、モータの大型化、高速回転化が可能である。
【0034】
【発明の効果】本発明によれば、複合磁性部材用素材と
して、少なくとも一方の表面に電気絶縁膜が形成された
Fe基合金板を提供し、更に該素材の製造方法、並びに該
素材を用いて成る電気絶縁膜を有する複合磁性部材及び
該部材の製造方法を提供することによって、板状の複合
磁性部材を積層して使用する用途、特にモータ回転子に
実用化するに当たって欠くことのできない技術となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の複合磁性部材用素材の磁気特性を示す
B-H曲線の図である。
【図2】本発明の複合磁性部材でなる中空円板を示す模
式図である。
【符号の説明】
1.中空円板、2.弱磁性部、3.強磁性部

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 少なくとも一方の表面に電気絶縁膜が形
    成されたFe基合金板であって、該Fe基合金板が加熱冷却
    処理によって局部的に弱磁性化可能な強磁性合金である
    ことを特徴とする電気絶縁膜を有する複合磁性部材用素
    材。
  2. 【請求項2】 Fe基合金板は、Fe-Cr-C系合金板でなる
    ことを特徴とする請求項1に記載の電気絶縁膜を有する
    複合磁性部材用素材。
  3. 【請求項3】 Fe基合金板は、質量%でC:0.30〜1.20%、
    Si:0.10〜4.0%、Mn:0.10〜4.0%、Ni:4.0%以下(0を含
    む。)、Cr:10.0〜25.0%、Al:5.0%以下(0を含む。)、N:
    0.01〜0.10%、残部が実質的にFeの組成でなることを特
    徴とする請求項1または2に記載の電気絶縁膜を有する
    複合磁性部材用素材。
  4. 【請求項4】 請求項1乃至3の何れかに記載の電気絶
    縁膜を有する複合磁性材素材の製造方法であって、加熱
    冷却処理によって局部的に弱磁性化可能な強磁性のFe基
    合金板に浸漬、塗布、噴霧の何れか或いはこれらの組合
    せによって、前記Fe基合金板の少なくとも一方の表面に
    電気絶縁膜を形成することを特徴とする電気絶縁膜を有
    する複合磁性部材用素材の製造方法。
  5. 【請求項5】 請求項1乃至3の何れかに記載の電気絶
    縁膜を有する複合磁性部材用素材に、強磁性部と弱磁性
    部とが形成されていることを特徴とする電気絶縁膜を有
    する複合磁性部材。
  6. 【請求項6】 請求項1乃至3の何れかに記載の電気絶
    縁膜を有する複合磁性部材用素材を用いて、少なくとも
    プレス打ち抜き工程、非磁性化処理工程の二工程を経て
    電気絶縁膜を有する複合磁性部材とすることを特徴とす
    る電気絶縁膜を有する複合磁性部材の製造方法。
  7. 【請求項7】 請求項5に記載の電気絶縁膜を有する複
    合磁性部材を回転子として用いて成ることを特徴とする
    モータ。
JP2001291663A 2001-09-25 2001-09-25 電気絶縁膜を有する複合磁性部材用素材及びその製造方法、並びに電気絶縁膜を有する複合磁性部材及びその製造方法、並びに該電気絶縁膜を有する複合磁性部材を用いて成るモータ Pending JP2003100506A (ja)

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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JPWO2012077631A1 (ja) * 2010-12-06 2014-05-19 日立金属株式会社 複合磁性材用素材及び複合磁性材

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