JP2003098090A - ラマン分光の測定方法および測定装置 - Google Patents

ラマン分光の測定方法および測定装置

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JP2003098090A
JP2003098090A JP2001295365A JP2001295365A JP2003098090A JP 2003098090 A JP2003098090 A JP 2003098090A JP 2001295365 A JP2001295365 A JP 2001295365A JP 2001295365 A JP2001295365 A JP 2001295365A JP 2003098090 A JP2003098090 A JP 2003098090A
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raman
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liquid
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Yukio Takahagi
由紀夫 高萩
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 強度の小さい入射光を用いても被測定物質に
拘わることなくラマン散乱光の強度を測定できるラマン
分光の測定方法及び測定装置の提供を課題とする。 【解決手段】 被測定物質の被測定箇所上の液状物質を
含む領域に入射光を照射して、被測定物質のラマンスペ
クトルを測定する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ラマン分光の測定
方法および測定装置に関する。
【0002】
【従来の技術】被測定物質に任意の入射光を照射する
と、もとの入射光と同一振動数のレーリー散乱光と、も
との入射光とは異なる振動数のラマン散乱光が、被測定
物質から放出される。このラマン散乱光を検出するラマ
ン分光は、分子や結晶の構造、結合状態などを知ること
ができる分析方法である。一般に、ラマン散乱光の強度
は微弱であるため、通常のラマン分光では、レーザーを
用いて強度の大きな入射光を照射し、ラマン散乱光の強
度も大きくして検出する。しかし、レーザー照射によっ
て被測定物質が損傷を受けることがあるため、入射光の
強度を大きくすることは好ましくない。実際の測定で
は、被測定物質に損傷を与えないように強度を小さくし
たレーザー光を照射することになるが、ラマン散乱光の
強度は弱いままであるので、被測定物質が薄膜である場
合や測定箇所が微小である場合などにはラマンスペクト
ルが得られないことが少なくない。つまり、ラマンスペ
クトル測定において、被測定物質に損傷を与えないよう
に強度の小さい入射光を照射した場合に、強度の微弱な
ラマン散乱光を感度よく検出するための技術が必要であ
る。
【0003】このための手段として、強度の小さい入射
光を照射した場合であっても、ラマン散乱光の強度が大
きくなるような対策を講じることが考えられる。一例と
して、表面増強ラマン散乱(SERS)がChem.Phys.Let
t. Vol26 page163 (1974)で知られている。SERS
は、銀などの金属を表面に堆積させた被測定物質のラマ
ン散乱光が、金属を堆積しない場合と比べて著しく増大
される現象である。しかし、この様SERSも以下のよ
うな問題があった。
【0004】即ち、SERSでは、金属を被測定物質表
面に吸着させて被測定物質のラマン散乱強度を増大させ
るには、銀、銅、金などの自由電子金属で生じやすいた
め使用金属材料に限定され、しかも金属表面が原子レベ
ルで適切な粗さであることが必要である。しかも、被測
定試料と金属の相互作用が重要なので、試料内容に合わ
せて金属を吸着させる条件を決めないと、増大が生じな
い。さらに、金属を吸着させることによって被測定物質
の状態が変化してしまうこともあり、その場合には「通
常の」ラマンスペクトルが測定できない。
【0005】以上のような問題点を解決するためには、
ラマン散乱光の強度を増大させる技術が必要とされ、し
かもどのような被測定物質であっても容易に用いること
のできる方法であることが必要とされる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】従来のラマン分光の強
度増大方法は、被測定試料表面への金属の吸着状態によ
って増大される場合とされない場合があり、強度の小さ
い入射光を照射した場合、被測定物質のラマン散乱光の
強度を測定できないと言う問題があった。
【0007】本発明は、ラマンスペクトル測定におい
て、被測定物質に損傷を与えないように強度の小さい入
射光を照射した場合であっても、ラマン散乱光の強度を
測定できるラマン分光の測定方法及び測定装置を提供す
ることを課題とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため
に、請求項1のラマン分光の測定方法は、被測定物質に
所定の光を照射し、この被測定物質から放出される第1
のラマン散乱光から前記被測定物質のラマンスペクトル
を検出するラマン分光の測定方法において、自らが放出
する第2のラマン散乱光が前記第1のラマン散乱光とそ
の中心波数及び半値幅のうちの少なくとも一方が異なる
ピークを有する液状物質を前記被測定物質の表面に付着
し、この液状物質上から前記被測定物質に前記光を照射
して前記ラマンスペクトルを検出することを特徴とす
る。
【0009】請求項2のラマン分光の測定方法は、請求
項1において、前記液状物質がシリコーンオイル、エチ
レングリコール、及びグリセリンから選ばれる材料であ
ることを特徴とする。
【0010】請求項3のラマン分光の測定装置は、被測
定物質を搭載する試料台と、この被測定物質に照射する
光の光源と、前記被測定物質上に液状物質を作製する液
状物質作製機構と、前記被測定物質から放出される第1
のラマン散乱光及び前記液状物質から放出される第2の
ラマン散乱光を検出する検出器とを具備することを特徴
とする。
【0011】請求項4のラマン分光の測定装置は、請求
項3において、前記液状物質作製機構は、前記液状物質
を保持する容器を有し、この容器の開口部から前記被測
定物質に向けて、前記容器に加わる外力によって微量の
液滴を噴射させる液滴噴射装置である事を特徴とする。
【0012】請求項5のラマン分光の測定装置は、請求
項3において、前記試料台の裏面に冷却機構を有するこ
とを特徴とする。
【0013】本発明によれば、液状物質を用いること
で、通常の機構で放出されたラマン散乱光を液状物質の
中で多重反射させた後に、液状物質から外に出るラマン
散乱光を効率よく検出できる。この際、液状物質は、被
測定物質と相互反応し被測定物質の表面状態が変化し難
い材料であることが望ましく、例えばシリコーンオイル
が良い。
【0014】
【発明の実施の形態】本発明におけるラマン分光の測定
方法では、まず、被測定物質の被測定箇所上に適当な液
状物質を配置する。次に、被測定物質の被測定箇所上の
液状物質を含む領域に入射光を照射して、被測定物質の
第1のラマン散乱光のラマンスペクトルを測定する。こ
の際に、液状物質内で多重反射の効果が生じることによ
り、強度の大きなラマンスペクトルが検出される。この
際、液状物質が、自ら放出する第2のラマン散乱光が第
1のラマン散乱光とピーク強度の波長が異なり、自分自
身のラマン散乱光を第1のラマン散乱光の検出波長領域
で放出し難い様な液状物質を用いれば、ラマン散乱光の
増大効果を得ることができる。また、入射光の照射領域
よりも液状物質の占める領域が小さい場合、ラマン散乱
光が増大されるのは液状物質内に限られることから、空
間分解能の向上効果も同時に得られる。
【0015】以下、本発明の実施の形態を図面を用いて
説明する。
【0016】図1は、本発明のラマン分光の測定方法を
実行するための顕微ラマン分光装置を模式的に示した図
である。この図1に沿って、基本的動作を説明する。た
だし、ここでは顕微ラマン分光装置を用いて説明する
が、本発明がこれに限定されるものではない。
【0017】まず、被測定物質4上に液状物質を配置す
るが、液状物質作製機構10によって被測定物質4の被
測定箇所上に液滴が作製される。液状物質作製機構10
としては、インクジェット技術、つまり、液状物質を保
持した容器を有し、この容器に外力を加える事によって
容器の開口部から被測定物質に向けて、微量の液滴を噴
射させる技術を用いることができる。液状物質について
はインクジェット技術の利用で限定されるものではな
く、被測定物質4のラマン散乱光が検出される波数領域
において、自分自身の第2のラマン散乱光を放出し難く
測定への影響を与え難い物質を選べばよい。それには、
自らが放出する第2のラマン散乱光が被測定物質の第1
のラマン散乱光とその中心波数及び半値幅のうちの少な
くとも一方が異なるピークを有する液状物質を選択する
ことが重要である。具体的には例えば、シリコーンオイ
ルは、自身のラマン散乱光を放出しない波数範囲が広い
ので使用に好適である。また、インクジェット技術には
種々の方式があるが、どの方式を用いても差し支えな
い。あるいは、インクジェット技術以外の他の方法で液
滴を作製しすることも可能である。
【0018】次に、実際の測定であるが、レーザー1で
発生した光は、入射光としてビームスプリッター2を経
て対物レンズ3で絞られた後に、被測定物質4に照射さ
れる。ここで、液滴が蒸発しないように、試料台5の裏
面には被測定物質4の冷却機構として冷媒を通した冷却
パイプ12を備えている。被測定物質4から放出された
ラマン散乱光は、ビームスプリッター2に戻り、ミラー
6と入射スリット7を経て、分光器8と検出器9で分光
されて検出される。一般的な顕微ラマン分光測定は、被
測定物質4に照射する入射光とラマン散乱光が同一の光
軸上にある後方散乱配置で行われるため、ビームスプリ
ッター2が必要となる。
【0019】図2は、図1の対物レンズ3と被測定物質
4付近を拡大した模式図である。なお、図2において付
した番号であるが、3は対物レンズ、4は被測定物質、
10は液状物質作製機構、11は液滴である。図2を用
いて、本発明の基本的動作をさらに補足する。液状物質
作製機構10によって作製された液滴11が被測定物質
4の被測定箇所上に配置され、対物レンズ3で絞られた
入射光は、被測定物質4の被測定箇所上の液滴11を含
む領域に照射される。この際、液滴内で多重反射の効果
が生じることにより、強度の大きなラマンスペクトルが
検出される。入射光の照射領域よりも液状物質の占める
領域が小さい場合、ラマン散乱光が増大されるのは液状
物質内に限られることから、空間分解能の向上効果も得
られる。これによって、強度の微弱なラマン散乱光を感
度よく検出でき、顕微ラマン分光による微小部の測定が
可能となる。
【0020】
【実施例】本発明を、上述した図1図2の装置を使用し
た実施例によってより具体的に説明する。 (実施例1)ハードディスクの媒体上に成膜された表面
保護膜のダイヤモンドライクカーボン(DLC)について、
本発明のラマン分光の測定方法を用いてラマンスペクト
ルを測定した。DLC膜は膜厚が4nm程度であり、特に顕微
ラマン測定において検出感度が十分でないことが多く、
しかもレーザー照射によって損傷を受けやすい膜であ
る。
【0021】まず、図2に示すように、液状物質作製機
構10を用いて、被測定物質4であるハードディスク媒
体のDLC膜上に液滴11を作製した。液滴作製のもとに
なる液状物質はシリコーンオイルとして、液滴の大きさ
は直径500nm径とした。DLC膜は1000cm-1〜1800cm-1の波
数範囲にわたってラマンバンドが検出されるが、シリコ
ーンオイルは同じ波数範囲において、1200cm-1〜1400cm
-1付近に強度の弱い1〜2本のラマンピークが検出され
るのみである。仮に、シリコーンオイルのラマンピーク
が検出されたとしても、DLC膜のラマンスペクトルから
分離することは容易である。次に、図1、図2に示すよ
うに、レーザー1で発生した光を入射光とし、対物レン
ズ3で絞った上で被測定物質4に照射して、被測定物質
4から放出されるラマン散乱光を分光器8と検出器9で
分光して検出した。レーザーはアルゴン水冷レーザーを
使用した。光の照射条件は、波長514.5nm、試料表面で
のレーザーパワー0.5mWの微弱な光である。この光照射
によるDLC膜の変化は見られなかった。ここで、対物レ
ンズ3は100倍のものを用いており、入射レーザー光の
直径は1ミクロン程度であるが、液滴全体を覆うように
入射光を照射した。また、測定中は試料台5の冷却機構
によって被測定物質4を冷却し、レーザー光の照射で液
滴が蒸発しない様にした。図3に、測定結果を示す。3
1は、本実施例1のラマン分光の測定方法で測定したDL
C膜のラマンスペクトル、32は、液滴無し以外は実施
例1と同一にした方法の測定結果(比較例)である。こ
の測定では、DLC膜に損傷を与えないように、入射光の
強度を通常より弱くしている。そのため、32では検出
器のノイズによるベースラインしか検出されず、DLC膜
のラマンスペクトルを得ることができていないが、31
ではDLC膜のスペクトルが得られており、しかも、シリ
コーンのスペクトルは検出されていない。液滴内で多重
反射の効果が生じることにより、強度の大きなラマンス
ペクトルが検出されており、また、液滴内のみでラマン
散乱光の強度が増大されていることから、空間分解能が
対物レンズ3に起因する1ミクロンから液滴径に起因す
る500nmに向上していると言える。
【0022】このように、DLC膜上に液滴を配置し、液
滴を含む領域に入射光を照射することで、液滴内で多重
反射の効果が生じて強度の大きなラマンスペクトルが検
出される。また、入射光の照射領域よりも液滴の占める
領域が小さい場合、ラマン散乱光が増大されるのは液状
物質内に限られることから、空間分解能の向上効果も得
られる。 (実施例2〜実施例3)実施例1と異なる点は、液状物
質を異ならせた点であり、その他の構成は実施例1と同
一である。実施例2はエチレングリコール、実施例3は
グリセリンを使用している。これらの実施例に対し、実
施例1と同様の測定を実施して、その結果を示したもの
を以下の表1に示した。
【0023】
【表1】
【0024】実施例1〜実施例3から明らかなように、
液状物質の第2のラマン散乱光が被測定物の第1のラマ
ン散乱光とその中心波数及び半値幅が異なるピークを有
する場合は、被測定物質に損傷を与えないようなエネル
ギーが微弱な光を使用しても、DLC膜のラマン散乱光の
ラマンスペクトルを分離することができることが分かっ
た。
【0025】上述した実施例では、DLC膜のラマンスペ
クトル測定に関して本発明のラマン分光の測定方法を適
用したが、被測定物質には全く制限はない。液滴はシリ
コーンオイルとしたが、これも、被測定物質のラマン散
乱光が検出される波数領域において自分自身のラマン散
乱光を放出しないような液滴であれば、全く制限はな
い。
【0026】なお、ピークの波数位置と半値幅が全く一
致している場合、例えば被測定物質と液状物質が類似す
る或いは同じ材料の場合には、ピークの分離が行えない
ため、被測定物質のスペクトルを得ることはできない。
【0027】
【発明の効果】上述したように、本発明は、ラマンスペ
クトル測定において、被測定物質に損傷を与えないよう
に強度の小さい入射光を照射した場合であっても、ラマ
ン散乱光の強度を測定できるラマン分光の測定方法及び
測定装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明のラマン分光の測定方法を実行するた
めの顕微ラマン分光装置を説明する模式図。
【図2】 本発明のラマン分光の測定方法を実行するた
めの顕微ラマン分光装置のうちで、対物レンズと被測定
物質付近を説明する模式図。
【図3】 本発明の実施例1を説明する図。
【符号の説明】
1 レーザー 2 ビームスプリッター 3 対物レンズ 4 被測定物質 5 試料台 6 ミラー 7 入射スリット 8 分光器 9 検出器 10 液状物質作製機構 11 液滴 12 冷却パイプ

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 被測定物質に所定の光を照射し、この被
    測定物質から放出される第1のラマン散乱光から前記被
    測定物質のラマンスペクトルを検出するラマン分光の測
    定方法において、自らが放出する第2のラマン散乱光が
    前記第1のラマン散乱光とその中心波数及び半値幅のう
    ちの少なくとも一方が異なるピークを有する液状物質を
    前記被測定物質の表面に付着し、この液状物質上から前
    記被測定物質に前記光を照射して前記ラマンスペクトル
    を検出することを特徴とするラマン分光の測定方法。
  2. 【請求項2】 前記液状物質がシリコーンオイル、エチ
    レングリコール、及びグリセリンから選ばれる材料であ
    ることを特徴とする請求項1に記載のラマン分光の測定
    方法。
  3. 【請求項3】 被測定物質を搭載する試料台と、この被
    測定物質に照射する光の光源と、前記被測定物質上に液
    状物質を作製する液状物質作製機構と、前記被測定物質
    から放出される第1のラマン散乱光及び前記液状物質か
    ら放出される第2のラマン散乱光を検出する検出器とを
    具備することを特徴とするラマン分光の測定装置。
  4. 【請求項4】 前記液状物質作製機構は、前記液状物質
    を保持する容器を有し、この容器の開口部から前記被測
    定物質に向けて、前記容器に加わる外力によって微量の
    液滴を噴射させる液滴噴射装置である事を特徴とする請
    求項3に記載のラマン分光の測定装置。
  5. 【請求項5】 前記試料台の裏面に冷却機構を有するこ
    とを特徴とする請求項3に記載のラマン分光の測定装
    置。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2019138772A (ja) * 2018-02-09 2019-08-22 国立研究開発法人産業技術総合研究所 センサ装置
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